JP7048355B2 - 異材接合継手および異材接合方法 - Google Patents
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Description
また、前述のフラックス入りワイヤ(FCW)を用いて接合した場合、フラックスおよびフラックスと化合した材料成分の蒸発ガスによってブローホールが更に残存しやすくなるという問題もある。
まず、本発明の第1の実施形態に係る異材接合継手および異材接合方法について説明する。図1は、本実施形態に係る異材接合方法により突合せ接合された接合継手部付近の断面概略図である。本実施形態の異材接合継手(突合せ継手)は、鉄系材料1とアルミニウム系材料2とが、溶着金属3を介したブレーズ溶接により突合せ接合されることにより形成される。
上記作用をより効果的に得るためには、ルートギャップGを0.5mm以上とすることが好ましく、0.8mm以上とすることがより好ましい。
上記作用をより効果的に得るためには、ルートギャップGを1.5mm未満とすることが好ましく、1.2mm未満とすることがより好ましい。最も好ましいのは、ルートギャップG=1.0mmの場合である。
上記作用をより効果的に得るためには、開先角度θを30°以上とすることが好ましく、40°以上とすることがより好ましい。
アルミニウム系材料2に開先を設ける場合において、開先形状は特に制限されないが、突合せ接合時の熱源に近い側の面を斜面とする、いわゆるレ型開先とすることが好ましい。
アルミニウム系材料2に開先を設ける場合に、ルート面を残す(ルート面を0mm超とする)ようにしても構わない。
なお、より好ましくは、Siを1.7乃至2.7質量%、Tiを0.05乃至0.25質量%含有し、残部がアルミニウム及び不可避的不純物であるアルミニウム合金からなる筒状の皮材と、この皮材内に充填されAlF3を7乃至15質量%含有し、残部がKAlF系フラックス及び不純物であるフラックスとを有し、該フラックスの充填率がワイヤの全質量あたり2.5乃至20質量%である、フラックス入りワイヤの使用が望まれる。
そして、鉄系材料1の表面は、溶融部においてぬれ性が向上し、鉄系材料1の表面を溶融したアルミニウム合金の溶湯が滑らかに覆う。これにより、アルミニウム系材料2と鉄系材料1とが強固に密着するため、結果として他のアルミニウム系材料を用いたワイヤ類、例えばJISで規定された上述のワイヤやその改良材などと比較し、強固な界面接合力を得ることができる。
なお、アルミニウム合金の種類として、5000系(Al-Mg系)や6000系(Al-Mg-Si系)などを挙げることができるが、本実施形態ではいずれの合金でも使用することができる。
続いて、本発明の第2の実施形態に係る異材接合継手および異材接合方法について説明する。図2は、本実施形態に係る異材接合方法により重ね接合された接合継手部付近の断面概略図である。本実施形態の異材接合継手(重ね継手)は、鉄系材料1とアルミニウム系材料2とが、溶着金属3を介したブレーズ溶接により重ね接合されることにより形成される。重ね接合は、第1の実施形態と同様の方法により実施することができる。また、溶着金属3の形成過程についても第1の実施形態と同様である。
開先角度θが30°以上50°以下の範囲で、アルミニウム系材料2に開先を設けることで、ブレーズ溶接時に溶融するアルミニウム系材料2の溶融量が少なくなり、ブローホールの要因となるアルミニウム系材料2の酸化膜の溶融量を抑えることができる。結果として、溶着金属3中に大きなブローホールが多く残存することを効果的に抑制することができる。
上記作用をより効果的に得るためには、開先角度θを30°以上とすることが好ましく、40°以上とすることがより好ましい。
上記作用を更に効果的に得るためには、ルートギャップGを0.5mm以上とすることが好ましく、0.8mm以上とすることがより好ましい。
上記作用をより効果的に得るためには、ルートギャップGを1.5mm未満とすることがより好ましく、1.2mm未満とすることが更に好ましい。最も好ましいのは、ルートギャップG=1.0mmの場合である。
鉄系材料とアルミニウム系材料における突合せ接合に関する試験を行った。溶接条件は表1に示す通りであり、溶接速度以外は、全ての実施例および比較例において共通とした。なお、ここで説明する溶接条件は一例であり、本実施形態では以下の溶接条件に限定されるものではない。
