A.第1実施形態:
A-1.構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、第1実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、図2は、図1(および後述する図6,7)のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、図3は、図1(および後述する図6,7)のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。図4以降についても同様である。
燃料電池スタック100は、複数の(第1実施形態では7つの)燃料電池発電単位(以下、単に「発電単位」という。)102と、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(第1実施形態では上下方向)に並べて配置されている。一対のエンドプレート104,106は、7つの発電単位102から構成される集合体を上下から挟むように配置されている。なお、上記配列方向(上下方向)は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。
燃料電池スタック100を構成する各層(発電単位102、エンドプレート104,106)のZ方向回りの周縁部には、上下方向に貫通する複数の(第1実施形態では8つの)孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、一方のエンドプレート104から他方のエンドプレート106にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、連通孔108と呼ぶ場合がある。
各連通孔108には上下方向に延びるボルト22が挿通されており、ボルト22とボルト22の両側に嵌められたナット24とによって、燃料電池スタック100は締結されている。なお、図2および図3に示すように、ボルト22の一方の側(上側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の上端を構成するエンドプレート104の上側表面との間、および、ボルト22の他方の側(下側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の下端を構成するエンドプレート106の下側表面との間には、絶縁シート26が介在している。ただし、後述のガス通路部材27が設けられた箇所では、ナット24とエンドプレート106の表面との間に、ガス通路部材27とガス通路部材27の上側および下側のそれぞれに配置された絶縁シート26とが介在している。絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤等により構成される。
各ボルト22の軸部の外径は各連通孔108の内径より小さい。そのため、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間には、空間が確保されている。図1および図2に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22A)と、そのボルト22Aが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102に供給するガス流路である酸化剤ガス導入マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22B)と、そのボルト22Bが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。なお、第1実施形態では、酸化剤ガスOGとして、例えば空気が使用される。
また、図1および図3に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22D)と、そのボルト22Dが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102に供給する燃料ガス導入マニホールド171として機能し、該辺の反対側の辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22E)と、そのボルト22Eが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する燃料ガス排出マニホールド172として機能する。なお、第1実施形態では、燃料ガスFGとして、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。
燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28と、本体部28の側面から分岐した中空筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。また、図2に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161を形成するボルト22Aの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス導入マニホールド161に連通しており、酸化剤ガス排出マニホールド162を形成するボルト22Bの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。また、図3に示すように、燃料ガス導入マニホールド171を形成するボルト22Dの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス導入マニホールド171に連通しており、燃料ガス排出マニホールド172を形成するボルト22Eの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。一方のエンドプレート104は、最も上に位置する発電単位102の上側に配置され、他方のエンドプレート106は、最も下に位置する発電単位102の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106によって複数の発電単位102が押圧された状態で挟持されている。上側のエンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側のエンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
(発電単位102の構成)
図4は、図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、図5は、図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。また、図6は、図4のVI-VIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図であり、図7は、図4のVII-VIIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図である。
