JP7183829B2 - 車両用位置推定システム - Google Patents
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Description
本開示は、ユーザによって携帯される通信装置(以降、携帯端末)の車両に対する相対位置を、電波を用いて推定する技術に関する。
従来、位置が既知の3以上の基準局がスマートフォン等の携帯端末と無線通信を行うことで各基準局から携帯端末までの距離を特定し、各基準局からの距離情報に基づいて携帯端末の位置を推定する方法が提案されている。基準局から携帯端末までの距離は、例えば、計測された電波の伝搬時間(換言すれば飛行時間)に電波の伝搬時間を乗じることで特定される。なお、電波の伝搬時間を用いた測位方式(以降、伝搬時間方式)としては、TOA(Time Of Arrival)方式や、TDOA(Time Difference Of Arrival)方式などがある。
また、特許文献1には、各基準局が携帯端末とUWB(Ultra-Wide Band)通信可能に構成されており、基準局が、UWB通信で用いられるインパルス信号を送信してから携帯端末からの応答信号を受信するまでの時間(以降、ラウンドトリップ時間)に基づいて、携帯端末までの距離を推定する構成が開示されている。
伝搬時間方式では、電波の伝搬時間の計測誤差が基準局から携帯端末までの距離(ひいては位置)の推定精度に与える影響が大きい。具体的には、伝搬時間が1ナノ秒ずれるだけで、基準局から携帯端末までの推定距離が30センチずれてしまう。そして、基準局としての通信機の不具合に由来して、伝搬時間が正確に測れなくなっている場合、携帯端末の位置の推定精度が劣化しうる。そのような事情を鑑みると、伝搬時間方式では、基準局としての通信機が正常に動作しているか否かを判定する構成が必要である。
各基準局が正常に動作しているか否かを判定するための構成としては、例えば、基準局同士が互いに相互通信を実施させることで基準局間における信号の伝搬時間を逐次/随時特定する構成(以降、想定構成)が考えられる。そのような想定構成によれば、当該伝搬時間が正常範囲を逸脱していることに基づいて、基準局に不具合が生じていることを検出することができる。
しかしながら、伝搬時間に誤差が生じる原因は、基準局の不具合に限らない。発明者らは想定構成についてシミュレーション及び検討を重ねたところ、基準局間の環境によっても伝搬時間が増大しうるといった知見を得た。すなわち、基準局間に金属体や人体などといった電波の直進的な伝搬を阻害する物体(以降、遮蔽物)が存在する場合には、電波は、当該遮蔽物を回り込むように伝搬するため、伝搬時間は、迂回経路に応じた長さとなる。つまり、迂回経路の長さと最短距離の差が、伝搬時間の誤差として表れる。このように上述した想定構成では、基準局としての通信機が正常に動作している場合であっても、基準局間に介在物が存在するか否か、及びその介在物の種別によって、伝搬時間が正常範囲を逸脱しうる。そのような課題に対し、正常範囲を大きめに設定しておけば誤判定の恐れを低減できるが、例えば数ナノ秒程度の微小な遅延を生じさせる不具合を検出できなくなってしまう。
本開示は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、車載通信機の不具合として、伝搬時間の観測値として微小な遅延を生じさせる不具合を検出可能であって、且つ、車載通信機に不具合が生じていると誤判定する恐れを低減可能な車両用位置推定システムを提供することにある。
その目的を達成するための車両用位置推定システムは、車両においてそれぞれ異なる位置に配置されている複数の車載通信機(12)が、車両のユーザによって携帯される携帯端末と無線通信することで車両に対する携帯端末の位置を判定する車両用位置推定システムであって、複数の車載通信機のそれぞれは、車両に搭載されている他の車載通信機である他機のうちの少なくとも2つと無線通信を実施可能に構成されており、互いに無線通信可能な位置関係にある車載通信機の組み合わせ毎に無線通信を実施させることによって、車載通信機間の距離を直接的又は間接的に示す距離指標値を取得する距離指標値取得部(S203)と、車載通信機の組み合わせに応じた距離指標値の正常範囲を示すデータを記憶している正常範囲記憶部(M1)と、距離指標値取得部が取得した車載通信機の組み合わせ毎の距離指標値に基づいて、車載通信機が正常であるか否かを判定する通信機診断部(F6)と、を備え、通信機診断部は、診断対象とする車載通信機である診断対象機と、診断対象機にとっての少なくとも1つの他機との間の距離指標値が、当該車載通信機の組み合わせに応じた正常範囲内の値となっている場合には、当該診断対象機には不具合は生じていないと判定するように構成されていることを特徴とする。
上記の通信機診断部は、診断対象機を構成要素とする全ての組み合わせの少なくとも1つにおいて、伝搬時間が正常範囲内の値となっている場合には、当該診断対象機には不具合は生じていないと判定する。換言すれば、診断対象機を構成要素とする全ての組み合わせにおいて、伝搬時間が正常範囲外の値となっている場合に、当該診断対象機には不具合が生じていると判定する。
ここで、診断対象機に係る全ての組み合わせにおいて、通信機間に遮蔽物が介在する可能性は相対的に低い。そのため、上記の構成によれば遮蔽物の存在(ひいては回折)によって、不具合が生じていない車載通信機に対して不具合が生じていると誤判定する恐れを低減できる。
加えて、上記の効果は、想定構成のように正常範囲を大きめに設定せずとも得られる。つまり、上記の構成によれば、不具合が生じていない車載通信機に対して不具合が生じていると誤判定する恐れを低減しつつ、伝搬時間の観測値として数ナノ秒程度の微小な遅延を生じさせる不具合も検出できる。加えて、正常範囲を逸脱した伝搬時間が観測された組み合わせを構成する2つの車載通信機のうちのどちらに不具合が生じているのかも特定できる。
なお、特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
[実施形態]
以下、本開示の車両用位置推定システムの実施形態の一例として、当該車両用位置推定システムが適用された車両用電子キーシステムについて図を用いて説明する。図1に示すように本開示に係る車両用電子キーシステムは、車両Hvに搭載された車載システム1と、当該車両Hvのユーザによって携帯される通信端末である携帯端末2と、を備えている。
以下、本開示の車両用位置推定システムの実施形態の一例として、当該車両用位置推定システムが適用された車両用電子キーシステムについて図を用いて説明する。図1に示すように本開示に係る車両用電子キーシステムは、車両Hvに搭載された車載システム1と、当該車両Hvのユーザによって携帯される通信端末である携帯端末2と、を備えている。
<全体の概要>
車載システム1と携帯端末2は、UWB-IR(Ultra Wide Band - Impulse Radio)方式の無線通信(以降、UWB通信)を実施可能に構成されている。すなわち、車載システム1と携帯端末2はUWB通信で使用されるインパルス状の電波(以降、インパルス信号)を送受信可能に構成されている。UWB通信で用いられるインパルス信号とは、パルス幅が極短時間(例えば2ナノ秒)であって、かつ、500MHz以上の帯域幅(つまり超広帯域幅)を有する信号である。
車載システム1と携帯端末2は、UWB-IR(Ultra Wide Band - Impulse Radio)方式の無線通信(以降、UWB通信)を実施可能に構成されている。すなわち、車載システム1と携帯端末2はUWB通信で使用されるインパルス状の電波(以降、インパルス信号)を送受信可能に構成されている。UWB通信で用いられるインパルス信号とは、パルス幅が極短時間(例えば2ナノ秒)であって、かつ、500MHz以上の帯域幅(つまり超広帯域幅)を有する信号である。
なお、UWB通信に利用できる周波数帯(以降、UWB帯)としては、3.2GHz~10.6GHzや、3.4GHz~4.8GHz、7.25GHz~10.6GHz、22GHz~29GHz等がある。これら種々の周波数帯のうち、本実施形態におけるインパルス信号は3.2GHz~10.6GHz帯の電波を用いて実現される。インパルス信号に使用される周波数帯は、当該車両Hvが使用される国に応じて適宜選定されればよい。なお、インパルス信号の帯域幅は、500MHz以上であればよく、1.5GHz以上の帯域幅を備えていても良い。
UWB-IR通信の変調方式としては、パルスの発生位置で変調を行うPPM(pulse position modulation)方式など、多様なものを採用可能である。具体的には、オンオフ変調(OOK:On Off Keying)方式や、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)、パルス振幅変調(PAM:Pulse-Amplitude Modulation)方式、パルス符号変調(PCM:Pulse-Code Modulation)などを採用可能である。なお、オンオフ変調方式はインパルス信号の存在/欠如によって情報(例えば0と1)を表現する方式であり、パルス幅変調方式はパルス幅によって情報を表現する方式である。パルス振幅変調方式は、インパルス信号の振幅によって情報を表現する方式である。パルス符号変調方式はパルスの組み合わせによって情報を表現する方式である。
また、本実施形態の車載システム1と携帯端末2は、第2の通信方式として、Bluetooth Low Energy(Bluetoothは登録商標)規格に準拠した無線通信(以降、BLE通信)も実施可能に構成されている。なお、第1の通信方式とは前述のUWB通信を指す。第2の通信方式としては、Bluetooth Low Energy以外にも、例えばWi-Fi(登録商標)、ZigBee(登録商標)等、通信距離を10メートル程度に設定可能な多様な近距離無線通信方式を採用可能である。第2の通信方式は、例えば、数メートル~数10メートル程度の通信距離を提供可能なものであればよい。以降では、UWB通信の信号とBLE通信の信号とを区別するために、BLE規格に準拠した無線信号のことをBLE信号とも記載する。以下、車載システム1及び携帯端末2の具体的な構成について順に説明する。
<携帯端末2の構成について>
まずは、携帯端末2の構成及び作動について説明する。携帯端末2は、車載システム1と対応付けられてあって、車両Hvの電子キーとして機能する装置である。携帯端末2は種々の用途に供される通信端末を援用して実現することができる。例えば携帯端末2はスマートフォンである。携帯端末2は、タブレット端末などの情報処理端末であってもよい。また、携帯端末2は、従来スマートキーとして知られている長方形型、楕円型(フォブタイプ)、又はカード型の小型デバイスであってもよい。その他、携帯端末2は、ユーザの指や腕等に装着されるウェアラブルデバイスとして構成されていてもよい。
