電解質膜には、一般的に、強酸性のスルホン酸基が存在する。そこで、特許文献2では、正電位が与えられるアノードの電極材料の一例として、チタンが提案されている。この理由は、チタン電位が正電位において、チタンにTiO2の緻密な薄膜が形成されるからである。これにより、アノードが、高い耐食性を備える。
しかし、図1で示された「電位-pH図」によれば、pHがゼロ付近で、チタン電位が約マイナス0.4V(-0.4V)程度の負電位になるとき、チタンのイオン状態であるTi3+またはTi2+が安定であることが知られており、その結果、チタンが水に溶出しやすくなる。
ここで、電気化学式の圧縮機においては、アノードおよびカソード間で電圧が印加されていない場合、圧縮機のアノードおよびカソードのそれぞれの水素分圧に起因して、アノード電位が負電位になる可能性がある。例えば、カソードに存在するガスが外部に放出され、カソード圧が外気圧と同程度に低下した後において、カソードに侵入する外気量の方がアノードに侵入する外気量よりも多くなる可能性がある。これにより、アノードの水素分圧が、カソードの水素分圧よりも高くなることで、アノード電位が負電位になる可能性がある。すると、特許文献2の如く、アノードガス拡散層をチタン粉末で構成する場合、チタンの水への溶出により、電解質膜中のスルホン酸基にチタンイオンが修飾する可能性がある。これにより、電解質膜のプロトン導電性が不可逆的に低下する可能性がある。
また、チタン表面に、メッキまたはCVDコートなどを用いて、酸性状態において水への溶出が起きにくい貴金属の被覆を形成した場合であっても、チタン表面への貴金属の完全な被覆は困難であると考えられる。そして、この被膜中にピンホールが存在すると、ピンホールを介してチタンの水への溶出が起き、チタンイオンが電解質膜中のスルホン酸基とイオン交換し、電解質膜の劣化が進行する可能性がある。
なお、以上の現象は、アノードガス拡散層をチタン以外の金属を含む電極材料で構成する場合であっても同様に観察されることがある。このような電極材料の具体例は、実施形態で説明する。
そこで、本開示者らは、このような事情に鑑みて鋭意検討した結果、アノードおよびカソード間の電圧制御を用いて、以上の問題を改善し得ることを見出して、以下の本開示の一態様に想到した。
すなわち、本開示の第1態様の水素システムは、電解質膜、電解質膜の一方の主面上に設けられたアノード触媒層、電解質膜の他方の主面上に設けられたカソード触媒層、アノード触媒層上に設けられ、金属を含む多孔体シートを含むアノードガス拡散層、およびカソード触媒層上に設けられたカソードガス拡散層を含む、少なくとも1つのセルと、アノード触媒層およびカソード触媒層の間に電圧を印加する電圧印加器と、を備え、電圧印加器により電圧を印加することで、アノードに供給される水素含有ガス中の水素を、電解質膜を介してカソードに移動させ、圧縮水素を生成する圧縮機と、停止後または起動時に、電圧印加器により上記電圧を印加させる制御器と、を備える。
かかる構成によると、本態様の水素システムは、従来に比べて電解質膜の劣化を抑制し得る。具体的には、本態様の水素システムは、停止後または起動の適時に、電圧印加器によりアノード触媒層およびカソード触媒層の間に電圧を印加することで、かかる電圧制御を行わない場合に比べて、圧縮機のアノード電位が負電位化しにくくなる。すると、本態様の水素システムは、多孔体シートに含まれる金属の水への溶出を抑制することができる。これにより、本態様の水素システムは、電解質膜中のスルホン酸基に金属イオンが修飾する可能性を低減することができるので、従来に比べて電解質膜の劣化が抑制される。
停止後または起動時において、アノードの水素分圧が、カソードの水素分圧よりも高くなる可能性がある。例えば、停止後において、仮に、アノードに外部から混入する外気量よりもカソードに外部から混入する外気量が多くなると、アノードの水素分圧がカソードの水素分圧よりも高くなる可能性がある。すると、アノードガス拡散層に含まれる金属のイオンが溶出することで、金属イオンが電解質膜中のスルホン酸基のプロトンとイオン交換する可能性がある。その結果、電解質膜が劣化する可能性がある。
そこで、本態様の水素システムは、停止後または起動時において、電圧印加器により上記電圧を印加させることで、かかる電圧制御を行わない場合に比べて、金属イオンの溶出が抑制され、その結果、金属イオンが電解質膜中のスルホン酸基のプロトンとイオン交換することが抑制される。これにより、電解質膜が劣化しにくくなる。
本開示の第2態様の水素システムは、第1態様の水素システムにおいて、アノードへの水素含有ガスの供給を停止した後に、制御器は、電圧印加器により上記電圧を印加させてもよい。
本態様の水素システムは、停止後において、アノードへの水素含有ガスの供給を停止した後に、電圧印加器により上記電圧を印加させることで、かかる電圧制御を行わない場合に比べて、金属イオンの溶出が抑制され、その結果、金属イオンが電解質膜中のスルホン酸基のプロトンとイオン交換することが抑制される。これにより、電解質膜が劣化しにくくなる。
本開示の第3態様の水素システムは、第1態様の水素システムにおいて、カソードからカソードオフガスを水素需要体と異なる排出先に排出した後に、制御器は、電圧印加器により上記電圧を印加させてもよい。
停止後において、カソードからカソードオフガスを水素需要体と異なる排出先に排出した後に、アノードの水素分圧が、カソードの水素分圧よりも高くなる可能性がある。例えば、仮に、カソードからカソードオフガスを水素需要体と異なる排出先に排出した後、アノードに外部から混入する外気量よりもカソードに外部から混入する外気量が多くなると、アノードの水素分圧がカソードの水素分圧よりも高くなる可能性がある。すると、アノードガス拡散層に含まれる金属のイオンが溶出することで、金属イオンが電解質膜中のスルホン酸基のプロトンとイオン交換する可能性がある。その結果、電解質膜が劣化する可能性がある。
そこで、本態様の水素システムは、停止後において、カソードからカソードオフガスを水素需要体と異なる排出先に排出した後に、電圧印加器により上記電圧を印加させることで、かかる電圧制御を行わない場合に比べて、金属イオンの溶出が抑制され、その結果、金属イオンが電解質膜中のスルホン酸基のプロトンとイオン交換することが抑制される。これにより、電解質膜が劣化しにくくなる。
本開示の第4態様の水素システムは、第1態様から第3態様のいずれか一つの水素システムにおいて、金属は、チタンを含むものであってもよい。
かかる構成によると、本態様の水素システムは、多孔体シートをチタンで構成することにより、チタン電位が正電位において、チタンにTiO2の緻密な薄膜が形成される。これにより、本態様の水素システムは、酸性環境下で耐食性が高いアノードガス拡散層を得ることができる。
本開示の第5態様の水素システムは、第1態様から第4態様のいずれか一つの水素システムにおいて、制御器は、停止後に、運転中に印加される最大電圧よりも小さい電圧を電圧印加器により印加させてもよい。
かかる構成によると、本態様の水素システムは、停止後に、電解質膜の劣化を抑制するためにアノード触媒層およびカソード触媒層の間に印加する電圧として、運転中に、これらに印加される最大電圧(以下、最大電圧)よりも小さい電圧を選択することにより、停止後に、両者間に最大電圧を印加する場合に比べて、電圧印加器で消費される電力を削減することができる。
本開示の第6態様の水素システムは、第1態様から第3態様のいずれか一つの水素システムにおいて、制御器は、停止後に、カソード圧が水素需要体への圧縮水素の供給圧に到達した時の印加電圧よりも小さい電圧を電圧印加器により印加させてもよい。
かかる構成によると、本態様の水素システムは、停止後に、電解質膜の劣化を抑制するためにアノード触媒層およびカソード触媒層の間に印加する電圧として、カソード圧が水素需要体への圧縮水素の供給圧に到達した時の印加電圧よりも小さい電圧を選択することにより、停止後に、両者間に、かかる印加電圧を印加する場合に比べて、電圧印加器で消費される電力を削減することができる。
ところで、電気化学式の圧縮機においては、停止後に、電解質膜の劣化を抑制するための電圧をアノード触媒層およびカソード触媒層の間に印加する場合、電解質膜を介してアノードからカソードに水素が移動する。すると、アノードに存在する水素量の減少に伴いアノード内の圧力が減少するので、アノードが負圧化する可能性がある。そして、アノードの負圧化により、仮にアノードに外部から空気が侵入する場合、圧縮機のセルが劣化する可能性がある。
そこで、本開示の第7態様の水素システムは、第1態様から第6態様のいずれか一つの水素システムにおいて、アノードに供給される水素含有ガスの流量を調整する流量調整器を備え、停止後に電圧印加器により電圧を印加させているとき、制御器は、流量調整器を制御し、運転中にアノードに供給される水素含有ガスの流量よりも小さい流量で、アノードに水素含有ガスを供給させてもよい。
かかる構成によると、本態様の水素システムは、停止後に、電解質膜の劣化を抑制するためにアノード触媒層およびカソード触媒層の間に電圧を印加する際、電解質膜を介してアノードからカソードに水素が移動しても、流量調整器を用いて、アノードに水素含有ガスを投入するができる。すると、停止後に、アノードが負圧化する可能性が低減される。
また、本態様の水素システムは、停止後には、圧縮機のカソードから水素需要体に、カソードで生成された圧縮水素が供給されないので、アノードに投入される水素含有ガスの流量を運転中にアノードに供給される水素含有ガスの流量よりも小さくすることができる。
本開示の第8態様の水素システムは、第1態様から第6態様のいずれか一つの水素システムにおいて、アノードに供給される水素含有ガスの流量を調整する流量調整器を備え、停止後に電圧印加器により電圧を印加させているとき、制御器は、流量調整器を制御し、アノードへ水素含有ガスを供給しなくてもよい。
かかる構成によると、本態様の水素システムは、第7態様の水素システムに比べて、水素含有ガスの供給源からの水素含有ガスの消費量を低減することができる。水素含有ガスの供給源は、水素タンク、水素インフラ、水電解装置などが例示される。
ところで、電気化学式の圧縮機においては、停止後に、カソードおよびアノード間の差圧によって電解質膜を介してカソードからアノードに水素が移動するので、圧縮機のカソードに存在する圧縮水素の圧力を所望の値に維持できない可能性がある。
そこで、本開示の第9態様の水素システムは、第1態様から第8態様のいずれか一つの水素システムにおいて、制御器は、停止後に、電解質膜を介してカソードからアノードに戻る水素量に相当する量の水素をアノードからカソードに移動させるのに必要な電圧を電圧印加器により印加させてもよい。
かかる構成によると、本態様の水素システムは、停止後に、電解質膜の劣化を抑制するためにアノード触媒層およびカソード触媒層の間に印加する電圧を、カソードおよびアノードの差圧によって電解質膜を介してカソードからアノードに移動する水素量を考慮して、上記の如く設定することにより、停止後に、圧縮機のカソードに存在する圧縮水素の圧力を所望の値に維持することができる。
本開示の第10態様の水素システムは、第1態様から第9態様のいずれか一つの水素システムにおいて、圧縮機のカソードから排出されたカソードオフガスをアノードに供給するための第1流路と、第1流路に設けられた第1開閉弁と、圧縮機のアノードから排出されたアノードオフガスが流れる第2流路と、第2流路に設けられた第2開閉弁と、を備え、停止後に電圧印加器により電圧を印加する以前または電圧を印加しているときに、制御器は、第1開閉弁を開放させ、第2開閉弁を閉止させてもよい。
かかる構成によると、本態様の水素システムは、停止後に、第1開閉弁を開放させることで、第1流路を介して、圧縮機のカソードに存在するカソードオフガスと、圧縮機のアノードに存在するアノードガスとを混合することができる。すると、システム停止後であって、カソードに存在するガス放出後において、カソードに侵入する外気量の方がアノードに侵入する外気量よりも多い場合でも、アノードの水素分圧およびカソードの水素分圧の差が減少する。
そして、本態様の水素システムは、第1開閉弁が開放され、第2開閉弁が閉止されるとともに、電圧印加器によりアノード触媒層およびカソード触媒層の間に電圧が印加されることで、圧縮機のアノードおよびカソードのそれぞれに存在するガスが、圧縮機内および第1流路を循環するので、アノードおよびカソードのそれぞれの水素分圧の差がさらに小さくなる。
以上により、本態様の水素システムは、アノード電位が負電位化しにくくなるので、電解質膜の劣化が抑制される。また、本態様の水素システムは、電解質膜におけるアノード側の主面領域とカソード側の主面領域との間の乾湿差が速やかに減少するので、電解質膜の機械的な劣化が抑制される。
