以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。各図面において、同一の又は対応する構成については同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。
(射出成形機)
図1は、一実施形態にかかる射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。図2は、一実施形態にかかる射出成形機の型締時の状態を示す図である。図1~図2において、X方向、Y方向およびZ方向は互いに垂直な方向である。X方向およびY方向は水平方向を表し、Z方向は鉛直方向を表す。型締装置100が横型である場合、X方向は型開閉方向であり、Y方向は射出成形機10の幅方向である。図1~図2に示すように、射出成形機10は、型締装置100と、エジェクタ装置200と、射出装置300と、移動装置400と、制御装置700と、フレーム900とを有する。以下、射出成形機10の各構成要素について説明する。
(型締装置)
型締装置100の説明では、型閉時の可動プラテン120の移動方向(図1および図2中右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(図1および図2中左方向)を後方として説明する。
型締装置100は、金型装置800の型閉、型締、型開を行う。型締装置100は例えば横型であって、型開閉方向が水平方向である。型締装置100は、固定プラテン110、可動プラテン120、トグルサポート130、タイバー140、トグル機構150、型締モータ160、運動変換機構170、および型厚調整機構180を有する。
固定プラテン110は、フレーム900に対し固定される。固定プラテン110における可動プラテン120との対向面に固定金型810が取付けられる。
可動プラテン120は、フレーム900に対し型開閉方向に移動自在とされる。フレーム900上には、可動プラテン120を案内するガイド101が敷設される。可動プラテン120における固定プラテン110との対向面に可動金型820が取付けられる。
固定プラテン110に対し可動プラテン120を進退させることにより、型閉、型締、型開が行われる。固定金型810と可動金型820とで金型装置800が構成される。
トグルサポート130は、固定プラテン110と間隔をおいて連結され、フレーム900上に型開閉方向に移動自在に載置される。尚、トグルサポート130は、フレーム900上に敷設されるガイドに沿って移動自在とされてもよい。トグルサポート130のガイドは、可動プラテン120のガイド101と共通のものでもよい。
尚、本実施形態では、固定プラテン110がフレーム900に対し固定され、トグルサポート130がフレーム900に対し型開閉方向に移動自在とされるが、トグルサポート130がフレーム900に対し固定され、固定プラテン110がフレーム900に対し型開閉方向に移動自在とされてもよい。
タイバー140は、固定プラテン110とトグルサポート130とを型開閉方向に間隔Lをおいて連結する。タイバー140は、複数本(例えば4本)用いられてよい。各タイバー140は、型開閉方向に平行とされ、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー140には、タイバー140の歪を検出するタイバー歪検出器141が設けられてよい。タイバー歪検出器141は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。タイバー歪検出器141の検出結果は、型締力の検出などに用いられる。
尚、本実施形態では、型締力を検出する型締力検出器として、タイバー歪検出器141が用いられるが、本発明はこれに限定されない。型締力検出器は、歪ゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取付け位置もタイバー140に限定されない。
トグル機構150は、可動プラテン120とトグルサポート130との間に配設され、トグルサポート130に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる。トグル機構150は、クロスヘッド151、一対のリンク群などで構成される。各リンク群は、ピンなどで屈伸自在に連結される第1リンク152および第2リンク153を有する。第1リンク152は可動プラテン120に対しピンなどで揺動自在に取付けられ、第2リンク153はトグルサポート130に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153は、第3リンク154を介してクロスヘッド151に取付けられる。トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させると、第1リンク152および第2リンク153が屈伸し、トグルサポート130に対し可動プラテン120が進退する。
尚、トグル機構150の構成は、図1および図2に示す構成に限定されない。例えば図1および図2では、各リンク群の節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク154の一端部が、第1リンク152と第2リンク153との節点に結合されてもよい。
型締モータ160は、トグルサポート130に取付けられており、トグル機構150を作動させる。型締モータ160は、トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させることにより、第1リンク152および第2リンク153を屈伸させ、トグルサポート130に対し可動プラテン120を進退させる。型締モータ160は、運動変換機構170に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構170に連結されてもよい。
運動変換機構170は、型締モータ160の回転運動をクロスヘッド151の直線運動に変換する。運動変換機構170は、ねじ軸171と、ねじ軸171に螺合するねじナット172とを含む。ねじ軸171と、ねじナット172との間には、ボールまたはローラが介在してよい。
型締装置100は、制御装置700による制御下で、型閉工程、昇圧工程、脱圧工程、型開工程などを行う。
型閉工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン120を前進させ、可動金型820を固定金型810にタッチさせる。クロスヘッド151の位置や移動速度は、例えば型締モータエンコーダ161などを用いて検出する。型締モータエンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、クロスヘッド151の位置を検出するクロスヘッド位置検出器、およびクロスヘッド151の移動速度を検出するクロスヘッド移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。また、可動プラテン120の位置を検出する可動プラテン位置検出器、および可動プラテン120の移動速度を検出する可動プラテン移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。型閉工程の途中で、クロスヘッド151を一時停止させることにより、可動プラテン120を一時停止させてもよい。可動金型820が一時停止された状態で、インサート材を可動金型820または固定金型810に設置できる。
