図1は、本発明の一の実施形態に係るダイシングテープ付き接着フィルムXの断面模式図である。ダイシングテープ付き接着フィルムXは、本発明の一の実施形態に係る接着フィルム10とダイシングテープ20とを含む積層構造を有する。ダイシングテープ20は、基材21と粘着剤層22とを含む積層構造を有する。粘着剤層22は、接着フィルム10側に粘着面22aを有する。接着フィルム10は、ダイシングテープ20の粘着剤層22ないしその粘着面22aに剥離可能に密着している。ダイシングテープ付き接着フィルムXは、半導体装置の製造において接着フィルム付き半導体チップを得る過程での例えば後記のようなブレードダイシング工程やエキスパンド工程に使用することのできるものである。また、ダイシングテープ付き接着フィルムXは、半導体装置の製造過程におけるワークである半導体ウエハに対応するサイズの円盤形状を有し、その直径は、例えば、300~390mmの範囲内(12インチウエハ対応型)、200~280mmの範囲内(8インチウエハ対応型)、450~530mmの範囲内(18インチウエハ対応型)、または、150~230mmの範囲内(6インチウエハ対応型)にある。
ダイシングテープ付き接着フィルムXにおける接着フィルム10は、高分子バインダーと、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂用の硬化剤と、無機フィラーとを少なくとも含有し、その硬化物において高分子バインダーに由来するマトリクス相と、エポキシ樹脂および硬化剤に由来する分散相と、当該分散相によって粒子表面の全体または一部が被覆される無機フィラーとを含むこととなる構成を有する。マトリクス相と分散相とがいわゆる海島構造をなす当該硬化物において、マトリクス相は、重量平均分子量が例えば1万以上の高分子バインダーを主成分として形成される連続相であり、分散相は、エポキシ樹脂とその硬化剤とを主成分として形成されて硬化物内に分散する硬化ドメインである。このような接着フィルム10は、熱硬化性のダイボンディング用接着剤として使用することができる。
接着フィルム10中の高分子バインダーは、例えば熱可塑性樹脂である。高分子バインダーをなす熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6-ナイロンや6,6-ナイロンなどポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなど飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、およびフッ素樹脂が挙げられる。接着フィルム10は、一種類の高分子バインダーを含んでもよいし、二種類以上の高分子バインダーを含んでもよい。アクリル樹脂は、イオン性不純物が少なく且つ耐熱性が高いことから、接着フィルム10中の高分子バインダーとして好ましい。
接着フィルム10が高分子バインダーとしてアクリル樹脂を含有する場合の当該アクリル樹脂をなすアクリル系ポリマーは、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマーユニットを質量割合で最も多く含む。「(メタ)アクリル」は、「アクリル」および/または「メタクリル」を意味するものとする。
上記アクリル系ポリマーのモノマーユニットをなすための(メタ)アクリル酸エステル、即ち、アクリル系ポリマーの構成モノマーである(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、および(メタ)アクリル酸アリールエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s-ブチルエステル、t-ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2-エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル(即ちラウリルエステル)、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、およびエイコシルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸のシクロペンチルエステルおよびシクロヘキシルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アリールエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸フェニルおよび(メタ)アクリル酸ベンジルが挙げられる。アクリル系ポリマーの構成モノマーとして、一種類の(メタ)アクリル酸エステルが用いられてもよいし、二種類以上の(メタ)アクリル酸エステルが用いられてもよい。また、アクリル樹脂なすためのアクリル系ポリマーは、それを形成するための原料モノマーを重合して得ることができる。重合手法としては、例えば、溶液重合、乳化重合、塊状重合、および懸濁重合が挙げられる。
上記アクリル系ポリマーは、例えばその凝集力や耐熱性の改質のために、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な一種類の又は二種類以上の他のモノマーを構成モノマーとして含んでもよい。そのようなモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物モノマー、ヒドロキシ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、およびアクリルアミドが挙げられる。カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、(メタ)アクリル酸カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸カルボキシペンチル、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、およびクロトン酸が挙げられる。酸無水物モノマーとしては、例えば、無水マレイン酸および無水イタコン酸が挙げられる。ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、および(メタ)アクリル酸(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルが挙げられる。エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルおよび(メタ)アクリル酸メチルグリシジルが挙げられる。スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、および(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸が挙げられる。リン酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートが挙げられる。
上記アクリル系ポリマーは、好ましくは、構成モノマーとしてアクリロニトリルを含む。この場合、アクリル系ポリマーの構成モノマーにおけるアクリロニトリルの割合は好ましくは10~40質量%である。これら構成は、当該アクリル系ポリマーと無機フィラーとの親和性を低めるうえで好適であり、従って、接着フィルム10から形成される接着層(硬化物)において、マトリクス相と無機フィラーとの親和性を低めて分散相組織による無機フィラー表面被覆率を高めるうえで好適である。
接着フィルム10において高い凝集力を実現するという観点からは、接着フィルム10に高分子バインダーとして含有されるアクリル系ポリマーは、例えば、アクリル酸ブチルとアクリル酸エチルとアクリロニトリルとの共重合体である。
ダイボンディングのために硬化される前の接着フィルム10について、ある程度の架橋度を実現するためには、例えば、接着フィルム10に含まれる上述の熱可塑性樹脂の分子鎖末端の官能基等と反応して結合を生じうる多官能性化合物を架橋剤として接着フィルム形成用樹脂組成物に配合しておくのが好ましい。このような構成は、接着フィルム10について、高温下での接着特性を向上させるうえで、また、耐熱性の改善を図るうえで、好適である。そのような架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物が挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、および、多価アルコールとジイソシアネートとの付加物が挙げられる。接着フィルム形成用樹脂組成物における架橋剤含有量は、当該架橋剤と反応して結合を生じうる上記官能基を有する樹脂100質量部に対し、形成される接着フィルム10の凝集力向上の観点からは好ましくは0.05質量部以上であり、形成される接着フィルム10の接着力向上の観点からは好ましくは7質量部以下である。また、接着フィルム10における架橋剤としては、エポキシ樹脂等の他の多官能性化合物をポリイソシアネート化合物と併用してもよい。
接着フィルム10に配合される上述のアクリル樹脂のガラス転移温度は、好ましくは0℃以上である。ポリマーのガラス転移温度については、下記のFoxの式に基づき求められるガラス転移温度(理論値)を用いることができる。Foxの式は、ポリマーのガラス転移温度Tgと、当該ポリマーにおける構成モノマーごとの単独重合体のガラス転移温度Tgiとの関係式である。下記のFoxの式において、Tgはポリマーのガラス転移温度(℃)を表し、Wiは当該ポリマーを構成するモノマーiの重量分率を表し、Tgiはモノマーiの単独重合体のガラス転移温度(℃)を示す。単独重合体のガラス転移温度については文献値を用いることができる。例えば「新高分子文庫7 塗料用合成樹脂入門」(北岡協三 著,高分子刊行会,1995年)や「アクリルエステルカタログ(1997年度版)」(三菱レイヨン株式会社)には、各種の単独重合体のガラス転移温度が挙げられている。また、モノマーの単独重合体のガラス転移温度については、特開2007-51271号公報に具体的に記載されている手法によって求めることも可能である。
Foxの式 1/(273+Tg)=Σ[Wi/(273+Tgi)]
接着フィルム10に含有されるアクリル樹脂など高分子バインダーの重量平均分子量は例えば1万以上であり、好ましくは10万以上、より好ましくは30万以上、より好ましくは50万以上である。同重量平均分子量は好ましくは88万以下である。
接着フィルム10は上述のようにエポキシ樹脂を含有する。エポキシ樹脂は、ダイボンディング対象である半導体チップの腐食原因となりうるイオン性不純物等の含有量が少ない傾向にあることから、接着フィルム10中の熱硬化性樹脂として好ましい。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオレン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型、ヒダントイン型、トリスグリシジルイソシアヌレート型、およびグリシジルアミン型の、エポキシ樹脂が挙げられる。フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、およびテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂は、硬化剤としてのフェノール樹脂との反応性に富み且つ耐熱性に優れることから、接着フィルム10中のエポキシ樹脂として好ましい。
接着フィルム10は、エポキシ樹脂以外の一種類または二種類以上の他の熱硬化性樹脂を含有してもよい。そのような熱硬化性樹脂としては、例えば、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、および熱硬化性ポリイミド樹脂が挙げられる。
