JP7116112B2 - 端子付き電線 - Google Patents

Description

本発明は、端子付き電線に関する。

従来の端子付き電線に適用される技術として、例えば、特許文献１には、被覆導線と端子とが接続される端子付き電線が開示されている。被覆導線は、被覆部と、被覆部の先端から露出する導線とを具備する。端子は、端子本体と圧着部とを有する。そして、圧着部は、導線が圧着される導線圧着部と、被覆部が圧着される被覆圧着部と、導線圧着部と被覆圧着部との間のバレル間部と、を具備し、バレル間部から導線圧着部までの導線が露出する部位が防食材で覆われている。

特開２０１９－１７５７９１号公報

ところで、上述の特許文献１に記載の端子付き電線は、例えば、より適正な防食性能確保の点で更なる改善の余地がある。

本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、適正な防食性能を確保することができる端子付き電線を提供することを目的とする。

上記目的を達成するために、本発明に係る端子付き電線は、絶縁性を有する絶縁被覆部によって導電性を有する導体部を被覆した電線と、前記絶縁被覆部の端末から露出する前記導体部に対して圧着される導体圧着部、前記絶縁被覆部に対して圧着される被覆圧着部、及び、前記導体圧着部と前記被覆圧着部とを連結し前記導体部が露出する中間部を含む圧着端子と、少なくとも前記中間部において露出する前記導体部を覆う防食材とを備え、前記中間部は、前記導体部側の面に設けられ、前記電線の軸線周りに沿う周方向の両端部からそれぞれ当該周方向の中心側に向かって形成された溝部を有し、前記溝部は、前記中間部の前記周方向の端部から前記周方向に沿って延在し、前記周方向の中心側の端部が当該周方向の中心と間隔をあけた位置で閉塞することを特徴とする。

また、上記端子付き電線では、前記溝部は、前記周方向の中心側に向かってテーパ形状に形成されるものとすることができる。

また、上記端子付き電線では、前記溝部は、前記電線の軸線方向に沿って前記被覆圧着部と間隔をあけて位置するものとすることができる。

また、上記端子付き電線では、前記防食材は、少なくとも、前記圧着端子が前記電線に圧着された状態で前記中間部と前記導体部と前記絶縁被覆部の端末とによって囲まれた隙間空間部、及び、前記溝部に充填されているものとすることができる。

本発明に係る端子付き電線は、導体部に導体圧着部が圧着され、絶縁被覆部に被覆圧着部が圧着されることで、電線に圧着端子が圧着される。このような構成において、圧着端子は、導体圧着部と被覆圧着部とを連結する中間部に溝部を有する。この溝部は、中間部の導体部側の面に設けられ、当該中間部の周方向の両端部からそれぞれ当該周方向の中心側に向かって形成される。この構成により、端子付き電線は、中間部において、防食材を当該溝部を介して周方向の中心側に浸透させ易くすることができるので、中間部において露出する導体部を当該防食材によって確実に覆うことができる。この結果、端子付き電線は、適正な防食性能を確保することができる、という効果を奏する。

図１は、実施形態１に係る端子付き電線の概略構成を表す分解斜視図である。 図２は、実施形態１に係る端子付き電線の概略構成を表す模式的な部分平面図である。 図３は、図２に示す模式的なＡ－Ａ断面図である。 図４は、実施形態１に係る端子付き電線が備える圧着端子の溝部を含む部分斜視図である。 図５は、実施形態１に係る端子付き電線が備える圧着端子の圧着前の展開状態における模式的な部分平面図である 図６は、図５に示す模式的なＢ－Ｂ断面図である。 図７は、図２に示す模式的なＣ－Ｃ断面図である。 図８は、図２に示す模式的なＤ－Ｄ断面図である。 図９は、実施形態２に係る端子付き電線の概略構成を表す分解斜視図である。 図１０は、実施形態２に係る端子付き電線の概略構成を表す模式的な部分平面図である。 図１１は、実施形態２に係る端子付き電線が備える圧着端子の溝部を含む部分斜視図である。 図１２は、実施形態２に係る端子付き電線が備える圧着端子の圧着前の展開状態における模式的な部分平面図である 図１３は、図１０に示す模式的なＥ－Ｅ断面図である。

