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JP6924656B2 - 原子炉格納容器 - Google Patents

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JP6924656B2
JP6924656B2 JP2017171612A JP2017171612A JP6924656B2 JP 6924656 B2 JP6924656 B2 JP 6924656B2 JP 2017171612 A JP2017171612 A JP 2017171612A JP 2017171612 A JP2017171612 A JP 2017171612A JP 6924656 B2 JP6924656 B2 JP 6924656B2
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政隆 日高
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Description

本発明は、原子炉圧力容器から落下した炉心溶融物を、保持、冷却する機能を備えた原子炉格納容器に関する。
原子力プラントにおいて、燃料集合体が装荷される原子炉の炉心は、密閉構造の原子炉圧力容器に内包され、原子炉圧力容器は、密閉構造の原子炉格納容器の内部に設置される。原子炉圧力容器は、再循環系等と共に冷却材圧力バウンダリを構成し、その外が原子炉格納容器等によって構成される格納容器バウンダリで囲まれる。原則として、格納容器バウンダリが、放射性物質の漏洩に対する最外の障壁として位置付けられる。
原子炉格納容器は、鉄筋コンクリートや鋼板で作られている。原子炉格納容器は、底部にコンクリート製のベースマットが敷かれて設けられている。原子炉格納容器の内部において、原子炉圧力容器は、ドライウェルの床面に設けられたペデスタルに支持される。ペデスタルは、コンクリート製で円筒状であり、ペデスタルの開口上に原子炉圧力容器の下部が固定される。
原子力プラントは、地震、風水害、火災等で外部電源が喪失した場合にも、非常用炉心冷却装置の稼働により冷却水を給水し続けて炉心の溶融を防止する機能を備えている。しかし、非常用炉心冷却装置が機能せず、炉心が溶融するような過酷事故が発生する可能性を想定して、より高度な保安機能を備えることが要求されている。
冷却材喪失事故等の過酷事故時には、原子炉圧力容器の底部に炉心溶融物が堆積し、底部が熱や内圧で破損する事態が想定される。原子炉圧力容器の底部が破損すると、炉心溶融物がドライウェルの床面に落下し、コンクリート造の格納容器床を侵食して、格納容器バウンダリの健全性を損なう可能性がある。
非特許文献1には、原子炉圧力容器が破損した場合の燃料デブリの状態を示す実例が開示されている。冷却材喪失事故の後、炉心溶融物が構造材等と混ざって凝固した燃料デブリが、制御棒駆動機構(Control Rod Drive:CRD)の整備に利用されるプラットフォーム上に落下したことが確認されている。また、炉心溶融物が、グレーチングに脱落や変形を生じさせながらプラットフォームを通過し、格納容器床に落下した痕跡が観測されている。
従来、原子炉にコアキャッチャの機能を具備させて、炉心溶融物の落下時にも格納容器バウンダリの健全性を保持するための技術が検討されている。例えば特許文献1には、ペデスタルの内壁等や、原子炉格納容器床等に、耐熱材を布設する技術が記載されている。また、特許文献2には、格納容器床に冷却水チャンネルを有する炉心溶融物保持装置を設ける技術が記載されている。
特開平5−5795号公報 特開2016−197051号公報
東京電力ホールディングス株式会社,"2号機原子炉格納容器内部調査について",技術研究組合 国際廃炉研究開発機構(IRID),2017年2月23日
特許文献1に記載された技術によると、炉心溶融物が原子炉圧力容器から落下した直後には、耐熱材によってペデスタル、格納容器床等が保護される。しかし、耐熱材自体には冷却機能が無いため、堆積した燃料デブリの温度が崩壊熱によって上昇してコンクリートの分解温度を超える可能性がある。このような高温の熱が耐熱材を介して伝わると、ペデスタル、格納容器床等がコンクリートの過熱により損傷する。そのため、格納容器バウンダリの健全性や、原子炉圧力容器を支えるペデスタルの支持能力が損なわれる虞がある。
また、特許文献2に記載された技術によると、炉心溶融物保持装置上に堆積した燃料デブリは、冷却水チャンネルを流れる冷却水との熱交換や、冷却水チャンネルからの放水により冷却される。しかし、堆積した燃料デブリは、十分に冷却されるまでに、ペデスタルの内壁面を輻射により加熱し続ける可能性がある。このような場合にも、輻射熱によるコンクリートの過熱により、原子炉圧力容器を支えるペデスタルの支持能力が損なわれる虞がある。
そこで、本発明は、原子炉圧力容器から落下した炉心溶融物によるペデスタル周辺の過熱が防止される原子炉格納容器を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために本発明に係る原子炉格納容器は、原子炉の炉心を内包する原
子炉圧力容器と、前記原子炉圧力容器を支持する筒状のペデスタルと、前記ペデスタルの
内側において、前記原子炉圧力容器と床面との間の空間に敷設され、冷却水が流される伝