まずは、携帯端末2の構成及び作動について説明する。携帯端末2は、車載システム1と対応付けられてあって、車両Hvの電子キーとして機能する装置である。携帯端末2は種々の用途に供される通信端末を援用して実現することができる。例えば携帯端末2はスマートフォンである。携帯端末2は、タブレット端末などの情報処理端末であってもよい。また、携帯端末2は、従来スマートキーとして知られている長方形型、楕円型(フォブタイプ)、又はカード型の小型デバイスであってもよい。その他、携帯端末2は、ユーザの指や腕等に装着されるウェアラブルデバイスとして構成されていてもよい。
携帯端末2は、図2に示すように、UWB通信部21、BLE通信部22、及び携帯側制御部23を備える。携帯側制御部23は、UWB通信部21、及びBLE通信部22のそれぞれと相互通信可能に接続されている。
UWB通信部21は、UWBのインパルス信号を送受信するための通信モジュールである。UWB通信部21は、携帯側制御部23から入力されたベースバンド信号を変調する等、電気的に処理しつつ変調信号を生成し、この変調信号をUWB通信により送信する。変調信号は、送信データを所定の変調方式(例えばPCM変調方式)で変調した信号である。変調信号は、複数のインパルス信号を送信データに対応する時間間隔で配置した信号系列(以降、パルス系列信号)である。また、UWB通信部21は、車載システム1から送信された複数のインパルス信号からなる一連の変調信号(つまりパルス系列信号)を受信すると、当該受信信号を復調し、変調前のデータを復元する。そして、受信データを携帯側制御部23に出力する。
また、UWB通信部21は動作モードとして、反射応答モードとノーマルモードを備える。反射応答モード時のUWB通信部21は、インパルス信号を受信した場合には、反射的に(換言すれば即座に/可及的速やかに)インパルス信号を返送する。反射応答モードで動作するか否かは、例えば、車載システム1からの指示信号に基づき、携帯側制御部23によって切り替えられる。なお、携帯端末2が車載システム1からのインパルス信号を受信してから応答信号としてのインパルス信号を送信するまでには所定の時間(以降、応答処理時間Tb)がかかる。応答処理時間Tbは、携帯端末2のハードウェア構成に応じて定まる。応答処理時間Tbの想定値は、試験等によって予め特定しておくことができる。
ノーマルモードは、プリアンブルから末尾までの一連のパルス系列信号を受信し、受信データの内容に応じた応答信号を返送するモードである。なお、携帯端末2は、反射応答モードにおいても、車載システム1から送信されたパルス系列信号と同様の一連のインパルス信号を反射的に返送した後に、受信データに応じた内容の応答信号を生成して返送するように構成されていても良い。
BLE通信部22は、BLE通信を実施するための通信モジュールである。BLE通信部22は携帯側制御部23と相互通信可能に接続されている。BLE通信部22は、車両Hvから送信されたBLE信号を受信して携帯側制御部23に提供するとともに、携帯側制御部23から入力されたデータを変調して車両Hvに送信する。
携帯側制御部23は、UWB通信部21やBLE通信部22の動作を制御する構成である。携帯側制御部23は、例えばCPU、RAM、及びROM等を備えた、コンピュータを用いて実現されている。
携帯側制御部23は、送信元情報を含む無線信号を所定の送信間隔でBLE通信部22に無線送信させる。これにより、車載システム1等に対して、自分自身の存在を通知する(すなわちアドバタイズする)。以降では便宜上、アドバタイズを目的として定期的に送信される無線信号のことをアドバタイズ信号と称する。なお、送信元情報は、例えば携帯端末2に割り当てられた固有の識別情報(以降、端末IDとする)である。端末IDは他の通信端末と携帯端末2とを識別するための情報として機能する。車載システム1は、このアドバタイズ信号を受信することで、車両HvのBLE通信範囲内に携帯端末2が存在することを認識する。なお、他の態様として、携帯端末2は車載システム1からの要求に基づいてアドバタイズ信号を送信する態様となっていてもよい。
また、携帯側制御部23は、UWB通信部21から受信データが入力されると、この受信データに対応する応答信号に相当するベースバンド信号を生成し、このベースバンド信号をUWB通信部21に出力する。携帯側制御部23がUWB通信部21に出力したベースバンド信号は、UWB通信部21にて変調され、無線信号として送信される。このような携帯側制御部23は、UWB通信部21と協働することにより、車載システム1からのインパルス信号を受信した場合に、応答信号としてのインパルス信号を送信させる構成に相当する。
その他、携帯端末2は動作モードとして、アクティブモードとスリープモードとを備えていても良い。アクティブモードは車載システム1から送信される信号に対する応答信号の生成等の処理(受信及び応答に係る処理)を実施可能な動作モードである。スリープモードは、携帯側制御部23が備える機能の一部又は全部を停止することで、消費電力を低減する動作モードである。例えばスリープモードは、図示しないクロック発振器の動作を停止するモードとすることができる。携帯側制御部23は、スリープモード中においてUWB通信部21がインパルス信号に相当する強度を有する電気信号を受信した場合にアクティブモードへと移行するように構成されていればよい。また、携帯側制御部23は、スリープモード中においてBLE通信部22がBLE信号に相当する電気信号を受信した場合にアクティブモードへと移行するように構成されていればよい。BLE信号に相当する電気信号とは、例えばBLE信号が備えるべき所定のプリアンブルを有する信号や、所定の強度を有する信号を指す。
<車載システム1について>
車載システム1は、携帯端末2と所定の周波数帯の電波を用いた無線通信を実施することで、携帯端末2の位置に応じた所定の車両制御を実施するパッシブ・エントリ・パッシブ・スタートシステム(以降、PEPSシステム)を実現する。
車載システム1は、携帯端末2と所定の周波数帯の電波を用いた無線通信を実施することで、携帯端末2の位置に応じた所定の車両制御を実施するパッシブ・エントリ・パッシブ・スタートシステム(以降、PEPSシステム)を実現する。
例えば車載システム1は、携帯端末2が車両Hvに対して予め設定されている作動エリア内に存在することを確認できている場合には、後述するドアボタン14に対するユーザ操作に基づいて、ドアの施錠や開錠といった制御を実行する。また、車載システム1は、携帯端末2との無線通信によって携帯端末2が車室内に存在することを確認できている場合には、後述するスタートボタン15に対するユーザ操作に基づいて、エンジンの始動制御を実行する。
作動エリアとは、当該エリア内に携帯端末2が存在することに基づいて、車載システム1がドアの施錠や開錠といった所定の車両制御を実行するためのエリアである。例えば、運転席用のドア付近や、助手席用のドア付近、トランクドア付近が作動エリアに設定されている。ドア付近とは、外側ドアハンドルから、所定の作動距離以内となる範囲を指す。外側ドアハンドルとは、ドアの外側面に設けられた、ドアを開閉するための把持部材を指す。作動エリアの大きさを規定する作動距離は、例えば0.7mである。もちろん、作動距離は1mであってもよいし、1.5mであってもよい。作動距離は、防犯性の観点から2mよりも小さく設定されていることが好ましい。
当該車載システム1は、図3に示すように、スマートECU11、複数のUWB通信機12、BLE通信機13、ドアボタン14、スタートボタン15、エンジンECU16、ボディECU17、及びHCU18を備える。また、車載システム1は、車載アクチュエータ171、車載センサ172、ディスプレイ181、インジケータ182、スピーカ183なども備える。なお、部材名称中のECUは、Electronic Control Unitの略であり、電子制御装置を意味する。
スマートECU11は、携帯端末2とUWB通信を実施することでドアの施開錠やエンジンの始動等の車両制御を実行するECUである。スマートECU11は、車両内に構築されている通信ネットワークを介してエンジンECU16、ボディECU17、及びHCU18と相互通信可能に接続されている。また、スマートECU11は、UWB通信機12やBLE通信機13、ドアボタン14、スタートボタン15とも電気的に接続されている。当該スマートECU11は、例えばコンピュータを用いて実現されている。すなわち、スマートECU11は、CPU111、フラッシュメモリ112、RAM113、I/O114、及びこれらの構成を接続するバスラインなどを備えている。
フラッシュメモリ112には、ユーザが所有する携帯端末2に割り当てられている端末IDが登録されている。また、フラッシュメモリ112には、コンピュータをスマートECU11として機能させるためのプログラム(以降、位置推定プログラム)等が格納されている。なお、上述の位置推定プログラムは、非遷移的実体的記録媒体(non- transitory tangible storage medium)に格納されていればよい。CPU111が位置推定プログラムを実行することは、位置推定プログラムに対応する方法が実行されることに相当する。スマートECU11の詳細については別途後述する。
UWB通信機12は、携帯端末2とUWB通信を実施するための通信モジュールである。複数のUWB通信機12のそれぞれは、車両Hvに搭載されている他のUWB通信機12ともUWB通信を実施可能に構成されている。つまり、各UWB通信機12は、携帯端末2及び他のUWB通信機12と無線通信可能に構成されている。便宜上、或るUWB通信機12にとっての他のUWB通信機12のことを他機とも記載する。UWB通信機12が車載通信機に相当する。
各UWB通信機12は専用の通信線又は車両内ネットワークを介してスマートECU11と相互通信可能に接続されている。各UWB通信機12の動作はスマートECU11によって制御される。各UWB通信機12には、固有の通信機番号が設定されている。通信機番号は、携帯端末2にとっての端末IDに相当する情報である。通信機番号は、複数のUWB通信機12を識別するための情報として機能する。複数のUWB通信機12の取り付け位置や電気的構成については別途後述する。
BLE通信機13は、BLE通信を実施するための通信モジュールである。BLE通信機13はスマートECU11と相互通信可能に接続されている。BLE通信機13は、携帯端末2から送信されたBLE信号を受信してスマートECU11に提供する。また、BLE通信機13は、スマートECU11から入力されたデータを変調して携帯端末2に無線送信する。BLE通信機13は車両Hvの任意の位置に取り付けられている。例えばBLE通信機13は、インストゥルメントパネルや、フロントガラスの上端部、Bピラー、ロッカー部等に取り付けられている。BLE通信機13は1つであってもよいし、複数あってもよい。
