JP7198639B2 - 静電荷像現像用トナー - Google Patents
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Description
また、特許文献2には、結晶性樹脂(C)と非晶性樹脂(A1)とを含有する、電子写真用トナーの製造方法であって、結晶性樹脂(C)が、結晶性ポリエステル樹脂(CP)、及び重縮合系樹脂成分(CH-1)とスチレン系樹脂成分(CH-2)とを含む結晶性複合樹脂(CH)から選ばれる1種以上の結晶性樹脂であり、結晶性ポリエステル樹脂(CP)、及び重縮合系樹脂成分(CH-1)を構成する重縮合系樹脂が、脂肪族ジオールを80モル%以上100モル%以下含有するアルコール成分と、炭素数14以上20以下の脂肪族ジカルボン酸化合物を80モル%以上100モル%以下含有するカルボン酸成分とを重縮合させて得られる樹脂であり、特定の工程1~4を含む、電子写真用トナーの製造方法が記載されている。そして、該製造方法により得られる電子写真用トナーは、低温定着性、保存性、帯電立ち上がり性及び印刷物の耐折り曲げ性のバランスに優れると記載されている。
そして、前記特許文献1及び2に記載の電子写真用トナーにおいても、印刷物の画像濃度の向上が要求されている。
そこで、本発明は、低温定着性及び保存性に優れ、更に、印刷物の画像濃度に優れる静電荷像現像用トナーに関する。
〔1〕 コア及びシェルを有するコアシェル構造のトナー粒子を含有する静電荷像現像用トナーであって、
前記コアが、スチレン系樹脂(AS)と、1,6-ヘキサンジオールを95モル%以上100モル%以下含むアルコール成分(C-al)と炭素数12以上16以下の脂肪族ジカルボン酸化合物を95モル%以上100モル%以下含むカルボン酸成分(C-ac)との重縮合物である結晶性樹脂(C)とを含有し、
前記シェルが、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含むアルコール成分(A-al)と、コハク酸を7モル%以上40モル%以下含むカルボン酸成分(A-ac)との重縮合部分であるポリエステルセグメント(AH-1)、及び、スチレン系化合物を含むモノマー成分(A-st)の付加重合部分であるビニル系樹脂セグメント(AH-2)を含む非晶性複合樹脂(AH)を含有する、静電荷像現像用トナー。
本発明の静電荷像現像用トナーは、前記〔1〕で前述したとおり、コア及びシェルを有するコアシェル構造のトナー粒子(以下、単に「トナー粒子」ともいう)を含有し、低温定着性及び保存性に優れ、更に、印刷物の画像濃度(以下、単に「画像濃度」ともいう)にも優れる。
このような効果が得られる理由は定かではないが次のように考えられる。
画像濃度がより優れるトナーを得るためには、コアシェル構造のトナー粒子を作製する時に、粒子の凝集速度を制御して、よりトナーの粒度分布をシャープにする必要があると考えられる。コアシェル構造のトナー粒子の製造時には、コアの樹脂粒子を水系媒体中で先に凝集させてコアの凝集粒子を作製し、次いで、シェルの樹脂粒子を添加し、コアの凝集粒子の表面の一部又は全部をシェルの樹脂が覆うようにして、コアシェル構造の凝集粒子を作製する。この時、本発明の静電荷像現像用トナーは、シェルに用いられる非晶性複合樹脂(AH)の末端に、pKa値が高い(酸性度の低い)コハク酸由来の構造を一定量以上含有していることで、シェル粒子の安定性が高くなるため、非晶性複合樹脂(AH)を含むシェルの凝集速度が遅くなり、粒径制御がし易くなる。その結果、コア粒子上に均一にシェル粒子を付着させることができるようになるため、トナー粒度分布をシャープにすることができると考えられる。その結果、本発明のトナーは、画像濃度が向上したと考えられる。
また、コアに用いられる結晶性樹脂(C)が、アルコール成分である1,6-ヘキサンジオール由来の構造を多く含むポリエステル構造を有していることから、トナーの保存時における温度条件下で、該結晶性樹脂(C)と、シェルに用いられるコハク酸を特定量含有する原料成分の重縮合物である非晶性複合樹脂(AH)との相溶性が低下し、コア中の樹脂成分のトナー表面への露出が低減されたと考えられる。その結果、本発明のトナーは、保存性に優れるものと考えられる。
また、非晶性複合樹脂(AH)中のコハク酸由来の構造が部分的に微結晶状のパッキング状態を形成するため、トナーの保存時にはコア部樹脂との相溶が防止される。一方、トナー定着時の高温下においては、非晶性複合樹脂(AH)中の前記パッキング状態が開放されて、コア部樹脂との相溶性が向上し、良好な低温定着性を示すものと考えらえる。
更に、非晶性複合樹脂(AH)の末端構造の多くが、コハク酸由来の構造になることで、前述のとおり、シェルの凝集速度が緩和され、トナーの粒度分布がより均一となり、画像濃度にもより優れるトナーが得られると考えられる。
樹脂が結晶性であるか非晶性であるかについては、結晶性指数により判定される。結晶性指数は、後述する実施例に記載の測定方法における、樹脂の軟化点と吸熱の最大ピーク温度との比(軟化点(℃)/吸熱の最大ピーク温度(℃))で定義される。結晶性樹脂とは、結晶性指数が0.6以上1.4以下のものである。非晶性樹脂とは、結晶性指数が0.6未満又は1.4超のものである。結晶性指数は、樹脂の原料成分の種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。
「結着樹脂」とは、スチレン系樹脂(AS)、結晶性樹脂(C)、非晶性複合樹脂(AH)を包含するトナー中に含まれる樹脂成分を意味する。
スチレン及びスチレン誘導体から選ばれる1種以上を「スチレン系化合物」と称する。
樹脂の原料成分となるカルボン酸成分には、その化合物のみならず、反応中に分解して酸を生成する無水物、及び各カルボン酸のアルキルエステル(アルキル基の炭素数1以上3以下)も含まれる。
「アルキル(メタ)アクリレート」とは、アルキルアクリレートとアルキルメタクリレートの両方を意味する。同様に「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの両方を意味し、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基とメタクリロイル基の両方を意味する。
「体積中位粒径D50」とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径であって、具体的には、後述する実施例に記載の測定方法により測定される粒径である。
コアシェル構造のトナー粒子は、コア及びシェルを有する。シェルは、コアの表面の一部又は全部を覆い、コアの表面の全部を覆うことが好ましい。
コアが含有するスチレン系樹脂(AS)としては、ポリスチレン、スチレン誘導体の重合体、スチレン-アクリル共重合体等が挙げられ、低温定着性の観点から、ポリスチレン、スチレン誘導体の重合体及びスチレン-アクリル共重合体から選ばれる1種以上が好ましく、ポリスチレン及びスチレン-アクリル共重合体から選ばれる1種以上がより好ましく、スチレン-アクリル共重合体が更に好ましい。
スチレン誘導体としては、メチルスチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、tert-ブチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩から選ばれる1種以上が好ましい。
モノマー成分(AS-st)中、スチレン系化合物の含有量は、低温定着性の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは65質量%以上、より更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは75質量%以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは100質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下、より更に好ましくは85質量%以下である。モノマー成分(AS-st)に重合開始剤は、含まれない。
「(イソ又はターシャリー)」、「(イソ)」は、これらの接頭辞が存在する場合としない場合の双方を意味し、これらの接頭辞が存在しない場合には、ノルマルを示す。
モノマー成分(AS-st)が含み得るアルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数は、低温定着性の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上であり、そして、好ましくは12以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは8以下、より更に好ましくは6以下である。
