以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明するが、この発明は以下の実施の形態に限定されない。また、この発明の実施の形態は発明の好ましい形態を示すものであり、発明の範囲を限定するものではない。
(実施例1)
以下、図1から図9を参照して、本発明のステージ装置及びこのステージ装置を備える撮像装置について説明する。
図1は、本発明の実施例1に係る撮像装置としてのカメラ10のブロック図である。
図1において、本実施例に係る撮像装置としてのカメラシステム(以降、単にカメラと呼ぶ)10は、カメラボディ(又は、単にボディと呼ぶ)10aと、交換レンズ(又は、単にレンズと呼ぶ)10bと、ボディ10a内のフレーム部材13cとを備える。
ボディ10aは、被写体側に撮像面11aを有する撮像素子11と、フレーム部材13cと、カメラ制御手段14と、画像処理手段17とを備える。
レンズ10bは、ブレ補正用レンズ12bを有する撮像光学系12と、撮像光学系12を介して撮像面11aに照射される撮像光軸(以降、単に光軸と呼ぶ)12aと、光軸12aに直交する光軸直交平面12cをそれぞれ示す。また、便宜的に以降の説明では、光軸方向と光軸直交平面方向(以降、単に光軸直交方向と呼称する)についてもそれぞれ12aと12cで示すものとする。特に、光軸方向12aは不図示の被写体側に向かう方向とする。
更に、ボディ10aとレンズ10bはそれぞれ、マウント部材13a,13bと、ブレ補正制御手段15a,15bと、振動検出手段16a,16bと、本発明におけるステージ装置に相当する第1及び第2のブレ補正機構20,40を備える。
撮像素子11は、CMOSイメージセンサやCCDイメージセンサの少なくとも一方により構成され、ボディ10a内で撮像面11aを不図示の被写体側に向けて光軸12aに直交するように配置される。撮像素子11は後述する撮像光学系12が結像させる被写体光束を撮像面11a上で光電変換することにより画像信号を生成する役割を果たす。撮像素子11が生成した画像信号は画像処理手段17で各種の処理がなされることにより画像データ化され、不図示のメモリ手段に保存される。
撮像光学系12は、レンズ10b内の不図示のレンズ群により構成されており、不図示の被写体光束を撮像素子11の撮像面11a上に結像させる役割を果たす。撮像光学系12は後述するブレ補正用レンズ12bを含んでいる。
レンズ10b内の撮像光学系12により光軸12aが形成されるため、カメラ10においては、光軸12aに対して撮像素子11を正確に配置するために、レンズ10bと撮像素子11が共にボディ10a内のフレーム部材13cに対して接続される。この際、撮像素子11は後述する第1のブレ補正機構20を介してフレーム部材13cに対して接続される。また、レンズ10bはレンズ10b側のマウント部材13bとボディ10a側のマウント部材13aを介してフレーム部材13cに対して接続される。
カメラ制御手段14は不図示のメインIC内の演算手段であり、カメラ10における各種の撮影に関わる動作やユーザーの入力操作、表示操作等を制御する役割を果たす。以降の本実施例では、特別な断りが無い限り、他の各種の制御手段による制御動作や、検出手段による検出動作等はカメラ制御手段14が制御するものとする。
カメラ10において、撮像素子11とブレ補正用レンズ12bが本発明のブレ補正手段であり、これらが光軸直交平面12cで並進又は回転移動することによりブレ補正がなされる。より具体的に説明すると、カメラ10が撮影中に不図示の被写体に対して姿勢変化がある、すなわち、ブレると、撮像素子11の撮像面11a上における被写体光束の結像位置が変化することで画像にブレが発生する。かかる姿勢変化が十分に小さい場合、上記結像位置の変化は撮像面11a内で一様であり、光軸直交平面12cにおける並進又は回転移動とみなすことができる(像面ブレ)。よって、この像面ブレを打ち消すように、撮像素子11の光軸直交平面12cでの並進又は回転移動制御をするとブレ補正を行うことができる。また、ブレ補正用レンズ12bは光軸直交平面12cで並進移動することで光軸12aを屈折させることができる。よって、上記の像面ブレを打ち消すように、ブレ補正用レンズ12bの光軸直交平面12cでの並進移動制御をすることでブレ補正を行うことができる。より詳細なブレ補正の原理及び制御については公知であり本発明の要部ではないため、説明を省略する。
ブレ補正手段である撮像素子11とブレ補正用レンズ12bはそれぞれ、本発明の実施例1に係るステージ装置としての第1及び第2のブレ補正機構20,40により、光軸12a上で光軸直交平面12cの一定範囲内で移動可能に保持され、移動制御される。なお、一般にこれらの移動可能範囲が広い程、補正可能な上記の像面ブレ量が大きくなるため、より多くの撮影シーンでブレ補正をしやすくなるが、同時にボディ10aやレンズ10bが大型化するため、移動可能範囲は適切な必要量に設定される。
第1のブレ補正機構20は、詳細な構造は後程図示及び説明するが、図1では不図示の固定部と可動部、及び複数の駆動力発生部を有している。この固定部は可動部を3自由度で支持し、固定部に対して相対的に所定の駆動平面内で並進及び回転させる。そして、固定部がフレーム部材13cに対して固定され、可動部が撮像素子11を保持することで、撮像素子11を光軸直交平面12c方向で並進及び回転可能とする。すなわち、第1のブレ補正機構20は3軸駆動制御可能な平面ステージ装置(いわゆるXYθステージ)を構成する。