ドアボタン14は、ユーザが車両Hvのドアを開錠及び施錠するためのボタンである。ドアボタン14は、例えば車両Hvの各ドアハンドルに設けられている。ドアボタン14は、ユーザによって押下されると、その旨を示す電気信号を、スマートECU11に出力する。ドアボタン14は、スマートECU11がユーザの開錠指示及び施錠指示を受け付けるための構成に相当する。なお、ユーザの開錠指示及び施錠指示の少なくとも何れか一方を受け付けるための構成としては、タッチセンサを採用することもできる。タッチセンサは、ユーザがそのドアハンドルを触れていることを検出する装置である。
スタートボタン15は、ユーザが車両Hvの駆動源(例えばエンジン)を始動させるためのプッシュスイッチである。スタートボタン15は、ユーザによってプッシュ操作がされると、その旨を示す電気信号をスマートECU11に出力する。なお、ここでは一例として車両Hvは、エンジンを動力源として備える車両とするがこれに限らない。車両Hvは、電気自動車やハイブリッド車であってもよい。車両Hvがモータを駆動源として備える車両である場合には、スタートボタン15は駆動用のモータを始動させるためのスイッチである。
エンジンECU16は、車両Hvに搭載されたエンジンの動作を制御するECUである。例えばエンジンECU16は、スマートECU11からエンジンの始動を指示する始動指示信号を取得すると、エンジンを始動させる。
ボディECU17は、スマートECU11からの要求に基づいて車載アクチュエータ171を制御するECUである。ボディECU17は、種々の車載アクチュエータ171や、種々の車載センサ172と通信可能に接続されている。ここでの車載アクチュエータ171とは、例えば、各ドアのロック機構を構成するドアロックモータや、座席位置を調整するためのシートアクチュエータなどである。また、ここでの車載センサ172とは、ドア毎に配置されているカーテシスイッチなどである。カーテシスイッチは、ドアの開閉を検出するセンサである。ボディECU17は、例えばスマートECU11からの要求に基づいて、車両Hvの各ドアに設けられたドアロックモータに所定の制御信号を出力することで各ドアを施錠したり開錠したりする。
HCU18は、表示及び音声等による乗員(主として運転席乗員)への情報提示を統合的に制御する装置である。HCU18は、ディスプレイ181やインジケータ182、スピーカ183といった、HMI(Human Machine Interface)の動作を制御する。なお、HCUは、HMI Control Unitの略である。HCU18もまた、ECUと同様にコンピュータを用いて実現されている。HCU18は、スマートECU11からの要求に基づき、不具合が生じているUWB通信機12が存在することを通知する処理(以降、不具合通知処理)を実行する。例えば、HCU18は、スマートECU11からの要求に基づき、不具合が生じているUWB通信機12が存在することを示す画像(以降、不具合通知画像)をディスプレイ181に表示する。
ディスプレイ181は、例えばインストゥルメントパネルにおいて運転席の正面に配されているメータディスプレイである。なお、ディスプレイ181は、ヘッドアップディスプレイや、マルチインフォメーションディスプレイ、およびセンターインフォメーションディスプレイなどであっても良い。インジケータ182は、不具合が生じているUWB通信機12が存在することを発光によって乗員に通知するためのデバイスである。スピーカ183はHCU18から入力された音声や音を出力するデバイスである。
<各UWB通信機12の取り付け位置及び電気的構成について>
本実施形態の車載システム1は、UWB通信機12として図4に示すように、右前通信機12A、左前通信機12B、右後通信機12C、及び左後通信機12Dを備える。右前通信機12Aは、例えば車両右側のAピラーの上側領域に配置されている。Aピラーは車両Hvにおいて前から1番目のピラーである。Aピラーはフロントピラーとも称される。ピラーの上側領域とは、ピラーの上半分となる領域を指す。ピラーの上側領域には、ピラーの上端部も含まれる。左前通信機12Bは、例えば車両左側のAピラーの上側領域に配置されている。右後通信機12Cは車両右側のCピラーの上側領域に配置されている。左後通信機12Dは車両左側のCピラーの上側領域に配置されている。Cピラーは前から3番目のピラーである。Cピラーはリアピラーとも称される。
本実施形態の車載システム1は、UWB通信機12として図4に示すように、右前通信機12A、左前通信機12B、右後通信機12C、及び左後通信機12Dを備える。右前通信機12Aは、例えば車両右側のAピラーの上側領域に配置されている。Aピラーは車両Hvにおいて前から1番目のピラーである。Aピラーはフロントピラーとも称される。ピラーの上側領域とは、ピラーの上半分となる領域を指す。ピラーの上側領域には、ピラーの上端部も含まれる。左前通信機12Bは、例えば車両左側のAピラーの上側領域に配置されている。右後通信機12Cは車両右側のCピラーの上側領域に配置されている。左後通信機12Dは車両左側のCピラーの上側領域に配置されている。Cピラーは前から3番目のピラーである。Cピラーはリアピラーとも称される。
各UWB通信機12は、前述の通り、他機と通信可能に構成されている。例えば右前通信機12Aは、左前通信機12B、右後通信機12C、及び左後通信機12DのそれぞれとUWB通信可能に構成されている。以降では便宜上、図5に示すように、双方向通信を実施するUWB通信機12の組み合わせとして、右前通信機12Aと左前通信機12Bの組み合わせのことを第1組み合わせと称する。右後通信機12Cと左後通信機12Dの組み合わせのことを第2組み合わせと称する。右前通信機12Aと右後通信機12Cの組み合わせのことを第3組み合わせと称する。左前通信機12Bと左後通信機12Dの組み合わせのことを第4組み合わせと称する。右前通信機12Aと左後通信機12Dの組み合わせのことを第5組み合わせと称する。左前通信機12Bと右後通信機12Cの組み合わせのことを第6組み合わせと称する。
ところで、UWB通信で使用される電波は金属によって反射されやすい。また、UWB通信で使用される電波は、人体によって吸収されやすい。そのため、金属体や人体といった電波を反射/吸収する物体(以降、遮蔽物)に対しては回折して伝搬する。電波の伝搬時間を用いて通信機間の距離を推定する構成においては、電波が回折によって伝搬している場合、通信機間の推定距離に誤差(以降、回折誤差)が生じうる。
また、電波が遮蔽物を回折して伝わる伝搬態様においては、受信側装置での受信信号強度が低下する。受信信号強度が弱まると、図6に示すように、仮にインパルス信号の受信電力のピークが到来するタイミングが同じであっても、受信電力が受信判定閾値Thを上回るタイミングが0.5ナノ秒~1ナノ秒程度遅れうる。伝搬時間方式において、伝搬時間が0.5ナノ秒~1ナノ秒程度遅れることは、距離に換算すると、15センチ~30センチ程度の誤差が生じることになる。なお、ここでの受信判定閾値Thとは、インパルス信号を受信したと判定するための受信電力レベルを指す。図6におけるdTは、受信電力の差に由来する検出遅延時間を表している。
つまり、本実施形態のように電波の伝搬時間を用いて距離の測定を行う構成においては、各UWB通信機12は、他機との間に遮蔽物が存在しにくい位置に搭載されていることが好ましい。また、別の観点によれば、各UWB通信機12は、車室内と車室外の両方に対して見通しが良い位置に配置されていることが好ましい。車室内と車室外の両方に対して見通しの良い場所とは、例えば、室内天井、及び各種ピラーである。つまり、上述したように各種UWB通信機12の配置態様は、各UWB通信機12を車室内及び車室外を見通しやすい位置に配置した態様の一例に相当する。
車両Hvにおける各UWB通信機12の設置位置は、車両の任意の点を基準点(換言すれば原点)とする3次元直交座標系の点として表現されていればよい。ここでは一例として、前輪車軸の中心を原点とし、互いに直交するX、Y、Z軸を備える3次元座標系(以降、車両3次元座標系)上の点として表されている。車両3次元座標系を形成するX軸は車幅方向に平行であって、車両右側を正方向とする軸である。Y軸は車両前後方向に平行であって、車両前方を正方向とする軸である。Z軸は、車両高さ方向に平行であって、車両上方を正方向とする軸である。3次元座標系の中心は、例えば後輪車軸の中心など、適宜変更可能である。もちろん、他の態様として各UWB通信機12の搭載位置は極座標で表されていてもよい。各UWB通信機12の設置位置を示す通信機位置データは、フラッシュメモリ112に格納されている。各UWB通信機12の設置位置は通信機番号と対応付けられて保存されていればよい。
複数のUWB通信機12のそれぞれは、図7に示すように、送信部31、受信部32、及び伝搬時間計測部33を備える。送信部31は、スマートECU11から入力されたベースバンド信号を変調する等、電気的に処理しつつインパルス信号を生成し、このインパルス信号を電波として放射する構成である。送信部31は例えば、変調回路311、及び送信アンテナ312を用いて実現されている。
変調回路311は、スマートECU11から入力されたベースバンド信号を変調する回路である。変調回路311は、スマートECU11から入力されたベースバンド信号が示すデータ(以降、送信データ)に対応する変調信号を生成し、送信アンテナ312に向けて送信する。変調信号は、送信データを所定の変調方式で変調した信号である。本実施形態における変調信号は、前述の通り、複数のインパルス信号を送信データに対応する時間間隔で配置した信号系列に相当する。変調回路311は、電気的なインパルス信号を生成する回路(以降、パルス生成回路)や、インパルス信号を増幅したり整形したりする回路を含む。
送信アンテナ312は、変調回路311が出力した電気的なインパルス信号を電波に変換して空間に放射する構成である。つまり、送信アンテナ312は、UWB帯において所定の帯域幅を有するパルス状の電波をインパルス信号として放射する。また、変調回路311は、送信アンテナ312へ電気的なインパルス信号を出力した場合には、それと同時に、インパルス信号を出力したことを示す信号(以降、送信通知信号)を伝搬時間計測部33に出力する。
なお、本実施形態の送信部31は、インパルス信号の立上り時間が1ナノ秒となるように構成されている。立上り時間とは、信号強度が初めて最大振幅の10%を越えてから最大振幅の90%を越えるまでに要する時間である。インパルス信号の立上がり時間は、送信部31の回路構成などのハードウェア構成に応じて定まる。インパルス信号の立上り時間は、シミュレーションや実試験によって特定できる。なお、一般的にUWB通信に供されるインパルス信号の立上り時間は、1ナノ秒程度である。
受信部32は、例えば受信アンテナ321、及び復調回路322を備える。受信アンテナ321は、インパルス信号を受信するためのアンテナである。受信アンテナ321は、携帯端末2が送信したインパルス信号に対応する電気的なインパルス信号を復調回路322に出力する。
