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JP7089871B2 - 電動ブレーキ装置 - Google Patents

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JP7089871B2 JP2017255137A JP2017255137A JP7089871B2 JP 7089871 B2 JP7089871 B2 JP 7089871B2 JP 2017255137 A JP2017255137 A JP 2017255137A JP 2017255137 A JP2017255137 A JP 2017255137A JP 7089871 B2 JP7089871 B2 JP 7089871B2
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Description

この発明は、車両フィーリングの向上および作動音の低減を図ることができる電動ブレーキ装置に関する。
電動モータ装置および電動モータを使用した電動アクチュエータとして、以下の技術が提案されている。
電動モータの回転駆動力を減速機により減速し、直動機構を介して直線運動に変換して、摩擦パッドをディスクロータに押圧接触させて制動力を付加する技術(特許文献1)。
特開2003-247576号公報
例えば、特許文献1のような電動ブレーキ装置において、この電動ブレーキ装置を搭載する車両の操縦者がブレーキペダルを離す等のブレーキ解除を要求した際に、電動ブレーキ装置は、摩擦材とブレーキロータが離反する方向に電動モータを回転させ、ブレーキを解除する動作を行う。このとき、電動モータの角速度が十分でないと、例えば、操縦者がブレーキペダルを離してから制動力が解除されて車両が走り出すまでのタイムラグが大きくなり、ブレーキ引き摺り感のような車両フィーリング悪化に繋がる場合がある。
一方、ブレーキが解除されて所定のピストン待機位置等に移動する際、ブレーキ力が解除されている無負荷状態であるため、機械結合部の作動音が発生し易い状態にある。特に、モータ角速度が大きい場合、所定のピストン待機位置となるモータ角度に位置決めする上でモータ角速度を急減速させる必要があり、大きな作動音となってNVHが悪化する場合がある。
前記の問題と併せて換言すれば、ブレーキ引き摺り感を低減して車両フィーリングを改善するとモータ角速度が大きくなることでNVHが悪化し、NVHを改善するためにモータ角速度を制限すればブレーキ引き摺り感が増して車両フィーリングが悪化する、トレードオフ問題となる。
この発明の目的は、車両フィーリングの向上を図ると共に、作動音の低減を図ることができる電動ブレーキ装置を提供することである。
この発明の電動ブレーキ装置は、ブレーキロータ8と、このブレーキロータ8と接触してブレーキ力を発生する摩擦材9と、電動モータ4と、この電動モータ4の出力を前記摩擦材9の押圧力に変換する摩擦材操作手段6と、与えられたブレーキ力指令値に前記ブレーキ力が追従するように前記電動モータ4を制御する制御装置2と、を備えた電動ブレーキ装置において、
前記制御装置2は、
前記ブレーキ力指令値が零または前記ブレーキ力を解除するブレーキ解除要求を認識したとき、前記摩擦材9と前記ブレーキロータ8との間に定められたクリアランスが設けられる状態とするモータ角度指令値に追従するように前記電動モータ4の角度を制御するブレーキ解除時モータ制御部を有し、
このブレーキ解除時モータ制御部は、ブレーキ力を発揮した状態からブレーキ力を零とするとき、前記電動モータ4の角度を前記モータ角度指令値に対してオーバーシュートした後に前記モータ角度指令値に追従する機能を有する。
前記定められたクリアランスは、設計等によって任意に定めるクリアランスであって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により適切なクリアランスを求めて定められる。
この構成によると、ブレーキ解除時モータ制御部は、ブレーキ力を発揮した状態からブレーキ力を零とするとき、前記電動モータ4の角度を前記モータ角度指令値に対してオーバーシュートする。その後、ブレーキ解除時モータ制御部は、モータ角度をモータ角度指令値に追従する制御を実行する。このように、ブレーキを解除する際の動作について、敢えてオーバーシュートする波形とすることにより、迅速にブレーキ力を零とすることでブレーキ引き摺り感を低減しつつ、ブレーキ待機位置への位置決め時における急加減速を抑制することで作動音の低減(NVHの改善)を図れる。
前記ブレーキ解除時モータ制御部は、前記定められたクリアランスが設けられる状態となるモータ角度指令値を第一の解除指令値とし、前記ブレーキ解除時モータ制御部は、前記第一の解除指令値に対して定められたオーバーシュート特性を有する第二の解除指令値を演算し、この第二の解除指令値に対して前記電動モータ4を追従制御するものであってもよい。
前記定められたオーバーシュート特性は、設計等によって任意に定めるオーバーシュート特性であって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により適切なオーバーシュート特性を求めて定められる。
この場合、第一の解除指令値に対して定められたオーバーシュート特性を有する第二の解除指令値を演算するだけでよいので、コントローラ初期化等の複雑な処理が必要なものに比べて制御系を簡素化することができる。
前記制御装置2は、前記電動モータ4の現在の角速度を推定する角速度推定機能部24を有し、
前記ブレーキ解除時モータ制御部は、前記第二の解除指令値から定められた角加速度制限値を設定し、前記角速度推定機能部24で推定した角速度を前記角加速度制限値で加減速させた先の時刻における角速度を演算する機能を有し、
前記ブレーキ解除時モータ制御部は、前記演算した角速度で運動した場合の先の時刻におけるモータ角度を演算し、この演算したモータ角度を前記モータ角度指令値の制限値とし、この制限値を前記第一の解除指令値に滝用した値を前記第二の解除指令値としてもよい。
前記定められた角加速度制限値は、設計等によって任意に定める角加速度制限値であって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により適切な角加速度制限値を求めて定められる。
前記第二の解除指令値が、前記第一の解除指令値に対して定められたオーバーシュートおよび減衰特性を有する二次以上のローパスフィルタ26を介した値であってもよい。