本開示の第11態様の水素システムは、第1態様から第10態様のいずれか一つの水素システムにおいて、制御器は、停止後に、運転中に印加される最大電圧の1/10以下の電圧を電圧印加器により印加させてもよい。
かかる構成によると、本態様の水素システムは、停止後に、電解質膜の劣化を抑制するためにアノード触媒層およびカソード触媒層の間に印加する電圧として、最大電圧の1/10以下の電圧を選択することにより、停止後に、両者間に最大電圧の1/10を上回る電圧を印加する場合に比べて、電圧印加器で消費される電力を削減することができる。
本開示の第12態様の水素システムは、第1態様から第10態様のいずれか一つの水素システムにおいて、制御器は、停止後に、電圧印加器により1セル当たり0.1V以下の電圧を印加させてもよい。
かかる構成によると、本態様の水素システムは、停止後に、電解質膜の劣化を抑制するためにアノード触媒層およびカソード触媒層の間に印加する電圧として、1セル当たり0.1V以下の電圧を選択することにより、停止後に、両者間に1セル当たり0.1Vを上回る電圧を印加する場合に比べて、電圧印加器で消費される電力を削減することができる。
本開示の第13態様の水素システムは、第1態様から第12態様のいずれか一つの水素システムにおいて、停止後に電圧印加器により印加される電圧は、停止後に電圧印加器により電圧を印加しない場合に想定される圧縮機のアノード電位を0V以上にするのに必要な電圧であってもよい。
かかる構成によると、本態様の水素システムは、停止後に、電解質膜の劣化を抑制するためにアノード触媒層およびカソード触媒層の間に印加する電圧として、停止後に電圧印加器によりこれらの間に電圧を印加しない場合に想定される圧縮機のアノード電位を0V以上にするのに必要な電圧を選択することにより、停止後に、両者間に、かかる必要な電圧を下回る電圧を印加する場合に比べて、アノード電位が負電位化しにくくなるので、多孔体シートに含まれる金属の水への溶出を抑制することができる。つまり、電解質膜の劣化をより抑制できる。
ここで、水素システムの起動時に、アノードおよびカソード間に電圧を印加すると、アノードの電位がTi3+またはTi2+などのチタンイオンの溶出電位以下になりにくいが、どのようなタイミングで、アノードおよびカソード間に電圧を印加することが望ましいかについては、従来例では十分に検討されていない。
具体的には、図1には、Ti3+の活量が1×10-6mol/Lと仮定した、25℃の水中における一般的な「チタンのpH-電位図」の計算結果が示されているに過ぎない。よって、本開示者らは、図1に示す一般的な「チタンのpH-電位図」の計算結果に基づいて、水素システムの起動時に適切なタイミングでアノードおよびカソード間に電圧を印加することが困難であると考えた。なお、かかる判断に至った経緯は、実施形態の検証実験で説明する。
すなわち、本開示の第14態様の水素システムは、第1態様の水素システムにおいて、制御器は、起動時において水素含有ガスがアノードに供給されていないとき、電圧印加器により上記電圧を印加させてもよい。
かかる構成によると、本態様の水素システムは、従来に比べて電解質膜の劣化を抑制し得る。具体的には、水素システムの起動時において水素含有ガスがアノードに供給されていないときであっても、アノードの水素分圧が、カソードの水素分圧よりも高くなる可能性がある。例えば、仮に、水素システムの停止後において、アノードに外部から混入する外気量よりもカソードに外部から混入する外気量が多くなると、アノードの水素分圧がカソードの水素分圧よりも高くなる可能性がある。すると、アノードガス拡散層に含まれる金属のイオンが溶出することで、金属イオンが電解質膜中のスルホン酸基のプロトンとイオン交換する可能性がある。その結果、電解質膜が劣化する可能性がある。
そこで、本態様の水素システムは、起動時において水素含有ガスがアノードに供給されていないとき、電圧印加器により上記電圧を印加させることで、かかる電圧制御を行わない場合に比べて、金属イオンの溶出が抑制され、その結果、金属イオンが電解質膜中のスルホン酸基のプロトンとイオン交換することが抑制される。これにより、電解質膜が劣化しにくくなる。
本開示の第15態様の水素システムは、第1態様の水素システムにおいて、起動時においてアノードに水素含有ガスを供給する際、アノードの電位が、アノードガス拡散層に含まれる金属のイオンが溶出する所定の電位よりも大きいときに、または上記所定の電位以下になってから所定時間以内に、制御器は、電圧印加器により上記電圧を印加させてもよい。
かかる構成によると、本態様の水素システムは、従来に比べて電解質膜の劣化を抑制し得る。具体的には、水素システムの停止後において、カソードに外部からの混入する外気量が多くなると、起動時においてアノードに水素含有ガスを供給していると、時間の経過に伴い、アノードの水素分圧がカソードの水素分圧よりも高くなる可能性がある。そこで、アノードの電位が、金属のイオンが溶出する電位以下よりも大きいときに、換言すれば、アノードの電位が、金属のイオンが溶出する電位以下になる前に、電圧印加器により上記電圧を印加させることで、かかる電圧制御を行わない場合に比べて、アノードの電位が、金属イオンが溶出する電位以下になることが抑制される。これにより、電解質膜が劣化しにくくなる。
また、本態様の水素システムは、起動時においてアノードに水素含有ガスを供給する際、アノードの電位が、金属イオンが溶出する電位以下になってから所定時間以内に、電圧印加器により上記電圧を印加させることで、かかる電圧制御を行わない場合に比べて、アノードの電位が、金属イオンが溶出する電位以下である期間を短縮することができる。これにより、電解質膜の劣化進行が適切に抑制される。
本開示の第16態様の水素システムは、第1態様、第14態様および第15態様のいずれか一つの水素システムにおいて、上記金属が、チタンを含むものであってもよい。
かかる構成によると、本態様の水素システムは、多孔体シートをチタンで構成することにより、チタン電位が正電位において、チタンにTiO2の緻密な薄膜が形成される。これにより、本態様の水素システムは、酸性環境下で耐食性が高いアノードガス拡散層を得ることができる。
本開示の第17態様の水素システムは、第1態様、第14態様-第16態様のいずれか一つの水素システムにおいて、電圧印加器により上記電圧が印加される前に、カソードに窒素または空気が充填されていてもよい。
カソードに窒素または空気が充填されていると、アノードの水素分圧が、カソードの水素分圧よりも高くなる可能性がある。すると、アノードガス拡散層に含まれる金属のイオンが溶出することで、金属イオンが電解質膜中のスルホン酸基のプロトンとイオン交換する可能性がある。その結果、電解質膜が劣化する可能性がある。
そこで、本態様の水素システムは、起動時において、カソードに窒素または空気が充填されているとき、電圧印加器により上記電圧を印加させる。すると、かかる電圧制御を行わない場合に比べて、金属イオンの溶出が抑制され、その結果、金属イオンが電解質膜中のスルホン酸基のプロトンとイオン交換することが抑制される。これにより、電解質膜が劣化しにくくなる。
本開示の第18態様の水素システムは、第15態様の水素システムにおいて、起動時においてアノードに加湿された水素含有ガスが供給されているとき、制御器は、セルに流れる電流密度が、圧縮運転時の目標電流密度よりも小さい第1の閾値以下、かつ、カソードの圧力が、圧縮運転時の目標圧力よりも小さい第2の閾値以下を維持されるよう電圧印加器を制御してもよい。
水素システムが起動する際、電解質膜が乾燥している場合、電解質膜の含水率を適正値にまで上昇させずに、セルに流れる電流密度が第1の閾値を超えると、電解質膜が局所的に乾燥している部分において電解質膜が高温化して劣化する可能性がある。
また、水素システムが起動する際、電解質膜が乾燥している場合、電解質膜の含水率を適正値にまで上昇させずに、カソードの圧力が第2の閾値を超えると、電解質膜の破膜が発生する可能性がある。
そこで、本態様の水素システムは、起動時に、セルに流れる電流密度およびカソードの圧力のそれぞれを第1の閾値以下および第2の閾値以下のそれぞれに維持する動作を行いながら、水素含有ガス中の水によって電解質膜の含水率が適正値にまで上昇させることで、以上の可能性を低減させることができる。
本開示の第19態様の水素システムは、第18態様の水素システムにおいて、セルに流れる電流密度を第1の閾値以下、かつ、カソードの圧力を第2の閾値以下を維持するために電圧印加器より印加される電圧が低下すると、制御器は、セルに流れる電流密度およびカソードの圧力の少なくとも一方が上昇するよう電圧印加器の印加電圧を増加させてもよい。
電解質膜の含水率の上昇は、例えば、電圧印加器の印加電圧の低下により確認することができる。そこで、本態様の水素システムは、セルに流れる電流密度およびカソードの圧力のそれぞれを第1の閾値以下および第2の閾値以下のそれぞれに維持する動作において、電圧印加器による印加電圧が低下すると、セルに流れる電流密度およびカソードの圧力の少なくとも一方が上昇するよう電圧印加器の印加電圧を増加させている。これにより、本態様の水素システムは、電解質膜の含水率の上昇に伴って適時に、セルに流れる電流密度およびカソードの圧力の少なくとも一方を上昇させることができる。
本開示の第20態様の水素システムの運転方法は、電解質膜を挟んで設けられた、金属を含む多孔体シートを含むアノードガス拡散層を含むアノードとカソードの間に電圧を印加することによりアノードに供給された水素含有ガス中の水素をカソードに移動させ、圧縮水素を生成するステップと、停止後または起動時に、アノードとカソードの間に電圧を印加するステップと、を備える。
以上により、本態様の水素システムの運転方法は、従来に比べて電解質膜の劣化を抑制し得る。なお、本態様の水素システムの運転方法が奏する作用効果の詳細は、上記の水素システムが奏する作用効果と同様であるので説明を省略する。
本開示の第21態様の水素システムの運転方法は、第20態様の水素システムの運転方法において、アノードへの水素含有ガスの供給を停止した後に、アノードとカソードの間に電圧を印加してもよい。
本態様の水素システムの運転方法が奏する作用効果は、上記の水素システムが奏する作用効果と同様であるので説明を省略する。
本開示の第22態様の水素システムの運転方法は、第20態様の水素システムの運転方法において、カソードからカソードオフガスを水素需要体と異なる排出先に排出した後に、アノードとカソードの間に電圧を印加してもよい。
本態様の水素システムの運転方法が奏する作用効果は、上記の水素システムが奏する作用効果と同様であるので説明を省略する。
本開示の第23態様の水素システムの運転方法は、第20態様の水素システムの運転方法において、起動時において水素含有ガスがアノードに供給されていないとき、アノードとカソードの間に電圧を印加してもよい。
本態様の水素システムの運転方法が奏する作用効果は、上記の水素システムが奏する作用効果と同様であるので説明を省略する。
本開示の第24態様の水素システムの運転方法は、第20態様の水素システムの運転方法において、起動時においてアノードに水素含有ガスを供給する際、アノードの電位が、アノードガス拡散層に含まれる金属のイオンが溶出する所定の電位よりも大きいときに、または上記所定の電位以下になってから所定時間以内に、アノードとカソードの間に電圧を印加してもよい。
本態様の水素システムの運転方法が奏する作用効果は、上記の水素システムが奏する作用効果と同様であるので説明を省略する。
以下、添付図面を参照しつつ、本開示の実施形態について説明する。以下で説明する実施形態は、いずれも上記の各態様の一例を示すものである。よって、以下で示される数値、形状、材料、構成要素、および、構成要素の配置位置および接続形態などは、あくまで一例であり、請求項に記載されていない限り、上記の各態様を限定するものではない。また、以下の構成要素のうち、本態様の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、図面において、同じ符号が付いたものは、説明を省略する場合がある。図面は理解しやすくするために、それぞれの構成要素を模式的に示したもので、形状および寸法比などについては正確な表示ではない場合がある。また、運転方法においては、必要に応じて、ステップの順番を入れ替えてもよいし、公知のステップを追加してもよい。
(第1実施形態)
以下の実施形態では、上記各態様の圧縮機の一例である電気化学式水素ポンプを備える水素システムの構成および動作について説明する。
[水素システムの構成]
図2は、第1実施形態の水素システムの一例を示す図である。
図2に示す例では、本実施形態の水素システム200は、電気化学式水素ポンプ100と、制御器50と、を備える。
