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JP7130791B2 - 基板処理方法および基板処理装置 - Google Patents

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JP7130791B2 JP2021018584A JP2021018584A JP7130791B2 JP 7130791 B2 JP7130791 B2 JP 7130791B2 JP 2021018584 A JP2021018584 A JP 2021018584A JP 2021018584 A JP2021018584 A JP 2021018584A JP 7130791 B2 JP7130791 B2 JP 7130791B2
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Description

この発明は、基板処理方法および基板処理装置に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
半導体装置の製造工程では、半導体ウエハ等の基板の表面が処理液で処理される。基板を一枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置は、基板をほぼ水平に保持しつつ、その基板を回転させるスピンチャックと、このスピンチャックによって回転される基板の表面に処理液を供給するためのノズルとを備えている。
典型的な基板処理工程では、スピンチャックに保持された基板に対して薬液が供給される。その後、水が基板に供給され、それによって、基板上の薬液が水に置換される。その後、基板上の水を排除するためのスピンドライ工程が行われる。スピンドライ工程では、基板が高速回転されることにより、基板に付着している水が振り切られて除去(乾燥)される。一般的な水は脱イオン水である。
基板の表面に微細なパターンが形成されている場合に、スピンドライ工程では、パターンの内部に入り込んだ水を除去できないおそれがあり、それによって、乾燥不良が生じるおそれがある。そこで、水による処理後の基板の表面に、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol:IPA)等の有機溶剤を供給して、基板の表面のパターンの隙間に入り込んだ水を有機溶剤に置換することによって基板の表面を乾燥させる手法が提案されている。
図20に示すように、基板の高速回転により基板を乾燥させるスピンドライ工程では、液面(空気と液体との界面)が、パターン内に形成される。この場合、液面とパターンとの接触位置に、液体の表面張力が働く。この表面張力は、パターンを倒壊させる原因の一つである。
下記特許文献1のように、リンス処理後スピンドライ工程の前に有機溶剤の液体(以下、単に「有機溶剤」という)を基板の表面に供給する場合には、有機溶剤がパターンの間に入り込む。有機溶剤の表面張力は、典型的な水である水よりも低い。そのため、表面張力に起因するパターン倒壊の問題が緩和される。
特開平9-38595号公報
ところが、近年では、基板処理を利用して作製される装置(たとえば半導体装置)の高集積化のために、微細で高アスペクト比のパターン(凸状パターン、ライン状パターンなど)が基板の表面に形成されるようになってきた。微細で高アスペクト比のパターンは、強度が低いので、有機溶剤の液面に働く表面張力によっても、倒壊を招くおそれがある。
そこで、この発明の目的は、パターンの倒壊を効果的に抑制しながら、基板の上面を乾燥させることができる基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
この発明は、基板を水平に保持する基板保持工程と、前記基板の上面に処理液を供給して、当該基板の上面を覆う処理液の液膜を形成する液膜形成工程と、前記処理液の液膜から処理液を部分的に排除して、前記処理液の液膜に液膜除去領域を形成する液膜除去領域形成工程と、前記液膜除去領域を前記基板の外周に向けて拡大させる液膜除去領域拡大工程と、前記液膜除去領域拡大工程に並行して、前記液膜除去領域と前記処理液の液膜との境界の周囲の雰囲気を、フッ化水素を含む蒸気の雰囲気に保つフッ化水素雰囲気保持工程とを含む、基板処理方法を提供する。
液膜除去領域と処理液の液膜との境界(以下、単に「液膜境界」という)において、隣り合うパターンの間から処理液が除去される際に、パターンの倒壊が生じるおそれがある。このようなパターン倒壊のメカニズムに関し、本願発明者は以下の知見を見出している。すなわち、弾性を有しているパターンに瞬間的に倒壊が生じた場合、パターン自身が持つ弾性によって、倒壊しているパターンに起立(回復)しようとする力がある程度働く。しかしながら、実際にはパターンが弾性を有していても、倒壊したパターンは起立せず、パターンの倒壊状態は維持される。本願発明者は、倒壊状態が維持される要因の一つとして、瞬間的に倒壊するパターンの先端部が、基板の上面に介在する生成物を介して、隣接するパターンの先端部と接着され、これにより、パターンは起立せずに、その倒壊状態が維持されると考えている。基板としてシリコン基板を用いる場合には、基板の上面(表面)にシリコン酸化物が介在し、そのため、前記の生成物は、主としてシリコン酸化物を含むと考えられる。
この方法によれば、液膜境界の周囲の雰囲気が、フッ化水素を含む蒸気(以下、「フッ化水素蒸気」という場合がある。)に保たれながら、液膜境界が、基板Wの上面を外周に向けて移動する。
液膜境界がフッ化水素蒸気の雰囲気に保たれているので、フッ化水素は処理液の液膜に析出しているシリコン酸化物と反応し、式(1)に示すように、HSiFと水とに分解する。
SiO+6HF→HSiF+2HO ・・・(1)
これにより、処理液中に析出しているシリコン酸化物がパターンに付着しないか、あるいはパターンに付着しているシリコン酸化物を除去することが可能である。
パターンの先端部にシリコン酸化物が付着していないので、瞬間的に倒壊したパターンは、パターン自身が持つ弾性によって起立する。これにより、パターンの倒壊を効果的に抑制しながら、基板の上面を乾燥させることができる。
この発明の一実施形態では、前記液膜除去領域拡大工程において前記処理液の液膜に含まれる処理液が常温よりも高い液温を有している。
フッ化水素がシリコン酸化物と反応することにより、残渣(たとえばHSiFの残渣)が生成されるおそれがある。
この方法によれば、液膜除去領域拡大工程において処理液の液膜に含まれる処理液が常温よりも高い液温を有している。HSiFの融点は約19℃であり、処理液の液膜の温度が常温よりも高くなるに従って、残渣の蒸発が促進される。これにより、残渣を蒸発させて基板の上面から除去することができる。
この発明の一実施形態では、前記液膜形成工程において形成される前記処理液の液膜は常温を有している。そして、前記基板処理方法が、前記液膜除去領域拡大工程に並行して前記処理液の液膜を加熱する加熱工程を含む。
この方法によれば、液膜除去領域拡大工程に並行して処理液の液膜が加熱される。これにより、簡単な手法を用いて、液膜除去領域拡大工程において処理液の液膜に含まれる処理液を常温より高く設けることができる。
この発明の一実施形態では、前記液膜形成工程によって形成される前記処理液の液膜は、フッ酸を含むフッ酸含有液の液膜を含む。そして、前記基板の上方の空間は、その周囲から遮断された遮断空間である。そして、前記フッ化水素雰囲気保持工程は、前記フッ酸含有液の液膜に含まれるフッ酸が前記遮断空間内で蒸発して、フッ化水素を含む蒸気が前記遮断空間に供給される工程を含む。
この方法によれば、処理液の液膜に含まれるフッ酸が遮断空間内で蒸発して、フッ化水素を含む蒸気が遮断空間に供給される。これにより、液膜境界の周囲の雰囲気をフッ化水素を含む蒸気に保ちながら、液膜境界を基板の外周に向けて移動させる手法を、遮断空間内に気体を別途供給することなく実現できる。
この発明の一実施形態では、前記フッ酸含有液の液膜は、水よりも低い表面張力を有する有機溶剤とフッ酸との混合液の液膜を含む。
この方法によれば、フッ酸含有液の液膜が、水よりも低い表面張力を有する有機溶剤とフッ酸との混合液の液膜を含む。フッ酸含有液の液膜が有機溶剤を含むから、フッ酸含有液の液膜に含まれる液体の表面張力を下げることができ、これにより、パターンの倒壊をより一層抑制することができる。
この発明の一実施形態では、前記基板の上方の空間は、その周囲から遮断された遮断空間である。そして、前記フッ化水素雰囲気保持工程は、前記処理液の液膜の周囲の雰囲気を、フッ化水素を含む蒸気の雰囲気に維持すべく、フッ化水素を含む蒸気を前記遮断空間に供給するフッ化水素蒸気供給工程を含む。
この方法によれば、周囲から遮断された遮断空間にフッ化水素を含む蒸気が供給される。これにより、その空間を、フッ化水素を含む蒸気で満たすことができ、その結果、液膜境界の周囲の雰囲気を、フッ化水素を含む蒸気の雰囲気に維持しながら、液膜除去領域が基板の外周に向けて拡大させることができる。
前記処理液の前記液膜は、水よりも低い表面張力を有する有機溶剤の液膜であってもよい。
この発明の一実施形態では、前記フッ化水素蒸気供給工程によって供給される前記フッ化水素を含む蒸気は、水よりも低い表面張力を有する有機溶剤とフッ化水素とを含む蒸気を含む。
この方法によれば、フッ化水素蒸気供給工程によって供給されるフッ化水素を含む蒸気が、フッ化水素だけでなく有機溶剤をも含むので、処理液の液膜における液膜除去領域との境界近傍に有機溶剤の蒸気を供給することができ、これにより、液膜境界におけるパターンの倒壊を抑制することができる。
前記処理液の前記液膜は、水の液膜であってもよい。
この発明の一実施形態では、前記フッ化水素蒸気供給工程は、前記基板の上面に向けて、前記フッ化水素を含む蒸気を吹き付ける工程を含む。
この方法によれば、前記液膜除去領域にフッ化水素を含む蒸気を吹き付けることにより、液膜除去領域の拡大を促進することができる。したがって、前記基板の上面に向けてフッ化水素を含む蒸気を吹き付けることにより、周囲から遮断された遮断空間にフッ化水素を含む蒸気を供給するだけでなく、併せて、液膜除去領域の拡大を促進させることができる。
この発明は、基板を水平に保持する基板保持ユニットと、前記基板保持ユニットに保持されている基板を、その中央部を通る回転軸線周りに回転させる回転ユニットと、前記基板保持ユニットに保持されている基板の上方に、その周囲から遮断された遮断空間を形成するための遮断空間形成ユニットと、前記基板の上面に、フッ酸を含むフッ酸含有液を供給するためのフッ酸含有液供給ユニットと、前記回転ユニットおよび前記フッ酸含有液供給ユニットを制御する制御装置とを含み、前記制御装置は、前記基板の上面にフッ酸含有液を供給して、当該基板の上面を覆うフッ酸含有液の液膜を形成する液膜形成工程と、前記フッ酸含有液の液膜からフッ酸含有液を部分的に排除して、前記フッ酸含有液の液膜に液膜除去領域を形成する液膜除去領域形成工程と、前記液膜除去領域を前記基板の外周に向けて拡大させる液膜除去領域拡大工程と、前記液膜除去領域拡大工程に並行して、前記液膜除去領域と前記フッ酸含有液の液膜との境界の周囲の雰囲気を、フッ化水素を含む蒸気の雰囲気に保つフッ化水素雰囲気保持工程とを実行し、前記フッ化水素雰囲気保持工程は、前記フッ酸含有液の液膜に含まれるフッ酸が前記遮断空間内で蒸発することによりフッ化水素を含む蒸気が前記遮断空間に供給される工程を含む、基板処理装置を提供する。