接着フィルム10に含有されるエポキシ樹脂用の硬化剤としては、フェノール樹脂が好ましい。エポキシ樹脂の硬化剤として作用しうるフェノール樹脂としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、および、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレンが挙げられる。ノボラック型フェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert-ブチルフェノールノボラック樹脂、およびノニルフェノールノボラック樹脂が挙げられる。フェノールノボラック樹脂やフェノールアラルキル樹脂は、ダイボンディング用接着剤としてのエポキシ樹脂の硬化剤として用いられる場合に当該接着剤の接続信頼性を向上させる傾向にあるので、接着フィルム10中のエポキシ樹脂用硬化剤として好ましい。接着フィルム10は、一種類のエポキシ樹脂用硬化剤を含んでもよいし、二種類以上のエポキシ樹脂用硬化剤を含んでもよい。
接着フィルム10がエポキシ樹脂とその硬化剤としてのフェノール樹脂とを含有する場合、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対してフェノール樹脂中の水酸基が好ましくは0.5~2.0当量、より好ましくは0.8~1.2当量である割合で、両樹脂は配合される。このような構成は、接着フィルム10の硬化にあたって当該エポキシ樹脂およびフェノール樹脂の硬化反応を充分に進行させるうえで好ましい。
接着フィルム10における熱硬化性樹脂の含有割合は、接着フィルム10において熱硬化型接着剤としての機能を適切に発現させるという観点からは、好ましくは10~70質量%、より好ましくは20~60質量%である。
接着フィルム10に含有される無機フィラーは、例えば、接着フィルム10の熱膨張率や弾性率など物性を調整する機能を担う。無機フィラーは、球状、針状、フレーク状など各種形状を有していてもよい。また、接着フィルム10は、一種類の無機フィラーを含有してもよいし、二種類以上の無機フィラーを含有してもよい。
上記無機フィラーの構成材料としては、例えば、結晶質シリカ、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミニウムウィスカ、および窒化ホウ素が挙げられる。無機フィラーの構成材料としては、アルミニウム、金、銀、銅、ニッケル等の単体金属や、合金、アモルファスカーボン、グラファイトなども挙げられる。接着フィルム10に含有される無機フィラーは、好ましくはシリカ粒子である。シリカ粒子は、接着剤有機成分中で分散させやすいという観点や、シランカップリング剤など表面処理剤による処理を施しやすいという観点から、接着フィルム10中の無機フィラーとして好ましい。
接着フィルム10に含有される無機フィラーの平均粒径は、好ましくは0.005~10μm、より好ましくは0.05~1μmである。当該無機フィラーの平均粒径が0.005μm以上であるという構成は、接着フィルム10において、半導体ウエハ等の被着体に対する高い濡れ性や接着性を実現するうえで好適である。当該無機フィラーの平均粒径が10μm以下であるという構成は、接着フィルム10において充分なフィラー添加効果を得るとともに耐熱性を確保するうえで好適である。フィラーの平均粒径は、例えば、光度式の粒度分布計(商品名「LA-910」,株式会社堀場製作所製)を使用して求めることができる。
接着フィルム10におけるこのような無機フィラーの含有量は、好ましくは10~80質量%、より好ましくは20~60質量%である。
接着フィルム10は、上述のような無機フィラーに加えて有機フィラーを含有してもよい。有機フィラーの構成材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、およびポリエステルイミドが挙げられる。
接着フィルム10は、好ましくは熱硬化触媒を含有する。接着フィルム10への熱硬化触媒の配合は、接着フィルム10の硬化にあたって樹脂成分の硬化反応を充分に進行させたり、硬化反応速度を高めるうえで、好ましい。そのような熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール系化合物、トリフェニルフォスフィン系化合物、アミン系化合物、およびトリハロゲンボラン系化合物が挙げられる。イミダゾール系化合物としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2'-メチルイミダゾリル-(1')]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'-ウンデシルイミダゾリル-(1')]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'-エチル-4'-メチルイミダゾリル-(1')]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'-メチルイミダゾリル-(1')]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、および2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールが挙げられる。トリフェニルフォスフィン系化合物としては、例えば、トリフェニルフォスフィン、トリブチルフォスフィン、トリ(p-メチルフェニル)フォスフィン、トリ(ノニルフェニル)フォスフィン、ジフェニルトリルフォスフィン、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、メチルトリフェニルホスホニウム、メチルトリフェニルホスホニウムクロライド、メトキシメチルトリフェニルホスホニウム、およびベンジルトリフェニルホスホニウムクロライドが挙げられる。トリフェニルフォスフィン系化合物には、トリフェニルフォスフィン構造とトリフェニルボラン構造とを併有する化合物も含まれるものとする。そのような化合物としては、例えば、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリボレート、ベンジルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、およびトリフェニルホスフィントリフェニルボランが挙げられる。アミン系化合物としては、例えば、モノエタノールアミントリフルオロボレートおよびジシアンジアミドが挙げられる。トリハロゲンボラン系化合物としては、例えばトリクロロボランが挙げられる。接着フィルム10は、一種類の熱硬化触媒を含有してもよいし、二種類以上の熱硬化触媒を含有してもよい。
接着フィルム10は、好ましくは、接着フィルム10のエポキシ樹脂および/またはエポキシ樹脂用硬化剤と反応を生じて結合しうる官能基を有するシランカップリング剤を更に含有する。シランカップリング剤としては、例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、および3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
接着フィルム10は、必要に応じて、一種類の又は二種類以上の他の成分を含有してもよい。当該他の成分としては、例えば、難燃剤、およびイオントラップ剤が挙げられる。難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、および臭素化エポキシ樹脂が挙げられる。イオントラップ剤としては、例えば、ハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス、含水酸化アンチモン(例えば東亜合成株式会社製の「IXE-300」)、特定構造のリン酸ジルコニウム(例えば東亜合成株式会社製の「IXE-100」)、ケイ酸マグネシウム(例えば協和化学工業株式会社製の「キョーワード600」)、およびケイ酸アルミニウム(例えば協和化学工業株式会社製の「キョーワード700」)が挙げられる。金属イオンとの間で錯体を形成し得る化合物もイオントラップ剤として使用することができる。そのような化合物としては、例えば、トリアゾール系化合物、テトラゾール系化合物、およびビピリジル系化合物が挙げられる。これらのうち、金属イオンとの間で形成される錯体の安定性の観点からはトリアゾール系化合物が好ましい。そのようなトリアゾール系化合物としては、例えば、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-{N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル}ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、6-(2-ベンゾトリアゾリル)-4-t-オクチル-6'-t-ブチル-4'-メチル-2,2'-メチレンビスフェノール、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)ベンゾトリアゾール、1-(1,2-ジカルボキシジエチル)ベンゾトリアゾール、1-(2-エチルヘキシルアミノメチル)ベンゾトリアゾール、2,4-ジ-t-ペンチル-6-{(H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル}フェノール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、オクチル-3-[3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネート、2-エチルヘキシル-3-[3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネート、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-t-ブチルフェノール、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)-ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ジ(1,1-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、およびメチル-3-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネートが挙げられる。また、キノール化合物や、ヒドロキシアントラキノン化合物、ポリフェノール化合物など所定の水酸基含有化合物も、イオントラップ剤として使用することができる。そのような水酸基含有化合物としては、具体的には、1,2-ベンゼンジオール、アリザリン、アントラルフィン、タンニン、没食子酸、没食子酸メチル、およびピロガロールが挙げられる。
以上のような成分を含有する接着フィルム10において、上述の高分子バインダーとエポキシ樹脂とエポキシ樹脂用硬化剤の総含有量における高分子バインダーの含有量の割合は、好ましくは10~50質量%、より好ましくは15~40質量%である。
