本発明の実施形態について図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。なお、以下の実施形態で説明する形状、或いは構成要素の相対的な位置等は任意であり、本発明が適用される装置の構成又は様々な条件に応じて変更できる。また、図面において、同一であるか又は機能的に類似している要素を示すために図面間で同じ参照符号を用いる。
[第1の実施形態]
以下、図1を参照して第1の実施形態におけるOCT装置の構成を、図2〜5を参照して測定光の走査様式を、図6〜10を参照して画像生成処理を説明する。なお、以下の説明においては、被検査物として被検眼120の眼底を測定対象とした場合を例とする。
<装置構成>
図1に本実施形態の光断層撮像装置の全体構成を示す。本実施形態に係るOCT装置100は、OCT光学系、制御装置109、制御PC111、および表示装置112を有する。また、OCT光学系は、低コヒーレンス光源101、ビームスプリッタ103、走査光学系104、接眼レンズ系105、参照ミラー107、および検出部110を主たる構成として有する。なお、制御PC111は、任意の汎用コンピュータを用いて構成することができるが、OCT装置専用のコンピュータとしてもよい。表示装置112は任意のディスプレイによって構成できる。また、制御装置109、制御PC111、および表示装置112は個別に示されているがこれらを適宜一体としてもよい。制御PC111には、OCT装置の測定パラメータの入力、データ取得のための各種モードの選択、並びに予め記憶されている測定プログラムの読み出しおよび実行等のための入力装置が付随する。当該入力装置は表示装置112側に配置してもよい。また、制御PC111が、表示制御手段として、後述する各種画像を表示装置112に表示させる、或いは表示装置112の表示画面上の各画素に後述する各種断層情報を割り当てることとしてもよい。
低コヒーレンス光源101より射出された光は、光ファイバを通りファイバコリメータ102によって平行光になる。この平行光はビームスプリッタ103によって測定光と参照光に分割される。
測定光は、制御装置109によって制御されるガルバノスキャナ2つで構成される走査光学系104および接眼レンズ系105を通して被検眼120に照射される。2つのガルバノスキャナは、X方向に測定光の照射位置を変えるXガルバノスキャナと、X方向に直交するY方向に測定光の照射位置を変えるYガルバノスキャナとからなり、走査手段を構成する。走査光学系104は、これら2つのガルバノスキャナを動作させることで、眼底上での測定光の照射位置を2次元的に変化させることができる。また、接眼レンズ系105は電動ステージ上にあり、制御装置109の制御信号に従って光軸方向に移動可能である。該接眼レンズ系105を光軸方向に移動させることで、測定光の焦点位置を変化させることができる。眼底より反射又は散乱された戻り光は、先程の経路を逆に通って、接眼レンズ系105および走査光学系104を経由してビームスプリッタ103に戻される。測定光が導かれるこれら光学系を介する経路は、測定光路と称される。
一方、参照光は、分散補償ガラス106を通って参照ミラー107より反射され、同じ経路を逆に通ってビームスプリッタ103に戻される。参照ミラー107は光軸方向に移動する電動ステージ上に設置され、制御装置109の制御信号に従って光軸方向の位置を移動できる。該参照ミラー107の位置を調整することにより、ビームスプリッタ103から参照ミラー107を経てビームスプリッタ103に戻る参照光の光路長である参照光路長を調整することができる。分散補償ガラス106は、直角三角形の形状をした分散プリズム2個を、斜辺が向き合うように配置した構成からなる。これら分散プリズムの位置をずらすことによっても、参照光路長を調整することができる。通常は、測定光路と参照光路を構成する光学系は異なるため、それぞれの波長分散量が異なり、最適な干渉条件ではない。波長分散量を調整するために、参照光路に分散補償ガラス106を挿入することで、最適な干渉条件を得ている。
被検眼120の眼底より反射又は散乱された戻り光と、参照ミラー107によって反射された参照光は、ビームスプリッタ103によって合波される。測定光の光路長と参照光の光路長とが同じ長さとなると、この合波光は干渉縞を示す干渉光となる。この干渉縞の各々は眼底の奥にある層等に対応するため、当該干渉縞を解析することにより、眼底の深さ方向の情報(断層情報)を得ることができる。干渉光はファイバコリメータ108によって光ファイバに入力され、検出部110に入力される。検出部110は入力された干渉光を分光する回折格子と分光された光を検出するラインセンサ部とを含み、該ラインセンサ部は分光された光をデジタルの検出信号に変換し、該検出信号は制御装置109に送られる。
制御装置109は、制御PC111に検出信号を送る。該制御PC111は、眼底の画像を生成する画像生成処理ソフトウェアを実行する処理部(不図示)を有する。該処理部は、後述する画像生成処理における各種工程に対応するモジュールとして動作し、入力された検出信号を用いてこれら工程を実行する。これら工程の実行により、該OCT装置は、測定光を照射した眼底上の位置における断層像の生成に用いられる断層情報を生成する。
なお、本実施形態において用いたOCT装置として、検出する光に含まれる測定対象の深さ情報を周波数情報に置き換えて取得するフーリエドメイン方式のOCT(FD−OCT)装置を例示している。また、FD−OCT(Fourier Domain Optical Coherence Tomography)装置として、特にスペクトラルドメイン型のOCT(SD−OCT)装置を例示している。しかし、用いるOCT装置はこれに限定されず、例えばFD−OCT装置として、波長掃引型のOCT(SS−OCT)装置を用いてもよい。また、公知のその他のOCT装置を用いることも可能である。
<撮像方法>
上述したOCT装置を用いて眼底から3次元の断層像を撮像する本実施形態に係る撮像方法を、以下に説明する。なお、本実施形態の撮像方法は、測定光にて眼底上でリサージュ図形を描画するように、該眼底上を測定光で平面走査する手法をベースとする。このように測定光でリサージュ図形を描画するような走査様式をリサージュスキャンと称する。以下の説明では、まずは一般的なリサージュ図形で平面走査するリサージュスキャンの場合の撮像方法に関して簡単に説明をした後、本実施形態に係る撮像方法について説明を行う。
測定光にてリサージュ図形を描く場合のガルバノスキャナの駆動波形について、図2と式1を参照して説明する。説明の便宜上、眼底面上の任意の方向であるX軸方向に測定光を走査するガルバノスキャナを上述したXガルバノスキャナとし、同様に、眼底面上のY軸方向に測定光を走査するガルバノスキャナを上述したYガルバノスキャナとする。なお、X軸とY軸とは一般的には直交関係にあるが、ここでは必ずしも互いに直交関係にある必要はなく特定の角度で交差していればよい。
