JP7009806B2 - 複合タングステン酸化物粒子含有樹脂、複合タングステン酸化物粒子分散液および複合タングステン酸化物粒子分散粉 - Google Patents
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Description
また、例えばガス溶接作業、ガス溶断作業、アーク灯または水銀灯などを用いる作業、赤外線灯または殺菌灯などを用いる作業、高炉・鋼片加熱炉・造塊などの作業においては、当該作業により発生する強力な光による眼への暴露により、眼に障害が引き起こされるおそれがあることが知られている。
このような強力な光に暴露される作業に携わる者もまた、紫外光~可視光~近赤外光の各波長を持つ光を低減する層を有する眼鏡(アイウェア)を着用するか、当該光を低減する層を窓(作業用覗き窓)として有する保護面等を用いることがある。
例えばJIS T 8141:2003には、目に対して有害な紫外放射および近赤外放射並びに強烈な可視光を生じる場所において作業者の目を保護する為、各人が着用する遮光保護具について規定されている。またJIS T 8143:1994には、波長180nmから1mmまでのレーザー放射から作業者の目を保護する為に使用するレーザー保護フィルタおよびレーザー保護眼鏡について規定されている。
また特許文献2には、双眼鏡に様々なフィルターを取り付けるためのアダプタが開示され、当該フィルターとしてイエローガラス、熱線吸収ガラスおよびソーダライムガラスの少なくともいずれかから選ばれたガラスを用いることが開示されている。
また特許文献3には、レーザ光遮光用の第一レンズ要素と、防眩用の第二レンズ要素とを重ね合わせた保護眼鏡用レンズが開示されている。そして、当該レーザ光遮光用の第一レンズ要素は、紫外線波長域、可視光線波長域あるいは赤外線波長域において特定の波長を有するレーザ光線を選択的に吸収する吸収剤を含有すると共に、可視光線波長域において透明な基材であることが開示されている。
また特許文献4には、所定のアクリル樹脂、共重合可能な多官能単量体、油溶性染料および/または近赤外線吸収剤を重合してレンズを作製し、当該レンズを加工してなるレーザー保護眼鏡用レンズが開示されている。
すると、当該先行技術は近赤外光の遮光に関し[1]多層膜による光の反射、[2]有機色素による吸収、のいずれかの原理を利用したものであり、各々、課題を有するものであった。
以下、各々の原理と課題について説明する。
この原理は、屈折率の異なる2種類の層(即ち、高屈折率層と低屈折率層)を交互に積層するが、このとき1層あたりの厚みを[反射する光の波長]÷4とすることで、光の干渉効果により特定の波長の光のみを選択的に反射するものである。例えば、上述した先行技術文献のうち、特許文献1、2は、このような多層膜による光の反射を原理とした近赤外光の遮蔽を開示している。
この原理は、基材に近赤外光を吸収する特性を有する有機色素を高濃度で含有させることで、特定の波長の光のみを選択的に吸収させるものである。例えば、上述した先行技術文献のうち特許文献3、4は、このような有機色素による吸収を原理とした近赤外光の遮蔽を開示している。
Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cu、Naから選択される1種類以上の金属元素を含む複合タングステン酸化物粒子が、樹脂中に分散している複合タングステン酸化物粒子含有樹脂であって、
波長800nmから1600nmの近赤外線領域における光学濃度(OD)の値が1.5以上であることを特徴とする複合タングステン酸化物粒子含有樹脂である。
第2の発明は、
Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cu、Naから選択される1種類以上の金属元素を含む複合タングステン酸化物粒子が、樹脂中に分散している複合タングステン酸化物粒子含有樹脂であって、
前記樹脂中における前記複合タングステン酸化物の含有量が、前記樹脂の投影面積あたり3.0g/m2以上14.0g/m2以下であることを特徴とする複合タングステン酸化物粒子含有樹脂である。
第3の発明は、
前記樹脂中における前記複合タングステン酸化物の数平均粒子径が、40nm以下であることを特徴とする第1または第2の発明に記載の複合タングステン酸化物粒子含有樹脂である。
第4の発明は、
前記複合タングステン酸化物粒子が、一般式MxWOy(但し、Mは、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cu、Naから選択される1種類以上の金属元素、0.1≦x≦0.5、2.2≦y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物の粒子であることを特徴とする第1から第3の発明のいずれかに記載の複合タングステン酸化物粒子含有樹脂である。
第5の発明は、
前記金属元素が、Csおよび/またはRbであることを特徴とする第1から第4の発明のいずれかに記載の複合タングステン酸化物粒子含有樹脂である。
第6の発明は、
前記樹脂が、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂から選択されるいずれか1種以上を含有することを特徴とする第1から第5の発明のいずれかに記載の複合タングステン酸化物粒子含有樹脂である。
第7の発明は、
さらに、紫外線吸収剤を含有していることを特徴とする第1から第6の発明のいずれかに記載の複合タングステン酸化物粒子含有樹脂である。