また、表2に示すように、鉄系材料(鋼材)としてSS400を、アルミニウム系材料(Al合金材)として5000系アルミニウム合金であるA5052または6000系アルミニウム合金であるA6022を使用し、ルートギャップおよび溶接速度を表2に示す各条件に設定の上、上記突合せ接合を実施した。なお、本実施例における突合せ接合試験の態様を示す断面概略図を図3に示す。
溶接ワイヤ ナイス(株)製 AluS4M φ1.2mm
溶接機 (株)ダイヘン社製 DW300+
モード:軟質アルミ
極性/プロセス:AC/パルス
突出し長さ:15mm
シールドガス:Ar 20L/min
溶接方法 自動(DX100+MH6)
アルミニウム系材料の開先形状 45°レ形開先、ルート面1mm
溶接長さ 約200mm
なお、ルートギャップを設ける場合には、ワーク両端を仮止めしてから、本溶接を実施
した。
上記AluS4Mの規格は、Siを1.7乃至2.7質量%、Tiを0.05乃至0.25質量%含有し、残部がアルミニウム及び不可避的不純物であるアルミニウム合金からなる筒状の皮材と、この皮材内に充填されAlF3を7乃至15質量%含有し、残部がKAlF系フラックス及び不純物であるフラックスとを有し、該フラックスの充填率がワイヤの全質量あたり2.5乃至20質量%であるフラックス入りワイヤである。
なお、ビード外観、ビード幅、最大試験力および引張強さの調査にあたっては、溶接ビード方向における両端から15mmと中央位置の3か所において、25mm幅の試料をウォータージェット(WJ)加工により採取した。そして、表2におけるビード幅、最大試験力および引張強さの値は、溶接開始側、試料中央部、溶接終端側の3点の平均値とした。
実施例1-1の引張強さ(134N/mm)/比較例1-1の引張強さ(80N/mm)=約1.68倍
実施例1-2の引張強さ(171N/mm)/比較例1-2の引張強さ(66N/mm)=約2.59倍
実施例1-3の引張強さ(202N/mm)/比較例1-3の引張強さ(143N/mm)=約1.41倍
これは、実施例1-2がより好ましい溶接速度の条件である300mm/min超、500mm/min未満を満足することによると考えられる。
また、本発明の要件を満足しない比較例1-4および比較例1-5(ルートギャップ=2.0mmの場合)は、突合せ接合時に溶接ワイヤなどが由来の溶着金属が鉄系材料側まで十分になじまず、溶け落ちてしまった結果、良好なビード形状を得ることができなかった。このため、比較例1-4および比較例1-5においては引張試験を行っておらず、表2中の「ビード幅」、「最大試験力(N)」および「引張強さ(N/mm)」の値を「-」としている。
例えば、ルートギャップの条件以外の試験条件が同一である、実施例1-1と比較例1-1を比較した場合、溶着金属内のブローホール(図4Aや図4D中における、多数の黒丸で示された部分)に着目すると、実施例1-1の方が大きなブローホールが低減されていることが分かる。また同様に、実施例1-2と比較例1-2の比較、実施例1-3と比較例1-3の比較および実施例1-4と比較例1-6の比較においても、実施例の突合せ継手は大きなブローホールが低減されていることが分かる。
なお、図4Bおよび図4Cにおいては、断面写真の確認時に鋼材が剥離してしまったため、図中には鋼材が示されていない。
鉄系材料とアルミニウム系材料における重ね接合に関する試験を行った。溶接条件は表3に示す通りであり、全ての実施例および比較例において共通とした。なお、ここで説明する溶接条件は一例であり、本実施形態では以下の溶接条件に限定されるものではない。
また、表4に示すように、鉄系材料(鋼材)としてCR980またはSS400を、アルミニウム系材料(Al合金材)として5000系アルミニウム合金であるA5052または6000系アルミニウム合金であるA6022を使用し、アルミニウム系材料における開先加工の有無およびルートギャップを表4に示す各条件に設定の上、上記重ね接合を実施した。なお、本実施例における重ね接合試験の態様を示す断面概略図を図6A(開先加工なし)および図6B(開先加工あり)に示す。
溶接ワイヤ ナイス(株)製 AluS4M φ1.2mm
溶接機 (株)ダイヘン社製 DW300+
極性/プロセス:AC/パルス
モード:軟質アルミ
突出し長さ:15mm
シールドガス:Ar 20L/min
溶接方法 自動(DX100+MH6)
アルミニウム系材料に開先を設ける場合の開先形状 45°レ形開先、ルート面1mm
重ね代 5mm
溶接長さ 約200mm