ここで、「アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数」とは、アルキル(メタ)アクリレートを構成するアルコール成分由来の炭素数を意味する。
アルキル(メタ)アクリレートを用いる場合、モノマー成分(AS-st)中、アルキル(メタ)アクリレートの含有量は、低温定着性の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
付加重合反応の温度は、反応性の観点から、好ましくは120℃以上、より好ましくは150℃以上であり、そして、好ましくは230℃以下、より好ましくは220℃以下である。
スチレン系樹脂(AS)のガラス転移温度は、保存性の観点から、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは50℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは90℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは60℃以下である。
スチレン系樹脂(AS)の軟化点、及びガラス転移温度は、モノマー成分(AS-st)の種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。
コアが含有する結晶性樹脂(C)は、1,6-ヘキサンジオールを95モル%以上100モル%以下含むアルコール成分(C-al)と炭素数12以上16以下の脂肪族ジカルボン酸化合物を95モル%以上100モル%以下含むカルボン酸成分(C-ac)との重縮合物である。
結晶性樹脂(C)は、前記結晶性指数が、好ましくは0.7以上1.2以下、より好ましくは0.9以上1.2以下である。
前記結晶性樹脂(C)としては、低温定着性の観点から、好ましくは、アルコール成分(C-al)とカルボン酸成分(C-ac)との重縮合物である結晶性ポリエステル(CP-1)、並びに、アルコール成分(C-al)とカルボン酸成分(C-ac)との重縮合部分であるポリエステルセグメント(CH-1)、及び、スチレン系化合物を含むモノマー成分(Ch-st)の付加重合部分であるビニル系樹脂セグメント(CH-2)を有する結晶性複合樹脂(CH)から選ばれる1種以上が挙げられる。
前記結晶性樹脂(C)としては、より保存性を向上させる観点からは、結晶性ポリエステル(CP-1)が好ましく、より低温定着性を向上させる観点からは、結晶性複合樹脂(CH)が好ましい。
結晶性ポリエステル(CP-1)は、アルコール成分(C-al)とカルボン酸成分(C-ac)との重縮合物である。
アルコール成分(C-al)中、1,6-ヘキサンジオールの含有量は、保存性の観点から、95モル%以上100モル%以下であり、好ましくは96モル%以上、より好ましくは98モル%以上、更に好ましくは99モル%以上であり、そして、より更に好ましくは100モル%である。
1,6-ヘキサンジオール以外の他のアルコールとしては、1,6-ヘキサンジオール以外の脂肪族ジオール、芳香族ジオール、脂環式ジオール、3価以上の多価アルコール、又はそれらの炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイド(平均付加モル数1以上16以下)付加物等が挙げられる。
カルボン酸成分(C-ac)中、炭素数12以上16以下の脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量は、低温定着性の観点から、95モル%以上100モル%以下であり、好ましくは96モル%以上、より好ましくは98モル%以上、更に好ましくは99モル%以上であり、そして、より更に好ましくは100モル%である。
前記ジカルボン酸化合物の炭素数は、画像濃度をより向上させる観点から、12以上、好ましくは14以上であり、そして、低温定着性の観点から、16以下、好ましくは14である。ここで、「ジカルボン酸化合物の炭素数」とは、直鎖又は分岐鎖の炭化水素基の炭素数にカルボキシ基の炭素数を含めた数を意味し、前記ジカルボン酸化合物が、ジカルボン酸のアルキルエステルの場合、そのアルキル基の炭素数は含めない。
前記α、ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物としては、例えば、ドデカン二酸(炭素数12)、トリデカン二酸(炭素数13)、テトラデカン二酸(炭素数14)、ペンタデカン二酸(炭素数15)、ヘキサデカン二酸(炭素数16)又はそれらの炭素数1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられる。これらの中でも、低温定着性の観点から、好ましくはドデカン二酸及びテトラデカン二酸から選ばれる1種以上であり、そして、画像濃度をより向上させる観点から、より好ましくはテトラデカン二酸である。
なお、物性調整の観点から、アルコール成分(C-al)には1価のアルコールが適宜含有されていてもよく、カルボン酸成分(C-ac)には1価のカルボン酸化合物が適宜含有されていてもよい。
結晶性ポリエステル(CP-1)の融点は、保存性の観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは70℃以上、より更に好ましくは75℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは110℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは80℃以下である。
結晶性ポリエステル(CP-1)の酸価は、低温定着性及び保存性の観点から、好ましくは3mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上、更に好ましくは15mgKOH/g以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは35mgKOH/g以下、更に好ましくは30mgKOH/g以下である。
結晶性ポリエステル(CP-1)の水酸基価は、低温定着性及び保存性の観点から、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは2mgKOH/g以上、更に好ましくは3mgKOH/g以上、より更に好ましくは4mgKOH/g以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは30mgKOH/g以下、より好ましくは20mgKOH/g以下、更に好ましくは10mgKOH/g以下、より更に好ましくは8mgKOH/g以下である。
結晶性ポリエステル(CP-1)の軟化点、融点、酸価及び水酸基価は、原料成分の種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。また、軟化点、融点、酸価及び水酸基価は、実施例に記載の方法によって求められる。
また、重縮合反応は、エステル化触媒及び必要に応じて更にエステル化助触媒の存在下で行うことが好ましい。
チタン化合物としては、Ti-O結合を有するチタン化合物が好ましく、総炭素数1以上28以下のアルコキシ基、アルケニルオキシ基又はアシルオキシ基を有する化合物がより好ましい。
Sn-C結合を有していない錫(II)化合物としては、Sn-O結合を有する錫(II)化合物、Sn-X(Xはハロゲン原子を示す)結合を有する錫(II)化合物等が好ましく挙げられ、Sn-O結合を有する錫(II)化合物がより好ましく、中でも、反応性、分子量調整、及び結晶性ポリエステル(CP-1)の物性調整の観点から、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)が更に好ましい。
前記重縮合反応でエステル化触媒を用いる場合、その量は、反応性、分子量調整、及び結晶性ポリエステル(CP-1)の物性調整の観点から、アルコール成分(C-al)とカルボン酸成分(C-ac)との総量100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは1.5質量部以下である。
結晶性複合樹脂(CH)は、低温定着性の観点から、アルコール成分(C-al)とカルボン酸成分(C-ac)との重縮合部分であるポリエステルセグメント(CH-1)、及び、スチレン系化合物を含むモノマー成分(Ch-st)の付加重合部分であるビニル系樹脂セグメント(CH-2)を含むものであり、ポリエステルセグメント(CH-1)と、ビニル系樹脂セグメント(CH-2)と、ポリエステルセグメント(CH-1)及びビニル系樹脂セグメント(CH-2)のいずれとも反応し得る両反応性モノマーに由来する構成部分とからなっていることが好ましい。