熱管群と、前記原子炉格納容器よりも上方に設けられた冷却水槽と、前記冷却水槽と前記伝熱管群との間で前記冷却水を循環させる循環配管と、を備え、前記伝熱管群は、平面視で前記ペデスタルの内側の空間を覆うように配列した複数の横管と、前記ペデスタルの内壁面を覆うように鉛直方向を向いて配列した複数の縦管と、を有し、前記冷却水槽は、前記循環配管である往配管を介して前記横管の一端と連通しており、前記横管の他端は、前記縦管の一端と連通しており、前記縦管の他端は、前記循環配管である還配管を介して前記冷却水槽と連通しており、前記縦管は、前記原子炉圧力容器の下端よりも上方まで前記内壁面を覆っている
本発明に係る原子炉格納容器によると、原子炉圧力容器から落下した炉心溶融物によるペデスタル周辺の過熱が防止される。
本発明の一実施形態に係る原子炉格納容器を備えた原子力プラントの構成を示す縦断面図である。 伝熱管群の敷設状態を示すペデスタル周辺の縦断面図である。 伝熱管群の敷設状態を示すペデスタル周辺の横断面図である。 伝熱管群の形態の第1変形例を示す横管の断面図である。 伝熱管群の形態の第1変形例を示す縦管の断面図である。 伝熱管群の形態の第2変形例を示す横管の断面図である。 伝熱管群の形態の第2変形例を示す縦管の断面図である。 伝熱管群の形態の第3変形例を示す横管の断面図である。 伝熱管群の形態の第3変形例を示す縦管の断面図である。 伝熱管群の形態の第4変形例を示す横管の断面図である。 伝熱管群の形態の第4変形例を示す縦管の断面図である。 伝熱管群の形態の第4変形例の敷設状態を示すペデスタル周辺の横断面図である。 循環配管の形態の他例を示すペデスタル周辺の縦断面図である。 伝熱管群の敷設状態の第1変形例を示すペデスタル周辺の縦断面図である。 伝熱管群の敷設状態の第2変形例を示すペデスタル周辺の縦断面図である。 原子炉格納容器を備えた原子力プラントの構成の第1変形例を示す縦断面図である。 原子炉格納容器を備えた原子力プラントの構成の第2変形例を示す縦断面図である。 原子炉格納容器を備えた原子力プラントの構成の第3変形例を示す縦断面図である。 構造材を挟んで冷却水と燃料デブリとの間に形成される温度プロファイルを説明する図である。
本発明に係る原子炉格納容器は、沸騰水型原子炉(Boiling Water Reactor:BWR)、改良型沸騰水型原子炉(Advanced Boiling Water Reactor:ABWR)、加圧水型原子炉(Pressurized Water Reactor:PWR)等の軽水炉や、高速増殖炉(Fast Breeder Reactor:FBR)等の高速炉(Fast Reactor:FR)や、新型転換炉(Advanced Thermal Reactor:ATR)等の各種の原子炉に適用することができる。
以下、本発明の一実施形態に係る原子炉格納容器について、ABWRに適用する場合を例にとって、図を参照しながら説明する。なお、以下の各図において共通する構成については同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る原子炉格納容器を備えた原子力プラントの概略構成を示す縦断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る原子炉格納容器41は、改良型沸騰水型の原子力プラント40の原子炉建屋42の内部に備えられている。原子炉格納容器41は、原子炉圧力容器1と、ペデスタル62と、伝熱管群3と、を備えている。また、冷却水槽6と、循環配管(往配管7,還配管8)と、を原子炉格納容器41の外部、且つ、原子炉建屋42の内部に、付随して備えている。
原子炉格納容器41は、鉄筋コンクリートにより原子炉建屋42と一体的に設けられている。原子炉建屋42には、原子炉格納容器41の直上の運転床67に、放射線を遮蔽するシールドプラグ47が配置されている。また、原子炉格納容器41よりも上方に、ドライヤ・セパレータプール65や、使用済燃料プール66が設けられている。ドライヤ・セパレータプール65は、定期検査時に蒸気乾燥器や気水分離器を仮置きする場所として使われる。使用済燃料プール66は、使用済燃料を冷却しながら一時的に保管する場所である。
原子炉格納容器41は、格納容器上蓋43が上端部に取り付けられて密封される。原子炉格納容器41の内部には、炉心50を内包する原子炉圧力容器1が格納されている。炉心50は、炉心シュラウドに囲まれ、燃料棒を配列させた燃料集合体が装荷される。原子炉圧力容器1は、上部に、蒸気乾燥器や気水分離器、下部に制御棒、ジェットポンプ等の不図示の炉内機器を備える。
原子炉圧力容器1には、主蒸気隔離弁52を介して主蒸気管51が接続されている。炉心50で発生した蒸気は、主蒸気管51を通じて不図示のタービン建屋に送られ、蒸気タービンによる発電に用いられる。原子炉格納容器41には、ドライウェル44とウェットウェル(圧力抑制室)45が内包されている。ウェットウェル45は、冷却材喪失事故時、ベント管46を通じてドライウェル44から導かれる蒸気を凝縮する。
原子炉圧力容器1は、円筒状のペデスタル62に支持されている。ペデスタル62は、ドライウェル44の床面を構成している格納容器床2に設けられている。ペデスタル62は、鉄筋コンクリートや鋼板により形成されており、原子炉圧力容器1の下部が、ペデスタル62の開口上に固定されている。原子炉圧力容器1には、格納容器床2に臨む下部ヘッドに、核分裂反応を制御するための制御棒駆動機構59が取り付けられている。
