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JP7243242B2 - 織物 - Google Patents

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JP7243242B2 JP2019018872A JP2019018872A JP7243242B2 JP 7243242 B2 JP7243242 B2 JP 7243242B2 JP 2019018872 A JP2019018872 A JP 2019018872A JP 2019018872 A JP2019018872 A JP 2019018872A JP 7243242 B2 JP7243242 B2 JP 7243242B2
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Description

本発明は、防水性と低通気性に優れた織物に関する。
防水性に優れた織物として、ポリウレタン等の樹脂コーティング品等がスポーツ衣料用等で広く使用されている。さらには、こうした機能性を有する素材がカジュアルファッション分野でも使用されるケースが増加している。
しかしながら、樹脂コーティング品等の織物は、低通気性、防水性には非常に優れているが、ソフト感に乏しいという欠点がある。このため、ソフトな風合いを持つノンコーティング織物でありながら高い防水性と低通気性を有する織物の要求が高い。
このような要求に応えるため、構成繊維糸条の単糸繊度を細くし、高密度に製織するなど種々の検討がなされている。
例えば、特許文献1には、織物を構成する繊維糸条の単糸繊度が0.6デニール以下、トータル繊度60~120デニールよりなるポリエステル長繊維糸条を用いた高密度織物であり、経糸が捲縮加工糸からなり、経糸のトータル繊度、緯糸のトータル繊度および経糸カバーファクターが所定の関係式を満足することにより、ノンコーティングタイプの薄地織物で、高い防水性能と、ソフトな風合で、実用上問題ないレベルの引裂強力を有し、かつ縫製後の仕立て映えにも優れたポリエステル長繊維糸条からなる高密度織物を提供することができるという技術が開示されている。
特開平10-245741号公報。
しかしながら、上記特許文献1記載の高密度織物は、一定の耐水圧を実現できるものの、通常の平織物では、交錯点間の隙間が十分小さい織構造にはなっていないため、低通気性が不十分であった。
本発明は、かかる従来技術の問題点を改善し、防水性と低通気性に優れた織物を提供することを目的とする。
かかる課題を解決するため本発明は、次の構成を有する。
(1)織糸を経緯に交錯させて製織された織物であり、同方向に配列された織糸YA、YBが、それぞれ異なるクリンプ率A、Bを有し、クリンプ率Bが4%未満であり、クリンプ率Aが15≦A≦500の関係を満たす織物。
(2)クリンプ率Bの糸と交織される糸の糸繊度D(dtex)と厚さ方向の糸上端と下端の距離L(μm)が下記式1を満たす(1)に記載の織物。
L/√D ≧ 15 (式1)
(3)クリンプ率Aの織糸YAとクリンプ率Bの織糸YBが、1:1の割合で配置された(1)~(2)のいずれかに記載の織物。
(4)カバーファクターが2400以上である(1)~(3)のいずれかに記載の織物。
(5)通気度が1.0cm/cm・sec以下である(1)~(4)のいずれかに記載の織物。
(6)耐水圧が4.9kPa(500mmHO)以上である(1)~(5)のいずれかに記載の織物。
(7)少なくとも片面にはカレンダー加工が施されている(1)~(6)のいずれかに記載の織物。
(8)少なくとも片面には撥水加工が施されている(1)~(7)のいずれかに記載の織物。
(9)製織する際、同方向に配列される織糸YA、YBを異なる張力で製織する(1)~(8)のいずれかに記載の織物。
(10)平組織あるいはリップストップ組織で製織された、(1)~(9)のいずれかに記載の織物。
本発明によれば、防水性と低通気性に優れた織物を提供することができる。
