JP7102899B2 - 積層体および電子デバイスの製造方法 - Google Patents
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Description
このような発泡に伴って基板と支持基材との間での剥離が生じると、基板上に電子デバイスを形成する際にひずみが生じ、微細なパターンを形成しにくくなる;薬品が発泡部分に浸透し、ウェット工程で使用される薬剤が積層体中に浸入し、その後に用いられる真空プロセス装置を汚す;他のウェット工程で使用される薬剤中に前工程の薬剤が混入する;等のプロセス上の不都合が生じやすい。
本発明は、上記積層体を用いた電子デバイスの製造方法を提供することも目的とする。
[2]上記シリコーン樹脂層100質量部中における上記金属の元素の含有量が、0.05質量部以上である、上記[1]に記載の積層体。
[3]上記シリコーン樹脂層が、さらに、シリコーンオイルを含む、上記[1]または[2]に記載の積層体。
[4]上記シリコーン樹脂層100質量部中における上記シリコーンオイルの含有量が、2質量部以下である、上記[3]に記載の積層体。
[5]上記シリコーン樹脂層100質量部中における上記金属の元素の含有量と、上記シリコーン樹脂層100質量部中における上記シリコーンオイルの含有量との質量比の値が、0.05以上である、上記[3]または[4]に記載の積層体。
[6]上記シリコーン樹脂層が、さらに、周期表第15族の金属元素を含む、上記[1]~[5]のいずれかに記載の積層体。
[7]上記支持基材が、ガラス板である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の積層体。
[8]上記基板が、ガラス基板である、上記[1]~[7]のいずれかに記載の積層体。
[9]上記[1]~[8]のいずれかに記載の積層体の上記基板の表面上に電子デバイス用部材を形成し、電子デバイス用部材付き積層体を得る部材形成工程と、上記電子デバイス用部材付き積層体から上記支持基材および上記シリコーン樹脂層を含むシリコーン樹脂層付き支持基材を除去し、上記基板と上記電子デバイス用部材とを有する電子デバイスを得る分離工程と、を備える電子デバイスの製造方法。
また、本発明によれば、上記積層体を用いた電子デバイスの製造方法を提供することもできる。
図1は、積層体10を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、積層体10は、支持基材12と、シリコーン樹脂層14と、基板16と、をこの順で備える積層体である。換言すれば、積層体10は、支持基材12および基板16と、それらの間に配置されたシリコーン樹脂層14とを含む積層体である。シリコーン樹脂層14は、一方の面が支持基材12に接し、他方の面(表面14a)が基板16の第1主面16aに接している。
支持基材12およびシリコーン樹脂層14からなる2層部分(以下、「シリコーン樹脂層付き支持基材18」ともいう)は、基板16を補強する補強板として機能する。
シリコーン樹脂層14は、3d遷移金属、および、4d遷移金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属の元素(以後、これらを総称して「特定元素」とも称する)を含む。これにより、積層体10に対して、高温の加熱処理を施した場合においても、シリコーン樹脂層14の発泡が抑制される。
その理由の詳細は不明だが、シリコーン樹脂層14に含まれる特定元素が、シリコーン樹脂層14を構成するシリコーン樹脂の高温下での分解を抑制するためと考えられる。
さらに、フーリエ変換赤外分光光度計を用いた、シリコーン樹脂層14の赤外線スペクトルにおいて、2100~2250cm-1にSi-Hに帰属されるピーク(以後、「Si-Hピーク」ともいう)が存在する。これは、シリコーン樹脂層14中にSi-Hが存在することを示唆する。これにより、積層体10に低温の加熱処理を繰り返し施した場合にも、シリコーン樹脂層14と基板16との間で容易に剥離が生じ、シリコーン樹脂層14と基板16との剥離性に優れる。赤外線(IR)スペクトルの測定は、透過法および全反射測定法(ATR法)のいずれでもよい。ATR法は表面から数μm内部のSi-Hを確認できる。
例えば、支持基材12がガラス板である場合、このガラス板の表面のSi-OHとシリコーン樹脂層14のSi-Hとが反応して共有結合を形成すると考えられる。
その結果、支持基材12と基板16とを引き剥がす方向の外力を加えると、シリコーン樹脂層14と基板16との間で剥離し、シリコーン樹脂層14が基板16に付着することが抑制される。
まず、積層体10を製造する場合、硬化性シリコーンを含む硬化性組成物を支持基材12に塗布し、得られた塗膜に対して硬化処理を施してシリコーン樹脂層14を形成する。その後、シリコーン樹脂層14の表面14aに基板16を積層する。
シリコーン樹脂層14を形成するための硬化処理(基板16を積層する前に塗膜に対して施される硬化処理)は一般的に加熱を伴うが、この加熱により、シリコーン樹脂層14の表面14aとなる塗膜面(基板16を積層する前であるため、露出している面)のSi-Hは、大気中の酸素(O2)と反応する。こうして、硬化処理により形成されるシリコーン樹脂層14の表面14aには、Si-Hがほとんど存在しないと考えられる。