電気化学式水素ポンプ100は、電圧印加器102によりアノード触媒層13およびカソード触媒層12(図3Bおよび図4B参照)の間に電圧を印加することで、アノードANに供給される水素含有ガス中の水素を、電解質膜11を介してカソードCAに移動させ、圧縮水素を生成する装置である。電気化学式水素ポンプ100は、複数のMEA(セル)を積層したスタックを含んでもよい。電気化学式水素ポンプ100の詳細な構成は後で説明する。
なお、水素含有ガスとして、例えば、メタンガスなどの改質反応により発生する低圧状態の改質ガス、水の電気分解により発生する水蒸気を含む低圧状態の水素ガスなどを挙げることができる。
制御器50は、停止後または起動時に、電圧印加器102によりアノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に電圧を印加させる。制御器50は、水素システム200の全体の動作を制御してもよい。
ここで、水素システム200の「停止」とは、電気化学式水素ポンプ100のカソードCAから水素需要体に、カソードCAで生成された圧縮水素を供給するための圧縮運転の停止のことをいう。なお、水素需要体として、例えば、水素貯蔵器、燃料電池、水素インフラの配管などを挙げることができる。また、水素貯蔵器として、例えば、水素ステーションに設置されたディスペンサー、水素タンクなどを挙げることができる。
また、水素システム200の「起動時」とは、水素システム200に設けられた弁、ポンプ等の補機の動作が開始され、電気化学式水素ポンプ100の電気化学セル100Bに流れる電流が、水素システム200の圧縮運転時の目標電流になるまでの動作のことをいう。「圧縮運転時」とは、電気化学式水素ポンプ100のカソードCAから水素需要体にカソードCAで生成された圧縮水素を供給するための動作中のことをいう。
なお、水素システム200の「起動」は、制御器50に適宜の起動信号が入力されるタイミングで開始してもよい。具体的には、例えば、操作者が入力器(図示せず)を介して起動要求をすると、制御器50に起動信号が入力される。入力器は、水素システム200に設けられてもいいし、水素システム200に設けられていない外部の入力器(例えば、スマートフォン等の携帯端末)であってもよい。また、水素システム200の「起動」が終了すると、適時に、カソードCAで生成された圧縮水素の水素需要体に対する供給(圧縮運転)が開始されてもよい。
制御器50は、例えば、演算回路と、制御プログラムを記憶する記憶回路と、を備える。演算回路として、例えば、MPU、CPUなどを挙げることができる。記憶回路として、例えば、メモリなどを挙げることができる。制御器50は、集中制御を行う単独の制御器で構成されていてもよいし、互いに協働して分散制御を行う複数の制御器で構成されていてもよい。
[電気化学式水素ポンプの構成]
図3Aおよび図4Aは、第1実施形態の水素システムの電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。図3Bは、図3Aの電気化学式水素ポンプのB部の拡大図である。図4Bは、図4Aの電気化学式水素ポンプのB部の拡大図である。
なお、図3Aには、平面視において電気化学式水素ポンプ100の中心と、カソードガス導出マニホールド28の中心と、を通過する直線を含む電気化学式水素ポンプ100の垂直断面が示されている。また、図4Aには、平面視において電気化学式水素ポンプ100の中心と、アノードガス導入マニホールド27の中心と、アノードガス導出マニホールド30の中心と、を通過する直線を含む電気化学式水素ポンプ100の垂直断面が示されている。
電気化学式水素ポンプ100は、少なくとも一つの電気化学セル100Bを備える。図3Bおよび図4Bに示すように、電気化学セル100Bは、電解質膜11と、アノードANと、カソードCAと、を含み、水素ポンプユニット100Aにおいて、電解質膜11、アノード触媒層13、カソード触媒層12、アノードガス拡散層15、カソードガス拡散層14、アノードセパレーター17およびカソードセパレーター16が積層されている。
なお、電気化学式水素ポンプ100では、3個の水素ポンプユニット100Aが積層されているが、水素ポンプユニット100Aの個数はこれに限定されない。つまり、水素ポンプユニット100Aの個数は、電気化学式水素ポンプ100が圧縮する水素量などの運転条件をもとに適宜の数に設定することができる。
アノードANは、電解質膜11の一方の主面に設けられている。アノードANは、アノード触媒層13およびアノードガス拡散層15を含む電極である。なお、平面視において、アノード触媒層13の周囲を囲むように環状のシール部材43が設けられ、アノード触媒層13が、シール部材43で適切にシールされている。
カソードCAは、電解質膜11の他方の主面に設けられている。カソードCAは、カソード触媒層12およびカソードガス拡散層14を含む電極である。なお、平面視において、カソード触媒層12の周囲を囲むように環状のシール部材42が設けられ、カソード触媒層12が、シール部材42で適切にシールされている。
以上により、電解質膜11は、アノード触媒層13およびカソード触媒層12のそれぞれと接触するようにして、アノードANとカソードCAとによって挟持されている。
電解質膜11はプロトン導電性を備える膜であれば、どのような構成であってもよい。例えば、電解質膜11として、スルホン酸修飾のフッ素系高分子電解質膜、炭化水素系電解質膜などを挙げることができる。具体的には、電解質膜11として、例えば、Nafion(登録商標、デュポン社製)、Aciplex(登録商標、旭化成株式会社製)などを用いることができるが、これらに限定されない。
アノード触媒層13は、電解質膜11の一方の主面に設けられている。アノード触媒層13は、触媒金属(例えば、白金)を分散状態で担持することができるカーボンを含むが、これに限定されない。
カソード触媒層12は、電解質膜11の他方の主面に設けられている。カソード触媒層12は、触媒金属(例えば、白金)を分散状態で担持することができるカーボンを含むが、これに限定されない。
カソード触媒層12もアノード触媒層13も、触媒の調製方法としては、種々の方法を挙げることができるが、特に限定されない。例えば、カーボン系粉末としては、黒鉛、カーボンブラック、導電性を有する活性炭などの粉末を挙げることができる。カーボン担体に、白金若しくは他の触媒金属を担持する方法は、特に限定されない。例えば、粉末混合または液相混合などの方法を用いてもよい。後者の液相混合としては、例えば、触媒成分コロイド液にカーボンなどの担体を分散させ、吸着させる方法などが挙げられる。白金などの触媒金属のカーボン担体への担持状態は、特に限定されない。例えば、触媒金属を微粒子化し、高分散で担体に担持してもよい。
カソードガス拡散層14は、カソード触媒層12上に設けられている。カソードガス拡散層は、多孔性材料で構成され、導電性およびガス拡散性を備える。カソードガス拡散層は、電気化学式水素ポンプ100の動作時にカソードCAおよびアノードAN間の差圧で発生する構成部材の変位、変形に適切に追従するような弾性を備える方が望ましい。カソードガス拡散層の基材として、例えば、カーボン繊維焼結体などを使用することができるが、これに限定されない。
アノードガス拡散層15は、アノード触媒層13上に設けられ、金属を含む多孔体シート15Sを含む。つまり、多孔体シート15Sは、金属材料で構成され、導電性およびガス拡散性を備える。また、多孔体シート15Sは、電気化学式水素ポンプ100の動作時に、上記の差圧による電解質膜11の押し付けに耐え得る程度の剛性を備える方が望ましい。
具体的には、多孔体シート15Sの素材として、チタンを使用することができるが、これに限定されない。例えば、多孔体シート15Sの素材として、チタンの他、クロム、ニッケル、タングステン、タンタル、鉄、マンガンなどの金属材料を用いることもできる。また、これらの金属内の2種類以上の合金化した合金鋼(例えば、ステンレス)、窒化物であるTiN、炭化物であるTiCなどを用いることもできる。ただし、多孔体シート15Sをチタンで構成することにより、チタン電位が正電位において、チタンにTiO2の緻密な薄膜が形成される。これにより、本実施形態の水素システム200は、酸性環境下で耐食性が高いアノードガス拡散層15を得ることができる。
また、アノードガス拡散層15は、2種類以上の多孔体シートが積層されてもよい。この場合、多孔体シートの層間は、拡散接合などで接合されていてもよい。例えば、アノードガス拡散層15のうちの電解質膜11側の多孔体シートがチタンで構成され、アノードセパレーター17側の多孔体シートがステンレスなどで構成されていてもよい。電解質膜11側の多孔体シートをチタンで構成すると、上記のとおり、酸性環境下で耐食性が高いアノードガス拡散層15を得ることができる。
さらに、アノードガス拡散層15は、アノード触媒層13およびアノードセパレーター17との間で所望の導電性を確保するために、多孔体シート15Sの少なくとも両主面に導電性コーティングが施されている。
例えば、メッキまたはCVDコートなどを用いて、多孔体シート15Sの両主面が、高導電性のシート状のコーティング膜で覆われていてもよいし、多孔体シート15Sを構成する電極粒子の表面が、高導電性のコーティング膜で覆われていてもよい。
このようなコーティング膜として、抵抗が小さい白金メッキ膜などを挙げることができるが、これに限定されない。例えば、コーティング膜の素材として、白金の他、金、ルテニウムなどの他の貴金属、ダイヤモンドライクカーボン、金属炭化物、金属窒化物などを用いることもできる。
なお、コーティング膜の厚みは、多孔体シート15Sの厚みの1/100以下に設定されていてもよい。このようなコーティング膜の厚みは、例えば、蛍光X線分析などで測定することができる。
アノードセパレーター17は、アノードANのアノードガス拡散層15上に設けられた部材である。カソードセパレーター16は、カソードCAのカソードガス拡散層14上に設けられた部材である。
そして、カソードセパレーター16およびアノードセパレーター17のそれぞれの中央部には、凹部が設けられている。これらの凹部のそれぞれに、カソードガス拡散層14およびアノードガス拡散層15がそれぞれ収容されている。
このようにして、カソードセパレーター16およびアノードセパレーター17で上記の電気化学セル100Bを挟むことにより、水素ポンプユニット100Aが形成されている。
カソードガス拡散層14と接触するカソードセパレーター16の主面は、カソードガス流路を設けずに平面で構成されている。これにより、カソードセパレーター16の主面にカソードガス流路を設ける場合に比べて、カソードガス拡散層14とカソードセパレーター16との間で接触面積を大きくすることができる。すると、電気化学式水素ポンプ100は、カソードガス拡散層14とカソードセパレーター16との間の接触抵抗を低減することができる。
これに対して、多孔体シート15Sと接触するアノードセパレーター17の主面には、平面視において、例えば、複数のU字状の折り返す部分と複数の直線部分とを含むサーペンタイン状のアノードガス流路33が設けられている。そして、アノードガス流路33の直線部分は、図4Aの紙面に垂直な方向に延伸している。但し、このようなアノードガス流路33は、例示であって、本例に限定されない。例えば、アノードガス流路は、複数の直線状の流路により構成されていてもよい。
また、導電性のカソードセパレーター16およびアノードセパレーター17の間には、電気化学セル100Bの周囲を囲むように設けられた環状かつ平板状の絶縁体21が挟み込まれている。これにより、カソードセパレーター16およびアノードセパレーター17の短絡が防止されている。
ここで、電気化学式水素ポンプ100は、水素ポンプユニット100Aにおける、積層方向の両端上に設けられた第1端板および第2端板と、水素ポンプユニット100A、第1端板および第2端板を積層方向に締結する締結器25と、を備える。
なお、図3Aおよび図4Aに示す例では、カソード端板24Cおよびアノード端板24Aがそれぞれ、上記の第1端板および第2端板のそれぞれに対応する。つまり、アノード端板24Aは、水素ポンプユニット100Aの各部材が積層された積層方向において、一方の端に位置するアノードセパレーター17上に設けられた端板である。また、カソード端板24Cは、水素ポンプユニット100Aの各部材が積層された積層方向において、他方の端に位置するカソードセパレーター16上に設けられた端板である。
締結器25は、水素ポンプユニット100A、カソード端板24Cおよびアノード端板24Aを積層方向に締結することができれば、どのような構成であってもよい。例えば、締結器25として、ボルトおよび皿ばね付きナットなどを挙げることができる。
図3Aに示すように、カソードガス導出マニホールド28は、3個の水素ポンプユニット100Aの各部材およびカソード端板24Cに設けられた貫通孔、および、アノード端板24Aに設けられた非貫通孔の連なりによって構成されている。また、カソード端板24Cには、カソードガス導出経路26が設けられている。カソードガス導出経路26は、カソードCAから排出されるカソードオフガスが流通する配管で構成されていてもよい。そして、カソードガス導出経路26は、上記のカソードガス導出マニホールド28と連通している。