前記定められたオーバーシュートおよび減衰特性は、設計等によって任意に定めるオーバーシュートおよび減衰特性であって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により適切なオーバーシュートおよび減衰特性を求めて定められる。
前記制御装置2は、第一の制御系特性に基づいて設定されたフィードバックゲインを含む演算パラメータを介して、定められたブレーキ力を発揮するよう前記電動モータ4をフィードバック制御するブレーキ力制御演算機能部を備え、
前記ブレーキ解除時モータ制御部は、第二の制御系特性に基づいて設定されたフィードバックゲインを含む演算パラメータを介して、ブレーキ力を発揮した状態からブレーキ力を零とする定められた角度に前記電動モータ4をフィードバック制御する機能を有し、
前記ブレーキ解除時モータ制御部の前記第二の制御系特性について、前記第一の制御系特性よりオーバーシュート量が大きく、かつ制定時間が長くなるように設定されるものであってもよい。
前記定められたブレーキ力、前記定められた角度は、それぞれ設計等によって任意に定めるブレーキ力、角度であって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により適切なブレーキ力、角度を求めて定められる。
前記制定時間は、所定の指令値に対して制御量が追従を完了して定常状態となるまでの時間であり、例えば、電動ブレーキ装置がブレーキ力指令値を零またはブレーキ力を解除するブレーキ解除要求を認識したときからオーバーシュートが収束するまでの時間とすることができる。
この場合、制御系特性を直接調整することができるので、確実にアクチュエータ動作を低作動音となるように調整することができる。但し、コントローラ切替に伴い適切な初期化等の処理が必要となる。
前記ブレーキ解除時モータ制御部は、ブレーキ力を発揮した状態からブレーキ力を零とするとき、前記摩擦材9と前記ブレーキロータ8とを離反させる方向に前記電動モータ4を回転し、前記ブレーキ力が零となった状態から前記電動モータ4を定められた角加速度で減速し、前記電動モータ4の角速度が零となった状態から、前記電動モータ4の角度を前記モータ角度指令値に対して追従制御する機能を有するものであってもよい。
前記定められた角加速度は、設計等によって任意に定める角加速度であって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により適切な角加速度を求めて定められる。
この場合、シンプルで分かり易い処理となり、例えばオーバーシュート特性の調整等が容易となる利点がある。但し、適切に処理状態を遷移させるための条件分岐や判断が必要となる為、演算時間が増加する場合がある。
前記ブレーキ解除時モータ制御部は、ブレーキ力を発揮した状態からブレーキ力を零とするとき、ブレーキ力が零となる状態から定められたモータ角度指令値に前記電動モータ4の角度を追従させるまでの間において、前記電動モータ4の出力を制限する機能を有し、この機能によって制限された前記電動モータ4の出力は、前記電動モータ4の出力の制限を実行する以外の電動モータ4の最大出力よりも小さな値であってもよい。
前記定められたモータ角度指令値は、設計等によって任意に定めるモータ角度指令値であって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により適切なモータ角度指令値を求めて定められる。
この場合、さらに直接的にアクチュエータ動作を低作動音となるように調整することができる。但し、モータ出力をさらに制限したことによる制御系への影響は十分に考慮される必要がある。
前記電動ブレーキ装置を搭載する車両の車体速を推定する車体速推定手段43を備え、前記ブレーキ解除時モータ制御部は、前記車体速に応じてオーバーシュート量を変化させるか、または前記車体速が閾値以上のときモータ角度をオーバーシュートする制御を解除するものであってもよい。
前記閾値は、設計等によって任意に定める閾値であって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により適切な閾値を求めて定められる。
オーバーシュートさせてNVHを改善すると、オーバーシュート中に再度ブレーキをかける場合の応答性が低下する場合がある。
車体速が大きい(速い)とき程ロードノイズ等の影響からNVHを考慮する必要が無く、ブレーキ解除直後に再度ブレーキが踏まれる場合へのリアクション速度を重視しなければならない。このため、例えば車体速が増加するとオーバーシュート量が減少するように車体速に応じてオーバーシュート量を変化させるか、または車体速が閾値以上のときモータ角度をオーバーシュートする制御を解除することでNVHを改善しつつ、応答遅れのリスクを低減することができる。或いは、より簡潔な処理とする為、車体速が略ゼロであるときにオーバーシュートする制御を実行し、車両が走行している場合には実行しない処理とすることもできる。
この発明の電動ブレーキ装置は、ブレーキロータと、このブレーキロータと接触してブレーキ力を発生する摩擦材と、電動モータと、この電動モータの出力を前記摩擦材の押圧力に変換する摩擦材操作手段と、与えられたブレーキ力指令値に前記ブレーキ力が追従するように前記電動モータを制御する制御装置と、を備えた電動ブレーキ装置において、前記制御装置は、前記ブレーキ力指令値が零または前記ブレーキ力を解除するブレーキ解除要求を認識したとき、前記摩擦材と前記ブレーキロータとの間に定められたクリアランスが設けられる状態とするモータ角度指令値に追従するように前記電動モータの角度を制御するブレーキ解除時モータ制御部を有し、このブレーキ解除時モータ制御部は、ブレーキ力を発揮した状態からブレーキ力を零とするとき、前記電動モータの角度を前記モータ角度指令値に対してオーバーシュートした後に前記モータ角度指令値に追従する機能を有する。このため、車両フィーリングの向上を図ると共に、作動音の低減を図ることができる。
この発明の実施形態に係る電動ブレーキ装置を概略示す図である。 同電動ブレーキ装置の制御系のブロック図である。 同電動ブレーキ装置の制御装置の一部の構成例を示すブロック図である。 同電動ブレーキ装置のブレーキ解除時の動作例を示す図である。 この発明の他の実施形態に係る電動ブレーキ装置の制御装置の一部の構成例を示すブロック図である。 この発明のさらに他の実施形態に係る電動ブレーキ装置の制御系のブロック図である。 同電動ブレーキ装置の制御装置の一部の構成例を示すブロック図である。 同制御装置において、制御系の特性によってオーバーシュート特性を得る例を示す図である。 この発明のさらに他の実施形態に係る電動ブレーキ装置の制御系のブロック図である。 同電動ブレーキ装置の制御装置の一部の構成例を示すブロック図である。 同制御装置のトルク制限例を示す図である。 同制御装置の他のトルク制限例を示す図である。 この発明のさらに他の実施形態に係る電動ブレーキ装置の制御系のブロック図である。 この発明のさらに他の実施形態に係る電動ブレーキ装置の制御フローを示すフローチャートである。 従来例の電動ブレーキ装置の動作例を示す図である。 他の従来例の電動ブレーキ装置の動作例を示す図である。