接着フィルム10において、その硬化物中の分散相の、ナノインデンテーション法により測定される25℃での弾性率は、好ましくは1GPa以上、より好ましくは1.5GPa以上、より好ましくは2GPa以上、より好ましくは2.3GPa以上である。ナノインデンテーション法による弾性率の測定は、例えば、ナノインデンター(商品名「Triboindenter」,Hysitron社製)を使用して行うことができる。本測定において、測定モードは単一押込み測定とし、測定温度は25℃とし、使用圧子はBerkovich(三角錐)型のダイヤモンド圧子とし、測定対象物に対する圧子の押込み深さは約60~70nmとし、その圧子の押込み速度は10nm/秒とし、測定対象物からの圧子の引抜き速度は10nm/秒とする。ナノインデンテーション法に基づく弾性率の導出は使用装置にて行われる。具体的な導出手法については、例えば、Handbook of Micro/nano Tribology (Second Edition) Edited by Bharat Bhushan, CRC Press (ISBN 0-8493-8402-8)に説明されているとおりである。
接着フィルム10の厚さは、好ましくは40μm以上、より好ましくは60μm以上、より好ましくは80μm以上である。また、接着フィルム10の厚さは、好ましくは150μm以下、より好ましくは140μm以下、より好ましくは130μm以下である。
接着フィルム10は、温度23℃、剥離角度180°および引張速度300mm/分の条件での剥離試験において、SUS平面に対し、例えば0.3~20N/10mmの180°剥離粘着力を示す。このような構成は、ダイシングテープ付き接着フィルムXないしその接着フィルム10によるワークの保持を確保するうえで好適である。
ダイシングテープ付き接着フィルムXにおけるダイシングテープ20の基材21は、ダイシングテープ20ないしダイシングテープ付き接着フィルムXにおいて支持体として機能する要素である。基材21は例えばプラスチック基材であり、当該プラスチック基材としてはプラスチックフィルムを好適に用いることができる。プラスチック基材の構成材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフェニルスルフィド、アラミド、フッ素樹脂、セルロース系樹脂、およびシリコーン樹脂が挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-ブテン共重合体、およびエチレン-ヘキセン共重合体が挙げられる。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、およびポリブチレンテレフタレートが挙げられる。基材21は、一種類の材料からなってもよし、二種類以上の材料からなってもよい。基材21は、単層構造を有してもよいし、多層構造を有してもよい。基材21上の粘着剤層22が紫外線硬化性を有する場合、基材21は紫外線透過性を有するのが好ましい。また、基材21は、プラスチックフィルムよりなる場合、無延伸フィルムであってもよいし、一軸延伸フィルムであってもよいし、二軸延伸フィルムであってもよい。
ダイシングテープ付き接着フィルムXの使用に際してダイシングテープ20ないし基材21を例えば部分的な加熱によって収縮させる場合には、基材21は熱収縮性を有するのが好ましい。また、基材21がプラスチックフィルムよりなる場合、ダイシングテープ20ないし基材21について等方的な熱収縮性を実現するうえでは、基材21は二軸延伸フィルムであるのが好ましい。ダイシングテープ20ないし基材21は、加熱温度100℃および加熱処理時間60秒の条件で行われる加熱処理試験による熱収縮率が好ましくは2~30%、より好ましくは2~25%、より好ましくは3~20%、より好ましくは5~20%である。当該熱収縮率は、いわゆるMD方向の熱収縮率およびいわゆるTD方向の熱収縮率の少なくとも一方の熱収縮率をいうものとする。
基材21における粘着剤層22側の表面は、粘着剤層22との密着性を高めるための物理的処理、化学的処理、または下塗り処理が施されていてもよい。物理的処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、サンドマット加工処理、オゾン暴露処理、火炎暴露処理、高圧電撃暴露処理、およびイオン化放射線処理が挙げられる。化学的処理としては例えばクロム酸処理が挙げられる。
基材21の厚さは、ダイシングテープ20ないしダイシングテープ付き接着フィルムXにおける支持体として基材21が機能するための強度を確保するという観点からは、好ましくは40μm以上、好ましくは50μm以上、より好ましくは55μm以上、より好ましくは60μm以上である。また、ダイシングテープ20ないしダイシングテープ付き接着フィルムXにおいて適度な可撓性を実現するという観点からは、基材21の厚さは、好ましくは200μm以下、より好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。
ダイシングテープ20の粘着剤層22は、粘着剤を含有する。この粘着剤は、ダイシングテープ付き接着フィルムXの使用過程において外部からの作用によって意図的に粘着力を低減させることが可能な粘着剤(粘着力低減型粘着剤)であってもよいし、ダイシングテープ付き接着フィルムXの使用過程において外部からの作用によっては粘着力がほとんど又は全く低減しない粘着剤(粘着力非低減型粘着剤)であってもよい。粘着剤層22中の粘着剤として粘着力低減型粘着剤を用いるか或いは粘着力非低減型粘着剤を用いるかについては、ダイシングテープ付き接着フィルムXを使用して個片化される半導体チップの個片化の手法や条件など、ダイシングテープ付き接着フィルムXの使用態様に応じて、適宜に選択することができる。
粘着剤層22中の粘着剤として粘着力低減型粘着剤を用いる場合、ダイシングテープ付き接着フィルムXの使用過程において、粘着剤層22が相対的に高い粘着力を示す状態と相対的に低い粘着力を示す状態とを、使い分けることが可能である。例えば、ダイシングテープ付き接着フィルムXが後記のエキスパンド工程に使用される時には、粘着剤層22からの接着フィルム10の浮きや剥離を抑制・防止するために粘着剤層22の高粘着力状態を利用する一方で、それより後、ダイシングテープ付き接着フィルムXのダイシングテープ20から接着フィルム付き半導体チップをピックアップするための後記のピックアップ工程では、粘着剤層22から接着フィルム付き半導体チップをピックアップしやすくするために粘着剤層22の低粘着力状態を利用することが可能である。
このような粘着力低減型粘着剤としては、例えば、ダイシングテープ付き接着フィルムXの使用過程において放射線照射によって硬化させることが可能な粘着剤(放射線硬化性粘着剤)や加熱発泡型粘着剤などが挙げられる。本実施形態の粘着剤層22では、一種類の粘着力低減型粘着剤が用いられてもよいし、二種類以上の粘着力低減型粘着剤が用いられてもよい。また、粘着剤層22の全体が粘着力低減型粘着剤から形成されてもよいし、粘着剤層22の一部が粘着力低減型粘着剤から形成されてもよい。例えば、粘着剤層22が単層構造を有する場合、粘着剤層22の全体が粘着力低減型粘着剤から形成されてもよいし、粘着剤層22における所定の部位が粘着力低減型粘着剤から形成され、他の部位(例えば、リングフレームの貼着対象領域であって、中央領域の外側にある領域)が粘着力非低減型粘着剤から形成されてもよい。また、粘着剤層22が多層構造を有する場合、多層構造をなす全ての層が粘着力低減型粘着剤から形成されてもよいし、多層構造中の一部の層が粘着力低減型粘着剤から形成されてもよい。
粘着剤層22のための放射線硬化性粘着剤としては、例えば、電子線、紫外線、α線、β線、γ線、またはX線の照射によって硬化するタイプの粘着剤が挙げられ、紫外線照射によって硬化するタイプの粘着剤(紫外線硬化性粘着剤)を特に好適に用いることができる。
粘着剤層22のための放射線硬化性粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤たるアクリル系ポリマーなどのベースポリマーと、放射線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基を有する放射線重合性のモノマー成分やオリゴマー成分とを含有する、添加型の放射線硬化性粘着剤が挙げられる。
放射線硬化性粘着剤のベースポリマーとしてのアクリル系ポリマーは、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマーユニットを質量割合で最も多く含む。アクリル系ポリマーのモノマーユニットをなすための(メタ)アクリル酸エステル、即ち、アクリル系ポリマーの構成モノマーである(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、および(メタ)アクリル酸アリールエステルが挙げられる。当該(メタ)アクリル酸エステルとしては、より具体的には、接着フィルム10用のアクリル樹脂をなすためのアクリル系ポリマーの構成モノマーとして上記した(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。アクリル系ポリマーの構成モノマーとして、一種類の(メタ)アクリル酸エステルが用いられてもよいし、二種類以上の(メタ)アクリル酸エステルが用いられてもよい。アクリル系ポリマーの構成モノマーとしては、好ましくは、アクリル酸2-エチルヘキシルおよびアクリル酸ラウリルが挙げられる。また、(メタ)アクリル酸エステルに依る粘着性等の基本特性を粘着剤層22にて適切に発現させるうえでは、アクリル系ポリマーの構成モノマー全体における(メタ)アクリル酸エステルの割合は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。
アクリル系ポリマーは、例えばその凝集力や耐熱性の改質のために、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な一種類の又は二種類以上の他のモノマーを構成モノマーに含んでもよい。そのような他のモノマーとしては、例えば、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物モノマー、ヒドロキシ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、アクリルアミド、およびアクリロニトリルが挙げられる。当該他のモノマーとしては、より具体的には、接着フィルム10用のアクリル樹脂をなすためのアクリル系ポリマーの構成モノマーとして上記した共重合性の他モノマーが挙げられる。
アクリル系ポリマーは、そのポリマー骨格中に架橋構造を形成するために、(メタ)アクリル酸エステルなどのモノマー成分と共重合可能な多官能性モノマーに由来するモノマーユニットを含んでいてもよい。そのような多官能性モノマーとして、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリグリシジル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、およびウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」および/または「メタクリレート」を意味するものとする。アクリル系ポリマーの構成モノマーとして、一種類の多官能性モノマーが用いられてもよいし、二種類以上の多官能性モノマーが用いられてもよい。(メタ)アクリル酸エステルに依る粘着性等の基本特性を粘着剤層22にて適切に発現させるうえでは、アクリル系ポリマーの構成モノマー全体における多官能性モノマーの割合は、好ましくは40質量%以下、好ましくは30質量%以下である。
アクリル系ポリマーは、それを形成するための原料モノマーを重合して得ることができる。重合手法としては、例えば、溶液重合、乳化重合、塊状重合、および懸濁重合が挙げられる。ダイシングテープ20ないしダイシングテープ付き接着フィルムXの使用される半導体装置製造方法における高度の清浄性の観点からは、ダイシングテープ20ないしダイシングテープ付き接着フィルムXにおける粘着剤層22中の低分子量成分は少ない方が好ましく、アクリル系ポリマーの数平均分子量は、好ましくは10万以上、より好ましくは20万~300万である。
