「概要」
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施形態を説明する。各実施形態に係る眼科測定装置は、角膜形状と、その他複数の眼特性を測定する。便宜上、以下の説明では、眼科測定装置を「本装置」という。
本装置は、指標投影器と、1つ以上の測定ユニットとを少なくとも含む(図1~4参照)。好ましくは、2つ以上の測定ユニットを、本装置は有していてもよい。本実施形態において、1つの測定ユニットは、少なくとも1つの眼特性の測定に利用される。眼特性は光学的に測定されてもよいし、非光学的な手法で測定されてもよい。測定ユニットが複数設けられている場合、各々の測定ユニットは、互いに異なる眼特性を測定するものであってもよい。
以下の説明では、本装置のうち被検眼と向かい合って眼特性を測定する部分を、測定部と称する場合がある。測定部には、指標投影器と、各測定ユニットが含まれる。なお、各測定ユニットにおいて、被検眼側の先端部分を、以下の説明において、先端部と称する。
また、以下、特に断りが無い限り、本装置は、第1測定ユニットと第2測定ユニットとの、2つの測定ユニットを有するものとして説明する。第1測定ユニットおよび第2測定ユニットのそれぞれには、角膜形状とは異なる眼特性を測定するための光学系が設けられている。但し、第1測定ユニットおよび第2測定ユニットの少なくとも一方は、角膜形状を測定する光学系の一部を含んでいてもよい。
また、本装置は、制御部を更に有していてもよい(図5参照)。制御部は、プロセッサの一種であり、少なくとも本装置における測定動作を制御する。更に、本装置に設けられた各種アクチュエータ、モニター等の各種デバイスを制御するものであってもよい。
第1測定ユニットおよび第2測定ユニットは、それぞれ測定軸を有する(図1~4参照)。測定軸は、測定時に被検眼が配置されるべき軸である。測定軸は、測定箇所(又は、撮像面)に対して略垂直な軸であってもよい。例えば、測定軸は、装置の作動距離方向沿った軸であってもよい。第1測定ユニットの測定軸(第1測定軸という)と、第2測定ユニットの測定軸(第2測定軸という)とは、上下左右方向に関して並列的に配置される。例えば、第1測定軸と、第2測定軸とは、略平行に配置されてもよい。
本実施例において、各測定ユニットで測定される眼特性は、例えば、眼屈折力、眼圧、角膜厚、眼軸長、および、その他、のうちいずれかであってもよい。
指標投影器は、角膜形状を測定するために利用される。指標投影器の正面(前面)は、被検眼と対向して配置される。指標投影器は、角膜形状の測定に適したパターン指標を、指標投影器の正面から被検眼の角膜へ投影する。
このとき、パターン指標は、発散光によって形成されてもよい。その場合、指標投影器として、面発光する各種のデバイスが適用されてもよい。
また、実施形態において、指標投影器は、板状に形成されていてもよい。板状の指標投影器は、例えば、円盤型であってもよい。円盤型の場合、指標投影器の表面は、平面状、または、椀状に形成される。なお、指標投影器として、コーン型も知られているが、コーン型は、より小型に形成できる反面、作動距離が短いうえ、作動距離方向のアライメントの許容範囲が狭く、不利である。円盤型であり面発光する指標投影器は、例えば、プラチド板を備えていてもよい。また、プラチド板の代わりに、液晶パネルや有機ELパネル等を利用し得る。
指標投影器から投影されるパターン指標は、例えば、同心円状に形成された多重リングパターンによって形成されていてもよい(図3,図4参照)。各々のリング指標は、切れ目なく連続したリングとして形成されてもよい。また、同一円周上に少なくとも3点の測定点があることで、該円周における曲率情報が得られるので、3点以上の測定点を持つ点指標や間欠的なリング指標であってもよい。但し、これに限られるものでは無く、測定に利用する指標のパターンは、格子状のパターンであってもよいし、蜘蛛の巣状のパターンであってもよいし、ドットマトリクス状のパターンであってもよいし、それ以外のパターンであってもよい。
指標投影器は、パターン指標の任意の一部を、選択的に投影可能であってもよい。また、パターン指標は、指標投影器において一義的に定められている必要はなく、例えば、互いに異なる複数のパターン指標を投影可能であってもよい。
本装置は、更に、前眼部撮影光学系を有していてもよい。前眼部撮影光学系は、前眼部の正面画像を撮影する。本実施形態では、パターン指標が投影された状態で撮影された正面画像に基づいて、角膜の形状に関する情報が取得される。より詳細には、正面画像に含まれるパターン指標の像が解析されることによって、角膜の形状に関する情報が得られる。前眼部撮影光学系は、例えば、第1測定ユニットおよび第2測定ユニットのうち一方に収容されていてもよい。この場合、第1測定軸と第2測定軸とのうち、前眼部撮影光学系を収容した測定ユニットと対応する一方は、前眼部撮影光学系の光軸と同軸であることが望ましい。また、前眼部撮影光学系において撮影される前眼部正面画像は、観察画像として、測定部と被検眼とのアライメントにおいて利用されてもよい。なお、アライメントには、角膜輝点等が更に利用されてもよい。角膜輝点は、例えば、アライメント光学系から投影される指標光によって形成されてもよい。
例えば、図3,図4に示すように、指標投影器の正面には、窓部が形成されていてもよい。窓部は、第1測定軸と第2測定軸との各々と対応して形成される。各窓部は、各窓部と対応する測定軸が通過される。窓部は、各ユニットの先端部そのもの、あるいは、光軸を通過させる経路を形成する。先端部を通過させる窓部は、例えば、開口、および、切欠のうち、少なくともいずれかによって形成されてもよい。光軸を通過させる窓部は、開口、および、切欠のほか、透光部材で形成されていてもよい。
各測定ユニットの先端部は、窓部を介して指標投影器の表面よりも被検眼側に突出している、又は、突出可能であってもよい(図1,図2参照)。このとき、先端部の突出量は変更可能であってもよい。そのために、例えば、指標投影器の表面に対して、少なくともいずれかの測定ユニットの先端部を前後方向に移動(変位)させる移動部を有していてもよい。詳細は後述するが、ある測定ユニットが使用されないときに、その測定ユニットの先端部を後退させておくことで、先端部が、他の眼特性の測定、または、装置の移動を妨げにくくなる。