測定光にてリサージュ図形を描く場合、XガルバノスキャナとYガルバノスキャナに対して、それぞれ異なる周期TxおよびTyを有する余弦波を与える。この場合、各々の周期が異なるため、どちらか一方の余弦波が1周期を迎えた時点で、もう一方の余弦波は1周期に満たないか、あるいは1周期を過ぎ、次の周期に遷移している状態となる。即ち、二つの余弦波の位相が1周期毎にずれるような駆動波形を各々対応するガルバノスキャナに印加する。なお、一方の周期と他方の周期とは互いに異なる周期であればよく、例えば一方の周期が1周期を迎えた時点で、他方がその周期の整数倍に対してずれていればよい。
即ち、以下の式1にて示される二つの余弦波として、位相が周期毎にずれる駆動波形を各々のガルバノスキャナに印加して、これらを駆動する。
ただし、式1において、0≦t
x<T
x、0≦t
y<T
yであり、t=(L
x-1)T
x+t
x=(L
y-1)T
y+t
yである。
ここで、f(t)はガルバノスキャナの駆動開始からt秒経過した時点の、リサージュ軌跡上での測定光の照射の位置を示し、AxおよびAyは、各々XガルバノスキャナおよびYガルバノスキャナの駆動波形の振幅を示す。LxおよびLyは各々の駆動波形である余弦波において、時刻tの点が何周期目であるかを表すインデックスである。なお、図2に示した駆動波形の例では、Ax=Ay=5[V]、Tx=13[ms]、およびTy=12[ms]の条件となる場合を例示している。
図2に示した駆動波形を用いてガルバノスキャナを駆動して、測定光で眼底を走査した時の測定光の軌跡を図3に示す。当該駆動波形によってガルバノスキャナを駆動させた場合、眼底上で描画される測定光の軌跡をXガルバノスキャナの周期毎にプロットすると、12パターンの環状の軌跡301が得られる。これら環状の軌跡301を集合(合成)することにより、リサージュ図形302を得る。なお、以後において、説明の便宜上、Xガルバノスキャナの周期毎に得られるこの環状の軌跡301をループと呼称する。ここで、該ループは、Yガルバノスキャナの周期毎の軌跡としてもよい。また、リサージュ図形と総称される図形として、XガルバノスキャナとYガルバノスキャナの駆動周期の比率を例えば2:3とする、駆動速度差を比較的大きくした態様も考えられる。しかし、実際には装置構成上両ガルバノスキャナの駆動速度はあまり違わないほうが好ましい。このため、本実施形態等、実用に際しての両スキャナ駆動周期の比率は1:1に近いものとする。
該環状の軌跡301は、ループL=1〜L=6までが時計回りに描画され、ループL=7〜L=12までが反時計回りで描画されることとなる。環状の軌跡301から分かる通り、各ループの終点と次ループの始点は連続点である。これは、図2に示すガルバノスキャナの駆動波形からも明らかである。
しかし、上述したようにスキャナの特性等により、リサージュスキャンは測定光にて同一のループを繰り返して描画することで同一位置から複数の断層情報を繰り返し取得することには不向きである。詳細には、繰り返して断層情報の取得を行う場合、一方のガルバノスキャナは1周期毎の繰り返し駆動となるが、もう一方のガルバノスキャナは1周期に満たないか、或いは1周期を過ぎ、次周期に遷移している状態にある。従って、あるループの終点からそのループの始点に測定光の照射位置を推移させる瞬間に、一方のガルバノスキャナには不連続点を結ぶ負荷の大きい駆動を強いることになる。このような駆動はガルバノスキャナの駆動系に過大な負荷を与えると共に、測定光を走査する際の位置精度が劣化する要因となる。位置精度の劣化は、後述する重ね合わせ画像生成において相関値の低下につながり、重ね合わせ枚数の減少や画像のボケの原因となる。また、OCTAにおいては、断層像間での相関を計算する際に脱相関値が上昇することとなり、その結果誤って血管ではない組織を血管として誤検出するリスクを生じさせる。
測定光によりリサージュ図形を描画する場合、基本的には任意のX方向において測定光を往復走査するガルバノスキャナと該X方向に垂直なY方向において測定光を往復走査するガルバノスキャナとにより、X方向とY方向との測定光の走査を同時に行う。このX方向での駆動周期とY方向の駆動周期とが異なることで時間的に形状が変化するループを描画してリサージュ図形を得ている。
ここで、各々のガルバノスキャナを異なる周期で駆動するのではなく、各々のガルバノスキャナを同一周期で駆動し、且つ所定のタイミングで位相を変えることを繰り返す方法によっても、リサージュ図形に類似した図形を測定光で描画することができる。同一周期で両ガルバノスキャナを駆動する場合には、測定光の走査速度が同じであることから同じガルバノスキャナを用いることができ、駆動系等の共通化が可能となる。このような駆動様式にて2つのガルバノススキャナを駆動した場合、位相を変えるまでは測定光は同一のループを繰り返して描くこととなり、且つ繰り返し走査の際の位置精度の維持が見込める。
図4に、このようなガルバノスキャナの駆動を行う場合に用いる駆動波形の例を示す。この場合、XガルバノスキャナおよびYガルバノスキャナには、同一の周期Tyを有する駆動波形を用いることとしている。そして、一方のガルバノスキャナ(X方向)に与えられる駆動波形が任意の周期(図示の例では1周期)を経たところで、他方のガルバノスキャナ(Y方向)の駆動波形に対して位相がずれるように、その位相を所定時間分だけ遅延させている。なお、位相を変えるタイミングは必ずしも1周期毎でなくて良く、所定の周期間隔或いは所定の時間間隔で変わればよい。図4に示す例では、上述した式1においてAx=Ay=5[V]、およびTx=Ty=12[ms]としている。但し、Xガルバノスキャナは、1周期毎に位相を1[ms]ずつ遅延させるように駆動する。
なお、上述したように、図4に示した例では、1周期ごとに位相を遅れさせている。しかし、移送を遅れさせるタイミングはこの例に限定されない。例えば、1周期毎ではなく、10周期毎等の複数周期を経たタイミングにて位相を遅れさせてもよい。即ち、何れかのガルバノスキャナによる測定光の走査が所定の周期分行われた後に、所定時間の遅延を与えればよい。このように設定することにより、測定光は、同一ループを複数回(この場合では10回)描いた後に次ループへ遷移して、また次のループを複数回描くことになる。従って、同一位置(断面)から複数の断層情報が連続的に繰り返して得られることとなる。このように取得された複数の断層情報は、加算処理を行って所謂スペックルノイズを低減した画像を生成する場合、或いは上述したOCTAを実行する際に有効である。