さらに、カソードガス導出マニホールド28は、水素ポンプユニット100AのそれぞれのカソードCAと、カソードガス通過経路34のそれぞれを介して連通している。これにより、水素ポンプユニット100AのそれぞれのカソードCAで生成された圧縮水素は、カソードガス通過経路34のそれぞれを通過した後、カソードガス導出マニホールド28で合流される。そして、合流された圧縮水素がカソードガス導出経路26に導かれる。
このようにして、水素ポンプユニット100AのそれぞれのカソードCAは、水素ポンプユニット100Aのそれぞれのカソードガス通過経路34およびカソードガス導出マニホールド28を介して連通している。
カソードセパレーター16およびアノードセパレーター17の間、カソードセパレーター16およびカソード給電板22Cの間、アノードセパレーター17およびアノード給電板22Aの間には、平面視において、カソードガス導出マニホールド28を囲むように、Oリングなどの環状のシール部材40が設けられ、カソードガス導出マニホールド28が、このシール部材40で適切にシールされている。
図4Aに示すように、アノード端板24Aには、アノードガス導入経路29が設けられている。アノードガス導入経路29は、アノードANに供給される水素含有ガスが流通する配管で構成されていてもよい。そして、アノードガス導入経路29は、筒状のアノードガス導入マニホールド27に連通している。なお、アノードガス導入マニホールド27は、3個の水素ポンプユニット100Aの各部材およびアノード端板24Aに設けられた貫通孔の連なりによって構成されている。
また、アノードガス導入マニホールド27は、水素ポンプユニット100Aのそれぞれのアノードガス流路33の一方の端部と、第1アノードガス通過経路35のそれぞれを介して連通している。これにより、アノードガス導入経路29からアノードガス導入マニホールド27に供給された水素含有ガスは、水素ポンプユニット100Aのそれぞれの第1アノードガス通過経路35を通じて、水素ポンプユニット100Aのそれぞれに分配される。そして、分配された水素含有ガスがアノードガス流路33を通過する間に、アノードガス拡散層15からアノード触媒層13に水素含有ガスが供給される。
また、図4Aに示すように、アノード端板24Aには、アノードガス導出経路31が設けられている。アノードガス導出経路31は、アノードANから排出される水素含有ガスが流通する配管で構成されていてもよい。そして、アノードガス導出経路31は、筒状のアノードガス導出マニホールド30に連通している。なお、アノードガス導出マニホールド30は、3個の水素ポンプユニット100Aの各部材およびアノード端板24Aに設けられた貫通孔の連なりによって構成されている。
また、アノードガス導出マニホールド30が、水素ポンプユニット100Aのそれぞれのアノードガス流路33の他方の端部と、第2アノードガス通過経路36のそれぞれを介して連通している。これにより、水素ポンプユニット100Aのそれぞれのアノードガス流路33を通過した水素含有ガスが、第2アノードガス通過経路36のそれぞれを通じてアノードガス導出マニホールド30に供給され、ここで合流される。そして、合流された水素含有ガスが、アノードガス導出経路31に導かれる。
カソードセパレーター16およびアノードセパレーター17の間、カソードセパレーター16およびカソード給電板22Cの間、アノードセパレーター17およびアノード給電板22Aの間には、平面視において、アノードガス導入マニホールド27およびアノードガス導出マニホールド30を囲むようにOリングなどの環状のシール部材40が設けられ、アノードガス導入マニホールド27およびアノードガス導出マニホールド30が、シール部材40で適切にシールされている。
図2、図3Aおよび図4Aに示すように、電気化学式水素ポンプ100は、電圧印加器102を備える。
電圧印加器102は、アノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に電圧を印加する装置である。具体的には、電圧印加器102の高電位が、アノード触媒層13に印加され、電圧印加器102の低電位が、カソード触媒層12に印加されている。電圧印加器102は、アノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に電圧を印加できれば、どのような構成であってもよい。例えば、電圧印加器102は、アノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に印加する電圧を調整する装置であってもよい。このとき、電圧印加器102は、バッテリ、太陽電池、燃料電池などの直流電源と接続されているときは、DC/DCコンバータを備え、商用電源などの交流電源と接続されているときは、AC/DCコンバータを備える。
また、電圧印加器102は、例えば、水素ポンプユニット100Aに供給する電力が所定の設定値となるように、アノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に印加される電圧、アノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に流れる電流が調整される電力型電源であってもよい。
なお、図3Aおよび図4Aに示す例では、電圧印加器102の低電位側の端子が、カソード給電板22Cに接続され、電圧印加器102の高電位側の端子が、アノード給電板22Aに接続されている。カソード給電板22Cは、上記の積層方向において他方の端に位置するカソードセパレーター16とは電気的に接続されるとともに、カソード端板24Cとはカソード絶縁板23Cを介して配置されている。アノード給電板22Aは、上記の積層方向において一方の端に位置するアノードセパレーター17と電気的に接続されるとともに、アノード端板24Aとはアノード絶縁板23Aを介して配置されている。
ここで、図2、図3Aおよび図4Aには示されていないが、本実施形態の水素システム200の電気化学式水素ポンプ100の水素圧縮動作において必要となる部材および機器は適宜、設けられる。
例えば、水素システム200には、例えば、電気化学式水素ポンプ100の温度を検出する温度検出器、電気化学式水素ポンプ100のカソードCAで圧縮された水素の圧力を検出する圧力検出器などが設けられている。
また、水素システム200には、アノードガス導入経路29、アノードガス導出経路31およびカソードガス導出経路26の適所には、これらの経路を開閉するための弁などが設けられている。
以上の電気化学式水素ポンプ100の構成、および、水素システム200の構成は例示であって、本例に限定されない。例えば、電気化学式水素ポンプ100は、アノードガス導出マニホールド30およびアノードガス導出経路31を設けずに、アノードガス導入マニホールド27を通してアノードANに供給する水素含有ガス中の水素(H2)を全量、カソードCAで圧縮するデッドエンド構造が採用されてもよい。
[検証実験]
上記のとおり、図1には、Ti3+の活量が1×10-6mol/Lと仮定した、25℃の水中における一般的なチタンのpH-電位図の計算値が示されているに過ぎない。
これに対して、水素システム200の起動時には、電気化学式水素ポンプ100は、一般的に、セル温度が約50℃~80℃程度の高温に維持されている。また、電気化学式水素ポンプ100のアノードANでは、高加湿状態の水素含有ガスが流通している。このため、電気化学式水素ポンプ100の以上のような使用環境に対応する、チタンイオンの安定領域は、図1から正確に把握することが困難である。
そこで、チタンのテストピースを使用して、温度が約50℃~約80℃であって、pHが0.05の状態で、参照電極を基準とするチタン電位が、約-0.10Vおよび約-0.42Vのそれぞれの場合について、チタンイオン溶出の有無を確認するための検証実験を行った。
本検証実験によると、上記のいずれの場合でも、Ti表面に発生した腐食痕が反射電子像によって確認された。また、このとき、チタンのテストピースを浸した溶液中にはチタンが存在することが確認された。
以上の検証実験結果は、T3+が溶出する反応(TiO2+4H++e→Ti3++2H2O)に対応する、以下のネルンストの式(1)における定数「RT/zF」が、温度が約50℃~約80℃では、温度が25℃の場合に比べて大きいこと、および式(1)のTi3+の活量が図1の仮定条件とは異なることに起因する現象であると考えられる。
E=E0-2.303・RT/zF・(log[Ti3+]+2log[H2O]-4log[H+]-log[TiO2])・・・(1)
式(1)において、E0は標準酸化還元電位、Rは気体定数、Tは絶対温度、zは測定されるイオン電荷、Fはファラデー定数である。
ここで、本開示者らは、電気化学式水素ポンプ100の使用環境においては、式(1)における定数「RT/zF」とlog[Ti3+]との積は、一般的なチタン(Ti)のpH-電位図(図1)に比べて、縦軸の電位をプラス側にシフトさせるように作用するのではないかと考えた。
そこで、温度が65℃、約-0.1Vで腐食した上記検証実験の結果に基づいて、図5のチタン(Ti)のpH-電位図の如く、酸化チタン表面からTi3+が溶出する領域を太い直線(実線)で仮定した。すると、電解質膜11とチタン(TiO2)との接触境界付近において、pHがゼロである場合、ネルンストの式(1)におけるTi3+の活量は、約1×10-9mol/L~1×10-8mol/L程度ではないかと推測される。そして、この推測値は、電気化学式水素ポンプ100の使用環境において、水素含有ガスがアノードAN内を流通しているので、Ti3+の表面濃度が「1×10-6mol/L」よりも低濃度であることと整合する。
このように、アノードANの電位が、例えば、アノードANおよびカソードCAのそれぞれに存在する水素の分圧差に起因して、約-0.1V程度になった場合でも、チタンイオンが溶出する可能性があることが分かった。
[動作]
図6は、第1実施形態の水素システムの動作の一例を示すフローチャートである。
以下の動作は、例えば、制御器50の演算回路が、制御器50の記憶回路から制御プログラムを読み出すことにより行われてもよい。ただし、以下の動作を制御器50で行うことは、必ずしも必須ではない。操作者が、その一部の動作を行ってもよい。以下の例では、制御器50により動作を制御する場合について、説明する。
まず、ステップS1で、電気化学式水素ポンプ100のアノードANに低圧の水素含有ガスが供給されるとともに、電圧印加器102の電圧が電気化学式水素ポンプ100のアノード触媒層13とカソード触媒層12の間に印加される。すると、アノードANのアノード触媒層13において、水素分子がプロトンと電子とに分離する(式(2))。プロトンは電解質膜11内を伝導してカソード触媒層12に移動する。電子は電圧印加器102を介してカソード触媒層12に移動する。
そして、カソード触媒層12において、水素分子が再び生成される(式(3))。なお、プロトンが電解質膜11中を伝導する際に、所定水量の水が、電気浸透水としてアノードANからカソードCAにプロトンと同伴して移動することが知られている。
このとき、例えば、電気化学式水素ポンプ100のカソードCAで生成される圧縮水素が、カソードガス導出経路26を通じて、水素需要体に供給される場合、カソードガス導出経路26に設けられた背圧弁、調整弁などを用いて、カソードガス導出経路26の圧損を増加させることにより、カソードCAで圧縮水素(H2)を生成することができる。ここで、カソードガス導出経路26の圧損を増加させるとは、カソードガス導出経路26に設けられた背圧弁、調整弁の開度を小さくすることに対応する。
アノード:H2(低圧)→2H++2e- ・・・(2)
カソード:2H++2e-→H2(高圧) ・・・(3)
このようにして、水素システム200において、電解質膜11を挟んで設けられた、アノードANとカソードCAの間に電圧を印加することにより、アノードANに供給された水素含有ガス中の水素をカソードCAに移動させ、圧縮水素を生成する動作が行われる。この動作では、例えば、水素貯蔵器に圧縮水素を供給する前に、カソードCA内の圧縮水素は所定の供給圧まで昇圧され、その後、水素貯蔵器に圧縮水素を供給される。所定の供給圧は、40MPa、80MPaなどが例示される。
次に、電気化学式水素ポンプ100のカソードCAから水素需要体に、カソードCAで生成された圧縮水素を供給するための圧縮運転(以下、水素システム200の圧縮運転)が、例えば、以下の手順で行われる。