以下、第1測定軸と対応する窓部を第1窓部と称し、第2測定軸と対応する窓部を第2窓部と称する。第1窓部と第2窓部とのうち、いずれか一方は、指標投影器において角膜頂点と対応する領域(例えば、指標投影器の中心部)に形成されていてもよい。上記のとおり、角膜頂点近傍での勾配は既知(略ゼロ)と考えることができるので、窓部が配置されても、角膜の形状情報を得るうえで影響は少ない。
指標投影器を通過した測定軸を介して、各測定ユニットによる眼測定が行われる。なお、角膜形状測定に利用される測定軸は、第1測定軸、および、第2測定軸、のいずれかと同軸であってもよいし、いずれとも異なる第3測定軸であってもよい。
本装置は、更に、駆動部を有していてもよい。駆動部は、測定部と被検眼との位置関係を上下左右方向に関して調整する。これにより、それぞれの測定軸上に、被検眼を選択的に配置できる。駆動部は、測定部において測定される眼特性を変更するために利用される。また、駆動部は、被検眼に対するアライメント調整にも利用されてもよい。
ここで、本実施形態では、第1測定軸と第2測定軸とのうち少なくとも一方が、指標投影器の外側に配置されるように、各測定ユニットを配置することも考えられる。このような配置では、指標投影器のサイズが制限されやすくなると考えられる。これに対し、本実施形態では、第1測定軸と第2測定軸との両方が、指標投影器を通過する。これによって、指標投影器を大型化しやすくなる。その結果、より広い範囲の角膜形状を、良好に測定できるようになる。また、駆動部等を小型化しやすくなる。つまり、装置の省スペース化等に有利である。
<パターン指標の補間>
しかし、指標投影器上に2つの窓部が形成されていることによって、パターン指標の欠けが生じることが考えられる。パターン指標が欠けた領域については、角膜の形状情報を得るうえで不利である。また、本実施形態では、第1測定軸と第2測定軸とのうち、何れか一方は、必ず、指標投影器において角膜頂点と対応する領域(例えば、指標投影器の中心部)から離れた位置を通過することとなる。そのような測定軸に起因するパターン指標の欠けは、特に不利となり得る。そこで、本実施形態では、パターン指標の欠けが補間されてもよい。
以下に、補間のための手段を例示する。
<補間指標投影器>
例えば、本装置は、補間指標投影器を有していてもよい。補間指標投影器は、パターン指標において窓部によって欠ける一部を角膜へ投影する。補間指標投影器は、例えば、部分的なプラチドであってもよい。また、液晶パネル、有機ELパネル等であってもよい。指標投影器と同様、補間指標投影器も、平面発光によってパターン指標の一部を形成するデバイスであることが好ましい。
補間指標投影器は、窓部に対して挿脱される部材であってもよい(図3,図4参照)。この場合、本装置の制御部は、窓部に対する補間指標投影器の挿脱制御を実行してもよい。挿脱制御は、測定モードの選択と連動してもよい。例えば、制御部は、角膜形状を測定する角膜形状測定モードと、第1眼特性または第2眼特性を測定する第2測定モードとの間で測定モードを選択してもよい。このとき、制御部は、角膜形状測定モードにおいて補間指標投影器を窓部へ挿入し、第2測定モードにおいて、窓部から退避させてもよい。
補間指標投影器は、窓部の近傍において指標投影器の表面に対して交差した面を有し、その面から、パターン指標のうち前記窓部によって欠ける一部を、角膜へ投影するものであってもよい(図6A,図6B、図6C参照)。補間指標投影器の面は、第1測定ユニットおよび第2測定ユニットの測定軸と交差しないように形成される。例えば、測定軸と平行に形成されてもよい。更に、補間指標投影器の面は、指標投影器からのパターン指標の投光を妨げない範囲で形成されることが望ましい。
また、補間指標投影器は、第1測定ユニットおよび第2測定ユニットのいずれかに設けられていてもよい。例えば、窓部から露出される各ユニットの先端部に、補間指標投影器は設けられていてもよい。また、各ユニットの筐体内部に配置される光学系の一部として、補間指標投影器は設けられていてもよい。
<角膜上でパターン指標が投影される領域を切換える>
また、パターン指標のうち窓部によって欠ける一部を補間するために、角膜においてパターン指標が投影される領域を切換えて指標投影器からパターン指標を投影してもよい。例えば、指標投影器に対する視線の向きを、第1の向きと、第2の向きとに切換え、それぞれの向きでパターン指標の投影を行い、角膜形状測定を行ってもよい。一方の向きでパターン指標の欠けに対応する角膜領域は、他方の向きでパターン指標が投影されるので、一方の向きにおけるパターン指標の欠けに対応する測定結果を、他方の向きにおける測定結果から補間できる。第1の向きと、第2の向きとがそれぞれ既知であれば、補間はより容易となる。
<小型な窓部>
指標投影器は、パターン指標を形成するために、複数の指標投影箇所のそれぞれから、複数の指標を角膜へ投影する。例えば、プラチド板においては、リング状の透光部と遮光部とが同心円状に交互にプラチド板前面に形成されているが、リング状の透光部が指標投影箇所に対応する。
第1測定軸および第2測定軸の各々に対応する窓部は、ある指標投影箇所と、その箇所と隣り合う指標投影箇所と、の隙間に形成されていてもよい。例えば、上記のプラチド板の例であれば、遮光部へ収まるサイズで、窓部が形成されていてもよい。この場合、パターン指標の欠けが抑制される。また、1つの測定ユニットにおいて必要される窓部のサイズが、1つの隙間に対して大きい場合、窓部を、複数の隙間に分割して形成してもよい。例えば、眼圧測定ユニットの場合、角膜圧平用の窓部と、圧平検出用の窓部とが、別々の隙間に形成されてもよい。
<角膜上の測定領域の切換>
本装置は、指標投影器から投影されるパターン指標が変更されることにより、角膜上の測定領域が、指標投影器から投影されるパターン指標に応じて変更されてもよい。
<トポモードと、ケラトモードの切換>
