態様の説明
本明細書に記載または引用される手法および手順は、概して充分に理解されており、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual 3d edition (2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.;Current Protocols in Molecular Biology (F.M. Ausubel, et al. eds., (2003));the series Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.): PCR 2: A Practical Approach (M.J. MacPherson, B.D. Hames and G.R. Taylor eds. (1995)), Harlow and Lane, eds. (1988) Antibodies, A Laboratory Manual, and Animal Cell Culture (R.I. Freshney, ed. (1987));Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait, ed., 1984);Methods in Molecular Biology, Humana Press; Cell Biology: A Laboratory Notebook (J.E. Cellis, ed., 1998) Academic Press; Animal Cell Culture (R.I. Freshney), ed., 1987);Introduction to Cell and Tissue Culture (J. P. Mather and P.E. Roberts, 1998) Plenum Press; Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures (A. Doyle, J.B. Griffiths, and D.G. Newell, eds., 1993-8) J. Wiley and Sons; Handbook of Experimental Immunology (D.M. Weir and C.C. Blackwell, eds.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J.M. Miller and M.P. Calos, eds., 1987);PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullis et al., eds., 1994);Current Protocols in Immunology (J.E. Coligan et al., eds., 1991);Short Protocols in Molecular Biology (Wiley and Sons, 1999);Immunobiology (C.A. Janeway and P. Travers, 1997);Antibodies (P. Finch, 1997);Antibodies: A Practical Approach (D. Catty., ed., IRL Press, 1988-1989);Monoclonal Antibodies: A Practical Approach (P. Shepherd and C. Dean, eds., Oxford University Press, 2000);Using Antibodies: A Laboratory Manual (E. Harlow and D. Lane (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999);The Antibodies (M. Zanetti and J. D. Capra, eds., Harwood Academic Publishers, 1995);およびCancer: Principles and Practice of Oncology (V.T. DeVita et al., eds., J.B. Lippincott Company, 1993)に記載された広範に利用されている技法などの従来の技法を用いて、当業者により一般的に使用される。
I.定義
別途定義しない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed., J. Wiley & Sons (New York, N.Y. 1994)、およびMarch, Advanced Organic Chemistry Reactions, Mechanisms and Structure 4th ed., John Wiley & Sons (New York, N.Y. 1992)は、本出願において使用される用語の多くに対する一般的指針を当業者に提供する。特許出願および刊行物を含む、本明細書に引用される全ての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
本明細書を解釈する目的のために、以下の定義が適用され、該当する場合はいつでも、単数形で使用された用語は複数形をも含み、その逆もまた同様である。本明細書で使用される用語は、特定の態様を説明することのみを目的としており、限定を意図したものではないことが、理解されるべきである。下記の定義のいずれかが、参照により本明細書に組み入れられた任意の文書と矛盾する場合には、下記の定義が優先するものとする。
本明細書の趣旨での「アクセプターヒトフレームワーク」は、下で定義するヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来する、軽鎖可変ドメイン (VL) フレームワークまたは重鎖可変ドメイン (VH) フレームワークのアミノ酸配列を含む、フレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに「由来する」アクセプターヒトフレームワークは、それらの同じアミノ酸配列を含んでもよいし、またはアミノ酸配列の変更を含んでいてもよい。いくつかの態様において、アミノ酸の変更の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、または2以下である。いくつかの態様において、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と、配列が同一である。
「アフィニティ」は、分子(例えば、抗体)の結合部位1個と、分子の結合パートナー(例えば、抗原)との間の、非共有結合的な相互作用の合計の強度のことをいう。別段示さない限り、本明細書で用いられる「結合アフィニティ」は、ある結合対のメンバー(例えば、抗体と抗原)の間の1:1相互作用を反映する、固有の結合アフィニティのことをいう。分子XのそのパートナーYに対するアフィニティは、一般的に、解離定数 (Kd) により表すことができる。アフィニティは、本明細書に記載のものを含む、当該技術分野において知られた通常の方法によって測定され得る。結合アフィニティを測定するための具体的な実例となるおよび例示的な態様については、下で述べる。
「アフィニティ成熟」抗体は、改変を備えていない親抗体と比較して、1つまたは複数の超可変領域 (hypervariable region: HVR) 中に抗体の抗原に対するアフィニティの改善をもたらす1つまたは複数の改変を伴う、抗体のことをいう。
用語「抗ミオスタチン抗体」または「ミオスタチンに結合する抗体」は、充分なアフィニティでミオスタチンと結合することのできる抗体であって、その結果その抗体がミオスタチンを標的化したときに診断剤および/または治療剤として有用であるような、抗体のことをいう。一態様において、無関係な非ミオスタチンタンパク質への抗ミオスタチン抗体の結合の程度は、(例えば、放射免疫測定法 (radioimmunoassay: RIA) により)測定したとき、抗体のミオスタチンへの結合の約10%未満である。特定の態様において、ミオスタチンに結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数 (Kd) を有する。特定の態様において、抗ミオスタチン抗体は、異なる種からのミオスタチン間で保存されているミオスタチンのエピトープに結合する。
本明細書で用語「抗体」は、最も広い意味で使用され、所望の抗原結合活性を示す限りは、これらに限定されるものではないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)および抗体断片を含む、種々の抗体構造を包含する。
「抗体断片」は、完全抗体が結合する抗原に結合する当該完全抗体の一部分を含む、当該完全抗体以外の分子のことをいう。抗体断片の例は、これらに限定されるものではないが、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2;ダイアボディ;線状抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv);および、抗体断片から形成された多重特異性抗体を含む。
参照抗体と「同じエピトープに結合する抗体」は、競合アッセイにおいてその参照抗体が自身の抗原へする結合を阻止する抗体のことをいい、および/または逆にいえば、参照抗体は、競合アッセイにおいて前述の抗体が自身の抗原へする結合を阻止する。例示的な競合アッセイが、本明細書で提供される。
用語「キメラ」抗体は、重鎖および/または軽鎖の一部分が特定の供給源または種に由来する一方で、重鎖および/または軽鎖の残りの部分が異なった供給源または種に由来する抗体のことをいう。
抗体の「クラス」は、抗体の重鎖に備わる定常ドメインまたは定常領域のタイプのことをいう。抗体には5つの主要なクラスがある:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMである。そして、このうちいくつかはさらにサブクラス(アイソタイプ)に分けられてもよい。例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2である。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインを、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ぶ。
本明細書でいう用語「細胞傷害剤」は、細胞の機能を阻害するまたは妨げる、および/または細胞の死または破壊の原因となる物質のことをいう。細胞傷害剤は、これらに限定されるものではないが、放射性同位体(例えば、At 211、I 131、I 125、Y 90、Re 186、Re 188、Sm 153、Bi 212、P 32 Pb212、およびLuの放射性同位体);化学療法剤または化学療法薬(例えば、メトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド類(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン、または他のインターカレート剤);増殖阻害剤;核酸分解酵素などの酵素およびその断片;抗生物質;例えば、低分子毒素または細菌、真菌、植物、または動物起源の酵素的に活性な毒素(その断片および/または変異体を含む)などの、毒素;および、以下に開示される、種々の抗腫瘍剤または抗がん剤を含む。
「エフェクター機能」は、抗体のFc領域に起因する、抗体のアイソタイプによって異なる生物学的活性のことをいう。抗体のエフェクター機能の例には次のものが含まれる:C1q結合および補体依存性細胞傷害(complement dependent cytotoxicity:CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞介在性細胞傷害(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity: ADCC);貪食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御;および、B細胞活性化。
ある剤(例えば、薬学的製剤)の「有効量」は、所望の治療的または予防的結果を達成するために有効である、必要な用量におけるおよび必要な期間にわたっての、量のことをいう。
用語「エピトープ」は、抗体によって結合され得る任意の決定基を含む。エピトープは、抗原を標的とする抗体によって結合される該抗原の領域であり、抗体に直接接触する特定のアミノ酸を含む。エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基またはスルホニル基などの化学的に活性な表面分子群を含むことができ、かつ特異的な三次元構造特性および/または特定の電荷特性を備えることができる。一般的に、特定の標的抗原に特異的な抗体は、タンパク質および/または巨大分子の複雑な混合物中でその標的抗原上のエピトープを優先的に認識する。
「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体のことをいう。いくつかの態様において、FcRは、天然型ヒトFcRである。いくつかの態様において、FcRは、IgG抗体に結合するもの(ガンマ受容体)であり、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIサブクラスの受容体を、これらの受容体の対立遺伝子変異体および選択的スプライシングによる形態を含めて、含む。FcγRII受容体は、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「阻害受容体」)を含み、これらは主としてその細胞質ドメインにおいて相違する類似のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシン活性化モチーフ (immunoreceptor tyrosine-based activation motif: ITAM) を含む。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシン阻害モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based inhibition motif: ITIM)を含む。(例えば、Daeron, Annu. Rev. Immunol. 15:203-234 (1997) を参照のこと。)FcRは、例えば、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991);Capel et al., Immunomethods 4:25-34 (1994);およびde Haas et al., J. Lab. Clin. Med 126:330-41 (1995)において総説されている。将来同定されるものを含む他のFcRも、本明細書の用語「FcR」に包含される。
用語「Fc受容体」または「FcR」はまた、母体のIgGの胎児への移動(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976)およびKim et al., J. Immunol. 24:249 (1994))ならびに免疫グロブリンのホメオスタシスの調節を担う、新生児型受容体FcRnを含む。FcRnへの結合を測定する方法は公知である(例えば、Ghetie and Ward., Immunol. Today 18(12):592-598 (1997); Ghetie et al., Nature Biotechnology, 15(7):637-640 (1997); Hinton et al., J. Biol. Chem. 279(8):6213-6216 (2004); WO2004/92219 (Hinton et al.)を参照のこと)。インビボでのヒトFcRnへの結合およびヒトFcRn高アフィニティ結合ポリペプチドの血清半減期は、例えばヒトFcRnを発現するトランスジェニックマウスもしくはトランスフェクトされたヒト細胞株においてまたは変異Fc領域を伴うポリペプチドが投与される霊長類において測定され得る。WO2000/42072 (Presta) は、FcRに対する結合が改善されたまたは減少した抗体変異体を記載している。例えば、Shields et al. J. Biol. Chem. 9(2):6591-6604 (2001) も参照のこと。
本明細書で用語「Fc領域」は、少なくとも定常領域の一部分を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために用いられる。この用語は、天然型配列のFc領域および変異体Fc領域を含む。一態様において、ヒトIgG重鎖Fc領域はCys226から、またはPro230から、重鎖のカルボキシル末端まで延びる。ただし、Fc領域のC末端のリジン (Lys447) またはグリシン‐リジン(Gly446-Lys447)は、存在していてもしていなくてもよい。本明細書では別段特定しない限り、Fc領域または定常領域中のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD 1991 に記載の、EUナンバリングシステム(EUインデックスとも呼ばれる)にしたがう。
用語「Fc領域含有抗体」は、Fc領域を含む抗体のことをいう。Fc領域のC末端リジン(EUナンバリングシステムにしたがえば残基447)またはFc領域のC末端グリシン-リジン(残基446-447)は、例えば抗体の精製の間にまたは抗体をコードする核酸の組み換え操作によって除去され得る。したがって、本発明によるFc領域を有する抗体を含む組成物は、G446-K447を伴う抗体、G446を伴いK447を伴わない抗体、G446-K447が完全に除去された抗体、または上記3つのタイプの抗体の混合物を含み得る。
「フレームワーク」または「FR」は、超可変領域 (HVR) 残基以外の、可変ドメイン残基のことをいう。可変ドメインのFRは、通常4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3、およびFR4からなる。それに応じて、HVRおよびFRの配列は、通常次の順序でVH(またはVL)に現れる:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
用語「全長抗体」、「完全抗体」、および「全部抗体」は、本明細書では相互に交換可能に用いられ、天然型抗体構造に実質的に類似した構造を有する、または本明細書で定義するFc領域を含む重鎖を有する抗体のことをいう。
「機能性Fc領域」は、天然型配列Fc領域の「エフェクター機能」を備える。例示的な「エフェクター機能」は、C1q結合;CDC;Fc受容体結合;ADCC;貪食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;B cell receptor: BCR)の下方制御等を含む。そのようなエフェクター機能は一般に、Fc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と組み合わされることを必要とし、そして、例えば本明細書の定義の中で開示される様々な測定法を用いて評価され得る。
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」、および「宿主細胞培養物」は、相互に交換可能に用いられ、外来核酸を導入された細胞(そのような細胞の子孫を含む)のことをいう。宿主細胞は「形質転換体」および「形質転換細胞」を含み、これには初代の形質転換細胞および継代数によらずその細胞に由来する子孫を含む。子孫は、親細胞と核酸の内容において完全に同一でなくてもよく、変異を含んでいてもよい。オリジナルの形質転換細胞がスクリーニングされたまたは選択された際に用いられたものと同じ機能または生物学的活性を有する変異体子孫も、本明細書では含まれる。
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞によって産生された抗体またはヒト抗体レパートリーもしくは他のヒト抗体コード配列を用いる非ヒト供給源に由来する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を備える抗体である。このヒト抗体の定義は、非ヒトの抗原結合残基を含むヒト化抗体を、明確に除外するものである。
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択群において最も共通して生じるアミノ酸残基を示すフレームワークである。通常、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからである。通常、配列のサブグループは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, NIH Publication 91-3242, Bethesda MD (1991), vols. 1-3におけるサブグループである。一態様において、VLについて、サブグループは上記のKabatらによるサブグループκIである。一態様において、VHについて、サブグループは上記のKabatらによるサブグループIIIである。
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVRからのアミノ酸残基およびヒトFRからのアミノ酸残基を含む、キメラ抗体のことをいう。ある態様では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、当該可変領域においては、すべてのもしくは実質的にすべてのHVR(例えばCDR)は非ヒト抗体のものに対応し、かつ、すべてのもしくは実質的にすべてのFRはヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は、任意で、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部分を含んでもよい。抗体(例えば、非ヒト抗体)の「ヒト化された形態」は、ヒト化を経た抗体のことをいう。
本明細書で用いられる用語「超可変領域」または「HVR」は、配列において超可変であり(「相補性決定領域」または「CDR」(complementarity determining region))、および/または構造的に定まったループ(「超可変ループ」)を形成し、および/または抗原接触残基(「抗原接触」)を含む、抗体の可変ドメインの各領域のことをいう。通常、抗体は6つのHVRを含む:VHに3つ(H1、H2、H3)、およびVLに3つ(L1、L2、L3)である。本明細書での例示的なHVRは、以下のものを含む:
(a) アミノ酸残基26-32 (L1)、50-52 (L2)、91-96 (L3)、26-32 (H1)、53-55 (H2)、および96-101 (H3)のところで生じる超可変ループ (Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987));
(b) アミノ酸残基24-34 (L1)、50-56 (L2)、89-97 (L3)、31-35b (H1)、50-65 (H2)、 および95-102 (H3)のところで生じるCDR (Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991));
(c) アミノ酸残基27c-36 (L1)、46-55 (L2)、89-96 (L3)、30-35b (H1)、47-58 (H2)、および93-101 (H3) のところで生じる抗原接触 (MacCallum et al. J. Mol. Biol. 262: 732-745 (1996));ならびに、
(d) HVRアミノ酸残基46-56 (L2)、47-56 (L2)、48-56 (L2)、49-56 (L2)、26-35 (H1)、26-35b (H1)、49-65 (H2)、93-102 (H3)、および94-102 (H3)を含む、(a)、(b)、および/または(c)の組合せ。
別段示さない限り、HVR残基および可変ドメイン中の他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書では上記のKabatらにしたがって番号付けされる。
「イムノコンジュゲート」は、1つまたは複数の異種の分子にコンジュゲートされた抗体である(異種の分子は、これに限定されるものではないが、細胞傷害剤を含む)。
「個体」または「被験体」は哺乳動物である。哺乳動物は、これらに限定されるものではないが、飼育動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウマ)、霊長類(例えば、ヒト、およびサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、ならびに、げっ歯類(例えば、マウスおよびラット)を含む。特定の態様では、個体または被験体は、ヒトである。
「単離された」抗体は、そのもともとの環境の成分から分離されたものである。いくつかの態様において、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点分離法 (isoelectric focusing: IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフ(例えば、イオン交換または逆相HPLC)で測定して、95%または99%を超える純度まで精製される。抗体の純度の評価のための方法の総説として、例えば、Flatman et al., J. Chromatogr. B 848:79-87 (2007) を参照のこと。
「単離された」核酸は、そのもともとの環境の成分から分離された核酸分子のことをいう。単離された核酸は、その核酸分子を通常含む細胞の中に含まれた核酸分子を含むが、その核酸分子は染色体外に存在しているかまたは本来の染色体上の位置とは異なる染色体上の位置に存在している。
「抗ミオスタチン抗体をコードする単離された核酸」は、抗体の重鎖および軽鎖(またはその断片)をコードする1つまたは複数の核酸分子のことをいい、1つのベクターまたは別々のベクターに乗っている核酸分子、および、宿主細胞中の1つまたは複数の位置に存在している核酸分子を含む。
本明細書でいう用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体のことをいう。すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、生じ得る変異抗体(例えば、自然に生じる変異を含む変異抗体、またはモノクローナル抗体調製物の製造中に発生する変異抗体。そのような変異体は通常若干量存在している。)を除いて、同一でありおよび/または同じエピトープに結合する。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。したがって、修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体の集団から得られるものである、という抗体の特徴を示し、何らかの特定の方法による抗体の製造を求めるものと解釈されるべきではない。例えば、本発明にしたがって用いられるモノクローナル抗体は、これらに限定されるものではないが、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含んだトランスジェニック動物を利用する方法を含む、様々な手法によって作成されてよく、モノクローナル抗体を作製するためのそのような方法および他の例示的な方法は、本明細書に記載されている。
「裸抗体」は、異種の部分(例えば、細胞傷害部分)または放射性標識にコンジュゲートされていない抗体のことをいう。裸抗体は、薬学的製剤中に存在していてもよい。
「天然型抗体」は、天然に生じる様々な構造を伴う免疫グロブリン分子のことをいう。例えば、天然型IgG抗体は、ジスルフィド結合している2つの同一の軽鎖と2つの同一の重鎖から構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端に向かって、各重鎖は、可変重鎖ドメインまたは重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域 (VH) を有し、それに3つの定常ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)が続く。同様に、N末端からC末端に向かって、各軽鎖は、可変軽鎖ドメインまたは軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域 (VL) を有し、それに定常軽鎖 (CL) ドメインが続く。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる、2つのタイプの1つに帰属させられてよい。
「天然型配列Fc領域」は、自然界で見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。天然型配列ヒトFc領域は、天然型配列ヒトIgG1 Fc領域(非AおよびAアロタイプ);天然型配列ヒトIgG2 Fc領域;天然型配列ヒトIgG3 Fc領域;および天然型配列ヒトIgG4 Fc領域、ならびに天然に存在するそれらの変異体を含む。
用語「添付文書」は、治療用品の商用パッケージに通常含まれ、そのような治療用品の使用に関する、適応症、用法、用量、投与方法、併用療法、禁忌、および/または警告についての情報を含む使用説明書のことをいうために用いられる。
参照ポリペプチド配列に対する「パーセント (%) アミノ酸配列同一性」は、最大のパーセント配列同一性を得るように配列を整列させてかつ必要ならギャップを導入した後の、かつ、いかなる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとしたときの、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の、百分率比として定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決める目的のアラインメントは、当該技術分野における技術の範囲内にある種々の方法、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、Megalign (DNASTAR) ソフトウェア、またはGENETYX(登録商標)(株式会社ゼネティックス)などの、公に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用することにより達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列のアラインメントをとるための適切なパラメーターを決定することができる。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、ジェネンテック社の著作であり、そのソースコードは米国著作権庁 (US Copyright Office, Washington D.C., 20559) に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087として登録されている。ALIGN-2プログラムは、ジェネンテック社 (Genentech, Inc., South San Francisco, California) から公に入手可能であるし、ソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN-2プログラムは、Digital UNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティングシステム上での使用のためにコンパイルされる。すべての配列比較パラメーターは、ALIGN-2プログラムによって設定され、変動しない。
アミノ酸配列比較にALIGN-2が用いられる状況では、所与のアミノ酸配列Aの、所与のアミノ酸配列Bへの、またはそれとの、またはそれに対する%アミノ酸配列同一性(あるいは、所与のアミノ酸配列Bへの、またはそれとの、またはそれに対する、ある%アミノ酸配列同一性を有するまたは含む所与のアミノ酸配列A、ということもできる)は、次のように計算される:分率X/Yの100倍。ここで、Xは配列アラインメントプログラムALIGN-2によって、当該プログラムのAおよびBのアラインメントにおいて同一である一致としてスコアされたアミノ酸残基の数であり、YはB中のアミノ酸残基の全数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBへの%アミノ酸配列同一性は、BのAへの%アミノ酸配列同一性と等しくないことが、理解されるであろう。別段特に明示しない限り、本明細書で用いられるすべての%アミノ酸配列同一性値は、直前の段落で述べたとおりALIGN-2コンピュータプログラムを用いて得られるものである。
用語「薬学的製剤」は、その中に含まれた有効成分の生物学的活性が効果を発揮し得るような形態にある調製物であって、かつ製剤が投与される被験体に許容できない程度に毒性のある追加の要素を含んでいない、調製物のことをいう。
「薬学的に許容される担体」は、被験体に対して無毒な、薬学的製剤中の有効成分以外の成分のことをいう。薬学的に許容される担体は、これらに限定されるものではないが、緩衝液、賦形剤、安定化剤、または保存剤を含む。
本明細書でいう用語「ミオスタチン」は、霊長類(例えば、ヒト)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物供給源からの任意の天然型ミオスタチンのことを指し得る。別段示さない限り、用語「ミオスタチン」は、配列番号:1に示したアミノ酸配列を有しかつ配列番号:75または78に示したヒトミオスタチンの末端プロペプチドドメインを含有するヒトミオスタチンタンパク質をいう。この用語は、「全長」の、すなわちプロセシングを受けていないミオスタチンも、細胞中でのプロセシングの結果生じるいかなる形態のミオスタチンも包含する。この用語はまた、自然に生じるミオスタチンの変異体、例えば、スプライス変異体や対立遺伝子変異体も包含する。例示的なヒトミオスタチン(プロミオスタチン)のアミノ酸配列を、配列番号:1に示した。ヒトミオスタチンの例示的なC末端成長因子ドメインのアミノ酸配列を、配列番号:2に示した。ヒトミオスタチンの例示的なN末端プロペプチドドメインのアミノ酸配列を、配列番号:75または78に示した。活性な成熟型ミオスタチンは、二つのC末端成長因子ドメインからなるジスルフィド結合しているホモダイマーである。不活性な潜在型ミオスタチンは、二つのプロペプチドと成熟型ミオスタチンとが非共有結合的に会合した複合体である。本明細書で開示するように、本発明の抗体は、不活性な潜在型ミオスタチンに結合するが、成熟型活性ミオスタチンホモダイマーには結合しない。いくつかの態様において、本発明の抗体は、ミオスタチンプロペプチド(配列番号:78)のアミノ酸21~100からなる断片内のエピトープに結合するが、成熟型活性ミオスタチンホモダイマーには結合しない。例示的なカニクイザルおよびマウスのミオスタチン(プロミオスタチン)のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号:3および5に示した。カニクイザルおよびマウスのミオスタチンの例示的なC末端成長因子ドメインのアミノ酸配列を、それぞれ配列番号:4および6に示した。カニクイザルおよびマウスのミオスタチンの例示的なN末端プロペプチドドメインのアミノ酸配列を、それぞれ配列番号:76または79および77または80に示した。GDF-11(BMP-11)は、ミオスタチンと密接に関連する分子であり、どちらもTGF-βスーパーファミリーのメンバーである。ミオスタチンと同様に、GDF11も最初に前駆体ポリペプチドとして合成され、次いでN末端プロドメインとC末端成熟型GDF11とに切断される。ヒトGDF11(前駆体)のアミノ酸配列を、配列番号:81に示した。C末端成熟型ヒトGDF11のアミノ酸配列を、配列番号:82に示した。ヒトGDF11のN末端プロドメインのアミノ酸配列を配列番号:83または84に示した。配列番号:1、3、5、78、79、80、81、および84のアミノ酸配列は、シグナル配列を含む。これらのうちアミノ酸1~24がシグナル配列に対応し、これらは細胞内でのプロセッシングの過程で除去される。
本明細書で用いられる「治療」(および、その文法上の派生語、例えば「治療する」、「治療すること」など)は、治療される個体の自然経過を改変することを企図した臨床的介入を意味し、予防のためにも、臨床的病態の経過の間にも実施され得る。治療の望ましい効果は、これらに限定されるものではないが、疾患の発生または再発の防止、症状の軽減、疾患による任意の直接的または間接的な病理的影響の減弱、転移の防止、疾患の進行速度の低減、疾患状態の回復または緩和、および寛解または改善された予後を含む。いくつかの態様において、本発明の抗体は、疾患の発症を遅らせる、または疾患の進行を遅くするために用いられる。
用語「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体を抗原へと結合させることに関与する、抗体の重鎖または軽鎖のドメインのことをいう。天然型抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれVHおよびVL)は、通常、各ドメインが4つの保存されたフレームワーク領域 (FR) および3つの超可変領域 (HVR) を含む、類似の構造を有する。(例えば、Kindt et al., Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., page 91 (2007) 参照。)1つのVHまたはVLドメインで、抗原結合特異性を与えるに充分であろう。さらに、ある特定の抗原に結合する抗体は、当該抗原に結合する抗体からのVHまたはVLドメインを使ってそれぞれVLまたはVHドメインの相補的ライブラリをスクリーニングして、単離されてもよい。例えばPortolano et al., J. Immunol. 150:880-887 (1993); Clarkson et al., Nature 352:624-628 (1991) 参照。
「変異Fc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾(改変)、好ましくは1つまたは複数のアミノ酸置換によって天然型配列Fc領域のそれと相違するアミノ酸配列を含む。好ましくは、変異Fc領域は、天然型配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域と比較して、天然型配列Fc領域中または親ポリペプチドのFc領域中に少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば約1~約10個のアミノ酸置換、好ましくは約1~約5個のアミノ酸置換を有する。本明細書の変異Fc領域は、好ましくは、天然型配列Fc領域および/または親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%の相同性、最も好ましくはそれらと少なくとも約90%の相同性、より好ましくはそれらと少なくとも約95%の相同性を備える。
本明細書で用いられる用語「ベクター」は、それが連結されたもう1つの核酸を増やすことができる、核酸分子のことをいう。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、および、それが導入された宿主細胞のゲノム中に組み入れられるベクターを含む。あるベクターは、自身が動作的に連結された核酸の、発現をもたらすことができる。そのようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」とも称される。
II.組成物および方法
一局面において、本発明は、抗ミオスタチン抗体およびそれらの使用に一部基づくものである。特定の態様において、ミオスタチンに結合する抗体が提供される。本発明の抗体は、例えば、筋肉消耗疾患の診断または治療のために、有用である。
別の局面において、本発明は、変異Fc領域を含むポリペプチドおよびそれらの使用に一部基づくものである。一態様において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドが提供される。別の態様において、pIが上昇した変異Fc領域を含むポリペプチドが提供される。特定の態様において、本発明のポリペプチドは抗体である。本発明の変異Fc領域を含むポリペプチドは、例えば、疾患の診断または治療のために、有用である。
A.例示的抗ミオスタチン抗体および変異Fc領域を含むポリペプチド
一局面において、本発明は、ミオスタチンに結合する単離された抗体を提供する。特定の態様において、本発明の抗ミオスタチン抗体は潜在型ミオスタチンに結合する。さらなる態様において、本発明の抗ミオスタチン抗体はミオスタチンプロペプチド(ヒト:配列番号:75または78;カニクイザル:配列番号:76または79;マウス:配列番号:77または80)に結合する。さらなる態様において、該抗体は、ミオスタチンプロペプチド(配列番号:78)のアミノ酸21~100からなる断片中のエピトープに結合する。プロペプチドは、上述したように、成分の一つとして潜在型ミオスタチン内に含有される。特定の態様において、本発明の抗ミオスタチン抗体はミオスタチンの活性化を阻害する。特定の態様において、抗ミオスタチン抗体は潜在型ミオスタチンから成熟型ミオスタチンが遊離するのを阻止する。成熟型ミオスタチンは、タンパク質分解および非タンパク質分解プロセスを介して潜在型ミオスタチンから遊離することが報告されている。本発明の抗ミオスタチン抗体は、潜在型ミオスタチンからの成熟型ミオスタチンのタンパク質分解性および/または非タンパク質分解性の遊離を阻止し得る。特定の態様において、抗ミオスタチン抗体は潜在型ミオスタチンのタンパク質分解性切断を阻止する。特定の態様において、抗ミオスタチン抗体は、プロテアーゼが潜在型ミオスタチン(特に、潜在型ミオスタチンのタンパク質分解性切断部位(Arg98~Asp99))に接近するのを阻止する。さらなる態様において、プロテアーゼは、BMP1/TLDファミリーメタロプロテアーゼ、例えばBMP1、TED、tolloid様プロテイン1(TLL-1)、またはtolloid様プロテイン2(TLL-2)であってよい。別の態様において、抗ミオスタチン抗体は、潜在型ミオスタチンからの成熟型ミオスタチンの非タンパク質分解性遊離を阻止する。本明細書で用いられる非タンパク質分解性遊離とは、潜在型ミオスタチンからの成熟型ミオスタチンの自発的な遊離を意味し、これは潜在型ミオスタチンのタンパク質分解性切断を伴わない。非タンパク質分解性遊離には、例えば、潜在型ミオスタチンを切断するプロテアーゼの非存在下で、潜在型ミオスタチンを、例えば37℃でインキュベートすることによる、成熟型ミオスタチンの遊離が含まれる。特定の態様において、本発明の抗ミオスタチン抗体は成熟型ミオスタチンに結合しない。いくつかの態様において、抗ミオスタチン抗体は、表2aに記載の抗体と同じエピトープに結合する。いくつかの態様において、抗ミオスタチン抗体は、潜在型ミオスタチンへの結合について表2aに記載の抗体と競合する。追加の態様において、抗ミオスタチン抗体は、潜在型ミオスタチンへの結合について表2aに記載のVHおよびVL対を含む抗体と競合する。いくつかの態様において、抗ミオスタチン抗体は、ミオスタチンプロペプチド(配列番号:78)のアミノ酸21~100からなる断片への結合について表2aに記載の抗体と競合する。さらなる態様において、抗ミオスタチン抗体は、表11aまたは13に記載の抗体と同じエピトープに結合する。いくつかの態様において、抗ミオスタチン抗体は、潜在型ミオスタチンへの結合について表11aまたは13に記載の抗体と競合する。いくつかの態様において、抗ミオスタチン抗体は、ミオスタチンプロペプチド(配列番号:78)のアミノ酸21~100からなる断片への結合について表11aまたは13に記載の抗体と競合する。
いくつかの態様において、本発明の抗ミオスタチン抗体は、潜在型ミオスタチンに結合し、ミオスタチンの活性化を阻害する。さらなる態様において、該抗体は、(a)潜在型ミオスタチンからの成熟型ミオスタチンの遊離を阻止する;(b)成熟型ミオスタチンのタンパク質分解性遊離を阻止する;(c)成熟型ミオスタチンの自発的遊離を阻止する;または(d)成熟型ミオスタチンには結合しない、もしくはミオスタチンプロペプチド(配列番号:78)のアミノ酸21~100からなる断片中のエピトープに結合する。さらなる態様において、該抗体は、表2a、11a、もしくは13に記載のVHおよびVL対を含む抗体と潜在型ミオスタチンへの結合について競合するか、またはそれと同じエピトープに結合する。さらなる態様において、該抗体は、酸性のpH(例えばpH5.8)におけるよりも、中性のpH(例えばpH7.4)において高いアフィニティで潜在型ミオスタチンに結合する。さらなる態様において、該抗体は、(a)モノクローナル抗体;(b)ヒト、ヒト化、もしくはキメラ抗体;(c)全長IgG抗体;または(d)潜在型ミオスタチンもしくはミオスタチンプロペプチドに結合する抗体断片である。
別の態様において、本発明の抗ミオスタチン抗体はGDF11に結合しない。特定の態様において、本発明の抗ミオスタチン抗体はGDF11の活性化を阻害しない。特定の態様において、抗ミオスタチン抗体は、潜在型GDF11から成熟型GDF11が遊離するのを阻止しない。本発明の抗ミオスタチン抗体は、潜在型GDF11からの成熟型GDF11のタンパク質分解性の遊離も非タンパク質分解性の遊離も阻止しない。特定の態様において、抗ミオスタチン抗体は潜在型GDF11のタンパク質分解性切断を阻止しない。特定の態様において、抗ミオスタチン抗体は、プロテアーゼが潜在型GDF11(特に、潜在型GDF11のタンパク質分解性切断部位)に接近するのを阻止しない。さらなる態様において、プロテアーゼは、BMP1/TLDファミリーメタロプロテアーゼ、例えばBMP1、TED、tolloid様プロテイン1(TLL-1)、またはtolloid様プロテイン2(TLL-2)であってよい。本明細書で用いられる非タンパク質分解性遊離とは、潜在型GDF11からの成熟型GDF11の自発的な遊離を意味し、これは潜在型GDF11のタンパク質分解性切断を伴わない。非タンパク質分解性遊離には、例えば、潜在型GDF11を切断するプロテアーゼの非存在下で、潜在型GDF11を、例えば37℃でインキュベートすることによる、成熟型GDF11の遊離が含まれる。今日までに知られている抗ミオスタチン抗体の大半は、ミオスタチンに特異的ではなかった。これらの抗体は、TGF-βスーパーファミリーの他のメンバー、例えばGDF11に対して高いアフィニティを有し、これらの生物学的活性を中和する。GDF11は、胚発生の過程で重要な役割を果たし、体軸骨格のホメオティックな形質転換を担っている。ホモ接合性のGDF11ノックアウトマウスは、周産期致死性であり、GDF11遺伝子の野生型コピーを1つ有するマウスは、生存可能であるが骨格に欠陥を有する。GDF11が胚発生の過程で重要な役割を果たすことから、GDF11を阻害するアンタゴニストは、治療された患者における毒性として、または例えば出産可能な女性における生殖毒性としてのいずれかで存在し得る理論上の安全性リスクを提示する。したがって、特に出産可能な女性における筋肉の量、サイズ、強度などを増強することが望ましいミオスタチン関連疾患の治療において、ミオスタチン活性を特異的に阻害する必要性がある。
別の局面において本発明は、pH依存的結合特性を示す抗ミオスタチン抗体を提供する。本明細書で用いられる表現「pH依存的結合」とは、抗体が「中性のpHにおけるその結合と比較して、酸性のpHにおけるミオスタチンへの結合の低下」を示すことを意味する(本開示の目的のために両表現は互換的に使用され得る)。例えば、「pH依存的結合特性を有する」抗体には、酸性のpHよりも中性のpHにおいて高いアフィニティでミオスタチンに結合する抗体が含まれる。特定の態様において、本発明の抗体は、酸性のpHよりも中性のpHにおいて、少なくとも2、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000倍、またはそれを超える高いアフィニティでミオスタチンに結合する。いくつかの態様において、これらの抗体は、pH5.8よりもpH7.4において高いアフィニティでミオスタチン(例えば、潜在型ミオスタチンまたはプロペプチドミオスタチン)に結合する。さらなる態様において、これらの抗体は、pH5.8よりもpH7.4において、少なくとも2、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000倍、またはそれを超える高いアフィニティでミオスタチンに結合する。
抗原が可溶性タンパク質である場合、抗体が血漿中で抗原自体よりも長い半減期を有することができ、抗原の担体として働き得ることから、抗体の抗原への結合は、血漿中の抗原の半減期の延長をもたらす可能性がある(すなわち、血漿からの抗原のクリアランスが低下する)。これは、細胞中のエンドソーム経路を介したFcRnによる抗原-抗体複合体の再利用に起因するものである(Roopenian, Nat. Rev. Immunol. 7(9): 715-725 (2007))。しかしながら、中性の細胞外環境でその抗原と結合する一方で、細胞内への侵入後は酸性のエンドソームコンパートメントに抗原を放出する、pH依存的結合特性を有する抗体は、pH非依存性様式で結合するその対応物と比べて、抗原の中和とクリアランスの点で優れた特性を有することが期待される(Igawa et al., Nature Biotechnol. 28(11):1203-1207 (2010); Devanaboyina et al., mAbs 5(6):851-859 (2013); WO 2009/125825)。
本開示の趣旨でのミオスタチンに対する抗体の「アフィニティ」は、抗体のKDとして表される。抗体のKDとは、抗体-抗原相互作用の平衡解離定数をいう。抗体のその抗原への結合についてKD値が大きい程、その特定の抗原への結合アフィニティは弱くなる。したがって、本明細書で用いられる表現「酸性のpHよりも中性のpHにおいて高いアフィニティ」(または同等の表現「pH依存的結合」)は、酸性のpHでのミオスタチンへの抗体結合のKDが、中性のpHでのミオスタチンへの抗体結合のKDよりも大きいことを意味する。例えば本発明の観点で、酸性のpHにおけるミオスタチンへの抗体結合のKDが、中性pHにおけるミオスタチンへの抗体結合のKDよりも少なくとも2倍大きい場合、抗体は、酸性のpHよりも中性のpHにおいて高いアフィニティでミオスタチンに結合すると見なされる。したがって、本発明は、中性のpHにおけるミオスタチンへの抗体結合のKDよりも少なくとも2、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000倍、またはそれより大きいKDで、酸性のpHにおいてミオスタチンに結合する抗体を含む。別の態様において、中性のpHでの抗体のKD値は、10-7 M、10-8 M、10-9 M、10-10 M、10-11 M、10-12 M、またはそれ未満であり得る。別の態様において、酸性のpHでの抗体のKD値は、10-9 M、10-8 M、10-7 M、10-6 M、またはそれより大きい値であり得る。
さらなる態様において、pH5.8におけるミオスタチンへの抗体結合のKDが、pH7.4におけるミオスタチンへの抗体結合のKDよりも少なくとも2倍大きい場合、抗体は、酸性のpHよりも中性のpHにおいて高いアフィニティでミオスタチン(例えば潜在型ミオスタチンまたはプロペプチドミオスタチン)に結合すると見なされる。いくつかの態様において、提供された抗体は、pH7.4におけるミオスタチンへの抗体結合のKDよりも少なくとも3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000倍、またはそれより大きいKDで、pH5.8においてミオスタチンに結合する。別の態様において、pH7.4での抗体のKD値は、10-7 M、10-8 M、10-9 M、10-10 M、10-11 M、10-12 M、またはそれ未満であり得る。別の態様において、pH5.8での抗体のKD値は、10-9 M、10-8 M、10-7 M、10-6 M、またはそれより大きい値であり得る。
特定の抗原に対する抗体の結合特性はまた、抗体のkdとして表してもよい。抗体のkdは、特定の抗原に関する抗体の解離速度定数を指し、秒の逆数(すなわちsec-1)を単位として表される。kd値が大きい程、抗原への抗体の結合が弱いことを意味する。本発明はしたがって、中性のpHよりも酸性のpHにおいて高いkd値でミオスタチンに結合する抗体を含む。本発明は、中性のpHにおけるミオスタチンへの抗体結合のkdよりも少なくとも2、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000倍、またはそれより大きいkdで、酸性のpHにおいてミオスタチンに結合する抗体を含む。別の態様において、中性のpHでの抗体のkd値は、10-2 1/s、10-3 1/s、10-4 1/s、10-5 1/s、10-6 1/s、またはそれ未満であり得る。別の態様において、酸性のpHでの抗体のkd値は、10-3 1/s、10-2 1/s、10-1 1/s、またはそれより大きい値であり得る。本発明はまた、pH7.4よりもpH5.8において高いkd値でミオスタチン(例えば、潜在型ミオスタチンまたはプロペプチドミオスタチン)に結合する抗体を含む。本発明は、pH7.4におけるミオスタチンへの抗体結合のkdよりも少なくとも3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000倍、またはそれより大きいkdで、pH5.8においてミオスタチンに結合する抗体を含む。別の態様において、pH7.4での抗体のkd値は、10-2 1/s、10-3 1/s、10-4 1/s、10-5 1/s、10-6 1/s、またはそれ未満であり得る。別の態様において、pH5.8での抗体のkd値は、10-3 1/s、10-2 1/s、10-1 1/s、またはそれより大きい値であり得る。
特定の態様において、「中性のpHでの結合と比較して、酸性のpHでのミオスタチンへの低下した結合」は、酸性のpHでのミオスタチンへの抗体結合のKD値と中性のpHでのミオスタチンへの抗体結合のKD値との比(またはその逆)として表される。例えば、本発明の趣旨では、抗体が2以上の酸性/中性のKD比を示す場合、該抗体は、「中性のpHでの結合と比較して、酸性のpHでのミオスタチンへの低下した結合」を示すものとして見なされ得る。特定の態様において、本発明の抗ミオスタチン抗体についてのpH5.8/pH7.4のKD比は2以上である。特定の例示的態様において、本発明の抗体についての酸性/中性のKD比は、2、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000、またはそれを超え得る。別の態様において、中性のpHでの抗体のKD値は、10-7 M、10-8 M、10-9 M、10-10 M、10-11 M、10-12 M、またはそれ未満であり得る。別の態様において、酸性のpHでの抗体のKD値は、10-9 M、10-8 M、10-7 M、10-6 M、またはそれより大きい値であり得る。さらなる例において、抗体が2以上のpH5.8/pH7.4のKD比を示す場合、抗体は、「中性のpHでの結合と比較して、酸性のpHでのミオスタチン(例えば潜在型ミオスタチン)への低下した結合」を示すものとして見なされ得る。特定の例示的態様において、抗体についてのpH5.8/pH7.4のKD比は、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000、またはそれを超え得る。別の態様において、pH7.4での抗体のKD値は、10-7 M、10-8 M、10-9 M、10-10 M、10-11 M、10-12 M、またはそれ未満であり得る。別の態様において、pH5.8での抗体のKD値は、10-9 M、10-8 M、10-7 M、10-6 M、またはそれより大きい値であり得る。
特定の例において、「中性のpHでの結合と比較して、酸性のpHでのミオスタチンへの低下した結合」は、酸性のpHでのミオスタチンへの抗体結合のkd値と中性のpHでのミオスタチンへの抗体結合のkd値との比(またはその逆)として表される。例えば、本発明の趣旨では、抗体が2以上の酸性/中性のkd比を示す場合、該抗体は、「中性のpHでの結合と比較して、酸性のpHでのミオスタチンへの低下した結合」を示すものとして見なされ得る。特定の例示的態様において、本発明の抗体についてのpH5.8/pH7.4のkd比は2以上である。特定の例示的態様において、本発明の抗体についての酸性/中性のkd比は、2、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000、またはそれを超え得る。別の態様において、中性のpHでの抗体のkd値は、10-2 1/s、10-3 1/s、10-4 1/s、10-5 1/s、10-6 1/s、またはそれ未満であり得る。別の態様において、酸性のpHでの抗体のkd値は、10-3 1/s、10-2 1/s、10-1 1/s、またはそれより大きい値であり得る。特定の例示的態様において、本発明の抗体についてのpH5.8/pH7.4のkd比は、2、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000、またはそれを超え得る。別の態様において、pH7.4での抗体のkd値は、10-2 1/s、10-3 1/s、10-4 1/s、10-5 1/s、10-6 1/s、またはそれ未満であり得る。別の態様において、pH5.8での抗体のkd値は、10-3 1/s、10-2 1/s、10-1 1/s、またはそれより大きい値であり得る。
本明細書で用いられる表現「酸性のpH」とは、pH4.0~6.5を意味する。この表現「酸性のpH」は、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、および6.5のいずれか1つのpH値を含む。特定の局面において、「酸性のpH」は5.8である。
本明細書で用いられる表現「中性のpH」とは、pH6.7~約10.0を意味する。この表現「中性のpH」は、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3,9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、および10.0のいずれか1つのpH値を含む。特定の局面において、「中性のpH」は7.4である。
本明細書で表されるKD値およびkd値は、抗体-抗原相互作用を特徴付けるために、表面プラズモン共鳴に基づくバイオセンサーを用いて決定され得る。(例えば、本明細書の実施例7を参照のこと)。KD値およびkd値は、25℃または37℃で決定することができる。
特定の態様において、本発明の抗ミオスタチン抗体は、複数の種に由来するミオスタチンに結合する。さらなる態様において、抗ミオスタチン抗体は、ヒトおよび非ヒト動物に由来するミオスタチンに結合する。さらなる態様において、抗ミオスタチン抗体は、ヒト、マウス、およびサル(例えばカニクイザル、アカゲザル、マーモセット、チンパンジー、またはヒヒ)に由来するミオスタチンに結合する。
特定の態様において、本発明の抗ミオスタチン抗体は、複数の種に由来する潜在型ミオスタチンに結合する。さらなる態様において、抗ミオスタチン抗体は、ヒトおよび非ヒト動物に由来する潜在型ミオスタチンに結合する。さらなる態様において、抗ミオスタチン抗体は、ヒト、マウス、およびサルに由来する潜在型ミオスタチンに結合する。
特定の態様において、本発明の抗ミオスタチン抗体は、複数の種に由来するプロペプチドミオスタチンに結合する。さらなる態様において、抗ミオスタチン抗体は、ヒトおよび非ヒト動物に由来するプロペプチドミオスタチンに結合する。さらなる態様において、抗ミオスタチン抗体は、ヒト、マウス、およびサルに由来するプロペプチドミオスタチンに結合する。
さらなる局面において、本発明は、ミオスタチンと免疫複合体(すなわち、抗原-抗体複合体)を形成する抗ミオスタチン抗体を提供する。特定の態様において、2つ以上の抗ミオスタチン抗体は、2つ以上のミオスタチン分子と結合して、免疫複合体を形成する。ミオスタチンが2つのミオスタチン分子を含有するホモダイマーとして存在し、一方で、抗体が2つの抗原結合部位を有するため、これが可能である。抗ミオスタチン抗体は、ミオスタチン分子上の同じエピトープに結合してもよく、または、二重特異性抗体と同様に、ミオスタチン分子上の異なるエピトープに結合してもよい。一般的に言って、2つ以上の抗体が2つ以上の抗原と免疫複合体を形成する場合、結果として得られた免疫複合体は、複合体中の抗体のFc領域を介したアビディティー効果に起因して、細胞表面に存在するFc受容体に強く結合することができ、次いで高効率で細胞内に取り込まれ得る。したがって、2つ以上の抗ミオスタチン抗体と2つ以上のミオスタチン分子とを含有する免疫複合体を形成することができる上述の抗ミオスタチン抗体は、アビディティー効果に起因するFc受容体への強い結合を介して、生体において血漿からのミオスタチンの迅速なクリアランスをもたらすことができる。
さらに、pH依存的結合特性を有する抗体は、pH非依存性様式で結合するその対応物と比べて、抗原の中和とクリアランスの点で優れた特性を有すると考えられる(Igawa et al., Nature Biotech. 28(11):1203-1207 (2010); Devanaboyina et al. mAbs 5(6):851-859 (2013); WO 2009/125825)。したがって、上記両方の特性を有する抗体、すなわち、pH依存的結合特性を有し、かつ2つ以上の抗原と2つ以上の抗体を含有する免疫複合体を形成する抗体は、血漿からの非常に迅速な抗原の消失に関してより優れた特性を有することが期待される(WO 2013/081143)。
一局面において、本発明は、(a)配列番号:55~57、114~115、126のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:58~60、116~120、127のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:61~64、121、128のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:65~69、122~124、129のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:70~72、125、130のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2;および、(f)配列番号:73~74、131のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含む、抗ミオスタチン抗体を提供する。
一局面において、本発明は、(a)配列番号:55~57のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:58~60のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:61~64のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:65~69のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:70~72のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2;および、(f)配列番号:73~74のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含む、抗ミオスタチン抗体を提供する。
一局面において、本発明は、(a)配列番号:114~115のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:116~120のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:121のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:122~124のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:125のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および、(f)配列番号:73~74のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの超可変領域(HVR)を含む、抗ミオスタチン抗体を提供する。
別の局面において、本発明は、(a)配列番号:114のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:58のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:63のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:122のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:71のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および、(f)配列番号:74のアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含む、抗ミオスタチン抗体を提供する。別の局面において、本発明は、(a)配列番号:114のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:58のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:63のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:123のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:71のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および、(f)配列番号:74のアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含む、抗ミオスタチン抗体を提供する。
別の局面において、本発明は、(a)配列番号:126のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:127のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:128のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:129のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:130のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および、(f)配列番号:131のアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含む、抗ミオスタチン抗体を提供する。