この発明は、基板を水平に保持する基板保持ユニットと、前記基板保持ユニットに保持されている基板を、その中央部を通る回転軸線周りに回転させる回転ユニットと、前記基板の上面に、処理液を供給するための処理液供給ユニットと、前記基板保持ユニットに保持されている基板の上方に、その周囲から遮断された遮断空間を形成するための遮断空間形成ユニットと、前記遮断空間に、フッ化水素を含む蒸気を供給するフッ化水素蒸気供給ユニットと、前記回転ユニット、前記処理液供給ユニットおよびフッ化水素蒸気供給ユニットを制御する制御装置とを含み、前記制御装置は、基板を水平に保持する基板保持工程と、前記基板の上面に処理液を供給して、当該基板の上面を覆う処理液の液膜を形成する液膜形成工程と、前記処理液の液膜から処理液を部分的に排除して、前記処理液の液膜に液膜除去領域を形成する液膜除去領域形成工程と、前記液膜除去領域を前記基板の外周に向けて拡大させる液膜除去領域拡大工程と、前記液膜除去領域拡大工程に並行して、前記液膜除去領域と前記処理液の液膜との境界の周囲の雰囲気を、フッ化水素を含む蒸気の雰囲気に保つフッ化水素雰囲気保持工程とを実行し、前記フッ化水素雰囲気保持工程は、前記処理液の液膜の周囲の雰囲気を、フッ化水素を含む蒸気の雰囲気に維持すべく、フッ化水素を含む蒸気を前記遮断空間に供給するフッ化水素蒸気供給工程を含む、基板処理装置を提供する。
前記遮断空間形成ユニットは、前記基板保持ユニットに保持されている基板の上面に対向して配置され、前記基板の上面との間に、その周囲から遮断された遮断空間を形成する対向部材を含んでいてもよい。
この発明は、複数の凸状の構造体を含むパターンを表面に有する基板を処理する基板処理方法であって、倒れかけた互いに隣接する構造体同士を接着する異物を、フッ化水素を含む蒸気に曝すことにより、前記構造体から除去する異物除去工程を含み、前記構造体から前記異物を除去することにより、倒れている前記構造体を前記起立状態に弾性復元させる、基板処理方法を提供する。
前記基板処理方法が、前記基板の表面に処理液を供給して、当該基板の表面を覆う処理液の液膜を形成する液膜形成工程と、前記処理液の液膜から処理液を部分的に排除して、前記処理液の液膜に液膜除去領域を形成する液膜除去領域形成工程と、前記液膜除去領域を前記基板の外周に向けて拡大させる液膜除去領域拡大工程とをさらに含んでいてもよい。そして、前記異物除去工程が、前記液膜除去領域拡大工程において実行されてもよい。
この発明の一実施形態では、前記基板処理方法は、前記異物除去工程に並行して、前記基板の裏面を加熱する裏面加熱工程をさらに含む。
この発明は、複数の凸状の構造体を含むパターンを表面に有する基板を、保持する基板保持ユニットと、前記基板の表面に、フッ化水素を含む蒸気を供給するための蒸気供給ユニットと、前記蒸気供給ユニットを制御する制御装置と、を含み、前記制御装置は、前記基板の表面に前記蒸気を供給することにより、倒れかけた互いに隣接する構造体同士を接着する異物を、前記構造体から除去する異物除去工程を実行し、前記構造体から前記異物を除去することにより、倒れている前記構造体を前記起立状態に弾性復元させる、基板処理装置を提供する。
前記基板処理装置が、前記基板保持ユニットに保持されている前記基板を、その中央部を通る回転軸線周りに回転させるための回転ユニットと、前記基板の表面に、処理液を供給するための処理液供給ユニットとをさらに備えていてもよい。そして、前記制御装置が、前記処理液供給ユニットによって前記基板の表面に処理液を供給して、当該基板の表面を覆う処理液の液膜を形成する液膜形成工程と、前記処理液の液膜から処理液を部分的に排除して、前記処理液の液膜に液膜除去領域を形成する液膜除去領域形成工程と、前記回転ユニットによって前記回転軸線周りに回転させることにより前記液膜除去領域を前記基板の外周に向けて拡大させる液膜除去領域拡大工程とを実行してもよい。そして、前記異物除去工程が、前記液膜除去領域拡大工程において実行されてもよい。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置の内部のレイアウトを説明するための平面図である。 図2は、前記基板処理装置に備えられた処理ユニットの構成例を説明するための図解的な断面図である。 図3は、前記基板処理装置の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。 図4は、前記処理ユニットの処理対象の基板の表面を拡大して示す断面図である。 図5は、前記基板処理装置による第1の基板処理例を説明するための流れ図である。 図6は、前記第1の基板処理例に含まれるリンス工程および乾燥工程を説明するためのタイムチャートである。 図7Aは、パドル工程(図6のT1)を説明するための図解的な断面図である。図7Bは、雰囲気形成工程(図6のT2)を説明するための図解的な断面図である。 図7Cは、液膜除去領域形成工程(図6のT3)を説明するための図解的な断面図である。図7Dは、液膜除去領域拡大工程(図6のT4)を説明するための図解的な断面図である。 図7Eは、前記液膜除去領域拡大工程において、図7Dに続く状態を示す図である。図7Fは、スピンドライ工程(図6のT5を説明するための図解的な断面図である。 図8は、乾燥領域拡大工程における基板の表面の状態を拡大して示す断面図である。 図9は、参考形態における基板の表面の状態を拡大して示す断面図である。 図10は、本発明の第2の実施形態に係る基板処理装置に備えられた処理ユニットの構成例を説明するための図解的な断面図である。 図11は、前記基板処理装置の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。 図12は、前記基板処理装置によって実行される第2の基板処理例に含まれるリンス工程および乾燥工程を説明するためのタイムチャートである。 図13Aは、パドル工程(図12のT11)を説明するための図解的な断面図である。図13Bは、雰囲気形成工程(図12のT12)を説明するための図解的な断面図である。 図13Cは、液膜除去領域形成工程(図12のT13)を説明するための図解的な断面図である。図13Dは、液膜除去領域拡大工程(図12のT14)を説明するための図解的な断面図である。 図13Eは、前記液膜除去領域拡大工程において、図13Dに続く状態を示す図である。図13Fは、スピンドライ工程(図12のT15を説明するための図解的な断面図である。 図14は、本発明の第3の実施形態に係る基板処理装置に備えられた処理ユニットの構成例を説明するための図解的な断面図である。 図15は、前記基板処理装置の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。 図16は、前記基板処理装置によって実行されるリンス工程および乾燥工程を説明するためのタイムチャートである。 図17Aは、パドル工程(図16のT21)を説明するための図解的な断面図である。図17Bは、雰囲気形成工程(図16のT22)を説明するための図解的な断面図である。 図17Cは、液膜除去領域形成工程(図16のT23)を説明するための図解的な断面図である。図17Dは、液膜除去領域拡大工程(図16のT24)を説明するための図解的な断面図である。 図17Eは、前記液膜除去領域拡大工程において、図17Dに続く状態を示す図である。図17Fは、スピンドライ工程(図16のT25を説明するための図解的な断面図である。 図18A,18Bは、回復試験の結果を示す画像図である。 図19は、本発明の変形例を示す図である。 図20は、表面張力によるパターン倒壊の原理を説明するための図解的な断面図である。
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置1の内部のレイアウトを説明するための図解的な平面図である。基板処理装置1は、シリコンウエハなどの基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。この実施形態では、基板Wは、円板状の基板である。基板処理装置1は、処理液で基板Wを処理する複数の処理ユニット2と、処理ユニット2で処理される複数枚の基板Wを収容するキャリヤCが載置されるロードポートLPと、ロードポートLPと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボットIRおよびCRと、基板処理装置1を制御する制御装置3とを含む。搬送ロボットIRは、キャリヤCと搬送ロボットCRとの間で基板Wを搬送する。搬送ロボットCRは、搬送ロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。複数の処理ユニット2は、たとえば、同様の構成を有している。
図2は、処理ユニット2の構成例を説明するための図解的な断面図である。
処理ユニット2は、箱形のチャンバ4と、チャンバ4内で一枚の基板Wを水平な姿勢で保持して、基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンチャック(基板保持ユニット、回転ユニット)5と、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面に薬液を供給するための薬液供給ユニット(処理液供給ユニット)6と、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面にリンス液(処理液)を供給するためのリンス液供給ユニット(処理液供給ユニット)7と、スピンチャック5に保持されている基板Wを下面側から加熱するホットプレート(加熱ユニット)8と、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面に対向する対向部材9と、水よりも低い表面張力を有する有機溶剤の一例のIPA(isopropyl alcohol)とフッ酸(フッ化水素(HF)溶液)との混合液(処理液。以下、「有機溶剤/フッ酸混合液」という。図6では、IPA/HF(液))を、スピンチャック5に保持されている基板W上に供給するための有機溶剤/フッ酸混合液供給ユニット(フッ酸含有液供給ユニット)10と、スピンチャック5の周囲を取り囲む筒状のカップ(図示しない)とを含む。
チャンバ4は、スピンチャック5やノズルを収容する箱状の隔壁(図示しない)を有している。隔壁内には、清浄空気(フィルタによってろ過された空気)が、FFU(ファン・フィルタ・ユニット。図示しない)により供給されている。また、チャンバ4内の気体は排気ダクト(図示しない)を介して排気されている。基板Wの処理は、チャンバ4内に、チャンバ4内を下方に流れるダウンフロー(下降流)が形成されている状態で行われる。
スピンチャック5として、基板Wを水平方向に挟んで基板Wを水平に保持する挟持式のチャックが採用されている。具体的には、スピンチャック5は、スピンモータ13と、このスピンモータ13の駆動軸と一体化されたスピン軸14と、スピン軸14の上端に略水平に取り付けられた円板状のスピンベース15とを含む。
