JP7139627B2 - 不織布およびその製造方法 - Google Patents
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Description
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明の不織布は、繊維状炭素ナノ構造体とグラフェンとを含み、厚み方向の熱伝導率に対する面方向の熱伝導率の比が30以上であることを特徴としている。本発明の不織布は、グラフェンを平面方向に配向させ、従来に比べて熱伝導率の異方性が大きい不織布である。この本発明の不織布は、後述する本発明の不織布の製造方法により製造することができる。
本発明の不織布における繊維状炭素ナノ構造体としては、特に限定されることなく、繊維状構造を有する炭素ナノ構造体を用いることができる。具体的には、繊維状炭素ナノ構造体としては、例えば、CNT等の円筒形状の炭素ナノ構造体や、炭素の六員環ネットワークが扁平筒状に形成されてなる炭素ナノ構造体等の非円筒形状の炭素ナノ構造体を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。上述した中でも、繊維状炭素ナノ構造体が、CNTを含むことがより好ましい。
上記繊維状炭素ナノ構造体の比表面積は、400m2/g以上であることが好ましく、600m2/g以上であることがより好ましく、800m2/gであることが更に好ましい。CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体の比表面積が400m2/g以上であれば、不織布の耐粉落ち性を向上させることができる。また、繊維状炭素ナノ構造体の比表面積は、2500m2/g以下であることが好ましく、1200m2/g以下であることがより好ましい。繊維状炭素ナノ構造体の比表面積が2500m2/g以下であれば、繊維状炭素ナノ構造体に欠損が生じて窒素が内吸着するのを抑制し、平面方向の熱伝導性に優れた不織布を作ることができる。なお、本発明において、「比表面積」とは、BET法を用いて測定した窒素吸着比表面積を指す。
本発明の不織布におけるグラフェンとしては、後述する本発明の不織布の製造方法において説明するように、酸化グラフェンを還元して得られたグラフェンである。酸化グラフェンは、Brodie法、Staudenmaier法、Hummers法、改良Hummers法などの一般的な手法により調製することができる。例えば、天然または人工のグラファイトを、硝酸ナトリウム、濃硫酸、過マンガン酸カリウム、過酸化水素等の酸化剤を用いて濃硫酸中で酸化したのち、水溶液中で剥離することにより、1層~10層程度の酸化グラフェンを得ることができる。また、酸化グラフェンは東京化成工業株式会社およびシグマアルドリッチジャパン合同会社等からも市販されている。
本発明の不織布は、厚み方向の熱伝導率に対する面方向の熱伝導率の比が30以上であり、従来よりも熱伝導率の異方性が強い不織布である。ここで、不織布の厚み方向の熱伝導率が0.1W/m・K以下であることが好ましく、0.05W/m・K以下がより好ましく、0.03W/m・K以下がさらに好ましい。厚み方向の熱伝導率が0.1W/m・K以下であることによって、外部からの熱が厚み方向に伝達するのを十分に抑制することができる。
繊維状炭素ナノ構造体とグラフェンとを含む本発明の不織布の密度は、0.5g/cm3以下であることが好ましい。これにより、不織布の厚み方向の熱伝導率を低下させることができる。不織布の密度は、0.3g/cm3以下であることが好ましく、0.2g/cm3以下であることがより好ましい。また、不織布の密度は、0.05g/cm3以上であることが好ましく、0.10g/cm3以上であることがより好ましい。これにより、不織布の強度を高めることができる。
また、本発明の不織布の厚みは、0.5mm以上であることが好ましく、0.6mm以上であることがより好ましく、1.0mm以上であることがさらに好ましい。これにより、十分な強度を有する不織布とすることができる。また、本発明の不織布は、2.0mm以下であることが好ましく、1.6mm以下であることがより好ましく、1.5mm以下であることが更に好ましい。これにより、クラックを発生させることなく、折り曲げに対する耐性を高めることができる。
本発明の不織布の形状は、特に限定されるものではないが、通常シート状、フィルム状、シートを積層した積層状である。