電気化学式水素ポンプ100のカソードCAで生成された圧縮水素は、カソードCAからカソードガス導出経路26を通じて電気化学式水素ポンプ100外へ排出される。例えば、カソードガス導出経路26を流れる圧縮水素が、水分および不純物などを除去された後、水素需要体の一例である水素貯蔵器に供給され、水素貯蔵器内に一時的に貯蔵されてもよい。水素貯蔵器で貯蔵された圧縮水素は、適時に、水素需要体の一例である燃料電池に供給されてもよい。なお、カソードCAで生成された圧縮水素は、水素貯蔵器を介さずに、直接、燃料電池に供給されてもよい。
次に、ステップS2で、水素システム200の圧縮運転の停止後または水素システム200の起動時において、電圧印加器102の電圧を電気化学式水素ポンプ100のアノードANとカソードCAの間に印加する動作が行われる。
ここで、以上の水素システム200の圧縮運転の停止および水素システム200の起動は、一例として、以下の手順(タイミングおよび方法)で行われてもよい。
例えば、電気化学式水素ポンプ100のカソードCAで生成された圧縮水素を水素貯蔵器に一時的に貯蔵する場合、水素システム200の圧縮運転は、水素貯蔵器内の水素量が、満杯になるまで行われる。しかし、水素貯蔵器内の水素量が、一旦、満杯になると、水素貯蔵器の容量に空きが生じるまで(例えば、水素貯蔵器から水素貯蔵器外への水素の供給が開始されるまで)、または、空き容量のある他の水素貯蔵器に接続されるまで、水素システム200の圧縮運転を停止する必要がある。その後、水素貯蔵機内の水素量が所定量を下回ったら、水素システム200を起動する必要がある。
そこで、まず、水素貯蔵器に設けられた圧力計から水素貯蔵器内の水素量が満杯である旨の信号が制御器50で受信されると、アノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に流れる電流を下げるように、制御器50から電圧印加器102に指令が出される。
ここで、水素システム200の圧縮運転の停止時における、アノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に流れる電流は、カソードCAに存在する圧縮水素の圧力、および、カソードCAおよびアノードAN間の差圧によって電解質膜11を介してカソードCAからアノードANに移動する水素量などに依存して、適宜の値に設定されてもよい。例えば、カソードCAおよびアノードAN間の差圧によって電解質膜11を介してカソードCAからアノードANに移動する水素量に合わせて、上記の電流を調整することにより、カソードCAに存在する圧縮水素の圧力を所定の値に維持することができる。本電流は、運転中における、アノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に流れる電流の1/10以下であってもよい。
次に、水素システム200の圧縮運転の停止時における、アノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に流れる電流に合わせて、流量調整器を用いて、アノードANに供給する水素含有ガスの流量が適量にまで低減される。詳細は、第2実施形態で説明する。
このようにして、水素システム200の圧縮運転が停止される。ただし、以上の圧縮運転停止の手順は例示であって、本例に限定されない。
なお、水素システム200の圧縮運転の停止後の適時に、アノードANへの水素含有ガスの供給が停止されるとともに、アノード触媒層13およびカソード触媒層12の間における電圧印加が停止されてもよい。すると、カソードCAおよびアノードAN間の差圧によって電解質膜11を介してカソードCAからアノードANに水素が移動することで、上記の差圧が、時間の経過とともに小さくなる。
次に、制御器50に適宜の起動信号が入力されると、適時に、アノードANへの水素含有ガスの供給が開始され、アノードANとカソードCAの間に電圧を印加する動作が行われる。
上記電圧の印加開始後は、電気化学セル100Bに流れる電流を、水素システム200の圧縮運転時の目標電流になるまで、印加電圧を増加してもよいし、電気化学セル100Bに流れる電流を、上記目標電流よりも低い電流(以下、低電流)に維持する動作を行った後、目標電流になるまで印加電圧を増加してもよい。
なお、電気化学セル100Bに流れる電流を低電流に維持する際に、この電流は、カソードCAに存在する圧縮水素の圧力、換言すれば、カソードCAおよびアノードAN間の差圧によって電解質膜11を介してカソードCAからアノードANに移動する水素量などに依存して、適宜の値に設定されてもよい。例えば、カソードCAおよびアノードAN間の差圧によって電解質膜11を介してカソードCAからアノードANに移動する水素量以上の水素量がアノードANからカソードCAに移動するように、上記の電流を調整することにより、カソードCAに存在する圧縮水素の圧力を所定の値に維持することができる。
ここで、水素システム200の起動時に、アノードANに供給される水素含有ガスが湿潤状態であるとき、電気化学セル100Bに流れる電流を低電流に維持する動作において、水素含有ガス中の水によって電解質膜11の含水率を上昇させることができる。電解質膜11の含水率の上昇は、任意の方法で確認してもよい。例えば、印加電圧の低下により確認してもよいし、低電流またはカソードを低圧に維持する起動運転の継続時間で確認してもよい。なお、上記の電気化学セル100Bに流れる電流を低電流に維持する動作の詳細については、第5実施形態で説明する。
以上のとおり、本実施形態の水素システム200および水素システム200の運転方法は、従来に比べて電解質膜11の劣化を抑制し得る。具体的には、本実施形態の水素システム200および水素システム200の運転方法は、水素システム200の圧縮運転の停止後または水素システム200の起動の適時に、電圧印加器102によりアノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に電圧を印加することで、かかる電圧制御を行わない場合に比べて、電気化学式水素ポンプ100のアノード電位が負電位化しにくくなる。すると、本実施形態の水素システム200および水素システム200の運転方法は、多孔体シート15Sに含まれる金属の水への溶出を抑制することができる。これにより、本実施形態の水素システム200または水素システム200の運転方法は、電解質膜11中のスルホン酸基に金属イオンが修飾する可能性を低減することができるので、従来に比べて電解質膜11の劣化が抑制される。
水素システム200の圧縮運転の停止後または水素システム200の起動時において、アノードの水素分圧が、カソードの水素分圧よりも高くなる可能性がある。例えば、停止後において、仮に、アノードANに外部から混入する外気量よりもカソードCAに外部から混入する外気量が多くなると、アノードANの水素分圧がカソードCAの水素分圧よりも高くなる可能性がある。すると、アノードガス拡散層15に含まれる金属のイオンが溶出することで、金属イオンが電解質膜11中のスルホン酸基のプロトンとイオン交換する可能性がある。その結果、電解質膜11が劣化する可能性がある。
そこで、本実施形態の水素システム200および水素システム200の運転方法は、停止後または起動時において、電圧印加器102により上記電圧を印加させることで、かかる電圧制御を行わない場合に比べて、金属イオンの溶出が抑制され、その結果、電解質膜11中のスルホン酸基のプロトンとイオン交換することが抑制される。これにより、電解質膜11が劣化しにくくなる。
(第1実施例)
本実施例の水素システム200は、以下に説明する制御器50の制御内容以外は、第1実施形態の水素システム200と同様である。
水素システム200の圧縮運転の停止後、アノードANへの水素含有ガスの供給を停止した後に、制御器50は、電圧印加器102によりアノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に電圧を印加させる。
図7Aは、第1実施形態の第1実施例の水素システムの動作の一例を示すフローチャートである。以下の動作は、例えば、制御器50の演算回路が、制御器50の記憶回路から制御プログラムを読み出すことにより行われてもよい。ただし、以下の動作を制御器50で行うことは、必ずしも必須ではない。操作者が、その一部の動作を行ってもよい。以下の例では、制御器50により動作を制御する場合について、説明する。
図7AのステップS1は、図6のステップS1と同様であるので説明を省略する。
ステップS2Aで、水素システム200の圧縮運転の停止後、アノードANへの水素含有ガスの供給を停止した後に、電圧印加器102の電圧を電気化学式水素ポンプ100のアノードANとカソードCAの間に印加する動作が行われる。ここで、ステップS2Aの動作の具体的な手順などについては、図6のステップS2と同様であるので説明を省略する。
水素システム200の圧縮運転の停止後において、アノードANの水素分圧が、カソードCAの水素分圧よりも高くなる可能性がある。例えば、仮に、水素システム200の停止後において、アノードANに外部から混入する外気量よりもカソードCAに外部から混入する外気量が多くなると、アノードANの水素分圧がカソードCAの水素分圧よりも高くなる可能性がある。すると、アノードガス拡散層15に含まれる金属のイオンが溶出することで、金属イオンが電解質膜11中のスルホン酸基のプロトンとイオン交換する可能性がある。その結果、電解質膜11が劣化する可能性がある。
そこで、本実施例の水素システム200および水素システム200の運転方法は、停止後において、電圧印加器102により上記電圧を印加させることで、かかる電圧制御を行わない場合に比べて、金属イオンの溶出が抑制され、その結果、金属イオンが電解質膜11中のスルホン酸基のプロトンとイオン交換することが抑制される。これにより、電解質膜11が劣化しにくくなる。
本実施例の水素システム200および水素システム200の運転方法は、上記の特徴以外は、第1実施形態と同様であってもよい。
(第2実施例)
本実施例の水素システム200は、以下に説明する制御器50の制御内容以外は、第1実施形態の水素システム200と同様である。
水素システム200の圧縮運転の停止後に、カソードCAからカソードオフガスを水素需要体と異なる排出先に排出した後に、制御器50は、電圧印加器102によりアノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に電圧を印加させる。なお、「水素需要体と異なる排出先」として、アノードANまたは水素システム200外を例示することができる。水素システム200外として、例えば、大気中を挙げることができる。カソードCAからカソードオフガスをアノードANに排出する際、アノード出口に連通する流路は、開放していてもよいし、当該流路に設けられた適宜の開閉弁により閉止していてもよい。なお、アノード出口に連通する流路を開放しているとき、この流路が大気開放されていると、最終的には、大気中、つまり水素システム200外にカソードオフガスが排出される。
図7Bは、第1実施形態の第2実施例の水素システムの動作の一例を示すフローチャートである。以下の動作は、例えば、制御器50の演算回路が、制御器50の記憶回路から制御プログラムを読み出すことにより行われてもよい。ただし、以下の動作を制御器50で行うことは、必ずしも必須ではない。操作者が、その一部の動作を行ってもよい。以下の例では、制御器50により動作を制御する場合について、説明する。
図7BのステップS1は、図6のステップS1と同様であるので説明を省略する。
ステップS2Bで、水素システム200の圧縮運転の停止後において、カソードCAからカソードオフガスを水素需要体と異なる排出先に排出した後に、電圧印加器102の電圧を電気化学式水素ポンプ100のアノードANとカソードCAの間に印加する動作が行われる。ここで、ステップS2Bの動作の具体的な手順などについては、図6のステップS2と同様であるので説明を省略する。
水素システム200の圧縮運転の停止後において、カソードCAからカソードオフガスを水素需要体と異なる排出先に排出した後に、アノードANの水素分圧が、カソードCAの水素分圧よりも高くなる可能性がある。例えば、仮に、水素システム200の停止後において、アノードANに外部から混入する外気量よりもカソードCAに外部から混入する外気量が多くなると、アノードANの水素分圧がカソードCAの水素分圧よりも高くなる可能性がある。すると、アノードガス拡散層15に含まれる金属のイオンが溶出することで、金属イオンが電解質膜11中のスルホン酸基のプロトンとイオン交換する可能性がある。その結果、電解質膜11が劣化する可能性がある。
そこで、本実施例の水素システム200および水素システム200の運転方法は、停止後において、カソードCAからカソードオフガスを水素需要体と異なる排出先に排出した後に、電圧印加器102により上記電圧を印加させることで、かかる電圧制御を行わない場合に比べて、金属イオンの溶出が抑制され、その結果、金属イオンが電解質膜11中のスルホン酸基のプロトンとイオン交換することが抑制される。これにより、電解質膜11が劣化しにくくなる。