図1は、実施例3で得られた平織物の表面SEM写真である。 図2は、図1のクリンプ率Aの経糸方向の切断線αに沿って切断した時の緯糸断面のSEM写真である。 図3は、図1のクリンプ率Bの経糸方向の切断線βに沿って切断した時の緯糸断面のSEM写真である。
本発明による平織物は、織糸を経および緯に交錯させて製織された織物であって、同方向に配列された織糸YA、YBが、それぞれ異なるクリンプ率A、Bを有し、クリンプ率Bが4%未満であり、クリンプ率Aが15≦A≦500の関係を満たす織物であることを特徴とする。
なお、上記「同方向に配列された織糸が、それぞれ異なるクリンプ率を有し」とは、経糸方向および/または緯糸方向に、配列されたある織糸が、あるクリンプ率を有するとき、少なくとも前記クリンプ率とは異なるクリンプ率を有する織糸が少なくとも1種類以上前記織糸と同方向に配列されて存在することを意味する。そして、前記2種類以上のクリンプ率のうち、最大のものを「クリンプ率A」、最小のものを「クリンプ率B」とし、「クリンプ率A」を有する織糸を「織糸YA」、「クリンプ率B」を有する織糸を「織糸YB」とする。
クリンプ率Bは、4%未満であることが好ましく、2%以下であることがより好ましい。下限としては0.1%以上であることが好ましい。
また、クリンプ率Aは、15%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。上限としては500%以下であることが好ましい。
前記クリンプ率A、Bの関係を上記の範囲とすることで、極めて高密度の織物とすることが可能となる。
また、クリンプ率Bの糸と交織される糸の糸繊度D(dtex)と厚さ方向の糸上端と下端の距離L(μm)としたときのL/√Dは15以上が好ましく、20以上がさらに好ましい。前記L/√Dを上記の値とすることで、より凹凸形状の発達した表面となり、水滴と織物の間により多くの空気を噛み込む形態となり、撥水性の高い織物を得られる。
上記において、「クリンプ率Bの糸と交織される糸」とは、クリンプ率Bの糸が経糸ならば緯糸、クリンプ率Bの糸が緯糸ならば経糸を意味する。「糸繊度D」とは、織糸の繊度をいう。ここでいう糸繊度は、織物を分解して採取した糸の糸繊度である。
「厚さ方向の糸上端と下端の距離L」とは、クリンプ率Bの糸に沿って生地を切断した断面において、クリンプ率Bの糸を上下に挟むように配置された2本のクリンプ率Bの糸と交織される糸について、上部糸断面の上端頂点接線と下部糸断面の下端頂点接線の垂直距離を意味する。
上記について、図1および図3を例にとり説明する。
図1は、後述の実施例3で得られた平織物の表面SEM写真であり、図3は、図1のクリンプ率Bの経糸方向の切断線βに沿って切断した時の緯糸断面のSEM写真である。図3に示すクリンプ率Bの経糸4に沿って生地を切断した断面において、クリンプ率Bの経糸4を上下に挟むように配置された2本のクリンプ率Bの経糸4と交織される緯糸3について、上部糸断面の上端頂点接線5と下部糸断面の下端頂点接線6間の距離が垂直距離Lである。
前記織物は、クリンプ率Aの織糸YAとクリンプ率Bの織糸YBが、1:1の割合で配置されていることが好ましい。
なお、上記クリンプ率Aの織糸とクリンプ率Bの織糸の「割合」とは、織糸の本数比を意味する。織糸の本数は、経糸または緯糸が緯糸又は経糸と交錯する単位を1本として計算し、同口で複数本入れる場合には、1本と数える。「織糸YAとクリンプ率Bの織糸YBが、1:1の割合で配置されている」とは、織糸YAと織糸YBが同数本ずつ交互に配列されていることを意味する。
なかでもクリンプ率Aの織糸とクリンプ率Bの織糸は、1本交互、もしくは2本交互に配列することが好ましい。
なお、ここでいう「1:1」の意味は、例えば上記のようにn本交互で、両端ともに織糸YAが配置される場合に若干ずれることがあるが、概ね1:1であればよい。
上記の構成とすることで、丈夫で寸法安定性に優れた織物とすることができる。
また、同方向に配列された織糸YA、YBが異なるクリンプ率A、Bを有することで、従来得られなかった高いレベルの高密度織物とすることが可能である。