以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。

なお、以下の説明では、互いに交差する第１方向、第２方向、及び、第３方向のうち、第１方向を「軸線方向Ｘ」といい、第２方向を「幅方向Ｙ」といい、第３方向を「高さ方向Ｚ」という。ここでは、軸線方向Ｘと幅方向Ｙと高さ方向Ｚとは、相互に略直交する。軸線方向Ｘは、典型的には、圧着端子が設けられる電線の軸線Ｘ１（図１等参照）に沿う方向、当該電線が延在する延在方向、圧着端子と相手端子との挿抜方向等に相当する。幅方向Ｙと高さ方向Ｚとは、軸線方向Ｘと交差する交差方向に相当する。また、以下の説明では、圧着端子の圧着後の状態において、軸線Ｘ１周りに沿う方向を「周方向Ｄ１」という。また、図１、図４、図９、図１１は、圧着端子の圧着前の状態を表している。図２、図３、図７、図８、図１０、図１３は、圧着端子の圧着後の状態を表している。図５、図６、図１２は、圧着端子が電線に対して圧着される前の展開状態を表しており、圧着端子の電線圧着部が平板状に展開された状態を表している。また、以下の説明で用いる各方向は、特に断りのない限り、各部が相互に組み付けられた状態での方向を表すものとする。

［実施形態１］
図１、図２、図３に示す本実施形態の端子付き電線１００は、車両に使用されるワイヤハーネス等に適用されるものである。ここで、ワイヤハーネスは、例えば、車両に搭載される各装置間の接続のために、電源供給や信号通信に用いられる複数の電線Ｗを束にして集合部品とし、コネクタ等で複数の電線Ｗを各装置に接続するようにしたものである。

本実施形態の端子付き電線１００は、電線Ｗと、当該電線Ｗの端末に圧着され導通接続された圧着端子１と、各部を覆って防食する防食材１０（図２、図３参照）とを備える。本実施形態の圧着端子１は、防食材１０によって防食された防食端子を構成する。そして、本実施形態の端子付き電線１００は、当該圧着端子１に溝部４８が設けられることで、適正な防食性能確保を図ったものである。以下、各図を参照して端子付き電線１００の各構成について詳細に説明する。

電線Ｗは、車両に配索され、各装置を電気的に接続するものである。電線Ｗは、導電性を有する線状の導体部Ｗ１と、当該導体部Ｗ１の外側を覆う絶縁性を有する絶縁被覆部Ｗ２とを含んで構成される。電線Ｗは、絶縁被覆部Ｗ２によって導体部Ｗ１を被覆した絶縁電線である。

導体部Ｗ１は、導電性を有する金属素線を複数束ねた芯線である。導体部Ｗ１は、当該複数の金属素線を撚り合わせた撚り芯線であってもよい。絶縁被覆部Ｗ２は、導体部Ｗ１の外周側を被覆する電線被覆である。絶縁被覆部Ｗ２は、例えば、絶縁性の樹脂材料（ＰＰやＰＶＣ、架橋ＰＥ等。耐摩耗性や耐薬品性、耐熱性等に配慮して適宜選定される。）等を押出成形することによって形成される。

電線Ｗは、軸線Ｘ１に沿って線状に延在し、延在方向（軸線方向Ｘ）に対してほぼ同じ径で延びるように形成される。電線Ｗは、導体部Ｗ１の断面形状（軸線方向Ｘと交差する方向の断面形状）が略円形状、絶縁被覆部Ｗ２の断面形状が略円環形状となっており、全体として略円形状の断面形状となっている。電線Ｗは、少なくとも一方の端末において、絶縁被覆部Ｗ２が剥ぎ取られており、導体部Ｗ１が絶縁被覆部Ｗ２から露出している。電線Ｗは、絶縁被覆部Ｗ２から露出している当該導体部Ｗ１の端末に圧着端子１が設けられる。

圧着端子１は、電線Ｗが電気的に接続され、導電性を有する相手端子が接続される端子金具である。圧着端子１は、電気接続部２と、連結部３と、電線圧着部４とを備える。電気接続部２と連結部３と電線圧着部４とは、全体が一体で導電性を有する金属部材によって構成される。例えば、圧着端子１は、一枚の板金を、電気接続部２、連結部３、電線圧着部４等の各部に対応した形状にあわせて、打ち抜き加工、プレス加工、折り曲げ加工等の各種加工によって成形することで各部が立体的に一体で形成される。圧着端子１は、軸線方向Ｘに沿って一方側から他方側に向かって、電気接続部２、連結部３、電線圧着部４の順で並んで相互に連結される。

電気接続部２は、相手端子と電気的に接続される部分である。電気接続部２は、雄型の端子形状であってもよいし、雌型の端子形状であってもよい。本実施形態の電気接続部２は、雌型の端子形状として図示しており、雄型の端子形状の相手端子と電気的に接続される。なお、電気接続部２は、相手端子に限らず、アース部材等の種々の導電性の部材と電気的に接続される構成であってもよい。この場合、電気接続部２は、例えばアース部材等に締結されるいわゆる丸形端子（ＬＡ端子）形状であってもよい。

連結部３は、電気接続部２と電線圧着部４との間に介在し、当該電気接続部２と当該電線圧着部４とを連結し導通する部分である。圧着端子１は、電気接続部２と電線圧着部４とが連結部３を介して電気的に接続され、当該電線圧着部４を介して電気接続部２と電線Ｗの導体部Ｗ１とが電気的に接続され導通される。