図4および図5に示すように、発電単位102は、単セル110と、セパレータ120と、空気極側フレーム130と、空気極側集電部134と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電部144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ150とを備えている。セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、インターコネクタ150におけるZ方向回りの周縁部には、上述したボルト22が挿通される連通孔108に対応する孔が形成されている。
インターコネクタ150は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばフェライト系ステンレスにより形成されている。インターコネクタ150は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。なお、第1実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ150は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ150は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ150と同一部材である。また、燃料電池スタック100は一対のエンドプレート104,106を備えているため、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えておらず、最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていない(図2および図3参照)。
単セル110は、電解質層112と、電解質層112の上下方向(第1の方向)の一方側(下側)に配置された燃料極(アノード)116と、電解質層112の上下方向の他方側(上側)に配置された空気極(カソード)114とを備える。言い換えると、空気極114および燃料極116は、電解質層112を挟んで上下方向に互いに対向している。なお、第1実施形態の単セル110は、燃料極116で単セル110を構成する他の層(電解質層112、空気極114)を支持する燃料極支持形の単セルである。単セル110の周縁部分は、上下方向視でセパレータ120の後述の貫通孔121を取り囲む部分と重なっている。言い換えると、上下方向視で単セル110の外周線は、セパレータ120の貫通孔121を規定する端面よりも外側に位置している。なお、「単セル110の周縁部分」とは、上下方向視における単セル110の外周線と当該外周線の周辺を含む部分である。「セパレータ120の貫通孔121を取り囲む部分」とは、セパレータ120の貫通孔121を規定する端面と当該端面の周辺を含む部分である。
電解質層112は、Z方向視で略矩形の平板形状部材であり、緻密な層である。電解質層112は、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、SDC(サマリウムドープセリア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)、ペロブスカイト型酸化物等の固体酸化物により形成されている。すなわち、第1実施形態の単セル110(発電単位102)は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。
空気極114は、Z方向視で電解質層112より小さい略矩形の平板形状部材であり、多孔質な層である。空気極114は、例えば、ペロブスカイト型酸化物(例えばLSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物)、LSM(ランタンストロンチウムマンガン酸化物)、LNF(ランタンニッケル鉄))により形成されている。
燃料極116は、Z方向視で電解質層112と略同一の大きさの略矩形の平板形状部材であり、多孔質な層である。燃料極116は、例えば、Niと酸化物イオン伝導性セラミックス粒子(例えば、YSZ)とからなるサーメットにより形成されている。
セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の貫通孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。セパレータ120の貫通孔121を取り囲む部分は、上下方向において単セル110の周縁部分の表面(第1実施形態では電解質層112における空気極114の側の表面)に対向している。言い換えると、セパレータ120の貫通孔121を取り囲む部分は、上下方向視で単セル110の周縁部分と重なっている。セパレータ120は、単セル110から離隔しており、その対向した部分に配置されたろう材(例えばAgろう)により形成されたろう付け部124により、単セル110(第1実施形態では電解質層112)と接合されている。セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部分における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリークが抑制される。なお、ろう付け部124の形成材料は、液相線温度が比較的高いAgろうなどの所謂、硬ろうに限られず、液相線温度が比較的低い所謂、軟ろう(はんだ)であってもよい。
電解質層112におけるろう付け部124に対して空気室166側には、ガラスを含むガラスシール部125が配置されている。ガラスシール部125は、セパレータ120の貫通孔121を取り囲む部分の表面と、単セル110(第1実施形態では電解質層112)の表面との両方に接触するように形成されている。ガラスシール部125により、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスリーク(クロスリーク)が効果的に抑制される。
図4~6に示すように、空気極側フレーム130は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。空気極側フレーム130は、セパレータ120における電解質層112に対向する側とは反対側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ150間が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス導入マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通孔132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通孔133とが形成されている。
図4,5,7に示すように、燃料極側フレーム140は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム140は、セパレータ120における電解質層112に対向する側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、燃料極側フレーム140には、燃料ガス導入マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通孔142と、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通孔143とが形成されている。