なお、前記質量比〔セグメント(CH-1)/セグメント(CH-2)〕の計算において、ポリエステルセグメント(CH-1)の質量は、ポリエステルセグメント(CH-1)の原料成分の合計量から、縮合反応時の脱水量を除去した値を用い、また、ビニル系樹脂セグメント(CH-2)の質量は、ビニル系樹脂セグメント(CH-2)のモノマー成分(Ch-st)及び重合開始剤の合計量を用いる。また、必要により用いられる両反応性モノマーは、ポリエステルセグメント(CH-1)の質量として算出される。後述する非晶性複合樹脂(AH)中のポリエステルセグメント(AH-1)とビニル系樹脂セグメント(AH-2)との質量比〔セグメント(AH-1)/セグメント(AH-2)〕も同様の方法を用いて算出される。
結晶性複合樹脂(CH)中のポリエステルセグメント(CH-1)の質量比〔(CH-1)/(CH)〕は、低温定着性及び保存性の観点から、好ましくは60以上、より好ましくは70/100以上、更に好ましくは80/100以上、より更に好ましくは85/100以上、より更に好ましくは90/100以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは98/100以下、より好ましくは96/100以下、更に好ましくは95/100以下である。
結晶性複合樹脂(CH)中のビニル系樹脂セグメント(CH-2)の質量比〔(CH-2)/(CH)〕は、低温定着性及び保存性の観点から、好ましくは2/100以上、より好ましくは3/100以上、更に好ましくは4/100以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは40/100以下、より好ましくは20/100以下、更に好ましくは10/100以下、より更に好ましくは8/100以下、より更に好ましくは6/100以下である。
モノマー成分(Ch-st)中、スチレン系化合物の含有量は、低温定着性の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは65質量%以上、より更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは75質量%以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは100質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下、より更に好ましくは85質量%以下である。
モノマー成分(Ch-st)中、アルキル(メタ)アクリレートの含有量は、低温定着性の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
結晶性複合樹脂(CH)は、更に、両反応性モノマー由来の構成単位を含むことが好ましい。「両反応性モノマー由来の構成単位」とは、両反応性モノマーの官能基、付加重合性基が反応した単位を意味する。
両反応性モノマーとは、例えば、分子内に、ポリエステルセグメント(CH-1)との反応に用いられる前記官能基と、ビニル系樹脂セグメント(CH-2)との反応に用いられる前記付加重合性基とを有する化合物が挙げられる。このような両反応性モノマーを用いることにより、低温定着性、保存性及び画像濃度をより向上させることができる。
前記官能基としては、例えば、ポリエステルセグメント(CH-1)との反応に用いられる水酸基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選ばれる1種以上、好ましくは水酸基及び/又はカルボキシ基、より好ましくはカルボキシ基が挙げられる。
前記付加重合性基としては、例えば、ビニル系樹脂セグメント(CH-2)との反応に用いられるエチレン性不飽和結合等の炭素-炭素不飽和結合が挙げられる。
両反応性モノマーとしては、低温定着性、保存性及び画像濃度をより向上させる観点から、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸及び無水マレイン酸から選ばれる1種以上が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸及びフマル酸から選ばれる1種以上がより好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上が更に好ましく、アクリル酸がより更に好ましい。
ただし、重合禁止剤と共に用いる場合は、フマル酸等のエチレン性不飽和結合等の炭素-炭素不飽和結合を有するカルボン酸化合物は、ポリエステルセグメント(CH-1)の原料成分として機能する。この場合、フマル酸等は両反応性モノマーではなく、ポリエステルセグメント(CH-1)の原料成分である。
結晶性複合樹脂(CH)の軟化点、融点、酸価及び水酸基価の好ましい範囲は、それぞれ、前記結晶性ポリエステル(CP-1)の軟化点、融点、酸価及び水酸基価の好ましい範囲と同様である。
結晶性複合樹脂(CH)は、例えば、次の(1)~(3)のいずれかの方法により製造することができる。なお、両反応性モノマーは、反応性の観点から、ビニル系樹脂セグメント(CH-2)の原料成分であるモノマー成分(Ch-st)と共に反応系に供給されることが好ましい。また、同様の観点から、エステル化触媒、エステル化助触媒等の触媒を用いてもよく、更に、重合開始剤及び重合禁止剤を用いてもよい。
(2)ビニル系樹脂セグメント(CH-2)の原料成分であるモノマー成分(Ch-st)及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(Y)の後に、ポリエステルセグメント(CH-1)の原料成分であるアルコール成分(C-al)及びカルボン酸成分(C-ac)による重縮合反応の工程(X)を行う方法。
(3)ポリエステルセグメント(CH-1)の原料成分であるアルコール成分(C-al)及びカルボン酸成分(C-ac)による重縮合反応の工程(X)と、ビニル系樹脂セグメント(CH-2)の原料成分であるモノマー成分(Ch-st)及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(Y)とが並行して進行する条件で反応を行う方法。
工程I:ポリエステルセグメント(CH-1)の原料成分であるアルコール成分(C-al)及び/又はカルボン酸成分(C-ac)の一部を重縮合する工程
工程II:工程Iで得られた重縮合物の存在下でビニル系樹脂セグメント(CH-2)のモノマー成分(Ch-st)を付加重合する工程
工程III:工程IIで得られた反応物の存在下で、残りのポリエステルセグメント(CH-1)の原料成分であるアルコール成分(C-al)及び/又はカルボン酸成分(C-ac)を重縮合する工程
なお、両反応性モノマーは、低温定着性の観点から、ビニル系樹脂セグメント(CH-2)のモノマー成分(Ch-st)と共に用いることが好ましい。
上記工程I~IIIを行うことで、結晶性複合樹脂(CH)中のポリエステルセグメント(CH-1)とビニル系樹脂セグメント(CH-2)とが適度な分散状態となり、ポリエステルセグメント(CH-1)の分散性が高まり、低温定着性、保存性及び画像濃度をより向上させることができる。
工程IIにおける付加重合反応の温度は、反応性の観点から、好ましくは130℃以上であり、そして、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。
工程IIIにおける重縮合反応の温度は、反応性の観点から、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、そして、好ましくは230℃以下、より好ましくは220℃以下である。
前記コアを構成する結着樹脂中、スチレン系樹脂(AS)及び結晶性樹脂(C)の合計量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは98質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下、そして、より好ましくは100質量%である。
また、前記コア中のスチレン系樹脂(AS)の量と、前記結晶性樹脂(C)の量との質量比〔(C)/(AS)〕は、低温定着性及び保存性の観点から、好ましくは5/95以上、より好ましくは10/90以上、更に好ましくは15/85以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは50/50以下、より好ましくは40/60以下、更に好ましくは30/70以下、より更に好ましくは20/80以下である。
