以下、図面に沿って、本発明の第1の実施の形態について説明する。図1及び図2に示すように、移植機としての乗用田植機Pは、走行装置としての一対の前輪9及び一対の後輪10により支持される走行機体1を有しており、走行機体1の後部には、昇降リンク機構2を介して植付作業機3が連結されている。走行機体1と植付作業機3との間には、リフトシリンダ4が介設されており、リフトシリンダ4の油圧伸縮動作に応じて植付作業機3が昇降される。
植付作業機3は、マット苗が載置される苗載台5、苗載台5から苗を掻取って圃場に植付ける植付機構6、圃場面を滑降するフロート7などを備えて構成されており、走行機体1から供給される植付動力で植付作業を行う。走行機体1の前部には、エンジン(図示せず)やトランスミッション8が搭載されている。エンジンが出力する動力は、トランスミッション8で変速され、植付作業機3、前輪9及び後輪10に伝動される。
トランスミッション8には、植付クラッチ(図示せず)が内装されている。植付クラッチは、エンジンからの動力が植付作業機3へ供給されない切断状態と、エンジンからの動力が植付作業機3へ供給される接続状態と、に切替えられて、植付作業機3に対する植付動力の伝動が断接される。なお、以下の記載において、植付クラッチを切断状態から接続状態へ切替えることを、植付クラッチを接続する、植付クラッチを接続状態から切断状態へ切替えることを、植付クラッチを切断する、とも記載する。
走行機体1の中央部分には、オペレータが乗車して操作する運転部17が配置されており、運転部17には運転席19及び操向装置20が配置されている。操向装置20は、ステアリングハンドル20a,ステアリングコラム20b、タイロッド(図示せず)、及びステアリングコラム20bを軸方向を中心に回転させるステアリングモータ60(図6参照)を有し、オペレータによるステアリングハンドル20aの回転操作またはステアリングモータ60の駆動によりステアリングコラム20bが軸方向を中心に回転し、タイロッドを介して前輪9が操向されて、走行機体1の走行方位が変化する。前記植付作業機3の左右には使用位置及び格納位置に移動自在に線引きマーカ21,21が配置され、また走行機体1と植付作業機3の間には整地装置22が配置されている。
次いで、油圧コントロール機構25について、説明する。図3に示すように、走行機体1には、植付作業機3(図1参照)の昇降制御を行う油圧コントロール機構25が設けられている。油圧コントロール機構25は、植付クラッチやリフトシリンダ4(図1参照)の油圧制御バルブ(不図示)に連繋される作業機操作カム31、回動ピン33を中心に揺動し植付クラッチを断接するクラッチアーム35、作業機操作カム31の回動に伴い開閉する油圧コントロールバルブ29、及び作業機操作カム31の回転軸と同軸上に固定されて作業機操作カム31の回動位置を検出する作業機操作カムポテンショ32を備えている。
作業機操作カム31は、作業機操作カムモータ30の駆動に基づいて、「上昇」、「固定」、「自動(下降)」、「植付」の各ポジションに回動操作され、各ポジションが作業機操作カムポテンショ32によって検出される。作業機操作カム31の回動に伴い油圧コントロールバルブ29が開閉されると、トランスミッション8に設けられた油圧ポンプ(図示せず)の油圧を開放又は遮断することによりリフトシリンダ4が伸縮して、植付作業機3が昇降する。作業機操作カム31は、「上昇」ポジションでは、植付作業機3を上昇させ、「固定」ポジションでは、植付作業機3を任意の高さで固定し、「自動(下降)」ポジションでは、植付作業機3をフロート7が接地するまで下降させ、「自動(下降)」及び「植付」ポジションでは、フロート7による対地高さ検出に基づいた機械的な自動昇降制御が実行される。
クラッチアーム35は、上端が作業機操作カム31の外周に追従し、作業機操作カム31の回動に伴って前後方向に揺動する。クラッチアーム35の揺動に伴い、作業機操作カム31が「上昇」、「固定」及び「下降(自動)」の各ポジションに位置している間は、植付クラッチが切断状態となり植付機構6は作動せず、「植付」ポジションに位置している間は、植付クラッチが接続状態となり植付機構6が作動可能となる。
次いで、運転部17の詳細について、説明する。図4(a)に示すように、運転部17の前方に配置されているフロントパネル42には、表示パネル45、切換え操作部46、主変速操作レバー43、及び作業機操作レバー44が設けられている。
図4(b)に示すように、表示パネル45は、後述する植付準備状態を示す植付表示部45a,植付自動モードが設定されていることを表示する植付自動表示部45b,直進自動モードが設定されていることを表示する直進自動表示部45c,作業機操作カム31による作業機操作カム31の各ポジションを表示する油圧ポジション表示部45d等の各種の表示部がある。
主変速操作レバー43は、その中立位置からの前方向の操作により前進段が変速され、中立位置からの後方向の操作により後進段が変速される。図4(c)に示すように、主変速操作レバー43の握り部には、その内側(右側)に作業機上側操作ボタン50a及び作業機下側操作ボタン50bが上下方向に並んで配置された作業機操作ボタン50が設けられている。作業機上側操作ボタン50a,作業機下側操作ボタン50bは、作業者であるオペレータが主変速操作レバー43を把持しながら親指で押圧操作される。
図5に示すように、切換え操作部46には、整地装置操作ダイヤル47,植付自動操作部48,報知手段としてのモード表示ランプ49,作業準備スイッチ52等が配置されている。整地装置操作ダイヤル47は、軸方向を中心に回転操作可能にフロントパネル42に支持されており、回転位置に応じて植付機構6に対する整地装置22の高さが調整される。植付自動操作部48は、操作部としての植付自動操作ダイヤル48aを有している。植付自動操作ダイヤル48aは、円柱状に形成され、軸方向を中心に回転可能にフロントパネル42に支持されていると共に、軸方向へ移動可能で、ばね(図示せず)によりフロントパネル42から突出する方向へ付勢されている。このように構成されて、植付自動操作ダイヤル48aは、オペレータが、軸方向を中心に回転操作が可能で、かつ押圧により軸方向に移動操作としての押圧操作が可能となっている。