電線圧着部４は、電線Ｗが接続され、当該電線Ｗの端末と圧着端子１とを電気的に接続する部分である。電線圧着部４は、電線Ｗの端末に加締められ圧着されることで、電線Ｗの端末に設けられる。電線圧着部４は、基部４１、及び、二組の一対のバレル片４２、４３を含んで構成される。電線圧着部４は、基部４１と二組の一対のバレル片４２、４３とによって電線Ｗに対して加締められ圧着される。

より詳細には、電線圧着部４は、基部４１、及び、二組の一対のバレル片４２、４３によって、導体圧着部４４、中間部４５、及び、被覆圧着部４６が構成される。言い換えれば、電線圧着部４は、基部４１、及び、二組の一対のバレル片４２、４３によって構成される導体圧着部４４、中間部４５、及び、被覆圧着部４６を含んで構成される。

導体圧着部４４は、基部４１の一部、及び、一対のバレル片４２によって構成される。中間部４５は、基部４１の一部によって構成される。被覆圧着部４６は、基部４１の一部、及び、一対のバレル片４３によって構成される。電線圧着部４は、軸線方向Ｘに沿って電気接続部２側から反対側に向かって、導体圧着部４４、中間部４５、被覆圧着部４６の順で並んで相互に連結される。そして、本実施形態の電線圧着部４は、中間部４５を介して一対のバレル片４２と一対のバレル片４３とが分断されたいわゆる別体バレル型の圧着部を構成する。

具体的には、基部４１は、軸線方向Ｘに沿って延在し、圧着端子１の圧着前の状態において、略Ｕ字状に形成された電線圧着部４の底壁となる部分である。基部４１は、板厚方向が高さ方向Ｚに沿う板状に形成される。基部４１は、圧着加工の際に電線Ｗの端部が載置される。基部４１は、軸線方向Ｘの一方側に連結部３を介して電気接続部２が連結される。基部４１は、各部において幅方向Ｙの両端部が高さ方向Ｚに沿って立ち上がっている。

より具体的には、基部４１は、軸線方向Ｘに沿って、導体圧着部４４、中間部４５、及び、被覆圧着部４６に渡って連続する。つまり、基部４１は、導体圧着部４４を構成する第１基部４１ａ、中間部４５を構成する第２基部４１ｂ、被覆圧着部４６を構成する第３基部４１ｃが軸線方向Ｘに沿って連なって構成される。基部４１は、第１基部４１ａの軸線方向Ｘの一方の端部に電気接続部２が連結される。また、基部４１は、圧着加工前の状態において、第３基部４１ｃの軸線方向Ｘの他方の端部にキャリアが連結されており、例えば、圧着加工時にキャリアから切断される。

一対のバレル片４２は、基部４１の一部である第１基部４１ａと共に導体圧着部４４を構成する部分である。導体圧着部４４は、電線Ｗの導体部Ｗ１に対して加締められ圧着されることで、当該導体部Ｗ１と電気的に接続される部分である。導体圧着部４４は、電線圧着部４において軸線方向Ｘの一端側、ここでは、電気接続部２側に設けられる。

一対のバレル片４２は、当該導体圧着部４４において第１基部４１ａから幅方向Ｙの両側にそれぞれ帯状に延びて形成され、第１基部４１ａとの間に電線Ｗの導体部Ｗ１を包んで加締められ圧着される部分である。一対のバレル片４２は、圧着加工前の状態において、Ｕ字状に形成された電線圧着部４の側壁となる部分である。一方のバレル片４２は、第１基部４１ａから幅方向Ｙの一方側に延びる。他方のバレル片４２は、第１基部４１ａから幅方向Ｙの他方側に延びる。一対のバレル片４２は、電線Ｗの導体部Ｗ１に対して加締められ圧着される前の状態では、第１基部４１ａに対して曲げ加工が施され当該第１基部４１ａとあわせて略Ｕ字状に成形されている。

本実施形態の一対のバレル片４２は、導体部Ｗ１に対して巻き付けられて加締められ、圧着された状態で、互いに重なり合わない（オーバーラップしない）ように第１基部４１ａ側の根元から先端までの長さが設定されている。導体圧着部４４は、第１基部４１ａ、及び、一対のバレル片４２によって、一対のバレル片４２の間に配置された電線Ｗの導体部Ｗ１の外側を包んで導体部Ｗ１に対して加締められ圧着される。

本実施形態の一対のバレル片４２は、いわゆるＢクリンプと称する加締め圧着がなされる。導体圧着部４４は、Ｂクリンプでは、第１基部４１ａと一対のバレル片４２とによって導体部Ｗ１を包んで圧着された状態で、一対のバレル片４２のそれぞれが第１基部４１ａ側に向けて折り曲げられた状態とされる。そして、導体圧着部４４は、この状態で当該一対のバレル片４２の先端がそれぞれ導体部Ｗ１に接触して押しつけられるように加締められ圧着される。