一局面において、本発明は、(a)配列番号:55~57、114~115、126のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:58~60、116~120、127のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2;および、(c)配列番号:61~64、121、128のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVH HVR配列を含む、抗体を提供する。一態様において、抗体は、配列番号:61~64、121、128のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む。別の態様において、抗体は、配列番号:61~64、121、128のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3と、配列番号:73~74、131のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む。さらなる態様において、抗体は、配列番号:61~64、121、128のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3と、配列番号:73~74、131のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3と、配列番号:58~60、116~120、127のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2とを含む。さらなる態様において、抗体は、(a)配列番号:55~57、114~115、126のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1と;(b)配列番号:58~60、116~120、127のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2と;(c)配列番号:61~64、121、128のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含む。
一局面において、本発明は、(a)配列番号:55~57のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:58~60のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2;および、(c)配列番号:61~64のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVH HVR配列を含む、抗体を提供する。一態様において、抗体は、配列番号:61~64のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む。別の態様において、抗体は、配列番号:61~64のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3と、配列番号:73~74のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む。さらなる態様において、抗体は、配列番号:61~64のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3と、配列番号:73~74のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3と、配列番号:58~60のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2とを含む。さらなる態様において、抗体は、(a)配列番号:55~57のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1と、(b)配列番号:58~60のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2と、(c)配列番号:61~64のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含む。
別の局面において、本発明は、(a)配列番号:114~115のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:116~120のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2;および、(c)配列番号:121のアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVH HVR配列を含む、抗体を提供する。一態様において、抗体は、配列番号:121のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む。別の態様において、抗体は、配列番号:121のアミノ酸配列を含むHVR-H3と、配列番号:73~74のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む。さらなる態様において、抗体は、配列番号:121のアミノ酸配列を含むHVR-H3と、配列番号:73~74のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3と、配列番号:116~120のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2とを含む。さらなる態様において、抗体は、(a)配列番号:114~115のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1と、(b)配列番号:116~120のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2と、(c)配列番号:121のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含む。別の局面において、本発明は、(a)配列番号:114のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:58のアミノ酸配列を含むHVR-H2;および、(c)配列番号:63のアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVH HVR配列を含む、抗体を提供する。一態様において、抗体は、配列番号:63のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む。別の態様において、抗体は、配列番号:63のアミノ酸配列を含むHVR-H3と、配列番号:74のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む。さらなる態様において、抗体は、配列番号:63のアミノ酸配列を含むHVR-H3と、配列番号:74のアミノ酸配列を含むHVR-L3と、配列番号:58のアミノ酸配列を含むHVR-H2とを含む。さらなる態様において、抗体は、(a)配列番号:114のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、(b)配列番号:58のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、(c)配列番号:63のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含む。
別の局面において、本発明は、(a)配列番号:126のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:127のアミノ酸配列を含むHVR-H2;および、(c)配列番号:128のアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVH HVR配列を含む、抗体を提供する。一態様において、抗体は、配列番号:128のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む。別の態様において、抗体は、配列番号:128のアミノ酸配列を含むHVR-H3と、配列番号:131のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む。さらなる態様において、抗体は、配列番号:128のアミノ酸配列を含むHVR-H3と、配列番号:131のアミノ酸配列を含むHVR-L3と、配列番号:127のアミノ酸配列を含むHVR-H2とを含む。さらなる態様において、抗体は、(a)配列番号:126のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、(b)配列番号:127のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、(c)配列番号:128のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含む。
別の局面において、本発明は、(a)配列番号:65~69、122~124、129のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1;(b)配列番号:70~72、125、130のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2;および(c)配列番号:73~74、131のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVL HVR配列を含む、抗体を提供する。一態様において、抗体は、(a)配列番号:65~69、122~124、129のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1と;(b)配列番号:70~72、125、130のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2と;(c)配列番号:73~74、131のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む。
別の局面において、本発明は、(a)配列番号:65~69のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1;(b)配列番号:70~72のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2;および(c)配列番号:73~74のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVL HVR配列を含む、抗体を提供する。一態様において、抗体は、(a)配列番号:65~69のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1と;(b)配列番号:70~72のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2と;(c)配列番号:73~74のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む。
別の局面において、本発明は、(a)配列番号:122~124のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1;(b)配列番号:125のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および(c)配列番号:73~74のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVL HVR配列を含む、抗体を提供する。一態様において、抗体は、(a)配列番号:122~124のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1と;(b)配列番号:125のアミノ酸配列を含むHVR-L2と;(c)配列番号:73~74のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む。
別の局面において、本発明は、(a)配列番号:122のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(b)配列番号:71のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および、(c)配列番号:74のアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVL HVR配列を含む、抗体を提供する。一態様において、抗体は、(a)配列番号:122のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、(b)配列番号:71のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、(c)配列番号:74のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む。別の局面において、本発明は、(a)配列番号:123のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(b)配列番号:71のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および、(c)配列番号:74のアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVL HVR配列を含む、抗体を提供する。一態様において、抗体は、(a)配列番号:123のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、(b)配列番号:71のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、(c)配列番号:74のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む。
別の局面において、本発明は、(a)配列番号:129のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(b)配列番号:130のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および、(c)配列番号:131のアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVL HVR配列を含む、抗体を提供する。一態様において、抗体は、(a)配列番号:129のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、(b)配列番号:130のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、(c)配列番号:131のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む。
別の局面において、本発明の抗体は、(a)VHドメインであって、(i)配列番号:55~57、114、115、126のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号:58~60、116~120、127のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(iii)配列番号:61~64、121、128のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVH HVR配列を含む、VHドメインと;(b)VLドメインであって、(i)配列番号:65~69、122~124、129のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1、(ii)配列番号:70~72、125、130のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(iii)配列番号:73~74、131のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVL HVR配列を含む、VLドメインとを含む。
別の局面において、本発明の抗体は、(a)VHドメインであって、(i)配列番号:55~57 のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii) 配列番号:58~60のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(iii)配列番号:61~64のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVH HVR配列を含む、VHドメインと;(b)VLドメインであって、(i)配列番号:65~69のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1、(ii)配列番号:70~72のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(iii)配列番号:73~74のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVL HVR配列を含む、VLドメインとを含む。
別の局面において、本発明の抗体は、(a)VHドメインであって、(i)配列番号:114~115 のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号:116~120のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(iii)配列番号:121のアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVH HVR配列を含む、VHドメインと;(b)VLドメインであって、(i)配列番号:122~124のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1、(ii)配列番号:125のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(iii)配列番号:73~74のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVL HVR配列を含む、VLドメインとを含む。
別の局面において、本発明の抗体は、(a)VHドメインであって、(i)配列番号:114のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号:58のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(iii)配列番号:63のアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVH HVR配列を含む、VHドメインと;(b)VLドメインであって、(i)配列番号:122のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(ii)配列番号:71のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(iii)配列番号:74のアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVL HVR配列を含む、VLドメインとを含む。別の局面において、本発明の抗体は、(a)VHドメインであって、(i)配列番号:114のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号:58のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(iii)配列番号:63のアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVH HVR配列を含む、VHドメインと;(b)VLドメインであって、(i)配列番号:123のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(ii)配列番号:71のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(iii)配列番号:74のアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVL HVR配列を含む、VLドメインとを含む。
別の局面において、本発明の抗体は、(a)VHドメインであって、(i)配列番号:126のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号:127のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(iii)配列番号:128のアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVH HVR配列を含む、VHドメインと;(b)VLドメインであって、(i)配列番号:129のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(ii)配列番号:130のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(iii)配列番号:131のアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVL HVR配列を含む、VLドメインとを含む。
別の局面において、本発明は、(a)配列番号:55~57、114~115、126のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:58~60、116~120、127のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:61~64、121、128のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:65~69、122~124、129のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:70~72、125、130のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2;および、(f)配列番号:73~74、131のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、抗体を提供する。
別の局面において、本発明は、(a)配列番号:55~57、114~115のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:58~60、116~120のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:61~64、121のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:65~69、122~124のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:70~72、125のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2;および、(f)配列番号:73~74のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、抗体を提供する。
別の局面において、本発明は、(a)配列番号:114~115のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:116~120のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:121のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:122~124のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:125のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および、(f)配列番号:73~74のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、抗体を提供する。別の局面において、本発明は、(a)配列番号:114のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:58のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:63のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:122のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:71のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および、(f)配列番号:74のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、抗体を提供する。別の局面において、本発明は、(a)配列番号:114のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:58のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:63のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:123のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:71のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および、(f)配列番号:74のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、抗体を提供する。
別の局面において、本発明は、(a)配列番号:126のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:127のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:128のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:129のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:130のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および、(f)配列番号:131のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、抗体を提供する。
特定の態様において、以下のHVR位置のところで、上述の抗ミオスタチン抗体の任意の1つまたは複数のアミノ酸が、置換されている:(a)HVR-H1(配列番号:55)において:位置1および2;(b)HVR-H2(配列番号:58)において:位置4、7、8、10、11、12、および16;(c)HVR-H3(配列番号:61)において:位置5、7、および11;(d)HVR-L1(配列番号:65)において:位置1、2、5、7、8、および9;(e)HVR-L2(配列番号:70)において:位置3および7;ならびに(f)HVR-L3(配列番号:73)において:位置8。
特定の態様において、本明細書で提供される、抗ミオスタチン抗体の任意の1つまたは複数のアミノ酸置換は、保存的置換である。特定の態様において、以下のいずれか1つまたは複数の置換が、任意の組み合わせで行われてもよい:(a)HVR-H1(配列番号:55)において:S1H;Y2T、D、またはE;(b)HVR-H2(配列番号:58)において:Y4H;S7K;T8MまたはK;Y10K;A11MまたはE;S12E;G16K;(c)HVR-H3(配列番号:61)において:Y5H;T7H;L11K;(d)HVR-L1(配列番号:65)において:Q1T;S2T;S5E;Y7F;D8H;N9DまたはAまたはE;(e)HVR-L2(配列番号:70)において:S3E;S7Y、FまたはW;および(f)HVR-L3(配列番号:73)において:L8R。
上述の置換の可能なすべての組み合わせは、HVR-H1、HVR-H2、HVR-H3、HVR-L1、HVR-L2、およびHVR-L3に関してそれぞれ、配列番号:126、127、128、129、130、および131のコンセンサス配列に包含される。
上述の態様の任意のものにおいて、抗ミオスタチン抗体は、ヒト化することができる。一態様において、抗ミオスタチン抗体は、上述の態様の任意のものにおけるHVRを含み、かつさらに、アクセプターヒトフレームワーク(例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク)を含む。別の態様において、抗ミオスタチン抗体は上述の態様の任意のものにおけるHVRを含み、かつさらに、FR配列を含むVHまたはVLを含む。さらなる態様において、抗ミオスタチン抗体は、以下の重鎖および/または軽鎖可変ドメインFR配列を含む:重鎖可変ドメインについて、FR1は、配列番号:132~134のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、FR2は配列番号:135~136のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、FR3は配列番号:137のアミノ酸配列を含み、FR4は配列番号:138のアミノ酸配列を含む。軽鎖可変ドメインについて、FR1は、配列番号:139のアミノ酸配列を含み、FR2は配列番号:140~141のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、FR3は配列番号:142~143のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、FR4は配列番号:144のアミノ酸配列を含む。
一局面において、本発明は、(a)配列番号:157~162のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:163~168のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:169~174のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:175~180のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:181~186のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2;および、(f)配列番号:187~192のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含む、抗ミオスタチン抗体を提供する。
一局面において、本発明は、(a)配列番号:157~162のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:163~168のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2;および、(c)配列番号:169~174のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVH HVR配列を含む、抗体を提供する。一態様において、抗体は、配列番号:169~174のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む。別の態様において、抗体は、配列番号:169~174のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3と、配列番号:187~192のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む。さらなる態様において、抗体は、配列番号:169~174のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3と、配列番号:187~192のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3と、配列番号:163~168のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2とを含む。さらなる態様において、抗体は、(a)配列番号:157~162のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1と、(b)配列番号:163~168のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2と、(c)配列番号:169~174のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含む。
別の局面において、本発明は、(a)配列番号:175~180のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1;(b)配列番号:181~186のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2;および(c)配列番号:187~192のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVL HVR配列を含む、抗体を提供する。一態様において、抗体は、(a)配列番号:175~180のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1と;(b)配列番号:181~186のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2と;(c)配列番号:187~192のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む。
別の局面において、本発明の抗体は、(a)VHドメインであって、(i)配列番号:157~162のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号:163~168のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(iii)配列番号:169~174のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVH HVR配列を含む、VHドメインと;(b)VLドメインであって、(i)配列番号:175~180のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1、(ii)配列番号:181~186のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(iii)配列番号:187~192のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVL HVR配列を含む、VLドメインとを含む。
別の局面において、本発明は、(a)配列番号:157~162のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:163~168のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:169~174のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:175~180のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:181~186のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2;および、(f)配列番号:187~192のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、抗体を提供する。
別の局面において、抗ミオスタチン抗体は、配列番号:13、16~30、32~34、および86~95のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、当該配列を含む抗ミオスタチン抗体は、ミオスタチンに結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個から10個のアミノ酸が、配列番号:13、16~30、32~34、および86~95のいずれか1つにおいて、置換、挿入、および/または欠失されている。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FRの中)で生じる。任意で、抗ミオスタチン抗体は、配列番号:13、16~30、32~34、および86~95のいずれか1つにおけるVH配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。特定の態様において、VHは、(a)配列番号:55~57、114~115、126のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号:58~60、116~120、127のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(c)配列番号:61~64、121、128のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、1つ、2つ、または3つのHVRを含む。翻訳後修飾は、重鎖又は軽鎖N末端のグルタミン又はグルタミン酸のピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾を含むが、これに限定されない。
別の局面において、抗ミオスタチン抗体は、配列番号:13、16~30、32、33、および34のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH配列を含む。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、当該配列を含む抗ミオスタチン抗体は、ミオスタチンに結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個から10個のアミノ酸が、配列番号:13、16~30、32、33、および34のいずれか1つにおいて、置換、挿入、および/または欠失されている。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FRの中)で生じる。任意で、抗ミオスタチン抗体は、配列番号:13、16~30、32、33、および34のいずれか1つにおけるVH配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。特定の態様において、VHは、(a)配列番号:55~57のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号:58~60のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(c)配列番号:61~64のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、1つ、2つ、または3つのHVRを含む。翻訳後修飾は、重鎖又は軽鎖N末端のグルタミン又はグルタミン酸のピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾を含むが、これに限定されない。
別の局面において、抗ミオスタチン抗体は、配列番号:86~95のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH配列を含む。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、当該配列を含む抗ミオスタチン抗体は、ミオスタチンに結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個から10個のアミノ酸が、配列番号:86~95のいずれか1つにおいて、置換、挿入、および/または欠失されている。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FRの中)で生じる。任意で、抗ミオスタチン抗体は、配列番号:86~95のいずれか1つにおけるVH配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。特定の態様において、VHは、(a)配列番号:57、114~115、126のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号:58、116~120、127のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(c)配列番号:63、121、128のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、1つ、2つ、または3つのHVRを含む。翻訳後修飾は、重鎖又は軽鎖N末端のグルタミン又はグルタミン酸のピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾を含むが、これに限定されない。別の局面において、抗ミオスタチン抗体は、配列番号:86のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH配列を含む。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、当該配列を含む抗ミオスタチン抗体は、ミオスタチンに結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個から10個のアミノ酸が、配列番号:86において、置換、挿入、および/または欠失されている。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FRの中)で生じる。任意で、抗ミオスタチン抗体は、配列番号:86におけるVH配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。特定の態様において、VHは、(a)配列番号:114のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号:58のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(c)配列番号:63のアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、1つ、2つ、または3つのHVRを含む。翻訳後修飾は、重鎖又は軽鎖N末端のグルタミン又はグルタミン酸のピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾を含むが、これに限定されない。別の局面において、抗ミオスタチン抗体は、配列番号:92のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH配列を含む。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、当該配列を含む抗ミオスタチン抗体は、ミオスタチンに結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個から10個のアミノ酸が、配列番号:92において、置換、挿入、および/または欠失されている。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FRの中)で生じる。任意で、抗ミオスタチン抗体は、配列番号:92におけるVH配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。特定の態様において、VHは、(a)配列番号:114のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号:58のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(c)配列番号:63のアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、1つ、2つ、または3つのHVRを含む。翻訳後修飾は、重鎖又は軽鎖N末端のグルタミン又はグルタミン酸のピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾を含むが、これに限定されない。
別の局面において、配列番号:15、31、35~38、および96~99のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVLを含む、抗ミオスタチン抗体が提供される。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列に対して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、当該配列を含む抗ミオスタチン抗体は、ミオスタチンに結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個から10個のアミノ酸が、配列番号:15、31、35~38、および96~99のいずれか1つにおいて、置換、挿入、および/または欠失されている。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FRの中)で生じる。任意で、抗ミオスタチン抗体は、配列番号:15、31、35~38、および96~99のいずれか1つにおけるVL配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。特定の態様において、VLは、(a)配列番号:65~69、122~124、129のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号:70~72、125、130のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(c)配列番号:73~74、131のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、1つ、2つ、または3つのHVRを含む。翻訳後修飾は、重鎖又は軽鎖N末端のグルタミン又はグルタミン酸のピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾を含むが、これに限定されない。
別の局面において、配列番号:15、31、35、36、37、および38のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVLを含む、抗ミオスタチン抗体が提供される。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列に対して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、当該配列を含む抗ミオスタチン抗体は、ミオスタチンに結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個から10個のアミノ酸が、配列番号:15、31、35、36、37、および38のいずれか1つにおいて、置換、挿入、および/または欠失されている。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FRの中)で生じる。任意で、抗ミオスタチン抗体は、配列番号:15、31、35、36、37、および38のいずれか1つにおけるVL配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。特定の態様において、VLは、(a)配列番号:65~69のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号:70~72のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(c)配列番号:73~74のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、1つ、2つ、または3つのHVRを含む。翻訳後修飾は、重鎖又は軽鎖N末端のグルタミン又はグルタミン酸のピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾を含むが、これに限定されない。
別の局面において、配列番号:96~99のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVLを含む、抗ミオスタチン抗体が提供される。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列に対して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、当該配列を含む抗ミオスタチン抗体は、ミオスタチンに結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個から10個のアミノ酸が、配列番号:96~99のいずれか1つにおいて、置換、挿入、および/または欠失されている。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域で生じる。任意で、抗ミオスタチン抗体は、配列番号:96~99のいずれか1つにおけるVL配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。特定の態様において、VLは、(a)配列番号:122~124、129のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号:71、125、130のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(c)配列番号:74、131のアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、1つ、2つ、または3つのHVRを含む。翻訳後修飾は、重鎖又は軽鎖N末端のグルタミン又はグルタミン酸のピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾を含むが、これに限定されない。別の局面において、配列番号:96のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVLを含む、抗ミオスタチン抗体が提供される。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列に対して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、当該配列を含む抗ミオスタチン抗体は、ミオスタチンに結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個から10個のアミノ酸が、配列番号:96において、置換、挿入、および/または欠失されている。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域で生じる。任意で、抗ミオスタチン抗体は、配列番号:96におけるVL配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。特定の態様において、VLは、(a)配列番号:122のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号:71のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(c)配列番号:74のアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、1つ、2つ、または3つのHVRを含む。翻訳後修飾は、重鎖又は軽鎖N末端のグルタミン又はグルタミン酸のピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾を含むが、これに限定されない。別の局面において、配列番号:97のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVLを含む、抗ミオスタチン抗体が提供される。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列に対して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、当該配列を含む抗ミオスタチン抗体は、ミオスタチンに結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個から10個のアミノ酸が、配列番号:97において、置換、挿入、および/または欠失されている。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域で生じる。任意で、抗ミオスタチン抗体は、配列番号:97におけるVL配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。特定の態様において、VLは、(a)配列番号:123のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号:71のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(c)配列番号:74のアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、1つ、2つ、または3つのHVRを含む。翻訳後修飾は、重鎖又は軽鎖N末端のグルタミン又はグルタミン酸のピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾を含むが、これに限定されない。
別の局面において、上述の態様の任意のものにおけるVH、および上述の態様の任意のものにおけるVLを含む、抗ミオスタチン抗体が提供される。一態様において、抗体はそれぞれ配列番号:13、16~30、32~34、および86~95のいずれか1つならびに配列番号:15、31、35~38、および96~99のいずれか1つの中のVHおよびVL配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。一態様において、抗体はそれぞれ配列番号:13、16~30、および32~34のいずれか1つならびに配列番号:15、31、および35~38のいずれか1つの中のVHおよびVL配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。一態様において、抗体はそれぞれ配列番号:86~95のいずれか1つおよび配列番号:96~99のいずれか1つの中のVHおよびVL配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。翻訳後修飾は、重鎖又は軽鎖N末端のグルタミン又はグルタミン酸のピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾を含むが、これに限定されない。
別の局面において、上述の態様の任意のものにおけるVH、および上述の態様の任意のものにおけるVLを含む、抗ミオスタチン抗体が提供される。一態様において、抗体はそれぞれ配列番号:86および配列番号:96中のVHおよびVL配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。一態様において、抗体はそれぞれ配列番号:92および配列番号:97中のVHおよびVL配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。翻訳後修飾は、重鎖又は軽鎖N末端のグルタミン又はグルタミン酸のピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾を含むが、これに限定されない。
別の局面において、抗ミオスタチン抗体は、配列番号:12、145~150のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH配列を含む。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、当該配列を含む抗ミオスタチン抗体は、ミオスタチンに結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個から10個のアミノ酸が、配列番号:12、145~150のいずれか1つにおいて、置換、挿入、および/または欠失されている。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FRの中)で生じる。任意で、抗ミオスタチン抗体は、配列番号:12、145~150のいずれか1つにおけるVH配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。特定の態様において、VHは、(a)配列番号:55、157~162のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号:58、163~168のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(c)配列番号:61、169~174のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、1つ、2つ、または3つのHVRを含む。翻訳後修飾は、重鎖又は軽鎖N末端のグルタミン又はグルタミン酸のピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾を含むが、これに限定されない。
別の局面において、配列番号:14、151~156のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、抗ミオスタチン抗体が提供される。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列に対して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、当該配列を含む抗ミオスタチン抗体は、ミオスタチンに結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個から10個のアミノ酸が、配列番号:14、151~156のいずれか1つにおいて、置換、挿入、および/または欠失されている。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FRの中)で生じる。任意で、抗ミオスタチン抗体は、配列番号:14、151~156のいずれか1つにおけるVL配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。特定の態様において、VLは、(a)配列番号:65、175~180のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号:70、181~186のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(c)配列番号:73、187~192のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、1つ、2つ、または3つのHVRを含む。翻訳後修飾は、重鎖又は軽鎖N末端のグルタミン又はグルタミン酸のピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾を含むが、これに限定されない。
別の局面において、上述の態様の任意のものにおけるVH、および上述の態様の任意のものにおけるVLを含む、抗ミオスタチン抗体が提供される。一態様において、抗体はそれぞれ配列番号:12、145~150のいずれか1つおよび配列番号:14、151~156のいずれか1つの中のVHおよびVL配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。翻訳後修飾は、重鎖又は軽鎖N末端のグルタミン又はグルタミン酸のピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾を含むが、これに限定されない。
特定の態様において、本発明の抗ミオスタチン抗体は、上述の態様の任意のものにおけるVH、および配列番号:7、9、11、193、195~198、227、228、229~381のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。特定の態様において、本発明の抗ミオスタチン抗体は、上述の態様の任意のものにおけるVL、および配列番号:8および10のいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。
さらなる局面において、本発明は、本明細書で提供される抗ミオスタチン抗体と同じエピトープに結合する抗体を提供する。さらなる局面において、本発明は、表2aに記載の抗体と同じエピトープに結合する抗体を提供する。さらなる局面において、本発明は、表11aまたは13に記載の抗体と同じエピトープに結合する抗体を提供する。特定の態様において、配列番号:78のアミノ酸21~100からなるミオスタチンプロペプチドの断片中のエピトープに結合する抗体が提供される。あるいは、抗体は、配列番号:78のアミノ酸21~80、41~100、21~60、41~80、61~100、21~40、41~60、61~80、または81~100からなるミオスタチンプロペプチド断片に結合する。
本発明のさらなる局面において、上述の態様の任意のものによる抗ミオスタチン抗体は、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体を含む、モノクローナル抗体である。一態様において、抗ミオスタチン抗体は、例えば、Fv、Fab、Fab'、scFv、ダイアボディ、またはF(ab')2断片などの、抗体断片である。別の態様において、抗体は、例えば、完全IgG1またはIgG4抗体や、本明細書で定義された他の抗体クラスまたはアイソタイプなどの、全長IgG抗体である。
さらなる局面において、上述の態様の任意のものによる抗ミオスタチン抗体は、単独または組み合わせで、以下の項目1~7に記載の任意の特徴を取り込んでもよい。
1.抗体のアフィニティ
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nMまたは≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば10-9M~10-13M)の解離定数 (Kd) を有する。
一態様において、Kdは、放射性標識抗原結合測定法 (radiolabeled antigen binding assay: RIA) によって測定される。一態様において、RIAは、目的の抗体のFabバージョンおよびその抗原を用いて実施される。例えば、抗原に対するFabの溶液中結合アフィニティは、非標識抗原の漸増量系列の存在下で最小濃度の (125I) 標識抗原によりFabを平衡化させ、次いで結合した抗原を抗Fab抗体でコーティングされたプレートにより捕捉することによって測定される。(例えば、Chen et al., J. Mol. Biol. 293:865-881(1999) を参照のこと)。測定条件を構築するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート (Thermo Scientific) を50mM炭酸ナトリウム (pH9.6) 中5μg/mlの捕捉用抗Fab抗体 (Cappel Labs) で一晩コーティングし、その後に室温(およそ23℃)で2~5時間、PBS中2% (w/v) ウシ血清アルブミンでブロックする。非吸着プレート (Nunc #269620) において、100 pMまたは26 pMの [125I]-抗原を、(例えば、Presta et al., Cancer Res. 57:4593-4599 (1997) における抗VEGF抗体、Fab-12の評価と同じように)目的のFabの段階希釈物と混合する。次いで、目的のFabを一晩インキュベートするが、このインキュベーションは、平衡が確実に達成されるよう、より長時間(例えば、約65時間)継続され得る。その後、混合物を、室温でのインキュベーション(例えば、1時間)のために捕捉プレートに移す。次いで溶液を除去し、プレートをPBS中0.1%のポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))で8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μl/ウェルのシンチラント(MICROSCINT-20(商標)、Packard)を添加し、TOPCOUNT(商標)ガンマカウンター (Packard) においてプレートを10分間カウントする。最大結合の20%以下を与える各Fabの濃度を、競合結合アッセイにおいて使用するために選択する。