第2のブレ補正機構40は、第1のブレ補正機構20と同様に、図1では不図示の固定部と可動部、及び複数の駆動力発生部を有している。この固定部は可動部を2自由度で支持し、固定部に対して相対的に所定の駆動平面内で並進させる。そして、固定部がレンズ10bの筐体及びマウント部材13b,13aを介してフレーム部材13cに対して固定され、可動部がブレ補正用レンズ12bを保持することで、ブレ補正用レンズ12bを光軸直交平面12cで並進可能とする。すなわち、第2のブレ補正機構40は2軸駆動制御可能な平面ステージ装置(いわゆるXYステージ)を構成する。
以降の本実施例では、本発明に係るステージ装置の代表として、第1のブレ補正機構20について詳細な構造を図示し説明するが、本発明の要部は駆動力発生部の構成にあるので、第2のブレ補正機構40にも本発明の構成を適用可能である。
ボディ10a側及びレンズ10b側のブレ補正制御手段15a,15bは、それぞれ第1及び第2のブレ補正機構20,40を駆動制御することで、撮像素子11及びブレ補正用レンズ12bを移動制御し、ブレ補正を行う役割を果たす。この際、撮像素子11及びブレ補正用レンズ12bの移動目標値は、共にカメラ10のブレ情報を元に算出するが、このブレ情報はボディ10a側の振動検出手段16a及びレンズ10b側の振動検出手段16bから取得する。
振動検出手段16a,16bはカメラ10の各方向の角度変化量や移動量に関する情報を検出する。例えば、これらは共にジャイロセンサや加速度センサ等により構成され、カメラ10の各方向の角速度や加速度を検出する。よって、ボディ10a側のブレ補正制御手段15a及びレンズ10b側のブレ補正制御手段15bはこの角速度や加速度を積分することで、ブレ情報としてのカメラ10の各方向の角度変化量や移動量を算出することができる。これより、撮像素子11及びブレ補正用レンズ12bの移動目標値を算出し、第1のブレ補正機構20及び第2のブレ補正機構40の駆動制御を行う。
なお、上述のようにボディ10aと交換レンズ11bは、フレーム部材13c及びボディ10a側のマウント部材13a、レンズ10b側のマウント部材13bを介して相互接続される。このため、ボディ10a側の振動検出手段16aとレンズ10b側の振動検出手段16bは基本的には同じカメラ10の角速度や加速度を検出する。よって、カメラ10は振動検出手段16a,16bのどちらか一方のみを備え、その検出結果をボディ10a及びレンズ10bの両側で共有し、その両側にあるブレ補正制御手段15a,15bでブレ補正を行う構成としてもよい。一方、ボディ10a側の振動検出手段16aとレンズ10b側の振動検出手段16bは、その製造時期による性能差や、設置される箇所の剛性や振動の受けやすさ等の差に起因して検出誤差を生じることがある。よって、各種の撮影設定やカメラ10の状態に応じて、これらの振動検出手段16a,16bの検出結果を適切に組み合わせてカメラ10のブレ情報を算出するとよい。組み合わせ方法の詳細は公知であり本発明の要部ではないため、説明を省略する。
また、上述したようにカメラ10のブレ補正は第1のブレ補正機構20による撮像素子11の移動制御と、第2のブレ補正機構40によるブレ補正用レンズ12bの移動制御の2つの手段により行うことができる。よって、カメラ10は第1及び第2のブレ補正機構20,40のどちらか一方のみ備える構成でもよい。この場合、ボディ10a及びレンズ10bのうちブレ補正機構を有さない側のブレ補正手段(すなわち、撮像素子11又はブレ補正用レンズ12b)は光軸12aに対して固定的に配置する。一方、撮像素子11又はブレ補正用レンズ12bは、それぞれ特徴があるブレ補正手段であるため、これらを適切に組み合わせてカメラ10のブレ補正を行うとよい。ブレ補正手段の特徴及び組み合わせ方法の詳細は公知であり本発明の要部ではないため、説明を省略する。
続いて、第1のブレ補正機構(以降、単にブレ補正機構と呼ぶ)20の詳細な構成について説明する。
図2は、本発明の実施例1に係るステージ装置としてのブレ補正機構20の分解斜投影図である。また、図3は、図2のブレ補正機構20の正面図及び側面分解図である。また、図4は、図2のブレ補正機構20の第1の駆動力発生部20c1の分解斜投影図である。ここではブレ補正機構20を構成する主要な部品のみ図示し、他の部品は図示を省略している。また、図3(a)の正面図は図2で示した一部の部品を非表示としている。
図2から図4において、ブレ補正機構20は、固定部20aと、可動部20bとを備える。
また、固定部20a及び可動部20bのそれぞれの一部が第1から第3の駆動力発生部20c1~20c3を構成する。以下、これらを総称して駆動力発生部20cと定義する。具体的には、第1から第3の駆動力発生部20c1~20c3は、固定部20a側の部分として磁気回路部20d1~20d3を有し、可動部20b側の部分としてコイル部20e1~20e3をそれぞれ有する。これらの総称として磁気回路部20d及びコイル部20eとそれぞれ定義する。
また、第1から第3の駆動力発生部20c1~20c3はそれぞれ第1から第3の磁石24_11~24_33を有する。以下、これらを総称して磁石24と定義する。例えば、第2の駆動力発生部20c2は第3の磁石24_23を有する。