図4,5,7に示すように、燃料極側集電部144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電部144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。電極対向部145は、燃料極116における電解質層112に対向する側とは反対側の表面に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102におけるインターコネクタ対向部146は、下側のエンドプレート106に接触している。燃料極側集電部144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)とを電気的に接続する。なお、電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電部144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電部144を介した燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)との電気的接続が良好に維持される。
図4~6に示すように、空気極側集電部134は、空気室166内に配置されている。空気極側集電部134は、複数の略四角柱状の集電体要素から構成されており、例えば、フェライト系ステンレスにより形成されている。空気極側集電部134は、空気極114における電解質層112に対向する側とは反対側の表面と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面とに接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102における空気極側集電部134は、上側のエンドプレート104に接触している。空気極側集電部134は、このような構成であるため、空気極114とインターコネクタ150(またはエンドプレート104)とを電気的に接続する。なお、空気極側集電部134とインターコネクタ150とが一体の部材として構成されていてもよい。また、空気極側集電部134が導電性のコートによって覆われていてもよく、また、空気極114と空気極側集電部134との間に両者を接合する導電性の接合層が介在していてもよい。
なお、空気極側集電部134を構成する2つの隣り合う集電体要素の間の空間は、酸化剤ガスOGが流れるガス流路として機能する。図6に示すように、第1実施形態では、各集電体要素は、軸方向(長手方向)がX軸方向に略一致する向きで、X軸方向およびY軸方向に並ぶように配置されている。そのため、酸化剤ガスOGが流れるガス流路は、Z軸方向視でX軸方向およびY軸方向に格子状に延びるような形状となっている。
A-2.燃料電池スタック100の動作:
図2および図4に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス導入マニホールド161に供給され、酸化剤ガス導入マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して、空気室166に供給される。また、図3および図5に示すように、燃料ガス導入マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料ガス導入マニホールド171に供給され、燃料ガス導入マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通孔142を介して、燃料室176に供給される。
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114はインターコネクタ150および空気極側集電部134の集合体に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電部144を介してインターコネクタ150に電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するエンドプレート104,106から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
各発電単位102の空気室166から排出された酸化剤オフガスOOGは、図2および図4に示すように、酸化剤ガス排出連通孔133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出され、さらに酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、各発電単位102の燃料室176から排出された燃料オフガスFOGは、図3および図5に示すように、燃料ガス排出連通孔143を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出され、さらに燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
A-3.ろう付け部124の詳細構成:
図8は、ろう付け部124とその周辺の部分(図4のPx部)のXZ断面構成を拡大して示す説明図である。第1実施形態の燃料電池スタック100では、図8に示されたXZ断面において、ろう付け部124は、中間部124Aと、第1の内側部124Bと、第1の外側部124Cとで構成されている。第1実施形態では、中間部124Aと、第1の内側部124Bと、第1の外側部124Cとは、一体の部材として形成されている。
ろう付け部124の中間部124Aは、上下方向視で単セル110の外周線の内側から外側まで延びている。中間部124Aは、単セル110から離隔している。従って、単セル110の内、上下方向視でろう付け部124の中間部124Aに対向する部分は、ろう付け部124に覆われずに露出している。第1実施形態では、中間部124Aは、セパレータ120に接合されている。中間部124Aは、燃料室176に面している。
ろう付け部124の第1の内側部124Bは、上下方向視で中間部124Aの内側の端部に隣接し、連結している。第1実施形態では、第1の内側部124Bは、セパレータ120と単セル110とに接合されている。第1の内側部124Bは、第1の内側部124Bに対して上述の第1の外側部124Cの側において燃料室176に面している。
ろう付け部124の第1の外側部124Cは、上下方向視で中間部124Aの外側の端部に隣接し、連結している。セパレータ120と単セル110とに接合された第1の内側部124Bに連結されている中間部124Aに第1の外側部124Cが連結されていることにより、第1の外側部124Cの脱落が防止される。第1実施形態では、中間部124Aがセパレータ120に接合されているので、第1の外側部124Cの脱落がより効果的に防止される。第1の外側部124Cは、単セル110から離隔している。第1の外側部124Cは、燃料室176に面している。