植付自動操作ダイヤル48aには、植付自動操作ダイヤル48aの円筒面の近傍に指示部48bが形成されており、フロントパネル42には、植付自動操作ダイヤル48aの円筒面の近傍でかつそれぞれ異なる円周位置に、植付自動オフ位置表示部48c及び自動上昇オン位置表示部48dが配置されている。植付自動操作ダイヤル48aの回転位置は、指示部48bと、植付自動オフ位置表示部48c及び自動上昇オン位置表示部48dと、の位置関係により識別可能となっている。
後述する制御手段としての制御部36(図6参照)は、植付自動オフモード、自動上昇モード、植付自動モード、直進自動オフモード及び直進自動モードを有しており、植付自動操作ダイヤル48aの回転位置に応じて、植付自動オフモード、自動上昇モード及び植付自動モードが切替えられ、植付自動操作ダイヤル48aの押圧操作が行われる毎に、直進自動オフモード及び直進自動モードが切替えられる。
具体的には、制御部36は、植付自動操作ダイヤル48aが、指示部48bと植付自動オフ位置表示部48cとが対向する回転位置に位置している場合、植付自動オフモードとなり、指示部48bと自動上昇オン位置表示部48dとが対向する回転位置に位置している場合、自動上昇モードとなり、指示部48bが植付自動オフ位置表示部48c及び自動上昇オン位置表示部48dのいずれとも対向しない回転位置に位置している場合、植付自動モードとなる。なお、植付自動モードかつ直進自動モードである状態が、本実施の形態における自動制御モードを構成し、直進自動オフモードが、本実施の形態における非自動制御モードを構成し、植付自動オフモードかつ直進自動オフモードである状態が、本実施の形態における非制御モードを構成し、自動上昇モードかつ直進自動オフモードである状態が、本実施の形態における自動切断モードを構成し、植付自動モードかつ直進自動オフモードである状態が、本実施の形態における自動クラッチモードを構成する。
また、制御部36は、植付自動モードにおいて、植付自動操作ダイヤル48aの回転位置に応じて、畦際R0から基準位置としての植付開始位置A´までの枕地幅D0、圃場端での旋回動作を開始してから植付作業機3の下降を開始するまでの距離D1、及び圃場端での旋回動作を開始してから植付を開始するまでの距離D2の値が調節される(図13参照)。距離D1及び距離D2の詳細については後述する。
モード表示ランプ49は、自動上昇ランプ49a,植付自動ランプ49b,直進自動ランプ49cを有し、制御部36がいずれのモードであるかを報知可能に構成されている。具体的には、制御部36が、植付自動オフモードである場合、自動上昇ランプ49a及び植付自動ランプ49bが消灯し、直進自動オフモードである場合、直進自動ランプが消灯する。また、制御部36が、自動上昇モードである場合、自動上昇ランプ49aが点灯し、植付自動モードである場合、植付自動ランプ49bが点灯し、直進自動モードである場合、直進自動ランプ49cが点灯する。
自動上昇モード及び植付自動モードは、制御部36が、オペレータによる作業機操作ボタン50及び作業機操作レバー44の操作によらず、作業機操作カム31の作動等を行う状態である。具体的には、制御部36は、自動上昇モードにおいて、圃場端で走行機体1が旋回動作を開始した際に、植付クラッチを切断すると共に植付作業機3を上昇させる。また、制御部36は、植付自動モードにおいて、植付の開始時に枕地幅D0の測定を行い、植付の開始後、圃場端E1で走行機体1が旋回動作を開始した際に、植付クラッチを切断すると共に植付作業機3を上昇させ、走行距離Dtに基づいて植付作業機3を下降させ、走行距離Dt及びステアリングハンドル20aの回転角度に基づいて旋回動作の終了を判定すると、植付クラッチを接続する(図13参照)。なお、制御部36は、植付自動オフモードにおいて、オペレータによる作業機操作ボタン50及び作業機操作レバー44の操作によらず、作業機操作カム31を作動させない。
また、自動直進モードは、制御部36が、ステアリングモータ60(図6参照)を駆動することにより、予め設定された目標方位に沿って走行機体1が自律走行するように前輪9の操向を行う直進制御処理(図11及び図12参照)を実行可能な状態である。なお、制御部36は、直進自動オフモードにおいて、ステアリングモータ60を駆動させない。制御部36が各モードにおいて実行する処理についての詳細は、後述する。
次いで、本実施の形態の制御構成について説明をする。図6に示すように、走行機体1は、CPU、ROM、RAM、インターフェース等を含むマイクロコンピュータ(図示せず)を備え、乗用田植機Pの各部を制御する制御部36が設けられている。制御部36は、各操作手段により操作される各スイッチ及び各センサ等の入力手段からの信号が入力され、また各表示部及びアクチュエータ等の出力手段に信号を出力する。
入力手段としては、植付クラッチの接続を許可するON状態と植付クラッチの接続を規制するOFF状態とに切替えられる作業準備スイッチ52,作業機上側操作ボタン50a(図4(c)参照)の押圧操作及び作業機操作レバー44(図4(a)参照)の上げ操作により作動する作業機上側操作スイッチ51a,作業機下側操作ボタン50b(図4(c)参照)の押圧操作及び作業機操作レバー44の下げ操作により作動する作業機下側操作スイッチ51b,作業機操作カムポテンショ32,昇降リンク機構2(図1参照)の角度により植付作業機3の昇降位置を検出するリフト角ポテンショ53、トランスミッション8(図1参照)のドライブシャフト(図示せず)の回転量を検出する走行距離センサ55、複数のGPS衛星から発信される位置及び時間情報を受信可能な受信アンテナ(図示せず)を有し、受信アンテナで受信した走行機体1の位置及び時間情報を解読する位置情報検出部としての位置情報検出器56、走行機体1が直進する中立位置からのステアリングハンドル20a(図1参照)の回転角度を検出する操舵角センサ57、植付自動操作ダイヤル48a(図5参照)の回転位置を検出するダイヤルポテンショ58a、植付自動操作ダイヤル48aの軸方向への移動を検出するダイヤルスイッチ58b等がある。