別の態様によれば、Kdは、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴アッセイを用いて測定される。例えば、BIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000 (BIACORE(登録商標), Inc., Piscataway, NJ) を用いる測定法が、およそ10反応単位 (response unit: RU) の抗原が固定されたCM5チップを用いて25℃で実施される。一態様において、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ (CM5、BIACORE(登録商標), Inc.) は、供給元の指示にしたがいN-エチル-N'- (3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミドヒドロクロリド (EDC) およびN-ヒドロキシスクシンイミド (NHS) を用いて活性化される。抗原は、およそ10反応単位 (RU) のタンパク質の結合を達成するよう、5μl/分の流速で注入される前に、10mM酢酸ナトリウム、pH4.8を用いて5μg/ml(およそ0.2μM)に希釈される。抗原の注入後、未反応基をブロックするために1Mエタノールアミンが注入される。反応速度測定のために、25℃、およそ25μl/分の流速で、0.05%ポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤含有PBS (PBST) 中のFabの2倍段階希釈物 (0.78nM~500nM) が注入される。結合速度 (kon) および解離速度 (koff) は、単純な1対1ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)評価ソフトウェアバージョン3.2)を用いて、結合および解離のセンサーグラムを同時にフィッティングすることによって計算される。平衡解離定数 (Kd) は、koff/kon比として計算される。例えば、Chen et al., J. Mol. Biol. 293:865-881 (1999) を参照のこと。上記の表面プラズモン共鳴アッセイによってオン速度が106M-1s-1を超える場合、オン速度は、分光計(例えばストップフロー式分光光度計 (Aviv Instruments) または撹拌キュベットを用いる8000シリーズのSLM-AMINCO(商標)分光光度計 (ThermoSpectronic))において測定される、漸増濃度の抗原の存在下でのPBS、pH7.2中20nMの抗抗原抗体(Fab形態)の25℃での蛍光発光強度(励起=295nm;発光=340nm、バンドパス16nm)の増加または減少を測定する蛍光消光技術を用いて決定され得る。
2.抗体断片
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、抗体断片である。抗体断片は、これらに限定されるものではないが、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2、Fv、および scFv断片、ならびに、後述する他の断片を含む。特定の抗体断片についての総説として、Hudson et al. Nat. Med. 9:129-134 (2003) を参照のこと。scFv断片の総説として、例えば、Pluckthun, in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., (Springer-Verlag, New York), pp.269-315 (1994);加えて、WO1993/16185;ならびに米国特許第5,571,894号および第5,587,458号を参照のこと。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含みインビボ (in vivo) における半減期の長くなったFabおよびF(ab')2断片についての論説として、米国特許第5,869,046号を参照のこと。
ダイアボディは、二価または二重特異的であってよい、抗原結合部位を2つ伴う抗体断片である。例えば、EP404,097号; WO1993/01161; Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003); Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448 (1993) 参照。トリアボディ (triabody) やテトラボディ (tetrabody) も、Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003) に記載されている。
シングルドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインのすべてもしくは一部分、または軽鎖可変ドメインのすべてもしくは一部分を含む、抗体断片である。特定の態様において、シングルドメイン抗体は、ヒトシングルドメイン抗体である(Domantis, Inc., Waltham, MA;例えば、米国特許第6,248,516号B1参照)。
抗体断片は、これらに限定されるものではないが、本明細書に記載の、完全抗体のタンパク質分解的消化、組み換え宿主細胞(例えば、大腸菌 (E. coli) またはファージ)による産生を含む、種々の手法により作ることができる。
3.キメラおよびヒト化抗体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、キメラ抗体である。特定のキメラ抗体が、例えば、米国特許第4,816,567号;および、Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984) に記載されている。一例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはサルなどの非ヒト霊長類に由来する可変領域)およびヒト定常領域を含む。さらなる例において、キメラ抗体は、親抗体のものからクラスまたはサブクラスが変更された「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合断片も含む。
特定の態様において、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、親非ヒト抗体の特異性およびアフィニティを維持したままでヒトへの免疫原性を減少させるために、ヒト化される。通常、ヒト化抗体は1つまたは複数の可変ドメインを含み、当該可変ドメイン中、HVR(例えばCDR(またはその部分))は非ヒト抗体に由来し、FR(またはその部分)はヒト抗体配列に由来する。ヒト化抗体は、任意で、ヒト定常領域の少なくとも一部分を含む。いくつかの態様において、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、例えば、抗体の特異性またはアフィニティを回復または改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基の由来となった抗体)からの対応する残基で置換されている。
ヒト化抗体およびその作製方法は、Almagro, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008)において総説されており、また、例えば、Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988); Queen et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 86:10029-10033 (1989); 米国特許第5,821,337号、第7,527,791号、第6,982,321号、および第7,087,409号;Kashmiri et al., Methods 36:25-34 (2005)(特異性決定領域 (specificity determining region: SDR) グラフティングを記載);Padlan, Mol. Immunol. 28:489-498 (1991) (リサーフェイシングを記載); Dall'Acqua et al., Methods 36:43-60 (2005) (FRシャッフリングを記載);ならびに、Osbourn et al., Methods 36:61-68 (2005) およびKlimka et al., Br. J. Cancer, 83:252-260 (2000) (FRシャッフリングのための「ガイドセレクション」アプローチを記載)において、さらに記載されている。
ヒト化に使われ得るヒトフレームワーク領域は、これらに限定されるものではないが:「ベストフィット」法(Sims et al. J. Immunol. 151:2296 (1993) 参照)を用いて選択されたフレームワーク領域;軽鎖または重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(Carter et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4285 (1992) および Presta et al. J. Immunol. 151:2623 (1993) 参照);ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞系フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008) 参照);および、FRライブラリのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(Baca et al., J. Biol. Chem. 272:10678-10684 (1997) および Rosok et al., J. Biol. Chem. 271:22611-22618 (1996) 参照)を含む。
4.ヒト抗体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野において知られる種々の手法によって製造され得る。ヒト抗体は、van Dijk and van de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol. 5: 368-374 (2001) および Lonberg, Curr. Opin. Immunol. 20:450-459 (2008) に、概説されている。
ヒト抗体は、抗原チャレンジ(負荷)に応答して完全ヒト抗体またはヒト可変領域を伴う完全抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物へ免疫原を投与することにより、調製されてもよい。そのような動物は、典型的にはヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部もしくは一部分を含み、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部もしくは一部分は、内因性の免疫グロブリン遺伝子座を置き換えるか、または、染色体外にもしくは当該動物の染色体内にランダムに取り込まれた状態で存在する。そのようなトランスジェニックマウスにおいて、内因性の免疫グロブリン遺伝子座は、通常不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得る方法の総説として、Lonberg, Nat. Biotech. 23:1117-1125 (2005) を参照のこと。また、例えば、XENOMOUSE(商標)技術を記載した米国特許第6,075,181号および第6,150,584号;HUMAB(登録商標)技術を記載した米国特許第5,770,429号;K-M MOUSE(登録商標)技術を記載した米国特許第7,041,870号;ならびに、VELOCIMOUSE(登録商標)技術を記載した米国特許出願公開第2007/0061900号を、併せて参照のこと。このような動物によって生成された完全抗体からのヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせるなどして、さらに修飾されてもよい。
ヒト抗体は、ハイブリドーマに基づいた方法でも作ることができる。ヒトモノクローナル抗体の製造のための、ヒトミエローマおよびマウス‐ヒトヘテロミエローマ細胞株は、既に記述されている。(例えば、Kozbor J. Immunol., 133: 3001 (1984);Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp.51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987);およびBoerner et al., J. Immunol. 147: 86 (1991) 参照。)ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されたヒト抗体も、Li et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103:3557-3562 (2006) に述べられている。追加的な方法としては、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の製造を記載)、および、Ni, Xiandai Mianyixue, 26(4):265-268 (2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマを記載)に記載されたものを含む。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)も、Vollmers and Brandlein, Histology and Histopathology, 20(3):927-937 (2005) およびVollmers and Brandlein, Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology, 27(3):185-191 (2005)に記載されている。
ヒト抗体は、ヒト由来ファージディスプレイライブラリから選択されたFvクローン可変ドメイン配列を単離することでも生成できる。このような可変ドメイン配列は、次に所望のヒト定常ドメインと組み合わせることができる。抗体ライブラリからヒト抗体を選択する手法を、以下に述べる。
5.ライブラリ由来抗体
本発明の抗体は、所望の1つまたは複数の活性を伴う抗体についてコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることによって単離してもよい。例えば、ファージディスプレイライブラリの生成や、所望の結合特性を備える抗体についてそのようなライブラリをスクリーニングするための、様々な方法が当該技術分野において知られている。そのような方法は、Hoogenboom et al. in Methods in Molecular Biology 178:1-37 (2000); O'Brien et al., ed., Human Press, Totowa, NJ, 2001) において総説されており、さらに例えば、McCafferty et al., Nature 348:552-554;Clackson et al., Nature 352: 624-628 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol. 222: 581-597 (1992); Marks and Bradbury, in Methods in Molecular Biology 248:161-175 (Lo, ed., Human Press, Totowa, NJ, 2003); Sidhu et al., J. Mol. Biol. 338(2): 299-310 (2004); Lee et al., J. Mol. Biol. 340(5): 1073-1093 (2004); Fellouse, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101(34):12467-12472 (2004);およびLee et al., J. Immunol. Methods 284(1-2): 119-132(2004) に記載されている。
特定のファージディスプレイ法において、VHおよびVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応 (polymerase chain reaction: PCR) により別々にクローニングされ、無作為にファージライブラリ中で再結合され、当該ファージライブラリは、Winter et al., Ann. Rev. Immunol. 12: 433-455 (1994) に述べられているようにして、抗原結合ファージについてスクリーニングされ得る。ファージは、典型的には、単鎖Fv (scFv) 断片としてまたはFab断片としてのいずれかで、抗体断片を提示する。免疫化された供給源からのライブラリは、ハイブリドーマを構築することを要さずに、免疫源に対する高アフィニティ抗体を提供する。あるいは、Griffiths et al., EMBO J, 12: 725-734 (1993) に記載されるように、ナイーブレパートリーを(例えば、ヒトから)クローニングして、免疫化することなしに、広範な非自己および自己抗原への抗体の単一の供給源を提供することもできる。最後に、ナイーブライブラリは、Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227: 381-388 (1992) に記載されるように、幹細胞から再編成前のV-遺伝子セグメントをクローニングし、超可変CDR3領域をコードしかつインビトロ (in vitro) で再構成を達成するための無作為配列を含んだPCRプライマーを用いることにより、合成的に作ることもできる。ヒト抗体ファージライブラリを記載した特許文献は、例えば:米国特許第5,750,373号、ならびに、米国特許出願公開第2005/0079574号、2005/0119455号、第2005/0266000号、第2007/0117126号、第2007/0160598号、第2007/0237764号、第2007/0292936号、および第2009/0002360号を含む。
ヒト抗体ライブラリから単離された抗体または抗体断片は、本明細書ではヒト抗体またはヒト抗体断片と見なす。
6.多重特異性抗体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に結合特異性を有する、モノクローナル抗体である。特定の態様において、結合特異性の1つは、ミオスタチンに対するものであり、もう1つは他の任意の抗原へのものである。特定の態様において、二重特異性抗体は、ミオスタチンの異なった2つのエピトープに結合してもよい。二重特異性抗体は、ミオスタチンを発現する細胞に細胞傷害剤を局在化するために使用されてもよい。二重特異性抗体は、全長抗体としてまたは抗体断片として調製され得る。
多重特異性抗体を作製するための手法は、これらに限定されるものではないが、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖ペアの組み換え共発現(Milstein and Cuello, Nature 305: 537 (1983)、WO 1993/08829、およびTraunecker et al., EMBO J. 10: 3655 (1991) 参照)、およびknob-in-hole技術(例えば、米国特許第5,731,168号参照)を含む。多重特異性抗体は、Fcヘテロ二量体分子を作製するために静電ステアリング効果 (electrostatic steering effects) を操作すること (WO 2009/089004A1);2つ以上の抗体または断片を架橋すること(米国特許第4,676,980号およびBrennan et al., Science, 229: 81 (1985)参照);ロイシンジッパーを用いて2つの特異性を有する抗体を作成すること(Kostelny et al., J. Immunol. 148(5):1547-1553 (1992) 参照);「ダイアボディ」技術を用いて二重特異性抗体断片を作製すること(Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448 (1993) 参照);および、単鎖Fv (sFv) 二量体を用いること(Gruber et al., J. Immunol. 152:5368 (1994) 参照);および、例えばTutt et al., J. Immunol. 147: 60 (1991) に記載されるように三重特異性抗体を調製すること、によって作製してもよい。
「オクトパス抗体」を含む、3つ以上の機能的抗原結合部位を伴う改変抗体も、本明細書では含まれる(例えば、米国特許出願公開第2006/0025576号A1参照)。
本明細書で抗体または断片は、ミオスタチンと別の異なる抗原とに結合する1つの抗原結合部位を含む、「デュアルアクティングFab」または「DAF」も含む(例えば、米国特許出願公開第2008/0069820号参照)。
7.抗体変異体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体のアミノ酸配列変異体も、考慮の内である。例えば、抗体の結合アフィニティおよび/または他の生物学的特性を改善することが、望ましいこともある。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入すること、または、ペプチド合成によって、調製されてもよい。そのような修飾は、例えば、抗体のアミノ酸配列からの欠失、および/または抗体のアミノ酸配列中への挿入、および/または抗体のアミノ酸配列中の残基の置換を含む。最終構築物が所望の特徴(例えば、抗原結合性)を備えることを前提に、欠失、挿入、および置換の任意の組合せが、最終構築物に至るために行われ得る。
a.置換、挿入、および欠失変異体
特定の態様において、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する抗体変異体が提供される。置換的変異導入の目的部位は、HVRおよびFRを含む。保存的置換を、表1の「好ましい置換」の見出しの下に示す。より実質的な変更を、表1の「例示的な置換」の見出しの下に提供するとともに、アミノ酸側鎖のクラスに言及しつつ下で詳述する。アミノ酸置換は目的の抗体に導入されてもよく、産物は、例えば、保持/改善された抗原結合性、減少した免疫原性、または改善したADCCまたはCDCなどの、所望の活性についてスクリーニングされてもよい。
[表1]
アミノ酸は、共通の側鎖特性によって群に分けることができる:
(1) 疎水性:ノルロイシン、メチオニン (Met)、アラニン (Ala)、バリン (Val)、ロイシン (Leu)、イソロイシン (Ile);
(2) 中性の親水性:システイン (Cys)、セリン (Ser)、トレオニン (Thr)、アスパラギン (Asn)、グルタミン (Gln);
(3) 酸性:アスパラギン酸 (Asp)、グルタミン酸 (Glu);
(4) 塩基性:ヒスチジン (His)、リジン (Lys)、アルギニン (Arg);
(5) 鎖配向に影響する残基:グリシン (Gly)、プロリン (Pro);および
(6) 芳香族性:トリプトファン (Trp)、チロシン (Tyr)、フェニルアラニン (Phe)。
非保存的置換は、これらの群の1つのメンバーを、別の群のメンバーに交換することをいう。
置換変異体の1つのタイプは、親抗体(例えば、ヒト化またはヒト抗体)の1つまたは複数の超可変領域残基の置換を含む。通常、その結果として生じ、さらなる研究のために選ばれた変異体は、親抗体と比較して特定の生物学的特性における修飾(例えば、改善)(例えば、増加したアフィニティ、減少した免疫原性)を有する、および/または親抗体の特定の生物学的特性を実質的に保持しているであろう。例示的な置換変異体は、アフィニティ成熟抗体であり、これは、例えばファージディスプレイベースのアフィニティ成熟技術(例えば本明細書に記載されるもの)を用いて適宜作製され得る。簡潔に説明すると、1つまたは複数のHVR残基を変異させ、そして変異抗体をファージ上に提示させ、特定の生物学的活性(例えば、結合アフィニティ)に関してスクリーニングを行う。
改変(例えば、置換)は、例えば抗体のアフィニティを改善するために、HVRにおいて行われ得る。そのような改変は、HVRの「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセスの間に高頻度で変異が起こるコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury, Methods Mol. Biol. 207:179-196 (2008) を参照のこと)および/または抗原に接触する残基において行われ得、得られた変異VHまたはVLが結合アフィニティに関して試験され得る。二次ライブラリからの構築および再選択によるアフィニティ成熟が、例えば、Hoogenboom et al. in Methods in Molecular Biology 178:1-37 (O'Brien et al., ed., Human Press, Totowa, NJ, (2001)) に記載されている。アフィニティ成熟のいくつかの態様において、多様性は、任意の様々な方法(例えば、エラープローンPCR、チェーンシャッフリングまたはオリゴヌクレオチド指向変異導入)によって成熟のために選択された可変遺伝子に導入される。次いで、二次ライブラリが作製される。次いで、このライブラリは、所望のアフィニティを有する任意の抗体変異体を同定するためにスクリーニングされる。多様性を導入する別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6残基)を無作為化するHVR指向アプローチを含む。抗原結合に関与するHVR残基は、例えばアラニンスキャニング変異導入またはモデリングを用いて、具体的に特定され得る。特に、CDR-H3およびCDR-L3がしばしば標的化される。
特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、そのような改変が抗原に結合する抗体の能力を実質的に減少させない限り、1つまたは複数のHVR内で行われ得る。例えば、結合アフィニティを実質的に減少させない保存的改変(例えば、本明細書で提供されるような保存的置換)が、HVRにおいて行われ得る。そのような改変は、例えば、HVRの抗原接触残基の外側であり得る。上記の変異VHおよびVL配列の特定の態様において、各HVRは改変されていないか、わずか1つ、2つ、もしくは3つのアミノ酸置換を含む。
変異導入のために標的化され得る抗体の残基または領域を同定するのに有用な方法は、Cunningham and Wells, (1989) Science, 244:1081-1085によって記載される、「アラニンスキャニング変異導入」と呼ばれるものである。この方法において、一残基または一群の標的残基(例えば、荷電残基、例えばアルギニン、アスパラギン酸、ヒスチジン、リジン、およびグルタミン酸)が同定され、中性または負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニンもしくはポリアラニン)で置き換えられ、抗体と抗原の相互作用が影響を受けるかどうかが決定される。この初期置換に対して機能的感受性を示したアミノ酸位置に、さらなる置換が導入され得る。あるいはまたは加えて、抗体と抗原の間の接触点を同定するために、抗原抗体複合体の結晶構造を解析してもよい。そのような接触残基および近隣の残基を、置換候補として標的化してもよく、または置換候補から除外してもよい。変異体は、それらが所望の特性を含むかどうかを決定するためにスクリーニングされ得る。
アミノ酸配列の挿入は、配列内部への単一または複数のアミノ酸残基の挿入と同様、アミノ末端および/またはカルボキシル末端における1残基から100残基以上を含むポリペプチドの長さの範囲での融合も含む。末端の挿入の例は、N末端にメチオニル残基を伴う抗体を含む。抗体分子の他の挿入変異体は、酵素(例えば、ADEPTのための)または抗体の血中半減期を増加させるポリペプチドを、抗体のN-またはC-末端に融合させたものを含む。
b.グリコシル化変異体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加させるまたは減少させるように改変されている。抗体へのグリコシル化部位の追加または削除は、1つまたは複数のグリコシル化部位を作り出すまたは取り除くようにアミノ酸配列を改変することにより、簡便に達成可能である。
抗体がFc領域を含む場合、そこに付加される炭水化物が改変されてもよい。哺乳動物細胞によって産生される天然型抗体は、典型的には、枝分かれした二分岐のオリゴ糖を含み、当該オリゴ糖は通常Fc領域のCH2ドメインのAsn297にN-リンケージによって付加されている。例えば、Wright et al., TIBTECH 15:26-32 (1997) 参照。オリゴ糖は、例えば、マンノース、N‐アセチルグルコサミン (GlcNAc)、ガラクトース、およびシアル酸などの種々の炭水化物、また、二分岐のオリゴ糖構造の「幹」中のGlcNAcに付加されたフコースを含む。いくつかの態様において、本発明の抗体中のオリゴ糖の修飾は、特定の改善された特性を伴う抗体変異体を作り出すために行われてもよい。
一態様において、Fc領域に(直接的または間接的に)付加されたフコースを欠く炭水化物構造体を有する抗体変異体が提供される。例えば、そのような抗体におけるフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%または20%~40%であり得る。フコースの量は、例えばWO 2008/077546に記載されるようにMALDI-TOF質量分析によって測定される、Asn297に付加されたすべての糖構造体(例えば、複合、ハイブリッド、および高マンノース構造体)の和に対する、Asn297における糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定される。Asn297は、Fc領域の297位のあたりに位置するアスパラギン残基を表す(Fc領域残基のEUナンバリング)。しかし、複数の抗体間のわずかな配列の多様性に起因して、Asn297は、297位の±3アミノ酸上流または下流、すなわち294位~300位の間に位置することもあり得る。そのようなフコシル化変異体は、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号 (Presta, L.) ;第2004/0093621号 (Kyowa Hakko Kogyo Co., Ltd) を参照のこと。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体変異体に関する刊行物の例は、US 2003/0157108; WO 2000/61739; WO 2001/29246; US 2003/0115614; US 2002/0164328; US 2004/0093621; US 2004/0132140; US 2004/0110704; US 2004/0110282; US 2004/0109865; WO 2003/085119; WO 2003/084570; WO 2005/035586; WO 2005/035778; WO 2005/053742; WO 2002/031140; Okazaki et al., J. Mol. Biol. 336:1239-1249 (2004); Yamane-Ohnuki et al., Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004) を含む。脱フコシル化抗体を産生することができる細胞株の例は、タンパク質のフコシル化を欠くLec13 CHO細胞(Ripka et al. Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545 (1986);米国特許出願公開第US 2003/0157108号A1、Presta, L;およびWO 2004/056312、Adams et al.、特に実施例11)およびノックアウト細胞株、例えばアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子FUT8ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004);Kanda et al., Biotechnol. Bioeng. 94(4):680-688 (2006);およびWO 2003/085107を参照のこと)を含む。
例えば抗体のFc領域に付加された二分枝型オリゴ糖がGlcNAcによって二分されている、二分されたオリゴ糖を有する抗体変異体がさらに提供される。そのような抗体変異体は、減少したフコシル化および/または改善されたADCC機能を有し得る。そのような抗体変異体の例は、例えば、WO2003/011878 (Jean-Mairet et al.) ;米国特許第6,602,684号 (Umana et al.);およびUS2005/0123546 (Umana et al.) に記載されている。Fc領域に付加されたオリゴ糖中に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体変異体も提供される。そのような抗体変異体は、改善されたCDC機能を有し得る。そのような抗体変異体は、例えば、WO1997/30087 (Patel et al.);WO1998/58964 (Raju, S.); およびWO1999/22764 (Raju, S.) に記載されている。
c.Fc領域変異体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体のFc領域に1つまたは複数のアミノ酸修飾を導入して、それによりFc領域変異体を生成してもよい。Fc領域変異体は、1つまたは複数のアミノ酸位置のところでアミノ酸修飾(例えば、置換)を含む、ヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のFc領域)を含んでもよい。
特定の態様において、すべてではないがいくつかのエフェクター機能を備える抗体変異体も、本発明の考慮の内であり、当該エフェクター機能は、抗体を、そのインビボでの半減期が重要であるが、特定のエフェクター機能(補体およびADCCなど)は不要または有害である場合の適用に望ましい候補とするものである。CDCおよび/またはADCC活性の減少/欠乏を確認するために、インビトロ および/またはインビボ の細胞傷害測定を行うことができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合測定は、抗体がFcγR結合性を欠く(よってADCC活性を欠く蓋然性が高い)一方でFcRn結合能を維持することを確かめるために行われ得る。ADCCを媒介するプライマリ細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現するが、一方単球はFcγRI、FcγRII、FcγRIIIを発現する。造血細胞上のFcRの発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9:457-492 (1991) の第464頁のTable 3にまとめられている。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロ測定法(アッセイ)の非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、 Hellstrom, et al. Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 83:7059-7063 (1986) 参照)および Hellstrom, I et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 82:1499-1502 (1985);米国特許第5,821,337号(Bruggemann, et al., J. Exp. Med. 166:1351-1361 (1987) 参照)に記載されている。あるいは、非放射性の測定法を用いてもよい(例えば、ACTI(商標)non-radioactive cytotoxicity assay for flow cytometry (CellTechnology, Inc. Mountain View, CA);および、CytoTox 96(登録商標)non-radioactive cytotoxicity assays 法 (Promega, Madison, WI) 参照)。このような測定法に有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞 (peripheral blood mononuclear cell: PBMC) およびナチュラルキラー (natural killer: NK) 細胞を含む。あるいはまたは加えて、目的の分子のADCC活性は、例えば、Clynes et al. Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 95:652-656 (1998) に記載されるような動物モデルにおいて、インビボで評価されてもよい。また、抗体がC1qに結合できないこと、よってCDC活性を欠くことを確認するために、C1q結合測定を行ってもよい。例えば、WO2006/029879 および WO2005/100402のC1qおよびC3c結合ELISAを参照のこと。また、補体活性化を評価するために、CDC測定を行ってもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996);Cragg, et al., Blood 101:1045-1052 (2003);およびCragg, Blood 103:2738-2743 (2004) 参照)。さらに、FcRn結合性およびインビボでのクリアランス/半減期の決定も、当該技術分野において知られた方法を用いて行い得る(例えばPetkova, et al., Int'l. Immunol. 18(12):1759-1769 (2006) 参照)。
減少したエフェクター機能を伴う抗体は、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、および329の1つまたは複数の置換を伴うものを含む(米国特許第6,737,056号)。このようなFc変異体は、残基265および297のアラニンへの置換を伴ういわゆる「DANA」Fc変異体(米国特許第7,332,581号)を含む、アミノ酸位置265、269、270、297、および327の2つ以上の置換を伴うFc変異体を含む。
FcRsへの改善または減弱した結合性を伴う特定の抗体変異体が、記述されている。(米国特許第6,737,056号;WO2004/056312、およびShields et al., J. Biol. Chem. 9(2): 6591-6604 (2001) を参照のこと。)
特定の態様において、抗体変異体は、ADCCを改善する1つまたは複数のアミノ酸置換(例えば、Fc領域の位置298、333、および/または334(EUナンバリングでの残基)のところでの置換)を伴うFc領域を含む。
いくつかの態様において、例えば米国特許第6,194,551号、WO 1999/51642、およびIdusogie et al. J. Immunol. 164: 4178-4184 (2000) に記載されるように、改変された(つまり、改善したか減弱したかのいずれかである)C1q結合性および/または補体依存性細胞傷害 (CDC) をもたらす改変が、Fc領域においてなされる。
増加した半減期、および新生児型Fc受容体(FcRn:母体のIgG類を胎児に移行させる役割を負う(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976) and Kim et al., J. Immunol. 24:249 (1994)))に対する改善した結合性を伴う抗体が、米国特許出願公開第2005/0014934号A1(Hinton et al.) に記載されている。これらの抗体は、Fc領域のFcRnへの結合性を改善する1つまたは複数の置換をその中に伴うFc領域を含む。このようなFc変異体は、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434の1つまたは複数のところでの置換(例えば、Fc領域残基434の置換(米国特許第7,371,826号))を伴うものを含む。Fc領域変異体の他の例については、Duncan, Nature 322:738-40 (1988);米国特許第5,648,260号および米国特許第5,624,821号;およびWO 1994/29351も参照のこと。
d.システイン改変抗体変異体
特定の態様において、抗体の1つまたは複数の残基がシステイン残基で置換された、システイン改変抗体(例えば、「thioMAbs」)を作り出すことが望ましいだろう。特定の態様において、置換を受ける残基は、抗体の、アクセス可能な部位に生じる。それらの残基をシステインで置換することによって、反応性のチオール基が抗体のアクセス可能な部位に配置され、当該反応性のチオール基は、当該抗体を他の部分(薬剤部分またはリンカー‐薬剤部分など)にコンジュゲートして本明細書でさらに詳述するようにイムノコンジュゲートを作り出すのに使用されてもよい。特定の態様において、以下の残基の任意の1つまたは複数が、システインに置換されてよい:軽鎖のV205(Kabatナンバリング);重鎖のA118(EUナンバリング);および重鎖Fc領域のS400(EUナンバリング)。システイン改変抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されるようにして生成されてもよい。
e.抗体誘導体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、当該技術分野において知られておりかつ容易に入手可能な追加の非タンパク質部分を含むように、さらに修飾されてもよい。抗体の誘導体化に好適な部分は、これに限定されるものではないが、水溶性ポリマーを含む。水溶性ポリマーの非限定的な例は、これらに限定されるものではないが、ポリエチレングリコール (PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ1,3ジオキソラン、ポリ1,3,6,トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれでも)、および、デキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール類(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール、および、これらの混合物を含む。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、その水に対する安定性のために、製造において有利であるだろう。ポリマーは、いかなる分子量でもよく、枝分かれしていてもしていなくてもよい。抗体に付加されるポリマーの数には幅があってよく、1つ以上のポリマーが付加されるならそれらは同じ分子であってもよいし、異なる分子であってもよい。一般的に、誘導体化に使用されるポリマーの数および/またはタイプは、これらに限定されるものではないが、改善されるべき抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が規定の条件下での療法に使用されるか否か、などへの考慮に基づいて、決定することができる。
別の態様において、抗体と、放射線に曝露することにより選択的に熱せられ得る非タンパク質部分との、コンジュゲートが提供される。一態様において、非タンパク質部分は、カーボンナノチューブである(Kam et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102: 11600-11605 (2005))。放射線はいかなる波長でもよく、またこれらに限定されるものではないが、通常の細胞には害を与えないが抗体‐非タンパク質部分に近接した細胞を死滅させる温度まで非タンパク質部分を熱するような波長を含む。
8. 変異Fc領域
一局面において、本発明は、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含む単離されたポリペプチドを提供する。いくつかの局面において、ポリペプチドは抗体である。いくつかの局面において、ポリペプチドはFc融合タンパク質である。特定の態様において、変異Fc領域は、天然型配列または参照変異体配列(本明細書においては「親」Fc領域と総称することがある)のFc領域における対応配列と比較して、少なくとも1つのアミノ酸残基改変(例えば置換)を含む。特定の態様において、本発明の変異Fc領域は、親Fc領域と比較して、サルFcγRIIbに対する増強した結合活性を有する。特定の態様において、サルFcγRIIbはカニクイザルFcγRIIb(配列番号:223)である。
特定の態様において、[サルFcγRIIbに対する親Fc領域のKD値]/[サルFcγRIIbに対する変異Fc領域のKD値]の比率は2.0以上、3.0以上、4.0以上、5.0以上、6.0以上、7.0以上、8.0以上、9.0以上、10以上、15以上、20以上、25以上、30以上、40以上、または50以上であり得る。さらなる態様において、変異Fc領域は、サルFcγRIIIaに対する低下した結合活性を有する。特定の態様において、[サルFcγRIIIaに対する親Fc領域のKD値]/[サルFcγRIIIaに対する変異Fc領域のKD値]の比率は0.50以下、0.40以下、0.30以下、0.20以下、0.10以下、0.09以下、0.08以下、0.07以下、0.06以下、0.05以下、0.04以下、0.03以下、0.02以下、または0.01以下であり得る。特定の態様において、サルFcγRIIbは配列番号:223(カニクイザル)の配列を有する。特定の態様において、サルFcγRIIIaは配列番号:224(カニクイザル)の配列を有する。
さらなる態様において、変異Fc領域は、ヒトFcγRIIbに対する増強した結合活性を有する。特定の態様において、[ヒトFcγRIIbに対する親Fc領域のKD値]/[ヒトFcγRIIbに対する変異Fc領域のKD値]の比率は2.0以上、3.0以上、4.0以上、5.0以上、6.0以上、7.0以上、8.0以上、9.0以上、10以上、15以上、20以上、25以上、30以上、40以上、または50以上であり得る。さらなる態様において、変異Fc領域は、ヒトFcγRIIIaに対する低下した結合活性を有する。特定の態様において、[ヒトFcγRIIIaに対する親Fc領域のKD値]/[ヒトFcγRIIIaに対する変異Fc領域のKD値]の比率は0.50以下、0.40以下、0.30以下、0.20以下、0.10以下、0.09以下、0.08以下、0.07以下、0.06以下、0.05以下、0.04以下、0.03以下、0.02以下、または0.01以下であり得る。特定の態様において、ヒトFcγRIIbは配列番号:212、213、または214の配列を有する。特定の態様において、ヒトFcγRIIIaは配列番号:215、216、217、または218の配列を有する。
さらなる態様において、変異Fc領域は、ヒトFcγRIIa(H型)に対して、ヒトFcγRIIbに対するよりも低下した結合活性を有する。特定の態様において、[ヒトFcγRIIa(H型)に対する親Fc領域のKD値]/[ヒトFcγRIIa(H型)に対する変異Fc領域のKD値]の比率は5.0以下、4.0以下、3.0以下、2.0以下、1.0以下、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.2以下、または0.1以下であり得る。さらなる態様において、変異Fc領域は、ヒトFcγRIIa(R型)に対して、ヒトFcγRIIbに対するよりも低下した結合活性を有する。特定の態様において、[ヒトFcγRIIa(R型)に対する親Fc領域のKD値]/[ヒトFcγRIIa(R型)に対する変異Fc領域のKD値]の比率は5.0以下、4.0以下、3.0以下、2.0以下、1.0以下、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.2以下、または0.1以下であり得る。特定の態様において、ヒトFcγRIIa(H型)は配列番号:211の配列を有する。特定の態様において、ヒトFcγRIIa(R型)は配列番号:210の配列を有する。
特定の態様において、[サルFcγRIIaに対する親Fc領域のKD値]/[サルFcγRIIaに対する変異Fc領域のKD値]の比率は2.0以上、3.0以上、4.0以上、5.0以上、6.0以上、7.0以上、8.0以上、9.0以上、10以上、15以上、20以上、25以上、30以上、40以上、または50以上であり得る。特定の態様において、サルFcγRIIaは、サルFcγRIIa1(例えばカニクイザルFcγRIIa1(配列番号:220))、サルFcγRIIa2(例えばカニクイザルFcγRIIa2(配列番号:221))、およびサルFcγRIIa3(例えばカニクイザルFcγRIIa3(配列番号:222)より選択される。
別の態様において、サルFcγRIIbに対する変異Fc領域のKD値は、1.0×10-6 M以下、9.0×10-7 M以下、8.0×10-7 M以下、7.0×10-7 M以下、6.0×10-7 M以下、5.0×10-7 M以下、4.0×10-7 M以下、3.0×10-7 M以下、2.0×10-7 M以下、または1.0×10-7 M以下であり得る。別の態様において、サルFcγRIIIaに対する変異Fc領域のKD値は、5.0×10-7 M以上、6.0×10-7 M以上、7.0×10-7 M以上、8.0×10-7 M以上、9.0×10-7 M以上、1.0×10-6 M以上、2.0×10-6 M以上、3.0×10-6 M以上、4.0×10-6 M以上、5.0×10-6 M以上、6.0×10-6 M以上、7.0×10-6 M以上、8.0×10-6 M以上、9.0×10-6 M以上、または1.0×10-5 M以上であり得る。別の態様において、ヒトFcγRIIbに対する変異Fc領域のKD値は、2.0×10-6 M以下、1.0×10-6 M以下、9.0×10-7 M以下、8.0×10-7 M以下、7.0×10-7 M以下、6.0×10-7 M以下、5.0×10-7 M以下、4.0×10-7 M以下、3.0×10-7 M以下、2.0×10-7 M以下、または1.0×10-7 M以下であり得る。別の態様において、ヒトFcγRIIIaに対する変異Fc領域のKD値は、1.0×10-6 M以上、2.0×10-6 M以上、3.0×10-6 M以上、4.0×10-6 M以上、5.0×10-6 M以上、6.0×10-6 M以上、7.0×10-6 M以上、8.0×10-6 M以上、9.0×10-6 M以上、1.0×10-5 M以上、2.0×10-5 M以上、3.0×10-5 M以上、4.0×10-5 M以上、または5.0×10-5 M以上であり得る。別の態様において、ヒトFcγRIIa(H型)に対する変異Fc領域のKD値は、1.0×10-7 M以上、2.0×10-7 M以上、3.0×10-7 M以上、4.0×10-7 M以上、5.0×10-7 M以上、6.0×10-7 M以上、7.0×10-7 M以上、8.0×10-7 M以上、9.0×10-7 M以上、1.0×10-6 M以上、2.0×10-6 M以上、3.0×10-6 M以上、4.0×10-6 M以上、または5.0×10-6 M以上であり得る。別の態様において、ヒトFcγRIIa(R型)に対する変異Fc領域のKD値は、2.0×10-7 M以上、3.0×10-7 M以上、4.0×10-7 M以上、5.0×10-7 M以上、6.0×10-7 M以上、7.0×10-7 M以上、8.0×10-7 M以上、9.0×10-7 M以上、1.0×10-6 M以上、2.0×10-6 M以上、3.0×10-6 M以上、4.0×10-6 M以上または5.0×10-6 M以上であり得る。
別の態様において、サルFcγRIIaに対する変異Fc領域のKD値は、1.0×10-6 M以下、9.0×10-7 M以下、8.0×10-7 M以下、7.0×10-7 M以下、6.0×10-7 M以下、5.0×10-7 M以下、4.0×10-7 M以下、3.0×10-7 M以下、2.0×10-7 M以下、または1.0×10-7 M以下であり得る。特定の態様において、サルFcγRIIaは、サルFcγRIIa1、サルFcγRIIa2、およびサルFcγRIIa3のいずれか1つより選択されうる。
ヒト疾患の治療用の薬学的製品を開発する場合、サルにおけるその効果および安全性の評価は、それらが生物学的にヒトに近いため重要である。そのような観点から、開発される薬学的製品は、標的結合活性におけるヒトとサルの両方に対する交差反応性を有することが好ましい。
「Fcγ受容体」(本明細書において、Fcγ受容体、FcγR、またはFcgRと称する)とは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4モノクローナル抗体のFc領域に結合し得る受容体を指し、Fcγ受容体遺伝子にコードされるタンパク質ファミリーの任意のメンバーを事実上意味する。ヒトでは、このファミリーには、アイソフォームFcγRIa、FcγRIb、およびFcγRIcを含むFcγRI(CD64);アイソフォームFcγRIIa(アロタイプH131(H型)とR131(R型)を含む)、FcγRIIb(FcγRIIb-1とFcγRIIb-2を含む)、およびFcγRIIcを含むFcγRII(CD32);ならびに、アイソフォームFcγRIIIa(アロタイプV158とF158を含む)およびFcγRIIIb(アロタイプFcγRIIIb-NA1とFcγRIIIb-NA2を含む)を含むFcγRIII(CD16)、さらに、未発見のあらゆるヒトFcγR、FcγRアイソフォームまたはアロタイプが含まれるが、これらに限定されるわけではない。FcγRIIb1およびFcγRIIb2は、ヒトFcγRIIbのスプライシング変異体として報告されている。さらに、FcγRIIb3と称するスプライシング変異体が報告されている(J Exp Med, 1989, 170: 1369-1385)。これらのスプライシング変異体に加えて、ヒトFcγRIIbは、NCBIに登録された全てのスプライシング変異体、NP_001002273.1、NP_001002274.1、NP_001002275.1、NP_001177757.1、およびNP_003992.3を含む。さらに、ヒトFcγRIIbは、FcγRIIbに加えて、過去に報告された全ての遺伝的多型(Arthritis Rheum. 48:3242-3252(2003);Kono et al., Hum. Mol. Genet. 14:2881-2892(2005);およびKyogoju et al., Arthritis Rheum. 46:1242-1254(2002))と、将来報告されるであろう全ての遺伝的多型とを含む。
FcγRIIaには2つのアロタイプが存在し、一方は、FcγRIIaの位置131のアミノ酸がヒスチジンであり(H型)、他方は、位置131のアミノ酸がアルギニンで置換されている(R型)(Warrmerdam, J. Exp. Med. 172:19-25(1990))。
FcγRは、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、およびサル由来のFcγRを含むが、これらに限定されるわけではなく、任意の生物体に由来してよい。マウスFcγRは、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、FcγRIII(CD16)、およびFcγRIII-2(CD16-2)、ならびに、任意のマウスFcγRまたはFcγRアイソフォームを含むが、これらに限定されるわけではない。特記しない限り、「サルFcγR」という用語またはその派生語は、カニクイザルFcγRIIa1(配列番号:220)、FcγRIIa2(配列番号:221)、FcγRIIa3(配列番号:222)、FcγRIIb(配列番号:223)、またはFcγRIIIaS(配列番号:224)を指す。
ヒトFcγRIのポリヌクレオチド配列は配列番号:199(NM_000566.3)に記載され;ヒトFcγRIIaのポリヌクレオチド配列は配列番号:200(BC020823.1)または配列番号:201(NM_001136219.1)に記載され;ヒトFcγRIIbのポリヌクレオチド配列は配列番号:202(BC146678.1)または配列番号:203(NM_004001.3)に記載され;ヒトFcγRIIIaのポリヌクレオチド配列は配列番号:204(BC033678.1)または配列番号:205(NM_001127593.1)に記載され;かつヒトFcγRIIIbのポリヌクレオチド配列は配列番号:206(BC128562.1)に記載されている。
ヒトFcγRIのアミノ酸配列は配列番号:207(NP_000557.1)に記載され;ヒトFcγRIIaのアミノ酸配列は配列番号:208(AAH20823.1)、配列番号:209、配列番号:210、または配列番号:211に記載され;ヒトFcγRIIbのアミノ酸配列は配列番号:212(AAI46679.1)、配列番号:213、または配列番号:214に記載され;ヒトFcγRIIIaのアミノ酸配列は配列番号:215(AAH33678.1)、配列番号:216、配列番号:217、または配列番号:218に記載され;かつヒトFcγRIIIbのアミノ酸配列は配列番号:219(AAI28563.1)に記載されている。
カニクイザルFcγRIIaのアミノ酸配列は配列番号:220(FcγRIIa1)、配列番号:221(FcγRIIa2)、または配列番号:222(FcγRIIa3)に記載され;カニクイザルFcγRIIbのアミノ酸配列は配列番号:223に記載され;カニクイザルFcγRIIIaのアミノ酸配列は配列番号:224に記載されている。
一局面において、本発明は、対応する参照FcγRIIb結合ポリペプチドと比較して増強したFcγRIIb結合活性を有する変異Fc領域を含むポリペプチドを提供する。さらなる局面において、本発明のポリペプチドは、EUナンバリングで表される位置231、232、233、234、235、236、237、238、239、264、266、267、268、271、295、298、325、326、327、328、330、331、332、334、および396からなる群より選択される少なくとも1つの位置の少なくとも1つのアミノ酸改変を含む。特定の態様において、FcγRIIbはカニクイザルFcγRIIb(配列番号:223)の配列を有する。特定の態様において、FcγRIIbはヒトFcγRIIb(例えば配列番号:212、213、または214)の配列を有する。
一局面において、本発明は、EUナンバリングで表される、(a)位置236における1つのアミノ酸改変と、(b)位置231、232、233、234、235、237、238、239、264、266、267、268、271、295、298、325、326、327、328、330、331、332、334、および396からなる群より選択される少なくとも1つの位置の少なくとも1つのアミノ酸改変とを含む少なくとも2つのアミノ酸改変を含む、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを提供する。特定の態様において、FcγRIIbはカニクイザルFcγRIIb(配列番号:223)の配列を有する。特定の態様において、FcγRIIbはヒトFcγRIIb(例えば配列番号:212、213、または214)の配列を有する。
一局面において、本発明は、EUナンバリングで表される位置236におけるアミノ酸改変を含む、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを提供する。
一局面において、本発明は、EUナンバリングで表される、(a)位置236における1つのアミノ酸改変と、(b)位置231、232、235、239、268、295、298、326、330、および396からなる群より選択される少なくとも1つの位置の少なくとも1つのアミノ酸改変とを含む少なくとも2つのアミノ酸改変を含む、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを提供する。さらなる態様において、変異Fc領域は、EUナンバリングで表される、位置231、232、235、239、268、295、298、326、330、および396からなる群より選択される少なくとも1つの位置のアミノ酸改変を含む。さらなる態様において、変異Fc領域は、EUナンバリングで表される、位置268、295、326、および330からなる群より選択される少なくとも1つの位置のアミノ酸改変を含む。特定の態様において、FcγRIIbはカニクイザルFcγRIIb(配列番号:223)の配列を有する。特定の態様において、FcγRIIbはヒトFcγRIIb(例えば配列番号:212、213、または214)の配列を有する。
別の局面において、本発明は、以下(1)~(37)のいずれか1つのアミノ酸改変を含む、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを提供する:EUナンバリングで表される、(1)位置231、236、239、268、および330;(2)位置231、236、239、268、295、および330;(3)位置231、236、268、および330;(4)位置231、236、268、295、および330;(5)位置232、236、239、268、295、および330;(6)位置232、236、268、295、および330;(7)位置232、236、268、および330;(8)位置235、236、268、295、326、および330;(9)位置235、236、268、295、および330;(10)位置235、236、268、および330;(11)位置235、236、268、330、および396;(12)位置235、236、268、および396;(13)位置236、239、268、295、298、および330;(14)位置236、239、268、295、326、および330;(15)位置236、239、268、295、および330;(16)位置236、239、268、298、および330;(17)位置236、239、268、326、および330;(18)位置236、239、268、および330;(19)位置236、239、268、330、および396;(20)位置236、239、268、および396;(21)位置236および268;(22)位置236、268、および295;(23)位置236、268、295、298、および330;(24)位置236、268、295、326、および330;(25)位置236、268、295、326、330、および396;(26)位置236、268、295、および330;(27)位置236、268、295、330、および396;(28)位置236、268、298、および330;(29)位置236、268、298、および396;(30)位置236、268、326、および330;(31)位置236、268、326、330、および396;(32)位置236、268、および330;(33)位置236、268、330、および396;(34)位置236、268、および396;(35)位置236および295;(36)位置236、330、および396;ならびに(37)位置236および396。特定の態様において、FcγRIIbはカニクイザルFcγRIIb(配列番号:223)の配列を有する。特定の態様において、FcγRIIbはヒトFcγRIIb(例えば配列番号:212、213、または214)の配列を有する。
さらなる態様において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域は、以下からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸を含む:EUナンバリングで表される、(a)位置231のAsp、Glu、Phe、Gly、His、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Pro、Gln、Arg、Ser、Thr、Val、Trp、Tyr;(b)位置232のAla、Asp、Glu、Phe、Gly、His、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Gln、Arg、Ser、Thr、Val、Trp、Tyr;(c)位置233のAsp;(d)位置234のTrp、Tyr;(e)位置235のTrp;(f)位置236のAla、Asp、Glu、His、Ile、Leu、Met、Asn、Gln、Ser、Thr、Val;(g)位置237のAsp、Tyr;(h)位置238のGlu、Ile、Met、Gln、Tyr;(i)位置239のIle、Leu、Asn、Pro、Val;(j)位置264のIle;(k)位置266のPhe;(l)位置267のAla、His、Leu;(m)位置268のAsp、Glu;(n)位置271のAsp、Glu、Gly;(o)位置295のLeu;(p)位置298のLeu;(q)位置325のGlu、Phe、Ile、Leu;(r)位置326のThr;(s)位置327のIle、Asn;(t)位置328のThr;(u)位置330のLys、Arg;(v)位置331のGlu;(w)位置332のAsp;(x)位置334のAsp、Ile、Met、Val、Tyr;および(y)位置396のAla、Asp、Glu、Phe、Gly、His、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Gln、Arg、Ser、Thr、Val、Trp、Tyr。特定の態様において、FcγRIIbはカニクイザルFcγRIIb(配列番号:223)の配列を有する。特定の態様において、FcγRIIbはヒトFcγRIIb(例えば配列番号:212、213、または214)の配列を有する。
さらなる態様において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域は、EUナンバリングで表される、(a)位置231のGly、Thr;(b)位置232のAsp;(c)位置235のTrp;(d)位置236のAsn、Thr;(e)位置239のVal;(f)位置268のAsp、Glu;(g)位置295のLeu;(h)位置298のLeu;(i)位置326のThr;(j)位置330のLys、Arg;および(k)位置396のLys、Metからなる群より選択される少なくとも1つであるアミノ酸改変(例えば置換)を含む。さらなる態様において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域は、EUナンバリングで表される、位置236のAsn、位置268のGlu、位置330のLys、および位置396のMetであるアミノ酸改変(例えば置換)を含む。さらなる態様において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域は、EUナンバリングで表される、位置236のAsn、位置268のAsp、および位置330のLysであるアミノ酸改変(例えば置換)を含む。さらなる態様において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域は、EUナンバリングで表される、位置236のAsn、位置268のAsp、位置295のLeu、および位置330のLysであるアミノ酸改変(例えば置換)を含む。さらなる態様において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域は、EUナンバリングで表される、位置236のThr、位置268のAsp、および位置330のLysであるアミノ酸改変(例えば置換)を含む。さらなる態様において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域は、EUナンバリングで表される、位置236のAsn、位置268のAsp、位置295のLeu、位置326のThr、および位置330のLysであるアミノ酸改変(例えば置換)を含む。さらなる態様において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域は、EUナンバリングで表される、位置235のTrp、位置236のAsn、位置268のAsp、位置295のLeu、位置326のThr、および位置330のLysであるアミノ酸改変(例えば置換)を含む。
