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JP7151083B2 - タイヤ用ゴム組成物 - Google Patents

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JP7151083B2 JP2018002846A JP2018002846A JP7151083B2 JP 7151083 B2 JP7151083 B2 JP 7151083B2 JP 2018002846 A JP2018002846 A JP 2018002846A JP 2018002846 A JP2018002846 A JP 2018002846A JP 7151083 B2 JP7151083 B2 JP 7151083B2
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Description

本発明は、トレッド用ゴム組成物および当該ゴム組成物により構成されたトレッドを有するタイヤに関する。
タイヤ用ゴム組成物には、粉末硫黄が汎用されている。しかし、粉末硫黄は、ポリマーへの溶解時において、S8構造で、融点113℃、二硫化炭素に近い(SP値:10)極性を有しているので、タイヤ用ゴム組成物に汎用されている、低極性(SP値:8~9)の天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム等のジエン系ゴム中に均一に分散させることが難しい。そのため、ゴム成分中に硫黄を均一分散させ、優れた破断時伸びを有する配合ゴムを提供することが望まれている。
一方、タイヤに求められる重要な性能として、ウェットグリップ性能や耐摩耗性能がある。また近年、省資源の観点から、タイヤの転がり抵抗改善による低燃費性能の向上が求められている。
耐摩耗性能の改善にはゴム組成物にカーボンブラックを添加する手法が知られているが、低燃費性能とウェットグリップ性能とのバランスが悪化する傾向がある。また、耐摩耗性能に有利なブタジエンゴムはヒステリシスロスが小さく低燃費性能は良好であるが、ウェットグリップ性能には不利となる。このように、タイヤの諸物性の向上を試みた場合、耐摩耗性能とウェットグリップ性能とは二律背反の関係にあり、これらを両立することは困難であった。
特許文献1には、可塑剤としてアルファ-メチルスチレンポリマー樹脂を配合することで、グリップ性能および転がり抵抗を改善したゴム組成物が開示されているが、耐摩耗性能については考慮されておらず、さらに改善の余地がある。
特表2012-512290号公報
本発明は、ウェットグリップ性能を維持し、かつ耐摩耗性および破断時伸びがバランスよく優れたトレッド用ゴム組成物、および当該ゴム組成物により構成されたトレッドを有するタイヤを提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意検討の結果、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、シリカおよびロジン系樹脂を所定の比率で配合することで、ウェットグリップ性、耐摩耗性および破断時伸びに優れるゴム組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
〔1〕35~65質量%のスチレンブタジエンゴムおよび35~65質量%のブタジエンゴムを含むゴム成分100質量部に対し、シリカを含む無機フィラーを80~150質量部、およびロジン系樹脂を0.3~40質量部含有するトレッド用ゴム組成物、
〔2〕ロジン系樹脂の酸価が5~70である、〔1〕に記載のゴム組成物、
〔3〕ロジン系樹脂の軟化点が55℃~130℃である、〔1〕または〔2〕に記載のゴム組成物、
〔4〕ロジン系樹脂がロジンエステル樹脂である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のゴム組成物、
〔5〕さらに20℃以上のガラス転移温度を有するロジン系樹脂以外の粘着性樹脂を含有し、粘着性樹脂の合計量が10~60質量部である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のゴム組成物、
〔6〕ロジン系樹脂以外の粘着性樹脂としてテルペン系樹脂を含む、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のゴム組成物、
〔7〕無機フィラー中のシリカの含有量が50質量%以上である、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載のゴム組成物、
〔8〕ブタジエンゴム中に変性ローシスブタジエンゴムを含む、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載のゴム組成物、
〔9〕無機フィラー中に水酸化アルミニウムをさらに含む、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載のゴム組成物、
〔10〕〔1〕~〔9〕のいずれかに記載のトレッド用ゴム組成物により構成されたトレッドを有するタイヤ、に関する。
本発明のトレッド用ゴム組成物、ならびに当該ゴム組成物により構成されたトレッドを有するタイヤは、ウェットグリップ性能、耐摩耗性能および破断時伸びがバランスよく優れる。
本発明の一実施形態は、5~65質量%のスチレンブタジエンゴムおよび35~65質量%のブタジエンゴムを含むゴム成分100質量部に対し、シリカを含む無機フィラーを80~150質量部、およびロジン系樹脂を0.3~40質量部含有するトレッド用ゴム組成物である。
一般にゴム組成物中のBRを増量すると、耐摩耗性が向上する反面、破断時伸びが低下する。これは、モルフォロジーの観点では、BRは自己凝集し島相を作り易いが、BRを高配合にすると海相に転換し無理にBRが引き伸ばされるため、またSP値の観点では、BRはSBRよりSP値が低く、硫黄がBR中に分散しにくいためと考えられる。
本実施形態に係るゴム組成物は、SBRが海相、BRが島相となるように、それぞれの比率が決定されている。そして、ゴム成分に所定量のロジン系樹脂を配合することで、ロジンのカルボキシル基が硫黄を吸着、分散を促進してゴム成分中に分配し、またロジンの芳香族部位が、粉末硫黄のポリマーへの分散過程で生じるラジカルを吸収し、硫黄に適切なせん断トルクを発生させ、分散を促すことでゴム成分の架橋を促進し、結果として破断時伸びが改善する。
<ゴム成分>
本実施態様において使用されるゴム成分としては、SBRおよびBRが好適に用いられる。
(SBR)
SBRとしては特に限定されず、未変性の溶液重合SBR(S-SBR)、未変性の乳化重合SBR(E-SBR)、およびこれらの変性SBR(変性S-SBR、変性E-SBR)等が挙げられる。変性SBRとしては、末端および/または主鎖が変性された変性SBR、スズ、ケイ素化合物等でカップリングされた変性SBR(縮合物、分岐構造を有するもの等)等が挙げられる。