粘着剤層22ないしそれをなすための粘着剤は、アクリル系ポリマーなどベースポリマーの数平均分子量を高めるために例えば、外部架橋剤を含有してもよい。アクリル系ポリマーなどベースポリマーと反応して架橋構造を形成するための外部架橋剤としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、ポリオール化合物、アジリジン化合物、およびメラミン系架橋剤が挙げられる。粘着剤層22ないしそれをなすための粘着剤における外部架橋剤の含有量は、ベースポリマー100質量部に対して、好ましくは5質量部以下、より好ましくは0.1~5質量部である。
放射線硬化性粘着剤をなすための上記の放射線重合性モノマー成分としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、および1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。放射線硬化性粘着剤をなすための上記の放射線重合性オリゴマー成分としては、例えば、ウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系など種々のオリゴマーが挙げられ、分子量100~30000程度のものが適当である。放射線硬化性粘着剤中の放射線重合性のモノマー成分やオリゴマー成分の総含有量は、形成される粘着剤層22の粘着力を適切に低下させ得る範囲で決定され、アクリル系ポリマーなどのベースポリマー100質量部に対して、好ましくは5~500質量部であり、より好ましくは40~150質量部である。また、添加型の放射線硬化性粘着剤としては、例えば特開昭60-196956号公報に開示のものを用いてもよい。
粘着剤層22のための放射線硬化性粘着剤としては、例えば、放射線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基をポリマー側鎖や、ポリマー主鎖中、ポリマー主鎖末端に有するベースポリマーを含有する内在型の放射線硬化性粘着剤も挙げられる。このような内在型の放射線硬化性粘着剤は、形成される粘着剤層22内での低分子量成分の移動に起因する粘着特性の意図しない経時的変化を抑制するうえで好適である。
内在型の放射線硬化性粘着剤に含有されるベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーを基本骨格とするものが好ましい。そのような基本骨格をなすアクリル系ポリマーとしては、添加型の放射線硬化性粘着剤に含有されるベースポリマーとして上述したアクリル系ポリマーを採用することができる。アクリル系ポリマーへの放射線重合性の炭素-炭素二重結合の導入手法としては、例えば、所定の官能基(第1の官能基)を有するモノマーを含む原料モノマーを共重合させてアクリル系ポリマーを得た後、第1の官能基との間で反応を生じて結合しうる所定の官能基(第2の官能基)と放射線重合性炭素-炭素二重結合とを有する化合物を、炭素-炭素二重結合の放射線重合性を維持したままアクリル系ポリマーに対して縮合反応または付加反応させる方法が、挙げられる。
第1の官能基と第2の官能基の組み合わせとしては、例えば、カルボキシ基とエポキシ基、エポキシ基とカルボキシ基、カルボキシ基とアジリジル基、アジリジル基とカルボキシ基、ヒドロキシ基とイソシアネート基、イソシアネート基とヒドロキシ基が挙げられる。これら組み合わせのうち、反応追跡の容易さの観点からは、ヒドロキシ基とイソシアネート基の組み合わせや、イソシアネート基とヒドロキシ基の組み合わせが、好ましい。また、反応性の高いイソシアネート基を有するポリマーを作製するのは技術的難易度が高いので、アクリル系ポリマーの作製または入手のしやすさの観点からは、アクリル系ポリマー側の上記第1の官能基がヒドロキシ基であり且つ上記第2の官能基がイソシアネート基である場合が、より好ましい。放射線重合性炭素-炭素二重結合と第2の官能基たるイソシアネート基とを併有するイソシアネート化合物、即ち、放射線重合性の不飽和官能基含有イソシアネート化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)、およびm-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネートが挙げられる。
粘着剤層22のための放射線硬化性粘着剤は、好ましくは光重合開始剤を含有する。光重合開始剤としては、例えば、α-ケトール系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ケタール系化合物、芳香族スルホニルクロリド系化合物、光活性オキシム系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、カンファーキノン、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、およびアシルホスフォナートが挙げられる。α-ケトール系化合物としては、例えば、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、α-ヒドロキシ-α,α'-ジメチルアセトフェノン、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、および1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが挙げられる。アセトフェノン系化合物としては、例えば、メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、および2-メチル-1-[4-(メチルチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-1が挙げられる。ベンゾインエーテル系化合物としては、例えば、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、およびアニソインメチルエーテルが挙げられる。ケタール系化合物としては、例えばベンジルジメチルケタールが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系化合物としては、例えば2-ナフタレンスルホニルクロリドが挙げられる。光活性オキシム系化合物としては、例えば、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシムが挙げられる。ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、および3,3'-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノンが挙げられる。チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、および2,4-ジイソプロピルチオキサントンが挙げられる。粘着剤層22における放射線硬化性粘着剤中の光重合開始剤の含有量は、アクリル系ポリマーなどのベースポリマー100質量部に対して例えば0.05~20質量部である。
粘着剤層22における上記の加熱発泡型粘着剤は、加熱によって発泡や膨張をする成分を含有する粘着剤である。加熱によって発泡や膨張をする成分としては、例えば、発泡剤および熱膨張性微小球が挙げられる。
加熱発泡型粘着剤用の発泡剤としては、種々の無機系発泡剤および有機系発泡剤が挙げられる。無機系発泡剤としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、およびアジド類が挙げられる。有機系発泡剤としては、例えば、トリクロロモノフルオロメタンやジクロロモノフルオロメタンなどの塩フッ化アルカン、アゾビスイソブチロニトリルやアゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレートなどのアゾ系化合物、パラトルエンスルホニルヒドラジドやジフェニルスルホン-3,3'-ジスルホニルヒドラジド、4,4'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アリルビス(スルホニルヒドラジド)などのヒドラジン系化合物、ρ-トルイレンスルホニルセミカルバジドや4,4'-オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)などのセミカルバジド系化合物、5-モルホリル-1,2,3,4-チアトリアゾールなどのトリアゾール系化合物、並びに、N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミンやN,N'-ジメチル-N,N'-ジニトロソテレフタルアミドなどのN-ニトロソ系化合物が、挙げられる。
加熱発泡型粘着剤用の熱膨張性微小球としては、例えば、加熱によって容易にガス化して膨張する物質が殻内に封入された構成の微小球が挙げられる。加熱によって容易にガス化して膨張する物質としては、例えば、イソブタン、プロパン、およびペンタンが挙げられる。加熱によって容易にガス化して膨張する物質をコアセルベーション法や界面重合法などによって殻形成物質内に封入することによって、熱膨張性微小球を作製することができる。殻形成物質としては、熱溶融性を示す物質や、封入物質の熱膨張の作用によって破裂し得る物質を用いることができる。そのような物質としては、例えば、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、およびポリスルホンが挙げられる。
粘着剤層22における上記の粘着力非低減型粘着剤としては、例えば感圧性粘着剤が挙げられる。この感圧性粘着剤としては、例えば、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤やゴム系粘着剤を用いることができる。粘着剤層22が感圧性粘着剤としてアクリル系粘着剤を含有する場合、当該アクリル系粘着剤のベースポリマーたるアクリル系ポリマーは、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマーユニットを質量割合で最も多いモノマーユニットとして含む。そのようなアクリル系ポリマーとしては、例えば、放射線硬化性粘着剤に関して上述したアクリル系ポリマーが挙げられる。
粘着剤層22における感圧性粘着剤として、粘着力低減型粘着剤に関して上述した放射線硬化性粘着剤を放射線照射によって硬化させた形態の粘着剤を利用してもよい。そのような硬化済の放射線硬化タイプの粘着剤は、放射線照射によって粘着力が低減されているとしても、ポリマー成分の含有量によっては当該ポリマー成分に起因する粘着性を示し得て、所定の使用態様において被着体を粘着保持するのに利用可能な粘着力を発揮することが可能である。
本実施形態の粘着剤層22においては、一種類の粘着力非低減型粘着剤が用いられてもよいし、二種類以上の粘着力非低減型粘着剤が用いられてもよい。また、粘着剤層22の全体が粘着力非低減型粘着剤から形成されてもよいし、粘着剤層22の一部が粘着力非低減型粘着剤から形成されてもよい。例えば、粘着剤層22が単層構造を有する場合、粘着剤層22の全体が粘着力非低減型粘着剤から形成されてもよいし、粘着剤層22における所定の部位が粘着力非低減型粘着剤から形成され、他の部位が粘着力低減型粘着剤から形成されてもよい。また、粘着剤層22が積層構造を有する場合、積層構造をなす全ての層が粘着力非低減型粘着剤から形成されてもよいし、積層構造中の一部の層が粘着力非低減型粘着剤から形成されてもよい。
粘着剤層22ないしそれをなすための粘着剤には、上述の各成分に加えて、架橋促進剤や、粘着付与剤、老化防止剤、着色剤などを含有してもよい。着色剤としては、顔料および染料が挙げられる。また、着色剤は、放射線照射を受けて着色する化合物であってもよい。そのような化合物としては、例えばロイコ染料が挙げられる。