復調回路322は、受信アンテナ321がUWB通信に供されるインパルス信号を受信すると、その信号を復調する等、電気的に処理しつつ受信信号を生成し、この受信信号をスマートECU11に出力する。復調回路322が取得するパルス系列信号は、受信アンテナ321から入力される複数のインパルス信号を、実際の受信間隔をおいて時系列に並べたものである。復調回路322は、携帯端末2や他機から送信された複数のインパルス信号からなる一連の変調信号(つまりパルス系列信号)を復調し、変調前のデータを復元する構成である。
なお、復調回路322は、受信アンテナ321で受信したインパルス信号の周波数を、ベースバンド帯の信号に変換して出力する周波数変換回路や、信号レベルを増幅する増幅回路などを備える。その他、受信部32は、受信アンテナ321からインパルス信号が入力された場合には、インパルス信号を受信したことを示す信号(以降、受信通知信号)を伝搬時間計測部33に出力する。
伝搬時間計測部33は、送信部31がインパルス信号を送信してから、受信部32がインパルス信号を受信するまでの時間(以降、ラウンドトリップ時間)を計測するタイマである。送信部31がインパルス信号を送信したタイミングは送信通知信号の入力によって特定される。また、受信部32がインパルス信号を受信したタイミングは受信通知信号の入力によって特定される。すなわち、伝搬時間計測部33は、変調回路311が送信通知信号を出力してから、復調回路322が受信通知信号を出力するまでの時間を計測する。ラウンドトリップ時間は往復分の信号飛行時間に、相手側装置(換言すれば応答側装置)での応答処理時間を加えた時間に相当する。
伝搬時間計測部33は、図示しないクロック発振器から入力されるクロック信号を計数することによって、送信部31がインパルス信号を送信してからの経過時間を測定する。伝搬時間計測部33によるカウントは、受信通知信号が入力された場合や、所定の上限値まで達した場合に停止され、そのカウント値をスマートECU11に出力する。つまり、スマートECU11にラウンドトリップ時間を報告する。なお、スマートECU11へのラウンドトリップ時間の報告が完了すると伝搬時間計測部33のカウント値は0に戻る(つまりリセットされる)。
伝搬時間計測部33は、ラウンドトリップ時間の計測が完了すると、当該ラウンドトリップ時間に基づいて伝搬時間を算出し、スマートECU11に提供する。伝搬時間計測部33が伝搬時間特定部に相当する。当該伝搬時間の算出に係る伝搬時間計測部33の作動については別途後述する。伝搬時間計測部33は例えばICを用いて実現されている。その他、UWB通信機12は、携帯端末2のUWB通信部21と同様に、反射応答モードを備える。UWB通信機12の反射応答モードは、UWB通信部21の反射応答モードと同様である。
なお、ここではUWB通信機12は、送信用のアンテナ(つまり送信アンテナ312)と、受信用のアンテナ(つまり受信アンテナ321)とが別々に設けられている態様を示しているが、これに限らない。UWB通信機12は方向性結合器を用いて送信と受信とで1つのアンテナ素子を共用するように構成されていても良い。また、変調回路311や復調回路322は伝搬時間計測部33としての機能を提供するICに内蔵されていても良い。つまり、UWB通信機12は、1つのアンテナと、種々の回路機能を有する1つの専用ICとを用いて実現されていても良い。
<スマートECU11の機能について>
スマートECU11は、上述した位置推定プログラムを実行することで、図7に示す種々の機能ブロックに対応する機能を提供する。すなわち、スマートECU11は機能ブロックとして、車両情報取得部F1、通信処理部F2、認証処理部F3、位置推定部F4、車両制御部F5、及び通信機診断部F6を備えている。
スマートECU11は、上述した位置推定プログラムを実行することで、図7に示す種々の機能ブロックに対応する機能を提供する。すなわち、スマートECU11は機能ブロックとして、車両情報取得部F1、通信処理部F2、認証処理部F3、位置推定部F4、車両制御部F5、及び通信機診断部F6を備えている。
車両情報取得部F1は、車両Hvに搭載されたセンサやECU(例えばボディECU17)、スイッチなどから、車両Hvの状態を示す種々の情報(以降、車両情報)を取得する。車両情報としては、例えば、ドアの開閉状態や、各ドアの施錠/開錠状態、ドアボタン14の押下の有無、スタートボタン15の押下の有無等が該当する。また、車両情報取得部F1は、上述した種々の情報に基づいて、車両Hvの現在の状態を特定する。例えば車両情報取得部F1は、エンジンがオフであり、全てのドアが施錠されている場合に、車両Hvは駐車されていると判定する。もちろん、車両Hvが駐車されていると判定する条件は適宜設計されればよく、多様な判定条件を適用することができる。
なお、各ドアの施錠/開錠状態を示す情報を取得することは、各ドアの施錠/開錠状態を判定すること、及び、ユーザによるドアの施錠操作/開錠操作を検出することに相当する。また、ドアボタン14やスタートボタン15からの電気信号を取得することは、これらのボタンに対するユーザ操作を検出することに相当する。つまり、車両情報取得部F1はドアの開閉や、ドアボタン14の押下、スタートボタン15の押下などといった、車両Hvに対するユーザの操作を検出する構成に相当する。以降における車両情報には、車両Hvに対するユーザ操作も含まれる。加えて、車両情報に含まれる情報の種類は、上述したものに限らない。図示しないシフトポジションセンサが検出するシフトポジションや、ブレーキペダルが踏み込まれているか否かを検出するブレーキセンサの検出結果なども車両情報に含まれる。パーキングブレーキの作動状態もまた車両情報に含めることができる。
通信処理部F2は、UWB通信機12やBLE通信機13と協働して携帯端末2とのデータの送受信を実施する構成である。例えば通信処理部F2は、携帯端末2宛のデータを生成し、BLE通信機13に出力する。これにより、所望のデータに対応する信号を電波として送信させる。また、通信処理部F2は、BLE通信機13が受信した携帯端末2からのデータを受信する。本実施形態ではより好ましい態様としてスマートECU11と携帯端末2との無線通信は、暗号化して実施されるように構成されている。暗号化の方式としては、Bluetoothで規定されている方式など、多様な方式を援用することができる。
なお、本実施形態ではセキュリティ向上のためにスマートECU11及び携帯端末2は、認証等のためのデータ通信を暗号化して実施するように構成されているものとするが、これに限らない。他の態様として、スマートECU11及び携帯端末2は、暗号化せずにデータ通信を実施するように構成されていても良い。
通信処理部F2は、携帯端末2とのBLE通信が確立していることに基づいて、ユーザが車両Hv周辺に存在することを認識する。また、通信処理部F2は、BLE通信機13から、当該BLE通信機13が通信接続している携帯端末2の端末IDを取得する。このような構成によれば、車両Hvが複数のユーザによって共有される車両であっても、スマートECU11は、BLE通信機13が通信接続している携帯端末2の端末IDに基づいて車両Hv周辺に存在するユーザを特定することができる。
また、通信処理部F2は、UWB通信機12が受信した携帯端末2からのデータを取得する。加えて、通信処理部F2は、携帯端末2宛のデータを生成し、UWB通信機12に出力する。これにより、所望のデータに対応するパルス系列信号を無線送信させる。さらに通信処理部F2は、位置推定部F4や通信機診断部F6からの指示に基づいて、任意のUWB通信機12からインパルス信号を送信させる。インパルス信号を送信させるUWB通信機12は、位置推定部F4や通信機診断部F6によって選択される。
認証処理部F3は、BLE通信機13と連携して、通信相手がユーザの携帯端末2であることを確認(換言すれば認証)する処理を実施する。認証のための通信は、BLE通信機13を介して暗号化されて実施される。つまり、認証処理は暗号通信によって実施される。認証処理自体は、チャレンジ-レスポンス方式など多様な方式を用いて実施されればよい。ここではその詳細な説明は省略する。認証処理に必要なデータ(例えば暗号鍵)などは携帯端末2とスマートECU11のそれぞれに保存されているものとする。認証処理部F3が認証処理を実施するタイミングは、例えばBLE通信機13と携帯端末2との通信接続が確立したタイミングとすればよい。認証処理部F3は、BLE通信機13と携帯端末2とが通信接続している間、所定の周期で認証処理を実施するように構成されていても良い。また、ユーザによってスタートボタン15が押下された場合など、車両Hvに対する所定のユーザ操作をトリガとして認証処理のための暗号通信を実施するように構成されていても良い。
ところで、Bluetooth規格においてBLE通信機13と携帯端末2との通信接続が確立したということは、BLE通信機13の通信相手が予め登録されている携帯端末2であることを意味する。故に、スマートECU11は、BLE通信機13と携帯端末2との通信接続が確立したことに基づいて、携帯端末2の認証が成功したと判定するように構成されていても良い。
位置推定部F4は、携帯端末2の位置を推定する処理を実行する構成である。位置推定部F4は、概略的には、各UWB通信機12に所定の順に携帯端末2とインパルス信号を送受信させることにより、各UWB通信機12から携帯端末2までの距離を推定する。そして、各UWB通信機12から携帯端末2までの距離情報に基づいて携帯端末2の位置を推定する。当該位置推定部F4による位置推定処理については、別途後述する。
車両制御部F5は、認証処理部F3による携帯端末2の認証が成功している場合に、携帯端末2(換言すればユーザ)の位置及び車両Hvの状態に応じた車両制御を、ボディECU17等と協働して実行する構成である。車両Hvの状態は車両情報取得部F1によって判定される。携帯端末2の位置は位置推定部F4によって判定される。
例えば車両制御部F5は、車両Hvが駐車されている状況下で、携帯端末2が車室外に存在し、ユーザによってドアボタン14が押下された場合には、ボディECU17と連携してドアのロック機構を開錠する。また、例えば位置推定部F4によって携帯端末2は車室内に存在すると判定されており、かつ、スタートボタン15がユーザによって押下されたことを検出した場合には、エンジンECU16と連携してエンジンを始動させる。このように車両制御部F5は、基本的には車両Hvへのユーザ操作をトリガとしてユーザの位置及び車両Hvの状態に応じた車両制御を実行するように構成されている。ただし、車両制御部F5が実施可能な車両制御の中には、車両Hvへのユーザ操作を必要とせずに、ユーザの位置に応じて自動的に実行するものがあってもよい。
