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JP7193788B2 - 歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤 - Google Patents

歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤 Download PDF

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Description

本発明は、歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤に関する。
歯周病はほとんどの成人に罹病する可能性があるとされており、高齢化が進む現在における罹病率は益々増加する傾向にある。歯周病は、細菌性由来の炎症性疾患であり、具体的には、細菌の組織内侵入及び感染に対する宿主応答がその原因となっている。特にポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)は、歯周病の中で最も多いとされる成人性歯周病の病原菌と有力視されている細菌である。この細菌は、マトリックスメタロプロテアーゼ等の、歯周組織のコラーゲンを分解する酵素を産生することが知られている。
このような歯周病に対処する処方がなされた口腔用組成物が種々知られている。例えば、特許文献1には、月桂樹葉抽出物が70~90%エタノールで抽出されたものであることを特徴とする抗歯周病剤が開示されている。また、特許文献2には、茶由来重合カテキンを含有するマトリックスメタロプロテアーゼ1活性阻害組成物及び/又はマトリックスメタロプロテアーゼ3活性阻害組成物が開示されている。さらに、特許文献3には、バナバ葉、土荊皮(ドケイヒ)、川揀皮(センレンヒ)、薯良(ショリョウ)、拳参(ケンジン)、白胡椒、黒胡椒、小薊(ショウケイ)、蕪夷(ブイ)よりなる群から選択される少なくとも1種の抽出エキスを含有することを特徴とする、グルコシルトランスフェラーゼ阻害作用又は歯周病原菌ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)生育阻害作用のいずれかを有する口腔用組成物が開示されている。
一方、ヒノキチオールは、殺菌作用を有する成分として知られており、口腔用組成物に配合されることがある。例えば特許文献4及び特許文献5には、ヒノキチオールが配合された口腔用組成物が開示されている。
特開2012-067065号公報 特開2009-219484号公報 国際公開第2004/026273号 特開2009-007286号公報 特開2007-008831号公報
ヒノキチオールは、抗菌剤として知られてはいるものの、口腔用組成物として配合される濃度において歯周病菌に対する殺菌作用は高くない。歯周病菌に対して有効な殺菌作用を生じさせるためには、ヒノキチオールに対し、その抗菌性を増強させる添加物を配合する必要がある。そのため、単に抗菌性を増強させるアプローチでは処方に制約があり、近年の多様化する口腔用組成物の処方に対応できないケースがある。
そこで本発明は、抗菌作用とは異なる作用機序により歯周病菌にアプローチができる剤を提供することを目的とする。
本発明者は鋭意検討の結果、ヒノキチオールに、歯肉組織細胞への歯周病菌の進入を抑制する作用があることを見出した。本発明は、この知見に基づいてさらに検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. ヒノキチオールを含有することを特徴とする、歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤。
項2. 更にシャクヤクエキスを含有する、項1に記載の歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤。
項3. 前記シャクヤクエキスの含有量が0.0001~0.05重量%である、項2に記載の歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤。
項4. 前記ヒノキチオール1重量部当たりの前記シャクヤクエキスの含有量が、0.01~1重量部である、項2又は3に記載の歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤。
項5. 液体歯磨剤、液状歯磨剤、練歯磨剤、洗口液、口中清涼剤、又は口腔用軟膏剤からなる群より選択される口腔用組成物である、項1~4のいずれかに記載の歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤。
本発明によれば、抗菌作用とは異なる作用機序により歯周病菌にアプローチができる剤として、歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤が提供される。
本発明の歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤は、ヒノキチオールを含有することを特徴とする。以下、本発明の歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤について詳述する。
ヒノキチオール
ヒノキチオールは、β-ツヤプリンとも呼ばれる不飽和7員環化合物であり、公知の成分である。ヒノキチオールとしては、天然物由来のものを使用してもよいし、化学合成されたものを使用してもよい。また、本発明で使用されるヒノキチオールは、精製品又は粗精製品の別を問わず、例えば、ヒノキ、ヒバ等の樹木から得られたヒノキチオール含有精油を使用することもできる。
本発明の歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤におけるヒノキチオールの配合量については、当該歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤の製剤形態や用途等に応じて適宜設定されるが、通常0.02~0.2重量%が挙げられる。歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制効果をより高める観点から、歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤におけるヒノキチオールの配合量としては、好ましくは0.03~0.2重量%、更に好ましくは0.04~0.2重量%が挙げられる。また、本発明の歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤は、ヒノキチオールが単独では歯周病菌に対する抗菌作用を示さない低濃度であっても、効果的に歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制作用を発揮することができる。このような本発明の効果をより好ましく得る観点から、本発明の歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤におけるヒノキチオールの配合量としては、好ましくは0.02~0.1重量%、より好ましくは0.02~0.08重量%が、更に好ましくは0.02~0.06重量%が挙げられる。