シェルが含有する非晶性複合樹脂(AH)は、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含むアルコール成分(A-al)と、コハク酸を7モル%以上40モル%以下含むカルボン酸成分(A-ac)との重縮合部分であるポリエステルセグメント(AH-1)、及び、スチレン系化合物を含むモノマー成分(A-st)の付加重合部分であるビニル系樹脂セグメント(AH-2)を含むものである。
非晶質複合樹脂(AH)は、前記結晶性指数が、1.4を超えるか、0.6未満の樹脂であり、好ましくは1.5を超えるか、0.5以下、より好ましくは1.6以上か、0.5以下である。
非晶性複合樹脂(AH)中、ポリエステルセグメント(AH-1)とビニル系樹脂セグメント(AH-2)との質量比〔セグメント(AH-1)/セグメント(AH-2)〕は、低温定着性、保存性及び画像濃度の観点から、好ましくは60/40以上、より好ましくは70/30以上、更に好ましくは75/25以上であり、そして、好ましくは95/5以下、より好ましくは90/10以下、更に好ましくは85/15以下である。
非晶性複合樹脂(AH)中のポリエステルセグメント(AH-1)の質量比〔(AH-1)/(AH)〕は、低温定着性、保存性及び画像濃度の観点から、好ましくは60/100以上、より好ましくは70/100以上、更に好ましくは75/100以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは95/100以下、より好ましくは90/100以下、更に好ましくは85/100以下である。
アルコール成分(A-al)は、低温定着性、保存性及び画像濃度の観点から、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含有し、好ましくは下記一般式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含有する。
アルコール成分(A-al)は、少なくともBPA-POを含むことが好ましく、BPA-PO及びBPA-EOの両方を含むことがより好ましい。
アルコール成分(A-al)が、BPA-EOを含む場合、BPA-EOの含有量は、前記と同様の観点から、アルコール成分(A-al)中、好ましくは10モル%以上、より好ましくは15モル%以上あり、そして、好ましくは30モル%以下、より好ましくは25モル%以下である。
アルコール成分(A-al)中の、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、前記と同様の観点から、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、より更に好ましくは90モル%以上であり、そして、好ましくは100モル%以下、そして、より好ましくは100モル%である。
アルコール成分(A-al)は、前記一般式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物以外の他のアルコール成分を含有していてもよい。
アルコール成分(A-al)が含み得る他のアルコール成分としては、例えば、アルコール成分(C-al)として前述したアルコールと同様のものが挙げられる。
カルボン酸成分(A-ac)中のコハク酸の含有量は、7モル%以上40モル%以下であり、画像濃度の観点から、好ましくは10モル%以上、より好ましくは11モル%以上、更に好ましくは12モル%以上であり、そして、保存性及び画像濃度の観点から、好ましくは35モル%以下、より好ましくは30モル%以下、更に好ましくは25モル%以下、より更に好ましくは20モル%以下、より更に好ましくは15モル%以下である。
カルボン酸成分(A-ac)中の芳香族ジカルボン酸化合物の含有量、好ましくはテレフタル酸及びイソフタル酸から選ばれる1種以上の含有量、より好ましくはテレフタル酸の含有量は、それぞれ独立に、前記と同様の観点から、、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは75モル%以上、より更に好ましくは80モル%以上、より更に好ましくは85モル%以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは93モル%以下、より好ましくは90モル%以下、更に好ましくは89モル%以下、より更に好ましくは88モル%以下である。
なお、物性調整の観点から、アルコール成分(A-al)には1価のアルコールが適宜含有されていてもよく、カルボン酸成分(A-ac)には1価のカルボン酸化合物が適宜含有されていてもよい。
非晶性複合樹脂(AH)中のビニル系樹脂セグメント(AH-2)の質量比〔(AH-2)/(AH)〕は、低温定着性、保存性及び画像濃度の観点から、好ましくは5/100以上、より好ましくは10/100以上、更に好ましくは15/100以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは40/100以下、より好ましくは30/100以下、更に好ましくは25/100以下である。
ビニル系樹脂セグメント(AH-2)のモノマー成分(A-st)としては、前記結晶性複合樹脂(CH)の欄で前述したビニル系樹脂セグメント(CH-2)のモノマー成分(Ch-st)と同様のものが挙げられ、その好ましい態様(各化合物の組成及びそれらの含有量を含む)も同様である。
非晶性複合樹脂(AH)は、更に、両反応性モノマー由来の構成単位を含むことが好ましい。
両反応性モノマーとしては、結晶性複合樹脂(CH)の原料成分として挙げられた両反応性モノマーと同様のものが挙げられ、その好適な種類も同様である。
両反応性モノマーの含有量は、低温定着性の観点から、アルコール成分(A-al)100モル部に対して、好ましくは1モル部以上、より好ましくは3モル部以上、更に好ましくは5モル部以上であり、そして、低温定着性、保存性及び画像安定性の観点から、好ましくは30モル部以下、より好ましくは20モル部以下、更に好ましくは10モル部以下、より更に好ましくは7モル部以下である。
非晶性複合樹脂(AH)は、結晶性複合樹脂(CH)の製造方法(1)~(3)と同様の方法により製造することができる。
非晶性複合樹脂(AH)は、前記(1)~(3)の方法の中でも(1)による方法と同様の方法によって製造されたものが好ましく、前記工程I~IIIを有する方法と同様の方法によって製造されたものがより好ましい。
なお、結晶性複合樹脂(CH)の製造方法(1)~(3)を有する方法と同様の方法とは、具体的には、該非晶性複合樹脂(AH)の製造方法は、前記(1)~(3)における結晶性複合樹脂(CH)、ポリエステルセグメント(CH-1)、アルコール成分(C-al)、カルボン酸成分(C-ac)、ビニル系樹脂セグメント(CH-2)、及びモノマー成分(Ch-st)を、それぞれ、非晶性複合樹脂(AH)、ポリエステルセグメント(AH-1)、アルコール成分(A-al)、カルボン酸成分(A-ac)、ビニル系樹脂セグメント(AH-2)、及びモノマー成分(A-st)と置き換えたものと同様の方法をいう。
工程Iについては、前述の方法について、以下の点を変更することが好ましい。
工程Iに供するポリエステルセグメント(AH-1)の原料成分として、カルボン酸成分(A-ac)中、コハク酸以外のカルボン酸を添加することが好ましい。そして、コハク酸以外のカルボン酸の全量及びアルコール成分(A-al)の全量を工程Iで添加することがより好ましい。
工程Iにおける重縮合反応の温度は、反応性の観点から、好ましくは150℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下である。
また、工程Iの重縮合反応の終了は、工程Iに供したポリエステルセグメント(AH-1)の原料成分が、好ましくは85モル%以上、より好ましくは90モル%以上反応した時点とすることが好ましい。
また、工程Iを前記エステル化触媒及びエステル化助触媒の存在下で行うことが好ましい。
工程IIIに供する残りのポリエステルセグメント(AH-1)の原料成分として、カルボン酸成分(A-ac)が含むコハク酸の全量を添加することが好ましい。
したがって、画像濃度をより向上させる観点から、非晶性複合樹脂(AH)は、カルボン酸成分(A-ac)として、コハク酸以外のカルボン酸を重縮合させた後に、コハク酸を添加して、重縮合して得られる樹脂であることが更に好ましい。すなわち、画像濃度をより向上させる観点から、非晶性複合樹脂(AH)は、ポリエステルセグメント(AH-1)末端にコハク酸由来の構造を有する樹脂であると考えられる。
