以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳説する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。また、分かり易さを優先させて、一部の寸法を大きく又は小さくして図示する場合がある。
まず、図1を参照して、本発明の一形態による吸収性物品の基本構造について説明する。図1(a)に、吸収性物品1の上面図を示し、また図1(b)に、図1のI-I線断面図を示す。本形態では、例として、パッドタイプ使い捨ておむつ(尿取りパッド)について説明する。
図1に示すように、吸収性物品1は、透液性のトップシート22と、不透液性のバックシート21と、両シート21、22の間に設けられた吸収体30とを有している。吸収性物品1を装着する際、トップシート22側が肌側となり、バックシート21側は、アウター(外側のおむつ)や下着等に固定される。
本形態では、吸収性物品1は、平面視で、全体として細長い形状を有している。すなわち、吸収性物品1は、第1方向(前後方向又は長手方向)D1に所定の長さを有し、第1方向D1と直交する第2方向(幅方向)D2に、上記長さより小さい所定の幅を有している。吸収性物品1の前方及び後方は、それぞれ装着時の腹側及び背側に対応する。
図示の形態では、吸収性物品1の平面視形状は、前後方向中心線CLを対称線として線対称になっているが、必ずしも線対称でなくともよい。また、吸収性物品1の平面視形状は、上述のように、前後の領域に比べて幅が狭くなっている部分(括れ部分)を有するものでなくとも、前後方向D1にわたって幅が一定である矩形状等、他の形状とすることもできる。
また、形状以外の吸収性物品1の構成(各構成要素の材質、配置等)も、前後方向中心線CLに対して線対称になっているが、必ずしも線対称でなくともよい。
図1に示すように、吸収性物品1は、前後方向D1で見て中央付近に、股間対応領域C1を有する。本明細書において、「股間対応領域」とは、装着時に装着者の股間(股下)に対応させる部分を意味する。股間対応領域C1は、例えば、吸収性物品の前後方向中央若しくはその近傍から前方の所定位置までの範囲であってもよいし、吸収性物品の前後方向中央の所定範囲であってよい。なお、図示の形態では、吸収性物品1には、幅が狭くなっている括れ部分が形成されているが、その括れ部分が形成されている領域の一部が股間対応領域C1となっている。また、股間対応領域C1の前方に隣接し、吸収性物品1の前端までの領域が前方領域F1となっており、股間対応領域C1の後方に隣接し、吸収性物品1の後端までの領域が後方領域B1となっている。本明細書において、後方領域B1は、装着時に装着者の臀部に対応させる部分となり、「臀部対応領域」とも呼ぶ。
吸収性物品1の全長(前後方向D1の長さ)は、350~700mm程度、全幅(幅方向D2の長さ)は130~400mm程度とすることができる。また、股間対応領域C1の前後方向D1の長さは10~150mm程度、前方領域F1の前後方向D1の長さは50~350mm程度、後方領域B1の前後方向D1の長さは50~350mm程度とすることができる。また、吸収性物品1が括れ部分有する場合、その最小幅は、吸収性物品1の全幅(括れ部分以外の部分における幅方向D2の長さ)の50~90%程度であるのが好ましい。
図1に示すように、バックシート21のサイズは、吸収体30よりも大きくなっていてよい。そして、吸収体30は、バックシート21の範囲内に収まるように配置することができる。不透液性のバックシート21としては、ポリエチレンフィルム等の他、ムレ防止の点から遮水性を損なわずに透湿性を備えたシートも用いることができる。この遮水・透湿性シートは、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートを用いることができる。なお、バックシート21の外面は、不織布等の外装シートにより覆うこともできる。
トップシート22は、図示の形態では、吸収体30の幅方向D2の端部の一部を覆っていないが、吸収体30全体を覆っていてもよい。トップシート22としては、有孔又は無孔の不織布や穴あきプラスチックシートなどを用いることができる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