なお、ルートギャップを設ける場合には、ワーク両端を仮止めしてから、本溶接を実施した。
上記AluS4Mの規格は、実施例1で説明した通りである。
実施例2-1の引張強さ(359N/mm)/比較例1-1の引張強さ(126N/mm)=約2.85倍
実施例2-2の引張強さ(349N/mm)/比較例2-2の引張強さ(171N/mm)=約2.04倍
実施例2-3の引張強さ(273N/mm)/比較例2-3の引張強さ(143N/mm)=約1.91倍
実施例2-4の引張強さ(261N/mm)/比較例2-4の引張強さ(217N/mm)=約1.20倍
実施例2-5の引張強さ(304N/mm)/比較例2-5の引張強さ(226N/mm)=約1.35倍
実施例2-6の引張強さ(244N/mm)/比較例2-6の引張強さ(235N/mm)=約1.04倍
これは、実施例2-1、実施例2-2、実施例2-4および実施例2-5が、好ましいルートギャップの条件である0.5mm以上2.0mm未満を満足することによると考えられる。
図8A~図8Cは、それぞれ比較例2-4~比較例2-6に係るAl合金材と鋼材との突合せ継手における、溶着金属中のブローホールの状態を示す断面写真である。
図8D~図8Fは、それぞれ実施例2-4~実施例2-6に係るAl合金材と鋼材との突合せ継手における、溶着金属中のブローホールの状態を示す断面写真である。
例えば、アルミニウム系材料が5000系で共通し、ルートギャップの条件が同一である、実施例2-1と比較例2-1を比較した場合、溶着金属内のブローホール(図7Aや図7D中における、多数の黒丸で示された部分)に着目すると、実施例2-1の方が大きなブローホールが低減されていることが分かる。また同様に、実施例2-2と比較例2-2の比較、実施例2-3と比較例2-3の比較、実施例2-4と比較例2-4の比較、実施例2-5と比較例2-5の比較および実施例2-6と比較例2-6の比較においても、実施例の重ね継手は大きなブローホールが低減されていることが分かる。
実施例2と同様、鉄系材料とアルミニウム系材料における重ね接合に関する試験を行った。溶接条件は表5に示す通りであり、実施例および比較例において共通とした。なお、ここで説明する溶接条件は一例であり、本実施形態では以下の溶接条件に限定されるものではない。
また、表6に示すように、鉄系材料(鋼材)としてSS400を、アルミニウム系材料(Al合金材)として5000系アルミニウム合金であるA5052を使用し、アルミニウム系材料における開先加工の有無およびルートギャップを表6に示す各条件に設定の上、上記重ね接合を実施した。なお、実施例3では、実施例と比較例において開先加工の有無以外の条件は全て同一とした。また、その他の共通条件は実施例2と共通のため説明を省略する。
[1]鉄系材料とアルミニウム系材料とが、アルミニウム系ワイヤを用いたブレーズ溶接により突合せ接合された異材接合継手であって、
前記鉄系材料と前記アルミニウム系材料の突合せ部には、アルミニウムを含有する溶着金属が形成されており、
前記鉄系材料と前記アルミニウム系材料のルートギャップが0.5mm以上2.0mm未満であることを特徴とする異材接合継手。
[2]前記アルミニウム系材料は前記突合せ部に開先を有しており、該開先の開先角度が30°以上50°以下であることを特徴とする上記[1]に記載の異材接合継手。
[3]前記アルミニウム系材料が5000系アルミニウム合金からなることを特徴とする上記[1]または[2]に記載の異材接合継手。
[4]前記アルミニウム系材料の板厚が1.0mm以上5.0mm以下であることを特徴とする上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の異材接合継手。
[5]鉄系材料とアルミニウム系材料とを、アルミニウム系ワイヤを用いたブレーズ溶接により突合せ接合する異材接合方法であって、
前記鉄系材料と前記アルミニウム系材料のルートギャップを0.5mm以上2.0mm未満に設定し、該鉄系材料と該アルミニウム系材料の突合せ部にアルミニウムを含有する溶着金属を形成することを特徴とする異材接合方法。
[6]前記アルミニウム系材料に対し開先角度が30°以上50°以下の開先を設け、前記溶着金属を形成することを特徴とする上記[5]に記載の異材接合方法。
[7]前記アルミニウム系材料として5000系アルミニウム合金を用いることを特徴とする上記[5]または[6]に記載の異材接合方法。