非晶性複合樹脂(AH)の製造でエステル化触媒を用いる場合、その量は、反応性、分子量調整、及び非晶性複合樹脂(AH)の物性調整の観点から、アルコール成分(A-al)とカルボン酸成分(A-ac)との総量100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは1.5質量部以下である。
非晶性複合樹脂(AH)の製造でエステル化助触媒を用いる場合、その量は、前記と同様の観点から、アルコール成分(A-al)とカルボン酸成分(A-ac)との総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上であり、そして、好ましくは0.2質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。
非晶性複合樹脂(AH)のガラス転移温度は、保存性の観点から、好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは55℃以上、より更に好ましくは58℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは65℃以下、より更に好ましくは62℃以下である。
非晶質複合樹脂(AH)の酸価は、低温定着性、及び画像濃度の観点から、好ましくは3mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上、更に好ましくは10mgKOH/g以上、より更に好ましくは15mgKOH/g以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは20mgKOH/g以下である。
非晶質複合樹脂(AH)の軟化点、ガラス転移温度、及び酸価は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。また、非晶質複合樹脂(AH)の軟化点、ガラス転移温度、及び酸価は、実施例に記載の方法によって求められる。
前記シェルを構成する結着樹脂中、非晶質複合樹脂(AH)の量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは98質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下、そして、より好ましくは100質量%である。
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができる。
染料としては、アジン系染料、アントラキノン系染料、ペリノン系染料、ローダミン染料等が挙げられる。
顔料としては、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよく、無機顔料としては、カーボンブラック、金属酸化物等が挙げられ、有機顔料としては、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
着色剤の量は、トナーの画像濃度を向上させる観点から、結着樹脂の合計100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、そして、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
荷電制御剤としては、クロム系アゾ染料、鉄系アゾ染料、アルミニウムアゾ染料、サリチル酸金属錯体等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
荷電制御剤の量は、トナーの帯電安定性の観点から、結着樹脂の合計100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、そして、好ましくは3質量部以下、より好ましく1.5質量部以下である。
離型剤としては、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、シリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;カルナバロウワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックス等のワックスが挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
離型剤の量は、結着樹脂の合計に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは4質量部以上であり、そして、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
トナー粒子の量は、前記と同様の観点から、トナー中、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、100質量%以下であり、好ましくは99質量%以下である。
前記トナー粒子を、トナーとしてそのまま用いることもできるが、トナーの流動性を向上させるため、更に外添剤を用いて、前記トナー粒子の表面処理を行うことが好ましい。
外添剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛等の無機粒子や、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、シリコーン樹脂、メラミン系樹脂粒子、ポリテトラフルオロエチレン樹脂粒子等の樹脂粒子などの有機粒子が挙げられる。トナーは、これらの外添剤を単独で又は2種以上を含有していてもよい。前記トナーは、シリカ及び酸化チタンから選ばれる1種以上を外添剤として含むことが好ましく、少なくともシリカを含むことがより好ましい。該シリカとしては、疎水化処理された疎水性シリカであることが更に好ましい。
シリカ粒子の表面を疎水化するための疎水化処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
外添剤を用いて、トナー粒子の表面処理を行う場合、該外添剤の量は、トナーの帯電性や流動性の観点から、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。
本発明のトナーは、例えば、下記工程1~5を含む方法により製造することが好ましい。
工程1-1:スチレン系樹脂(AS)及び有機溶媒を混合して、スチレン系樹脂(AS)含有液を得る工程
工程1-2:工程1-1で得られたスチレン系樹脂(AS)含有液に少なくとも水を混合して、スチレン系樹脂(AS)を含有する樹脂粒子(X1)の水系分散液を得る工程
工程2-1:結晶性樹脂(C)、有機溶媒及び中和剤を混合して、結晶性樹脂(C)含有液を得る工程
工程2-2:工程2-1で得られた結晶性樹脂(C)含有液に少なくとも水を混合して、結晶性樹脂(C)を含有する樹脂粒子(X2)の水系分散液を得る工程
工程3:工程1-2で得られた樹脂粒子(X1)及び工程2-2で得られた樹脂粒子(X2)を混合し、水系媒体中で凝集して、凝集粒子(1)を得る工程
工程4:工程3で得られた凝集粒子(1)に、非晶性複合樹脂(AH)を含有する樹脂粒子(Y)を凝集させて、凝集粒子(2)を得る工程
工程5:工程4で得られた凝集粒子(2)を融着させて、コアシェル粒子を得る工程
(有機溶媒)
有機溶媒としては、溶解性の観点から、イソプロパノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶媒;ジブチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸イソプロピル等の酢酸エステル系溶媒等が好ましく挙げられる。
工程1-1では、得られるトナーの低温定着性、保存性及び画像濃度の観点から、界面活性剤を用いることが好ましい。
界面活性剤としては、非イオン性、アニオン性及びカチオン性の界面活性剤が挙げられる。これらの中でも、樹脂の乳化安定性の観点から、非イオン性界面活性剤及び/又はアニオン性界面活性剤が好ましく、アニオン性界面活性剤がより好ましい。
また、工程1-1において、前述の着色剤、荷電制御剤、離型剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の任意の添加剤を添加してもよい。着色剤、荷電制御剤、離型剤等の添加剤は、予め結着樹脂と混合しておいてもよく、その場合、結着樹脂と添加剤とを溶融混練することが好ましい。
溶融混練には、オープンロール型二軸混練機を使用することが好ましい。オープンロール型二軸混練機は、2本のロールが平行に近接して配設された混練機であり、各ロールに熱媒体を通すことにより、加熱機能又は冷却機能を付与することができる。