第1から第3の駆動力発生部20c1~20c3はそれぞれ第1から第3のコイル25_1~25_3を有する。以下、これらを総称してコイル25と定義する。
更に、固定部20aは、第1の固定枠21と、単数または複数の部材から構成される第2の固定枠22とを有し、可動部20bは可動枠23を有する。
また、固定部20aは、本発明の緩衝部材としての樹脂製の磁石ホルダ26と、本発明の圧縮部材としての樹脂製の圧縮スペーサ27と、本発明の係止部材としてのビス28と、ボール30と、第3の固定枠31とを備える。一方、可動部20bは、磁界検出素子29と、本発明の被吸引部材としての薄鋼板32とを備える。
図2から図4の各々には、固定部20aが可動部20bを並進及び回転移動させる駆動平面方向20f、駆動平面方向20fと直交する駆動平面直交方向20gがそれぞれ示されている。上述したように、カメラ10におけるブレ補正機構20は、これらの駆動平面方向20f及び駆動平面直交方向20gはそれぞれ、光軸直交平面12c及び光軸方向12aと平行になるように揃えて構成されている。
ブレ補正機構20の各部材は駆動平面直交方向20gで不図示の被写体側から、第3の固定枠31、薄鋼板32、FPC33、可動枠23、コイル25、ボール30、第1の固定枠21、磁石ホルダ26、磁石24、第2の固定枠22、ビス28の順に並ぶ。また、磁界検出素子29は、空芯コイルであるコイル25の軸心部に配置され、圧縮スペーサ27は、磁石24と共に第1及び第2の固定枠21,22により挟持される。
薄鋼板32、FPC33、コイル25、及び磁界検出素子29はそれぞれ可動枠23に対して固定されて可動部20bの一部を構成する。第3の固定枠31、磁石24、磁石ホルダ26、圧縮スペーサ27、第2の固定枠22、及びビス28はそれぞれ第1の固定枠21に対して固定されて固定部20aの一部を構成する。更に、撮像素子11が、撮像面11aが駆動平面方向20fと平行になるような姿勢で可動枠23に対して固定される。
更に、可動枠23は第1の固定枠21上のボール30により光軸12a方向で支持され、かつ、可動枠23上の本発明の被吸引部材としての薄鋼板32は磁石24により吸引される。これにより、ブレ補正機構20は、固定部20aに対して可動部20bを、駆動平面方向20fにおいて並進及び回転移動させつつ駆動平面直交方向20gにおいて固定する。更に、上述したように駆動平面方向20f及び駆動平面直交方向20gはそれぞれ、光軸直交平面12c及び光軸方向12aと平行である。このため、ブレ補正機構20は、撮像素子11の撮像面11aを、光軸直交平面12cにおいて並進及び回転移動させてカメラ10のブレ補正を行うことができる。
なお、本実施例における第1及び第2の固定枠21,22は、駆動平面方向20fと略平行に広がる板状部材であり、以下、これらの主要平面部分を図3(b)に示すように定義する。具体的には、駆動平面直交方向20gにおける可動枠23に近い側から順に、それぞれ第1面21a,22a、及び第2面21b,22bと定義する。また、第1の固定枠21は駆動力発生部20cに対応する部分に開口部を備えており、図2に示すように、これを第1から第3の開口部21c1~21c3と定義する。
本実施例のブレ補正機構20(及び不図示の第2のブレ補正機構40)は、駆動力発生部20cの構成として、ボイスコイルモータ(VCM)方式と呼ばれる構成を備えている。この構成では、固定部20aと可動部20bの一方に磁石を、他方にコイルを備え、磁石が形成する磁気回路中でコイルに通電することで駆動力を発生する。更に、本実施例では特に固定部20a側に磁石24を、可動部20b側にコイル25を配置したムービングコイル方式を取っている。一般に、ボイスコイルモータ方式で使用する磁石(の組み合わせ)とコイルにおいては、コイルの方が総重量を軽量にすることができるため、ムービングコイル方式をとることで、より高効率化や高応答化しやすいという特徴がある。ただし、本発明の構成はこれらの配置を逆にしたムービングマグネット方式に対しても適用して構わない。
VCM方式のブレ補正機構20における高効率化のための構成として、コイル25は駆動平面直交方向20gでなるべく磁石24に近づけて配置される。更に、第3の固定枠31及び第2の固定枠22は例えば電磁鋼板や鉄板等の第1の固定枠21よりも透磁率が高い板金材料により構成され、ヨークとして磁石24による磁束の周囲への漏れを防ぐ役割を果たす。また、第1の固定枠21は、主骨格として磁石24や第3の固定枠31、第2の固定枠22等を固定し、ボール30を介して可動枠23を支持する役割を果たすため、第2の固定枠22よりもヤング率及び表面硬度が高い板金材料で構成することが望ましい。更に、磁石24及びヨークである第2及び第3の固定枠22,31で構成される磁気回路に影響を与えないようにするために、透磁率が低い材料で構成することが望ましい。よって、第1の固定枠21は例えばステンレス鋼板や、エンジニアリングプラスチックにステンレス薄鋼板を組み合わせた材料で構成することが望ましい。