なお、駆動波形間で位相を遅れさせるタイミングとしては、遅延させる駆動波形が最大振幅となるタイミングであることが望ましい。最大振幅のタイミングであればガルバノスキャナの変位速度が最少となっており、位相遅延を与えた際に生じるガルバノスキャナへの負荷が最小になる。
図4の駆動波形を用いて測定光により眼底を走査した時に描画される測定光の軌跡を図5に示す。図3と同様の様式にて測定光の軌跡をループ毎にプロットすると、図に示されるように12パターンの環状等の軌跡501が得られる。これら環状等の軌跡501を集合(合成)することにより、リサージュ図形に類似するリサージュ様の図形502を得ることができる。なお、ここに示した例では、説明と図示との容易化のためにループを12パターン描画することで一連の測定光の走査が終了することとしている。しかし、実際には、1024パターン等、より多くのパターンを描画することとしている。なお、上述した2つのガルバノスキャナの駆動様式により測定光が描画する図形502は、リサージュ図形302に類似しているがリサージュ図形ではない。よって、本明細書では、このように一方のガルバノスキャナの走査を遅延させることで得られる図形をリサージュ様図形と称することとする。
以上のように、本実施形態では、両ガルバノスキャナを同一周期の余弦波を用いて駆動することとし、且つ所定間隔で一方の往復走査に対して位相が遅延するようにガルバノスキャナを駆動する。これにより、眼底上において測定光でリサージュ図形に類似し、且つ、繰り返し位置精度の高い走査線を描画することが可能となる。よって、所謂スペックルノイズを低減するための高精度な加算画像や、血液の流れを抽出するためのOCTA画像の取得が可能となる。また、本実施形態によれば、追尾機能を要さないリサージュ図形に類似した図形を描画する様式の平面走査を行い、同一ループを描画するように測定光走査する際の走査位置精度の向上を図ることが可能となる。更に、異なる軸周りに動く2つのガルバノスキャナを各々等速で駆動することで、撮像領域内において撮像点を格子状に配置することが可能となり、画像生成における処理時間の短縮化が可能となる。
なお、上述した例では、XガルバノスキャナおよびYガルバノスキャナが同一の周期で測定光を往復走査することとしている。しかし、例えば走査範囲全体に対する測定光の走査をより迅速に行いたい場合、両ガルバノスキャナの一方の往復走査の周期を、他方の往復走査の周期の整数倍となるように設定してもよい。或いは、ある程度の走査速度でガルバノスキャナを駆動している場合、一方の往復走査の周期を他方の往復走査の周期の1/2倍等、整数分の1倍としてもよい。この設定において、上述したように一方のガルバノスキャナが往復走査を終えた段階で他方のガルバノスキャナに対して遅延を生じさせて位相差を設けることにより、上述した例を同様の効果が得られる。ただしこの場合、両ガルバノスキャナに与えられる2つの駆動波形に位相のずれを与えるまで、二つの駆動波形の位相がずれないように調整することを要する。また、位相差についても、意図した量で且つ意図したタイミングで生じるように調整することを要する。
上述したように、一方のガルバノスキャナの往復走査の周期に対して他方のガルバノスキャナの往復走査の周期が整数倍の場合、適当なタイミングにて何れかのガルバノスキャナの往復走査の位相をずらすことで、測定光による上述したリサージュ様の図形の描画ができる。しかし、周期の比率1.5倍とし、一方のスキャナが2往復の走査を行い且つ他方のスキャナが3往復の走査を行うことで、両スキャナの走査開始位置が元の走査開始位置に戻るようにしてもよい。この場合、元の走査開始位置に戻った際に一方のガルバノスキャナの往復走査に遅延を与えることとすれば、上述した例と同様にリサージュ様の図形の描画ができる。しかし、一方のガルバノスキャナの往復走査の周期に対する他方の往復走査の周期の比率をあまりに大きくすると、他方のガルバノスキャナの走査速度が極端に大きくなり該ガルバノスキャナに対する負荷が大きくなってしまう。また、両ガルバノスキャナによる測定光の照射位置が走査開始位置へ戻って一致するまでに複数周期を経ることを要する場合、1の断層情報の取得から同一断面での次の断層情報の取得までに時間を要してしまう。よって、2つのガルバノスキャナに極端な負荷の差を持たせないために、及び同一断面からの断層情報の取得を短時間で行うためには、各々の周期の比率を1.5倍若しくは2倍程度とすることが好ましい。
<画像生成方法>
以上に述べた駆動波形を2つのガルバノスキャナに各々印加して取得した断層情報に基づいて行う画像生成処理について、以下に述べる。本実施形態の画像生成処理では、ガルバノスキャナの駆動波形に基づいて測定データの再配置を行った後、輝度値の相関を利用して位置補正を行う。
以下、図6を参照して、本実施形態で実行する画像生成処理について説明する。図6は、上述したOCT装置を用いて取得した干渉信号を用いて画像生成を行う処理についてのフローチャートを示す。なお、以降のフローチャートにおける各処理は、制御手段として機能する制御PC111に配された、各工程に対応するモジュールにより実行される。
画像生成処理が開始されると、ステップS101において、制御PC111は制御装置109より伝送される検出信号、即ち干渉信号を取得する。干渉信号は眼底における深さ方向に並ぶ1次元のデータ列であり、測定光で撮像対象を2次元に走査した時に、一定の時間間隔で走査線上に配置される各測定点(サンプリングポイント)において取得される。
ステップS102において、制御PC111は取得した干渉信号を波数関数に変換した後、フーリエ変換処理を実行し、得られる複素数データの振幅値を抽出して輝度値を得る。波数軸のデータ列をフーリエ変換することで、眼底上の各測定点での輝度値(断層情報)のデータ列(断層情報列)を得ることができる。これらデータ列は眼底の3次元断層情報として、制御PC111に配置される不図示の記憶部に記憶される。
ステップS103において、制御PC111は深さ方向に並ぶ輝度値のデータ列(断層情報列)の平均値を計算する。このとき、平均値は全深さ範囲で計算してもよいし、所望の深さ範囲に限定して計算してもよい。後述するように、取得された3次元断層情報から画像生成する際には、各々のループより取得された断層情報列の位置合わせや結合を行う必要がある。本実施形態では、各測定点の1次元のデータ列から平均値等を代表値として求め、図5に示したリサージュ様図形が描画されるXY平面上にて該代表値を用いて後述する各種処理を行う。続くステップS104では、制御PC111がステップS103で算出した全測定点分の平均値を、前述した記憶部に保存する。