樹脂粒子(X1)の水系分散液を得る方法は、樹脂等を水系媒体に添加し、分散機を用いて分散する方法、樹脂等に水性媒体を徐々に添加して転相乳化させる方法等が挙げられる。
分散機を用いる場合、超音波ホモジナイザー等の分散機を用いて、水系媒体中にスチレン系樹脂(AS)を含有する樹脂粒子(X1)を分散させるのが好ましい。
水系媒体とは、少なくとも水を含む液体であり、水を主成分とするものが好ましい。
水系媒体が含み得る水以外の成分としては、メタノール、エタノール、アセトン;テトラヒドロフラン等の環状エーテル等の水に溶解する有機溶媒が挙げられる。
工程1-2において、得られた水系分散液から工程1-1で用いた有機溶媒を除去することが好ましい。有機溶媒の除去方法は、特に限定されず、任意の方法を用いることができるが、水と溶解しているため蒸留するのが好ましい。
工程2-1で用いる有機溶媒としては、工程1-1で前述したものと同様のものを使用することができ、その好適な態様も同様である。
工程2-1に用いられる中和剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物;アンモニア;トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリブチルアミン等の有機塩基が挙げられる。
工程2-1では、得られるトナーの低温定着性、保存性及び画像濃度をより向上させる観点から、界面活性剤を用いることが好ましい。工程2-1で用いる界面活性剤としては、工程1-1で前述したものと同様のものを使用することができ、その好適な態様も同様である。
また、工程2-1において、前述の任意成分を添加してもよい。
樹脂粒子(X2)の水系分散体を得る方法は、樹脂等を水性媒体に添加し、分散機を用いて分散する方法、樹脂等に水性媒体を徐々に添加して転相乳化させる方法等が挙げられ、得られるトナーの低温定着性を向上させる観点から、樹脂等に水性媒体を徐々に添加して転相乳化させる方法が好ましい。
転相乳化法では、結晶性樹脂(C)含有液に、水系媒体を添加することで、最初に、W/O相が形成され、次に、O/W相に転相される。転相しているかどうかは、例えば、目視や導電率などで確認することができる。
なお、水系媒体としては、工程1-2で前述したものと同様のものを使用することができ、その好適な態様も同様である。
工程2-2において、得られた水系分散液から工程2-1で用いた有機溶媒を除去することが好ましい。
有機溶媒の除去方法は、特に限定されず、任意の方法を用いることができるが、工程1-2で前述した方法と同様の方法が挙げられ、その好適な態様も同様である。
工程3では、凝集を効率的に行うために凝集剤を添加することが好ましい。
凝集剤は、第四級塩のカチオン性界面活性剤、ポリエチレンイミン等の有機系凝集剤;無機金属塩、無機アンモニウム塩等の無機系凝集剤が用いられる。得られるトナーの粒度分布及び保存性の観点から、無機系凝集剤が好ましく、なかでも無機金属塩が好ましい。
無機金属塩としては、例えば、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム等が挙げられる。
また、工程3では、前述の任意の添加剤を添加してから凝集させてもよい。
樹脂粒子(Y)は、樹脂粒子(Y)の水系分散液として得ることが好ましく、結着樹脂として非晶性複合樹脂(AH)を用いることにより、前記樹脂粒子(X2)の水系分散液と同様の方法により製造することができる。
工程4では、工程3で得られた凝集粒子(1)の分散液に、樹脂粒子(Y)の水系分散液を添加することにより、凝集粒子(1)に更に樹脂粒子(Y)を付着させ、凝集粒子(2)の分散液を得ることが好ましい。
樹脂粒子(Y)の全量を添加し、トナーとして適度な粒径に成長したところで凝集を停止させてもよい。凝集を停止させる方法としては、分散液を冷却する方法、凝集停止剤を添加する方法、分散液を希釈する方法等が挙げられる。不必要な凝集を確実に防止する観点からは、凝集停止剤を添加して凝集を停止させる方法が好ましい。
凝集停止剤として界面活性剤を用いることが好ましく、アニオン性界面活性剤を用いることがより好ましい。凝集停止剤は、水溶液で添加してもよい。
工程5における系内の温度は、目的とするトナーの粒径、粒度分布、形状制御及び粒子の融着性の観点、並びに低温定着性、保存性及び画像濃度の観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは75℃以上であり、そして、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは85℃以下である。
工程5により得られたコアシェル粒子を、適宜、ろ過等の固液分離工程、洗浄工程、乾燥工程に供することにより、前記トナー粒子を好適に得ることができる。
洗浄工程では、添加した界面活性剤も洗浄により完全に除去することが好ましい。
トナーの流動性を向上させるため、更に、外添工程で、前述の外添剤を用いて、前記トナー粒子の表面処理を行うことが好ましい。外添剤の好適な態様及び量は前述したとおりである。
(1)軟化点
フローテスター「CFT-500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
(2)結晶性指数
示差走査熱量計「Q-100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、室温(25℃)から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで試料をそのまま1分間保持し、その後、昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し熱量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度(1)として、(軟化点(℃))/(吸熱の最大ピーク温度(1)(℃))により、結晶性指数を求めた。
(3)融点及びガラス転移温度
示差走査熱量計「Q-100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで試料を昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度(2)とした。結晶性樹脂の時には該ピーク温度を融点とした。
また、非晶性樹脂の場合にピークが観測されるときはそのピークの温度を、ピークが観測されずに段差が観測されるときは該段差部分の曲線の最大傾斜を示す接線と該段差の低温側のベースラインの延長線との交点の温度をガラス転移温度とした。
樹脂の酸価、水酸基価は、JIS K 0070:1992に記載の中和滴定法に従って測定した。ただし、測定溶媒については、樹脂が非晶性である場合は、前記JIS規格で規定のエタノールとエーテルの混合溶媒を、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更して測定した。また、樹脂が結晶性である場合は、前記混合溶媒を、クロロホルムに変更して測定した。
(1)測定装置:レーザー回折型粒径測定機「LA-920」(株式会社堀場製作所製)
(2)測定条件:測定用セルに蒸留水を加え、吸光度が適正範囲になる濃度で体積中位粒径(D50)を測定した。
赤外線水分計「FD-230」(株式会社ケツト科学研究所製)を用いて、試料5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5分、変動幅0.05%)の条件にて乾燥させ、試料の水分(質量%)を測定した。固形分濃度は次の式に従って算出した。
固形分濃度(質量%)=100-M
M:試料の水分(質量%)
トナー製造中の凝集粒子及びトナーの体積中位粒径(D50)は、次のとおり測定した。
・測定装置:「コールターマルチサイザーIII」(ベックマン・コールター株式会社製)
・アパチャー径:50μm
・解析ソフト:「コールターマルチサイザーIIIバージョン 3.51」(ベックマン・コールター株式会社製)
・電解液:「アイソトン(登録商標)II」(ベックマン・コールター株式会社製)
・分散液:ポリオキシエチレンラウリルエーテル「エマルゲン(登録商標)109P」〔花王株式会社製、HLB(グリフィン法)=13.6〕を前記電解液に溶解させ、濃度5質量%の分散液を得た。
・分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mg(固形分換算)を添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、更に、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製した。