本実施例では、ブレ補正機構20の駆動力発生部20cにある磁気回路部20dは、ハルバッハ配列の概念を利用した磁気回路(以降、便宜的にハルバッハ磁気回路と呼ぶ)を形成する。このため、磁気回路部20dの磁石24は後述する図6に示す磁化方向をもって配列される。これにより一般的な磁気回路部の構成と比べて、駆動力の発生効率が高くなり、且つ磁気回路の直線性が向上する(すなわち位置検出精度が高くなる)。続いて、このハルバッハ磁気回路の特徴について説明する。以降の説明では、図4に示すように、本発明の実施例1に係るステージ装置としてのブレ補正機構20においても、特に本発明の要部である駆動力発生部20cの代表として、第1の駆動力発生部20c1の部分についてのみ図示する。この際、各部材は適宜非表示や詳細形状を省略して表示し、また、ビス28及び圧縮スペーサ27は適宜追加して表示する。
ハルバッハ磁気回路の特徴についての説明に先立ち、磁石24とコイル25について、各種の方向と部分の定義を行う。
図5は、本実施例におけるコイル25と磁石24の模式図である。コイル25は図5(a)に示すように、導体線を角丸矩形又は長丸形状に巻くことにより構成されるが、これに対して、巻き芯方向25a、長辺方向25b、短辺方向25c、通電方向25dを定義する。それぞれ、長辺方向25bは巻き芯方向25aに対して直交し、短辺方向25cは巻き芯方向25aと長辺方向25bに対して直交する。また、通電方向25dは巻き方向に沿って回転する。また、コイル25は図5(a)に示すように、長辺方向25bに伸びる2つの長辺部分25e,25fを有する。なお、ここでは便宜上長辺方向25b、短辺方向25cという呼び方を用いているが、本発明はこれらの大小関係を限定する物ではなく、長辺部分25e,25fよりも、コイル25の短辺方向25cに伸びる部分の方が長くともかまわない。
磁石24は図5(b)に示すように、略直方体形状の外形を有している。これに対して、高さ方向24a、長辺方向24b、短辺方向24cを定義する。長辺方向24bは高さ方向24aに対して直交し、短辺方向24cは高さ方向24aと長辺方向24bに対して直交する。また、詳細は後述するが、磁石24は、その長辺方向24bにおける両端部に被固定部24e,24fを有し、また、磁石24の長辺方向24bにおける被固定部24e,24fの部分以外、すなわち、被固定部24e,24fの間にコイル対向部24gを有する。更に、コイル対向部24gにおけるコイル25と対向する平面をコイル対向面24hと定義する。なお、コイル25の長辺方向25b、短辺方向25cと同様に、磁石24の長辺方向24b、短辺方向24cについても、本発明はこれらの大小関係を限定する物ではない。すなわち、磁石24の長辺方向24bに伸びる部分よりも短辺方向24c伸びる部分の方が長くともかまわない。
図6は、VCM方式における、本実施例のハルバッハ磁気回路の構成と、一般的な磁気回路の構成の特徴を比較説明するための図である。上述したように、図6はブレ補正機構20における第1の駆動力発生部20c1を部分的に図示している。なお、以降の説明において、番号が付されていない、上下左右の方向を示す矢印や奥から手前またはその逆の方向を示す記号は、磁石24の磁化方向を示す。すなわち、磁石24において、これらの矢印や記号の入口側がS極となり、出口側がN極となる。
図6(a)が本実施例のハルバッハ磁気回路の構成を説明する図であり、図6(b)又は図6(c)が一般的な磁気回路の構成を説明する図である。図6(a)~図6(c)では、第1の駆動力発生部20c1の上面図、第三角法により投影した正面断面図、及び定性的な磁束密度プロファイル401a~401cを示す。ここで、磁束密度プロファイル401a~401cは、後述するように、コイル25における駆動力の発生効率と、磁界検出素子29による位置検出精度に作用する。尚、図6(a)~図6(c)の上面図は代表として、図6(a)の上面図に対して配置方向を付しているが、図6(b)及び図6(c)の上面図も配置方向は同じである。また、図6(a)~図6(c)の正面断面図、及び後述する図6(d)~図6(e)の正面断面図は代表として、図6(e)の正面断面図に対して配置方向を付しているが、図6(a)~図6(d)の正面断面図も配置方向は同じである。
図6(a)~図6(c)に示す磁束密度プロファイルは、駆動力の発生方向であるコイル25_1の短辺方向25cの各位置における、駆動力の発生と磁界検出素子29による位置検出に作用する、コイル25_1の巻き芯方向25aの磁束密度の強度を示す。以降、コイル25_1の短辺方向25cを便宜的にx方向と定義し、コイル25_1の巻き芯方向25aを便宜的にz方向と定義する。なお、上記x方向及びz方向と直交するコイル25_1の長辺方向25bにおいては、コイル25の2つの長辺部分25e,25fの範囲で磁束密度プロファイルはほぼ一定であるため、代表として1箇所のプロファイルを図示している。以降、コイル25_1の長辺方向25bを便宜的にy方向と定義する。
また、図6(d)は図6(a)のハルバッハ磁気回路における、第1から第3の磁石24_11~24_13間の力の相互作用を示す模式図である。図6(d)における矢印402a,402bはそれぞれ後述する磁石24_11,24_12に作用する力のモーメントの向きを示している。また、図6(e)は図6(d)に示す第1から第3の磁石24_11~24_13間の力の相互作用により、磁石24_11~24_13が最終的に安定する相互配置を示す模式図である。