昇圧工程では、型締モータ160をさらに駆動してクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させることで型締力を生じさせる。型締時に可動金型820と固定金型810との間にキャビティ空間801(図2参照)が形成され、射出装置300がキャビティ空間801に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。キャビティ空間801の数は、1つでもよいが、図2に示すように複数であってよい。後者の場合、複数の成形品が同時に得られる。キャビティ空間801の一部にインサート材が配置され、キャビティ空間801の他の一部に成形材料が充填されてもよい。インサート材と成形材料とが一体化した成形品が得られる。
脱圧工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を型締位置から型開開始位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、型締力を減少させる。型開開始位置と、型閉完了位置とは、同じ位置であってよい。
型開工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型開開始位置から型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、可動金型820を固定金型810から離間させる。その後、エジェクタ装置200が可動金型820から成形品を突き出す。
型閉工程および昇圧工程における設定条件は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、型閉工程および昇圧工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置を含む)、型締力は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型締位置と型締力とは、いずれか一方のみが設定されてもよい。
脱圧工程および型開工程における設定条件も同様に設定される。例えば、脱圧工程および型開工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置は、前側から後方に向けて、この順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型開開始位置と型閉完了位置とは同じ位置であってよい。また、型開完了位置と型閉開始位置とは同じ位置であってよい。
尚、クロスヘッド151の移動速度や位置などの代わりに、可動プラテン120の移動速度や位置などが設定されてもよい。また、クロスヘッドの位置(例えば型締位置)や可動プラテンの位置の代わりに、型締力が設定されてもよい。
ところで、トグル機構150は、型締モータ160の駆動力を増幅して可動プラテン120に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク152と第2リンク153とのなす角θ(以下、「リンク角度θ」とも呼ぶ)に応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド151の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
金型装置800の交換や金型装置800の温度変化などにより金型装置800の厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば可動金型820が固定金型810にタッチする型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
型締装置100は、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整することで、型厚調整を行う型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、タイバー140の後端部に形成されるねじ軸181と、トグルサポート130に回転自在に保持されるねじナット182と、ねじ軸181に螺合するねじナット182を回転させる型厚調整モータ183とを有する。
ねじ軸181およびねじナット182は、タイバー140ごとに設けられる。型厚調整モータ183の回転駆動力は、回転駆動力伝達部185を介して複数のねじナット182に伝達されてよい。複数のねじナット182を同期して回転できる。尚、回転駆動力伝達部185の伝達経路を変更することで、複数のねじナット182を個別に回転することも可能である。
回転駆動力伝達部185は、例えば歯車などで構成される。この場合、各ねじナット182の外周に受動歯車が形成され、型厚調整モータ183の出力軸には駆動歯車が取付けられ、複数の受動歯車および駆動歯車と噛み合う中間歯車がトグルサポート130の中央部に回転自在に保持される。尚、回転駆動力伝達部185は、歯車の代わりに、ベルトやプーリなどで構成されてもよい。
型厚調整機構180の動作は、制御装置700によって制御される。制御装置700は、型厚調整モータ183を駆動して、ねじナット182を回転させることで、ねじナット182を回転自在に保持するトグルサポート130の固定プラテン110に対する位置を調整し、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
間隔Lは、型厚調整モータエンコーダ184を用いて検出する。型厚調整モータエンコーダ184は、型厚調整モータ183の回転量や回転方向を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。型厚調整モータエンコーダ184の検出結果は、トグルサポート130の位置や間隔Lの監視や制御に用いられる。尚、トグルサポート130の位置を検出するトグルサポート位置検出器、および間隔Lを検出する間隔検出器は、型厚調整モータエンコーダ184に限定されず、一般的なものを使用できる。
型厚調整機構180は、互いに螺合するねじ軸181とねじナット182の一方を回転させることで、間隔Lを調整する。複数の型厚調整機構180が用いられてもよく、複数の型厚調整モータ183が用いられてもよい。
尚、本実施形態の型締装置100は、型開閉方向が水平方向である横型であるが、型開閉方向が上下方向である竪型でもよい。
尚、本実施形態の型締装置100は、駆動源として、型締モータ160を有するが、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置100は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。
(エジェクタ装置)