ペデスタル62の内側において、制御棒駆動機構59と格納容器床2との間の空間には、所定の高さに、制御棒駆動機構59の整備等を行うためのプラットフォーム5が設けられている。プラットフォーム5は、床状の構造材であり、グレーチング等によって構成されている。プラットフォーム5には、アクセス48が通じており、整備者が進入及び退出可能とされている。
図1に示すように、本実施形態に係る原子炉格納容器41は、冷却水が流される伝熱管群(3,4)を備えている。伝熱管群(3,4)は、コアキャッチャとしての機能を有し、複数の伝熱管が並列して構成されている。伝熱管群(3,4)は、ペデスタル62の内側において、原子炉圧力容器1の下部ヘッドと格納容器床(床面)2との間の空間に敷設されている。伝熱管群(3,4)は、原子炉格納容器41の外部に設けられた冷却水槽6と循環配管(7,8)を介して連通している。伝熱管群(3,4)は、例えば、ステンレス鋼により設けられる。
冷却水槽6は、原子炉建屋42の内部に、ドライヤ・セパレータプール65等に近接して設置されており、原子炉格納容器41よりも上方に設けられている。冷却水槽6は、原子炉格納容器41本体の上部側方に位置している。冷却水槽6には、循環配管(7,8)として、冷却水を冷却水槽6から伝熱管群3に送る往配管7と、冷却水を伝熱管群3から冷却水槽6に戻す還配管8が接続している。また、冷却水槽6には、冷却水を原子炉建屋42の外部から給水するための給水管9と、冷却水中の気体を抜くための通気管10が接続している。
往配管7及び還配管8は、それぞれ、冷却水槽6の槽内の冷却水に浸漬される下部と伝熱管群(3,4)との間を連通している。冷却水槽6の内部において、往配管7の末端は、還配管8の末端よりも低い高さに開口している。冷却水は、冷却水槽6の内部に還配管8の末端よりも高い水位となるまで給水され、冷却材喪失事故等の過酷事故時には、伝熱管群(3,4)に流される。
給水管9は、逆止弁11を介して冷却水槽6に接続されており、冷却水槽6の内部と不図示の冷却水供給源との間を連通している。冷却水供給源としては、例えば、復水補給水系の水貯蔵タンク、消火系等を通じた注水に用いる外部水源等が利用される。
通気管10は、冷却水槽6の内部の圧力を、冷却水供給源の雰囲気圧力に均圧化させる。通気管10は、例えば、復水補給水系の水貯蔵タンク、主蒸気管51の下流のタービン系、蒸気発生器や冷却材配管等で構成される一次冷却系、フィルタ装置等で構成されるフィルターベント系等に接続される。
図2は、伝熱管群の敷設状態を示すペデスタル周辺の縦断面図である。また、図3は、伝熱管群の敷設状態を示すペデスタル周辺の横断面図である。なお、図3は、図2のI−I線断面図である。
図2及び図3に示すように、伝熱管群(3,4)は、平面視でペデスタル62の内側の空間を覆うように配列した複数の横管3と、ペデスタル62の内壁面を覆うように鉛直方向を向いて配列した複数の縦管4と、を有している。伝熱管群(3,4)を構成する横管3及び縦管4のうち、横管3は、プラットフォーム5(床状の構造材)上に配列している。
図2に示すように、往配管7は、プラットフォーム5の高さまで冷却水槽6から下方に延びている。そして、プラットフォーム5の高さでペデスタル62を貫通し、下部ヘッダ13に接続している。
下部ヘッダ13は、プラットフォーム5上に設置されている、下部ヘッダ13は、ペデスタル62の内側の空間を横断して直径線上に冷却水の管路を形成している。なお、下部ヘッダ13は、プラットフォーム5上に直接載置してもよいし、支持具17を介してプラットフォーム5上に間隙を設けて設置してもよい。
横管3を構成する伝熱管は、それぞれの一端が下部ヘッダ13に連通している。横管3は、下部ヘッダ13から水平方向の両側に向けて敷設されており、ペデスタル62の内側のプラットフォーム5が広く覆われるように所定の間隔で配列している。横管3は、水平面上で対向するペデスタル62の内壁面付近まで敷設されており、それぞれの他端から縦管4が鉛直方向に立ち上がっている。
縦管4を構成する伝熱管は、それぞれの一端が横管3と連通しており、他端が上部ヘッダ14に連通している。縦管4は、横管3と上部ヘッダ14とを鉛直方向に連結しており、ペデスタル62の内壁面が広く覆われるように鉛直方向を向いて所定の間隔で配列している。
上部ヘッダ14は、原子炉圧力容器1を支持する支持部49の近傍の高さに設置されている。支持部49は、ペデスタル62の開口内に設けられている。上部ヘッダ14は、ペデスタル62の内壁面に沿って原子炉圧力容器1の下部ヘッドを囲んでおり、平面視で円環状の管路を形成している。
還配管8は、上部ヘッダ14に接続しており、ペデスタル62を貫通して、原子炉格納容器41よりも上方に設けられた冷却水槽6に接続している。
図3に示すように、下部ヘッダ13は、ペデスタル62の内壁面近傍の両側に、分岐ヘッダ13a,13bを有している。分岐ヘッダ13a,13bは、下部ヘッダ13からペデスタル62の周方向の両側に向けて分岐している。分岐ヘッダ13a,13bは、円弧状に設けられており、横断面視でペデスタル62の内壁面に沿う円弧状の管路を形成している。