例えば、ケラトモードと、トポモードと、の間で、角膜形状測定における測定モードが、制御部によって選択されてもよい。制御部は、第1トポモードと第2トポモードとを、検者による操作入力に応じて選択してもよい。ケラトモードでは、角膜上における単一の円周領域における角膜形状が測定されてもよい。指標投影器は、該円周領域の少なくとも3点以上に指標を投影する。勿論、リング状の指標を投影してもよい。その状態で前眼部正面画像等から検出される指標像の解析結果(測定結果)として、例えば、所定半径の円周領域における、角膜の曲率半径、屈折値、角膜の主経線、角膜乱視量等のうち少なくともいずれか取得される。例えば、直径3.3mmの円周領域と、直径2.4mmの円周領域と、のうち一方、又は両方が測定されてもよい。この場合、制御部は、2つのうち一方または両方の円周領域に対して、指標投影器からの指標を投影する。
トポモードでは、角膜トポグラフィーが測定される。例えば、測定領域として、少なくとも直径6mm内の角膜上の領域であってもよい。この場合、例えば、直径6mm内の領域に対して、直径が互いに異なる少なくとも4つ以上の円周領域に対して、各3点以上の指標(勿論、リング指標でもよい)が投影される。その状態で前眼部正面画像等から検出される指標像の解析結果として、例えば、測定領域における角膜形状の分布情報が得られる。分布情報として、エレベーション、曲率、および、角膜屈折力、のうちいずれかが取得されてもよい。
ケラトモードは、角膜形状異常等のスクリーニングにより適したモードである。例えば、トポモードと比べて測定領域が限定されているため、解析結果がより短時間で得られる。また、パターン指標が可視光である場合、パターン指標の投影によって被検者が感じる眩しさがより少なく、低負担である。一方、トポモードでは、角膜の詳細な形状情報が得られるので、角膜形状異常等の診断、IOL処方、屈折矯正等の場面等で、利用価値が高い。
従って、検者は、利用目的に応じて、トポモードとケラトモードとの2つの測定モードを使い分けることができる。
また、本装置は、ケラトモードでの測定と、トポモードでの測定とが、所定の条件で連続的に実行される連続測定が実行可能であってもよい。連続測定では、まず、ケラトモードでの測定が行われる。次に、トポ測定を行うべきか否かが、ケラト測定の測定結果に基づいて判定される。例えば、判定処理では、ケラトモードでの測定結果(例えば、信頼係数、曲率半径等)が、閾値と比較される。閾値は、例えば、角膜形状異常に関する閾値であってもよい。例えば、前眼部正面画像から検出されるリング指標像に対する近時楕円と、リング指標像とのズレ(各経線方向におけるズレ)を示す信頼係数を求め、該信頼係数と、予め定められられた閾値と比較することによって、判定が行われてもよい。ズレが大きいほど、信頼係数の値が大くなるのであれば、信頼係数が所定の閾値を超えた場合に、トポモードでの測定が、自動的に実行されてもよい。また、この場合、信頼係数が所定の閾値以下である場合に、トポモードでの測定は実行されない。連続測定が行われた場合、ケラトモードでの測定結果と、トポモードでの測定結果との両方が、同時に、又は、選択的に、モニターに表示されてもよい。また、一方のみが出力されてもよい。以上のような連続測定では、ケラトモードでの速やか且つ被験者に低負担な測定を前提として、必要に応じてトポモードでの測定が自動的に実行されるので、角膜検査を、効率的に行うことができる。
また、曲率半径を閾値と比較する場合、平均的な曲率半径の値として、約7.8mmが知られており、閾値としては、この値を下回る値が適宜設定されていてもよい。被検者の年齢に応じて、曲率半径は異なるものと考えられる。そこで、制御部は、例えば、年齢情報を検者の入力操作等に基づいて予め取得していてもよく、年齢に応じた閾値を用いて、測定値との比較が行われてもよい。この場合、曲率半径が閾値を下回る場合は、自動的にトポモードでの測定を実行し、曲率半径が閾値以上である場合は、トポモードでの測定は実行しなくてもよい。
<第1トポモードと、第2トポモードの切換>
制御部は、例えば、第1トポモードと、第2トポモードと、の間で、角膜形状測定における測定モードを選択してもよい。制御部は、第1トポモードと、第2トポモードと、を、検者による操作入力に応じて選択してもよい。
第1トポモードと第2トポモードとでは、測定領域が互いに異なる。本実施形態において、第2トポモードでは、第1トポモードと比べて、より直径の大きな円周内領域を、測定領域とする。例えば、第1トポモードの測定領域は、例えば、IOL処方に適した直径6mm以内の領域であり、第2トポモードの測定領域は、オルソケラトロジー、コンタクトレンズ処方等に適した、直径10mm以内の領域であってもよい。第2トポモードの測定領域は、第1トポモードの測定領域を包含するが、両モードでは、第1トポモードのほうが、解析時間およびパターン指標が可視光である場合の被検者の負担等の点で有利であるので、検者が2つを使い分けることが好ましい。
なお、指標投影器の中心部から離れた位置に窓部が形成されている場合において、上記のケラトモードおよび第1トポモードのうち少なくともいずれかは、指標投影器において上記の窓部より内側(中心部側)から、パターン指標が投影され、且つ、トポモード及び第2トポモードのうち少なくともいずれかは、上記の窓部より内側と、窓部から外側との両方から、パターン指標が投影されてもよい。
上記の窓部より内側と、窓部から外側との両方から、パターン指標が投影される場合において、制御部は、上記した種々の方法によって、窓部によるパターン指標の欠けを補間してもよい。
<眼圧測定モードへの切替>
本装置が持つ各測定ユニットのいずれかは、眼特性として眼圧を測定する眼圧測定ユニットであってもよい。この場合、指標投影器と、眼圧測定ユニットの先端部とは、同じ向きで被検眼と対向する。そして、指標投影器においてパターン指標を形成するためのパターン領域のうち最も外側のパターン領域(例えば、図3において符号205で示すパターンの領域)よりも指標投影器の中心部側に、先端部は配置されていてもよい。上記では、指標投影器に窓部を形成することによって、最も外側のパターン領域よりも指標投影器の中心部側に、先端部が配置されている。但し、このような配置を実現するうえで、必ずしも窓部が形成される必要は無い。例えば、指標投影器が、一方向に間延びした形状である場合に、一方向と交差する方向であり、指標投影器の外側に先端部が配置されてもよい。