第8の発明は、
さらに、酸化防止剤を含有していることを特徴とする第1から第7の発明のいずれかに記載の複合タングステン酸化物粒子含有樹脂である。
第9の発明は、
さらに、アミンを含有する基、水酸基、カルボキシル基、カルボン酸エステル、リン酸基、リン酸エステル、スルホン酸基、スルホン酸エステル、チオール基、または、エポキシ基から選択される1種類以上の基を、官能基として有する分散剤を含有していることを特徴とする第1から第8の発明のいずれかに記載の複合タングステン酸化物粒子含有樹脂である。
第10の発明は、
JIS R 3106:1998で算出される可視光透過率が10%以上であることを特徴とする第1から第9の発明のいずれかに記載の複合タングステン酸化物粒子含有樹脂である。
第11の発明は、
第1から第10の発明のいずれかに記載の複合タングステン酸化物粒子含有樹脂の樹脂層を有することを特徴とする近赤外線遮蔽レンズである。
第12の発明は、
第1から第10の発明のいずれかに記載の複合タングステン酸化物粒子含有樹脂の樹脂層、または、第11の発明に記載の近赤外線遮蔽レンズを有することを特徴とする近赤外線遮蔽眼鏡である。
第13発明は、
第1から第10の発明のいずれかに記載の複合タングステン酸化物粒子含有樹脂の樹脂層、または、第11の発明に記載の近赤外線遮蔽レンズを有することを特徴とする保護具である。
第14の発明は、
第1から第10の発明のいずれかに記載の複合タングステン酸化物粒子含有樹脂の樹脂層を有することを特徴とする近赤外線遮蔽窓材である。
第15の発明は、
第14の発明に記載の近赤外線遮蔽窓材を有することを特徴とする近赤外線遮蔽器具である。
第16の発明は、
第1から第10の発明のいずれかに記載の複合タングステン酸化物粒子含有樹脂の樹脂層が、フィルム基板上に設けられていることを特徴とする近赤外線遮蔽フィルムである。
第17の発明は、
第1から第10の発明のいずれかに記載の複合タングステン酸化物粒子含有樹脂の樹脂層が、ガラス基板上に設けられていることを特徴とする近赤外線遮蔽ガラスである。
第18の発明は、
第1から第10の発明のいずれかに記載の複合タングステン酸化物粒子含有樹脂の樹脂層を製造する為に用いる複合タングステン酸化物粒子分散液であって、
Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cu、Naから選択される1種類以上の元素を含む複合タングステン酸化物粒子が、有機溶媒中に分散しており、
前記複合タングステン酸化物粒子の数平均粒子径が、40nm以下であることを特徴とする複合タングステン酸化物粒子分散液である。
第19の発明は、
前記複合タングステン酸化物粒子が、一般式MxWOy(但し、M元素は、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cu、Naから選択される1種類以上の元素、0.1≦x≦0.5、2.2≦y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物の粒子であることを特徴とする第18の発明に記載の複合タングステン酸化物粒子分散液である。
第20の発明は、
さらに、アミンを含有する基、水酸基、カルボキシル基、カルボン酸エステル、リン酸基、リン酸エステル、スルホン酸基、スルホン酸エステル、チオール基、または、エポキシ基から選択される1種類以上の基を、官能基として有する分散剤を含有していることを特徴とする第18または第19の発明に記載の複合タングステン酸化物粒子分散液である。
第21の発明は、
第18から第20の発明のいずれかに記載の複合タングステン酸化物粒子分散液から、前記有機溶剤が除去されたものであることを特徴とする複合タングステン酸化物粒子分散粉である。
第22の発明は、
前記複合タングステン酸化物粒子の数平均粒子径が40nm以下であることを特徴とする第21の発明に記載の複合タングステン酸化物粒子分散粉である。
第23の発明は、
さらに、アミンを含有する基、水酸基、カルボキシル基、カルボン酸エステル、リン酸基、リン酸エステル、スルホン酸基、スルホン酸エステル、チオール基、または、エポキシ基から選択される1種類以上の基を、官能基として有する分散剤を含有していることを特徴とする第21または第22の発明に記載の複合タングステン酸化物粒子分散粉である。
本発明に係るMWO粒子含有樹脂は、複合タングステン酸化物粒子と、樹脂と、所望によりその他の成分とを含有する。
本発明に係るMWO粒子含有樹脂について、(1)本発明に係る複合タングステン酸化物粒子含有樹脂、(2)複合タングステン酸化物粒子、(3)樹脂、(4)その他の成分、(5)まとめ、の順に説明する。
本発明に係るMWO粒子含有樹脂は、複合タングステン酸化物粒子として一般式MxWOy(但し、Mは、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cu、Naから選択される1種類以上の元素、0.1≦x≦0.5、2.2≦y≦3.0)で示される複合タングステン酸化物の粒子を含有している。
当該複合タングステン酸化物の粒子は、従来、日射遮蔽ウィンドウフィルムや日射遮蔽合わせ透明基材、日射遮蔽樹脂シートといった、近赤外光からの眼の保護という分野とは異なる日射遮蔽分野で用いられてきた。