シャクヤクエキス
シャクヤクエキスは、医薬部外品原料規格に記載されており、公知の成分である。シャクヤクエキスには、ヒノキチオールと組み合わされた場合に抗菌活性を向上させる作用はない。しかしながら、本発明の歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤においては、シャクヤクエキスをヒノキチオールと組み合わせることで、歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制性を向上させることができる。
シャクヤクエキスは、具体的には、シャクヤク(Paeonia albifloraPalls var. trichocarpa Bunge)又はその他近縁植物(Paeoniaceae)の根に対して抽出溶媒を用いて抽出処理することにより得ることができる。シャクヤクエキスの抽出処理に使用される抽出溶媒としては、例えば、水;エタノール等の低級アルコール;1,3-ブチレングリコール等の多価アルコール;これらの混合液等の極性溶媒が挙げられ、好ましくは水、エタノール、1,3-ブチレングリコール、又はこれらの混合溶媒が挙げられ、好ましくは水、1,3-ブチレングリコール混合溶媒が挙げられる。
本発明の歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤にシャクヤクエキスを配合させるためには、上記の抽出溶媒による抽出物を濃縮した液体エキスを用いてもよいし、当該液体エキスからさらに抽出溶媒を蒸発又は凍結乾燥して得られる乾燥エキスを用いてもよい。液体エキスとしては、例えば、乾燥エキス換算で2~6重量%のシャクヤクエキスを含む濃度のものを用いることができる。
本発明の歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤におけるシャクヤクエキスの配合量については、ヒノキチオールの含有量等に応じて適宜設定すればよいが、乾燥エキス換算量で、例えば0.0001~0.05重量%が挙げられる、歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制性をより良好に向上させる観点から、好ましくは0.001~0.04重超%、さらに好ましくは0.005~0.02重量%が挙げられる。
また、本発明の歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤において、ヒノキチオールとシャクヤクエキスとの比率については、前述する各含有量に応じて定まるが、歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制性をより良好に向上させる観点から、ヒノキチオール1重量部当たりシャクヤクエキスの含有量として、例えば0.01~1重量部、好ましくは0.1~0.5重量部、より好ましくは0.1~0.3重量部が挙げられる。
その他の成分
本発明の歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤は、前述する成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、口腔組成物分野において通常使用される成分を含有していてもよい。このような成分としては、例えば、防腐剤、殺菌剤、抗菌剤、消炎剤、研磨剤、グルコシルトランスフェラーゼ(GTase)阻害剤、プラーク抑制剤、知覚過敏抑制剤、歯石予防剤、歯質強化/再石灰化剤、抗ヒスタミン剤、局所麻酔剤、血行促進剤、増粘剤、湿潤剤、賦形剤、香料、甘味剤、清涼化剤、色素、消臭剤、界面活性剤、溶剤、pH調整剤等が挙げられる。なお、本発明の歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤は、ヒノキチオールによって発揮される歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制作用を利用するものであるため、ヒノキチオール自体の抗菌活性を向上させるための抗菌活性向上剤を含んでいなくても、歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制作用を有効に発揮することができる。
防腐剤、殺菌剤、抗菌剤としては、例えば、安息香酸類、サリチル酸類、ソルビン酸類、パラベン類、塩化デカリニウム、塩化クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、塩化リゾチーム、塩酸クロルヘキシジン、ヨウ化カリウム等が挙げられる。
消炎剤としては、例えば、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸メチル、グリチルリチン酸ステアリル、グリチルレチン酸ピリドキシン、グリチルレチン酸ステアリル、グリチルレチン酸グリセリル、グリチルレチン酸モノグルクロニド、アラントイン、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、アズレン、塩化ナトリウム、ビタミン類等が挙げられる。
研磨剤としては、例えば、無水ケイ酸、含水ケイ酸、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、結晶セルロース、ポリエチレン末、炭粒等が挙げられる。
GTase阻害剤としては、例えば、アカバナ科マツヨイグサ属植物の抽出物、ブドウ科ブドウ属植物の抽出物、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、タステイン、タンニン類、エラグ酸、ポリフェノール、ウーロン茶抽出物、緑茶抽出物、センブリ、タイソウ、ウイキョウ、ゲンチアナ、センソ、龍胆、黄連等が挙げられる。
プラーク抑制剤としては、例えばクエン酸亜鉛やグルコン酸等が挙げられる。
知覚過敏抑制剤としては、例えば、硝酸カリウム、塩化ストロンチウム等が挙げられる。
歯石予防剤としては、例えば、ポリリン酸塩類、ゼオライト、エタンヒドロキシジホスフォネート等が挙げられる。
歯質強化/再石灰化剤としては、例えば、フッ素、フッ化ナトリウム、フルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一スズ等が挙げられる。
抗ヒスタミン剤としては、例えば、ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン等が挙げられる。
局所麻酔剤としては、例えば、プロカイン、テトラカイン、ブピパカイン、メピパカイン、クロロプロカイン、プロパラカイン、メプリルカイン又はこれらの塩、オルソカイン、オキセサゼイン、オキシポリエントキシデカン、ロートエキス、ペルカミンパーゼ、テシットデシチン等が挙げられる。