VCM方式においては、図6(a)~図6(c)の正面断面図に示すように、第1から第3の磁石24_11~24_13を、短辺方向24cに並列した上で、高さ方向24aでコイル25_1と対面させる(高さ方向24aと巻き芯方向25aを一致させる)。更に、第1から第3の磁石24_11~24_13の長辺方向24b(すなわち、駆動平面内で第1から第3の磁石24_11~24_13の並列する方向である短辺方向24cと直交する方向)とコイル25_1の長辺方向25bを一致させる。この状態で、コイル25_1の長辺部分25e,25fの近傍において、通電方向25dと直交する巻き芯方向25aで、互いに逆向きの強い磁界が形成されるように第1から第3の磁石24_11~24_13の磁化方向を配置する。
上記の要件を簡潔に満たす構成が図6(b)及び図6(c)に示す一般的な磁気回路の構成である。すなわち、第1の磁石24_11の磁化方向は駆動平面直交方向20gとし、第2の磁石24_12の磁化方向は第1の磁石24_11の反対方向とする。更に、駆動平面直交方向20gにおいて、コイル25_1の上及び第1から第3の磁石24_11~24_13の下に夫々、磁束の漏れを防ぐヨークである第3の固定枠31と第2の固定枠22を配置する。これにより、第1の磁石24_11からコイル25_1に向かう方向に出た磁束は第3の固定枠31を経由して第2の磁石24_12に入る。一方、第2の磁石24_11からコイル25_1と反対方向に出た磁束は第2の固定枠22を経由して第1の磁石24_11に戻る。このため、第1及び第2の磁石24_11~24_12と第3の固定枠31の間に配置されるコイル25_1の長辺部分25e,25fの近傍においては、図6(b)及び図6(c)に示すようにz方向で互い逆向きの強い磁界が形成される。この状態でコイル25_1に通電すると、長辺部分25e,25fにおけるローレンツ力の向きが揃うため、コイル25_1はx方向に駆動力を発生する。
また、上記の図6(b)及び図6(c)に示す一般的な磁気回路により、磁界検出素子29による位置検出を行うことができる。すなわち、x方向におけるコイル25_1の長辺部分25e,25fの間の領域においては、図6(b)及び図6(c)に示すようにz方向の磁束密度はx方向で直線的な変化を示す(磁気回路の直線性)。よって、x方向におけるコイル25_1の長辺部分25e,25fの間の領域に、z方向に磁界検出方向を有する磁界検出素子29を配置することで、通電により発生した駆動力に基づくコイル25_1のx方向の位置変化を高感度に検出することができる。位置検出方法の詳細は本発明の要部ではないため、詳細な説明を省略する。
ここで、図6(c)に示す磁気回路の構成は、x方向において第1の磁石24_11と第2の磁石24_12の間に空隙を設けることで、上述した磁気回路の直線性を向上(直線範囲を拡大)できるという公知の技術である。これにより、位置検出精度を向上させることができる。一方、図6(b)に示す磁気回路の構成は、図6(c)に示す構成と比べて、上述した磁気回路の直線性は劣るものの、磁束密度の絶対値を向上させることができるため駆動力の発生効率に優れている。
以上に対して、図6(a)に示す本発明におけるハルバッハ磁気回路の構成では、上述の第1の磁石24_11と第2の磁石24_12の間に更に第3の磁石24_13を配置する。更に、第3の磁石24_13の磁化方向は、図6(a)に示すように、駆動平面直交方向20gにおいてコイル25_1側から見たとき、第1の磁石24_11と第2の磁石24_12の極と同じ方向に極を持つ方向に配置する。詳細な原理は公知であるため説明を省略するが、この第3の磁石24_13により、第1の磁石24_11と第2の磁石24_12の間での駆動平面直交方向20gにおけるコイル25_1側とその反対側(第2の固定枠22側)への磁束漏れが低減される。このため、図6(b),(c)に示す一般的な磁気回路構成に比べて図6(a)のハルバッハ磁気回路の構成では、コイル25_1の長辺部分25e,25fにおける磁束密度が向上し、また、磁気回路の直線性が向上する。すなわち、図6(a)のハルバッハ磁気回路の構成は、図6(b)及び図6(c)に示す一般的な磁気回路構成より駆動力の発生効率、位置検出精度を共に高めることができる。
しかし、図6(a)に示すハルバッハ磁気回路の構成は、第3の磁石24_13により、図6(d)に示すように第1の磁石24_11と第2の磁石24_12が互いに反発しあう不安定な配置となっている。すなわち、矢印402a,402bに示す、第1の磁石24_11と第2の磁石24_12のそれぞれに、長辺方向24bに平行な軸周りで回転し始めるように作用する力のモーメントが第3の磁石24_13により発生する。これは、第1及び第2の磁石24_11,24_12のそれぞれの極が第3の磁石24_13のそれぞれの反対の極に引かれる力、すなわち、第1から第3の磁石24_11~24_13が最終的に安定する図6(e)に示す相互配置に向かう力によるものである。一方、第3の磁石24_13については、第1の磁石24_11と第2の磁石24_12から受ける力が釣り合うため、このような回転力は受けない。なお、詳細は後述するが、第3の磁石24_13は第1の磁石24_11、及び第2の磁石24_12に回転方向の力を及ぼす力の反作用として矢印402c方向の力を受ける。
よって、図6(a)に示すハルバッハ磁気回路の構成を利用する場合は、図6(d)に示すような第1の磁石24_11と第2の磁石24_12の長辺方向24bに平行な軸周りの回転を規制する磁石24の固定方法を考える必要がある。続いて、本発明の要部である、ハルバッハ磁気回路の構成における磁石24の固定方法について説明する。