なお、トップシート22と吸収体30との間には、中間シートを介在させることもできる。中間シートを設けることで、吸収体30により吸収した体液の逆戻りを防止することができる。そのため、中間シートとしては、保水性が低く且つ液透過性の高い素材、例えば各種の不織布、メッシュフィルム等を用いるのが好ましい。
吸収体30の前後方向D1の両端部では、バックシート21とトップシート22とが貼り合わされている。また、吸収性物品1の幅方向D2の両側部においては、バックシート21と、吸収性物品1の両側部に前後方向D1に沿ってそれぞれ設けられたギャザーシート24、24とが貼り合されている。
ギャザーシート24としては、プラスチックシート、メルトブローン不織布等使用することもできるが、肌への感触性が良好であるという観点から、不織布にシリコーン等によって撥水処理をしたものが好適に使用される。
図1に示すように、ギャザーシート24、24はそれぞれ、トップシート22上に重ねられている。そして、各キャザーシート24の幅方向D2の内側の端部には、前後方向に沿って伸張状態で固定された弾性部材が設けられていてもよい。この弾性部材は、糸状、紐状、帯状等に形成された、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム等から製造されたものであってよい。
また、ギャザーシート24は、前方及び後方の端部並びに側縁部において、直下に配置されているトップシート22、包装シート26、又はバックシート21と貼り合されていてよい。そして、上述のように、ギャザーシート24の幅方向D2の内側の端部には弾性部材が設けられていれば、ギャザーシート24の貼り合されていない部分(すなわち、幅方向D2の内側の領域であって、その両端部を除く領域)は、吸収性物品1の表側(トップシート側)に起立するギャザーとなることができる。ギャザーによって、側方への体液の漏れ等を防ぐことができる。なお、ギャザーシート24、24と、その下の構成要素とは、例えば、ホットメルト接着剤、ヒートシール、超音波シールによって貼り合せることができる。
吸収体30は、前後方向D1で見て中央付近に、股間対応領域C2を有しており、この股間対応領域C2は、上述の吸収性物品1の股間対応領域C1に対応している。そして、股間対応領域C2の前方に隣接する、吸収体30の前端までの領域が前方領域F2であり、股間対応領域C2の後方に隣接する、吸収体30の後端までの領域が後方領域B2である。
吸収体30の平面視形状は、吸収性物品1全体の平面視形状と同様に、括れ部分を有しているが、吸収性物品1の平面視形状にかかわらず、前後方向D1にわたって幅が一定である括れ部分のない矩形状等とすることもできる。なお、図示の形態のように吸収体30が括れ部分を有する場合、括れ部分の最小幅は、括れ部分の前後における幅方向D2の長さの50~75%程度とすることができる。また、吸収体30が括れ部分を有する場合、括れ部分の少なくとも一部を含む股間対応領域C2は、図示のように、吸収体30の前半分の領域に配置されていてもよいし、吸収性物品全体の構成によっては、吸収体30の前後方向D1の中央に配置されていてもよい。
吸収体30に含まれる材料としては、パルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、不織布等であってよく、必要に応じて粒子状等の高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。また、高吸収性ポリマー繊維や、高吸収性ポリマー粒子以外のポリマー粒子や無機粒子等を含んでいてもよい。
吸収体30における繊維目付及び高吸収性ポリマーの目付は適宜定めることができる。後述の肉厚部を除いて、吸収体30の繊維目付は平均で100~700g/m2程度とするのが好ましく、また吸収性ポリマー目付は平均で50~550g/m2程度とするのが好ましい。