これは従来の技術に係るレーザ遮蔽部材が、上述したように多層膜による干渉や、有機色素による吸収といった、狭い波長範囲においてのみ遮蔽機能をもたらす原理に基づくものであったためである。これに対し本発明の複合タングステン酸化物粒子は、ナノ粒子中の自由電子による局在表面プラズモン共鳴という原理に基づいていることによるものである。
また複合タングステン酸化物粒子は、局在表面プラズモン共鳴を持つ他の粒子と比較して、近赤外光の吸収に対する可視光の透明性が飛び抜けて高いために、波長800~1600nmの近赤外光にわたる幅広い領域において高い光学濃度を実現したにも拘らず、可視光領域においては、高い透過率を担保できたと考えられる。
本発明に係る複合タングステン酸化物粒子には、一般式MxWOy(但し、Mは、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cu、Naから選択される1種類以上の元素、0.1≦x≦0.5、2.2≦y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物の粒子を好ましく用いることができる。
尚、複合タングステン酸化物を示す化学式MxWOy中、Wはタングステン、Oは酸素を示している。また、上記式中の元素Mとしては上述のように、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cu、Naから選択される1種類以上の元素であることが好ましい。
本発明の発明者らの検討によると、タングステン酸化物(WOy)も赤外線吸収特性を有している。しかし、タングステン酸化物の場合、例えば三酸化タングステン(WO3)中には有効な自由電子が存在しないため近赤外領域の吸収反射特性が少ない。ここで、タングステン酸化物(WOy)のタングステンに対する酸素の比率であるyの値を3未満とすることによって、当該タングステン酸化物中に自由電子を生成し、効率の良い赤外線吸収性粒子とすることができる。一方、WO2の結晶相は、可視領域の光に対して吸収や散乱を生じさせる為、可視光の透明性を損なう場合がある。
この為、タングステン酸化物の粒子の場合、WOyで示される化学式中のyの値が、2.2≦y<3.0を満たすことにより、WO2の結晶相が生じることを抑制し、効率の良い赤外線吸収性粒子とすることができる。
但し、上述したように六方晶の複合タングステン酸化物の粒子は可視光の透過率と、近赤外の光の吸収率とを高めることができる。この為、本発明に係るMWO粒子含有樹脂に含まれる複合タングステン酸化物粒子の複合タングステン酸化物は、六方晶の結晶系であることが好ましい。
本発明に係るMWO粒子含有樹脂に用いる樹脂は、任意の樹脂を用いることができる。尤も、本発明に係るMWO粒子含有樹脂の用途を鑑みれば、十分な透明性を持った樹脂であることが望ましい。また加工性を考慮すると、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
具体的には、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、アイオノマー樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、という樹脂群から選択される1種の樹脂、または当該樹脂群から選択される2種以上の樹脂の混合物、または当該樹脂群から選択される2種以上の樹脂の共重合体から、好ましい樹脂の選択を行うことができる。
なかでも透明性が高く、かつ剛性、軽量性、長期耐久性、コストなどの面を考慮すると、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂から選択される1種の樹脂、または当該樹脂群から選択される2種以上の樹脂の混合物、または当該樹脂群から選択される2種以上の樹脂の共重合体であることが好ましい。
また、当該2価フェノールとして、ビス(4-ヒドロキシフェニル)のアルカン系があり、特にビスフェノールAを主成分とするものが好ましい。
本発明に係るMWO粒子含有樹脂には、上述した複合タングステン酸化物、および樹脂成分以外にも、さらに任意の成分を添加することができる。任意に添加できる成分の例として、(i)分散剤、(ii)紫外線吸収剤、(iii)ヒンダードアミン系光安定化剤、(iv)酸化防止剤、(v)その他の添加成分がある。これらの成分について以下に説明する。
本発明に係るMWO粒子含有樹脂へ、上述した複合タングステン酸化物粒子を均一に分散させる為に分散剤を添加することが好ましい。分散剤としては特に限定されるものではなく、MWO粒子含有樹脂の製造条件等に応じて任意に選択することができる。
例えば、示差熱・熱重量同時測定装置(本発明において「TG-DTA」と記載する場合がある。)を用いて測定される熱分解温度が250℃以上ある分散剤であることが好ましい。上述した熱分解温度は300℃以上あることがより好ましい。ここで、熱分解温度とはTG-DTAを用いJIS K 7120:1987に準拠した測定において、当該分散剤の熱分解による重量減少が始まる温度である。
また分散剤は、アミンを含有する基、水酸基、カルボキシル基、カルボン酸エステル、リン酸基、リン酸エステル、スルホン酸基、スルホン酸エステル、チオール基、または、エポキシ基から選択される1種類以上を官能基として有することが好ましい。上述のいずれかの官能基を有する分散剤は、複合タングステン酸化物粒子の表面に吸着し、複合タングステン酸化物粒子の凝集を防ぎ、MWO粒子含有樹脂中で複合タングステン酸化物粒子をより均一に分散させることができるため、好適に用いることができる。