分岐ヘッダ13a,13bからは、横管3と同様、ペデスタル62の内壁面を覆うように鉛直方向を向いて並列した複数の縦管4が立ち上がっている。横管3は、ペデスタル62の内側の空間を横断している下部ヘッダ13に対して略直角に接続している(図3参照)。そのため、ペデスタル62の内壁面近傍の両側では、縦管4の分布が疎となる。しかし、分岐ヘッダ13a,13bを設けて鉛直方向に縦管4を立ち上げることにより、図3に示すように、縦管4の分布を密にすることができる。
伝熱管群(3,4)、冷却水槽6及び循環配管(7,8)で構成される循環系統には、冷却材喪失事故等の過酷事故に備えて冷却水が満たされる。過酷事故時、原子炉圧力容器1から炉心溶融物20が落下すると、炉心溶融物20からの伝熱や輻射によって冷却水が加熱され、局所的な密度の低下や蒸気が生じる。その結果、浮力が発生して、伝熱管群(3,4)の内部の冷却水が、還配管8を上昇する。一方、冷却水槽6の側に満たされている低温の冷却水は、往配管7を下降する。このように、循環系統が備えられることにより、冷却水の自然循環を利用して、炉心溶融物20やペデスタル62の周辺を除熱することができる。
図1に示すように、伝熱管群(3,4)の内部の冷却水は、還配管8を上昇した後、冷却水槽6の内部に流出する。冷却水中に生じている蒸気は、冷却水槽6の内部で十分に凝縮し、凝縮しきれなかった残部は、通気管10を通じて外部に放出される。一方、蒸発により減少する冷却水は、給水管9を通じて補給される。冷却水の補給は、例えば、冷却水槽6に設置した水位センサ、定水位弁等により自動で行ってもよいし、必要時に手動で行ってもよい。
横管3は、平面視でペデスタル62の内側の空間を覆うように配列していることにより、原子炉圧力容器1から落下する炉心溶融物を受けるコアキャッチャとして働く。冷却材喪失事故等の過酷事故時、炉心50が溶融して原子炉圧力容器1が破損すると、燃料デブリが格納容器床2に堆積し、格納容器バウンダリの健全性が損なわれる可能性がある。これに対し、横管3を備えていると、炉心溶融物を横管3上に受け止めて、冷却水で除熱することができる。すなわち、炉心溶融物を凝固させて格納容器床2への落下を阻止することができる。また、ペデスタル62、格納容器床2等のコンクリートの過熱による損傷や、炉心溶融物の再臨界を防止することができる。
また、縦管4は、ペデスタル62の内壁面を覆うように鉛直方向を向いて配列していることにより、原子炉圧力容器1から落下した炉心溶融物によるペデスタル62の損傷を防止する遮蔽体として働く。冷却材喪失事故等の過酷事故時、原子炉圧力容器1から落下した炉心溶融物は、十分に冷却されるまでに、ペデスタル62の内壁面を輻射により加熱し続ける可能性がある。これに対し、縦管4を備えていると、ペデスタル62の内壁面に向かう輻射を遮蔽し、輻射熱を冷却水で除熱することができる。また、炉心溶融物とペデスタル62との接触や、ペデスタル62の放射化を防ぐことができる。
なお、伝熱管群(3,4)は、下部ヘッダ13や上部ヘッダ14に支持させてもよいし、プラットフォーム5やペデスタル62に直接に支持させてもよい。例えば、プラットフォーム5を構成しているグレーチングや支持桁に、伝熱管群(3,4)や下部ヘッダ13を固定したり、ペデスタル62の内壁面に、伝熱管群(3,4)や下部ヘッダ13や上部ヘッダ14を固定したりすることができる。伝熱管群(3,4)を、床状の構造材であるプラットフォーム5上に配列させると、炉心溶融物の重量や落下荷重に耐える強度が容易に得られる。
このように本実施形態に係る原子炉格納容器41によると、伝熱管群(3,4)が備えられているため、原子炉圧力容器から落下した炉心溶融物によるペデスタル周辺の過熱を防止することができる。ペデスタル62のコンクリートの過熱による損傷が防止されると、原子炉圧力容器1を支える支持能力も保たれるため、原子炉圧力容器1の倒壊による放射性物質の漏洩等も防止される。また、炉心溶融物や燃料デブリによる熱負荷を伝熱管群(3,4)で負担し、荷重を伝熱管群(3,4)とプラットフォーム5等の構造材に分散できるため、原子炉格納容器41やその内部構造の損傷を防止することができる。よって、放射性物質を格納容器バウンダリの内側に保持して外部へ漏洩させない性能を有する安全性が高い原子力プラントを提供することができる。
図4は、伝熱管群の形態の第1変形例を示す横管の断面図、図5は、伝熱管群の形態の第1変形例を示す縦管の断面図である。また、図6は、伝熱管群の形態の第2変形例を示す横管の断面図、図7は、伝熱管群の形態の第2変形例を示す縦管の断面図である。また、図8は、伝熱管群の形態の第3変形例を示す横管の断面図、図9は、伝熱管群の形態の第3変形例を示す縦管の断面図である。また、図10は、伝熱管群の形態の第4変形例を示す横管の断面図、図11は、伝熱管群の形態の第4変形例を示す縦管の断面図、図12は、伝熱管群の形態の第4変形例の敷設状態を示すペデスタル周辺の横断面図である。
図4及び図5に示すように、伝熱管群(3,4)を構成する横管3及び縦管4は、密接して並列した伝熱管が側面同士で接合されている形態としてもよい。このような形態は、伝熱管の側面を溶接、ろう付け等で接合させて作製することができる。
図4に示すように、横管3同士を密接させることにより、炉心溶融物20がプラットフォーム5の下方に落下するのを確実に防止することができる。また、図5に示すように、縦管4同士を密接させることにより、炉心溶融物20がペデスタル62の内壁面に接触したり、炉心溶融物20からの輻射が直接的にペデスタル62の内壁面に到達したりするのを防止することができる。