SBRは、前記例示のものからいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ゴム成分中のSBRの含有量は、35質量%以上であり、40質量%以上が好ましく、45質量%以上がより好ましい。SBRの含有量が35質量%未満の場合は、ウェットグリップ性能が低下する傾向がある。また、SBRの含有量は、65質量%以下であり、63質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。SBRの含有量が65質量%を超える場合は、耐摩耗性能および破断伸び性能が低下する傾向がある。
SBRのスチレン含量は、走行中のグリップ性能の観点から30質量%以上が好ましく、35質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。また、当該スチレン含量は、初期グリップ性能の観点から55質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、45質量%以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、SBRのスチレン含量とはSBRにおけるスチレン部の含量のことを示し、1H-NMR測定により算出される。
SBRのビニル含量は、走行中のグリップ性能の観点から30%以上が好ましく、35%以上がより好ましく、40%以上がさらに好ましい。また、当該ビニル含量は、初期グリップ性能の観点から55%以下が好ましく、50%以下がより好ましく、45%以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、SBRのビニル含量とはSBRにおけるブタジエン部の1,2-結合単位量のことを示し、赤外吸収スペクトル分析法によって測定される。
(BR)
BRとしては、ハイシス1,4-ポリブタジエンゴム(ハイシスBR)、1,2-シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含むブタジエンゴム(SPB含有BR)、変性ブタジエンゴム(変性BR)等の各種BRを用いることができる。
ハイシスBRとは、シス1,4結合含有率が90質量%以上のブタジエンゴムである。このようなハイシスBRとして、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150B、BR150L、JSR(株)製のBR730等が挙げられる。ハイシスBRを含有することで低温特性および耐摩耗性能を向上させることができる。
SPB含有BRは、1,2-シンジオタクチックポリブタジエン結晶が、単にBR中に結晶を分散させたものではなく、BRと化学結合したうえで分散しているものが挙げられる。このようなSPB含有BRとしては、宇部興産(株)製のVCR-303、VCR-412、VCR-617等が挙げられる。
変性BRとしては、リチウム開始剤により1,3-ブタジエンの重合を行ったのち、スズ化合物を添加することにより得られ、さらに変性BR分子の末端がスズ-炭素結合で結合されているもの(スズ変性BR)や、ブタジエンゴムの活性末端に縮合アルコキシシラン化合物を有するブタジエンゴム(シリカ用変性BR)等が挙げられる。このような変性BRとしては、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1250H(スズ変性)、住友化学工業(株)製のS変性ポリマー(シリカ用変性)等が挙げられる。
変性BRとしては、シス含量50質量%以下の変性BR(以下、変性ローシスBRともいう)が好適に用いられる。変性ローシスBRを配合することで、シリカ分散性を高め、ウェットグリップ性能と低燃費性能を改善することができる。
変性ローシスBRとしては、窒素、酸素およびケイ素からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基を有する化合物により変性された低シス含量のBRなどが挙げられる。例えば、BRの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性ローシスBRや、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性ローシスBRや、主鎖および末端に上記官能基を有する主鎖末端変性ローシスBR(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性ローシスBR)等が挙げられるが、末端変性ローシスBRが好ましい。
上記官能基としては、例えばアミノ基、アミド基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等があげられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、低燃費性の向上効果が高いという理由から、1,2,3級アミノ基(特に、グリシジルアミノ基)、エポキシ基、水酸基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)が好ましい。
末端変性ローシスBRとしては、下記式(I)で表される化合物により変性された低シス含量の変性ブタジエンゴム(S変性ローシスBR)が好ましい。
Figure 0007151083000001
(式(I)中、R1、R2およびR3は、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(-COOH)、メルカプト基(-SH)またはこれらの誘導体を表す。R4およびR5は、同一若しくは異なって、水素原子またはアルキル基を表す。R4およびR5は結合して窒素原子と共に環構造を形成してもよい。nは整数を表す。)
上記S変性ローシスBRとしては、特開2010-111753号公報などに記載されているものが挙げられる。
式(I)において、優れた低燃費性、耐久性が得られるという点から、R1、R2およびR3としてはアルコキシ基が好適である(好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~4のアルコキシ基)。R4およびR5としてはアルキル基(好ましくは炭素数1~3のアルキル基)が好適である。nは、好ましくは1~5、より好ましくは2~4、更に好ましくは3である。また、R4およびR5が結合して窒素原子と共に環構造を形成する場合、4~8員環であることが好ましい。なお、アルコキシ基には、シクロアルコキシ基(シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ベンジルオキシ基等)も含まれる。好ましい化合物を使用することにより、本発明の効果が良好に得られる。
式(I)で表される化合物の具体例としては、2-ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。なかでも、前述の性能を良好に改善できる点から、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
式(I)で表される化合物(変性剤)によるブタジエンゴムの変性方法としては、特公平6-53768号公報、特公平6-57767号公報などに記載されている方法など、従来公知の手法を使用できる。例えば、ブタジエンゴムと該化合物とを接触させることで変性でき、具体的には、アニオン重合によるブタジエンゴムの調製後、該ゴム溶液中に該化合物を所定量添加し、ブタジエンゴムの重合末端(活性末端)と該化合物とを反応させる方法などが挙げられる。