吸収体30は、その全体が又は部分的に、不織布やクレープ紙等の包装シート26(図1)で包まれていることが好ましい。包装シート26の使用は、吸収体30がポリマー粒子等の粒子状材料を含む場合には、材料のこぼれを含むことができ、特に好ましい。包装シートは、無着色(すなわち、白色)であってもよいし、着色されていてもよい。色は、排出された体液の色を目立たなくすることができる色、例えば体液の色に近い色、又は体液の色の補色若しくはそれに近い色等にすることができる。吸収体30は複数層からなっている場合、各吸収体層が包装シートによって包まれていてもよいし、包装シートが層間に挟まれていてもよい。
また、図1に示すように、吸収体30には、前後方向D1に延びるスリット50、50が設けられていてよい。スリット50、50があることによって、排出された体液を速やかに後方に誘導することができるので、体液排出口に対応する部分周辺での横漏れを防止することができる。また、図示の形態では、スリット50、50は、吸収体30を厚み方向に貫通しているが、スリット50、50に代えて、トップシート22側からバックシート21側へ窪む溝を形成することもできる。
なお、図示の形態では、2つのスリットが形成されているが、吸収性物品1の使用目的に応じて、スリットは1つであってもよく、また3つ以上であってもよい。
次に、上述した吸収性物品における吸収体の構成についてさらに詳説する。
図2に、本発明の第1実施形態による吸収性物品1(図1)の吸収体30を示す。図2(a)には、吸収体30の上面図を、図2(b)には、図2(a)のX1-X1線断面図を、図2(c)及び図2(d)にはそれぞれ、図2(a)のY1-Y1線断面図及びY1'-Y1'線断面図を示す。
図2(a)~(d)に示すように、吸収体30は、後方領域B2に、幅方向D2に延在する帯状の肉厚部35を有している。肉厚部35は、吸収体30の隣接する他の部分の厚みより大きい厚みを有する部分又は領域を指す。
特におむつ等の吸収性物品は、装着者が仰向けに寝た状態で使用されることが多いため、排出された体液は、吸収性物品1の後方(背側)に移行しやすい。そのため、一度に大量の体液が排出された場合には、吸収性物品1の背中側から体液が漏れること(いわゆる背漏れ)がある。なお、本明細書において、背漏れとは、後方領域から外部に向かう体液の漏れを指し、後端から後方向への体液の漏れのみならず、後方領域から斜後方向への漏れ及び側方向への漏れも含む。
これに対し、本形態では肉厚部35を設けたことで、後方に移行してきた体液(尿、液状便、経血等)を堰き止め、肉厚部30の後方及び/又は斜め後方に漏らさないようにすることができる。より具体的には、吸収体のトップシート側の面を伝って後方に移行してきた体液の流れを止めることができる。また、吸収体30内に浸透して後方に拡散してきた体液も、厚みの大きい部分、すなわち吸収量の大きい部分に達するので、後方及び/又は斜め後方への体液の拡散速度を低下させることができる。
吸収性物品1を装着して仰向けに寝た場合、装着者の体重は、後方領域B1における幅方向D2端部よりも、幅方向D2中央にかかりやすい。そのため、後方領域B1(B2)に形成された帯状の肉厚部35の上に装着者の身体が載った場合、肉厚部35から受ける反力は、幅方向D2の端部よりも中央の部分において大きいため、その中央の部分から特に違和感を受けやすい。
これに対し、本形態によれば、肉厚部35が、図3(b)に示すように、幅方向D2中央から側部に向かって厚みが大きくなるように形成されている。図示の形態では、肉厚部35の厚みは、幅方向D2中央から側部に向かって漸次大きくなっている。別の言い方をすると、肉厚部35は、幅方向D2中央で厚み方向に窪んでいる。
このように、肉厚部35が、幅方向D2中央で厚みが比較的小さく且つ幅方向D2端部で厚みが比較的大きくなっている形状を有することで、肉厚部35があっても、幅方向D2の中央の部分から受ける違和感を低減することができる。これにより、上述の体液を堰き止めるという肉厚部35の効果を維持しつつ、肉厚部35から受け得る違和感を低減することができる。