なお、操舵角センサ57は、少なくとも、第1角度α<第2角度βである第1角度α及び第2角度βについて、ステアリングハンドル20aの回転角度が、第1角度α以下であるか否か、及び第2角度β以上であるか否か、が判定可能であればよい。第1角度αは、走行機体1が概ね直進するステアリングハンドル20aの回転角度であり、例えば、5°である。第2角度βは、走行機体1が圃場端における旋回中であることを示すステアリングハンドル20aの回転角度であり、例えば、180°である。このように、操舵角センサ57は、ポテンショメータのようにステアリングハンドル20aの回転角度を連続的に検出可能なものであってもよいし、特定の角度以上又は特定の角度以下であることのみを検出可能なものであってもよい。また、操舵角センサ57は、前輪9が操向されたことを検出可能であればよく、例えば、ステアリングコラム20bの回転角度を検出可能であってもよいし、前輪9の操向角度を検出可能であってもよいし、タイロッドの移動量を検出可能であってもよい。
出力手段としては、作業機操作カムモータ30,ステアリングモータ60,制御部36の各種の状態を報知可能な報知手段としての報知ブザー61及び報知ランプ62,モード表示ランプ49等がある。制御部36は、ステアリングモータ60を駆動することにより、オペレータによるステアリングハンドル20aの操向操作によらず、前輪9を操向可能に構成されている。
次いで、走行機体1が圃場端で旋回動作を繰返しながら圃場Fを往復走行して、植付作業機3により圃場Fへ苗を移植する植付作業を行う際に、制御部36が実行する各処理について説明をする。制御部36は、主電源(図示せず)がON状態になると、作業機操作制御S1(図7参照)、畦計測制御S2(図8参照)、旋回時制御S3(図9参照)、及び直進自動選択制御S4(図10参照)をそれぞれ実行し、各制御が終了すると、主電源がON状態を維持する限り、それぞれのフローの初めの処理から繰り返し実行し続ける。また、制御部36は、走行距離センサ55の検出結果に基づいて走行機体1の走行距離を算出し、単位時間当たりの走行距離に基づいて走行機体1の車速を算出する。
図7に示すように、作業機操作制御S1は、オペレータによる作業機操作ボタン50及び作業機操作レバー44の操作に基づいて、作業機操作カム31を作動させる制御である。制御部36は、作業機操作制御S1を開始すると、作業機下側操作スイッチ51bの操作があったか否かを判定する(ステップS11)。ステップS11の処理において、作業機下側操作スイッチ51bの操作があった場合(ステップS11のあり)、制御部36は、作業準備スイッチ52がON状態であるか否かを判定する(ステップS13)。この処理において、制御部36は、作業準備スイッチ52の状態を参照し、作業機下側操作スイッチ51bの操作に基づく植付クラッチの接続が規制されている状態であるか否かを判定している。
ステップS13の処理において、作業準備スイッチ52がON状態である場合(ステップS13のON)、制御部36は、植付作業機3の状態、すなわち作業機操作カム31のポジションを判定し(ステップS14乃至ステップS16)、作業機操作カム31が「上昇」ポジションである場合(ステップS14の上昇)、作業機操作カム31を「固定」ポジションに切替えて作業機操作制御S1を終了し(ステップS25)、作業機操作カム31が「固定」ポジションである場合(ステップS16の固定)、作業機操作カム31を「下降(自動)」ポジションに切替えて作業機操作制御S1を終了し(ステップS17)、作業機操作カム31が「下降(自動)」ポジションである場合(ステップS15の下降(自動))、制御部36は、作業機下側操作スイッチ51bの操作時間Tが所定時間T0より小さいか否かを判定する(ステップS18)。これらの処理において、制御部36は、作業機操作カムポテンショ32の検出結果に基づいて、作業機操作カム31がいずれのポジションであるかを判定し、作業機操作カム31のポジションに応じた処理を実行している。
ステップS16の処理において作業機操作カム31が「植付」ポジションである場合(ステップS16の植付)、及びステップS18の処理において作業機下側操作スイッチ51bの操作時間Tが所定時間T0以上であった場合(ステップS18のNO)、制御部36は、作業機操作制御S1を終了する。
また、ステップS18の処理において作業機下側操作スイッチ51bの操作時間Tが所定時間T0未満であった場合(ステップS18のYES)、制御部36は、植付作業機3の下降動作が停止しているか否かを判定する(ステップS19)。この処理において、制御部36は、リフト角ポテンショ53の検出結果に基づいて、植付作業機3の下降動作が停止しているか否かを判定している。
ステップS19の処理において、植付作業機3が下降動作が停止している場合(ステップS19のYES)、制御部36は、作業機操作カム31を「植付」ポジションに切替えて植付クラッチを接続し(ステップS20)、作業機操作制御S1を終了する。ステップS19の処理において、植付作業機3が下降動作が停止していない場合(ステップS19のNO)、制御部36は、作業機操作カム31の「植付」ポジションへの切替えを一時的に保留する植付クラッチ入待ち状態となり(ステップS21)、作業機操作制御S1を終了する。
また、ステップS13の処理において、作業準備スイッチ52がOFF状態である場合(ステップS13のOFF)、制御部36は、作業機操作カム31のポジションを判定し(ステップS22及びステップS23)、作業機操作カム31が「上昇」ポジションである場合(ステップS22の上昇)、作業機操作カム31を「固定」ポジションに切替えて作業機操作制御S1を終了し(ステップS25)、作業機操作カム31が「上昇」ポジションである場合(ステップS23の固定)、作業機操作カム31を「下降(自動)」ポジションに切替えて作業機操作制御S1を終了する(ステップS24)。また、ステップS11の処理において、作業機下側操作スイッチ51bの操作がない場合(ステップS11のなし)、制御部36は、作業機上側操作スイッチ51aの操作があったか否かを判定する(ステップS26)。
ステップS26の処理において、作業機上側操作スイッチ51aの操作があった場合(ステップS26のあり)、制御部36は、作業機操作カム31のポジションを判定し(ステップS27乃至ステップS29)、作業機操作カム31が「上昇」ポジションである場合(ステップS27の上昇)、作業機操作制御S1を終了し、作業機操作カム31が「固定」ポジションである場合(ステップS29の固定)、作業機操作カム31を「上昇」ポジションに切替えて作業機操作制御S1を終了し(ステップS33)、作業機操作カム31が「植付」ポジションである場合(ステップS29の植付)、作業機操作カム31を「下降(自動)」ポジションに切替えて作業機操作制御S1を終了する(ステップS30)。