ステップS105において、制御PC111は、測定データの中で眼底(被検眼120)が大きく移動していないと推定される相関の高いループに含まれる平均値群をグループ化し、それぞれのグループにGroup Indexを割り当てる。Group Indexの作成および割り当ての手順に関しては、図7のフローチャートを用いて説明する。図7は、各ループ間の相関を求め、各々にGroup Indexを割り当てる一連の処理を示すフローチャートである。
Group Index作成の処理が開始されると、図7におけるステップS201では、制御PC111は順次処理を実行するため、ループとループに割り当てるGroup Indexとにそれぞれインデックスiとjを付与する。iの初期値は0、jの初期値は−1である。
次に、ステップS202では、制御PC111はステップS103にて算出した輝度値の平均値に関し、隣接する直前のループ(=Loop(i−1))において対応する測定点の平均値との相関係数を求める。なお、図5に示した例の場合、隣り合うループであるループ(L=1)とループ(L=2)との相関関係は非常に低い可能性がある。しかし同図は、説明のために簡略化してループの数を極端に減らして示したものであり、実際には描画されるループの数は500〜600は存在している。このため、隣り合うループはほぼ同じ位置、或いは表示画面にて走査位置に対応する画素で考えた場合同じ画素上より断層情報を得ていることとなる。従って、被検眼が固視微動等により動かなければ、相関係数は常に一定以上の値を示すこととなる。
ステップS203では、制御PC111はステップS202で算出した相関係数が閾値以上であるか否かを判定する。制御PC111は相関係数が閾値以上であれば隣接ループとの相関が高いと判定し、フローをステップS205に進める。相関係数が閾値未満の場合には、被検眼が動いた等により、当該ループは所定の位置に描画されていないと判定し、制御PC111はフローをステップS204に進める。
ステップS204では、制御PC111はjの値を1だけ増加させる。例えば、最初のループ(=Loop(0))は、相関を計算する対象がいないため、ステップS203で相関係数が閾値未満であるという判定となり、フローはステップS204に進められ制御PC111によりj=(−1)+1=0が計算される。
ステップS205では、制御PC111は、Loop(i)に対して、Group Index(j)を割り当てる。その際、直前のループ(=Loop(i−1))の描画時と間で眼の動きがなかった場合には該直前のループと同じGroup Index(j−1)が割り当てられ、動きがあった場合には異なるGroup Index(j)が割り当てられる。ステップS206では、制御PC111はLoop(i)の処理を終了し、フローをステップS201へ戻してLoop(i+1)の割り当て処理に移行する。ステップS201〜S206の処理を繰り返すことにより、眼の動きに対応した後述する再配置のための各々のループのグループ分けが行われる。
ループ処理終了後、制御PC111はステップS207にてLoop(i)とGroup Index(j)とを対応させて上述した記憶部に保存する。以上の処理を以てメインフローにおけるステップS105のGroup Index作成の処理を終了し、フローは図6のフローチャートにおけるステップS106に移行する。
以上の処理は、例えば次のように適用される。例えば図5において、L=1とL=2、L=2とL=3のループの相関係数が各々閾値以上であれば、これら3つのループをグループ0に設定する。一方で、L=3とL=4のループの相関係数が閾値に満たない場合、L=4のループをグループ1に割り当てる。また、L=4とL=5のループの相関係数も閾値に満たない場合、L=5のループをグループ2に設定する。次に、L=5とL=6のループが閾値以上であれば、L=6のループもグループ2に設定する。なお、ここで例示したこれらループの相関係数は実際には高くないが、ここでは説明のために各相関係数について仮定して述べている。
図6のメインフローにおいて、ステップS106では、制御PC111は、ステップS104にて保存した輝度の平均値(輝度データ)を読み出す。ステップS107では、制御PC111は読み出した輝度データに対しLog変換を行い、OCT画像(測定光の走査軌跡である1つのループを形成する平面画像)に変換する。なお、輝度データをIとすると、画像変換に用いる換算式は以下のようになる。
ステップS108では、制御PC111はLog変換により取得したOCT画像データを表示装置112における表示画面のXY平面上に並ぶ各画素に配置する。配置を行う際に、制御PC111はステップS105で作成したGroup Index(j)を参照してサンプリングポイントを各画素に割り当てる。データの再配置に関して、図8および図9を用いて説明する。図8はOCT画像データの再配置処理のフローチャートを示し、図9はデータの再配置処理の際に行われるデータ補間の処理の内容を説明するための画素配置を示す図である。
データの再配置処理が開始されると、ステップS301では、表示装置112の表示画面上にXY座標系として配置される各画素に対して、式1に基づいてOCT画像データをXY座標系へ再配置する。再配置により同一の画素に複数のOCT画像データが配置される場合、OCT画像データを平均した値をその画素に割り当てる。
ステップS301においてOCT画像データの再配置を行った場合であっても、走査線が描画される配置によっては画素にOCT画像データが配置されない場合がある。リサージュスキャンの場合、特に撮像領域中央部付近の走査線間隔が相対的に広く、画素にOCT画像データが配置されない場合がある。ステップS302では上述したような再配置処理によって、画像を生成する領域に含まれるXY座標系の画素の中で、OCT画像データが配置されない画素があるか否かを判定する。PC111によりデータ未配置の画素が無いと判定された場合は、全ての画素にOCT画像データが配置される場合となる。このような場合、制御PC111はデータの再配置処理を行うステップS108を終了して、フローを次のステップへ進める。しかし、データ未配置の画素があると判定された場合には、制御PC111はフローをステップS303へ進め、データの補完処理を行う。
ステップS303では、制御PC111はデータ未配置の画素に対するデータ補完を行う。データ補完の方法には様々な手法がある。例えば、周囲の画素を含めた3行3列から成る9画素の大きなブロックに配置されるOCT画像データの平均値をデータ未配置の画素に適用してもよいし、周囲の画素から適応的に補間してもよい。以下、図9を用いて、適応的なデータ補間の方法を説明する。