第1実施形態の燃料電池スタック100では、図8に示されたXZ断面において、第1の外側部124Cは、セパレータ120の下側(上下方向の内、単セル110の側の方向)の表面から、単セル110のろう付け部124の中間部124Aに上下方向視で対向する表面における第1の外側部124Cの側の端点Eよりも下方に突出している。従って、第1実施形態の燃料電池スタック100では、図8に示されたXZ断面において、第1の外側部124Cは、中間部124Aよりも下方に突出している。
図8に示すように、第1実施形態の燃料電池スタック100では、図8に示されたXZ断面において、ろう付け部124の第1の外側部124Cの第1の内側部124Bは反対側の表面Sは、上下方向のセパレータ120の側とは反対側に向かうに従ってろう付け部124の第1の内側部124Bの側に傾斜している。なお、図8に示されたXZ断面は、特許請求の範囲における特定断面に相当する。
第1実施形態の燃料電池スタック100では、ろう付け部124は、単セル110の表面(第1実施形態では電解質層112における空気極114の側の表面)の周縁部分の全周にわたって上述の中間部124Aと第1の内側部124Bと第1の外側部124Cとを備えている。言い換えると、第1実施形態の燃料電池スタック100では、図8に示されたXZ断面とは異なる他の断面(上下方向に平行な断面であって、上下方向視における燃料電池スタック100の中心を通る任意の断面)においても、上述の中間部124Aと第1の内側部124Bと第1の外側部124Cとを備えている。なお、これらの他の断面も、特許請求の範囲における特定断面に相当する。
第1実施形態の燃料電池スタック100では、ろう付け部124の第1の外側部124Cは、酸化剤ガス供給連通孔132のガス流れ方向(第1実施形態ではZ軸方向に垂直な方向。例えば、図4,図8に示されたXZ断面ではX軸方向)視で酸化剤ガス供給連通孔132に重なる領域に配置されている。
上述した構成のろう付け部124の接合構造は、例えば、以下の方法で形成される。まず、セパレータ120の表面(貫通孔121を取り囲む部分の表面の内、中間部124A、第1の内側部124B、および第1の外側部124Cが形成される部分)に、溶融したペースト状のろう材(例えばAgろう)をスクリーン印刷により塗布する。この際のペースト状のろう材の厚さは略均一である。この際に塗布されるペースト状のろう材は、ろう付け部124の内、中間部124Aの全体、第1の内側部124Bおよび第1の外側部124Cの一部(全体の内、セパレータ120に近い側の部分)となる部分である。次に、既に塗布したペースト状のろう材の表面に、第1の内側部124Bおよび第1の外側部124Cの残りの部分となるペースト状のろう材をさらにスクリーン印刷により塗布する。次に、既に塗布したペースト状のろう材を加熱することにより、上述した構成の中間部124Aと第1の内側部124Bと第1の外側部124Cとを備えるろう付け部124が形成される。
A-4.第1実施形態の効果:
以上説明したように、第1実施形態の燃料電池スタック100は、単セル110と、セパレータ120と、ろう付け部124とを備え、上下方向に並べて配置された複数の発電単位102を備える。単セル110の周縁部分は、上下方向視でセパレータ120の貫通孔121を取り囲む部分と重なっている。第1実施形態の燃料電池スタック100では、上下方向(Z方向)に平行な断面である特定断面(例えば、図8に示されたXZ断面)において、ろう付け部124は、中間部124Aと、第1の内側部124Bと、第1の外側部124Cとで構成されている。中間部124Aは、上下方向視で単セル110の外周線の内側から外側まで延び、単セル110から離隔する部分である。第1の内側部124Bは、上下方向視で中間部124Aの内側の端部に隣接し、セパレータ120と単セル110とに接合された部分である。第1の外側部124Cは、上下方向視で中間部124Aの外側の端部に隣接し、中間部124Aよりも上下方向に突出しているとともに単セル110から離隔した部分である。
そのため、第1実施形態の燃料電池スタック100では、上記特定断面において、ろう付け部124は、上下方向視で単セル110の外周線よりも内側に配置された第1の内側部124Bのみが単セル110に接合されている。言い換えれば、第1実施形態の燃料電池スタック100では、ろう付け部124が単セル110の内、上記外周線よりも内側の部分(以下、「単セル110の内周部分」という。)に接合されている。そのため、ろう付け部124が単セル110の上記外周線に接触するように接合された構成と比べて、各部材の熱膨張差に伴う応力に起因する単セル110のクラックの発生を抑制することができる。
ここで、第1実施形態の燃料電池スタック100では、ろう付け部124の中間部124Aおよび第1の外側部124Cは単セル110から離隔しているので、ろう付け部124の中間部124Aおよび第1の外側部124Cと単セル110との間に空間126が形成されている。このような構成の第1実施形態の燃料電池スタック100においては、燃料室176(ろう付け部124の中間部124Aおよび第1の外側部124Cが面するガス室)に供給される燃料ガスFGが空間126に流れ込んでろう付け部124の第1の内側部124Bに衝突することにより、第1の内側部124Bの剥離が発生することが懸念される。
第1実施形態の燃料電池スタック100では、ろう付け部124は、中間部124Aよりも上下方向に突出する第1の外側部124Cを備えている。ろう付け部124の第1の外側部124Cは、中間部124Aよりも下方向に突出しているので、ろう付け部124の中間部124Aおよび第1の外側部124Cと単セル110との間の空間126への燃料ガスFGの進入を抑制する壁として機能する。そのため、第1実施形態の燃料電池スタック100によれば、ろう付け部124の第1の内側部124Bへの燃料ガスFGの衝突を抑制することができ、ひいては、ろう付け部124の第1の内側部124Bの剥離を抑制することができる。
また、第1実施形態の燃料電池スタック100では、上記特定断面において、ろう付け部124の第1の外側部124Cは、単セル110のろう付け部124の中間部124Aに上下方向視で対向する表面における外側の端点Eよりも下方(上下方向の内の一方)に突出している。そのため、第1実施形態の燃料電池スタック100では、ろう付け部124の中間部124Aおよび第1の外側部124Cと単セル110との間の空間126への燃料ガスFGの進入をより効果的に抑制することができる。
また、第1実施形態の燃料電池スタック100では、上記特定断面において、ろう付け部124の第1の外側部124Cの第1の内側部124Bとは反対側の表面Sは、上下方向のセパレータ120の側とは反対側に向かうに従って第1の内側部124Bの側に傾斜している。
ここで、第1実施形態の燃料電池スタック100において、ろう付け部124の第1の外側部124Cの上記表面が傾斜せずに上下方向に延びている構成では、燃料室176内に供給された燃料ガスFG(特に、上下方向に垂直な方向に流れる燃料ガスFG)がろう付け部124の第1の外側部124Cの当該表面に接触したときに当該燃料ガスFGの円滑な流れが阻害され易い。そのため、燃料ガスFGがろう付け部124の中間部124Aおよび第1の外側部124Cと単セル110との間の空間126に流れ込み、ろう付け部124の第1の内側部124Bに衝突し易い。