この発明の実施形態に係る電動ブレーキ装置を図1ないし図4と共に説明する。この電動ブレーキ装置は例えば車両に搭載される。
図1に示すように、この電動ブレーキ装置1は、電動式直動アクチュエータDAと、電源装置3と、摩擦ブレーキBRとを備える。先ず、電動式直動アクチュエータDAおよび摩擦ブレーキBRの構造について説明する。
<電動式直動アクチュエータDAおよび摩擦ブレーキBRの構造>
図1に示すように、電動式直動アクチュエータDAは、アクチュエータ本体AHと、後述する制御装置2とを備える。図1および図2に示すように、アクチュエータ本体AHは、電動モータ4と、減速機構5と、摩擦材操作手段である直動機構6と、パーキングブレーキ機構7と、角度センサSaと、荷重センサSbとを有する。
図1に示すように、電動モータ4は、永久磁石式の同期電動機により構成すると省スペースで高効率かつ高トルクとなり好適であるが、例えば、ブラシを用いたDCモータ、または永久磁石を用いないリラクタンスモータ、あるいは誘導モータ等を適用することもできる。
減速機構5は、電動モータ4の回転を減速する機構であり、一次歯車12、中間歯車13、および三次歯車11を含む。この例では、減速機構5は、電動モータ4のロータ軸4aに取り付けられた一次歯車12の回転を、中間歯車13により減速して、回転軸10の端部に固定された三次歯車11に伝達可能としている。
直動機構6は、減速機構5で出力される回転運動を送りねじ機構により直動部14の直線運動に変換して、ブレーキロータ8に対して摩擦材9を当接離隔させる機構である。直動部14は、回り止めされ且つ矢符A1にて表記する軸方向に移動自在に支持されている。直動部14のアウトボード側端に摩擦材9が設けられる。電動モータ4の回転を減速機構5を介して直動機構6に伝達することで、回転運動が直線運動に変換され、それが摩擦材9の押圧力に変換されることによりブレーキ力を発生させる。なお電動ブレーキ装置1を車両に搭載した状態で、車両の車幅方向外側をアウトボード側といい。車両の車幅方向中央側をインボード側という。
パーキングブレーキ機構7のアクチュエータ16として、例えば、リニアソレノイドが適用される。アクチュエータ16によりロック部材15を進出させて中間歯車13に形成された係止孔(図示せず)に嵌まり込ませることで係止し、中間歯車13の回転を禁止することで、パーキングロック状態にする。ロック部材15を前記係止孔から離脱させることで中間歯車13の回転を許容し、アンロック状態にする。
図2に示すように、角度センサSaは、電動モータ4の回転の角度を検出する。角度センサSaは、例えば、レゾルバまたは磁気エンコーダ等を用いると高精度かつ高信頼性であり好適であるが、光学式のエンコーダ等の各種センサを適用することもできる。前記角度センサSaを用いずに、例えば、後述する制御装置2において、電動モータ4の電圧と電流との関係等からモータ角度を推定するような角度センサレス推定を用いることもできる。
荷重センサSbは、直動機構6の荷重が作用する所定部位の変位または変形を検出する。このような荷重センサSbとして、例えば、磁気センサ、歪センサ、圧力センサ等を用いることができる。前記荷重センサSbを用いずに、制御装置2において、モータ角度および電動ブレーキ装置剛性、モータ電流および電動式アクチュエータDAの効率等から荷重センサレス推定を行ってもよい。あるいは、例えば、摩擦ブレーキBRを実装する車輪のホイールトルクまたは電動ブレーキ装置1を搭載する車両の前後力を検出するセンサ等、その他外部センサであってもよい。また、サーミスタ等の各種センサ類を要件に応じて別途設けてもよい。
図1に示すように、摩擦ブレーキBRは、車両の車輪と連動して回転するブレーキロータ8と、このブレーキロータ8と接触して制動力を発生させる摩擦材9とを有する。この摩擦材9はブレーキロータ近傍に配置される。摩擦材9をアクチュエータ本体AHにより操作してブレーキロータ8に押圧し、摩擦力によって制動力を発生させる機構を用いることができる。前記ブレーキロータ8および摩擦材9は、例えば、ブレーキディスクおよびキャリパを用いたディスクブレーキ装置であってもよく、あるいはドラムおよびライニングを用いたドラムブレーキ装置であってもよい。
<制御装置2の構成>
図2に示すように、各制御装置2は、対応する電動モータ4を制御する。各制御装置2に、電源装置3と、各制御装置2の上位制御手段である上位ECU17とが接続されている。電源装置3は、電動モータ4および制御装置2に電力を供給する。電源装置3は、例えば、この電動ブレーキ装置1を搭載する車両の低圧(例えば12V)バッテリ等を適用し得る。
上位ECU17として、例えば、車両全般を制御する電気制御ユニット(Vehicle Control Unit, VCU)が適用される。上位ECU17は、各制御装置2の統合制御機能を有する。上位ECU17は指令手段17aを備え、この指令手段17aは、図示外のブレーキ操作手段の操作量に応じて変化するセンサの出力に応じて、各制御装置2に目標とするブレーキ力指令値をそれぞれ出力する。なお指令手段17aは、ブレーキ操作手段そのものであってもよく、あるいはブレーキ操作手段の操作に依ることなく、例えば、自動運転車両における制動を判断して各制御装置2に指令値をそれぞれ出力することも可能である。
各制御装置2は、制御演算を行う各種制御演算器と、電流センサScと、モータドライバ18とを備える。前記各種制御演算器は、例えば、マイクロコンピュータ等のプロセッサ、または、FPGA、ASIC等の演算器および周辺回路により構成される。前記前記各種制御演算器は、ブレーキ力推定器19、回転運動推定器20、電流推定器21、アクチュエータ制御器22および指令値生成器23を有する。
ブレーキ力推定器19は、荷重センサSbの出力から制御演算に用いるアクチュエータ荷重(ブレーキ荷重)を推定する推定する機能を有する。あるいは、ブレーキ力推定器19は、前述の通り、荷重センサSb等のセンサ類を用いずに、アクチュエータ荷重を求めるセンサレス推定器とすることもできる。