本実施例の水素システム200および水素システム200の運転方法は、上記の特徴以外は、第1実施形態または第1実施形態の第1実施例と同様であってもよい。
(第3実施例)
本実施例の水素システム200は、以下に説明する制御器50の制御内容以外は、第1実施形態の水素システム200と同様である。
制御器50は、水素システム200の圧縮運転の停止後に、アノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に、運転中に、これらの間に印加される最大電圧(以下、最大電圧)よりも小さい電圧を電圧印加器102により印加させる。例えば、制御器50は、水素システム200の圧縮運転の停止後に、アノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に、最大電圧の1/10以下の電圧を電圧印加器102により印加させてもよい。
以上により、本実施例の水素システム200は、水素システム200の圧縮運転の停止後に、電解質膜11の劣化を抑制するためにアノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に印加する電圧として、最大電圧よりも小さい電圧を選択することにより、水素システム200の圧縮運転の停止後に、両者間に最大電圧を印加する場合に比べて、電圧印加器102で消費される電力を削減することができる。例えば、本実施例の水素システム200は、水素システム200の圧縮運転の停止後に、電解質膜11の劣化を抑制するためにアノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に印加する電圧として、最大電圧の1/10以下の電圧を選択することにより、両者間に最大電圧の1/10を上回る電圧を印加する場合に比べて、電圧印加器102で消費される電力を削減することができる。
本実施例の水素システム200は、上記の特徴以外は、第1実施形態および第1実施形態の第1実施例-第2実施例のいずれかの水素システム200と同様であってもよい。
(第4実施例)
本実施例の水素システム200は、以下に説明する制御器50の制御内容以外は、第1実施形態の水素システム200と同様である。
制御器50は、水素システム200の圧縮運転の停止後に、アノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に、カソードCAの内圧(以下、カソード圧)が水素需要体への圧縮水素の供給圧に到達した時の印加電圧よりも小さい電圧を電圧印加器102により印加させる。なお、上記供給圧は、40MPa、80Mpaなどが例示される。
以上により、本実施例の水素システム200は、水素システム200の圧縮運転の停止後に、電解質膜11の劣化を抑制するためにアノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に印加する電圧として、カソード圧が水素需要体への圧縮水素の供給圧に到達した時の印加電圧よりも小さい電圧を選択することにより、水素システム200の圧縮運転の停止後に、両者間に、このような印加電圧を印加する場合に比べて、電圧印加器102で消費される電力を削減することができる。
本実施例の水素システム200は、上記の特徴以外は、第1実施形態および第1実施形態の第1実施例-第3実施例のいずれかの水素システム200と同様であってもよい。
(第5実施例)
本実施例の水素システム200は、以下に説明する制御器50の制御内容以外は、第1実施形態の水素システム200と同様である。
制御器50は、水素システム200の圧縮運転の停止後に、アノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に、電解質膜11を介してカソードCAからアノードANに戻る水素量に相当する量の水素をアノードANからカソードCAに移動させるのに必要な電圧を電圧印加器102により印加させる。
以上により、本実施例の水素システム200は、水素システム200の圧縮運転の停止後に、電解質膜11の劣化を抑制するためにアノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に印加する電圧を、カソードCAおよびアノードANの差圧によって電解質膜11を介してカソードCAからアノードANに移動する水素量を考慮して、上記の如く設定することにより、水素システム200の圧縮運転の停止後に、電気化学式水素ポンプ100のカソードCAに存在する圧縮水素の圧力を所望の値に維持することができる。
本実施例の水素システム200は、上記の特徴以外は、第1実施形態および第1実施形態の第1実施例-第4実施例のいずれかと同様であってもよい。
(第6実施例)
本実施例の水素システム200は、以下に説明する制御器50の制御内容以外は、第1実施形態の水素システム200と同様である。
制御器50は、水素システム200の圧縮運転の停止後に、アノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に、電圧印加器102により1セル当たり0.1V以下の電圧を印加させる。なお、「1セル」とは、図3Bおよび図4Bに示す例では、単一の電気化学セル100Bを指す。
以上により、本実施例の水素システム200は、水素システム200の圧縮運転の停止後に、電解質膜11の劣化を抑制するためにアノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に印加する電圧として、1セル当たり0.1V以下の電圧を選択することにより、水素システム200の圧縮運転の停止後に、両者間に1セル当たり0.1Vを上回る電圧を印加する場合に比べて、電圧印加器102で消費される電力を削減することができる。
本実施例の水素システム200は、上記の特徴以外は、第1実施形態および第1実施形態の第1実施例-第5実施例のいずれかの水素システム200と同様であってもよい。
(第7実施例)
本実施例の水素システム200は、以下に説明するアノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に印加される電圧以外は、第1実施形態の水素システム200と同様である。
水素システム200の圧縮運転の停止後に、電圧印加器102によりアノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に印加される電圧は、水素システム200の圧縮運転の停止後に、電圧印加器102によりこれらの間に電圧を印加しない場合に想定される電気化学式水素ポンプ100のアノード電位を0V以上にするのに必要な電圧である。
以上により、本実施例の水素システム200は、水素システム200の圧縮運転の停止後に、電解質膜11の劣化を抑制するためにアノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に印加する電圧として、水素システム200の圧縮運転の停止後に、電圧印加器102によりこれらの間に電圧を印加しない場合に想定される電気化学式水素ポンプ100のアノード電位を0V以上にするのに必要な電圧を選択することにより、水素システム200の圧縮運転の停止後に、両者間に、かかる必要な電圧を下回る電圧を印加する場合に比べて、アノード電位が負電位化しにくくなるので、多孔体シート15Sに含まれる金属の水への溶出を抑制することができる。つまり、電解質膜11の劣化をより抑制できる。
本実施例の水素システム200は、上記の特徴以外は、第1実施形態および第1実施形態の第1実施例-第6実施例のいずれかと同様であってもよい。
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態の水素システムの一例を示す図である。
図8に示す例では、本実施形態の水素システム200は、電気化学式水素ポンプ100と、流量調整器60と、制御器50と、を備える。電気化学式水素ポンプ100は、第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
流量調整器60は、アノードANに供給される水素含有ガスの流量を調整する装置である。流量調整器60は、かかる水素含有ガスの流量を調整することができれば、どのような構成であってもよい。例えば、流量調整器60は、図4Aのアノードガス導入経路29に設けられていてもよい。流量調整器60としては、流量調整弁、マスフローコントローラまたは昇圧器などを備えた流量調整デバイスを例示することができる。なお、流量調整器60は、上記の流量調整デバイスとともに、流量計を備えていてもよい。
水素システム200の圧縮運転の停止後に、アノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に、電圧印加器102により電圧を印加させているとき、制御器50は、流量調整器60を制御し、運転中にアノードANに供給される水素含有ガスの流量よりも小さい流量で、アノードANに水素含有ガスを供給させる。
電気化学式水素ポンプ100においては、水素システム200の圧縮運転の停止後に、電解質膜11の劣化を抑制するための電圧をアノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に印加する場合、電解質膜11を介してアノードANからカソードCAに水素が移動する。すると、アノードANに存在する水素量の減少に伴いアノードAN内の圧力が減少するので、アノードANが負圧化する可能性がある。そして、アノードANの負圧化により、仮にアノードANに外部から空気が侵入する場合、電気化学式水素ポンプ100の電気化学セル100Bが劣化する可能性がある。
そこで、本実施形態の水素システム200は、制御器50によって、流量調整器60が上記の如く制御されている。
これにより、本実施形態の水素システム200は、水素システム200の圧縮運転の停止後に、電解質膜11の劣化を抑制するためにアノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に電圧を印加する際、電解質膜11を介してアノードANからカソードCAに水素が移動しても、流量調整器60を用いて、アノードANに水素含有ガスを投入することができる。すると、水素システム200の圧縮運転の停止後に、アノードANが負圧化する可能性が低減される。
また、本実施形態の水素システム200は、水素システム200の圧縮運転の停止後には、カソードCAから水素需要体に、カソードCAで生成された圧縮水素が供給されないので、アノードANに投入される水素含有ガスの流量を、運転中にアノードANに供給される水素含有ガスの流量よりも小さくすることができる。
本実施形態の水素システム200は、上記の特徴以外は、第1実施形態および第1実施形態の第1実施例-第7実施例のいずれかの水素システム200と同様であってもよい。
(変形例)
本変形例の水素システム200は、以下に説明する制御器50の制御内容以外は、第2実施形態の水素システム200と同様である。
水素システム200の圧縮運転の停止後に、アノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に、電圧印加器102により電圧を印加させているとき、制御器50は、流量調整器60を制御し、アノードANへ水素含有ガスを供給しない。
以上により、本変形例の水素システム200は、第2実施形態の水素システム200に比べて、水素含有ガスの供給源からの水素含有ガスの消費量を低減することができる。水素含有ガスの供給源は、水素タンク、水素インフラ、水電解装置などが例示される。
本変形例の水素システム200は、上記の特徴以外は、第1実施形態、第1実施形態の第1実施例-第7実施例および第2実施形態のいずれかと同様であってもよい。
(第3実施形態)
図9は、第3実施形態の水素システムの一例を示す図である。
図9に示す例では、本実施形態の水素システム200は、電気化学式水素ポンプ100と、第1流路71と、第2流路72と、第1開閉弁81と、第2開閉弁82と、制御器50と、を備える。電気化学式水素ポンプ100は、第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
第1流路71は、電気化学式水素ポンプ100のカソードCAから排出されたカソードオフガスをアノードANに供給するための流路である。なお、このようなカソードオフガスは、カソードCAで生成された圧縮水素を含むガスである。
第1流路71の上流端は、電気化学式水素ポンプ100のカソードCAと連通する箇所であれば、いずれの箇所に接続していてもよい。例えば、第1流路71は、図3Aのカソードガス導出経路26より分岐するように延伸していてもよいし、図3Aのカソードガス導出マニホールド28とは別個のカソードガス導出マニホールドと連通するように延伸していてもよい。ただし、第1流路71を、前者の如く構成する場合、電気化学式水素ポンプ100において、カソードCAからガスを排出するための箇所を集約することができる。