第1実施形態の燃料電池スタック100では、上述の通り、ろう付け部124の第1の外側部124Cの第1の内側部124Bは反対側の表面Sは、上下方向のセパレータ120の側とは反対側に向かうに従ってろう付け部124の第1の内側部124Bの側に傾斜している。そのため、燃料室176内に供給された燃料ガスFGが、ろう付け部124の第1の外側部124Cの上記表面に案内されるように円滑に流れ易くなる。そのため、第1実施形態の燃料電池スタック100によれば、燃料ガスFGがろう付け部124の中間部124Aおよび第1の外側部124Cと単セル110との間の空間126に流入することをより効果的に抑制することができ、ひいてはろう付け部124の第1の内側部124Bの剥離をより効果的に抑制することができる。
B.第2実施形態:
B-1.構成:
図9は、第2実施形態の燃料電池スタック100Aにおける、互いに隣接する2つの発電単位102AのXZ断面構成を示す説明図である。図10は、第2実施形態の燃料電池スタック100Aにおける、互いに隣接する2つの発電単位102AのYZ断面構成を示す説明図である。以下では、第2実施形態の燃料電池スタック100Aの構成の内、上述した第1実施形態の燃料電池スタック100の構成と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
図9および図10に示すように、第2実施形態の燃料電池スタック100Aの構成は、上述した第1実施形態の燃料電池スタック100の構成と比較して、基本的な構成は同様であるが、発電単位102Aに備えられるセパレータ120Aの構成が異なっている。
B-2.セパレータ120Aの詳細構成:
図11は、初期(燃料電池スタック100Aの運転前)における、ろう付け部124およびセパレータ120Aの詳細構成を示す説明図である。図12は、燃料電池スタック100Aの運転時または運転後における、ろう付け部124およびセパレータ120Aの詳細構成を示す説明図である。図11および図12には、図9のPxA部の構成が拡大して示されている。
第2実施形態のセパレータ120Aは、上下方向視での中央付近に上下方向(発電単位102Aの配列方向)に貫通する略矩形の貫通孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば金属により形成されている点などの基本的な構成については第1実施形態のセパレータ120と同様である。
第2実施形態のセパレータ120Aは、上下方向に平行な断面であって、上下方向視における燃料電池スタック100Aの中心を通る任意の各断面(例えば、図11に示されるXY断面。以下、当該各断面をいうときは、単に「上下方向に平行な任意の各断面」ともいう。)において、第2の内側部120Bと、第2の外側部120Cと、連結部120Dとを備えている。第2の内側部120Bは、貫通孔121(セパレータ120Aに形成された上下方向に貫通する貫通孔121)を取り囲む部分を含む部分である。第2の外側部120Cは、第2の内側部120Bよりも外周側に位置する部分である。連結部120Dは、第2の内側部120Bと第2の外側部120Cとを連結する部分である。なお、図11に示されたXZ断面は、特許請求の範囲における特定断面に相当する。
第2の内側部120Bおよび第2の外側部120Cは、上下方向に直交する方向(面方向。以下、単に「面方向」ともいう。)に略平行である。第2の内側部120Bと第2の外側部120Cとの上下方向における位置は、互いに略同一である。なお、上下方向(Z軸方向)に直交する方向は、第2の方向に相当する。
連結部120Dは、第2の内側部120Bと第2の外側部120Cとの上下方向における位置から燃料室176側(下側)に突出するように湾曲した形状を有している。すなわち、連結部120Dにおける燃料室176側(下側)は凸部となり、連結部120Dにおける空気室166側(上側)は凹部となる。このように、連結部120Dは、第2の内側部120Bと第2の外側部120Cとの両方に対して下側(上下方向の単セル110の側)に突出している。ここでいう「第2の内側部120Bと第2の外側部120Cとの両方に対して下側(上下方向の単セル110の側)に突出している」とは、より厳密には、第2の内側部120Bのうちの連結部120Dとの境界BL1を含む部分と、第2の外側部120Cのうちの連結部120Dとの境界BL2を含む部分との両方に対して下側(上下方向の単セル110の側)に突出していることを意味する。従って、「第2の内側部120Bと第2の外側部120Cとの両方に対して下側(上下方向の単セル110の側)に突出している」とは、第2の内側部120Bの全体に対して下側に突出している構成や、第2の外側部120Cの全体に対して下側に突出している構成に限られるものではなく、例えば、第2の内側部120B(または第2の外側部120C)が面方向に対して傾いており、これにより第2の内側部120B(または第2の外側部120C)の一部が連結部120Dよりも下側に位置している構成も含むものである。連結部120Dは、上下方向視で、上記貫通孔121を取り囲むように形成されている。連結部120Dは、ろう付け部124から離隔している。連結部120Dは、例えば、プレス加工により形成される。
より厳密には、第2の内側部120Bと、第2の外側部120Cと、連結部120Dとは、下記の条件(A1),(A2),(A3),(A4)により区分される。
すなわち、第2の内側部120Bは、下記の条件(A1)を満たす部分である。
条件(A1)
上下方向に平行な任意の各断面(例えば、図11に示されるXY断面)において、第2の内側部120Bのうちの単セル110の側の表面120Eに接する接線T1と上下方向に直交する方向(X軸方向)の直線SLとがなす角度θ1(0°≦θ1<90°。すなわち、θ1は鋭角である)は、35°よりも小さい。
第2の内側部120Bは、下記の条件(A2)を満たす部分である。
条件(A2)
上記の条件(A1)における断面と同一の断面において、第2の外側部120Cのうちの単セル110の側の表面120Fに接する接線T2と、上下方向に直交する方向(X軸方向)の直線SLとがなす角度θ2(0°≦θ2<90°。すなわち、θ2は鋭角である)は、35°よりも小さい。
連結部120Dは、下記の条件(A3)および条件(A4)を満たす部分である。
条件(A3)
上記の条件(A1)における断面と同一の断面において、連結部120Dのうちの第2の内側部120Bとの境界BL1を含む部分における単セル110の側の表面120Gに接する接線T3と、上下方向に直交する方向(図11に示されるXZ断面では、X軸方向)の直線SLとがなす角度θ3(0°≦θ3≦90°。すなわち、θ3は鋭角または直角である)は、35°以上である。
条件(A4)
上記の条件(A1)における断面と同一の断面において、連結部120Dのうちの第2の外側部120Cとの境界BL2を含む部分における単セル110の側の表面120Hに接する接線T4と、上下方向に直交する方向(X軸方向)の直線SLとがなす角度θ4(0°≦θ4≦90°。すなわち、θ4は鋭角または直角である)は、35°以上である。