本発明の織物のカバーファクターは、2400以上であることが好ましく、更に好ましくは2500以上、より好ましくは2600以上である。上限としては、4000以下であることが好ましい。
なお、上記カバーファクター(Cf)は、以下の式により求められる。
Cf=N×(D1/2+N×(D1/2
:経糸織密度(本/2.54cm)
:緯糸織密度(本/2.54cm)
:経糸総繊度(dtex)
:緯糸総繊度(dtex)
前記カバーファクターを上記の範囲とすることで、軽量薄地で低通気度を有する織物が得られる。織物のカバーファクターが2400より小さいと、薄く軽い織物が得られるが、ノンコーティングタイプでは低通気度を満足するものになりにくい。また、4000を超えると、低通気度を満足するものの、織物が重くなりやすい傾向にある。
また、本発明の好ましい態様においては、通気度1.0cm/cm・sec以下を達成することが可能であり、更に好ましい態様では0.5cm/cm・sec以下、より好ましい態様では0.2cm/cm・sec以下を達成することも可能である。下限としては、現実的には0.01cm/cm・sec以上程度である。
前記通気度を上記の範囲とすることで、例えばダウンジャケットとした場合に中綿やダウンが抜けるのを抑制することができ、外衣等において防風性に優れ、外気を遮断できる。
また、本発明の好ましい態様においては、耐水圧4.9kPa(500mmHO)以上を達成することも可能であり、更に好ましい態様では9.8kPa(1000mmHO)以上、より好ましい態様では14.7kPa(1500mmHO)以上を達成することも可能である。上限としては、通常68.6kPa(7000mmHO)以下であることが好ましい。
前記耐水圧を上記の範囲とすることで、浸水しない織物が得られる。4.9kPa(500mmHO)未満であると、例えばウインドブレーカーとした場合に、風雨に対して耐水性が下がり、衣服内に雨がしみこみやすくなる。ただし、68.6kPa(7000mmHO)超とするにはポリウレタン樹脂等の膜加工を施すなどの工夫を要する場合があり、膜加工に多量の樹脂を要する場合には軽量性が損なわれる場合がある。
本発明の織物は、マルチフィラメント糸から構成されるものであることが好ましい。マルチフィラメント糸を形成する繊維としては例えば、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、アラミド系繊維、レーヨン系繊維、ポリサルホン系繊維、超高分子量ポリエチレン系繊維、ポリオレフィン系繊維等を用いることができる。なかでも、大量生産性や経済性に優れたポリアミド系繊維やポリエステル系繊維が好ましい。
ポリアミド系繊維としては例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン46や、ナイロン6とナイロン66との共重合ポリアミド、ナイロン6にポリアルキレングリコール、ジカルボン酸、アミン等を共重合させた共重合ポリアミド等からなる繊維を挙げることができる。ナイロン6繊維、ナイロン66繊維は耐衝撃性に特に優れており、好ましい。
また、ポリエステル系繊維としては例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等からなる繊維を挙げることができる。ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートに酸成分としてイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸や、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸を共重合させた共重合ポリエステルからなる繊維であってもよい。
マルチフィラメント糸を構成する繊維は、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、平滑剤、帯電防止剤、可塑剤、増粘剤、顔料および難燃剤などを含有していることも好ましい。