図7は、図4のブレ補正機構20における第1の駆動力発生部20c1の模式図であり、上面図と、第三角法により投影した右側面断面図(A-A‘)及び2つの正面断面図(B-B‘,C-C’)、を示している。
図7に示すように、本実施例においては、磁石24の長辺方向24bの両端の被固定部24e,24fを第1の固定枠21と第2の固定枠22で挟持することで、図6(d)で示した回転を規制し、磁石24を固定する。この際、第3の磁石24_13については固定は必須ではない。例えば、図12に示す磁石24の変形例のように、図5の被固定部24e,24fを、第1及び第2の磁石24_11,24_12のみ有し、第3の磁石24_13は有さないような構成であってもよい。しかしながら、本実施例では第1から第3の磁石24_11~24_13の全てをより確実に固定するために、第3の磁石24_13も同様の方法により固定する。より詳細な構成について順に説明する。
本実施例においては、図5において前述した通り、第1から第3の磁石24_11~24_13の被固定部24e,24fを、高さ方向24aにおいて段落ちしたフランジ形状とする。これにより、コイル対向部24gは高さ方向24aにおいて突出した形状となる。そして、この被固定部24e,24fを第1の固定枠21の第2面21bと第2の固定枠22の第1面22aで挟み込み、第2の固定枠22を第1の固定枠21に対してビス28で固定する。これにより、第1の磁石24_11と第2の磁石24_12は長辺方向24bを軸とする回転が規制されるため、磁石24を確実に固定することができる。
上記の構成において、第1の固定枠21は第1の開口部21c1を備え、これに対して駆動平面直交方向20gに第1から第3の磁石24_11~24_13のコイル対向部24gを挿入する。これにより、第1から第3の磁石24_11~24_13のコイル対向面24hは、駆動平面直交方向20gにおいて、少なくとも第1の固定枠21の第2面21bよりも非表示のコイル25_1に近い側に突出する。本実施例においては特に、コイル対向面24hは、駆動平面直交方向20gにおいて、第1面21aよりも非表示のコイル25_1に近い側に突出する。よって、第1から第3の磁石24_11~24_13を第1の固定枠21と第2の固定枠22で挟持しても、第1の固定枠21の存在により駆動平面直交方向120gにおけるコイル25_1と磁石24の距離が遠くなることがない。このため、駆動力発生部20cはVCM方式での駆動効率を落とさずに磁石24を固定することができる。このようにコイル対向面24hを突出する形状にするため、磁石24の被固定部24e,24fのフランジ形状は、高さ方向24a(駆動平面直交方向20g)において、第1の固定枠21の板厚よりも大きく段落ちさせた構成をとる。
上記の構成において、圧縮スペーサ27は第1の固定枠21及び第2の固定枠22により挟持されて磁石24と共締めされることで、ビス28の軸力により磁石24の被固定部24e,24fが座屈破壊することを防ぐ役割を果たす。よって、圧縮スペーサ27は圧縮される方向の自然長が磁石24の被固定部24e,24fの高さよりも高く、その圧縮長が被固定部24e,24fの高さと略等しくなるように構成するとよい。また、磁石ホルダ26は第1の固定枠21の第1の開口部21c1のエッジ部と磁石24の間に介在し、そのエッジ部と磁石24の直接接触を防ぐことで、磁石24を保護する役割を果たす。
以上説明した構成により、ハルバッハ磁気回路を形成する磁石24を機械的に固定するため、接着固定した場合に懸念されるクリープ変形による磁石24のずれが少ない安定した固定を行うことができる。
以上、本発明の実施例1に係るステージ装置としてのブレ補正機構20においても、特に本発明の要部である駆動力発生部20cにおける望ましい構成について説明した。続いてブレ補正機構20の全体における望ましい構成について説明する。
図8は、図4の第1の駆動力発生部20c1における磁石24とビス28の配置関係を説明する図である。
図8(a)~図8(c)はいずれも、図4に示すように、第1から第3の駆動力発生部20c1~20c3の周囲の部分のみ抜き出して図示しており、駆動平面直交方向20gにおける非表示のコイル25の反対側から見た図である。図8では代表として、図8(a)に方向を付しているが図8(b)及び図8(c)も方向は同じである。
本発明における係止部材に相当する、第2の固定枠22を第1の固定枠21に対して固定する複数のビス28は、下記の条件を満たすように配置することが望ましい。すなわち、図8(a),(b)に示すように、磁石24とビス28を駆動平面に投影した場合に、各ビス28の中心点を結ぶ複数の線分のいずれか少なくとも1つが、第3の磁石24_13,24_23,24_33のそれぞれにかかるようにする。