図9はXY座標系に配置された画素の行列を示している。適応補間は、補間対象画素の上下左右のデータの相関を検出し、縦方向の相関が高い場合は上下のデータから補間を行い、横方向の相関が高い場合は左右のデータから補完する。このようにデータ未配置の画素への補間を行うことで、表示画面上において連続的な画像の形成を行うことができる。
例えば、図9において中心の画素P11を補間する場合に制御PC111により行われる処理は、次のようになる。
1.式3により補完対象の上下、左右の画素の差の絶対値(XDiff、YDiff)を求める。
2.求めた差の絶対値に基づいて、補間の方法(補間にOCT画像データを用いる画素)を選択する。例えば、YDiff>XDiffならば、水平方向の相関が高いと判断し、式4を用いて補間する。
また、XDiff>YDiffならば、垂直方向の相関が高いと判断し、式5を用いて補間する。
なお、補間方法の例として中心画素P11の上下左右の画素の並びで相関値を比較したが、補間に用いる画素データはこの配置の画素のものに限らない。例えば補間対象画素の斜め隣の4画素P00、P02、P20、P22を用いて適応補間を行ってもよい。本実施形態では、測定光の軌跡がXY平面上を斜めに進行するように描画されるため、このような斜め隣の4画素を用いる適応補間も有効と考えられる。以上のように、本実施形態では、OCT画像データを適応的に補間して得られたデータをデータ未配置の画素に配置している。
データの再配置の終了後、制御PC111はフローを図6に示すステップS109に進める。ステップS109では、制御PC111はステップS107でOCT画像データを再配置することで生成したループ画像各々の位置合わせと結合を行う。位置合わせと結合に関し、図10を用いて説明する。図10は、ループ画像の位置合わせと結合との処理のフローチャートを示している。
ステップS109において、制御PC111はループ画像の位置合わせと結合との処理を開始する。当該処理が開始されると、ステップS401では、制御PC111はステップS105で作成したGroup Index(j)の等しいループのOCT画像データが再配置された画素のみを用いて、各々のGroup Index(j)毎の環状画像を生成する。
次に、ステップS402において、制御PC111は生成した環状画像の中で画素数の多い環状画像順に並べ替えを行う。続くステップS403では、制御PC111は、基準画像として、最も画素数の大きい環状画像を選択する。
ステップS404以降はループ処理となっており、制御PC111は基準画像にその他の環状画像を結合していき、画像を拡大していく。まず、ステップS404では、ループ処理を回すため、制御PC111は並べ替えを行った環状画像にインデックス(j’)を付与する。環状画像がm枚ある場合、基準画像として既に1枚を選択しているため、ループの処理回数はm−1回となる。ステップS405では、制御PC111は選択された基準画像或いは他の画像が結合された後の環状画像に対して、次に結合させる環状画像(次のインデックスの環状画像)を選択する。
ステップS406では、制御PC111は、結合予定の2つの環状画像の内、重畳する画素領域の情報を用いて環状画像の位置合わせを行う。具体的には、位置合わせは、2つの環状画像における重畳領域の画像を比較して最も相関係数が高くなるように、一方の環状画像のX、Y方向へのシフトを行う。このとき、結合させる環状画像の全領域に対し、位置合わせに用いたシフトパラメータを適用する。ステップS407では、制御PC111はステップS406で位置合わせを行った2つの環状画像同士を結合する。
ステップS408では、制御PC111はLoop Image(j’)のインデックスがm−1となっているか否かを判定し、m−1となっていれば全ループ処理が終わっていれば処理を抜け、画像生成フローを終了する。しかし、m−1となっておらず全ループ処理が終了していないと判定される場合、制御PC111はフローをステップS404に戻して、次のインデックスの環状画像の、結合済みの環状画像への位置合わせと結合処理のループを繰り返す。この処理の繰り返しにより、制御PC111は環状画像を拡大する。全ループの処理が終了することにより、表示画面上の全ての画素にOCT画像データが割り当てられ、眼底の平面画像が生成できる。
図6に示したフローチャートに示した処理を実行することにより、各測定点の代表値を用いて個々のループを結合し、該代表値を用いて平面画像が生成される。その結果、各々の角丸四角形状のループの眼底上での描画位置関係が得られる。当該処理の後に、得られた描画位置関係に基づいて、予め得ている複数の断層情報列から眼底の3次元断層情報を構築する。詳細には、各ループより得ている複数の断層情報列の各々を、描画位置関係に応じて表示画上の画素に対応させて配置する。その際、結合処理において割り当てられた各ループのインデックスに基づいて、個々の測定点における断層情報列である1次元のデータ列の表示画素に対応した配置が行われる。また、併せて、上述したステップS303の処理に準じて、データ列の欠損部分に対する補間処理が行われる。以上の操作を経ることにより、リサージュ様図形を描画するように眼底上を測定光で走査して得た断層情報から、眼底の3次元断層情報が構築される。
以上に述べたように、制御PC111は、XガルバノスキャナおよびYガルバノスキャナにより測定光が眼底上で描画する複数の異なる角丸四角状のループの各々に含まれる複数の断層情報列を取得する。また、制御PC111は、取得した複数の断層情報列を1つのグループとし、各断層情報列の各々についての平均値(平均情報)を求める。更に該制御PC111は、取得した複数の断層情報列に対応する1つのループにおける一連の平均値の加算結果を用いて、これら一連の平均値のグループ(1つのループ)各々をグループ分けする。その後、制御PC111は、グループ分けした後の同一グループに含まれる平均値の各々を表示手段における画素に割り当てる。次に、制御PC111は、画素に割り当てた平均値に基づいて各角丸四角形状のループの位置関係を取得する。その後、制御PC111は、取得した位置関係に基づいて複数の断層情報列を表示画面上の各画素に併せて配置し、眼底の3次元断層情報を生成する。以上の処理は、制御PC111を画像生成手段として機能させることにより実行される。
なお、ここでは、各平均値のグループに含まれる平均値を加算してその結果を比較し、加算結果の差異が所定の閾値以下の場合に同一グループに含まれると判定している。しかし、グループ分けの方法はこれに限られず、各ループにより得られている断層情報群列を比較して、差異の大きさからグループ分けができれば公知の他の方法を用いてもよい。