なお、導体圧着部４４は、第１基部４１ａ、及び、一対のバレル片４２において導体部Ｗ１と接触する部分に、導体部Ｗ１との接触面積を増やし接触安定性を向上すると共に凝着強度を向上するための複数のセレーション４７等を有していてもよい。セレーション４７は、導体圧着部４４において、導体部Ｗ１側の面（すなわち、内面）に、凹部状に形成される。セレーション４７は、周方向Ｄ１に沿って、第１基部４１ａ、及び、一対のバレル片４２に渡って形成されている。

一対のバレル片４３は、基部４１の一部である第３基部４１ｃと共に被覆圧着部４６を構成する部分である。被覆圧着部４６は、電線Ｗの絶縁被覆部Ｗ２に対して加締められ圧着されることで、当該絶縁被覆部Ｗ２に固定される部分である。被覆圧着部４６は、電線圧着部４において軸線方向Ｘの他端側、ここでは、電気接続部２側とは反対側に設けられる。

一対のバレル片４３は、当該被覆圧着部４６において第３基部４１ｃから幅方向Ｙの両側にそれぞれ帯状に延びて形成され、第３基部４１ｃとの間に電線Ｗの絶縁被覆部Ｗ２を包んで加締められ圧着される部分である。一対のバレル片４３は、圧着加工前の状態において、Ｕ字状に形成された電線圧着部４の側壁となる部分である。一方のバレル片４３は、第３基部４１ｃから幅方向Ｙの一方側に延びる。他方のバレル片４３は、第３基部４１ｃから幅方向Ｙの他方側に延びる。一対のバレル片４３は、電線Ｗの絶縁被覆部Ｗ２に対して加締められ圧着される前の状態では、第３基部４１ｃに対して曲げ加工が施され当該第３基部４１ｃとあわせて略Ｕ字状に成形されている。

本実施形態の一対のバレル片４３は、絶縁被覆部Ｗ２に対して巻き付けられて加締められ、圧着された状態で、互いに重なり合わない（オーバーラップする）ように第３基部４１ｃ側の根元から先端までの長さが設定されている。被覆圧着部４６は、第３基部４１ｃ、及び、一対のバレル片４３によって、一対のバレル片４３の間に配置された電線Ｗの絶縁被覆部Ｗ２の外側を包んで絶縁被覆部Ｗ２に対して加締められ圧着される。

本実施形態の一対のバレル片４３は、いわゆるラウンドクリンプと称する加締め圧着がなされる。被覆圧着部４６は、第３基部４１ｃと一対のバレル片４３とによって絶縁被覆部Ｗ２を包んで圧着された状態で、一対のバレル片４３の先端が互いに対向するような位置関係で加締められ圧着される。

ここでは、電線圧着部４は、軸線方向Ｘに対して当該被覆圧着部４６と導体圧着部４４との間に中間部４５が介在する。中間部４５は、導体圧着部４４と被覆圧着部４６との間に介在し、当該導体圧着部４４と当該被覆圧着部４６とを連結する部分である。中間部４５は、第２基部４１ｂによって構成され、当該第２基部４１ｂの軸線方向Ｘの一方側の端部に導体圧着部４４の第１基部４１ａが連結され、他方側の端部に被覆圧着部４６の第３基部４１ｃが連結される。そして、中間部４５は、導体部Ｗ１の中間露出部Ｗ１ａが露出する部分を構成する。上述したように、一対のバレル片４２と一対のバレル片４３とは、それぞれ、互いの間に当該中間部４５が介在することで相互に間隔をあけて分断して形成される。

上記のように構成される圧着端子１は、導体圧着部４４が導体部Ｗ１に圧着され、被覆圧着部４６が絶縁被覆部Ｗ２に圧着されることで、電線Ｗの端末に圧着される。この状態で、圧着端子１は、導体圧着部４４と導体部Ｗ１との間に接点部位が形成され、当該接点部位を介して電線Ｗの導体部Ｗ１と導通接続される。そして、圧着端子１は、例えば、コネクタハウジング等に保持され、当該コネクタハウジングが相手コネクタのコネクタハウジングと相互に嵌合しコネクタ接合されることで、相手端子と電気的に接続され相互間に電気的な接点部位が形成される。この結果、圧着端子１は、当該接続部位を介して相手端子と導通接続される。