この理由として、図6(d)で説明したように、第3の磁石24_13は第1の磁石24_11、及び第2の磁石24_12に回転方向の力を及ぼす反作用として、矢印402c方向の力を受ける。これにより、第3の磁石24_13は第2の固定枠22に対して第1の固定枠21から浮き上がる方向に力を及ぼすが、第2の固定枠22が浮き上がると、第1及び第2の磁石24_11,24_12の回転が規制されなくなり、磁石24の配置がずれてしまう。よって、この第3の磁石24_13による第2の固定枠22の浮き上がりを抑えるために、上述のようにビス28を配置することが望ましい。例えば、図8(a)における第1の駆動力発生部20c1において、4つのビス28のそれぞれの中心点を結ぶ複数の線分のうち、線分701,702が第3の磁石24_13にかかる。これにより、第3の磁石24_13による第2の固定枠22の浮きを適切に抑えることができる。また、図8(b)においては、駆動力発生部20c2,20c3において、3つのビス28のそれぞれ中心点を結ぶ複数の線分のうち、線分703が第3の磁石24_23にかかり、線分704が第3の磁石24_33にかかる。これにより、第3の磁石24_23,24_33による第2の固定枠22の浮きを適切に抑えることができる。
一方、図8(c)は上記条件を満たさないビス28の配置を示している。具体的には、駆動力発生部20c2,20c3において、3つのビス28のそれぞれの中心点を結ぶ線分703~705のいずれも第3の磁石24_33にかからないため、第2の固定枠22の浮きが発生する恐れがある。
図9は、本実施例のブレ補正機構20における第1から第3の駆動力発生部20c1~20c3、及び第2のブレ補正機構40における第1及び第2の駆動力発生部40c1,40c2の配置を示す模式図である。
図9(a)はブレ補正機構20の模式図、図9(b)は第2のブレ補正機構40の模式図であり、共に光軸12a方向の不図示の被写体側から見た図である。
第1の駆動力発生部20c1では、図6で上述したx方向(図9における両矢印20f1の方向)に駆動力が発生する。同様に、その他の駆動力発生部(20c2,20c3,40c1,40c2)ではそれぞれ、両矢印20f2,20f3,40f1,40f2の方向に駆動力が発生する。図9では代表として図9(a)にブレ補正機構20の配置方向を付しているが、図9(b)における第2のブレ補正機構40の配置方向も同じである。
上述したように、ブレ補正機構20は3軸の駆動制御を行う。このため、駆動力発生部20cを少なくとも3つ備え、更に、その中で少なくとも1組の駆動力の発生方向(x方向)を略平行とし、別の1組の駆動力の発生方向を略直交(x方向)とするように配置することが望ましい。図9(a)においては、第2及び第3の駆動力発生部20c2,20c3の組の駆動力の発生方向(両矢印20f2,20f3の方向)が略平行である。一方、第1及び第2の駆動力発生部20c1,20c2の組及び第1及び第3の駆動力発生部20c1,20c3の組の駆動力の発生方向(両矢印20f1,20f2の方向及び両矢印20f1,20f3の方向)が略直交する。このように少なくとも3つの駆動力発生部20cを配置することで、駆動力発生部20cの組のうち、駆動力の発生方向が略直交となる組で並進2軸の駆動制御が可能になり、また、駆動力の発生方向が略平行となる組で回転1軸の駆動制御が可能になる。これにより3軸の駆動制御を行うことができる。また、第2のブレ補正機構40は同様に、駆動力発生部40cを少なくとも2つ備え、その中で少なくとも1組の駆動力の発生方向(x方向)を略直交とするように配置することが望ましい。図9(b)においては、第1及び第2の駆動力発生部40c1,40c2の組の駆動力の発生方向が略直交する。このように少なくとも2つの駆動力発生部40cを配置することで、並進2軸の駆動制御を行うことができる。
更に、本発明においては、駆動力発生部20cは磁石24の長辺方向24bにおける両端の被固定部24e,24fを挟持して磁石を固定するため、一般に長辺方向24bに大きくなりやすい。よって、ブレ補正機構20の駆動力発生部20cを、移動制御するブレ補正手段である撮像素子11やブレ補正用レンズ12bの周囲において、外周方向に沿って磁石24の長辺方向24bが並ぶように配置するとよい。少なくとも、図9(a)に示すように、光軸12a方向の不図示の被写体側からみた場合に、磁石24の外径を長辺方向24bに延伸した直線601,602が撮像素子11やブレ補正用レンズ12bにかからないようにする。これにより、第1のブレ補正機構20や第2のブレ補正機構40をその外形を大型化させることなく構成することができる。図9(b)の直線603,604に示すように、第2のブレ補正機構40の駆動力発生部40cについても同様の配置が望ましい。
以上説明した構成により、本発明ではハルバッハ磁気回路を形成する磁石を安定的に固定することができる。
(実施例2)
本実施例では、実施例1の変形例としての磁石24の別の固定方法について説明する。以下説明するように、実施例1の磁石24の被固定部24e,24fのようなフランジ形状に本発明の駆動力発生部における磁石の被固定部の形状は限定されず、他の形状としても構わない。
図10は、本実施例における磁石と第1の固定枠の模式図である。
図10(a)は本実施例における磁石240及びその固定方法を示す模式図である。図10に示す番号は、実施例1の磁石24と同様の方法で付している。例えば、本実施例では、実施例1の磁石24の長辺方向24bに相当する方向に対して240bという番号を付している。図10(a)に示すように、本実施例においては磁石240の長辺方向240bの両端の被固定部240e,240fを、高さ方向240aにおいて1辺を面取りした形状とする。