本発明の一実施態様としての撮像装置は、以上に述べたように、第1の走査手段としてのXガルバノスキャナと、第2の走査手段としてのYガルバノスキャナを有する。Xガルバノスキャナは、被検査物である被検眼眼底上で、第1の周期で第1の方向であるX方向に測定光を往復走査する。また、Yガルバノスキャナは、眼底上で第2の周期で第2の方向であるY方向に測定光を往復走査する。ここで、第1の周期と第2の周期とは上述した関係により定められる。また、制御手段たる制御PC111は、XガルバノスキャナとYガルバノスキャナとの一方のガルバノスキャナによる測定光の走査に対して、他方のガルバノスキャナにより測定光の走査を所定時間ずつ遅延させる。更に、制御PC111は画像生成手段として機能し、眼底からの戻り光より得られた輝度値等の情報を用いて眼底の画像を生成する。
[第2の実施形態]
上述した第1の実施形態では、測定光によりリサージュ様図形を描画するように眼底上を走査して、眼底の3次元断層情報を得ている。しかし、複数の楕円の合成からなるリサージュ図形及び第1の実施形態で述べたリサージュ様図形では中央部と周辺部とで描画される線間隔が異なり、中央部では線間隔が粗となり周辺部において密となる。このことは、リサージュスキャンにより網膜等の断層情報を取得する場合、最も注目したい中央部分から取得される断層情報が減り、生成した画像の中央部分の画質が低下することを意味する。このため、測定光が直線的且つ均等な間隔でリサージュ図形に類似した画像を描くように、2つのガルバノスキャナ各々に対して印加される駆動電圧の波形を各々三角波とすることが考えられる。
駆動電圧波形に三角波を用いた場合、2つのガルバノスキャナは眼底上で測定光を等速で走査する。これにより、測定光により描画される線は直線的になり、描画されるループは長方形状となる。このようなループを合成して得られるリサージュ様の図形において、周辺部と中央部との線間隔は均等となる。
ここで、三角波としてガルバノスキャナに電圧印加を行う場合、駆動電圧が増加から減少に、或いは減少から増加に転ずる駆動電圧の折り返し点において、該ガルバノスキャナは急激に回転方向を変えることになる。上述した三角波の使用による断層情報等の画像情報の均等な間隔での取得は、この折り返し点においてもガルバノスキャナが等速且つ一定の位置で回転方向を変えることを前提としている。
しかし、回転動作の向きを変える場合、移動方向に働く慣性に対処する減速、および向きを変えた後に必要となる加速に留意しなければならない。即ち、ガルバノスキャナにおいて、等速走査のためのほぼ瞬間的な減速と加速の実行と、折り返し部分での測定光の照射位置の精度を保つための瞬間的な減加速の所定のタイミングでの正確な実行とが求められる。しかし、一般的にOCT装置に用いられるガルバノスキャナにおいてこの前提を満たすことは容易ではなく、理想的な折り返し点の動作ができずに測定光の照射位置精度に揺らぎが生じてしまう。
そのため、第2の実施形態では、駆動波形として基本波形を三角波として、波形の折り返し部分をsin波形等で接続している。このように、スキャナの減速領域である折り返し部分において、急峻な波形変化が生じる三角波ではなく、滑らかな或いは緩やかな波形変化をする駆動波形を印加している。これにより、測定光は眼底上で徐々に走査方向を変えることとなる。このような駆動波形を用いることにより、折り返し部分の加速度変化を緩やかにし、スキャナの位置精度を落とすことなく測定光を走査することが可能となる。なお、ここで述べる折り返し部分とは、駆動波形においては電圧の変化が増加から減少又は減少から増加に転ずる上述した折り返し点およびその近傍であり、走査軌跡においては上述した四角環状の角部であって測定光の走査方向が変わる点およびその近傍に対応する。
以下、第2の実施形態に関して説明する。なお、第2の実施形態において用いたOCT装置の構成や画像生成方法は上述した第1の実施形態と同様であるため、ここでの詳細説明を割愛する。
<撮像方法>
上述したように、本実施形態では、両ガルバノスキャナの駆動に用いられる駆動波形について、三角波を基本波形とし、且つ波形の折り返し部をsin波形等で接続することとしている。この場合もXガルバノスキャナおよびYガルバノスキャナが同一の周期Tで駆動されるように設定し、且つ二つの三角波の位相が1周期毎にずれるように、Xガルバノスキャナの位相を遅延させている。なお、第1の実施形態と同様に、位相の遅延は所定の周期の性数回の経過毎に行うことができる。
位相遅延を考慮しない場合、ガルバノスキャナの基準となる三角波の駆動波形は次の式6のように表わすことができる。
ただし、0≦t<Tであり、t=(L−1)T+tである。
ここで、f(t)はガルバノスキャナの駆動開始からt秒が経過した時点の軌跡の位置を示し、Aはガルバノスキャナの駆動波形の振幅、Lは各々の駆動波形である三角波において、時刻tの点が何周期目であるかを表すインデックスである。また、この三角波の折り返し部に、式7の様なsin波形を接続して、折り返し部の加速度変化を緩やかにしている。
式7において、g(t
n)はガルバノスキャナにおける正負の折り返し部において三角波に接続する折り返し用の駆動波形であり、該折り返し用駆動波形に推移してからt
n秒が経過した時点の軌跡の位置を示す。A
rは折り返しのsin波形の振幅、T
rは折り返しに要する時間である。折り返し用の駆動波形を接続した結果、得られる駆動波形を図11に示す。
なお、図11に示す駆動波形の例では、Ax=Ay=4[V]、Tx=Ty=8[ms]、Ar=1[V]、Tr=2[ms]である。また、図11に示す駆動波形の例では、1周期毎にXガルバノスキャナの位相を1[ms]ずつ遅延させている。また、ガルバノスキャナが直線的に走査されるのは−4[V]から+4[V]までの区間であり、三角波の折り返し部分にsin波が接続され、緩やかに波形変化する折り返しが形成される。
図11に示す駆動波形でガルバノスキャナを駆動させて、測定光により眼底を走査した時に測定光が描く軌跡を図12に示す。測定光が描く軌跡であるループの各々を表示装置112の表示画面上でプロットすると、全部で12パターンの角丸四角形状のループ1201が得られる。これらのループを集合することにより、折り返し部において測定光が急な走査方向の変化をしないリサージュ様図形1202が得られる。なお、第1の実施形態と同様に、ここではループを12パターン描画することで一連の測定光走査が終了することとしているが、実際には1024パターン等、より多くのパターンを描画することとしている。この場合、一方のガルバノスキャナの1周期の1/1024に対応する遅延を、何れかのガルバノスキャナの走査時に繰り返して与えることにより、より密なリサージュ様図形の描画が可能となる。