なお、経糸と緯糸の材質は、同じであっても、異なっていてもよいが、後加工や染色を考慮すると同じ材質とすることが好ましい。
本発明の織物に好ましく用いられるマルチフィラメント糸は、総繊度を22~220dtexとすることが好ましく、33~167dtexであることが好ましい。マルチフィラメント糸の総繊度を前記範囲とすることで薄地の織物として実用に十分な強度を得られやすく、軽い織物が得られやすい。
マルチフィラメント糸の単繊維繊度は、織物柔軟性の点から、0.01dtex~6dtexであることが好ましく、0.02dtex~0.5dtexであることが好ましい。また、織物を構成するマルチフィラメント糸は直接紡糸により得られたマルチフィラメント糸であっても、海島複合繊維を脱海処理した、いわゆる極細繊維であってもよい。
本発明の織物は、例えば、下記のようにして製造することができる。
同方向に配列された糸にクリンプ率差を付ける方法として、製織時に同方向に配列される織糸YA、YBを異なる張力で製織する方法等を挙げることができる。
例えば、下記のような方法が挙げられる。
織糸YA、YBが経糸である場合、製織時において、クリンプ率Bを有するよう制御する経糸(以下「クリンプ率Bの経糸」と称する場合もある)は張力を高くするとともに、クリンプ率Aを有するよう制御する経糸(以下「クリンプ率Aの経糸」と称する場合もある)は開口に支障のない範囲で張力を低くして製織することが好ましい。例えば、糸A1の張力×2.5=糸B1の張力とすることが好ましい。クリンプ率Bに対しクリンプ率Aを大きくしたい場合にはクリンプ率Bの経糸張力に対し、クリンプ率Aの経糸張力を小さくすればよく、所望のクリンプ率A、Bが得られるよう適宜調整される。具体的には原糸強度に問題ない範囲であれば、クリンプ率Bの経糸張力≧クリンプ率Aの経糸張力×2.5とするのが好ましい。
一般に、高密度の織物で、経糸のクリンプ率を大きくするため、製織時に経糸の張力を低くすると、バンピング(緯糸打戻)により、緯糸密度を高くすることが難しい。しかしながら、上記の実施形態によれば、クリンプ率Bの経糸を支点にしてクリンプ率Aの経糸で緯糸を拘束することができ、バンピングを抑制することができる。そのため、クリンプ率Aの経糸のクリンプ率を大きくすることができる。
経糸張力を上記範囲内に調整する具体的方法としては、織機の経糸送り出し速度を調整する他、緯糸の打ち込み速度を調整する方法が上げられる。経糸張力が製織中に実際に上記範囲になっているかどうかは、例えば織機稼働中に経糸ビームとバックローラーとの中間において、経糸一本当たりに加わる張力を張力測定器で測ることで確認することができる。
また、織糸YA、YBが緯糸である場合、緯糸を経糸開口間に挿入するときの張力を調整すればよい。
前記織物の織組織は平組織であるが、経糸と緯糸を交互に浮き沈みさせることにより、交錯させて製織されるものであり、経糸と緯糸を1本ずつ交錯させて製織される平織物の他、応用組織として緯糸を同口で数本入れるタテ拡大組織、隣り合う経糸数本を同開口にしたヨコ拡大組織でも良く、バスケット織のようにタテヨコ共に数本ずつ並べて組織する織物でも良く、引裂強力を向上させるためにリップストップ組織も適用される。
また、前記織物の製造に使用する織機も特に限定されず、ウォータージェット織機やエアージェット織機、レピア織機を使用することができる。
製織した織物は、一般的な加工機械を使って、精練、リラックス、プレセット、染色、仕上げ加工してもよい。
前記織物は、少なくとも片面にはカレンダー加工が施されていることが高耐水圧を達成し得る点で好ましい。カレンダー加工は織物の片面のみ、あるいは両面に施されても良いが、例えばアウター等に使用する場合、表面の凹凸構造を潰してしまうと撥水性が低下するため、片面のみカレンダー加工を施すのが好ましい。なかでも裏面にカレンダー加工を施し、表面にはカレンダー加工を施さないか、施すとしても所望の撥水性を維持し得る程度にとどめることが好ましい。これにより、表面は凹凸構造による高撥水、裏面は高耐水圧化という特性をハイレベルに付与することができる。また、上記においてカレンダー加工の回数は特に限定されない。
