JP7240615B2 - リチウムイオン二次電池の負極およびその製造方法 - Google Patents
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Description
このような構成によれば、リチウム析出耐性に優れるリチウムイオン二次電池の負極の製造方法が提供される。
このような構成によれば、リチウムイオン析出耐性がより高くなる。
ここに開示されるリチウムイオン二次電池の負極の製造方法の好ましい一態様においては、前記負極ペーストが、pH8~9の範囲において-25mV以下のゼータ電位を示すセラミック粒子をさらに含む。
このような構成によれば、リチウムイオン析出耐性がより高くなる。
このような構成によれば、リチウム析出耐性に優れるリチウムイオン二次電池の負極が提供される。
また、本明細書において「リチウムイオン二次電池」とは、電荷担体としてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンに伴う電荷の移動により充放電が実現される二次電池をいう。
なお、本明細書において、「ペースト」とは、固形分の一部またはすべてが溶媒に分散した混合物のことをいい、いわゆる「スラリー」、「インク」等を包含する。
負極活物質の種類は、上記比(ζB/ζA)が3.5以上9.0以下となる限り、特に限定されない。負極活物質としては、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料を好適に用いることができ、なかでも、黒鉛が好ましい。黒鉛は、天然黒鉛であっても人造黒鉛であってもよい。また、黒鉛の表面が非晶質炭素膜で被覆された、非晶質炭素被覆黒鉛を用いてよい。
ここで、黒鉛のゼータ電位は、通常-2mV以上である。よって、本実施形態においては、ゼータ電位の値を小さくする(すなわち、絶対値で大きくする)処理が行われた黒鉛粒子が好適に用いられる。
ゼータ電位の値を小さくする方法としては、黒鉛をH2Oプラズマ処理する方法が挙げられる。黒鉛をH2Oプラズマ処理することによって、表面水酸基量が増えるため、ゼータ電位の値を小さくすることができる。さらにプラズマ処理の条件によって、ゼータ電位を容易に調整することができる。この黒鉛の表面水酸基量は、特に限定されないが、好ましくは0.21mmol/g以上0.30mmol/gである。
なお、負極活物質のゼータ電位は、例えば、イオン交換水中に、0.05g/Lの濃度で負極活物質を分散させた試料に対し、電気泳動光散乱法による測定を行うことにより求めることができる。
また、黒鉛をH2Oプラズマ処理することを含む負極活物質の製造方法がここに提案される。当該H2Oプラズマ処理は、ガス種にH2Oを用い、公知のプラズマ処理装置によって行うことができる。
なお、本明細書中において「平均粒子径」とは、特記しない限り、レーザ回折散乱法に
より測定される粒度分布おいて、累積度数が体積百分率で50%となる粒子径(D50)のことをいう。
なお、バインダのゼータ電位は、例えば、例えば、イオン交換水中に、0.05g/Lの濃度でバインダを分散させた試料に対し、電気泳動光散乱法による測定を行うことにより求めることができる。
本発明者らの検討では、リチウムイオン二次電池の負極での金属リチウムの析出の要因の一つが、負極活物質層中でバインダが凝集し、凝集したバインダが負極活物質に付着すると抵抗体となることにあることを見出した。ここで、ゼータ電位は、粒子の表面電位と関連するパラメータである。したがって、負極活物質のゼータ電位(ζA)に対するバインダのゼータ電位(ζB)の比(ζB/ζA)を上記範囲にすれば、負極活物質およびバインダの負極ペースト中での帯電状態が適切なものとなり、負極ペースト中での負極活物質およびバインダの分散状態が改善され、バインダの凝集を抑制することができる。その結果、負極のリチウム析出耐性を向上させることができる。
セラミック粒子のなかでも、pH8~9の範囲において-25mV以下のゼータ電位を示すセラミック粒子が好ましい。このようなセラミック粒子を負極ペーストが含有する場合には、リチウム析出耐性をさらに向上させることができる。これは、負極活物質間および負極とバインダとの間へのセラミック粒子の充填状態が改善され、リチウムイオン二次電池の充放電時の負極活物質層の変形(膨張および圧縮)に対する追従性が向上するためと考えられる。
なお、セラミック粒子のゼータ電位は、例えば、イオン交換水中に、0.05g/Lの濃度でセラミック粒子を分散させ、水酸化リチウム水溶液によってpHを8~9の範囲に調整した試料に対し、電気泳動光散乱法による測定を行うことにより求めることができる。
セラミック粒子の平均粒子径は、特に制限されないが、例えば、0.05μm以上3μm以下であり、負極活物質の平均粒子径の1/5以下であることが好ましい。
負極ペーストの全固形分中のバインダの含有割合は、0.1質量%以上8質量%以下が好ましく、より好ましくは0.3質量%以上5質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%2質量%以下である。
負極ペーストの全固形分中の増粘剤の含有割合は、好ましくは0.3質量%以上5質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上2質量%以下である。