・測定条件:前記試料分散液を、前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、得られた粒度分布から体積中位粒径(D50)を求めた。
走査型電子顕微鏡(SEM)写真から測定した、500個の粒子の粒径の数平均値を外添剤の個数平均粒子径とした。長径と短径がある場合は、長径を指す。
<低温定着性>
カラーページプリンター(非磁性一成分現像装置)「Microline(登録商標)5400」(株式会社沖データ製)にトナーを実装し、トナー付着量を0.45±0.03mg/cm2となるように調整して、4.1cm×13.0cmのベタ画像を「J紙A4サイズ」(富士ゼロックス株式会社製)に印字した。定着器を通過する前にベタ画像を取り出して未定着画像を得た。得られた未定着画像を「Microline(登録商標)3010」(株式会社沖データ製)の定着器を改造した外部定着器にて、定着ロールの温度を100℃に設定し、240mm/秒の定着速度で定着させた。その後、定着ロール温度を105℃に設定し、同様の操作を行った。これを200℃まで5℃ずつ上昇させながら、各温度で未定着画像の定着処理を行ない、定着画像を得た。各温度で定着させた画像にメンディングテープ(スリーエムジャパン株式会社製)を付着させた後、500gの円柱状の重石をテープとの接触面積が4cm2となるように載せることにより、1分間圧力をかけて、十分にテープを定着画像に付着させた。その後、ゆっくりとメンディングテープを定着画像より剥がし、テープ剥離後の画像の反射画像濃度を反射濃度計「RD-915」(グレタグマクベス社製)を用いて測定した。あらかじめテープを貼る前の画像についても反射画像濃度を測定しておき、その値との比([テープ剥離後の反射画像濃度/テープ貼付前の反射画像濃度]×100)が最初に90%を超える定着ロールの温度を最低定着温度とし、低温定着性の指標とした。
20mL容の容器(直径約3cm)にトナー4gを入れ、温度55℃、湿度60%の環境下で72時間放置した。放置後、トナー凝集の発生程度を目視にて観察し、以下の評価基準より保存性を評価した。凝集が認められない時間が長いほど、トナーの保存性に優れる。
〔評価基準〕
A:72時間後も凝集は全く認められない。
B:60時間で凝集は認められないが72時間では凝集が認められる。
C:48時間で凝集は認められないが60時間では凝集が認められる。
D:48時間以内で凝集が認められる。
<画像濃度>
上質紙「J紙A4サイズ」(富士ゼロックス株式会社製)にカラーページプリンター(非磁性一成分現像装置)「Microline(登録商標)5400」(株式会社沖データ製)を用いて、トナーの紙上の付着量が0.45±0.03mg/cm2となるベタ画像を出力し、印刷物を得た。
次に、定着器の温度を130℃に設定し、A4縦方向に1枚あたり1.5秒の速度でトナーを定着させて、印刷物を得た。
出力した印刷物の定着画像部分の反射画像濃度を、測色計「SpectroEye」(GretagMacbeth社製、光射条件;標準光源D50、観察視野2°、濃度基準DINNB、絶対白基準)を用いて測定した。反射画像濃度の値が大きいほど、画像濃度に優れる。
合成例1、2及び4(コア用結晶性ポリエステルC-1、C-2及びC-4の製造)
それぞれ、下記表1に示す原料モノマーを、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した内容積10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、130℃から200℃まで8時間かけて昇温した後、200℃にて2時間反応させた。その後、更に、下記表1に示すエステル化触媒を投入し、8kPaの減圧下で、下記表1に記載の軟化点に達するまで反応を行い、各コア用結晶性ポリエステルを得た。
下記表1に示すポリエステルセグメントの原料成分のうち、アルコール成分全量、及びカルボン酸成分の半量(50質量%)を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した内容積10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、135℃から160℃まで6時間かけて昇温した後、160℃で反応を行った。その後、反応率が95%以上に到達したのを確認し、下記表1に示すビニル系樹脂セグメントの原料モノマー、両反応性モノマー及びラジカル重合開始剤の混合溶液を1時間かけて滴下した。その後、30分間160℃に保持した後、残りのカルボン酸成分を投入し、130℃から200℃まで8時間かけて昇温した。その後、更に、8kPaの減圧下で、下記表1に記載の軟化点に達するまで反応を行い、コア用結晶性複合樹脂C-3を得た。なお、前記反応率とは、下記式を用いて算出される値である。以下、本明細書中において同様である。
反応率=〔生成反応水量(mol)/理論生成水量(mol)〕×100
合成例5(コア用スチレン系樹脂A-1の製造)
2リットルのキシレンを、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー、滴下ロート及び窒素導入管を装備した内容積10リットルの四つ口フラスコに入れ、下記表2に示すスチレン系樹脂の原料モノマー及びラジカル重合開始剤を四つ口フラスコに装備した滴下ロートに入れた。その後、四つ口フラスコ中のキシレンを窒素雰囲気下で135℃に昇温し、滴下ロートから原料モノマーと重合開始剤との混合物を1時間かけてキシレン中に滴下した。更に、200℃まで昇温し、200℃で2時間保持した。その後、更に、8kPaの減圧下で1時間保持することによりキシレンを除去して、コア用スチレン系樹脂(A-1)を得た。
下記表3に示すBPA-PO、BPA-EO、テレフタル酸、エステル化触媒及びエステル化助触媒を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した内容積10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、235℃まで2時間かけて昇温を行った。その後、235℃にて反応率が95%以上に到達したのを確認し、180℃まで冷却した。その後、アジピン酸を加え、2時間かけて210℃まで昇温した。その後、210℃にて1時間反応後、40kPaにて下記表3に記載の軟化点に達するまで反応を行い、コア用非晶性ポリエステルA-2を得た。
合成例7~12(シェル用非晶性複合樹脂A-3~A-8の製造)
下記表4に示すポリエステルセグメント(AH-1)の原料成分のうち、コハク酸以外の原料、エステル化触媒及びエステル化助触媒を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した内容積10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、235℃まで2時間かけて昇温を行った。その後、235℃にて反応率が90%以上に到達したのを確認し、160℃まで冷却した。その後、下記表4に示すビニル系樹脂セグメント(AH-2)の原料モノマー、両反応性モノマー及びラジカル重合開始剤の混合溶液を1時間かけて滴下した。その後、30分間160℃に保持した後、200℃まで昇温し、更に、8kPaの減圧下で1時間反応させた後、180℃まで冷却した。その後、常圧下でコハク酸を加え、2時間かけて210℃まで昇温した。その後、210℃にて1時間反応後、40kPaの減圧下で下記表4に記載の軟化点に達するまで反応を行い、各シェル用非晶性複合樹脂を得た。
調製例1
銅フタロシアニン「ECB-301」(大日精化工業株式会社製)50g、非イオン性界面活性剤「エマルゲン(登録商標)150」(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、花王株式会社製)5g及びイオン交換水200gを混合し、ホモジナイザーを用いて10分間分散させて、着色剤粒子を含有する着色剤分散液を得た。着色剤粒子の体積中位粒径(D50)は120nmであり、固形分濃度は22質量%であった。
調製例2
荷電制御剤としてサリチル酸系化合物「ボントロン(登録商標)E-84」(オリヱント化学工業株式会社製)50g、非イオン性界面活性剤として「エマルゲン(登録商標)150」(花王株式会社製)5g及びイオン交換水200gを混合し、ガラスビーズを使用し、サンドグラインダーを用いて10分間分散させて、荷電制御剤粒子を含有する荷電制御剤分散液を得た。荷電制御剤粒子の体積中位粒径(D50)は400nmであり、固形分濃度は22質量%であった。