粘着剤層22の厚さは、好ましくは1~50μm、より好ましくは2~30μm、より好ましくは5~25μmである。このような構成は、例えば、粘着剤層22が放射線硬化性粘着剤を含む場合に当該粘着剤層22の放射線硬化の前後における接着フィルム10に対する接着力のバランスをとるうえで、好適である。
以上のような構成を有するダイシングテープ付き接着フィルムXは、例えば以下のようにして製造することができる。
ダイシングテープ付き接着フィルムXの接着フィルム10の作製においては、まず、接着フィルム10形成用の接着剤組成物を調製した後、所定のセパレータ上に当該組成物を塗布して接着剤組成物層を形成する。セパレータとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、並びに、フッ素系剥離剤や長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルムや紙類などが、挙げられる。接着剤組成物の塗布手法としては、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、およびグラビア塗工が挙げられる。次に、この接着剤組成物層において、加熱により、必要に応じて乾燥させ、また、必要に応じて架橋反応を生じさせる。加熱温度は例えば70~160℃であり、加熱時間は例えば1~5分間である。以上のようにして、セパレータを伴う形態で上述の接着フィルム10を作製することができる。
ダイシングテープ付き接着フィルムXのダイシングテープ20については、用意した基材21上に粘着剤層22を設けることによって作製することができる。例えば樹脂製の基材21は、カレンダー製膜法や、有機溶媒中でのキャスティング法、密閉系でのインフレーション押出法、Tダイ押出法、共押出法、ドライラミネート法などの製膜手法によって、作製することができる。製膜後のフィルムないし基材21には、必要に応じて所定の表面処理が施される。粘着剤層22の形成においては、例えば、粘着剤層形成用の粘着剤組成物を調製した後、まず、当該組成物を基材21上または所定のセパレータ上に塗布して粘着剤組成物層を形成する。粘着剤組成物の塗布手法としては、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、およびグラビア塗工が挙げられる。次に、この粘着剤組成物層において、加熱により、必要に応じて乾燥させ、また、必要に応じて架橋反応を生じさせる。加熱温度は例えば80~150℃であり、加熱時間は例えば0.5~5分間である。粘着剤層22がセパレータ上に形成される場合には、当該セパレータを伴う粘着剤層22を基材21に貼り合わせ、その後、粘着剤層22からセパレータが剥離される。これにより、基材21と粘着剤層22との積層構造を有する上述のダイシングテープ20が作製される。
ダイシングテープ付き接着フィルムXの作製においては、次に、ダイシングテープ20の粘着剤層22側に接着フィルム10を例えば圧着して貼り合わせる。貼合わせ温度は、例えば30~50℃であり、好ましくは35~45℃である。貼合わせ圧力(線圧)は、例えば0.1~20kgf/cmであり、好ましくは1~10kgf/cmである。粘着剤層22が上述のような放射線硬化性粘着剤を含む場合、当該貼り合わせの前に粘着剤層22に対して紫外線等の放射線を照射してもよいし、当該貼り合わせの後に基材21の側から粘着剤層22に対して紫外線等の放射線を照射してもよい。或いは、ダイシングテープ付き接着フィルムXの製造過程では、そのような放射線照射を行わなくてもよい(この場合、ダイシングテープ付き接着フィルムXの使用過程で粘着剤層22を放射線硬化させることが可能である)。粘着剤層22が紫外線硬化性を有する場合、粘着剤層22を硬化させるための紫外線照射量は、例えば50~500mJ/cm2であり、好ましくは100~300mJ/cm2である。ダイシングテープ付き接着フィルムXにおいて粘着剤層22の粘着力低減措置としての照射が行われる領域(照射領域R)は、例えば図1に示すように、粘着剤層22における接着フィルム貼合せ領域内のその周縁部を除く領域である。
以上のようにして、ダイシングテープ付き接着フィルムXを作製することができる。ダイシングテープ付き接着フィルムXには、接着フィルム10側に、少なくとも接着フィルム10を被覆する形態でセパレータ(図示略)が設けられていてもよい。ダイシングテープ20の粘着剤層22よりも接着フィルム10が小サイズで粘着剤層22において接着フィルム10の貼り合わされていない領域がある場合には例えば、セパレータは、接着フィルム10および粘着剤層22を少なくとも被覆する形態で設けられていてもよい。セパレータは、接着フィルム10や粘着剤層22が露出しないように保護するための要素であり、ダイシングテープ付き接着フィルムXの使用にあたり当該フィルムから剥がされる。
図2から図4は、ダイシングテープ付き接着フィルムXが使用されて行われる一の半導体装置製造方法を表す。
本方法においては、まず、図2(a)に示すように、ダイシングテープ付き接着フィルムXの接着フィルム10上に半導体ウエハ30が貼り合わせられる。半導体ウエハ30の片面側には各種の半導体素子(図示略)が既に作り込まれ、且つ、当該半導体素子に必要な配線構造等(図示略)が当該片面上に既に形成されている。本工程では、半導体ウエハ30がダイシングテープ付き接着フィルムXに圧着ロール等によって押圧されて、半導体ウエハ30の例えば裏面側がダイシングテープ付き接着フィルムXの接着フィルム10に対して貼り付けられる。
次に、図2(b)に示すように、半導体ウエハ30に対してダイシングを行う(ブレードダイシング工程)。具体的には、ダイシングテープ付き接着フィルムXに半導体ウエハ30が保持された状態で、ダイシング装置等の回転ブレードを使用して半導体ウエハ30および接着フィルム10が切削されて半導体チップ単位に個片化される(図中では切断箇所を模式的に太線で表す)。これにより、チップサイズの接着フィルム11を伴う半導体チップ31が形成されることとなる。
ダイシングテープ付き接着フィルムXにおける粘着剤層22が放射線硬化型粘着剤層である場合、ダイシングテープ付き接着フィルムXの製造過程での上述の放射線照射に代えて、ブレードダイシング工程の前に又は後に、基材21の側から粘着剤層22に対して粘着力低減措置としての紫外線照射など放射線照射を行ってもよい。放射線照射が紫外線照射である場合、その照射量は、例えば50~500mJ/cm2であり、好ましくは100~300mJ/cm2である。ダイシングテープ付き接着フィルムXにおいて粘着剤層22の粘着力低減措置としての放射線照射が行われる領域(図1では照射領域Rとして示す)は、例えば、粘着剤層22における接着フィルム貼り合わせ領域内のその周縁部を除く領域である。
そして、接着フィルム付き半導体チップ31を伴うダイシングテープ20を水などの洗浄液を使用して洗浄するクリーニング工程を必要に応じて経た後、接着フィルム付き半導体チップ31をダイシングテープ20からピックアップする(ピックアップ工程)。例えば、ピックアップ対象の接着フィルム付き半導体チップ31について、ダイシングテープ20の図中下側においてピックアップ機構のピン部材(図示略)を上昇させてダイシングテープ20を介して突き上げた後、吸着治具(図示略)によって吸着保持する。
次に、図3(a)および図3(b)に示すように、接着フィルム付き半導体チップ31の実装基板51上への仮固着が行われる(仮固着工程)。この仮固着は、実装基板51上の半導体チップC等が、半導体チップ31に伴う接着フィルム11に埋め込まれるように、行われる。実装基板51としては、例えば、リードフレーム、TAB(Tape Automated Bonding)フィルム、および配線基板が挙げられる。半導体チップCは、接着層52を介して実装基板51に固定されている例えばコントローラチップであり、半導体チップC上に配される半導体チップ31は例えば各種メモリチップである。半導体チップCの電極パッド(図示略)と実装基板51の有する端子部(図示略)とが、ボンディングワイヤー53を介して電気的に接続されている。ボンディングワイヤー53としては、例えば金線、アルミニウム線、または銅線を用いることができる。本工程では、このようにワイヤーボンディング実装された半導体チップCと、それに接続されたボンディングワイヤー53の全体とが、半導体チップ31に伴う接着フィルム11内に埋め込まれる。また、本工程では、半導体チップCおよびボンディングワイヤー53が接着フィルム11内に押し入りやすい状態とするために、接着フィルム11を加熱して軟化させてもよい。加熱温度は、接着フィルム11が完全な熱硬化状態に至らない温度であって、例えば80~140℃である。
次に、図3(c)に示すように、加熱によって接着フィルム11が硬化される(熱硬化工程)。本工程において、加熱温度は例えば100~200℃であり、加熱時間は例えば0.5~10時間である。本工程を経ることにより、接着フィルム11が熱硬化してなる接着層が形成される。この接着層は、実装基板51にワイヤーボンディング実装された半導体チップC(第1半導体チップ)を、それに接続されたボンディングワイヤー53の全体とともに包埋しつつ、実装基板51に半導体チップ31(第2半導体チップ)を接合するものである。
次に、図4(a)に示すように、半導体チップ31の電極パッド(図示略)と、実装基板51の有する端子部(図示略)とが、ボンディングワイヤー53を介して電気的に接続される(ワイヤーボンディング工程)。半導体チップ31の電極パッドとボンディングワイヤー53との結線、および、実装基板51の端子部とボンディングワイヤー53との結線は、加熱を伴う超音波溶接によって実現される。ワイヤーボンディングにおけるワイヤー加熱温度は例えば80~250℃であり、その加熱時間は例えば数秒~数分間である。このようなワイヤーボンディング工程は、上述の熱硬化工程よりも前に行ってもよい。
次に、図4(b)に示すように、実装基板51上の半導体チップ31等を封止するための封止樹脂54が形成される(封止工程)。本工程では、例えば、金型を使用して行うトランスファーモールド技術によって封止樹脂54が形成される。封止樹脂54の構成材料としては、例えばエポキシ系樹脂が挙げられる。本工程において、封止樹脂54を形成するための加熱温度は例えば165~185℃であり、加熱時間は例えば60秒~数分間である。本工程で封止樹脂54の硬化が充分には進行しない場合には、本工程の後に封止樹脂54を更なる加熱処理によって完全に硬化させるための後硬化工程が行われる。後硬化工程において、加熱温度は例えば165~185℃であり、加熱時間は例えば0.5~8時間である。図3(c)を参照して上述した工程において接着フィルム11が完全には熱硬化しない場合であっても、封止工程や後硬化工程では、封止樹脂54とともに接着フィルム11について完全な熱硬化を実現することが可能である。
以上のようにして、複数の半導体チップが多段実装された半導体装置を製造することができる。
ダイシングテープ付き接着フィルムXを使用して接着フィルム付き半導体チップを得るうえで、図5から図9に示す工程を含む過程を経てもよい。具体的には以下のとおりである。
まず、図5(a)および図5(b)に示すように、半導体ウエハWに分割溝30aが形成される(分割溝形成工程)。半導体ウエハWは、第1面Waおよび第2面Wbを有する。半導体ウエハWにおける第1面Waの側には各種の半導体素子(図示略)が既に作り込まれ、且つ、当該半導体素子に必要な配線構造等(図示略)が第1面Wa上に既に形成されている。本工程では、粘着面T1aを有するウエハ加工用テープT1が半導体ウエハWの第2面Wb側に貼り合わされた後、ウエハ加工用テープT1に半導体ウエハWが保持された状態で、半導体ウエハWの第1面Wa側に所定深さの分割溝30aがダイシング装置等の回転ブレードを使用して形成される。分割溝30aは、半導体ウエハWを半導体チップ単位に分離させるための空隙である(図5から図7では、分割溝30aを模式的に太線で表す)。