積層体10に施される高温の加熱処理(以後、便宜的に「高温加熱処理」ともいう)における加熱温度は、450℃以上が好ましく、460℃以上がより好ましく、480℃以上がさらに好ましい。一方、上限は、特に限定されないが、加熱温度が高すぎると、シリコーン樹脂層14の種類によっては、分解が生じるおそれがある。このため、高温加熱処理の加熱温度は、600℃以下が好ましく、500℃以下がより好ましい。
高温加熱処理の時間(加熱時間)は、1~120分が好ましく、5~60分がより好ましい。
高温加熱処理の雰囲気は、大気雰囲気、不活性ガス雰囲気(例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気)などが挙げられ、窒素雰囲気が好ましい。
高温加熱処理は、温度条件を変えて段階的に実施してもよい。
積層体10に繰り返して施される低温の加熱処理(以後、便宜的に「低温加熱処理」ともいう)における加熱温度は、200~250℃が好ましく、210~240℃がより好ましい。
低温加熱処理の1回(1サイクル)ごと時間(加熱時間)は、1~120分が好ましく、5~60分がより好ましい。
低温加熱処理の回数(サイクル数)は、3~15回が好ましく、6~10回がより好ましい。
低温加熱処理の雰囲気は、特に限定されず、大気雰囲気、不活性ガス雰囲気(例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気)などが挙げられ、窒素雰囲気が好ましい。
図1には、1つの基板がシリコーン樹脂層を介して支持基材に積層される態様を図示した。しかし、本発明の積層体は、この態様に限定されず、例えば、複数の基板がシリコーン樹脂層を介して支持基材に積層される態様(以下、「多面貼り態様」ともいう)であってもよい。
多面貼り態様は、より詳細には、複数の基板のいずれもが、シリコーン樹脂層を介して支持基材に接する態様である。すなわち、複数枚の基板が重なる(複数枚のうちの1枚の基板のみが、シリコーン樹脂層を介して、支持基材に接する)態様ではない。
多面貼り態様においては、例えば、個々の基板ごとに複数のシリコーン樹脂層が設けられ、複数の基板およびシリコーン樹脂層が、1つの支持基材上に配置される。もっとも、これに限定されず、例えば、1つの支持基材上に形成された1枚のシリコーン樹脂層(例えば、支持基材と同サイズ)上に、個々の基板が配置されてもよい。
支持基材12は、基板16を支持して補強する部材である。
支持基材12としては、表面にヒドロキシ基(OH基)を有する部材が好ましく、例えば、ガラス板、シリコンウエハ(Siウエハ)などが好適に挙げられる。
ガラス板のガラスの種類は特に制限されないが、無アルカリホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、高シリカガラス、その他の酸化ケイ素を主な成分とする酸化物系ガラスが好ましい。酸化物系ガラスとしては、酸化物換算による酸化ケイ素の含有量が40~90質量%のガラスが好ましい。
ガラス板として、より具体的には、無アルカリホウケイ酸ガラスからなるガラス板(旭硝子株式会社製商品名「AN100」)が挙げられる。
ガラス板の製造方法は特に制限されず、通常、ガラス原料を溶融し、溶融ガラスを板状に成形して得られる。このような成形方法は、一般的なものであってよく、例えば、フロート法、フュージョン法、スロットダウンドロー法等が挙げられる。
支持基材12の厚さは、基板16よりも厚くてもよいし、薄くてもよい。積層体10の取り扱い性の点からは、支持基材12の厚さは基板16よりも厚いことが好ましい。
支持基材12がガラス板の場合、ガラス板の厚さは、扱いやすく、割れにくい等の理由から、0.03mm以上であることが好ましい。ガラス板の厚さは、基板16を剥離する際に、割れずに適度に撓むような剛性が望まれる理由から、1.0mm以下であることが好ましい。
基板16としては、例えば、金属基板、半導体基板、樹脂基板、および、ガラス基板が挙げられる。
基板16は、例えば、2種の異なる金属から構成される金属板のように、複数の同種材料から構成される基板であってもよい。
さらに、基板16は、例えば、樹脂とガラスとから構成される基板のように、異種材料(例えば、金属、半導体、樹脂、および、ガラスから選択される2種以上の材料)の複合体基板であってもよい。
ガラス基板としては、より具体的には、無アルカリホウケイ酸ガラスからなるガラス板(旭硝子株式会社製商品名「AN100」)が挙げられる。
ガラス基板の製造方法は特に制限されず、通常、ガラス原料を溶融し、溶融ガラスを板状に成形して得られる。このような成形方法は、一般的なものであってよく、例えば、フロート法、フュージョン法、スロットダウンドロー法等が挙げられる。
支持基材12とガラス基板である基板16との25~300℃における平均線膨張係数の差は、10×10-7/℃以下が好ましく、3×10-7/℃以下がより好ましく、1×10-7/℃以下がさらに好ましい。
一方、基板16の厚さは、基板16の取り扱いが容易である点から、0.03mm以上が好ましい。
基板16の面積(主面の面積)は、特に制限されないが、電子デバイスの生産性の点から、300cm2以上が好ましい。