カレンダー加工の温度は特に限定されないが、使用素材のガラス転移温度より80℃以上高いことが好ましく、120℃以上高いことがより好ましく、使用素材の融点より20℃以上低いことが好ましく、30℃以上低いことがより好ましい。カレンダー加工の温度を前記範囲にすることにより、低通気度と高引裂き強力を両方維持できる織物が得られる。一方、前記カレンダー加工の温度が使用素材のガラス転移温度+80℃以上であることで、適度な圧縮度合が得られ、防水性を有する織物を得ることができる。また、使用素材の融点-20℃以上低いことで、適度な圧縮度合が得られ、織物の引裂き強力に優れる。
例えば、ポリアミドを素材とする場合、カレンダー加工の温度は、120℃~200℃であることが好ましく、130℃~190℃であることがより好ましい。また、ポリエステルを素材とする場合、カレンダー加工の温度は160℃~240℃であることが好ましい。
カレンダー加工の圧力は、0.98MPa(10kgf/cm)以上であることが好ましく、1.96MPa(20kgf/cm)以上であることがより好ましく、5.88MPa(60kgf/cm)以下であることが好ましく、4.90MPa(50kgf/cm)以下であることがより好ましい。カレンダー加工の圧力を前記範囲にすることにより、低通気度と引裂き強力を両方維持できる織物が得られる。一方、前記カレンダー加工の圧力が0.98MPa(10kgf/cm)以上であることで、適度な圧縮度合が得られ、優れた防水性を有する織物が得られる。また、5.88MPa(60kgf/cm)以下とすることで、適度に圧縮されて、織物の引裂き強力が優れるものとなる。
また、カレンダーロールの材質は特に限定されないが、片方のロールは金属製であることが好ましい。金属ロールはそれ自身の温度を調節することができ、かつ生地表面を均一に圧縮することができる。もう一方のロールは特に限定されないが、金属製または樹脂製が好ましく、樹脂製の場合はナイロン製が好ましい。
前記織物は、少なくとも片面には撥水加工が施されていることが好ましく、各種機能加工や、風合いや織物の強力を調整するための柔軟仕上げを併用することができる。前記L/√Dの好ましい範囲を持つ織物に撥水加工を施せば、洗濯20回後でも撥水度が3級以上の織物を得ることができる。
撥水剤としては一般的な繊維用撥水加工剤でよく、例えば、シリコーン系撥水剤、パーフルオロアルキル基を有するポリマーからなるフッ素系撥水剤、パラフィン系撥水剤が好適に用いられる。なかでも、フッ素系撥水剤を用いると、被膜の屈折率を低く抑えることができ、さらに、繊維表面における光の反射を低減できるため、特に好ましい。撥水加工の方法は、パディング法、スプレー法、プリント法、コーティング法、グラビア法など一般的な方法を用いることができる。
柔軟剤としては、アミノ変性シリコーンやポリエチレン系、ポリエステル系、パラフィン系柔軟剤等を用いることができる。
このようにして得られた織物は、防水性および低通気性に優れた織物となり、また、撥水加工を施した場合には撥水性にも優れた織物となるので、これらの特徴の一つ以上を活かし、ダウンウエア、ダウンジャケット、スポーツ衣料、ふとん、寝袋、傘地、医療用基材等に有用に使用することができる。
以下、本発明の実施例を比較例と共に説明する。
なお、本実施例で用いる各種特性の測定方法は、以下のとおりである。
(1)総繊度、フィラメント数
総繊度は、JIS L 1013:2010 8.3.1 (A法)(正量繊度)に基づき測定した。
フィラメント数は、JIS L 1013:2010 8.4に基づき測定した。
(2)織密度
織密度は、JIS L 1096:2010 8.6.1に基づき測定した。
試料を平らな台上に置き、不自然なしわや張力を除いて、異なる5カ所について0.5cm間のタテ糸およびヨコ糸の本数を数え、それぞれの平均値を算出し、2.54cm当たりの本数に換算した。
(3)クリンプ率
クリンプ率は、JIS L 1096:2010 8.7(B法)に基づき測定した。