一局面において、本発明は、EUナンバリングで表される位置238におけるアミノ酸改変を含む、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを提供する。
一局面において、本発明は、EUナンバリングで表される、位置234、238、250、264、267、307、および330からなる群より選択される少なくとも1つの位置の少なくとも1つのアミノ酸改変を含む、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを提供する。さらなる態様において、該ポリペプチドは、EUナンバリングで表される、位置234、250、264、267、307、および330からなる群より選択される少なくとも1つの位置の少なくとも1つのアミノ酸改変を含む。特定の態様において、FcγRIIbはカニクイザルFcγRIIb(配列番号:223)の配列を有する。特定の態様において、FcγRIIbはヒトFcγRIIb(例えば配列番号:212、213、または214)の配列を有する。
別の局面において、本発明は、以下(1)~(9)のいずれか1つのアミノ酸改変を含む、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを提供する:EUナンバリングで表される、(1)位置234、238、250、307、および330;(2)位置234、238、250、264、307、および330;(3)位置234、238、250、264、267、307、および330;(4)位置234、238、250、267、307、および330;(5)位置238、250、264、307、および330;(6)位置238、250、264、267、307、および330;(7)位置238、250、267、307、および330;(8)位置238、250、および307;ならびに(9)位置238、250、307、および330。特定の態様において、FcγRIIbはカニクイザルFcγRIIb(配列番号:223)の配列を有する。特定の態様において、FcγRIIbはヒトFcγRIIb(例えば配列番号:212、213、または214)の配列を有する。
さらなる態様において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域は、EUナンバリングで表される、(a)位置234のTyr;(b)位置238のAsp;(c)位置250のVal;(d)位置264のIle;(e)位置267のAla;(f)位置307のPro;および(g)位置330のLysからなる群より選択される少なくとも1つであるアミノ酸改変(例えば置換)を含む。さらなる態様において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域は、EUナンバリングで表される、位置238のAspであるアミノ酸改変(例えば置換)を含む。さらなる態様において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域は、EUナンバリングで表される、位置238のAsp、位置250のVal、および位置307のProであるアミノ酸改変(例えば置換)を含む。さらなる態様において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域は、EUナンバリングで表される、位置238のAsp、位置250のVal、位置307のPro、および位置330のLysであるアミノ酸改変(例えば置換)を含む。さらなる態様において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域は、EUナンバリングで表される、位置238のAsp、位置250のVal、位置264のIle、位置307のPro、および位置330のLysであるアミノ酸改変(例えば置換)を含む。さらなる態様において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域は、EUナンバリングで表される、位置238のAsp、位置250のVal、位置267のAla、位置307のPro、および位置330のLysであるアミノ酸改変(例えば置換)を含む。さらなる態様において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域は、EUナンバリングで表される、位置234のTyr、位置238のAsp、位置250のVal、位置307のPro、および位置330のLysであるアミノ酸改変(例えば置換)を含む。さらなる態様において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域は、EUナンバリングで表される、位置234のTyr、位置238のAsp、位置250のVal、位置267のAla、位置307のPro、および位置330のLysであるアミノ酸改変(例えば置換)を含む。さらなる態様において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域は、EUナンバリングで表される、位置238のAsp、位置250のVal、位置264のIle、位置267のAla、位置307のPro、および位置330のLysであるアミノ酸改変(例えば置換)を含む。さらなる態様において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域は、EUナンバリングで表される、位置234のTyr、位置238のAsp、位置250のVal、位置264のIle、位置307のPro、および位置330のLysであるアミノ酸改変(例えば置換)を含む。さらなる態様において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域は、EUナンバリングで表される、位置234のTyr、位置238のAsp、位置250のVal、位置264のIle、位置267のAla、位置307のPro、および位置330のLysであるアミノ酸改変(例えば置換)を含む。特定の態様において、FcγRIIbはカニクイザルFcγRIIb(配列番号:223)の配列を有する。特定の態様において、FcγRIIbはヒトFcγRIIb(例えば配列番号:212、213、または214)の配列を有する。
別の局面において、本発明は、等電点(pI)が上昇した変異Fc領域を含む単離されたポリペプチドを提供する。特定の態様において、本明細書に記載される変異Fc領域は、親Fc領域において少なくとも2つのアミノ酸改変を含む。特定の態様において、当該アミノ酸改変の各々が、親Fc領域と比較して、変異Fc領域の等電点(pI)を上昇させる。これは、少なくとも2つのアミノ酸残基の改変により上昇しているpIを有する抗体を用いることで、例えば該抗体がインビボにおいて投与される場合に血漿からの抗原の消失が促進され得るという知見に基づいている。
本発明において、pIは理論pIでも実測pIでもよい。pIの値は、例えば、当業者に公知の等電点分離法によって測定することができる。理論pIの値は、例えば、遺伝子およびアミノ酸の配列解析ソフトウェア(Genetyxなど)を用いて算出することができる。
一態様において、pI値は、改変前と比べて、例えば少なくとも0.01、0.03、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、もしくはそれ以上、少なくとも0.6、0.7、0.8、0.9、もしくはそれ以上、少なくとも1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、もしくはそれ以上、または少なくとも1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、3.0もしくはそれ以上、上昇し得る。
特定の態様において、pI上昇に関するアミノ酸は、変異Fc領域の表面に露出し得る。本発明において、表面に露出し得るアミノ酸とは、通常、変異Fc領域を構成するポリペプチドの表面に位置するアミノ酸残基を指す。ポリペプチドの表面に位置するアミノ酸残基とは、その側鎖が溶媒分子(通常、ほとんどが水分子である)に接触できるアミノ酸残基を指す。しかしながら、側鎖は必ずしも全体的に溶媒分子と接触していなければならないわけではなく、たとえ側鎖の一部が溶媒分子と接触している場合であっても、アミノ酸は「表面に位置するアミノ酸残基」と規定される。また、ポリペプチドの表面に位置するアミノ酸残基には、表面近くに位置し、それによって、たとえ部分的にでもその側鎖が溶媒分子と接触している別のアミノ酸残基からの電荷の影響を受け得る、アミノ酸残基も含まれる。当業者は、例えば市販のソフトウェアを使用してポリペプチドの相同性モデルを作成することができる。あるいは、X線結晶学などの当業者に公知の方法を使用することができる。表面に露出し得るアミノ酸残基は、例えばInsightIIプログラム(Accelrys)等のコンピュータープログラムを用いた三次元モデル由来の座標を用いて決定される。表面に露出可能な部位は、当技術分野で公知のアルゴリズム(例えば、Lee and Richards(J. Mol. Biol. 55:379-400(1971));Connolly(J. Appl. Cryst. 16:548-558(1983))を用いて決定されてもよい。表面に露出可能な部位は、タンパク質モデリングに適したソフトウェアおよび三次元構造情報を用いて決定することができる。そのような目的のために使用可能なソフトウェアは、例えば、SYBYL Biopolymer Moduleソフトウェア(Tripos Associates)を含む。アルゴリズムにユーザー入力サイズパラメータが必要である場合、計算において使われるプローブの「サイズ」は半径約1.4オングストローム(Å)以下に設定され得る。さらに、パーソナルコンピュータ用のソフトウェアを使用して、表面に露出可能な領域を決定するための方法が、Pacios(Comput. Chem. 18(4):377-386(1994);J. Mol. Model. 1:46-53(1995))によって記載されている。上記したそのような情報に基づいて、変異Fc領域を構成するポリペプチドの表面に位置する適切なアミノ酸残基を選択することができる。
特定の態様において、ポリペプチドは変異Fc領域および抗原結合ドメインの両方を含む。さらなる態様において、抗原は可溶型抗原である。一態様において、抗原は対象の生体液(例えば、血漿、間質液、リンパ液、腹水、および胸水)中に存在する。抗原はまた、膜抗原であってもよい。
さらなる態様において、抗原結合ドメインの抗原結合活性は、イオン濃度条件によって変化する。一態様において、イオン濃度は特に限定されず、水素イオン濃度(pH)または金属イオン濃度を指す。本明細書において金属イオンとは、水素を除く、アルカリ金属および銅族元素等の第I族元素、アルカリ土類金属および亜鉛族元素等の第II族元素、ホウ素を除く第III族元素、炭素とケイ素を除く第IV族元素、鉄族元素および白金族元素等の第VIII族元素、V、VIおよびVII族の各A亜族に属する元素、ならびにアンチモン、ビスマス、およびポロニウム等の金属元素のイオンを指す。本発明において、金属イオンは、WO2012/073992およびWO2013/125667に記載されるように例えばカルシウムイオンを含む。一態様において、「イオン濃度条件」とは、低イオン濃度と高イオン濃度の間での抗原結合ドメインの生物学的挙動の違いに注目した条件であり得る。さらに、「抗原結合ドメインの抗原結合活性は、イオン濃度条件によって変化する」とは、抗原結合ドメインの抗原結合活性が低イオン濃度と高イオン濃度の間で変化することを意味する(本明細書において、そのような抗原結合ドメインを「イオン濃度依存的抗原結合ドメイン」と称する)。高イオン濃度条件下での抗原結合ドメインの抗原結合活性は、低イオン濃度条件下でのそれよりも高い(強い)か低い(弱い)可能性がある。一態様において、イオン濃度依存的抗原結合ドメイン(例えば、pH依存的抗原結合ドメインまたはカルシウムイオン濃度依存的抗原結合ドメイン)を、例えばWO2009/125825、WO2012/073992、およびWO2013/046722に記載された公知の方法によって入手することができる。
本発明において、高カルシウムイオン濃度条件下での抗原結合ドメインの抗原結合活性は、低カルシウムイオン濃度条件下でのそれよりも高い可能性がある。高カルシウムイオン濃度は、特にこれに限定されないが100μM~10 mMの間、200μM~5 mMの間、400μM~3 mMの間、200μM~2 mMの間、400μM~1 mMの間、または500μM~2.5 mMの間で選択される濃度であってよく、インビボにおける血漿中(血中)カルシウムイオン濃度に近いことが好ましい。一方低カルシウムイオン濃度は、特にこれに限定されないが0.1μM~30μMの間、0.2μM~20μMの間、0.5μM~10μMの間、1μM~5μMの間、または2μM~4μMの間で選択される濃度であってよく、インビボにおける早期エンドソーム内のカルシウムイオン濃度に近いことが好ましい。
一態様において、低カルシウムイオン濃度条件下での抗原結合活性と高カルシウムイオン濃度条件下での抗原結合活性の比は限定されないが、高カルシウムイオン濃度条件下での解離定数(KD)に対する低カルシウムイオン濃度条件下でのKDの比率、すなわちKD(低カルシウムイオン濃度条件)/KD(高カルシウムイオン濃度条件)は、2以上、10以上、または40以上である。そのような抗原結合ドメインが当業者に公知の技術によって作製可能である限り、当該比率の上限は400、1000、または10000であり得る。あるいは、KDの代わりに、例えば解離速度定数(kd)を使用することができる。この場合、高カルシウムイオン濃度条件下でのkdに対する低カルシウムイオン濃度条件下でのkdの比率、すなわちkd(低カルシウムイオン濃度条件)/kd(高カルシウムイオン濃度条件)は、2以上、5以上、10以上、または30以上である。抗原結合ドメインが当業者の一般的な技術常識に基づいて作製可能である限り、当該比率の上限は50、100、または200であり得る。
本発明において、低水素イオン濃度(中性pH)下での抗原結合ドメインの抗原結合活性は、高水素イオン濃度(酸性pH)下でのそれよりも高い可能性がある。酸性pHは、例えば、pH4.0~pH6.5より選択されるか、pH4.5~pH6.5より選択されるか、pH5.0~pH6.5より選択されるか、またはpH5.5~pH6.5より選択されるpHであってよく、これは、インビボにおける早期エンドソーム内のpHに近いことが好ましい。酸性pHはまた、例えば、pH5.8またはpH6.0でもよい。特定の態様において、酸性pHはpH5.8である。一方、中性pHは、例えば、pH6.7~pH10.0より選択されるか、pH6.7~pH9.5より選択されるか、pH7.0~pH9.0より選択されるか、またはpH7.0~pH8.0より選択されるpHであってよく、これは、インビボにおける血漿中(血中)pHに近いことが好ましい。中性pHはまた、例えば、pH7.4またはpH7.0でもよい。特定の態様において、中性pHはpH7.4である。
一態様において、酸性pH条件下での抗原結合活性と中性pH条件下での抗原結合活性の比は限定されないが、中性pH条件下での解離定数(KD)に対する酸性pH条件下でのKDの比率、すなわちKD(酸性pH条件)/KD(中性pH条件)は、2以上、10以上、または40以上である。そのような抗原結合ドメインが当業者に公知の技術によって作製可能である限り、当該比率の上限は400、1000、または10000であり得る。あるいは、KDの代わりに、例えば、解離速度定数(kd)を使用することができる。この場合、中性pH条件下でのkdに対する酸性pH条件下でのkdの比率、すなわちkd(酸性pH条件)/kd(中性pH条件)は、2以上、5以上、10以上、または30以上である。抗原結合ドメインが当業者の一般的な技術常識に基づいて作製可能である限り、当該比率の上限は50、100、または200であり得る。
一態様において、WO2009/125825に記載されるように、抗原結合ドメインにおいて、例えば、側鎖のpKaが4.0~8.0であるアミノ酸残基で少なくとも1つのアミノ酸残基が置換されるか、かつ/または、側鎖のpKaが4.0~8.0である少なくとも1つのアミノ酸が挿入される。置換または挿入前と比較して、抗原結合ドメインの抗原結合活性が中性pH条件下よりも酸性pH条件下でより弱くなっている限り、アミノ酸は如何なる部位で置換および/または挿入されてもよい。抗原結合ドメインが可変領域またはCDRを有する場合、当該部位は当該可変領域またはCDRの内部にあってよい。置換または挿入されるアミノ酸の数は当業者が適宜決定することができ、1またはそれ以上であり得る。当該水素イオン濃度条件によって抗原結合ドメインの抗原結合活性を変化させるために、側鎖のpKaが4.0~8.0であるアミノ酸を使用することができる。そのようなアミノ酸には、例えば、His(H)およびGlu(E)などの天然アミノ酸、ならびに、ヒスチジンアナログ(US2009/0035836)、m-NO2-Tyr(pKa7.45)、3,5-Br2-Tyr(pKa7.21)、および3,5-I2-Tyr(pKa7.38)(Heyl et al., Bioorg. Med. Chem. 11(17):3761-3768(2003))などの非天然アミノ酸が含まれる。また、側鎖のpKaが6.0~7.0であるアミノ酸を用いることもでき、これは例えばHis(H)を含む。
別の態様において、pIが上昇した変異Fc領域に好適な抗原結合ドメインが記載されており、これは特願2015-021371および特願2015-185254に記載された方法によって入手可能である。
特定の態様において、pIが上昇した変異Fc領域は、EUナンバリングで表される位置285、311、312、315、318、333、335、337、341、342、343、384、385、388、390、399、400、401、402、413、420、422、および431からなる群より選択される少なくとも2つの位置の少なくとも2つのアミノ酸改変を含む。
さらなる態様において、pIが上昇した変異Fc領域は、EUナンバリングで表される位置311、341、343、384、399、400、401、402、および413からなる群より選択される少なくとも2つの位置の少なくとも2つのアミノ酸改変を含む。
別の局面において、本発明は、以下(1)~(10)のいずれか1つのアミノ酸改変を含む、pIが上昇した変異Fc領域を含むポリペプチドを提供する:EUナンバリングで表される、(1)位置311および341;(2)位置311および343;(3)位置311、343および413;(4)位置311、384および413;(5)位置311および399;(6)位置311および401;(7)位置311および413;(8)位置400および413;(9)位置401および413;ならびに(10)位置402および413。
タンパク質のpIを上昇させるための方法とは、例えば、中性pH条件において、側鎖が負電荷を有するアミノ酸(例えばアスパラギン酸およびグルタミン酸)の数を減らすこと、および/または、側鎖が正電荷を有するアミノ酸(例えばアルギニン、リジン、およびヒスチジン)の数を増やすことである。側鎖が負電荷を有するアミノ酸は、その側鎖pKaよりも十分に高いpH条件において-1と表される負電荷を有し、これは当業者に周知の理論である。例えば、アスパラギン酸の側鎖の理論pKaは3.9であり、該側鎖は、中性pH条件で(例えばpH7.0の溶液中で)-1と表される負電荷を有する。逆に、側鎖が正電荷を有するアミノ酸は、その側鎖pKaよりも十分に低いpH条件において+1と表される正電荷を有する。例えば、アルギニンの側鎖の理論pKaは12.5であり、該側鎖は、中性pH条件で(例えばpH7.0の溶液中で)+1と表される正電荷を有する。それに対して、中性pH条件で(例えばpH7.0の溶液中で)側鎖が電荷を有さないアミノ酸は、15種類の天然アミノ酸、すなわちアラニン、システイン、フェニルアラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、セリン、トレオニン、バリン、トリプトファン、およびチロシンを含むことが知られている。当然ながら、pIを上昇させるためのアミノ酸は非天然アミノ酸でもよいことが理解される。
上に述べたことから、中性pH条件で(例えばpH7.0の溶液中で)タンパク質のpIを上昇させるための方法は、例えばタンパク質のアミノ酸配列中のアスパラギン酸またはグルタミン酸(その側鎖が-1の負電荷を有する)を、側鎖が電荷を有さないアミノ酸で置換することによって、関心対象のタンパク質に+1の電荷改変を付与することができる。さらに、例えば、側鎖が電荷を有さないアミノ酸をアルギニンまたはリジン(その側鎖が+1の正電荷を有する)で置換することによって、タンパク質に+1の電荷改変を付与することができる。加えて、アスパラギン酸またはグルタミン酸(その側鎖が-1の負電荷を有する)をアルギニンまたはリジン(その側鎖が+1の正電荷を有する)で置換することによって、タンパク質に+2の電荷改変を一度に付与することができる。あるいは、タンパク質のpIを上昇させるために、側鎖が電荷を有さないアミノ酸および/もしくは好ましくは側鎖が正電荷を有するアミノ酸をタンパク質のアミノ酸配列に付加もしくは挿入することができ、または、タンパク質のアミノ酸配列中に存在する、側鎖が電荷を有さないアミノ酸および/もしくは好ましくは側鎖が負電荷を有するアミノ酸を欠失させることができる。例えば、タンパク質のN末端およびC末端のアミノ酸残基は、その側鎖由来の電荷に加えて、主鎖由来の電荷(N末端におけるアミノ基のNH3
+およびC末端におけるカルボニル基のCOO-)を有することが理解される。したがって、主鎖由来の官能基に対して何らかの付加、欠失、置換、または挿入を実施することによっても、タンパク質のpIを上昇させることができる。
pIを上昇させるためのアミノ酸の置換には、例えば、親Fc領域のアミノ酸配列において、側鎖が負電荷を有するアミノ酸を側鎖が電荷を有さないアミノ酸で置換すること、側鎖が電荷を有さないアミノ酸を側鎖が正電荷を有するアミノ酸で置換すること、および、側鎖が負電荷を有するアミノ酸を側鎖が正電荷を有するアミノ酸で置換することが含まれ、これらは単独で、または適宜組み合わせて実施される。
pIを上昇させるためのアミノ酸の挿入または付加には、例えば、親Fc領域のアミノ酸配列における、側鎖が電荷を有さないアミノ酸の挿入または付加、ならびに/あるいは、側鎖が正電荷を有するアミノ酸の挿入または付加が含まれ、これらは単独で、または適宜組み合わせて実施される。
pIを上昇させるためのアミノ酸の欠失には、例えば、親Fc領域のアミノ酸配列における、側鎖が電荷を有さないアミノ酸の欠失、および/または、側鎖が負電荷を有するアミノ酸の欠失が含まれ、これらは単独で、または適宜組み合わせて実施される。
一態様において、pIを上昇させるために使用される天然アミノ酸は、以下のように分類することができる:(a)側鎖が負電荷を有するアミノ酸はGlu(E)またはAsp(D)であり得;(b)側鎖が電荷を有さないアミノ酸はAla(A)、Asn(N)、Cys(C)、Gln(Q)、Gly(G)、His(H)、Ile(I)、Leu(L)、Met(M)、Phe(F)、Pro(P)、Ser(S)、Thr(T)、Trp(W)、Tyr(Y)、またはVal(V)であり得;ならびに(c)側鎖が正電荷を有するアミノ酸はHis(H)、Lys(K)、またはArg(R)であり得る。一態様において、修飾後のアミノ酸の挿入または置換はLys(K)またはArg(R)である。
別の局面において、本発明は、FcγRIIb結合活性の増強とpI上昇とを伴う変異Fc領域を含む単離されたポリペプチドを提供する。特定の態様において、本明細書に記載される変異Fc領域は、親Fc領域において少なくとも2つのアミノ酸改変を含む。
一局面において、本発明は、(a)EUナンバリングで表される、位置231、232、233、234、235、236、237、238、239、264、266、267、268、271、295、298、325、326、327、328、330、331、332、334、および396からなる群より選択される少なくとも1つの位置の少なくとも1つのアミノ酸改変と、(b)EUナンバリングで表される、位置285、311、312、315、318、333、335、337、341、342、343、384、385、388、390、399、400、401、402、413、420、422、および431からなる群より選択される少なくとも2つの位置の少なくとも2つのアミノ酸改変とを含む少なくとも3つのアミノ酸改変を含む、FcγRIIb結合活性の増強とpI上昇とを伴う変異Fc領域を含むポリペプチドを提供する。
一局面において、本発明は、(a)EUナンバリングで表される、位置231、232、235、236、239、268、295、298、326、330、および396からなる群より選択される少なくとも1つの位置の少なくとも1つのアミノ酸改変と、(b)EUナンバリングで表される、位置311、341、343、384、399、400、401、402、および413からなる群より選択される少なくとも2つの位置の少なくとも2つのアミノ酸改変とを含む少なくとも3つのアミノ酸改変を含む、FcγRIIb結合活性の増強とpI上昇とを伴う変異Fc領域を含むポリペプチドを提供する。
別の局面において、本発明は、以下(1)~(9)のいずれか1つのアミノ酸改変を含む、FcγRIIb結合活性の増強とpI上昇とを伴う変異Fc領域を含むポリペプチドを提供する:EUナンバリングで表される、(1)位置235、236、268、295、311、326、330および343;(2)位置236、268、295、311、326、330および343;(3)位置236、268、295、311、330および413;(4)位置236、268、311、330、396および399;(5)位置236、268、311、330および343;(6)位置236、268、311、330、343および413;(7)位置236、268、311、330、384および413;(8)位置236、268、311、330および413;ならびに(9)位置236、268、330、396、400および413。特定の態様において、FcγRIIbはカニクイザルFcγRIIb(配列番号:223)の配列を有する。特定の態様において、FcγRIIbはヒトFcγRIIb(例えば配列番号:212、213、または214)の配列を有する。
一局面において、本発明は、EUナンバリングで表される、(a)位置234、238、250、264、267、307、および330からなる群より選択される少なくとも1つの位置の少なくとも1つのアミノ酸改変と、(b)位置285、311、312、315、318、333、335、337、341、342、343、384、385、388、390、399、400、401、402、413、420、422、および431からなる群より選択される少なくとも2つの位置の少なくとも2つのアミノ酸改変とを含む少なくとも3つのアミノ酸改変を含む、FcγRIIb結合活性の増強とpI上昇とを伴う変異Fc領域を含むポリペプチドを提供する。さらなる態様において、該ポリペプチドは、EUナンバリングで表される、311、341、343、384、399、400、401、402、および413からなる群より選択される少なくとも2つの位置の少なくとも2つのアミノ酸改変を含む。特定の態様において、FcγRIIbはカニクイザルFcγRIIb(配列番号:223)の配列を有する。特定の態様において、FcγRIIbはヒトFcγRIIb(例えば配列番号:212、213、または214)の配列を有する。
別の局面において、本発明は、以下(1)~(16)のいずれか1つのアミノ酸改変を含む、FcγRIIb結合活性の増強とpI上昇とを伴う変異Fc領域を含むポリペプチドを提供する:EUナンバリングで表される、(1)位置234、238、250、264、307、311、330および343;(2)位置234、238、250、264、307、311、330および413;(3)位置234、238、250、264、267、307、311、330および343;(4)位置234、238、250、264、267、307、311、330および413;(5)位置234、238、250、267、307、311、330および343;(6)位置234、238、250、267、307、311、330および413;(7)位置234、238、250、307、311、330および343;(8)位置234、238、250、307、311、330および413;(9)位置238、250、264、267、307、311、330および343;(10)位置238、250、264、267、307、311、330および413;(11)位置238、250、264、307、311、330および343;(12)位置238、250、264、307、311、330および413;(13)位置238、250、267、307、311、330および343;(14)位置238、250、267、307、311、330および413;(15)位置238、250、307、311、330および343;ならびに(16)位置238、250、307、311、330および413。
さらなる態様において、変異Fc領域は、任意の単一改変、単一改変の組み合わせ、または表14~30に記載される組み合わせ改変から選択されるアミノ酸改変を含む。
いくつかの態様において、ポリペプチドは本発明の変異Fc領域を含む。さらなる態様において、ポリペプチドは抗体重鎖定常領域である。さらなる態様において、ポリペプチドは抗体重鎖である。さらなる態様において、ポリペプチドは抗体である。さらなる態様において、ポリペプチドはFc融合タンパク質である。
さらなる態様において、本発明は、配列番号:229~381のいずれか1つのアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する。
本明細書で用いられる「親Fc領域」とは、本明細書に記載のアミノ酸改変の導入前のFc領域を指す。親Fc領域の好ましい例には、天然型抗体に由来するFc領域が含まれる。抗体は、例えば、IgA(IgA1、IgA2)、IgD、IgE、IgG(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、およびIgMなどを含む。抗体は、ヒトまたはサル(例えば、カニクイザル、アカゲザル、マーモセット、チンパンジー、またはヒヒ)に由来しうる。天然型抗体は、天然に存在する変異を含んでいてもよい。遺伝子多型によるIgGの複数のアロタイプ配列が、「Sequences of proteins of immunological interest」、NIH Publication No. 91-3242に記載されているが、そのいずれも、本発明において使用されうる。特に、ヒトIgG1については、位置356~358(EUナンバリング)のアミノ酸配列はDELまたはEEMのいずれかであり得る。親Fc領域の好ましい例には、ヒトIgG1(配列番号:195)、ヒトIgG2(配列番号:196)、ヒトIgG3(配列番号:197)およびヒトIgG4(配列番号:198)の重鎖定常領域に由来するFc領域が含まれる。親Fc領域の別の好ましい例は、重鎖定常領域SG1(配列番号:9)に由来するFc領域である。さらに、親Fc領域は、本明細書に記載されるアミノ酸改変以外のアミノ酸改変を天然型抗体由来のFc領域に加えることによって作製されるFc領域であってもよい。
さらに、他の目的のために実施されるアミノ酸改変を、本明細書に記載の変異Fc領域において組み合わせることができる。例えば、FcRn結合活性を増強させるアミノ酸置換(Hinton et al., J. Immunol. 176(1):346-356(2006);Dall'Acqua et al., J. Biol. Chem. 281(33):23514-23524(2006);Petkova et al., Intl. Immunol. 18(12):1759-1769(2006);Zalevsky et al., Nat. Biotechnol. 28(2):157-159(2010);WO2006/019447; WO2006/053301;およびWO2009/086320)、および、抗体のヘテロジェニティーまたは安定性を改善するためのアミノ酸置換(WO2009/041613)を加えてもよい。あるいは、WO2011/122011、WO2012/132067、WO2013/046704、またはWO2013/180201に記載される抗原クリアランスを促進する特性を有するポリペプチド、WO2013/180200に記載される標的組織への特異的結合特性を有するポリペプチド、WO2009/125825、WO2012/073992、またはWO2013/047752に記載される複数の抗原分子に対して繰り返し結合する特性を有するポリペプチドを、本明細書に記載の変異Fc領域と組み合わせることができる。あるいは、他の抗原に対する結合能を付与する目的で、EP1752471およびEP1772465に開示されたアミノ酸改変を、本明細書に記載の変異Fc領域のCH3において組み合わせてもよい。あるいは、血漿中滞留性を増大させる目的で、定常領域のpIを低下させるアミノ酸改変(WO2012/016227)を、本明細書に記載の変異Fc領域において組み合わせてもよい。あるいは、細胞への取り込みを促進する目的で、定常領域のpIを上昇させるアミノ酸改変(WO2014/145159)を、本明細書に記載の変異Fc領域において組み合わせてもよい。あるいは、標的分子の血漿からの消失を促進する目的で、定常領域のpIを上昇させるアミノ酸改変(特願2015-021371および特願2015-185254)を、本明細書に記載の変異Fc領域において組み合わせてもよい。一態様において、そのような改変は、例えば、EUナンバリングで表される、位置311、343、384、399、400、および413からなる群より選択される少なくとも1つの位置での置換を含んでよい。さらなる態様において、そのような置換は、各位置のアミノ酸のLysまたはArgによる置換であり得る。
酸性pH下でのヒトFcRn結合活性を増強させるアミノ酸改変を、本明細書に記載の変異Fc領域において組み合わせることもできる。具体的には、そのような改変は、例えば、EUナンバリングで表される、位置428のMetのLeuへの置換および位置434のAsnのSerへの置換(Zalevsky et al., Nat. Biotechnol. 28:157-159(2010));位置434のAsnのAlaへの置換(Deng et al., Metab. Dispos. 38(4):600-605(2010));位置252のMetのTyrへの置換、位置254のSerのThrへの置換および位置256のThrのGluへの置換(Dall'Acqua et al., J. Biol. Chem. 281:23514-23524(2006));位置250のThrのGlnへの置換および位置428のMetのLeuへの置換(Hinton et al., J. Immunol.176(1):346-356(2006));位置434のAsnのHisへの置換(Zheng et al., Clin. Pharmacol. Ther. 89(2):283-290(2011))ならびに、WO2010/106180、WO2010/045193、WO2009/058492、WO2008/022152、WO2006/050166、WO2006/053301、WO2006/031370、WO2005/123780、WO2005/047327、WO2005/037867、WO2004/035752、またはWO2002/060919に記載された改変を含み得る。そのような改変は、例えば、位置428のMetのLeuへの置換、位置434のAsnのAlaへの置換、および位置436のTyrのThrへの置換からなる群より選択される、少なくとも1つの改変を含み得る。これらの改変は、位置438のGlnのArgへの置換および/または、位置440のSerのGluへの置換(特願2015-021371および特願2015-185254)をさらに含みうる。
本明細書に記載の変異Fc領域を含む2つ以上のポリペプチドを一分子中に含めることができ、ここでは、単一抗体中とほぼ同じく、変異Fc領域を含む2つのポリペプチドが結合されている。抗体の種類は限定されず、IgA(IgA1、IgA2)、IgD、IgE、IgG(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、およびIgMなどを使用することができる。
変異Fc領域を含む当該2つの結合したポリペプチドは、同一アミノ酸改変が導入されている変異Fc領域(以降、本明細書において相同変異Fc領域と称する)を含むポリペプチド、あるいは、異なるアミノ酸改変が導入されている変異Fc領域を含むポリペプチドまたはFc領域の一方にしかアミノ酸改変が導入されていない変異Fc領域を含むポリペプチド(以降、本明細書において、変異Fc領域を含む非相同ポリペプチドと称する)であり得る。好ましいアミノ酸改変の1つは、FcγRIIbおよびFcγRIIaとの結合に関与する、Fc領域のCH2ドメイン内の位置233~239(EUナンバリング)のループ構造における改変である。好ましくは、一方のFc領域のCH2ドメインのループ構造に、FcγRIIb結合活性および/または選択性を向上させる改変が導入され、他方のFc領域のCH2ドメインのループ構造に、それを不安定化させる別の改変が導入される。CH2ドメインのループ構造を不安定化させることができるアミノ酸改変の例は、位置235、236、237、238、および239のアミノ酸から選択される少なくとも1つのアミノ酸の別のアミノ酸への置換であり得る。特にこれは、例えば、EUナンバリングで表される、位置235のアミノ酸をAsp、Gln、Glu、またはThrに変更し、位置236のアミノ酸をAsnに変更し、位置237のアミノ酸をPheまたはTrpに変更し、位置238のアミノ酸をGlu、Gly、またはAsnに変更し、かつ位置239のアミノ酸をAspまたはGluに変更することによって、不安定化させることができる。
変異Fc領域を含む非相同ポリペプチドの結合に関して、WO2006/106905に記載されるような、Fc領域のCH2またはCH3ドメインの界面に静電反発力を導入することによって変異Fc領域を含む相同ポリペプチドの意図しない結合を抑制する技術を適用することができる。
Fc領域のCH2またはCH3ドメインの界面と接触しているアミノ酸残基の例には、CH3ドメイン中の位置356(EUナンバリング)の残基、位置439(EUナンバリング)の残基、位置357(EUナンバリング)の残基、位置370(EUナンバリング)の残基、位置399(EUナンバリング)の残基、および位置409(EUナンバリング)の残基が含まれる。
より具体的には、例えば、以下に示す(1)~(3)より選択される1~3対のアミノ酸残基が同じ電荷を有するFc領域を作製することができる:(1)CH3ドメイン中の位置356および439(EUナンバリング)のアミノ酸残基;(2)CH3ドメイン中の位置357および370(EUナンバリング)のアミノ酸残基;ならびに(3)CH3ドメイン中の位置399および409(EUナンバリング)のアミノ酸残基。
さらに、上述の(1)~(3)より選択される1~3対のアミノ酸残基が第一のFc領域のCH3ドメイン中で同じ電荷を有し、上記の第一のFc領域において選択されたアミノ酸残基の該対が第二のFc領域のCH3ドメイン中でも同じ電荷を有するが、但し第一と第二のFc領域の電荷は正反対である、変異Fc領域を含む非相同ポリペプチドを作製することができる。
上記のFc領域において、例えば、負電荷を有するアミノ酸残基は、グルタミン酸(E)およびアスパラギン酸(D)から好ましくは選択され、正電荷を有するアミノ酸残基は、リジン(K)、アルギニン(R)、およびヒスチジン(H)から好ましくは選択される。
変異Fc領域を含む非相同ポリペプチドの結合のために、他の公知の技術をさらに使用することができる。具体的には、そのような技術は、一方のFc領域に存在するアミノ酸側鎖をより大きな側鎖(knob;「突起」の意)で置換し、かつFc領域に存在するアミノ酸側鎖をより小さな側鎖(hole;「空隙」の意)で置換して、knobをhole内に配置することによって実施される。これにより、互いに異なるアミノ酸配列を有するFc領域含有ポリペプチドの間の効率的な結合が促進される(WO1996/027011;Ridgway et al., Prot. Eng. 9:617-621(1996);Merchant et al., Nat.Biotech. 16, 677-681(1998))。
さらに、変異Fc領域を含むポリペプチドの非相同結合のために、他の公知の技術を使用することもできる。Fc領域を含むポリペプチドの結合は、鎖交換組換えドメインCH3ヘテロ二量体を用いて、効率的に誘発することができる(Davis et al., Prot. Eng. Des. & Sel., 23:195-202(2010))。この技術もまた、異なるアミノ酸配列を有するFc領域含有ポリペプチドの間の結合を効率的に誘発するために使用することができる。
加えて、WO2011/028952に記載される、抗体CH1とCLの結合およびVHとVLの結合を使用するヘテロ二量体化抗体作製技術も使用することができる。
WO2008/119353およびWO2011/131746に記載される方法と同様に、あらかじめ二種類のホモ二量体化抗体を作製し、該抗体を還元条件下でインキュベートして解離させ、それらを再度結合させることによる、ヘテロ二量体化抗体作製技術を使用することも可能である。
Strop(J. Mol. Biol. 420:204-219(2012))に記載される方法と同様に、CH3ドメインに静電反発力が導入されるようにLys、Arg、Glu、およびAspなどの電荷を有する残基を導入することによる、ヘテロ二量体化抗体作製技術を使用することも可能である。
さらに、WO2012/058768に記載される方法と同様に、CH2およびCH3ドメインに改変を加えることによるヘテロ二量体化抗体作製技術を使用することも可能である。
非相同変異Fc領域を含むポリペプチドを作製するために、異なるアミノ酸配列を有する変異Fc領域を含む2つのポリペプチドを同時に発現させる場合、通常、不純物としての相同変異Fc領域を含むポリペプチドもまた、作製される。そのような場合、非相同変異Fc領域を含むポリペプチドを、公知の技術を用いて、相同変異Fc領域を含むポリペプチドから分離および精製することによって、効率的に入手することができる。ホモ二量体化抗体とヘテロ二量体化抗体の間で等電点に違いを生じるようなアミノ酸改変を該二種類の抗体重鎖の可変領域に導入することにより、イオン交換クロマトグラフィーを用いてホモ二量体化抗体からヘテロ二量体化抗体を効率的に分離および精製するための方法が報告されている(WO2007/114325)。プロテインAに結合するマウスIgG2aおよびプロテインAに結合しないラットIgG2bに由来する二種類の重鎖を含むヘテロ二量体化抗体を構築することにより、プロテインAクロマトグラフィーを用いてヘテロ二量体化抗体を精製するための別の方法が報告されている(WO1998/050431およびWO1995/033844)。
さらに、異なるプロテインA結合アフィニティをもたらすように、抗体重鎖のプロテインA結合部位に位置する位置435および436(EUナンバリング)のアミノ酸残基をTyrまたはHisなどのアミノ酸で置換することにより、プロテインAクロマトグラフィーを用いてヘテロ二量体化抗体を効率的に精製することができる。
本発明において、アミノ酸改変とは、任意の置換、欠失、付加、挿入、および修飾、またはそれらの組み合わせを意味する。本発明において、アミノ酸改変は、アミノ酸変異と言い換えることができる。
アミノ酸残基を置換する場合、別のアミノ酸残基への置換は、下記(a)~(c)のような点を改変する目的で実施することができる:(a)シート構造もしくはらせん構造の領域におけるポリペプチド骨格構造;(b)標的部位における電荷もしくは疎水性;または(c)側鎖の大きさ。
アミノ酸残基は、その大まかな側鎖の特性に基づいて以下の群に分類される:(a)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、およびIle;(b)中性の親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、およびGln;(c)酸性:AspおよびGlu;(d)塩基性:His、Lys、およびArg;(e)鎖配向に影響する残基:GlyおよびPro;ならびに(f)芳香族性:Trp、Tyr、およびPhe。
アミノ酸の改変は、当業者に公知の多種多様な方法によりもたらされる。そのような方法には、部位特異的変異誘発法(Hashimoto-Gotoh et al., Gene 152:271-275(1995); Zoller, Meth. Enzymol. 100:468-500(1983);Kramer et al., Nucleic Acids Res. 12: 9441-9456(1984));Kramer and Fritz, Methods Enzymol. 154: 350-367(1987);およびKunkel, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:488-492(1985))、PCR変異法、およびカセット変異法が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
Fc領域に導入されるアミノ酸改変の数は限定されない。特定の態様において、1、2以下、3以下、4以下、5以下、6以下、8以下、10以下、12以下、14以下、16以下、18以下、または20以下であり得る。
アミノ酸の修飾は、翻訳後修飾を含む。特定の翻訳後修飾は、糖鎖の付加または欠失であり得る。例えば、IgG1定常領域内の位置297(EUナンバリング)のアミノ酸残基は、糖鎖修飾されていてもよい。修飾用の糖鎖構造は限定されない。例えば、Fc領域の糖鎖にシアル酸を付加することができる(MAbs 2010 Sep-Oct, 2(5): 519-527)。一般に、真核細胞内で発現する抗体は、定常領域にグリコシル化を含む。例えば、哺乳動物の天然に存在する抗体産生細胞または抗体をコードするDNAを含む発現ベクターで形質転換された真核細胞などの細胞内で発現する抗体には、通常、ある種の糖鎖が付加されていることが知られている。
本明細書で示される真核細胞には、酵母および動物細胞が含まれる。例えば、CHO細胞およびHEK293細胞は、抗体をコードするDNAを含む発現ベクターによる形質転換に用いられる代表的な動物細胞である。一方、本発明には、グリコシル化されていない定常領域も含まれる。定常領域がグリコシル化されていない抗体は、抗体をコードする遺伝子を大腸菌(Escherichia coli)などの原核細胞中で発現させることによって得ることができる。
さらに、本発明の変異Fc領域を含むポリペプチドは、ポリエチレングリコール(PEG)および細胞傷害物質などの様々な分子により、化学的に修飾されてもよい。ポリペプチドのそのような化学修飾法は、当技術分野において確立されている。
一局面において、本発明は、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含む単離されたポリペプチドを提供する。いくつかの局面において、ポリペプチドは抗体である。いくつかの局面において、ポリペプチドはFc融合タンパク質である。特定の態様において、抗体はキメラ抗体またはヒト化抗体である。抗体の起源は特に限定されないが、例として、ヒト抗体、マウス抗体、ラット抗体、およびウサギ抗体が挙げられる。いくつかの局面において、ポリペプチドはFc融合タンパク質である。
本明細書で提供される変異Fc領域を含む抗体の可変領域、および変異Fc領域を含むFc融合タンパク質のタンパク質結合モチーフは、任意の抗原を認識することができる。そのような抗体および融合タンパク質により結合可能である抗原の例には、リガンド(サイトカインおよびケモカインなど)、受容体、癌抗原、MHC抗原、分化抗原、免疫グロブリン、および、免疫グロブリンを部分的に含む免疫複合体が、非限定的に含まれる。
本発明の変異Fc領域を含む抗体もしくは融合タンパク質により結合可能でありかつ/または開示された変異Fc領域を含むポリペプチドと組換え的に融合可能であるサイトカインの例には、インターロイキン1~18、コロニー刺激因子(G-CSF、M-CSF、GM-CSFなど)、インターフェロン(IFN-α、IFN-β、IFN-γなど)、成長因子(EGF、FGF、IGF、NGF、PDGF、TGF、HGFなど)、腫瘍壊死因子(TNF-αおよびTNF-β)、リンホトキシン、エリスロポエチン、レプチン、SCF、TPO、MCAF、およびBMPが非限定的に含まれる。
本発明の変異Fc領域を含む抗体もしくは融合タンパク質により結合可能でありかつ/または開示された変異Fc領域を含むポリペプチドと組換え的に融合可能であるケモカインの例には、CCL1~CCL28などのCCケモカイン、CXCL1~CXCL17などのCXCケモカイン、XCL1~XCL2などのCケモカイン、およびCX3CL1などのCX3Cケモカインが、非限定的に含まれる。
本発明の変異Fc領域を含む抗体もしくは融合タンパク質により結合可能でありかつ/または開示された変異Fc領域を含むポリペプチドと組換え的に融合可能である受容体の例には、造血成長因子受容体ファミリー、サイトカイン受容体ファミリー、チロシンキナーゼ型受容体ファミリー、セリン/トレオニンキナーゼ型受容体ファミリー、TNF受容体ファミリー、Gタンパク質連結受容体ファミリー、GPIアンカー型受容体ファミリー、チロシンホスファターゼ型受容体ファミリー、接着因子ファミリー、およびホルモン受容体ファミリーなどの受容体ファミリーに属する受容体が非限定的に含まれる。これらの受容体ファミリーに属する受容体およびそれらの特徴は、Cooke, ed. New Comprehesive Biochemistry Vol.18B "Hormones and their Actions Part II" pp.1-46(1988)Elsevier Science Publishers BV; Patthy(Cell 61(1):13-14(1990));Ullrich(Cell 61(2):203-212(1990));Massague(Cell 69(6):1067-1070(1992));Miyajima et al.(Annu. Rev. Immunol. 10:295-331(1992));Taga et al.(FASEB J. 6:3387-3396(1992));Fantl et al.(Annu. Rev. Biochem. 62:453-481(1993));Smith et al.(Cell 76(6):959-962(1994));およびFlower(Biochim. Biophys. Acta 1422(3): 207-234(1999))などの多くの文献に記載されている。
上記の受容体ファミリーに属する特定の受容体の例には、ヒトまたはマウスのエリスロポエチン(EPO)受容体(Jones et al., Blood 76(1):31-35(1990);D'Andrea et al., Cell 57(2):277-285(1989))、ヒトまたはマウスの顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)受容体(Fukunaga et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87(22):8702-8706(1990)、mG-CSFR;Fukunaga et al., Cell 61(2): 341-350(1990))、ヒトまたはマウスのトロンボポエチン(TPO)受容体(Vigon et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 89(12):5640-5644(1992);Skoda et al., EMBO J. 12(7):2645-2653(1993))、ヒトまたはマウスのインスリン受容体(Ullrich et al., Nature 313(6005):756-761(1985))、ヒトまたはマウスのFlt-3リガンド受容体(Small et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 91(2):459-463(1994))、ヒトまたはマウスの血小板由来成長因子(PDGF)受容体(Gronwald et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 85(10):3435-3439(1988))、ヒトまたはマウスのインターフェロン(IFN)-αおよびβ受容体(Uze et al., Cell 60(2): 225-234(1990);Novick et al., Cell 77(3):391-400(1994))、ヒトまたはマウスのレプチン受容体、ヒトまたはマウスの成長ホルモン(GH))受容体、ヒトまたはマウスのインターロイキン(IL)-10受容体、ヒトまたはマウスのインスリン様成長因子(IGF)-I受容体、ヒトまたはマウスの白血病抑制因子(LIF)受容体、ならびにヒトまたはマウスの毛様体神経栄養因子(CNTF)受容体が含まれる。
癌抗原とは、細胞が悪性になるにつれて発現する抗原であり、腫瘍特異的抗原とも呼ばれる。細胞が癌性になるときに細胞表面またはタンパク質分子に出現する異常な糖鎖もまた癌抗原であり、これらは糖鎖癌抗原とも呼ばれる。本発明の変異Fc領域を含む抗体もしくは融合タンパク質により結合可能である癌抗原の例には、上述のGPIアンカー型受容体ファミリーに属する受容体でありかつ肝臓癌を含むいくつかの癌においても発現しているGPC3(Midorikawa et al., Int. J. Cancer 103(4):455-465(2003))、および肺癌を含むいくつかの癌において発現しているEpCAM(Linnenbach et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86(1):27-31(1989))、CA19-9、CA15-3、ならびに、シアリルSSEA-1(SLX)が非限定的に含まれる。
MHC抗原は、MHCクラスI抗原とMHCクラスII抗原とに大別される。MHCクラスI抗原にはHLA-A、-B、-C、-E、-F、-G、および-Hが含まれ、MHCクラスII抗原にはHLA-DR、-DQ、および-DPが含まれる。
本発明の変異Fc領域を含む抗体もしくは融合タンパク質により結合可能でありかつ/または開示された変異Fc領域を含むポリペプチドと組換え的に融合可能である分化抗原の例には、CD1、CD2、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD10、CD11a、CD11b、CD11c、CD13、CD14、CD15s、CD16、CD18、CD19、CD20、CD21、CD23、CD25、CD28、CD29、CD30、CD32、CD33、CD34、CD35、CD38、CD40、CD41a、CD41b、CD42a、CD42b、CD43、CD44、CD45、CD45RO、CD48、CD49a、CD49b、CD49c、CD49d、CD49e、CD49f、CD51、CD54、CD55、CD56、CD57、CD58、CD61、CD62E、CD62L、CD62P、CD64、CD69、CD71、CD73、CD95、CD102、CD106、CD122、CD126、およびCDw130が非限定的に含まれる。
免疫グロブリンは、IgA、IgM、IgD、IgG、およびIgEを含む。免疫複合体には、少なくともいずれかの免疫グロブリンの構成要素が含まれる。
本発明の変異Fc領域を含む抗体もしくは融合タンパク質により結合可能でありかつ/または開示された変異Fc領域を含むポリペプチドと組換え的に融合可能である抗原のその他の例には、17-IA、4-1BB、4Dc、6-ケト-PGF1a、8-イソ-PGF2a、8-オキソ-dG、A1アデノシン受容体、A33、ACE、ACE-2、アクチビン、アクチビンA、アクチビンAB、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンRIA、アクチビンRIA ALK-2、アクチビンRIB ALK-4、アクチビンRIIA、アクチビンRIIB、ADAM、ADAM10、ADAM12、ADAM15、ADAM17/TACE、ADAM8、ADAM9、ADAMTS、ADAMTS4、ADAMTS5、アドレシン、aFGF、ALCAM、ALK、ALK-1、ALK-7、α-1-アンチトリプシン、α-V/β-1アンタゴニスト、ANG、Ang、APAF-1、APE、APJ、APP、APRIL、AR、ARC、ART、アルテミン(artemin)、抗Id、ASPARTIC、心房性ナトリウム利尿ペプチド、av/b3インテグリン、Axl、b2M、B7-1、B7-2、B7-H、Bリンパ球刺激因子(BlyS)、BACE、BACE-1、Bad、BAFF、BAFF-R、Bag-1、BAK、Bax、BCA-1、BCAM、Bcl、BCMA、BDNF、b-ECGF、bFGF、BID、Bik、BIM、BLC、BL-CAM、BLK、BMP、BMP-2 BMP-2a、BMP-3オステオゲニン(Osteogenin)、BMP-4、BMP-2b、BMP-5、BMP-6 Vgr-1、BMP-7(OP-1)、BMP-8(BMP-8a、OP-2)、BMPR、BMPR-IA(ALK-3)、BMPR-IB(ALK-6)、BRK-2、RPK-1、BMPR-II(BRK-3)、BMP、b-NGF、BOK、ボンベシン、骨由来神経栄養因子、BPDE、BPDE-DNA、BTC、補体因子3(C3)、C3a、C4、C5、C5a、C10、CA125、CAD-8、カルシトニン、cAMP、癌胎児性抗原(CEA)、癌関連抗原、カテプシンA、カテプシンB、カテプシンC/DPPI、カテプシンD、カテプシンE、カテプシンH、カテプシンL、カテプシンO、カテプシンS、カテプシンV、カテプシンX/Z/P、CBL、CCI、CCK2、CCL、CCL1、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL2、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28、CCL3、CCL4、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9/10、CCR、CCR1、CCR10、CCR11、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CD1、CD2、CD3、CD3E、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD10、CD11a、CD11b、CD11c、CD13、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD27L、CD28、CD29、CD30、CD30L、CD32、CD33(p67タンパク質)、CD34、CD38、CD40、CD40L、CD44、CD45、CD46、CD49a、CD52、CD54、CD55、CD56、CD61、CD64、CD66e、CD74、CD80(B7-1)、CD89、CD95、CD123、CD137、CD138、CD140a、CD146、CD147、CD148、CD152、CD164、CEACAM5、CFTR、cGMP、CINC、ボツリヌス毒素、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)毒素、CKb8-1、CLC、CMV、CMV UL、CNTF、CNTN-1、COX、C-Ret、CRG-2、CT-1、CTACK、CTGF、CTLA-4、CX3CL1、CX3CR1、CXCL、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCR、CXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4、CXCR5、CXCR6、サイトケラチン腫瘍関連抗原、DAN、DCC、DcR3、DC-SIGN、補体調節因子(崩壊促進因子)、des(1-3)-IGF-I(脳IGF-1)、Dhh、ジゴキシン、DNAM-1、Dnase、Dpp、DPPIV/CD26、Dtk、ECAD、EDA、EDA-A1、EDA-A2、EDAR、EGF、EGFR(ErbB-1)、EMA、EMMPRIN、ENA、エンドセリン受容体、エンケファリナーゼ、eNOS、Eot、エオタキシン1、EpCAM、エフリンB2/EphB4、EPO、ERCC、E-セレクチン、ET-1、第IIa因子、第VII因子、第VIIIc因子、第IX因子、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、Fas、FcR1、FEN-1、フェリチン、FGF、FGF-19、FGF-2、FGF3、FGF-8、FGFR、FGFR-3、フィブリン、FL、FLIP、Flt-3、Flt-4、ろ胞刺激ホルモン、フラクタルカイン、FZD1、FZD2、FZD3、FZD4、FZD5、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9、FZD10、G250、Gas6、GCP-2、GCSF、GD2、GD3、GDF、GDF-1、GDF-3(Vgr-2)、GDF-5(BMP-14、CDMP-1)、GDF-6(BMP-13、CDMP-2)、GDF-7(BMP-12、CDMP-3)、GDF8(ミオスタチン)、GDF-9、GDF-15(MIC-1)、GDNF、GFAP、GFRa-1、GFR-α1、GFR-α2、GFR-α3、GITR、グルカゴン、Glut4、糖タンパク質IIb/IIIa(GPIIb/IIIa)、GM-CSF、gp130、gp72、GRO、成長ホルモン放出ホルモン、ハプテン(NP-capまたはNIP-cap)、HB-EGF、HCC、HCMV gBエンベロープ糖タンパク質、HCMV gHエンベロープ糖タンパク質、HCMV UL、造血成長因子(HGF)、Hep B gp120、ヘパラナーゼ、Her2、Her2/neu(ErbB-2)、Her3(ErbB-3)、Her4(ErbB-4)、単純ヘルペスウイルス(HSV)gB糖タンパク質、HSV gD糖タンパク質、HGFA、高分子量メラノーマ関連抗原(HMW-MAA)、HIV gp120、HIV IIIB gp 120 V3ループ、HLA、HLA-DR、HM1.24、HMFG PEM、HRG、Hrk、ヒト心臓ミオシン、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)、ヒト成長ホルモン(HGH)、HVEM、I-309、IAP、ICAM、ICAM-1、ICAM-3、ICE、ICOS、IFNg、Ig、IgA受容体、IgE、IGF、IGF結合タンパク質、IGF-1R、IGFBP、IGF-I、IGF-II、IL、IL-1、IL-1R、IL-2、IL-2R、IL-4、IL-4R、IL-5、IL-5R、IL-6、IL-6R、IL-8、IL-9、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-18、IL-18R、IL-23、インターフェロン(IFN)-α、IFN-β、IFN-γ、インヒビン、iNOS、インスリンA鎖、インスリンB鎖、インスリン様成長因子1、インテグリンα2、インテグリンα3、インテグリンα4、インテグリンα4/β1、インテグリンα4/β7、インテグリンα5(αV)、インテグリンα5/β1、インテグリンα5/β3、インテグリンα6、インテグリンβ1、インテグリンβ2、インターフェロンγ、IP-10、I-TAC、JE、カリクレイン2、カリクレイン5、カリクレイン6、カリクレイン11、カリクレイン12、カリクレイン14、カリクレイン15、カリクレインL1、カリクレインL2、カリクレインL3、カリクレインL4、KC、KDR、ケラチノサイト成長因子(KGF)、ラミニン5、LAMP、LAP、LAP(TGF-1)、潜在型TGF-1、潜在型TGF-1 bp1、LBP、LDGF、LECT2、レフティ、ルイス-Y抗原、ルイス-Y関連抗原、LFA-1、LFA-3、Lfo、LIF、LIGHT、リポタンパク質、LIX、LKN、Lptn、L-セレクチン、LT-a、LT-b、LTB4、LTBP-1、肺表面、黄体形成ホルモン、リンホトキシンβ受容体、Mac-1、MAdCAM、MAG、MAP2、MARC、MCAM、MCK-2、MCP、M-CSF、MDC、Mer、メタロプロテアーゼ、MGDF受容体、MGMT、MHC(HLA-DR)、MIF、MIG、MIP、MIP-1-α、MK、MMAC1、MMP、MMP-1、MMP-10、MMP-11、MMP-12、MMP-13、MMP-14、MMP-15、MMP-2、MMP-24、MMP-3、MMP-7、MMP-8、MMP-9、MPIF、Mpo、MSK、MSP、ムチン(Muc1)、MUC18、ミュラー管抑制物質、Mug、MuSK、NAIP、NAP、NCAD、N-カドヘリン、NCA 90、NCAM、ネプリライシン、ニューロトロフィン-3、-4、または-6、ニュールツリン、神経成長因子(NGF)、NGFR、NGF-β、nNOS、NO、NOS、Npn、NRG-3、NT、NTN、OB、OGG1、OPG、OPN、OSM、OX40L、OX40R、p150、p95、PADPr、副甲状腺ホルモン、PARC、PARP、PBR、PBSF、PCAD、P-カドヘリン、PCNA、PDGF、PDK-1、PECAM、PEM、PF4、PGE、PGF、PGI2、PGJ2、PIN、PLA2、胎盤性アルカリホスファターゼ(PLAP)、PIGF、PLP、PP14、プロインスリン、プロレラキシン、プロテインC、PS、PSA、PSCA、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、PTEN、PTHrp、Ptk、PTN、R51、RANK、RANKL、RANTES、レラキシンA鎖、レラキシンB鎖、レニン、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)F、RSV Fgp、Ret、リウマイド因子、RLIP76、RPA2、RSK、S100、SCF/KL、SDF-1、SERINE、血清アルブミン、sFRP-3、Shh、SIGIRR、SK-1、SLAM、SLPI、SMAC、SMDF、SMOH、SOD、SPARC、Stat、STEAP、STEAP-II、TACE、TACI、TAG-72(腫瘍関連糖タンパク質-72)、TARC、TCA-3、T細胞受容体(例えば、T細胞受容体α/β)、TdT、TECK、TEM1、TEM5、TEM7、TEM8、TERT、精巣PLAP様アルカリホスファターゼ、TfR、TGF、TGF-α、TGF-β、TGF-βPan特異的、TGF-βRI(ALK-5)、TGF-βRII、TGF-βRIIb、TGF-βRIII、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、TGF-β5、トロンビン、胸腺Ck-1、甲状腺刺激ホルモン、Tie、TIMP、TIQ、組織因子、TMEFF2、Tmpo、TMPRSS2、TNF、TNF-α、TNF-αβ、TNF-β2、TNFc、TNF-RI、TNF-RII、TNFRSF10A(TRAIL R1 Apo-2、DR4)、TNFRSF10B(TRAIL R2 DR5、KILLER、TRICK-2A、TRICK-B)、TNFRSF10C(TRAIL R3 DcR1、LIT、TRID)、TNFRSF10D(TRAIL R4 DcR2、TRUNDD)、TNFRSF11A(RANK ODF R、TRANCE R)、TNFRSF11B(OPG OCIF、TR1)、TNFRSF12(TWEAK R FN14)、TNFRSF13B(TACI)、TNFRSF13C(BAFF R)、TNFRSF14(HVEM ATAR、HveA、LIGHT R、TR2)、TNFRSF16(NGFR p75NTR)、TNFRSF17(BCMA)、TNFRSF18(GITR AITR)、TNFRSF19(TROY TAJ、TRADE)、TNFRSF19L(RELT)、TNFRSF1A(TNF RI CD120a、p55-60)、TNFRSF1B(TNF RII CD120b、p75-80)、TNFRSF26(TNFRH3)、TNFRSF3(LTbR TNF RIII、TNFC R)、TNFRSF4(OX40 ACT35、TXGP1 R)、TNFRSF5(CD40 p50)、TNFRSF6(Fas Apo-1、APT1、CD95)、TNFRSF6B(DcR3 M68、TR6)、TNFRSF7(CD27)、TNFRSF8(CD30)、TNFRSF9(4-1BB CD137、ILA)、TNFRSF21(DR6)、TNFRSF22(DcTRAIL R2 TNFRH2)、TNFRST23(DcTRAIL R1 TNFRH1)、TNFRSF25(DR3 Apo-3、LARD、TR-3、TRAMP、WSL-1)、TNFSF10(TRAIL Apo-2リガンド、TL2)、TNFSF11(TRANCE/RANKリガンド ODF、OPGリガンド)、TNFSF12(TWEAK Apo-3リガンド、DR3リガンド)、TNFSF13(APRIL TALL2)、TNFSF13B(BAFF BLYS、TALL1、THANK、TNFSF20)、TNFSF14(LIGHT HVEMリガンド、LTg)、TNFSF15(TL1A/VEGI)、TNFSF18(GITRリガンド AITRリガンド、TL6)、TNFSF1A(TNF-aコネクチン、DIF、TNFSF2)、TNFSF1B(TNF-b LTa、TNFSF1)、TNFSF3(LTb TNFC、p33)、TNFSF4(OX40リガンド gp34、TXGP1)、TNFSF5(CD40リガンド CD154、gp39、HIGM1、IMD3、TRAP)、TNFSF6(Fasリガンド Apo-1リガンド、APT1リガンド)、TNFSF7(CD27リガンド CD70)、TNFSF8(CD30リガンド CD153)、TNFSF9(4-1BBリガンド CD137リガンド)、TP-1、t-PA、Tpo、TRAIL、TRAIL R、TRAIL-R1、TRAIL-R2、TRANCE、トランスフェリン受容体、TRF、Trk、TROP-2、TSG、TSLP、腫瘍関連抗原CA125、腫瘍関連抗原発現ルイスY関連炭水化物、TWEAK、TXB2、Ung、uPAR、uPAR-1、ウロキナーゼ、VCAM、VCAM-1、VECAD、VE-カドヘリン、VE-カドヘリン-2、VEFGR-1(flt-1)、VEGF、VEGFR、VEGFR-3(flt-4)、VEGI、VIM、ウイルス抗原、VLA、VLA-1、VLA-4、VNRインテグリン、フォン・ヴィルブランド因子、WIF-1、WNT1、WNT2、WNT2B/13、WNT3、WNT3A、WNT4、WNT5A、WNT5B、WNT6、WNT7A、WNT7B、WNT8A、WNT8B、WNT9A、WNT9B、WNT10A、WNT10B、WNT11、WNT16、XCL1、XCL2、XCR1、XCR1、XEDAR、XIAP、XPD、HMGB1、IgA、Aβ、CD81、CD97、CD98、DDR1、DKK1、EREG、Hsp90、IL-17/IL-17R、IL-20/IL-20R、酸化LDL、PCSK9、プレカリクレイン、RON、TMEM16F、SOD1、クロモグラニンA、クロモグラニンB、タウ、VAP1、高分子量キニノーゲン、IL-31、IL-31R、Nav1.1、Nav1.2、Nav1.3、Nav1.4、Nav1.5、Nav1.6、Nav1.7、Nav1.8、Nav1.9、EPCR、C1、C1q、C1r、C1s、C2、C2a、C2b、C3、C3a、C3b、C4、C4a、C4b、C5、C5a、C5b、C6、C7、C8、C9、B因子、D因子、H因子、プロパージン、スクレロスチン、フィブリノーゲン、フィブリン、プロトロンビン、トロンビン、組織因子、第V因子、第Va因子、第VII因子、第VIIa因子、第VIII因子、第VIIIa因子、第IX因子、第IXa因子、第X因子、第Xa因子、第XI因子、第XIa因子、第XII因子、第XIIa因子、第XIII因子、第XIIIa因子、TFPI、アンチトロンビンIII、EPCR、トロンボモジュリン、TAPI、tPA、プラスミノーゲン、プラスミン、PAI-1、PAI-2、GPC3、シンデカン-1、シンデカン-2、シンデカン-3、シンデカン-4、LPA、およびS1P;ならびにホルモンおよび成長因子の受容体が、非限定的に含まれる。