基板16の形状も特に制限されず、矩形状であっても、円形状であってもよい。基板16には、オリエンテーションフラット(いわゆるオリフラ。基板の外周に形成された平坦部分)や、ノッチ(基板の外周縁に形成された一つまたはそれ以上のV型の切欠き)が形成されていてもよい。
シリコーン樹脂層14は、3d遷移金属、および、4d遷移金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属の元素(特定元素)を含む。これにより、上述したように、積層体10に高温加熱処理を施した場合であっても、シリコーン樹脂層14の発泡が抑制される。
上記他の金属元素としては、例えば、ビスマス元素などの周期表第15族の金属元素;白金元素;等が挙げられ、なかでも、高温加熱処理後にシリコーン樹脂層の端部にクラックが発生しにくいという理由から、周期表第15族の金属元素が好ましく、ビスマス元素(Bi)がより好ましい。
シリコーン樹脂層には、付加反応を促進する硬化触媒が含まれていてもよい。付加反応を促進する硬化触媒としては、例えば、白金系触媒が挙げられる。
シリコーン樹脂層100質量部中における上記他の金属元素の含有量は、0.01~0.50質量部が好ましく、0.05~0.30質量部がより好ましい。
シリコーン樹脂層100質量部中におけるシリコーンオイルの含有量は、例えば、8質量部以下であり、高温加熱処理後におけるシリコーン樹脂層の発泡がより抑制されるという理由から、2質量部以下が好ましい。下限は特に限定されないが、例えば、0.5質量部以上であり、1質量部以上が好ましい。
シリコーン樹脂層14の厚さがこのような範囲であると、シリコーン樹脂層14にクラックが生じにくく、シリコーン樹脂層14と基板16との間に気泡や異物が介在することがあっても、基板16のゆがみ欠陥や異物噛みこみによる界面気泡の発生を抑制できる。
上記厚さは、5点以上の任意の位置におけるシリコーン樹脂層14の厚さをレーザー顕微鏡などの非接触式膜厚測定装置で測定し、それらを算術平均したものである。
表面粗さRaの測定は、JIS B 0601-2001に準じて行なわれ、任意の5箇所以上の点において測定されたRaを算術平均した値が上記表面粗さRaに相当する。
これにより、上述したように、積層体10に低加熱処理を繰り返し施した場合にも、シリコーン樹脂層14と基板16との間で容易に剥離が生じ、シリコーン樹脂層14と基板16との剥離性に優れる。
シリコーン樹脂層14は、主に、シリコーン樹脂からなる。
一般的に、オルガノシロキシ単位には、M単位と呼ばれる1官能オルガノシロキシ単位、D単位と呼ばれる2官能オルガノシロキシ単位、T単位と呼ばれる3官能オルガノシロキシ単位、および、Q単位と呼ばれる4官能オルガノシロキシ単位がある。Q単位はケイ素原子に結合した有機基(ケイ素原子に結合した炭素原子を有する有機基)を有しない単位であるが、本発明においてはオルガノシロキシ単位(含ケイ素結合単位)とみなす。M単位、D単位、T単位、Q単位を形成するモノマーを、それぞれMモノマー、Dモノマー、Tモノマー、Qモノマーともいう。
全オルガノシロキシ単位とは、M単位、D単位、T単位、および、Q単位の合計を意味する。M単位、D単位、T単位、および、Q単位の数(モル量)の割合は、29Si-NMRによるピーク面積比の値から計算できる。
以下の説明において、他のケイ素原子に結合した酸素原子O*は、2個のケイ素原子間を結合する酸素原子であり、Si-O-Siで表される結合中の酸素原子を意味する。従って、O*は、2つのオルガノシロキシ単位のケイ素原子間に1個存在する。
D単位とは、(R)2SiO2/2(Rは、水素原子または有機基を表す)で表されるオルガノシロキシ単位を意味する。つまり、D単位は、1個のケイ素原子を有し、そのケイ素原子に結合した2個の水素原子または有機基と、他のケイ素原子に結合した酸素原子O*を2個有する単位である。
T単位とは、RSiO3/2(Rは、水素原子または有機基を表す)で表されるオルガノシロキシ単位を意味する。つまり、T単位は、1個のケイ素原子を有し、そのケイ素原子に結合した1個の水素原子または有機基と、他のケイ素原子に結合した酸素原子O*を3個有する単位である。
Q単位とは、SiO2で表されるオルガノシロキシ単位を意味する。つまり、Q単位は、1個のケイ素原子を有し、他のケイ素原子に結合した酸素原子O*を4個有する単位である。
有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;ハロゲン化アルキル基(例えば、クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等)等のハロゲン置換の一価の炭化水素基が挙げられる。有機基としては、炭素数1~12(好ましくは炭素数1~10程度)の、非置換またはハロゲン置換の一価の炭化水素基が好ましい。
上記特定オルガノシロキシ単位の割合は、全オルガノシロキシ単位に対して、60モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、100モル%以下の場合が多い。
M単位やT単位の割合は、29Si-NMRによるピーク面積比の値から計算できる。
シリコーン樹脂は、通常、硬化処理によってシリコーン樹脂となり得る硬化性シリコーンを硬化(架橋硬化)して得られる。つまり、シリコーン樹脂は、硬化性シリコーンの硬化物に相当する。