通信機診断部F6は、各UWB通信機12が正常な状態であるか否か(換言すれば不具合が生じていないか)を判定する構成である。通信機診断部F6の詳細については別途後述する。なお、ここでの不具合とは、例えば、信号線と回路素子との接触不良や、アンプの故障などがある。信号線の接触不良やアンプの不作動が生じている場合には、インパルス信号の受信レベル(換言すれば受信感度)が正常時に比べて低下し、インパルス信号の受信電力が所定の検出閾値を上回るタイミングが0.5ナノ秒~1ナノ秒程度遅れうる。ここでの不具合には、数ナノ秒程度の微小な遅延を生じさせる不具合が含まれる。もちろん、不具合には、信号線の断線やIC異常などといった、通信が不能な状態や、携帯端末2の位置の検出レンジを大幅に超える(例えば1ミリ秒以上の)通信遅延を引き起こす内部故障も含まれる。また、ここでの不具合には、通信機の内部故障のほかに、通信機が所定の取り付け位置から取り外されている状態も含まれる。
通信機診断部F6は、各UWB通信機12が正常な状態であるか否かを判断するためのデータ(以降、診断用データ)が保存されている診断用データ記憶部M1を備える。診断用データ記憶部M1は、図8に示すように診断用データとして、UWB通信機12の組み合わせ毎の信号伝搬時間の正常範囲を示すデータを記憶している。信号伝搬時間(以降、単に伝搬時間とも記載する)とは、或るUWB通信機12から送信された無線信号が、他機で受信されるまでの時間を指す。このような伝搬時間は、片道分の飛行時間(TOF:Time Of Flight)に相当する。また、伝搬時間は、UWB通信機間の距離(以降、通信機間距離)の指標として機能する。
UWB通信機12の組み合わせ毎の伝搬時間の正常範囲は、例えば[ナノ秒]など、時間の概念によって表されている。正常範囲は、通信機間距離に応じた基準値から所定の許容値以内となる範囲とすればよい。基準値は、別の観点によれば正常範囲の中心値に相当する。UWB通信機12の組み合わせ毎の正常範囲は、試験によって予め測定されればよい。UWB通信機12の組み合わせ毎の正常範囲は、シミュレーション等に基づく設計値であってもよい。以降では便宜上、工場やディーラショップ等で登録されている正常範囲のことをデフォルトの正常範囲とも記載する。また、デフォルトの正常範囲の中心値のことをデフォルトの基準値とも称する。UWB通信機12の組み合わせ毎の正常範囲の中心値(つまり基準値)は、通信機間の直線距離に応じた値に設定されていればよい。
図8に例示する第1、第2組み合わせについての正常範囲は、右前通信機12Aと左前通信機12Bとの直線距離、及び、右後通信機12Cと左後通信機12Dとの直線距離が1.8mである場合の一例を示している。光速は3.0×10^8[m/秒]であるため、1.8mに対応する伝搬時間は約5.5ナノ秒である。図8における第1、第2組み合わせの正常範囲は、伝搬時間の理論値である5.5ナノ秒に、±0.5ナノ秒の幅(換言すれば余裕)を付与したものに相当する。
図8に例示する第3、第4組み合わせについての正常範囲は、右前通信機12Aと右後通信機12Cとの直線距離、及び、左前通信機12Bと左後通信機12Dとの直線距離が2.5mである場合の一例を示している。2.5mに対応する伝搬時間は約7.6ナノ秒である。図8における第3、第4組み合わせについての正常範囲は、伝搬時間の理論値である7.6ナノ秒に、±0.5ナノ秒の幅を付与したものに相当する。
図8に例示する第5、第6組み合わせについての正常範囲は、右前通信機12Aと左後通信機12Dとの距離、及び、左前通信機12Bと右後通信機12Cとの直線距離が3.1mである場合の一例を示している。3.1mに対応する伝搬時間は約9.3ナノ秒である。図8における第5、第6組み合わせについての正常範囲は、伝搬時間の理論値である9.3ナノ秒に、±0.5ナノ秒の幅を付与したものに相当する。
なお、電波は0.5ナノ秒で約15cm伝搬する。つまり、上記の構成は、通信機間の直線距離に±15cm程度の余裕を与えた範囲を正常範囲に設定した態様に相当する。また、本実施形態では一例として正常範囲を時間の概念で規定されているが、これに限らない。他の態様として正常範囲は[m]など、距離の概念で規定されていても良い。上記の例では伝搬時間の理論値を基準値として採用するとともに、許容値を0.5ナノ秒に設定した態様に相当する。許容値の2倍が正常範囲の幅に相当する。正常範囲の上限値から下限値までの幅(つまり正常範囲の幅)は、携帯端末2の推定精度確保の観点から、2メートルに相当する値よりも小さく設定されていることが好ましい。2メートルに相当する値とは、伝搬時間に換算すると、6.7ナノ秒である。診断用データ記憶部M1が正常範囲記憶部に相当する。
<位置推定処理>
次に、図9に示すフローチャートを用いてスマートECU11が実施する位置推定処理について説明する。位置推定処理は、携帯端末2の位置を判定するための処理である。この位置推定処理は、BLE通信機13と携帯端末2との通信接続が確立されている状態において、例えば所定の位置推定周期で実施される。位置推定周期は、例えば200ミリ秒である。もちろん、位置推定周期は100ミリ秒や300ミリ秒であってもよい。本実施形態では一例として位置推定処理はステップS101~S107を備える。各ステップは、主として位置推定部F4が、UWB通信機12やBLE通信機13、通信処理部F2などと協働して実行される。
次に、図9に示すフローチャートを用いてスマートECU11が実施する位置推定処理について説明する。位置推定処理は、携帯端末2の位置を判定するための処理である。この位置推定処理は、BLE通信機13と携帯端末2との通信接続が確立されている状態において、例えば所定の位置推定周期で実施される。位置推定周期は、例えば200ミリ秒である。もちろん、位置推定周期は100ミリ秒や300ミリ秒であってもよい。本実施形態では一例として位置推定処理はステップS101~S107を備える。各ステップは、主として位置推定部F4が、UWB通信機12やBLE通信機13、通信処理部F2などと協働して実行される。
まずステップS101では通信処理部F2と協働して、携帯端末2宛の反射応答指示信号をBLE通信機13に送信させる。反射応答指示信号は、携帯端末2に反射応答モードで動作するように指示する信号である。これにより、携帯端末2は車載システム1から送信されたインパルス信号を受信する度に、反射的にインパルス信号を返送するように動作する。
次にステップS102では、任意のUWB通信機12をホスト機に設定する。ホスト機は、複数のUWB通信機12のうち、ラウンドトリップ時間を計測する役割を担うUWB通信機12に相当する。ステップS102での処理が完了するとステップS103を実行する。ステップS103では、当該ホスト機からインパルス信号を送信させる。これによりステップS104にてホスト機が送信した無線信号が携帯端末2で受信されるまでの時間である伝搬時間Taを取得する。その際、ホスト機以外のUWB通信機12は、動作を停止させるか、インパルス信号を受信しても応答信号としてのインパルス信号を返送しないように制御される。
上記のステップS103~S104においてホスト機の伝搬時間計測部33は、位置推定部F4からの指示に基づき図10に示すように、ラウンドトリップ時間Tpを計測する。そして、当該ラウンドトリップ時間Tpに携帯端末2での応答処理時間Tbの想定値を減算する。応答処理時間Tbの想定値は、演算用のパラメータとしてフラッシュメモリ112に登録されていればよい。ラウンドトリップ時間Tpから応答処理時間Tbを減算した値は、往復分の飛行時間に相当する。故に、ラウンドトリップ時間Tpから応答処理時間Tbを減算した値を2で割った値は、無線信号の片道分の飛行時間に相当する。伝搬時間計測部33は、ラウンドトリップ時間Tpから応答処理時間Tbを減算した値を2で割った値を伝搬時間TaとしてスマートECU11に提供する。なお、伝搬時間計測部33は、インパルス信号を送信してから所定の応答待機時間が経過しても応答信号としてのインパルス信号を受信しなかった場合には、伝搬時間Taが不明であることを示す値をスマートECU11に提供すればよい。応答待機時間は例えば33ナノ秒など、ユーザが車両Hvから十分(例えば10m以上)離れている状態を想定した値に設定されていればよい。
ステップS105では全てのUWB通信機12に伝搬時間Taを計測させたか否かを判定する。全てのUWB通信機12についての伝搬時間Taを取得している場合にはステップS105を肯定判定してステップS107を実行する。一方、まだ伝搬時間Taの計測を実行していないUWB通信機12が残っている場合にはステップS105を否定判定してステップS106を実行する。
ステップS106では、伝搬時間Taをまだ計測していない任意のUWB通信機12をホスト機に設定してステップS103を実行する。ホスト機に設定する順番(換言すればインパルス信号を送信させる順番)は適宜設計されれば良い。例えば位置推定部F4は、右前通信機12A→左前通信機12B→右後通信機12C→左後通信機12Dの順にホスト機に設定する。前述の通り、各UWB通信機12で計測された伝搬時間Taは、携帯端末2までの距離情報(換言すれば距離指標値)に相当する。故に、ステップS103からステップS106までの一連の処理は、各UWB通信機12からインパルス信号を送信させることにより、各UWB通信機12から携帯端末2までの距離情報を収集する処理に相当する。
ステップS107では、各UWB通信機12の設置位置と各UWB通信機12から携帯端末2までの距離情報に基づいて携帯端末2の位置を算出する。各UWB通信機12の設置位置は、フラッシュメモリ112に格納されている通信機位置データを使用すれば良い。各UWB通信機12から携帯端末2までの距離は、各UWB通信機12での伝搬時間Taに光速を乗じた値とすればよい。各UWB通信機12の設置位置と各UWB通信機12から携帯端末2までの距離情報に基づく位置の推定は、三角測量の原理を用いて実施することができる。各UWB通信機12の設置位置及び携帯端末2までの距離情報を用いた位置推定法としては、最小二乗法や、Newton-Raphson法、最小二乗平均推定法(MMSE:Minimum Mean Square Estimate)など、多様なアルゴリズムを採用することができる。
以上によって算出された携帯端末2の位置(以降、端末位置)は、車両制御部F5等によって参照される。例えば、ステップS107で算出された端末位置が作動エリアや車室内に該当するか否かを判定する。端末位置が作動エリア内に該当する場合には、車両制御部F5は当該判定結果に基づいてドアの開錠や施錠を実行する。また、端末位置が車室内に該当する場合には車両制御部F5は、当該判定結果に基づいて走行駆動源を始動させる。
<診断関連処理>
次に、図11に示すフローチャートを用いてスマートECU11が実施する診断関連処理について説明する。診断関連処理は、各UWB通信機12が正常な状態であるか否かを判定するための処理である。診断関連処理は、例えば所定の自己診断周期で定期的に実施される。自己診断周期は、例えば1時間である。もちろん、その他、診断関連処理は、車両Hvが駐車されたタイミングや、駐車されてから所定時間が経過したタイミング、ユーザの車両Hvへの接近を検出したタイミングなど、所定のタイミングで実行するように構成されていてもよい。ユーザの車両Hvへの接近は、例えばBLE通信機13が携帯端末2からのアドバタイズ信号を受信したことに基づいて検出されれば良い。診断関連処理は、駐車中など、車室内に乗員が1人もいない場合に実行されることが好ましい。また、前述の位置推定処理は、診断関連処理を実行された後に実施されるように構成されていても良い。