なお、第2実施形態の燃料電池スタック100Aにおいては、図12に示すように、例えば燃料電池スタック100Aの運転時における空気室166と燃料室176との温度差等の要因から、セパレータ120Aが変形することがある。このようにセパレータ120Aが変形した場合においても、セパレータ120Aにおける、第2の内側部120Bと、第2の外側部120Cと、連結部120Dとは、下記の条件(A1),(A2),(A3),(A4)により区分される。従って、セパレータ120Aが変形した結果、セパレータ120Aの変形前後で、第2の内側部120Bと連結部120Dとの境界BL1や、第2の外側部120Cと連結部120Dとの境界BL2の位置が異なる場合がある。
上下方向に平行な任意の各断面(例えば、図11に示されるXY断面)において、連結部120Dは、単セル110のろう付け部124の中間部124Aに上下方向(Z軸方向)視で対向する表面(本実施形態では、電解質層112の上側の表面)Saとは反対側の表面(本実施形態では、燃料極116における下側の表面)Sbにおける上下方向(Z軸方向)視でろう付け部124の第2の外側部120Cの側の端点Ebよりも下側(上下方向のセパレータ120Aの側とは反対側)に突出している。従って、本実施形態では、図11に示されたXZ断面において、連結部120Dは、単セル110の表面(本実施形態では、電解質層112の上側の表面)Saにおける上下方向(Z軸方向)視で連結部120Dの側の端点Eaよりも下側(上下方向のセパレータ120Aの側とは反対側)まで突出している。上下方向に平行な任意の各断面(例えば、図11に示されるXY断面)において、連結部120Dは、ろう付け部124の第1の外側部124Cよりも下側(上下方向のセパレータ120Aの側とは反対側)に突出している。なお、単セル110の表面Saは、第1の表面に相当する。
B-3.第2実施形態の効果:
以上説明したように、第2実施形態の燃料電池スタック100Aでは、セパレータ120Aは、上下方向に平行な任意の各断面(上下方向に平行な断面であって、上下方向視における燃料電池スタック100Aの中心を通る任意の各断面。例えば、図11に示されたXZ断面)において、第2の内側部120Bと、第2の外側部120Cと、第2の内側部120Bと第2の外側部120Cとを連結する連結部120Dを備える。第2の内側部120Bは、貫通孔121を取り囲む部分を含む部分である。第2の外側部120Cは、第2の内側部120Bよりも外周側に位置する部分である。連結部120Dは、第2の内側部120Bと第2の外側部120Cとを連結する部分である。連結部120Dは、ろう付け部124の第1の外側部124Cの外周側に位置すると共に、第2の内側部120Bと第2の外側部120Cとの両方に対して上下方向に突出している。
第2の内側部120Bと第2の外側部120Cとを連結する連結部が上述した第2実施形態の連結部120Dのように突出していない構成では、熱サイクルやヒートショック等によってセパレータ120Aが上下方向に直交する方向(面方向)に変形すると、脆性部材である電解質層112(やガラスシール部125)等に過大な応力が発生し、電解質層112(やガラスシール部125)等にクラック(割れ)が発生することがある。
これに対し、第2実施形態の燃料電池スタック100Aでは、上述した構成である連結部120Dは、面方向に容易に伸び縮みするバネのように機能する。そのため、第2実施形態のセパレータ120Aは、第2の内側部120Bと第2の外側部120Cとを連結する連結部が上述した第2実施形態の連結部120Dのように突出していない構成と比較して、連結部120Dの位置で上下方向に変形しやすい。そのため、発電による熱サイクルや製造時の溶接工程等によるヒートショック等によってセパレータ120Aを面方向に変形させる荷重がかかると、セパレータ120Aが主として連結部120Dの位置で上下方向に変形し、その結果、上記荷重によってろう付け部124、単セル110等に発生する応力が緩和される(以下、この機能を単に「応力緩和機能」という。)。第2実施形態の燃料電池スタック100Aでは、セパレータ120Aの連結部120Dの存在により単セル110の電解質層112等に発生する応力が緩和されるため、単セル110の電解質層112等にクラックが発生することを抑制することができる。
なお、上記の応力緩和機能を考慮すると、図11に示すように、有効ろう付け部長さL、セパレータ120Aの上下方向における厚さ(板厚)t、連結部高さH、指標値H・Lは、下記のように設定されることがより好ましい。ここで、有効ろう付け部長さLは、ろう付け部124の内、上下方向においてセパレータ120Aおよび単セル110と重なる部分(有効ろう付け部)の面方向における長さである。連結部高さHは、連結部120Dの上下方向における高さであり、より詳細には、セパレータ120Aの空気室166側の表面において、連結部120Dにおける最も上に位置する部分から最も下に位置する部分までの距離(深さ)である。指標値H・Lは、有効ろう付け部長さLと連結部高さHとの積である。なお、下記のように設定することが好ましい理由については、特許第6442364号に記載の性能評価により開示されているため、ここでは記載を省略する。
有効ろう付け部長さLが3(mm)より長く、かつ、指標値H・Lが0.5以上であることが好ましい。この条件が満たされれば、ろう付け部124(有効ろう付け部)の単位長さあたりの応力を小さくすることができ、電解質層112(やガラスシール部125)の応力をより効果的に緩和して、電解質層112(やガラスシール部125)にクラックが発生することをより効果的に抑制することができ、また、連結部120Dの高さHを、ろう付け部124の有効ろう付け部の長さ(L)に応じて必要とされる応力緩和機能を発揮するのに十分な値とすることができる。
また、連結部高さHは、0.1(mm)以上、0.6(mm)以下であることがさらに好ましい。連結部高さHを0.1(mm)以上とすることにより、連結部120Dによるクラック発生抑制効果を確保することができる。また、連結部高さHが0.6(mm)より高くなると、連結部120Dによってガスの流れが阻害され、発電性能が低下するおそれがあるため好ましくないが、連結部高さHを0.6(mm)以下とすることにより、連結部120Dによって燃料ガスFGの流れが阻害されて発電性能が低下することを抑制することができる。
なお、セパレータ120Aの配列方向(上下方向)における厚さ(板厚)tは、0.01(mm)以上であればよく、耐酸化性の低下を抑制する観点から、好ましくは0.03(mm)以上、より好ましくは0.05(mm)以上であって、0.2(mm)以下であることが好ましい。セパレータ120Aの厚さtを0.03(mm)以上とすることにより、セパレータ120Aの耐酸化性の低下を抑制することができ、セパレータ120Aの厚さtを0.2(mm)以下とすることにより、連結部120Dのバネ性を一定程度以上確保することができ、連結部120Dによるクラック発生抑制効果を確保することができる。
また、連結部高さHはセパレータ120Aの厚さtより大きいことが好ましい。連結部高さHをセパレータ120Aの厚さtより大きくすることにより、連結部120Dによるクラック発生抑制効果を確保することができる。