図10(b)と図10(c)は本実施例における2種類の第1の固定枠211,212の上面図及び断面図である。ここでは図10(b)と図10(c)の上面図に対して方向を付している。ここでも図4と同様に、第1の駆動力発生部20c1に対応する部分のみ図示している。なお、第1の固定枠211,212のいずれについても、実施例1の場合と同様に第1面212a及び第2面211b,212bを定義するが、図10(b)の第1の固定枠211は後述する立ち曲げ部を有するため、第1面は定義しない。
図10(b)に示す第1の固定枠211は、例えば金属板金により構成され、第1の開口部211c1を備えている。更に、磁石240の固定時にその被固定部240e,240fと第2面211bにおいて面する位置となる第1の開口部211c1の短辺部901a,901bにおいて、複数回立ち曲げを行うことで斜面部901c,901dを形成している。更に、エッジ部901e~901hを別途切除や面打ち加工により除去している。
図10(c)に示す第1の固定枠212は、例えばモールド加工の樹脂部材により構成され、第1の開口部212c1を備えている。更に、磁石240の固定時に被固定部240e,240fと第2面212bにおいて面する位置となる第1の開口部212c1の短辺部902a,902bにおいて、斜面部902c,902dを形成している。
図11は、本実施例におけるブレ補正機構20の第1の駆動力発生部20c1の上面図及び部分断面図である。図11(a)と図11(b)はそれぞれ磁石240の異なる2種類の固定方法を説明しており、共に第1の駆動力発生部200c1の上面図及び部分断面図を示している。ここでは代表として図11(a)と図11(b)の上面図に方向を付している。
図11(a)に示す構成においては、第1の固定枠211の斜面部901c(901d)と磁石240の被固定部240e(240f)の面取り部が点1001aの近傍でかみ合う。このため、第2の固定枠22をビス28により第1の固定枠211に固定した状態において、磁石240は被固定部240e(240f)の面取り部の略直交方向に固定力1001bを受ける。この固定力1001bは駆動平面直交方向20gの成分を含むため、これより磁石240の第1の磁石240_11と第2の磁石240_12は回転を規制されて適切に固定される。また、磁石240のコイル対向面240hは駆動平面直交方向20gにおいて第1の固定枠211の第2面211bよりも非表示のコイル25_1側に突出する。このため、第1の固定枠211の存在により駆動平面直交方向120gにおけるコイル25_1と磁石240の距離が遠くなることがないため、駆動力発生部20cはVCM方式での駆動効率を落とさずに磁石240を固定することができる。
なお、図11(a)に示す構成では、短辺部901aの立ち曲げ部901jが曲げ方向に弾性を示すため、ビス28による軸力をある程度吸収することが可能である。すなわち、本実施例では実施例1で使用していた圧縮スペーサ27をなくすことができる。また、図11(a)に示す構成では、第1の固定枠211は金属板金ではあるが、上述の通り立ち曲げ部901jが曲げ方向に弾性があり、且つ第1の開口部212c1におけるエッジ部901e~901hが別途切除や面打ち加工により除去されている。
図11(b)に示す構成においては、第1の固定枠212の斜面部902c(902d)と磁石240の被固定部240e(240f)の面取り部が、圧縮スペーサ27を介して点1002aの近傍でかみ合う。このため、第2の固定枠22をビス28により第1の固定枠212に固定した状態において、磁石240は被固定部240e(240f)の面取り部の略直交方向に固定力1002bを受ける。この固定力1002bは駆動平面直交方向20gの成分を含むため、これより磁石240の第1の磁石240_11と第2の磁石240_12は回転を規制されて適切に固定される。また、磁石240のコイル対向面240hは駆動平面直交方向20gにおいて第1の固定枠212の第2面212bよりも非表示のコイル25_1側に突出し、本実施例においては特に第1面212aよりも非表示のコイル25_1側に突出する。このため、第1の固定枠212の存在により駆動平面直交方向120gにおけるコイル25_1と磁石240の距離が遠くなることがないため、駆動力発生部20cはVCM方式での駆動効率を落とさずに磁石240を固定することができる。
なお、図11(b)に示す構成では、第1の固定枠212は樹脂部材であり、第1の開口部212c1における先鋭なエッジ部分は少ないため、実施例1で使用していた緩衝部材としての樹脂製の磁石ホルダ26をなくすことができる。
本実施例の構成は実施例1の構成と比べ、磁石240が磁石24よりも外形における応力集中部が少ないため、磁石の加工性を向上させやすいという特徴がある。
以上、図1~図12を参照して、本発明に係るステージ装置の実施例として、カメラ10の撮像素子11に対するブレ補正機構20やブレ補正用レンズ12bに対する第2のブレ補正機構40について説明した。しかしながら、ステージ装置の具体的な適用例はこれらに制限されない。ステージ装置は、ボイスコイルモータ(VCM)方式を用いた電磁気的な駆動力によりブレ補正を行う電子機器の部品として広く適用が可能である。この電子機器としては、例えば、半導体素子製造用の露光装置、液晶表示素子製造用又はディスプレイ製造用の露光装置や、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン、及びMEMSやDNAチップなどを製造するための露光装置などが例示できる。