ここで、リサージュ様の図形1202を測定光で描画した際の走査軌跡上で、サンプル間隔1.0[ms]と0.5[ms]とでサンプルを行った場合のサンプルポイントS(x,y)を図13に示す。同図では、走査線1303の交点のいずれかに配置されるサンプリングポイント1304を黒四角で示している。サンプル間隔1.0[ms]でのサンプリング例を、図13(a)のに示す。この場合、表示画面に対応するサンプリングポイントをS(x、y)とすると、(x、y)=(2n,2n)、ただしn=−2、−1、0、1、2、の5×5の正方配列のフレーム上で計25点の画素において各4回のサンプリングが行われる。また、サンプル間隔0.5[ms]の場合は、図13(b)に示すように、更に(x、y)=(2n+1,2n+1)、ただしn=−2、−1、0、1の4×4の画素でのサンプリングポイントが追加される。その結果、菱形配列のフレーム上から計41点の画素においてサンプリングが行われることとなる。なお、ここで述べる正方配列とは、図13(a)において、表示画面上で例えば(0,0)、(0,2)、(2,2)、(2,0)の正方形状にサンプリングポイントが配置される配列をいう。また、菱形配列とは、表示画面上で例えば(0,0)、(−1,1)、(2,0)、(1,1)の菱形形状にサンプリングポイントが配置される配列をいう。
なお、菱形配列のサンプリングポイントの場合、菱形の中央座標における画素値は上述した未配置画素に対する画素値の補間方法を用いて、画素値再配置と同様に近傍の画素値から生成してもよい。当該補間を行うことにより、図13(c)に示すように、表示に用いられる画素として9×9の正方配列が得られることとし、見かけの解像度を向上することも可能である。或いは、例えば1周期毎にガルバノミラーYに与える遅延位相を0.5[ms]とすることにより図13(b)に示した菱形配列とされるサンプリングポイントの中央座標もサンプリングポイントとし、当該中央座標の画素値を実際にサンプリングするようにしてもよい。但し、このように遅延位相を半分にして実際にサンプルを行う場合には、全24パターンの角丸四角形状の軌跡が必要となるため、測定時間が2倍となることに注意を要する。
本実施形態において、三角波によってガルバノスキャナが駆動される領域では測定光が等速で走査される。この領域を第2の領域と定義する。また、ガルバノスキャナの走査方向の緩やかな変化を行わせるための折り返し用駆動波形であるsin波形にてガルバノスキャナが駆動される加減速領域を、第1の領域と定義する。本実施形態における走査方法によれば、XガルバノスキャナおよびYガルバノスキャナともに振幅AxおよびAyで規定される領域、即ち、±4[V]以内の領域が、均一な密度で撮像される第2の領域に対応する。この領域外であって、測定光の走査線が描画される方向が徐々に変わる、駆動波形における電圧4〜5[V]および−5〜−4[V]の領域が第1の領域に対応する。
この場合、位相遅延区間は第1の領域に設けられる。この、位相遅延区間では折り返し部分における走査位置精度の劣化の影響を下げるために、当該領域においては撮像を休止することが望ましい。或いは、あるループの描画状態から次のループの描画状態へのループ間の遷移中に通過する軌跡で断層情報は取得しないようにすることが好ましい。上述した図13を用いたサンプリングポイントの説明においても、ループの遷移中の断層情報は取得していないと仮定している。
しかし、単純な表示画像等、診断時の参考程度のために表示される画像としてはこの第1の領域を含めた領域を表示してもよい。この場合は、位相遅延区間においても断層情報の取得を一部継続し、画像生成を行うことが好ましい。この場合、図13に示されたサンプリングポイントが配置されるフレームの周辺において、生成される画像はややゆがむことになる。しかし、例えば、図13(c)のXガルバノスキャナおよびYガルバノスキャナ各々の駆動波形の振幅A=±4[V]で規定される9×9配列の撮像領域を、駆動波形の振幅A=±5[V]で規定される11×11配列の撮像領域へとやや拡大することができる。
以上の処理を実行することで、等速領域においては、リサージュ様に走査して得た干渉信号から眼底の画像を生成することができる。該第2の領域では直線的で撮像点が偏ること無く配置される走査線より干渉信号が取得できるため、画像生成処理における補間プロセスを格段に軽減させることが可能である。また、該第2の領域では中心付近も周辺付近も走査線の間隔が等しく、均等な数の撮像点数が得られるので、環状画像の位置合わせの観点からも有利である。更に、該第2の領域では測定点の同一ループ間での間隔も一定となり、上述した補間を要する画素の数も該第2の領域全体に均等に配置されることとなり、部分的な解像度の劣化も回避することができる。
なお、加算画像の生成やOCTA画像の生成に際しては第1の実施形態において述べたように、同一ループを繰り返し描画するように測定光を走査して同一断面における断層情報を取得して、同一座標の画素のサンプリングを繰り返すことになる。そのため、1周期毎にXガルバノミラーの位相に遅延を加えるのではなく、複数の所定周期毎(ここでは仮にM周期とする)に遅延を付加させる。従って、全軌跡(ループ)に対して繰り返し走査を行いながら当該軌跡をトレースした場合には、繰り返しループを行わない場合に各画素から得られるm個のデータセットが繰り返し回数であるM回分得られる。従って、たとえばN枚相当の加算画像を生成する場合には、全軌跡の繰り返しを整数であるp=N/(M×m)回、行えばよいことになる。ここで整数pは被検眼の固視微動の状態や加算枚数Nの多寡により適時選択されるものである。
OCTAの場合は、モーションコントラスト(本実施形態では脱相関値)を求める画素の数、即ち繰り返しループの回数Mは、求める画質に対応して決定されるのが通例である。この時、測定時間を最小とするp=1において、m×(M−1)個の脱相関値、即ち(M−1)個の脱相関値がデータセットの個数であるmセット得られることになる。従って第2の実施形態の如く測定光の走査を行うOCTA装置では、このmセットの脱相関値を平均化することにより、より安定したノイズの少ないOCTA画像を得るようにすることが望ましい。
即ち、OCTA装置においては、制御PC111は、Xガルバノスキャナの測定光の走査に対してYガルバノスキャナの測定光の走査を所定時間だけ遅延させる前に、両ガルバノスキャナによる測定光の走査を複数周期分繰り返させる。そして、複数周期分の前測定光の走査の繰り返しにより被検眼における同一断面から得られた輝度値等の情報を用いて、制御PC111は画像を生成する。
尚、図14に示すようにサンプリングポイントが配置されるように、L=1或いは7で描画される軌跡が往復直線軌跡とならないよう、走査の開始時において、遅延時間の1/2の位相差をXガルバノミラーの初期位相として付加しておいてもよい。このように初期位相を与えることにより、測定光は往復直線を描画しないリサージュ様図形1402を描画するようになり、撮像点密度を増加させることができる。