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ法(GPC)による標準ポリスチレン換算値で示される(以下、同様)。
付加反応型シリコーンとしては、主剤および架橋剤を含み、白金触媒等の触媒の存在下で硬化する硬化性の組成物が好適に使用できる。
付加反応型シリコーンの硬化は、加熱により促進される。
付加反応型シリコーン中の主剤は、ケイ素原子に結合したアルケニル基(ビニル基等)を有するオルガノポリシロキサン(すなわち、オルガノアルケニルポリシロキサン)であることが好ましく、アルケニル基が架橋点となる。
付加反応型シリコーン中の架橋剤は、ケイ素原子に結合した水素原子(ハイドロシリル基)を有するオルガノポリシロキサン(すなわち、オルガノハイドロジェンポリシロキサン)であることが好ましく、ハイドロシリル基が架橋点となる。
上限は特に限定されないが、例えば、0.0030mol/g以下であり、0.0025mol/g以下が好ましい。
上記仕込みSi-H濃度を得る等の観点から、オルガノアルケニルポリシロキサンとしては、鎖状オルガノアルケニルポリシロキサンと環状オルガノアルケニルポリシロキサンとを併用してもよい。10量体以下の低分子量の環状オルガノアルケニルポリシロキサンを使用することにより、単位質量あたりのアルケニル基が増える。その結果、同じモル比(Si-H/Si-Vi)であっても、使用されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが増え、Si-Hが増えやすい。
鎖状オルガノアルケニルポリシロキサンと環状オルガノアルケニルポリシロキサンとの質量比(鎖状/環状)は、例えば、100/0~70/30である。
シリコーン樹脂層14は、上述したように、さらに、シリコーンオイルを含むことが好ましい。これにより、シリコーン樹脂層14の発泡がより抑制される。シリコーン樹脂層14中におけるシリコーンオイルの含有量は、上述したとおりである。
シリコーンオイルは、上述した硬化性シリコーンとは反応しない、非反応性のオルガノポリシロキサンである。
具体的に市販されているシリコーンオイルの商品名または型番としては、芳香族基(例えば、フェニル基)を有するシリコーンオイルとして、KTSF433(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)、KF-50、KF-53、KF-54(信越化学工業社製)、SH550(東レダウコーニング社製)等が挙げられる。
芳香族基を有さないシリコーンオイルとしては、SH200(東レダウコーニング社製)、KNS-330、KF-96H(信越化学社製)等が挙げられる。
シリコーンオイルの動粘度は特に制限されないが、10,000~2,000,000センチストークス(0.01~2m2/s)が好ましく、50,000~1,500,000センチストークス(0.05~1.5m2/s)がより好ましく、100,000~1,000,000センチストークス(0.1~1m2/s)がさらに好ましい。
シリコーン樹脂層14の製造方法としては、支持基材12に上記シリコーン樹脂となる硬化性シリコーンを含む硬化性組成物を塗布して、必要に応じて溶媒を除去して、塗膜を形成して、塗膜中の硬化性シリコーンを硬化させて、シリコーン樹脂層14とすることが好ましい。
白金触媒は、上記オルガノアルケニルポリシロキサン中のアルケニル基と、上記オルガノハイドロジェンポリシロキサン中の水素原子とのヒドロシリル化反応を、進行・促進させるための触媒である。
溶媒としては、作業環境下で硬化性シリコーンを容易に溶解でき、かつ、容易に揮発除去できる溶媒であれば、特に制限されない。具体的には、例えば、酢酸ブチル、2-ヘプタノン、1-メトキシ-2-プロパノールアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、オクタメチルシクロテトラシロキサン、イソパラフィン系溶媒などが挙げられる。さらに、溶媒としては、「Isoper G」(東燃ゼネラル石油株式会社製)などの市販品も使用できる。
金属化合物に含まれる金属元素としては、3d遷移金属、4d遷移金属、ビスマス(Bi)などが挙げられる。硬化性組成物が特定元素(3d遷移金属、および、4d遷移金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属の元素)を含むと、シリコーン樹脂層14に特定元素を含ませることが容易である。
3d遷移金属としては、周期表第4周期の遷移金属、すなわち、スカンジウム(Sr)~銅(Cu)の金属が挙げられる。具体的には、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、および、銅(Cu)が挙げられる。
4d遷移金属としては、周期表第5周期の遷移金属、すなわち、イットリウム(Y)~銀(Ag)の金属が挙げられる。具体的には、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、および、銀(Ag)が挙げられる。
金属化合物は、錯体が好ましい。錯体とは、金属元素の原子またはイオンを中心として、これに配位子(原子・原子団・分子またはイオン)が結合した集団体である。錯体中に含まれる配位子の種類は特に制限されないが、例えば、β-ジケトン、カルボン酸、アルコキシド、および、アルコールからなる群から選択される少なくとも1種の配位子が挙げられる。