末端変性ローシスBRとしては、また、分子中にグリシジルアミノ基を含む低分子化合物により変性された低シス含量の変性ブタジエンゴムが好ましい。例えば、下記式で示される低分子化合物で変性された低シス含量の変性ブタジエンゴムを好適に使用できる。
Figure 0007151083000002
(式中、R11およびR12は、同一または異なって、炭素数1~10の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、エーテル、および3級アミンからなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。R13およびR14は、同一若しくは異なって、水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、エーテル、および3級アミンからなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。R15は、炭素数1~20の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、エーテル、3級アミン、エポキシ、カルボニル、およびハロゲンからなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。mは1~6の整数を表す。)
11およびR12は、炭素数1~10のアルキレン基(好ましくは炭素数1~3)が好ましい。R13およびR14は、水素原子が好ましい。R15は、炭素数3~20の炭化水素基(好ましくは炭素数6~10、より好ましくは炭素数8)が挙げられ、下記式などで表されるシクロアルキル基、シクロアルキレン基が好ましく、シクロアルキレン基がより好ましい。
Figure 0007151083000003
また、mは2~3であることが好ましい。上記式で表される化合物としては、例えば、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル-p-フェニレンジアミン、ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等が好適に用いられる。
末端変性ローシスBRとしては、分子中にグリシジルアミノ基を含む低分子化合物と、この低分子化合物の2量体以上のオリゴマーとの混合物により変性された低シス含量の変性ブタジエンゴム(A変性ローシスBR)がより好ましい。上記A変性ローシスBRとしては、特開2009-275178号公報などに記載されているものが挙げられる。
BRは、前記例示のものからいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ゴム成分中のBRの含有量は、35質量%以上であり、37質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましい。BRの含有量が35質量%未満の場合は、耐摩耗性能が低下する傾向がある。また、BRの含有量は、65質量%以下であり、60質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましい。BRの含有量が65質量%を超える場合は、破断時伸びおよびウェットグリップ性能が低下する傾向がある。
ゴム成分中の変性ローシスBRの含有量は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。20質量%を超えると、耐摩耗性能が低下する傾向がある。
ゴム成分中のSBRとBRとの合計含有量は、ウェットグリップ性能と転がり抵抗、耐摩耗性能のバランスをとる観点から70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。
(その他のゴム成分)
本実施形態においてSBRおよびBR以外に使用されるゴム成分としては、ゴム工業で一般的に用いられる架橋可能なゴム成分を用いることができ、例えば、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム、ポリノルボルネンゴム、シリコーンゴム、塩化ポリエチレンゴム、フッ素ゴム(FKM)、アクリルゴム(ACM)、ヒドリンゴム等が挙げられる。これらの架橋可能なゴム成分は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なかでもNRは、窒素およびリンを含む不純物が硫黄との相性を改善する効果を有する。また、NRは、練り工程の初期に分子が切断され易く、重量平均分子量100万以上が20万程度に低下する。かかるNR特有の性質がBRとは異なり、ゴム成分中に硫黄を均一分散させ、ひいてはゴム組成物の破断時伸びを改善することができる。
NRはタイヤ工業において汎用されているものを使用でき、例えば、RSS♯3、TSR20党が挙げられる。
ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。30質量%を超えると、耐摩耗性能が低下する傾向がある。
ゴム成分100質量%中のSBRおよびBR以外の含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。30質量%を超えると、耐摩耗性能が低下する傾向がある。
<樹脂成分>
本実施形態において使用される樹脂成分としては、ロジン系樹脂が好適に用いられる。
(ロジン系樹脂)
ロジンは、松脂を加工することにより得られる、アビエチン酸、レボピマール酸、ネオアビエチン酸、パルストリン酸、イソピマール酸、サンダラコピマール酸、ピマール酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、デキストロピマール酸等の樹脂酸を主成分とするガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の天然樹脂である。
本実施形態におけるロジン系樹脂には、ロジンの他、ロジンのエステル誘導体(ロジンエステル樹脂)や変性体も含む。ロジンエステル樹脂としては、例えば、グリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル、ジペンタエリスリトールエステル、メチルエステル、エチレングリコールエステル、ジエチレングリコールエステルおよびトリエチレングリコールエステル等が挙げられる。変性体としては、例えば、ロジン変性フェノール樹脂、マレイン酸変性ロジン樹脂等が挙げられる。さらに、本実施態様におけるロジン系樹脂は、前記ロジン系樹脂を水素添加することにより得られる水素添加ロジン系樹脂であってもよい。好ましくはロジンエステル樹脂が挙げられる。
ロジンエステル樹脂は、例えば、不活性ガスの雰囲気下で、ロジンとグリセリン、ペンタエリスリトール等のポリオールとを200~300℃に加熱し、生成した水を系外に除去することにより製造される。