さらに当該分散剤は主鎖として、アクリル、スチレン、ウレタン、ポリエチレン、エステル、ポリエチレンイミンからなる主鎖、または、これらの構造から選択される二種類以上の共重合からなる主鎖を有することが好ましい。これは、上述したいずれかの主鎖を有する分散剤は、立体障害により複合タングステン酸化物粒子の凝集を防ぐとともに、インクの溶媒や樹脂に相溶し、樹脂中へ複合タングステン酸化物粒子をより均一に分散させることができる為である。なかでも主鎖が、ポリエステルおよびポリエチレンイミンであると、主鎖構造中に複合タングステン酸化物粒子に対する吸着性を有する構造を有する為、複合タングステン酸化物粒子の凝集を防ぎ、MWO粒子含有樹脂中で複合タングステン酸化物粒子をより均一に分散させることが出来る為、さらに好適である。
また当該分散剤は、必要に応じて2種類以上を併用することも好ましい構成である。
官能基にアミンを含有する基を有する分散剤では分子量Mw2000~200000、アミン価5~100mgKOH/gのものが好ましい。また、カルボキシル基を有する分散剤では分子量Mw2000~200000、酸価1~50mgKOH/gのものが好ましい。
分散剤の添加量が上記範囲にあれば、複合タングステン酸化物粒子をより確実に樹脂中に均一に分散でき、得られるMWO粒子含有樹脂の物性に悪影響を及ぼすことがないからである。
本発明に係るMWO粒子含有樹脂へは、紫外線吸収剤を添加することが好ましい。
上述したように、本発明に係るMWO粒子含有樹脂の樹脂と当該樹脂を用いた樹脂層(本発明において「樹脂等」と記載する場合がある。)は複合タングステン酸化物粒子を含有しているため、主に近赤外領域の光の透過を抑制し、かかる有害光から目を保護することができる。
そして、MWO粒子含有樹脂へさらに紫外線吸収剤を添加することで、紫外領域の光をさらにカットすることが可能となり、有害光の抑止効果を更に高めることができる。
また、複合タングステン酸化物粒子を樹脂中に含有するMWO粒子含有樹脂の樹脂等は、強力な紫外線の長期暴露により透過率が低下することがあるが、紫外線吸収剤を添加することで、係る透過率の低下を抑制することができる。さらに、MWO粒子含有樹脂の分散媒体である高分子そのものが、紫外線の長期暴露により黄変などの劣化を起こすおそれがあるが、さらに紫外線吸収剤を添加することで、かかる高分子の黄変などの劣化を抑制することができる。
紫外線吸収剤としては例えば、ベンゾフェノン化合物、サリチル酸化合物、ベンゾトリアゾール化合物、トリアジン化合物、ベンゾトリアゾリル化合物、ベンゾイル化合物等の有機紫外線吸収剤や、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム等の無機紫外線吸収剤等が挙げられる。特に紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物から選択される1種以上を含有することが好ましい。これは、ベンゾトリアゾール化合物およびベンゾフェノン化合物は、紫外線を十分に吸収するだけの濃度を添加した場合でもMWO粒子含有樹脂の可視光透過率を非常に高くすることができ、かつ強力な紫外線の長期暴露に対する耐久性が高いためである。
また、MWO粒子含有樹脂の樹脂等はさらにヒンダードアミン系光安定化剤(本発明において「HALS」と記載する場合がある。)を含有することもできる。
上述の通り、樹脂等へ紫外線吸収剤を添加することで、本発明に係るMWO粒子含有樹脂の紫外線吸収能力を高めることができる。しかし本発明に係るMWO粒子含有樹脂が使用される環境、あるいは紫外線吸収剤の種類によっては、長時間の使用に伴って紫外線吸収剤自体が劣化し、紫外線吸収能力が低下してしまうことがある。これに対して、樹脂等へHALSを添加することにより、紫外線吸収剤の劣化を防止し、本発明に係るMWO粒子含有樹脂の紫外線吸収能力の維持に寄与することができる。
また上述の通り、強力な紫外線の長期暴露により、樹脂等中に分散した複合タングステン酸化物粒子の透過率が低下することがある。しかし、当該樹脂等にHALSを添加することでも、紫外線吸収剤を添加した場合と同様に、本発明に係るMWO粒子含有樹脂の樹脂等における透過率の低下を抑制することができる。
当該樹脂等中のHALSの含有率は例えば、0.05質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。これはHALSの含有率が0.05質量%以上であれば、前記HALSの添加による効果を樹脂等中で十分に発揮することができるためである。また含有率が5.0質量%以下であれば、樹脂等中でHALSが析出することがなく、また膜の強度や耐貫通性に大きな影響を与えないためである。
MWO粒子含有樹脂の樹脂等はさらに酸化防止剤(抗酸化剤)を含有することもできる。
当該樹脂等への酸化防止剤の添加により、当該樹脂等の酸化劣化を抑制し、さらに耐候性を向上させることができる。また、当該樹脂等中に含有される他の添加剤、例えば複合タングステン酸化物、紫外線吸収剤、HALSや、後述する染料化合物、顔料化合物、カップリング剤、界面活性剤、帯電防止剤等の酸化劣化を抑制し、耐候性を向上させることができる。
以上、任意の添加成分として、分散剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定化剤(HALS)、酸化防止剤について説明したが、他種の添加剤を配合することも可能である。