エジェクタ装置200の説明では、型締装置100の説明と同様に、型閉時の可動プラテン120の移動方向(図1および図2中右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(図1および図2中左方向)を後方として説明する。
エジェクタ装置200は、金型装置800から成形品を突き出す。エジェクタ装置200は、エジェクタモータ210、運動変換機構220、およびエジェクタロッド230などを有する。
エジェクタモータ210は、可動プラテン120に取付けられる。エジェクタモータ210は、運動変換機構220に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構220に連結されてもよい。
運動変換機構220は、エジェクタモータ210の回転運動をエジェクタロッド230の直線運動に変換する。運動変換機構220は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
エジェクタロッド230は、可動プラテン120の貫通穴において進退自在とされる。エジェクタロッド230の前端部は、可動金型820の内部に進退自在に配設される可動部材830と接触する。エジェクタロッド230の前端部は、可動部材830と連結されていても、連結されていなくてもよい。
エジェクタ装置200は、制御装置700による制御下で、突き出し工程を行う。
突き出し工程では、エジェクタモータ210を駆動してエジェクタロッド230を設定移動速度で待機位置から突き出し位置まで前進させることにより、可動部材830を前進させ、成形品を突き出す。その後、エジェクタモータ210を駆動してエジェクタロッド230を設定移動速度で後退させ、可動部材830を元の待機位置まで後退させる。エジェクタロッド230の位置や移動速度は、例えばエジェクタモータエンコーダ211を用いて検出する。エジェクタモータエンコーダ211は、エジェクタモータ210の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、エジェクタロッド230の位置を検出するエジェクタロッド位置検出器、およびエジェクタロッド230の移動速度を検出するエジェクタロッド移動速度検出器は、エジェクタモータエンコーダ211に限定されず、一般的なものを使用できる。
(射出装置)
射出装置300の説明では、型締装置100の説明やエジェクタ装置200の説明とは異なり、充填時のスクリュ330の移動方向(図1および図2中左方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(図1および図2中右方向)を後方として説明する。
射出装置300は、フレーム900に対し進退自在なスライドベース301に設置され、金型装置800に対し進退自在とされる。射出装置300は、金型装置800にタッチし、金型装置800内のキャビティ空間801に成形材料を充填する。射出装置300は、例えば、シリンダ310、ノズル320、スクリュ330、計量モータ340、射出モータ350、圧力検出器360などを有する。
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。成形材料は、例えば樹脂などを含む。成形材料は、例えばペレット状に形成され、固体の状態で供給口311に供給される。供給口311はシリンダ310の後部に形成される。シリンダ310の後部の外周には、水冷シリンダなどの冷却器312が設けられる。冷却器312よりも前方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータなどの加熱器313と温度検出器314とが設けられる。
シリンダ310は、シリンダ310の軸方向(図1および図2中左右方向)に複数のゾーンに区分される。各ゾーンに加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ゾーン毎に、温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
ノズル320は、シリンダ310の前端部に設けられ、金型装置800に対し押し付けられる。ノズル320の外周には、加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
スクリュ330は、シリンダ310内において回転自在に且つ進退自在に配設される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。その後、スクリュ330を前進させると、スクリュ330前方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置800内に充填される。
スクリュ330の前部には、スクリュ330を前方に押すときにスクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング331が進退自在に取付けられる。
逆流防止リング331は、スクリュ330を前進させるときに、スクリュ330前方の成形材料の圧力によって後方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(図2参照)までスクリュ330に対し相対的に後退する。これにより、スクリュ330前方に蓄積された成形材料が後方に逆流するのを防止する。
一方、逆流防止リング331は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って前方に送られる成形材料の圧力によって前方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(図1参照)までスクリュ330に対し相対的に前進する。これにより、スクリュ330の前方に成形材料が送られる。
逆流防止リング331は、スクリュ330と共に回転する共回りタイプと、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプのいずれでもよい。
尚、射出装置300は、スクリュ330に対し逆流防止リング331を開放位置と閉塞位置との間で進退させる駆動源を有していてもよい。
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば油圧ポンプなどでもよい。
射出モータ350は、スクリュ330を進退させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構などが設けられる。運動変換機構は、例えばねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラなどが設けられてよい。スクリュ330を進退させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば油圧シリンダなどでもよい。
圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される圧力を検出する。圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の力の伝達経路に設けられ、圧力検出器360に作用する圧力を検出する。
圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。圧力検出器360の検出結果は、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力などの制御や監視に用いられる。
射出装置300は、制御装置700による制御下で、計量工程、充填工程および保圧工程などを行う。
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転速度で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。スクリュ330の回転速度は、例えば計量モータエンコーダ341を用いて検出する。計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、スクリュ330の回転速度を検出するスクリュ回転速度検出器は、計量モータエンコーダ341に限定されず、一般的なものを使用できる。
計量工程では、スクリュ330の急激な後退を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330が計量完了位置まで後退し、スクリュ330の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
計量工程におけるスクリュ330の位置および回転速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、計量開始位置、回転速度切換位置および計量完了位置が設定される。これらの位置は、前側から後方に向けてこの順で並び、回転速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、回転速度が設定される。回転速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。回転速度切換位置は、設定されなくてもよい。また、区間毎に背圧が設定される。
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定速度で前進させ、スクリュ330の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置800内のキャビティ空間801に充填させる。スクリュ330の位置や速度は、例えば射出モータエンコーダ351を用いて検出する。射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切換(所謂、V/P切換)が行われる。V/P切換が行われる位置をV/P切換位置とも呼ぶ。スクリュ330の設定速度は、スクリュ330の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
充填工程におけるスクリュ330の位置および移動速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、充填開始位置、移動速度切換位置およびV/P切換位置が設定される。これらの位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。
スクリュ330の移動速度が設定される区間毎に、スクリュ330の圧力の上限値が設定される。スクリュ330の圧力は、圧力検出器360によって検出される。圧力検出器360の検出値が設定圧力以下である場合、スクリュ330は設定移動速度で前進される。一方、圧力検出器360の検出値が設定圧力を超える場合、金型保護のため、圧力検出器360の検出値が設定圧力以下となるように、スクリュ330は設定移動速度よりも遅い移動速度で前進される。
尚、充填工程においてスクリュ330の位置がV/P切換位置に達した後、V/P切換位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切換が行われてもよい。V/P切換の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速前進または微速後退が行われてもよい。また、スクリュ330の位置を検出するスクリュ位置検出器、およびスクリュ330の移動速度を検出するスクリュ移動速度検出器は、射出モータエンコーダ351に限定されず、一般的なものを使用できる。
尚、制御装置700は、外部コンピュータからV/P切換信号を受信したときに、V/P切換を実施してもよい。外部コンピュータは、例えば金型装置800の内部に充填された成形材料の流動先端位置を検出する流動先端位置検出器840(図1参照)と接続されている。流動先端位置検出器840としては、例えば成形材料の圧力を検出する圧力検出器が用いられる。この圧力検出器の設置位置まで成形材料の流動先端が到達すると、圧力検出器の検出値が上昇する。外部コンピュータは、流動先端位置検出器840によって成形材料の流動先端が予め設定された位置に到達したことを検出すると、制御装置700にV/P切換信号を送信する。
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を前方に押し、スクリュ330の前端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも呼ぶ。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置800に向けて押す。金型装置800内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間などに応じて変更されてもよい。保圧工程における保持圧力および保持圧力を保持する保持時間は、それぞれ複数設定されてよく、一連の設定条件として、まとめて設定されてよい。
保圧工程では金型装置800内のキャビティ空間801の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間801の入口(以下、「ゲート」とも呼ぶ。)802がゲートバルブ850(図1参照)によって閉塞される。ゲートバルブ850は、ゲート802に挿入される閉塞位置(図1参照)とゲート802から抜出される開放位置(図2参照)との間で移動するバルブピン851を有する。保圧工程完了時にはキャビティ空間801の入口であるゲート802が閉塞されるため、キャビティ空間801からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間801内の成形材料の固化が行われる。成形サイクル時間の短縮のため、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
尚、本実施形態の金型装置800は、射出装置300のノズル320がタッチされる成形材料注入口803からゲート802に至る流路において成形材料の固化を防止すべく流路を加熱するホットランナー方式であるが、流路を加熱しないコールドランナー方式であってもよい。コールドランナー方式の金型装置800の場合、ゲートバルブ850は不要であり、保圧工程の完了時に、キャビティ空間801の入口は、バルブピン851の代わりに、固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間801からの成形材料の逆流が防止される。