次に、図5(c)に示すように、粘着面T2aを有するウエハ加工用テープT2の、半導体ウエハWの第1面Wa側への貼り合わせと、半導体ウエハWからのウエハ加工用テープT1の剥離とが、行われる。
次に、図5(d)に示すように、ウエハ加工用テープT2に半導体ウエハWが保持された状態で、半導体ウエハWが所定の厚さに至るまで第2面Wbからの研削加工によって薄化される(ウエハ薄化工程)。研削加工は、研削砥石を備える研削加工装置を使用して行うことができる。このウエハ薄化工程によって、本実施形態では、複数の半導体チップ31に個片化可能な半導体ウエハ30Aが形成される。半導体ウエハ30Aは、具体的には、当該ウエハにおいて複数の半導体チップ31へと個片化されることとなる部位を第2面Wb側にて連結する部位(連結部)を有する。半導体ウエハ30Aにおける連結部の厚さ、即ち、半導体ウエハ30Aの第2面Wbと分割溝30aの第2面Wb側先端との間の距離は、例えば1~30μmであり、好ましくは3~20μmである。
次に、図6(a)に示すように、ウエハ加工用テープT2に保持された半導体ウエハ30Aが、ダイシングテープ付き接着フィルムXの接着フィルム10に対して貼り合わせられる。この後、図6(b)に示すように、半導体ウエハ30Aからウエハ加工用テープT2が剥がされる。ダイシングテープ付き接着フィルムXにおける粘着剤層22が放射線硬化性粘着剤層である場合には、ダイシングテープ付き接着フィルムXの製造過程での上述の放射線照射に代えて、半導体ウエハ30Aの接着フィルム10への貼り合わせの後に、基材21の側から粘着剤層22に対して粘着力低減措置としての紫外線照射など放射線照射を行ってもよい。放射線照射が紫外線照射である場合、その照射量は、例えば50~500mJ/cm2であり、好ましくは100~300mJ/cm2である。ダイシングテープ付き接着フィルムXにおいて粘着剤層22の粘着力低減措置としての照射が行われる領域(図1に示す照射領域R)は、例えば、粘着剤層22における接着フィルム10貼合わせ領域内のその周縁部を除く領域である。
次に、ダイシングテープ付き接着フィルムXにおける接着フィルム10上にリングフレーム41が貼り付けられた後、図7(a)に示すように、半導体ウエハ30Aを伴う当該ダイシングテープ付き接着フィルムXがエキスパンド装置の保持具42に固定される。
次に、相対的に低温の条件下での第1エキスパンド工程(クールエキスパンド工程)が、図7(b)に示すように行われ、半導体ウエハ30Aが複数の半導体チップ31へと個片化されるとともに、ダイシングテープ付き接着フィルムXの接着フィルム10が小片の接着フィルム11に割断されて、接着フィルム付き半導体チップ31が得られる。本工程では、エキスパンド装置の備える中空円柱形状の突き上げ部材43が、ダイシングテープ付き接着フィルムXの図中下側においてダイシングテープ20に当接して上昇され、半導体ウエハ30Aの貼り合わされたダイシングテープ付き接着フィルムXのダイシングテープ20が、半導体ウエハ30Aの径方向および周方向を含む二次元方向に引き伸ばされるようにエキスパンドされる。このエキスパンドは、ダイシングテープ20において例えば15~32MPaの引張応力が生ずる条件で行われる。クールエキスパンド工程における温度条件は、例えば0℃以下であり、好ましくは-20~-5℃、より好ましくは-15~-5℃、より好ましくは-15℃である。クールエキスパンド工程におけるエキスパンド速度(突き上げ部材43が上昇する速度)は、例えば0.1~100mm/秒である。また、クールエキスパンド工程におけるエキスパンド量は、例えば3~16mmである。
本工程では、半導体ウエハ30Aにおいて薄肉で割れやすい部位に割断が生じて半導体チップ31への個片化が生じる。これとともに、本工程では、エキスパンドされるダイシングテープ20の粘着剤層22に密着している接着フィルム10において各半導体チップ31が密着している各領域では変形が抑制される一方で、半導体チップ31間の分割溝に対向する箇所には、そのような変形抑制作用の生じない状態で、ダイシングテープ20に生ずる引張応力が作用する。その結果、接着フィルム10において半導体チップ31間の分割溝に対向する箇所が割断されることとなる。本工程の後、図7(c)に示すように、突き上げ部材43が下降されて、ダイシングテープ20におけるエキスパンド状態が解除される。
次に、相対的に高温の条件下での第2エキスパンド工程が、図8(a)に示すように行われ、接着フィルム付き半導体チップ31間の距離(離間距離)が広げられる。本工程では、エキスパンド装置の備える中空円柱形状の突き上げ部材43が再び上昇され、ダイシングテープ付き接着フィルムXのダイシングテープ20がエキスパンドされる。第2エキスパンド工程における温度条件は、例えば10℃以上であり、好ましくは15~30℃である。第2エキスパンド工程におけるエキスパンド速度(突き上げ部材43が上昇する速度)は、例えば0.1~10mm/秒である。また、第2エキスパンド工程におけるエキスパンド量は例えば3~16mmである。後記のピックアップ工程にてダイシングテープ20から接着フィルム付き半導体チップ31を適切にピックアップ可能な程度に、本工程では接着フィルム付き半導体チップ31の離間距離が広げられる。本工程の後、図8(b)に示すように、突き上げ部材43が下降されて、ダイシングテープ20におけるエキスパンド状態が解除される。エキスパンド状態解除後にダイシングテープ20上の接着フィルム付き半導体チップ31の離間距離が狭まることを抑制するうえでは、エキスパンド状態を解除するより前に、ダイシングテープ20における半導体チップ31保持領域より外側の部分を加熱して収縮させるのが好ましい。
次に、接着フィルム付き半導体チップ31を伴うダイシングテープ20を水などの洗浄液を使用して洗浄するクリーニング工程を必要に応じて経た後、図9に示すように、接着フィルム付き半導体チップ31をダイシングテープ20からピックアップする(ピックアップ工程)。例えば、ピックアップ対象の接着フィルム付き半導体チップ31について、ダイシングテープ20の図中下側においてピックアップ機構のピン部材44を上昇させてダイシングテープ20を介して突き上げた後、吸着治具45によって吸着保持する。ピックアップ工程において、ピン部材44の突き上げ速度は例えば1~100mm/秒であり、ピン部材44の突き上げ量は例えば50~3000μmである。こうしてピックアップされる接着フィルム付き半導体チップ31は、半導体装置製造過程における実装工程に供されることとなる。
ダイシングテープ付き接着フィルムXが使用されて行われる半導体装置製造方法においては、図5(d)を参照して上述したウエハ薄化工程に代えて、図10に示すウエハ薄化工程を行ってもよい。図5(c)を参照して上述した過程を経た後、図10に示すウエハ薄化工程では、ウエハ加工用テープT2に半導体ウエハWが保持された状態で、当該ウエハが所定の厚さに至るまで第2面Wbからの研削加工によって薄化されて、複数の半導体チップ31を含んでウエハ加工用テープT2に保持された半導体ウエハ分割体30Bが形成される。本工程では、分割溝30aそれ自体が第2面Wb側に露出するまでウエハを研削する手法(第1の手法)を採用してもよいし、第2面Wb側から分割溝30aに至るより前までウエハを研削し、その後、回転砥石からウエハへの押圧力の作用により分割溝30aと第2面Wbとの間にクラックを生じさせて半導体ウエハ分割体30Bを形成する手法(第2の手法)を採用してもよい。採用される手法に応じて、図5(a)および図5(b)を参照して上述したように形成される分割溝30aの、第1面Waからの深さは、適宜に決定される。図10では、第1の手法を経た分割溝30a、または、第2の手法を経た分割溝30aおよびこれに連なるクラックについて、模式的に太線で表す。接着フィルム付き半導体チップ31を得るうえでは、このようにして作製される半導体ウエハ分割体30Bが半導体ウエハ30Aの代わりにダイシングテープ付き接着フィルムXに貼り合わされたうえで、図7から図9を参照して上述した各工程が行われてもよい。
図11(a)および図11(b)は、半導体ウエハ分割体30Bがダイシングテープ付き接着フィルムXに貼り合わされた後に行われる第1エキスパンド工程(クールエキスパンド工程)を具体的に表す。本工程では、エキスパンド装置の備える中空円柱形状の突き上げ部材43が、ダイシングテープ付き接着フィルムXの図中下側においてダイシングテープ20に当接して上昇され、半導体ウエハ分割体30Bの貼り合わされたダイシングテープ付き接着フィルムXのダイシングテープ20が、半導体ウエハ分割体30Bの径方向および周方向を含む二次元方向に引き伸ばされるようにエキスパンドされる。このエキスパンドは、ダイシングテープ20において、例えば1~100MPaの引張応力が生ずる条件で行われる。本工程における温度条件は、例えば0℃以下であり、好ましくは-20~-5℃、より好ましくは-15~-5℃、より好ましくは-15℃である。本工程におけるエキスパンド速度(突き上げ部材43が上昇する速度)は、例えば1~500mm/秒である。また、本工程におけるエキスパンド量は、例えば50~200mmである。このようなクールエキスパンド工程により、ダイシングテープ付き接着フィルムXの接着フィルム10が小片の接着フィルム11に割断されて接着フィルム付き半導体チップ31が得られる。具体的に、本工程では、エキスパンドされるダイシングテープ20の粘着剤層22に密着している接着フィルム10において、半導体ウエハ分割体30Bの各半導体チップ31が密着している各領域では変形が抑制される一方で、半導体チップ31間の分割溝30aに対向する箇所には、そのような変形抑制作用の生じない状態で、ダイシングテープ20に生ずる引張応力が作用する。その結果、接着フィルム10において半導体チップ31間の分割溝30aに対向する箇所が割断されることとなる。こうして得られる接着フィルム付き半導体チップ31は、図9を参照して上述したピックアップ工程を経た後、半導体装置製造過程における実装工程に供されることとなる。
ダイシングテープ付き接着フィルムXが使用されて行われる半導体装置製造方法おいては、半導体ウエハ30、半導体ウエハ30A、または半導体ウエハ分割体30Bに代えて、次のようにして作製される半導体ウエハ30Cがダイシングテープ付き接着フィルムXに貼り合わされてもよい。
半導体ウエハ30Cの作製においては、まず、図12(a)および図12(b)に示すように、半導体ウエハWに改質領域30bが形成される。半導体ウエハWは、第1面Waおよび第2面Wbを有する。半導体ウエハWにおける第1面Waの側には各種の半導体素子(図示略)が既に作り込まれ、且つ、当該半導体素子に必要な配線構造等(図示略)が第1面Wa上に既に形成されている。本工程では、粘着面T3aを有するウエハ加工用テープT3が半導体ウエハWの第1面Wa側に貼り合わされた後、ウエハ加工用テープT3に半導体ウエハWが保持された状態で、ウエハ内部に集光点の合わせられたレーザー光がウエハ加工用テープT3とは反対の側から半導体ウエハWに対してその分割予定ラインに沿って照射され、多光子吸収によるアブレーションに因って半導体ウエハW内に改質領域30bが形成される。改質領域30bは、半導体ウエハWを半導体チップ単位に分離させるための脆弱化領域である。半導体ウエハにおいてレーザー光照射によって分割予定ライン上に改質領域30bを形成する方法については、例えば特開2002-192370号公報に詳述されている。当該方法において、本実施形態におけるレーザー光照射条件は、例えば以下の条件の範囲内で適宜に調整される。
レーザー光照射条件