これらの処理において、制御部36は、作業機操作カムポテンショ32の検出結果に基づいて、作業機操作カム31がいずれのポジションであるかを判定し、作業機操作カム31のポジションに応じた処理を実行している。
また、ステップS28の処理において、作業機操作カム31が「下降(自動)」ポジションである場合(ステップS28の下降(自動))、制御部36は、植付作業機3の下降動作が停止しているか否かを判定する(ステップS31)。この処理において、制御部36は、リフト角ポテンショ53の検出結果に基づいて、植付作業機3の下降動作が停止しているか否かを判定している。
ステップS31の処理において、植付作業機3が下降動作が停止している場合(ステップS31のYES)、制御部36は、作業機操作カム31を「上昇」ポジションに切替えて作業機操作制御S1を終了し(ステップS33)、植付作業機3が下降動作が停止していない場合(ステップS31のNO)、制御部36は、作業機操作カム31を「固定」ポジションに切替えて作業機操作制御S1を終了する(ステップS32)。また、ステップS26の処理において、作業機上側操作スイッチ51aの操作がなかった場合(ステップS26のなし)、制御部36は、植付クラッチ入待ち状態であるか否かを判定する(ステップS34)。
ステップS34の処理において、植付クラッチ入待ち状態である場合(ステップS34のYES)、制御部36は、植付作業機3の下降動作が停止しているか否かを判定し(ステップS35)、植付作業機3の下降動作が停止している場合(ステップS35のYES)、作業機操作カム31を「植付」ポジションに切替えて植付クラッチを接続し、作業機操作制御S1を終了する(ステップS36)。ステップS34の処理において、植付クラッチ入待ち状態でない場合(ステップS34のNO)、及びステップS35の処理において、植付作業機3の下降動作が停止していない場合(ステップS35のNO)、制御部36は、作業機操作制御S1を終了する。
以下、図8及び図13を参照して、畦計測制御S2について説明をする。畦計測制御S2は、植付作業を開始する際に植付の準備等を行う制御である。具体的には、畦計測制御S2は、畦際R0からの走行機体1の走行距離を測定することにより、畦際R0に対して予め設定された枕地幅D0を隔てた植付開始位置A´からの植付を開始可能とすると共に、制御部36が直進制御処理を実行する際の目標方位を設定する制御である。
植付作業を開始する際、まずオペレータは、作業準備スイッチ52がON状態(ステップS41のON)、制御部36を植付自動モード(ステップS44のYES)及び直進自動モード(ステップS45のYES)のいずれかに設定して、かつ作業機操作カム31が「下降(自動)」ポジションである状態(ステップS46のYES)で、植付作業機3の後端が畦際R0と重なる位置である原点Oまで走行機体1を移動し、停車する(ステップS47のYES)。この状態で、オペレータが、操作時間Tが所定時間T0以上となる作業機下側操作ボタン50bの押圧操作及び作業機操作レバー44の下げ操作を行うと(ステップS43のYES)、制御部36は、計測フラグをON状態にすると共に、枕地幅D0を初期値として減算による走行距離Dmの測定を開始する(ステップS48)。計測フラグは、畦際R0から植付開始位置A´まで走行距離Dmの測定中であるか否かを示すフラグである。
なお、作業準備スイッチ52がOFF状態である場合(ステップS41のOFF)、制御部36が植付自動モード及び直進自動モードのいずれでもない場合(ステップS45のNO)、作業機操作カム31が「下降(自動)」ポジション以外である場合(ステップS46のNO)、走行機体1が走行中である場合(ステップS47のNO)、オペレータによる作業機下側操作ボタン50bの押圧操作及び作業機操作レバー44の下げ操作の操作時間Tが所定時間T0未満である場合(ステップS43のNO)、制御部36は、畦計測制御S2を終了する。
作業準備スイッチ52がON状態(ステップS41のON)、オペレータによる作業機下側操作ボタン50bの押圧操作及び作業機操作レバー44の下げ操作がなく(ステップS42のなし)、計測フラグがON状態(ステップS50のYES)である場合、制御部36は、走行距離Dmが0に達したか否かを判定する(ステップS51)。走行距離Dmが0に達すると(ステップS51のYES)、直進自動モードである場合(S52のYES)、制御部36は、走行機体1が植付を開始する植付開始位置A´に達したと判断して、方向設定フラグをON状態にして(ステップS56)、植付を開始する側の圃場端E0とは反対側の圃場端E1へ向けて走行機体1を一方向へ走行させることにより目標方位を設定するための、所謂ティーチング走行が開始される。方向設定フラグは、ティーチング走行中であるか否かを示すフラグである。なお、制御部36は、初期値を0として加算による走行距離Dmの測定を行い、走行距離Dmが枕地幅D0に達した際に植付開始位置A´に達したと判断してもよい。また、ステップS51の処理が、本実施の形態における枕地幅判定処理を構成する。
ティーチング走行が開始された場合、及び直進自動オフモードである場合(ステップS52のNO)、制御部36は、作業機操作カム31を「植付」ポジションに切替えると共に、計測フラグをOFF状態に切替え、走行距離Dmの値に初期値をセットする(ステップS53)。作業準備スイッチ52がOFF状態である場合(ステップS41のOFF)、制御部36は、畦計測制御S2を終了する。
方向設定フラグがON状態で走行機体1がティーチング走行を行い(ステップS59のYES)、圃場端E1で旋回動作を開始する旋回開始位置B´に到達した際、植付クラッチが切断されると(ステップS58のYES)、制御部36は、植付開始位置A´を始点、植付クラッチが切断された際の走行機体1の位置である旋回開始位置B´を終点として(ステップS60)、植付開始位置A´と旋回開始位置B´とを結ぶ目標方位としての直線L0を設定し(ステップS61)、方向設定フラグをOFF状態に切替える。なお、直線L0は、直進自動モードにおいて、制御部36がステアリングモータ60(図6参照)の駆動により自律走行する目標となる方位となる。また、植付開始位置A´を設定するステップS56の処理、旋回開始位置B´を設定するステップS60の処理、及び直線L0を設定するステップS61の処理が、本実施の形態における目標方位設定処理を構成する。