また、第2の内側部120Bと第2の外側部120Cとの上下方向における位置が互いに略同一であると、上下方向における位置が互いに異なる構成と比較して、セパレータ付き単セルの上下方向における高さを抑制することができ、ひいては発電単位102A、燃料電池スタック100Aの上下方向における高さを抑制することができるため、好ましい。
また、第2実施形態の燃料電池スタック100Aでは、セパレータ120Aの連結部120Dは、ろう付け部124から離隔している。
上述したように、発電による熱サイクルや製造時の溶接工程等によるヒートショック等によってセパレータ120Aを面方向に変形させる荷重がかかると、セパレータ120Aが主として連結部120Dの位置で上下方向に変形する。そのため、ろう付け部124はセパレータ120Aの連結部120Dに接触していると、当該連結部120Dの当該変形によってセパレータ120Aからの剥離することがある(以下、この剥離を単に「ろう付け部124の剥離」という。)。
これに対し、第2実施形態の燃料電池スタック100Aでは、上述した通り、セパレータ120Aの連結部120Dは、ろう付け部124から離隔している。そのため、セパレータ120Aが変形した際にろう付け部124に荷重がかかることが抑制され、ひいては上記のろう付け部124の剥離の発生が抑制される。従って、第2実施形態の燃料電池スタック100Aにおいては、当該連結部120Dによる上記の応力緩和機能が得られるものでありながら、上記のろう付け部124の剥離の発生を抑制することができる。
また、第2実施形態の燃料電池スタック100Aでは、上下方向に平行な任意の各断面(例えば、図11に示されるXY断面)において、第2の内側部120Bのうちの単セル110の側の表面120Eに接する接線T1と上下方向に直交する方向(X軸方向)の直線SLとがなす角度θ1(0°≦θ1<90°。すなわち、θ1は鋭角である)は、35°よりも小さい。上記の条件(A1)における断面と同一の断面において、第2の外側部120Cのうちの単セル110の側の表面120Fに接する接線T2と、上下方向に直交する方向(X軸方向)の直線SLとがなす角度θ2(0°≦θ2<90°。すなわち、θ2は鋭角である)は、35°よりも小さい。上記の条件(A1)における断面と同一の断面において、連結部120Dのうちの第2の内側部120Bとの境界BL1を含む部分における単セル110の側の表面120Gに接する接線T3と、上下方向に直交する方向(図11に示されるXZ断面では、X軸方向)の直線SLとがなす角度θ3(0°≦θ3≦90°。すなわち、θ3は鋭角または直角である)は、35°以上である。上記の条件(A1)における断面と同一の断面において、連結部120Dのうちの第2の外側部120Cとの境界BL2を含む部分における単セル110の側の表面120Hに接する接線T4と、上下方向に直交する方向(X軸方向)の直線SLとがなす角度θ4(0°≦θ4≦90°。すなわち、θ4は鋭角または直角である)は、35°以上である。
そのため、第2実施形態の燃料電池スタック100Aにおいては、上記のろう付け部124の剥離の発生をより効果的に抑制することができる(以下において、この効果を「より効果的な剥離抑制効果」という。)。なお、上述したように、セパレータ120Aが変形した結果、セパレータ120Aの変形前後で、第2の内側部120Bと連結部120Dとの境界BL1や、第2の外側部120Cと連結部120Dとの境界BL2の位置が異なる場合がある。上記のろう付け部124の剥離を抑制する観点から、初期(燃料電池スタック100Aの運転前)だけでなく運転時または運転後においても上記の条件(A3)および条件(A4)を満たす連結部120Dがろう付け部124から離隔している構成がより好ましいが、少なくとも初期において上記の条件(A3)および条件(A4)を満たす連結部120Dがろう付け部124から離隔している構成であれば、上記のより効果的な剥離抑制効果を得ることができる。
また、第2実施形態の燃料電池スタック100Aでは、セパレータ120Aの連結部120Dは、第2の内側部120Bと第2の外側部120Cとの両方に対して上下方向の単セル110の側に突出している。セパレータ120Aの連結部120Dは、第1の方向のセパレータ120Aの側とは反対側に突出していることにより、ろう付け部124の中間部124Aおよび第1の外側部124Cと単セル110との間の空間126への燃料ガスFGの進入を抑制する壁として機能する。従って、第2実施形態の燃料電池スタック100Aにおいては、セパレータ120Aの連結部120Dの存在により、ろう付け部124の中間部124Aおよび第1の外側部124Cと単セル110との間の空間126への燃料ガスFGの進入を効果的に抑制することができる。そのため、第2実施形態の燃料電池スタック100によれば、セパレータ120Aの連結部120Dの存在により、上述した燃料ガスFGの進入を抑制することができ、さらには、セパレータ120Aの連結部120Dだけでは十分に当該効果を十分に得られない場合であっても、上述したように、ろう付け部124の第1の外側部124Cの存在により、上述した燃料ガスFGの進入をより効果的に抑制することができる。
また、第2実施形態の燃料電池スタック100Aでは、上下方向に平行な任意の各断面(例えば、図11に示されるXY断面)において、セパレータ120Aの連結部120Dは、単セル110のろう付け部124の中間部124Aに上下方向視で対向する表面Saにおける連結部120Dの側の端点Eaよりも上下方向のセパレータ120Aの側とは反対側まで突出している。第2実施形態の燃料電池スタック100Aにおいては、セパレータ120Aの連結部120Dが上述した構成であることにより、より効果的に上記の応力緩和機能を奏する。
また、第2実施形態の燃料電池スタック100Aでは、上下方向に平行な任意の各断面(例えば、図11に示されるXY断面)において、セパレータ120Aの連結部120Dは、単セル110の上記表面Saとは反対側の表面Sbにおける上下方向視でろう付け部124の第1の外側部124Cの側の端点Ebよりも上下方向のセパレータ120Aの側とは反対側まで突出している。本電気化学反応セルスタックでは、セパレータ120Aの連結部120Dが上述した構成であることにより、より効果的に上記の応力緩和機能を奏する。
また、第2実施形態の燃料電池スタック100Aでは、セパレータ120Aの連結部120Dは、ろう付け部124の第1の外側部124Cよりも上下方向のセパレータ120Aの側とは反対側に突出している。第2実施形態の燃料電池スタック100Aによれば、セパレータ120Aの連結部120Dの存在により、ろう付け部124の中間部124Aおよび第1の外側部124Cと単セル110との間の空間126への燃料ガスFGの進入をより効果的に抑制することができる。
C.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
上記実施形態(または変形例。以下、同様)における単セル110、発電単位102または燃料電池スタック100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。
上記実施形態において、上下方向に平行な断面であって、上下方向視における燃料電池スタック100Aの中心を通る任意の各断面のうちの一部の断面のみにおいて、上記の第2の内側部120Bと、上記の第2の外側部120Cと、上記の連結部120Dとを備えている構成であってもよい。