本発明の不織布において、グラフェンの含有量は、繊維状炭素ナノ構造体100質量部に対して、100質量部以上とすることが好ましく、500質量部以上とすることがより好ましく、1000質量部以上とすることが更に好ましい。また、グラフェンの含有量は、繊維状炭素ナノ構造体100質量部に対して5000質量部以下とすることが好ましく、1500質量部以下とすることがより好ましい。グラフェンの含有量をこれらの範囲内とすることにより、不織布の熱伝導率の異方性をより大きくすることができる。
次に、本発明の不織布の製造方法について説明する。本発明の不織布の製造方法は、繊維状炭素ナノ構造体を分散媒に分散させて粗分散液を調製する粗分散液調製工程と、粗分散液と酸化グラフェンとを混合した混合液を調製する混合液調製工程と、混合液から分散媒を除去してプレ不織布とするプレ不織布形成工程と、プレ不織布を還元する還元工程とを含むことを特徴としている。
まず、繊維状炭素ナノ構造体を分散媒に分散させて粗分散液を調製する粗分散液調製工程を行う。
繊維状炭素ナノ構造体については、上述した本発明の不織布と同様に、CNT等の円筒形状の炭素ナノ構造体や、炭素の六員環ネットワークが扁平筒状に形成されてなる炭素ナノ構造体等の非円筒形状の炭素ナノ構造体を用いることができる。繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積が400m2/g以上であることが好ましい。これにより、製造された不織布の耐粉落ち性を高めることができる。
分散媒としては、通常は水が好ましいが、水以外にも目的に応じて水に可溶するアルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコール、グリセリン等)、エーテル類(エチレングリコールジメチルエーテル、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)やN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキサイド等を使用してもよい。また、これらの混合物も好適に使用できる。
-分散液の調製-
次に、上述のように調製した粗分散液と酸化グラフェンとを混合して、混合液を調製する。
酸化グラフェンについては、上述した本発明の不織布において説明したような一般的な酸化グラフェンを用いることができる。混合液を調製するにあたり、酸化グラフェンの形態は特に制限されない。固体の酸化グラフェンを粗分散液に添加してもよいし、水溶液の形態の酸化グラフェンを粗分散液と混合してもよい。なお、粗分散液との混練の容易性から、混合に先立ち酸化グラフェンを水溶液や分散液の形態としておくことが好ましい。
混合液を調製する際に、混合液における酸化グラフェンの含有量は、繊維状炭素ナノ構造体100質量部に対して、100質量部以上とすることが好ましく、500質量部以上とすることがより好ましく、1000質量部以上とすることが更に好ましい。また、本発明の不織布において、酸化グラフェンの含有量は、繊維状炭素ナノ構造体100質量部に対して5000質量部以下とすることが好ましく、1500質量部以下とすることがより好ましい。混合液における酸化グラフェンの含有量をこれらの範囲内とすることにより、繊維状炭素ナノ構造体の分散性を高めて、製造される不織布の熱伝導性の異方性を向上させることができる。また、製造される不織布の耐粉落ち性を向上させることもできる。
なお、上述のように得られた混合液を分散処理する分散工程を行うことが好ましい。これにより、繊維状炭素ナノ構造体を混合液中においてより分散させて、製造される不織布の面方向の熱伝導率をより高めることができる。また、不織布の耐粉落ち性をより向上させることもできる。
次に、上述のように得られた混合液から分散媒を除去してプレ不織布とするプレ不織布形成工程を行う。これは、例えば、混合液をろ紙を用いて減圧ろ過することによって行うことができる。
続いて、上述のように得られたプレ不織布を還元する還元工程を行う。これは、プレ不織布に紫外線(UV)を照射したり、ヒドラジン浸漬等の化学還元などによって行うことができる。中でも、副生成物などの不純物等を少なく還元できることから、UV照射により行うことが好ましい。本発明者らは、上記還元工程によって、不織布の面方向の熱伝導率を高めることができるとともに、厚み方向の熱伝導率を低下できることを見出した。こうして、従来よりも熱伝導性の異方性が大きい不織布を得ることができる。