血行促進剤としては、例えば、ノニル酸ワニリルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、カプサイシン、トウガラシエキス等が挙げられる。
増粘剤としては、例えば、プルラン、プルラン誘導体、デンプン等の多糖類;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩類(カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカリウム等)、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩(ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体等)、メタアクリル酸類の共重合体(メタアクリル酸とアクリル酸 n-ブチルの重合体、メタアクリル酸とメタアクリル酸メチルの重合体及びメタアクリル酸とアクリル酸エチルの重合体等)等のセルロース系高分子物質;カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の合成高分子物質;レクチン、アルギン酸、アルギン酸塩(アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸マグネシウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸トリエタノールアミン、アルギン酸トリイソプロパノールアミン、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸ブチルアミン、アルギン酸ジアミルアミン等)、コンドロイチン硫酸ナトリウム、寒天、キトサン、カラギーナン等の天然系高分子物質;コラーゲン、ゼラチン等のアミノ酸系高分子物質;アラビアガム、カラヤガム、トラガカントガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアガム、タマリンドガム、ジェランガム等のゴム系高分子物質等が挙げられる。
湿潤剤としては、例えば、グリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリトール、マルチトール、ラクトール、エリスリトール等が挙げられる。
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、マンニトール、デンプン、デキストリン、結晶セルロース、シリカ(軽質無水ケイ酸等)等が挙げられる。
香料としては、例えば、天然香料(ウイキョウ油等)、合成香料、これらの調合香料等が挙げられる。
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ステビアエキス、アスパルテーム、キシリトール、水飴、蜂蜜、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、エリスリトール、糖類(乳糖、白糖、果糖、ブドウ糖等)等が挙げられる。
清涼化剤としては、例えば、メントール、エリスリトール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、これらを含む精油等が挙げられる。
色素としては、例えば、天然色素、合成色素、これらの混合物が挙げられる。
消臭剤としては、例えば、塩化亜鉛、銅クロロフィリンナトリウム、コーヒー生豆抽出物、ゴボウパウダー、緑茶、焙煎米糠エキス等が挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、N-ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、N-ミリストリルサルコシン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、N-パルミトイルグルタルミン酸ナトリウム、N-メチル-N-アシルタウリンナトリウム等の陰イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ラクトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤;ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミンオキシド、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、N-ラウリルジアミノエチルグリシン、N-ミリスチルジアミノエチルグリシン、N-アルキル-1-ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム等の両性界面活性剤;塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム等の陽イオン性界面活性剤が挙げられる。
溶剤としては、例えば、水、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、イソプロパノール等の1価アルコール等が挙げられる。
pH調整剤としては、例えば、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、リン酸、安息香酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸水素ナトリウム、乳酸ナトリウム、乳酸カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
本発明の歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤において、これらの成分を含有させる場合、その含有量については、当該技術分野で通常使用される範囲で適宜設定すればよい。
pH
また、本発明の歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤のpHについては、口腔内への適用が許容される範囲で適宜設定すればよいが、例えば、4~8、好ましくは5~7.5、更に好ましくは6~7が挙げられる。ここで、pHとは、25℃の温度条件下で測定される値である。
製剤形態
本発明の歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤の形状については、特に制限されず、液状、固形状、半固形状(ゲル状、軟膏状、ペースト状)等のいずれであってもよい。