上記実施形態において、第2の内側部120Bおよび第2の外側部120Cは、上下方向に直交する方向(面方向)に略平行でなくてもよい。また、第2の内側部120Bと第2の外側部120Cとの上下方向における位置は、互いに略同一でなくてもよい。
上記実施形態において、中間部124Aはセパレータ120に接合されていなくてもよい。この構成の燃料電池スタック100においても、セパレータ120と単セル110とに接合された第1の内側部124Bに連結されている中間部124Aに第1の外側部124Cが連結されていることにより、第1の外側部124Cの脱落が防止される。
また、上記実施形態では、燃料電池スタック100は、ろう付け部124の中間部124Aおよび第1の外側部124Cが燃料室176に面する構成が採用されているが、ろう付け部124の中間部124Aおよび第1の外側部124Cが空気室166に面する構成が採用されてもよい。例えば、上記実施形態において、空気極114および電解質層112は、Z方向視で燃料極116の外側にまで突出する部分(以下、「突出部」という。)を有しており、セパレータ120は、当該突出部の電解質層112におけるZ方向の燃料極116の側の表面(以下、「前記突出部の前記表面」という。)に対向しており、ろう付け部124の第1の内側部124Bは、前記突出部の前記表面とセパレータ120とを接合し、ろう付け部124の中間部124Aおよび第1の外側部124Cは、空気室166に面する、構成としてもよい。そのような構成においても、ろう付け部124の内で第1の内側部124Bのみが単セル110(より厳密には、この変形例では電解質層112)に接合されている構成であれば、ろう付け部124が単セル110の上記外周線に接触するように接合された構成と比べて、各部材の熱膨張差に伴う応力に起因する単セル110のクラックの発生を抑制することができる。また、そのような構成が採用される場合においては、ろう付け部124は、上記実施形態の場合と同様の理由から、空気室166(ろう付け部124の中間部124Aおよび第1の外側部124Cが面するガス室)に供給される酸化剤ガスOGの進入(ろう付け部124の中間部124Aおよび第1の外側部124Cと単セル110との間の空間126への進入)を抑制する壁として機能する。そのため、この構成の燃料電池スタックによれば、ろう付け部124の第1の内側部124Bへの酸化剤ガスOGの衝突を抑制することができ、ひいては、ろう付け部124の第1の内側部124Bの剥離を抑制することができる。
また、上記実施形態では、ろう付け部124が単セル110の表面の周縁部分の全周にわたって上述の中間部124Aと第1の内側部124Bと第1の外側部124Cとを備えているが、ろう付け部124が単セル110の表面の周縁部分の一部のみにおいて上述の中間部124Aと第1の内側部124Bと第1の外側部124Cとを備えていてもよい。例えば、上記実施形態において、ろう付け部124の第1の外側部124Cは、燃料室176(または空気室166)内に供給されるガスが通る入口である燃料ガス供給連通孔142(空気室166の場合は酸化剤ガス供給連通孔132)を通る当該ガスの流れ方向視で酸化剤ガス供給連通孔132に重なる領域の少なくとも一部にだけ配置されていてもよい。ここでいう「当該ガスの流れ方向」とは、上記実施形態ではZ軸方向に垂直な方向であり、例えば図4,図8,図9,図11に示されたXZ断面ではX軸方向である。
また、上記実施形態において、燃料電池スタック100に含まれる単セル110(発電単位102)の個数は、あくまで一例であり、単セル110(発電単位102)の個数は燃料電池スタック100に要求される出力電圧等に応じて適宜決められる。また、上記実施形態における各部材を構成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により構成されていてもよい。
また、上記実施形態に記載した構成要件(例えば、ろう付け部124が単セル110の上述の中間部124Aと第1の内側部124Bと第1の外側部124Cとを備える)は、必ずしも燃料電池スタック100を構成する複数の発電単位102のすべてにおいて満たされている必要はなく、燃料電池スタック100を構成する複数の発電単位102の内の少なくとも1つにおいて満たされていればよい。
また、上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行うSOFCを対象としているが、本発明は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形電解セル(SOEC)の構成単位である電解セル単位や、複数の電解セル単位を備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セルスタックの構成は、例えば特開2016-81813号公報に記載されているように公知であるためここでは詳述しないが、概略的には上述した実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成である。すなわち、上述した実施形態における燃料電池スタック100を電解セルスタックと読み替え、発電単位102を電解セル単位と読み替え、単セル110を電解単セルと読み替えればよい。ただし、電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極116がマイナス(陰極)となるように両電極間に電圧が印加されると共に、連通孔108を介して原料ガスとしての水蒸気が供給される。これにより、各電解セル単位において水の電気分解反応が起こり、燃料室176で水素ガスが発生し、連通孔108を介して電解セルスタックの外部に水素が取り出される。このような構成の電解セル単位および電解セルスタックにおいても、上記実施形態と同様の構成のろう付け部を採用することにより、ろう付け部の第1の内側部へのガスの衝突に起因する当該第1の内側部の剥離を抑制することができる。また、SOECを対象とする構成においても、空気極114および電解質層112は、上記の突出部(Z方向視で燃料極116の外側にまで突出する部分)を有しており、セパレータ120は、前記突出部の前記表面(前記突出部の電解質層112におけるZ方向の燃料極116の側の表面)に対向しており、ろう付け部124の第1の内側部124Bは、前記突出部の前記表面とセパレータ120とを接合し、ろう付け部124の中間部124Aおよび第1の外側部124Cは、空気室166に面する、構成としてもよい。そのような構成においても、ろう付け部124の内で第1の内側部124Bのみが電解単セル(より厳密には、この変形例では電解質層112)に接合されている構成であれば、ろう付け部124が電解単セルの上記外周線に接触するように接合された構成と比べて、各部材の熱膨張差に伴う応力に起因する電解単セルのクラックの発生を抑制することができる。
また、上記実施形態では、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を例に説明したが、本発明は、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)といった他のタイプの燃料電池(または電解セル)にも適用可能である。