また、図6及び図7に示すように、伝熱管群(3,4)を構成する横管3及び縦管4は、間隔を空けて並列した伝熱管が側面で共通のバッフル板(板材)(15a,16a)に接合されている形態としてもよい。バッフル板(15a,16a)は、炉心溶融物20の通過を阻止すると共に、伝熱面積を拡大するフィンとして機能する。このような形態は、伝熱管の側面をバッフル板(15a,16a)に溶接、ろう付け等で接合させて作製することができる。
図6に示すように、横管3を間隔を空けて共通のバッフル板15aに接合させることにより、横管3のコストや本数や総重量を削減しつつ、炉心溶融物20の落下の防止を図ることができる。また、図7に示すように、縦管4を間隔を空けて共通のバッフル板16aに接合させることにより、縦管4のコストや本数や総重量を削減しつつ、炉心溶融物20の接触や輻射を阻止することができる。
また、図8及び図9に示すように、伝熱管群(3,4)を構成する横管3及び縦管4は、間隔を空けて並列した伝熱管が側面でバッフル板(板材)(15b,16b)を介して連結されている形態としてもよい。バッフル板(15b,16b)は、隣り合う伝熱管の中心線に沿って、伝熱管の側面に接合される。バッフル板(15b,16b)は、炉心溶融物20の通過を阻止すると共に、伝熱面積を拡大するフィンとして機能する。このような形態は、伝熱管とバッフル板(15b,16b)とを溶接、ろう付け等で接合させて作製することができる。
図8に示すように、横管3をバッフル板15bを介して連結することにより、横管3のコストや本数や総重量を削減しつつ、炉心溶融物20の落下の防止を図ることができる。また、図9に示すように、縦管4をバッフル板16bを介して連結することにより、縦管4のコストや本数や総重量を削減しつつ、炉心溶融物20の接触や輻射を阻止することができる。このような形態によると、熱抵抗が低くなり、冷却性能が向上するため、伝熱管同士の間隔を広く採ることもできる。
図10及び図11に示すように、伝熱管群(3,4)を構成する横管3及び縦管4は、間隔を空けて並列した伝熱管の列が互い違いに積層されている形態としてもよい。並列した横管3の列は、平面視でペデスタル62の内側の空間を覆うように、互い違いにずれた位置に積層される。また、並列した縦管4の列は、ペデスタル62の中心からの投影がペデスタル62の内壁面を覆うように、互い違いにずれた位置に積層される。
図10に示すように、横管3を互い違いに積層することにより、炉心溶融物20との接触面積を広くして冷却性能を高く保ちつつ、炉心溶融物20の落下の防止を図ることができる。図12にも示すように、ペデスタル62の内側の空間を横管3で広く覆うことができる。また、図11に示すように、縦管4を互い違いに積層することにより、冷却性能を高く保ちつつ、炉心溶融物20の接触や輻射を阻止することができる。なお、図において、横管3及び縦管4は、2段に積層されているが、2以上の任意の段数で積層させてよい。
図13は、循環配管の形態の他例を示すペデスタル周辺の縦断面図である。
図13に示すように、循環配管(7,8)のうち、横管3側に接続される往配管7は、冷却水槽6と横管3との間を、横管3が敷設された高さよりも低い高さを経由して接続する形態とすることもできる。
図13において、往配管7は、横管3が敷設された高さよりも低い高さに、密度が低い冷却水の通流を妨げるトラップ部7aを有している。往配管7は、プラットフォーム5上に配列した横管3よりも低い高さまで冷却水槽6から下方に延びている。そして、横管3が敷設された高さよりも低い位置に設けられたトラップ部7を経由し、プラットフォーム5の高さに戻ってから、下部ヘッダ13に接続している。
冷却材喪失事故等の過酷事故時、原子炉圧力容器1から炉心溶融物20が落下すると、炉心溶融物20によって横管3の内部の冷却水が加熱され、局所的な密度の低下や蒸気が生じる。横管3の内部の冷却水は、横管3と冷却水槽6の側との温度差により、往配管7の側と縦管4や還配管8の側との両方に流れようとし、冷却水が一方向に流れる自然循環は発生し難い。
しかし、往配管7にトラップ部7aが設けられていると、加熱されて浮力を生じた横管3の内部の冷却水は、トラップ部7aを通過し難くなり、冷却水槽6の側の低温の冷却水が往配管7を下降し易くなる。その結果、往配管7から、下部ヘッダ13、横管3、縦管4、上部ヘッダ14を順に経た後、還配管8を上昇する自然循環の流れが、容易に形成されるようになる。冷却水が一方向に継続的に循環するようになるため、炉心溶融物20の除熱の効率を向上させることができる。
図14は、伝熱管群の敷設状態の第1変形例を示すペデスタル周辺の縦断面図である。図14は、図3のII−II線の方向から視た状態を示している。
図14に示すように、伝熱管群(3,4)のうち、横管3は、縦管4の側に向かうにつれて、高さが高くなる方向に傾斜している状態に敷設することもできる。
図14において、横管3は、一端が接続している下部ヘッダ13の側から、ペデスタル62の内壁面付近に敷設される縦管4の側に向かうに連れて、上方に傾斜している。下部ヘッダ13から水平方向の両側に向けて敷設された横管3は、側面視でV字状に配列している。縦管4は、プラットフォーム5よりも高い位置で横管3の他端に接続しており、横管3よりも上方のペデスタル62の内壁面を覆っている。また、分岐ヘッダ13a,13b(図3参照)は、横管3と同様に上方に傾斜した状態に設けられる。