このように、制御部36は、畦計測制御S2を実行することにより、枕地幅D0を測定して植付開始位置A´から植付を開始可能とすると共に、畦際R0からの走行距離Dmが枕地幅D0に達したことを判定した後、モードの切替え操作等を行うことなく、連続して直線L0の算出により目標方位の設定を行う処理に移行する。
以下、図9及び図13を参照して、旋回時制御S3について説明をする。旋回時制御S3は、圃場端で旋回動作を行う際に、植付作業機3の昇降や植付クラッチの断接等を行う制御である。走行機体1が圃場端E1へ向かって走行し、前輪9が操向されることにより走行機体1の走行方位を逆方向へ変化させる旋回動作を行う位置である旋回開始位置B´まで達した際、オペレータがステアリングハンドル20aを回転操作して回転角度が第1角度α以下から第2角度β以上に変化することにより旋回動作が開始されると(ステップS72のYES)、植付自動モードである場合(ステップS75のYES)、制御部36は、0を初期値として加算による走行距離Dtの測定を開始すると共に、報知ブザー61及び報知ランプ62を作動させて報知ブザー61による断続音の出力と報知ランプ62の点滅とからなる旋回中報知を開始する(ステップS76)。この処理において、制御部36は、圃場端で走行機体1が旋回動作を開始してからの走行距離Dtを測定し、走行距離Dtが距離D1に達した際に植付作業機3の下降を開始し、走行距離Dtが旋回動作を終了する走行距離である距離D2に達した際に植付を再開可能となるようにしている。また、この処理において、制御部36は、報知ブザー61及び報知ランプ62に旋回中報知を実行させることにより、オペレータに走行距離Dtの測定が行われていることを報知している。
なお、制御部36は、走行機体1の旋回動作が開始されてから旋回動作が終了するまでの進行度、具体的には、走行距離Dtと距離D2との差によって、作動態様が変化するように、報知ブザー61及び報知ランプ62に旋回中報知を実行させる。例えば、制御部36は、走行距離Dtと距離D2との差が小さくなるほど、報知ブザー61による断続音の1回の出力時間や出力間隔を短縮し、報知ランプ62の点滅の1回の発光時間や発光間隔を短縮する。これにより、オペレータは、植付を再開する位置を感覚的に予測することが可能となる。
また、ステアリングハンドル20aの回転角度が第1角度α以下から第2角度β以上に変化した際(ステップS72のYES)に自動上昇モードである場合(ステップS73のYES)、及びステップS76の処理を実行した場合、制御部36は、旋回動作が開始されたと判定し、作業機操作カム31を「上昇」ポジションに切替えて植付クラッチを切断し、植付作業機3を上昇させる(ステップS74)。なお、ステップS74の処理が、本実施の形態におけるクラッチ切断処理を構成する。
このように、制御部36は、自動上昇モード及び植付自動モードにおいて、走行機体1が旋回動作を開始すると、植付クラッチを切断する。
なお、作業準備スイッチ52がOFF状態である場合(ステップS71のOFF)、制御部36が自動上昇モード(ステップS73のNO)及び植付自動モードのいずれでもない場合(ステップS75のNO)、植付自動オフモードまたは自動上昇モードで(ステップS79のNO)かつステアリングハンドル20aの回転角度が第1角度α以下から第2角度β以上に変化していない場合(ステップS72のNO)、制御部36は、旋回時制御S3を終了する。
オペレータは、走行機体1が旋回動作を開始してから走行機体1の走行方位が逆方向になるまでステアリングハンドル20aの回転角度が第2角度β以上である状態を維持し、走行機体1の走行方位が逆方向になった際にステアリングハンドル20aの回転角度が第1角度α以下となるように、ステアリングハンドル20aを回転操作する。
植付自動モードにおいて、走行機体1が旋回動作を開始してからの走行距離Dtが予め設定されている距離D1を超えると(ステップS82のYES)、制御部36は、作業機操作カム31を「下降(自動)」ポジションに切替え、植付作業機3の下降を開始させる(ステップS83)。なお、距離D1は、距離D2と、植付作業機3が接地するまでにかかる時間と、走行機体1の車速と、から計算されて予め設定されている。また、圃場Fの状態等によって前輪9及び後輪10のスリップのし易さが異なるため、前述した通り、距離D1及び距離D2は、植付自動操作ダイヤル48aの回転操作によって調節が可能である。
この処理において、制御部36は、旋回動作を終了する位置、すなわち植付機構6が植付再開位置Aに達する直前に接地するように、植付作業機3の下降を開始させている。
走行機体1の走行方位が旋回動作を開始した際の走行方位と逆方向になった際に、オペレータがステアリングハンドル20aの回転角度を第1角度α以下に戻し、走行機体1を直進走行させて(ステップS84のYES)、旋回開始位置B´からの走行機体1の走行距離Dtが旋回動作を終了する距離である距離D2に達すると(ステップS81のYES)、制御部36は、作業機操作カム31を「植付」ポジションに切替えて植付クラッチを接続して植付を再開し(ステップS85)、走行距離Dtの値に初期値をセットすると共に旋回中報知を終了する(ステップS87)。なお、ステップS85の処理が、本実施の形態におけるクラッチ作動処理及びクラッチ接続処理を構成する。また、走行距離Dtの測定中、オペレータによる作業機操作ボタン50及び作業機操作レバー44の操作のいずれかがあった場合(ステップS80のYES)も同様に、走行距離Dtの値に初期値をセットすると共に旋回中報知を終了し(ステップS87)、旋回時制御S3を終了する。
このように、制御部36は、旋回時制御S3を実行することにより、自動上昇モードにおいて、圃場端で走行機体1が旋回動作を開始した際に、植付クラッチを切断すると共に植付作業機3を上昇させ、植付自動モードにおいて、圃場端E1で走行機体1が旋回動作を開始した際に、植付クラッチを切断すると共に植付作業機3を上昇させ、走行距離Dtが距離D2に達すると、植付クラッチを接続して植付を再開可能としている。