ロジン系樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.3質量部以上、好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上であり、また、好ましくは40質量部以下、より好ましくは35質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下である。上記範囲内であれば、ゴム成分中に硫黄を良好に分散させ、ウェットグリップ性能、耐摩耗性能および破断時伸びをバランス良く改善できる。
ロジン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは200~10000、より好ましくは200~3000、さらに好ましくは200~1000である。上記範囲内のMwを持つロジン系樹脂を使用することでSBRおよびBRとの相溶性が向上し、ウェットグリップ性能、耐摩耗性能および破断時伸びを改善できる。なお、ロジンエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、約1000である。
ロジン系樹脂の酸価(mgKOH/g)は、5以上が好ましく、6以上がより好ましく、7以上がさらに好ましい。また、ロジン系樹脂の酸価(mgKOH/g)は、70以下が好ましく、50以下がより好ましく、40以下がさらに好ましい。上記範囲内であれば、ゴム成分中に硫黄を良好に分散させ、ウェットグリップ性能、耐摩耗性能および破断伸び性能をバランス良く改善できる。なお、本実施形態において、酸価とは、樹脂1g中に含まれる酸を中和するのに要する水酸化カリウムの量をミリグラムで表したものであり、電位差滴定法(JIS K 0070:1992)により測定される値である。
ロジン系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは20℃以上、より好ましくは25℃以上、さらに好ましくは30℃以上である。20℃未満の場合、ウェットグリップ性能が悪化する傾向がある。また、ロジン系樹脂のTgは、好ましくは70℃以下、より好ましくは65℃以下、さらに好ましくは60℃以下である。70℃を超えると、樹脂分散が悪化し、低温時の粘弾性特性が悪化し、却ってウェットグリップ性能が悪化する傾向がある。なお、本明細書において、Tgは、JIS K 7121に従い、(株)島津製作所製の自動示差走査熱量計(DSC-60A)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で測定した値である。
ロジン系樹脂の軟化点は、好ましくは130℃以下、より好ましくは125℃以下、さらに好ましくは120℃以下である。130℃を超えると、混練の際に分散しにくくなる傾向がある。ロジン系樹脂の軟化点は、好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは65℃以上である。55℃未満であると、湿度によりブロッキング(固着)する傾向があり、作業効率が悪くなる傾向がある。なお、本発明において、軟化点は、フローテスター((株)島津製作所製、CFT-500D)を用い、試料として1gの樹脂を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出し、温度に対するフローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度とした。
ロジン系樹脂のSP値は、好ましくは9~11である。SP値とは、化合物の構造に基づいてHoy法によって算出された溶解度パラメーター(Solubility Parameter)を意味し、二つの化合物のSP値が離れているほど相溶性が低いことを示す。上記範囲内のSP値を持つ樹脂を使用することでSBRおよびBRとの相溶性が向上し、耐摩耗性能および破断時伸びを改善できる。
ロジン系樹脂は、前記例示のものからいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本実施形態では、ロジン系樹脂は市販品が用いられてもよい。このような市販品は、ハリマ化成(株)、荒川化学工業(株)等によって製造販売されるものが例示される。
(ロジン系樹脂以外の樹脂)
本実施形態に係るゴム組成物は、樹脂成分としてロジン系樹脂以外の粘着性樹脂を1種以上併用することができる。ロジン系樹脂以外の粘着性樹脂としては、タイヤ用ゴム組成物において汎用されている石油系樹脂等を用いることができ、具体的には、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、フェノール系樹脂、クマロンインデン樹脂、テルペン系樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂(DCPD樹脂)等が挙げられる。なかでも、テルペンスチレン樹脂、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等のテルペン系樹脂が好ましく、テルペンスチレン樹脂がより好ましい。また、テルペン系樹脂とクマロンインデン樹脂、アルファ-メチルスチレン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂等の他の粘着性樹脂との併用も好ましい態様として挙げられる。
テルペン系樹脂は、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、フェノール系樹脂、クマロンインデン樹脂、ロジン系樹脂等の他の粘着性樹脂よりもSP値が低く、その値がSBR(SP値:8.9)とBR(SP値:8.2)の間にあり、ゴム成分との相溶性の観点から好ましい。なかでもテルペンスチレン樹脂は、SBRとBRの両方に対して特に相溶性がよく、ゴム成分中に硫黄が分散しやすくなる。
ポリテルペン樹脂は、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、ジペンテンなどのテルペン化合物から選ばれる少なくとも1種を原料とする樹脂である。テルペンフェノール樹脂は、前記テルペン化合物およびフェノール系化合物を原料とする樹脂である。テルペンスチレン樹脂は、前記テルペン化合物およびスチレンを原料とする樹脂である。ポリテルペン樹脂およびテルペンスチレン樹脂は、水素添加処理を行った樹脂(水添ポリテルペン樹脂、水添テルペンスチレン樹脂)であってもよい。テルペン系樹脂への水素添加処理は、公知の方法で行うことができ、また市販の水添樹脂を使用することもできる。
テルペン系樹脂は、前記例示のものからいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本実施形態では、テルペン系樹脂は市販品が用いられてもよい。このような市販品は、ヤスハラケミカル(株)等によって製造販売されるものが例示される。
ロジン系樹脂以外の粘着性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは20℃以上、より好ましくは25℃以上、さらに好ましくは30℃以上である。20℃未満の場合、ウェットグリップ性能が悪化する傾向がある。また、ロジン系樹脂のTgは、好ましくは50℃以下、より好ましくは45℃以下、さらに好ましくは40℃以下である。50℃を超えると、耐摩耗性能および低温時のウェットグリップ性能が悪化する傾向がある。
