JP7117537B2 - 冷凍サイクル用作動媒体の不均化反応の抑制方法および冷凍サイクル用作動媒体の製造方法 - Google Patents
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Description
本開示にかかる冷凍サイクル用作動媒体は、冷媒成分として、少なくとも1,1,2-トリフルオロエチレン(HFO1123)が用いられる。1,1,2-トリフルオロエチレンは、次に示す式(1)の構造を有しており、エチレンの1位の炭素原子(C)に結合する2つの水素原子(H)がフッ素(F)に置換されているとともに、2位の炭素原子に結合する2つの水素原子のうち一方がフッ素に置換されている構造を有している。
本開示にかかる冷凍サイクル用作動媒体に添加される不均化抑制剤は、炭素数2~5の飽和炭化水素である。具体的には、エタン、n-プロパン、シクロプロパン、n-ブタン、シクロブタン、イソブタン(2-メチルプロパン)、メチルシクロプロパン、n-ペンタン、イソペンタン(2-メチルブタン)、ネオペンタン(2,2-ジメチルプロパン)、メチルシクロブタン等が挙げられる。これら飽和炭化水素は1種類のみ用いられてもよいし、2種類以上が適宜組み合わせられて用いられてもよい。これら飽和炭化水素の中でもn-プロパンが特に好ましい。
本開示にかかる冷凍サイクル用作動媒体は、冷凍サイクルシステムで用いられるため、冷凍サイクルシステムが備える圧縮機を潤滑する潤滑油と併用することができる。本開示にかかる冷凍サイクル用作動媒体は、前述したように、1,1,2-トリフルオロエチレンを実質的に「主成分」とする冷媒成分と、前述した炭素数2~5の飽和炭化水素で構成される不均化抑制剤と、で少なくとも構成されていればよい。さらに、冷凍サイクル用作動媒体を潤滑油と併用する場合には、冷媒成分、不均化抑制剤、および潤滑油成分、並びに他の成分により作動媒体含有組成物が構成されていると見なすことができる。
ただし、式(2)におけるXは、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)からなる群より選択されるハロゲン原子であり、mは0以上の整数であるとともにnは1以上の整数であり、さらに、nおよびmの和は4であり、nが2以上のときXは同一または異なる種類のハロゲン原子である。
次に、本開示にかかる冷凍サイクル用作動媒体を用いて構成される冷凍サイクルシステムの一例について、図1(A)・(B)を参照しながら説明する。
密閉型の耐圧容器(耐圧硝子工業株式会社製テフロン内筒密閉容器TAF-SR[商品名]、内部容積50mL)に対して、当該耐圧容器内の内部圧力を測定する圧力センサ(株式会社バルコム製VESVM10-2m[商品名])、当該耐圧容器内の内部温度を測定する熱電対(Conax Technologies製PL熱電対グランドPL-18-K-A 4-T[商品名])、並びに、当該耐圧容器内で放電を発生させるための放電装置(アズワン株式会社製UH-1seriesミニミニウェルダー[商品名])を取り付けるとともに、冷媒成分である1,1,2-トリフルオロエチレン(SynQuest Laboratories製、ヒドラス化学(株)販売、安定剤としてリモネン5%(液相)で含有)のガスボンベを圧力調整可能となるように接続した。さらに、圧力センサおよび温度計は、データロガー(グラフテック株式会社製GL220型[商品名]、サンプリング間隔最少10ミリ秒)に接続した。これにより、不均化反応の実験系を構築した。なお、実験系に用いた前記熱電対の測定上限は1000℃程度であるので、下記比較例または実施における耐圧容器の内部温度は、特に1000℃を超える場合には参考値として取り扱われる。
前記実験系において、ガスボンベから耐圧容器内に1,1,2-トリフルオロエチレンを導入した。このときの内部圧力(1,1,2-トリフルオロエチレンの圧力)は1.28MPaであった。
前記実験系において、ガスボンベから耐圧容器内に1,1,2-トリフルオロエチレンを導入するとともに、不均化抑制剤としてのn-プロパンを1.1質量%(2.0体積%)の添加量となるように添加した。
前記実験系において、ガスボンベから耐圧容器内に1,1,2-トリフルオロエチレンを導入するとともに、不均化抑制剤としてのn-プロパンを2.8質量%(5.0体積%)の添加量となるように添加した。
前記実験系において、ガスボンベから耐圧容器内に1,1,2-トリフルオロエチレンを導入するとともに、不均化抑制剤としてのn-プロパンを0.5質量%(1.0体積%)の添加量となるように添加した。
比較例1の結果から、前記実験系において耐圧容器内で放電を発生させることにより、1,1,2-トリフルオロエチレンに不均化反応が発生し、この不均化反応が連鎖して急激に進行することがわかる。これに対して、実施例1および2の結果から、炭素数2~5の飽和炭化水素である炭素数3のn-プロパンを0.6質量%以上10質量%以下の範囲内で添加することで、1,1,2-トリフルオロエチレンの不均化反応は有効に抑制されることがわかる。
11 室内機
12 室外機
13 配管
14 熱交換器
15 熱交換器
16 圧縮機
17 減圧装置
18 四方弁
20 冷蔵庫(冷凍サイクルシステム)
21 圧縮機
22 凝縮器
23 減圧装置
24 蒸発器
25 配管
Claims (5)
- 冷媒成分として、少なくとも1,1,2-トリフルオロエチレンを含有する冷凍サイクル用作動媒体において、当該1,1,2-トリフルオロエチレンの不均化反応を抑制する方法であって、
不均化抑制剤 として、炭素数2~5の飽和炭化水素を添加するとともに、
当該不均化抑制剤の添加量は、前記冷媒成分および前記不均化抑制剤の全量を100質量%としたときに、前記1,1,2-トリフルオロエチレンの含有量が40質量%以上であり、かつ、前記飽和炭化水素の含有量が0.6質量%以上10質量%以下の範囲内であり、
前記1,1,2-トリフルオロエチレンの内部圧力が1.28MPaで内部温度が300Kで放電させても不均化反応しないことを特徴とする、
冷凍サイクル用作動媒体の不均化反応の抑制方法。 - 前記飽和炭化水素が、n-プロパンであることを特徴とする、
請求項1に記載の冷凍サイクル用作動媒体の不均化反応の抑制方法。 - 前記冷媒成分および前記不均化抑制剤の全量における前記飽和炭化水素の含有量は、1.0質量%以上9.5質量%以下の範囲内であることを特徴とする、
請求項1または2に記載の冷凍サイクル用作動媒体の不均化反応の抑制方法。 - さらに、前記冷凍サイクル用作動媒体は、冷媒成分としてジフルオロメタンを含有するとともに、
前記冷媒成分および前記不均化抑制剤の全量における前記ジフルオロメタンの含有量は、60質量%未満であることを特徴とする、
請求項1から3のいずれか1項に記載の冷凍サイクル用作動媒体の不均化反応の抑制方法。 - 請求項1から4のいずれか1項に記載の冷凍サイクル用作動媒体の抑制方法を用いる冷凍サイクル用作動媒体の製造方法。
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