第1流路71の下流端は、電気化学式水素ポンプ100のアノードANと連通する箇所であれば、いずれの箇所に接続していてもよい。例えば、第1流路71は、図4Aのアノードガス導入経路29に接続するように延伸していてもよいし、図4Aのアノードガス導入マニホールド27とは別個のアノードガス導入マニホールドと連通するように延伸していてもよい。ただし、第1流路71を、前者の如く構成する場合、電気化学式水素ポンプ100において、アノードANにガスを導入するための箇所を集約することができる。
第2流路72は、電気化学式水素ポンプ100のアノードANから排出されたアノードオフガスが流れる流路である。なお、このようなアノードオフガスは、アノードガス流路33を通過した水素含有ガスを含むガスである。
第2流路72の上流端は、電気化学式水素ポンプ100のアノードANと連通する箇所であれば、いずれの箇所に接続していてもよい。例えば、第2流路72は、図4Aのアノードガス導出経路31に接続するように延伸していてもよい。
第2流路72の下流端は、水素システム200外の適宜の装置に接続してもよいし、アノードANに供給される水素含有ガスが流れる流路に接続してもよい。後者の場合、電気化学式水素ポンプ100において、アノードANから排出されたアノードオフガスをリサイクルすることができる。
第1開閉弁81は、第1流路71に設けられた弁である。第1開閉弁81は、第1流路71を開閉することができれば、どのような構成であってもよい。第1開閉弁81として、例えば、窒素ガスなどで駆動する駆動弁または電磁弁などを用いることができるが、これらに限定されない。
第2開閉弁82は、第2流路72に設けられた弁である。第2開閉弁82は、第2流路72を開閉することができれば、どのような構成であってもよい。第2開閉弁82として、例えば、窒素ガスなどで駆動する駆動弁または電磁弁などを用いることができるが、これらに限定されない。
ここで、水素システム200の動作中、制御器50は、第1開閉弁81を閉止させ、第2開閉弁82を開放させる。そして、水素システム200の圧縮運転の停止後、アノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に、電圧印加器102により電圧を印加する以前または電圧を印加しているときに、制御器50は、第1開閉弁81を開放させ、第2開閉弁82を閉止させる。
図10は、第3実施形態の水素システムの動作の一例を示すフローチャートである。以下の動作は、例えば、制御器50の演算回路が、制御器50の記憶回路から制御プログラムを読み出すことにより行われてもよい。ただし、以下の動作を制御器50で行うことは、必ずしも必須ではない。操作者が、その一部の動作を行ってもよい。以下の例では、制御器50により動作を制御する場合について、説明する。
図10のステップS1は、図6のステップS1と同様であるので説明を省略する。
ステップS3で、水素システム200の圧縮運転の停止後において、アノードANとカソードCAの間に電圧を印加する以前または電圧を印加しているときに、第1開閉弁81を開放するとともに、第2開閉弁82を閉止する動作が行われる。
以上により、本実施形態の水素システム200および水素システム200の運転方法は、水素システム200の圧縮運転の停止後に、第1開閉弁81を開放させることで、第1流路71を介して、電気化学式水素ポンプ100のカソードCAに存在するカソードオフガスと、電気化学式水素ポンプ100のアノードANに存在するアノードガスと、を混合することができる。すると、水素システム200の停止後であって、カソードCAに存在するガス放出後において、カソードCAに侵入する外気量の方がアノードANに侵入する外気量よりも多い場合でも、アノードANの水素分圧およびカソードCAの水素分圧の差が減少する。
そして、本実施形態の水素システム200および水素システム200の運転方法は、第1開閉弁81が開放され、第2開閉弁82が閉止されるとともに、電圧印加器102によりアノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に電圧が印加されることで、アノードANおよびカソードCAのそれぞれに存在するガスが、電気化学式水素ポンプ100内および第1流路71を循環するので、アノードANおよびカソードCAのそれぞれの水素分圧の差がさらに小さくなる。
以上により、本実施形態の水素システム200および水素システム200の運転方法は、電気化学式水素ポンプ100のアノード電位が負電位化しにくくなるので、電解質膜11の劣化が抑制される。また、本実施形態の水素システム200は、電解質膜11におけるアノードAN側の主面領域とカソードCA側の主面領域との間の乾湿差が速やかに減少するので、電解質膜11の機械的な劣化が抑制される。
本実施形態の水素システム200は、上記の特徴以外は、第1実施形態、第1実施形態の第1実施例-第7実施例、第2実施形態および第2実施形態の変形例のいずれかと同様であってもよい。
(第4実施形態)
本実施形態の第1実施例-第3実施例および変形例における、水素システム200および電気化学式水素ポンプ100の装置構成、並びに水素システム200の制御器50の制御内容は、以下に説明する事項以外は、第1実施形態の水素システム200と同様である。
(第1実施例)
制御器50は、水素システム200の起動時において水素含有ガスがアノードANに供給されていないとき、電圧印加器102によりアノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に電圧を印加させる。
図11は、第4実施形態の第1実施例の水素システムの動作の一例を示すフローチャートである。以下の動作は、例えば、制御器50の演算回路が、制御器50の記憶回路から制御プログラムを読み出すことにより行われてもよい。ただし、以下の動作を制御器50で行うことは、必ずしも必須ではない。操作者が、その一部の動作を行ってもよい。以下の例では、制御器50により動作を制御する場合について、説明する。
水素システム200が起動すると、ステップS10で、水素含有ガスがアノードANに供給されていないとき、電圧印加器102の電圧を電気化学式水素ポンプ100のアノードANとカソードCAの間に印加する動作が行われる。
水素システム200の起動時において水素含有ガスがアノードANに供給されていないときであっても、アノードANの水素分圧が、カソードCAの水素分圧よりも高くなる可能性がある。例えば、仮に、水素システム200の停止後において、アノードANに外部から混入する外気量よりもカソードCAに外部から混入する外気量が多くなると、アノードANの水素分圧がカソードCAの水素分圧よりも高くなる可能性がある。すると、アノードガス拡散層15に含まれる金属のイオンが溶出することで、金属イオンが電解質膜11中のスルホン酸基のプロトンとイオン交換する可能性がある。その結果、電解質膜11が劣化する可能性がある。
そこで、本実施例の水素システム200および水素システム200の運転方法は、起動時において水素含有ガスがアノードANに供給されていないとき、電圧印加器102により上記電圧を印加させることで、かかる電圧制御を行わない場合に比べて、金属イオンの溶出が抑制され、その結果、金属イオンが電解質膜11中のスルホン酸基のプロトンとイオン交換することが抑制される。これにより、電解質膜11が劣化しにくくなる。
本実施例の水素システム200および水素システム200の運転方法は、上記特徴以外は、第1実施形態、第1実施形態の第1実施例-第7実施例、第2実施形態、第2実施形態の変形例および第3実施形態のいずれかと同様であってもよい。
(第2実施例)
水素システム200の起動時において、アノードANに水素含有ガスを供給する際、アノードANの電位Vaが、アノードガス拡散層15に含まれる金属のイオンが溶出する電位Vsよりも大きいときに、制御器50は、電圧印加器102によりアノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に電圧を印加させる。
図12は、第4実施形態の第2実施例の水素システムの動作の一例を示すフローチャートである。以下の動作は、例えば、制御器50の演算回路が、制御器50の記憶回路から制御プログラムを読み出すことにより行われてもよい。ただし、以下の動作を制御器50で行うことは、必ずしも必須ではない。操作者が、その一部の動作を行ってもよい。以下の例では、制御器50により動作を制御する場合について、説明する。
水素システム200が起動すると、ステップS11で、アノードANに水素含有ガスの供給が開始される。
次に、ステップS12で、アノードANの電位Vaが、アノードガス拡散層15に含まれる金属のイオンが溶出する電位Vsよりも大きいときに、アノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に電圧が印加される。
ここで、「電位Vs」は、アノードガス拡散層15に含まれる金属の種類および電気化学セル100Bの動作条件などに基づいて、かかる金属のイオンが溶出する可能性がある適宜の電位に設定することができる。一例として、金属がチタンである場合、「電位Vs」が、上記検証実験の結果に基づいてチタンイオンが溶出しにくい約-0.05V程度に設定されていてもよいが、これに限定されない。また、例えば、チタンイオンの溶出によって電解質膜11の劣化進行を効果的に抑制し得るレベルであれば、「電位Vs」を、チタンイオンの溶出量がかかるレベルに抑えられた値に設定することもできる。
このように、本実施例の水素システム200の運転方法において、アノードANに水素含有ガスを供給する際、アノードANの電位Vaが電位Vsより大きいときに、換言すれば、アノードANの電位Vaは電位Vs以下になる前に、アノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に電圧が印加される動作が行われる。
以上により、本実施例の水素システム200および水素システム200の運転方法は、従来に比べて電解質膜11の劣化を抑制し得る。具体的には、水素システム200の停止後において、カソードCAに外部からの混入する外気量が多くなると、起動時においてアノードANに水素含有ガスを供給する際、時間の経過に伴い、アノードANの水素分圧がカソードCAの水素分圧よりも高くなる可能性がある。そこで、アノードANの電位Vaが、金属のイオンが溶出する電位Vs以下よりも大きいときに、換言すれば、アノードANの電位Vaが、金属のイオンが溶出する電位Va以下になる前に、電圧印加器102により上記電圧を印加させることで、かかる電圧制御を行わない場合に比べて、アノードANの電位Vaが、金属イオンが溶出する電位Vs以下になることが抑制される。これにより、電解質膜11が劣化しにくくなる。
さらに、本実施例の水素システム200および水素システム200の運転方法は、起動時においてアノードANに水素含有ガスを供給することで、アノードANにおける燃料枯れの問題を軽減することができる。これにより、セル材料(例えば、ステンレス)のイオン溶出が適切に抑制される。
本実施例の水素システム200および水素システム200の運転方法は、上記特徴以外は、第1実施形態、第1実施形態の第1実施例-第7実施例、第2実施形態、第2実施形態の変形例、第3実施形態および第4実施形態の第1実施例と同様であってもよい。
(第3実施例)
水素システム200の起動時において、アノードANに水素含有ガスを供給する際、アノードANの電位Vaが、アノードガス拡散層15に含まれる金属のイオンが溶出する電位Vs以下になってから所定時間T以内に、制御器50は、電圧印加器102によりアノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に電圧を印加させる。
図13は、第4実施形態の第3実施例の水素システムの動作の一例を示すフローチャートである。以下の動作は、例えば、制御器50の演算回路が、制御器50の記憶回路から制御プログラムを読み出すことにより行われてもよい。ただし、以下の動作を制御器50で行うことは、必ずしも必須ではない。操作者が、その一部の動作を行ってもよい。以下の例では、制御器50により動作を制御する場合について、説明する。
水素システム200が起動すると、ステップS11で、アノードANに水素含有ガスの供給が開始される。
次に、ステップS12Aで、アノードANの電位Vaが、アノードガス拡散層15に含まれる金属のイオンが溶出する電位Vs以下であるか否かが判定される。なお、「電位Vs」は、第1実施例と同様であるので説明を省略する。