ロジン系樹脂以外の粘着性樹脂の軟化点は、ハンドリングの容易性などの観点から、75℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、90℃以上がさらに好ましい。また、加工性、ゴム成分とフィラーとの分散性向上という観点から、150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましく、130℃以下がさらに好ましい。
ロジン系樹脂以外の粘着性樹脂のゴム成分100質量部に対する含有量は、好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下である。40質量部を超えると、ウェットグリップ性能および耐摩耗性能が悪化する傾向がある。
ロジン系樹脂とロジン系樹脂以外の粘着性樹脂の合計量は、ゴム成分100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、15質量部以上がより好ましく、20質量部以上がさらに好ましい。また該合計量は、60質量部以下が好ましく、55質量部以下がより好ましく、50質量部以下がさらに好ましい。上記範囲内であれば、ゴム成分中に硫黄を良好に分散させ、ウェットグリップ性能、耐摩耗性能および破断時伸びをバランス良く改善できる。
<無機フィラー>
本実施形態において使用される無機フィラーは、シリカを必須成分として含むことを特徴とする。また、シリカの他にカーボンブラックと併用されることが好ましい。
(シリカ)
シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式シリカ(無水ケイ酸)、湿式シリカ(含水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式シリカが好ましい。
シリカのゴム成分100質量部に対する含有量は、ウェットグリップ性能の観点から、50質量部以上が好ましく、55質量部以上がより好ましく、60質量部以上がさらに好ましい。また、シリカの分散性の観点や加工性の観点からは、140質量部以下が好ましく、130質量部以下がより好ましく、125質量部以下がさらに好ましい。
シリカのBET比表面積(N2SA)は、耐摩耗性能および破断時伸びの観点から、70~300m2/gが好ましく、80~280m2/gがより好ましく、90~260m2/gがさらに好ましい。なお、本明細書におけるシリカのBET比表面積は、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
(カーボンブラック)
カーボンブラックとしては、ゴム用として一般的なものを適宜利用することができる。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイト等が挙げられ、具体的にはN110,N115,N120,N125,N134,N135,N219,N220,N231,N234,N293,N299,N326,N330,N339,N343,N347,N351,N356,N358,N375,N539,N550,N582,N630,N642,N650,N660,N683,N754,N762,N765,N772,N774,N787,N907,N908,N990,N991等を好適に用いることができ、これ以外にも自社合成品等も好適に用いることができる。これらのカーボンブラックは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
カーボンブラックのBET比表面積(N2SA)は、補強性および耐摩耗性能の観点から、70m2/g以上が好ましく、90m2/g以上がより好ましい。また、分散性および発熱性の観点からは、300m2/g以下が好ましく、250m2/g以下がより好ましい。なお、本明細書におけるカーボンブラックのBET比表面積は、JIS K 6217-2「ゴム用カーボンブラック基本特性-第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」に準じて測定された値である。
カーボンブラックとして微粒子カーボンブラックを含有することにより、ゴム組成物の耐摩耗性を向上させることができる。
微粒子カーボンブラックの平均粒子径は、18nm以下であり、15nm以下が好ましい。微粒子カーボンブラックの平均粒子径が18nmを超える場合は、耐摩耗性が低下する恐れがある。また、カーボンブラックの平均粒子径は、加工性の観点から、15nm以上が好ましい。なお、本明細書におけるカーボンブラックの平均粒子径は、透過型電子顕微鏡により測定される値である。
平均粒子径が18nm以下のカーボンブラックとしては、三菱化学(株)製のダイアブラック(平均粒子径:19nm)などが挙げられる。
カーボンブラックを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、補強性の観点から、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。また、加工性や発熱性の観点からは、100質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましい。
(その他の無機フィラー)
本実施形態に係るゴム組成物は、ゴム工業で一般的に使用される無機フィラーであってカーボンブラックおよびシリカ以外のものを含有することができる。具体例としては、水酸化アルミニウム、硫酸マグネシウム、タルク、クレー、グラファイト、マイカ等が挙げられる。なかでも、シリカの分散性の観点やウェットグリップ性向上の観点から水酸化アルミニウムが好ましく、さらに成形加工性においても優れるという理由から偏平水酸化アルミニウムが特に好ましい。その他の無機フィラーとしては、1種または2種以上を使用することができ、水酸化アルミニウム、タルク、クレー、グラファイト、マイカとしても、1種または2種以上を使用することができる。
水酸化アルミニウムとしては、通常この分野で使用されるものをいずれも好適に使用することができる。偏平水酸化アルミニウムとしては、工業的にボーキサイトから製造された偏平率5~30であり平均粒子径が1.0μm以下の偏平水酸化アルミニウムが、耐空気透過性、成形粘着性により優れるという理由から好ましい。偏平水酸化アルミニウムをゴム組成物に配合することにより、偏平水酸化アルミニウムが空気の透過経路を遮る結果、良好な耐空気透過性を得ることができる。
偏平水酸化アルミニウムの平均粒子径は、1.0μm以下が好ましく、0.9μm以下がより好ましい。また、平均粒子径の下限は特に限定されない。なお、水酸化アルミニウムの平均粒子径は2次凝集分布測定の累積カーブ得られたd50の値である。
偏平水酸化アルミニウムの偏平率は、5~30が好ましく、10~30がより好ましい。なお、水酸化アルミニウムの偏平率は、SEM(Scanning Electron Microscope)画像から回析した値である。
偏平水酸化アルミニウムのBET比表面積(N2SA)は、再凝集しにくく、単粒子でも破壊核になりにくいという理由から、3~100m2/gが好ましく、10~60m2/gがより好ましい。なお、水酸化アルミニウムのBET比表面積は、JIS Z 8830「ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法」に準じて測定された値である。