尚、本実施形態の射出装置300は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式などでもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内にはスクリュが回転自在にまたは回転自在に且つ進退自在に配設され、射出シリンダ内にはプランジャが進退自在に配設される。
また、本実施形態の射出装置300は、シリンダ310の軸方向が水平方向である横型であるが、シリンダ310の軸方向が上下方向である竪型であってもよい。竪型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、竪型でも横型でもよい。同様に、横型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、横型でも竪型でもよい。
(移動装置)
移動装置400の説明では、射出装置300の説明と同様に、充填時のスクリュ330の移動方向(図1および図2中左方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(図1および図2中右方向)を後方として説明する。
移動装置400は、金型装置800に対し射出装置300を進退させる。また、移動装置400は、金型装置800に対しノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、液圧ポンプ410、駆動源としてのモータ420、液圧アクチュエータとしての液圧シリンダ430などを含む。
液圧ポンプ410は、第1ポート411と、第2ポート412とを有する。液圧ポンプ410は、両方向回転可能なポンプであり、モータ420の回転方向を切換えることにより、第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液(例えば油)を吸入し他方から吐出して液圧を発生させる。尚、液圧ポンプ410はタンクから作動液を吸引して第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液を吐出することもできる。
モータ420は、液圧ポンプ410を作動させる。モータ420は、制御装置700からの制御信号に応じた回転方向および回転トルクで液圧ポンプ410を駆動する。モータ420は、電動モータであってよく、電動サーボモータであってよい。
液圧シリンダ430は、シリンダ本体431、ピストン432、およびピストンロッド433を有する。シリンダ本体431は、射出装置300に対して固定される。ピストン432は、シリンダ本体431の内部を、第1室としての前室435と、第2室としての後室436とに区画する。ピストンロッド433は、固定プラテン110に対して固定される。
液圧シリンダ430の前室435は、第1流路401を介して、液圧ポンプ410の第1ポート411と接続される。第1ポート411から吐出された作動液が第1流路401を介して前室435に供給されることで、射出装置300が前方に押される。射出装置300が前進され、ノズル320が固定金型810に押し付けられる。前室435は、液圧ポンプ410から供給される作動液の圧力によってノズル320のノズルタッチ圧力を生じさせる圧力室として機能する。
一方、液圧シリンダ430の後室436は、第2流路402を介して液圧ポンプ410の第2ポート412と接続される。第2ポート412から吐出された作動液が第2流路402を介して液圧シリンダ430の後室436に供給されることで、射出装置300が後方に押される。射出装置300が後退され、ノズル320が固定金型810から離間される。
尚、本実施形態では移動装置400は液圧シリンダ430を含むが、本発明はこれに限定されない。例えば、液圧シリンダ430の代わりに、電動モータと、その電動モータの回転運動を射出装置300の直線運動に変換する運動変換機構とが用いられてもよい。
(制御装置)
制御装置700は、例えばコンピュータで構成され、図1~図2に示すようにCPU(Central Processing Unit)701と、メモリなどの記憶媒体702と、入力インターフェース703と、出力インターフェース704とを有する。制御装置700は、記憶媒体702に記憶されたプログラムをCPU701に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置700は、入力インターフェース703で外部からの信号を受信し、出力インターフェース704で外部に信号を送信する。
制御装置700は、計量工程、型閉工程、昇圧工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程などを繰り返し行うことにより、成形品を繰り返し製造する。成形品を得るための一連の動作、例えば計量工程の開始から次の計量工程の開始までの動作を「ショット」または「成形サイクル」とも呼ぶ。また、1回のショットに要する時間を「成形サイクル時間」または「サイクル時間」とも呼ぶ。
一回の成形サイクルは、例えば、計量工程、型閉工程、昇圧工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程をこの順で有する。ここでの順番は、各工程の開始の順番である。充填工程、保圧工程、および冷却工程は、昇圧工程の開始から脱圧工程の終了までの間に行われる。脱圧工程の終了は型開工程の開始と一致する。
尚、成形サイクル時間の短縮のため、同時に複数の工程を行ってもよい。例えば、計量工程は、前回の成形サイクルの冷却工程中に行われてもよく、昇圧工程の開始から脱圧工程の終了までの間に行われてよい。この場合、型閉工程が成形サイクルの最初に行われることとしてもよい。また、充填工程は、型閉工程中に開始されてもよい。また、突き出し工程は、型開工程中に開始されてもよい。ノズル320の流路を開閉する開閉弁が設けられる場合、型開工程は、計量工程中に開始されてもよい。計量工程中に型開工程が開始されても、開閉弁がノズル320の流路を閉じていれば、ノズル320から成形材料が漏れないためである。
尚、一回の成形サイクルは、計量工程、型閉工程、昇圧工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程以外の工程を有してもよい。例えば、保圧工程の完了後、計量工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された計量開始位置まで後退させる計量前サックバック工程が行われてもよい。計量工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を低減でき、計量工程の開始時のスクリュ330の急激な後退を防止できる。
制御装置700は、操作装置750や表示装置760と接続されている。操作装置750は、ユーザによる入力操作を受け付け、入力操作に応じた信号を制御装置700に出力する。表示装置760は、制御装置700による制御下で、操作装置750における入力操作に応じた表示画面を表示する。