以下、図10乃至図13を参照して、直進自動選択制御S4について説明をする。直進自動選択制御S4は、サブルーチンである第1直進自動制御S92及び第2直進自動制御S93を実行し、直進自動モードにおいて、直進制御処理の実行及び停止を行う制御である。
図10に示すように、制御部36は、直進自動選択制御S4を開始すると、まず植付自動モードであるか否かを判定する(ステップS91)。この処理において、制御部36は、植付自動モードであるか否かを判定することで、第1直進自動制御S92及び第2直進自動制御S93のいずれを実行するかを判断している。
第1直進自動制御は、圃場端で走行機体1が旋回動作を開始してから終了するまでの走行距離Dtの測定を行い、走行距離Dt及びステアリングハンドル20aの回転角度に基づいて旋回動作の終了を判定すると共に、旋回動作が終了した際に直進制御処理を開始する制御である。
第2直進自動制御は、圃場端で走行機体1が旋回動作を開始してから終了するまでの走行距離Dtの測定を行い、走行距離Dt及びステアリングハンドル20aの回転角度に基づいて旋回動作の終了を判定すると共に、旋回動作が終了した際に直進制御処理を開始する制御である。
ステップS91の処理において、制御部36は、植付自動オフモード及び自動上昇モードのいずれかである場合(ステップS91のOFF)、第1直進自動制御を実行し(ステップS92)、植付自動モードである場合(ステップS91のON)、第2直進自動制御を実行する(ステップS93)。
図11に示すように、第1直進自動制御S92が開始され、作業準備スイッチ52がOFFである(ステップS101のNO)、及び直進自動オフモードである(ステップS102のNO)の、少なくとも一方を満たす場合、制御部36は、直線L0のデータを初期値に戻し(S103)、第1直進自動制御S92を終了する。
圃場端E1において、作業準備スイッチ52がON(ステップS101のYES)かつ直進自動モード(ステップS102のYES)で、ティーチング走行を行ったことにより直線L0が既に設定されている場合(ステップS104のYES)、オペレータの回転操作によりステアリングハンドル20aの回転角度が第2角度β以上になると(ステップS105のYES)、制御部36は、旋回動作が開始されたと判定し、走行距離Dtの測定を開始する(ステップS106)。なお、旋回動作が開始された際、自動上昇モード及び植付自動モードにおいては、制御部36が、作業機操作カム31を「植付」ポジションから「上昇」ポジションに切替えることにより、植付クラッチが切断されると共に植付作業機3が上昇し、植付自動モードにおいては、オペレータが、作業機操作ボタン50及び作業機操作レバー44を操作することにより、植付クラッチが切断されると共に植付作業機3が上昇する。
旋回動作が開始された後、オペレータの回転操作によりステアリングハンドル20aの回転角度が第1角度α以下になり(ステップS110のYES)、走行距離Dtが距離D2に達して(ステップS112)、植付クラッチが接続されると(ステップS109のYES)、制御部36は、植付再開位置Aに達したと判定し、位置情報検出器56が検出した走行機体1の現在位置を通り直線L0と平行な直線L1を設定すると共に走行距離Dtの値に初期値をセットする(ステップS113)。
ステップS113の処理を実行すると、制御部36は、植付再開位置Aを始点として直線L0の方位に沿って、すなわち直線L1に沿って走行機体1を走行させる直進制御処理を開始すると共に、報知ブザー61及び報知ランプ62に旋回中報知とは出力態様が異なる直進制御中報知を開始させる(ステップS115)。この処理において、制御部36は、旋回動作が終了し、植付クラッチが接続されて植付が再開されたことに基づき直進制御処理を開始すると共に、報知ブザー61及び報知ランプ62に直進制御中報知を実行させることにより、オペレータに直進制御処理が実行されていることを報知している。制御部36は、直進制御処理を実行し、位置情報検出器56が検出した走行機体1の現在位置と直線L1との距離が小さくなるように、ステアリングモータ60を駆動する。
制御部36は、第1直進自動制御S92において、直進制御処理の実行中にマット苗の補給等により植付を中断した際(ステップS109のNO)、直進制御処理を停止し(ステップS108)、再度植付クラッチを接続した際には(ステップS109のYES)、既に直線L1が設定されているので(ステップS111)、進制御処理を再開すると共に、報知ブザー61及び報知ランプ62に直進制御中報知を再開させる(ステップS115)。
走行機体1が旋回開始位置Bに達し、オペレータがステアリングハンドル20aの回転角度を第2角度β以上にすると(ステップS105のYES)、制御部36は、再び旋回動作が開始されたと判定し、直線L1のデータを初期値に戻して、走行距離Dtの測定を開始する(ステップS106)。
このように、制御部36は、第1直進自動制御を実行することにより、旋回動作の終了から次の旋回動作が開始されるまで直進制御処理を実行するので、圃場端での旋回動作と直進制御処理による目標方位に沿った自律走行を繰り返すことにより、走行機体1が圃場Fを往復走行して圃場Fに苗が移植される。
図12に示すように、第2直進自動制御S93は、第1直進自動制御S92とは走行距離Dtに関する処理(ステップS107、ステップS112及びステップS114)を実行しないことのみが異なり、他の処理は同一であるため、説明を省略する。
このように、制御部36は、直進自動モードにおいて直進自動選択制御S4を実行することにより、旋回動作が終了する際に、旋回動作を開始してからの走行距離Dt及びステアリングハンドル20aの回転角度に基づいて旋回動作の終了を判定し、直進制御処理を実行すると共に報知ブザー61及び報知ランプ62を作動させて直進制御中報知を実行させる。
特に、制御部36は、植付自動モードかつ直進自動モードにおいて直進自動選択制御S4を実行することにより、圃場端で走行機体1が旋回動作を開始すると植付クラッチを切断し、旋回動作を終了する際に、旋回動作を開始してからの走行距離Dt、ステアリングハンドル20aの回転角度及び植付クラッチが接続されることに基づいて旋回動作の終了を判定し、直進制御処理を実行する。