スピンベース15の上面には、その周縁部に複数個(3個以上。たとえば6個)の挟持部材16が配置されている。複数個の挟持部材16は、スピンベース15の上面周縁部において、基板Wの外周形状に対応する円周上で適当な間隔を空けて配置されている。
また、スピンチャック5としては、挟持式のものに限らず、たとえば、基板Wの裏面を真空吸着することにより、基板Wを水平な姿勢で保持し、さらにその状態で鉛直な回転軸線まわりに回転することにより、スピンチャック5に保持されている基板Wを回転させる真空吸着式のもの(バキュームチャック)が採用されてもよい。
薬液供給ユニット6は、薬液ノズル17と、薬液ノズル17に接続された薬液配管18と、薬液配管18に介装された薬液バルブ19と、薬液ノズル17を移動させる第1のノズル移動ユニット20とを含む。薬液ノズル17は、たとえば、連続流の状態で液を吐出するストレートノズルである。薬液配管18には、薬液供給源からの薬液が供給されている。
薬液バルブ19が開かれると、薬液配管18から薬液ノズル17に供給された薬液が、薬液ノズル17から下方に吐出される。薬液バルブ19が閉じられると、薬液ノズル17からの薬液の吐出が停止される。第1のノズル移動ユニット20は、薬液ノズル17から吐出された薬液が基板Wの上面に供給される処理位置と、薬液ノズル17が平面視でスピンチャック5の側方に退避した退避位置との間で、薬液ノズル17を移動させる。
薬液の具体例は、エッチング液および洗浄用薬液である。さらに具体的には、薬液は、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(例えばクエン酸、蓚酸など)、有機アルカリ(例えば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなど)、界面活性剤、腐食防止剤のうちの少なくとも1つを含む液であってもよい。
リンス液供給ユニット7は、リンス液ノズル21と、リンス液ノズル21に接続されたリンス液配管22と、リンス液配管22に介装されたリンス液バルブ23と、リンス液ノズル21を移動させる第2のノズル移動ユニット24とを含む。リンス液ノズル21は、たとえば、連続流の状態で液を吐出するストレートノズルである。リンス液配管22には、リンス液供給源からの常温(約23℃)のリンス液が供給されている。
リンス液バルブ23が開かれると、リンス液配管22からリンス液ノズル21に供給されたリンス液が、リンス液ノズル21から下方に吐出される。リンス液バルブ23が閉じられると、リンス液ノズル21からのリンス液の吐出が停止される。第2のノズル移動ユニット24は、リンス液ノズル21から吐出された薬液が基板Wの上面に供給される処理位置と、リンス液ノズル21が平面視でスピンチャック5の側方に退避した退避位置との間で、リンス液ノズル21を移動させる。
リンス液の具体例は、たとえば脱イオン水(DIW)であるが、DIWに限らず、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水および希釈濃度(たとえば、10ppm~100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。
なお、薬液ノズル17およびリンス液ノズル21は、スキャン可能に設けられている必要はなく、たとえば、スピンチャック5の上方において固定的に設けられ、基板Wの上面における所定の位置に処理液(薬液またはリンス液)が着液する、いわゆる固定ノズルの形態が採用されてもよい。
ホットプレート8は、基板Wとほぼ同径または基板Wよりもやや小径を有する円板状を有し、水平姿勢をなしている。ホットプレート8は、スピンベース15の上面と、スピンチャック5に保持されている基板Wの下面との間に配置されている。ホットプレート8は、たとえばセラミックス製のプレート本体の内部に、ヒータ8aを埋設することにより構成されている。ヒータ8aの発熱によりホットプレート8の上面が温められる。ホットプレート8は、鉛直な支持ロッド25によって下方から支持されている。支持ロッド25は、スピンベース15およびスピン軸14に挿入されている。支持ロッド25は、スピンベース15およびスピン軸14と非接触である。支持ロッド25は、チャンバ4に対し、回転不能にかつ昇降可能に設けられている。すなわち、スピンチャック5が回転したとしても、ホットプレート8は回転しない。そのため、スピンチャック5が基板Wを回転させると、基板Wおよびホットプレート8は回転軸線A1まわりに相対回転する。
支持ロッド25には、ホットプレート8を水平姿勢のまま昇降させるためのホットプレート昇降ユニット26が結合されている。ホットプレート昇降ユニット26の駆動により、ホットプレート8は、その上面がスピンベース15の上面に所定の微小間隔を隔てて近接する上位置と、上位置よりも下方に設けられ、ホットプレート8からの輻射熱が基板Wの下面にほとんど届かない下位置との間で昇降可能に設けられている。ホットプレート8の昇降により、ホットプレート8と基板Wとの間隔が変更される。
対向部材9は、遮断板27と、遮断板27に一体回転可能に設けられた上スピン軸28と、遮断板27の中央部を上下方向に貫通する上ノズル29とを含む。遮断板27は、水平に配置された円板部30と、円板部30の外周縁に沿って設けられた筒状部31とを含む。円板部30は、基板Wとほぼ同じ径またはそれ以上の径を有する円板状である。円板部30は、その下面に基板Wの上面全域に対向する円形の基板対向面43を有している。基板対向面43の中央部には、円板部30を上下に貫通する円筒状の貫通穴44が形成されている。貫通穴44は、円筒状の内周面によって区画されている。
筒状部31は、円錐台状であってもよい。筒状部31は、図2に示すように、円板部30の外周縁から外方に広がるように下方に延びていてもよい。また、筒状部31は、図2に示すように、筒状部31の下端に近づくに従って肉厚が減少していてもよい。
上スピン軸28は、遮断板27の中心を通り鉛直に延びる回転軸線A2(基板Wの回転軸線A1と一致する軸線)まわりに回転可能に設けられている。上スピン軸28は、円筒状である。上スピン軸28の内周面は、回転軸線A2を中心とする円筒面に形成されている。上スピン軸28の内部空間は、遮断板27の貫通穴44に連通している。上スピン軸28は、遮断板27の上方で水平に延びる支持アーム32に相対回転可能に支持されている。
この実施形態では、上ノズル29は、中心軸ノズルとして機能する。上ノズル29は、スピンチャック5の上方に配置されている。上ノズル29は、支持アーム32によって支持されている。上ノズル29は、支持アーム32に対して回転不能である。上ノズル29は、遮断板27、上スピン軸28、および支持アーム32と共に昇降する。上ノズル29は、その下端部に、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面中央部に対向する中央部吐出口33を形成している。中央部吐出口33は遮断板27の基板対向面43とほぼ同じ高さまたは基板対向面43より上方に配置されている。上ノズル29と、遮断板27および上スピン軸28との間には、円筒状の筒状間隙34が形成されており、筒状間隙34は、窒素ガス等の不活性ガスが流通する流路として機能している。筒状間隙34の下端は、上ノズル29を取り囲む環状に開口し、周囲吐出口35を形成している。
遮断板27には、電動モータ等を含む構成の遮断板回転ユニット36が結合されている。遮断板回転ユニット36は、遮断板27および上スピン軸28を、支持アーム32に対して回転軸線A2まわりに回転させる。
また、支持アーム32には、電動モータ、ボールねじ等を含む構成の対向部材昇降ユニット37が結合されている。対向部材昇降ユニット37は、対向部材9(遮断板27および上スピン軸28)および上ノズル29を、支持アーム32と共に鉛直方向に昇降する。
対向部材昇降ユニット37は、遮断板27を、基板対向面43がスピンチャック5に保持されている基板Wの上面に近接し、かつ筒状部31の下端の高さが基板W高さよりも下方に位置するような遮断位置(図7B等参照)と、遮断位置よりも大きく上方に退避した退避位置(図2参照)の間で昇降させる。対向部材昇降ユニット37は、たとえば3つの位置(遮断位置、近接位置および退避位置)で遮断板27を保持可能である。遮断位置は、基板対向面43が基板Wの上面との間に、遮断空間38(図7B等参照)を形成するような位置である。遮断空間38は、その周囲の空間から完全に隔離されているわけではないが、当該周囲の空間から遮断空間38への気体の流入はない。すなわち、遮断空間38は、実質的にその周囲の空間と遮断されている。この実施形態では、対向部材9および対向部材昇降ユニット37は、遮断空間38を形成するための遮断空間形成ユニットを構成している。
有機溶剤/フッ酸混合液供給ユニット10は、上ノズル29に有機溶剤/フッ酸混合液を供給する。有機溶剤/フッ酸混合液供給ユニット10は、上ノズル29に接続された有機溶剤液体配管39と、有機溶剤液体配管39に介装された有機溶剤液体バルブ40と、上ノズル29に接続されたフッ酸配管41と、フッ酸配管41に介装されたフッ酸バルブ42とを含む。有機溶剤液体バルブ40とフッ酸バルブ42とが同時に開かれることにより、たとえば常温の有機溶剤液体と、フッ酸とが上ノズル29に供給され、これにより、有機溶剤/フッ酸混合液が中央部吐出口33から下向きに吐出される。
図3は、基板処理装置1の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。
制御装置3は、たとえばマイクロコンピュータを用いて構成されている。制御装置3はCPU等の演算ユニット、固定メモリデバイス、ハードディスクドライブ等の記憶ユニット、および入出力ユニットを有している。記憶ユニットには、演算ユニットが実行するプログラムが記憶されている。
また、制御装置3は、予め定められたプログラムに従って、スピンモータ13、対向部材昇降ユニット37、遮断板回転ユニット36、第1のノズル移動ユニット20、第2のノズル移動ユニット24およびヒータ8a等の動作を制御する。また、制御装置3は、予め定められたプログラムに従って、薬液バルブ19、リンス液バルブ23、有機溶剤液体バルブ40、フッ酸バルブ42等を開閉する。
図4は、処理ユニット2の処理対象の基板Wの表面を拡大して示す断面図である。処理対象の基板Wは、たとえばシリコンウエハであり、そのパターン形成面である表面(上面62)にパターンPが形成されている。パターンPは、たとえば微細パターンである。パターンPは、図4に示すように、凸形状(柱状)を有する構造体61が行列状に配置されたものであってもよい。この場合、構造体61の線幅W1はたとえば10nm~45nm程度に、パターンPの隙間W2はたとえば10nm~数μm程度に、それぞれ設けられている。パターンPの膜厚Tは、たとえば、1μm程度である。また、パターンPは、たとえば、アスペクト比(線幅W1に対する膜厚Tの比)が、たとえば、5~500程度であってもよい(典型的には、5~50程度である)。
また、パターンPは、微細なトレンチにより形成されたライン状のパターンが、繰り返し並ぶものであってもよい。また、パターンPは、薄膜に、複数の微細孔(ボイド(void)またはポア(pore))を設けることにより形成されていてもよい。