本明細書で述べたように、可変領域を構成するアミノ酸配列においては、その抗原結合活性が維持される限り、1つまたは複数のアミノ酸残基の改変が可能である。可変領域アミノ酸配列を改変する場合、改変部位や改変されるアミノ酸の数は特に限定されない。例えば、CDRおよび/またはFRに存在するアミノ酸を適宜改変することができる。可変領域内のアミノ酸を改変する場合、結合活性は特に制限なく維持されることが好ましく、例えば、改変前と比べて結合活性は50%以上、80%以上、および100%以上であり得る。さらに、アミノ酸改変によって結合活性が増強されてもよい。例えば、結合活性は、改変前の結合活性より2倍、5倍、または10倍高い等であってよい。アミノ酸配列の改変は、アミノ酸残基の置換、付加、欠失、および修飾の少なくとも1つであってよい。
例えば、可変領域のN末端のグルタミンのピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾は、当業者に周知の修飾である。したがって、重鎖N末端がグルタミンである場合、本明細書に記載の抗体は、グルタミンがピログルタミン酸へと修飾された可変領域を含み得る。
本明細書に記載の抗体可変領域は任意の配列を有してよく、それらは、マウス抗体、ラット抗体、ウサギ抗体、ヤギ抗体、ラクダ抗体、これらの非ヒト抗体をヒト化することにより作製されたヒト化抗体、およびヒト抗体などの任意の起源の抗体可変領域であり得る。さらにこれらの抗体は、抗原結合性、薬物動態、安定性、および免疫原性を改善するためにその可変領域に導入された多種多様なアミノ酸置換を有してもよい。可変領域は、抗原結合におけるそのpH依存性のために、抗原に繰り返し結合することが可能であり得る(WO2009/125825)。
κ鎖およびλ鎖は抗体の軽鎖定常領域中に存在し、どちらも許容可能である。さらにこれらは、置換、欠失、付加、および/または挿入などのいくつかのアミノ酸改変を有してもよい。
さらに、本明細書に記載の変異Fc領域を含むポリペプチドを、生理活性を有するペプチドなどの他のタンパク質と連結することによってFc融合タンパク質にしてもよい。そのような融合タンパク質は、変異Fc領域を含む少なくとも2つのポリペプチドからなる多量体であり得る。他のタンパク質の例としては、受容体、接着分子、リガンド、および酵素が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
Fc融合タンパク質の例は、標的分子に結合する受容体に対するFc領域と融合したタンパク質を含み、これには、TNFR-Fc融合タンパク質、IL1R-Fc融合タンパク質、VEGFR-Fc融合タンパク質、およびCTLA4-Fc融合タンパク質が含まれる(Economides et al,. Nat. Med. 9(1):47-52(2003);Dumont et al., BioDrugs. 20(3):151-60(2006))。さらに、融合されるタンパク質は、標的結合活性を有する他の分子、例えばscFv(WO2005/037989)、単一ドメイン抗体(WO2004/058821;WO2003/002609)、抗体様分子(Davinder, Curr. Op. Biotech. 17:653-658(2006);Current Opinion in Biotechnology 18:1-10(2007);Nygren et al., Curr. Op. Struct. Biol. 7:463-469(1997);およびHoss. Protein Science 15:14-27(2006))、例えばDARPin(WO2002/020565)、Affibody(WO1995/001937)、Avimer(WO2004/044011;WO2005/040229)、およびAdnectin(WO2002/032925)であってもよい。さらに、抗体およびFc融合タンパク質は多重特異的であってよく、複数種類の標的分子またはエピトープに結合してもよい。
B. 組換え法および組成物
例えば米国特許第4,816,567号に記載の組換え法および組成物を用いて、抗体を作製することができる。一態様において、本明細書に記載の抗ミオスタチン抗体をコードする単離された核酸が提供される。別の態様において、本明細書に記載の変異Fc領域または親Fc領域を含むポリペプチドをコードする単離された核酸が提供される。そのような核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列および/またはVHを含むアミノ酸配列(例えば抗体の軽鎖および/または重鎖)をコードしうる。さらなる態様において、そのような核酸を含む1つまたは複数のベクター(例えば発現ベクター)が提供される。さらなる態様において、そのような核酸を含む宿主細胞が提供される。一態様において、宿主細胞は以下を含む(例えば、以下で形質転換されている):(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列と抗体のVHを含むアミノ酸配列とをコードする核酸を含む、ベクター、または(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第一のベクター、および抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第二のベクター。一態様において、宿主細胞は真核細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはリンパ球細胞(例えばY0、NS0、およびSp20細胞)である。一態様において、抗ミオスタチン抗体を作製する方法が提供され、該方法は、上記で提供したような、該抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を、該抗体の発現に適した条件下で培養する工程と、任意で、該抗体を該宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から回収する工程を含む。別の態様において、変異Fc領域または親Fc領域を含むポリペプチドを作製する方法が提供され、該方法は、上記で提供したような、抗体、Fc領域、または変異Fc領域などのポリペプチドをコードする核酸を含む宿主細胞を、該ポリペプチドの発現に適した条件下で培養する工程と、任意で、該ポリペプチドを該宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から回収する工程を含む。
抗ミオスタチン抗体を組換え的に作製するためには、例えば上述のような、抗体をコードする核酸を単離して、さらなるクローニングおよび/または宿主細胞中での発現のための1つまたは複数のベクターに挿入する。Fc領域を組換え的に作製するためには、Fc領域をコードする核酸を単離し、さらなるクローニングおよび/または宿主細胞中での発現のための1つまたは複数のベクターに挿入する。そのような核酸は、(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いる)従来の手法を用いて、容易に単離および配列決定され得る。
抗体をコードするベクターのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞は、本明細書に記載の原核細胞または真核細胞を含む。例えば、抗体は、特にグリコシル化およびFcエフェクター機能が必要とされない場合は、細菌で製造してもよい。細菌での抗体断片およびポリペプチドの発現に関して、例えば、米国特許第5,648,237号、第5,789,199号、および第5,840,523号を参照のこと。(加えて、大腸菌における抗体断片の発現について記載したCharlton, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ, 2003), pp.245-254も参照のこと。)発現後、抗体は細菌細胞ペーストから可溶性フラクション中に単離されてもよく、またさらに精製することができる。
原核生物に加え、部分的なまたは完全なヒトのグリコシル化パターンを伴う抗体の産生をもたらす、グリコシル化経路が「ヒト化」されている菌類および酵母の株を含む、糸状菌または酵母などの真核性の微生物は、抗体コードベクターの好適なクローニングまたは発現宿主である。Gerngross, Nat. Biotech. 22:1409-1414 (2004)および Li et al., Nat. Biotech. 24:210-215 (2006) を参照のこと。
多細胞生物(無脊椎生物および脊椎生物)に由来するものもまた、グリコシル化された抗体の発現のために好適な宿主細胞である。無脊椎生物細胞の例は、植物および昆虫細胞を含む。昆虫細胞との接合、特にSpodoptera frugiperda細胞の形質転換に用いられる、数多くのバキュロウイルス株が同定されている。
植物細胞培養物も、宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、第6,040,498号、第6,420,548号、第7,125,978号、および第6,417,429号(トランスジェニック植物で抗体を産生するための、PLANTIBODIES(商標)技術を記載)を参照のこと。
脊椎動物細胞もまた宿主として使用できる。例えば、浮遊状態で増殖するように適応された哺乳動物細胞株は、有用であろう。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40で形質転換されたサル腎CV1株 (COS-7);ヒト胎児性腎株(Graham et al., J. Gen Virol. 36:59 (1977) などに記載の293または293細胞);仔ハムスター腎細胞 (BHK);マウスセルトリ細胞(Mather, Biol. Reprod. 23:243-251 (1980) などに記載のTM4細胞);サル腎細胞 (CV1);アフリカミドリザル腎細胞 (VERO-76);ヒト子宮頸部癌細胞 (HELA);イヌ腎細胞 (MDCK);Buffalo系ラット肝細胞 (BRL 3A);ヒト肺細胞 (W138);ヒト肝細胞 (Hep G2);マウス乳癌 (MMT 060562);TRI細胞(例えば、Mather et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383:44-68 (1982) に記載);MRC5細胞;および、FS4細胞などである。他の有用な哺乳動物宿主細胞株は、DHFR- CHO細胞 (Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980)) を含むチャイニーズハムスター卵巣 (CHO) 細胞;およびY0、NS0、およびSp2/0などの骨髄腫細胞株を含む。抗体産生に好適な特定の哺乳動物宿主細胞株の総説として、例えば、Yazaki and Wu, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ), pp. 255-268 (2003) を参照のこと。
pH依存的特性を有する抗体は、例えばWO 2009/125825に記載のように、スクリーニング方法および/または変異導入方法を用いて得てもよい。スクリーニング方法は、pH依存的結合特性を有する抗体を特定の抗原に特異的な抗体集団内で同定する任意のプロセスを含み得る。特定の態様において、スクリーニング方法は、酸性および中性の両方のpHにおける初期の抗体集団内での個々の抗体の1つまたは複数の結合パラメーター(例えば、KDまたはkd)を測定する工程を含み得る。抗体の結合パラメーターは、例えば、表面プラズモン共鳴、または、特定の抗原への抗体の結合特性の定量的もしくは定性的な評価を可能にする任意の他の分析方法を用いて測定してもよい。特定の態様において、スクリーニング方法は、2以上の酸性/中性のKD比で抗原に結合する抗体を同定する工程を含み得る。さらなる態様において、スクリーニング方法は、2以上のpH5.8/pH7.4のKD比で抗原に結合する抗体を同定する工程を含み得る。あるいは、スクリーニング方法は、2以上の酸性/中性のkd比で抗原に結合する抗体を同定する工程を含み得る。さらなる態様において、スクリーニング方法は、2以上のpH5.8/pH7.4のkd比で抗原に結合する抗体を同定する工程を含み得る。
別の態様において、変異導入方法は、抗原への抗体のpH依存的結合を増強するように、抗体の重鎖および/または軽鎖内のアミノ酸の欠失、置換、または付加を組み込む工程を含み得る。特定の態様において、変異導入は、抗体の1つまたは複数の可変ドメイン内、例えば1つまたは複数のHVR(例えばCDR)内で行ってもよい。例えば変異導入は、抗体の1つまたは複数のHVR(例えばCDR)内のアミノ酸を別のアミノ酸で置換する工程を含み得る。特定の態様において、変異導入は、抗体の少なくとも1つのHVR(例えばCDR)における1つまたは複数のアミノ酸をヒスチジンで置換する工程を含み得る。特定の態様において、「増強されたpH依存的結合」とは、変異されたバージョンの抗体が、変異導入前の元の「親」(すなわちpH依存性が低い)バージョンの抗体に対して、より大きい酸性/中性のKD比またはより大きい酸性/中性のkd比を示すことを意味する。特定の態様において、変異されたバージョンの抗体は、2以上の酸性/中性のKD比を有する。特定の態様において、変異されたバージョンの抗体は、2以上のpH5.8/pH7.4のKD比を有する。あるいは、変異されたバージョンの抗体は、2以上の酸性/中性のkd比を有する。さらなる態様において、変異されたバージョンの抗体は、2以上のpH5.8/pH7.4のkd比を有する。
ポリクローナル抗体は好ましくは、関連する抗原およびアジュバントの複数回の皮下(sc)または腹腔内(ip)注射により動物において産生される。関連する抗原を、免疫化される種において免疫原性であるタンパク質に、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、またはダイズトリプシン阻害因子に、二官能性物質または誘導体化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介するコンジュゲーション)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介する)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2、またはR1N=C=NR(ここでRおよびR1は異なるアルキル基である)を用いて、コンジュゲートすることが有用であり得る。
動物(通常は非ヒト哺乳動物)は、例えば、(ウサギまたはマウスについてそれぞれ)100μgまたは5μgのタンパク質またはコンジュゲートを3倍容量のフロイント完全アジュバントと組み合わせてその溶液を複数部位に皮内注射することによって、抗原、免疫原性コンジュゲート、または誘導体に対して免疫化される。1ヶ月後、複数部位に皮下注射することによって、最初の量の1/5~1/10の、フロイント完全アジュバント中のペプチドまたはコンジュゲートで該動物を追加免疫する。7~14日後、該動物から採血し、血清を抗体力価についてアッセイする。力価がプラトーに達するまで動物を追加免疫する。好ましくは、同一抗原であるが別のタンパク質にコンジュゲートされたおよび/または別の架橋試薬を介してコンジュゲートされたコンジュゲートを用いて、該動物を追加免疫する。コンジュゲートは、組み換え細胞培養物中でタンパク質融合体として調製することも可能である。また、免疫応答を増強するために、ミョウバンなどの凝集剤も好適に使用される。
モノクローナル抗体は、実質的に均一な抗体の集団から得られ、すなわち、該集団を構成する個々の抗体は、若干量存在しうる自然に生じる潜在的な突然変異および/または翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化)を除いて同一である。したがって、修飾語「モノクローナル」は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示している。
例えば、モノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature 256(5517):495-497 (1975)に最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて作製することができる。ハイブリドーマ法では、マウスまたは他の適切な宿主動物、例えばハムスターを本明細書に上記したように免疫化して、免疫化に使用されたタンパク質に特異的に結合する抗体を製造するか製造する能力があるリンパ球を誘導する。あるいは、リンパ球をインビトロで免疫化することもできる。
免疫化剤は、典型的には、抗原タンパク質またはその融合変異体を包含する。一般的に、ヒト起源の細胞が望まれる場合には末梢血リンパ球(PBL)が使用され、非ヒト哺乳動物源が望まれる場合には脾臓細胞またはリンパ節細胞が使用される。その後、リンパ球は、ポリエチレングリコールなどの適切な融合剤を用いて不死化細胞株と融合され、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press (1986), pp. 59-103)。
不死化細胞株は通常、形質転換された哺乳動物細胞、特に、げっ歯類、ウシおよびヒト起源のミエローマ細胞である。通常は、ラットまたはマウスのミエローマ細胞株が利用される。このようにして作製されたハイブリドーマ細胞を、未融合の親ミエローマ細胞の増殖または生存を阻害する1種以上の物質を好ましくは含有する適切な培養培地中に播種して増殖させる。例えば、親ミエローマ細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマ用の培養培地は、典型的には、HGPRT欠損細胞の増殖を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン(HAT培地)を含むであろう。
好ましい不死化ミエローマ細胞とは、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの製造を補助し、かつHAT培地のような培地に対して感受性である、細胞である。これらの中でも、マウスミエローマ株、例えば、米国カリフォルニア州サンディエゴのSalk Institute Cell Distribution Centerから入手できるMOPC-21およびMPC-11マウス腫瘍に由来するもの、ならびに米国バージニア州マナッサスのAmerican Type Culture Collectionから入手できるSP-2細胞(およびその誘導体、例えばX63-Ag8-653)が好ましい。ヒトモノクローナル抗体の製造について、ヒトミエローマ細胞株およびマウス-ヒトヘテロミエローマ細胞株もまた、記載されている(Kozbor et al., J Immunol. 133(6):3001-3005 (1984); Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York, pp. 51-63 (1987))。
ハイブリドーマ細胞が増殖している培養培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の製造についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により製造されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降によって、またはインビトロ結合測定法、例えば放射免疫測定法(RIA)もしくは酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって決定される。このような技術および測定法は当技術分野で公知である。例えば、結合アフィニティは、Munson, Anal Biochem. 107(1):220-239 (1980)のスキャッチャード(Scatchard)解析によって求めることができる。
所望の特異性、アフィニティ、および/または活性の抗体を製造するハイブリドーマ細胞が特定された後、該クローンを限界希釈法によりサブクローニングして、標準的な方法(Goding、前掲)により増殖させることができる。この目的のための適切な培養培地としては、例えば、D-MEMまたはRPMI-1640培地が挙げられる。また、ハイブリドーマ細胞は哺乳動物内の腫瘍としてインビボで増殖させることができる。
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、培養培地、腹水、または血清から、例えば、プロテインA-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティークロマトグラフィーなどの従来の免疫グロブリン精製法によって、適切に分離される。
抗体は、適切な宿主動物を抗原に対して免疫化することによって産生してもよい。一態様において、抗原は、全長ミオスタチンを含むポリペプチドである。一態様において、抗原は、潜在型ミオスタチンを含むポリペプチドである。一態様において、抗原は、ミオスタチンプロペプチドを含むポリペプチドである。一態様において、抗原は、ミオスタチンプロペプチド(配列番号:78)の位置21~100のアミノ酸に対応する領域を含むポリペプチドである。一態様において、抗原は、ミオスタチンプロペプチド(配列番号:78)の位置21~80、41~100、21~60、41~80、61~100、21~40、41~60、61~80、または81~100のアミノ酸を含むポリペプチドである。本発明にはまた、抗原に対して動物を免疫化することによって産生される抗体も包含される。抗体は、上述の「例示的抗ミオスタチン抗体」に記載の任意の特徴を、単独または組み合わせで、組み込んでいてもよい。
Fc領域は、ペプシンなどのプロテアーゼを用いてIgG1、IgG2、IgG3、IgG4モノクローナル抗体などを部分的に消化した後に、プロテインAカラムに吸着したフラクションを再度溶出することによって、得てもよい。プロテアーゼは、それが全長抗体を消化でき、それによってFabおよびF(ab')2が、pHなどの酵素反応条件を適切に設定することによって制限的な様式で産生される限り、特に限定されず、例としてペプシンおよびパパインが含まれる。
さらに、本発明は、親Fc領域を含むポリペプチドと比較してFcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための方法を提供し、本方法は、親Fc領域に少なくとも1つのアミノ酸改変を導入する工程を含む。いくつかの局面において、産生されたポリペプチドは抗体である。特定の態様において、抗体は、キメラ抗体またはヒト化抗体である。いくつかの局面において、産生されたポリペプチドはFc融合タンパク質である。
特定の態様において、産生方法は、以下の工程を含む:
(a)親Fc領域を含むポリペプチドを調製する工程;
(b)ポリペプチド内の親Fc領域に、少なくとも1つのアミノ酸改変を導入する工程;
(c)親Fc領域を含むポリペプチドおよび工程(b)におけるFc領域を含むポリペプチドのサルFcγRIIb結合活性を測定する工程;ならびに
(d)親Fc領域を含むポリペプチドと比較してサルFcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを選択する工程。
特定の態様において、産生方法は、以下の工程を含む:
(a)親Fc領域を含むポリペプチドを調製する工程;
(b)ポリペプチド内の親Fc領域に、少なくとも1つのアミノ酸改変を導入する工程;
(c)親Fc領域を含むポリペプチドおよび工程(b)におけるFc領域を含むポリペプチドのサルFcγRIIIa結合活性を測定する工程;ならびに
(d)親Fc領域を含むポリペプチドと比較してサルFcγRIIIa結合活性が低下した変異Fc領域を含むポリペプチドを選択する工程。
特定の態様において、産生方法は、以下の工程を含む:
(a)親Fc領域を含むポリペプチドを調製する工程;
(b)ポリペプチド内の親Fc領域に、少なくとも1つのアミノ酸改変を導入する工程;
(c)親Fc領域を含むポリペプチドおよび工程(b)におけるFc領域を含むポリペプチドのヒトFcγRIIb結合活性を測定する工程;ならびに
(d)親Fc領域を含むポリペプチドと比較してヒトFcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを選択する工程。
特定の態様において、産生方法は、以下の工程を含む:
(a)親Fc領域を含むポリペプチドを調製する工程;
(b)ポリペプチド内の親Fc領域に、少なくとも1つのアミノ酸改変を導入する工程;
(c)親Fc領域を含むポリペプチドおよび工程(b)におけるFc領域を含むポリペプチドのヒトFcγRIIIa結合活性を測定する工程;ならびに
(d)親Fc領域を含むポリペプチドと比較してヒトFcγRIIIa結合活性が低下した変異Fc領域を含むポリペプチドを選択する工程。
特定の態様において、産生方法は、以下の工程を含む:
(a)親Fc領域を含むポリペプチドを調製する工程;
(b)ポリペプチド内の親Fc領域に、少なくとも1つのアミノ酸改変を導入する工程;
(c)親Fc領域を含むポリペプチドおよび工程(b)におけるFc領域を含むポリペプチドのヒトFcγRIIa(H型)結合活性を測定する工程;ならびに
(d)親Fc領域を含むポリペプチドと比較してヒトFcγRIIa(H型)結合活性が低下した変異Fc領域を含むポリペプチドを選択する工程。
特定の態様において、産生方法は、以下の工程を含む:
(a)親Fc領域を含むポリペプチドを調製する工程;
(b)ポリペプチド内の親Fc領域に、少なくとも1つのアミノ酸改変を導入する工程;
(c)親Fc領域を含むポリペプチドおよび工程(b)におけるFc領域を含むポリペプチドのヒトFcγRIIa(R型)結合活性を測定する工程;ならびに
(d)親Fc領域を含むポリペプチドと比較してヒトFcγRIIa(R型)結合活性が低下した変異Fc領域を含むポリペプチドを選択する工程。
一局面において、FcγRIIb結合活性が強化された変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法において、EUナンバリングにしたがう231、232、233、234、235、236、237、238、239、264、266、267、268、271、295、298、325、326、327、328、330、331、332、334、および396からなる群より選択される少なくとも1つの位置の少なくとも1つのアミノ酸が改変される。特定の態様において、FcγRIIbは、カニクイザルFcγRIIbの配列(配列番号:223)を有する。特定の態様において、FcγRIIbは、ヒトFcγRIIbの配列(例えば、配列番号:212、213、または214)を有する。
別の局面において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法において、位置236で1つのアミノ酸が改変される。
別の局面において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法において、少なくとも2つのアミノ酸が改変され、改変は以下を含む:EUナンバリングにしたがう、(a)位置236の1つのアミノ酸改変、ならびに(b)231、232、233、234、235、237、238、239、264、266、267、268、271、295、298、325、326、327、328、330、331、332、334、および396からなる群より選択される少なくとも1つの位置の少なくとも1つのアミノ酸改変。特定の態様において、FcγRIIbは、カニクイザルFcγRIIbの配列(配列番号:223)を有する。特定の態様において、FcγRIIbは、ヒトFcγRIIbの配列(例えば、配列番号:212、213、または214)を有する。
別の局面において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法において、少なくとも2つのアミノ酸が改変され、改変は以下を含む:EUナンバリングにしたがう、(a)位置236の1つのアミノ酸改変、ならびに(b)231、232、235、239、268、295、298、326、330、および396からなる群より選択される少なくとも1つの位置の少なくとも1つのアミノ酸改変。特定の態様において、FcγRIIbは、カニクイザルFcγRIIbの配列(配列番号:223)を有する。特定の態様において、FcγRIIbは、ヒトFcγRIIbの配列(例えば、配列番号:212、213、または214)を有する。
別の局面において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法において、少なくとも2つのアミノ酸が改変され、改変は以下を含む:EUナンバリングにしたがう、(a)位置236の1つのアミノ酸改変、ならびに(b)268、295、326、および330からなる群より選択される少なくとも1つの位置の少なくとも1つのアミノ酸改変。特定の態様において、FcγRIIbは、カニクイザルFcγRIIbの配列(配列番号:223)を有する。特定の態様において、FcγRIIbは、ヒトFcγRIIbの配列(例えば、配列番号:212、213、または214)を有する。
別の局面において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法において、以下の(1)~(37)のいずれか1つの位置でアミノ酸が改変される:EUナンバリングにしたがう、(1)位置231、236、239、268、および330;(2)位置231、236、239、268、295、および330;(3)位置231、236、268、および330;(4)位置231、236、268、295、および330;(5)位置232、236、239、268、295、および330;(6)位置232、236、268、295、および330;(7)位置232、236、268、および330;(8)位置235、236、268、295、326、および330;(9)位置235、236、268、295、および330;(10)位置235、236、268、および330;(11)位置235、236、268、330、および396;(12)位置235、236、268、および396;(13)位置236、239、268、295、298、および330;(14)位置236、239、268、295、326、および330;(15)位置236、239、268、295、および330;(16)位置236、239、268、298、および330;(17)位置236、239、268、326、および330;(18)位置236、239、268、および330;(19)位置236、239、268、330、および396;(20)位置236、239、268、および396;(21)位置236、および268;(22)位置236、268、および295;(23)位置236、268、295、298、および330;(24)位置236、268、295、326、および330;(25)位置236、268、295、326、330、および396;(26)位置236、268、295、および330;(27)位置236、268、295、330、および396;(28)位置236、268、298、および330;(29)位置236、268、298、および396;(30)位置236、268、326、および330;(31)位置236、268、326、330、および396;(32)位置236、268、および330;(33)位置236、268、330、および396;(34)位置236、268、および396;(35)位置236および295;(36)位置236、330、および396;ならびに(37)位置236および396。特定の態様において、FcγRIIbは、カニクイザルFcγRIIbの配列(配列番号:223)を有する。特定の態様において、FcγRIIbは、ヒトFcγRIIbの配列(例えば、配列番号:212、213、または214)を有する。
さらなる局面において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法におけるアミノ酸改変は、各位置で以下からなる群より選択される:EUナンバリングにしたがう、(a)位置231で、Asp、Glu、Phe、Gly、His、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Pro、Gln、Arg、Ser、Thr、Val、Trp、Tyr;(b)位置232で、Ala、Asp、Glu、Phe、Gly、His、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Gln、Arg、Ser、Thr、Val、Trp、Tyr;(c)位置233で、Asp;(d)位置234で、Trp、Tyr;(e)位置235で、Trp;(f)位置236で、Ala、Asp、Glu、His、Ile、Leu、Met、Asn、Gln、Ser、Thr、Val;(g)位置237で、Asp、Tyr;(h)位置238で、Glu、Ile、Met、Gln、Tyr;(i)位置239で、Ile、Leu、Asn、Pro、Val;(j)位置264で、Ile;(k)位置266で、Phe;(l)位置267で、Ala、His、Leu;(m)位置268で、Asp、Glu;(n)位置271で、Asp、Glu、Gly;(o)位置295で、Leu;(p)位置298で、Leu;(q)位置325で、Glu、Phe、Ile、Leu;(r)位置326で、Thr;(s)位置327で、Ile、Asn;(t)位置328で、Thr;(u)位置330で、Lys、Arg;(v)位置331で、Glu;(w)位置332で、Asp;(x)位置334で、Asp、Ile、Met、Val、Tyr;および(y)位置396で、Ala、Asp、Glu、Phe、Gly、His、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Gln、Arg、Ser、Thr、Val、Trp、Tyr。特定の態様において、FcγRIIbは、カニクイザルFcγRIIbの配列(配列番号:223)を有する。特定の態様において、FcγRIIbは、ヒトFcγRIIbの配列(例えば、配列番号:212、213、または214)を有する。
さらなる局面において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法におけるアミノ酸改変は、各位置で以下からなる群より選択される:EUナンバリングにしたがう、(a)位置231で、Gly、Thr;(b)位置232で、Asp;(c)位置235で、Trp;(d)位置236で、Asn、Thr;(e)位置239で、Val;(f)位置268で、Asp、Glu;(g)位置295で、Leu;(h)位置298で、Leu;(i)位置326で、Thr;(j)位置330、Lys、Arg;および(k)位置396で、Lys、Met。特定の態様において、FcγRIIbは、カニクイザルFcγRIIbの配列(配列番号:223)を有する。特定の態様において、FcγRIIbは、ヒトFcγRIIbの配列(例えば、配列番号:212、213、または214)を有する。
さらなる局面において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法におけるアミノ酸改変は、EUナンバリングにしたがい、位置236でAsn、位置268でGlu、位置330でLys、および位置396でMetである。さらなる局面において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法におけるアミノ酸改変は、EUナンバリングにしたがい、位置236でAsn、位置268でAsp、および位置330でLysである。さらなる局面において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法におけるアミノ酸改変は、EUナンバリングにしたがい、位置236でAsn、位置268でAsp、位置295でLeu、および位置330でLysである。さらなる局面において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法におけるアミノ酸改変は、EUナンバリングにしたがい、位置236でThr、位置268でAsp、および位置330でLysである。さらなる局面において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法におけるアミノ酸改変は、EUナンバリングにしたがい、位置236でAsn、位置268でAsp、位置295でLeu、位置326でThr、および位置330でLysである。さらなる局面において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法におけるアミノ酸改変は、EUナンバリングにしたがい、位置235でTrp、位置236でAsn、位置268でAsp、位置295でLeu、位置326でThr、および位置330でLysである。
一局面において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法において、EUナンバリングにしたがう234、238、250、264、267、307、および330からなる群より選択される少なくとも1つの位置の少なくとも1つのアミノ酸が改変される。特定の態様において、FcγRIIbは、カニクイザルFcγRIIbの配列(配列番号:223)を有する。特定の態様において、FcγRIIbは、ヒトFcγRIIbの配列(例えば、配列番号:212、213、または214)を有する。
別の局面において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法において、位置238において1つのアミノ酸が改変される。
別の局面において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法において、少なくとも2つのアミノ酸が改変され、改変は以下を含む:EUナンバリングにしたがう、(i)位置238の1つのアミノ酸改変、ならびに(ii)234、250、264、267、307、および330からなる群より選択される少なくとも1つの位置の少なくとも1つのアミノ酸改変。特定の態様において、FcγRIIbは、カニクイザルFcγRIIbの配列(配列番号:223)を有する。特定の態様において、FcγRIIbは、ヒトFcγRIIbの配列(例えば、配列番号:212、213、または214)を有する。
別の局面において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法において、以下の(1)~(9)のいずれか1つの位置でアミノ酸が改変される:EUナンバリングにしたがう、(1)位置234、238、250、307、および330;(2)位置234、238、250、264、307、および330;(3)位置234、238、250、264、267、307、および330;(4)位置234、238、250、267、307、および330;(5)位置238、250、264、307、および330;(6)位置238、250、264、267、307、および330;(7)位置238、250、267、307、および330;(8)位置238、250、および307;ならびに(9)位置238、250、307、および330。
さらなる局面において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法におけるアミノ酸改変は、各位置で以下からなる群より選択される:EUナンバリングにしたがい、(a)位置234でTyr、(b)位置238でAsp、(c)位置250でVal、(d)位置264でIle、(e)位置267でAla、(f)位置307でPro、および(g)位置330でLys。さらなる局面において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法におけるアミノ酸改変は、EUナンバリングにしたがい、位置238でAspである。さらなる局面において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法におけるアミノ酸改変は、EUナンバリングにしたがい、位置238でAsp、位置250でVal、および位置307でProである。さらなる局面において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法におけるアミノ酸改変は、EUナンバリングにしたがい、位置238でAsp、位置250でVal、位置307でPro、および位置330でLysである。さらなる局面において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法におけるアミノ酸改変は、EUナンバリングにしたがい、位置238でAsp、位置250でVal、位置264でIle、位置307でPro、および位置330でLysである。さらなる局面において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法におけるアミノ酸改変は、EUナンバリングにしたがい、位置238でAsp、位置250でVal、位置267でAla、位置307でPro、および位置330でLysである。さらなる局面において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法におけるアミノ酸改変は、EUナンバリングにしたがい、位置234でTyr、位置238でAsp、位置250でVal、位置307でPro、および位置330でLysである。さらなる局面において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法におけるアミノ酸改変は、EUナンバリングにしたがい、位置234でTyr、位置238でAsp、位置250でVal、位置267でAla、位置307でPro、および位置330でLysである。さらなる局面において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法におけるアミノ酸改変は、EUナンバリングにしたがい、位置238でAsp、位置250でVal、位置264でIle、位置267でAla、位置307でPro、および位置330でLysである。さらなる局面において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法におけるアミノ酸改変は、EUナンバリングにしたがい、位置234でTyr、位置238でAsp、位置250でVal、位置264でIle、位置307でPro、および位置330でLysである。さらなる局面において、FcγRIIb結合活性が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法におけるアミノ酸改変は、EUナンバリングにしたがい、位置234でTyr、位置238でAsp、位置250でVal、位置264でIle、位置267でAla、位置307でPro、および位置330でLysである。特定の態様において、FcγRIIbは、カニクイザルFcγRIIbの配列(配列番号:223)を有する。特定の態様において、FcγRIIbは、ヒトFcγRIIbの配列(例えば、配列番号:212、213、または214)を有する。
さらに、本発明は、親Fc領域を含むポリペプチドと比較してpIが上昇した変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための方法を提供し、本方法は、親Fc領域に少なくとも2つのアミノ酸改変を導入する工程を含む。
特定の態様において、本明細書に提供される、変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための産生方法は、以下の工程を含む:
(a)親Fc領域を含むポリペプチドを調製する工程;
(b)ポリペプチド内の親Fc領域に、少なくとも2つのアミノ酸改変を導入する工程;
(c)親Fc領域を含むポリペプチドおよび工程(b)におけるFc領域を含むポリペプチドのpIを測定する工程;ならびに
(d)親Fc領域を含む対応するポリペプチドと比較してpIが上昇した変異Fc領域を含むポリペプチドを選択する工程。
一局面において、pIが上昇した変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法において、EUナンバリングにしたがう285、311、312、315、318、333、335、337、341、342、343、384、385、388、390、399、400、401、402、413、420、422、および431からなる群より選択される少なくとも2つの位置の少なくとも2つのアミノ酸が改変される。さらなる局面において、産生されたポリペプチドは、EUナンバリングにしたがう、311、341、343、384、399、400、401、402、および413からなる群より選択される少なくとも2つの位置の少なくとも2つのアミノ酸改変を含む、pIが上昇した変異Fc領域を含む。
別の局面において、pIが上昇した変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法において、以下の(1)~(10)のいずれか1つの位置においてアミノ酸が改変される:EUナンバリングにしたがう、(1)位置311および341;(2)位置311および343;(3)位置311、343,および413;(4)位置311、384,および413;(5)位置311および399;(6)位置311および401;(7)位置311および413;(8)位置400および413;(9)位置401および413;ならびに(10)位置402および413。さらなる局面において、pIが上昇した変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法におけるアミノ酸改変は、EUナンバリングにしたがい、位置400でArgおよび位置413でLysである。さらなる局面において、pIが上昇した変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法におけるアミノ酸改変は、EUナンバリングにしたがい、位置311でArgおよび位置413でLysである。さらなる局面において、pIが上昇した変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法におけるアミノ酸改変は、EUナンバリングにしたがい、位置311でArgおよび位置399でArgである。さらなる局面において、pIが上昇した変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法におけるアミノ酸改変は、EUナンバリングにしたがい、位置311でArgおよび位置343でArgである。さらなる局面において、pIが上昇した変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法におけるアミノ酸改変は、EUナンバリングにしたがい、位置311でArgおよび位置413でArgである。さらなる局面において、pIが上昇した変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法におけるアミノ酸改変は、EUナンバリングにしたがい、位置311でArg、位置343でArg、および位置413でArgである。さらなる局面において、pIが上昇した変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法におけるアミノ酸改変は、EUナンバリングにしたがい、位置311でArg、位置384でArg、および位置413でArgである。
さらなる局面において、pIが上昇した変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法におけるアミノ酸改変は、各位置でLysまたはArgより選択される。
さらなる局面において、上述の産生方法におけるアミノ酸改変は、任意の単一の改変、単一の改変の組み合わせ、または表14~30に記載の組み合わせ改変より選択される。
任意で、変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための上述の方法には、該ポリペプチドが抗原結合ドメインをさらに含む場合、以下の追加の工程が含まれる:
(e)動物、例えばマウス、ラット、ウサギ、イヌ、サル、およびヒトにおいて、親Fc領域を含むポリペプチドおよび変異Fc領域を含むポリペプチドを投与した後の、血漿中の抗原の薬物動態を評価する工程;ならびに
(f)親Fc領域を含むポリペプチドと比較して血漿からの抗原消失の能力が増強された変異Fc領域を含むポリペプチドを選択する工程。
上述の方法のうちいずれかまたは当技術分野で公知の他の方法によって産生された変異Fc領域を含むポリペプチドも、本発明に含まれる。
C.測定法(アッセイ)
本明細書で提供される抗ミオスタチン抗体は、当該技術分野において知られている種々の測定法によって、同定され、スクリーニングされ、または物理的/化学的特性および/または生物学的活性について明らかにされてもよい。
本明細書で提供される変異Fc領域は、本明細書に記載のまたはそうでなくとも当該技術分野において知られている種々の測定法によって、同定され、スクリーニングされ、または物理的/化学的特性および/または生物学的活性について明らかにされてもよい。
1.結合測定法およびその他の測定法
一局面において、本発明の抗体は、例えばELISA、ウエスタンブロット、BIACORE(登録商標)等の公知の方法によって、その抗原結合活性に関して試験される。一局面において、本発明の変異Fc領域を含むポリペプチドは、例えばBIACORE(登録商標)等の公知の方法によって、そのFc受容体結合活性に関して試験される。
別の局面において、ミオスタチンへの結合に関して本明細書に記載の任意の抗ミオスタチン抗体と競合する抗体を同定するために、競合アッセイが使用され得る。特定の態様において、そのような競合抗体が過剰に存在する場合、それは、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、またはそれを超えて、ミオスタチンへの参照抗体の結合を阻止する(例えば、低減する)。いくつかの例において、結合は、少なくとも80%、85%、90%、95%、またはそれを超えて阻害される。特定の態様において、そのような競合抗体は、本明細書に記載の抗ミオスタチン抗体(例えば、表2a、11a、または13に記載の抗ミオスタチン抗体)によって結合されるのと同じエピトープ(例えば、線状または立体構造エピトープ)に結合する。さらなる局面において、参照抗体は、表2a、11a、または13に記載のVHおよびVL対を有する。抗体が結合するエピトープをマッピングする、詳細な例示的方法は、Morris (1996) 「Epitope Mapping Protocols」Methods in Molecular Biology vol. 66 (Humana Press, Totowa, NJ)に提供されている。
例示的な競合アッセイにおいて、固定化された潜在型ミオスタチンまたはミオスタチンプロペプチドは、ミオスタチンに結合する第1の標識された抗体およびミオスタチンへの結合に関して第1の抗体と競合する能力に関して試験される第2の未標識の抗体を含む溶液中でインキュベートされる。第2の抗体は、ハイブリドーマ上清に存在し得る。対照として、固定化されたミオスタチンが、第1の標識された抗体を含むが第2の未標識の抗体を含まない溶液中でインキュベートされる。第1の抗体のミオスタチンに対する結合を許容する条件下でのインキュベーションの後、余分な未結合の抗体が除去され、固定化されたミオスタチンに結合した標識の量が測定される。固定化されたミオスタチンに結合した標識の量が対照サンプルと比較して試験サンプルにおいて実質的に減少している場合、それは第2の抗体がミオスタチンへの結合に関して第1の抗体と競合していることを示す。Harlow and Lane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual ch.14 (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY) を参照のこと。
1つまたは複数のFcγRファミリーメンバーに対する変異Fc領域を含むポリペプチドの結合活性を決定するための測定法が、本明細書に記載されているかまたはそうでなくとも当該技術分野において知られている。そのような結合測定法には、限定されないが、BIACORE(登録商標)分析法が含まれ、これは、表面プラズモン共鳴(SPR)現象、増幅ルミネッセンス近接ホモジニアスアッセイ(ALPHA)スクリーニング、ELISA、および蛍光活性化細胞選別(FACS)を利用する(Lazar et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2006) 103(11): 4005-4010)。
一態様において、BIACORE(登録商標)分析法を、例えば、分析物として様々なFcγRを、公知の方法および試薬(例えばプロテインA、プロテインL、プロテインA/G、プロテインG、抗λ鎖抗体、抗κ鎖抗体、抗原ペプチド、抗原タンパク質)を用いてセンサーチップ上に固定化されるかまたは捕捉された変異Fc領域を含むポリペプチドとの相互作用に供したセンサーグラムの分析から得た解離定数(KD)値が低下または増加しているかを観察することによって、変異Fc領域を含むポリペプチドの結合活性が、特定のFcγRファミリーメンバーに対して増強されているか、または維持もしくは低減されているかを判断するために使用することができる。1つまたは複数のタイプのFcγRを分析物として、捕捉された変異Fc領域を含むポリペプチドとの相互作用に供する前および後の、センサーグラムでのレゾナンスユニット(RU)値の変化を比較することによって、結合活性の変化も同様に決定することができる。あるいは、FcγRをセンサーチップ上に固定化するかまたは捕捉することができ、変異Fc領域を含むポリペプチドが分析物として使用される。
BIACORE(登録商標)分析において、相互作用の観察における基質の1つ(リガンド)を、センサーチップ上の金薄膜に固定化し、かつ、センサーチップの裏側から光を照射することで金薄膜とガラスとの間の界面で全反射が生じることにより、反射光の一部において、反射強度が低下した部分が形成される(SPRシグナル)。相互作用の観察における基質のうち他の1つ(分析物)がセンサーチップ表面上に流されて、リガンドが分析物に結合する場合、固定化されたリガンド分子の質量が増加し、センサーチップ表面上の溶媒の屈折率が変化する。屈折率のこの変化の結果としてSPRシグナルの位置がシフトする(他方で、この結合が解離すると、シグナル位置は戻る)。BIACORE(登録商標)システムは、上述のシフトの量を示すか、またはより具体的には、センサーチップ表面の質量の変化を測定データ(センサーグラム)として縦軸上にプロットすることにより質量の時間変量を示す。センサーチップ表面にトラップされたリガンドに結合した分析物の量は、センサーグラムから決定される。会合速度定数(ka)および解離速度定数(kd)のような動力学的パラメータは、センサーグラムの曲線から決定され、解離定数(KD)は、これらの定数の比から決定される。BIACORE(登録商標)法において、阻害を測定するための方法が、好ましくは用いられる。阻害を測定するための方法の例は、Lazar et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103(11):4005-4010 (2006)に記載される。
ALPHAスクリーニングは、以下の原理に基づき、ドナーおよびアクセプターの2種のビーズを用いるALPHA技術によって実施される。ドナービーズに結合した分子が、アクセプタービーズに結合した分子と物理的に相互作用し、2種のビーズが互いに非常に近接している場合にのみ、発光シグナルが検出される。ドナービーズにおけるレーザー励起光増感物質が、周囲の酸素を励起状態の一重項酸素へと変換する。一重項酸素はドナービーズ周辺に分散し、それが隣接するアクセプタービーズに到達すると、ビーズにおいて化学発光反応が誘導され、最終的に光が放射される。ドナービーズに結合した分子が、アクセプタービーズに結合した分子と相互作用しない場合、ドナービーズによって生成される一重項酸素がアクセプタービーズに到達しないため、化学発光反応は生じない。
例えばビオチン化ポリペプチド複合体は、ドナービーズに結合し、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)をタグ付けされたFcγ受容体はアクセプタービーズに連結される。変異Fc領域を含むポリペプチド複合体の競合が存在しない場合、親Fc領域を含むポリペプチド複合体は、Fcγ受容体と相互作用し、520~620 nmシグナルを生成する。タグ付加されていない変異Fc領域を含むポリペプチド複合体は、Fcγ受容体との相互作用について、親Fc領域を含むポリペプチド複合体と競合する。相対的結合活性は、競合の結果として観察される蛍光の減少を定量化することによって決定することができる。Sulfo-NHSビオチンなどを用いた抗体のようなポリペプチド複合体のビオチン化はよく知られている。発現可能なベクターにおいてインフレームでFcγ受容体をコードするポリヌクレオチドとGSTをコードするポリヌクレオチドを融合することによって産生される融合遺伝子を保持する細胞において、Fcγ受容体とGSTを発現させ、グルタチオンカラムを用いて精製を行う方法が、Fcγ受容体をGSTでタグ付加するための方法として適切に採用される。得られたシグナルは好ましくは、例えば、GRAPHPAD PRISM(GraphPad, San Diego)等のソフトウェアを用いて非線形回帰解析を利用する一部位競合(one-site competition)モデルに適合させることにより分析される。
FcγR結合活性が低下した変異Fc領域とは、対応する親Fc領域と変異Fc領域を実質的に同じ量用いて測定を実施する場合、親Fc領域よりも本質的に弱い結合活性でFcγRに結合するFc領域をいう。さらに、FcγR結合活性が増強された変異Fc領域とは、親Fc領域と変異Fc領域を実質的に同じ量用いて測定を実施する場合、対応する親Fc領域よりも本質的に強い結合活性でFcγRに結合するFc領域をいう。FcγR結合活性を維持した変異Fc領域とは、対応する親Fc領域と変異Fc領域を含有するポリペプチドとを実質的に同じ量用いて測定を実施する場合、親Fc領域のものと同等または本質的に異ならない結合活性でFcγRに結合するFc領域をいう。
様々なFcγRに対するFc領域の結合活性が増強されているかまたは低下しているか否かは、上述の測定方法にしたがって決定された、様々なFcγRのFc領域への結合の量の増加または減少から決定することができる。ここで、Fc領域への様々なFcγRの結合の量は、分析物としての様々なFcγRとFc領域との相互作用の前と後で変化したセンサーグラムのRU値における差を、Fc領域がセンサーチップに捕捉される前と後で変化したセンサーグラムのRU値における差で除算することによって得られる値として評価することができる。
本発明において、増強されたFcγRIIb結合活性とは好ましくは、例えば、上述の測定方法によって測定されたKD値において、[FcγRIIbに対する親Fc領域のKD値]/[FcγRIIbに対する変異Fc領域のKD値]の比が、好ましくは2.0以上、3.0以上、4.0以上、5.0以上、6.0以上、7.0以上、8.0以上、9.0以上、10以上、15以上、20以上、25以上、30以上、35以上、40以上、45以上、またはさらに50以上、55以上、60以上、65以上、70以上、75以上、80以上、85以上、90以上、95以上、または100以上になることを意味する。
FcγRIIbに対する本明細書に記載の変異Fc領域のKD値(mol/L)は好ましくは、FcγRIIbに対する親Fc領域のものより低く、例えば2.0×10-6 M以下、1.0×10-6 M以下、9.0×10-7 M以下、8.0×10-7 M以下、7.0×10-7 M以下、6.0×10-7 M以下、5.0×10-7 M以下、4.0×10-7 M以下、3.0×10-7 M以下、2.0×10-7 M以下、1.0×10-7 M以下、9.0×10-8 M以下、8.0×10-8 M以下、7.0×10-8 M以下、6.0×10-8 M以下、5.0×10-8 M以下であってよい。
さらに、FcγRIIaと比較してFcγRIIbに対する結合選択性が増強された変異Fc領域とは、以下のFc領域をいう:(a)FcγRIIb結合活性が増強され、かつFcγRIIa結合活性が維持されているかもしくは低下している;(b)FcγRIIb結合活性が増強され、かつFcγRIIa結合活性も同様に増強されているが、FcγRIIa結合活性の増強の程度がFcγRIIb結合活性の増強の程度よりも低い;または(c)FcγRIIb結合活性が低減され、かつFcγRIIa結合活性も同様に低減されているが、FcγRIIb結合活性の低減の程度がFcγRIIa結合活性の低減の程度よりも低い。変異Fc領域が、FcγRIIaよりもFcγRIIbに対して改善された結合選択性を有するか否かを、例えば変異Fc領域のFcγRIIaに対するKD値とFcγRIIbに対するKD値の比([FcγRIIaに対する変異Fc領域のKD値]/[FcγRIIbに対する変異Fc領域のKD値]の比)を、親Fc領域のFcγRIIaに対するKD値とFcγRIIbに対するKD値の比([FcγRIIaに対する親Fc領域のKD値]/[FcγRIIbに対する親Fc領域のKD値]の比)と比較することによって決定することができ、これらは上述の例にしたがって決定されたものである。具体的には、変異Fc領域に対するKD比が、親Fc領域のKD比よりも大きい場合、変異Fc領域は、親Fc領域と比較して、FcγRIIaよりもFcγRIIbに対する改善された結合選択性を有すると決定することができる。特にヒトにおいて、FcγRIIbのアミノ酸配列がFcγRIIa(H型)よりもFcγRIIa(R型)と高い同一性を共有することから、FcγRIIb結合活性は、FcγRIIa(H型)よりもFcγRIIa(R型)への結合活性と相関する蓋然性が高い。したがって、ヒトFcγRIIa(R型)と比較してヒトFcγRIIbに対する結合選択性を増強することができるアミノ酸改変を見出すことは、ヒトにおいてFcγRIIaと比較してFcγRIIbに対する結合選択性を増強するために重要である。
本発明の変異Fc領域が、親Fc領域のものと比較して、FcγRIIbに対するより高い結合活性およびFcγRIII(例えばFcγRIIIaまたはFcγRIIIb)に対するより低い結合活性を有する場合、変異Fc領域はFcγRIIb特異的であると言うことができる。
2.活性測定法
