JP7036602B2 - ボルテゾミブを含有する医薬製剤の製造方法 - Google Patents
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例えば、特許文献1には、ボルテゾミブのボロン酸とマンニトール等の糖類とのボロン酸エステル誘導体及びこのボロン酸エステル誘導体を用いた医薬製剤が開示されており、ボルテゾミブ及びマンニトールのtert-ブタノール溶液又はtert-ブタノール含水溶液を凍結乾燥することで調製されている。また、特許文献2には、ボルテゾミブとトロメタミンを含む凍結乾燥製剤が記載されており、ボルテゾミブとトロメタミンが強いB-N結合を形成することが記載されている。特許文献3には、ボルテゾミブ誘導体の凍結乾燥製剤であって、シクロデキストリン及び単糖を有する増量剤と界面活性剤とからなる群から選択される医薬製剤が記載されている。特許文献4には、クエン酸等のα‐ヒドロキシ‐β‐カルボン酸とボルテゾミブとの酸無水物‐エステル誘導体及びその医薬製剤が開示されている。特許文献5及び6には、ボルテゾミブとグルコン酸塩との混合物を含む医薬組成物が開示されている。特許文献7には、ボルテゾミブまたはその薬学的に許容され得る塩と酒石酸またはその薬学的に許容され得る塩とを含む凍結乾燥医薬組成物が開示されている。
[1] 減圧条件下でボルテゾミブ又はその医薬的に許容な塩、若しくはボルテゾミブ誘導体を溶解する工程、
を含むボルテゾミブ又はその医薬的に許容な塩、若しくはボルテゾミブ誘導体を含有する医薬製剤の製造方法。
[2] 減圧条件が5000Pa以下の気圧下である、[1]に記載のボルテゾミブ又はその医薬的に許容な塩、若しくはボルテゾミブ誘導体を含有する医薬製剤の製造方法。
本発明のボルテゾミブは、医薬的に許容される適当な塩であっても良い。医薬的に許容される塩とは、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム、カルシウムなど)、アンモニウム塩及び医薬的に許容可能なアミンの塩(テトラメチルアンモニウム、トリエチルアミン、メチルアミン、ジエチルアミン、シクロペンチルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ピペリジンモノエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミン、リジン、アルギニン及びN-メチル-D-グルカン)が含まれる。
本発明において、ボルテゾミブ又はその医薬的に許容される塩、若しくはボルテゾミブの誘導体は、ボルテゾミブ、ボルテゾミブの塩、又はボルテゾミブの誘導体の何れか1種の化学種であっても良く、2種以上の混合物であっても良い。また、一部が、ボルテゾミブの3量体等の自己脱水縮合体を含んでいても良い。しかしながら、該3量体は難溶性であり、水溶液として投与する際に不溶性異物となるため、該3量体等の自己脱水縮合物は含まないことが好ましい。当該ボルテゾミブ又はその医薬的に許容される塩、若しくはボルテゾミブの誘導体としては、医薬品用の有効成分として用いることができる品質レベルである事が好ましい。
本発明の製造方法において、ボルテゾミブ又はその医薬的に許容な塩、若しくはボルテゾミブ誘導体、有効成分以外の医薬添加剤を溶解する前に、溶媒のみを減圧条件下で撹拌してもよい。本発明の製造方法において、ボルテゾミブ又はその医薬的に許容な塩、若しくはボルテゾミブ誘導体、有効成分以外の医薬添加剤を溶解する前に、溶媒のみを減圧条件下で撹拌することが好ましい。減圧条件下で溶解させる場合、5000Pa以下であることが好ましい。より好ましくは3000Pa以下であり、2000Pa以下であることが更に好ましい。
等張化剤としては、塩化ナトリウム等の塩類、マンニトール、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース、キシリトール、ソルビトール、イノシトール、グルコース、フルクトース、グルコン酸又はその塩、メグルミン、シクロデキストリン等の糖又は糖アルコールが挙げられる。
賦形剤としても、塩化ナトリウム等の塩類、マンニトール、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース、キシリトール、ソルビトール、イノシトール、グルコース、フルクトース、グルコン酸又はその塩、メグルミン、シクロデキストリン等の糖又は糖アルコールを用いることができる。
溶解補助剤としては、グリセリン、チオグリセリン、プロピレングリコール等のポリオール類、ポリソルベート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンヒマシ油等のポリエーテル系化合物等を挙げることができる。
抗酸化剤としては、没食子酸プロピル、アスコルビン酸、トコフェロールポリエチレングリコールスクシナート、L‐システイン等が挙げられる。
pH調整剤としては、塩酸、リン酸、ホウ酸、炭酸等の無機酸、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、乳酸及び酢酸等の有機酸、といった酸性剤が挙げられる。また、前記酸性剤及びアルカリ性剤を混合してpH調整した緩衝剤を用いても良い。緩衝剤としては、リン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酒石酸緩衝剤、乳酸緩衝剤、コハク酸緩衝剤等が挙げられる。これらのpH調整剤は単独で用いても良く、また二種以上を組み合わせて用いても良い。