試料を平らな台上に置き、不自然なしわや張力を除いて、クリンプ率の異なる糸A1、糸B1が隣り合う位置に配置された、異なる3カ所について200mmの距離に印をつけ、この印内の糸を解いて分解糸とし、JIS L 1013:2010の5.1に規定された初荷重の下で真っすぐに張った長さをそれぞれ測定して平均値を算出し、変化長を計算した。
(4)カバーファクター
カバーファクター(Cf)は、以下の式により求めた。
Cf=N×(D1/2+N×(D1/2
:経糸織密度(本/2.54cm)
:緯糸織密度(本/2.54cm)
:経糸総繊度(dtex)
:緯糸総繊度(dtex)
(5)通気度
通気度は、JIS L 1096:2010 8.26.1.(A法)(フラジール法)に基づき測定した。
(6)耐水圧
耐水圧は、JIS L 1092:2009 7.1.1(A法)(低水圧法)に基づき測定した。片面カレンダーを施した生地については、非カレンダー面を表側として測定した。
(7)撥水性
撥水性はJIS L 1092:2009 6.2.1(C法)(家庭用電気洗濯機を用いる方法)に基づき20回洗濯した後、同7.2撥水度試験(スプレー試験)に基づき測定した。
(8)厚さ方向の糸上端と下端の距離L
試料をクリンプ率Bの糸に沿って生地を切断し、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)((株)日立ハイテクノロジーズ製)を用い、100倍で観察し、クリンプ率Bの糸を上下に挟むように配置された2本のクリンプ率Bの糸と交織される糸について、上部糸断面の上端頂点接線と下部糸断面の下端頂点接線の垂直距離Lを測定した。
(9)分解糸の糸繊度D
織物を構成する糸を痛めないように織物から分解して採取した糸をJIS L 1013:2010 5.1に記載の初荷重をかけた状態で、正確に長さ9cmに切断し、質量を電子天秤(メトラー・トレド株式会社製)で測定して、以下の式から糸繊度D(dtex)を求め、5本の平均値を算出した。
D=m/l×10000
D:分解糸の糸繊度(dtex)
m:試料の質量(g)
l:試料長(m)
[実施例1]
クリンプ率Aの織糸(A1)の原糸として、84dtex、144フィラメント、のポリエチレンテレフタレート繊維と、クリンプ率Bの織糸(B1)の原糸として、84dtex、144フィラメント、のポリエチレンテレフタレート繊維とを経糸に用いた。また、84dtex、144フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維を原糸として緯糸に用いた。
そして、製織時において、糸A1と糸B1の張力比を2.5倍にして、経糸密度を169本/2.54cmに、緯糸密度を170本/2.54cmに設定し、経糸、緯糸とも1本ずつ交錯させた平織組織にて製織して、平織物を得た。得られた平織物を、オープンソーパーを用いて精練、ピンテンターを用いて185℃×30secでプレセットし、パッダーを用いてフッ素系樹脂化合物をパッド・キュアー法にて付与し撥水処理を行い、130℃×1minで乾燥し、180℃×30secで中間セットを行った。その後、カレンダー加工(加工条件:シリンダー加工、温度170℃、圧力2.45MPa(25kgf/cm、速度20m/min)を織物の片面に2回施して、経糸密度が190本/2.54cm、緯糸密度が168本/2.54cm、カバーファクターが3281である平織物を得た。得られた平織物について、通気度および耐水圧を前記方法で評価した。
得られた平織物の特性を表1に示す。
[実施例2]
クリンプ率Aの糸(A1)およびクリンプ率Bの糸(B1)として、22dtex、20フィラメント、のナイロン繊維を経糸に用いた。また、28dtex、48フィラメントのポリアミド繊維を緯糸に用いた。