一局面において、生物学的活性を有する抗ミオスタチン抗体を同定するための測定法が提供される。生物学的活性は、例えば、ミオスタチンの活性化を阻害する、潜在型ミオスタチンからの成熟型ミオスタチンの遊離を阻止する、潜在型ミオスタチンのタンパク質分解性切断を阻害する、潜在型ミオスタチンへのプロテアーゼの接近を阻止することなどを含んでよい。また、このような生物学的活性をインビボおよび/またはインビトロで有する抗体が、提供される。特定の態様において、本発明の抗体は、このような生物学的活性について試験される。
特定の態様において、試験抗体が潜在型ミオスタチンの切断を阻害するかどうかは、試験抗体の存在下または非存在下で、潜在型ミオスタチンを切断することができるプロテアーゼを潜在型ミオスタチンに接触させた後、電気泳動、クロマトグラフィー、免疫ブロット分析、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、または質量分析など、当技術分野で公知の方法を用いて、潜在型ミオスタチン(ミオスタチン)の切断産物を検出することによって決定される(例えば、Thies et al., Growth Factors 18(4):251-259 (2001)を参照のこと)。試験抗体の存在下で(または試験抗体との接触後に)、潜在型ミオスタチン(例えばヒトミオスタチンプロペプチド)の切断産物の量の減少が検出される場合、試験抗体は、潜在型ミオスタチンの切断を阻害することができる抗体として同定される。特定の態様において、試験抗体が、潜在型ミオスタチンへのプロテアーゼの接近を阻止するかどうかは、例えばELISAまたはBIACORE(登録商標)など、プロテアーゼと潜在型ミオスタチンとの間のタンパク質相互作用の検出のための方法によって決定される。試験抗体の存在下で(または試験抗体との接触後に)、プロテアーゼと潜在型ミオスタチンとの間の相互作用の減少が検出される場合、試験抗体は、潜在型ミオスタチンへのプロテアーゼの接近を阻止ことができる抗体として同定される。
特定の態様において、試験抗体が、潜在型ミオスタチンからの成熟型ミオスタチンの遊離を阻止するかどうかは、成熟型ミオスタチン活性、例えばミオスタチン受容体への結合の活性、またはミオスタチン受容体(例えばActRIIb)を発現する細胞におけるシグナル伝達を媒介する活性を検出することによって決定される。そのような測定法に有用な細胞は、内因性のミオスタチン受容体を発現する細胞、例えばL6ミオサイトであってよく、または、ミオスタチン受容体、例えばアクチビンII型受容体などのアクチビン受容体をコードする導入遺伝子を、一過性にもしくは安定に発現するように遺伝的に改変された細胞であってよい(Thies et al, 上記)。ミオスタチンのミオスタチン受容体への結合は、受容体結合測定を用いて検出することができる。ミオスタチンが媒介するシグナル伝達は、例えばSmadポリペプチドのリン酸化を試験する、レポーター遺伝子を含むミオスタチン制御遺伝子の発現を試験する、またはミオスタチン依存性細胞の増殖を測定することにより、シグナル伝達経路の任意のレベルにおいて検出することができる。試験抗体の存在下で(または試験抗体との接触後に)、成熟型ミオスタチン活性の減少が検出される場合、試験抗体は、潜在型ミオスタチンからの成熟型ミオスタチンの遊離を阻止ことができる抗体として同定される。
ミオスタチン活性化の阻害はまた、実施例に記載し例証する方法を用いて検出および/または測定することができる。これらのまたは他の適したタイプの測定法を用いて、ミオスタチンの活性化を阻害できる抗体について、試験抗体をスクリーニングすることができる。特定の態様において、ミオスタチン活性化の阻害は、同様の条件下での陰性対照と比較して、こうした測定法におけるミオスタチン活性化の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、もしくは40%、またはそれを超える低下を含む。いくつかの態様において、それは、少なくとも45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%、またはそれを超えるミオスタチン活性化の阻害をさす。
別の局面において、ミオスタチンと免疫複合体(すなわち、抗原-抗体複合体)を形成する抗ミオスタチン抗体を同定するための測定法を提供する。インビボおよび/またはインビトロでのそのような生物学的活性を有する抗体もまた、提供される。
特定の態様において、本発明の抗体を、そのような生物学的活性について試験する。
特定の態様において、免疫複合体の形成は、サイズ排除(ゲルろ過)クロマトグラフィー、超遠心分離、光散乱、電子顕微鏡、または質量分析などの方法によって評価される(Mol. Immunol. 39:77-84 (2002), Mol. Immunol. 47:357-364 (2009))。これらの方法は、免疫複合体が、抗体のみまたは抗原のみよりも大きい分子であるという性質を利用する。2つ以上の抗体および2つ以上の抗原(例えばミオスタチン分子)を含有する大きな複合体が、試験抗体および抗原の存在下で検出される場合、試験抗体は、2つ以上の抗体および2つ以上のミオスタチン分子を含有する免疫複合体を形成することができる抗体として同定される。別の態様において、免疫複合体の形成は、ELISA、FACS、またはSPR(表面プラズモン共鳴アッセイ;例えばBIACORE(登録商標)を用いる)などの方法によって評価される(Shields et al., J. Biol. Chem. 276(9):6591-6604 (2001); Singh et al., J. Immunol. Methods 50:109-114 (1982); Suzuki et al., J. Immunol. 184(4):1968-1976 (2010); Luo et al., mAbs 1(5):491-504 (2009))。これらの方法は、2つ以上の抗体および2つ以上の抗原を含有する免疫複合体が、抗体または抗原のみよりも、Fc受容体または補体成分により強く結合することができるという性質を利用する。Fc受容体または補体成分への結合の増強が、抗体のみの存在下と比較して、試験抗体と抗原の両方の存在下で検出される場合、試験抗体は、2つ以上の抗体および2つ以上のミオスタチン分子を含有する免疫複合体を形成することができる抗体として同定される。別の態様において、免疫複合体の形成は、試験抗体を動物(例えばマウス)に投与し、血漿からの抗原のクリアランスを測定することによって評価される。上述のように、2つ以上の抗体および2つ以上の抗原を含有する免疫複合体を形成する抗体は、血漿からの抗原の消失を加速することが期待される。したがって参照抗体を投与したマウスと比較して、試験抗体を投与したマウスで、血漿からのミオスタチンの消失の加速が観察される場合、試験抗体は、参照抗体よりも効率的に2つ以上の抗体および2つ以上のミオスタチン分子を含有する免疫複合体を形成することができる抗体として同定される。
D.イムノコンジュゲート
いくつかの態様において本発明は、1つまたは複数の細胞傷害剤(例えば化学療法剤または化学療法薬、増殖阻害剤、毒素(例えば細菌、真菌、植物もしくは動物起源のタンパク質毒素、酵素的に活性な毒素、もしくはそれらの断片)または放射性同位体)にコンジュゲートされた本明細書の抗ミオスタチン抗体を含むイムノコンジュゲートを提供する。
いくつかの態様において本発明は、1つまたは複数の細胞傷害剤(例えば化学療法剤または化学療法薬、増殖阻害剤、毒素(例えば細菌、真菌、植物もしくは動物起源のタンパク質毒素、酵素的に活性な毒素、もしくはそれらの断片)または放射性同位体)にコンジュゲートされた本明細書の変異Fc領域を含むポリペプチドを含むイムノコンジュゲートを提供する。
一態様において、イムノコンジュゲートは、抗体が、これらに限定されるものではないが以下を含む1つまたは複数の薬剤にコンジュゲートされた、抗体-薬剤コンジュゲート (antibody-drug conjugate: ADC) である:メイタンシノイド(米国特許第5,208,020号、第5,416,064号、および欧州特許第0,425,235号B1参照);例えばモノメチルオーリスタチン薬剤部分DEおよびDF(MMAEおよびMMAF)(米国特許第5,635,483号および第5,780,588号および第7,498,298号参照)などのオーリスタチン;ドラスタチン;カリケアマイシンまたはその誘導体(米国特許第5,712,374号、第5,714,586号、第5,739,116号、第5,767,285号、第5,770,701号、第5,770,710号、第5,773,001号、および第5,877,296号;Hinman et al., Cancer Res. 53:3336-3342 (1993);ならびにLode et al., Cancer Res. 58:2925-2928 (1998) 参照);ダウノマイシンまたはドキソルビシンなどのアントラサイクリン(Kratz et al., Current Med. Chem. 13:477-523 (2006);Jeffrey et al., Bioorganic & Med. Chem. Letters 16:358-362 (2006);Torgov et al., Bioconj. Chem. 16:717-721 (2005);Nagy et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:829-834 (2000);Dubowchik et al., Bioorg. & Med. Chem. Letters 12:1529-1532 (2002);King et al., J. Med. Chem. 45:4336-4343 (2002);および米国特許第6,630,579号参照);メトトレキサート;ビンデシン;ドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセル、およびオルタタキセルなどのタキサン;トリコテセン;ならびにCC1065。
別の態様において、イムノコンジュゲートは、これらに限定されるものではないが以下を含む酵素的に活性な毒素またはその断片にコンジュゲートされた、本明細書に記載の抗体を含む:ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌 (Pseudomonas aeruginosa) 由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、シナアブラギリ (Aleurites fordii) タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ (Phytolacca americana) タンパク質(PAPI、PAPIIおよびPAP-S)、ツルレイシ (momordica charantia) 阻害剤、クルシン (curcin)、クロチン、サボンソウ (saponaria officinalis) 阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン (mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、ならびにトリコテセン。
別の態様において、イムノコンジュゲートは、放射性コンジュゲートを形成するために放射性原子にコンジュゲートされた本明細書に記載の抗体を含む。様々な放射性同位体が放射性コンジュゲートの製造に利用可能である。例は、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、S153m、Bi212、P32、Pb212およびLuの放射性同位体を含む。放射性コンジュゲートを検出のために使用する場合、放射性コンジュゲートは、シンチグラフィー検査用の放射性原子(例えばTc-99mもしくはI123)、または、核磁気共鳴 (NMR) イメージング(磁気共鳴イメージング、MRIとしても知られる)用のスピン標識(例えばここでもヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン、および鉄)を含み得る。
抗体および細胞傷害剤のコンジュゲートは、様々な二官能性タンパク質連結剤を用いて作製され得る。例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート (SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート (SMCC)、イミノチオラン (IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHCl)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6-ジイソシアネート)、およびビス活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)である。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al., Science 238:1098 (1987) に記載されるようにして調製され得る。炭素-14標識された1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸 (MX-DTPA) は、抗体への放射性核種のコンジュゲーションのための例示的なキレート剤である。WO 1994/11026を参照のこと。リンカーは、細胞内での細胞傷害薬の放出を促進する「切断可能なリンカー」であり得る。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカー、またはジスルフィド含有リンカー(Chari et al., Cancer Res. 52:127-131 (1992);米国特許第5,208,020号)が使用され得る。
本明細書のイムノコンジュゲートまたはADCは、(例えば、Pierce Biotechnology, Inc., Rockford, IL., U.S.Aから)市販されているBMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、およびスルホ-SMPB、ならびにSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)を含むがこれらに限定されない架橋試薬を用いて調製されるコンジュゲートを明示的に考慮するが、これらに限定されない。
E.診断および検出のための方法および組成物
特定の態様において、本明細書で提供される抗ミオスタチン抗体のいずれも、生物学的サンプルにおけるミオスタチンの存在を検出するのに有用である。本明細書で用いられる用語「検出」は、定量的または定性的な検出を包含する。特定の態様において、生物学的サンプルは、細胞または組織、例えば、血清、全血、血奬、生検試料、組織試料、細胞懸濁液、唾液、痰、口腔液、脳脊髄液、羊水、腹水、乳汁、初乳、乳腺分泌物、リンパ液、尿、汗、涙液、胃液、関節液、腹水、眼液、または粘液を含む。
一態様において、診断方法または検出方法において使用するための抗ミオスタチン抗体が提供される。さらなる局面において、生物学的サンプル中の潜在型ミオスタチンまたはミオスタチンプロペプチドの存在を検出する方法が提供される。特定の態様において、この方法は、ミオスタチンへの抗ミオスタチン抗体の結合が許容される条件下で本明細書に記載の抗ミオスタチン抗体と生物学的サンプルを接触させること、および抗ミオスタチン抗体とミオスタチンの間で複合体が形成されたかどうかを検出することを含む。そのような方法は、インビトロの方法またはインビボの方法であり得る。一態様において、抗ミオスタチン抗体は、例えばミオスタチンが患者を選択するためのバイオマーカーである場合、抗ミオスタチン抗体を用いる治療に適合する被験体を選択するために使用される。
本発明の抗体を用いて診断され得る例示的な障害は、筋ジストロフィー(MD;デュシェンヌ筋ジストロフィーを含む)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、筋萎縮、器官萎縮、手根管症候群、フレイル、鬱血性閉塞性肺疾患(COPD)、サルコペニア、悪液質、筋肉消耗症候群、HIV誘導性筋肉消耗、2型糖尿病、耐糖能異常、メタボリック症候群(シンドロームXを含む)、インシュリン抵抗性(火傷または窒素非平衡などの外傷によって誘導される抵抗性を含む)、脂肪組織疾患(例えば肥満、異脂肪血症、非アルコール依存性脂肪肝疾患など)、骨粗しょう症、オステオペニア、変形関節炎、および代謝性骨疾患(骨量の低下、早熟性性腺機能不全、アンドロゲン抑制、ビタミンD欠乏症、続発性上皮小体機能亢進症、栄養欠乏、および神経性食欲不振症を含む)が含まれるが、これらに限定されない。
特定の態様において、標識された抗ミオスタチン抗体が提供される。標識は、直接的に検出される標識または部分(例えば、蛍光標識、発色標識、高電子密度標識、化学発光標識、および放射性標識)ならびに、例えば酵素反応または分子間相互作用を通じて間接的に検出される部分(例えば酵素またはリガンド)を含むが、これらに限定されない。例示的な標識は、これらに限定されるものではないが、以下を含む:放射性同位体32P、14C、125I、3Hおよび131I、希土類キレートなどの発蛍光団またはフルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号)などのルシフェラーゼ、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ (horseradish peroxidase: HRP)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、単糖オキシダーゼ(例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼおよびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼなどの複素環オキシダーゼ、過酸化水素を用いて色素前駆体を酸化する酵素(例えばHRP、ラクトペルオキシダーゼ、またはミクロペルオキシダーゼ)と連結されたもの、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定なフリーラジカル類、ならびにこれらに類するもの。
F.薬学的製剤
本明細書に記載の抗ミオスタチン抗体の薬学的製剤は、所望の純度を有する抗体を、1つまたは複数の任意の薬学的に許容される担体 (Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)) と混合することによって、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、調製される。
本明細書に記載の変異Fc領域を含むポリペプチドの薬学的製剤は、所望の純度を有するそのようなポリペプチドを、1つまたは複数の任意の薬学的に許容される担体と、混合することによって、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、調製される。
薬学的に許容される担体は、概して、用いられる際の用量および濃度ではレシピエントに対して非毒性であり、これらに限定されるものではないが、以下のものを含む:リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む、抗酸化剤;保存料(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、またはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む、単糖、二糖、および他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、ソルビトールなどの、砂糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン類;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);および/またはポリエチレングリコール (PEG) などの非イオン系表面活性剤。本明細書の例示的な薬学的に許容される担体は、さらに、可溶性中性活性型ヒアルロニダーゼ糖タンパク質 (sHASEGP)(例えば、rHuPH20 (HYLENEX(登録商標)、Baxter International, Inc.) などのヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質)などの間質性薬剤分散剤を含む。特定の例示的sHASEGPおよびその使用方法は(rHuPH20を含む)、米国特許出願公開第2005/0260186号および第2006/0104968号に記載されている。一局面において、sHASEGPは、コンドロイチナーゼなどの1つまたは複数の追加的なグリコサミノグリカナーゼと組み合わせられる。
例示的な凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6,267,958号に記載されている。水溶液抗体製剤は、米国特許第6,171,586号およびWO 2006/044908に記載のものを含み、後者の製剤はヒスチジン-アセテート緩衝液を含んでいる。
本明細書の製剤は、治療される特定の適応症のために必要であれば1つより多くの有効成分を含んでもよい。互いに悪影響を与えあわない相補的な活性を伴うものが好ましい。このような有効成分は、意図された目的のために有効である量で、好適に組み合わせられて存在する。
有効成分は、例えば液滴形成(コアセルベーション)手法によってまたは界面重合によって調製されたマイクロカプセル(それぞれ、例えば、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセル、およびポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル)に取り込まれてもよいし、コロイド状薬剤送達システム(例えば、リポソーム、アルブミン小球体、マイクロエマルション、ナノ粒子、およびナノカプセル)に取り込まれてもよいし、マクロエマルションに取り込まれてもよい。このような手法は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980) に開示されている。
徐放性製剤を調製してもよい。徐放性製剤の好適な例は、抗体を含んだ固体疎水性ポリマーの半透過性マトリクスを含み、当該マトリクスは例えばフィルムまたはマイクロカプセルなどの造形品の形態である。
生体内 (in vivo) 投与のために使用される製剤は、通常無菌である。無菌状態は、例えば滅菌ろ過膜を通して濾過することなどにより、容易に達成される。
G.治療的方法および治療用組成物
本明細書で提供される抗ミオスタチン抗体のいずれも、治療的な方法において使用されてよい。同様に、本明細書で提供される変異Fc領域を含むポリペプチドのいずれも、治療的な方法において使用されてよい。
一局面において、医薬品としての使用のための、抗ミオスタチン抗体が提供される。さらなる局面において、筋肉消耗疾患の治療における使用のための、抗ミオスタチン抗体が提供される。特定の態様において、治療方法における使用のための、抗ミオスタチン抗体が提供される。特定の態様において、本発明は、筋肉消耗疾患を有する個体を治療する方法であって、当該個体に抗ミオスタチン抗体の有効量を投与する工程を含む方法における使用のための、抗ミオスタチン抗体を提供する。一態様において、方法は、当該個体に少なくとも1つの追加治療剤の有効量を投与する工程を、さらに含む。さらなる態様において、本発明は、筋組織の量を増加させることにおける使用のための、抗ミオスタチン抗体を提供する。特定の態様において、本発明は、個体において筋組織の量を増加させる方法であって、筋組織の量を増加させるために、抗ミオスタチン抗体の有効量を当該個体に投与する工程を含む方法における使用のための、抗ミオスタチン抗体を提供する。さらなる態様において、本発明は、筋組織の強度を増加させることにおける使用のための、抗ミオスタチン抗体を提供する。特定の態様において、本発明は、個体において筋組織の強度を増加させる方法であって、筋組織の強度を増加させるために、抗ミオスタチン抗体の有効量を当該個体に投与する工程を含む方法における使用のための、抗ミオスタチン抗体を提供する。さらなる態様において、本発明は、体脂肪の蓄積を減少させることにおける使用のための、抗ミオスタチン抗体を提供する。特定の態様において、本発明は、個体において体脂肪の蓄積を減少させる方法であって、体脂肪の蓄積を減少させるために、抗ミオスタチン抗体の有効量を当該個体に投与する工程を含む方法における使用のための、抗ミオスタチン抗体を提供する。上記態様の任意のものによる「個体」は、好適にはヒトである。
本発明の抗ミオスタチン抗体は、pH依存的結合特性を示し得る。さらなる態様において、本発明は、血漿からのミオスタチンのクリアランスを増強させることにおける使用のための、抗ミオスタチン抗体を提供する。特定の態様において、本発明は、個体において血漿からのミオスタチンのクリアランスを増強させる方法であって、血漿からのミオスタチンのクリアランスを増強させるために、抗ミオスタチン抗体の有効量を当該個体に投与する工程を含む方法における使用のための、抗ミオスタチン抗体を提供する。一態様において、pH依存的結合特性を有さない従来の抗ミオスタチン抗体に比べ、pH依存的結合特性を有する抗ミオスタチン抗体は、血漿からのミオスタチンのクリアランスを増強させる。さらなる態様において、pH依存的結合特性を有さない従来の抗ミオスタチン抗体に比べ、pH5.8とpH7.4との間でpH依存的結合特性を有する抗ミオスタチン抗体は、血漿からのミオスタチンのクリアランスを増強させる。上記態様の任意のものによる「個体」は、好適にはヒトである。
さらなる局面において、本発明は医薬品の製造または調製における抗ミオスタチン抗体の使用を提供する。一態様において、医薬品は、筋肉消耗疾患の治療のためのものである。さらなる態様において、医薬品は、筋肉消耗疾患を治療する方法であって、筋肉消耗疾患を有する個体に医薬品の有効量を投与する工程を含む方法における使用のためのものである。一態様において、方法は、当該個体に少なくとも1つの追加治療剤の有効量を投与する工程を、さらに含む。さらなる態様において、医薬品は、筋組織の量を増加させるためのものである。さらなる態様において、医薬品は、個体において筋組織の量を増加させる方法であって、筋組織の量を増加させるために医薬品の有効量を当該個体に投与する工程を含む方法における使用のためのものである。さらなる態様において、医薬品は、筋組織の強度を増加させるためのものである。さらなる態様において、医薬品は、個体において筋組織の強度を増加させる方法であって、筋組織の強度を増加させるために医薬品の有効量を当該個体に投与する工程を含む方法における使用のためのものである。さらなる態様において、医薬品は、体脂肪の蓄積を減少させるためのものである。さらなる態様において、医薬品は、個体において体脂肪の蓄積を減少させる方法であって、体脂肪の蓄積を減少させるために医薬品の有効量を当該個体に投与する工程を含む方法における使用のためのものである。上記態様の任意のものによる「個体」は、ヒトであってよい。
本発明の抗ミオスタチン抗体は、pH依存的結合特性を示し得る。さらなる態様において、医薬品は、血漿からのミオスタチンのクリアランスを増強させるためのものである。さらなる態様において、医薬品は、個体において血漿からのミオスタチンのクリアランスを増強させる方法であって、血漿からのミオスタチンのクリアランスを増強させるために医薬品の有効量を当該個体に投与する工程を含む方法における使用のためのものである。一態様において、pH依存的結合特性を有さない従来の抗ミオスタチン抗体に比べ、pH依存的結合特性を有する抗ミオスタチン抗体は、血漿からのミオスタチンのクリアランスを増強させる。さらなる態様において、抗ミオスタチン抗体は、pH5.8とpH7.4との間で異なるpH依存的結合特性を示す。上記態様の任意のものによる「個体」は、好適にはヒトである。
別の局面において、本発明は、筋肉消耗疾患を治療するための方法を提供する。一態様において、方法は、そのような筋肉消耗疾患を有する個体に、本明細書で提供される抗ミオスタチン抗体の有効量を投与する工程を含む。一態様において、方法は、当該個体に少なくとも1つの追加治療剤の有効量を投与する工程を、さらに含む。上記態様の任意のものによる「個体」は、ヒトであってよい。
別の局面において、本発明は、個体における筋組織の量を増加させるための方法を提供する。一態様において、方法は、筋組織の量を増加させるために、本明細書で提供される抗ミオスタチン抗体の有効量を個体に投与する工程を含む。一態様において、「個体」はヒトである。
別の局面において、本発明は、個体における筋組織の強度を増加させるための方法を提供する。一態様において、方法は、筋組織の強度を増加させるために、本明細書で提供される抗ミオスタチン抗体の有効量を個体に投与する工程を含む。一態様において、「個体」はヒトである。
別の局面において、本発明は、個体における体脂肪の蓄積を減少させるための方法を提供する。一態様において、方法は、体脂肪の蓄積を減少させるために、本明細書で提供される抗ミオスタチン抗体の有効量を個体に投与する工程を含む。一態様において、「個体」はヒトである。
本発明の抗ミオスタチン抗体は、pH依存的結合特性を示し得る。さらなる態様において、本発明は、個体における血漿からのミオスタチンのクリアランスを増強するための方法を提供する。一態様において、方法は、血漿からのミオスタチンのクリアランスを増強するために、本明細書で提供される抗ミオスタチン抗体の有効量を個体に投与する工程を含む。一態様において、pH依存的結合特性を有さない従来の抗ミオスタチン抗体に比べ、pH依存的結合特性を有する抗ミオスタチン抗体は、血漿からのミオスタチンのクリアランスを増強する。さらなる態様において、抗ミオスタチン抗体は、pH5.8とpH7.4との間で異なるpH依存的結合特性を示す。一態様において、「個体」はヒトである。
さらなる局面において、本発明は、本明細書で提供される抗ミオスタチン抗体の任意のものを含む、薬学的製剤を提供する(例えば上述の治療的方法の任意のものにおける使用のための)。一態様において、薬学的製剤は、本明細書で提供される抗ミオスタチン抗体の任意のものと、薬学的に許容される担体とを含む。別の態様において、薬学的製剤は、本明細書で提供される抗ミオスタチン抗体の任意のものと、少なくとも1つの追加治療剤とを含む。
さらなる局面において、薬学的製剤は、筋肉消耗疾患の治療のためのものである。さらなる態様において、薬学的製剤は、筋組織の量を増加させるためのものである。さらなる態様において、薬学的製剤は、筋組織の強度を増加させるためのものである。さらなる態様において、薬学的製剤は、体脂肪の蓄積を減少させるためのものである。本発明の抗ミオスタチン抗体は、pH依存的結合特性を示し得る。さらなる態様において、薬学的製剤は、血漿からのミオスタチンのクリアランスを増強するためのものである。一態様において、薬学的製剤は、筋肉消耗疾患を有する個体に投与される。上記態様の任意のものによる「個体」は、好適にはヒトである。
さらなる局面において、本発明は、本明細書で提供される抗ミオスタチン抗体の任意のものを、薬学的に許容される担体と混合する工程を含む、医薬品または薬学的製剤を調製するための方法を提供する(例えば上述の治療的方法の任意のものにおける使用のための)。一態様において、医薬品または薬学的製剤を調製するための方法は、少なくとも1種の追加の治療剤を医薬品または薬学的製剤に添加する工程を、さらに含む。
特定の態様において、筋肉消耗疾患は、筋ジストロフィー(MD;デュシェンヌ筋ジストロフィーを含む)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、筋萎縮、器官萎縮、手根管症候群、フレイル、鬱血性閉塞性肺疾患(COPD)、サルコペニア、悪液質、筋肉消耗症候群、HIV誘導性筋肉消耗、2型糖尿病、耐糖能異常、メタボリック症候群(シンドロームXを含む)、インシュリン抵抗性(火傷または窒素非平衡などの外傷によって誘導される抵抗性を含む)、脂肪組織疾患(例えば肥満、異脂肪血症、非アルコール依存性脂肪肝疾患など)、骨粗しょう症、オステオペニア、変形関節炎、および代謝性骨疾患(骨量の低下、早熟性性腺機能不全、アンドロゲン抑制、ビタミンD欠乏症、続発性上皮小体機能亢進症、栄養欠乏、および神経性食欲不振症を含む)からなる群より選択される。
本明細書で提供される変異Fc領域を含むポリペプチドの任意のものが、治療的な方法において使用されてよい。さらなる局面において、本発明は、例えば治療的な方法において使用するための、本明細書で提供される変異Fc領域を含むポリペプチドの任意のものを含むポリペプチドを含む薬学的製剤を提供する。一態様において、薬学的製剤は、本明細書で提供される変異Fc領域を含むポリペプチドの任意のものを含むポリペプチドと、薬学的に許容される担体とを含む。別の態様において、薬学的製剤は、本明細書で提供される変異Fc領域の任意のものを含むポリペプチドと、少なくとも1つの追加の治療剤とを含む。
一局面において、医薬品としての使用のための、変異Fc領域を含むポリペプチドが提供される。さらなる局面において、障害の治療における使用のための、変異Fc領域を含むポリペプチドが提供される。特定の態様において、治療方法における使用のための、変異Fc領域を含むポリペプチドが提供される。特定の態様において、本発明は、障害を有する個体を治療する方法であって、本明細書で提供される変異Fc領域を含むポリペプチドの有効量を個体に投与する工程を含む方法における使用のための、変異Fc領域を含むポリペプチドを提供する。一態様において、方法は、当該個体に少なくとも1つの追加治療剤の有効量を投与する工程を、さらに含む。一態様において、「個体」はヒトである。
さらなる局面において、本発明は、医薬品の製造または調製における変異Fc領域を含むポリペプチドの使用を提供する。一態様において、医薬品は、障害の治療のためのものである。いくつかの局面において、ポリペプチドは抗体である。いくつかの局面において、ポリペプチドはFc融合タンパク質である。さらなる態様において、医薬品は、障害を治療する方法であって、治療すべき障害を有する個体に医薬品の有効量を投与する工程を含む方法における使用のためのものである。一態様において、方法は、当該個体に少なくとも1つの追加治療剤の有効量を投与する工程を、さらに含む。一態様において、「個体」はヒトである。
さらなる局面において、本発明は、障害を治療するための方法を提供する。一態様において、方法は、変異Fc領域を含むポリペプチドの有効量を、そのような障害を有する個体に投与する工程を含む。一態様において、方法は、当該個体に少なくとも1つの追加治療剤の有効量を投与する工程を、さらに含む。一態様において、「個体」はヒトである。
さらなる局面において、本発明は、本明細書に記載の治療的方法の任意のものなどの治療的方法において使用するための、本明細書で提供される変異Fc領域を含むポリペプチドを含む薬学的製剤を提供する。一態様において、薬学的製剤は、本明細書で提供される変異Fc領域を含むポリペプチドと、薬学的に許容される担体とを含む。別の態様において、薬学的製剤は、本明細書で提供される変異Fc領域を含むポリペプチドと、少なくとも1つの追加の治療剤とを含む。
さらなる局面において、薬学的製剤は、障害の治療のためのものである。一態様において、薬学的製剤は、障害を有する個体に投与される。一態様において、「個体」はヒトである。
さらなる態様において、本発明は、B細胞、肥満細胞、樹状細胞、および/または好塩基球の活性化を抑制することにおける使用のための、変異Fc領域を含むポリペプチドを提供する。特定の態様において、本発明は、個体におけるB細胞、肥満細胞、樹状細胞、および/または好塩基球の活性化を抑制する方法であって、B細胞、肥満細胞、樹状細胞、および/または好塩基球の活性化を抑制するために、変異Fc領域を含むポリペプチドの有効量を個体に投与する工程を含む方法における使用のための、変異Fc領域を含むポリペプチドを提供する。一態様において、「個体」はヒトである。
さらなる局面において、本発明は、医薬品の製造または調製における変異Fc領域を含むポリペプチドの使用を提供する。いくつかの局面において、ポリペプチドは抗体である。いくつかの局面において、ポリペプチドはFc融合タンパク質である。さらなる態様において、医薬品は、B細胞、肥満細胞、樹状細胞、および/または好塩基球の活性化を抑制するためのものである。さらなる態様において、医薬品は、個体におけるB細胞、肥満細胞、樹状細胞、および/または好塩基球の活性化を抑制する方法であって、B細胞、肥満細胞、樹状細胞、および/または好塩基球の活性化を抑制するために、医薬品の有効量を個体に投与する工程を含む方法における使用のためのものである。一態様において、「個体」はヒトである。
さらなる局面において、本発明は、個体において、B細胞、肥満細胞、樹状細胞、および/または好塩基球の活性化を抑制するための方法を提供する。一態様において、方法は、B細胞、肥満細胞、樹状細胞、および/または好塩基球の活性化を抑制するために、変異Fc領域を含むポリペプチドの有効量を個体に投与する工程を含む。一態様において、「個体」はヒトである。
さらなる局面において、本発明は変異Fc領域を含むポリペプチドを含む薬学的製剤を提供する。さらなる態様において、薬学的製剤は、B細胞、肥満細胞、樹状細胞、および/または好塩基球の活性化を抑制するためのものである。
本発明の変異Fc領域を含むポリペプチドは、B細胞、肥満細胞、樹状細胞、および/または好塩基球の活性化を抑制することができる。理論に拘束されることは望まないが、この活性化の抑制は、提供された変異Fc領域が、活性化型のFcγRを活性化せずにFcγRIIbに選択的に結合することの結果であると考えられる。本明細書で使用する「B細胞活性化」には、増殖、IgE産生、IgM産生、およびIgA産生が含まれる。理論に拘束されることは望まないが、B細胞の活性化の抑制は、本発明の変異Fc領域を含むポリペプチド上の提供された変異Fc領域が、FcγRIIbを、IgEと架橋させてB細胞のIgE産生を抑制する、IgMと架橋させてB細胞のIgM産生を抑制する、およびIgAと架橋させてIgA産生を抑制する能力の結果であると考えられる。上記以外で、上述のものと同様の抑制作用が、B細胞で発現されかつ細胞内のITAMドメインを含むかまたはITAMドメインと相互作用する分子(BCR、CD19、およびCD79bなど)と、FcγRIIbとを直接的または間接的に架橋することによって示される。本明細書で用いられる「肥満細胞の活性化」には、増殖、IgEによる活性化、および脱顆粒が含まれる。理論に拘束されることは望まないが、肥満細胞の活性化の抑制は、本発明の変異Fc領域を含むポリペプチド上の提供された変異Fc領域が、肥満細胞で発現されかつITAMドメインを含むかまたはITAMドメインと相互作用するIgE受容体分子(FcεRI、DAP12、およびCD200R3など)と、FcγRIIbとを直接的または間接的に架橋させる能力の結果であると考えられる。本明細書で用いられる「好塩基球の活性化」には、好塩基球の増殖および脱顆粒が含まれる。理論に拘束されることは望まないが、好塩基球の活性化の抑制は、本発明の変異Fc領域を含むポリペプチド上の提供された変異Fc領域が、細胞内にITAMドメインを含むかまたはITAMドメインと相互作用する細胞膜上の分子と、FcγRIIbとを直接的または間接的に架橋させる能力の結果であると考えられる。本明細書で用いられる「樹状細胞の活性化」には、樹状細胞の増殖および脱顆粒が含まれる。理論に拘束されることは望まないが、樹状細胞の活性化の抑制は、本発明の変異Fc領域を含むポリペプチド上の提供された変異Fc領域が、細胞内にITAMドメインを含むかまたはITAMドメインと相互作用する細胞膜上の分子と、FcγRIIbとを直接的または間接的に架橋させる能力の結果であると考えられる。
さらなる態様において、本発明は、免疫学的炎症性疾患の治療における使用のための、本明細書で提供される変異Fc領域を含むポリペプチドを提供する。特定の態様において、本発明は、個体において免疫学的炎症性疾患を治療する方法であって、免疫学的炎症性疾患を治療するために、変異Fc領域を含むポリペプチドの有効量を個体に投与する工程を含む方法における使用のための、変異Fc領域を含むポリペプチドを提供する。一態様において、「個体」はヒトである。
さらなる局面において、本発明は、医薬品の製造または調製における、本明細書で提供される変異Fc領域を含むポリペプチドの使用を提供する。いくつかの局面において、ポリペプチドは抗体である。いくつかの局面において、ポリペプチドはFc融合タンパク質である。さらなる態様において、医薬品は、免疫学的炎症性疾患を治療するためのものである。さらなる態様において、医薬品は、個体において免疫学的炎症性疾患を治療する方法であって、免疫学的炎症性疾患を治療するために、医薬品の有効量を当該個体に投与する工程を含む方法における使用のためのものである。上記態様の任意のものによる「個体」は、ヒトであってよい。
さらなる局面において、本発明は、個体において免疫学的炎症性疾患を治療するための方法を提供する。一態様において、方法は、免疫学的炎症性疾患を治療するために、変異Fc領域を含むポリペプチドの有効量を個体に投与する工程を含む。一態様において、「個体」はヒトである。
さらなる局面において、本発明は、本明細書で提供される変異Fc領域を含むポリペプチドの任意のものを含む薬学的製剤を提供する。さらなる態様において、薬学的製剤は、免疫学的炎症性疾患を治療するためのものである。
上述のように、本発明の変異Fc領域を含むポリペプチドが、B細胞、肥満細胞、樹状細胞、および/または好塩基球の活性化を抑制できることから、結果として本発明の変異Fc領域を含むポリペプチドの投与により、免疫学的炎症性疾患を治療または予防することができる。
特定の態様において、治療される免疫学的炎症性疾患は、関節リウマチ、自己免疫性肝炎、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性水疱形成疾患、自己免疫性副腎皮質疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少性紫斑病、巨赤血球性貧血、自己免疫性萎縮性胃炎、自己免疫性好中球減少症、自己免疫性睾丸炎、自己免疫性脳脊髄炎、自己免疫性受容体疾患、自己免疫性不妊症、慢性活動性肝炎、糸球体腎炎、間質性肺線維症、多発硬化症、パジェット病、骨粗しょう症、多発性骨髄腫、ブドウ膜炎、急性および慢性脊椎炎、痛風性関節炎、炎症性腸疾患、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、乾癬、クローン病、バセドウ病、若年型糖尿病、アジソン病、重症筋無力症、水晶体原性ブドウ膜炎、全身性エリテマトーデス、アレルギー性鼻炎、アレルギー性皮膚炎、潰瘍性大腸炎、過敏症、筋肉変性、悪液質、全身性強皮症、限局性強皮症、シェーグレン症候群、ベーチェット病、ライター症候群、I型およびII型糖尿病、骨吸収疾患、移植片対宿主反応、虚血再かん流傷害、アテローム性動脈硬化症、脳損傷、大脳マラリア、敗血症、敗血症性ショック、毒性ショック症候群、熱、汚染による筋肉痛、再生不良性貧血、溶血性貧血、特発性血小板減少症、グッドパスチャー症候群、ギラン・バレー症候群、橋本甲状腺炎、天疱瘡、IgAネフロパチー、花粉症、抗リン脂質抗体症候群、多発性筋炎、ヴェーゲナー肉芽腫症、結節性動脈炎、混合結合織疾患、線維筋痛、喘息、アトピー性皮膚炎、慢性萎縮性胃炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、自己免疫性膵炎、大動脈炎症候群、急速進行性糸球体腎炎、巨大赤芽球性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、原発性甲状腺機能低下症、特発性アジソン病、インシュリン依存真性糖尿病、慢性円板状エリテマトーデス、類天疱瘡、妊娠性ヘルペス、線状IgA水疱症、後天性表皮水疱症、円形脱毛症、尋常性白斑、サットン遠心性後天性白斑、原田病、自己免疫性視神経症、特発性無精子症、習慣性流産、低血糖症、慢性じんま疹、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、腸疾患性関節炎、反応性関節炎、脊椎関節症、腱付着部症、過敏性腸症候群、慢性疲労症候群、皮膚筋炎、封入体筋炎、シュミット症候群、グレーブス病、悪性貧血、ルポイド肝炎、初老期認知症、アルツハイマー病、脱髄障害、筋萎縮性側索硬化症、上皮小体機能低下症、ドレスラー症候群、イートン-ランバート症候群、疱疹性皮膚炎、脱毛症、進行性全身性硬化症、クレスト症候群(石灰症、レーノー現象、食道運動障害、強指症、および毛細管拡張症)、サルコイドーシス、リウマチ熱、多形性紅斑、クッシング症候群、輸血反応、ハンセン病、高安動脈炎、リウマチ性多発性筋痛、側頭動脈炎、巨細胞動脈炎、湿疹、リンパ腫様肉芽腫症、川崎病、心内膜炎、心内膜心筋繊維症、眼内炎、胎児赤芽球症、好酸球性筋膜炎、フェルティ症候群、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、移植片拒絶反応、流行性耳下腺炎、心筋症、化膿性関節炎、家族性地中海熱、マックル・ウェルズ症候群、ならびに高IgD症候群からなる群より選択される。
さらなる態様において、本発明は、自己抗原に対する抗体(自己抗体)の産生によって引き起こされ得るかまたはそれに関連し得る自己免疫疾患を治療または予防することにおける使用のための、変異Fc領域を含むポリペプチドを提供する。特定の態様において、本発明は、個体において自己抗原に対する抗体(自己抗体)の産生によって引き起こされ得るかまたはそれに関連し得る自己免疫疾患を治療または予防する方法であって、自己免疫疾患を治療または予防するために、変異Fc領域を含むポリペプチドの有効量を個体に投与する工程を含む方法における使用のための、変異Fc領域を含むポリペプチドを提供する。上記態様の任意のものによる「個体」は、好適にはヒトである。
さらなる局面において、本発明は、医薬品の製造または調製における変異Fc領域を含むポリペプチドの使用を提供する。いくつかの局面において、ポリペプチドは抗体である。いくつかの局面において、ポリペプチドはFc融合タンパク質である。さらなる態様において、医薬品は、自己抗原に対する抗体(自己抗体)の産生によって引き起こされ得るかまたはそれに関連し得る自己免疫疾患を治療または予防するためのものである。さらなる態様において、医薬品は、個体において自己抗原に対する抗体(自己抗体)の産生によって引き起こされ得るかまたはそれに関連し得る自己免疫疾患を治療または予防する方法であって、自己免疫疾患を治療または予防するために、医薬品の有効量を個体に投与する工程を含む方法における使用のためのものである。上記態様の任意のものによる「個体」は、ヒトであってよい。
さらなる局面において、本発明は、個体において自己抗原に対する抗体(自己抗体)の産生によって引き起こされ得るかまたはそれに関連し得る自己免疫疾患を治療または予防するための方法を提供する。一態様において、方法は、自己免疫疾患を治療または予防するために、変異Fc領域を含むポリペプチドの有効量を個体に投与する工程を含む。一態様において、「個体」はヒトである。
さらなる局面において、本発明は、本明細書で提供される変異Fc領域を含むポリペプチドの任意のものを含む薬学的製剤を提供する。さらなる態様において、薬学的製剤は、自己抗原に対する抗体(自己抗体)の産生によって引き起こされ得るかまたはそれに関連し得る自己免疫疾患を治療または予防するためのものである。
本発明の変異Fc領域を含むポリペプチドは、自己抗原に対する抗体(自己抗体)の産生によって引き起こされ得るかまたはそれに関連し得る自己免疫疾患を、これらの自己抗体の産生を抑制することによって、治療または予防することができる。抗体Fc部分とAchR(重症筋無力症の自己抗原)との融合分子の使用が、AchRを認識するBCRを発現するB細胞の増殖を抑制し、アポトーシスを誘導することが報告されている(J. Neuroimmunol 227: 35-43 (2010))。本発明の変異Fc領域と自己抗体によって認識される抗原との間で形成される融合タンパク質の使用が、B細胞上の自己抗原に対するBCRとFcγRIIbの架橋を可能にし、これにより、B細胞の増殖が抑制され、および/またはB細胞のアポトーシスが誘導される。
特定の態様において、治療または予防することができる自己免疫疾患は、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症、慢性萎縮性胃炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、自己免疫性膵炎、大動脈炎症候群、グッドパスチャー症候群、急速進行性糸球体腎炎、巨大赤芽球性貧血、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性好中球減少症、特発性血小板減少性紫斑病、バセドウ病、橋本甲状腺炎、原発性甲状腺機能低下症、特発性アジソン病、インシュリン依存真性糖尿病、慢性円板状エリテマトーデス、限局性強皮症、天疱瘡、類天疱瘡、妊娠性ヘルペス、線状IgA水疱症、後天性表皮水疱症、円形脱毛症、尋常性白斑、サットン遠心性後天性白斑、原田病、自己免疫性視神経症、特発性無精子症、習慣性流産、II型糖尿病、低血糖症、および慢性じんま疹からなる群より選択される。
さらなる態様において、本発明は、生物学的に必須のタンパク質の欠乏に関連する疾患を治療することにおける使用のための、変異Fc領域を含むポリペプチドを提供する。特定の態様において、本発明は、個体において生物学的に必須のタンパク質の欠乏に関連する疾患を治療する方法であって、当該疾患を治療するために、変異Fc領域を含むポリペプチドの有効量を個体に投与する工程を含む方法における使用のための、変異Fc領域を含むポリペプチドを提供する。上記態様の任意のものによる「個体」は、好適にはヒトである。
さらなる局面において、本発明は、医薬品の製造または調製における変異Fc領域を含むポリペプチドの使用を提供する。いくつかの局面において、ポリペプチドは抗体である。いくつかの局面において、ポリペプチドはFc融合タンパク質である。さらなる態様において、医薬品は、生物学的に必須のタンパク質の欠乏に関連する疾患を治療するためのものである。さらなる態様において、医薬品は、個体において生物学的に必須のタンパク質の欠乏に関連する疾患を治療する方法であって、当該疾患を治療するために、医薬品の有効量を当該個体に投与する工程を含む方法における使用のためのものである。上記態様の任意のものによる「個体」は、ヒトであってよい。
さらなる局面において、本発明は、個体において生物学的に必須のタンパク質の欠乏に関連する疾患を治療する方法を提供する。一態様において、方法は、当該疾患を治療するために、変異Fc領域を含むポリペプチドの有効量を個体に投与する工程を含む。一態様において、「個体」はヒトである。
さらなる局面において、本発明は、本明細書で提供される変異Fc領域を含むポリペプチドの任意のものを含む薬学的製剤を提供する。さらなる態様において、薬学的製剤は、生物学的に必須のタンパク質の欠乏に関連する疾患を治療するためのものである。
生物学的に必須のタンパク質の欠乏による疾患について、薬学的剤として当該タンパク質を投与し補充する治療的方法が使用される。しかしながら、患者は最初から当該タンパク質を欠いているため、外部から補充されたタンパク質は異物として認識され、このタンパク質に対する抗体が産生される。その結果、当該タンパク質は容易に除去され、薬剤としての効果は低減される。そのようなタンパク質と本発明の変異Fc領域との融合タンパク質の使用は、FcγRIIbと、B細胞上の当該タンパク質を認識するBCRとの間の架橋を可能にし、これが当該タンパク質に対する抗体産生を抑制する。
特定の態様において、補充すべきタンパク質は、第VIII因子、第IX因子、TPO、EPO、α-イズロニダーゼ、イズロン酸スルファターゼ, A型ヘパランN-スルファターゼ、B型α-N-アセチルグルコサミニダーゼ、C型アセチルCoA:α-グルコサミニダーゼアセチルトランスフェラーゼ、D型N-アセチルグルコサミン6-スルファターゼ、ガラクトース6-スルファターゼ、N-アセチルガラクトサミン4-スルファターゼ、β-グルクロニダーゼ、α-ガラクトシダーゼ、酸性α-ガラクトシダーゼ、およびグルコセレブロシダーゼからなる群より選択される。これらのタンパク質は、血友病、特発性血小板減少性紫斑病、腎性貧血、およびリソソーム病(ムコ多糖症、ファブリー病、ポンぺ病、およびゴーシェ病)などの疾患のために補充され得るが、これらに限定されない。
さらなる態様において、本発明は、ウイルス感染の治療における使用のための、変異Fc領域を含むポリペプチドを提供する。特定の態様において、本発明は、個体においてウイルス感染を治療する方法であって、ウイルス感染を治療するために、変異Fc領域を含むポリペプチドの有効量を個体に投与する工程を含む方法における使用のための、変異Fc領域を含むポリペプチドを提供する。上記態様の任意のものによる「個体」は、好適にはヒトである。
さらなる局面において、本発明は、医薬品の製造または調製における、本明細書で提供される変異Fc領域を含むポリペプチドの使用を提供する。いくつかの局面において、ポリペプチドは抗体である。いくつかの局面において、ポリペプチドはFc融合タンパク質である。さらなる態様において、医薬品は、ウイルス感染を治療するためのものである。さらなる態様において、医薬品は、個体においてウイルス感染を治療する方法であって、ウイルス感染を治療するために、医薬品の有効量を当該個体に投与する工程を含む方法における使用のためのものである。上記態様の任意のものによる「個体」は、ヒトであってよい。
さらなる局面において、本発明は、個体においてウイルス感染を治療するための方法を提供する。一態様において、方法は、ウイルス感染を治療するために、変異Fc領域を含むポリペプチドの有効量を個体に投与する工程を含む。一態様において、「個体」はヒトである。
さらなる局面において、本発明は、本明細書で提供される変異Fc領域を含むポリペプチドの任意のものを含む薬学的製剤を提供する。さらなる態様において、薬学的製剤は、ウイルス感染を治療するためのものである。
本発明の変異Fc領域を含む抗ウイルス抗体は、従来の抗ウイルス抗体で観察される抗体依存性感染増強を抑制することができる。抗体依存性感染増強は、抗体に結合したウイルスが活性化型のFcγRを介して貪食されることで、細胞へのウイルスの感染が増強される現象である。抗デングウイルス抗体のFcγRIIbへの結合が、抗体依存性感染増強の抑制に重要な役割を果たすことが報告されている(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 108:12479-12484, (2011))。抗デングウイルス抗体とデングウイルスとの免疫複合体によるFcγRIIb分子の架橋は、FcγRを介した食作用を阻害し、その結果抗体依存性感染増強が抑制される。そのようなウイルスの例は、デングウイルス(DENV1、DENV2、DENV3、およびDENV4)ならびにHIVを含むが、これらに限定されない。
さらなる態様において、本発明は、動脈硬化症の予防または治療における使用のための、変異Fc領域を含むポリペプチドを提供する。特定の態様において、本発明は、個体において動脈硬化症を予防または治療する方法であって、動脈硬化症を予防または治療するために、変異Fc領域を含むポリペプチドの有効量を個体に投与する工程を含む方法における使用のための、変異Fc領域を含むポリペプチドを提供する。いくつかの局面において、ポリペプチドは抗体である。いくつかの局面において、ポリペプチドはFc融合タンパク質である。上記態様の任意のものによる「個体」は、好適にはヒトである。
さらなる局面において、本発明は、医薬品の製造または調製における変異Fc領域を含むポリペプチドの使用を提供する。いくつかの局面において、ポリペプチドは抗体である。いくつかの局面において、ポリペプチドはFc融合タンパク質である。さらなる態様において、医薬品は、動脈硬化症を予防または治療するためのものである。さらなる態様において、医薬品は、個体において動脈硬化症を予防または治療する方法であって、動脈硬化症を予防または治療するために、医薬品の有効量を当該個体に投与する工程を含む方法における使用のためのものである。上記態様の任意のものによる「個体」は、ヒトであってよい。
さらなる局面において、本発明は、個体において動脈硬化症を予防または治療するための方法を提供する。一態様において、方法は、動脈硬化症を予防または治療するために、変異Fc領域を含むポリペプチドの有効量を個体に投与する工程を含む。一態様において、「個体」はヒトである。
さらなる局面において、本発明は、本明細書で提供される変異Fc領域を含むポリペプチドの任意のものを含む薬学的製剤を提供する。いくつかの局面において、ポリペプチドは抗体である。いくつかの局面において、ポリペプチドはFc融合タンパク質である。さらなる態様において、薬学的製剤は、動脈硬化症を予防または治療するためのものである。
酸化LDL、すなわち動脈硬化症の原因に対する、本発明の変異Fc領域を含む抗体は、炎症細胞のFcγRIIa依存性接着を阻止することができる。抗酸化LDL抗体が、酸化LDLとCD36の間の相互作用を阻害し、一方で、抗酸化LDL抗体は内皮細胞に結合し、かつ単球が、FcγRIIa依存性またはFcγRI依存性の様式でそれらのFc部分を認識することが報告されている(Immunol. Lett. 108:52-61, (2007))。本発明の変異Fc領域を含む抗体を用いることで、FcγRIIa依存性結合を阻害し、FcγRIIbを介した阻害シグナルによって単球の接着を抑制してもよい。
さらなる態様において、本発明は、がんの予防または治療における使用のための、変異Fc領域を含むポリペプチドを提供する。特定の態様において、本発明は、個体においてがんを予防または治療する方法であって、がんを予防または治療するために、変異Fc領域を含むポリペプチドの有効量を個体に投与する工程を含む方法における使用のための、変異Fc領域を含むポリペプチドを提供する。上記態様の任意のものによる「個体」は、好適にはヒトである。
さらなる局面において、本発明は、医薬品の製造または調製における、本明細書で提供される変異Fc領域を含むポリペプチドの使用を提供する。いくつかの局面において、ポリペプチドは抗体である。いくつかの局面において、ポリペプチドはFc融合タンパク質である。さらなる態様において、医薬品は、がんを予防または治療するためのものである。さらなる態様において、医薬品は、個体においてがんを予防または治療する方法であって、がんを予防または治療するために、医薬品の有効量を当該個体に投与する工程を含む方法における使用のためのものである。上記態様の任意のものによる「個体」は、ヒトであってよい。
さらなる局面において、本発明は、個体においてがんを予防または治療するための方法を提供する。一態様において、方法は、がんを予防または治療するために、変異Fc領域を含むポリペプチドの有効量を個体に投与する工程を含む。いくつかの局面において、ポリペプチドは抗体である。いくつかの局面において、ポリペプチドはFc融合タンパク質である。一態様において、「個体」はヒトである。
さらなる局面において、本発明は、本明細書で提供される変異Fc領域を含むポリペプチドの任意のものを含む薬学的製剤を提供する。いくつかの局面において、ポリペプチドは抗体である。いくつかの局面において、ポリペプチドはFc融合タンパク質である。さらなる態様において、薬学的製剤は、がんを予防または治療するためのものである。
上述のように、FcγRIIb結合の増強は、アゴニスト抗体のアゴニスト活性を増大させ、抗体の抗腫瘍効果を増強することが知られている。したがって、本発明の変異Fc領域を含むアゴニスト抗体は、がんの治療または予防に有用である。具体的には、本発明の変異Fc領域は、例えばCD120a、CD120b、リンホトキシンβ受容体、CD134、CD40、FAS、TNFRSF6B、CD27、CD30、CD137、TNFRSF10A、TNFRSF10B、TNFRSF10C、TNFRSF10D、RANK、オステオプロテゲリン、TNFRSF12A、TNFRSF13B、TNFRSF13C、TNFRSF14、神経成長因子受容体、TNFRSF17、TNFRSF18、TNFRSF19、TNFRSF21、TNFRSF25、およびエクトジスプラシA2受容体などのTNF受容体ファミリーの受容体に対する抗体のアゴニスト活性を増強し、がんを治療または予防するのに有用であり得る。さらに、FcγRIIbとの相互作用を介してアゴニスト活性を示す他の分子に対する抗体についても、アゴニスト活性は増強される。さらに、FcγRIIbと架橋されると細胞増殖を抑制する、Kitなどの受容体チロシンキナーゼ(RTK)に対する抗体に、本発明の変異Fc領域を組み込むことによって、細胞増殖に対する抗体の阻害作用が増強され得る。
いくつかの態様において、本発明は、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺がん、および肺の扁平上皮がん、大腸がん、直腸がん、結腸がん、乳がん、肝臓がん、胃がん、膵がん、腎臓がん、前立腺がん、卵巣がん、甲状腺がん、胆管がん、腹膜がん、中皮腫、扁平上皮がん、子宮頚がん、子宮内膜がん、膀胱がん、食道がん、頭頸部がん、鼻咽腔がん、唾液腺腫瘍、胸腺腫、皮膚がん、基底細胞腫、悪性黒色腫、肛門がん、陰茎がん、精巣がん、ウィルムス腫瘍、急性骨髄性白血病(急性骨髄球性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、および急性単球性白血病を含む)、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球白血病、慢性リンパ性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(バーキットリンパ腫、慢性リンパ球性白血病、菌状息肉腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、毛様細胞白血病プラズマ細胞腫、末梢T細胞リンパ腫、および成人T細胞白血病/リンパ腫)、ランゲルハンス細胞組織球症、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、脳腫瘍(神経膠腫、星細胞腫、膠芽細胞腫、髄膜腫、および上衣細胞腫を含む)、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、骨肉腫、カポジ肉腫、ユーイング肉腫、血管肉腫、ならびに血管外皮細胞腫から選択されるメンバーを含むがこれらに限定されないがんを予防または治療するための方法を提供する。
例えばWO 2013/047752、WO 2013/125667、WO 2014/030728、またはWO 2014/163101に記載されるかまたは示唆されるように、少なくとも1つのアミノ酸残基の修飾によってFcγRIIbを含むFcγRへの増強された結合活性を有するように改変された抗体は、血漿からの抗原消失を促進することができる。
特定の理論に拘束されることなく、中性のpH条件下でFcγR結合活性が増強した抗体は、インビボで当該抗体を投与すると、当該抗体と複合体化した抗原と共に細胞内に迅速に取り込まれ、その結果、血漿からの抗原消失は促進され得る。
例えばWO 2007/114319、WO 2009/041643、WO 2014/145159、またはWO 2012/016227に記載されるかまたは示唆されるように、抗体表面に露出し得る少なくとも1つのアミノ酸残基の修飾によって上昇したpIを有するように改変された抗体は、細胞内により迅速に取り込まれ得るか、または血漿からの抗原消失を促進することができる。
特定の理論に拘束されることなく、生体液(例えば血漿)のpHは中性のpH範囲内にあると考えられる。生体液において、pIが上昇した抗体の正味の正電荷は、上昇したpIに起因して増加しており、その結果、当該抗体は、pIが上昇していない抗体と比べて、物理化学的クーロン相互作用によって、正味の負電荷を有する内皮細胞表面により強く引き付けられる。これは、そのような非特異的結合を介して、その抗原と複合体化した抗体の細胞内への取り込みが増強され、その結果、血漿からの抗原消失が増加することを意味する。これらの現象は、細胞のタイプ、組織のタイプ、器官のタイプなどに関わらず、インビボで通常生じることであると考えられる。
本明細書では、血漿からの抗原消失の増加は、例えば、そのように改変されていない対応するFc領域を含むポリペプチドが投与された場合と比較して、血漿からの抗原消失の速度が増大していることを意味する。血漿からの抗原消失の増大は、例えば、血漿中の抗原の濃度を測定することによって評価することができる。血漿中の抗原の濃度を測定するための様々な方法が、当技術分野で公知である。
さらなる態様において、本発明は、血漿からの抗原消失の促進における使用のための、変異Fc領域を含むポリペプチドを提供する。特定の態様において、本発明は、個体において血漿からの抗原消失を促進する方法であって、血漿からの抗原消失を促進するために、変異Fc領域を含むポリペプチドの有効量を個体に投与する工程を含む方法における使用のための、変異Fc領域を含むポリペプチドを提供する。これらの態様において、当該ポリペプチドが抗原結合ドメインをさらに含むことが好適である。上記態様の任意のものによる「個体」は、好適にはヒトである。
さらなる局面において、本発明は、医薬品の製造または調製における変異Fc領域を含むポリペプチドの使用を提供する。いくつかの局面において、ポリペプチドは抗体である。いくつかの局面において、ポリペプチドはFc融合タンパク質である。さらなる態様において、医薬品は、血漿からの抗原消失を促進するためのものである。さらなる態様において、医薬品は、個体において血漿からの抗原消失を促進する方法であって、血漿からの抗原消失を促進するために、医薬品の有効量を当該個体に投与する工程を含む方法における使用のためのものである。これらの態様において、当該ポリペプチドが抗原結合ドメインをさらに含むことが好適である。上記態様の任意のものによる「個体」は、ヒトであってよい。
さらなる態様において、本発明は、個体における血漿からの抗原消失を促進するための方法を提供する。一態様において、方法は、血漿からの抗原消失を促進するために、変異Fc領域を含むポリペプチドの有効量を個体に投与する工程を含む。これらの態様において、当該ポリペプチドが抗原結合ドメインをさらに含むことが好適である。一態様において、「個体」はヒトである。
さらなる局面において、本発明は、本明細書で提供される変異Fc領域を含むポリペプチドの任意のものを含む薬学的製剤を提供する。さらなる態様において、薬学的製剤は、血漿からの抗原消失を促進するためのものである。この態様において、当該ポリペプチドが抗原結合ドメインをさらに含むことが好適である。
一態様において、アミノ酸修飾の前と比較した場合、本発明の変異Fc領域を有する抗体は、当該抗体をインビボで投与すると、例えば少なくとも1.1倍、1.25倍、1.5倍、1.75倍、2.0倍、2.25倍、2.5倍、2.75倍、3.0倍、3.25倍、3.5倍、3.75倍、4.0倍、4.25倍、4.5倍、4.75倍、5.0倍、5.5倍、6.0倍、6.5倍、7.0倍、7.5倍、8.0倍、8.5倍、9.0倍、9.5倍、もしくは10.0倍、またはそれを超えて、血漿からの抗原消失を増強する。
さらなる局面において、本発明は、本明細書で提供される変異Fc領域を含むポリペプチドの任意のものを、薬学的に許容される担体と混合する工程を含む、医薬品または薬学的製剤を調製するための方法を提供する(例えば上述の治療的方法の任意のものにおける使用のための)。一態様において、医薬品または薬学的製剤を調製するための方法は、少なくとも1種の追加の治療剤を医薬品または薬学的製剤に添加する工程を、さらに含む。