また、制御部は、装置の測定モードを、角膜形状測定モードと、眼圧測定モードと、の間で切換ることができる。眼圧測定モードでは、眼圧測定ユニットによって眼圧が測定され、角膜形状測定モードでは、指標投影器からのパターン指標に基づいて角膜形状が測定される。
眼圧測定ユニットは、圧平部と、圧平検出部と、を有してもよい。圧平部は、被検眼の角膜を一方向に圧平する。圧平検出部は、圧平部の圧平動作に伴う圧平信号を検出する。圧平信号に基づいて眼圧が得られる。
眼圧測定ユニットによる眼圧の測定方式は、非接触式であってもよいし、接触式であってもよい。非接触式は、角膜に流体(例えば、圧縮空気)を吹き付け、角膜の変形を検出する方式でもよい。また、流体では無く、非接触で超音波を照射する方式であってもよい。
眼圧測定は、指標投影器からのパターン指標による角膜形状測定に比べて、装置と被検眼との間の距離である作動距離が短くなりやすく、眼圧測定部の先端部を角膜へより近づけて測定が行われやすい。このため、眼圧測定時に、眼圧測定ユニットの先端部は、指標投影器の表面から突出している必要があると考えられる。但し、そのまま指標投影器から角膜へパターン指標を投影しようとした場合に、パターン指標の一部が眼圧測定ユニットの先端部によって遮られてしまう場合があり得る。
そこで、本装置は、例えば、指標投影器の表面に対して、眼圧測定ユニットの先端部を、前後方向に移動(変位)させる移動部を有していてもよい。例えば、移動部は、指標投影器に対して眼圧測定ユニットの全体を前後方向に移動させるものであってもよい。また、眼圧測定ユニット以外に他の測定ユニットを有する場合は、眼圧測定ユニットの先端部は、移動部によって、他の測定ユニットに対しても前後方向に移動可能であってもよい。この場合、指標投影器と他の測定ユニットとは、固定的に配置されていてもよい。勿論、他の測定ユニット(より詳細には、少なくとも先端部)についても、指標投影器の表面に対して前後方向に移動可能であってもよい。
制御部は、測定モードに応じて移動部を制御することで、眼圧測定ユニットの先端部を、眼圧測定モードでは指標投影器の表面に対して被検眼側の第1ポジションに配置させてもよい。そして、角膜形状測定モードでは、眼圧測定ユニットの先端部を、第1ポジションに対して後退した第2ポジションに配置させてもよい。好ましくは、角膜形状測定モードでは、眼圧測定ユニットの先端部を、指標投影器の表面よりも後退させてもよい。角膜形状測定時には、眼圧測定ユニットの先端部を後退させておくことで、先端部が、角膜形状測定の妨げとなることを抑制できる。
また、角膜を測定軸方向に非接触で圧平すると共に、圧平検出部において、圧平を光学的に検出する場合が考えられる。このような圧平検出部を、以下では、圧平検出光学系という。圧平検出光学系は、測定軸に沿って指標光束を投光し、指標光束による角膜反射光に基づいて圧平信号を得ることが好ましい。
他に、圧平検出光学系としては、測定軸に対して斜め方向から指標光束を投光する方式が知られているが、上記のような測定軸に沿って指標光束を投影する方式のほうが、作動距離方向のアライメント許容範囲がより長く確保でき、有利である。また、斜め方向から指標光束を投光する方式では、指標光束の投受光のためのスペースが必要となるので、指標投影器に形成される窓部が大型化されやすくなる。これに対し、測定軸に沿って指標光束を投受光する方式では、窓部に要する面積を抑制しやすい。
また、本装置は、眼圧に加えて、角膜厚を測定可能であってもよい。測定された角膜厚は、眼圧測定値の補正に利用されてもよい。角膜厚測定に用いる光学系(角膜厚測定光学系)は、測定部に設けられてもよい。角膜厚測定光学系は、測定光を角膜に斜めから投光する。また、角膜測定光学系は、角膜前面と後面とのそれぞれからの測定光の反射光を受光する受光素子を有する。受光素子からの信号に基づいて角膜厚を得ることができる。このような角膜厚測定光学系は、眼圧測定ユニットが非接触で角膜を変形させることで眼圧を測定するものである場合に、角膜の変形を検出する光学系と兼用されてもよい。この場合、角膜厚測定光学系はスリット光を測定光とし、スリット像として角膜の断面像を撮像するものであってもよい。
本装置は、眼圧測定ユニットの他に、眼屈折力測定ユニットを有していてもよい。この場合、制御部は、装置の測定モードとして、更に、眼屈折力測定モードへ切換できる。眼屈折力測定ユニットは、眼屈折力測定光学系を有する。眼屈折力測定光学系としては、種々の構成が知られており、適宜、いずれかを適用できる。
「実施例」
以下、本開示の一実施例として、眼科測定装置1(以下、単に、「装置1」という)を説明する。
まず、図1~図5を参照して、装置1の概略構成を示す。なお、図1は、眼屈折力および角膜形状測定時の状態を表しており、図2は、眼圧測定時の状態を表している。
図1,2に示すように、装置1は、測定部2を少なくとも有している。追加的に、本実施例において、装置1は、基台5、顔支持ユニット6、および、移動台7を有する。
基台5には、顔支持ユニット6が取り付けられている。顔支持ユニット6は、顎台および額当て等を有する。これらの部材で被検者の顔を支持することで、装置に対して被検眼Eの位置が固定される。
本実施形態において、移動台7は、基台5上でXZ方向に移動するための移動機構(図示せず)が設けられている。移動機構は、例えば、メカニカルな摺動機構であってもよい。
また、本実施形態において、移動台7には、XYZ駆動部7aが設けられている。XYZ駆動部7aは、測定部2を、被検眼Eに対してX(左右)、Y(上下)、Z(前後)の各方向に移動させる。XYZ駆動部7aは、例えば、水平(XZ)方向に移動させる第1の駆動部と、上下(Y)方向に移動させる第2の駆動部との組合せであってもよい。本実施例において、XYZ駆動部7aは、制御部50(図5参照)からの信号に基づいて電動で駆動される。