また、偏平水酸化アルミニウムのモース硬度は、設備摩耗が少ないという理由から、3以下が好ましい。なお、モース硬度とは、材料の機械的性質の一つで古くから鉱物関係で広く用いられている測定法であり、以下の10種類の鉱物で順次引っ掻いて傷つけばその鉱物よりも硬度が低いとする方法である。硬度の低い方から、1:タルク(滑石)、2:石膏、3:方解石、4:螢石、5:アパタイト(リン灰石)、6:正長石、7:水晶(シリカ)、8:トパーズ(黄玉)、9:コランダム(アルミナ)、10:ダイヤモンドが使用される。
水酸化アルミニウムを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、シリカの分散性の観点やウェットグリップ性向上の観点から、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。また、耐摩耗性の観点からは、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。
本実施形態において、ウェットグリップ性向上のため、ゴム組成物に硫酸マグネシウム等の水溶性フィラーを配合することも好ましい態様として挙げられる。硫酸マグネシウムは耐油性かつ吸水性の水溶性フィラーである。これらの水溶性フィラーが引っかき効果を奏するとともに、ウェット路面との接触時に溶解し、ゴム組成物中に水膜層を排出するための貯蔵容積および通路として機能する空孔が生じることにより、摩擦係数の改良が期待できる。
無機フィラー全体のゴム成分100質量部に対する含有量は、ウェットグリップ性能の観点から、80質量部以上が好ましく、90質量部以上がより好ましく、100質量部以上がさらに好ましい。また、シリカの分散性の観点や加工性の観点からは、150質量部以下が好ましく、140質量部以下がより好ましく、130質量部以下がさらに好ましい。
無機フィラー中におけるシリカの含有量は、ウェットグリップ性能の観点から、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量部以上がさらに好ましい。
<その他の成分>
本実施形態に係るゴム組成物は、上記のゴム成分および可塑剤以外にも、従来、タイヤ工業に使用される配合剤や添加剤、例えば、シランカップリング剤、酸化亜鉛、ワックス、老化防止剤、ステアリン酸、加硫剤、加硫促進剤等を、必要に応じて適宜含有することができる。
シランカップリング剤は特に限定されないが、ゴム工業において従来シリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができる。シランカップリング剤として具体的には、例えば、エボニックデグッサ社製のSi75、Si266(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)、同社製のSi69(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)等のスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、Momentive社製のNXT-Z100、NXT-Z45、NXT等、メルカプト系(メルカプト基を有するシランカップリング剤)、ビニルトリエトキシシラン等のビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン等のニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロロ系等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、スルフィド系、メルカプト系がシリカとの結合力が強く、低発熱性において優れるという点から好ましい。
シランカップリング剤を含有する場合のシリカに対する含有量は、シリカ分散性の観点から、2質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましい。また、コストの観点からは、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
ワックスを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの耐候性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、ブルームによるタイヤの白色化の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
オイルを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、良好な耐摩耗性を確保する観点から、100質量部以下が好ましく、90質量部以下がより好ましい。また、加工性の観点からは、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。なお、界面活性剤、液状樹脂、液状ポリマー等の添加によっても加工性を担保することができる。
老化防止剤としては特に限定されず、ゴム分野で使用されているものが使用可能であり、例えば、キノリン系、キノン系、フェノール系、フェニレンジアミン系老化防止剤等が挙げられる。
老化防止剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの耐オゾンクラック性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、耐摩耗性能やグリップ性能の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
加工助剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩等が挙げられる。具体的には、例えば、ストラクトール社製のEF44、WB16等の脂肪酸石鹸系加工助剤が挙げられる。加工助剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.1質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下、特に3質量部以下であるのが好ましい。
ステアリン酸を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.2質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、加硫速度の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
酸化亜鉛を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、耐摩耗性能の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
加硫剤としては硫黄が好適に用いられる。硫黄としては、粉末硫黄、油処理硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄等を用いることができる。