回転運動推定器20は、角度センサSa等の電動モータ4の運動を検出するセンサから、制御演算に用いる角度、角速度、電気角位相等のパラメータ(演算パラメータ)を推定する機能を有する。回転運動推定器20は、前記角速度を推定する機能部として角速度推定機能部24を有する。前記パラメータは、例えば、角度を微分して角速度を得る等の微積分処理であってもよく、アクチュエータ運動方程式を演算に用いた状態推定オブザーバ等であってもよく、これらの併用であってもよい。あるいは、回転運動推定器20は、前述の通り、例えば、電動モータ4の電圧と電流から電気角速度または電気角位相を推定するような、センサレス推定器であってもよい。また、例えば、アクチュエータ反力の検出等、外乱オブザーバの機能を含めることもできる。
電流センサScは、例えば、シャント抵抗両端の電圧を検出するアンプからなるセンサ、または通電経路の周囲の磁束等を検出する非接触式センサ等を用いることができる。
電流推定器21は、電流センサScの出力から制御演算に用いる電流を推定する機能を有する。もしくは、例えば、モータドライバ18を構成する素子等の端子電圧等を検出する構成としてもよく、一次側の電流からモータ相電流を推定する構成としてもよい。あるいは、一切の電流センサを設けずに、電動モータ4の抵抗またはインダクタンス等の特性に基づきモータ電流をフィードフォワード制御することもできる。
アクチュエータ制御器22は、所定の指令値に対して、ブレーキ荷重等が追従するよう操作量を演算する。このアクチュエータ制御器22の制御演算は、例えば、アクチュエータ荷重指令値および推定値を直接フィードバック制御演算に用いてもよく、ブレーキ力をモータ角度等の他の物理量に変換して制御演算を行ってもよい。
また、例えば、荷重のフィードバック制御のフィードバックループ内にモータ電流制御ループを設けるような、一つまたは複数のマイナーフィードバックループを設ける演算構造とすると木目細かな制御が行えて好ましいが、単一のフィードバックループにてモータ操作量を演算する構造としてもよい。その他、予め推定されたアクチュエータ特性を基にフィードフォワード制御を行ってもよく、適応学習制御または予測制御を行ってもよく、またはこれらを適宜併用することもできる。その他、例えば、モータ出力または消費電力を制限するための所定の操作量を制限する機能等を設けてもよい。
指令値生成器23は、ブレーキ力制御演算機能部としてのブレーキ力制御指令演算部25と、ブレーキ解除時モータ制御部としてのブレーキ解除指令演算部26とを備える。ブレーキ力制御指令演算部25は、ブレーキ力を発揮する際のアクチュエータ動作指令値を生成する。ブレーキ解除指令演算部26は、ブレーキ力を解除する際の指令値を生成する。指令値生成器23は、例えば、ブレーキペダル等の指令手段17aから、アクチュエータ制御に用いる指令値を生成する。
前記指令値は、例えば、ブレーキ荷重等のブレーキ力、電動ブレーキ装置剛性等から導出される所定のブレーキ力となり得るモータ角度、電動ブレーキ装置効率等から導出される所定のブレーキ力となり得るモータトルクまたは電流、等をブレーキ力制御を行う際の指令値としてもよい。また、アクチュエータ等価リード等から導出される摩擦材9とブレーキロータ8との間に所定のクリアランスが発生し得るモータ角度等をブレーキ力の解除を行う際の指令値としてもよい。
ブレーキ力制御指令演算部25は、例えば、遊び分を超過してブレーキペダルが踏まれた場合等、指令手段17aの入力が所定の閾値を超過した場合は所定のブレーキ力を発揮するための指令値を出力してもよい。
ブレーキ解除指令演算部26は、ブレーキ力指令値が零またはブレーキ力を解除するブレーキ解除要求を認識したとき、摩擦材9とブレーキロータ8との間に定められたクリアランスが設けられる状態となるモータ角度指令値に追従するようにモータ角度を制御する。つまりブレーキ解除指令演算部26は、例えば、ブレーキペダルが戻された場合等、指令手段17aの入力が所定の閾値を下回った場合は摩擦材9とブレーキロータ8との間に十分なクリアランスを設けられる状態になるようモータ角度を制御するための指令値を出力してもよい。
このとき、閾値近傍でのチャタリングを防止するため、ブレーキ力を発揮する場合の閾値とブレーキ力を解除する場合の閾値とに適宜ヒステリシス等を設けてもよい。もしくは、例えば、車両統合制御装置(VCU)のような上位ECU17から所定のブレーキ作動/解除信号を出力し、前記所定の信号を以てブレーキ作動/解除の判断を行ってもよい。
ブレーキ解除指令演算部26はオーバーシュート波形生成部27を備える。このオーバーシュート波形生成部27は、前記所定のクリアランスを設けるためのモータ角度に制御する際、意図的に通常の制御と比較して比較的大きなオーバーシュートを発生させる指令値を生成することができる。ブレーキ解除指令演算部26は、ブレーキ力を発揮した状態からブレーキ力を零とするとき、オーバーシュート波形生成部27によりモータ角度をモータ角度指令値に対してオーバーシュートした後に前記モータ角度指令値に追従する機能を有する。
ブレーキ力を解除する際、前記オーバーシュートを発生させる指令値を生成する処理を設けることで、ブレーキ力を迅速に零とすることができてブレーキ引き摺り感が低減し、かつ前記モータ角度に位置決めを行う際の角加速度を低くできるため、騒音・振動・ハーシュネス(Noise, Vibration, Harshness:略称NVH)を改善することができるため好適である。
このときのオーバーシュート量OS(図4参照)は、大きなブレーキ力を発揮する電動ブレーキ装置1である程大きく、また、摩擦材9とブレーキロータ8との間のクリアランス量が小さい程比率として大きなオーバーシュートをさせる必要が生じる傾向にある。経験的にオーバーシュート中に発生する最大クリアランス量が、目標とするクリアランス量の1.5~3倍程度となるよう調整されると十分なNVHの改善効果が期待できるが、実際の特性は、電動ブレーキ装置1を動作させた際のモータ角速度等に応じて適宜定められるものとする。
また、例えば、旋回時または走行速度等の車両の走行状態に応じて、ブレーキ解除完了後に摩擦材9とブレーキロータ8との間のクリアランスを調整する機能を別途設けることもできる。このとき、一般に応答速度は、ブレーキ力を制御する場合と比較して緩慢であっても問題が無い場合が多いため作動音が発生し難く、あるいはクリアランスを調整する必要が生じるのは車両が走行している最中であることからロードノイズ等の暗騒音が大きい場合が多い。したがって、ブレーキ解除指令演算部26は、上記のブレーキ解除時のようなオーバーシュートを発生させないか、あるいは比較的小さなオーバーシュート量となるように調整してもよい。