測定部2は、プラチドユニット20と、第1測定ユニット21と、第2測定ユニット22と、を有する。プラチドユニット20は、第1測定ユニット21と共に、被検眼の角膜形状を測定するために利用される。第1測定ユニット21は、被検眼Eの眼特性として、眼屈折力を測定するために利用される。また、第2測定ユニット22は、被検眼Eの眼特性として眼圧を測定するために利用される。
<各ユニットの配置>
図1~図4において、第1測定ユニット21の測定軸である第1測定軸を、符号L1で示し、第2測定ユニット22の測定軸である第2測定軸を、符号L2で示す。本実施例において、第1測定軸L1は、プラチド板20aの中心部を通過しており、角膜形状測定における測定軸と同軸である。第2測定軸L2は、プラチド板20aにおいて中心部から離れた領域を通過している。プラチド板20aには、第1測定軸L1および第2測定軸L2の通過経路として、窓部20b,20cが形成されている(図3,図4参照)。窓部20bは、第1測定軸L1と対応しており、第1測定軸L1が通過する。また、窓部20cは、第2測定軸L2と対応しており、第2測定軸L2が通過する。
本実施例では、プラチドユニット20は、被検眼Eへプラチド板20aの正面を向けた状態で、測定部2の前面に配置される。また、本実施例では、第1測定ユニット21の測定軸L1と、第2測定ユニット22の測定軸L2と、の高さが異なるように第1測定ユニット21および第2測定ユニット22が配置されている。一例として、本実施例では、第1測定ユニット21の上に、第2測定ユニット22が積層される。
測定部2は、移動台7に設けられたXYZ駆動部7aにより、被検眼に対して上下方向(図1に示すY方向)に移動される。また、XYZ駆動部7aは、測定部2を被検眼に対してY方向に移動させ、第1測定軸L1と第2測定軸L2の一方を選択的に、被検眼Eとほぼ同じ高さに合わせるために駆動される。このため、XYZ駆動部7aの駆動量は、少なくとも第1測定軸L1と第2測定軸L2との間隔以上は確保する必要がある。さらに好ましくは、各測定モードにおいて、被検眼に対する自動アライメントをスムーズに行うことができる程度の移動可能範囲を確保するのが好ましい。
本実施例において、第1測定ユニット21とプラチドユニット20との位置関係は固定されている。
また、第1測定ユニット21と第2測定ユニット22との間には、第2移動部8が設けられており、第2測定ユニット22の全体は、第2移動部8の駆動によって、第1測定ユニット21に対して前後方向に移動される。このとき、第2測定ユニット22の先端部(ノズル22a)は、プラチドユニット20の表面(正面)に対して前後方向に移動される。第2駆動部8は、眼圧測定の際には第2測定ユニット22を被検眼Eに近づく方向に移動させ、角膜形状測定およびレフ測定の際には第2測定ユニット22を被検眼Eから遠ざかる方向に移動させるために用いられる。本実施例では、角膜形状測定およびレフ測定の際には、第2測定ユニット22の先端部が、少なくともプラチド板20aの前面よりも被検眼Eから離間するまで後退される。なお、本実施例では、第2測定ユニット22の先端部は、角膜形状測定およびレフ測定の際には、プラチド板20aの背面よりも後退されることが望ましい。
<角膜形状測定部>
本実施例では、プラチドユニット20と、前眼部撮影光学系211とによって、角膜形状測定部が形成される。本実施例における角膜形状測定部は、トポグラファーと、ケラトメータとを兼用している。
プラチドユニット20は、本実施例における指標投影器である。プラチドユニット20は、角膜へパターン指標を投影する。本実施例において、パターン指標は可視光によるリング指標によって構成される。プラチドユニット20は、プラチド板20aの他に、パターン指標の形成に適した光源201(トポ光源という、図5参照)とを、少なくとも有していてもよい。光源201は、複数設けられていてもよく、プラチド板20aに形成される複数のリングパターンのうち、ケラト測定に用いる一部のリングパターンと、それ以外とで光源201が独立していてもよい。光源が独立していることで、本実施例では、角膜上の直径2.4mmの円周領域に対応するリングパターン204が、それ以外と、独立に点灯可能である(図3参照)。図3に示すように、プラチド板20aにおいて、リングパターン204は、窓部20cよりもプラチド板20aの中心部側に形成されている。
本実施例において、プラチドユニット20から投影されるパターン指標は、切換え可能である。ケラト測定の際には、光軸L1上で適正作動距離に置かれた角膜に対して、角膜上の2.4mmの円周領域に対応する1つのリング指標が、プラチドユニット20から投影される。
トポ測定の際には、光軸L1上で適正作動距離に置かれた角膜に対して、同心円状の複数のリング指標が投影される。本実施例では、角膜上の直径略10mm以内の領域に対して、同心円状の多重リングパターンによるパターン指標が、プラチドユニット20から投影される。
本実施例において、プラチド板20aの表面は平坦である。また、プラチド板20aは、200mm以上の直径で形成される。これにより、比較的長い作動距離を確保しつつ、角膜上の直径10mm程度の範囲における形状分布を測定できる。
また、本実施例において、プラチドユニット20は、更に、液晶ユニット202と、液晶移動部203と、を有する。液晶ユニット202は、第2測定軸L2に対応する窓部20cに対して、液晶移動部203によって挿脱される。液晶移動部203は、上下左右方向への移動と前後方向への移動を組み合わせて、液晶ユニット203の正面と、プラチド板20aの正面とが、略同一平面上に配置されるように、液晶ユニット203を移動させることで、窓部20cに対して液晶ユニット203を挿入してもよい。但し、窓部20cへの挿入後の液晶ユニット203の正面と、プラチド板20aの正面とが、前後方向にズレて配置されていてもよい。なお、窓部20c上に配置された状態で、液晶ユニット202は、被検眼側に正面を向けて配置される。
液晶ユニット202の正面が発光面となる。光源として、液晶ユニット202にはバックライト光源が設けられていてもよい。また、液晶ユニット202の光源として、トポ光源201が利用されてもよい。