次に、図11に示すフローチャートを用いてスマートECU11が実施する診断関連処理について説明する。診断関連処理は、各UWB通信機12が正常な状態であるか否かを判定するための処理である。診断関連処理は、例えば所定の自己診断周期で定期的に実施される。自己診断周期は、例えば1時間である。もちろん、その他、診断関連処理は、車両Hvが駐車されたタイミングや、駐車されてから所定時間が経過したタイミング、ユーザの車両Hvへの接近を検出したタイミングなど、所定のタイミングで実行するように構成されていてもよい。ユーザの車両Hvへの接近は、例えばBLE通信機13が携帯端末2からのアドバタイズ信号を受信したことに基づいて検出されれば良い。診断関連処理は、駐車中など、車室内に乗員が1人もいない場合に実行されることが好ましい。また、前述の位置推定処理は、診断関連処理を実行された後に実施されるように構成されていても良い。
本実施形態では一例として診断関連処理はステップS201~S212を備える。各ステップは、主として通信機診断部F6が、UWB通信機12やBLE通信機13、通信処理部F2などと協働して実行される。
まずステップS201では以降の処理で使用する変数パラメータであるkを1に設定(換言すれば初期化)し、ステップS202を実行する。ステップS202では、双方向に無線通信を実施させるUWB通信機12の組み合わせとして、第k組み合わせを選択する。そして、当該第k組み合わせを構成するUWB通信機12の何れか一方をホスト機として双方向無線通信を実施させる。これにより、当該第k組み合わせについての通信機間の距離情報としての伝搬時間Taを取得する(ステップS203)。ステップS203を実行する通信機診断部F6が距離指標値取得部に相当する。また、上記の処理によって取得される伝搬時間Taは、距離指標値に相当する。故にステップS202で第k組み合わせのUWB通信機12に実行させる双方向無線通信は、距離指標値を取得するための無線通信に相当する。
距離指標値を取得するための無線通信の内容は、ここでは単発のインパルス信号を送受信させるものとする。第k組み合わせを構成する2つのUWB通信機12のうち、どちらをホスト機として動作させるかは適宜設計されれば良い。第k組み合わせを構成する2つのUWB通信機12のうち、ホスト機ではない方のUWB通信機12は、反射応答モードで動作させる。なお、第k組み合わせを構成する2つのUWB通信機12以外のUWB通信機12は、動作を停止させるか、インパルス信号を受信しても応答信号としての単発パルス信号を返送しないように制御される。
例えばk=1の場合には、ステップS202において第1組み合わせを構成する右前通信機12Aと左前通信機12Bにインパルス信号を送受信させる。より具体的には、右前通信機12Aをホスト機に設定するとともに、左前通信機12Bを反射応答モードに設定する。そして、右前通信機12Aにインパルス信号を送信させ、右前通信機12Aから左前通信機12Bまでの無線信号の伝搬時間Taを取得する。伝搬時間Taの算出過程は、図10を用いて前述した通りである。伝搬時間Taは、ラウンドトリップ時間Tpから所定の応答処理時間Tbを減算してなる値をさらに2で除算した値とすれば良い。当該伝搬時間Taが、第1組み合わせについての伝搬時間Taである。
ステップS204では、変数パラメータであるkが、伝搬時間Taの計測を行うべきUWB通信機12の組み合わせの総数であるN以上となっているか否か(つまりk≧Nであるか否か)を判定する。本実施形態ではN=6である。k≧Nである場合には、ステップS204を肯定判定してステップS206を実行する。一方、k<Nである場合にはステップS204を否定判定してステップS205を実行する。ステップS205ではkの値を1つ増加させて(つまりインクリメントさせて)ステップS202を実行する。つまり、k=NとなるまでステップS202からステップS205の処理を繰り返す。これにより、伝搬時間Taの計測を行うべき全ての組み合わせについての伝搬時間Taを収集する。
ステップS206では、任意のUWB通信機12を診断対象機に設定し、ステップS207を実行する。ステップS207では診断対象機に係る全ての組み合わせについて、伝搬時間Taが正常範囲に収まっているかを判定する。診断対象機に係る全ての組み合わせとは、診断対象機を構成要素とする組み合わせを指す。例えば右前通信機12Aに係る全ての組み合わせとは、第1、第3、第5組み合わせである。また、左前通信機12Bに係る全ての組み合わせとは第1、第4、第6組み合わせを指す。組み合わせ毎の正常範囲は、診断用データ記憶部M1に格納されている診断用データを参照することで特定される。
診断対象機に係る全ての組み合わせにおいて伝搬時間Taが正常範囲外の値である場合には、ステップS208を肯定判定してステップS209に移る。一方、診断対象機に係る全ての組み合わせのうち、少なくとも1つの組み合わせにおいて伝搬時間Taが正常範囲内の値である場合にはステップS208を否定判定してステップS209に移る。
ステップS209では当該診断対象機を、不具合が生じている通信機(以降、不具合機)と判定し、ステップS211に移る。ステップS210では、当該診断対象機は正常であると判定してステップS211に移る。正常な通信機のことを健全機とも記載する。
ステップS211では全てのUWB通信機12に対してステップS207~S210の処理(以降、診断処理)を実施したか否かを判定する。全てのUWB通信機12について診断済みである場合にはステップS211を肯定判定して本フローを終了する。一方、まだ診断処理を実行していないUWB通信機12が残っている場合には当該未診断のUWB通信機12を診断対象機に設定してステップS207を実行する。
なお、不具合機が発見された場合には、スマートECU11(例えば通信機診断部F6)は、HCU18に不具合通知処理を実行するように要求する。不具合通知処理は、前述の通り、ディスプレイ181やインジケータ182、スピーカ183等の報知装置を介して不具合機が存在することをユーザに通知する処理である。なお、報知装置としてはユーザの携帯端末2も採用可能である。例えば不具合機を発見している場合には、携帯端末2に所定のBLE信号を送信し、携帯端末2のディスプレイに不具合通知画像を表示させてもよい。このような態様によれば、不具合機の存在をユーザが認識可能となる。なお、診断結果は図示しないダイアグECUに通知して、ログとして一定期間保存されるように構成されていても良い。
また、上記の診断関連処理の結果として不具合機が発見された場合には、不具合機の通信基番号を位置推定部F4に通知してもよい。そのような構成においては位置推定部F4は、不具合機で観測された携帯端末2との距離情報は位置推定処理に使用しない。当該制御態様によれば、不具合機の存在によって端末位置を誤判定する恐れを低減できる。
<上記実施形態の効果について>
ここでは比較構成を導入して本実施形態の効果について説明する。比較構成もまた、通信機間の伝搬時間に基づいて不具合機を検出する構成である。ただし、比較構成では、診断対象機に係る複数の組み合わせのうち、伝搬時間が正常範囲外となっている組み合わせが1つでも存在する場合には、当該診断対象機は不具合機であると判定する。
ここでは比較構成を導入して本実施形態の効果について説明する。比較構成もまた、通信機間の伝搬時間に基づいて不具合機を検出する構成である。ただし、比較構成では、診断対象機に係る複数の組み合わせのうち、伝搬時間が正常範囲外となっている組み合わせが1つでも存在する場合には、当該診断対象機は不具合機であると判定する。
そのような比較構成によっても、組み合わせ毎の正常範囲を狭く設定しておけば、本実施形態と同様に例えば数ナノ秒程度の微小な遅延を生じさせる不具合を検出可能となる。しかしながら、伝搬時間に誤差が生じる原因は、部品の故障に限らない。図12に示すように2つのUWB通信機12の間に金属体や人体の遮蔽物4が存在する場合、電波は当該介在物を回り込むように伝搬する。そのため、伝搬時間は、迂回経路に応じた長さとなる。つまり、迂回経路の長さと最短距離の差が誤差となって表れる。加えて、無線信号が遮蔽物を迂回して伝搬している場合には、伝搬距離が長くなるため、受信信号強度が低下する。その結果、図6を用いて説明したように、受信電力が受信判定閾値Thを超過するタイミング自体も遅れる。
故に、比較構成では、各UWB通信機12が正常に動作している場合であっても、通信機間に介在物が存在する場合には、その介在物の種別や大きさによって伝搬時間が正常範囲を逸脱しうる。正常範囲を大きめに設定しておけば、回折による誤判定の恐れを低減できるが、例えば数ナノ秒程度の微小な遅延を生じさせる不具合を検出できなくなってしまう。加えて、正常範囲を逸脱した伝搬時間が観測された組み合わせを構成する2つのUWB通信機12のうち、どちらに不具合が生じているのかまでは特定することができない。
これに対し、本実施形態では、診断対象機に係る全ての組み合わせにおいて伝搬時間Taが正常範囲外の値である場合に診断対象機に不具合が生じていると判定する。換言すれば、診断対象機に係る全ての組み合わせのうち、少なくとも1つの組み合わせにおいて伝搬時間Taが正常範囲内の値である場合には、当該診断対象機は正常であると判定する。
通常、診断対象機に係る全ての組み合わせにおいて、通信機間に遮蔽物が介在する可能性は低い。本実施形態の通信機診断部F6によれば、遮蔽物の存在(ひいては回折)によって、不具合が生じていないUWB通信機12を不具合機と誤判定する恐れを低減できる。加えて、上記の効果は、正常範囲を大きめに設定せずとも得られる。つまり、本実施形態の構成によれば、不具合が生じていないUWB通信機12を不具合機と誤判定する恐れを低減しつつ、数ナノ秒程度の微小な遅延を生じさせる不具合を検出することができる。加えて、正常範囲を逸脱した伝搬時間が観測された組み合わせを構成する2つのUWB通信機12のうちのどちらに不具合が生じているのかも特定できる。なお、上記の診断方法は、各UWB通信機12に他機と無線通信を実施させ、全ての組み合わせにおいて距離指標値が異常値となっているUWB通信機12を不具合機と判定する方法に相当する。
また、本実施形態では、各UWB通信機12を、通信機間に人体が介在しにくい位置、例えば、ピラーや天井付近に取り付けている。このような取り付け態様によれば、UWB通信機12の診断精度にかかる回折の影響をより一層低減できる。さらに、本実施形態の位置推定部F4は、不具合機で観測される距離情報は携帯端末2の位置推定に使用しない。このような構成によれば、端末位置を誤判定する恐れを低減できる。