図14に示すように、横管3が傾斜していると、加熱されて浮力を生じた横管3の内部の冷却水は、高い位置で接続している縦管4の側に流れ易くなる。その結果、横管3から、縦管4、上部ヘッダ14を順に経た後、還配管8を上昇し、往配管7を下降する自然循環の流れが、容易に形成されるようになる。冷却水が一方向に継続的に循環するようになるため、炉心溶融物20の除熱の効率を向上させることができる。
図15は、伝熱管群の敷設状態の第2変形例を示すペデスタル周辺の縦断面図である。図15は、図14のIII−III線の方向から視た状態を示している。
図15に示すように、伝熱管群(3,4)のうち、横管3は、縦管4の側に向かうにつれて、高さが高くなる方向に傾斜している下部ヘッダ13aに接続して敷設することもできる。
図15において、下部ヘッダ13aは、平面視でペデスタル62の内側の空間を横断し、側面視でペデスタル62の中心を頂点とするV字状の管路を形成している。往配管7は、下部ヘッダ13aの頂点部に連通しており、冷却水が、両側に分岐している傾斜部に分流されるようになっている。横管3は、ペデスタル62の内壁面付近に敷設される縦管4の側に向かうに連れて、上方に配列するように、下部ヘッダ13aの傾斜部に接続されている。
図15に示すように、下部ヘッダ13aが傾斜していると、加熱されて浮力を生じた横管3の内部の冷却水は、下部ヘッダ13aを通過し難くなり、冷却水槽6の側の低温の冷却水が下部ヘッダ13aを通過し易くなる。その結果、横管3から、縦管4、上部ヘッダ14を順に経た後、還配管8を上昇し、往配管7を下降する自然循環の流れが、容易に形成されるようになる。冷却水が一方向に継続的に循環するようになるため、炉心溶融物20の除熱の効率を向上させることができる。
図16は、原子炉格納容器を備えた原子力プラントの構成の第1変形例を示す縦断面図である。
図16に示すように、循環配管(7,8)を構成する往配管7及び還配管8は、冷却水からの放熱を促進する放熱フィン(21,22)を備える形態とすることができる。また、循環配管(7,8)を構成する往配管7及び還配管8は、冷却水槽6と伝熱管群(3,4)との間を隔離する常閉型の隔離弁(53,54)を備える形態とすることができる。
図16において、冷却水槽6は、原子炉建屋42の外部の解放空間に設置されており、原子炉格納容器41よりも上方に設けられている。冷却水槽6には、放熱フィン21が取り付けられた往配管7と、放熱フィン22が取り付けられた還配管8が、原子炉建屋42の外部に引き出されて接続している。放熱フィン(21,22)は、原子炉建屋42の外部の解放空間において、往配管7及び還配管8の外周面に取り付けられている。
図16に示すように、循環配管(7,8)に放熱フィン(21,22)を取り付けると、循環配管(7,8)を流れる冷却水を空冷により冷却することができる。そのため、伝熱管群(3,4)に、より低温の冷却水が供給されるようになり、炉心溶融物20の除熱の効率が向上する効果が得られる。また、伝熱管群(3,4)と冷却水槽6との間で、冷却水の密度差が大きくなるため、冷却水の自然循環を容易に発生させることができる。また、冷却水槽6の側において、冷却水の温度が低温化するため、蒸気が凝縮し易くなると共に、蒸発して失われる冷却水量が減少し、冷却水の補給量を削減できる。循環配管(7,8)は、原子炉建屋42の外部に引き出されているため、放熱効率が良好になると共に、放水による強制冷却も可能である。なお、冷却材喪失事故等の過酷事故時、往配管7を流れる冷却水の温度は、還配管8を流れる冷却水の温度よりも低くなるため、冷却水の密度差が保たれて自然循環が維持される。
図16において、往配管7は、隔離弁53を介して、原子炉格納容器41の内部に接続されている。同様に、還配管8は、隔離弁54を介して、原子炉格納容器41の内部に接続されている。隔離弁(53,54)は、フェイルオープン形式の制御弁とされる。すなわち、通常時には、閉弁状態であり、計装や電源の喪失時には、正動作により開弁状態となる。隔離弁(53,54)が開弁状態となることにより、冷却水の通流が可能になる。
図16に示すように、循環配管(7,8)に隔離弁(53,54)が備えられていると、冷却材喪失事故等の過酷事故時、計装や電源が喪失したとしても、自動的に冷却水の循環を確立して、伝熱管群(3,4)の除熱を行うことができる。
図17は、原子炉格納容器を備えた原子力プラントの構成の第2変形例を示す縦断面図である。
図17に示すように、原子炉格納容器41は、横管3が、格納容器床2上に配列している形態とすることもできる。
図17において、往配管7は、冷却水槽6から格納容器床2の高さまで下方に延びている。そして、往配管7は、格納容器床2の高さでペデスタル62を貫通し、格納容器床2上に設置された下部ヘッダ13に接続している。横管3を構成する伝熱管は、それぞれの一端が格納容器床2上に設置された下部ヘッダ13に接続されている。横管3は、下部ヘッダ13から水平方向の両側に向けて敷設され、ペデスタル62の内側の格納容器床2が広く覆われるように所定の間隔で配列する。一方、縦管4は、横管3と上部ヘッダ14とを鉛直方向に連結し、ペデスタル62の内壁面が覆われるように鉛直方向を向いて所定の間隔で配列する。この形態において、プラットフォーム5は、設置されなくてもよいし、縦管4が貫通可能な構造に設けられてもよい。