ここで、圧着端子１が圧着される電線Ｗの導体部Ｗ１は、例えば、アルミニウム（Ａｌ）又はアルミニウム合金等によって構成される場合がある。つまりこの場合、導体部Ｗ１は、アルミニウム又はアルミニウム合金によって構成された金属素線を複数束ねた芯線である。一方、圧着端子１は、導体部Ｗ１とは異なる異種金属、例えば、銅（Ｃｕ）又は銅合金によって構成された母材の表面に、すず（Ｓｎ）等によるメッキが施されることで構成される場合がある。この場合、端子付き電線１００は、導体部Ｗ１の材料がアルミニウム又はアルミニウム合金、圧着端子１の材料が銅又は銅合金であることで、両者の間に水（塩水）等が浸入すると両者のイオン化傾向の違いによって、導体部Ｗ１と圧着端子１との間においてガルバニック腐食が発生するおそれがある。なおここで、上記アルミニウム合金は、アルミニウムを主成分とする合金である。また、上記銅合金は、銅を主成分とする合金であり、例えば、いわゆる黄銅等を含む。

これに対して、圧着端子１は、電線圧着部４に腐食を防止する防食材１０が施されることで、上記のようなガルバニック腐食が発生することを抑制している。本実施形態の圧着端子１は、防食材１０によって、少なくとも中間部４５において露出する導体部Ｗ１の中間露出部Ｗ１ａを覆うことで防食されている。防食材１０は、例えば、紫外線を照射することで硬化するＵＶ（Ｕｌｔｒａｖｉｏｌｅｔ、紫外線）硬化型樹脂によって構成される。ＵＶ硬化型樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート系の樹脂を用いることができるがこれに限らない。防食材１０は、ペースト状のＵＶ硬化型樹脂が所定の部位に塗布された後、紫外線が照射されることで硬化し形状を保持する。ここでは、防食材１０は、導体圧着部４４、中間部４５、被覆圧着部４６、及び、圧着端子１から露出している導体部Ｗ１に渡って設けられる。つまりここでは、防食材１０は、軸線方向Ｘに沿って圧着端子１から露出している導体部Ｗ１の先端Ｗ１ｂ、導体圧着部４４、中間部４５から露出する中間露出部Ｗ１ａ、及び、被覆圧着部４６に渡って設けられる。また、防食材１０は、電線圧着部４の内部や導体部Ｗ１の素線間にも浸透するように設けられる。防食材１０は、上記各部に塗布、浸透された後、紫外線が照射されることで硬化して形状を保持し当該各部を覆う。この構成により、圧着端子１は、防食材１０によって止水し、水（塩水等）が内部に浸入することを規制することができ、ガルバニック腐食等が発生することを抑制することができる。

そして、本実施形態の端子付き電線１００は、図１、図２、図４、図５、図６に示すように、圧着端子１の圧着後の状態では防食材１０が浸透し難い電線圧着部４の内部に対して当該防食材１０を供給し易くするために、中間部４５が溝部４８を有して構成されている。

具体的には、溝部４８は、中間部４５の導体部Ｗ１側の面（すなわち、内面）に設けられる。溝部４８は、中間部４５の周方向Ｄ１の両端部からそれぞれ当該周方向Ｄ１の中心Ｃ側に向かって形成される。溝部４８は、導体圧着部４４に形成された上述のセレーション４７とは異なる別の部位として、中間部４５の導体部Ｗ１側の面に、凹部状に形成される。

本実施形態の溝部４８は、中間部４５の周方向Ｄ１の一方側の端部に３つ、中間部４５の周方向Ｄ１の他方側の端部に３つ、合計６つ設けられている。複数の溝部４８は、中間部４５の周方向Ｄ１の各端部において、軸線方向Ｘに沿って間隔をあけて設けられている。

より具体的には、各溝部４８は、中間部４５を構成する第２基部４１ｂにおいて、高さ方向Ｚに沿って立ち上がっている立ち上がり端部４１ｂａに形成されている。各溝部４８は、上述したセレーション４７とは異なり、中間部４５の周方向Ｄ１の立ち上がり端部４１ｂａの端から周方向Ｄ１に沿って延在し、周方向Ｄ１の中心Ｃ側の端部が当該中間部４５の周方向Ｄ１の中心Ｃと間隔をあけた位置で閉塞するようにして形成される。つまり、各溝部４８は、一方の端部が周方向Ｄ１に沿って開口し、他方の端部が当該周方向Ｄ１の中心Ｃと間隔をあけた位置で閉塞している。さらに言えば、本実施形態の中間部４５は、一対の立ち上がり端部４１ｂａにそれぞれ各溝部４８が設けられており、当該一対の立ち上がり端部４１ｂａの間の中央部には各溝部４８が設けられておらず略平坦な面となっている。この各溝部４８は、図５に示す圧着前の展開状態においては、幅方向Ｙに沿って形成されており、圧着端子１の圧着後においては周方向Ｄ１に沿って延在することとなる。

各溝部４８は、軸線方向Ｘに沿って被覆圧着部４６と間隔をあけて位置する。ここでは、最も被覆圧着部４６に寄って位置している溝部４８は、軸線方向Ｘに沿った被覆圧着部４６との間隔Ｌ１（図５参照）が１ｍｍ以上確保されていることが好ましい。これにより、圧着端子１は、圧着後の状態において、絶縁被覆部Ｗ２の端末Ｗ２ａが各溝部４８にかからないようにすることができる。