その他、本実施形態では単発のインパルス信号を送受信することによって、ラウンドトリップ時間を計測する。当該構成によれば、応答処理時間がラウンドトリップ時間に含まれにくくなる。その結果、通信機間距離の推定精度を高めることができる。
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、以降で述べる種々の変形例も本開示の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。例えば下記の種々の変形例は、技術的な矛盾が生じない範囲において適宜組み合わせて実施することができる。
なお、前述の実施形態で述べた部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。また、構成の一部のみに言及している場合、他の部分については先に説明した実施形態の構成を適用することができる。
[変形例1]
伝搬時間(ひいては距離)の推定のために送受信する信号は、単発のインパルス信号ではなく、図13に示すように一定の長さを有するパルス系列信号であってもよい。パルス系列信号は、送信元情報と宛先情報とを含むことが好ましい。パルス系列信号が送信元情報と宛先情報とを含む場合には、伝搬時間を推定するための通信に関与しないUWB通信機(以降、非対象機)の動作を制限せずとも、非対象機が応答信号を送信することを抑制できる。なお、本変形例においてはパルス系列信号の長さ(以降、信号長)Tcの想定値を用いてラウンドトリップ時間Tpから伝搬時間Taを算出すれば良い。すなわち、Ta=(Tp-Tb-Tc×2)/2として伝搬時間Taを算出すれば良い。
伝搬時間(ひいては距離)の推定のために送受信する信号は、単発のインパルス信号ではなく、図13に示すように一定の長さを有するパルス系列信号であってもよい。パルス系列信号は、送信元情報と宛先情報とを含むことが好ましい。パルス系列信号が送信元情報と宛先情報とを含む場合には、伝搬時間を推定するための通信に関与しないUWB通信機(以降、非対象機)の動作を制限せずとも、非対象機が応答信号を送信することを抑制できる。なお、本変形例においてはパルス系列信号の長さ(以降、信号長)Tcの想定値を用いてラウンドトリップ時間Tpから伝搬時間Taを算出すれば良い。すなわち、Ta=(Tp-Tb-Tc×2)/2として伝搬時間Taを算出すれば良い。
[変形例2]
上述した実施形態では各UWB通信機12が伝搬時間をスマートECU11に報告し、スマートECU11が各UWB通信機12から提供された伝搬時間に基づいて通信機間距離を算出する態様を開示したが、これに限らない。伝搬時間に基づいて通信機間距離を算出する機能は各UWB通信機12が備えていても良い。すなわち、各UWB通信機12は、他機と無線通信することで取得した伝搬時間に基づいて、自機から通信相手としての他機までの距離を算出する。そして、当該距離を示すデータを、通信相手及び自機のそれぞれについての通信機番号と対応付けてスマートECU11に報告する。このような構成によっても上述した実施形態と同様の効果を奏する。また、スマートECU11の演算負荷を抑制することができる。
上述した実施形態では各UWB通信機12が伝搬時間をスマートECU11に報告し、スマートECU11が各UWB通信機12から提供された伝搬時間に基づいて通信機間距離を算出する態様を開示したが、これに限らない。伝搬時間に基づいて通信機間距離を算出する機能は各UWB通信機12が備えていても良い。すなわち、各UWB通信機12は、他機と無線通信することで取得した伝搬時間に基づいて、自機から通信相手としての他機までの距離を算出する。そして、当該距離を示すデータを、通信相手及び自機のそれぞれについての通信機番号と対応付けてスマートECU11に報告する。このような構成によっても上述した実施形態と同様の効果を奏する。また、スマートECU11の演算負荷を抑制することができる。
[変形例3]
スマートECU11は、図14に示すように、乗員人数や着座位置を示すデータを出力する乗員位置検出装置19と接続されていても良い。乗員位置検出装置19とは、例えば、車室内カメラ19Aや着座センサ19Bなどである。スマートECU11が乗員位置検出装置19と接続されている場合、通信機診断部F6は、乗員位置検出装置19の出力データに基づいて車室内に乗員がいないことが確認できている場合に診断関連処理を実行するように構成されていてもよい。そのような構成によれば、人体での回折によって正常なUWB通信機12を不具合機と誤判定する恐れを低減できる。
スマートECU11は、図14に示すように、乗員人数や着座位置を示すデータを出力する乗員位置検出装置19と接続されていても良い。乗員位置検出装置19とは、例えば、車室内カメラ19Aや着座センサ19Bなどである。スマートECU11が乗員位置検出装置19と接続されている場合、通信機診断部F6は、乗員位置検出装置19の出力データに基づいて車室内に乗員がいないことが確認できている場合に診断関連処理を実行するように構成されていてもよい。そのような構成によれば、人体での回折によって正常なUWB通信機12を不具合機と誤判定する恐れを低減できる。
なお、車室内カメラ19Aは、車室内全域を撮影するように、例えばフロントガラス上端部や天井に設置されたカメラである。スマートECU11が車室内カメラ19Aと直接的又は間接的に接続されている場合、スマートECU11は車室内カメラ19Aの撮影画像を解析することにより、乗員の有無や着座位置を特定すればよい。着座センサ19Bは、車両Hvの座席にユーザが着座しているか否か(つまり着座状態)を検出するセンサであって、例えば車両Hvの各座席に配置されている。乗員位置検出装置19としては上記以外にも、シートベルトの装着状態を検出するシートベルトセンサや、車室内を検知範囲とする赤外線センサなども採用可能である。なお、通信機診断部F6は、駐車されている状態を車室内に乗員がいない状態と見なすように構成されていてもよい。
[変形例4]
通信機診断部F6は、正常範囲の基準値を伝搬時間の実測値に応じて調整する、基準値調整処理を実行可能に構成されていても良い。例えば通信機診断部F6は、基準値調整処理として、ステップS201~S205に相当する処理を実行し、通信機の組み合わせ毎の伝搬時間を取得する。例えば実際に観測された伝搬時間を基準値として採用し、当該基準値から許容値以内とする範囲を新たな正常範囲として登録する。このような基準値調整処理は、通信機の組み合わせ毎の正常範囲を補正する処理に相当する。なお、正常範囲の幅を規定する許容値は、変更せずに、一定とすることが好ましい。このような構成は、デフォルトの基準値と、実際の伝搬時間との差に応じて、正常範囲をシフト(換言すればオフセット)する構成に相当する。基準値調整処理は、例えばディーラショップ等での点検時に、車室内に誰も乗車していない状態にて実行されればよい。また、基準値調整処理は、専用の診断ツールを用いたり、所定の振る舞いテストを行ったりして各UWB通信機12が正常に動作していることが確認された場合に実行されることが好ましい。
通信機診断部F6は、正常範囲の基準値を伝搬時間の実測値に応じて調整する、基準値調整処理を実行可能に構成されていても良い。例えば通信機診断部F6は、基準値調整処理として、ステップS201~S205に相当する処理を実行し、通信機の組み合わせ毎の伝搬時間を取得する。例えば実際に観測された伝搬時間を基準値として採用し、当該基準値から許容値以内とする範囲を新たな正常範囲として登録する。このような基準値調整処理は、通信機の組み合わせ毎の正常範囲を補正する処理に相当する。なお、正常範囲の幅を規定する許容値は、変更せずに、一定とすることが好ましい。このような構成は、デフォルトの基準値と、実際の伝搬時間との差に応じて、正常範囲をシフト(換言すればオフセット)する構成に相当する。基準値調整処理は、例えばディーラショップ等での点検時に、車室内に誰も乗車していない状態にて実行されればよい。また、基準値調整処理は、専用の診断ツールを用いたり、所定の振る舞いテストを行ったりして各UWB通信機12が正常に動作していることが確認された場合に実行されることが好ましい。
当該構成によれば実際の環境に応じた正常範囲を用いて各UWB通信機12を診断可能となる。なお、本変形例においては基準値調整処理にて観測された伝搬時間が、デフォルトの基準値から大きく(例えば所定の更新禁止閾値以上)乖離している場合には、基準値の更新(換言すれば正常範囲の更新)は行わないように構成されていることが好ましい。UWB通信機12に不具合が生じている状態にて観測された伝搬時間を用いて正常範囲を補正する恐れを低減するためである。更新禁止閾値は例えば3ナノ秒など、距離に換算して1m程度となる値に設定されていれば良い。
[変形例5]
上述した実施形態では診断関連処理として、互いに通信可能な位置関係にある全ての組み合わせにおいて双方向にインパルス信号を送受信させ、伝搬時間を計測する態様を開示したが、これに限らない。例えば図15に示すように、第5、第6組み合わせについては伝搬時間の計測を実施せずに、第1~第4組み合わせについてのみ伝搬時間の計測を実施するように構成されていても良い。
上述した実施形態では診断関連処理として、互いに通信可能な位置関係にある全ての組み合わせにおいて双方向にインパルス信号を送受信させ、伝搬時間を計測する態様を開示したが、これに限らない。例えば図15に示すように、第5、第6組み合わせについては伝搬時間の計測を実施せずに、第1~第4組み合わせについてのみ伝搬時間の計測を実施するように構成されていても良い。
また、通信機診断部F6は、車室内カメラ19Aによって通信機間に遮蔽物が介在していないことが確認できている組み合わせについてのみ、伝搬時間の計測を実行させ、不具合が生じているか否かを判定するように構成されていても良い。例えば図16に示すように運転席に乗員が着座しており第5組み合わせを構成する右前通信機12Aと左後通信機12Dとの間に、遮蔽物4としての乗員の頭部4Aが存在する場合には、第5組み合わせ以外の組み合わせのみ、伝搬時間の計測を実行させる。そのような構成によれば、遮蔽物によって正常な通信機を不具合機であると誤判定する恐れをより一層低減できる。
[変形例6]
UWB通信機12の設置態様(具体的には設置位置や設置数)は上述した態様に限らない。例えば右前通信機12Aや左前通信機12Bは前輪付近やフロントコーナー付近、サイドミラーに配置されていても良い。また、右後通信機12Cや左後通信機12Dは、後輪付近やリアコーナー付近に取り付けられていても良い。或る部材の付近とは、当該部材から例えば30cm以内となる領域を指す。
UWB通信機12の設置態様(具体的には設置位置や設置数)は上述した態様に限らない。例えば右前通信機12Aや左前通信機12Bは前輪付近やフロントコーナー付近、サイドミラーに配置されていても良い。また、右後通信機12Cや左後通信機12Dは、後輪付近やリアコーナー付近に取り付けられていても良い。或る部材の付近とは、当該部材から例えば30cm以内となる領域を指す。