そして、製織時において、糸A1と糸B1を1:1の割合(本数比)で一本ずつ交互に配置し、糸A1×2.5=糸B1の張力として、経糸密度を290本/2.54cmに、緯糸密度を190本/2.54cmに設定し、経糸、緯糸とも1本ずつ交錯させた平織組織にて製織して、平織物を得た。得られた平織物を、オープンソーパーを用いて精練、ピンテンターを用いて185℃×30secでプレセットし、パッダーを用いてフッ素系樹脂化合物をパッド・キュアー法にて付与し撥水処理を行い、130℃×1minで乾燥し、180℃×30secで中間セットを行った。その後、カレンダー加工(加工条件:シリンダー加工、温度170℃、圧力2.45MPa(25kgf/cm、速度20m/min)を織物の片面に2回施して、経糸密度が324本/2.54cm、緯糸密度が210本/2.54cm、カバーファクターが2631である平織物を得た。得られた平織物について、通気度および耐水圧を前記方法で評価した。
得られた平織物の特性を表1に示す。
[実施例3]
クリンプ率Aの糸(A1)およびクリンプ率Bの糸(B1)として、56dtex、144フィラメント、のポリエチレンテレフタレート繊維を経糸に用いた。また、同糸を緯糸に用いた。
そして、製織時において、糸A1と糸B1を1:1の割合(本数比)で一本ずつ交互に配置し、糸A1の張力×2.5=糸B1の張力として、経糸密度を200本/2.54cmに、緯糸密度を200本/2.54cmに設定し、経糸、緯糸とも1本ずつ交錯させた平織組織にて製織して、平織物を得た。得られた平織物を、オープンソーパーを用いて精練、ピンテンターを用いて185℃×30secでプレセットし、パッダーを用いてフッ素系樹脂化合物をパッド・キュアー法にて付与し撥水処理を行い、130℃×1minで乾燥し、180℃×30secで中間セットを行った。その後、カレンダー加工(加工条件:シリンダー加工、温度170℃、圧力2.45MPa(25kgf/cm、速度20m/min)を織物の片面に2回施して、経糸密度が220本/2.54cm、緯糸密度が222本/2.54cm、カバーファクターが3308である平織物を得た。得られた平織物について、通気度および耐水圧を前記方法で評価した。
得られた平織物の特性を表1、図1、2、3に示す。また、得られた平織物の表面SEM写真を図1に、図1のクリンプ率Aの経糸方向の切断線αに沿って切断した時の緯糸断面のSEM写真を図2に、図1のクリンプ率Bの経糸方向の切断線βに沿って切断した時の緯糸断面のSEM写真を図3に示した。
図2は、平織物1において、クリンプ率Aの経糸2が緯糸3の表面を、左右から覆い、緻密な構造を形成している様子を示し、図3は、クリンプ率Bの経糸4が緯糸3を厚み方向に押し上げ、凹凸構造を発現している様子を示している。
[実施例4]
クリンプ率Aの織糸(A1)の原糸として、84dtex、144フィラメント、のポリエチレンテレフタレート繊維と、クリンプ率Bの織糸(B1)の原糸として、84dtex、144フィラメント、のポリエチレンテレフタレート繊維とを経糸に用いた。また、84dtex、144フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維を原糸として緯糸に用いた。
そして、製織時において、糸A1と糸B1を1:1の割合(本数比)で一本ずつ交互に配置し、糸A1の張力×5.5=糸B1の張力として、経糸密度を154本/2.54cmに、緯糸密度を250本/2.54cmに設定し、経糸、緯糸とも1本ずつ交錯させた平織組織にて製織して、平織物を得た。得られた平織物を、オープンソーパーを用いて精練、ピンテンターを用いて185℃×30secでプレセットし、パッダーを用いてフッ素系樹脂化合物をパッド・キュアー法にて付与し撥水処理を行い、130℃×1minで乾燥し、180℃×30secで中間セットを行った。その後、カレンダー加工(加工条件:シリンダー加工、温度170℃、圧力2.45MPa(25kgf/cm、速度20m/min)を織物の片面に2回施して、経糸密度が166本/2.54cm、緯糸密度が266本/2.54cm、カバーファクターが3959である平織物を得た。得られた平織物について、通気度および耐水圧を前記方法で評価した。
得られた平織物の特性を表1に示す。
[比較例1]
56dtex、36フィラメント、のポリエチレンテレフタレート繊維を経糸と緯糸に用いた。