さらに、肉厚部35の厚みは漸次変化しているので、装着者の身体(背中)の丸みに沿うことができ、上記の違和感を一層低減させることができる。また、吸収体30の製造において積繊をする際、肉厚部35に対応させる型は、表面が階段状等ではなく滑らかなものとすることができるので、繊維が型の角張った部分に引っ掛かる可能性も低減でき、信頼性の高い吸収体の製造が可能となる。
肉厚部35が設けられている後方領域B2は、図2(a)に示すように、中央領域C2に隣接する後方第1領域B2aと、後方第1領域B2aのさらに後方に位置する後方第2領域B2bとを有していてよい。後方第1領域B2aは、装着者の臀部下部におおよそ対応する領域であり、第2後方領域B2bは、臀部上部におおよそ対応する領域である。ここで、臀部下部とは、臀部の、股間から続く臀裂が浅くなり始める、又は終了する位置までを指し、臀部上部とは、臀裂が浅くなり始める、又は終了する位置から上部(仙骨の下端から上に対応する部分)を指す。肉厚部35は、後方第2領域B2bに設けられ、装着者の臀部上部に密着できるようになっていることが好ましい。
さらに、肉厚部35は、図2(a)に示すように、吸収体30の後端(後方第2領域B2bの後端)に沿って設けられていると好ましい。肉厚部35が後端にあることで、体液を堰き止める作用効果は吸収体30の最も後方で発揮されるので、後端よりも前方の吸収体を有効に活用することができる。
また、肉厚部35が設けられている幅方向D2の範囲は、体液を堰き止めて後方に漏らさないよう構成されていれば特に限定されない。但し、肉厚部35の幅方向D2の長さは、例えば50~400mmであると好ましい。また、図示の形態のように、肉厚部35が、吸収体30の幅方向D2の一方の端部から他方の端部まで延びていると、後方のみならず、斜め後方に向かう体液の漏れを防ぐ効果を向上できるため好ましい。
図2(a)~(d)に示すように、本形態の吸収体30は、上面視で吸収体30と同じ輪郭を有する吸収体主体31と、吸収体主体31の上に配置された肉厚部形成体35aとを有している。そして、肉厚部形成体35aが設けられた部分(領域)が、肉厚部35となっている。換言すれば、本形態における肉厚部35は、幅方向D2中央から側部に向かって厚みが大きくなるように形成されている別体の肉厚部形成体35aを配置することによって得ることができる。
肉厚部35の構成は図示のものに限られず、例えば、吸収体主体31と肉厚部形成体35aとは一体的に形成することもできる。すなわち、図示の吸収体主体31と肉厚部形成体35aとの各部分を含む1つの吸収体を積繊し、加工することによって、吸収体30を製造してもよい。また、吸収体主体の上面視形状が、肉厚部35が占める領域を除いた形状を有するように形成し、一方で、吸収体30の全厚み方向にわたる肉厚部形成体を形成して、両者を面方向に接合させてもよい。
また、図示の形態では、肉厚部形成体35aは吸収体主体31の表面側(トップシート22側)に設けられている。これにより、肉厚部35が、装着者の肌側に突出することになるので、トップシート22上を伝わってきた体液を効果的に堰き止めることができる。
肉厚部35は、幅方向D2中央おいて最小厚みTminを有していると好ましく、図3に示すように、前後方向中心線CLの位置において最小厚みTminを有しているとより好ましい。また、幅方向D2の両端にて最大厚みTmaxを有していると好ましい。
肉厚部35の最大厚みTmaxは15~25mm程度であると好ましく、最小厚みTminは、5~15mm程度であると好ましい。肉厚部35の最小厚みTminと吸収体主体31の厚みとの差は、0~10mmであると好ましく、各値を、上記範囲とすることで、体液を堰き止めるという肉厚部35による作用効果を維持しつつ、肉厚部35が装着者の身体に当った時の違和感を低減することができる。
肉厚部35の最大厚みTmaxの、最小厚みTminに対する比の値(Tmax/Tmin)は、3.0~5.0程度とすることができ、好ましくは3.5~4.5程度とすることができる。上記範囲とすることで、肉厚部35の輪郭を、身体の丸みにより適合した形状とすることができる。