モータドライバ18は、電動モータ4のコイルに供給する電力を制御する。モータドライバ18は、例えば、電界効果トランジスタ(Field effect transistor;略称FET)等のスイッチ素子を用いたハーフブリッジ回路を構成し、前記スイッチ素子のON-OFFデューティ比によりモータ印加電圧を決定するPWM制御を行う構成とすると安価で高性能となる。あるいは、変圧回路等を設け、PAM制御を行う構成とすることもできる。
前記ハーフブリッジ回路のうち、電源装置3のプラス側との接続を行うHアームスイッチ素子のスイッチング用電位源として、Lアームスイッチ素子がONになった際に所定の電位源から電荷が蓄積され、Hアームスイッチ素子がONとなる際にゲートに印加する電位源として機能するブートストラップコンデンサを用いたチャージ回路を設けると、低コストでモータドライバ18を駆動できて好適である。
本図は、あくまで機能構成の概念を示したものであり、図示外の要素は要件に応じて適宜設けられるものとする。また、各機能ブロックは便宜上設けているものであり、実装上の都合に伴い適宜統合ないし分割可能であるものとする。また、各機能の接続形態は一つの例として示すものであり、前述の機能に支障をきたさない範囲で変更できるものとする。
<制御器の構成例>
図3は、図2の例における指令値生成器23の構成例を示す。
図3に示す指令値生成器23は、アクチュエータ制御指令値をモータ角度とし、所定のモータ角加速度からモータ角度指令の制限値を導出し、前記制限値を用いてオーバーシュート波形を生成する例を示す。この指令値生成器23は、ブレーキ力制御指令演算部25と、ブレーキ解除指令演算部26と、ブレーキ解除要求判断部28と、切替手段29とを有する。
<ブレーキ力制御指令演算部25>
ブレーキ力制御指令演算部25はブレーキ力・モータ角度変換部25aを有し、このブレーキ力・モータ角度変換部25aは、ブレーキ力指令値から、電動ブレーキ装置剛性等に基づいて所定のブレーキ力となり得るモータ角度を導出し、ブレーキ力制御指令演算部25の指令値とする。本図の例の他に、モータ角度に代えて、例えば、ブレーキ荷重指令値等を用いてもよく、電動ブレーキ装置効率等に基づいて所定のブレーキ力となり得るモータ電流を導出して指令値としてもよい。
<ブレーキ解除指令演算部26>
ブレーキ解除指令演算部26は、クリアランス・モータ角度変換部30、オーバーシュート波形生成器である角度指令リミッタ27A、角速度変化量演算部31、角度演算部32,32および指令値記憶部33を有する。
クリアランス・モータ角度変換部30は、クリアランス指令値から、アクチュエータ等価リード等に基づいて所定のクリアランスとなり得るモータ角度(モータ角度指令値)を導出し、このモータ角度指令値を第一の解除指令値とする。前記クリアランス指令値は、所定の値であってもよく、車両の走行状態等に基づいて適宜変更される可変の値であってもよい。
角速度変化量演算部31は、所定の角加速度制限値から、モータ角速度の変化量を導出する。制御装置2(図2)が所定の演算サンプリングレートt_smpで動作している場合、角速度変化量演算部31は、例えば、所定の角加速度制限値α_limから、所定の方向および反転方向それぞれに対する前記角加速度制限値でのモータ角速度の変化量ΔωをΔω=α_lim・t_smpと導出することができる。なお、等式の単位系は所定の変換係数等で等式が成立するよう適宜調整されるものとする。
回転運動推定器20(図2)で推定した推定モータ角速度つまり現在のモータ角速度から、±Δωで変化した角速度をそれぞれ導出し、角度演算部32,32により前記角速度を前記演算サンプリングレートから角度にそれぞれ換算する。これら換算値を、指令値記憶部33に記憶された前演算サイクルまでの指令値に加算し、所定の上限値および下限値を得る。すなわち、角度上限値θp=(ω+Δω)・t_smp+θz、角度下限値θn=(ω-Δω)・t_smp+θzを得る(θz:前演算サイクルまでの指令値)。
角度指令リミッタ27Aは、前記角度上下限値を以て、前記第一の解除指令値を制限し、制限された指令値を第二の解除指令値とし、前記第二の解除指令値をブレーキ解除指令演算部26の指令値とする。
ブレーキ解除要求判断部28は、前記ブレーキ力制御指令演算部25の指令値と、前記ブレーキ解除指令演算部26の指令値とのうち、適切なものを最終的な指令値として選択するため、切替手段29を切替える。この図3の例では、ブレーキ解除指令演算部26の指令値が選択されている。なお、前演算サイクルからの切替が発生した場合、選択されなかった側の指令値導出フローは適宜初期化されるものとする。演算の順序は本図に限るものではなく、最終的な導出値が本図と等価となればよいものとする。例えば、ブレーキ解除指令演算部26において、角速度変化量から角度変化量を導出し、記憶された前演算サイクルまでの角度指令値に加減算し、この加減算値の一方を上限値、他方を下限値としてもよい。
<電動ブレーキ動作例>
図4は、この実施形態に係る電動ブレーキ装置を適用した際のブレーキ解除時の動作例を示す。同図に示すように、ブレーキ解除時に、モータ角度をモータ角度指令値に対してオーバーシュートした後に前記モータ角度指令値に追従することで、作動音の低減(NVHの改善)を図れる。
これに対して図15は、従来技術として、ブレーキ力を制御する際と同等の応答速度で動作する例を示す。この例では、ブレーキ力が零となり負荷が無い状態で位置決めのための大きな角加速度が発生することで、大きな作動音が発生し、NVHが悪化する。
図16は、従来技術として、ブレーキ解除時の応答速度を低下させる例を示す。この例は、作動音は本実施形態に係る電動ブレーキ動作例(図4)と同等となる一方、ブレーキ力が零となるまでの時間が増加し、ブレーキ解除時の引き摺り感となって車両フィーリングが低下する。
<作用効果について>
以上説明した電動ブレーキ装置1によると、ブレーキを解除する際の動作について、敢えてオーバーシュートする波形とすることにより、迅速にブレーキ力を零とすることでブレーキ引き摺り感を低減しつつ、ブレーキ待機位置への位置決め時における急加減速を抑制することで作動音の低減(NVHの改善)を図れる。
<他の実施形態について>
以下の説明においては、各実施の形態で先行して説明している事項に対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している形態と同様とする。同一の構成から同一の作用効果を奏する。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