これらの医薬添加剤は、本発明に係る医薬製剤のボルテゾミブ又はその医薬的に許容される塩、若しくはボルテゾミブの誘導体の安定性を維持する範囲において通常の医薬製剤に用いられる添加剤を用いて良く、その適用量も適宜設定されて良い。医薬添加剤の含有量は、ボルテゾミブ又はその医薬的に許容される塩、若しくはボルテゾミブの誘導体の安定性を考慮して適切な量を適宜設定して用いられるが、有効成分であるボルテゾミブ又はその医薬的に許容な塩1質量部に対し、それぞれ30質量部以下で添加して用いることが好ましい。より好ましくは、ボルテゾミブ又はその医薬的に許容な塩1質量部に対し、それぞれ15質量部以下の適用量である。他の添加剤は、ボルテゾミブ又はその医薬的に許容される塩、若しくはボルテゾミブの誘導体を溶剤に溶解させる前に溶剤に添加しても良く、ボルテゾミブ又はその医薬的に許容される塩、若しくはボルテゾミブの誘導体を溶剤に溶解させた後に添加しても良く、ボルテゾミブ又はその医薬的に許容される塩、若しくはボルテゾミブの誘導体を溶剤に溶解させる前と後の両方で添加しても良い。
また、これらの医薬添加剤は、減圧条件下で溶解させてもよく、大気圧条件下で溶解させてもよい。本発明の製造方法において、医薬添加剤は減圧条件下で溶解させることが好ましい。減圧条件下で溶解させる場合、5000Pa以下であることが好ましい。より好ましくは3000Pa以下であり、2000Pa以下であることが更に好ましい。
1.75Lの注射用水を薬調釜に加え、10分間撹拌を行いながらドライポンプを用いて約1500Paまで減圧した。大気圧に復圧後、フルクトース22.5g、ラクトース90gをそれぞれ加え、約1500Paまで減圧した後に撹拌し溶解させた。大気圧に復圧後、適量の水酸化ナトリウムを加えて、水溶液のpHを約11.0とした後にボルテゾミブ4.5gを加え、約1500Paまで減圧した後に撹拌し溶解させた。大気圧に復圧後,適量の塩酸溶液及び水酸化ナトリウム溶液でpH5.2に調整し、注射用水を加えて全量を1.80Lとした。その溶液はpH5.2であった。
この溶液を孔径0.22μmのメンブレンフィルターを用いて無菌ろ過を行い、バイアルにろ過した液を1.2mL充填し、凍結乾燥を行い、実施例1に係る凍結乾燥製剤を調製した。
フルクトース450mg、ラクトース1.8gを36mLの注射用水に溶解し、適量の水酸化ナトリウムを加えて、水溶液のpHを約11.0としたものにボルテゾミブ90mgを加えて溶解。適量の塩酸溶液及び水酸化ナトリウム溶液でpH5.2に調整し、注射用水を加えて全量を90mLとした。その溶液はpH5.4であった。
この溶液を孔径0.22μmのメンブレンフィルターを用いて無菌ろ過を行い、バイアルにろ過した液を1.2mL充填し、凍結乾燥を行い、比較例1に係る凍結乾燥製剤を調製した。
実施例1と比較例1の注射用凍結乾燥製剤を、60℃の条件下にて2週間保存した。各製剤について、ボルテゾミブ由来の類縁物質をHPLCにて分析した。ボルテゾミブ類縁物質のHPLC分析条件を下に示した。
実施例1と比較例1のボルテゾミブ分解由来の類縁物質を、以下の液体クロマトグラフィー(HPLC)条件にて分析した。
カラム:Waters Symmetry Shield RP18 5μm,4.6mm×250mm
カラム温度:35℃
移動相A:水/アセトニトリル/ギ酸混液(715:285:1)
移動相B:メタノール/水/ギ酸混液(800:200:1)
送液量:1.0mL/min.
波長:270nm
移動相の送液:表2に示す条件で送液した。
実施例1と比較例1の注射用凍結乾燥製剤を、40℃の条件下にて6か月保存した。各製剤について、ボルテゾミブ由来の類縁物質をHPLCにて分析した。試験例1と同じ分析条件で分析した。
以上の試験例の結果から、減圧条件下でボルテゾミブ又はその医薬的に許容な塩、若しくはボルテゾミブ誘導体を溶解する工程を含む製造方法とすることで、製造工程中と保存期間中のボルテゾミブの分解に伴う類縁物質の生成を抑制することができることを見出した。
Claims (2)
- 減圧処理した水又は水とtert‐ブタノールを含む溶媒に、減圧条件下でボルテゾミブ又はその医薬的に許容な塩、若しくはボルテゾミブ誘導体を溶解する工程、
前記溶解液を復圧し、バイアルに分注して、凍結乾燥する工程、を含み、
前記ボルテゾミブ誘導体が、ボルテゾミブのボロン酸官能基と1,2-ジオールを含むポリオール化合物の反応生成物であるエステル誘導体、α‐ヒドロキシ‐β‐カルボン酸化合物の反応生成物である酸無水物‐エステル混合誘導体、若しくはジカルボン酸化合物の反応生成物である酸無水物誘導体、又はボルテゾミブの3量体である、
ボルテゾミブ又はその医薬的に許容な塩、若しくはボルテゾミブ誘導体を含有する凍結乾燥製剤の製造方法。 - 減圧条件が5000Pa以下の気圧下である、請求項1に記載のボルテゾミブ又はその医薬的に許容な塩、若しくはボルテゾミブ誘導体を含有する凍結乾燥製剤の製造方法。
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