肉厚部35又は肉厚部形成体35aは、吸収体主体31と同じ材料で形成することもできるし、異なる材料で形成することもできる。肉厚部成形体35aと吸収体主体31とを異なる材料で形成する場合、肉厚部形成体35aのポリマー目付を、吸収体主体31のポリマー目付よりも高くすることで、肉厚部35における体液が保持され逆戻りを防止できる。また、体液吸収後も肉厚部35の元の形状を維持することができる。さらに、肉厚部形成体35a(又は肉厚部35全体)においては、ポリマー目付を繊維目付よりも大きくすることができる。これにより、体液の逆戻りの防止、及び体液吸収後の肉厚部35の形状維持という上述の効果を一層向上させることができる。
図3に、本発明の第2実施形態における吸収体230を示す。図3(a)には、吸収体230の上面図を、図3(b)には、図3(a)のX2-X2線断面図を、図3(c)及び図3(d)にはそれぞれ、図3(a)のY2-Y2線断面図及びY2'-Y2'線断面図を示す。
第2実施形態における吸収体230は、別途言及しない限り、第1実施形態における吸収体30と同様の基本構成を有している。例えば、吸収体230は、後方領域B2、より好ましくは後方第2領域B2bに、肉厚部235を備えている(図3(a))。また、肉厚部235は、吸収体主体231と肉厚部形成体235aとを有しており(図3(a)~(d))、幅方向D2中央から側部に向かって漸次厚みが大きくなるように形成されている(図3(b))。
吸収体230は、図3(b)~(d)に示すように、吸収体主体231が2層構造を有する点で、第1実施形態における吸収体30と異なっている。吸収体130は、吸収体230全体と同じ上面視輪郭を有する裏面側吸収体層231Bと、この裏面側吸収体層231B上に配置された表面側吸収体層231A及び肉厚部形成体235aとの積層体となっている。表面側吸収体層231Aは、裏面側吸収体層231Bより長さ及び幅が小さく、前後方向中心線CLを含む位置に配置されている。
本形態では、吸収体230が2層構造になっていることで、吸収体230の表面側及び裏面側での機能を相違させることができる。また、図示のように、表面側及び裏面側において吸収体の平面視形状を異ならせることによって、領域に応じて、吸収体の機能を相違させること又は同じ機能であるがその度合いを相違させることが可能になる。よって、表面側吸収体層231Aと裏面側吸収体層231Bとでは、用いる材料を同じくしてもよいし相違させてもよい。
なお、本形態では、吸収体230は2層構造を有しているが、吸収体230は3層以上とすることもできる。
吸収体230には、股間対応領域C2に、前後方向D1に延びる2つのスリット250が設けられている。このスリット250は、表面側吸収体層231A及び裏面側吸収体層231Bを貫通するものであってもよいし、表面側吸収体層231Aのみを貫通するものであってもよい。
図4に、本発明の第3実施形態における吸収体330を示す。図4(a)には、吸収体330の上面図を、図4(b)には、図4(a)のX3-X3線断面図を、図4(c)及び図4(d)にはそれぞれ、図4(a)のY3-Y3線断面図及びY3'-Y3'線断面図を示す。
第3実施形態における吸収体330は、第1実施形態における吸収体30と基本的な構成は同じである。吸収体330も、後方領域B2、好ましくは後方第2領域B2bに肉厚部335を有しており(図4(a))、肉厚部335は、吸収体主体331と、肉厚部形成体335aとを有している(図4(a)~(d))。
吸収体330は、図4(b)に示すように、肉厚部335は、幅方向D2中央から側部に向かって段階的に厚みが大きくなるように形成されている点で、第1実施形態における吸収体30と異なる。
肉厚部335の厚みが段階的に変化していることで、吸収性物品の、肉厚部335が形成された領域を装着者の肌に当てた際、吸収性物品が幅方向D2に動きにくくなり、安定した装着状態を維持することができる。
図5に、本発明の第4実施形態における吸収体330を示す。図5(a)には、吸収体430の上面図を、図5(b)及び(c)には、図5(a)のX4-X4線断面図及びX4-X4'線断面図をそれぞれ示す。また、図5(d)及び図4(e)には、図5(a)のY4-Y4線断面図及びY4'-Y4'線断面図をそれぞれ示す。