負極ペーストの全固形分中のセラミック粒子の含有割合は、好ましくは0.5質量%以上20質量%以下、より好ましくは3質量%以上15質量%以下である。
負極ペーストを用いた負極の作製方法には、特に制限はないが、負極作製工程は、典型的には、
負極ペーストを負極集電体に塗工する工程(以下、「ペースト塗工工程」ともいう);および
塗工した負極ペーストを乾燥して、負極活物質層を形成する工程(以下、「乾燥工程」ともいう)
を実施することにより、行うことができる。
また、乾燥工程の後に、負極活物質層をプレス処理する工程(以下、「プレス工程」ともいう)を行ってもよい。
負極集電体としては、典型的には、導電性の良好な金属(例えば、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)製の導電性部材が用いられる。負極集電体の形態は、特に限定されないが、棒状、板状、シート状、箔状、メッシュ状等であってよい。
負極集電体は、好ましくは銅箔である。
負極集電体が銅箔である場合、その厚みは特に限定されないが、例えば6μm以上30μm以下である。
乾燥工程の実施により、負極集電体上に負極活物質層を形成することができる。
このようにして作製された負極は、リチウム析出耐性に優れる。これは上述のように、バインダの凝集が抑制されているためであり、このようにして作製された負極においては、バインダが微細な粒子状に均一に分散している。
具体的には、バインダの凝集が抑制されているために、バインダの平均径が0.2μm以上0.5μm以下であり、バインダの粒径分布曲線において、ピーク半値幅が0.40μm以上0.6μm以下であるという分散状態を達成することができる。
したがって、別の側面から、リチウム析出耐性に優れるリチウムイオン二次電池の負極として、負極活物質およびバインダを含み、当該バインダの平均径が0.2μm以上0.5μm以下であり、当該バインダの粒度分布曲線におけるピーク半値幅が0.40μm以上0.65μm以下である、リチウムイオン二次電池の負極が、ここに提案される。
負極活物質層の試料を用意し、必要に応じOsO4を用いてバインダをOs染色する。負極活物質層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、反射電子像を取得する。反射電子像に対して、バインダとそれ以外とで2値化処理を行う。2値化処理によって明確になったバインダの径を測定する。このバインダの径は、バインダの像と同じ面積をもつ円の直径(いわゆる円相当径)として算出し、その平均値を平均径として求める。この測定には、市販のソフトウェアを用いてよい。また、得られたバインダの径のデータに基づき、縦軸を頻度、横軸をバインダの径とする粒度分布曲線を作成する。この曲線から、ピークの1/2の高さでのピーク幅を求めることにより、ピーク半値幅を求める。
そこで、以下、図1および図2を参照しながら、本実施形態に係る製造方法により得られる負極を用いて作製されるリチウムイオン二次電池の構成例について説明する。なお、本実施形態に係る製造方法により得られる負極を用いて構成されるリチウムイオン二次電池は、以下の例に限られない。
<負極活物質およびバインダの準備>
ゼータ電位が-1.2mVの黒鉛を用意した。この黒鉛の平均粒子径(D50)は8μmであった。
この黒鉛200gをチャンバー式プラズマ発生装置に投入した。ガス種をH2O、チャンバー内圧を20Paに設定し、90分間プラズマ処理することにより、ゼータ電位が-3.1mVの黒鉛を得た。
さらに、H2Oプラズマ処理時間を長くすることによって、ゼータ電位が-5.5mVの黒鉛、およびゼータ電位が-8.8mVの黒鉛を得た。
5種類の市販のSBRを用意した。それらのゼータ電位は、-5mV、-11mV、-17mV、-28mV、-33mVであった。
なお、黒鉛およびバインダのゼータ電位は、次のようにして測定した。イオン交換水に0.05g/Lの濃度で黒鉛またはバインダが分散した試料を作製した。この試料について、ゼータ電位測定システム「ELSZ-2000Z」(大塚電子製)を用いて、ゼータ電位を測定した。
また、中和滴定によって各黒鉛の表面水酸基量を求めた。結果を表1に示す。
表1に示すゼータ電位を有する黒鉛と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを乾式混合した後、水を添加した。これを混錬した後、表1に示すゼータ電位を有するスチレンブタジエンゴム(SBR)を添加して、撹拌し、負極ペーストを調製した。固形分の各成分の割合は、黒鉛:SBR:CMC=98:1:1(質量比)とした。
得られた負極ペーストを、厚み10μmの長尺状の銅箔の両面に帯状に塗布して乾燥した後、ロールプレスすることにより、負極シートを作製した。
得られた負極シートを切断し、その断面をOsO4を用いてバインダをOs染色した。負極活物質層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、反射電子像を取得した。反射電子像に対して、バインダとそれ以外とで2値化処理を行った。2値化処理によって明確になったバインダの径を測定した。このバインダの径は、バインダの像と同じ面積をもつ円の直径(いわゆる円相当径)として算出し、その平均値を平均径として求めた。この測定には、市販のソフトウェア(Jimage-fiji)を用いた。
また、得られたバインダの径のデータに基づき、縦軸を頻度、横軸をバインダの径とする粒度分布曲線を作成した。この曲線からピークの1/2の高さでのピーク幅を求めることにより、ピーク半値幅を求めた。結果を表1に示す。