パターンPは、たとえば絶縁膜を含む。また、パターンPは、導体膜を含んでいてもよい。より具体的には、パターンPは、複数の膜を積層した積層膜により形成されており、さらには、絶縁膜と導体膜とを含んでいてもよい。パターンPは、単層膜で構成されるパターンであってもよい。絶縁膜は、シリコン酸化膜(SiO膜)やシリコン窒化膜(SiN膜)であってもよい。また、導体膜は、低抵抗化のための不純物を導入したアモルファスシリコン膜であってもよいし、金属膜(たとえば金属配線膜)であってもよい。
また、パターンPは、親水性膜であってもよい。親水性膜として、TEOS膜(シリコン酸化膜の一種)を例示できる。
図5は、基板処理装置1による第1の基板処理例を説明するための流れ図である。図6は、第1の基板処理例に含まれる、リンス工程(図5のS3)および乾燥工程(図5のS4)を説明するためのタイムチャートである。図7A~7Fは、乾燥工程(図5のS4)を説明するための図解的な図である。図8は、液膜除去領域拡大工程T14における基板Wの表面の状態を拡大して示す断面図である。
図1~図6を参照しながら、第1の基板処理例について説明する。図7A~図8については適宜参照する。
未処理の基板W(たとえば直径450mmの円形基板)は、搬送ロボットIR,CRによってキャリヤCから処理ユニット2に搬入され、チャンバ4内に搬入され、基板Wがその表面(パターン形成面)を上方に向けた状態でスピンチャック5に受け渡され、スピンチャック5に基板Wが保持される(図5のS1:基板搬入(基板保持工程))。基板Wの搬入に先立って、薬液ノズル17およびリンス液ノズル21は、スピンチャック5の側方に設定されたホーム位置に退避させられている。また、遮断板27も退避位置に退避させられている。
搬送ロボットCRが処理ユニット2外に退避した後、制御装置3は、薬液工程(図5のステップS2)を実行する。具体的には、制御装置3は、スピンモータ13を制御してスピンベース15を所定の液処理速度(たとえば約800rpm)で回転させる。また、制御装置3は、第1のノズル移動ユニット20を制御することにより、薬液ノズル17を退避位置から処理位置に移動させる。その後、制御装置3は、薬液バルブ19を開いて、回転状態の基板Wの上面に向けて薬液ノズル17から薬液を吐出させる。薬液ノズル17から吐出された薬液は、基板Wの上面に供給された後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。さらに、制御装置3は、基板Wが回転している状態で、基板Wの上面に対する薬液の供給位置を中央部と周縁部との間で移動させる。これにより、薬液の供給位置が、基板Wの上面全域を通過し、基板Wの上面全域が走査(スキャン)され、基板Wの上面全域が均一に処理される。薬液の吐出開始から予め定める期間が経過すると、制御装置3は、薬液バルブ19を閉じて、薬液ノズル17からの薬液の吐出を停止させ、その後、第1のノズル移動ユニット20を制御することにより、薬液ノズル17をスピンチャック5の上方から退避させる。
次いで、制御装置3は、リンス工程(図5のステップS3)を実行する。リンス工程は、基板W上の薬液をリンス液に置換して基板W上から薬液を排除する工程である。具体的には、制御装置3は、第2のノズル移動ユニット24を制御することにより、リンス液ノズル21を退避位置から処理位置に移動させる。その後、制御装置3は、リンス液バルブ23を開いて、回転状態の基板Wの上面に向けてリンス液ノズル21からリンス液を吐出させる。リンス液ノズル21から吐出されたリンス液は、基板Wの上面に供給された後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。さらに、制御装置3は、基板Wが回転している状態で、基板Wの上面に対するリンス液の供給位置を中央部と周縁部との間で移動させる。これにより、リンス液の供給位置が、基板Wの上面全域を通過し、基板Wの上面全域が走査(スキャン)され、基板Wの上面全域が均一に処理される。リンス液の吐出開始から予め定める期間が経過すると、制御装置3は、リンス液バルブ23を閉じて、リンス液ノズル21からのリンス液の吐出を停止させ、その後、第2のノズル移動ユニット24を制御することにより、リンス液ノズル21をスピンチャック5の上方から退避させる。
リンス液の供給開始から予め定める期間が経過すると、基板Wの上面全域がリンス液に覆われている状態で、制御装置3は、スピンモータ13を制御して、基板Wの回転速度を液処理速度からパドル速度(零または約40rpm以下の低回転速度。第1の基板処理例では、たとえば約10rpm)まで段階的に減速させる。その後、基板Wの回転速度をパドル速度に維持する(パドルリンス工程T41(液膜形成工程))。これにより、基板Wの上面に、基板Wの上面全域を覆うリンス液の液膜がパドル状に支持される。この状態では、基板Wの上面のリンス液の液膜に作用する遠心力がリンス液と基板Wの上面との間で作用する表面張力よりも小さいか、あるいは前記の遠心力と前記の表面張力とがほぼ拮抗している。基板Wの減速により、基板W上のリンス液に作用する遠心力が弱まり、基板W上から排出されるリンス液の量が減少する。
基板Wをパドル速度に減速してから予め定める期間が経過すると、制御装置3は、リンス液バルブ23を閉じて、リンス液ノズル21からのリンス液の吐出を停止する。その後、制御装置3は、第2のノズル移動ユニット24を制御して、リンス液ノズル21を退避位置に戻させる。
基板Wをパドル速度に減速してから予め定める期間が経過すると、パドルリンス工程T41が終了し(リンス工程(図5のS3)が終了し)、乾燥工程(ステップS4)の実行が開始される。乾燥工程(ステップS4)は、基板Wの上面に、有機溶剤/フッ酸混合液の液膜(フッ酸含有液の液膜)51を保持させるパドル工程T1(図6参照)と、遮断空間38を、フッ化水素蒸気(HF vapor)を多量に含む雰囲気で満たす(を形成する)雰囲気形成工程T2(図6参照)と、有機溶剤/フッ酸混合液の液膜51から有機溶剤/フッ酸混合液を部分的に排除して、有機溶剤/フッ酸混合液の液膜51の中央部に円形の液膜除去領域52を形成する液膜除去領域形成工程T3(図6参照)と、液膜除去領域52を基板Wの外周に向けて拡大させる液膜除去領域拡大工程T4(図6参照)と、基板Wを振り切り乾燥速度で回転させて基板Wの上面を乾燥させるスピンドライ工程T5(図6参照)とを含む。乾燥工程(図5のS4)の終了後、搬送ロボットCRが、処理ユニット2に進入して、処理済みの基板Wを処理ユニット2外へと搬出する(図5のステップS5)。その基板Wは、搬送ロボットCRから搬送ロボットIRへと渡され、搬送ロボットIRによって、キャリヤCに収納される。
乾燥工程(図5のS4)について詳細に説明する。
パドル工程T1の開始に先立って、制御装置3は、対向部材昇降ユニット37を制御して、遮断板27を、退避位置から近接位置まで下降させる。遮断板27が近接位置に配置された後、制御装置3は、基板Wの回転をパドル速度に保ちながら、有機溶剤液体バルブ40およびフッ酸バルブ42を開いて、遮断板27の中央部吐出口33から有機溶剤/フッ酸混合液を吐出する。これにより、基板Wの上面の液膜に含まれるリンス液が有機溶剤/フッ酸混合液に順次置換されていく。これにより、基板Wの上面に、図7Aに示すように、基板Wの上面全域を覆う有機溶剤/フッ酸混合液の液膜51がパドル状に保持される(パドル工程T1)。有機溶剤/フッ酸混合液の液膜51のバルク部分54(図8参照)の厚みは、パターンPの高さよりも大きい。基板Wの上面全域の液膜がほぼ全て有機溶剤/フッ酸混合液の液膜51に置換されると、制御装置3は、有機溶剤液体バルブ40およびフッ酸バルブ42を閉じて、中央部吐出口33からの有機溶剤/フッ酸混合液の吐出を停止させる。これにより、パドル工程T1が終了する。
基板Wとしてシリコン基板を用いる場合には、有機溶剤/フッ酸混合液の液膜51にシリコン酸化物が析出していることがある。このシリコン酸化物は、基板Wに対する薬液工程(図5のS2)において生成され、それが、乾燥工程(図5のS4)時まで基板W上に残存していたものである。
有機溶剤/フッ酸混合液の吐出停止後、制御装置3は、対向部材昇降ユニット37を制御して、遮断板27を、近接位置から遮断位置まで下降させる。これにより、基板対向面43と基板Wの上面との間に、遮断空間38(図7B参照)が形成される。
また、有機溶剤/フッ酸混合液の吐出停止後、制御装置3は、ヒータ8aを制御して、ホットプレート8を発熱させる。これにより、基板Wが下面側から加熱され、基板W上の有機溶剤/フッ酸混合液の液膜51が昇温させられる。この加熱により、基板W上の有機溶剤/フッ酸混合液の液膜51が約70~80℃(HSiFの融点(約19℃)より
も高く、かつIPAの沸点(約82.4℃)より低い所定の温度)に温められる。有機溶剤/フッ酸混合液の液膜51に含まれる有機溶剤液体を昇温させることにより、リンス液から有機溶剤への置換性能を向上させることができる。
そして、制御装置3は、基板Wに対し処理液の供給や処理ガスを停止したまま(周囲吐出口35からの不活性ガスの吐出も停止したまま)、基板Wをパドル速度で回転させる。有機溶剤/フッ酸混合液の液膜51の昇温により、有機溶剤/フッ酸混合液の液膜51に含まれるフッ酸が蒸発させられる。この蒸発により発生したフッ化水素の蒸気(以下、「フッ化水素蒸気」という。)が遮断空間38に供給される。フッ酸は、その沸点が約19℃であるので、常温(たとえば約23℃)でも沸騰するが、有機溶剤/フッ酸混合液の液膜51を約70~80℃まで昇温させることにより、フッ酸の蒸発をより一層促進させることがさせることができる。これにより、図7Bに示すように、遮断空間38の雰囲気が、フッ化水素蒸気(HF vapor)で満たされる(雰囲気形成工程T2)。
パドル工程T1の終了から予め定める期間が経過すると、制御装置3は、スピンモータ13を制御して基板Wの回転速度を加速させる。具体的には、制御装置3は、第1の回転速度(たとえば約50rpm)に向けて、基板Wの回転速度を徐々に上昇させる。基板Wの回転速度の上昇に伴って、基板Wの回転による遠心力が増大し、これにより、基板Wの中央部の有機溶剤/フッ酸混合液が外方に押し拡げられる。これにより、図7Cに示すように、基板Wの中央部において有機溶剤/フッ酸混合液の液膜51が部分的に除去され、その結果、基板Wの中央部に小径の円形の液膜除去領域52が形成される(液膜除去領域形成工程T3)。液膜除去領域52の形成は、遮断空間38が、フッ化水素蒸気(HF vapor)で満たされた状態で行われる。すなわち、有機溶剤/フッ酸混合液の液膜51における液膜除去領域52との境界53(以下、「液膜境界53」という)の周囲の雰囲気がフッ化水素蒸気(HF vapor)の雰囲気に保たれる。
液膜除去領域52の形成後、制御装置3は、スピンモータ13を制御して基板Wの回転速度を第1の回転速度(たとえば約50rpm)に維持する。これにより、液膜除去領域52はゆっくりと拡大する(液膜除去領域拡大工程T4)。液膜除去領域52の拡大に伴って、図7Dに示すように、液膜境界53は、径方向外方に向けて移動する。図7Eに示すように、液膜除去領域拡大工程T4において、液膜除去領域52は基板Wの上面の全域に拡大する。すなわち、液膜境界53も、基板Wの上面周縁まで移動する。液膜除去領域52の拡大も、遮断空間38が、フッ化水素蒸気(HF vapor)で満たされた状態で行われる(フッ化水素雰囲気保持工程)。すなわち、液膜境界53の周囲の雰囲気がフッ化水素蒸気(HF vapor)に保たれながら、液膜境界53が、基板Wの中央部から基板Wの上面周縁まで移動する。