各溝部４８は、延在方向と交差する断面形状（図６参照）が略台形状に形成されている。なお、各溝部４８は、これに限らず、延在方向と交差する断面形状が略矩形状、略半円形状等に形成されてもよい。

上記のように構成される端子付き電線１００は、中間部４５に防食材１０を塗布する場合に、図７に示す溝部４８が設けられていない部位と比較して、図８に示す溝部４８が設けられている部位では、防食材１０を当該溝部４８を介して周方向Ｄ１の中心Ｃ側に浸透させ易くすることができる。この結果、端子付き電線１００は、例えば、電線圧着部４の内部に形成され、圧着端子１の圧着後の状態では外部側から防食材１０を供給し難い隙間空間部４９（図３参照）等に対しても確実に防食材１０を供給することができる。

ここで、隙間空間部４９とは、圧着端子１が電線Ｗに圧着された状態で、圧着端子１の内部において圧着端子１と導体部Ｗ１と絶縁被覆部Ｗ２の端末Ｗ２ａとによって囲まれた空間部である（図３参照）。電線Ｗは、圧着端子１が圧着された状態では絶縁被覆部Ｗ２の端末Ｗ２ａが導体圧着部４４と被覆圧着部４６との間、すなわち、中間部４５に位置する。隙間空間部４９は、圧着端子１の内側において、絶縁被覆部Ｗ２の当該端末Ｗ２ａの肉厚に応じた段差に起因して、第２基部４１ｂの内面と導体部Ｗ１の外面との間に形成される隙間である。隙間空間部４９は、絶縁被覆部Ｗ２の端末Ｗ２ａの肉厚に応じて生じる段差に沿って略円弧状の隙間として形成される。

本実施形態の複数の溝部４８は、周方向Ｄ１に対してこの隙間空間部４９の両側に位置することとなる。したがって、この端子付き電線１００は、各溝部４８を介して隙間空間部４９に対しても確実に防食材１０を供給することができる。この結果、防食材１０は、少なくとも、圧着端子１が電線Ｗに圧着された状態で中間部４５と導体部Ｗ１と絶縁被覆部Ｗ２の端末Ｗ２ａとによって囲まれた当該隙間空間部４９、及び、各溝部４８に十分に充填された状態となる。

なお、図７、図８では、防食材１０は、圧着端子１の圧着後に、中間部４５において露出する中間露出部Ｗ１ａの直上から塗布され、幅方向Ｙの両側の溝部４８に向けて流れるものとして図示されているがこれに限らない。防食材１０は、例えば、幅方向Ｙの一方側の溝部４８の直上から塗布され、当該一方側の溝部４８に向かって流れていった後、他方側の溝部４８に至るように供給されてよい。

以上で説明した端子付き電線１００は、導体部Ｗ１に導体圧着部４４が圧着され、絶縁被覆部Ｗ２に被覆圧着部４６が圧着されることで、電線Ｗに圧着端子１が圧着される。このような構成において、圧着端子１は、導体圧着部４４と被覆圧着部４６とを連結する中間部４５に溝部４８を有する。この溝部４８は、中間部４５の導体部Ｗ１側の面に設けられ、当該中間部４５の周方向Ｄ１の両端部（立ち上がり端部４１ｂａ）からそれぞれ当該周方向Ｄ１の中心Ｃ側に向かって形成される。この構成により、端子付き電線１００は、中間部４５において、防食材１０を当該溝部４８を介して周方向Ｄ１の中心Ｃ側に浸透させ易くすることができる。この場合、端子付き電線１００は、溝部４８が防食材１０を中心Ｃ側に導く供給経路を構成するだけでなく、当該中心Ｃ側に溜まっていた空気を外部に抜くための空気抜き経路も構成することとなる。つまり、各溝部４８は、防食材１０を内部に供給するための供給経路、及び、空気を外部に抜くための空気抜き経路として兼用されるおととなる。この結果、この端子付き電線１００は、防食材１０中に気泡が混入することを抑制することができる。

これにより、端子付き電線１００は、中間部４５において露出する導体部Ｗ１を当該防食材１０によって確実に覆うことができるので、圧着端子１内部の導体部Ｗ１の全周を確実に覆って止水し、水分等が導体部Ｗ１と圧着端子１との間に浸入することを確実に規制することができる。例えば、端子付き電線１００は、導体部Ｗ１の材料がアルミニウム、圧着端子１の材料が銅である場合、両者の間に水が浸入するとイオン化傾向の違いによって導体部Ｗ１が腐食（ガルバニック腐食）してしまうおそれがある。これに対して、端子付き電線１００は、上記のように水の浸入が規制されることで、当該腐食の発生を抑制することができる。この結果、端子付き電線１００は、防食信頼性を向上し、適正な防食性能を確保することができる。