(A)レーザー光
レーザー光源 半導体レーザー励起Nd:YAGレーザー
波長 1064nm
レーザー光スポット断面積 3.14×10-8cm2
発振形態 Qスイッチパルス
繰り返し周波数 100kHz以下
パルス幅 1μs以下
出力 1mJ以下
レーザー光品質 TEM00
偏光特性 直線偏光
(B)集光用レンズ
倍率 100倍以下
NA 0.55
レーザー光波長に対する透過率 100%以下
(C)半導体基板が載置される載置台の移動速度 280mm/秒以下
次に、ウエハ加工用テープT3に半導体ウエハWが保持された状態で、半導体ウエハWが所定の厚さに至るまで第2面Wbからの研削加工によって薄化されて、図12(c)に示すように、複数の半導体チップ31に個片化可能な半導体ウエハ30Cが形成される(ウエハ薄化工程)。接着フィルム付き半導体チップ31を得るうえでは、以上のようにして作製される半導体ウエハ30Cが半導体ウエハ30Aの代わりにダイシングテープ付き接着フィルムXに貼り合わされたうえで、図7から図9を参照して上述した各工程が行われてもよい。
図13(a)および図13(b)は、半導体ウエハ30Cがダイシングテープ付き接着フィルムXに貼り合わされた後に行われる第1エキスパンド工程(クールエキスパンド工程)を具体的に表す。本工程では、エキスパンド装置の備える中空円柱形状の突き上げ部材43が、ダイシングテープ付き接着フィルムXの図中下側においてダイシングテープ20に当接して上昇され、半導体ウエハ30Cの貼り合わされたダイシングテープ付き接着フィルムXのダイシングテープ20が、半導体ウエハ30Cの径方向および周方向を含む二次元方向に引き伸ばされるようにエキスパンドされる。このエキスパンドは、ダイシングテープ20において、例えば1~100MPaの引張応力が生ずる条件で行われる。本工程における温度条件は、例えば0℃以下であり、好ましくは-20~-5℃、より好ましくは-15~-5℃、より好ましくは-15℃である。本工程におけるエキスパンド速度(突き上げ部材43が上昇する速度)は、例えば1~500mm/秒である。また、本工程におけるエキスパンド量は、例えば50~200mmである。このようなクールエキスパンド工程により、ダイシングテープ付き接着フィルムXの接着フィルム10が小片の接着フィルム11に割断されて接着フィルム付き半導体チップ31が得られる。具体的に、本工程では、半導体ウエハ30Cにおいて脆弱な改質領域30bにクラックが形成されて半導体チップ31への個片化が生じる。これとともに、本工程では、エキスパンドされるダイシングテープ20の粘着剤層22に密着している接着フィルム10において、半導体ウエハ30Cの各半導体チップ31が密着している各領域では変形が抑制される一方で、ウエハのクラック形成箇所に対向する箇所には、そのような変形抑制作用の生じない状態で、ダイシングテープ20に生ずる引張応力が作用する。その結果、接着フィルム10において半導体チップ31間のクラック形成箇所に対向する箇所が割断されることとなる。こうして得られる接着フィルム付き半導体チップ31は、図9を参照して上述したピックアップ工程を経た後、半導体装置製造過程における実装工程に供されることとなる。
図4(b)に示す上述の半導体装置では、半導体チップCと、それに接続されたボンディングワイヤー53の全体とが、接着フィルム11が硬化してなる接着層内に埋め込まれている。これに対し、半導体チップCと、それに接続されたボンディングワイヤー53における半導体チップC側の一部とが、接着フィルム11が硬化してなる接着層内に埋め込まれてもよい。このような構成の半導体装置を製造するうえでも、ダイシングテープ付き接着フィルムXを使用することができる。
製造目的の半導体装置においては、ワイヤーボンディング実装された半導体チップCに代えて、例えば図14に示すように、フリップチップ実装された半導体チップCを採用してもよい。図14に示す半導体チップCは、実装基板51に対してバンプ55を介して電気的に接続されており、当該半導体チップCと実装基板51との間には、アンダーフィル剤56が充填されて熱硬化されている。図14に示す半導体装置においては、接着フィルム11が熱硬化してなる接着層は、実装基板51にフリップチップ実装された半導体チップC(第1半導体チップ)を包埋しつつ実装基板51に半導体チップ31(第2半導体チップ)を接合するものである。このような構成の半導体装置を製造するうえでも、ダイシングテープ付き接着フィルムXを使用することができる。
上述の半導体装置製造方法においては、図3(a)および図3(b)を参照して上述した仮固着工程または図3(c)を参照して上述した熱硬化工程の後、所定の数の接着層付き半導体チップを半導体チップ31上に順次にダイボンディングして積層し、半導体チップ31を含む各半導体チップの電極パッドと実装基板51の有する端子部との間をワイヤーボンディングし、その後、実装基板51上の全半導体チップ等を樹脂封止するための封止工程を行ってもよい。このような過程を経て製造される半導体装置の一例を図15に示す。
図15に示す半導体装置においては、実装基板51と半導体チップ31との間に介在する、接着フィルム11が硬化してなる接着層内に、半導体チップCが包埋される一方、半導体チップ31上に複数の半導体チップ31'が多段積層されている。半導体チップ31,31'の電極パッド(図示略)と実装基板51の有する端子部(図示略)とはボンディングワイヤー53を介して電気的に接続されている。封止樹脂54は、実装基板51上の半導体チップ31,31'等を封止している。このような構成の半導体装置を製造するうえでも、ダイシングテープ付き接着フィルムXを使用することができる。
図15に示す半導体装置においては、ワイヤーボンディング実装された半導体チップCに代えて、例えば図16に示すように、フリップチップ実装された半導体チップCが採用されてもよい。このような構成の半導体装置を製造するうえでも、ダイシングテープ付き接着フィルムXを使用することができる。
上述のように、接着剤の硬化物が接着剤有機成分に加えて無機フィラーを含有する場合、そのような接着剤硬化物における熱ストレスに起因するクラック形成の基となるミクロボイドは、従来、無機フィラーと接着剤有機成分との界面に生じる場合が多い。無機フィラー含有の接着フィルム10において、その硬化物中に分散する硬化ドメインたる分散相によって粒子表面の全体または一部が被覆されることとなる無機フィラーが含まれるという上述の構成は、接着フィルム10から形成される接着層(硬化物)において、無機フィラーと接着剤有機成分との界面でのミクロボイドの発生を抑制するのに適し、従って、熱ストレス起因のクラックの発生を抑制するのに適する。例えば、後記の実施例および比較例をもって示すとおりである。硬質な分散相組織による無機フィラー表面被覆率が高いほど、ミクロボイドひいてはクラックの発生は抑制される傾向にある。
接着フィルム10において、高分子バインダー、エポキシ樹脂、および硬化剤の総含有量における高分子バインダーの含有量の割合は、上述のように、好ましくは10~50質量%、より好ましくは15~40質量%である。このような構成は、接着フィルム10の用途に応じてその硬化前に要求される軟質性と、接着フィルム10の硬化後における上述のクラック抑制効果との、バランスを図るうえで好ましい。
接着フィルム10において、その硬化物中の分散相の、ナノインデンテーション法により測定される25℃での弾性率は、上述のように、好ましくは1GPa以上、より好ましくは1.5GPa以上、より好ましくは2GPa以上、より好ましくは2.3GPa以上である。このような硬さを伴う分散相は、上述のクラック抑制効果を得るうえで好ましい。
接着フィルム10に含有される無機フィラーは、上述のように、好ましくはシリカ粒子である。シリカ粒子は、接着剤有機成分中で分散させやすいという観点や、シランカップリング剤など表面処理剤による処理を施しやすいという観点から、接着フィルム10中の無機フィラーとして好ましい。
接着フィルム10は、上述のように、エポキシ樹脂および/または硬化剤と反応を生じて結合しうる官能基を有するシランカップリング剤を更に含有するのが好ましい。このような構成は、無機フィラーと分散相との間の結合性を高めるうえで好ましく、従って、接着フィルム10から形成される接着層において、熱ストレス起因のクラックの発生を抑制するのに適する。
接着フィルム10の含有する高分子バインダーは、上述のように、好ましくはアクリル樹脂である。アクリル樹脂は、エポキシ樹脂やエポキシ樹脂用硬化剤との相溶性が比較的高い傾向にあるので、接着フィルム10中の高分子バインダーとして好ましい。
接着フィルム10の含有する高分子バインダーのガラス転移温度は、上述のように、好ましくは0℃以上である。このような構成は、接着フィルム10中の高分子バインダーが、アクリロニトリルを構成モノマーとして含むアクリル系ポリマーよりなる場合に例えば、当該高分子バインダーと無機フィラーとの親和性を低めるうえで好適であり、従って、接着フィルム10から形成される接着層(硬化物)において、マトリクス相と無機フィラーとの親和性を低めて分散相組織による無機フィラー表面被覆率を高めるうえで好適である。
接着フィルム10の厚さは、上述のように、好ましくは40μm以上、より好ましくは60μm以上、より好ましくは80μm以上である。このような構成は、半導体チップ包埋用の接着フィルムとして接着フィルム10を使用するうえで好適である。
接着フィルム10の厚さは、上述のように、好ましくは150μm以下、より好ましくは140μm以下、より好ましくは130μm以下である。このような構成は、接着フィルム10がダイシングテープ20の粘着剤層22側に密着された形態で上述のような割断用のエキスパンド工程に付される場合に当該接着フィルム10の良好な割断を実現するうえで好適である。
〔実施例1〕
〈接着フィルムの作製〉
アクリル樹脂A1(商品名「テイサンレジン SG-708-6」,重量平均分子量は70万,ガラス転移温度Tgは4℃,ナガセケムテックス株式会社製)100質量部と、エポキシ樹脂E1(商品名「EPPN 501HY」,日本化薬株式会社製)144質量部と、フェノール樹脂F1(商品名「LVR8210-DL」,群栄化学工業株式会社製)89質量部と、無機フィラー(商品名「SE-2050MCV」,シリカ粒子,平均粒径は0.5μm,株式会社アドマテックス製)222質量部と、シランカップリング剤(商品名「KBM-303」,信越化学株式会社製)1.4質量部と、硬化触媒(商品名「TPP-K」,北興化学株式会社製)0.25質量部とを、メチルエチルケトンに加えて混合し、接着剤組成物を得た。次に、シリコーン離型処理の施された面を有するPETセパレータ(厚さ38μm)のシリコーン離型処理面上にアプリケーターを使用して接着剤組成物を塗布して接着剤組成物層を形成した。次に、この組成物層について130℃で2分間の加熱乾燥を行い、PETセパレータ上に厚さ40μmの接着フィルムを作製した。そして、このようにして作製される3枚の接着フィルムを、ロールラミネーターを使用して貼り合わせ、実施例1の接着フィルム(厚さ120μm)を作製した。この貼り合わせでは、貼合わせ速度を10mm/秒とし、温度条件を60℃とし、圧力条件を0.15MPaとした。実施例1ならびに後記の実施例2および比較例1における接着フィルムの組成を表1に掲げる(表1において、接着フィルムの組成を表す各数値の単位は、当該組成内での相対的な“質量部”である)。
〈ダイシングテープの作製〉