図8に示すように、液膜境界53の移動に伴って、基板Wの表面においてパターンP間から有機溶剤/フッ酸混合液(フッ酸の蒸発により、実質的には有機溶剤液体)が、基板Wの中央部から基板Wの上面周縁に向けて順に除去されていく。液膜境界53が通過するパターンPに作用する表面張力に差が生じ、これにより、パターンPがバルク部分54側(つまり、基板Wの外方)に向けて瞬間的に倒壊する。有機溶剤液体(IPA液)は、水よりも低い表面張力を有しているが、パターンPが微細パターンであるために、瞬間的なパターン倒壊が発生する。
図9は、参考形態における基板Wの表面の状態を拡大して示す断面図である。この参考形態では、液膜除去領域拡大工程において、遮断空間38を設けずに基板Wの上面の周囲の雰囲気を乾燥空気(Dry Air)にする点で、第1の基板処理例と相違している。
図9の場合には、瞬間的に倒壊したパターンPの倒壊状態が維持されるものと考えられる。すなわち、弾性を有しているパターンに瞬間的に倒壊が生じた場合、パターンP自身が持つ弾性によって、倒壊しているパターンPに起立(回復)しようとする力がある程度働く。しかしながら、瞬間的に倒壊するパターンPの先端部PAが、有機溶剤/フッ酸混合液の液膜51に析出しているシリコン酸化物(すなわち、生成物55(異物))を介して、当該パターンPとバルク部分54側(つまり、基板Wの外方)に隣接するパターンの先端部と接着する。これにより、パターンPの起立(回復)が阻止され、パターンPの倒壊状態が維持される。このようなメカニズムにより、基板Wの全域でパターン倒壊が発生すると考えられる。
これに対し、図8に示すように、第1の基板処理例では、液膜境界53の周囲の雰囲気がフッ化水素蒸気(HF vapor。フッ化水素を含む蒸気)に保たれながら、液膜境界53が基板Wの上面中央部から基板Wの上面周縁まで移動する。液膜境界53の周囲の雰囲気がフッ化水素蒸気(HF vapor)に保たれていると、有機溶剤/フッ酸混合液の液膜51に析出しているシリコン酸化物と反応し、式(2)に示すように、HSiFと水とに分解する。
SiO+6HF→HSiF+2HO ・・・(2)
そのため、液膜境界53の周囲の雰囲気に含まれるフッ化水素が、有機溶剤/フッ酸混合液の液膜51に析出しているシリコン酸化物と反応し、その結果、有機溶剤/フッ酸混合液の液膜51に析出しているシリコン酸化物がパターンPの先端部Paに付着しないか、あるいはパターンPの先端部Paに付着していたシリコン酸化物(すなわち、生成物55(図9参照))も当該パターンPの先端部Paから除去される(異物除去工程)。
また、液膜除去領域拡大工程T4において、有機溶剤/フッ酸混合液の液膜51は約70~80℃に保持されている。そのため、フッ化水素蒸気(HF vapor)に含まれるフッ化水素がシリコン酸化物と反応することにより、HSiFの残渣が生成される。しかし、シリコン酸化物が、有機溶剤/フッ酸混合液の液膜51に含まれる、約70~80℃の液温を有する有機溶剤/フッ酸混合液(フッ酸の蒸発により、実質的には有機溶剤液体)に接液することにより、このような残渣の蒸発が促進される。HSiFの融点は約19℃であるので、約70~80℃の環境下では、残渣の蒸発が促進される。これにより、残渣を蒸発させて基板Wの表面から除去することができる。
また、有機溶剤/フッ酸混合液の液膜51の液温が、HSiFの融点(約19℃)よりも高く、かつIPAの沸点(約82.4℃)より低い温度であるので、有機溶剤/フッ酸混合液の液膜51が膜状を保ちながら、HSiFの残渣の除去を図ることが可能である。
図7Fに示すように、液膜除去領域52が基板Wの上面の全域に拡大した後、制御装置3は、基板Wの回転を、振り切り乾燥速度(たとえば約1500rpm)までさらに加速させる。これにより、基板Wの上面の液体を振り切ることができ、これにより、基板Wの上面を完全に乾燥させることができる。
基板Wの回転の加速から予め定める期間が経過すると、制御装置3は、スピンモータ13を制御してスピンチャック5の回転を停止させる。これにより、乾燥工程(図5のS4)が終了する。
乾燥工程(図5のS4)の終了後、制御装置3は、ヒータ8aを制御して、ホットプレート8の発熱を停止させる。また、制御装置3は、対向部材昇降ユニット37を制御して、遮断板27を、退避位置から近接位置まで上昇させる。これにより、遮断空間38が消失する。その後、搬送ロボットCRによって、基板Wが搬出される。
以上によりこの実施形態によれば、液膜境界53の周囲の雰囲気がフッ化水素蒸気(HF vapor)に保たれながら、液膜境界53が、基板Wの上面中央部から基板Wの上面周縁まで移動する。液膜境界53の周囲の雰囲気がフッ化水素蒸気(HF vapor)に保たれていると、フッ化水素蒸気(HF vapor)に含まれるフッ化水素が、有機溶剤/フッ酸混合液の液膜51に析出しているシリコン酸化物と反応し、HSiFと水とに分解する。
これにより、有機溶剤/フッ酸混合液の液膜51に析出しているシリコン酸化物がパターンPの先端部Paに付着しないか、あるいはパターンPの先端部Paに付着していたシリコン酸化物(すなわち、生成物55(図9参照))も当該パターンPの先端部Paから除去される。
また、液膜除去領域拡大工程T4において、有機溶剤/フッ酸混合液の液膜51を約70~80℃に保持されている。そのため、フッ化水素蒸気(HF vapor)に含まれるフッ化水素がシリコン酸化物と反応することにより、HSiFの残渣が生成される。しかし、シリコン酸化物が、有機溶剤/フッ酸混合液の液膜51に含まれる、約70~80℃の液温を有する有機溶剤/フッ酸混合液(フッ酸の蒸発により、実質的には有機溶剤液体)に接液することにより、このような残渣の蒸発が促進される。HSiFの融点は約19℃であるので、約70~80℃の環境下では、残渣の蒸発が促進される。これ
により、残渣を蒸発させて基板Wの表面から除去することができる。
これにより、各液膜境界53では、パターンPが瞬間的に倒壊されても、その倒壊状態は維持されずに、その後、パターンP自身が持つ弾性によって起立(復元)する。瞬間的な倒壊では、倒壊形状は記憶されないことも、パターンPが復元することの要因の一つである。ゆえに、パターンPの倒壊を効果的に抑制しながら、基板Wの上面を乾燥させることができる。
図10は、本発明の第2の実施形態に係る基板処理装置201に備えられた処理ユニット202の構成例を説明するための図解的な断面図である。
第2の実施形態に示す実施形態において、前述の第1の実施形態と共通する部分には、図1~図8の場合と同一の参照符号を付し、説明を省略する。
処理ユニット202は、有機溶剤/フッ酸混合液供給ユニット10(図2参照)に代えて、水よりも低い表面張力を有する有機溶剤の液体の一例のIPA(isopropyl alcohol)液をスピンチャック5に保持されている基板W上に供給するための有機溶剤液体供給ユニット203と、スピンチャック5に保持されている基板W上にフッ化水素蒸気(HF vapor)を供給するためのフッ化水素蒸気供給ユニット204とを含む点で、第1の実施形態に係る処理ユニット2と相違している。また、処理ユニット202は、ホットプレート8に代えて、スピンチャック5に保持されている基板Wの下面(パターン形成面とは反対側の裏面)に、加熱流体の一例である温水を供給する下面供給ユニット205を、加熱ユニットとして備える点で、処理ユニット2と相違している。
有機溶剤液体供給ユニット203は、上ノズル29に有機溶剤の液体を供給するための有機溶剤液体配管206と、有機溶剤液体配管206を開閉するための有機溶剤液体バルブ207と、有機溶剤液体配管206の開度を調整して上ノズル29からの有機溶剤液体の吐出流量を調整するための流量調整バルブ208とを含む。図示はしないが、流量調整バルブ208は、弁座が内部に設けられたバルブボディと、弁座を開閉する弁体と、開位置と閉位置との間で弁体を移動させるアクチュエータとを含む。他の流量調整バルブについても同様である。
フッ化水素蒸気供給ユニット204は、上ノズル29にフッ化水素蒸気(HF vapor)を供給するためのフッ化水素蒸気配管209と、フッ化水素蒸気配管209を開閉するためのフッ化水素蒸気バルブ210とを含む。フッ化水素蒸気配管209に供給されるフッ化水素蒸気(HF vapor)は、キャリアガス(たとえば、窒素ガス等の不活性ガス)を含むものであってもよい。
フッ化水素蒸気バルブ210が閉じられた状態で有機溶剤液体バルブ207が開かれると、上ノズル29に有機溶剤液体が供給され、中央部吐出口33から下方に向けて、たとえば常温の有機溶剤液体が吐出される。
一方、有機溶剤液体バルブ207が閉じられた状態でフッ化水素蒸気バルブ210が開かれると、上ノズル29にフッ化水素蒸気が供給され、中央部吐出口33から下方に向けてフッ化水素蒸気(HF vapor)が吐出される。中央部吐出口33からのフッ化水素蒸気の吐出流量は、流量調整バルブ208の開度の調整により変更可能である。
下面供給ユニット205は、加熱流体を上方に吐出する下面ノズル211と、下面ノズル211に加熱流体を導く加熱流体配管212と、加熱流体配管212に介装された加熱流体バルブ213とを含む。下面ノズル211の上端には、スピンチャック5に保持された基板Wの下面(裏面)の中央部に対向する吐出口211aが形成されている。加熱流体バルブ213が開かれると、吐出口211aから上方に向けて加熱流体が吐出される。
この実施形態では、加熱流体は、高温(たとえば、IPAの沸点(約82.4℃)に近い温度(約70~80℃)に加熱された加熱液体である。加熱液体の種類として、純水(DIW)を挙げることができるが、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、IPA(イソプロピルアルコール、)または希釈濃度(たとえば、10~100ppm程度)の塩酸水、などであってもよい。また、加熱液体に代えて、加熱高温(たとえば、IPAの沸点(約82.4℃)に近い温度(約70~80℃)に加熱された加熱ガスが吐出されていてもよい。
図11は、基板処理装置201の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。
制御装置3は、予め定められたプログラムに従って、スピンモータ13、対向部材昇降ユニット37、遮断板回転ユニット36、第1のノズル移動ユニット20および第2のノズル移動ユニット24等の動作を制御する。また、制御装置3は、予め定められたプログラムに従って、薬液バルブ19、リンス液バルブ23、有機溶剤液体バルブ207、フッ化水素蒸気バルブ210、加熱流体バルブ213等を開閉する。また、制御装置3は、予め定められたプログラムに従って、流量調整バルブ208の開度を調整する。
図12は、基板処理装置201において実行される第2の基板処理例に含まれる、リンス工程(図5のS3)および乾燥工程(図5のS4)を説明するためのタイムチャートである。図13A~13Fは、乾燥工程(図5のS4)を説明するための図解的な図である。
第2の基板処理例は、第1の基板処理例と同様に、図5のステップS1~ステップS5の各工程と同等の工程を含んでいる。