図17に示すように、横管3が格納容器床2上に配列した形態であると、炉心溶融物の重量や落下荷重に耐える強度が容易に得られる。また、炉心溶融物等の重量や落下荷重で横管3が破断する可能性が低くなるため、循環配管(7,8)を通じた放射性物質の漏洩の危険性を低くすることができる。
図18は、原子炉格納容器を備えた原子力プラントの構成の第3変形例を示す縦断面図である。
図18に示すように、原子炉格納容器41は、冷却水中の放射性物質を検知する放射線センサ24を備え、循環配管(7,8)を通じた放射性物質の漏洩が監視される形態とすることもできる。
放射線センサ24としては、例えば、ガンマ線、アルファ線、ベータ線等の放射線を計測するセンサや、中性子線を計測するセンサを用いることができる。放射線センサ24は、図18において、冷却水槽6に設置されているが、格納容器バウンダリの外側の循環配管(7,8)、通気管10等の一ヶ所以上に設置してもよい。
隔離弁(53,54)は、冷却材喪失事故等の過酷事故時、例えば、計装や電源が喪失した場合に、開弁状態とされる。そして、伝熱管群(3,4)の内部の冷却水が、炉心溶融物によって加熱されて冷却水の自然循環が発生し、横管3上に堆積した燃料デブリや、ペデスタル62等が除熱される。しかし、炉心溶融物等の重量や落下荷重、燃料デブリの崩壊熱等によって、伝熱管群(3,4)等が破損し、放射性物質が冷却水に混入する可能性がある。
図18に示すように、放射線センサ24を備え、開弁状態とされている隔離弁(53,54)が、冷却水中に放射性物質の漏洩が検知されたとき、閉弁状態に制御されるように原子炉を運転すると、循環配管(7,8)を通じた放射性物質の漏洩を、より確実に防止することができる。例えば、放射線センサ24による線量値が、予め設定した閾値を超えた場合に、放射性物質の漏洩が検知されたと見做し、隔離弁(53,54)を作動させることができる。
図19は、構造材を挟んで冷却水と燃料デブリとの間に形成される温度プロファイルを説明する図である。
図19において、縦軸は、温度[K]を表す。Tdは、燃料デブリの温度[K]、Twは、冷却水の主流の温度[K]である。Lは、構造材の厚さ[m]であり、例えば、伝熱管群(3,4)を構成する横管3や縦管4の管厚に相当する。Toは、外表面の温度[K]、Tiは、内表面の温度[K]である。Tmは、構造材の融点[K]であり、例えば、伝熱管群(3,4)を構成する横管3や縦管4の材料の融点に相当する。
Qnは、燃料デブリからの熱流束[W/m]を表す。燃料デブリが液体の場合は、自然対流による熱伝達の熱流束、燃料デブリが固体の場合は、熱伝導の熱流束となる。Qcは、構造材中の熱伝導の熱流束[W/m]、Qbは、沸騰熱伝達の熱流束[W/m]を表す。
構造材に燃料デブリが接触すると、燃料デブリが液体の場合は、熱伝達で熱が伝わり、燃料デブリが固体の場合は、熱伝導で熱が伝わる。そして、構造材の内部を熱伝導で熱が伝わり、冷却水の主流に沸騰熱伝達で熱が伝わる。冷却水は、比熱や蒸発潜熱が大きいため、構造材の内表面では、通常、沸騰熱伝達が支配的である。その結果、冷却水の温度Twに対して、構造材の内表面の温度Tiが過熱度ΔT[K]だけ上昇する。過熱度ΔTは、次の数式(I)の関係を満たす。
Ti=Tw+ΔT ・・・(I)
構造材の内表面で沸騰熱伝達が支配的な範囲では、熱伝達量が均衡した準定常状態で、Qn、Qc及びQbが等しくなる。構造材の厚さLは、構造材の熱伝導率をR[W/(m・K)]としたとき、次の数式(II)の関係を満たす。
L=R×(Tm−Ti)/Qc ・・・(II)
また、構造材の内表面の温度Tiは、構造材と冷却水との間の熱伝達係数をA[W/(m・K)]としたとき、次の数式(III)の関係を満たす。
Qb=A×(Ti−Tw) ・・・(III)
数式(III)は、熱流束Qbが限界熱流束に達しない範囲、すなわち膜沸騰に移行せず核沸騰が保たれる範囲であれば成立する。伝熱管群(3,4)に流される冷却水に関しては、限界熱流束の相関式を、冷却水槽6と伝熱管群(3,4)に流される冷却水の流量の評価に基づき、伝熱管群(3,4)の管径や傾斜角に応じて求めるものとする。限界熱流束を数式(III)のQbに代入することにより、構造材の内表面の温度Tiの最大値が求められる。伝熱管群(3,4)が健全に保たれる最少の厚さLは、数式(II)において熱流束が限界熱流束に達する時の値である。
数式(II)において、Qcが一定の下で、構造材の厚さLを厚くすると、構造材の外表面の温度Toが上昇し、構造材の融点Tmを超えるため、構造材が減肉する。これに対し、数式(II)や数式(III)が示すように、熱伝導率Rが高いほど、また、熱流束Qbが小さいほど、外表面の温度Toが下がり、構造材の減肉は少なくなる。
したがって、構造材の厚さL、すなわち、伝熱管群(3,4)を構成する横管3や縦管4の管厚は、核沸騰が保たれる範囲で、外表面の温度Toが融点Tmを超える厚さにすることが望ましい。このような厚さを確保すれば、燃料デブリの荷重を構造材で受け止め、且つ最大の除熱量が得られ、燃料デブリの接触による溶融で伝熱管群(3,4)の管体が破損する事象を回避できる。但し、伝熱管群(3,4)の総重量を軽くして、通常運転時等の荷重負荷を軽減する観点からは、厚さLが薄い方が好ましい。そのため、数式(II)や数式(III)から計算される値を大きく超えないように最適化することが好ましい。