[8]前記アルミニウム系材料の板厚として1.0mm以上5.0mm以下のものを用いることを特徴とする上記[5]~[7]のいずれか1つに記載の異材接合方法。
[9]前記突合せ接合する際の熱源として、MIGを用いることを特徴とする上記[5]~[8]のいずれか1つに記載の異材接合方法。
[10]鉄系材料とアルミニウム系材料とが、アルミニウム系ワイヤを用いたブレーズ溶接により重ね接合された異材接合継手であって、
前記鉄系材料と前記アルミニウム系材料の重ね合せ部には、アルミニウムを含有する溶着金属が形成されており、
前記アルミニウム系材料は前記重ね合せ部に開先を有するとともに、該開先の開先角度が30°以上50°以下であることを特徴とする異材接合継手。
[11]前記鉄系材料と前記アルミニウム系材料のルートギャップが0.5mm以上2.0mm未満であることを特徴とする上記[10]に記載の異材接合継手。
[12]前記アルミニウム系材料が5000系アルミニウム合金からなることを特徴とする上記[10]または[11]に記載の異材接合継手。
[13]前記アルミニウム系材料の板厚が1.0mm以上5.0mm以下であることを特徴とする上記[10]~[12]のいずれか1項に記載の異材接合継手。
[14]鉄系材料とアルミニウム系材料とを、アルミニウム系ワイヤを用いたブレーズ溶接により重ね接合する異材接合方法であって、
前記アルミニウム系材料に対し開先角度が30°以上50°以下の開先を設け、該鉄系材料と該アルミニウム系材料の重ね合せ部にアルミニウムを含有する溶着金属を形成することを特徴とする異材接合方法。
[15]前記鉄系材料と前記アルミニウム系材料のルートギャップを0.5mm以上2.0mm未満に設定し、前記溶着金属を形成することを特徴とする上記[14]に記載の異材接合方法。
[16]前記アルミニウム系材料として5000系アルミニウム合金を用いることを特徴とする上記[14]または[15]に記載の異材接合方法。
[17]前記アルミニウム系材料の板厚として1.0mm以上5.0mm以下のものを用いることを特徴とする上記[14]~[16]のいずれか1つに記載の異材接合方法。
[18]前記重ね合せ接合する際の熱源として、MIGを用いることを特徴とする上記[14]~[17]のいずれか1つに記載の異材接合方法。
2 アルミニウム系材料
3 溶着金属
4 突合せ部
5 重ね合せ部
G ルートギャップ
θ 開先角度
t1 鉄系材料の板厚
t2 アルミニウム系材料の板厚
Claims (9)
- 鉄系材料とアルミニウム系材料とが、アルミニウム系ワイヤを用いたブレーズ溶接により突合せ接合された異材接合継手であって、
前記鉄系材料と前記アルミニウム系材料の突合せ部には、アルミニウムを含有する溶着金属が形成されており、
前記鉄系材料と前記アルミニウム系材料のルートギャップが0.5mm以上2.0mm未満であることを特徴とする異材接合継手。 - 前記アルミニウム系材料は前記突合せ部に開先を有しており、該開先の開先角度が30°以上50°以下であることを特徴とする請求項1に記載の異材接合継手。
- 前記アルミニウム系材料が5000系アルミニウム合金からなることを特徴とする請求項1または2に記載の異材接合継手。
- 前記アルミニウム系材料の板厚が1.0mm以上5.0mm以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の異材接合継手。
- 鉄系材料とアルミニウム系材料とを、アルミニウム系ワイヤを用いたブレーズ溶接により突合せ接合する異材接合方法であって、
前記鉄系材料と前記アルミニウム系材料のルートギャップを0.5mm以上2.0mm未満に設定し、該鉄系材料と該アルミニウム系材料の突合せ部にアルミニウムを含有する溶着金属を形成することを特徴とする異材接合方法。 - 前記アルミニウム系材料に対し開先角度が30°以上50°以下の開先を設け、前記溶着金属を形成することを特徴とする請求項5に記載の異材接合方法。
- 前記アルミニウム系材料として5000系アルミニウム合金を用いることを特徴とする請求項5または6に記載の異材接合方法。
- 前記アルミニウム系材料の板厚として1.0mm以上5.0mm以下のものを用いることを特徴とする請求項5~7のいずれか1項に記載の異材接合方法。
- 前記突合せ接合する際の熱源として、MIGを用いることを特徴とする請求項5~8のいずれか1項に記載の異材接合方法。
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