以下では、図10~図12を参照しながら、第2の基板処理例について、第1の基板処理例と異なる部分を中心に説明する。図13A~13Fについては適宜参照する。
第2の基板処理例に係る乾燥工程(図5のS4)は、基板Wの上面に、有機溶剤液体の液膜(処理液の液膜)251を保持させるパドル工程T11(図12参照)と、遮断空間38を、フッ化水素蒸気を多量に含む雰囲気で満たす(を形成する)雰囲気形成工程T12(図12参照)と、有機溶剤液体の液膜251から有機溶剤液体を部分的に排除して、有機溶剤液体の液膜251の中央部に円形の液膜除去領域252を形成する液膜除去領域形成工程T13(図12参照)と、液膜除去領域252を基板Wの外周に向けて拡大させる液膜除去領域拡大工程T14(図12参照)と、基板Wを振り切り乾燥速度で回転させて基板Wの上面を乾燥させるスピンドライ工程T15(図12参照)とを含む。
第2の基板処理例に係る乾燥工程(図5のS4)について詳細に説明する。
パドル工程T11の開始に先立って、制御装置3は、対向部材昇降ユニット37を制御して、遮断板27を、退避位置から近接位置まで下降させる。遮断板27が近接位置に配置された後、制御装置3は、基板Wの回転をパドル速度に保ちつつ、フッ化水素蒸気バルブ210を閉じながら有機溶剤液体バルブ207を開いて、遮断板27の中央部吐出口33から有機溶剤液体を吐出する。これにより、基板Wの上面の液膜に含まれるリンス液が有機溶剤液体に順次置換されていく。これにより、基板Wの上面に、図13Aに示すように、基板Wの上面全域を覆う有機溶剤液体の液膜251がパドル状に保持される(パドル工程T11)。有機溶剤液体の液膜251のバルク部分の厚みは、パターンPの高さよりも大きい。基板Wの上面全域の液膜がほぼ全て有機溶剤液体の液膜251に置換されると、制御装置3は、有機溶剤液体バルブ207を閉じて、中央部吐出口33からの有機溶剤液体の吐出を停止させる。これにより、パドル工程T11が終了する。
基板Wとしてシリコン基板を用いる場合には、有機溶剤液体の液膜251にシリコン酸化物が析出していることがある。このシリコン酸化物は、基板Wに対する薬液工程(図5のS2)において生成され、それが、乾燥工程(図5のS4)時まで基板W上に残存していたものである。
有機溶剤液体の吐出停止後、制御装置3は、対向部材昇降ユニット37を制御して、遮断板27を、近接位置から遮断位置まで下降させる。これにより、基板対向面43と基板Wの上面との間に、遮断空間38(図13B参照)が形成される。
また、有機溶剤液体の吐出停止後、制御装置3は、加熱流体バルブ213を開く。それにより、下面ノズル211の吐出口211aから加熱流体が上向きに吐出され、基板Wの下面(裏面)に加熱流体が供給される。それにより、下面ノズル211の吐出口211aから吐出された加熱流体は、基板Wの下面に着液し、基板Wの下面を覆う加熱流体の液膜を形成する。これにより、基板Wが下面側から加熱され、基板W上の有機溶剤液体の液膜251が昇温させられる(裏面加熱工程)。この加熱により、基板W上の有機溶剤液体の液膜251が約70~80℃(HSiFの融点(約19℃)よりも高く、かつIPAの沸点(約82.4℃)より低い所定の温度)に温められる。下面ノズル211からの加熱流体の吐出流量は、当該加熱流体が基板Wの周縁部から表面側に回り込まないような大きさに設定されている。有機溶剤液体の液膜251に含まれる有機溶剤液体を昇温させることにより、リンス液から有機溶剤への置換性能を向上させることができる。
また、制御装置3は、基板Wのパドル速度での回転を維持しつつ、有機溶剤液体バルブ207を閉じながらフッ化水素蒸気バルブ210を開いて、遮断板27の中央部吐出口33からフッ化水素蒸気を吐出する。このときのフッ化水素蒸気の吐出流量は小流量(たとえば約5(リットル/分)である。中央部吐出口33からフッ化水素蒸気(HF vapor)を所定時間吐出することにより、遮断空間38がフッ化水素蒸気(HF vapor)で満たされる(雰囲気形成工程T12)。
パドル工程T11の終了から予め定める期間が経過すると、制御装置3は、スピンモータ13を制御して基板Wの回転速度を加速させる。具体的には、制御装置3は、第1の回転速度(たとえば約50rpm)に向けて、基板Wの回転速度を徐々に上昇させる。基板Wの回転速度の上昇に伴って、基板Wの回転による遠心力が増大し、これにより、基板Wの中央部の有機溶剤液体が外方に押し拡げられる。これにより、図13Cに示すように、基板Wの中央部において有機溶剤液体の液膜251が部分的に除去され、その結果、基板Wの中央部に小径の円形の液膜除去領域252が形成される(液膜除去領域形成工程T13)。液膜除去領域252の形成は、遮断空間38が、フッ化水素蒸気(HF vapor)で満たされた状態で行われる。すなわち、有機溶剤液体の液膜251における液膜除去領域252との境界253(以下、「液膜境界253」という)の周囲の雰囲気がフッ化水素蒸気(HF vapor)の雰囲気に保たれる。
液膜除去領域252の形成後、制御装置3は、スピンモータ13を制御して基板Wの回転速度を第1の回転速度(たとえば約50rpm)に維持する。これにより、液膜除去領域252はゆっくりと拡大する(液膜除去領域拡大工程T14)。液膜除去領域252の拡大に伴って、図13Dに示すように、液膜境界253は、径方向外方に向けて移動する。図13Eに示すように、液膜除去領域拡大工程T14において、液膜除去領域252は基板Wの上面の全域に拡大する。すなわち、液膜境界253も、基板Wの上面周縁まで移動する。液膜除去領域252の拡大も、遮断空間38が、フッ化水素蒸気(HF vapor)で満たされた状態で行われる(フッ化水素雰囲気保持工程)。すなわち、液膜境界253の周囲の雰囲気がフッ化水素蒸気(HF vapor)に保たれながら、液膜境界253が、基板Wの中央部から基板Wの上面周縁まで移動する。
液膜除去領域拡大工程T14では、液膜境界253の移動に伴って、基板Wの表面においてパターンP(図4参照)間から有機溶剤液体が、基板Wの中央部から基板Wの上面周縁に向けて順に除去されていく。液膜境界253が通過するパターンPに作用する表面張力に差が生じ、これにより、パターンPがバルク部分側(つまり、基板Wの外方)に向けて瞬間的に倒壊する。
第2の基板処理例では、液膜境界253の周囲の雰囲気がフッ化水素蒸気(HF vapor)に保たれながら、液膜境界253が基板Wの上面中央部から基板Wの上面周縁まで移動する。液膜境界253の周囲の雰囲気がフッ化水素蒸気(HF vapor)に保たれていると、フッ化水素蒸気(HF vapor)に含まれるフッ化水素が、有機溶剤液体の液膜251に析出しているシリコン酸化物と反応し、HSiFと水とに分解する。
そのため、液膜境界253の周囲の雰囲気に含まれるフッ化水素が、有機溶剤液体の液膜251に析出しているシリコン酸化物と反応し、その結果、有機溶剤液体の液膜251に析出しているシリコン酸化物がパターンPの先端部Pa(図4参照)に付着しないか、あるいはパターンPの先端部Paに付着していたシリコン酸化物(すなわち、生成物55(図9参照))も当該パターンPの先端部Paから除去される。
また、液膜除去領域拡大工程T14において、有機溶剤液体の液膜251は約70~80℃に保持されている。そのため、フッ化水素蒸気(HF vapor)に含まれるフッ化水素がシリコン酸化物と反応することにより、HSiFの残渣が生成される。しかし、シリコン酸化物が、有機溶剤液体の液膜251に含まれる、約70~80℃の液温を有する有機溶剤液体に接液することにより、このような残渣の蒸発が促進される。HSiFの融点は約19℃であるので、約70~80℃の環境下では、残渣の蒸発が促進される。これにより、残渣を蒸発させて基板Wの表面から除去することができる。
また、有機溶剤液体の液膜251の液温が、HSiFの融点(約19℃)よりも高く、かつIPAの沸点(約82.4℃)より低い温度であるので、有機溶剤液体の液膜251が膜状を保ちながら、HSiFの残渣を良好に除去することができる。
図13Fに示すように、液膜除去領域252が基板Wの上面の全域に拡大した後、制御装置3は、加熱流体バルブ213を閉じて、基板Wの下面への加熱流体の吐出を停止させる。また、制御装置3は、流量調整バルブ208の開度を調整して、中央部吐出口33から吐出されるフッ化水素蒸気(HF vapor)の吐出流量を大流量(たとえば約150(リットル/分)に上昇させる。また、制御装置3は、基板Wの回転を、振り切り乾燥速度(たとえば約1500rpm)までさらに加速させる。これにより、基板Wの上面の液体を振り切ることができ、これにより、基板Wの上面を完全に乾燥させることができる。
乾燥工程(図5のS4)の終了後、制御装置3は、対向部材昇降ユニット37を制御して、遮断板27を、退避位置から近接位置まで上昇させる。これにより、遮断空間38が消失する。また、制御装置3は、フッ化水素蒸気バルブ210を閉じて、中央部吐出口33からのフッ化水素蒸気(HF vapor)の吐出を停止させる。その後、搬送ロボットCRによって、基板Wが搬出される。
以上により、第2の実施形態によれば、第1の実施形態に関連して説明した作用効果と同等の作用効果を奏する。
図14は、本発明の第3の実施形態に係る基板処理装置301に備えられた処理ユニット302の構成例を説明するための図解的な断面図である。
第3の実施形態に示す実施形態において、前述の第2の実施形態と共通する部分には、図10~図13Fの場合と同一の参照符号を付し、説明を省略する。
処理ユニット302は、有機溶剤液体供給ユニット203(図10参照)およびフッ化水素蒸気供給ユニット204(図10参照)に代えて、水よりも低い表面張力を有する有機溶剤の液体の一例のIPA(isopropyl alcohol)を含む蒸気(以下、「有機溶剤蒸気」という)をスピンチャック5に保持されている基板W上に供給するための有機溶剤液体供給ユニット303と、スピンチャック5に保持されている基板W上にフッ化水素蒸気(HF vapor)を供給するためのフッ化水素蒸気供給ユニット304とを含む点で、第2の実施形態に係る処理ユニット202と相違している。また、処理ユニット202は、ホットプレート8に代えて、スピンチャック5に保持されている基板Wの下面(パターン形成面とは反対側の裏面)に、加熱流体の一例である温水を供給する下面供給ユニット205を、加熱ユニットとして備えている。
また、処理ユニット302は、リンス液供給ユニット7に代えて、スピンチャック5に保持されている基板W上にリンス液を供給するためのリンス液供給ユニット305を含む点で、処理ユニット202と相違している。
有機溶剤液体供給ユニット303は、上ノズル29に有機溶剤蒸気を供給するための有機溶剤蒸気配管306と、有機溶剤蒸気配管306を開閉するための有機溶剤蒸気バルブ307と、有機溶剤蒸気配管306の開度を調整して上ノズル29への有機溶剤蒸気の供給流量を調整するための流量調整バルブ308とを含む。有機溶剤蒸気配管306に供給される有機溶剤蒸気は、キャリアガス(たとえば、窒素ガス等の不活性ガス)を含むものであってもよい。