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明したが、本発明は、前記の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、或る実施形態や変形例の構成の一部を他の実施形態や変形例の構成に置き換えたり、或る実施形態や変形例の構成の一部を他の実施形態や変形例に追加したり、或る実施形態や変形例の構成の一部を省略したりすることも可能である。
例えば、伝熱管群の形態の第1変形例から第4変形例は、横管3及び縦管4のうち、一方に適用してもよいし、両方に適用してもよい。或いは、バッフル板と、伝熱管の列の積層構造とを組み合わせる等、第1変形例から第4変形例の形態を相互に組み合わせてもよい。また、隔離弁(53,54)及び放熱フィン(21,22)、のうち、一方を適用してもよいし、両方を適用してもよい。また、横管3を設置する高さを適宜の形態として、他の構成と組み合わせることができる。
また、冷却水槽6や、循環配管(7,8)は、適宜の位置に設置することができる。冷却水槽6を原子炉格納容器内に設置して、給水管9や通気管10を格納容器バウンダリの外側に引き出す構造にすることもできる。伝熱管群(3,4)は、ペデスタル62や、プラットフォーム5や、格納容器床2との間に、構造の支持や遮蔽のための構造材が介装されてもよい。
1 原子炉圧力容器
2 格納容器床
3 横管(伝熱管群)
4 縦管(伝熱管群)
5 プラットフォーム(床状の構造材)
6 冷却水槽
7 往配管(循環配管)
7a トラップ部
8 還配管(循環配管)
9 給水管
10 通気管
11 逆止弁
13 下部ヘッダ
13a,13b 分岐ヘッダ
14 上部ヘッダ
15a,15b バッフル板(板材)
16a,16b バッフル板(板材)
17 支持具
20 炉心溶融物
21 放熱フィン
22 放熱フィン
24 放射線センサ
41 原子炉格納容器
42 原子炉建屋
43 格納容器上蓋
44 ドライウェル
45 ウェットウェル
47 シールドプラグ
48 アクセス
49 支持部
50 炉心
51 主蒸気管
52 主蒸気隔離弁
53 隔離弁
54 隔離弁
59 制御棒駆動機構
62 ペデスタル
65 ドライヤ・セパレータプール
66 使用済燃料プール
67 運転床

Claims (8)

  1. 原子炉の炉心を内包する原子炉圧力容器と、
    前記原子炉圧力容器を支持する筒状のペデスタルと、
    前記ペデスタルの内側において、前記原子炉圧力容器と床面との間の空間に敷設され、冷却水が流される伝熱管群と、を備える原子炉格納容器であって
    前記原子炉格納容器よりも上方に設けられた冷却水槽と、
    前記冷却水槽と前記伝熱管群との間で前記冷却水を循環させる循環配管と、を付随してさらに備え、
    前記伝熱管群は、
    平面視で前記ペデスタルの内側の空間を覆うように配列した複数の横管と、
    前記ペデスタルの内壁面を覆うように鉛直方向を向いて配列した複数の縦管と、を有し、
    前記冷却水槽は、前記循環配管である往配管を介して前記横管の一端と連通しており、
    前記横管の他端は、前記縦管の一端と連通しており、
    前記縦管の他端は、前記循環配管である還配管を介して前記冷却水槽と連通しており、
    前記縦管は、前記原子炉圧力容器の下端よりも上方まで前記内壁面を覆っている原子炉格納容器。
  2. 請求項1に記載の原子炉格納容器において、
    前記原子炉圧力容器と前記床面との間の空間に床状の構造材を備え、
    前記横管は、前記構造材上に配列しており、
    前記縦管は、前記横管よりも上方に配列している原子炉格納容器。
  3. 請求項1に記載の原子炉格納容器において、
    前記横管は、前記床面上に配列しており、
    前記縦管は、前記横管よりも上方に配列している原子炉格納容器。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の原子炉格納容器において、
    前記横管は、前記縦管に連通しており、前記縦管の側に向かうにつれて、高さが高くなる方向に傾斜している原子炉格納容器。
  5. 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の原子炉格納容器において
    記循環配管は、前記冷却水槽と前記複数の横管で構成される横管群との間を前記横管群が敷設された高さよりも低い高さを経由して接続する原子炉格納容器。
  6. 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の原子炉格納容器において
    記循環配管は、前記冷却水からの放熱を促進する放熱フィンを備える原子炉格納容器。
  7. 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の原子炉格納容器において
    記循環配管は、前記冷却水槽と前記伝熱管群との間を隔離する常閉型の隔離弁を備える原子炉格納容器。
  8. 請求項7に記載の原子炉格納容器において、
    前記冷却水中の放射性物質を検知する放射線センサを備え、
    開弁状態とされている前記隔離弁が、前記冷却水中に放射性物質の漏洩が検知されたとき、閉弁状態に制御される原子炉格納容器。
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