不織布について、厚み方向の熱拡散率αZ(m2/s)、定圧比熱Cp(J/g・K)および密度ρ(g/m3)を以下の方法で測定した。
[熱拡散率αZ]
熱物性測定装置(株式会社ベテル製、製品名「サーモウェーブアナライザTA35」)を使用して測定した。
[定圧比熱]
示差走査熱量計(Rigaku製、製品名「DSC8230」)を使用し、10℃/分の昇温条件下、温度25℃における比熱を測定した。
[密度]
自動比重計(東洋精機社製、商品名「DENSIMETER-H」)を用いて測定した。
そして、得られた測定値を用いて下記式(I):
λZ=αZ×Cp×ρ ・・・(I)
より25℃における不織布の熱伝導率λZ(W/m・K)を求めた。
不織布について、面方向の熱拡散率αXY(m2/s)、定圧比熱Cp(J/g・K)および密度ρ(g/m3)を以下の方法で測定した。
[熱拡散率αXY]
熱物性測定装置(株式会社ベテル製、製品名「サーモウェーブアナライザTA35」)を使用して測定した。
[定圧比熱および密度]
「厚み方向の熱伝導率」と同様にして測定した。
そして、得られた測定値を用いて下記式(II):
λXY=αXY×Cp×ρ ・・・(II)
より25℃における不織布の面方向の熱伝導率λXY(W/m・K)を求めた。
不織布の上に3×3cmに切ったウェットティッシュ(シルコットウェットティッシュ ピュアウォーター(ユニ・チャーム製))を乗せた。更に、キムワイプの上に、均一に圧力が印加されるように、500gの重しを乗せた。30秒経過後に重しを外して、キムワイプに付着した物質の有無を目視にて確認し、以下の基準で評価した。
A:ウェットティッシュに付着物無し
B:ウェットティッシュ全面に付着物有り
<粗分散液調製工程>
繊維状炭素ナノ構造体であるSGCNT(BET比表面積:812m2/g)250mgを1Lの水に添加し、ホモジナイザーにより10000rpm、30分間撹拌して、0.025質量%の粗分散液を調製した。
上述のように調製した粗分散液に、1質量%の酸化グラフェン分散液(仁科マテリアル製)を125g投入した後、直径0.5mmの細管流路を備えた湿式ジェットミル(株式会社常光製、JN20)に100MPaの圧力で3サイクル通過させ、繊維状炭素ナノ構造体を水中に分散させた混合液を得た。
上述のように得られた混合液10gをキリヤマろ紙(No.5A、直径3cm)を用いて減圧ろ過し、ろ物を温度120℃の雰囲気下で60分間乾燥させて、シート状の導電性不織布(プレ不織布)を得た。得られたプレ不織布の密度は0.95g/cm3だった。
上述のように得られたプレ不織布を、UV照射コンベア装置(アイグラフィックス株式会社製:ECS-401XN2-1401)を用いて、高圧水銀ランプH04-L41、出力4kW、速度5m/分、2サイクルのUV照射を行った。その際、UV照射時の空気の風量は、総排風量6m3/分以下、炉体内排風5m3/分、炉体内送風6m3/分以下の条件下にて、上部ダクト吐出口Φ173、60.00r/分(Hz)として、風量約4.5m3/分に調整して還元を行った。こうして、プレ不織布に含まれる酸化グラフェンを還元し、実施例1に係る導電性不織布を得た。得られた不織布の密度は、0.16g/cm3であった。得られた不織布の面方向の熱伝導率、厚み方向の熱伝導率、密度、耐粉落ち性を表1に示す。なお、表1において、不織布の組成は質量部単位で示してある。
実施例1と同様に、実施例2に係る不織布を作製した。ただし、粗分散液に添加する酸化グラフェンの分散液の量を1250gとした。その他の条件は実施例1と全て同じである。得られた不織布の面方向の熱伝導率、厚み方向の熱伝導率、密度、耐粉落ち性を表1に示す。
実施例1と同様に、実施例3に係る不織布を作製した。ただし、粗分散液に添加する酸化グラフェンの分散液の量を25gとした。その他の条件は実施例1と全て同じである。得られた不織布の面方向の熱伝導率、厚み方向の熱伝導率、密度、耐粉落ち性を表1に示す。
実施例1と同様に、実施例4に係る不織布を作製した。ただし、粗分散液に酸化グラフェンの分散液を投入した後、湿式ジェットミルによる分散工程を行わなかった。その他の条件は実施例1と全て同じである。得られた不織布の面方向の熱伝導率、厚み方向の熱伝導率、密度、耐粉落ち性を表1に示す。