本実施の形態の乗用田植機Pは、以上のような構成からなるので、クラッチ作動処理における植付クラッチの作動タイミングの調節、即ち枕地幅D0、距離D1及び距離D2の値の調節と、各モードの切替えと、を共に植付自動操作ダイヤル48aの操作によって行うことが可能であるため、部品点数を削減し、コストの低減を図ることが可能となる。
また、本実施の形態の乗用田植機Pは、制御部36が、クラッチ作動処理において、走行機体1が旋回動作を開始してからのドライブシャフトの回転量に基づいて植付クラッチを接続するので、旋回動作が終了した際にオペレータが植付クラッチを接続する手間を省き、オペレータの操作負担を軽減することができる。
また、本実施の形態の乗用田植機Pは、制御部36がいずれのモードであるかを報知可能なモード表示ランプを備えているので、オペレータが植付自動操作ダイヤル48aを誤操作することの防止を図ることができる。
なお、本実施の形態において、制御部36は、畦計測制御S2を実行することにより、圃場へ植付を行いながらティーチング走行を行うように構成されているが、これに限定されない。制御部は、畦計測制御を実行することにより、畦際R0からの走行距離Dmが枕地幅D0に達した際、植付クラッチを接続して植付開始位置A´を設定した後で、例えば1列のみの植付を行って再び植付クラッチを切断し、その後植付を行わない走行、所謂空歩きをして走行機体1が旋回開始位置B´に達した際、植付開始位置A´を始点、旋回開始位置B´を終点として直線L0を設定するように構成されていてもよい。
また、本実施の形態において、制御部は、第1直進自動制御を実行することにより、走行距離Dtが距離D1や距離D2に達した際に報知ブザー61及び報知ランプ62を作動させるように構成されていてもよい。このように構成された場合、作業機操作ボタン50及び作業機操作レバー44を操作するタイミングを、オペレータに報知して、適切なタイミングで直進制御処理を開始することが可能となる。
また、本実施の形態において、制御部36は、畦計測制御S2を実行することにより、植付開始位置A´と旋回開始位置B´とを結ぶ直線L0を目標方位として設定するように構成されているが、これに限定されない。制御部は、位置情報検出部の検出結果から得られた植付開始位置A´から旋回開始位置B´までの走行機体1の位置の軌跡に近い直線を算出し、目標方位として設定するように構成されていてもよい。
また、本実施の形態において、位置情報検出部としての位置情報検出器56は、受信アンテナで受信した走行機体1の位置及び時間情報を解読するように構成されているが、これに限定されない。位置情報検出部は、走行機体の位置情報に関する信号を受信可能な受信アンテナを有していればよく、例えば、受信した信号に基づいて走行機体1の位置及び時間情報を解読する機能は、制御部が有するように構成されていてもよい。
また、本実施の形態において、位置情報検出部としての位置情報検出器56は、受信アンテナで受信した複数のGPS衛星から発信される位置及び時間情報により、走行機体1の位置及び時間情報を解読するように構成されているが、これに限定されない。位置情報検出部は、例えば、地上に設置された複数の発信源からの電波を受信することにより、走行機体1の位置を検出可能に構成されていてもよい。
また、本実施の形態において、制御部36は、走行機体1が旋回動作を開始してから旋回動作を終了するまでと、及び直進制御処理の実行中に報知手段としての報知ブザー61及び報知ランプ62を作動させて断続音や光の点滅等による報知を実行させるように構成されているが、これに限定されない。報知手段はオペレータに対する報知が可能であればよく、例えば、制御部は、報知ブザー61に音声を出力する報知を実行させてもよいし、フロントパネル42等に設けられた液晶ディスプレイに報知内容を画像で表示させるように構成されていてもよいし、モード表示ランプ49を作動させて報知を実行させるように構成されていてもよい。また、旋回中報知は、進行度に応じて、液晶ディスプレイの画像を変化させてもよいし、ランプ等の色を変化させてもよいし、ブザーの音の高低の変化や音声を変化させてもよい。
また、本実施の形態において、制御部36は、旋回時制御S3及び第2直進自動制御S93を実行することにより、旋回動作を開始してからの走行距離Dtに基づいて植付作業機3の下降開始タイミングや旋回動作の終了を判定しているが、これに限定されない。制御部は、旋回開始位置と位置情報検出器56が検出した走行機体1の現在位置との位置関係から旋回動作の終了を判定するように構成されていてもよい。
また、本実施の形態において、前輪9及び後輪10に支持される走行機体1を備えた乗用田植機Pについて説明をしたが、これに限定されない。移植機は、走行装置としてのクローラに支持された走行機体を備えていてもよいし、無線で遠隔操作を行うことが可能に構成されていてもよい。無線で遠隔操作を行うことが可能な構成である場合には、制御部の機能の一部や報知手段は、移植機を遠隔操作するコントローラに設けられていてもよい。
次いで、本発明の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態の乗用田植機P1は、第1の実施の形態の乗用田植機Pに対して植付自動操作部70の構成及び制御部36が実行する制御が異なるのみで他は同一であるため、第1の実施の形態と同様の内容については、図示を省略、又は図に同一符号を付して説明する。
図14(a)に示すように、植付自動操作部70は、操作部としてのモード切替ダイヤル70aを有している。モード切替ダイヤル70aは、円柱状に形成され、軸方向を中心にオペレータによる回転操作が可能に、フロントパネル42に支持されている。モード切替ダイヤル70aには、モード切替ダイヤル70aの円筒面の近傍に指示部70bが形成されており、フロントパネル42には、モード切替ダイヤル70aの円筒面の近傍でかつそれぞれ異なる円周位置に、所定方向へ、具体的には反時計回りの方向へ、自動オフ位置表示部70c、自動上昇オン位置表示部70d、植付自動オン位置表示部70e及び直進自動オン位置表示部70fの順に配置されている。モード切替ダイヤル70aの回転位置は、指示部70bと、各表示部70c~70fと、の位置関係により識別可能となっている。