前記第二の解除指令値が、前記第一の解除指令値に対して定められたオーバーシュートおよび減衰特性を有する二次以上のローパスフィルタを介した値であっても良い。
図5は、図3の例に代えて、ブレーキ解除指令演算部26として、オーバーシュート特性を有するローパスフィルタ34を第一の解除指令値に適用し、フィルタリングされた出力を第二の解除指令値とする例を示す。この例のオーバーシュート型ローパスフィルタ34は、例えば、二次以上の固有値を有するローパスフィルタにおいて、適切に減衰率(減衰特性)および時定数を選定することにより設定できる。
図6および図7は、オーバーシュート制御器35をアクチュエータ制御器22Aに設ける例を示す。
この例のアクチュエータ制御器22Aは、前述の実施形態のアクチュエータ制御器22(図2)の機能に加え、ブレーキ力制御を行う際のブレーキ力制御演算機能部としてのブレーキ力制御演算部36と、ブレーキ解除を行う際のブレーキ解除時モータ制御部としてのブレーキ解除制御演算部37とを備える。
<ブレーキ力制御演算部36>
ブレーキ力制御演算部36は、所定の指令値(アクチュエータ制御指令値)およびフィードバック値を用いて制御演算を行う。すなわちブレーキ力制御演算部36は、第一の制御系特性に基づいて設定されたフィードバックゲインを含む演算パラメータを介して、定められたブレーキ力を発揮するよう電動モータをフィードバック制御する。
なお、アクチュエータ制御指令値としてモータ角度指令を用いる例を示すが、このモータ角度指令に代えて、例えば、ブレーキ力指令値等を用いてもよく、電動ブレーキ装置効率等に基づいて所定のブレーキ力となり得るモータ電流を導出して指令値としてもよい。前記指令値の物理量に応じてフィードバックパラメータは適宜変更されるものとする。例えば、ブレーキ力指令値を用いる場合、フィードバックされるフィードバックパラメータは、ブレーキ力推定値となる。このブレーキ力推定値はブレーキ力推定器から得られる。
<ブレーキ解除制御演算部37>
ブレーキ解除制御演算部37は、ブレーキ力制御演算部36に対し、比較的大きなオーバーシュートを生じ、緩慢な収束特性となるよう制御演算を行う。前記制御演算は、例えば、図8に示す所望のオーバーシュートを発生する制御系の特性の調整に基づいた制御ゲイン等の演算パラメータ特性によるものであってもよく、あるいは後述する専用の制御フロー(図14)によるものであってもよい。
図6および図7に示すように、ブレーキ解除制御演算部37は、第二の制御系特性に基づいて設定されたフィードバックゲインを含む演算パラメータを介して、ブレーキ力を発揮した状態からブレーキ力を零とする定められた角度に電動モータ4をフィードバック制御する機能を有する。このブレーキ解除制御演算部37の第二の制御系特性について、前記第一の制御系特性よりオーバーシュート量が大きく、かつ制定時間が長くなるように設定されている。
ブレーキ解除制御演算部37のオーバーシュート制御器35は、所定のクリアランスを設けるためのモータ角度に制御する際、意図的に通常の制御と比較して比較的大きなオーバーシュートを発生させる制御を行うことができる。
図8は、制御系の特性によってオーバーシュート特性を得る例を示す。図8点線で示すブレーキ力制御演算部の制御特性と比較して、図8実線で示すブレーキ解除制御演算部の制御系の特性は、ピークゲインが高く、かつカットオフ周波数の低い制御系として設計することができる。
図6~図8の構成によると、制御系特性を直接調整することができるので、確実にアクチュエータ動作を低作動音となるように調整することができる。但し、コントローラ切替に伴い適切な初期化等の処理が必要となる。
図9は、アクチュエータ制御器を、ブレーキ力制御器38、操作量制限器39およびモータ電流制御器40に分割し、操作量制限器39に、通常のブレーキ力制御を行う際のブレーキ力制御時モータトルク制限部41と、ブレーキ解除を行う際のブレーキ解除時モータトルク制限部42とを設ける例を示す。
ブレーキ力制御時モータトルク制限部41は、例えば、モータ出力または消費電力等の制約に基づいて設定することができる。あるいは、電動モータ4に回転子の耐久性から許容される遠心力等の制約がある場合は、所定の角速度を超過しないようなトルク制限をブレーキ力制御時モータトルク制限部41に設けてもよい。
ブレーキ解除時モータトルク制限部42は、ブレーキ力を発揮した状態からブレーキ力を零とするとき、ブレーキ力が零となる状態から定められたモータ角度指令値に電動モータ4の角度を追従させるまでの間において、電動モータ4の出力を制限する機能を有し、この機能によって制限された電動モータ4の出力は、電動モータ4の出力の制限を実行する以外の電動モータ4の最大出力よりも小さな値である。
ブレーキ解除時モータトルク制限部42は、ブレーキ力制御時モータトルク制限部41による制限トルクよりも、比較的小さなモータトルクとなるよう制限する機能を有する。このようにブレーキ解除時にモータトルクを小さく制限することで、角加速度が低下するためオーバーシュートが発生するが、NVHが改善される。ブレーキ解除時モータトルク制限部42による制限値は、所定の制御設計要件に基づき適宜定められるものとする。
図10は、図9の構成例における操作量制限器39の構成例を示す。図9も参照しつつ説明する。
<ブレーキ力制御時モータトルク制限部41>
ブレーキ力制御時モータトルク制限部41は、ブレーキ力制御器38(図9)で演算された所定のブレーキ力を発揮するためのブレーキ力操作量であるモータトルクに対し、モータトルクを制限する機能を有するトルクリミッタ41a等から構成される。一般に、角速度が比較的低い領域においては、通電できる最大電流量に基づいて制限され、鉄損または機械損の影響を除けば、制限トルクは概ね一定とすることができる。角速度が比較的高い領域においては、前記制限量はモータ角速度に依存し、所定のモータ出力またはモータ駆動時の消費電力等に基づいて制限され、角速度が増加する程トルク値を小さく制限する必要がある。
前記両方の制限を行うことが一般的となるが、ブレーキ力制御時モータトルク制限部41は、モータ特性によっては上記いずれか一方の制限のみとすることもできる。さらに、例えば、電動モータ4の回転子の遠心力または角度センサSaの検出限界角速度等の制約条件がある場合、ブレーキ力制御時モータトルク制限部41は、所定の角速度を超過した後さらに角速度が増加しないよう、トルクを概ね零に制限してもよい。本図10はトルクを制限する例を示すが、前記制限する操作量は、例えば、モータ電流またはモータ電圧であってもよい。
<ブレーキ解除時モータトルク制限部42>