実施例1と同様に、実施例5に係る不織布を作製した。ただし、還元工程の回数を1回(1サイクル)とした。その他の条件は実施例1と全て同じである。得られた不織布の面方向の熱伝導率、厚み方向の熱伝導率、密度、耐粉落ち性を表1に示す。
実施例1と同様に、比較例1に係る不織布を作製した。ただし、プレ不織布に対して還元工程を行わなかった。その他の条件は実施例1と全て同じである。得られた不織布の面方向の熱伝導率、厚み方向の熱伝導率、密度、耐粉落ち性を表1に示す。
実施例1と同様に、比較例2に係る不織布を作製した。ただし、実施例1における粗分散液をそのまま濾過して不織布とした。その他の条件は実施例1と全て同じである。得られた不織布の面方向の熱伝導率、厚み方向の熱伝導率、密度、耐粉落ち性を表1に示す。
比較例2と同様に、比較例3に係る不織布を作製した。ただし、得られた不織布の片面に対して、刷毛を用いて、フッ素ゴム(ダイキン工業株式会社製、Daiel-G912)50gを、100gのメチルエチルケトンに溶解させた樹脂溶液を塗布量50g/m2で塗布した。次いで、100℃雰囲気下で30分乾燥させて、不織布の片面に樹脂層を形成した。さらに、不織布のもう一方の面にも同様にして上記樹脂溶液を塗布し、乾燥させて樹脂層を形成し、そして室温まで冷却して両面に樹脂層を有する不織布を得た。得られた不織布の面方向の熱伝導率、厚み方向の熱伝導率、密度、耐粉落ち性を表1に示す。
実施例1と同様に、比較例4に係る不織布を作製した。ただし、酸化グラフェンに代えて、ただし、酸化グラフェン分散液の代わりに粉末の未修飾グラフェン(製品名GNH-XZ、グラフェンプラットホーム http://grapheneplatform.com/jp/products/powder/)を1.25g添加した。その他の条件は実施例1と全て同じである。得られた不織布の面方向の熱伝導率、厚み方向の熱伝導率、密度、耐粉落ち性を表1に示す。
実施例1と同様に、比較例5に係る不織布の作製を試みた。ただし、繊維状炭素ナノ構造体として、多層CNT(KUMHOPETROCHEMICAL社製、商品名「K-NANO」、平均繊維径:13nm、平均繊維長:30μm、BET比表面積:266m2/g)を用いた。その他の条件は実施例1と全て同じである。しかし、還元工程において繊維が切断されてバラバラになり、不織布が得られなかった。
表1に示すように、実施例1~5に係る不織布は、比較例1~5に係る不織布よりも熱伝導率の異方性が大きいことが分かる。なお、比較例5については、不織布を得ることができなかった。
Claims (8)
- 繊維状炭素ナノ構造体とグラフェンとを含み、
厚み方向の熱伝導率に対する面方向の熱伝導率の比が30以上であり、密度が0.50g/cm3以下であることを特徴とする不織布。 - 前記繊維状炭素ナノ構造体の比表面積が400m2/g以上である、請求項1に記載の不織布。
- 厚み方向の熱伝導率が0.1W/m・K以下である、請求項1または2に記載の不織布。
- 面方向の熱伝導率が1W/m・K以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の不織布。
- 前記グラフェンの含有量が、前記繊維状炭素ナノ構造体100質量部に対して、100質量部以上5000質量部以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の不織布。
- 繊維状炭素ナノ構造体(ただし、「カチオン性に機能化された繊維状炭素ナノ構造体」を除く。)を分散媒に分散させて粗分散液を調製する粗分散液調製工程と、
前記粗分散液と酸化グラフェンとを混合して混合液を調製する混合液調製工程と、
前記混合液から分散媒を除去してプレ不織布とするプレ不織布形成工程と、
前記プレ不織布を還元して不織布を得る還元工程と、
を含み、(ただし、「前記混合液調製工程と前記プレ不織布形成工程との間に、前記繊維状炭素ナノ構造体が正に帯電するように前記混合液のpHを調整するpH調整工程」を含む場合を除く)
前記還元工程を複数回行うことを特徴とする不織布の製造方法。 - 前記混合液調製工程と、前記プレ不織布形成工程との間に、前記混合液を分散処理する分散工程を更に備える、請求項6に記載の不織布の製造方法。
- 前記繊維状炭素ナノ構造体の比表面積が400m2/g以上である、請求項6または7に記載の不織布の製造方法。
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