本発明の歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤は、口腔内に適用されて口腔内で一定時間滞留し得る口腔用組成物である限り、可食性、非可食性の別を問わない。本発明の歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤は、例えば、口腔衛生剤、食品(機能性食品、健康保健用食品、病者用食品等を含む)、医薬品(医薬部外品を含む)、化粧品等のいずれの形態であってもよい。本発明の歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤の製剤形態として、具体的には、液体歯磨剤、液状歯磨剤、練歯磨剤、潤製歯磨剤、粉歯磨剤、洗口剤(マウスウォッシュ)、マウスリンス、含嗽剤、口中清涼剤(マウススプレー等)、口腔用パスタ剤、歯肉マッサージクリーム、口腔咽候薬(トローチ剤等)等の口腔衛生剤;可食性フィルム、チューインガム、キャンディ、グミキャンディ、タブレット、顆粒、細粒、粉末、カプセル等の可食性口腔用剤;口腔用軟膏剤、口腔内付着錠剤等の医薬品等が挙げられる。これらの中でも、口腔衛生剤及び医薬品は、歯肉組織に対して、ヒノキチオールに基づく歯周病菌の侵入抑制作用を付与し易く、好適な製剤形態である。口腔衛生剤の中でも、好ましくは液体歯磨剤、液状歯磨剤、練歯磨剤、洗口液、口中清涼剤が挙げられ、医薬品の中でも、好ましくは口腔用軟膏剤が挙げられる。
製造方法
本発明の歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤は、前述するヒノキチオール、及び必要に応じて配合されるシャクヤクエキス、並びに必要に応じて配合される他の成分を配合して、その製剤形態に応じた所定の形状に調製することによって製造できる。
用途
本発明の歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤は、歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制を目的として使用することができる。具体的には、歯周病の予防及び治療に使用することができる。また、本発明の歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤は、ヒノキチオールが単独では歯周病菌に対する抗菌作用を示さない低濃度であっても、効果的に歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制作用を発揮することができるため、抗菌性の強い口腔用組成物を忌避する人に対しては、人体に優しい成分でありながらも歯周病の予防及び治療が可能となる点で特に好適に使用される。
本発明の歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤の用量としては、製剤形態及び適用する症状の程度等に応じて適宜設定すればよい。例えば、口腔用衛生剤の場合、1日数回、通常の口腔用衛生剤と同様に口腔内に適用することができる。また、医薬品の場合、1回当たり、ヒノキチオールが0.06~0.6mgとなる量で、1日1~数回程度の頻度で適用することができる。
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
試験例1
表1に示す組成の被験試料を歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤として調製した。シャクヤクエキス凍結乾燥粉末として、丸善製薬社製(シャクヤク抽出物BG-JC)を用いた。歯肉組織細胞として、Japanese Collection of Research Bioresouces(JCRB)細胞バンクより入手した歯肉上皮細胞Ca9-22を用い、試験菌として、Porphyromonas gingivalis(JCM 12257;以下においてP.g.菌と記載する)を用い、以下の方法によって、歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制の程度を評価した。
1.歯肉上皮細胞を、CO2インキュベーターを用い、5v/v%CO2の雰囲気下、MEM培地(Gibco)にて37℃で1日間インキュベートした。
2.P.g.菌をMEM培地に懸濁して被験試料と混合したものを、歯肉上皮細胞に添加し、2時間インキュベートした。
3.上清を除去し、抗菌剤処理にて細胞に付着した菌を除去した。
4.細胞を破裂させ、細胞内に侵入した菌を取り出し、段階希釈後、寒天培地にて37℃で混釈培養した。
5.2週間培養後の寒天培地で生育したコロニー形成単位(CFU)をカウントした。
結果を表1に示す。表1において、コロニー形成単位は、2回の試験の平均値である。表1から明らかなとおり、ヒノキチオールを含まない比較例(コントロール)と比べ、ヒノキチオールを含む実施例1及び2では、歯肉上皮細胞へ侵入したP.g.菌の数が顕著に減少していた。つまり、ヒノキチオールによる、P.g.菌の歯肉上皮細胞への顕著な抑制効果が認められた。また、P.g.菌の歯肉上皮細胞への侵入抑制効果は、ヒノキチオール濃度の濃度がより低い0.02重量%、0.03重量%、及び0.04重量%の場合でも認められ、これらの中では、0.03重量%、及び0.04重量%の場合に良好に認められた。さらに、0.03重量%、及び0.04重量%の中では、0.04重量%の場合に一層良好に認められ、0.04重量%の場合における効果の程度は、ヒノキチオールが0.05重量%の実施例1と同程度であった。さらに、ヒノキチオールを含む実施例1と比べ、更にシャクヤクエキスを含む実施例2では、歯肉上皮細胞へ侵入したP.g.菌の数の更に顕著な減少が認められた。なお、ヒノキチオールにシャクヤクエキスを組み合わせても、P.g.菌の殺菌作用を向上させる効果は認められなかった。しかしながら、実施例2に示す通り、ヒノキチオールにシャクヤクエキスを組み合わせることで歯肉組織細胞への侵入抑制性を顕著に向上させることが可能であり、歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤として一層好適であることが示された。
Figure 0007193788000001

Claims (4)

  1. ヒノキチオール及びシャクヤクエキスを含有することを特徴とする、歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤。
  2. 前記シャクヤクエキスの含有量が0.0001~0.05重量%である、請求項に記載の歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤。
  3. 前記ヒノキチオール1重量部当たりの前記シャクヤクエキスの含有量が、0.01~1重量部である、請求項又はに記載の歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤。
  4. 液体歯磨剤、液状歯磨剤、練歯磨剤、洗口液、口中清涼剤、又は口腔用軟膏剤からなる群より選択される口腔用組成物である、請求項1~のいずれかに記載の歯肉組織細胞への歯周病菌の侵入抑制剤。
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