本発明の抗体は、療法において、単独または他の剤との組み合わせのどちらでも使用され得る。例えば、本発明の抗体は、少なくとも1つの追加の治療剤と同時投与されてもよい。
同様に、本発明の変異Fc領域を含むポリペプチドは、療法において、単独または他の剤との組み合わせのどちらでも使用され得る。例えば、本発明の変異Fc領域を含むポリペプチドは、少なくとも1つの追加の治療剤と同時投与されてもよい。
上述したような併用療法は、併用投与(2つ以上の治療剤が、同じまたは別々の製剤に含まれる)、および個別投与を包含し、個別投与の場合、本発明の抗体または変異Fc領域を含むポリペプチドの投与が追加治療剤の投与に先立って、と同時に、および/または、続いて、行われ得る。一態様において、抗ミオスタチン抗体の投与および追加治療剤の投与は、互いに、約1か月以内、または約1、2、または3週間以内、または約1、2、3、4、5、または6日以内に行われる。
別の態様において、変異Fc領域を含むポリペプチドの投与および追加治療剤の投与は、互いに、約1か月以内、または約1、2、または3週間以内、または約1、2、3、4、5、または6日以内に行われる。
本発明の抗体または変異Fc領域を含むポリペプチド(および任意で、任意の追加治療剤)は、非経口投与、肺内投与、および経鼻投与、また局所的処置のために望まれる場合は病巣内投与を含む、任意の好適な手段によって投与され得る。非経口注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与を含む。投薬は、投与が短期か長期かに一部応じて、例えば、静脈内注射または皮下注射などの注射によるなど、任意の好適な経路によってなされ得る。これらに限定されるものではないが、単回投与または種々の時点にわたる反復投与、ボーラス投与、および、パルス注入を含む、種々の投薬スケジュールが本明細書の考慮の内である。
本発明の抗体または変異Fc領域を含むポリペプチドは、優良医療規範 (good medical practice) に一致したやり方で、製剤化する、投薬する、または投与することができる。この観点から考慮されるべきファクターは、治療されているその特定の障害、治療されているその特定の哺乳動物、個々の患者の臨床症状、障害の原因、剤を送達する部位、投与方法、投与のスケジュール、および医療従事者に公知の他のファクターを含む。抗体は、必ずしもそうでなくてもよいが、任意で、問題の障害を予防するまたは治療するために現に使用されている1つまたは複数の剤とともに、製剤化される。そのような他の剤の有効量は、製剤中に存在する抗体の量、障害または治療のタイプ、および上で論じた他のファクターに依存する。これらは通常、本明細書で述べたのと同じ用量および投与経路で、または本明細書で述べた用量の約1から99%で、または経験的/臨床的に適切と判断される任意の用量および任意の経路で、使用される。
疾患の予防または治療のために、本発明の抗体の適切な用量(単独で用いられるときまたは1つまたは複数の他の追加治療剤とともに用いられるとき)は、治療される疾患のタイプ、抗体のタイプ、変異Fc領域を含むポリペプチドのタイプ、疾患の重症度および経過、抗体または変異Fc領域を含むポリペプチドが予防的目的で投与されるのか治療的目的で投与されるのか、薬歴、患者の臨床歴および抗体または変異Fc領域を含むポリペプチドに対する応答、ならびに、主治医の裁量に依存するだろう。本発明の抗体または変異Fc領域を含むポリペプチドは、患者に対して、1回で、または一連の処置にわたって、好適に投与される。疾患のタイプおよび重症度に応じて、例えば、1回または複数回の別々の投与によるにしても連続注入によるにしても、約1μg/kgから15 mg/kg(例えば、0.1mg/kg~10mg/kg)の抗体が、患者に対する投与のための最初の候補用量とされ得る。1つの典型的な1日用量は、上述したファクターに依存して、約1μg/kgから100mg/kg以上まで、幅があってもよい。数日またはより長くにわたる繰り返しの投与の場合、状況に応じて、治療は通常疾患症状の所望の抑制が起きるまで維持される。抗体または変異Fc領域を含むポリペプチドの1つの例示的な用量は、約0.05mg/kg から約 10mg/kgの範囲内である。よって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、もしくは 10mg/kgの1つまたは複数の用量(またはこれらの任意の組み合わせ)が、患者に投与されてもよい。このような用量は、断続的に、例えば1週間毎にまたは3週間毎に(例えば、患者が約2から約20、または例えば約6用量の抗体または変異Fc領域を含むポリペプチドを受けるように)、投与されてもよい。高い初回負荷用量の後に、1回または複数回の低用量が投与されてもよい。この療法の経過は、従来の手法および測定法によって、容易にモニタリングされる。
上述の製剤または治療的方法のいずれについても、抗ミオスタチン抗体の代わりにまたはそれに追加して、本発明のイムノコンジュゲートを用いて実施してもよいことが、理解されよう。
上述の製剤または治療的方法のいずれについても、本明細書で提供される変異Fc領域を含むポリペプチドの代わりにまたはそれに追加して、本発明のイムノコンジュゲートを用いて実施してもよいことが、同様に理解されよう。
H.製品
本発明の別の局面において、上述の障害の治療、予防、および/または診断に有用な器材を含んだ製品が、提供される。製品は、容器、および当該容器上のラベルまたは当該容器に付属する添付文書を含む。好ましい容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、IV溶液バッグなどが含まれる。容器類は、ガラスやプラスチックなどの、様々な材料から形成されていてよい。容器は組成物を単体で保持してもよいし、症状の治療、予防、および/または診断のために有効な別の組成物と組み合わせて保持してもよく、また、無菌的なアクセスポートを有していてもよい(例えば、容器は、皮下注射針によって突き通すことのできるストッパーを有する静脈内投与用溶液バッグまたはバイアルであってよい)。組成物中の少なくとも1つの有効成分は、本発明の抗体である。ラベルまたは添付文書は、組成物が選ばれた症状を治療するために使用されるものであることを示す。さらに製品は、(a)第一の容器であって、その中に収められた本発明の抗体を含む組成物を伴う、第一の容器;および、(b)第二の容器であって、その中に収められたさらなる細胞傷害剤またはそれ以外で治療的な剤を含む組成物を伴う、第二の容器を含んでもよい。本発明のこの態様における製品は、さらに、組成物が特定の症状を治療するために使用され得ることを示す、添付文書を含んでもよい。あるいはまたは加えて、製品はさらに、注射用制菌水 (BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、およびデキストロース溶液などの、薬学的に許容される緩衝液を含む、第二の(または第三の)容器を含んでもよい。他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、およびシリンジなどの、他の商業的観点またはユーザの立場から望ましい器材をさらに含んでもよい。
上述の製品のいずれについても、抗ミオスタチン抗体の代わりにまたはそれに追加して、本発明のイムノコンジュゲートを含んでもよいことが、理解されよう。
以下は、本発明の方法および組成物の実施例である。上述の一般的な記載に照らし、種々の他の態様が実施され得ることが、理解されるであろう。
実施例1
ヒト、カニクイザル、およびマウスのミオスタチン潜在型および成熟型の発現および精製
ヒト潜在型(latent)ミオスタチン(本明細書においてヒトミオスタチン潜在型としても記載される)(配列番号:1)をFreeStyle293-F細胞(FS293-F細胞)(Thermo Fisher, Carlsbad, CA, USA)を用いて一過性に発現させた。発現させたヒトミオスタチン潜在型を含む馴化培地をpH6.8に酸性化し、1/2体積のmilliQ水で希釈した後、QセファロースFFアニオン交換カラム(GE healthcare, Uppsala, スウェーデン)にアプライした。フロースルー画分をpH5.0に調整し、SPセファロースHPカチオン交換カラム(GE healthcare, Uppsala, スウェーデン)にアプライした後、NaCl勾配で溶出した。ヒトミオスタチン潜在型を含む画分を回収し、次に1x PBSで平衡化したSuperdex 200ゲル濾過カラム(GE healthcare, Uppsala, スウェーデン)に供した。ヒトミオスタチン潜在型を含む画分をプールし、-80℃で保存した。
ヒト成熟型(mature)ミオスタチン(本明細書においてヒトミオスタチン成熟型としても記載される)(配列番号:2)を、精製したヒトミオスタチン潜在型から精製した。ヒトミオスタチン潜在型を、0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を添加することにより酸性化し、Vydac 214TP C4逆相カラム(Grace, Deerfield, IL, USA)にアプライし、TFA/CH3CN勾配で溶出した。ヒト成熟型ミオスタチンを含む画分をプールし、乾燥させ、-80℃で保存した。再構成の際は、ヒト成熟型ミオスタチンを4mM HClに溶解させた。
カニクイザル(cynomolgusまたはcyno)由来のミオスタチン潜在型および成熟型(それぞれ配列番号:3および4)ならびにマウス由来のミオスタチン潜在型および成熟型(それぞれ配列番号:5および6)の発現および精製は、全てヒトのカウンターパートと全く同じ方法で行った。ヒト、カニクイザル、およびマウス間の成熟型の配列相同性は100%同一であることから、種に関わらず任意の成熟型ミオスタチンを成熟型ミオスタチンとして全ての必要な実験において用いた。
実施例2
抗潜在型ミオスタチン抗体の同定
抗潜在型ミオスタチン抗体を以下のとおり調製、選択、およびアッセイした。
12~16週齢のNZWウサギを、マウス潜在型ミオスタチンおよび/またはヒト潜在型ミオスタチン(50~100μg/用量/ウサギ)を用いて皮内に免疫化した。この用量を1ヶ月間にわたって3~4回繰り返した。最終免疫化の1週間後、脾臓と血液を免疫化されたウサギから採取した。抗原特異的B細胞を標識抗原で染色し、FCMセルソーター(FACS aria III、BD)で選別し、細胞1個/ウェルの密度で、細胞25,000個/ウェルのEL4細胞(European Collection of Cell Cultures)および20倍希釈したウサギT細胞馴化培地と共に96ウェルプレートに播種し、7~12日間培養した。EL4細胞は、マイトマイシンC(Sigma)で2時間処理し、事前に3回洗浄した。ウサギT細胞馴化培地は、ウサギ胸腺細胞を、フィトヘマグルチニンM(Roche)、ホルボール12-ミリステート13-アセテート(Sigma)および2%FBSを含有するRPMI-1640中で培養することにより、調製した。培養後、B細胞培養上清をさらなる分析のために回収し、ペレットを凍結保存した。
ELISA測定法を用いて、B細胞培養上清中の抗体の特異性を試験した。ストレプトアビジン(GeneScript)を384ウェルMAXISorp(Nunc)上にPBS中50nMにて室温で1時間コーティングした。次にプレートを、5倍希釈したBlocking One(Nacalai Tesque)でブロッキングした。ヒトまたはマウス成熟型ミオスタチンをNHS-PEG4-ビオチン(PIERCE)で標識し、ブロッキングしたELISAプレートに添加し、1時間インキュベートし、0.05% Tween-20を含むトリス緩衝生理食塩水(TBS-T)で洗浄した。B細胞培養上清をELISAプレートに添加し、1時間インキュベートし、TBS-Tで洗浄した。結合を、ヤギ抗ウサギIgG-西洋ワサビペルオキシダーゼ(BETHYL)に続いてABTS(KPL)を添加することにより検出した。
合計17,818種のB細胞株をマウスおよび/またはヒト潜在型ミオスタチンに対する結合特異性についてスクリーニングし、299種の細胞株を選択してMST0255-287、630-632、677-759、910、932-1048、1050-1055、1057-1066、1068、1070-1073、1075-1110、1113-1119と命名した。RNAを、対応する細胞ペレットからZR-96 Quick-RNAキット(ZYMO RESEARCH)を用いて精製した。
選択された各細胞株の重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAを逆転写PCRにより増幅し、重鎖定常領域G1m配列(配列番号:50(アミノ酸配列は配列番号:7に示す))を有する発現ベクターおよび軽鎖定常領域k0MTCまたはk0MC配列(配列番号:53または194(アミノ酸配列(両者とも同じ)は配列番号:8に示す))を有する発現ベクターにそれぞれクローニングした。FreeStyle FS293-F細胞および293fectin(Life technologies)を製造者の指示に従って用いて組換え抗体を一過性に発現させた。培養上清または組換え抗体をスクリーニングに使用した。組換え抗体をプロテインA(GE Healthcare)で精製し、D-PBSまたはHisバッファー(20mMヒスチジン, 150mM NaCl, pH6.0)に溶出した。必要に応じて、高分子量および/または低分子量成分を除去するためにサイズ排除クロマトグラフィーをさらに行った。
実施例3
抗潜在型ミオスタチン抗体の特徴決定
(HEK Blueアッセイ(BMP1活性化))
レポーター遺伝子アッセイを用いて、活性型ミオスタチンの生物学的活性をインビトロで評価した。Smad3/4-結合因子(SBE)誘導型SEAPレポーター遺伝子を発現するHEK-Blue(商標)TGF-β細胞(Invivogen)は、アクチビン1型および2型受容体の活性化をモニターすることによって生理活性のあるミオスタチンを検出することを可能にする。活性型ミオスタチンは、細胞上清中に分泌されるSEAPの産生を刺激する。分泌されたSEAPの量は、QUANTIBlue(商標)(Invivogen)を使用して評価する。
HEK-Blue(商標)TGF-β細胞を、10%ウシ胎児血清、50μg/mLストレプトマイシン、50 U/mLペニシリン、100μg/mLノルモシン(Normocin)(商標)、30μg/mLのブラストサイジン、200μg/mLのHygroGold(商標)、および100μg/mLのゼオシン(Zeocin)(商標)を添加したDMEM培地(Gibco)中で維持した。機能的アッセイの間、細胞をアッセイ培地(0.1%ウシ血清アルブミン、ストレプトマイシン、ペニシリン、およびノルモシン(商標)を含むDMEM)に替え、96ウェルプレートに播種した。ヒト、カニクイザル、またはマウス潜在型ミオスタチンを、組換えヒトBMP1(R&D Systems)および抗潜在型抗体と共に37℃で一晩インキュベートした。サンプル混合物を細胞に移した。24時間のインキュベーション後、細胞上清をQUANTIBlue(商標)と混合し、620nmでの光学密度を比色プレートリーダーで測定した。図1に示すように、モノクローナル抗体MST1032-G1m(アミノ酸およびヌクレオチド配列については表2aを参照)は、分泌されたSEAP濃度の低下に反映されるとおり、ヒト、カニクイザル、およびマウスの潜在型ミオスタチンのプロテアーゼを介した活性化を阻止した。MST1032-G1mは、ヒト、カニクイザル、およびマウスの潜在型ミオスタチンに対してほぼ同等の阻害活性を示した。
[表2a]抗潜在型ミオスタチン抗体およびそのDNAおよびアミノ酸配列(配列番号として示す)
[表2b]抗潜在型ミオスタチン抗体のHVRアミノ酸配列(配列番号として示す)
実施例4
抗潜在型ミオスタチン抗体の特徴決定(HEK Blueアッセイ(自発的活性化))
ヒト、カニクイザル、またはマウス潜在型ミオスタチンを、抗潜在型ミオスタチン抗体と共に37℃で一晩インキュベートし、サンプル混合物をHEK-Blue(商標)TGF-β細胞に移した。24時間のインキュベーション後、細胞上清をQUANTIBlue(商標)と混合し、620nmでの光学密度を比色プレートリーダーで測定した。図2に示すように、潜在型からの活性ミオスタチンの遊離が37℃でのインキュベーション後に検出された。モノクローナル抗体MST1032-G1mの存在下では、ミオスタチンの活性化が阻害され、それにより細胞上清中でより低いSEAPレベルが検出された。MST1032-G1mは潜在型ミオスタチンの自発的活性化を阻害し、ヒト、カニクイザル、およびマウスの潜在型ミオスタチンに対してほぼ同等の阻害活性を示した。
実施例5
抗潜在型ミオスタチン抗体の特徴決定(ELISA)
コーティングされていないELISAプレート(NUNC-IMMUNOプレートMAXISORP表面, Nalge Nunc International)を、20μLの50nMストレプトアビジン(GenScript)で1時間室温でコーティングした。次にプレートをPBSTで3回洗浄し、50μLの20% Blocking One(Nacalai Tesque)で一晩ブロッキングした。翌日、各プレートのそれぞれのウェルを、ビオチン化した成熟型ミオスタチン、ビオチン化したヒトもしくはマウスの潜在型ミオスタチン、またはビオチン化した組換えマウスミオスタチンプロペプチド-Fcキメラタンパク質(R&D Systems)と共に、4nM/well/20μLで2時間インキュベートした。洗浄後、20μLの抗体サンプルをウェルに添加し、プレートを1時間静置した。プレートを洗浄し、HEPES緩衝生理食塩水で希釈した20μLの抗ヒトIgG-西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)(Abcam)を添加し、プレートをさらに1時間静置した。次にプレートを再度洗浄し、50μL ABTS(KPL)を各ウェルに添加し、プレートを1時間インキュベートした。比色プレートリーダーにてシグナルを405 nmで検出した。結合実験の結果を図3に示す。MST1032-G1mは、潜在型ミオスタチン(すなわち、成熟型ミオスタチンとプロペプチドの非共有結合性複合体)およびプロペプチドに結合したが、成熟型ミオスタチンには結合しなかった。これらの結果は、MST1032-G1mがミオスタチンプロペプチド(例えば、プロペプチド部分)には特異的に結合するが、活性ミオスタチン(例えば成熟領域)には結合しないことを示す。
実施例6
抗潜在型ミオスタチン抗体の特徴決定(ウェスタンブロット)
マウス潜在型ミオスタチンを、組換えヒトBMP1(R&D Systems)と共に、MST1032-G1m有りまたは無しで37℃で一晩インキュベートした。サンプルを4x還元SDS-PAGEサンプルバッファー(Wako)と混合し、95℃で5分間加熱した後、ロードしてSDSゲル電気泳動を行った。Trans-Blot(登録商標)Turbo(商標)Transfer System(Bio-rad)によりタンパク質をメンブレンに転写した。ヒツジ抗マウスGDF8プロペプチド抗体(R&D Systems)を使用し、これを次に抗ヒツジIgG-HRP(Santa Cruz)で検出することによって、ミオスタチンプロペプチドを検出した。メンブレンをECL基質とインキュベートし、ImageQuant LAS 4000(GE Healthcare)を用いて画像化した。図4に示すとおり、BMP1によるプロペプチド切断はMST1032-G1mにより阻害された。
実施例7
抗潜在型ミオスタチン抗体の特徴決定(BIACORE(登録商標))
ヒト、カニクイザル(cyno)、およびマウス潜在型ミオスタチンに対する抗潜在型ミオスタチン抗体の速度論的パラメータを、BIACORE(登録商標)T200機器(GE Healthcare)を用いて、37℃でpH7.4にて評価した。ProA/G(Pierce)を、アミンカップリングキット(GE Healthcare)を用いてCM4チップの全てのフローセル上に固定化した。抗潜在型ミオスタチン抗体および分析物をACES pH7.4(20 mM ACES, 150 mM NaCl, 1.2 mM CaCl
2, 0.05% Tween 20, 0.005% NaN
3)中で調製した。抗体をProA/Gによりセンサー表面上にキャプチャーさせた。抗体のキャプチャーレベルは、概して150~220共鳴単位(RU)であった。次に、ヒト、カニクイザル、またはマウス潜在型ミオスタチンを、2倍段階希釈により調製した3.125~50 nMの濃度で注入し、続いて解離させた。センサー表面は25 mM NaOHで再生させた。データをBIACORE(登録商標)T200 Evaluationソフトウェア, バージョン2.0(GE Healthcare)を用いて処理し、1:1結合モデルにフィッティングすることにより、速度論的パラメータを決定した。センサーグラムを図5に示す。結合速度(ka)、解離速度(kd)、および結合アフィニティ(KD)を表3に示す。MST1032-G1mのヒト、カニクイザル、マウス潜在型ミオスタチンに対する速度論的パラメータは同等であった。
[表3]抗潜在型ミオスタチン抗体MST1032-G1mのka、kd、およびKD
実施例8
抗潜在型ミオスタチン抗体の、筋肉量及び脂肪量に対するインビボでの有効性
モノクローナル抗体MST1032-G1mのインビボでの有効性をマウスにおいて評価した。本試験では抗成熟型ミオスタチン抗体41C1E4(米国特許第7,632,499号に記載されている)を陽性対照として使用した。マウスの抗ヒト抗体反応による免疫調節の可能性を排除するため、インビボ試験は重症複合免疫不全(SCID)マウスを使用して行った。5週齢のSCID(C.B-17 SCID)マウス(Charles River Laboratories Japan, Inc.(神奈川、日本))を、2週間、種々の用量のモノクローナル抗体または溶媒(PBS)を週1回静脈内投与することで処置した。0、7、および14日目に、マウスの全除脂肪体重および脂肪量を核磁気共鳴(NMR)(minispec LF-50, Bruker Bio Spin(神奈川、日本))により評価した。14日目に動物を安楽死させ、腓腹筋および大腿四頭筋を摘出し、重さを測定した。
統計的有意性を、JMP 9ソフトウェア(SAS, Inc.)を用いたANOVA、Studentのt検定、およびDunnett検定により決定した。0.05未満のp値を有意とみなした。
本実験の結果を図6A~Cに示す。両抗体(MST1032-G1mおよび41C1E4)とも除脂肪体重を用量依存的に増加させ、MST1032-G1mは、40 mg/kgで投与した場合、14日目において脂肪量を溶媒(PBS)群と比較して有意に減少させた。
2週間の処置後、10 mg/kgおよび40 mg/kgで投与した抗体は、大腿四頭筋および腓腹筋の湿重量を溶媒群と比較して有意に増加させた。
実施例9
種々のミオスタチン関連抗体のインビボ有効性の比較
本比較のための実験の設定は全て実施例8と同様とした。種々のミオスタチン抗体(41C1E4、REGN、OGD、およびMYO-029)を5週齢のSCIDマウスにおいて2週間試験した。REGN、OGD、およびMYO-029は、それぞれWO2011/150008においてH4H1657N2、WO2013/186719においてOGD1.0.0.、およびWO2004/037861においてMYO-029と記載される抗成熟型ミオスタチン抗体である。これらの抗体を週1回静脈内投与した。0日目および14日目に、除脂肪体重および脂肪量を全身NMRスキャニングにより測定した。14日目に、握力を握力測定器(例えば、GPM-100B, MELQUEST Ltd.(富山、日本))を用いて測定した。図7A~Cに提示される結果が示すとおり、除脂肪体重はMYO-029を除くこれらの抗体により増加した(P>0.05)。MST1032-G1m投与群の握力は、10 mg/kgにて、溶媒(PBS)群と比較して有意に増加した(P<0.05)。41C1E4およびREGNも、溶媒(PBS)と比較して握力を有意に増加させた。全身の脂肪量は、10 mg/kgのMST1032-G1mにより減少する傾向があった。MST1032-G1mの脂肪量減少の有効性は、他の抗成熟型ミオスタチン抗体のそれよりも強かった。
実施例10
抗潜在型ミオスタチン抗体のヒト化
抗体可変領域のアミノ酸残基は、Kabat(Kabat et al., Sequence of proteins of immunological interest, 5th Ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991))に従いナンバリングする。
ヒト化MST1032抗体の重鎖および軽鎖可変領域を設計した。一部のヒト化MST1032抗体はフレームワーク領域においてバックミューテーションを含んでいる。設計した重鎖および軽鎖可変領域のポリヌクレオチドをGenScript Inc.で合成し、重鎖定常領域SG1配列(配列番号:52(アミノ酸配列は配列番号:9に示す))を含む発現ベクターおよび軽鎖定常領域SK1配列(配列番号:54(アミノ酸配列は配列番号:10に示す))を含む発現ベクターにそれぞれクローニングした。ヒト化抗体はFS293-F細胞において一過性に発現させ、HEK BlueアッセイおよびBIACORE(登録商標)解析を上記のとおりに行った。図8および表4に示すとおり、図1および2と比較すると、ヒト化抗体(MS1032LO00-SG1)はキメラ抗体(MST1032-G1m)と同等の阻害活性およびアフィニティを示した。
[表4]ヒト化抗潜在型ミオスタチン抗体の速度論的パラメータ
実施例11
pH依存性抗潜在型ミオスタチン抗体の作製
pH依存性抗潜在型ミオスタチン抗体を作製するため、モノクローナル抗体MS1032LO00-SG1の全てのCDRについてヒスチジンスキャニング変異導入を行った。CDRの各アミノ酸を、In-Fusion HD Cloning Kit(Clontech Inc.またはTakara Bio company)を製造者の指示に従って使用して個々にヒスチジンに変異させた。各変異体が正しく変異したことをシーケンシングにより確認した後、上記の方法により変異体を一過性に発現させ精製した。全てのヒスチジン置換変異体を、上記の方法に対して改変されたBIACORE(登録商標)アッセイにより評価した。簡単に述べると、BIACORE(登録商標)測定法に、pH5.8での追加の解離段階(dissociation phase)を、pH7.4での解離段階の直後に組み入れた。これは、pH7.4で形成された複合体からの抗体(Ab)と抗原(Ag)との間のpH依存的解離を、pH5.8での対応する解離に対して評価するためのものである。pH5.8での解離速度は、Scrubber 2.0(BioLogic Software)カーブフィッティングソフトウェアを用いてデータを処理し、フィッティングを行うことによって決定した。
図9に示すとおり、親抗体(Ab001)は、pH7.4の解離段階と比較してpH5.8での結合反応の減少を示さなかった。いくつかの単一ヒスチジン置換により、pH7.4の解離段階と比較してpH5.8での結合反応が中~強程度に減少した。各単一ヒスチジン置換変異体のpH5.8における解離速度を表5に示す。表5に示されるとおり、Ab002はpH5.8で最速のAb/Ag複合体解離速度を示し、これは親抗体(Ab001)よりも200倍以上速かった。次に、これらのCDR変異の組み合わせを有する抗体を作製した。これらの種々の変異を含む抗体のCDR配列を表6に示す。
[表5]単一ヒスチジン置換抗潜在型ミオスタチン抗体のpH5.8解離速度
[表6]ヒスチジン置換抗潜在型ミオスタチン抗体のCDR配列およびその配列番号
実施例12
pH依存性抗潜在型ミオスタチン抗体のアフィニティの改善
pH7.4でのアフィニティおよび/またはインビトロ阻害活性を改善する変異を同定するために、実施例11で作製した少なくとも一つの変異体をテンプレートとして使用し、重鎖および軽鎖それぞれについて500を超える変異体を作製した。これらの変異体は、CDRにおける各アミノ酸が、元のアミノ酸とシステインを除く18種の他のアミノ酸に置換されている。ヒト潜在型ミオスタチンへの変異体の結合能を、BIACORE(登録商標)4000 機器(GE Healthcare)を用いてpH7.4において37℃で評価した。FS293-F細胞において発現させた変異体を含む培養上清を、10mg/ml BSAおよび0.1mg/mlカルボキシメチルデキストラン(CMD)を含むACES pH7.4バッファーで調製した。各抗体を、キャプチャーレベルがおよそ200RUに達するまでフローセル上にキャプチャーさせた。次に、25 nMヒト潜在型ミオスタチンをフローセル上に注入した。BIACORE(登録商標)アッセイに、pH5.8での追加の解離段階を、pH7.4での解離段階の直後に組み入れた。この追加の解離段階は、pH7.4で形成した複合体からの抗体(Ab)と抗原(Ag)との間のpH依存的解離を評価するものである。フローセル表面は、25 mM NaOHで再生させた。速度論的パラメータをBIACORE(登録商標)4000 Evaluationソフトウェア, バージョン2.0(GE Healthcare)を用いて決定した。pH5.8での追加の解離の解析は、Scrubber2(BioLogic Software)を用いて行った。
pH7.4でのアフィニティおよび/またはインビトロ阻害活性が改善した変異体を選択し、実施例11で同定されたpH依存性を改善する変異と組み合わせた。これらの変異の組み合わせ後、4種の変異体(MS1032LO01、02、03、および04)を選択し、BIACORE(登録商標)結合速度論的解析、インビトロおよび/またはインビボアッセイのため、SG1またはF760(配列番号:11および51)とともに一過性に発現させた。SG1およびF760はいずれもヒト重鎖定常領域である。SG1のヒトFcγRsに対する結合アフィニティは天然のIgG1定常領域のそれと同等であるが、F760のそれはFc改変により喪失している(本明細書においてサイレントFcとも記載される)。4種の抗ミオスタチン変異体のアミノ酸およびヌクレオチド配列は表2aに示す。
実施例13
pH依存性MS1302変異体の特徴決定
(HEK Blueアッセイ(BMP1および自発的活性化))
全ての実験の設定は実施例3および4と同様とした。図10に示すとおり、全ての変異体がMS1032LO00-SG1と同等のヒト潜在型ミオスタチンに対する阻害活性を示した。
実施例14
pH依存性MS1302変異体の特徴決定(BIACORE(登録商標))
全ての実験の設定は、測定をACES pH7.4の条件に加えてACES pH5.8バッファーにおいても行った点を除いては、実施例7と同様とした。一部の抗体はヒト潜在型ミオスタチンに対してのみ測定した。抗体キャプチャーレベルは、アビディティおよびアフィニティアッセイについてそれぞれ185 RUおよび18.5 RUを目標とした。速度論的パラメータを、BIACORE(登録商標)T200 Evaluationソフトウェア, バージョン2.0(GE Healthcare)を用いた1:1結合フィッティングを使用して決定した。アビディティ条件でのヒト潜在型ミオスタチンに対する全抗体のセンサーグラムを図11に示し、異なる条件から計算されたka、kd、およびKDを表7~10に列記する。アビディティ条件下では、MS1032LO00-SG1を除くすべての抗体が中性pHよりも酸性pH下で速い解離速度を示した。アフィニティ条件下では、MS1032LO00-SG1を除くすべての抗体が酸性pH下で潜在型ミオスタチンとの微弱な相互作用を示したため、速度論的パラメータは決定されなかった。
[表7]中性pH下でのアビディティ条件アッセイのka、kd、およびKD
N/T:試験せず
[表8]酸性pH下でのアビディティ条件アッセイのka、kd、およびKD
N/T:試験せず
[表9]中性pH下でのアフィニティ条件アッセイのka、kd、およびKD
N/T:試験せず
[表10]酸性pH下でのアフィニティ条件アッセイのka、kd、およびKD
n.d.:決定せず、N/T:試験せず
実施例15
マウスにおける、FcγR結合性を有する抗体とFcγR結合性が消失した抗体との血漿総ミオスタチン濃度の比較
C.B-17 SCIDマウスを用いたインビボ試験
C.B-17 SCIDマウス(In Vivos, Singapore)において、抗潜在型ミオスタチン抗体を投与した際の内因性ミオスタチンの蓄積をインビボで評価した。抗潜在型ミオスタチン抗体(3 mg/ml)を10 ml/kgの単回用量で尾静脈に投与した。投与の5分後、7時間後、1日後、2日後、3日後、7日後、14日後、21日後、および28日後に血液を採取した。採取した血液を直ちに14,000 rpm、4℃で10分間遠心分離して血漿を分離した。分離した血漿は測定まで-80℃以下で保存した。使用した抗潜在型ミオスタチン抗体はMS1032LO00-SG1およびMS1032LO00-F760であった。
電気化学発光(ECL)による血漿中の総ミオスタチン濃度の測定
マウス血漿中の総ミオスタチンの濃度をECLにより測定した。抗成熟型ミオスタチン固定プレートを、抗成熟型ミオスタチン抗体RK35(WO 2009/058346に記載される)をMULTI-ARRAY 96ウェルプレート(Meso Scale Discovery)に分注することにより調製し、4℃で一晩インキュベートした。成熟型ミオスタチン検量線サンプルおよび40倍以上に希釈したマウス血漿サンプルを調製した。サンプルを酸性溶液(0.2 M グリシン-HCl, pH2.5)中で混合し、成熟型ミオスタチンをその結合タンパク質(プロペプチドなど)から解離させた。続いて、サンプルを抗成熟型ミオスタチン固定プレートに添加し、室温で1時間結合させた後に洗浄した。次に、SULFO TAGで標識した抗成熟型ミオスタチン抗体RK22(WO 2009/058346に記載される)を加え、プレートを室温で1時間インキュベートした後に洗浄した。Read Buffer T (x4)(Meso Scale Discovery)を直ちにプレートに添加し、シグナルをSECTOR Imager 2400(Meso Scale Discovery)で検出した。成熟型ミオスタチン濃度を解析ソフトウェアSOFTmax PRO(Molecular Devices)を使用して検量線のレスポンスに基づいて計算した。この方法で測定した、抗潜在型ミオスタチン抗体の静脈内投与後の血漿総ミオスタチン濃度の経時変化を図12に示す。
インビボでのミオスタチン蓄積に対するFcγR結合の効果
抗体MS1032LO00-F760の投与後、28日目の血漿総ミオスタチン濃度は、5分における血漿総ミオスタチン濃度と比較して248倍蓄積した。これに対し、MS1032LO00-SG1の投与後、28日目の血漿総ミオスタチン濃度は、5分における血漿総ミオスタチン濃度と比較して37倍蓄積した。FcγR結合性により、MS1032LO00-F760(サイレントFc)とMS1032LO00-SG1との間で28日目における血漿総ミオスタチン濃度に約7倍の差が見られた。ヒト可溶型IL-6R(hsIL-6R)においては、WO 2013/125667に記載されるとおり、抗hsIL-6R抗体-F760(サイレントFc)と-SG1との間で血漿hsIL-6R濃度に有意差は見られなかった。hsIL-6Rは単量体抗原であるから、抗体-hsIL-6R複合体は1つのFcしか含まない。したがって、WO 2013/125667における結果は、1つのFcを有する抗体-抗原複合体は、細胞による免疫複合体の取り込みを促進するような、インビボでのFcγRへの有意な結合性を有しないことを示唆している。一方、多量体抗原(ミオスタチンなど)の場合、抗体は大きな免疫複合体を形成することができ、抗体-抗原複合体は2つより多くのFcを含む。したがって、FcγRに対する強いアビディティ結合により、F760とSG1との間で血漿抗原濃度に有意な差が見られ得る。この結果は、MST1032がミオスタチンと2つより多くの抗体を含む大きな免疫複合体を形成することができることを示唆する。
実施例16
マウスにおける、非pH依存性抗潜在型ミオスタチン抗体とpH依存性抗潜在型ミオスタチン抗体との血漿総ミオスタチン濃度の比較
C.B-17 SCIDマウスを用いたインビボ試験
実施例15に記載されるとおりに、C.B-17 SCIDマウス(In Vivos, Singapore)において抗潜在型ミオスタチン抗体を投与した後の内因性マウスミオスタチンのインビボでの蓄積を評価した。使用した抗潜在型ミオスタチン抗体はMS1032LO01-SG1およびMS1032LO01-F760であった。
ECLによる血漿中総ミオスタチン濃度の測定
実施例15に記載されるとおりに、マウス血漿中の総ミオスタチン濃度をECLにより測定した。この方法により測定された、抗潜在型ミオスタチン抗体の静脈内投与後の血漿総ミオスタチン濃度の経時変化を図13に示す。
インビボでのミオスタチン蓄積に対する、pH依存性ミオスタチン結合の効果
pH依存性抗潜在型ミオスタチン抗体(MS1032LO01-SG1およびMS1032LO01-F760)をインビボで試験し、血漿総ミオスタチン濃度の比較を行った。実施例15に記載されるMS1032LO00-SG1およびMS1032LO00-F760投与後の総ミオスタチン濃度測定結果も図13に示す。MS1032LO00は非pH依存性抗体であり、MS1032LO01はpH依存性抗体である。図13に示されるとおり、MS1032LO01-F760の投与後の総ミオスタチン濃度は、pH依存的結合により、MS1032LO00-F760と比較して減少した。さらに、MS1032LO01-SG1の投与後の総ミオスタチン濃度は、pH依存的結合およびFcγR結合による細胞取り込みの増加により、MS1032LO00-SG1のそれと比較して劇的に減少した。MS1032LO01-SG1は、「スイーピング抗体」として血漿からのミオスタチンのクリアランスを増強する優れた特性を有することが期待される。
実施例17
pH依存性抗潜在型ミオスタチン抗体のインビボでの有効性
全ての実験の設定は実施例8と同様とした。図14に示すとおり、0.2、1、および5 mg/kgの用量でSCIDマウスに静脈内投与した場合、MS1032LO00-SG1(非スイーピング抗体)およびMS1032LO01-SG1(スイーピング抗体)は、2週間後に骨格筋量を用量依存的に増加させた。MS1032LO01-SG1は、溶媒群(PBS)と比較して、1および5 mg/kgで大腿四頭筋湿重量と握力を有意に増加させ、5 mg/kgで除脂肪体重と腓腹筋湿重量を有意に増加させた。MS1032LO01-SG1はまた、溶媒群(PBS)と比較して、1および5 mg/kgで脂肪量を有意に減少させた。MS1032LO00-SG1は、0.2 mg/kgで除脂肪体重の増加を示さなかった。一方、MS1032LO01-SG1は0.2 mg/kgで除脂肪体重、大腿四頭筋湿重量、腓腹筋湿重量、および握力を劇的に増加させた。したがって、pH依存性結合抗体は非pH依存性結合抗体と比較してより大きな筋量増大及び筋力改善を示す。
実施例18
ヒトおよびマウス潜在型GDF11の発現および精製
N末端にFlagタグを有するヒトGDF11(本明細書においてFlag-hGDF11、ヒト潜在型GDF11、hGDF11、またはヒトGDF11とも記載される、配列番号:85)を、FreeStyle293-F細胞(Thermo Fisher)を用いて一過性に発現させた。Flag-hGDF11を発現する馴化培地を、抗Flag M2アフィニティ樹脂(Sigma)を充填したカラムにアプライし、Flagペプチド(Sigma)で溶出した。Flag-hGDF11を含む画分を回収し、続いて1x PBSで平衡化したSuperdex 200ゲル濾過カラム(GE healthcare)に供した。次に、Flag-hGDF11を含む画分をプールし、-80℃で保存した。
実施例19
抗潜在型ミオスタチン抗体の特徴決定(ELISA)
コーティングされていないELISAプレート(NUNC-IMMUNOプレートMAXISORP表面, Nalge Nunc International)を、20μLの50nMストレプトアビジン(GenScript)で2時間室温でコーティングした。次にプレートをPBSTで3回洗浄し、50μLの20% Blocking One (Nacalai Tesque)で一晩ブロッキングした。翌日、プレートの各ウェルを、ビオチン化したヒト潜在型ミオスタチンと2nM/well/20μLで、またはビオチン化したヒト潜在型GDF11と20nM/well/20μLで、2時間インキュベートした。洗浄後、20μLの抗体サンプルをウェルに添加し、プレートを1時間静置した。プレートを洗浄し、HEPES緩衝化生理食塩水で希釈した20μLの抗ヒトIgG-西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)(Abcam)を加え、プレートをさらに1時間静置した。ウェルを再度洗浄した後、50μLのABTS(KPL)を各ウェルに添加し、プレートを1時間インキュベートした。比色プレートリーダーにおいて、405 nmにてシグナルを検出した。結合実験の結果を図15に示す。MST1032-G1mは、潜在型ミオスタチン(すなわち、成熟型ミオスタチンとプロペプチドの非共有結合性複合体)に結合したが、hGDF11には結合しなかった。これらの結果は、MST1032-G1mがミオスタチンには特異的に結合するが、hGDF11には結合しないことを示す。
実施例20
抗潜在型ミオスタチン抗体の特徴決定
(HEK Blueアッセイ(BMP1および自発的活性化))
レポーター遺伝子アッセイを用いて、活性型GDF11の生物学的活性をインビトロで評価した。Smad3/4-結合因子(SBE)誘導型SEAPレポーター遺伝子を発現するHEK-Blue(商標)TGF-β細胞(Invivogen)は、アクチビン1型および2型受容体の活性化をモニターすることによって生理活性のあるGDF11を検出することを可能にする。活性型GDF11は、SEAPの産生および細胞上清への分泌を刺激する。次に、分泌されたSEAPの量をQUANTIBlue(商標)(Invivogen)を使用して評価する。
HEK-Blue(商標)TGF-β細胞を、10%ウシ胎児血清、50μg/mLストレプトマイシン、50 U/mLペニシリン、100μg/mLノルモシン(Normocin)(商標)、30μg/mLのブラストサイジン、200μg/mLのHygroGold(商標)、および100μg/mLのゼオシン(Zeocin)(商標)を添加したDMEM培地(Gibco)中で維持した。機能的アッセイの間、細胞をアッセイ培地(0.1%ウシ血清アルブミン、ストレプトマイシン、ペニシリン、およびノルモシン(商標)を含むDMEM)に替え、96ウェルプレートに播種した。ヒトGDF11を、組換えヒトBMP1(Calbiochem)および抗潜在型抗体(MST1032-G1m)と共にまたは無しで37℃で一晩インキュベートした。サンプル混合物を細胞に移した。24時間のインキュベーション後、細胞上清をQUANTIBlue(商標)と混合し、620nmでの光学密度を比色プレートリーダーで測定した。図16に示すように、MST1032-G1mはヒトGDF11のプロテアーゼを介したまたは自発的活性化を阻止せず、SEAPの分泌を阻害しなかった。
実施例21
スイーピング効果を増強するためのMS1032変異体のさらなる最適化
pH依存性抗体であるMS1032LO01-SG1がマウスにおいて優れた効力を示したので、pH依存性の増大、細胞内への取り込みの増強、安定性の増大等のために、抗体CDRへ変異を導入することによりまたはフレームワーク領域を改変することによりさらなる最適化を行った。1000を超える変異体を、上記のBIACORE(登録商標)および/またはHEK Blueアッセイで評価し、MS1032LO06-SG1、MS1032LO07-SG1、MS1032LO10-SG1、MS1032LO11-SG1、MS1032LO12-SG1、MS1032LO18-SG1、MS1032LO19-SG1、MS1032LO21-SG1、MS1032LO23-SG1、MS1032LO24-SG1、MS1032LO25-SG1、およびMS1032LO26-SG1を作製した。これらの作成した抗体のアミノ酸およびヌクレオチド配列を表11に示す。
[表11a]MS1032変異体ならびにそのDNAおよびアミノ酸配列(配列番号として示す)
[表11b]MS1032変異体のHVRアミノ酸配列(配列番号として示す)
抗原結合に対するpHの影響を評価するため、pH7.4およびpH5.8でのヒト、カニクイザル(cyno)、またはマウス潜在型ミオスタチンに結合するMS1032変異体のアフィニティを、37℃でBIACORE(登録商標)T200機器(GE Healthcare)を用いて決定した。ProA/G(Pierce)を、アミンカップリングキット(GE Healthcare)を用いてCM4チップの全フローセル上に固定した。全ての抗体および分析物を、20 mM ACES、150 mM NaCl、1.2 mM CaCl2、0.05% Tween 20、0.005% NaN3を含むACES pH7.4またはpH5.8バッファー中で調製した。各抗体をproA/Gによりセンサー表面上にキャプチャーさせた。抗体キャプチャーレベルは概して130~240共鳴単位(RU)であった。ヒト、カニクイザル、およびマウス潜在型ミオスタチンを、2倍段階希釈により調製した3.125~50 nMの濃度で注入し、続いて解離させた。センサー表面はサイクル毎に10 mMグリシンHCl pH1.5で再生させた。データをBIACORE(登録商標)T200 Evaluationソフトウェア, バージョン2.0(GE Healthcare)を用いて処理し、1:1結合モデルにフィッティングすることにより、結合アフィニティを決定した。
pH7.4およびpH5.8でのヒト、カニクイザル(cyno)、またはマウス潜在型ミオスタチンに結合するMS1032変異体のアフィニティ(KD)を、表12に示す。全ての変異体が、5を超えるKD比((pH5.8でのKD)/(pH7.4でのKD))を示し、潜在型ミオスタチンへのpH依存的結合を示した。
[表12]MS1302変異体の速度論的パラメータ
n.d.:決定せず
実施例22
HEK Blueアッセイにおける、さらに最適化した変異体の中和活性の評価
我々は、MS1032LO06-SG1、MS1032LO07-SG1、MS1032LO10-SG1、MS1032LO11-SG1、MS1032LO12-SG1、MS1032LO18-SG1、MS1032LO19-SG1、MS1032LO21-SG1、MS1032LO23-SG1、およびMS1032LO25-SG1のヒト潜在型ミオスタチンに対する中和活性を、実施例3に記載されるとおりに評価した。図17に示すとおり、全ての変異体がMS1032LO01-SG1と同等の活性を示した。
実施例23
非pH依存性抗潜在型ミオスタチン抗体と種々のpH依存性抗潜在型ミオスタチン抗体との、マウスにおける血漿総ミオスタチン濃度の比較
C.B-17 SCIDマウスを用いたインビボ試験
C.B-17 SCIDマウス(In Vivos, Singapore)において、抗潜在型ミオスタチン抗体を投与した際の内因性ミオスタチンの蓄積をインビボで評価した。抗潜在型ミオスタチン抗体(3mg/ml)を10 ml/kgの単回用量で尾静脈に投与した。投与の5分後、7時間後、1日後、2日後、3日後、7日後、14日後、21日後、および28日後に血液を採取した。採取した血液を直ちに14,000 rpm、4℃で10分間遠心分離して血漿を分離した。分離した血漿は測定まで-80℃以下で保存した。試験した抗潜在型ミオスタチン抗体はMS1032LO00-SG1、MS1032LO01-SG1、MS1032LO06-SG1、MS1032LO11-SG1、MS1032LO18-SG1、MS1032LO19-SG1、MS1032LO21-SG1、およびMS1032LO25-SG1であった。
電気化学発光(ECL)による血漿中の総ミオスタチン濃度の測定
マウス血漿中の総ミオスタチンの濃度をECLにより測定した。抗成熟型ミオスタチン固定プレートを、ビオチン化した抗成熟型ミオスタチン抗体RK35(WO 2009/058346に記載される)をMULTI-ARRAY 96ウェルストレプトアビジンプレート(Meso Scale Discovery)に分注することにより調製し、ブロッキングバッファー中で2時間室温でインキュベートした。成熟型ミオスタチン検量線サンプルおよび40倍以上に希釈したマウス血漿サンプルを調製した。サンプルを酸性溶液(0.2 M グリシン-HCl, pH2.5)中で混合し、成熟型ミオスタチンをその結合タンパク質(プロペプチドなど)から解離させた。続いて、サンプルを抗成熟型ミオスタチン固定プレートに添加し、室温で1時間結合させた後に洗浄した。次に、SULFO TAGで標識した抗成熟型ミオスタチン抗体RK22(WO 2009/058346に記載される)を加え、プレートを室温で1時間インキュベートした後に洗浄した。Read Buffer T (x4)(Meso Scale Discovery)を直ちにプレートに添加し、シグナルをSECTOR Imager 2400(Meso Scale Discovery)で検出した。成熟型ミオスタチン濃度を解析ソフトウェアSOFTmax PRO(Molecular Devices)を使用して検量線のレスポンスに基づいて計算した。この方法で測定した、抗潜在型ミオスタチン抗体の静脈内投与後の血漿中総ミオスタチン濃度の経時変化を図18に示す。
マウスインビボ試験における、pH依存性ミオスタチン結合のミオスタチン蓄積に対する効果
マウスにおけるミオスタチン蓄積に対するpH依存性の効果を、非pH依存性抗潜在型ミオスタチン抗体(MS1032LO00-SG1)および種々のpH依存性抗潜在型ミオスタチン抗体(MS1032LO01-SG1、MS1032LO06-SG1、MS1032LO11-SG1、MS1032LO18-SG1、MS1032LO19-SG1、MS1032LO21-SG1、およびMS1032LO25-SG1)を用いて比較した。pH依存性の導入は、SCIDマウスの血漿からのミオスタチンのクリアランスを有意に促進した。図18に示すとおり、pH依存性抗潜在型ミオスタチン抗体(MS1032LO01-SG1、MS1032LO06-SG1、MS1032LO11-SG1、MS1032LO18-SG1、MS1032LO19-SG1、MS1032LO21-SG1、およびMS1032LO25-SG1)は、非pH依存性抗潜在型ミオスタチン抗体(MS1032LO00-SG1)と比較して、28日目においてミオスタチン蓄積を低減することができた。
実施例24
非pH依存性抗潜在型ミオスタチン抗体と、pHおよびFcの両方を改変した抗潜在型ミオスタチン抗体の、カニクイザルにおける血漿総ミオスタチン濃度の比較
カニクイザルを用いたインビボ試験
カンボジア由来の2~4歳のMacaca fascicularis(カニクイザル)(Shin Nippon Biomedical Laboratories Ltd., 日本)における、抗潜在型ミオスタチン抗体を投与した際の内因性ミオスタチンの蓄積をインビボで評価した。30 mg/kgの用量レベルを、使い捨てシリンジ、延長チューブ、留置針、および注入ポンプを使用して、前腕の橈側皮静脈に注入した。投与スピードは1頭につき30分とした。投与開始前、ならびに投与終了の5分後、7時間後、および1、2、3、7、14、21、28、35、42、49、56日後、または投与終了の5分後、2、4、7時間後、および1、2、3、7、14、21、28、35、42、49、56日後のいずれかで血液を採取した。血液はヘパリンナトリウムを含むシリンジで大腿静脈から採取した。血液は直ちに氷上で冷却し、4℃、1700×gで10分間の遠心分離により血漿を得た。血漿サンプルは測定まで超低温フリーザー内(許容範囲:-70℃以下)で保存した。使用した抗潜在型ミオスタチン抗体は、MS1032LO00-SG1、MS1032LO06-SG1012、MS1032LO06-SG1016、MS1032LO06-SG1029、MS1032LO06-SG1031、MS1032LO06-SG1033、およびMS1032LO06-SG1034(本明細書において、SG1012、SG1016、SG1029、SG1031、SG1033、およびSG1034は、後述のとおりにSG1に基づいて構築した重鎖定常領域である)であった。
抗潜在型ミオスタチン抗体MS1032LO19-SG1079、MS1032LO19-SG1071、MS1032LO19-SG1080、MS1032LO19-SG1074、MS1032LO19-SG1081、およびMS1032LO19-SG1077について(本明細書において、SG1079、SG1071、SG1080、SG1074、SG1081、およびSG1077は、後述のとおりにSG1に基づいて構築した重鎖定常領域である)、2mg/kgの用量レベルを、使い捨てシリンジおよび留置針を用いて、前腕の橈側皮静脈または伏在静脈に投与した。血液を、投与開始前および投与終了の5分後、2、4、7時間後、1、2、3、7、14日後に採取した。血液は上記のとおりに処理した。血漿サンプルは測定まで超低温フリーザー内(許容範囲:-70℃以下)で保存した。
電気化学発光(ECL)による血漿中総ミオスタチン濃度の測定
サル血漿中の総ミオスタチン濃度を実施例23に記載されるとおりにECLにより測定した。この方法により測定された、抗潜在型ミオスタチン抗体の静脈内投与後の血漿総ミオスタチン濃度の経時変化を図19に示す。
電気化学発光(ECL)を用いたサル血漿中のADAの測定
ビオチン化した薬物をMULTI-ARRAY 96-ウェルストレプトアビジンプレート(Meso Scale Discovery)にコーティングし、low crossバッファー(Candor)中で室温で2時間インキュベートした。サル血漿サンプルをlow crossバッファーで20倍に希釈し、プレートに添加した。サンプルを4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートを洗浄バッファーで3回洗浄し、SULFO TAGで標識した抗サルIgG二次抗体(Thermo Fisher Scientific)を添加した。室温で1時間インキュベートした後、プレートを洗浄バッファーで3回洗浄した。Read Buffer T(×4)(Meso Scale Discovery)を直ちにプレートに添加し、SECTOR Imager 2400(Meso Scale Discovery)を用いてシグナルを検出した。
サルにおける、ミオスタチン蓄積に対するpH依存性およびFc改変のインビボでの効果
カニクイザルにおいて、非pH依存性抗体(MS1032LO00-SG1)の投与により、28日目においてミオスタチン濃度がベースラインから少なくとも60倍上昇した。28日目において、pH依存性抗潜在型ミオスタチン抗体MS1032LO06-SG1012およびMS1032LO06-SG1033は、ベースラインからそれぞれ3倍および8倍の上昇をもたらした。強いスイーピングは、主にカニクイザルFcγRIIbに対するアフィニティの増強によってもたらされた。28日目において、pH依存性抗潜在型ミオスタチン抗体MS1032LO06-SG1029、MS1032LO06-SG1031、およびMS1032LO06-SG1034は、ベースライン下にまで抗原を除去することができた。MS1032LO06-SG1029、MS1032LO06-SG1031、およびMS1032LO06-SG1034の強いスイーピングの理由は、抗体の正電荷クラスターの増大による細胞内への非特異的取り込みの増大と、FcγRへの結合性の増強によるFcγRを介した細胞取り込みの増大である。
pH依存性抗潜在型ミオスタチン抗体MS1032LO19-SG1079、MS1032LO19-SG1071、MS1032LO19-SG1080、MS1032LO19-SG1074、MS1032LO19-SG1081、およびMS1032LO19-SG1077の投与は、カニクイザルにおいて1日目からミオスタチン濃度を検出限界未満(<0.25ng/mL)に減少させた。14日目において、MS1032LO19-SG1079およびMS1032LO19-SG1071についてはミオスタチン濃度が検出限界上に上昇した一方、MS1032LO19-SG1080、MS1032LO19-SG1074、MS1032LO19-SG1081およびMS1032LO19-SG1077についてはミオスタチン濃度が検出限界未満のままであった。MS1032LO19-SG1079およびMS1032LO19-SG1071の抑制が弱いのはpI変異の違いによる可能性がある。
このデータは、ミオスタチンの血漿からの強いスイーピングは、FcγRIIbへの結合を増強させる変異、または抗体の正電荷を増大させる変異とFcγRIIbへの結合を増強させる変異とを組み合わせることによって達成され得ることを示唆する。ヒトにおいて、ミオスタチンの強いスイーピングは、抗体の正電荷を増大させる変異とFcγRへの結合を増強させる変異とを組み合わせることによって達成され得ることが予想される。
実施例25
さらに最適化した変異体の、マウスにおけるインビボでの有効性
実施例8に記載されるとおりに、MS1032LO06-SG1、MS1032LO11-SG1、MS1032LO18-SG1、MS1032LO19-SG1、およびMS1032LO25-SG1を使用し、インビボでの有効性をSCIDマウスにおいて評価した。3つの独立した試験を行い、MS1032LO01を対照として使用した。
これらの実験の結果を図20A~20Iに示す。全ての抗体(MS1032LO06-SG1、MS1032LO11-SG1、MS1032LO18-SG1、MS1032LO19-SG1、およびMS1032LO25-SG1)が、除脂肪体重(LBM)ならびに四肢握力の用量依存的増大を示した。また、これらの抗体は用量依存的な体脂肪量の低下も示した。
実施例26
抗潜在型ミオスタチン抗体のエピトープマッピング
対応する結合エピトープをマッピングするために、さらなる抗ヒト潜在型ミオスタチン抗体を作製した。2匹のNZWウサギを、実施例2に記載されるとおりに免疫化し、採取を行った。同定された1760種の抗体産生B細胞株を、ヒト潜在型ミオスタチンのBMP1を介した活性化を阻害する能力についてさらにスクリーニングした。簡単に述べると、分泌された抗体を含むB細胞上清を、組換えヒトBMP1(R&D Systems)の存在下でヒト潜在型ミオスタチンと共に37℃で一晩インキュベートした。50μLの反応混合物を、抗成熟型ミオスタチン抗体RK35(WO 2009/058346に記載されている)でコーティングしたMeso Scale Discovery MULTI-ARRAY 96-ウェルプレートに移した。振盪しながら室温で1時間インキュベートした後、プレートをビオチン化抗成熟型ミオスタチン抗体RK22(WO 2009/058346に記載されている)と共に、続いてSULFOタグ化したストレプトアビジンと共に、インキュベートした。次にRead Buffer T (x4)(Meso Scale Discovery)をプレートに添加し、SECTOR Imager 2400(Meso Scale Discovery)によりECLシグナルを検出した。様々なレベルの中和活性を示す94株を、下流の分析のために選択した(MST1495-MST1588)。これらの選択した株の可変領域を、重鎖定常領域F1332m配列(配列番号:193)を有する発現ベクターを使用したことを除いては実施例2に記載されるとおりにしてクローニングした。
7種の抗潜在型ミオスタチン抗体(MST1032、MST1504、MST1538、MST1551、MST1558、MST1572、およびMST1573;これらの抗体のアミノ酸配列の配列番号を表13に示す)のパネルについて、ヒト潜在型ミオスタチンの活性化に対する阻害活性についてさらに評価した。図21に示すとおり、全ての抗体が、ヒト潜在型ミオスタチンのBMP1を介した活性化を用量依存的に阻害することができた。
[表13]抗潜在型ミオスタチン抗体のアミノ酸配列
ウェスタンブロッティングにおいて良好に作用した4種の抗体をエピトープマッピングのために選択した。ヒト潜在型ミオスタチンのN末端プロペプチドコード領域の断片を、80アミノ酸の重複を有する各々100アミノ酸のGSTタグ化プロペプチド断片を産生するように、pGEX4.1ベクターにクローニングした(図22A)。形質転換BL21コンピテント細胞において、Overnight Express Autoinduction System(Merck Millipore)を用いてタンパク質発現を誘導し、BugBusterタンパク質抽出試薬(Novagen)を用いてタンパク質を抽出した。約37kDaでの所望のタンパク質断片の発現を、実施例6に記載されるとおりのウェスタンブロッティング解析により検証した(抗GST抗体(Abcam))(図22B)。抗ヒト潜在型ミオスタチン抗体で試験した場合、図22Cに示すとおり、4種の抗体全てが潜在型ミオスタチンの活性化を阻害することができたが、それらはヒト潜在型ミオスタチン上の異なるエピトープを認識した。MST1032抗体は、初めの5断片を検出することができ、アミノ酸81~100(配列番号:78)の除去後はバンドが検出されなかった。MST1538およびMST1572抗体はいずれも初めの3断片のみに結合し、配列番号:78のアミノ酸41~60が存在しない場合にはバンドが検出されなかった。抗体MST1573は初めの2断片に強力に結合したのみであり、そのエピトープは配列番号:78のアミノ酸21~40内に位置することを示唆している(図22D)。
実施例27
新規FcγRIIb増強Fc変異体の開発
本実施例では、ミオスタチンのクリアランスを増強するFc改変について例証する。
WO 2013/125667において、可溶性抗原のクリアランスは、FcγRIIbに対する増強したアフィニティを示すFcドメインを含む抗原結合分子の投与によって、増強することができることが証明されている。さらに、ヒトFcγRIIbへの増強した結合性を示し得るFc変異体が、WO 2012/115241およびWO 2014/030728において例証されている。これらのFc変異体は、選択的にヒトFcγRIIbへの増強した結合性を示し、他の活性なFcγRへの減少した結合性を示すことができることも例証されている。このFcγRIIb結合の選択的な増強は、可溶性抗原のクリアランスのためだけでなく望ましくないエフェクター機能および免疫応答のリスクを減少させるためにも好ましい可能性がある。
抗体医薬の開発のためには、該医薬が薬理学的に活性な非ヒト動物において、有効性、薬物動態、および安全性を評価すべきである。もしそれがヒトにおいてのみ活性であるならば、サロゲート抗体の使用などの代替手法を検討しなければならない(Int. J. Tox. 28: 230-253 (2009))。しかし、非ヒト動物におけるFcγRの発現パターンおよび/または機能はヒトと必ずしも同じではないので、サロゲート抗体を使用してヒトにおけるFc領域とFcγRとの相互作用の効果を正確に予測することは容易ではない。非ヒト動物で得られた結果をヒトへ外挿できるように、抗体医薬のFc領域は、非ヒト動物、特にヒトに近いFcγRの発現パターンおよび機能を有するカニクイザルに対する交差反応性を有することが好ましい。
したがって、本研究においては、ヒトおよびカニクイザルのFcγRに対する交差反応性を示すFc変異体を開発した。
ヒトおよびサルFcγRに対する既存のFcγRIIb増強Fc変異体のアフィニティ測定
WO 2012/115241に開示されるヒトFcγRIIb増強変異体(本明細書において、「FcγRIIb増強」とは「FcγRIIb結合活性が増強された」の意味である)の重鎖遺伝子を、M103205H795-SG1 と命名したMS1032LO06-SG1 の重鎖(VH, 配列番号:86; CH, 配列番号:9)において、EUナンバリングの位置238におけるProをAspに置換することにより、生成した。得られた重鎖をM103205H795-MY009と称する(VH, 配列番号:86; CH, 配列番号:252)。抗体軽鎖として、M103202L889-SK1(VL, 配列番号:96; CL, 配列番号:10)を使用した。組換え抗体を実施例34に示す方法に従い発現させた。
FcγRの細胞外ドメインを以下のようにして調製した。ヒトFcγRの細胞外ドメインの遺伝子の合成は、NCBIに登録されている情報に基づき当業者に公知の方法で行った。具体的には、FcγRIIaはNCBIアクセッション番号NM_001136219.1の配列、FcγRIIbはNM_004001.3、FcγRIIIaはNM_001127593.1にそれぞれ基づくものであった。FcγRIIaおよびFcγRIIIaのアロタイプを、FcγRIIa(J. Exp. Med. 172:19-25 (1990))およびFcγRIIIa(J. Clin. Invest. 100(5):1059-1070 (1997))のそれぞれの多型に関する報告に従って調製した。カニクイザルFcγRの細胞外ドメインの遺伝子の合成は、カニクイザル由来の各FcγRのcDNAを当業者に公知の方法を用いてクローニングすることにより構築した。構築したFcγRの細胞外ドメインのアミノ酸配列を配列表に示した(ヒトFcγRIIaRは配列番号:210、ヒトFcγRIIaHは配列番号:211、ヒトFcγRIIbは配列番号:214、ヒトFcγRIIIaFは配列番号:217、ヒトFcγRIIIaVは配列番号:218、カニクイザルFcγRIIa1は配列番号:220、カニクイザルFcγRIIa2は配列番号:221、カニクイザルFcγRIIa3は配列番号:222、カニクイザルFcγRIIbは配列番号:223、カニクイザルFcγRIIIaSは配列番号:224)。次に、それらのC末端にHisタグを付加し、得られた各遺伝子を哺乳類細胞発現用に設計された発現ベクターに挿入した。発現ベクターをヒト胚腎細胞由来FreeStyle293細胞(Invitrogen)に導入し、標的タンパク質を発現させた。培養後、得られた培養上清を原則として以下の4工程により濾過および精製した。第1工程としてSP Sepharose FFを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー、第2工程としてHisタグに対するアフィニティクロマトグラフィー(HisTrap HP)、第3工程としてゲル濾過カラムクロマトグラフィー(Superdex200)、および第4工程として滅菌濾過を行った。精製タンパク質の280nmでの吸光度を分光光度計を用いて測定し、精製タンパク質の濃度をPACE法(Protein Science 4:2411-2423 (1995))により算出された吸光係数を用いて決定した。
これらの抗体とFcγRとの相互作用の速度論的解析を、BIACORE(登録商標)T200またはBIACORE(登録商標)4000(GE Healthcare)を使用して行った。HBS-EP+(GE Healthcare)をランニングバッファーとして使用し、測定温度は25℃に設定した。Protein A、Protein A/G、またはマウス抗ヒトIgGκ軽鎖(BD Biosciences)をアミンカップリング法によりSeries S Sensor Chip CM4またはCM5(GE Healthcare)上に固定することによって作製したチップを使用した。目的の抗体をこのチップ上にキャプチャーさせ、ランニングバッファーで希釈しておいた各FcγRと相互作用させ、抗体の結合を測定した。測定後、チップを再生させて繰り返し使用できるように、チップにキャプチャーした抗体を10 mM グリシン-HCl、pH1.5および25 mM NaOHと反応させることにより洗浄した。測定結果として得られたセンサーグラムをBIACORE(登録商標)Evaluationソフトウェアを用いて1:1 Langmuir結合モデルにより解析して結合速度定数ka(L/mol/s)および解離速度定数kd(1/s)を算出し、これらの値から解離定数KD(mol/L)を算出した。MS1032LO06-MY009のヒトFcγRIIaH、ヒトFcγRIIIaV、およびカニクイザルFcγRIIIaSへの結合は微弱であったため、上述の解析方法からKDなどの速度論的パラメータを算出することができなかった。そのような相互作用に関しては、BIACORE(登録商標)T100ソフトウェアハンドブックBR1006-48エディションAEに記載される以下の1:1結合モデルを用いてKD値を算出した。