ブレーキ解除時モータトルク制限部42は、ブレーキを解除する際のモータトルクを、ブレーキ力制御時モータトルク制限部41のトルク制限よりもさらに小さな値に制限する機能を有するトルクリミッタ42a等から構成される。このようにブレーキ解除時のモータトルクを制限することで、ブレーキ解除時に高速回転する電動モータ4が減速するのに時間を要するため、比較的大きなオーバーシュートを生じる。また、ブレーキ解除時モータトルク制限部42によれば、比較的小さなトルク値に制限されることで、前記オーバーシュートの後、緩やかに目標値へと収束する。
図11、図12は、それぞれ図10のトルク制限例を示す。図11、図12において、点線は、ブレーキ力制御時モータトルク制限部によるトルク制限例を示し、実線は、ブレーキ解除時モータトルク制限部によるトルク制限例を示す。図11および図12に示すように、ブレーキ解除時の制限トルクは、ブレーキ力制御時の制限トルクよりも小さな値に制限されている。
図13に示すように、電動ブレーキ装置1を搭載する車両の車体速を推定する車体速推定手段43を備え、ブレーキ解除指令演算部26は、前記車体速に応じてオーバーシュート量を変化させるか、または前記車体速が閾値以上のときモータ角度をオーバーシュートする制御を解除してもよい。
図13は、図2の構成例において、例えば、車輪速センサ、加速度センサ、GPS等を用いた所定の車体速推定手段43により推定した車体速(推定車体速)に応じてオーバーシュート量を調整するオーバーシュート量調整部44を、ブレーキ解除指令演算部26に設ける例を示す。
一般に、車両が高速で走行しているとき程ロードノイズ等による暗騒音が大きく、反対に車両の低速時程暗騒音が小さい。また、車両が高速で走行しているとき程ブレーキ性能による制動距離への影響が大きく、反対に車両の低速時程制動距離への影響が小さい。すなわち、車両が高速である程NVHを気にせずブレーキ性能を向上する必要があり、低速である程NVHを重視する必要がある。
ブレーキ解除時のオーバーシュートが大きいと、ブレーキ解除中に再度ブレーキが操作されたような場合において応答遅れが発生する可能性があるため、オーバーシュート量調整部により車両の走行速度に応じてオーバーシュート量を調整すると、上記の要件に合致するため好適となる場合がある。
特に、車両が停止している状態において、NVHを改善する重要度が高く、再ブレーキ時の応答遅れのリスクは略考慮しなくてもよい。したがって、ブレーキ解除指令演算部26は、車体速推定手段43により車両の停止状態を検出し、車両が停止しているときにおいてのみ、前記のオーバーシュート制御を実行してもよい。
図13の構成例によると、車体速に応じてオーバーシュート量を変化させるか、または車体速が閾値以上のときモータ角度をオーバーシュートする制御を解除することでNVHを改善しつつ、応答遅れのリスクを低減することができる。
その他、図6または図9の構成例に対しても、前記と同様に、車体速に応じてオーバーシュート量を変化させるか、または車体速が閾値以上のときモータ角度をオーバーシュートする制御を解除する処理を設けることもできる。
例えば、図6の構成例に前記処理を適用する場合、前記車体速推定手段で推定する車体速等に応じてオーバーシュート量が変化するよう、オーバーシュート制御部35の各パラメータを調整する構成としてもよい。
また、例えば、図9の構成例に前記処理を適用する場合、前記車体速推定手段で推定する車体速等に応じてオーバーシュート量が変化するよう、ブレーキ解除時モータトルク制限部42の制限トルクを調整する構成としてもよい。
図14は、前記専用の制御フローを構成する例を示す。同図14のステップS2~S3がブレーキ力制御演算部、ステップS4~S11がブレーキ解除制御演算部に相当する。本処理開始後、制御装置は、ブレーキ動作が制動要求か解除要求かを判断する(ステップS1)。ブレーキ動作が前記制動要求であるとの判断で、ブレーキ力制御演算部は、目標ブレーキ力を取得し(ステップS2)、ブレーキ力制御を実行する(ステップS3)。その後本処理を終了する。
ステップS1において、ブレーキ動作が前記解除要求であるとの判断で、ブレーキ解除時モータ制御部であるブレーキ解除制御演算部は、ブレーキ解除動作が完了したか否かをモータ角度等から判断する(ステップS4)。ブレーキ解除動作が完了したとの判断で本処理を終了する。ブレーキ解除前との判断で、ブレーキ解除制御演算部は、摩擦材とブレーキロータとを離反させる方向に電動モータを回転するブレーキ減圧動作を実行する(ステップS5)。
ブレーキ力が零となった状態(ステップS6:yes)から、ブレーキ解除制御演算部は、電動モータを所定の角加速度で減速し(ステップS7)、電動モータの角速度が零となった状態(ステップS8:yes)から、電動モータの角度をモータ角度指令値(目標値)に対して追従制御する(ステップS9、S10)。なおステップS6においてブレーキ力が未だ零になっていないと判断されると(ステップS6:no)、ステップS5に戻る。ステップ8において角速度が未だ零になっていないと判断されると(ステップS8:no)、ステップS7に戻る。モータ角度が目標値に収束すれば(ステップS10:yes)、ブレーキ解除完了とし(ステップS11)、その後本処理を終了する。
その他の制御フローとして、例えば、ブレーキ解除中に再度ブレーキペダルが踏まれる等してブレーキ要求がなされる場合の制御フロー等を別途設けてもよい。前記について、例えば、強制的にブレーキ力制御演算に移行する処理としてもよく、あるいはブレーキ解除が所定段階または最後まで完了してからブレーキ力制御に移行する処理とすることもできる。
直動機構6の変換機構部として、遊星ローラ、ボールねじ等の各種ねじ機構、ボールランプ等の傾斜を利用した機構等を用いることができる。
以上、実施形態に基づいてこの発明を実施するための形態を説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
2…制御装置
4…電動モータ
6…直動機構(摩擦材操作手段)
8…ブレーキロータ
9…摩擦材
24…角速度推定機能部
25…ブレーキ力制御指令演算部(ブレーキ力制御演算機能部)
26…ブレーキ解除指令演算部(ブレーキ解除時モータ制御部)
34…ローパスフィルタ
43…車体速推定手段

Claims (7)

  1. ブレーキロータと、このブレーキロータと接触してブレーキ力を発生する摩擦材と、電動モータと、この電動モータの出力を前記摩擦材の押圧力に変換する摩擦材操作手段と、与えられたブレーキ力指令値に前記ブレーキ力が追従するように前記電動モータを制御する制御装置と、を備えた電動ブレーキ装置において、
    前記制御装置は、