調製例3
パラフィンワックス「HNP9」(日本精蝋株式会社製)50g、カチオン性界面活性剤「サニゾール(登録商標)B50」(花王株式会社製、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド)5g及びイオン交換水200gを95℃に加熱して、超音波ホモジナイザー(ドクターヒールッシャー株式会社製、商品名:「UP-400S」)を用いて出力350Wで30分間、分散処理して、離型剤粒子を含有する離型剤分散液を得た。パラフィンワックス(離型剤粒子)の体積中位粒径(D50)は550nmであり、固形分濃度は22質量%であった。
製造例1(トナー用結着樹脂組成物の水系分散液c-1の製造)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた内容積3リットルの容器に、結晶性ポリエステルC-1 100g、メチルエチルケトン 100g、アニオン性界面活性剤「エマール(登録商標)E27C」(花王株式会社製、固形分27質量%)を16.7g(樹脂100gに対して4.5質量%)を投入し、73℃にて2時間かけて溶解させた。得られた溶液に、5質量%の水酸化ナトリウム水溶液を、樹脂の酸価に対して中和度70モル%になるように添加して、30分撹拌した。
次いで、73℃に保持したまま、280r/分(周速度88m/分)で撹拌しながら、イオン交換水675gを77分かけて添加し、転相乳化した。継続して73℃に保持したまま、メチルエチルケトンを減圧下で留去した。その後、280r/分(周速度88m/分)の撹拌を行いながら水系分散液を30℃に冷却した。その後、水系分散液の固形分濃度を測定し、固形分濃度が20質量%になるようにイオン交換水を加えることにより、水系媒体中に結着樹脂組成物粒子が分散してなるトナー用結着樹脂組成物の水系分散液c-1を得た。
得られた水系分散液中のトナー用結着樹脂組成物粒子の体積中位粒径(D50)及びトナー用結着樹脂組成物の水系分散液の固形分濃度を下記表5に示す。
製造例1において、結晶性ポリエステルC-1を表5、6に示す樹脂の種類に変更した以外は、製造例1と同様にして、各トナー用結着樹脂組成物の水系分散液c-2~c-4及びa-2~a-8を得た。
得られた各水系分散液中のトナー用結着樹脂組成物粒子の体積中位粒径(D50)及び各トナー用結着樹脂組成物の水系分散液の固形分濃度を下記表5及び6に示す。
(トナー用結着樹脂組成物の水系分散液a-1の製造)
非晶性スチレン系樹脂A-1を100g、メチルエチルケトン100g、アニオン性界面活性剤「エマール(登録商標)E27C」(花王株式会社製、固形分27質量%)を16.7g(非晶性スチレン系樹脂A-1 100質量部に対して固形分4.5質量部に相当)を25℃にて混合し、73℃にて2時間かけて溶解させた。得られた溶液に、73℃のイオン交換水600gを混合し、超音波ホモジナイザー(ドクターヒールッシャー社製、商品名:「UP-400S」)を用いて出力350Wで30分間、分散処理した。その後、70℃にて、メチルエチルケトンを減圧留去して水系分散液を得た。その後、当該水系分散液の固形分濃度を測定し、固形分濃度が20質量%になるようにイオン交換水を加えることにより、水系媒体中に結着樹脂組成物粒子が分散してなるトナー用結着樹脂組成物の水系分散液a-1を得た。
得られた水系分散液中のトナー用結着樹脂組成物粒子の体積中位粒径(D50)及びトナー用結着樹脂組成物の水系分散液の固形分濃度を下記表6に示す。
実施例1(トナーAの製造)
結晶性ポリエステルC-1を含むトナー用結着樹脂組成物の水系分散液c-1を45g、非晶性スチレン系樹脂A-1を含むトナー用結着樹脂組成物の水系分散液a-1を210g、着色剤分散液8g、離型剤分散液20g、荷電制御剤分散液2g及び脱イオン水52gを、内容積2リットルの容器に入れ、アンカー型の撹拌機で100r/分(周速度31m/分)の撹拌を行いながら、20℃で、0.1質量%塩化カルシウム水溶液150gを30分かけて滴下した。その後、撹拌しながら50℃まで昇温した。体積中位粒径(D50)が5μmになるまで50℃で保持した。その後、直ちに非晶性複合樹脂A-3を含むトナー用結着樹脂組成物の水系分散液a-3を45g加え、撹拌して分散させた。その後、凝集停止剤としてアニオン性界面活性剤「エマール(登録商標)E27C」(花王株式会社製、固形分27質量%)4.2gを脱イオン水37gで希釈した希釈液を添加した。次いで、該分散液を80℃まで昇温し、80℃になった時点から80℃で1時間保持した後、加熱を終了した。これにより融着粒子を形成させた後、20℃まで徐冷し、150メッシュ(目開き150μm)の金網でろ過した後、更に、吸引ろ過を行い、洗浄、乾燥工程を経てトナー粒子を得た。
前記トナー粒子100質量部に対して、疎水性シリカ「NAX-50」(日本アエロジル株式会社製、個数平均粒子径40nm)1.0質量部、疎水性シリカ「R972」(日本アエロジル株式会社製、個数平均粒子径16nm)0.6質量部、酸化チタン「JMT-150IB」(テイカ株式会社製、個数平均粒子径15nm)0.5質量部を、ST(上羽根)及びA0(下羽根)の撹拌羽根を装着した10リットルヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)に投入し、3,000r/分にて2分間撹拌して、トナーAを得た。トナーAの評価結果を表7に示す。
実施例1において、トナー用結着樹脂組成物の水系分散液を、下記表7に示す水系分散液の種類及び含有量比率に変更した以外は、実施例1と同様にして、トナーB~G、及びH~Jを得た。なお、コアに用いるトナー用結着樹脂組成物の水系分散液の総量は実施例1と同量(255g)とした。実施例トナーB~G、及び比較例トナーH~Jの評価結果を表7に示す。
一方で、比較例のトナーH~Jは、低温定着性、保存性、画像濃度の少なくとも1つ以上が、実施例のトナーよりも劣る結果となることが確認された。
Claims (6)
- コア及びシェルを有するコアシェル構造のトナー粒子を含有する静電荷像現像用トナーであって、
前記コアが、スチレン系樹脂(AS)と、1,6-ヘキサンジオールを95モル%以上100モル%以下含むアルコール成分(C-al)と炭素数12以上16以下の脂肪族ジカルボン酸化合物を95モル%以上100モル%以下含むカルボン酸成分(C-ac)との重縮合物である結晶性樹脂(C)とを含有し、
前記シェルが、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含むアルコール成分(A-al)と、コハク酸を7モル%以上40モル%以下含むカルボン酸成分(A-ac)との重縮合部分であるポリエステルセグメント(AH-1)、及び、スチレン系化合物を含むモノマー成分(A-st)の付加重合部分であるビニル系樹脂セグメント(AH-2)を含む非晶性複合樹脂(AH)を含有する、静電荷像現像用トナー。 - 前記結晶性樹脂(C)が、結晶性ポリエステル(CP-1)である、請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記コアが、スチレン系樹脂(AS)と、1,6-ヘキサンジオールを95モル%以上100モル%以下含むアルコール成分(C-al)と炭素数12以上16以下の脂肪族ジカルボン酸化合物を95モル%以上100モル%以下含むカルボン酸成分(C-ac)との重縮合部分であるポリエステルセグメント(CH-1)、及び、スチレン系化合物を含むモノマー成分(Ch-st)の付加重合部分であるビニル系樹脂セグメント(CH-2)を含む結晶性複合樹脂(CH)とを含有する、請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記カルボン酸成分(A-ac)が、コハク酸を11モル%以上含む、請求項1~3のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記脂肪族ジカルボン酸化合物が、直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物である、請求項1~4のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記非晶性複合樹脂(AH)の原料成分中、アクリル酸を、前記アルコール成分(A-al)100モル部に対して、1モル部以上7モル部以下含有する、請求項1~5のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
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