加硫剤として硫黄を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、グリップ性能および耐摩耗性能の観点から、0.5質量部以上が好ましい。また、劣化の観点からは、3質量部以下が好ましい。
硫黄以外の加硫剤としては、例えば、田岡化学工業(株)製のタッキロールV200、フレキシス社製のDURALINK HTS(1,6-ヘキサメチレン-ジチオ硫酸ナトリウム・二水和物)、ランクセス社製のKA9188(1,6-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン)等の硫黄原子を含む加硫剤や、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物等が挙げられる。
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド-アミン系若しくはアルデヒド-アンモニア系、イミダゾリン系、またはキサンテート系加硫促進剤等が挙げられる。これら加硫促進剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系、チアゾール系、およびグアニジン系が好ましく、これらを併用することがより好ましい。
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)等が挙げられる。なかでも、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドが好ましい。
チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等が挙げられる。なかでも、2-メルカプトベンゾチアゾールが好ましい。
グアニジン系加硫促進剤としては、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ-o-トリルグアニジン塩、1,3-ジ-o-クメニルグアニジン、1,3-ジ-o-ビフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-クメニル-2-プロピオニルグアニジン等が挙げられる。なかでも、1,3-ジフェニルグアニジンが好ましい。
加硫促進剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加硫促進の観点から、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましい。また、加工性の観点からは、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましい。
<ゴム組成物およびタイヤの製造>
本実施形態に係るゴム組成物は、公知の方法により製造することができる。例えば、上記の各成分をオープンロール、バンバリーミキサー、密閉式混練機等のゴム混練装置を用いて混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。
本発明の他の実施形態は、上記ゴム組成物により構成されたタイヤ部材を有するタイヤである。上記ゴム組成物により構成されるタイヤ部材としては、トレッド、アンダートレッド、カーカス、サイドウォール、ビード等の各タイヤ部材が挙げられる。なかでも、ウェットグリップ性能、耐摩耗性能および低燃費性能に優れることからトレッドが好ましい。
本実施形態に係るタイヤは、上記ゴム組成物を用いて、通常の方法により製造することができる。すなわち、上記の各成分を混練して得られた未加硫ゴム組成物をトレッド等のタイヤ部材の形状にあわせて押出し加工した部材をタイヤ成形機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、通常の方法にて成形することにより、未加硫タイヤを形成し、この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより製造することができる。
本実施形態に係るタイヤは、特にカテゴリーは限定されないが、乗用車用タイヤ、トラックやバス等の重荷重用タイヤ、二輪自動車用タイヤ、ランフラットタイヤ、非空気入りタイヤ等とすることが好ましく、用タイヤとすることがより好ましい。また、本実施形態に係るタイヤは、耐摩耗性能と耐久性に優れるので長距離走行に適している。
[実施例]
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は、実施例のみに限定されるものではない。
以下、実施例および比較例において用いた各種薬品をまとめて示す。
SBR:日本ゼオン(株)製のNS616(Mw:24万、スチレン含量:20質量%、ビニル含量:66質量%、Tg:-23℃)
BR:ランクセス社製のCB25(Nd触媒合成高シスBR、シス1,4結合含有率:98.2質量%、トランス1,4結合含有率:1.4質量%、ビニル含有率:0.4%、Tg:-110℃)
変性ローシスBR:旭化成ケミカルズ(株)製のN103(リチウム開始剤を用いて重合し、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサンと、そのオリゴマー成分との混合物によりBRの重合末端が変性された末端変性BR、Mw:55万、Mw/Mn:1.19、ビニル含量:12質量%、シス含量:38質量%、トランス含量:50質量%)
NR:TSR20
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220(BET:114m2/g)
シリカ:エボニックデグッサ社製のウルトラシルVN3(BET:210m2/g)
水酸化アルミニウム:住友化学(株)のAPYRAL200SM(平均粒子径:0.6μm、偏平率:15、BET:15m2/g、モース硬度:3)
シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のSi75(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
ロジン系樹脂1:ハリマ化成(株)製のハリエスターTF(ロジン変性グリセリンエステル、Mw:約1000、SP値:10.4、軟化点:80℃、Tg:42℃、酸価:8)
ロジン系樹脂2:ハリマ化成(株)製のハリエスターP(ロジン変性ペンタエリスリトールエステル、Mw:約1000、SP値:10.4、軟化点:102℃、Tg:62℃、酸価:19)
ロジン系樹脂3:ハリマ化成(株)製のハリマックT-80(マレイン酸変性ロジン樹脂、Mw:約1000、SP値:10.9、軟化点:85℃、Tg:43℃、酸価:185)
ロジン系樹脂4:荒川化学工業(株)製の中国ガムロジンWW(Mw:333、SP値:10.4、軟化点:78℃、Tg:39℃、酸価:168)
ロジン系樹脂5:アイレック(株)製のハイロジンS(Mw:約1000、SP値:9.6、軟化点:105℃、Tg:55℃、酸価:78)
スチレン樹脂:アリゾナケミカル社製のSYLVATRAXX4401(Mw:700、SP値:9.1、軟化点:85℃、Tg:34℃、酸価:0)
テルペン系樹脂1:ヤスハラケミカル(株)製のYSレジン TO125(テルペンスチレン樹脂、Mw:800、SP値:8.7、軟化点:125℃、Tg:64℃、酸価:0)