第4実施形態における吸収体430も、第1実施形態における吸収体30と同様、後方領域B2、好ましくは後方第2領域B2bに肉厚部435を有しており(図5(a))、肉厚部435は、吸収体主体431と、肉厚部形成体435aとを有している(図5(a)~(e))。
吸収体430における肉厚部435は、幅方向D2のみならず、前後方向D1に厚みが異なっている点で、第1実施形態における吸収体30と異なる。肉厚部435は、図5(d)及び(e)に示すように、後方にむかって漸次厚みが大きくなっている。肉厚部435は、具体的には、前後方向D1に沿って切った断面で見て、表面が傾斜した断面形状、例えば三角形状を有している。そして、図5(b)、(d)及び(e)に示すように、肉厚部の最小厚みは、吸収体主体431の厚みと同じとなり得る。
本形態のように、肉厚部435が後方に向かう程厚みが大きくなっていることで、装着時に肉厚部435が肌に当った場合の違和感をさらに低減することができる。
この場合、前後方向中心線CLの位置で切った断面(図5(d))における、表面の傾斜の角度θは、20~45°であると好ましい。θを上記範囲とすることで、体液を堰き止める肉厚部435の本来の作用効果を維持しつつ、装着時の違和感も低減することができる。
なお、肉厚部435の厚みは、後方に漸次大きくなるのではなく、後方に向かって段階的に大きくなっていてもよい。
また、吸収体430においては、肉厚部435の前後方向D1の長さは、幅方向D2中央と幅方向D2端部とで異なっている。例えば、図示の形態では、肉厚部435の前方の端部の輪郭が湾曲している。この輪郭は、図5(a)に示すように、後方に凸に湾曲する線に沿っていると好ましい。肉厚部435が、幅方向D2の両端でより長い長さを有することで、後斜め方向へ向かう体液の漏れも効果的に防止することができる。
なお、第4実施形態における吸収体430の後端付近においては、その幅はほぼ一定となっている(図5(a))。しかし、第1実施形態から第3実施形態(図1~4)で示したように、吸収体30の後端での幅は、後方領域B2の幅の平均より小さくなっていもよい。すなわち、吸収体30は、その後端の両角隅が切り欠かれている形状を有していてもよい。吸収体の角隅は、他の部分よりも体液が浸透するまで時間を要する場合もあるので、角隅部分を切り欠くことにより、吸収体の材料の量を少なくし、製造コストを節約することができる。
図6に、上述の第4実施形態における吸収体430の変形例を示す。図6は、図5(d)又は(e)に対応する、吸収体430を前後方向D1に沿って切った断面図である。本例の肉厚部435'は、図5に示す形態と同様、後方に向かう程、厚みが大きくなるように形成されているが、前後方向D1で切った断面で見て、肉厚部435'の表面の輪郭が丸みを帯びている(曲線になっている)点で、図5の形態(図5(d)及び(e))とは異なる。
図6に示す肉厚部435'は段部になっているともいえる。しかし、その表面が曲面になっていることで、後方に移行してきた体液を堰き止める効果を維持する一方、装着時に肉厚部430の角が当たることによる違和感を防止することができる。
図7に、第5実施形態における吸収体530を示す。図7は、吸収体530の肉厚部535を幅方向D2に沿って切った断面を前方から後方に向かって見た図であり、例えば図2(b)に対応する。図7では、吸収体530のうち、吸収体主体の図示を省略し、肉厚部形成体535aのみを示す。
第5実施形態における吸収体530の基本的な構成は、第1実施形態における吸収体30(図2)と同様であり、肉厚部形成体535aは、幅方向両端において最も厚みが大きい形状を有する。本実施形態では、肉厚部535における剛性が、幅方向D2で異なっている点で、吸収体30と異なる。
図7に示すように、肉厚部形成体535aは、幅方向D2の中央に、すなわち厚みが最も小さい領域の付近に、高剛性部536を有している。なお、以下、幅方向D2中央に形成された高剛性部536を、中央高剛性部536Cとする。
このように、幅方向D2中央に中央高剛性部536Cを有していることで、肉厚部535の幅方向D2中央の部分が潰れにくくなる。装着者が仰向け状態で寝た状態が長時間続き、肉厚部に継続的に力がかかった場合等には、幅方向D2中央に特に力が掛りやすいが、その場合でも、本形態により、幅方向D2中央付近における肉厚部535の形状を維持することができる。これにより、肉厚部536が体液を堰き止める上述の効果を持続させることができる。