またこの場合、端子付き電線１００は、溝部４８が防食材１０を中心Ｃ側に導く供給経路を構成することで、防食材１０が電線圧着部４の内部に到達し当該防食材１０によって導体部Ｗ１等を覆うために要する期間を短縮することができる。この結果、端子付き電線１００は、製造工程におけるタクトタイムを抑制することができ、例えば、製造コストを抑制することができる。

また、以上で説明した端子付き電線１００は、各溝部４８が中間部４５の周方向Ｄ１の端部（立ち上がり端部４１ｂａ）から周方向Ｄ１に沿って延在し、周方向Ｄ１の中心Ｃ側の端部が当該周方向Ｄ１の中心Ｃと間隔をあけた位置で閉塞する。この構成により、端子付き電線１００は、圧着端子１の内部において、周方向Ｄ１の奥側に相当する中間部４５の中央部近傍を略平坦な面とすることがでるので、当該周方向Ｄ１の奥側において防食材１０内に気泡が溜まり難い構成とすることができる。この結果、端子付き電線１００は、防食材１０中に気泡が混入することをより確実に抑制することができるので、より適正な防食性能を確保することができる。

さらに、以上で説明した端子付き電線１００は、各溝部４８が軸線方向Ｘに沿って被覆圧着部４６と間隔をあけて位置する。この構成により、端子付き電線１００は、圧着端子１の圧着後の状態において、絶縁被覆部Ｗ２の端末Ｗ２ａが各溝部４８にかからないようにすることができるので、絶縁被覆部Ｗ２が各溝部４８の機能を阻害してしまうことを防止することができる。この結果、端子付き電線１００は、より確実に適正な防食性能を確保することができる。

ここでは、以上で説明した端子付き電線１００は、中間部４５に各溝部４８が設けられることで、圧着端子１の圧着後では防食材１０を塗布し難い圧着端子１の内部の隙間空間部４９等に確実に防食材１０を供給することができる。これにより、端子付き電線１００は、防食材１０を当該隙間空間部４９、及び、当該各溝部４８に確実に充填し止水することができる。この結果、端子付き電線１００は、上記のように適正な防食性能を確保することができる。

［実施形態２］
実施形態２に係る端子付き電線は、溝部の形状が実施形態１とは異なる。以下では、上述した実施形態と同様の構成要素には共通の符号が付されるとともに、共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略する（以下同様。）。

図９、図１０、図１１、図１２、図１３に示す本実施形態の端子付き電線２００は、圧着端子１にかえて圧着端子２０１を有する点で上述した端子付き電線１００と異なる。圧着端子２０１は、中間部４５が溝部４８にかえて溝部２４８を有する点で上述した圧着端子１と異なる。端子付き電線２００、圧着端子２０１のその他の構成は、上述の端子付き電線１００、圧着端子１と略同様の構成である。

具体的には、溝部２４８は、溝部４８と同様に、中間部４５の導体部Ｗ１側の面（すなわち、内面）に設けられる。溝部２４８は、中間部４５の周方向Ｄ１の両端部からそれぞれ当該周方向Ｄ１の中心Ｃ側に向かって形成される。溝部４８は、導体圧着部４４に形成された上述のセレーション４７とは異なる別の部位として、中間部４５の導体部Ｗ１側の面に、凹部状に形成される。

本実施形態の溝部２４８は、中間部４５の一方側の立ち上がり端部４１ｂａに１つ、中間部４５の他方側の立ち上がり端部４１ｂａに１つ、合計２つ設けられている。各溝部２４８は、溝部４８と同様に、中間部４５の周方向Ｄ１の立ち上がり端部４１ｂａの端から周方向Ｄ１に沿って延在し、周方向Ｄ１の中心Ｃ側の端部が当該周方向Ｄ１の中心Ｃと間隔をあけた位置で閉塞するようにして形成される。そして、本実施形態の各溝部２４８は、溝部４８と比較して、軸線方向Ｘに沿った長さが相対的に長く、かつ、周方向Ｄ１に沿った長さが相対的に短くなるように形成されている。

そして、本実施形態の各溝部２４８は、周方向Ｄ１の中心Ｃ側に向かってテーパ形状に形成される（図１１、図１３等参照）。より具体的には、各溝部２４８は、各立ち上がり端部４１ｂａの先端の導体部Ｗ１側の面（すなわち、内面）が面取りされ、周方向Ｄ１の中心Ｃ側に向かって傾斜した傾斜面２４８ａとして形成される。各溝部２４８は、導体部Ｗ１側の面が面取りされ傾斜面２４８ａとして形成されることで、周方向Ｄ１の中心Ｃ側に向かってテーパ形状に形成され、この結果、中間部４５の導体部Ｗ１側の面に、凹部状に形成される。