冷却管と、窒素導入管と、温度計と、撹拌装置とを備える反応容器内で、アクリル酸2-エチルヘキシル86.4質量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル13.6質量部と、重合開始剤たる過酸化ベンゾイル0.2質量部と、重合溶媒たるトルエン65質量部とを含む混合物を、61℃で6時間、窒素雰囲気下で撹拌した(重合反応)。これにより、アクリル系ポリマーP1を含有するポリマー溶液を得た。次に、このアクリル系ポリマーP1を含有するポリマー溶液と、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)と、付加反応触媒としてのジブチル錫ジラウリレートとを含む混合物を、50℃で48時間、空気雰囲気下で撹拌した(付加反応)。当該反応溶液において、MOIの配合量は、上記アクリル系ポリマーP1100質量部に対して14.6質量部であり、ジブチル錫ジラウリレートの配合量は、アクリル系ポリマーP1100質量部に対して0.5質量部である。この付加反応により、側鎖にメタクリレート基を有するアクリル系ポリマーP2を含有するポリマー溶液を得た。次に、当該ポリマー溶液に、アクリル系ポリマーP2100質量部に対して2質量部のポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」,東ソー株式会社製)と、5質量部の光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」,BASF社製)とを加えて混合し、粘着剤組成物を得た。次に、シリコーン離型処理の施された面を有するPETセパレータ(厚さ38μm)のシリコーン離型処理面上にアプリケーターを使用して粘着剤組成物を塗布して粘着剤組成物層を形成した。次に、この組成物層について120℃で2分間の加熱乾燥を行い、PETセパレータ上に厚さ10μmの粘着剤層を形成した。次に、ラミネーターを使用して、この粘着剤層の露出面にエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)製の基材(商品名「ファンクレア NRB#115」,厚さ115μm,グンゼ株式会社製)を室温で貼り合わせた。以上のようにしてダイシングテープを作製した。
〈ダイシングテープ付き接着フィルムの作製〉
PETセパレータを伴う実施例1の上述の接着フィルムを直径330mmの円盤形状に打ち抜き加工した。次に、当該接着フィルムからPETセパレータを剥離し且つ上述のダイシングテープからPETセパレータを剥離した後、当該ダイシングテープにおいて露出した粘着剤層と、接着フィルムにおいてPETセパレータの剥離によって露出した面とを、ロールラミネーターを使用して貼り合わせた。この貼り合わせにおいて、貼合わせ速度を10mm/秒とし、温度条件を40℃とし、圧力条件を0.15MPaとした。次に、このようにして接着フィルムと貼り合わせられたダイシングテープを、ダイシングテープの中心と接着フィルムの中心とが一致するように、直径390mmの円盤形状に打ち抜き加工した。次に、ダイシングテープにおける粘着剤層に対し、EVA基材の側から紫外線を照射した。紫外線照射においては、高圧水銀ランプを使用し、照射積算光量を400mJ/cm2とした。以上のようにして、ダイシングテープと接着フィルムとを含む積層構造を有する実施例1のダイシングテープ付き接着フィルムを作製した。
〔実施例2〕
アクリル樹脂A1100質量部に代えてアクリル樹脂A2(商品名「テイサンレジン SG-P3」,重量平均分子量は85万,ガラス転移温度Tgは12℃,ナガセケムテックス株式会社製)100質量部を用いたこと以外は実施例1の接着フィルムと同様にして、実施例2の接着フィルム(厚さ120μm)を作製した。また、この実施例2の接着フィルムを実施例1の上述の接着フィルムの代わりに用いたこと以外は実施例1のダイシングテープ付き接着フィルムと同様にして、実施例2のダイシングテープ付き接着フィルムを作製した。
〔比較例1〕
アクリル樹脂A3(商品名「テイサンレジン SG-70L」,重量平均分子量は90万,ガラス転移温度Tgは-13℃,ナガセケムテックス株式会社製)100質量部と、エポキシ樹脂E2(商品名「KI-3000-4」,新日鉄住金化学株式会社製)102質量部と、エポキシ樹脂E3(商品名「YL-980」,三菱ケミカル株式会社製)13質量部と、フェノール樹脂F2(商品名「MEH-7851SS」,明和化成株式会社製)119質量部と、無機フィラー(商品名「SE-2050MCV」,株式会社アドマテックス製)222質量部と、シランカップリング剤(商品名「KBM-303」,信越化学株式会社製)1.4質量部と、硬化触媒(商品名「TPP-K」,北興化学株式会社製)0.67質量部とを、メチルエチルケトンに加えて混合し、接着剤組成物を得た。次に、シリコーン離型処理の施された面を有するPETセパレータ(厚さ38μm)のシリコーン離型処理面上にアプリケーターを使用して接着剤組成物を塗布して接着剤組成物層を形成した。次に、この組成物層について130℃で2分間の加熱乾燥を行い、PETセパレータ上に厚さ40μmの接着フィルムを作製した。そして、このようにして作製される3枚の接着フィルムを、ロールラミネーターを使用して貼り合わせ、比較例1の接着フィルム(厚さ120μm)を作製した。この貼り合わせでは、貼合わせ速度を10mm/秒とし、温度条件を60℃とし、圧力条件を0.15MPaとした。また、この比較例1の接着フィルムを実施例1の上述の接着フィルムの代わりに用いたこと以外は実施例1のダイシングテープ付き接着フィルムと同様にして、比較例1のダイシングテープ付き接着フィルムを作製した。
〈断面のSEM観察〉
実施例1,2および比較例1の各接着フィルムについて、150℃での1時間の加熱とその後の175℃での1時間の加熱によって硬化させた。次に、硬化後の接着フィルムを研磨作業用包埋樹脂で包埋した後、研磨作業によって当該接着フィルム硬化物の露出断面を形成した。この研磨作業では、粒度P280の研磨紙による研磨、粒度P2500の研磨紙による研磨、および研磨装置(商品名「EcoMet 250」,BUEHLER社製)による機械研磨を、順次に行った。機械研磨では、研磨剤として、平均粒径0.05μmのシリカ粒子を含有するスラリーを用いた。次に、接着フィルム硬化物の露出断面に対し、イオンミリング装置(商品名「E-3100」,株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を使用して平坦化処理を施した。次に、接着フィルム硬化物の露出断面について、白金蒸着処理を行った後、走査型電子顕微鏡(商品名「S-4700」,株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を使用して観察および撮像した。このSEM観察では、二次電子像を画像データとして取得した。撮像条件は、加速電圧を3kVとし、倍率を10000倍とした。
以上のようにして、実施例1,2および比較例1に係る各接着フィルム硬化物の断面のSEM画像を得た。実施例1,2および比較例1の各硬化物のSEM画像において、マトリクス相(アクリル樹脂に由来)内に分散相(エポキシ樹脂とその硬化剤に由来)が分散している海島構造が形成されていることを確認することができた。このうち、実施例1の硬化物のSEM画像では、分散相による無機フィラー被覆率(無機フィラー粒子総表面積に対する、分散相が無機フィラーを被覆する総面積の割合)は90%程度であった。実施例2の硬化物のSEM画像では、分散相による無機フィラー被覆率は60%程度であった。実施例1,2の接着フィルム硬化物内には、分散相が無機フィラーを充分に被覆する構造が形成されていることを、確認することができた。一方、比較例1の硬化物のSEM画像では、無機フィラーはマトリクス相により被覆され(マトリクス相による無機フィラー被覆率は90%を超えていた)、分散相が無機フィラーを被覆する構造は実質的には形成されていないことが、確認された。これら評価結果を表1に掲げる。
〈分散相の弾性率〉
実施例1,2および比較例1の各接着フィルムについて、150℃での1時間の加熱とその後の175℃での1時間の加熱によって硬化させた。次に、硬化後の接着フィルムを研磨作業用包埋樹脂で包埋した後、研磨作業によって当該接着フィルム硬化物の露出断面を形成した。この研磨作業は、SEM観察用硬化物に対する上述の研磨作業と同様である。次に、接着フィルム硬化物の露出断面に対し、イオンミリング装置(商品名「E-3100」,株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を使用して平坦化処理を施した。次に、当該露出断面の合計3点において、ナノインデンター(商品名「Triboindenter」,Hysitron社製)を使用してナノインデンテーション試験を行い、弾性率を測定した。測定点は、サンプル露出断面において20μm間隔で離れる3点であり、その真ん中の測定点は硬化物の中央に位置する。本測定において、測定モードは単一押込み測定とし、測定温度は25℃とし、使用圧子はBerkovich(三角錐)型のダイヤモンド圧子とし、測定対象物に対する圧子の押込み深さは約60~70nmμmとし、その圧子の押込み速度は200nm/秒とし、測定対象物からの圧子の引抜き速度は200nm/秒とした。このようなナノインデンテーション試験後に使用装置にて導出された各測定点での弾性率(GPa)の平均値を表1に掲げる。
〔温度サイクル試験〕
実施例1,2および比較例1の各ダイシングテープ付き接着フィルムを使用して接着フィルム付き半導体チップを得たうえで、当該半導体チップを基板にダイボンディングして得られる接合体サンプルについて温度サイクル試験を行った。
温度サイクル試験に付される各サンプルは、次のようにして作製した。まず、ダイシングテープ付き接着フィルムの接着フィルム(厚さ120μm)側にシリコンウエハ(直径12インチ,厚さ60μm)を貼り合わせた。次に、ダイシング装置(商品名「DFD6260」,株式会社ディスコ製)を使用して行うブレードダイシングにより、ダイシングテープ付き接着フィルム上のシリコンウエハを接着フィルムとともに切削し、接着フィルム付きチップ(10mm角)に個片化した。次に、この接着フィルム付き半導体チップを有機基板に対してダイボンディングした。具体的には、接着フィルム付きチップをその接着フィルム側にて有機基板に仮固着した後、有機基板とチップの間に介在する接着フィルムを硬化させて接着層を形成した。仮固着において、加熱温度は120℃とし、圧着荷重は1kgとし、圧着時間は1秒間とした。接着フィルムを硬化させるにあたり、加圧力は7kg/cm2とし、加熱温度は150℃とし、加熱時間は1時間とした。次に、有機基板上において半導体チップを封止樹脂によって封止した。具体的には、有機基板上において半導体チップを包埋するように封止樹脂(商品名「GE-100」,日立化成株式会社製)を供給した後、当該封止樹脂について、175℃で90秒間加熱し、続いて175℃で5時間加熱した。以上のようにして、各ダイシングテープ付き接着フィルムを使用して温度サイクル試験用の接合体サンプルを作製した。
温度サイクル試験は、温度サイクル試験機(商品名「TSA-103ES」,エスペック株式会社製)を使用して行い、各サンプルに対し、-55℃~125℃の範囲での温度変化を700サイクル与えた。1サイクルの温度プロファイルには、-55℃での5分の保持期間および125℃での5分の保持期間が含まれる。
温度サイクル試験の後、機械研磨により、接合体サンプルに対して基板側から水平研磨を行い、接合体サンプルにおける接着層の基板側表面を露出させた。そして、露出した接着層表面を観察した。この観察において、接着層にクラックが全く発生していない場合を優と評価し、接着層にクラックが発生していた場合を不可と評価した。その評価結果を表1に掲げる。
実施例1,2のダイシングテープ付き接着フィルムを使用して作製された接合体サンプルは、上述の温度サイクル試験を経た後にその接着層にクラックを生じなかった。一方、比較例1のダイシングテープ付き接着フィルムを使用して作製された接合体サンプルは、上述の温度サイクル試験を経た後にその接着層にクラックを生じていた。