高剛性部536は、例えば、肉厚部形成体535aにおいて高密度部分を形成することによって形成することができるし、高剛性部536は、肉厚部形成体535aにおいて吸収体の材料を変更することによって形成することもできる。但し、高剛性部536を高密度部分とし、さらにこの高密度部分を、吸収体を圧縮することによって形成すると好ましい。これにより、同じ材料からなる均一な積繊体を用いて吸収体を形成することができるので、製造上の手間及びコストを低減することができる。
図8に、上記第5実施形態における吸収体530(図7)の変形例を示す。図8に示す例では、中央高剛性部536Cに加えて、幅方向D2の両端部にそれぞれ端縁高剛性部536E、356Eがさらに形成されている。端縁高剛性部536Eが形成されていることで、肉厚部535の幅方向D2端部の潰れにくくなっている。そのため、例えば装着者が横向きに寝た状態が長時間続いた場合等でも、幅方向D2端部においても肉厚部535の厚みを維持することができ、肉厚部535が体液を堰き止める効果を持続させることができる。この端縁高剛性部536Eは、幅方向D2のどちらか一方の端部に形成することもできる。
なお、図8に示す例では、端縁高剛性部536Eとなっている部分は厚みがほぼ均一な部分を有しているが、端縁高剛性部536Eが幅方向D2両端に設けられていても、図7に示した肉厚部形成部536aと同様の断面形状を有していてもよい。
図7及び図8に示す例では、高剛性部536(中央高剛性部C及び端縁高剛性部E)内における剛性は均一であってよいが、高剛性部536内で、吸収体の厚み方向又は面方向に剛性が変化していてもよい。肉厚部形成体535a内における吸収体の剛性は、厚み方向又は面方向に漸次又は段階的に変化していてもよい。
以上のように第5実施形態として示した肉厚部が高剛性部を含む構成(図7及び図8)は、上述の第1実施形態から第4実施形態のいずれにおいても適用することができる。
次に、第5実施形態における吸収体530の製造方法について説明する。まず図9を参照して、中央高剛性部Cが形成されている吸収体530(図7)の製造方法について説明する。図9(a)~(c)は、図7の断面図と同様の断面図である。
図9(a)に示すように、肉厚部形成体535aとなる積繊体535a'を準備する。本例においては、準備する積繊体535a'の厚みは、幅方向D2に均一であってよい。そして、積繊体535a'の面方向に対して直交する方向にプレス型P1を近付け、さらに積繊体535a'を圧縮する(図9(b))。これにより、幅方向D2中央において所定の値以上の剛性又は硬さを有する中央高剛性部536Cが形成された、肉厚部形成体535aを得ることができる(図9(c))。
また、図10を参照して、中央高剛性部C及び端縁高剛性部Eが形成されている吸収体530(図8)の製造方法について説明する。
図10(a)に示すように、肉厚部形成体535aとなる、凹凸を有する積繊体535a'を準備する。本例の積繊体535a'としては、図示のように、幅方向D2の中央及び両端部の厚みが大きくなっているものを用いる。幅方向D2の中央及び/又は両端部の厚みは、その位置で必要な圧縮度合い、ひいては必要な剛性に応じて適宜決定することができる。そして、積繊体535a'の面方向に対して直交する方向にプレス型P2を近付け、積繊体535a'を圧縮する(図10(b))。プレス型P2は、幅方向中央が凸である曲線の輪郭を有しているが、幅方向両端に平坦な部分を有する形状となっている。プレス型P2による圧縮により、幅方向D2中央及び両端部において、所定の値以上の剛性又は硬さを有する中央高剛性部536C及び端縁高剛性部536E、536Eがそれぞれ形成された、肉厚部形成体535aを得ることができる(図10(c))。
なお、上述の例(図9及び図10)では、肉厚部形成体535aのみを圧縮する形態について説明したが、プレス型P1又はP2による圧縮は、吸収体主体となる層を含む積繊体を形成した後、その積繊体全体に対して行ってもよい。