β-ジケトンとしては、例えば、アセチルアセトン、メチルアセトアセテート、エチルアセトアセテート、ベンゾイルアセトンが挙げられる。
カルボン酸としては、例えば、酢酸、2-エチルヘキサン酸、ナフテン酸、ネオデカン酸が挙げられる。
アルコキシドとしては、例えば、メトキシド、エトキシド、ノルマルプロポキシド(n-プロポキシド)、イソプロポキシド、ノルマルブトキシド(n-ブトキシド)が挙げられる。
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、t-ブタノールが挙げられる。
この場合、硬化性組成物中の硬化性シリコーン、特定元素およびシリコーンオイルの合計量の100質量部中における特定元素の含有量を、シリコーン樹脂層14の100質量部中における特定元素の含有量の好適範囲の下限値以上となるように調整すると、シリコーン樹脂層14の100質量部中における特定元素の含有量が好適範囲の下限値以上となりやすい。
同様に、硬化性組成物中の硬化性シリコーン、特定元素およびシリコーンオイルの合計量の100質量部中における特定元素の含有量を、シリコーン樹脂層14の100質量部中における特定元素の含有量の好適範囲の上限値以下となるように調整すると、シリコーン樹脂層14の100質量部中における特定元素の含有量が好適範囲の上限値以下となりやすい。
積層体10を製造する方法は、図2に示すように、支持基材12の上にシリコーン樹脂層14を形成する方法が好ましい。
具体的には、硬化性シリコーンを含む硬化性組成物を、支持基材12の上に塗布し、得られた塗膜に対して硬化処理を施してシリコーン樹脂層14を得た後、シリコーン樹脂層14の表面14aに基板16を積層して、積層体10を製造する方法が好ましい。
より詳細には、積層体10を製造する方法は、硬化性シリコーンの層を支持基材12の上に形成し、支持基材12の上にシリコーン樹脂層14を形成する工程(樹脂層形成工程)と、シリコーン樹脂層14の表面14aに基板16を積層して積層体10を得る工程(積層工程)とを有する。硬化性組成物としては、3d遷移金属および4d遷移金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属の元素を含むものを用いることが好ましい。
以下、上記各工程の手順について詳述する。
樹脂層形成工程は、硬化性シリコーンの層を支持基材12の上に形成し、支持基材12の上にシリコーン樹脂層14を形成する工程である。本工程によって、支持基材12とシリコーン樹脂層14とをこの順で備えるシリコーン樹脂層付き支持基材18が得られる。
本工程においては、上述した硬化性組成物を支持基材12の上に塗布して硬化性シリコーンの層(塗膜)を形成し、次いで、硬化性シリコーンの層に対して硬化処理を施すことにより硬化層(シリコーン樹脂層14)を形成することが好ましい。本工程における硬化性組成物としては、3d遷移金属および4d遷移金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属の元素を含むものを用いることが好ましい。
硬化性組成物を塗布する方法は特に制限されず、公知の方法が挙げられる。例えば、スプレーコート法、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、スクリーン印刷法、グラビアコート法が挙げられる。
硬化性シリコーンを硬化させて硬化層(シリコーン樹脂層14)を形成する方法(硬化の方法)は、特に制限されず、使用される硬化性シリコーンの種類によって適宜最適な処理が実施される。例えば、付加反応型シリコーンを用いる場合は、硬化処理としては熱硬化処理が好ましい。
熱硬化処理の条件は、支持基材12の耐熱性の範囲内で実施され、例えば、熱硬化させる温度条件は、50~400℃が好ましく、100~300℃がより好ましい。加熱時間は、通常、10~300分が好ましく、20~120分がより好ましい。
形成されるシリコーン樹脂層14の態様は、上述した通りである。
積層工程は、シリコーン樹脂層14の表面14aに基板16を積層することにより積層体10を得る工程である。積層工程は、シリコーン樹脂層付き支持基材18と基板16とを用いて積層体10を形成する工程である。
基板16をシリコーン樹脂層14の表面14aに積層する方法は特に制限されず、公知の方法が挙げられる。
例えば、常圧環境下でシリコーン樹脂層14の表面14a上に基板16を重ねる方法が挙げられる。必要に応じて、シリコーン樹脂層14の表面14a上に基板16を重ねた後、ロールやプレスを用いてシリコーン樹脂層14に基板16を圧着させてもよい。ロールまたはプレスによる圧着により、シリコーン樹脂層14と基板16との間に混入している気泡が比較的容易に除去されるので好ましい。
真空ラミネート法や真空プレス法により圧着すると、気泡の混入が抑制され、かつ、量良好な密着が実現でき、好ましい。
基板16を積層する際には、シリコーン樹脂層14に接触する基板16の表面を十分に洗浄し、クリーン度の高い環境で積層することが好ましい。