また、参考として、実施例1および比較例1の負極の反射電子像を、図3および図4に示す。
正極活物質としてのLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(LNCM)と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、LNCM:AB:PVdF=92:5:3の質量比でN-メチルピロリドン(NMP)と混合し、正極活物質層形成用スラリーを調製した。このスラリーを、厚み15μmの長尺状のアルミニウム箔の両面に、100mm幅で塗布して乾燥した後、所定の厚みにロールプレスすることにより、正極シートを作製した。
また、PP/PE/PPの三層構造の厚み24μmの多孔性ポリオレフィンシートの表面に厚み4μmのセラミック層(耐熱層)が形成されたセパレータシートを用意した。
正極シートと上記作製した負極シートとを、セパレータシートを介して対向させて電極体を作製した。なおセパレータシートの耐熱層は、負極に対向させた。
エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とをEC:DMC:EMC=3:3:4の体積比で含む混合溶媒に、LiPF6を1.0mol/Lの濃度で溶解させることにより、非水電解液を調製した。
注液口を有する蓋体とケース本体とを備えるアルミニウムケースを用意した。
蓋体に電極端子と集電板を取り付けた。次いで、作製した電極体と集電板とを溶接により接合した。このようにして蓋体に接合された電極体を、ケース本体に挿入し、蓋体とケース本体を溶接した。
注液口から上記準備した非水電解液を所定量注入し、注液口に封止用ネジを締め付けて封止した。
非水電解液が電極体に含浸するように所定時間静置して、評価用リチウムイオン二次電池を得た。
次いで各評価用リチウムイオン二次電池に初期充電を施した。具体的には、上記作製したリチウムイオン二次電池を、1/3Cの電流値で4.1Vまで定電流充電を行った後、電流値が1/50Cになるまで定電圧充電を行い、満充電状態にした。
次いで、50℃の恒温槽内で、20時間エージング処理を施した。
各実施例および各比較例の評価用リチウムイオン二次電池をSOC56%に調整し、-10℃の温度環境下に置いた。
20Cで30秒間の定電流充電、10分間休止、20Cで30秒間の定電流放電、10分間休止を1サイクルとする充放電を1000サイクル繰り返した。
この1000サイクルの充放電の前後で、図5に示すパターンの充放電(通電電流:0.5C)を行って、矢印Dで表される期間の放電時の容量を定格容量として測定した。
(サイクル充放電後の定格容量/サイクル充放電前の定格容量)×100より、容量維持率(%)を求めた。結果を表1に示す。
ゼータ電位が-3.1mVの黒鉛と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)と、表2に示すセラミック粒子(CP)とを乾式混合した後、水と、pHが9となるように水酸化リチウム水溶液とを添加した。これを混錬した後、ゼータ電位が-17mVのSBRを添加して、撹拌し、負極ペーストを調製した。固形分の各成分の割合は、C:SBR:CMC:CP=88:1:1:10(質量比)とした。
なお、セラミック粒子のゼータ電位は、次のようにして測定した。イオン交換水に0.05g/Lの濃度でセラミック粒子が分散した分散液を作製し、水酸化リチウム水溶液を用いてpHを8~9の範囲に調整して試料を調製した。この試料について、ゼータ電位測定システム「ELSZ-2000Z」(大塚電子製)を用いて、ゼータ電位を測定した。
得られた負極ペーストを、厚み10μmの長尺状の銅箔の両面に帯状に塗布して乾燥した後、ロールプレスすることにより、負極シートを作製した。
30 電池ケース
36 安全弁
42 正極端子
42a 正極集電板
44 負極端子
44a 負極集電板
50 正極シート(正極)
52 正極集電体
52a 正極活物質層非形成部分
54 正極活物質層
60 負極シート(負極)
62 負極集電体
62a 負極活物質層非形成部分
64 負極活物質層
70 セパレータシート(セパレータ)
80 非水電解質
100 リチウムイオン二次電池
Claims (4)
- 負極活物質およびバインダを含む負極ペーストを用意する工程と、
前記負極ペーストを用いて負極を作製する工程と、
を包含するリチウムイオン二次電池の負極の製造方法であって、
前記負極活物質のゼータ電位(ζA)に対する前記バインダのゼータ電位(ζB)の比(ζB/ζA)が、3.5以上9.0以下である、
リチウムイオン二次電池の負極の製造方法。 - 前記負極活物質のゼータ電位(ζA)が、-3.1mV以上-5.5mV以下である、請求項1に記載の製造方法。
- 前記負極ペーストが、pH8~9の範囲において-25mV以下のゼータ電位を示すセラミック粒子をさらに含む、請求項1または2に記載の製造方法。
- 負極活物質およびバインダを含むリチウムイオン二次電池の負極であって、
前記バインダの平均径が0.2μm以上0.5μm以下であり、
前記バインダの粒度分布曲線におけるピーク半値幅が0.40μm以上0.65μm以下である、リチウムイオン二次電池の負極。
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