テルペン系樹脂2:ヤスハラケミカル(株)製のYSレジン T160(テルペンフェノール樹脂、Mw:1200、SP値:8.8、軟化点:160℃、Tg:100℃、酸価:0)
テルペン系樹脂3:ヤスハラケミカル(株)製のPXレジン PX1150N(ポリテルペン樹脂、Mw:1350、SP値:8.4、軟化点:115℃、Tg:65℃、酸価:0)
クマロンインデン樹脂:日塗化学(株)製のV-120(Mw:960、SP値:9.0、軟化点:120℃、Tg:65℃、酸価:0)
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース355
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「つばき」
プロセスオイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスAH-24
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD))
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
硫黄:細井化学工業(株)製のHK-200-5(5質量%オイル含有粉末硫黄)
加硫促進剤1(スルフェンアミド系加硫促進剤):大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS-G(N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBBS))
加硫促進剤2(グアニジン系加硫促進剤):大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’-ジフェニルグアニジン(DPG))
実施例および比較例
表1に示す配合処方にしたがい、(株)神戸製鋼所製1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤を除く配合成分を充填率が58%になるように充填し、回転数80rpmで140℃に到達するまで3分間混練りした。ついで、得られた混練り物に硫黄および加硫促進剤を加えた後、オープンロールを用いて、80℃で5分間混練りし、各実施例および各比較例に係る配合の未加硫ゴム組成物を得た。
また、前記未加硫ゴム組成物を所定の形状の口金を備えた押し出し機でタイヤトレッドの形状に押し出し成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃の条件下で12分間プレス加硫することにより、試験用タイヤ(サイズ:180/55ZR17、リム:5.5×17、内圧:290kPa)を製造、準備した。
得られた未加硫ゴム組成物、加硫ゴム組成物および試験用タイヤについて下記の評価を行った。評価結果を表1に示す。
<ウェットグリップ性能試験>
各試験用タイヤを試験用実車(国産FF車、排気量:2000cc)の全輪に装着し、湿潤路面において初速度100km/hからの制動距離を測定した。下記の式により比較例1を100として指数表示した。指数が大きいほどウェットグリップ性能に優れることを示す。なお、100以上を最低目標値とし、105以上が好ましい。
(ウェットグリップ性能指数)=
(比較例1のタイヤの制動距離)/(各試験用タイヤの制動距離)×100
<耐摩耗性能試験>
各試験用タイヤを試験用実車(国産FF車、排気量:2000cc)の全輪に装着し、ドライアスファルト路面上を8000km走行させ、タイヤトレッド部の溝深さを測定し、タイヤトレッド部の溝深さが1mm減少するときの走行距離を算出した。下記の式により比較例1を100として指数表示した。指数が大きいほど耐摩耗性に優れることを示す。なお、103以上を性能目標値とする。
(耐摩耗性能指数)=(各試験用タイヤのタイヤ溝が1mm減るときの走行距離)
/(比較例1のタイヤ溝が1mm減るときの走行距離)×100
<耐久性試験>
各加硫ゴム組成物からJIS K 6251に準じて3号ダンベル試験片を作製し、引っ張り試験を実施した。破断時伸び(EB)を測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。EB指数が大きいほどゴム強度が高く耐久性に優れることを示す。EB指数は110以上を性能目標値とする。
以上のウェットグリップ性能指数、耐摩耗性能指数、およびEB指数の平均値は、105以上を性能目標値とする。
Figure 0007151083000004
Figure 0007151083000005
表1および表2の結果より、本発明のゴム組成物により構成されたタイヤ部材を有するタイヤは、ウェットグリップ性能、耐摩耗性能および破断時伸びがバランスよく優れることがわかる。
本発明のトレッド用ゴム組成物、ならびに当該ゴム組成物により構成されたトレッドを有するタイヤは、ウェットグリップ性能、耐摩耗性能および破断時伸びに優れる。

Claims (12)

  1. 35~65質量%のスチレンブタジエンゴムおよび35~65質量%のブタジエンゴムを含むゴム成分100質量部に対し、シリカを80~140質量部、前記シリカを含む無機フィラーを80~150質量部、およびロジン系樹脂を0.3~40質量部含有するトレッド用ゴム組成物。
  2. ロジン系樹脂の酸価が5~70である、請求項1に記載のゴム組成物。
  3. ロジン系樹脂の軟化点が55℃~130℃である、請求項1または2に記載のゴム組成物。
  4. ロジン系樹脂が、ロジン、ロジンエステル樹脂、およびロジン変性フェノール樹脂、ならびにこれらの水素添加物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか一項に記載のゴム組成物。
  5. ロジン系樹脂がロジンエステル樹脂である、請求項1~4のいずれか一項に記載のゴム組成物。
  6. さらに20℃以上のガラス転移温度を有するロジン系樹脂以外の粘着性樹脂を含有し、粘着性樹脂の合計量が10~60質量部である、請求項1~5のいずれか一項に記載のゴム組成物。
  7. ロジン系樹脂以外の粘着性樹脂としてテルペン系樹脂を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のゴム組成物。
  8. 無機フィラー中のシリカの含有量が50質量%以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載のゴム組成物。
  9. 前記スチレンブタジエンゴムが、未変性の溶液重合スチレンブタジエンゴム/または未変性の乳化重合スチレンブタジエンゴムのみからなる、請求項1~8のいずれか一項に記載のゴム組成物。
  10. ブタジエンゴム中に変性ローシスブタジエンゴムを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のゴム組成物。
  11. 無機フィラー中に水酸化アルミニウムをさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のゴム組成物。
  12. 請求項1~11のいずれか一項に記載のトレッド用ゴム組成物により構成されたトレッドを有するタイヤ。
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