    前記ブレーキ力指令値が零または前記ブレーキ力を解除するブレーキ解除要求を認識したとき、前記摩擦材と前記ブレーキロータとの間に定められたクリアランスが設けられる状態とするモータ角度指令値に追従するように前記電動モータの角度を制御するブレーキ解除時モータ制御部を有し、
    このブレーキ解除時モータ制御部は、ブレーキ力を発揮した状態からブレーキ力を零とするとき、前記電動モータの角度を前記モータ角度指令値に対してオーバーシュートした後に前記モータ角度指令値に追従する機能を有し、前記ブレーキ解除時モータ制御部は、前記定められたクリアランスが設けられる状態となるモータ角度指令値を第一の解除指令値とし、前記ブレーキ解除時モータ制御部は、前記第一の解除指令値に対して定められたオーバーシュート特性を有する第二の解除指令値を演算し、この第二の解除指令値に対して前記電動モータを追従制御する電動ブレーキ装置。
  2. 請求項に記載の電動ブレーキ装置において、前記制御装置は、前記電動モータの現在の角速度を推定する角速度推定機能部を有し、
    前記ブレーキ解除時モータ制御部は、前記第二の解除指令値から定められた角加速度制限値を設定し、前記角速度推定機能部で推定した角速度を前記角加速度制限値で加減速させた先の時刻における角速度を演算する機能を有し、
    前記ブレーキ解除時モータ制御部は、前記演算した角速度で運動した場合の先の時刻におけるモータ角度を演算し、この演算したモータ角度を前記モータ角度指令値の制限値とし、この制限値を前記第一の解除指令値に滝用した値を前記第二の解除指令値とする電動ブレーキ装置。
  3. 請求項に記載の電動ブレーキ装置において、前記第二の解除指令値が、前記第一の解除指令値に対して定められたオーバーシュートおよび減衰特性を有する二次以上のローパスフィルタを介した値である電動ブレーキ装置。
  4. ブレーキロータと、このブレーキロータと接触してブレーキ力を発生する摩擦材と、電動モータと、この電動モータの出力を前記摩擦材の押圧力に変換する摩擦材操作手段と、与えられたブレーキ力指令値に前記ブレーキ力が追従するように前記電動モータを制御する制御装置と、を備えた電動ブレーキ装置において、
    前記制御装置は、
    前記ブレーキ力指令値が零または前記ブレーキ力を解除するブレーキ解除要求を認識したとき、前記摩擦材と前記ブレーキロータとの間に定められたクリアランスが設けられる状態とするモータ角度指令値に追従するように前記電動モータの角度を制御するブレーキ解除時モータ制御部を有し、
    このブレーキ解除時モータ制御部は、ブレーキ力を発揮した状態からブレーキ力を零とするとき、前記電動モータの角度を前記モータ角度指令値に対してオーバーシュートした後に前記モータ角度指令値に追従する機能を有し、前記制御装置は、第一の制御系特性に基づいて設定されたフィードバックゲインを含む演算パラメータを介して、定められたブレーキ力を発揮するよう前記電動モータをフィードバック制御するブレーキ力制御演算機能部を備え、
    前記ブレーキ解除時モータ制御部は、第二の制御系特性に基づいて設定されたフィードバックゲインを含む演算パラメータを介して、ブレーキ力を発揮した状態からブレーキ力を零とする定められた角度に前記電動モータをフィードバック制御する機能を有し、
    前記ブレーキ解除時モータ制御部の前記第二の制御系特性について、前記第一の制御系特性よりオーバーシュート量が大きく、かつ制定時間が長くなるように設定される電動ブレーキ装置。
  5. ブレーキロータと、このブレーキロータと接触してブレーキ力を発生する摩擦材と、電動モータと、この電動モータの出力を前記摩擦材の押圧力に変換する摩擦材操作手段と、与えられたブレーキ力指令値に前記ブレーキ力が追従するように前記電動モータを制御する制御装置と、を備えた電動ブレーキ装置において、
    前記制御装置は、
    前記ブレーキ力指令値が零または前記ブレーキ力を解除するブレーキ解除要求を認識したとき、前記摩擦材と前記ブレーキロータとの間に定められたクリアランスが設けられる状態とするモータ角度指令値に追従するように前記電動モータの角度を制御するブレーキ解除時モータ制御部を有し、
    このブレーキ解除時モータ制御部は、ブレーキ力を発揮した状態からブレーキ力を零とするとき、前記電動モータの角度を前記モータ角度指令値に対してオーバーシュートした後に前記モータ角度指令値に追従する機能を有し、前記ブレーキ解除時モータ制御部は、ブレーキ力を発揮した状態からブレーキ力を零とするとき、前記摩擦材と前記ブレーキロータとを離反させる方向に前記電動モータを回転し、前記ブレーキ力が零となった状態から前記電動モータを定められた角加速度で減速し、前記電動モータの角速度が零となった状態から、前記電動モータの角度を前記モータ角度指令値に対して追従制御する機能を有する電動ブレーキ装置。
  6. ブレーキロータと、このブレーキロータと接触してブレーキ力を発生する摩擦材と、電動モータと、この電動モータの出力を前記摩擦材の押圧力に変換する摩擦材操作手段と、与えられたブレーキ力指令値に前記ブレーキ力が追従するように前記電動モータを制御する制御装置と、を備えた電動ブレーキ装置において、
    前記制御装置は、
    前記ブレーキ力指令値が零または前記ブレーキ力を解除するブレーキ解除要求を認識したとき、前記摩擦材と前記ブレーキロータとの間に定められたクリアランスが設けられる状態とするモータ角度指令値に追従するように前記電動モータの角度を制御するブレーキ解除時モータ制御部を有し、
    このブレーキ解除時モータ制御部は、ブレーキ力を発揮した状態からブレーキ力を零とするとき、前記電動モータの角度を前記モータ角度指令値に対してオーバーシュートした後に前記モータ角度指令値に追従する機能を有し、前記ブレーキ解除時モータ制御部は、ブレーキ力を発揮した状態からブレーキ力を零とするとき、ブレーキ力が零となる状態から定められたモータ角度指令値に前記電動モータの角度を追従させるまでの間において、前記電動モータの出力を制限する機能を有し、この機能によって制限された前記電動モータの出力は、前記電動モータの出力の制限を実行する以外の電動モータの最大出力よりも小さな値である電動ブレーキ装置。
  7. 請求項1~のいずれか1項に記載の電動ブレーキ装置において、前記電動ブレーキ装置を搭載する車両の車体速を推定する車体速推定手段を備え、前記ブレーキ解除時モータ制御部は、前記車体速に応じてオーバーシュート量を変化させるか、または前記車体速が閾値以上のときモータ角度をオーバーシュートする制御を解除する電動ブレーキ装置。
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