制御部36(図6参照)は、植付自動オフモード、自動上昇モード、植付自動モード、直進自動オフモード及び直進自動モードを有しており、モード切替ダイヤル70aの回転位置に応じて、各モードが切替えられる。具体的には、制御部36は、モード切替ダイヤル70aが、指示部70bと自動オフ位置表示部70cとが対向する回転位置に位置している場合、植付自動オフモードかつ直進自動オフモードとなり、指示部70bと自動上昇オン位置表示部70dとが対向する回転位置に位置している場合、自動上昇モードかつ直進自動オフモードとなり、指示部70bと植付自動オン位置表示部70eとが対向する回転位置に位置している場合、植付自動オンモードかつ直進自動オフモードとなり、指示部70bと直進自動オン位置表示部70fとが対向する回転位置に位置している場合、植付自動オンモードかつ直進自動オンモードとなる。即ち、制御部36は、モード切替ダイヤル70aが反時計回り方向へ回転操作された際に、植付自動オフモードかつ直進自動オフモード、自動上昇モードかつ直進自動オフモード、植付自動オンモードかつ直進自動オフモード、及び植付自動オンモードかつ直進自動オンモードの順に切替え可能に構成されている。
本実施の形態の乗用田植機P1は、以上のような構成からなるので、モード切替ダイヤル70aが反時計回り方向へ回転操作された際に、植付自動オフモードかつ直進自動オフモード、自動上昇モードかつ直進自動オフモード、植付自動オンモードかつ直進自動オフモード、及び植付自動オンモードかつ直進自動オンモードの順に切替え可能であるため、制御手段が実行する処理を段階的に増減させることができ、オペレータがモード切替ダイヤル70aを誤操作することの防止を図ることができる。また、制御部36の各モードを切替え可能なモード切替ダイヤル70aに押圧操作を検出するスイッチやばね等が不要であり、簡易な構成によりコストの削減をすることが可能となる。
次いで、本発明の第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態の乗用田植機P2は、第1の実施の形態の乗用田植機Pに対して植付自動操作部80の構成及びモード表示ランプ49の制御が異なるのみで他は同一であるため、第1の実施の形態と同様の内容については、図示を省略、又は図に同一符号を付して説明する。
図14(b)に示すように、植付自動操作部80は、操作部としてのモード切替ボタン80aを有している。モード切替ボタン80aは、円柱状に形成され、フロントパネル42に対して軸方向へ移動可能に支持されていると共に、ばね(図示せず)によりフロントパネル42から突出する方向へ付勢されている。
制御部36(図6参照)は、植付自動オフモード、自動上昇モード、植付自動モード、直進自動オフモード及び直進自動モードを有しており、モード切替ボタン80aの移動をダイヤルスイッチ58bにより検出して、主電源または作業準備スイッチがON状態となってからモード切替ボタン80aに対する押圧操作が行われた回数に応じて、各モードが切替えられる。具体的には、制御部36は、主電源または作業準備スイッチがON状態となった際に植付自動オフモードかつ直進自動オフモードとなり、モード切替ボタン80aに対する押圧操作が行われる毎に、植付自動オフモードかつ直進自動オフモード→自動上昇モードかつ直進自動オフモード→植付自動オンモードかつ直進自動オフモード→植付自動オンモードかつ直進自動オンモード→植付自動オフモードかつ直進自動オフモード→・・・の順序で、循環的に切替えられる。
本実施の形態の乗用田植機P2は、以上のような構成からなるので、制御部36の各モードを切替え可能なモード切替ボタン80aに回転操作を検出するポテンショメータ等が不要であり、簡易な構成によりコストの削減をすることが可能となる。
次いで、本発明の第4の実施の形態について説明する。第4の実施の形態の乗用田植機P3は、第1の実施の形態の乗用田植機Pに対して植付自動操作部90の構成及びモード表示ランプ49の制御が異なるのみで他は同一であるため、第1の実施の形態と同様の内容については、図示を省略、又は図に同一符号を付して説明する。
図14(c)に示すように、植付自動操作部90は、操作部としてのモード切替ダイヤル90aを有している。モード切替ダイヤル90aは、円柱状に形成され、軸方向を中心に回転可能にフロントパネル42に支持されていると共に、軸方向へ移動可能で、ばね(図示せず)によりフロントパネル42から突出する方向へ付勢されている。このように構成されて、モード切替ダイヤル90aは、オペレータが、軸方向を中心に回転操作が可能で、かつ押圧により軸方向に移動操作としての押圧操作が可能となっている。
モード切替ダイヤル90aには、モード切替ダイヤル90aの円筒面の近傍に指示部90bが形成されており、フロントパネル42には、モード切替ダイヤル90aの円筒面の近傍でかつそれぞれ異なる円周位置に、植付自動オフ位置表示部90c、自動上昇オン位置表示部90d及び植付自動オン位置表示部90eが配置されている。モード切替ダイヤル90aの回転位置は、指示部90bと、各表示部90c~90eと、の位置関係により識別可能となっている。
制御部36(図6参照)は、植付自動オフモード、自動上昇モード、植付自動モード、直進自動オフモード及び直進自動モードを有しており、モード切替ダイヤル90aの回転位置に応じて、植付自動オフモード、自動上昇モード及び植付自動モードが切替えられ、モード切替ダイヤル90aの押圧操作が行われる毎に、直進自動オフモード及び直進自動モードが切替えられる。具体的には、制御部36は、モード切替ダイヤル90aが、指示部90bと植付自動オフ位置表示部90cとが対向する回転位置に位置している場合、植付自動オフモードとなり、指示部90bと自動上昇オン位置表示部90dとが対向する回転位置に位置している場合、自動上昇モードとなり、指示部90bが植付自動オン位置表示部90eとが対向する回転位置に位置している場合、植付自動モードとなる。
本実施の形態の乗用田植機P3は、以上のような構成からなるので、制御部36の各モードを切替え可能なモード切替ダイヤル90aは、制御部36の各モードの切替え以外の機能を有していないので、操作が単純になり、オペレータがモードの切替え操作を行う際の誤操作を防止することが可能となる。