例えば、所望により任意の色調を与えるための、アゾ系染料、シアニン系染料、キノリン系、ペリレン系染料、カーボンブラック等、樹脂の着色に利用することができる染料化合物、顔料化合物を添加しても良い。
その他の添加剤としても、例えば、カップリング剤、界面活性剤、帯電防止剤等を添加することもできる。
以上に説明したMWO粒子含有樹脂を用いた樹脂等は、可視光の透明性と近赤外光の遮蔽性とが高いものである。
尤も、当該樹脂等に要求される可視光の透明性や近赤外光の遮蔽性の程度は、予め限定されるものではなく、当該樹脂等の用途等に応じて適宜定められるものである。例えば、当該樹脂等を窓材等の用途に用いる場合、人間の眼に対する光の透過性を保つ観点からは可視光透過率が高いほうが好ましい。また当該樹脂等を、アーク溶接切断作業、ガス溶接・切断作業、レーザ実験等による近赤外光の入射を低減する用途に用いる場合、人間の眼を有害光線から保護する観点から光学濃度が高いことが好ましい。
そして、当該樹脂等の可視光の透明性と、近赤外光の遮蔽性とは、それぞれ可視光透過率と、光学濃度とにより評価を行うことができる。
本発明に係るMWO粒子含有樹脂と、当該MWO粒子含有樹脂を用いた樹脂等の製造方法について、一例を挙げながら説明する。尚、以下説明する樹脂等の製造方法において、一般的な樹脂等の製造方法であって公知の部分については説明を省略している。
本発明に係るMWO粒子含有樹脂の樹脂等の製造方法は、例えば、以下の工程を有する。
(1)分散液製造工程:本発明に係るMWO粒子と分散剤とを有機溶剤に分散させて、本発明に係るMWO粒子分散液を製造する工程である。
(2)分散粉製造工程:分散液製造工程で製造された本発明に係るMWO粒子分散液から有機溶剤を除去することで、本発明に係るMWO粒子分散粉(本発明において「分散粉」と記載する場合がある。)を製造する工程である。
(3)樹脂の混練工程:本発明に係るMWO粒子分散粉と所定の樹脂とを混練し、本発明に係るMWO粒子含有樹脂を製造する工程である。
(4)樹脂の成形工程:本発明に係るMWO粒子含有樹脂を、各種所定の樹脂等や樹脂成形体へ成形する工程である。
(1)分散液製造工程
分散液製造工程は、MWO粒子と分散剤とを、有機溶剤に添加・混合し、一般的な分散方法を用いてMWO粒子の有機溶剤分散液を得る工程である。
分散方法としては特に限定されるものではないが、例えばビーズミル、ボールミル、サンドミル、超音波分散、ペイントシェーカーなどの分散方法を用いることができる。
当該分散液製造工程で好適に用いることができるMWO粒子、および分散剤については、「[1]複合タングステン酸化物粒子含有樹脂とその構成成分、(1)本発明に係る複合タングステン酸化物粒子含有樹脂」の欄にて説明したものを用いる。
有機溶剤の添加量については特に限定されるものではなく、MWO粒子および分散剤の添加量に応じて分散液を形成できるように、任意にその添加量を選択することができる。
分散剤の添加方法は、分散液製造工程において分散液を製造する際に全量を添加する必要はない。例えば分散液の粘度等を考慮して、分散剤の全添加量のうち一部とMWO粒子と有機溶剤とを混合物とし、既述の分散方法により分散液を形成した後、残部の分散剤を添加してもよい。
分散粉製造工程は、MWO粒子と分散剤とを有機溶剤に分散した分散液に対し、所望によりさらに適量の分散剤を添加した後、当該有機溶剤を除去することで、MWO粒子分散粉を製造するものである。
MWO粒子と分散剤とを有機溶剤に分散した分散液から、有機溶剤を除去する方法としては特に限定されないが、例えば減圧乾燥を好ましく用いることができる。具体的には、MWO粒子と分散剤とを有機溶剤に分散した分散液を攪拌しながら減圧乾燥して、MWO粒子分散粉と有機溶剤成分とを分離できる。減圧乾燥に用いる装置としては、例えば真空攪拌型の乾燥機が挙げられるが、上記機能を有する装置であれば良く、特に限定されない。また、有機溶剤を除去する際の具体的な減圧の圧力は限定されず、適宜選択できる。
混練工程は、分散粉製造工程で得られたMWO粒子分散粉と樹脂とを混練し、MWO粒子含有樹脂を得るものである。
当該混練工程において、必要に応じて紫外線吸収剤や、HALS、酸化防止剤、赤外線吸収性有機化合物等その他の添加剤を添加し、あわせて混練してMWO粒子含有樹脂を得ることもできる。尚、これらの添加剤等を添加するタイミングは特に限定されるものではなく、例えば分散液製造工程等、他の工程において添加することもできる。混練方法は特に限定されるものではなく、公知の樹脂混練方法を任意に選択して用いることができる。
成形工程は、混練工程で得られたMWO粒子含有樹脂を成形し各種の成形体を得る工程である。
成形方法は特に限定されるものではなく、製造する成形体の厚さ等のサイズや形状、混練物の粘度等に応じて任意に選択することができる。例えば、押出成形法、カレンダー成形法等成形方法を採用することができる。
また、成形体の形状は特に限定されるものではなく、要求される形状に応じて選択することができ、例えばシート状、ボード状、またはフィルム状の成形体に成形することができる。成形体を例えば眼鏡のレンズとする場合、所望するレンズの形状に加工し、また公知の方法により他のレンズ要素と張り合わせた多層レンズを製造することもできる。
本発明に係るMWO粒子含有樹脂の樹脂等の使用形態は特に限定されるものではない。
例えば、有害光線から保護するための溶接用保護面や遮光保護具等の保護具、レーザ光から保護するためのレーザ用保護メガネ、一般的なサングラス等の眼鏡に使用できる。ここで、レーザ用保護メガネや一般的なサングラス等は、視力矯正用の度付きのもの、および、度無しのものを含む。