フッ化水素蒸気供給ユニット304は、上ノズル29にフッ化水素蒸気(HF vapor)を供給するためのフッ化水素蒸気配管309と、フッ化水素蒸気配管309を開閉するためのフッ化水素蒸気バルブ310と、フッ化水素蒸気配管309の開度を調整して上ノズル29へのフッ化水素蒸気の供給流量を調整するための流量調整バルブ311とを含む。フッ化水素蒸気配管309に供給されるフッ化水素蒸気(HF vapor)は、キャリアガス(たとえば、窒素ガス等の不活性ガス)を含むものであってもよい。
リンス液供給ユニット305は、上ノズル29にリンス液を供給するためのリンス液配管312と、リンス液配管312を開閉するためのリンス液バルブ313とを含む。
リンス液バルブ313が閉じられた状態で、有機溶剤蒸気バルブ307とフッ化水素蒸気バルブ310とが同時に開かれることにより、有機溶剤蒸気とフッ化水素蒸気とが上ノズル29に供給され、有機溶剤とフッ化水素とを含む有機溶剤/フッ化水素混合蒸気(IPA/HF vapor)が中央部吐出口33から下向きに吐出される。また、中央部吐出口33からのフッ化水素蒸気の有機溶剤/フッ化水素混合蒸気(IPA/HF vapor)の吐出流量は、流量調整バルブ308の開度調整および流量調整バルブ311の開度調整により変更可能である。
一方、有機溶剤蒸気バルブ307およびフッ化水素蒸気バルブ310が閉じられた状態でリンス液バルブ313が開かれると、上ノズル29にリンス液バルブ313が供給され、中央部吐出口33から下方に向けてリンス液が吐出される。
図15は、基板処理装置301の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。
制御装置3は、予め定められたプログラムに従って、スピンモータ13、対向部材昇降ユニット37、遮断板回転ユニット36および第1のノズル移動ユニット20等の動作を制御する。また、制御装置3は、予め定められたプログラムに従って、薬液バルブ19、リンス液バルブ23、加熱流体バルブ213、有機溶剤蒸気バルブ307、フッ化水素蒸気バルブ310、リンス液バルブ313等を開閉する。また、制御装置3は、予め定められたプログラムに従って、流量調整バルブ308,311の開度を調整する。
図16は、基板処理装置301において実行される第3の基板処理例に含まれる、リンス工程(図5のS3)および乾燥工程(図5のS4)を説明するためのタイムチャートである。図17A~17Fは、乾燥工程(図5のS4)を説明するための図解的な図である。
第3の基板処理例は、第1の基板処理例や第2の基板処理例と同様に、図5のステップS1~ステップS5の各工程と同等の工程を含んでいる。
以下では、図14~図16を参照しながら、第3の基板処理例について、第2の基板処理例と異なる部分を中心に説明する。図17A~17Fについては適宜参照する。
第2の基板処理例に係るリンス工程(図5のS3。パドルリンス工程T41を含む。)においては、中央部吐出口33から吐出されるリンス液を用いて、基板Wの上面にリンス処理が施される。具体的には、制御装置3は、有機溶剤蒸気バルブ307およびフッ化水素蒸気バルブ310を閉じながら、リンス液バルブ313を開く。これにより、中央部吐出口33からリンス液が吐出される。パドルリンス工程T41では、基板Wの回転速度がパドル速度に維持される。これにより、基板Wの上面に、図17Aに示すように、基板Wの上面全域を覆うリンス液の液膜351(処理液の液膜)がパドル状に保持される。リンス液の液膜351のバルク部分の厚みは、パターンPの高さよりも大きい。基板Wをパドル速度に減速してから予め定める期間が経過すると、制御装置3は、リンス液バルブ313を閉じて、中央部吐出口33からのリンス液の吐出を停止する。その後、乾燥工程(図5のS4)が実行される。
第3の基板処理例に係る乾燥工程(図5のS4)は、遮断空間38を、有機溶剤/フッ化水素混合蒸気(IPA/HF vapor)を多量に含む雰囲気で満たす(を形成する)雰囲気形成工程T22(図16参照)と、リンス液の液膜351から有機溶剤液体を部分的に排除して、リンス液の液膜351の中央部に円形の液膜除去領域352を形成する液膜除去領域形成工程T23(図16参照)と、液膜除去領域352を基板Wの外周に向けて拡大させる液膜除去領域拡大工程T24(図16参照)と、基板Wを振り切り乾燥速度で回転させて基板Wの上面を乾燥させるスピンドライ工程T25(図16参照)とを含む。すなわち、第3の基板処理例に係る乾燥工程(図5のS4)は、パドル工程T1(図6参照)やパドル工程T11(図12参照)に相当する工程を備えていない。
第3の基板処理例に係る乾燥工程(図5のS4)について詳細に説明する。
基板Wとしてシリコン基板を用いる場合には、リンス液の液膜351にシリコン酸化物が析出していることがある。このシリコン酸化物は、基板Wに対する薬液工程(図5のS2)において生成され、それが、乾燥工程(図5のS4)時まで基板W上に残存していたものである。
雰囲気形成工程T22の開始に先立って、制御装置3は、対向部材昇降ユニット37を制御して、遮断板27を、退避位置から遮断位置まで下降させる。これにより、基板対向面43と基板Wの上面との間に、遮断空間38(図17B参照)が形成される。
また、有機溶剤液体の吐出停止後、制御装置3は、加熱流体バルブ213を開く。これにより、基板Wが下面側から加熱され、基板W上のリンス液の液膜351が約70~80℃まで昇温させられる。
また、制御装置3は、基板Wのパドル速度での回転を維持しつつ、リンス液バルブ313を閉じ、かつ有機溶剤蒸気バルブ307およびフッ化水素蒸気バルブ310が同時に開いて、遮断板27の中央部吐出口33から有機溶剤/フッ化水素混合蒸気(IPA/HF vapor)を吐出する。このときの有機溶剤/フッ化水素混合蒸気(IPA/HF vapor)の吐出流量は小流量(たとえば約5(リットル/分)である。中央部吐出口33から有機溶剤/フッ化水素混合蒸気(IPA/HF vapor)を所定時間吐出することにより、遮断空間38が有機溶剤/フッ化水素混合蒸気(IPA/HF vapor)で満たされる(雰囲気形成工程T22)。
パドルリンス工程T41の終了から予め定める期間が経過すると、制御装置3は、スピンモータ13を制御して基板Wの回転速度を加速させる。具体的には、制御装置3は、第1の回転速度(たとえば約50rpm)に向けて、基板Wの回転速度を徐々に上昇させる。基板Wの回転速度の上昇に伴って、基板Wの回転による遠心力が増大し、これにより、基板Wの中央部の有機溶剤液体が外方に押し拡げられる。これにより、図17Cに示すように、基板Wの中央部においてリンス液の液膜351が部分的に除去され、その結果、基板Wの中央部に小径の円形の液膜除去領域352が形成される(液膜除去領域形成工程T23)。液膜除去領域352の形成は、遮断空間38が、有機溶剤/フッ化水素混合蒸気(IPA/HF vapor)で満たされた状態で行われる。すなわち、リンス液の液膜351における液膜除去領域352との境界353(以下、「液膜境界353」という)の周囲の雰囲気が有機溶剤/フッ化水素混合蒸気(IPA/HF vapor)の雰囲気に保たれる。
液膜除去領域352の形成後、制御装置3は、スピンモータ13を制御して基板Wの回転速度を第1の回転速度(たとえば約50rpm)に維持する。これにより、液膜除去領域352はゆっくりと拡大する(液膜除去領域拡大工程T24)。液膜除去領域352の拡大に伴って、図17Dに示すように、液膜境界353は、径方向外方に向けて移動する。図17Eに示すように、液膜除去領域拡大工程T24において、液膜除去領域352は基板Wの上面の全域に拡大する。すなわち、液膜境界353も、基板Wの上面周縁まで移動する。液膜除去領域352の拡大も、遮断空間38が、有機溶剤/フッ化水素混合蒸気(IPA/HF vapor)で満たされた状態で行われる(フッ化水素雰囲気保持工程)。すなわち、液膜境界353の周囲の雰囲気が有機溶剤/フッ化水素混合蒸気(IPA/HF vapor)に保たれながら、液膜境界353が、基板Wの中央部から基板Wの上面周縁まで移動する。
液膜除去領域拡大工程T24では、液膜境界353の移動に伴って、基板Wの表面においてパターンP(図4参照)間からリンス液が、基板Wの中央部から基板Wの上面周縁に向けて順に除去されていく。液膜境界353が通過するパターンPに作用する表面張力に差が生じ、これにより、パターンPがバルク部分側(つまり、基板Wの外方)に向けて瞬間的に倒壊する。
第3の基板処理例では、液膜境界353の周囲の雰囲気が有機溶剤/フッ化水素混合蒸気(IPA/HF vapor)に保たれながら、液膜境界353が基板Wの上面中央部から基板Wの上面周縁まで移動する。液膜境界353の周囲の雰囲気が有機溶剤/フッ化水素混合蒸気(IPA/HF vapor)に保たれていると、有機溶剤/フッ化水素混合蒸気(IPA/HF vapor)に含まれるフッ化水素が、リンス液の液膜351に析出しているシリコン酸化物と反応し、HSiFと水とに分解する。
そのため、液膜境界353の周囲の雰囲気に含まれるフッ化水素が、リンス液の液膜351に析出しているシリコン酸化物と反応し、その結果、リンス液の液膜351に析出しているシリコン酸化物がパターンPの先端部Pa(図4参照)に付着しないか、あるいはパターンPの先端部Paに付着していたシリコン酸化物(すなわち、生成物55(図9参照))も当該パターンPの先端部Paから除去される。
また、液膜除去領域拡大工程T24において、リンス液の液膜351は約70~80℃に保持されている。そのため、有機溶剤/フッ化水素混合蒸気(IPA/HF vapor)に含まれるフッ化水素がシリコン酸化物と反応することにより、HSiFの残渣が生成される。しかし、シリコン酸化物が、リンス液の液膜351に含まれる、約70~80℃の液温を有するリンス液に接液することにより、このような残渣の蒸発が促進される。HSiFの融点は約19℃であるので、約70~80℃の環境下では、残渣の蒸発が促進される。これにより、残渣を蒸発させて基板Wの表面から除去することができる。
また、第3の基板処理例では、リンス液の液膜351における液膜境界353の周囲を、有機溶剤蒸気に保ちながら、液膜境界353が基板Wの外周に向けて移動する。リンス液の液膜351の内部における液膜境界353付近では、有機溶剤の濃度差に起因して、液膜境界353から離反する方向に流れるマランゴニ対流が発生する。そのため、液膜境界353の位置に拘わらず、リンス液の液膜351の内部における液膜境界353付近にマランゴニ対流が発生し続ける。
薬液工程(図5のS2)等によって除去されたパーティクルが、リンス液の液膜351に含まれていることがある。リンス液の液膜351の内部における液膜境界353付近にパーティクルが含まれている場合でも、このパーティクルは、マランゴニ対流を受けて、リンス液のバルク部分に向かう方向、すなわち、液膜境界353から離反する方向に向けて移動し、パーティクルがリンス液の液膜351に取り込まれ続ける。
したがって、液膜除去領域352の拡大に伴って、リンス液の液膜351のバルク部分にパーティクルが取り込まれた状態のまま、液膜境界353が基板Wの外周に向けて移動する。そして、パーティクルは、液膜除去領域352に出現することなく、リンス液の液膜351と共に基板Wの上面から排出される。これにより、基板Wの乾燥後において、基板Wの上面にパーティクルが残存しない。ゆえに、基板Wの乾燥時においてパーティクルの発生を抑制または防止することができる。