表示画面は、射出成形機10の設定などに用いられる。表示画面は、複数用意され、切換えて表示されたり、重ねて表示されたりする。ユーザは、表示装置760で表示される表示画面を見ながら、操作装置750を操作することにより射出成形機10の設定(設定値の入力を含む)などを行う。
操作装置750および表示装置760は、例えばタッチパネルで構成され、一体化されてよい。尚、本実施形態の操作装置750および表示装置760は、一体化されているが、独立に設けられてもよい。また、操作装置750は、複数設けられてもよい。
(射出成形用データ管理装置)
図3は、一実施形態にかかる射出成形用データ管理装置としての制御装置の構成要素および上位コンピュータの構成要素を機能ブロックで示す図である。図3に図示される各機能ブロックは概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。各機能ブロックの全部または一部を、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。各機能ブロックにて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUにて実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
図3に示すように、制御装置700は、射出成形機10における検出器によって検出される検出値の経時変化を表すデータ(以下、「経時変化データ」とも呼ぶ。)が記憶されるデータ記憶部711を有する。経時変化データは、例えば、成形サイクル中に取得され、記憶される。経時変化データは、波形データであってよい。データ記憶部711には、経時変化データが、経時変化データから検出値を抽出する抽出タイミングを決定するための基準タイミングに関連付けて記憶される。経時変化データが基準タイミングに関連付けて記憶されるため、成形品の品質管理に用いられる実績データの検出タイミングを、成形品の成形後に変更できる。
データ記憶部711には、ショット毎に、経時変化データが基準タイミングに関連付けて記憶される。例えば、データ記憶部711には、経時変化データが、基準タイミングとショット番号とに関連付けて記憶される。特定のショット番号の経時変化データから、所望のタイミングの検出値を抽出できる。
図4は、一実施形態にかかる射出成形用データ管理装置のデータ記憶部によって記憶される経時変化データと基準タイミングとの関係を示すグラフである。図5は、一実施形態にかかる射出成形用データ管理装置のデータ記憶部によって記憶される経時変化データと基準タイミングとの関係を示す表である。図4および図5では、基準タイミングである成形機工程と別の基準タイミングである成形機工程とが時間的に重なるため、成形機工程の欄は便宜的に複数設けた。本明細書において、成形機工程とは、射出成形機10に搭載される制御装置700による制御下で行われる工程であり、1ショット中に行われる工程である。また、図4では、基準タイミングである状態信号の欄は便宜的に複数設けた。
データ記憶部711には、ショット毎に、1つの検出項目の経時変化データが記憶されてもよいが、複数の検出項目のそれぞれの経時変化データが記憶されてよい。例えば、データ記憶部711には、ショット毎に、スクリュ位置の経時変化データ、スクリュ移動速度の経時変化データ、スクリュ回転速度の経時変化データ、シリンダ内圧力の経時変化データ、可動プラテン位置の経時変化データおよび可動プラテン移動速度の経時変化データが記憶される。
スクリュ位置検出器およびスクリュ移動速度検出器としては、例えば射出モータエンコーダ351が用いられる。スクリュ回転速度検出器としては、例えば計量モータエンコーダ341が用いられる。シリンダ内圧力検出器としては、例えば圧力検出器360が用いられる。可動プラテン位置検出器および可動プラテン移動速度検出器としては、例えば型締モータエンコーダ161が用いられる。
基準タイミングは、例えば、経時変化データの取得中(例えば1回の成形サイクル中)における射出成形機10の動作タイミングを含む。射出成形機10の動作タイミングは、制御装置700によって制御される。データ記憶部711には、経時変化データが、経時変化データの取得中における射出成形機10の動作タイミングに関連付けて記憶される。射出成形機10の動作タイミングを基準として検出値を抽出でき、抽出した検出値を分析することで、射出成形機10の設定変更に役立てることができる。
射出成形機10の動作タイミングは、例えば、制御装置700による制御下で行われる成形機工程である。成形機工程としては、特に限定されないが、例えば、型閉工程、型閉一時停止工程、昇圧工程、脱圧工程、型開工程、充填工程、保圧工程、計量前サックバック工程、計量工程および冷却工程が挙げられる。これらの工程のそれぞれの開始タイミングと終了タイミングとが、経時変化データと関連付けてデータ記憶部711に記憶される。充填工程と保圧工程とを仕切るV/P切換も、成形機工程の1つである。
射出成形機10の動作タイミングは、射出成形機10の状態を決める状態信号であってもよい。状態信号としては、例えば、充填開始信号、V/P切換信号、計量開始信号、型閉開始信号、昇圧完了信号、脱圧開始信号、型開完了信号などが挙げられる。これらの信号は、成形機工程の開始タイミングまたは終了タイミングで、射出成形機10における検出器によって作成される。その作成されたタイミングが、動作タイミングである。また、状態信号としては、外部トリガ信号が挙げられる。
外部トリガ信号は、射出成形機10の周辺機器が制御装置700に所定の成形機工程を開始させるための信号である。制御装置700は、外部トリガ信号を受信すると、受信したタイミングで所定の成形機工程を開始する。制御装置が外部トリガ信号を受信したタイミングが動作タイミングである。射出成形機10の周辺機器としては、流動先端位置検出器840、ゲートバルブ850などが挙げられる。
流動先端位置検出器840は、成形材料の流動先端が予め設定された位置に到達したことを検出すると、制御装置700にV/P切換信号を送信する。制御装置700は、V/P切換信号を受信すると、受信したタイミングで保圧工程を開始する。成形材料の流動先端がキャビティ空間801の末端に到達する前にV/P切換を確実に実行でき、末端の壁に成形材料が衝突することによって生じ得る成形材料の圧力のオーバーシュートを抑制できる。
ゲートバルブ850は、ゲート802を開放した後で、充填開始信号を制御装置700に送信する。制御装置700は、充填開始信号を受信すると、受信したタイミングで充填工程を開始する。充填工程を開始すると、成形材料が成形材料注入口803からキャビティ空間801に向けて流動する。その途中のゲート802は充填工程の開始前に開放されるため、途中で成形材料が行き詰まることがなく、成形材料の圧力が異常に上昇することがない。
ゲートバルブ850は、ゲート802を閉塞した後で、計量開始信号を制御装置700に送信する。制御装置700は、計量開始信号を受信すると、受信したタイミングで計量工程を開始する。計量工程を開始すると、シリンダ310の前部に成形材料が蓄積される。このとき、シリンダ310の内部においてスクリュ330が後退するため、シリンダ310の内部に向けて金型装置800の内部から成形材料が逆流することがある。この逆流が生じても、ゲート802が閉塞済みであるため、キャビティ空間801の内部から成形材料が逆流することがない。