その他、UWB通信機12の取付位置としては、Bピラー(センターピラー)や、インストゥルメントパネル、センターコンソール、オーバーヘッドコンソール、ルームミラー付近、リアガラスの上端部などを採用可能である。UWB通信機12は、車両Hvの側面部と屋根部との境界付近(以降、側面上端部)に配置されていても良い。このような構成は、UWB通信機12をサイドウインドウの上側に位置するフレーム部分に設けた構成に相当する。
また、車両Hvのボディが電波を通す材料(例えば樹脂)を用いて実現されている場合には、UWB通信機12の取付位置としては、運転席及び助手席用の外側ドアハンドルや、運転席及び助手席用の内側ドアハンドル付近、サイドシルなども採用可能である。車載システム1は車両Hvの外面部に配置されたUWB通信機12を備えていても良い。ここでの外面部とは、車両Hvにおいて車室外空間に接するボディ部分であって、車両Hvの側面部、背面部、及び前面部が含まれる。加えて、車載システム1は、トランク内部に取り付けられたUWB通信機12や、トランクドアハンドル付近に取り付けられたUWB通信機12を備えていてもよい。
また、スマートECU11と接続されているUWB通信機12の数は3機や5機、6機以上であってもよい。例えばスマートECU11は、図17に示すように、右前通信機12A、左前通信機12B、及び、後部中央通信機12Eの3つのUWB通信機12と接続されていても良い。後部中央通信機12Eは、例えば後部座席の上方に位置する天井部の車幅方向中央部に取り付けられているUWB通信機12である。スマートECU11は少なくとも3つの正常なUWB通信機12と接続されていれば端末位置を推定可能である。
[変形例7]
上述した実施形態では距離指標値として片道分の伝搬時間を用いる態様を開示したが、距離指標値はラウンドトリップ時間Tpであってもよい。なお、上述した実施形態ではラウンドトリップ時間Tpから伝搬時間を算出する態様を開示したがこれに限らない。例えば、各UWB通信機12がスマートECU11の制御のもと、完全に同期している場合には、各UWB通信機12は、他機が信号を送信した時刻と、信号を実際に受信した時刻との差から伝搬時間を算出するように構成されていても良い。伝搬時間は、例えば各UWB通信機12が信号を送信する時刻を予め規定しておくことによって算出可能である。
上述した実施形態では距離指標値として片道分の伝搬時間を用いる態様を開示したが、距離指標値はラウンドトリップ時間Tpであってもよい。なお、上述した実施形態ではラウンドトリップ時間Tpから伝搬時間を算出する態様を開示したがこれに限らない。例えば、各UWB通信機12がスマートECU11の制御のもと、完全に同期している場合には、各UWB通信機12は、他機が信号を送信した時刻と、信号を実際に受信した時刻との差から伝搬時間を算出するように構成されていても良い。伝搬時間は、例えば各UWB通信機12が信号を送信する時刻を予め規定しておくことによって算出可能である。
また、距離指標値は、伝搬時間に光速を乗じることで距離の次元に変換したものであってもよい。距離指標値として距離そのものを採用する場合には、正常範囲は伝搬時間ではなく距離によって規定されていれば良い。
[変形例8]
上述した実施形態では車載システム1と携帯端末2とは、UWB通信のインパルス信号を用いて通信機間の距離指標値を取得する態様を開示したが、これに限らない。例えば車載システム1と携帯端末2とは、Bluetoothや、Wi-Fi、ZigBee等の近距離無線通信規格に準拠した無線信号を用いて通信機間の距離指標値を取得するように構成されていても良い。車載システム1と携帯端末2とは、1GHz以上の無線信号を用いて通信機間の距離指標値を取得するように構成されていることが好ましい。
上述した実施形態では車載システム1と携帯端末2とは、UWB通信のインパルス信号を用いて通信機間の距離指標値を取得する態様を開示したが、これに限らない。例えば車載システム1と携帯端末2とは、Bluetoothや、Wi-Fi、ZigBee等の近距離無線通信規格に準拠した無線信号を用いて通信機間の距離指標値を取得するように構成されていても良い。車載システム1と携帯端末2とは、1GHz以上の無線信号を用いて通信機間の距離指標値を取得するように構成されていることが好ましい。
<付言>
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路により、実現されてもよい。さらに、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路により、実現されてもよい。さらに、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
なお、ここでの制御部とは、例えばスマートECU11である。また、携帯側制御部23も、上記の制御部に含まれうる。スマートECU11が提供する手段および/または機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。スマートECU11が備える機能の一部又は全部はハードウェアとして実現されても良い。或る機能をハードウェアとして実現する態様には、1つ又は複数のICなどを用いて実現する態様が含まれる。上述した実施形態ではスマートECU11はCPUを用いて実現されているものとしたが、スマートECU11の構成はこれに限定されない。スマートECU11は、CPU111の代わりに、MPU(Micro Processor Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)、データフロープロセッサ(DFP:Data Flow Processor)を用いて実現されていてもよい。また、スマートECU11は、CPU111や、MPU、GPU、DFPなど、複数種類のプロセッサを組み合せて実現されていてもよい。さらに、スマートECU11が提供すべき機能の一部は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)や、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などを用いて実現されていても良い。携帯側制御部23も同様である。
1 車載システム、2 携帯端末、4 遮蔽物、11 スマートECU、12・12A~12D UWB通信機(車載通信機)、13 BLE通信機、21 UWB通信部、22 BLE通信部、23 携帯側制御部、F1 車両情報取得部、F2 通信処理部、F3 認証処理部、F4 位置推定部、F5 車両制御部、F6 通信機診断部、M1 診断用データ記憶部(正常範囲記憶部)、31 送信部、32 受信部、33 伝搬時間計測部、Tp ラウンドトリップ時間、Ta 伝搬時間、Tb 応答処理時間、19 乗員位置検出装置、19A 車室内カメラ、19B 着座センサ、S203 距離指標値取得部
Claims (10)
- 車両においてそれぞれ異なる位置に配置されている複数の車載通信機(12)が、前記車両のユーザによって携帯される携帯端末と無線通信することで前記車両に対する前記携帯端末の位置を判定する車両用位置推定システムであって、
複数の前記車載通信機のそれぞれは、
前記車両に搭載されている他の前記車載通信機である他機のうちの少なくとも2つと無線通信を実施可能に構成されており、
互いに無線通信可能な位置関係にある前記車載通信機の組み合わせ毎に無線通信を実施させることによって、前記車載通信機間の距離を直接的又は間接的に示す距離指標値を取得する距離指標値取得部(S203)と、
前記車載通信機の組み合わせに応じた前記距離指標値の正常範囲を示すデータを記憶している正常範囲記憶部(M1)と、
前記距離指標値取得部が取得した前記車載通信機の組み合わせ毎の前記距離指標値に基づいて、前記車載通信機が正常であるか否かを判定する通信機診断部(F6)と、を備え、
前記通信機診断部は、診断対象とする前記車載通信機である診断対象機と、前記診断対象機にとっての少なくとも1つの前記他機との間の前記距離指標値が、当該車載通信機の組み合わせに応じた前記正常範囲内の値となっている場合には、当該診断対象機には不具合は生じていないと判定するように構成されている車両用位置推定システム。 - 請求項1に記載の車両用位置推定システムであって、
前記通信機診断部は、前記診断対象機と通信可能に構成されている全ての前記他機と前記診断対象機との前記距離指標値が何れも前記正常範囲外の値となっている場合に、前記診断対象機に不具合が生じていると判定するように構成されている車両用位置推定システム。 - 請求項1又は2に記載の車両用位置推定システムであって、
前記正常範囲の上限値から下限値までの幅は、2メートルに相当する値よりも小さく設定されている車両用位置推定システム。 - 請求項1から3の何れか1項に記載の車両用位置推定システムであって、
前記通信機診断部は、車室内に乗員がいない場合に、前記車載通信機に前記距離指標値を取得するための無線通信を実行させるように構成されている車両用位置推定システム。 - 請求項4に記載の車両用位置推定システムであって、
前記通信機診断部は、前記車両が駐車されている場合に、前記車載通信機に前記距離指標値を取得するための無線通信を実行させるように構成されている車両用位置推定システム。 - 請求項4又は5に記載の車両用位置推定システムであって、
車室内において乗員が着座している位置を検出する乗員位置検出装置(19)を備え、
前記乗員位置検出装置の検出結果に基づき、無線信号が前記乗員を回折して伝搬する位置関係にある前記車載通信機の組み合わせについては、前記距離指標値を取得するための無線通信は実行させないように構成されている車両用位置推定システム。 - 請求項1から6の何れか1項に記載の車両用位置推定システムであって、
各前記車載通信機は、車室内に乗員がいない状態において前記他機からの信号を直接的に受信可能な位置に取り付けられている車両用位置推定システム。 - 請求項1から7の何れか1項に記載の車両用位置推定システムであって、
各前記車載通信機は、ピラー又は天井部に取り付けられている車両用位置推定システム。 - 請求項1から8の何れか1項に記載の車両用位置推定システムであって、
前記通信機診断部は、車室内に乗員が存在しない状況において、前記車載通信機の組み合わせ毎に無線通信を実施させることによって、前記車載通信機の組み合わせ毎の前記距離指標値を取得し、取得した前記距離指標値に基づいて、前記正常範囲記憶部に保存されている前記車載通信機の組み合わせ毎の前記正常範囲を補正可能に構成されている車両用位置推定システム。 - 請求項1から9の何れか1項に記載の車両用位置推定システムであって、
複数の前記車載通信機のそれぞれは、超広帯域のインパルス信号を前記他機と送受信することによって前記車載通信機間における前記インパルス信号の伝搬時間を特定し、その特定した前記伝搬時間を前記通信機診断部に提供するように構成されている車両用位置推定システム。
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