積層体10は、種々の用途に使用でき、例えば、後述する表示装置用パネル、PV、薄膜2次電池、表面に回路が形成された半導体ウエハ、受信センサーパネル等の電子部品を製造する用途が挙げられる。
表示装置用パネルとは、LCD、OLED、電子ペーパー、プラズマディスプレイパネル、フィールドエミッションパネル、量子ドットLEDパネル、マイクロLEDディスプレイパネル、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)シャッターパネル等が含まれる。
受信センサーパネルとは、電磁波受信センサーパネル、X線受光センサーパネル、紫外線受光センサーパネル、可視光線受光センサーパネル、赤外線受光センサーパネルなどが含まれる。これら受信センサーパネルに用いる基板は、樹脂などの補強シートなどで補強されていてもよい。
積層体10を用いて、基板16および電子デバイス用部材20を含む電子デバイス(部材付き基板24)が製造される。
電子デバイスの製造方法は特に制限されないが、積層体10の基板16上に電子デバイス用部材20を形成して電子デバイス用部材付き積層体22を得た後、得られた電子デバイス用部材付き積層体22から、シリコーン樹脂層14と基板16との界面を剥離面として、電子デバイス(部材付き基板24)とシリコーン樹脂層付き支持基材18とに分離する方法が好ましい。
以下、電子デバイス用部材20を形成する工程を「部材形成工程」、部材付き基板24とシリコーン樹脂層付き支持基材18とに分離する工程を「分離工程」という。
部材形成工程は、積層体10の基板16上に電子デバイス用部材を形成する工程である。より具体的には、図3に示すように、基板16の第2主面16b(露出表面)上に電子デバイス用部材20を形成し、電子デバイス用部材付き積層体22を得る。
まず、本工程で使用される電子デバイス用部材20について詳述し、その後工程の手順について詳述する。
電子デバイス用部材20は、積層体10中の基板16上に形成され電子デバイスの少なくとも一部を構成する部材である。より具体的には、電子デバイス用部材20としては、表示装置用パネル、太陽電池、薄膜2次電池、または、表面に回路が形成された半導体ウエハ等の電子部品、受信センサーパネル等に用いられる部材(例えば、LTPSなどの表示装置用部材、太陽電池用部材、薄膜2次電池用部材、電子部品用回路、受信センサー用部材)が挙げられる。
薄膜2次電池用部材としては、リチウムイオン型では、正極および負極の金属または金属酸化物等の透明電極、電解質層のリチウム化合物、集電層の金属、封止層としての樹脂等が挙げられ、その他に、ニッケル水素型、ポリマー型、セラミックス電解質型等に対応する各種部材等を挙げることができる。
電子部品用回路としては、CCDやCMOSでは、導電部の金属、絶縁部の酸化ケイ素や窒化珪素等が挙げられ、その他に圧力センサー・加速度センサー等各種センサーやリジッドプリント基板、フレキシブルプリント基板、リジッドフレキシブルプリント基板等に対応する各種部材等を挙げることができる。
上述した電子デバイス用部材付き積層体22の製造方法は特に制限されず、電子デバイス用部材の構成部材の種類に応じて従来公知の方法にて、積層体10の基板16の第2主面16b上に、電子デバイス用部材20を形成する。
電子デバイス用部材20は、基板16の第2主面16bに最終的に形成される部材の全部(以下、「全部材」という)ではなく、全部材の一部(以下、「部分部材」という)であってもよい。シリコーン樹脂層14から剥離された部分部材付き基板を、その後の工程で全部材付き基板(後述する電子デバイスに相当)とすることもできる。
シリコーン樹脂層14から剥離された、全部材付き基板には、その剥離面(第1主面16a)に他の電子デバイス用部材が形成されてもよい。さらに、全部材付き積層体を2枚用いて組み立て、その後、全部材付き積層体から2枚のシリコーン樹脂層付き支持基材18を剥離して、2枚の部材付き基板24を製造することもできる。
TFTやCFを形成する前に、必要に応じて、基板16の第2主面16bを洗浄してもよい。洗浄方法としては、公知のドライ洗浄やウェット洗浄を用いることができる。
分離工程は、図4に示すように、上記部材形成工程で得られた電子デバイス用部材付き積層体22から、シリコーン樹脂層14と基板16との界面を剥離面として、電子デバイス用部材20が積層した基板16(部材付き基板24)と、シリコーン樹脂層付き支持基材18とに分離して、電子デバイス用部材20および基板16を含む部材付き基板24(電子デバイス)を得る工程である。
好ましくは、電子デバイス用部材付き積層体22を、支持基材12が上側、電子デバイス用部材20側が下側となるように定盤上に設置し、電子デバイス用部材20側を定盤上に真空吸着し、この状態でまず刃物を基板16とシリコーン樹脂層14との界面に侵入させる。その後、支持基材12側を複数の真空吸着パッドで吸着し、刃物を差し込んだ箇所付近から順に真空吸着パッドを上昇させる。そうすると、シリコーン樹脂層付き支持基材18を容易に剥離できる。
表示装置用パネルは、液晶パネル、有機ELパネル、プラズマディスプレイパネル、フィールドエミッションパネルなどを含む。
受信センサーパネルは、電磁波受信センサーパネル、X線受光センサーパネル、紫外線受光センサーパネル、可視光線受光センサーパネル、赤外線受光センサーパネルなどを含む。