BIACORE(登録商標)上の1:1結合モデルに従う相互作用分子の挙動は、式1:Req =C・R max/(KD+C)+RI(式中、Reqは分析物濃度に対する定常状態結合レベルのプロットであり、Cは濃度であり、RIはサンプル中のバルク屈折率寄与、Rmaxは表面の分析物結合容量である)により記述することができる。この式を整理すると、KDは、式2:KD = C・Rmax/(Req-RI)-Cと表現することができる。KDは、Rmax、RI、およびCの値を式1または式2に代入することにより算出することができる。現測定条件から、RI=0, C=2 μmol/Lを使用することができる。さらに、各FcγRとIgG1との相互作用を解析した結果得られるセンサーグラムを1:1 Langmuir結合モデルを用いてグローバルフィッティングした際に得られたRmax値を、SG1のキャプチャー量で割り、これにMY009のキャプチャー量を乗じて、得られた値をRmaxとして使用した。この計算は、SG1により結合され得る各FcγRの限界量が、SG1に変異を導入して得られる全変異体について不変であり、測定時のRmaxが測定時のチップ上に結合した抗体量に比例するとの仮定に基づいている。Reqは、測定時に観察されたセンサーチップ上の各変異体への各FcγRの結合量と定義した。
表14は、ヒトおよびカニクイザルFcγRに対するSG1およびMY009の速度論的解析の結果を示す。灰色で塗りつぶしたセルのKD値は、それらのアフィニティが微弱で速度論的解析では正しく決定できないため、式2を使用して算出した。KD倍率の値は、各FcγRについて、変異体のKD値でSG1のKD値を割ることによって算出した。
表14に示すとおり、ヒトFcγRIIb増強変異体であるMY009は、カニクイザルFcγRIIbへの結合の増強を示さないが、ヒトFcγRIIbへの結合の増強を示す。そのカニクイザルFcγRIIbに対するアフィニティは、むしろSG1と比較して0.4倍減少し、ヒトFcγRIIb増強変異体であるMY009はカニクイザルFcγRと交差反応性を有しないことを示した。
ヒトおよびカニクイザルFcγRIIbの両方に対する結合が増強した新規Fc変異体の開発
理想的には、新規のFc変異体は、ヒトおよびカニクイザルFcγRIIbの両方に対して選択的に結合性が増強しており、他の活性なFcγRに対して結合性が減少しているべきである。しかし、カニクイザルFcγRIIbにおいて推定されるFc結合残基はカニクイザルFcγRIIaのいずれのアロタイプとも完全に同じであることから(図23)、カニクイザルFcγRIIaと比較してカニクイザルFcγRIIbの結合を選択的に増強させることは理論的に不可能である。したがって、新規のFc変異体は、ヒトFcγRIIb、カニクイザルFcγRIIb、およびカニクイザルFcγRIIaに対して選択的に結合性が増強しているべきである。
ヒトおよびカニクイザルFcγRIIbの両方に対して選択的に結合性が増強した新規Fc変異体を得るために、WO 2012/115241で行われた網羅的変異導入試験の結果を使用した。網羅的変異導入試験では、IgG1抗体中のFcγR結合領域における全ての位置に網羅的に変異を導入し、各FcγRに対する結合性を以下の手順に示すとおりに網羅的に解析した。
[表14]カニクイザルFcγRに対するヒトFcγRIIb増強変異体の交差反応性
WO 2009/041062に開示される、血漿動態が向上した抗グリピカン3抗体であるGpH7のCDRを含むグリピカン3抗体の可変領域を、抗体重鎖可変領域として使用した(GpH7: 配列番号:225)。同様に、抗体軽鎖については、WO 2009/041062に開示される血漿動態が向上したグリピカン3抗体のGpL16-k0(配列番号:226)を使用した。さらに、IgG1のC末端GlyおよびLysを除去することにより作製されたG1d(配列番号:227)にK439E変異が導入されているB3(配列番号:228)を抗体H鎖定常領域として使用した。GpH7およびB3を融合することによって作製されたこの重鎖を、GpH7-B3(VH, 配列番号:225; CH, 配列番号:228)と称する。
GpH7-B3について、FcγR結合に関与していると考えられるアミノ酸残基および周辺のアミノ酸残基(EUナンバリングによる、位置234~239、265~271、295、296、298、300、および324~337)を、元のアミノ酸とCysを除く18種のアミノ酸残基でそれぞれ置換した。これらのFc変異体をB3変異体と称する。B3変異体を発現させ、プロテインAで精製した抗体の各FcγR(FcγRIIa H型、FcγRIIa R型、FcγRIIb、およびFcγRIIIaF)に対する結合を、以下のとおり網羅的に評価した。各改変抗体と上述のとおりに調製したFcγ受容体との相互作用の解析を、BIACORE(登録商標)T100(GE Healthcare)、BIACORE(登録商標)T200(GE Healthcare)、BIACORE(登録商標)A100、またはBIACORE(登録商標)4000を使用して行った。HBS-EP+(GE Healthcare)をランニングバッファーとして使用し、測定温度は25℃に設定した。プロテインA(Thermo Scientific)、プロテインA/G(Thermo Scientific)、またはプロテインL(ACTIGENまたはBioVision)をアミンカップリング法によりSeries S sensor Chip CM5またはCM4 (GE Healthcare)に固定することにより作製したチップを使用した。目的の抗体をこれらのセンサーチップにキャプチャーさせた後、ランニングバッファーで希釈したFcγ受容体を作用させ、抗体に結合した量を測定した。しかし、Fcγ受容体の結合量は抗体のキャプチャー量に依存するため、Fcγ受容体の結合量を各抗体のキャプチャー量で割ることで補正値を得、これらの値を比較した。また、10 mM グリシン-HCl、pH1.5によりチップにキャプチャーした抗体を洗浄し、チップを再生させて繰り返し用いた。各B3変異体のFcγR結合量の値を、親B3抗体(EUナンバリングによる位置234~239、265~271、295、296、298、300、および324~337がヒト天然型IgG1の配列を有する抗体)のFcγR結合量の値で除した。この値を100倍することで得られた値を、各変異体の相対的なFcγR結合活性の指標とした。
表15は、以下の基準に基づいて選択した有望な置換の結合プロファイルを示す(親B3抗体と比較して、ヒトFcγRIIbに対して40%を超える、FcγRIIaRおよびFcγRIIaHに対して100%未満、ヒトFcγRIIIaFに対して10%未満)。
[表15]ヒトFcγRに対する選択した置換の結合プロファイル
次の工程において、これらの置換のカニクイザルFcγRへの交差反応性を評価した。これらの16種の変異をM103205H795-SG1に導入した。M103202L889-SK1を軽鎖として使用して変異体を発現させ、それらのカニクイザルFcγRIIa1、IIa2、IIa3、IIb、IIIaSに対するアフィニティを解析した。
表16は、カニクイザルFcγRに対するこれら16変異体の結合プロファイルを示す。FcγR結合量の値は、FcγRの結合量を各抗体のキャプチャー量で割ることで得た。この値をSG1についての値を100としてさらにノーマライズした。
[表16]カニクイザルFcγRに対する選択した置換の結合プロファイル
選択した16種のFc変異体のうち、MY001のみが、SG1と比較して85%のカニクイザルFcγRIIbへの結合性を維持した。また、MY001はカニクイザルFcγRIIIaSに対する結合性の減少を示し、カニクイザルFcγRIIa1、IIa2、およびIIa3への結合性を維持した。結果として、G236N変異が、ヒトおよびカニクイザルFcγRの両方に対して同様の結合プロファイルを示す唯一の置換である。
G236N変異はヒトおよびカニクイザルFcγRの両方に対して交差反応性を示すが、FcγRIIbに対するアフィニティはSG1よりも低い(ヒトFcγRIIbに対しては75%、カニクイザルFcγRIIbに対しては85%)。FcγRIIbに対するアフィニティを増強させるために、さらなる置換を評価した。具体的には、ヒトFcγRIIbへの結合の増強、ヒトFcγRIIIaへの結合の減少、および、ヒトFcγRIIaよりもヒトFcγRIIbに対する選択性の増大、を示す置換を、網羅的変異導入試験の結果に基づいて選択した(表17)。
[表17]ヒトFcγRに対するさらに選択した置換の結合プロファイル
これらの置換のうち、L234WおよびL234Yを、ヒトFcγRIIaよりもヒトFcγRIIbに対する選択性を増大させるために選択した。また、G236A、G236S、A330R、A330KおよびP331Eを、ヒトFcγRIIIaに対する結合性を低下させるために選択した。他の全ての置換を、ヒトFcγRIIbへの結合性を増強させるために選択した。選択した置換のカニクイザルFcγRに対する交差反応性を評価した。さらに、P396M、V264I、およびE233Dの3種の置換も評価した。置換をM103205H795-SG1に導入し、M103202L889-SK1を軽鎖として用いて変異体を発現させた。
表18は、ヒトおよびカニクイザルFcγRに対する、G236Nを含む選択した置換の速度論的解析を示す。具体的には、置換をM103205H795-SG1に導入し、M103202L889-SK1を軽鎖として用いて変異体を発現させ、カニクイザルFcγRIIa1、IIa2、IIa3、IIb、IIIaSに対するアフィニティを解析した。
灰色で塗りつぶしたセル中のKD値は、それらのアフィニティが微弱で速度論的解析により正しく決定することができなかったため、式2を使用して算出した。KD倍率の値は、各FcγRについて変異体のKD値でSG1のKD値を割ることによって算出した。
G236Nは、カニクイザルFcγRIIa1、カニクイザルFcγRIIa2、カニクイザルFcγRIIa3、およびカニクイザルFcγRIIbに対して、SG1と同等の結合アフィニティを示した。ヒトFcγRIIbに対するアフィニティは0.6倍に減少しているが、ヒトFcγRIIaHおよびヒトFcγRIIaRに対するアフィニティはそれぞれ0.2倍および0.1倍に減少しており、この置換がヒトFcγRIIaよりもヒトFcγRIIbに対して高い選択性を有していることを示す。さらに、カニクイザルFcγRIIIaSおよびヒトFcγRIIIaVに対するアフィニティはそれぞれ0.03倍および0.04倍であり、これはADCC活性を除去するために好ましい。この結果に基づくと、G236Nは、ヒトおよびカニクイザルFcγRに対してほぼ理想的な交差反応性を示したが、ヒトおよびカニクイザルFcγRIIb両方に対するアフィニティは増強すべきである。
評価したさらなる置換のうち、S298L、G236A、P331E、E233D、K334Y、K334M、L235W、S239V、K334I、L234W、K328T、Q295L、K334V、K326T、P396M、I332D、H268E、P271G、S267A、およびH268Dは、ヒトおよびカニクイザルFcγRIIbに対する結合性の増強を示した。具体的には、H268Dが最大の効果(ヒトFcγRIIbに対して7倍、およびカニクイザルFcγRIIに対して5.3倍)を示した。FcγRIIIa結合の低減効果に関しては、G236S、A330K、およびG236DがSG1と比較して0.5倍未満のアフィニティを示した。
MY001のヒトおよびカニクイザルFcγRIIb両方に対するアフィニティを増強するために、表18に列挙した置換の組み合わせを評価した。具体的には、置換をM103205H795-SG1に導入し、M103202L889-SK1を軽鎖として使用して変異体を発現させ、それらのアフィニティを解析した。表19は、ヒトおよびカニクイザルFcγRに対する速度論的解析の結果を示す。灰色で塗りつぶしたセル中のKD値は、それらのアフィニティが微弱で速度論的解析により正しく決定することができなかったため、式2を使用して算出した。KD倍率の値は、各FcγRについて変異体のKD値でSG1のKD値を割ることにより算出した。
[表18]ヒトおよびカニクイザルFcγRに対する変異体の速度論的解析
[表19]G236Nとさらなる置換から構成される変異体の速度論的解析
全ての変異体が、SG1と比較して、ヒトFcγRIIIaVに対するアフィニティを0.26倍未満に、およびカニクイザルFcγRIIIaSに対するアフィニティを0.42倍未満に抑制した。さらに、MY047、MY051、およびMY141を除くすべての変異体が、MY001と比較してヒトおよびカニクイザルFcγRIIb両方に対する結合性の増強を示し、それらのヒトFcγRIIaへの結合はSG1と比較して2倍未満に維持された。それらのうち、MY201、MY210、MY206、MY144、MY103、MY212、MY105、MY205、MY109、MY107、MY209、MY101、MY518、MY198、およびMY197は、ヒトおよびカニクイザルFcγRIIbの両方に対して、SG1と比較して4倍を超える結合性の増強を示した。とりわけ、MY205、MY209、MY198、およびMY197は、ヒトおよびカニクイザルFcγRIIbの両方への結合性が7倍を超えて増強した。
WO2014030728には、CH3ドメインの位置396における置換がヒトFcγRIIbに対するアフィニティを増強したことが例証されている。G236N/H268E/P396M置換を含むM103205H795-MY052の位置396に網羅的変異を導入した。得られた変異体をM103202L889-SK1を軽鎖として用いて発現させ、ヒトおよびカニクイザルFcγRに対するアフィニティを評価した(表20)。KD倍率の値は、各FcγRについて変異体のKD値でSG1のKD値を割ることにより算出した。
試験した置換のうち、P396I、P396K、およびP396Lが、SG1と比較してヒトFcγRIIbへの結合性を5倍を超えて維持し、P396L置換のみが、MY052と比較してヒトFcγRIIbに対するアフィニティを増強させた。カニクイザルFcγRIIbへの結合性に関しては、親MY052がSG1から3.9倍の増強という最も高いアフィニティを示した。
G236NがヒトおよびカニクイザルFcγRに対する理想的な交差反応性を示したため、これまでの実施例で評価していなかった位置236における他の置換を試験した。具体的には、M103205H795-MY201におけるAsnを、Met、His、Val、Gln、Leu、Thr、およびIleで置換した。得られた変異体を、M103202L889-SK1を軽鎖として使用して発現させ、それらのヒトおよびカニクイザルFcγRに対するアフィニティを評価した(表21)。灰色で塗りつぶしたセル中のKD値は、それらのアフィニティが微弱で速度論的解析により正しく決定することができなかったため、式2を使用して算出した。KD倍率の値は、各FcγRについて変異体のKD値でSG1のKD値を割ることにより算出した。
[表20]MY052に由来するP396変異体の速度論的解析
[表21]MY201に由来するG236変異体の速度論的解析
[表22]MY265に由来する変異体の速度論的解析
全ての変異体が、親MY201と比較してヒトおよびカニクイザルFcγRIIb両方に対するアフィニティの減少を示したものの、MY201の位置236のAsnをThrに置換することにより作製したMY265は、SG1と比較して、それぞれヒトFcγRIIbに対して2.1倍、カニクイザルFcγRIIbに対して3.1倍に増強した結合性を維持した。また、MY265は、ヒトおよびカニクイザルFcγRIIIaに対する低下した結合性も維持した。ヒトFcγRIIaHおよびFcγRIIaRに対するアフィニティはSG1と比較して2.5倍を超えて増強したが、G236Tは位置236における二番目に好ましい置換である。
ヒトFcγRIIbに対するMY265の選択性およびアフィニティを向上させるために、位置231および位置232への網羅的変異導入試験を行った。具体的には、M103205H795-MY265の位置231および位置232を、元のアミノ酸およびCysを除く18種のアミノ酸残基で置換した。得られた変異体を、M103202L889-SK1を軽鎖として用いて発現させ、それらのヒトおよびカニクイザルFcγRに対するアフィニティを評価した(表22)。KD倍率の値は、各FcγRについて変異体のKD値でSG1のKD値を割ることにより算出した。
FcγRIIbに対するアフィニティに関しては、A231T、A231M、A231V、A231G、A231F、A231I、A231L、A231、A231W、P232V、P232Y、P232F、P232M、P232I、P232W、P232Lの付加により、ヒトおよびカニクイザルFcγRIIbへの結合性が親MY265と比較して増強した。とりわけ、A231TおよびA231Gの付加は、ヒトFcγRIIaRへの結合をMY265と比較して減少させた。
これまでの実施例で評価しなかった置換の組み合わせを評価した。試験し有望であることが判明した置換を組み合わせてM103205H795-SG1に導入した。得られた変異体を、M103202L889-SK1を軽鎖として用いて発現させ、それらのヒトおよびカニクイザルFcγRに対するアフィニティを評価した。表23はその結果を示し、灰色で塗りつぶしたセル中のKD値は、それらのアフィニティが微弱で速度論的解析により正しく決定することができなかったため、式2を使用して算出した。KD倍率の値は、各FcγRについて変異体のKD値でSG1のKD値を割ることにより算出した。表19において有望な変異体として選択したMY209の値を再度比較のために示した。
試験した変異体のうち、MY213のみが、ヒトおよびカニクイザルFcγRIIbに対してMY209よりも高い結合アフィニティを示した。しかし、MY213のヒトFcγRIIaHおよびヒトFcγRIIaRに対するアフィニティは、MY209のものよりも高い。
[表23A]他の組み合わせの速度論的解析
[表23B]他の組み合わせの速度論的解析
[表24]全ヒトFcγRトランスジェニックマウスにおいて試験した変異体結合プロファイル
実施例28
全ヒトFcγRトランスジェニックマウスにおける、FcγRIIb増強Fc変異体を用いたミオスタチンクリアランスの評価
全てのマウスFcγRを欠損させ、導入遺伝子としてコードされたヒトFcγRをマウスゲノムに挿入したマウス(Proc. Natl. Acad. Sci., 2012, 109, 6181)において、実施例27で構築したFcγRIIb増強Fc変異体によるミオスタチンクリアランス効果を評価した。このマウスは、可溶性抗原のクリアランスに対するヒトFcγRIIbへのアフィニティ増強の効果がマウスにおいて評価できるように、マウスの全FcγRがヒトのものに置換されている。さらに、pI上昇置換を、実施例27で構築したFcγRIIb増強Fc変異体と組み合わせて評価した。
試験変異体の作製及びプロファイル
試験した8抗体とその結合プロファイルを表24にまとめた。重鎖であるMS103205H795-PK2は、MS103205H795-MY101にpI上昇置換(S400R/D413K)を導入することにより作製した。MS103205H795-MY351、MS103205H795-MY344、MS103205H795-MY335は、別のpI上昇置換(Q311R/D413K)をMS103205H795-MY201、MS103205H795-MY205、MS103205H795-MY265にそれぞれ導入することにより作製した。全てのMS1032LO06変異体は、実施例27に示す方法に従いM103202L889-SK1を軽鎖として用いて発現させ、それらのヒトおよびカニクイザルFcγRに対するアフィニティを実施例27の方法を用いて評価した。
表24にまとめたSPR解析に基づき、pI上昇置換はFcγRIIb増強Fc変異体のFcγR結合に影響を与えないことが確認された。MY101、およびMY101にS400R/D413Kを導入することにより作製したPK2は、ヒトFcγRIIb結合のそれぞれ9倍および8倍の増強を示した。MY101およびPK2のヒトFcγRIIaに対するアフィニティは、SG1と同等のままであった。他のヒトおよびカニクイザルFcγRについては、それらはほぼ同様の結合プロファイルを示した。同様に、MY351は親MY201と、MY344は親MY205と、MY335は親MY265とそれぞれ同様の結合プロファイルを示した(表21)。これらの結果は、pI上昇置換であるS400R/D413KとQ311R/D413KのいずれのペアもヒトおよびカニクイザルFcγRに対するアフィニティに影響を与えないことを示す。
全ヒトFcγRトランスジェニックマウスにおけるPK試験
全ヒトFcγRトランスジェニックマウスを用いたインビボ試験
全ヒトFcγRトランスジェニックマウスにおいて抗潜在型ミオスタチン抗体とヒト潜在型ミオスタチンを同時投与した際の、ミオスタチンと抗潜在型ミオスタチン抗体の消失をインビボで評価した(図24および25)。抗潜在型ミオスタチン抗体(0.3 mg/ml)および潜在型ミオスタチン(0.05 mg/ml)を10 ml/kgの単回用量で尾静脈に投与した。抗薬物抗体を抑制するため、抗CD4抗体(1 mg/ml)を10 ml/kgの用量で尾静脈に3回(10日毎)投与した。投与の5分後、15分後、1時間後、4時間後、7時間後、1日後、2日後、7日後、14日後、21日後、および28日後に血液を採取した。採取した血液を直ちに15,000 rpmで4℃で5分間遠心分離して血漿を分離した。分離した血漿は測定まで-20℃以下に保存した。使用した抗潜在型ミオスタチン抗体は、MS1032LO06-SG1、MS1032LO06-MY101、MS1032LO06-PK2、MS1032LO06-MY201、MS1032LO06-MY351、MS1032LO06-MY205、MS1032LO06-MY344、およびMS1032LO06-MY335であった。
電気化学発光(ECL)による血漿中の総ミオスタチン濃度の測定
マウス血漿中の総ミオスタチンの濃度をECLにより測定した。抗成熟型ミオスタチン抗体固定プレートを、抗成熟型ミオスタチン抗体RK35(WO 2009058346)をMULTI-ARRAY 96ウェルプレート(Meso Scale Discovery)に分注することにより調製し、4℃で一晩インキュベートした。成熟型ミオスタチン検量線サンプルおよび4倍以上に希釈したマウス血漿サンプルを調製した。サンプルを酸性溶液(0.2 M グリシン-HCl, pH2.5)中で混合し、成熟型ミオスタチンをその結合タンパク質(プロペプチドなど)から解離させた。続いて、サンプルを抗成熟型ミオスタチン抗体固定プレートに添加し、室温で1時間結合させた後に洗浄した。次に、BIOTIN TAGで標識した抗成熟型ミオスタチン抗体RK22(WO 2009/058346)を加え、プレートを室温で1時間インキュベートした後に洗浄した。次に、SULFO TAGで標識したストレプトアビジン(Meso Scale Discovery)を加え、プレートを室温で1時間インキュベートした後に洗浄した。Read Buffer T (x4)(Meso Scale Discovery)を直ちにプレートに添加し、シグナルをSECTOR Imager 2400(Meso Scale Discovery)で検出した。成熟型ミオスタチン濃度を解析ソフトウェアSOFTmax PRO(Molecular Devices)を使用して検量線のレスポンスに基づいて計算した。この方法で測定した、抗潜在型ミオスタチン抗体および潜在型ミオスタチンの静脈内投与後の血漿総ミオスタチン濃度の経時変化を図24に示す。
高速液体クロマトグラフィー-エレクトロスプレータンデム質量分析計(LC/ESI-MS/MS)による血漿中の抗潜在型ミオスタチン抗体濃度の測定
マウス血漿中の抗潜在型ミオスタチン抗体濃度をLC/ESI-MS/MSにより測定した。検量標準の濃度は、マウス血漿中1.56 25、3.125、6.25、12.5、25、50、100、および200 μg/mLであった。3μLの検量標準および血漿サンプルを、50 μLのAb-Capture Mag(ProteNova)に加え、室温で2時間インキュベートさせた。その後、磁気ビーズをサンプルから回収し、0.05% Tween 20を含む10 mmol/L PBSの0.2 mLで2回洗浄した。続いて、Tween 20を確実に除去するために、磁気ビーズを10 mmol/L PBSで洗浄した。洗浄後、7.5 mol/L尿素、8 mmol/Lジチオスレイトール、および1 μg/mLリゾチーム(ニワトリ卵白)を含む50 mmol/L炭酸水素アンモニウム溶液25μLに磁気ビーズを懸濁し、懸濁サンプルを56℃で45分間インキュベートした。次に、500 mmol/Lヨードアセトアミド2 μLを添加し、サンプルを暗所で37℃で30分間インキュベートした。次に、0.67 μg/mLの生化学用リシルエンドペプチダーゼ(Wako)の50 mmol/L炭酸水素アンモニウム溶液150μLを添加することによりリシルエンドペプチダーゼ消化を行い、サンプルを37℃で3時間インキュベートした。続いて、10 μg/mLのシーケンシンググレード修飾トリプシン(Promega)を含む50 mmol/L炭酸水素アンモニウム溶液10 μLを加えてトリプシン消化を行った。サンプルを37℃で一晩、混合下で消化させ、5 μLの10%トリフルオロ酢酸を添加することにより反応停止させた。50μLの消化サンプルをLC/ESI-MS/MSによる解析に供した。LC/ESI-MS/MSは、2D I-class UPLC(Waters)を備えるXevo TQ-Sトリプル四重極装置(Waters)を使用して行った。抗潜在型ミオスタチン抗体に特異的なペプチドYAFGQGTK、および内部標準としてリゾチームに特異的なペプチドGTDVQAWIRを、選択反応モニタリング(SRM)によりモニターした。SRMトランジションは、抗潜在型ミオスタチン抗体については[M+2H]2+ (m/z 436.2)からy8イオン(m/z 637.3)、リゾチームについては[M+2H]2+ (m/z 523.3)からy8イオン(m/z 545.3)であった。内部検量線を、濃度に対してプロットしたピーク面積を用いた重み付き(1/xまたは1/x2)直線回帰により構築した。マウス血漿中の濃度を、解析ソフトウェアMasslynx Ver.4.1 (Waters)を用いて検量線から算出した。この方法で測定した、抗潜在型ミオスタチン抗体および潜在型ミオスタチンの静脈内投与後の血漿中抗体濃度の経時変化を図25に示す。
ミオスタチン濃度に対するpIおよびFcγR結合のインビボでの効果
MS1032LO06-SG1の投与後、7時間での血漿総ミオスタチン濃度は、5分での血漿総ミオスタチン濃度と比較して5倍減少した。対照的に、MS1032LO06-MY101、MS1032LO06-MY201、およびMS1032LO06-MY205の投与後、7時間での血漿総ミオスタチン濃度は、5分での血漿総ミオスタチン濃度と比較して28~200倍減少した。さらに、MS1032LO06-PK2、MS1032LO06-MY351、MS1032LO06-MY344、およびMS1032LO06-MY335の投与後、7時間での血漿総ミオスタチン濃度は、5分での血漿総ミオスタチン濃度と比較して361~419倍減少した。一方、各サンプリングポイントにおけるMS1032LO06-SG1の濃度と比較した各抗体濃度の差はおよそ2倍以内であり、pI変異体は血漿中からの抗体の消失を増加しなかった。ヒトFcγRIIb結合増強抗体およびpI上昇置換は共にミオスタチンの消失を増加させたが、抗体の消失は増加させなかった。
高pI変異体は血漿中でより多くの正電荷を有する。この正電荷が負電荷の細胞表面と相互作用するため、高pI変異体の抗原抗体免疫複合体は細胞表面により近づき、高pI変異体の抗原抗体免疫複合体の細胞取り込みの増加をもたらす。
実施例29
サルにおける、FcγRIIb増強Fc変異体を用いたミオスタチンクリアランスの評価
実施例27で作製したFc変異体のカニクイザルFcγRIIbへの結合の増強がミオスタチンの消失に与える影響を、カニクイザルにおいて評価した。また、pI上昇置換の組み合わせ効果も評価した。
試験変異体の作製及びプロファイル
試験した14抗体とその結合プロファイルを表25にまとめた。酸性pHでのFcRnへの結合が増強したFc変異体は、インビボでの抗体半減期が改善することが報告されている(J. Biol. Chem. 2006 281:23514-23524 (2006); Nat. Biotechnol. 28:157-159 (2010), Clin Pharm. & Thera. 89(2):283-290 (2011))。リウマチ因子へ結合することなく抗体半減期を改善するために、これらの置換をFcγRIIb増強およびpI上昇Fc変異体と組み合わせた。
MS103205H795-MY101、MS103205 H795-MY344、MS103205H795-MY351、MS103205H795-MY201、MS103205H795-MY335にN434A置換をそれぞれ導入することにより、重鎖MS103205H795-SG1012、MS103205H795-SG1029、MS103205 H795-SG1031、MS103205H795-SG1033、MS103205H795-SG1034を作製した。MS103205H795-SG1012にpI上昇置換(Q311R/D399K)を導入することにより、MS103205H795-SG1016を作製した。MS103240 H795-MY344に、M428L/N434A/Y436T/Q438R/S440E 置換およびN434A/Q438R/S440E置換をそれぞれ導入することにより、MS103240H795-SG1071およびMS103240H795-SG1079を作製した(MS103240H795: VH, 配列番号:92)。
MS103240H795-MY209およびMS103240H795-MY518に、pI上昇置換であるQ311R/P343RおよびM428L/N434A/Y436T/Q438R/S440E置換をそれぞれ導入することにより、MS103240H795-SG1074およびMS103240H795-SG1077を作製した。MS103240H795-MY209およびMS103240H795-MY518に、pI上昇置換であるQ311R/P343RおよびN434A/Q438R/S440E置換をそれぞれ導入することにより、MS103240H795-SG1080およびMS103240H795-SG1081を作製した。MS103240H795-MY205にpI上昇置換Q311R/D413KおよびM428L/N434A/Y436T/Q438R/S440E置換を導入することにより、MS103240H795-SG1071を作製した。MS103240H795-MY205にpI上昇置換であるQ311R/D413KおよびN434A/Q438R/S440E置換を導入することにより、MS103240H795-SG1079を作製した。これらのMS1032LO06変異体およびMS1032LO19変異体を、軽鎖としてそれぞれM103202L889-SK1およびM103202L1045-SK1と共に(M103202L1045: VL, 配列番号:97)実施例34に示す方法に従って発現させ、それらのヒトおよびカニクイザルFcγRに対するアフィニティを実施例27の方法を用いて評価した。この例において、各Fc変異体に対するKD倍率の値は、各FcγRについて親SG1のKD値を変異体のKD値で割ることにより算出した。例えば、MS1032LO06-SG1012およびMS1032LO19-SG1071のKD倍率の値は、それぞれ、MS1032LO06-SG1およびMS1032LO19-SG1のKD値を、MS1032LO06-SG1012およびMS1032LO19-SG1071のKD値で割ることにより算出した。
[表25]
SPR解析結果を表25にまとめた。これらの変異体のうち、SG1012、SG1016、SG1074、およびSG1080は、ヒトFcγRIIbに対する最も強いアフィニティを示し、これはSG1と比較して10倍に増強したヒトFcγRIIbに対するアフィニティを有する。
29.2 サルにおけるPK試験
カニクイザルを使用したインビボ試験
カンボジア由来の2~4歳のMacaca fascicularis(カニクイザル)(Shin Nippon Biomedical Laboratories Ltd., 日本)における、抗潜在型ミオスタチン抗体を投与した際の内因性ミオスタチンの蓄積をインビボで評価した。30 mg/kgの用量レベルを、使い捨てシリンジ、延長チューブ、留置針、および注入ポンプを使用して、前腕の橈側皮静脈に注入した。投与スピードは1頭につき30分とした。投与開始前、ならびに投与終了の5分後、7時間後、および1、2、3、7、14、21、28、35、42、49、56日後、または投与終了の5分後、2、4、7時間後、および1、2、3、7、14、21、28、35、42、49、56日後のいずれかで血液を採取した。血液はヘパリンナトリウムを含むシリンジで大腿静脈から採取した。血液は直ちに氷上で冷却し、4℃、1700×gで10分間の遠心分離により血漿を得た。血漿サンプルは測定まで超低温フリーザー内(許容範囲:-70℃以下)で保存した。使用した抗潜在型ミオスタチン抗体は、MS1032LO00-SG1、MS1032LO06-SG1012、MS1032LO06-SG1016、MS1032LO06-SG1029、MS1032LO06-SG1031、MS1032LO06-SG1033、およびMS1032LO06-SG1034(本明細書において、SG1012、SG1016、SG1029、SG1031、SG1033、およびSG1034は、後述のとおりにSG1に基づいて構築した重鎖定常領域である)であった。
抗潜在型ミオスタチン抗体MS1032LO19-SG1079、MS1032LO19-SG1071、MS1032LO19-SG1080、MS1032LO19-SG1074、MS1032LO19-SG1081、およびMS1032LO19-SG1077について(本明細書において、SG1079、SG1071、SG1080、SG1074、SG1081、およびSG1077は、後述のとおりにSG1に基づいて構築した重鎖定常領域である)、2mg/kgの用量レベルを、使い捨てシリンジおよび留置針を用いて、前腕の橈側皮静脈または伏在静脈に投与した。血液を、投与開始前および投与終了の5分後、2、4、7時間後、1、2、3、7、14日後に採取した。血液は上記のとおりに処理した。血漿サンプルは測定まで超低温フリーザー内(許容範囲:-70℃以下)で保存した。
電気化学発光(ECL)による血漿中総ミオスタチン濃度の測定
サル血漿中の総ミオスタチン濃度を実施例23に記載されるとおりにECLにより測定した。この方法により測定された、抗潜在型ミオスタチン抗体の静脈内投与後の血漿総ミオスタチン濃度の経時変化を図26に示す。
電気化学発光(ECL)を用いたサル血漿中のADAの測定
ビオチン化した薬物をMULTI-ARRAY 96-ウェルストレプトアビジンプレート(Meso Scale Discovery)にコーティングし、low crossバッファー(Candor)中で室温で2時間インキュベートした。サル血漿サンプルをlow crossバッファーで20倍に希釈し、プレートに添加した。サンプルを4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートを洗浄バッファーで3回洗浄し、SULFO TAGで標識した抗サルIgG二次抗体(Thermo Fisher Scientific)を添加した。室温で1時間インキュベートした後、プレートを洗浄バッファーで3回洗浄した。Read Buffer T(×4)(Meso Scale Discovery)を直ちにプレートに添加し、SECTOR Imager 2400(Meso Scale Discovery)を用いてシグナルを検出した。
サルにおける、ミオスタチン蓄積に対するpH依存性およびFc改変のインビボでの効果
カニクイザルにおいて、非pH依存性抗体(MS1032LO00-SG1)の投与により、28日目においてミオスタチン濃度がベースラインから少なくとも60倍上昇した。28日目において、pH依存性抗潜在型ミオスタチン抗体MS1032LO06-SG1012およびMS1032LO06-SG1033は、ベースラインからそれぞれ3倍および8倍の上昇をもたらした。強いスイーピングは、主にカニクイザルFcγRIIbに対するアフィニティの増強によってもたらされた。28日目において、pH依存性抗潜在型ミオスタチン抗体MS1032LO06-SG1029、MS1032LO06-SG1031、およびMS1032LO06-SG1034は、ベースライン下にまで抗原を除去することができた。MS1032LO06-SG1029、MS1032LO06-SG1031、およびMS1032LO06-SG1034の強いスイーピングの理由は、抗体の正電荷クラスターの増大による細胞内への非特異的取り込みの増大と、FcγRへの結合性の増強によるFcγRを介した細胞取り込みの増大である。
pH依存性抗潜在型ミオスタチン抗体MS1032LO19-SG1079、MS1032LO19-SG1071、MS1032LO19-SG1080、MS1032LO19-SG1074、MS1032LO19-SG1081、およびMS1032LO19-SG1077の投与は、カニクイザルにおいて1日目からミオスタチン濃度を検出限界未満(<0.25ng/mL)に減少させた。14日目において、MS1032LO19-SG1079およびMS1032LO19-SG1071についてはミオスタチン濃度が検出限界より上に上昇した一方、MS1032LO19-SG1080、MS1032LO19-SG1074、MS1032LO19-SG1081およびMS1032LO19-SG1077についてはミオスタチン濃度が検出限界未満のままであった。MS1032LO19-SG1079およびMS1032LO19-SG1071の抑制が弱いのはpI変異の違いによる可能性がある。
このデータは、ミオスタチンの血漿からの強いスイーピングは、FcγRIIbへの結合を増強させる変異、または抗体の正電荷を増大させる変異とFcγRIIbへの結合を増強させる変異とを組み合わせることによって達成され得ることを示唆する。ヒトにおいて、ミオスタチンの強いスイーピングは、抗体の正電荷を増大させる変異とFcγRへの結合を増強させる変異とを組み合わせることによって達成され得ることが予想される。
実施例30
ミオスタチンのクリアランスを増強するためのpI上昇置換のスクリーニング
ミオスタチンのクリアランスを増強するために、本実施例では抗体のFc部分におけるpI上昇置換を評価した。pIを上昇させるために抗体定常領域にアミノ酸置換を加える方法は特に限定されないが、例えば、WO 2014/145159に記載される方法によって実施することができる。可変領域の場合と同様に、定常領域に導入するアミノ酸置換は、負に荷電したアミノ酸(アスパラギン酸およびグルタミン酸など)の数を減少させつつ正に荷電したアミノ酸(アルギニンおよびリジンなど)を増加させるものであることが好ましい。さらに、アミノ酸置換は抗体定常領域の任意の位置に導入してもよく、単一のアミノ酸置換であっても複数のアミノ酸置換の組み合わせであってもよい。特に限定されないが、アミノ酸置換を導入する部位は、アミノ酸側鎖が抗体分子表面上に露出され得る位置であることが好ましい。特に好ましい例として、複数のアミノ酸置換の組み合わせを、抗体分子表面に露出され得るそのような位置に導入する方法が挙げられる。または、ここで導入される複数のアミノ酸置換は、構造的に互いに近接するように位置しているのが好ましい。さらに、特に限定されないが、本明細書において、導入される複数のアミノ酸置換は、好ましくは正に荷電するアミノ酸への置換であり、それにより構造的に近接する位置に複数の正電荷が存在する状態となることが好ましい。
試験変異体の作製及びプロファイル
試験した抗体を表26にまとめた。重鎖であるMS103205H795-SG141は、MS103205H795-SG1にpI上昇置換Q311R/D399Rを導入することにより作製した。その他の重鎖変異体も、表26に示される各置換をMS103205H795-SG1に導入することにより作製した。全てのMS1032LO06変異体を、軽鎖としてM103202L889-SK1と共に実施例34に示す方法に従い発現させた。
BIACORE(登録商標)を使用したpI上昇Fc変異体のマウスFcγRII結合アッセイ
作製したFc領域変異体を含む抗体について、BIACORE(登録商標)T200(GE Healthcare)を使用して可溶性マウスFcγRIIと抗原抗体複合体との結合アッセイを行った。可溶性マウスFcγRIIを、当業者に公知の方法によりHisタグ化分子の形で作製した。マウスFcγRIIをキャプチャーするため、適切な量の抗His抗体を、His captureキット(GE Healthcare)を用いてアミンカップリング法によりSensor chip CM5(GE Healthcare)上に固定した。次に、抗体抗原複合体およびランニングバッファー(対照溶液として)を注入し、センサーチップ上にキャプチャーしたマウスFcγRIIと相互作用させた。ランニングバッファーとして、20 mM N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸, 150 mM NaCl, 1.2 mM CaCl2, および0.05% (w/v) Tween 20(pH7.4)を使用し、当該バッファーは可溶性マウスFcγRIIを希釈するためにも使用した。センサーチップを再生させるために、pH1.5の10 mM グリシン-HClを使用した。全ての測定は25℃で行った。解析は、測定によって得られたセンサーグラムから算出される結合(RU)に基づいて行い、SG1の結合量を1.00と定義した場合の相対値を示す。パラメータの算出には、BIACORE(登録商標)T100 Evaluation Software (GE Healthcare)を使用した。
SPR解析の結果を表26にまとめた。いくつかのFc変異体についてBIACORE(登録商標)センサーチップ上に固定されたマウスFcγRIIに対するアフィニティが増強していることが示された。
特定の理論に拘束されるわけではないが、この結果は以下のように説明することができる。BIACORE(登録商標)センサーチップは負に荷電していることが知られており、この荷電状態は細胞膜表面に類似していると考えることができる。より具体的には、負に荷電したBIACORE(登録商標)センサーチップ上に固定されたマウスFcγRIIに対する抗原抗体複合体のアフィニティは、同様に負に荷電した細胞膜表面上に存在するマウスFcγRIIに抗原抗体複合体が結合する様式に類似していると推測される。
[表26]pI上昇Fc変異体のまとめ
ここで、pI上昇改変をFc領域に導入することにより作製した抗体は、Fc領域の電荷が改変導入前と比較してより正の側にある抗体である。したがって、Fc領域(正電荷)とセンサーチップ表面(負電荷)とのクーロン相互作用は、pI上昇アミノ酸改変により強化されたと考えることができる。さらに、そのような効果は同じく負に荷電した細胞膜表面上でも同様に生じると期待される。したがって、それらはインビボにおいても細胞内への取り込み速度を加速する効果を示すことが期待される。
SG1から2つのアミノ酸を置換したpI上昇Fc変異体のうち、SG141、P1499m、P1501m、およびP1540mにより形成された抗原抗体複合体は、ヒトFcγRIIbに対して最も高い結合性を示す。Q311R/D399R、Q311R/P343R、Q311R/D413R、およびD401R/D413Kのアミノ酸置換は、センサーチップ上のヒトFcγRIIbへの結合に対して強い荷電効果を有すると考えられる。
pI上昇Fc変異体の細胞取り込み
ヒトFcγRIIb発現細胞株への細胞内取り込み速度を評価するため、以下のアッセイを実施した。ヒトFcγRIIbを恒常的に発現するMDCK(Madin-Darbyイヌ腎)細胞株を公知の方法により作製した。この細胞を使用して、抗原抗体複合体の細胞内取り込みを評価した。
具体的には、pHrodoRed (Life Technlogies)を使用し、確立されたプロトコルに従ってヒト潜在型ミオスタチン(抗原)を標識し、抗体濃度が10 mg/mLおよび抗原濃度が2.5 mg/mLの培養液中で抗原抗体複合体を形成させた。抗原抗体複合体を含む培養液を、上述のヒトFcγRIIbを恒常的に発現するMDCK細胞の培養プレートに添加し、1時間インキュベートした後、細胞内に取り込まれた抗原の蛍光強度をInCell Analyzer 6000 (GE healthcare)を使用して定量した。抗原の取り込み量は、SG1の値(これを1.00とする)に対する相対値として提示した。
細胞取り込みの定量結果を表26にまとめた。細胞内の抗原に由来する強い蛍光がいくつかのFc変異体において観察された。
特定の理論に拘束されないが、この結果は以下のように説明することができる。
細胞培養液に加えた抗原および抗体は、培養液中で抗原抗体複合体を形成する。抗原抗体複合体は、細胞膜上に発現したヒトFcγRIIbに抗体Fc領域を介して結合し、受容体依存的に細胞内に取り込まれる。本実験で使用した抗体はpH依存的に抗原に結合するので、抗体は細胞内部のエンドソーム(酸性pH条件)において抗原から解離することができる。解離した抗原は前記のとおりpHrodoRedで標識されているので、エンドソーム内で蛍光を発する。よって、細胞内の強い蛍光強度は、抗原抗体複合体の細胞内への取り込みがより急速にもしくはより大量に起こったことを示すと考えられる。
SG1から2つのアミノ酸を置換したpI上昇Fc変異体のうち、SG141、P1375m、P1378m、P1499m、P1524m、P1525m、P1532m、P1533m、P1540m、P1541m、およびP1543mにより形成された抗原抗体複合体は、より強い細胞内への抗原取り込みを示す。Q311R/D399R、Q311R/D413K、S400R/D413K、Q311R/P343R、Q311R/G341R、Q311R/G341K、Q311R/D401R、Q311R/D401K、D401R/D413K、D401K/D413K、およびG402K/D413Kのアミノ酸置換は、細胞内への抗原抗体複合体取り込みに対して強い荷電効果を有すると考えられる。
ヒトFcRnトランスジェニックマウスにおけるPK試験
ヒトFcRnトランスジェニックマウスを用いたインビボ試験
マウスFcRnをヒトFcRnに置換したヒトFcRnトランスジェニックマウスにおける、抗潜在型ミオスタチン抗体と潜在型ミオスタチンを同時投与した際のミオスタチンおよび抗潜在型ミオスタチン抗体の消失をインビボで評価した。実験PK-2においては(図27に記載される)、抗潜在型ミオスタチン抗体(0.1 mg/ml)およびマウス潜在型ミオスタチン(0.05 mg/ml)を10 ml/kgの単回用量で尾静脈に投与した。実験PK-4においては(図28に記載される)、抗潜在型ミオスタチン抗体(0.3 mg/ml)、ヒト潜在型ミオスタチン(0.05 mg/ml)、およびヒト正常免疫グロブリン(CSL Behring AG)(100 mg/ml)を10 ml/kgの単回用量で尾静脈に投与した。実験PK-2においては、投与の5分後、15分後、1時間後、4時間後、7時間後、1日後、2日後、7日後、14日後、21日後、および28日後に血液を採取した。実験PK-4においては、投与の5分後、1時間後、4時間後、7時間後、1日後、7日後、14日後、21日後、および30日後に血液を採取した。採取した血液は直ちに15,000 rpm、4℃で5分間遠心分離して血漿を分離した。分離した血漿は測定まで-20℃以下で保存した。使用した抗潜在型ミオスタチン抗体は、実験PK-2においてはMS1032LO06-SG1、MS1032LO06-P1375m、MS1032LO06-P1378m、MS1032LO06-P1383m、実験PK-4においてはMS1032LO06-P1375m、MS1032LO06-P1499mであった。
電気化学発光(ECL)による血漿中総ミオスタチン濃度の測定
マウス血漿中の総ミオスタチン濃度を、実施例28に記載されるとおりにECLにより測定した(Ravetch PK)。この方法で測定した、抗潜在型ミオスタチン抗体と潜在型ミオスタチンの静脈内投与後の血漿中総ミオスタチン濃度の経時変化を図27Aおよび28Aに示す。
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)による血漿中の抗潜在型ミオスタチン抗体濃度の測定
実験PK-2において、マウス血漿中の抗潜在型ミオスタチン抗体濃度をELISAにより測定した。抗ヒトIgG(γ鎖特異的)F(ab')2抗体断片(Sigma)をNunc-ImmunoPlate MaxiSorp (Nalge Nunc International)上に分注し、4℃で一晩静置して抗ヒトIgG固定プレートを作製した。2.5、1.25、0.625、0.313、0.156、0.078、および0.039μg/mlの血漿濃度を有する検量線サンプル、および100倍以上に希釈したマウス血漿サンプルを調製した。次に、サンプルを抗ヒトIgG固定プレートに分注し、室温で1時間静置した。続いて、Goat Anti-Human IgG (γ鎖特異的) Biotin conjugate (Southern Biotech)を加え、室温で1時間反応させた。その後、Streptavidin-PolyHRP80 (Stereospecific Detection Technologies)を添加して室温で1時間反応させ、TMB One Component HRP Microwell Substrate(BioFX Laboratories)を基質として使用して発色反応を行った。1N硫酸(Showa Chemical)で反応を停止した後、マイクロプレートリーダーで450nmの吸光度を測定した。マウス血漿中濃度は、解析ソフトウェアSOFTmax PRO(Molecular Devices)を使用して、検量線の吸光度から算出した。この方法で測定した、抗潜在型ミオスタチン抗体と潜在型ミオスタチンの静脈内投与後の血漿中抗体濃度の経時変化を図27Bに示す。
実験PK-4においては、マウス血漿中の抗潜在型ミオスタチン抗体の濃度をGyrolab Bioaffy(商標)CD(Gyros)により測定した。ビオチン化した抗ヒトIgG Fc抗体をCDの微小構造内のストレプトアビジンビーズカラム上に流した。検量線サンプルは、血漿濃度にして5 mg/mLのヒト正常免疫グロブリン(CSL Behring AG)および200 μg/mlのマウス潜在型ミオスタチンをスパイクし、血漿濃度にして0.5、1、2、4、8、16、および32 μg/mlで調製し、マウス血漿サンプルは、血漿濃度にして200 μg/mlのマウス潜在型ミオスタチンをスパイクし、25倍以上に希釈して調製した。次にサンプルをCDに加え、ビーズカラム上に流した。続いて、Alexaで標識したヤギ抗ヒトIgGポリクローナル抗体(BETHYL)をCDに加え、ビーズカラム上に流した。マウス血漿中濃度は、Gyrolab Evaluator Programを使用して検量線のレスポンスから算出した。この方法で測定した、抗潜在型ミオスタチン抗体と潜在型ミオスタチンの静脈内投与後の血漿中抗体濃度の経時変化を図28Bに示す。
ミオスタチン濃度に対するpIのインビボでの効果
実験PK-2において、MS1032LO06-SG1の投与後、7時間での血漿総ミオスタチン濃度は、5分での血漿総ミオスタチン濃度と比較して12倍減少した。対照的に、実験PK-2において、MS1032LO06-P1375m、MS1032LO06-P1378m、およびMS1032LO06-P1383mの投与後、7時間での血漿総ミオスタチン濃度は、5分での血漿総ミオスタチン濃度と比較して26~67倍減少した。MS1032LO06-P1378mおよびMS1032LO06-P1383mの抗体濃度は、MS1032LO06-SG1の濃度と比較して3倍以上減少したが、MS1032LO06-SG1の濃度と比較した各サンプリングポイントにおけるMS1032LO06-P1375mの濃度の差は、実験PK-2において2倍以内であった。Q311R/D413Kのアミノ酸置換を含むpI変異体は、血漿からの抗体の消失を増加することなく血漿からのミオスタチンの消失の増加を示した。
さらに、ヒトの血漿を模倣する目的でヒト正常免疫グロブリンの同時投与下において、MS1032LO06-P1499mの投与後の総ミオスタチン濃度および抗体濃度を評価した。MS1032LO06-P1375mおよびMS1032LO06-P1499mの投与後、7時間での血漿総ミオスタチン濃度は、5分での血漿総ミオスタチン濃度と比較して3.4倍および5.3倍減少し、MS1032LO06-P1499mにおいて各サンプリングポイントでの総ミオスタチン濃度および抗体濃度は、実験PK-4においてMS1032LO06-P1375mにおける濃度と比較して1.5倍以内であった。Q311R/P343Rのアミノ酸置換を含むpI変異体も、血漿からの抗体消失を増加することなく血漿からのミオスタチンの消失の増加を示した。
高pI変異体は血漿においてより多くの正電荷を有する。この正電荷が負電荷の細胞表面と相互作用することから、高pI変異体の抗原抗体免疫複合体は細胞表面により近づき、高pI変異体の抗原抗体免疫複合体の細胞取り込みの増加をもたらす。
実施例31
FcγRIIb増強Fc変異体と組み合わせたpI上昇置換
他のpI上昇置換と組み合わせたFcγRIIb増強Fc変異体によるミオスタチンクリアランスの効果を、ヒトFcγRIIbトランスジェニックマウスにおいて評価した。ヒトFCGR2B遺伝子の全てのエキソンを含むBAC(細菌人工染色体)ベクターをC57BL/6Nの受精卵の前核に標準的な技法(例えば、J. Immunol., 2015 Oct 1; 195(7): 3198-205を参照)でマイクロインジェクションすることにより、ヒトFcγRIIbトランスジェニックマウスを作製した。エキソン1を標的とするよう設計したジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFNs)を用いて、マウスFcγRIIb欠損マウスを作製した。ヒトFcγRIIbトランスジェニックマウスをマウスFcγRIIb KOマウスと交配し、ヒト化FcγRIIbマウスを確立した。このマウスを使用して、可溶性抗原のクリアランスに対するヒトFcγRIIbへのアフィニティ増強とpIの上昇との組み合わせ効果を評価することができる。
試験変異体の作製とプロファイル
試験した7抗体とその結合プロファイルを表27にまとめた。重鎖であるMS103205H795-MY352、MS103205H795-PK55、MS103205H795-PK56、MS103205H795-PK57は、pI上昇置換であるQ311R/D413R、Q311R/P343R、Q311R/P343R/D413R、Q311R/N384R/D413RをそれぞれMS103205H795-MY201に導入することにより作製した。全てのMS1032LO06変異体は、軽鎖としてM103202L889-SK1と共に実施例30に示す方法に従って発現させ、ヒトおよびカニクイザルFcγRに対するアフィニティを実施例27の方法を用いて評価した。
[表27]
表27にまとめたSPR解析に基づき、pI上昇置換は、FcγRIIb増強Fc変異体のFcγR結合に影響を与えないことが確認された。MY201、およびMY201にQ311R/D413Kを導入することにより作製したMY351は、それぞれ6倍および5倍のヒトFcγRIIb結合の増強を示す。他のヒトおよびカニクイザルFcγRに関しては、それらはほぼ同様の結合プロファイルを示す。同様に、MY352、PK55、PK56、およびPK57は、親のMY201と似た結合プロファイルを示した(表27)。これらの結果は、pI上昇置換のいずれのペアもヒトおよびカニクイザルFcγRに対するアフィニティには影響を与えないことを示す。
ヒトFcγRIIbトランスジェニックマウスにおけるPK試験
ヒトFcγRIIbトランスジェニックマウスを用いたインビボ試験
マウスFcγRIIをヒトFcγRIIbに置換したヒトFcγRIIbトランスジェニックマウスにおいて、抗潜在型ミオスタチン抗体とヒト潜在型ミオスタチンを同時投与した際のミオスタチンおよび抗潜在型ミオスタチン抗体の消失をインビボで評価した。抗潜在型ミオスタチン抗体(0.3 mg/ml)および潜在型ミオスタチン(0.05 mg/ml)を、10 ml/kgの単回用量で尾静脈に投与した。投与の5分後、1時間後、4時間後、7時間後、1日後、7日後、14日後、21日後、および28日後に、血液を採取した。採取した血液は直ちに4℃で5分間15,000 rpmで遠心分離して血漿を分離した。分離した血漿は測定まで-20℃以下で保存した。使用した抗潜在型ミオスタチン抗体は、MS1032LO06-SG1、MS1032LO06-MY201、MS1032LO06-MY351、MS1032LO06-MY352、MS1032LO06-PK55、MS1032LO06-PK56、およびMS1032LO06-PK57であった。
電気化学発光による血漿中総ミオスタチン濃度の測定
マウス血漿中総ミオスタチン濃度を、実施例28に記載されるとおりに電気化学発光(ECL)により測定した。この方法で測定した、抗潜在型ミオスタチン抗体と潜在型ミオスタチンの静脈内投与後の血漿中総ミオスタチン濃度の経時変化を、図29に示す。
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)による血漿中の抗潜在型ミオスタチン抗体濃度の測定
マウス血漿中の抗潜在型ミオスタチン抗体濃度をELISAにより測定した。抗ヒトIgG(γ鎖特異的)F(ab')2抗体断片(Sigma)をNunc-ImmunoPlate MaxiSorp (Nalge Nunc International)上に分注し、4℃で一晩静置して抗ヒトIgG固定プレートを作製した。2.5、1.25、0.625、0.313、0.156、0.078、および0.039μg/mlの血漿濃度を有する検量線サンプル、および100倍以上に希釈したマウス血漿サンプルを調製した。次に、サンプルを抗ヒトIgG固定プレートに分注し、室温で1時間静置した。続いて、Goat Anti-Human IgG (γ鎖特異的) Biotin conjugate (Southern Biotech)を加え、室温で1時間反応させた。その後、Streptavidin-PolyHRP80 (Stereospecific Detection Technologies)を添加して室温で1時間反応させ、TMB One Component HRP Microwell Substrate(BioFX Laboratories)を基質として使用して発色反応を行った。1N硫酸(Showa Chemical)で反応を停止した後、マイクロプレートリーダーで450nmの吸光度を測定した。マウス血漿中濃度は、解析ソフトウェアSOFTmax PRO(Molecular Devices)を使用して、検量線の吸光度から算出した。この方法で測定した、抗潜在型ミオスタチン抗体と潜在型ミオスタチンの静脈内投与後の血漿中抗体濃度の経時変化を図30に示す。
ミオスタチン濃度に対するpIおよびFcγR結合のインビボでの効果
MS1032LO06-MY201の投与後、7時間での血漿総ミオスタチン濃度は、5分での血漿総ミオスタチン濃度と比較して8倍減少した。対照的に、MS1032LO06-PK57の投与後、7時間での血漿総ミオスタチン濃度は、5分での血漿総ミオスタチン濃度と比較して376倍減少した。その他の高pI変異体は、血漿からのミオスタチン消失の同様の増加を示した。28日での高pI変異体の抗体濃度は、MS1032LO06-SG1の抗体濃度と比較して2~3倍減少し、pI変異体は血漿からの抗体消失のわずかな増加を示した。
高pI変異体は血漿中でより多くの正電荷を有する。この正電荷が負電荷の細胞表面と相互作用するため、高pI変異体の抗原抗体免疫複合体は細胞表面により近づき、高pI変異体の抗原抗体免疫複合体の細胞取り込みの増加をもたらす。
実施例32
ヒトFcγRIIb増強Fc変異体の開発
抗ミオスタチン可変領域を有するヒトFcγRIIb増強Fc変異体を構築し、ヒトFcγRに対するアフィニティを評価した。具体的には、MS103240H795-SG1 (VH, 配列番号:92; CH, 配列番号:9)にT250V/T307P置換と組み合わせて置換を導入することにより、ヒトFcγRIIb増強Fc変異体を構築した。さらに、置換(Q311R/D413KまたはQ311R/P343R)も導入した。変異体は、M103202L1045-SK1を軽鎖として使用して発現させ、ヒトFcγRに対するアフィニティを実施例34に示す方法に従って解析した。表28はヒトおよびカニクイザルFcγRに対する速度論的解析の結果を示す。灰色で塗りつぶしたセル中のKD値は、それらのアフィニティが微弱で速度論的解析により正しく決定することができなかったため、式2を使用して算出した。
評価したすべての変異体が、SG1と比較して、ヒトFcγRIIbに対するアフィニティの増強を示し、ヒトFcγRIIaR、FcγRIIaH、FcγRIIIaVに対する結合性の低下を示した。ヒトFcγRIIbへのアフィニティは、SG1と比較して4.1倍から30.5倍の増強の間で変化する。ヒトFcγRIIaRへのアフィニティは、0.02倍から0.22倍の間であった。ヒトFcγRIIaHおよびヒトFcγRIIIaVへのアフィニティは、それぞれ0.04倍未満および0.012倍未満であった。MY009 (P238D)とMY214 (P238D/T250V/T307P)のアフィニティを比較することにより、置換(T250V/T307P)はヒトFcγRに対する結合プロファイルに影響を与えないことが判明した。一方、pI上昇置換(Q311R/D413KおよびQ311R/P343R)のペアは、いずれもpI上昇置換を含まない変異体と比較して結合アフィニティを約0.5倍に減少させた。例えば、TT14はヒトFcγRIIbに対する30.5倍高いアフィニティを示したが、Q311R/D413K (TT33)およびQ311R/P343R (TT32)との組み合わせでは、それぞれ16.1倍および14.5倍の増強しか示さなかった。
さらに、実施例29において抗体の半減期を改善しかつリウマチ因子への結合性を低下させるために使用した置換をヒトFcγRIIb増強Fc変異体に導入し、そのヒトFcγRに対するアフィニティを解析した(表29)。このSPR解析においては、目的抗体のキャプチャー用にマウス抗ヒトIgGκ軽鎖を使用して全データを得た。表30はその結果を示し、灰色で塗りつぶしたセル中のKD値は、それらのアフィニティが微弱で速度論的解析により正しく決定することができなかったため、式2を使用して算出した。
[表28]ヒトFcγRIIb増強Fc変異体の結合プロファイル
[表29]ヒトFcγRIIb増強Fc変異体を含む重鎖定常領域のアミノ酸配列(配列番号として示す)
[表30]ヒトFcγRIIb増強Fc変異体の結合プロファイル
キャプチャー方法が表28におけるものとは異なる本測定において、SG1およびTT33を再度評価した。その結果、TT33の「KD倍率」値は、表28で得られたものと一致していた(ヒトFcγRIIbに対して、表28では16.1倍、表30では15.7倍)。TT33にN434A/Q438R/S440EおよびM428L/N434A/Y436T/Q438R/S440Eを導入することにより構築したTT92およびTT93は、TT33と同等の結合プロファイルを示した。同様に、TT32に由来するTT90およびTT91、TT31に由来するTT72およびTT73、TT30に由来するTT70およびTT71、TT21に由来するTT68およびTT69、ならびにTT20に由来するTT66およびTT67は、表28に示す親抗体と同等の結合プロファイルを示す。これらの結果は、抗体半減期を改善しかつリウマチ因子への結合を低減するための置換は、ヒトFcγRIIb増強変異体のヒトFcγRに対する結合プロファイルに影響を与えないことを示す。
実施例33
FcγRIIb増強Fc変異体の細胞イメージング解析
実施例32に記載される抗体により形成された抗原抗体複合体の細胞内取り込みを評価するため、実施例30に記載される細胞イメージングアッセイを実施した。シグナルの飽和を避けるため、本実施例では、1.25 mg/mLの抗体濃度および0.34 mg/mLの抗原濃度を有する培養液中で抗原抗体複合体を形成させた。
アッセイ結果を図31に示す。ヒトFcγRIIbへの結合アフィニティを増強させることにより、抗原抗体複合体の細胞取り込みが増加した。SG1と比較してヒトFcγRIIbに対する結合アフィニティが30倍増強しているTT14の場合、細胞内の抗原蛍光強度はSG1の強度と比較して7.5倍増大した。
pI上昇置換(Q311R/D413KおよびQ311R/P343R)は、pI上昇置換を含まない変異体と比較してヒトFcγRIIbへの結合アフィニティを約0.5倍減少させたが、pI上昇置換を有するFc変異体の抗原抗体複合体の細胞取り込みは、pI上昇置換の無いFc変異体と比較して増加した。TT33は、細胞内への抗原抗体取り込みにおいて、SG1と比較して36倍の増加を示すが、その親のTT14は、細胞取り込みにおいて7.5倍の増大を示す。さらに、TT33は、カニクイザルにおいて強いスイーピングを示すSG1071、SG1074、SG1077、SG1079、SG1080、およびSG1081と比較して同等の細胞内への抗原抗体複合体の細胞取り込みを示す。これらの結果は、FcγRIIb増強Fc変異体とpI上昇置換とを組み合わせることは、抗原除去の強力なツールであることを示唆する。
実施例34
抗体発現ベクターの構築、および抗体の発現と精製
抗体可変領域のH鎖およびL鎖のヌクレオチド配列をコードする全長遺伝子の合成を、アセンブルPCR等を用いて当業者に公知の作製方法により実施した。アミノ酸置換の導入を、PCR等を用いて当業者に公知の方法により行った。得られたプラスミド断片を動物細胞発現ベクターに挿入し、H鎖発現ベクターおよびL鎖発現ベクターを作製した。得られた発現ベクターのヌクレオチド配列を当業者に公知の方法により決定した。作製したプラスミドを、ヒト胚腎癌細胞に由来するHEK293H細胞株(Invitrogen)またはFreeStyle293細胞(Invitrogen)に一過性に導入し、抗体を発現させた。得られた培養上清を回収し、0.22μm MILLEX(R)-GV フィルター(Millipore)、または0.45μm MILLEX(R)-GVフィルター(Millipore)を通過させて培養上清を得た。得られた培養上清から、rProtein A Sepharose Fast Flow(GE Healthcare)またはProtein G Sepharose 4 Fast Flow(GE Healthcare)を使用して当業者に公知の方法により抗体を精製した。精製抗体の濃度については、分光光度計を使用して280nmにおける吸光度を測定し、得られた値から、PACE等の方法により算出された吸光係数を使用して抗体濃度を算出した(Protein Sci. 4:2411-2423 (1995))。
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