本実施例では、第2測定軸L2に対応して窓部20cが形成されていることによって、トポ測定時において、プラチド板20aが形成するパターン指標(多重リング指標)の一部には、欠けが生じる。欠けた一部を、液晶ユニット202は、制御部50からの制御信号に基づいて形成する。これによって、窓部20cによって欠ける一部のリング指標が、光学的に補間される。
液晶ユニット202は、少なくとも角膜形状測定の際には挿入され、少なくとも眼圧測定の際には退避される。退避後、第2測定ユニット22のノズル22aが角膜へ向けて前進される。
本実施例では、第1測定ユニット21に収容された前眼部撮影光学系211によって、プラチド板20aおよび液晶ユニット202から投影されたパターン指標の角膜反射光が、パターン指標像として撮像される。パターン指標像を解析することによって、制御部50は、角膜形状を測定する。このように、角膜形状の測定に利用される光学系が、プラチドユニット20と第1測定ユニット21とに跨って形成されている。
<眼屈折力測定部>
第1測定ユニット21は、レフ測定光学系212(図5参照)が設けられている。該光学系212は、例えば、被検眼Eの瞳孔中心部を介して眼底にスポット状の測定指標を投影する投影光学系と、眼底から反射された眼底反射光を瞳孔周辺部を介してリング状に取り出し、二次元撮像素子にリング状の眼底反射像を撮像させる受光光学系と、を有していてもよい(いずれも図示せず)。
また、第1測定ユニット21は、第1アライメント光学系213、固視標呈示光学系214等の各種光学系を有していてもよい。第1アライメント光学系213からのアライメント指標は、例えば、プラチド板20aに形成された開口213a,213bを介して角膜へ投影される(図3,図4参照)。
<眼圧測定部>
第2測定ユニット22の先端部には、ノズル22aが設けられており、ノズル22aを介して被検眼角膜に対して流体(例えば、圧縮空気等)を吹き付ける。そして、流体の吹付による角膜の変形に基づいて眼圧を測定する。第2測定ユニット22は、例えば、ノズル22aのほか、流体圧縮室221を備えてもよい。流体圧縮室221は、角膜に吹き付ける流体を圧縮するための空間を有し、例えば、シリンダとピストンによって、構成されてもよい。また、第2測定ユニット22は、角膜の変形状態検出用の測定光学系(圧平検出光学系)221、アライメント光学系223、及び、図示無き固視標呈示光学系等の各種光学系を備えてもよい。圧平検出光学系222からの検出信号は、制御部50へ入力され、制御部50での眼圧値算出に利用されてもよい。なお、第2測定軸L2は、前述した圧平検出光学系における光軸であってもよい。第2測定ユニット22の更なる詳細構成については、例えば、本出願人による特開2007-144128号公報等を参照されたい。また、測定光学系221に代えて、圧力センサを有していてもよい。圧力センサは、流体圧縮室内の圧力を検出する。圧力センサからの検出信号が、制御部50によって、眼圧値算出に利用されてもよい。
眼圧測定の際、第2測定ユニット22の先端部(ノズル22aの先端)は、被検眼Eの角膜から十数ミリ程度にまで接近させる必要がある。プラチド板20aを被検者の顔へ接触させずに眼圧を測定するために、本実施例では、プラチド板20aの前面からノズル22aが突出するように、移動部8によって第2測定ユニット22の全体が前方へ移動される。
なお、第2アライメント光学系223からのアライメント指標は、例えば、ノズル先端に形成された開口223a,223bを介して角膜へ投影される(図4参照)。
なお、第1測定ユニット21および第2測定ユニット22の光学系における更なる詳細構成については、例えば、本出願人による「特開2016-214466号公報」等を参照されたい。
装置1は、さらに、角膜厚測定光学系230を有していてもよい。角膜厚測定光学系230は、被検眼Eの角膜厚を測定するために利用される。例えば、第1測定ユニット21の筐体内に、第1測定ユニット21の先端部となる検査窓を介して被検眼角膜Ecに対して角膜厚(パキ)測定用の光を投光する投光光学系が配置されているとともに、第1測定ユニット21の下部に、前述の投光光学系による被検眼角膜からの反射光を第1測定軸L1に対して下方向から異なる角度の光軸(受光光軸)を用いて受光する撮影(受光)光学系が配置されていてもよい。また、角膜厚測定光学系230は、第2測定ユニット22の筐体内に設けられていてもよい。
また、ジョイスティック71は、装置1のUI(ユーザ・インターフェイス)70(図5参照)の一部である。また、ジョイスティック71は、被検眼Eと測定部2との位置関係を変更させるために検者に操作される。本実施形態において、移動台7は、ジョイスティック71の操作により、基台5上を水平方向に移動される。また、ジョイスティック71に形成された回転ノブを検者が回転操作することにより、測定部2はXYZ駆動部7aによって、Y方向に移動される。ジョイスティック71の頂部には、測定開始スイッチが設けられていてもよい。
モニタ80は、アライメント中の観察画像および測定結果等を表示する。モニタ80は、タッチパネルディスプレイであってもよい。この場合、モニタ80は、UI70の一部であってもよい。
<制御系>
次に、図5を参照して、本実施形態の装置1における制御系を説明する。
制御部50は、装置全体の制御及び測定結果の算出を行うプロセッサである。制御部50は、測定部2の各部の他、XYZ駆動部7a、メモリ51、UI70、モニタ80等と接続されている。
メモリ51は、書き換え可能な非一過性の記憶媒体を含んでいてもよく、例えば、フラッシュメモリ、およびハードディスク等のいずれかであってもよい。撮影および測定の結果得られた画像および測定データは、メモリ51に保存される。測定動作を規定するプログラムおよび固定データは、このメモリ51に記憶されていてもよい。
<測定動作>
以上のような構成を備える眼科測定装置1において、その動作について説明する。なお、以下の説明においては、測定モードの切り替えに伴う動作を、中心として説明する。各種の眼特性を得る測定動作の詳細については、例えば、本出願人による特開2007-144128号公報等を参照されたい。