本実施形態では、各々のガルバノスキャナが走査方向を反転する折り返し部分において、各ガルバノスキャナが緩やかに反転するように、その際の駆動波形を三角波とは異なるsin波としている。これにより、ガルバノスキャナの動作を安定させ、被検査物を測定光で走査する際の該測定光の照射位置の精度を維持できる。また、ガルバノスキャナの動作に急減速急加速といった負荷を与える必要性がなくなり、このための特別な構成の付加を必要としなくなる。
なお、第2の実施形態では、三角波の折り返し部にsin波を接続した例について述べている。しかし、接続される波形はこれに限定されず、駆動波形における折り返し部が滑らかな曲線により構成され、ループの角部において走査線の方向が徐々に変化するように駆動波形が形成されていればよい。また、以上に述べた実施形態において、第2の領域においてはXガルバノスキャナおよびYガルバノスキャナが測定光を一定の速度で走査するように、両スキャナに印加される駆動波形も直線的に変化することとしている。しかし、該第2の領域における測定光の走査様式は一定の速度による直線的な走査態様に限定されない。第1の領域における走査方向の変更の際の走査軌跡が第2の領域の走査軌跡に対して滑らかに接続され、且つ走査方向の変更がガルバノスキャナにより対応可能な走査方向の変更を満たせば、なだらかな曲線を描くような走査軌跡としてもよい。即ち、上述したように、XガルバノスキャナおよびYガルバノスキャナ各々における測定光の走査速度の変化が、第2の領域よりも第1の領域が小さく設定され、且つ該第1の領域に対応して両ガルバノスキャナに印加される駆動波形の変化が急峻でなければよい。
また、以上に述べた実施形態では、XスキャナおよびYスキャナに各々ガルバノスキャナを用いる場合について述べている。しかし、使用するスキャナはガルバノスキャナに限定されず、印加される駆動波形に応じて駆動されるスキャナ一般が使用可能である。また、上述した実施形態では、測定光を走査する撮影装置としてOCT装置を用いた場合について述べている。しかし、撮影装置を、例えば眼等の被検査物上で光を走査して画像情報を得る走査型レーザ検眼鏡(Scanning Laser Ophthalmoscope:SLO)、補償光学適用走査型レーザ検眼鏡(Adaptive Optics−SLO:AO−SLO)等としてもよい。SLO等では眼底に照射された光の反射光より輝度値等を求め、該輝度値等より眼底平面像を得ている。この場合、同一走査線から得られた輝度値を加算平均等することにより、ノイズの低減が図れてより鮮明な画像を得ることが可能となる。
この場合、OCT装置において取得した断層情報列ではなく、上述した平均値に対応するデータ(情報)が輝度値として直接得られることとなる。即ち、これら検眼鏡において、眼底上で複数の異なるループを描画することで該異なるループ各々から複数のデータからなるデータ群を求めることとなる。そして、ループ各々のデータ群(個々のサンプリングポイントより得たデータがループ状に配置されてなる群)の比較によりデータ群(ループ)をグループ分けし、該グループ分けにより同一グループとされたデータ群(ループ)における情報の各々を表示手段における画素に割り当てることとなる。
この場合、データ群の比較は、該データ群に含まれる情報(データ)を輝度値等として数値化して各々を加算した数値の比較により行われることとなる。1枚の眼底画像を生成するために描画されるループの数にもよるが、例えばループの数が500以上ある場合、各ループの描画位置はほとんど変わらない。このため、1つのループにおいて取得されている輝度値等の加算値とその次に描画されたループにおいて取得されている輝度値等の加算値とは、ほとんど同じ値となる。即ちこの加算値を比較することにより、連続する2つのループが眼底上で隣り合って描画されているか否かを判定することができる。
連続するループを描画している際に被検眼が固視微動等により動いた場合、サンプリングポイントがずれてしまうため、得られる輝度値等も異なり、加算値に差が生じる。このように加算値を比較、参照することで光の走査時に被検眼が動いたか否かを知ることができる。被検眼の動きは、動いた後に停止する場合、動いた後に元の状態に近い状態に復帰する場合がある。動きが一旦停止した場合、その停止中に描画されたループ各々から得られた加算値は互いに近い値を示す。従って、加算値が近い値を示したループは眼が同じ状態にある時に描画され、これらループが眼底上に想定どおりに並ぶように描画されていると推測できる。よって、これらループは被検眼が同じ状態で描画されているとして、該ループ各々より得られたデータ群を、描画位置の補正を考慮する必要のないデータ群として同一グループに属するとする。即ち、上述したグループ分けは、眼底上での一連の測定光走査により描画されたグループを、眼底が同じ状態にある時に描画されたと推定されるグループ毎に分ける操作となる。
その後、画像生成手段は、ループの各々より生成した環状画像において対応する画素の相関係数が高くなるように、一方の環状画像を画像表示画面上でシフトさせることにより環状の画像各々の位置合わせを行う。これにより、被検眼の固視微動等に伴って生じる測定光による走査線の描画位置の位置ずれを補正することができる。当該操作より得られた位置合わせされた環状の画像を合成することにより、被検眼の眼底画像を生成することができる。以上に述べたようなグループ分けを行うことにより、位置合わせの操作を分けられたグループの間で行うことで、データの再配置ができる。以上の操作は、上述したOCTによる3次元断層情報の取得時の場合に、深さ方向に並んだ断層情報列の平均値を取り、これをサンプリングポイントにおける代表値として行った操作と同じである。即ち、以上に述べたように、本発明は、光を被検査物上で走査して画像情報を得る装置一般に適用可能である。
また、上述した実施形態において、被検査物として被検眼120の眼底を例に説明したが、被検査物はこれに限られない。例えば、被検査物は被検眼120の前眼部等であってもよいし、被検者の皮膚や臓器等でもよい。この場合には、上述した撮像装置は、眼科装置以外に、内視鏡等の医療機器用の撮像装置としても使用することができる。
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
以上、実施形態を参照して本発明について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。本発明の趣旨に反しない範囲で変更された発明、および本発明と均等な発明も本発明に含まれる。また、上述した各実施形態およびその変形例は、本発明の趣旨に反しない範囲で適宜組み合わせることができる。