そして、製織時において、任意に経糸に張力差を付けず、経糸密度を146本/2.54cmに、緯糸密度を92本/2.54cmに設定し、経糸、緯糸とも1本ずつ交錯させた平織組織にて製織して、平織物を得た。得られた平織物を、オープンソーパーを用いて精練、ピンテンターを用いて185℃×30secでプレセットし、パッダーを用いてフッ素系樹脂化合物をパッド・キュアー法にて付与し撥水処理を行い、130℃×1minで乾燥し、180℃×30secで中間セットを行った。その後、カレンダー加工(加工条件:シリンダー加工、温度170℃、圧力2.45MPa(25kgf/cm、速度20m/min)を織物の片面に2回施して、経糸密度が152本/2.54cm、緯糸密度が96本/2.54cm、カバーファクターが1856である平織物を得た。得られた平織物について、通気度および耐水圧を前記方法で評価した。
得られた平織物の特性を表1に示す。
[比較例2]
クリンプ率Aの織糸(A1)の原糸として、56dtex、36フィラメント、のポリエチレンテレフタレート繊維と、クリンプ率Bの織糸(B1)の原糸として、56dtex、36フィラメント、のポリエチレンテレフタレート繊維とを経糸に用いた。また、167dtex、144フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維を原糸として緯糸に用いた。 そして、製織時において、糸A1と糸B1を1:1の割合(本数比)で一本ずつ交互に配置し、糸A1の張力×1.2=糸B1の張力として、経糸密度を146本/2.54cmに、緯糸密度を84本/2.54cmに設定し、経糸、緯糸とも1本ずつ交錯させた平織組織にて製織して、平織物を得た。得られた平織物を、オープンソーパーを用いて精練、ピンテンターを用いて185℃×30secでプレセットし、パッダーを用いてフッ素系樹脂化合物をパッド・キュアー法にて付与し撥水処理を行い、130℃×1minで乾燥し、180℃×30secで中間セットを行った。その後、カレンダー加工(加工条件:シリンダー加工、温度170℃、圧力2.45MPa(25kgf/cm、速度20m/min)を織物の片面に2回施して、経糸密度が152本/2.54cm、緯糸密度が89本/2.54cm、カバーファクターが2287である平織物を得た。得られた平織物について、通気度および耐水圧を前記方法で評価した。
得られた平織物の特性を表1に示す。
Figure 0007243242000001
1.平織物
2.クリンプ率Aの経糸
3.緯糸
4.クリンプ率Bの経糸
5.上部糸断面の上端頂点接線
6.下部糸断面の下端頂点接線
α.クリンプ率Aの経糸方向の切断線
β.クリンプ率Bの経糸方向の切断線

Claims (8)

  1. 織糸を経緯に交錯させ、平組織あるいはリップストップ組織で製織された織物であり、同方向に配列された織糸YA、YBが、それぞれ異なるクリンプ率A、Bを有し、クリンプ率Bが4%未満であり、クリンプ率Aが15≦A≦500の関係を満たし、カバーファクターが2400以上である織物。
  2. クリンプ率Bの糸と交織される糸の糸繊度D(dtex)と厚さ方向の糸上端と下端の距離L(μm)が下記式の関係を満たす、請求項1に記載の織物。
    L/√D ≧ 15 (式1)
  3. クリンプ率Aの織糸YAとクリンプ率Bの織糸YBが、1:1の割合で配置された請求項1~2のいずれかに記載の織物。
  4. 通気度が1.0cm/cm・sec以下である請求項1~のいずれかに記載の織物。
  5. 耐水圧が4.9kPa(500mmHO)以上である請求項1~のいずれかに記載の織物。
  6. 少なくとも片面にはカレンダー加工が施されている請求項1~のいずれかに記載の織物。
  7. 少なくとも片面には撥水加工が施されている請求項1~のいずれかに記載の織物。
  8. 製織する際、同方向に配列される織り糸YA、YBを異なる張力で製織する請求項1~のいずれかに記載の織物。
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