例えば、制御部50は、眼屈折力測定モード、眼圧測定モード、角膜形状測定モード、の3つのモードを選択可能である。各測定モードは、検者による操作入力に基づいて切換えられてもよいし、自動的に切換えられてもよい。
なお、眼圧が他の眼特性と連続的に測定される場合、他の眼特性を測定した後に、眼圧が測定されることが好ましい。これは、先に眼圧を測定すると、流体の吹き付け等による影響が残る可能性があるからである。眼屈折力測定と、角膜形状測定とは、順不同で実行されてもよい。
本実施例では、眼屈折力測定モードおよび角膜形状測定モードの間では、いずれも、図1および図3に示した状態で測定が行われてもよい。
すなわち、制御部50は、XYZ移動部7aを駆動して測定部2の高さ調整を行い、第1測定軸L1を被検眼Eの高さに調整する。このとき、予め、第2移動部8を駆動して、第2測定ユニット22の先端部22aを、プラチド板20aの前面よりも後退させる。これにより、高さ調整の際に、ノズル22aの先端が被検者に接触しないようにしておく。さらに、ノズル22aの先端と被検眼Eとの間を遮るように、液晶ユニット202を窓部20cへ挿入させておいてもよい。これにより、アライメント調整が完了した段階で、角膜形状測定をスムーズに行うことができる。
次に、被検眼Eに対する測定部2のX,Y及びZ方向のアライメントが行われる。このとき、制御部50は、観察画像として、第1測定ユニット21内の前眼部撮影光学系211によって撮影される前眼部の正面画像を、モニタ80に表示させてもよい。また、制御部50は、第1アライメント光学系213からアライメント指標を投光させる。制御部50は、観察画像上のアライメント指標像と前眼部との位置関係に応じて、XYZ駆動部7aを制御することにより、アライメントを行う。
本実施例では、指標投影器として、プラチド板20aが200mm以上と大きな直径で形成されているため、角膜形状測定時の作動距離を確保しやすく、また、レフ測定光学系212も原理上、作動距離を確保しやすいことから、眼屈折力測定モードと角膜形状測定モードとの間で、適正作動距離(ここでは、適正なアライメント状態における、被検眼Eと測定部2の筐体前面(ここでは、プラチド板20a)までの距離)を一致させることが容易となる。例えば、例えば、40mm~100mm程度の範囲とすることができる。また、眼屈折力測定モードと角膜形状測定モードとの間で作動距離方向のアライメント許容範囲についても、比較的長く確保できる。従って、本実施例では、角膜形状測定と、眼屈折力測定とを、スムーズに連続して測定することもできる。
その後、アライメントが完了したら自動的に、眼屈折力測定と、角膜形状測定とが行われる。
なお、本実施例において、角膜形状測定モードは、ケラトモードと、トポモードと、連続測定モードと、に分かれている。各測定モードは、予め検者がUI70を介して選択可能である。ここでは、連続測定モードが選択されているものとして、装置の動作を示す。
連続測定モードでは、まず、制御部50は、ケラト測定が行われる。ケラト測定では、制御部50プラチド板20aに形成された複数のリングパターンのうち、パターン204(図3参照)を選択的に発光させる。これによって、角膜上の直径2.4mmの円周領域に、リング状のパターン指標が投影される。パターン指標像の角膜反射光は、前眼部撮影光学系によって指標像として撮像される。制御部50は、指標像を解析することによって、上記の円周領域における、曲率半径、屈折、強主経線、弱主経線等を、ケラト測定による測定結果として取得する。
次に、制御部50は、トポ測定が必要となるか否かを、ケラト測定の測定結果に基づいて判定する。本実施例では、ケラト測定の測定結果の一種である信頼係数が閾値と比較されることで、判定処理が行われる。
本実施例では、信頼係数が閾値よりも大きい場合、トポ測定は不要と判定され、角膜形状測定はそのまま終了してもよい。一方、信頼係数が閾値以下である場合に、トポ測定が必要と判定される。この場合、トポ測定においては、プラチド板20aおよび液晶ユニット202から、多重リングによるパターン指標が投影される。
ケラト測定後、間をあけずにトポ測定が行われるように、液晶ユニット202は、連続測定に際して、予め窓部20cに対して挿入されていることが好ましい。例えば、ケラト測定からトポ測定までが、数秒程度で行われてもよい。
トポ測定の際、プラチド板20aおよび液晶ユニット202は同時に発光されてよいし、順番に発光されてもよい。これによって、本実施例では、角膜の直径約10mm以内の領域に、多重リング状のパターン指標が投影される。パターン指標像の角膜反射光は、前眼部撮影光学系によって指標像として撮像される。制御部50は、指標像を解析することによって、角膜形状の分布データを取得する。
角膜形状測定の完了後、測定結果が表示されてもよい。本実施例では、少なくともケラト測定の測定結果(例えば、各種数値等)が、表示されてもよい。ケラト測定とトポ測定との両方が測定された場合、ケラト測定の測定結果と、トポ測定の測定結果との両方が、同時に表示されてもよい。また、第1の表示として、ケラト測定の測定結果と共に、トポ測定の測定行われた旨(トポ測定の測定結果が存在する旨)を示す情報と、が表示されてもよく、第1の表示が行われている間に表示切換操作がUI70を介して受け付けることによって、第2の表示として、トポ測定の測定結果が表示されてもよい。第2の表示では、例えば、分布データに基づく角膜形状マップを、測定結果としてモニタ80等へ出力してもよい。角膜形状マップは、例えば、角膜のエレベーションマップ、曲率マップ、および、角膜屈折力マップ等のいずれかであってもよい。このとき、角膜形状マップのうち、液晶ユニット202からの投光によって補間された一部の領域は、他の測定領域と異なる態様(例えば、色違い等)で表示してもよい。但し、表示態様を区別する必要は必ずしも無い。
眼屈折力測定または角膜形状測定の完了後、眼圧測定モードに移行する。このとき、制御部50は、XYZ駆動部7aを駆動させることにより測定部2を下方向に移動させ、第2測定軸L2と被検眼Eとがほぼ同じ高さになるようにする(ラフで構わない)