ここで、本発明に係るMWO粒子含有樹脂の樹脂等を成形して、上述した保護具、眼鏡等とすることが出来る。また、透明基材の上に、本発明に係るMWO粒子含有樹脂の樹脂等を成形して得たフィルムや樹脂膜を設けて、上述した保護具、眼鏡等とすることも出来る。
実施例、比較例における試料の評価方法について、(1)数平均粒子径、(2)可視光透過率、光学濃度、の順に説明する。
微粒子分散液中における複合タングステン酸化物粒子の数平均粒子径は、当該分散液を観察用試料台(メッシュ)に滴下した後、乾燥させ、透過型電子顕微鏡(TEM、HF-220、日立製)でTEM像を観察して測定した。数平均粒子径は、倍率5万倍のTEM像において、複合タングステン酸化物粒子100個の粒子径を計測し、その平均値として求めた。
本発明に係るMWO粒子含有樹脂の樹脂等および多層フィルムの可視光透過率は、分光光度計(株式会社日立製作所製 型式:UH-4150)を用いて測定した、波長380nm~780nmの透過率から、JIS R 3106:1998に基づいて算出した。
ここでOD(λ)は波長λでの光学濃度、T(λ)は波長λでの透過率(0~100%)である。
尚、測定装置の限界により、この方法では8.0より大きい光学濃度を具体的に測定することが困難である。そこで本発明において、樹脂等および多層フィルムが8.0を超える光学濃度を持つと算出された場合、単に「8.0より大きい」あるいは「>8.0」と記載する。
複合タングステン酸化物粒子としてCs0.33WO3粒子(本発明において「粒子a」と記載する場合がある。)を20質量部、官能基としてアミンを含有する基とアクリル主鎖を有する分散剤(アミン価48mgKOH/g、分解温度250℃)(本発明において「分散剤a」と記載する場合がある。)を10質量部、有機溶剤であるメチルイソブチルケトン(沸点116.2℃)70質量部となるように秤量した。これらの原料を、0.3mmφZrO2ビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、10時間粉砕・分散処理し、粒子aの分散液(本発明において「粒子分散液a」と記載する場合がある。)を得た。尚、粒子aについて予め粉末X線回折測定を行ったところ、六方晶のCs0.33WO3を含んでいることが確認された。
そして、攪拌型真空乾燥機により常温で減圧乾燥を行ってメチルイソブチルケトンを除去し、粒子aの分散粉(本発明において「分散粉a」と記載する場合がある。)を得た。得られた分散粉a中のメチルイソブチルケトン含有量は2.9質量%であった。
得られたアクリル樹脂のペレットと、分散粉aとの混合物を260℃に設定した二軸押出機に供給して、混練を行った後、Tダイから押し出しカレンダーロール法により2.0mm厚のシート状に成形した。これにより実施例1に係るMWO粒子含有樹脂の樹脂層(本発明において「樹脂層A」と記載する場合がある。)を得た。尚、作製した樹脂層Aの投影面積における単位面積あたりの複合タングステン酸化物粒子の含有量は3.1g/m2となっている。
以上の製造条件を表1に示した。
以上の測定結果を表2に示した。
アクリル樹脂Aと分散粉aとを秤量・混合する際に、アクリル樹脂Aに対する分散粉aの量を変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2~6に係るMWO粒子含有樹脂の樹脂層(本発明においてそれぞれ「樹脂層B」「樹脂層C」「樹脂層D」「樹脂層E」および「樹脂層F」と記載する場合がある。)を作製した。尚、作製した樹脂層の投影面積における単位面積あたりの粒子aの含有量を、それぞれ表1に示す。
樹脂層B~Fにおける、可視光透過率および近赤外領域の光学濃度を、実施例1と同様に測定した。
その測定結果を表2に示した。
アクリル樹脂Aと分散粉aを秤量・混合する際に、アクリル樹脂Aに対する分散粉aの量を変更し、さらに紫外線吸収剤と酸化防止剤とを秤量し添加した以外は、実施例1と同様にして、実施例7に係るMWO粒子含有樹脂の樹脂層(本発明において「樹脂層G」と記載する場合がある。)を作製した。ここで紫外線吸収剤としてはTinuvin 326(BASF社製。ベンゾトリアゾール化合物。本発明において「紫外線吸収剤A」と記載する場合がある。)を用いた。また酸化防止剤としてはIrganox 1010(BASF社製、CAS No.6683-19-8で示される、ペンタエリスリトール・テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]。本発明において「酸化防止剤A」と記載する場合がある。)を用いた。
尚、作製した樹脂層の投影面積における単位面積あたりの複合タングステン酸化物粒子の含有量、作製した樹脂層中の紫外線吸収剤および酸化防止剤の濃度を表1に示す。
樹脂層Gの可視光透過率ならびに近赤外領域の光学濃度を、実施例1と同様に測定した。
その測定結果を表2に示した。
粒子aを10質量部、官能基としてカルボキシル基を持ちアクリル主鎖を有する分散剤(酸価3.5mgKOH/g、分解温度290℃)(本発明において「分散剤b」と記載する場合がある。)を10質量部、有機溶剤であるトルエン(沸点110.6℃)80質量部となるように秤量した。
これらの原料を0.3mmφZrO2ビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、14時間粉砕・分散処理し、粒子aの分散液(本発明において「粒子分散液b」と記載する場合がある。)を得た。