以下、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味する。
また、基板(ガラス基板)としては、無アルカリホウケイ酸ガラスからなるガラス板(縦240mm、横240mm、板厚0.2mm、線膨張係数38×10-7/℃、旭硝子株式会社製商品名「AN100」)を使用した。
(オルガノハイドロジェンポリシロキサンの合成)
1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(5.4g)、テトラメチルシクロテトラシロキサン(96.2g)、および、オクタメチルシクロテトラシロキサン(118.6g)の混合物を5℃に冷却し、混合液を撹拌しながら、濃硫酸11.0gを混合液にゆっくり加えた後、さらに水3.3gを混合液に1時間かけて滴下した。混合液の温度を10~20℃に保ちながら8時間撹拌した後、混合液にトルエンを加え、シロキサン層が中性になるまで水洗および廃酸分離を行なった。中性になったシロキサン層を減圧加熱濃縮してトルエン等の低沸点留分を除去し、下記式(1)において、k=17、l=13のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを得た。
1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(3.7g)、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン(41.4g)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(355.9g)に水酸化カリウムのシリコネートをSi/K=20000/1(mol比)量加え、窒素雰囲気下で150℃、6時間平衡化反応させた。その後、エチレンクロロヒドリンをK(カリウム)に対して2mol量添加し、混合液を120℃で2時間中和した。その後、得られた混合液を160℃、666Paで6時間加熱バブリング処理して、揮発分をカットして、100gあたりのアルケニル当量数La=0.1、Mw:10,000の、アルケニル基としてビニル基を含有する鎖状オルガノアルケニルポリシロキサンを得た。
アルケニル基としてビニル基を含有する環状オルガノアルケニルポリシロキサンとして、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン(アルケニル基濃度:11.6mmol/g、25℃における粘度2~3mPas、東京化成工業社製)を準備した。
オルガノハイドロジェンポリシロキサンと、鎖状オルガノアルケニルポリシロキサンと、環状オルガノアルケニルポリシロキサンとを、下記表1に示すように混合して、硬化性シリコーンを調製した。
具体的には、オルガノアルケニルポリシロキサンとして、70質量%の鎖状オルガノアルケニルポリシロキサンと、30質量%の環状オルガノアルケニルポリシロキサンとを使用した。
また、得られる硬化性シリコーンの単位質量あたりのSi-H個数(以後、「仕込みSi-H濃度」ともいう)を0.0018mol/gとした。
さらに、オルガノアルケニルポリシロキサンのビニル基(Si-Vi)に対する、オルガノハイドロジェンポリシロキサンのケイ素原子に結合した水素原子(Si-H)のモル比(以後、「モル比(Si-H/Si-Vi)」ともいう)を0.7とした。
調製した硬化性シリコーン(100質量部)に、式「HC≡C-C(CH3)2-O-Si(CH3)3」で示されるアセチレン系不飽和基を有するケイ素化合物(1質量部)を混合し、白金元素の含有量が100ppmとなるように白金触媒を加えて、混合物Aを得た。
混合物Aと、ビス(2-エチルヘキサン酸)マンガン(II)と、トリス(2-エチルヘキサン酸)ビスマス(III)と、シリコーンオイルとしてジメチルポリシロキサン(信越化学工業社製、KF-96H-100マンCS、粘度1,000,000cP)と、溶媒としてオクタメチルテトラシクロシロキサン(ダウコーニング社製、XIAMETER PMX-0244)とを、得られるシリコーン樹脂層の組成が下記表1に示す組成となるように混合し、得られた混合液を、孔径0.45μmのフィルタを用いてろ過することにより、硬化性組成物を得た。
得られた硬化性組成物を、支持基材上にスピンコート法により塗布し、ホットプレートを用いて140℃で10分間加熱して溶媒を揮発させた。その後、オーブンを用いて大気下220℃で30分間加熱し、硬化性シリコーンを硬化させ、膜厚8μmのシリコーン樹脂層を形成した。
この時点で、形成したシリコーン樹脂層について、フーリエ変換赤外分光光度計を用いた測定を行なった。その結果、シリコーン樹脂層の赤外線(IR)スペクトルにおいて、2100~2250cm-1に、Si-Hに帰属されるピーク(以後、「IRによるSi-Hピーク」ともいう)が存在することが確認された。IRは全反射測定法(ATR法)で測定した。
その後、ガラス基板をシリコーン樹脂層の表面上に置き、貼合装置を用いて貼り合わせることにより、積層体を作製した。
各種組成が下記表1~表6に示す組成となるように、例1と同様にして、例2~例21の積層体を作製した。