基準タイミングは、経時変化データの取得中(例えば1回の成形サイクル中)における射出成形機10の周辺機器20の動作タイミングを含んでよい。周辺機器20は、その動作タイミングを制御装置700に送信する。データ記憶部711には、経時変化データが、経時変化データの取得中における周辺機器20の動作タイミングに関連付けて記憶される。周辺機器20の動作タイミングを基準として経時変化データから検出値を抽出でき、抽出した検出値を分析することで、周辺機器20の設定変更に役立てることができる。
周辺機器20としては、例えば金型装置800の温度を調節する金型温調器が挙げられる。金型温調器は、水などの温調媒体を、予め設定された温度に調節したうえで、金型装置800の流路に供給する。温調媒体は、金型装置800の流路を流れながら金型装置800の温度を調節し、その後、金型装置800の外部に排出される。
金型温調器は、1回のショット中に温調媒体の設定温度を第1温度と第1温度よりも低い第2温度との間で変更する。例えば、金型温調器は、冷却工程の開始時に温調媒体の設定温度を第1温度から第2温度に低下する。その結果、金型装置800の温度の検出値が第1温度から第2温度まで徐々に低下する。金型装置800の温度の検出値が第1温度から第2温度まで徐々に低下する工程を、外部冷却工程と呼ぶ。
金型温度検出器は、金型装置800の温度を検出し、外部冷却工程の開始タイミングおよび終了タイミングを周辺機器20の動作タイミングとして制御装置700に送信する。データ記憶部711には、経時変化データが、経時変化データの取得中における外部冷却工程の開始タイミングおよび終了タイミングに関連付けて記憶される。外部冷却工程の開始タイミングまたは終了タイミングを基準として経時変化データから検出値を抽出でき、抽出した検出値を分析することで、外部冷却工程の設定変更に役立てることができる。
金型温調器は、冷却工程の終了後、充填工程の開始前に、温調媒体の設定温度を第2温度から第1温度に上昇する。その結果、金型装置800の温度の検出値が第2温度から第1温度まで徐々に上昇する。金型装置800の温度が第2温度から第1温度まで徐々に上昇する工程を、外部加熱工程と呼ぶ。
金型温度検出器は、金型装置800の温度を検出し、外部加熱工程の開始タイミングおよび終了タイミングを周辺機器20の動作タイミングとして制御装置700に送信する。データ記憶部711には、経時変化データが、経時変化データの取得中における外部加熱工程の開始タイミングおよび終了タイミングに関連付けて記憶される。外部加熱工程の開始タイミングまたは終了タイミングを基準として経時変化データから検出値を抽出でき、抽出した検出値を分析することで、外部加熱工程の設定変更に役立てることができる。
基準タイミングは、経時変化データの取得中(例えば1回の成形サイクル中)における射出成形機10の異常発生タイミングを含んでよい。異常発生タイミングは、モータの過負荷などの異常が発生するタイミングである。異常の有無は、射出成形機10における検出器の検出値に基づき判定される。射出成形機10に異常が発生すると、射出成形機10の動作が停止され、成形機工程が中断される。そのため、射出成形機10に異常が発生する異常発生タイミングは、射出成形機10の動作タイミングの1つとして扱うことも可能である。データ記憶部711には、経時変化データが、経時変化データの取得中における射出成形機10の異常発生タイミングに関連付けて記憶される。射出成形機10の異常発生タイミングを基準として経時変化データから検出値を抽出でき、抽出した検出値を分析することで、射出成形機10の異常の原因を推定できる。
図3に示すように、制御装置700は、入力部60において入力された抽出タイミングと基準タイミングを比較し、入力部60において入力された抽出タイミングで検出された検出値を、データ記憶部711によって記憶された経時変化データから抽出する検出値抽出部712を有する。経時変化データが基準タイミングに関連付けて記憶されるため、成形品の品質管理に用いられる実績データの検出タイミングを、成形品の成形後に変更できる。
入力部60は、例えばユーザによる入力操作を受け付け入力操作に応じた信号を上位コンピュータ50に送信する操作装置601と、上位コンピュータ50による制御下で操作装置601における入力操作に応じた入力画面610(図6および図8参照)を表示する表示装置602とを有する。入力画面610には、検出値抽出部712によって検出値を抽出する抽出タイミングが入力され、その入力結果が表示される。
操作装置601および表示装置602は、例えばタッチパネルで構成され、一体化されてよい。尚、本実施形態の操作装置601および表示装置602は、一体化されているが、独立に設けられてもよい。また、操作装置601は、複数設けられてもよい。
入力部60は、入力部60に入力された抽出タイミングを上位コンピュータ50に送信する。上位コンピュータ50は、制御装置700と同様にコンピュータで構成される。
上位コンピュータ50は、図1および図2に示すように、CPU501と、記憶媒体502と、入力インターフェース503と、出力インターフェース504とを有する。上位コンピュータ50は、記憶媒体502に記憶されたプログラムをCPU501に実行させることにより、各種の処理を行う。また、上位コンピュータ50は、入力インターフェース503で外部からの信号を受信し、出力インターフェース504で外部に信号を送信する。
上位コンピュータ50は、LAN(Local Area Network)またはインターネット回線などのネットワーク90を介して、制御装置700と通信可能に接続される。接続は、有線接続、無線接続のいずれでもよい。
図3に示すように、上位コンピュータ50は、入力部60に入力された抽出タイミングを制御装置700に送信する入力データ送信部511を有する。一方、制御装置700は、入力データ送信部511によって送信される抽出タイミングを受信する入力データ受信部713を有する。その結果、入力部60において入力された抽出タイミングを制御装置700が取得できる。
図6は、一実施形態にかかる射出成形用データ管理装置の入力部に表示される入力画面の第1例を示す図である。図7は、図6の入力画面に入力された抽出タイミングおよびその抽出タイミングが設定される検出項目と、その検出項目の経時変化データと、基準タイミングとの関係を示す表である。図7において斑点模様で示す領域の検出値が、検出値抽出部712によって抽出される。
図6に示すように、入力画面610は、基準タイミングが選択され入力される基準タイミング選択入力欄611~617と、基準タイミング選択入力欄611~617において入力された基準タイミングからの遅延時間が入力される遅延時間入力欄621とを有する。また、入力画面610は、検出項目が選択され入力される検出項目選択入力欄631~636を有する。
基準タイミング選択入力欄611~614は、成形機工程、状態信号、周辺機器工程および異常発生タイミングのうち、いずれか1つが選択され入力される入力欄である。図6の入力画面610では、成形機工程が選択されており、その選択結果が表示されている。