ここで、粒子分散液b内における複合タングステン酸化物粒子の数平均粒子径を上述の方法で測定したところ18nmであった。尚、以後の工程では粉砕処理等、粒子aの数平均粒子径が変化する操作を行わないことから、当該数平均粒子径を以って樹脂層中の粒子aの数平均粒子径とした。
そして、攪拌型真空乾燥機により常温で減圧乾燥を行ってトルエンを除去し、粒子aの分散粉(本発明において「分散粉b」と記載する場合がある。)を得た。得られた分散粉b中のトルエン含有量は3.5質量%であった。
樹脂層Hの可視光透過率ならびに近赤外領域の光学濃度を、実施例1と同様に測定した。
その測定結果を表2に示した。
複合タングステン酸化物粒子としてRb0.33WO3粒子(本発明において「粒子b」と記載する場合がある。)を20質量部、分散剤aを10質量部、有機溶剤であるメチルイソブチルケトンを70質量部となるように秤量した。これらの原料を、0.3mmφZrO2ビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、9時間粉砕・分散処理し、粒子bの分散液(本発明において「粒子分散液c」と記載する場合がある。)を得た。
尚、粒子bについて予め粉末X線回折測定を行ったところ、六方晶のRb0.33WO3を含んでいることが確認された。
そして、攪拌型真空乾燥機により常温で減圧乾燥を行ってメチルイソブチルケトンを除去し、粒子bの分散粉(本発明において「分散粉c」と記載する場合がある。)を得た。得られた分散粉c中のメチルイソブチルケトン含有量は2.7質量%であった。
得られたアクリル樹脂のペレットと、分散粉cとの混合物を260℃に設定した二軸押出機に供給して、混練を行った後、Tダイから押し出しカレンダーロール法により2.0mm厚のシート状に成形した。これにより実施例9に係るMWO粒子含有樹脂の樹脂層(本発明において「樹脂層I」と記載する場合がある。)を得た。尚、作製した樹脂層Iの投影面積における単位面積あたりの粒子bの含有量は7.4g/m2となっている。これを表1に示す。
樹脂層Iの可視光透過率ならびに近赤外領域の光学濃度を、実施例1と同様に測定した。
その測定結果を表2に示した。
実施例1で得られた粒子分散液aを、アクリル系の紫外線硬化樹脂であるアロニックスUV-3701(東亞合成社製。本発明において「アクリル樹脂B」と記載する場合がある。)と、粒子分散液200質量部に対してアクリル樹脂Bが100重量部となる割合で混合し、十分に攪拌して混合液を調製した。
多層フィルムJの可視光透過率ならびに近赤外領域の光学濃度を、実施例1と同様に測定した、その測定結果を表2に示した。
アクリル樹脂Aのペレットのみを260℃に設定した二軸押出機に供給して、混練を行った後、Tダイから押し出しカレンダーロール法により2.0mm厚のシート状に成形した。これにより比較例1に係る樹脂の樹脂層(本発明において「樹脂層α」と記載する場合がある。)を得た。尚、作製した樹脂層αは粒子aを含有せず、樹脂層αの投影面積における単位面積あたりの粒子aの含有量は0.0g/m2となっている。これを表1に示す。
樹脂層αの可視光透過率ならびに近赤外領域の光学濃度を、実施例1と同様に測定した。
その測定結果を表2に示した。
アクリル樹脂Aと分散粉aとを秤量・混合する際に、アクリル樹脂Aに対する分散粉aの量を変更した以外は実施例1と同様にして、比較例2に係るMWO粒子含有樹脂の樹脂層(本発明において「樹脂層β」と記載する場合がある。)を作製した。尚、作製した樹脂層βの投影面積における単位面積あたりの粒子aの含有量は、2.2g/m2となっている。これを表1に示す。
樹脂層βの可視光透過率ならびに近赤外領域の光学濃度を、実施例1と同様に測定した。
その測定結果を表2に示した。
以上に示した実施例の結果によると、実施例1~実施例10に係る樹脂層A~Jならびに多層フィルムJは、10~60%といった高い可視光透過率を保ちながら、波長800~1600nmという近赤外領域の範囲における光学濃度(OD)のプロファイルにおいて、最小値でも2.0以上、最大値では8.0を超える光学濃度(OD)の値を実現していた。
従って、当該樹脂層A~Jおよび多層フィルムJは、レーザなどの強力な近赤外光の目に対する影響を大幅に軽減することが出来る優れた光学特性を発揮することが示された。
また比較例2に係る樹脂層βは、複合タングステン酸化物を含有するものの、投影面積における単位面積あたりの複合タングステン酸化物粒子の含有量が少ないために、やはり波長800~1600nmの光に対する光学濃度が十分ではなく、強力な近赤外光の目に対する影響を軽減する機能は低いものに留まった。
2.元素M
Claims (16)
- 一般式M x WO y (但し、Mは、Cs、Rbから選択される1種類以上の金属元素、0.1≦x≦0.5、2.2≦y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物の粒子が、樹脂中に分散している複合タングステン酸化物粒子含有樹脂であって、
前記樹脂中における前記複合タングステン酸化物の数平均粒子径が26nm以下であり、
さらに、アミンを含有する基、水酸基、カルボキシル基、カルボン酸エステル、リン酸基、リン酸エステル、スルホン酸基、スルホン酸エステル、チオール基、または、エポキシ基から選択される1種類以上の基を、官能基として有する分散剤を、含有しており、