ステップS12Aで、アノードANの電位Vaが、電位Vs以下でない場合(ステップS2Aで「No」の場合)、そのままの状態が継続される。
ステップS12Aで、アノードANの電位Vaが、電位Vs以下になると(ステップS12Aで「Yes」の場合)、次のステップに進み、ステップS12Bで、所定時間T以内にアノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に電圧が印加される。
ここで、「所定時間T」は、電解質膜11中のスルホン酸基のプロトンとイオン交換する金属イオンの溶出量に基づいて設定することができる。例えば、電解質膜11で許容される金属イオンの交換量を水素システム200で想定した全起動停止回数(例えば、3000回)で割った数値は、水素システム200の1回の起動停止における金属イオン溶出の許容量(以下、金属イオン溶出の許容量)に相当する。よって、起動時において水素含有ガスをアノードに供給しているときの、金属イオン溶出が開始してからの金属イオン溶出の累積量と電位Vs以下になってからの経過時間との関係を実験的に求めることで、上記累積量が、金属イオン溶出の許容量以下となる時間を「所定時間T」として設定することができる。なお、金属イオンがチタンイオンであるとき、「所定時間T」は、例えば、約60秒程度に設定することができるが、これに限定されない。
以上により、本実施例の水素システム200および水素システム200の運転方法は、従来に比べて電解質膜11の劣化を抑制し得る。具体的には、水素システム200の停止後において、カソードCAに外部からの混入する外気量が多くなると、起動時においてアノードANに水素含有ガスを供給する際、時間の経過に伴い、アノードANの水素分圧がカソードCAの水素分圧よりも高くなる可能性がある。
そこで、本実施例の水素システム200および水素システム200の運転方法は、起動時においてアノードANに水素含有ガスを供給する際、アノードANの電位Vaが電位Vs以下になってから所定時間T以内に、電圧印加器102により上記電圧を印加させることで、かかる電圧制御を行わない場合に比べて、アノードANの電位Vaが電位Vs以下である期間を短縮することができる。これにより、電解質膜11の劣化進行が適切に抑制される。
さらに、本実施例の水素システム200および水素システム200の運転方法は、起動時においてアノードANに水素含有ガスを供給することで、アノードANにおける燃料枯れの問題を軽減することができる。これにより、セル材料(例えば、ステンレス)のイオン溶出が適切に抑制される。
本実施例の水素システム200および水素システム200の運転方法は、上記特徴以外は、第1実施形態、第1実施形態の第1実施例-第7実施例、第2実施形態、第2実施形態の変形例、第3実施形態および第4実施形態の第1実施例-第2実施例のいずれかと同様であってもよい。
(変形例)
水素システム200の起動時にアノードANに水素含有ガスを供給する前または停止時において、窒素または空気でカソードCAをパージする場合がある。すると、電圧印加器102により、アノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に電圧が印加される前に、カソードCAに、窒素または空気が充填される。
以上のパージ操作は、例えば、水素システム200の停止後に、カソードCAに、可燃性水素が残留しないように、電気化学セル100Bに窒素または空気を導入する目的で実行される。
以上の場合、事前に、カソードCAに窒素または空気が充填されていることで、起動時に水素含有ガスの供給を開始すると、アノードANの水素分圧が、カソードCAの水素分圧よりも高くなる。
そこで、本変形例の水素システム200は、起動時において、カソードCAに窒素または空気が充填されている状態で、水素含有ガスを供給する際に、電圧印加器102により、アノード触媒層13およびカソード触媒層12の間に電圧を印加させる。すると、かかる電圧制御を行わない場合に比べて、金属イオンが電解質膜11中のスルホン酸基のプロトンとイオン交換することが抑制される。これにより、電解質膜11が劣化しにくくなる。
なお、上記電圧の印加開始については、上記第1実施例または第2実施例と同様の制御を行う。
上記電圧の印加開始後は、第1実施形態と同様、電気化学セル100Bに流れる電流が、水素システム200の圧縮運転時の目標電流になるまで増加するように印加電圧を増加させてもよい。
また、上記電圧の印加開始後は、第1実施形態と同様、電解質膜11の含水率が上昇するまで、電気化学セル100Bに流れる電流を低電流に維持する動作を行い、その後、電解質膜11の含水率が上昇すると、電気化学セル100Bに流れる電流が、上記目標電流になるまで増加するように印加電圧を増加させてもよい。
本変形例の水素システム200は、上記特徴以外は、第1実施形態、第1実施形態の第1実施例-第7実施例、第2実施形態、第2実施形態の変形例、第3実施形態および第4実施形態の第1実施例-第3実施例のいずれかと同様であってもよい。
(第5実施形態)
本実施形態の第1実施例-第2実施例における、水素システム200および電気化学式水素ポンプ100の装置構成、並びに水素システム200の制御器50の制御内容は、以下に説明する事項以外は、第1実施形態の水素システム200と同様である。
(第1実施例)
水素システム200の起動時において、アノードANに加湿された水素含有ガスが供給されているとき、制御器50は、電気化学セル100Bに流れる電流密度が、水素システム200の圧縮運転時の目標電流密度よりも小さい第1の閾値TH1以下、かつ、カソードCAの圧力が、水素システム200の圧縮運転時の目標圧力よりも小さい第2の閾値TH2以下を維持されるよう電圧印加器102を制御する。
図14は、第5実施形態の第1実施例の水素システムの動作の一例を示すフローチャートである。以下の動作は、例えば、制御器50の演算回路が、制御器50の記憶回路から制御プログラムを読み出すことにより行われてもよい。ただし、以下の動作を制御器50で行うことは、必ずしも必須ではない。操作者が、その一部の動作を行ってもよい。以下の例では、制御器50により動作を制御する場合について、説明する。
まず、水素システム200が起動すると、ステップS13で、アノードANに、適宜の加湿器により加湿された水素含有ガスが供給される。この水素含有ガスは、例えば、アノードANと連通するアノードガス導入経路29に設けられた加湿器で加湿されてもよい。加湿器として、例えば、バブラーなどを挙げることができるが、これに限定されない。
次に、ステップS14で、電気化学セル100Bに流れる電流密度が、水素システム200の圧縮運転時の目標電流密度よりも小さい第1の閾値TH1以下、かつ、カソードCAの圧力が、水素システム200の圧縮運転時の目標圧力よりも小さい第2の閾値TH2以下を維持されるよう電圧印加器102が制御される。
ここで、第1の閾値TH1は、水素システム200の構成および圧縮運転の条件などに基づいて、電解質膜11が局所的に高温化しにくい適宜の値に設定する必要がある。第1の閾値TH1は、例えば、水素システム200の目標電流密度の約1/10程度であってもよいが、これに限定されない。
第2の閾値TH2は、水素システム200の構成および圧縮運転の条件などに基づいて、電解質膜11が破膜しにくい適宜の値に設定する必要がある。第2の閾値TH2は、例えば、約1MPa未満の適宜の値であってもよいが、これに限定されない。ただし、第2の閾値TH2を上記の値に設定すると、電解質膜11が乾燥しても、電解質膜11の耐久性が確保されるとともに、水素含有ガスが高圧ガス保安法における「高圧ガス」に該当しなくなる。
ここで、水素システム200の出荷検査、メンテナンスなどでは、水素システム200が起動する際、電解質膜11が乾燥していることが多い。この場合、電解質膜11の含水率を適正値にまで上昇させずに、電気化学セル100Bに流れる電流密度が第1の閾値TH1を超えると、電解質膜11が局所的に乾燥している部分において電解質膜11が高温化して劣化する可能性がある。また、電解質膜11の含水率を適正値にまで上昇させずに、カソードCAの圧力が第2の閾値TH2を超えると、電解質膜11が破膜する可能性がある。
そこで、本実施例の水素システム200は、起動時に、電気化学セル100Bに流れる電流密度およびカソードCAの圧力のそれぞれを第1の閾値TH1以下および第2の閾値TH2以下のそれぞれに維持する動作を行いながら、水素含有ガス中の水によって電解質膜11の含水率が適正値にまで上昇させることで、以上の可能性を低減させることができる。これにより、本実施例の水素システム200は、例えば、水素システム200の出荷検査、メンテナンスなどにおいて、電解質膜11の劣化を抑えながら、エージング運転を行うことができる。
本実施例の水素システム200は、上記特徴以外は、第1実施形態、第1実施形態の第1実施例-第7実施例、第2実施形態、第2実施形態の変形例、第3実施形態、第4実施形態の第1実施例-第3実施例および第4実施形態の変形例のいずれかと同様であってもよい。
(第2実施例)
電気化学セル100Bに流れる電流密度を第1の閾値TH1以下、かつ、カソードCAの圧力を第2の閾値TH2以下を維持するために電圧印加器102より印加される電圧が低下すると、制御器50は、電気化学セル100Bに流れる電流密度およびカソードCAの圧力の少なくとも一方が上昇するよう電圧印加器102の印加電圧を増加させる。
図15は、第5実施形態の第2実施例の水素システムの動作の一例を示すフローチャートである。以下の動作は、例えば、制御器50の演算回路が、制御器50の記憶回路から制御プログラムを読み出すことにより行われてもよい。ただし、以下の動作を制御器50で行うことは、必ずしも必須ではない。操作者が、その一部の動作を行ってもよい。以下の例では、制御器50により動作を制御する場合について、説明する。
図15のステップS13およびステップS14は、図14のステップS13およびステップS14と同様であるので説明を省略する。
ステップS14の動作が行われる際、ステップS15で、アノード触媒層13およびカソード触媒層12間における印加電圧が低下したかどうかが判定される。
ステップS15の印加電圧が低下しない場合(ステップS15で「No」の場合)、ステップS14の動作がそのまま継続される。
ステップS15の印加電圧が低下した場合(ステップS15で「Yes」の場合)、次のステップに進み、ステップS16で、アノード触媒層13およびカソード触媒層12の間の印加電圧が増加される。
なお、ステップS16の印加電圧増加の動作タイミングは、電解質膜11の含水率の上昇に伴って適時に実行することが望ましい。
例えば、電解質膜11の膜抵抗換算で0.3Ωcm2が、電解質膜11の高加湿状態に対応すると見做す場合、電解質膜11に、電流密度が1A/cm2の電流が流れるとき、アノード触媒層13およびカソード触媒層12間における印加電圧は、約0.3Vである。よって、ステップS15の印加電圧が、例えば、約0.3Vに到達(低下)したタイミングにおいて、ステップS16の印加電圧増加の動作が実行されてもよい。
以上のとおり、電解質膜11の含水率の上昇は、例えば、電圧印加器102の印加電圧の低下により確認することができる。そこで、本実施例の水素システム200は、電気化学セル100Bに流れる電流密度およびカソードCAの圧力のそれぞれを第1の閾値TH1以下および第2の閾値TH2以下のそれぞれに維持するステップS14の動作において、電圧印加器102による印加電圧が低下すると、電気化学セル100Bに流れる電流密度およびカソードCAの圧力の少なくとも一方が上昇するよう電圧印加器102の印加電圧を増加させている。これにより、本実施例の水素システム200は、電解質膜11の含水率の上昇に伴って適時に、電気化学セル100Bに流れる電流密度およびカソードCAの圧力の少なくとも一方を上昇させることができる。
本実施例の水素システム200は、上記特徴以外は、第1実施形態、第1実施形態の第1実施例-第7実施例、第2実施形態、第2実施形態の変形例、第3実施形態、第4実施形態の変形例および第5実施形態の第1実施例のいずれかと同様であってもよい。
第1実施形態、第1実施形態の第1実施例-第7実施例、第2実施形態、第2実施形態の変形例、第3実施形態、第4実施形態の第1実施例-第3実施例、第4実施形態の変形例および第5実施形態の第1実施例-第2実施例は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせても構わない。
また、上記説明から、当業者にとっては、本開示の多くの改良および他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本開示を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本開示の精神を逸脱することなく、その構造および/または機能の詳細を実質的に変更することができる。