基準タイミング選択入力欄615は、成形機工程として選択され得る複数の候補のうち、いずれか1つが入力される入力欄である。図6の入力画面610では成形機工程としてV/P切換が入力されており、その入力結果(V/P切換およびそのID番号)が表示されている。
基準タイミング選択入力欄616は、状態信号として選択され得る複数の候補のうち、いずれか1つが入力される入力欄である。尚、図6の入力画面610では、上述の如く、状態信号ではなく成形機工程が選択されている。
基準タイミング選択入力欄617は、周辺機器工程として選択され得る複数の候補のうち、いずれか1つが入力される入力欄である。尚、図6の入力画面610では、上述の如く、周辺機器工程ではなく成形機工程が選択されている。
遅延時間入力欄621は、基準タイミング選択入力欄611~617において入力された基準タイミングからの遅延時間が入力される入力欄である。図6の入力画面610では遅延時間入力欄621には0(ゼロ)秒が入力されており、その結果が表示されている。
検出項目選択入力欄631~636は、スクリュ位置、スクリュ移動速度、スクリュ回転速度、シリンダ内圧力、可動プラテン位置および可動プラテン移動速度のうち、いずれか1つが選択され入力される入力欄である。図6の入力画面610では、シリンダ内圧力が選択されており、その選択結果が表示されている。
検出値抽出部712は、入力画面610に入力された抽出タイミングと基準タイミングとを比較する。抽出タイミングは、基準タイミング選択入力欄611~617に入力された基準タイミングを基準として、遅延時間入力欄621に入力された遅延時間だけ遅れたタイミングである。
図6に示す入力画面610では、上述の如く、基準タイミングとしてV/P切換が入力されており、遅延時間として0(ゼロ)秒が入力されている。従って、抽出タイミングとしては、V/P切換が選択されている。また、図6に示す入力画面610では、上述の如く、検出項目としてシリンダ内圧力が入力されている。この場合、検出値抽出部712は、図7に示すように、V/P切換時のシリンダ内圧力の検出値を、抽出する。
図8は、一実施形態にかかる射出成形用データ管理装置の入力部に表示される入力画面の第2例を示す図である。図9は、図8の入力画面に入力された抽出タイミングおよびその抽出タイミングが設定される検出項目と、その検出項目の経時変化データと、基準タイミングとの関係を示す表である。図9において斑点模様で示す領域の検出値が、検出値抽出部712によって抽出される。以下、図6および図7に示す第1例と、図8および図9に示す第2例との相違点について主に説明する。
図8に示す入力画面610では、基準タイミングとしてV/P切換が入力されており、遅延時間として0.5秒が入力されている。従って、抽出タイミングとしては、V/P切換から0.5秒後が選択されている。また、図6に示す入力画面610では、上述の如く、検出項目としてシリンダ内圧力が入力されている。この場合、検出値抽出部712は、図9に示すように、V/P切換から0.5秒後のシリンダ内圧力の検出値を、抽出する。
尚、入力画面610は、入力部60において複数の抽出タイミングを入力できるように、または入力部60において複数の検出項目を入力できるように、複数用意されてもよい。複数の入力画面610は、表示装置602に同時に表示されてもよいし、切換えて表示されてもよい。
図3に示すように、制御装置700は、検出値抽出部712によって抽出した検出値を上位コンピュータ50に送信する抽出データ送信部714を有する。一方、上位コンピュータ50は、抽出データ送信部714によって送信される検出値を受信する抽出データ受信部512を有する。
尚、データ記憶部711および検出値抽出部712は、上記実施形態では射出成形機10に搭載される制御装置700に備えられるが、上位コンピュータ50に備えられてもよい。後者の場合、制御装置700は、経時変化データを上位コンピュータ50に送信するデータ送信部を有する。一方、上位コンピュータ50は、データ送信部によって送信されるデータを受信するデータ受信部を有する。
データ記憶部711および検出値抽出部712が上位コンピュータ50に備えられる場合、制御装置700が上位コンピュータ50に経時変化データを送信した後に、送信済みの経時変化データを制御装置700から消去することができる。そのため、制御装置700の記憶容量を低減できる。尚、データ記憶部711および検出値抽出部712が制御装置700に備えられる場合、制御装置700が上位コンピュータ50に経時変化データを送信しなくてよいため、制御装置700と上位コンピュータ50との間での通信データ量を低減できる。
データ記憶部711および検出値抽出部712が上位コンピュータ50に備えられる場合、入力部60において入力された入力データや検出値抽出部712によって抽出された抽出データは、上位コンピュータ50と制御装置700との間で送受信されなくてよい。そのため、入力データ送信部511、入力データ受信部713、抽出データ送信部714、および抽出データ受信部512は不要である。
図10は、一実施形態にかかる射出成形用データ管理装置の上位コンピュータと、複数の射出成形機のそれぞれに搭載される制御装置との関係を示す図である。図10に示すように、上位コンピュータ50は、異なる射出成形機10に搭載される複数の制御装置700A~700Eのそれぞれと通信可能に接続され、複数の制御装置700A~700Eのそれぞれとの間でデータ通信を行う。
複数の制御装置700A~700Eは、製造メーカの違いのために、実績データとして記録する検出値の検出されるタイミングが異なることがある。その場合に、上位コンピュータ50は、複数の制御装置700A~700Eのうちの少なくとも1つに抽出タイミングを送信して、複数の制御装置700A~700Eから同じ検出タイミングの実績データを取得できる。
尚、本実施形態では上位コンピュータ50が複数の制御装置700A~700Eのうちの少なくとも1つに抽出タイミングを送信するが、本発明はこれに限定されない。例えば入力部60は、入力部60において入力された抽出タイミングを、上位コンピュータ50を介さずに、複数の制御装置700A~700Eのうちの少なくとも1つに送信してもよい。入力部60は、射出成形機の一部であってもよく、操作装置750と表示装置760とで構成されてもよい。いずれにしても、上位コンピュータ50は、複数の制御装置700A~700Eから同じ検出タイミングの実績データを取得できる。
以上、射出成形用データ管理装置および射出成形機の実施形態等について説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
例えば、上記実施形態の入力画面610は、遅延時間入力欄621を有するが、遅延時間入力欄621の代わりに(または加えて)、遡及時間入力欄を有してもよい。遡及時間入力欄は、基準タイミング選択入力欄611~617において選択した基準タイミングから遡る遡及時間が入力される入力欄である。この場合、抽出タイミングは、基準タイミング選択入力欄611~617に入力された基準タイミングを基準として、遡及時間入力欄に入力された遡及時間だけ早いタイミングである。