前記分散剤は、示差熱・熱重量同時測定装置を用いて測定される熱分解温度が250℃以上ある分散剤であり(但し、前記熱分解温度とは、前記示差熱・熱重量同時測定装置を用いJIS K 7120:1987に準拠した測定において、当該分散剤の熱分解による重量減少が始まる温度である。)、
前記樹脂中における前記複合タングステン酸化物の含有量が、前記樹脂の投影面積あたり5.2g/m 2 以上であり、
波長800nmから1600nmの近赤外線領域における光学濃度(OD)の値が2.8以上であることを特徴とする複合タングステン酸化物粒子含有樹脂。 - 一般式M x WO y (但し、Mは、Cs、Rbから選択される1種類以上の金属元素、0.1≦x≦0.5、2.2≦y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物の粒子が、樹脂中に分散している複合タングステン酸化物粒子含有樹脂であって、
前記樹脂中における前記複合タングステン酸化物の数平均粒子径が26nm以下であり、
さらに、アミンを含有する基、水酸基、カルボキシル基、カルボン酸エステル、リン酸基、リン酸エステル、スルホン酸基、スルホン酸エステル、チオール基、または、エポキシ基から選択される1種類以上の基を、官能基として有する分散剤を含有しており、
前記分散剤は、示差熱・熱重量同時測定装置を用いて測定される熱分解温度が250℃以上ある分散剤であり(但し、前記熱分解温度とは、前記示差熱・熱重量同時測定装置を用いJIS K 7120:1987に準拠した測定において、当該分散剤の熱分解による重量減少が始まる温度である。)、
前記樹脂中における前記複合タングステン酸化物の含有量が、前記樹脂の投影面積あたり5.2g/m 2 以上14.0g/m2以下であることを特徴とする複合タングステン酸化物粒子含有樹脂。 - 前記樹脂が、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂から選択されるいずれか1種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の複合タングステン酸化物粒子含有樹脂。
- さらに、紫外線吸収剤を含有していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の複合タングステン酸化物粒子含有樹脂。
- さらに、酸化防止剤を含有していることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の複合タングステン酸化物粒子含有樹脂。
- JIS R 3106:1998で算出される可視光透過率が10%以上であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の複合タングステン酸化物粒子含有樹脂。
- 請求項1から6のいずれかに記載の複合タングステン酸化物粒子含有樹脂の樹脂層を有することを特徴とする近赤外線遮蔽レンズ。
- 請求項1から6のいずれかに記載の複合タングステン酸化物粒子含有樹脂の樹脂層、または、請求項7に記載の近赤外線遮蔽レンズを有することを特徴とする近赤外線遮蔽眼鏡。
- 請求項1から6のいずれかに記載の複合タングステン酸化物粒子含有樹脂の樹脂層、または、請求項7に記載の近赤外線遮蔽レンズを有することを特徴とする保護具。
- 請求項1から6のいずれかに記載の複合タングステン酸化物粒子含有樹脂の樹脂層を有することを特徴とする近赤外線遮蔽窓材。
- 請求項10に記載の近赤外線遮蔽窓材を有することを特徴とする近赤外線遮蔽器具。
- 請求項1から6のいずれかに記載の複合タングステン酸化物粒子含有樹脂の樹脂層が、フィルム基板上に設けられていることを特徴とする近赤外線遮蔽フィルム。
- 請求項1から6のいずれかに記載の複合タングステン酸化物粒子含有樹脂の樹脂層が、ガラス基板上に設けられていることを特徴とする近赤外線遮蔽ガラス。
- 請求項1から6のいずれかに記載の複合タングステン酸化物粒子含有樹脂の樹脂層を製造する為に用いる複合タングステン酸化物粒子分散液であって、
前記複合タングステン酸化物粒子が、一般式M x WO y (但し、M元素は、Cs、Rbから選択される1種類以上の元素、0.1≦x≦0.5、2.2≦y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物の粒子が、有機溶媒中に分散しており、
前記複合タングステン酸化物粒子の数平均粒子径が26nm以下であり、
さらに、アミンを含有する基、水酸基、カルボキシル基、カルボン酸エステル、リン酸基、リン酸エステル、スルホン酸基、スルホン酸エステル、チオール基、または、エポキシ基から選択される1種類以上の基を、官能基として有する分散剤を含有しており、
前記分散剤は、示差熱・熱重量同時測定装置を用いて測定される熱分解温度が250℃以上ある分散剤である(但し、前記熱分解温度とは、前記示差熱・熱重量同時測定装置を用いJIS K 7120:1987に準拠した測定において、当該分散剤の熱分解による重量減少が始まる温度である。)、ことを特徴とする複合タングステン酸化物粒子分散液。 - 請求項14に記載の複合タングステン酸化物粒子分散液から、前記有機溶媒が除去されたものであることを特徴とする複合タングステン酸化物粒子分散粉。
- 前記複合タングステン酸化物粒子の数平均粒子径が26nm以下であることを特徴とする請求項15に記載の複合タングステン酸化物粒子分散粉。
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