各例にて得られた積層体を切り出して、100mm×75mmのサンプルを3つ得た。得られたサンプルの1つを、電気炉に入れて、7℃/分の昇温レートで、450℃まで昇温し、60分間の加熱処理を施した。その後、7℃/分の降温レートで室温まで冷却し、サンプルを取り出した。電気炉中の雰囲気は、窒素雰囲気であった。同様に、残りの2つのサンプルについても、それぞれ、460℃および480℃の加熱処理を施した。
取り出したサンプルの発泡有無を目視で確認した。発泡していない場合は「○」を、発泡している場合は「×」を下記表1~表6に記載した。
少なくとも、450℃の加熱処理後の評価が「○」であれば、シリコーン樹脂層の耐熱性が良好であるものと評価できる。
460℃の加熱処理後の評価も「○」であることが好ましく、480℃の加熱処理後の評価も「○」であることがより好ましい。
各例にて得られた積層体を切り出して、50mm×50mmのサンプルを得た。得られたサンプルを、電気炉に入れて、7℃/分の昇温レートで、230℃まで昇温し、60分間温度を保持した。その後、7℃/分の降温レートで室温まで冷却した。このような加熱処理を8回繰り返した。電気炉の雰囲気は、窒素雰囲気であった。
その後、オートグラフAG-20/50kNXDplus(島津製作所社製)を用いて、基板の剥離を行なった。
具体的には、加熱処理後の積層体サンプルのシリコーン樹脂層近辺に、厚さ0.1mmのステンレス製ナイフを挿入して剥離のきっかけ部を形成した後、基板の第2主面を定盤上に固定し、支持基材を引き上げることにより、基板の剥離を行なった。剥離速度は30mm/minとした。
基板とシリコーン樹脂層とが界面剥離した場合は「A」を、基板とシリコーン樹脂層とが界面剥離したが、シリコーン樹脂層が支持基材から剥がれかけた場合は「B」を、シリコーン樹脂層が支持基材から剥離し基板に付着していた場合は「C」を下記表1~表6に記載した。
「A」または「B」であれば、シリコーン樹脂層と基板との剥離性に優れると評価できる。剥離性により優れるという理由から「A」であることが好ましい。
下記表1~表6において、「IRによるSi-Hピーク」の存在が確認された場合には「あり」を記載し、確認されなかった場合には「なし」を記載した。
これに対して、シリコーン樹脂層がマンガン(Mn)を含まない例20は、シリコーン樹脂層の発泡の抑制が不十分であった。
また、シリコーン樹脂層にIRによるSi-Hピークの存在が確認されなかった例21は、シリコーン樹脂層と基板との剥離性が不十分であった。
例7~11を対比すると、質量比(Mn/シリコーンオイル)が0.05以上である例9~11は、これを満たさない例7~8よりも、シリコーン樹脂層の発泡がより抑制されていた。
例12~14を対比すると、質量比(Mn/シリコーンオイル)が0.05以上である例12は、これを満たさない例13~14よりも、シリコーン樹脂層の発泡がより抑制されていた。
例15~19を対比すると、質量比(Mn/シリコーンオイル)が0.05以上である例18~19は、これを満たさない例15~17よりも、シリコーン樹脂層の発泡がより抑制されていた。
これに対して、シリコーン樹脂層がビスマスを含有する例1~19は、発泡を評価するための加熱処理後においても、シリコーン樹脂層の端部にクラックは発生していなかった。
12 支持基材
14 シリコーン樹脂層
14a シリコーン樹脂層の表面
16 基板
16a 基板の第1主面
16b 基板の第2主面
18 シリコーン樹脂層付き支持基材
20 電子デバイス用部材
22 電子デバイス用部材付き積層体
24 部材付き基板(電子デバイス)
Claims (8)
- 支持基材と、シリコーン樹脂層と、基板と、をこの順で備え、
前記シリコーン樹脂層が、3d遷移金属、および、4d遷移金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属の元素を含み、
前記シリコーン樹脂層が、さらに、周期表第15族の金属元素を含み、
フーリエ変換赤外分光光度計を用いた前記シリコーン樹脂層の赤外線スペクトルにおいて、2100~2250cm-1にSi-Hに帰属されるピークが存在する、積層体。 - 前記シリコーン樹脂層100質量部中における前記金属の元素の含有量が、0.05質量部以上である、請求項1に記載の積層体。
- 前記シリコーン樹脂層が、さらに、シリコーンオイルを含む、請求項1または2に記載の積層体。
- 前記シリコーン樹脂層100質量部中における前記シリコーンオイルの含有量が、2質量部以下である、請求項3に記載の積層体。
- 前記シリコーン樹脂層100質量部中における前記金属の元素の含有量と、前記シリコーン樹脂層100質量部中における前記シリコーンオイルの含有量との質量比の値が、0.05以上である、請求項3または4に記載の積層体。
- 前記支持基材が、ガラス板である、請求項1~5のいずれか1項に記載の積層体。
- 前記基板が、ガラス基板である、請求項1~6のいずれか1項に記載の積層体。
- 請求項1~7のいずれか1項に記載の積層体の前記基板の表面上に電子デバイス用部材を形成し、電子デバイス用部材付き積層体を得る部材形成工程と、
前記電子デバイス用部材付き積層体から前記支持基材および前記シリコーン樹脂層を含むシリコーン樹脂層付き支持基材を除去し、前記基板と前記電子デバイス用部材とを有する電子デバイスを得る分離工程と、を備える電子デバイスの製造方法。
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