図17Fに示すように、液膜除去領域352が基板Wの上面の全域に拡大した後、制御装置3は、加熱流体バルブ213を閉じて、基板Wの下面への加熱流体の吐出を停止させる。また、制御装置3は、流量調整バルブ308,311の開度を調整して、中央部吐出口33から吐出される有機溶剤/フッ化水素混合蒸気(IPA/HF vapor)の吐出流量を大流量(たとえば約150(リットル/分))に上昇させる。また、制御装置3は、基板Wの回転を、振り切り乾燥速度(たとえば約1500rpm)までさらに加速させる。これにより、基板Wの上面の液体を振り切ることができ、これにより、基板Wの上面を完全に乾燥させることができる。
乾燥工程(図5のS4)の終了後、制御装置3は、対向部材昇降ユニット37を制御して、遮断板27を、退避位置から近接位置まで上昇させる。これにより、遮断空間38が消失する。また、制御装置3は、有機溶剤蒸気バルブ307およびフッ化水素蒸気バルブ310を閉じて、中央部吐出口33からの有機溶剤/フッ化水素混合蒸気(IPA/HF vapor)の吐出を停止させる。その後、搬送ロボットCRによって、基板Wが搬出される。
以上により、第3の実施形態によれば、第1の実施形態に関連して説明した作用効果と同等の作用効果を奏する。
<回復試験>
次に、倒壊しているパターンを回復させるための回復試験について説明する。アスペクト比AR16を有するパターンが形成された半導体基板を、第1の回復試験の試料として採用した。2つの試料(試料1および試料2)に対し、スピンドライ工程(図5のS5に相当)を行い、各試料のパターンを倒壊させた。各試料におけるパターンの倒壊率はほぼ共通している。
試料1:その後、遮断空間(周囲から雰囲気が略遮断された空間)に試料1を配置し、試料1を裏面側から約120℃に加熱しながら、約75℃のIPA液を試料1の表面に滴下し、その状態で、0.5分間、遮断空間内の雰囲気中に曝した。IPA液の滴下量は約1(ミリリットル)であった。
試料2:その後、遮断空間に試料1を配置し、試料1を裏面側から約120℃に加熱しながら、約75℃のIPA/フッ酸混合液を試料2の表面に滴下し、その状態で、0.5分間、遮断空間内の雰囲気中に曝した。IPA/フッ酸混合液の滴下量は約1(ミリリットル)であった。IPA/フッ酸混合液におけるIPA液とフッ酸(濃度50%の濃縮フッ酸)との混合比は、体積比で100:1であった。
その後、遮断空間から試料1,2を取り出し、倒壊しているパターンの数を、SEMによる画像を解析して求めた。試料1の倒壊率が10.6%と高かったのに対し、試料2の倒壊率は2.5%と低かった。
また、図18A,18Bに、試料1および試料2の、SEMによる画像図をそれぞれ示す。
以上、この発明の3つの実施形態について説明したが、この発明は他の形態で実施することもできる。
たとえば、図19に示すように、第2および第3の実施形態において、遮断板27を貫通する上面ノズル401を複数設け、液膜除去領域252,352の拡大に合わせて、フッ化水素蒸気(HF vapor)または有機溶剤/フッ化水素混合蒸気(IPA/HF vapor)を吐出する上面ノズル401を変更させるようにしてもよい。上面ノズル401は、基板Wの回転軸線A1上に位置する中央ノズル402と、回転軸線A1から離隔した位置に配置された複数の周囲ノズル403とを含む。複数の周囲ノズル403は、遮断板27を上下に貫通する挿通穴404に挿入されて、その下端に形成された吐出口が遮断空間38の内部に臨む。複数の周囲ノズル403および各周囲ノズルには、個々にバルブ405を介して、フッ化水素蒸気(HF vapor)または有機溶剤/フッ化水素混合蒸気(IPA/HF vapor)が供給されるようになっている。
液膜除去領域拡大工程(図12のT14または図16のT24)においては、液膜除去領域252,352の拡大に伴って、液膜境界253,353が、基板Wの中央部から周縁に向けて移動する。このとき、移動する液膜境界253,353に供給するのに最適な上面ノズル401(すなわち液膜境界253,353に最も近い上面ノズル401)だけが、フッ化水素蒸気(HF vapor)または有機溶剤/フッ化水素混合蒸気(IPA/HF vapor)を吐出するようにしてもよい。すなわち、液膜除去領域252,352の拡大に伴って、フッ化水素蒸気(HF vapor)または有機溶剤/フッ化水素混合蒸気(IPA/HF vapor)を吐出する上面ノズル401を切り換えてもよい。
また、第1~第3の基板処理例を、チャンバ4内で実行すると説明したが、第1~第3の基板処理例が、内部空間が周囲から密閉された密閉チャンバで行うようにしてもよい。密閉チャンバの内部空間は、本発明に係る遮断空間に相当する。
また、第1~第3の基板処理例に係る液膜除去領域拡大工程(図6のT4,図12のT14,図16のT24)に並行して、遮断板27を回転軸線A2まわりに回転させてもよい。
また、第2の基板処理例に係るスピンドライ工程T15(図12参照)および第3の基板処理例に係るスピンドライ工程T25(図16参照)において、スピンドライ工程T15,T25の開始から予め定める期間が経過した時点で、中央部吐出口33からのフッ化水素蒸気(HF vapor)または有機溶剤/フッ化水素混合蒸気(IPA/HF vapor)の吐出を中断して、その後、周囲吐出口35からの不活性ガスを遮断空間38に供給するようにしてもよい。
また、第1の実施形態において、基板Wの上面に常温の有機溶剤/フッ酸混合液が供給されるとして説明したが、約70~80℃の有機溶剤/フッ酸混合液が基板Wの上面に供給されるようになっていてもよい。
また、第1の実施形態において、中央部吐出口33から有機溶剤/フッ酸混合液を吐出することにより、有機溶剤/フッ酸混合液の基板Wの上面への供給を行うとして説明したが、基板対向面43に設けられた複数の吐出口から、有機溶剤液体およびフッ酸が個別に吐出され、基板Wの上面において有機溶剤液体とフッ酸とが混合されるようになっていてもよい。
また、第1の実施形態において、基板Wの上面に形成される処理液の液膜として、有機溶剤/フッ酸混合液を例に挙げたが、処理液の液膜はフッ酸含有液の液膜であれば足り、有機溶剤/フッ酸混合液以外に、フッ酸と他の液体(たとえば機能水(オゾン水、水素水、炭酸水))との混合液の液膜や、フッ酸の液膜を例示することができる。
また、第2の実施形態において、基板Wの上面に常温の有機溶剤液体が供給されるとして説明したが、約70~80℃の有機溶剤液体が基板Wの上面に供給されるようになっていてもよい。
また、第1および第2の実施形態において、リンス液供給ユニット7ではなく、第3の実施形態に係るリンス液供給ユニット305を用いて、基板の上面にリンス液を供給するようにしてもよい。つまり、中央部吐出口33からリンス液を吐出するようにしてもよい。
また、第1~第3の実施形態において、有機溶剤の一例としてIPAを例示したが、有機溶剤としてその他に、メタノール、エタノール、HFE(ハイドロフロロエーテル)、アセトン等を例示できる。また、有機溶剤としては、単体成分のみからなる場合だけでなく、他の成分と混合した流体であってもよい。たとえば、IPAとアセトンの混合液であってもよいし、IPAとメタノールの混合流体であってもよい。
また、第1の実施形態に係る基板処理装置1において、加熱ユニットとして下面供給ユニット205を採用してもよい。逆に、第2または第3の実施形態に係る基板処理装置201,301において、加熱ユニットとしてホットプレート8を採用してもよい。
また、加熱ユニットを省略してもよい。この場合、第1~第3の基板処理例に係る液膜除去領域拡大工程(図6のT4,図12のT14,図16のT24)において処理液の液膜に含まれる処理液が常温を有していてもよい。
また、前述の各実施形態では、基板処理装置1,201,301が円板状の基板Wを処理する装置である場合について説明したが、基板処理装置1,201,301が、液晶表示装置用ガラス基板などの多角形の基板を処理する装置であってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
1 :基板処理装置
3 :制御装置
5 :スピンチャック(基板保持ユニット、回転ユニット)
8 :ホットプレート(加熱ユニット)
9 :対向部材(遮断空間形成ユニット)
10 :有機溶剤/フッ酸混合液供給ユニット(フッ酸含有液供給ユニット)
37 :対向部材昇降ユニット(遮断空間形成ユニット)
51 :有機溶剤/フッ酸混合液の液膜(フッ酸含有液の液膜)
52 :液膜除去領域
53 :液膜境界(液膜除去領域とフッ酸含有液の液膜との境界)
55 :生成物(異物)
61 :構造体
201 :基板処理装置
204 :フッ化水素蒸気供給ユニット
205 :下面供給ユニット(加熱ユニット)
251 :有機溶剤液体の液膜(処理液の液膜)
252 :液膜除去領域
253 :液膜境界(液膜除去領域と処理液の液膜との境界)
301 :基板処理装置
304 :フッ化水素蒸気供給ユニット
351 :リンス液の液膜(処理液の液膜)
352 :液膜除去領域
353 :液膜境界(液膜除去領域と処理液の液膜との境界)

Claims (3)

  1. 複数の凸状の構造体を含むパターンを表面に有する基板の表面に処理液を供給して、当該基板の表面を覆う処理液の液膜を形成する液膜形成工程と、
    前記処理液の液膜から処理液を部分的に排除して、前記処理液の液膜に液膜除去領域を形成する液膜除去領域形成工程と、
    前記液膜除去領域を前記基板の外周に向けて拡大させる液膜除去領域拡大工程と、
    前記液膜除去領域拡大工程において、倒れかけた互いに隣接する構造体同士を接着する異物を、フッ化水素を含む蒸気に曝すことにより、前記構造体から除去する異物除去工程とを含み、
    前記構造体から前記異物を除去することにより、倒れている前記構造体を起立状態に弾性復元させる、基板処理方法。
  2. 前記異物除去工程に並行して、前記基板の裏面を加熱する裏面加熱工程をさらに含む、請求項1に記載の基板処理方法。
  3. 複数の凸状の構造体を含むパターンを表面に有する基板を保持する基板保持ユニットと、
    前記基板保持ユニットに保持されている前記基板を、その中央部を通る回転軸線周りに回転させるための回転ユニットと、
    前記基板の表面に、処理液を供給するための処理液供給ユニットと、
    前記基板の表面に、フッ化水素を含む蒸気を供給するための蒸気供給ユニットと、
    前記蒸気供給ユニットを制御する制御装置と、を含み、
    前記制御装置は、前記処理液供給ユニットによって前記基板の表面に処理液を供給して、当該基板の表面を覆う処理液の液膜を形成する液膜形成工程と、前記処理液の液膜から処理液を部分的に排除して、前記処理液の液膜に液膜除去領域を形成する液膜除去領域形成工程と、前記回転ユニットによって前記回転軸線周りに回転させることにより前記液膜除去領域を前記基板の外周に向けて拡大させる液膜除去領域拡大工程と、前記液膜除去領域拡大工程において、前記基板の表面に前記蒸気を供給することにより、倒れかけた互いに隣接する構造体同士を接着する異物を、前記構造体から除去する異物除去工程を実行し、
    前記構造体から前記異物を除去することにより、倒れている前記構造体を起立状態に弾性復元させる、基板処理装置。
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