各溝部２４８は、溝部４８と同様に、軸線方向Ｘに沿って被覆圧着部４６と間隔をあけて位置する。ここでは、溝部２４８は、軸線方向Ｘに沿った被覆圧着部４６との間隔Ｌ２（図１２参照）が１ｍｍ以上確保されていることが好ましい。これにより、圧着端子２０１は、圧着端子１と同様に、圧着後の状態において、絶縁被覆部Ｗ２の端末Ｗ２ａが各溝部２４８にかからないようにすることができる。

以上で説明した端子付き電線２００は、端子付き電線１００と同様に、適正な防食性能を確保することができる。

ここでは、以上で説明した端子付き電線２００は、中間部４５に防食材１０を塗布する場合に、図１３に示すように、周方向Ｄ１の中心Ｃ側に向かってテーパ形状に形成された溝部２４８を介して、防食材１０を周方向Ｄ１の中心Ｃ側に浸透させ易くすることができる。この結果、端子付き電線２００は、端子付き電線１００と同様に、電線圧着部４の内部に形成され、圧着端子１の圧着後の状態では外部側から防食材１０を供給し難い隙間空間部４９（図３参照）等に対しても確実に防食材１０を供給することができる。これにより、端子付き電線２００は、上記のように適正な防食性能を確保することができる。

なお、上述した本発明の実施形態に係る端子付き電線は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。

以上の説明では、各溝部４８、２４８は、中間部４５の周方向Ｄ１の立ち上がり端部４１ｂａから周方向Ｄ１に沿って延在し、周方向Ｄ１の中心Ｃ側の端部が当該周方向Ｄ１の中心Ｃと間隔をあけた位置で閉塞するようにして形成されるものとして説明したがこれに限らない。各溝部４８、２４８は、中間部４５において、一対の立ち上がり端部４１ｂａと、当該一対の立ち上がり端部４１ｂａの間の中央部とに渡って連続して形成されていてもよい。つまり、各溝部４８、２４８は、一方側の立ち上がり端部４１ｂａに設けられたものと、他方側の立ち上がり端部４１ｂａに設けられたものとが、中央部にて連通し連続していてもよい。

以上の説明では、ＵＶ硬化型樹脂によって構成されるものとして説明したがこれに限らず、例えば、熱を加えることで硬化する熱硬化型樹脂によって構成されてもよい。

本実施形態に係る端子付き電線は、以上で説明した実施形態、変形例の構成要素を適宜組み合わせることで構成してもよい。

１、２０１ 圧着端子
２ 電気接続部
３ 連結部
４ 電線圧着部
１０ 防食材
４１ 基部
４１ａ 第１基部
４１ｂ 第２基部
４１ｂａ 立ち上がり端部
４１ｃ 第３基部
４２、４３ バレル片
４２ａ 先端
４４ 導体圧着部
４５ 中間部
４６ 被覆圧着部
４７ セレーション
４８、２４８ 溝部
４９ 隙間空間部
１００、２００ 端子付き電線
２４８ａ 傾斜面
Ｃ 中心
Ｄ１ 周方向
Ｌ１、Ｌ２ 間隔
Ｗ 電線
Ｗ１ 導体部
Ｗ１ａ 中間露出部
Ｗ１ｂ 先端
Ｗ２ 絶縁被覆部
Ｗ２ａ 端末
Ｘ 軸線方向
Ｘ１ 軸線
Ｙ 幅方向
Ｚ 高さ方向

Claims (4)

1. 絶縁性を有する絶縁被覆部によって導電性を有する導体部を被覆した電線と、
   前記絶縁被覆部の端末から露出する前記導体部に対して圧着される導体圧着部、前記絶縁被覆部に対して圧着される被覆圧着部、及び、前記導体圧着部と前記被覆圧着部とを連結し前記導体部が露出する中間部を含む圧着端子と、
   少なくとも前記中間部において露出する前記導体部を覆う防食材とを備え、
   前記中間部は、前記導体部側の面に設けられ、前記電線の軸線周りに沿う周方向の両端部からそれぞれ当該周方向の中心側に向かって形成された溝部を有し、
   前記溝部は、前記中間部の前記周方向の端部から前記周方向に沿って延在し、前記周方向の中心側の端部が当該周方向の中心と間隔をあけた位置で閉塞することを特徴とする、
   端子付き電線。
2. 前記溝部は、前記周方向の中心側に向かってテーパ形状に形成される、
   請求項１に記載の端子付き電線。
3. 前記溝部は、前記電線の軸線方向に沿って前記被覆圧着部と間隔をあけて位置する、
   請求項１又は請求項２に記載の端子付き電線。
4. 前記防食材は、少なくとも、前記圧着端子が前記電線に圧着された状態で前記中間部と前記導体部と前記絶縁被覆部の端末とによって囲まれた隙間空間部、及び、前記溝部に充填されている、
   請求項１乃至請求項３のいずれか１項に記載の端子付き電線。

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