また、液晶ユニット202を、窓部20cから(第2測定軸L2上から)退避させる。これにより、ノズル22aが前進可能となる。制御部50は、第2駆動部8を駆動させることにより第2測定ユニット22を被検眼Eへ近づく方向に移動させる。その結果、ノズル22aが、プラチド板20aの前面から被検者側に位置される。このような動作によって、プラチド板20a等の筐体前面と被検者の顔(例えば、鼻)との接触を防ぎつつ、被検眼Eと装置1との作動距離が、眼圧測定に適した距離に調整される。
なお、第2測定ユニット22を被検眼側に移動させる場合、ノズル22aの先端が被検眼Eに接触する可能性があるので、好ましくは、一旦、第2駆動部8を駆動制御して測定部2を被検眼Eから遠ざかる方向の後方位置へ一旦移動した後(例えば、最も後方側に設定されている基準位置まで後退させた後)、ノズル22aをプラチド板20aの前面より一定量だけ突出させてもよい。
その後、制御部50は、眼圧測定に際して、アライメント(例えば、Zアライメント)を行う。このときのアライメントは、例えば、角膜反射像に基づいて行われてもよいし、他の指標に基づいて行われてもよい。被検眼に投影される指標は、例えば、第2測定ユニット22が有する第2アライメント光学系223から投影されるものであってもよい。
アライメント完了後、制御部50は、ピストンを駆動してシリンダ内の空気を圧縮し、圧縮空気をノズルから角膜に向けて吹き付けて、眼圧測定を行う。
本実施例では、以上のようにして、各測定モードにおいて眼特性が測定される。
以上説明したように、測定部2には、プラチドユニット20の背面側で、第1測定ユニット21と、第2測定ユニット22とが、積層されている。眼圧測定モードと、それ以外の測定モードとを切換える際、各ユニットを含む測定部2の上下動を伴う。そこで、本実施例では、各測定ユニットの測定軸L1、L2をプラチド板20aを迂回させずに、プラチド板20aに窓部20b,20cを形成してプラチド板20aの内側を通過させたことで、第1測定ユニット21と第2測定ユニット22とが、上下方向に関してコンパクトに積層可能となった。これに伴って、XYZ駆動部7aのY方向に関する駆動範囲を抑制できる。その結果、装置全体のサイズを抑制しやすくなる。また、装置1の重心をより低くすることができるので、上下移動した際に、測定部2が左右方向にズレてしまうことを抑制できる。
また、角膜形状測定の際には、眼圧測定ユニットの先端部(ノズル22a)が、プラチド板20aの前面よりも後退された位置に配置されるので、角膜形状測定用のパターン指標がノズル22aによって遮られること無く、良好に角膜へ投影される。
この場合において、眼圧測定ユニットの先端部が出入りする窓部20cによるパターン指標の欠けは、液晶ユニット202からの部分的なパターンの投影によって、補間される。このため、角膜形状を、良好に測定できる。
以上、実施形態に基づいて説明を行ったが、上記実施形態は、種々の変形が許容される。
例えば、上記実施例において、液晶ユニット202が窓部20cに対して挿脱されたが、必ずしもこれに限られるものでは無い。例えば、ノズル22aが通過される窓部20cの近傍に、補間指標投影器の一例である縞状パターン板205が固定配置されていてもよい。例えば、図6A~図6Cを参照して、より詳細な説明を行う。縞状パターン板205は、プラチド板20aの前面に対して略垂直に配置されてもよい。この場合、縞状パターン板205の発光面は、角膜形状の測定軸L1を向いて配置される。発光面は、縞状のマスクによって遮光されており、これにより、縞状パターンを投影する。縞状パターンは、プラチド板20cからのパターン指標のうち、窓部20cによって欠けてしまう部分に対応する。
また、窓部20cの端部のうち、縞状パターン板205は、測定軸L1側の端部に形成されることで、プラチド板20aからの指標光束を遮り難くなる。また、この場合、縞状パターン板205のプラチド板20a前面からの突出量は、眼圧測定時におけるノズル22aの突出量と同等か、より少ないことが、被検者と装置との接触を抑制するうえで、好ましい。縞状パターン板205は、プラチド板20aと一体的に形成されていてもよく、トポ光源201を光源とするものであってもよい。また、縞状パターン板205に代えて、上記実施例のような液晶ユニットが固定配置されてもよい。
また、縞状パターン板205(補間指標投影器の一例)は、前後方向に移動可能であってもよい。この場合、縞状パターン板205を前後方向に移動させる移動部を、装置1は有していてもよい。移動部は、第2駆動部8(第2測定ユニット22の移動部)と兼用されていてもよいし、別体であってもよい。
縞状パターン板205は、少なくとも角膜形状測定モードにおいて、プラチド板20aの前面よりも前方に配置される。一方、眼屈折力測定モードおよび眼圧測定モードにおいて、縞状パターン板205は、角膜形状測定モードの測定時よりも後退されていてもよい。更に、角膜形状測定モードまたは眼屈折力測定モードと眼圧測定モードとの切換の際には(特に、測定部2の上下移動する期間には)、縞状パターン板205は、後退されていることが好ましい。縞状パターン板205が被検者の顔に接触し難くなる。
更に、前後方向に移動する縞状パターン板205(補間指標投影器の一例)は、眼圧測定ユニット22のノズルの側面(本実施例では下面)に形成されていてもよい。
例えば、上記実施形態では、角膜形状の分布情報を得るためのパターン指標を投影可能な指標投影器から、ケラトモードにおいてもパターン指標が投影された。しかし、必ずしもこれに限られるものでは無く、ケラトモードでは、指標投影器以外の光学系からパターン指標を角膜へ投影することによって、単一の円周領域における曲率情報を取得してもよい。この場合、眼科測定装置は、指標投影器から独立した、ケラト指標投影光学系を有してもよい。ケラト指標投影光学系の測定軸は、指標投影器からのパターン指標基づく角膜形状測定に利用される測定軸と同軸であることが好ましい。但し、必ずしもこれに限定されるものでは無い。
また、例えば、上記実施例では、第1測定ユニット21と、第2測定ユニット22とを積層配置する場合について説明したが、第1測定ユニット21と、第2測定ユニット22とは、プラチド板20aの半径方向のうち、一方向に並べて配置されてもよく、左右方向に並べて配置されていてもよい。