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JP6916749B2 - 三次元構造物の造形方法、三次元構造物の造形装置 - Google Patents

三次元構造物の造形方法、三次元構造物の造形装置 Download PDF

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Description

本発明は、三次元構造物の造形方法、及び三次元構造物の造形装置に関し、特に、粉体を焼結させて三次元構造物を形成する技術に関する。
三次元画像データを基に三次元構造物の造形情報を生成し、その造形情報に基づいて樹脂や金属粉体等の材料を吐出し、凝固・焼結させて三次元構造物を形成する造形装置が知られている。
例えば、特許文献1には、支持テーブルの上に金属粉体を平坦に載置して金属粉体層を形成し、レーザ光を金属粉体層に照射して溶融させることによって焼結層を形成し、その後、支持テーブルの高さを調整して、金属粉体層及び焼結層を繰り返して形成することで三次元構造物を形成する技術が開示されている。
また、特許文献2には、ノズルから吐出された金属粉体をレーザで瞬間的に溶融させ、支持体に接触させた後、急速凝固が生じることで造形する技術が開示されている。
特許文献1の技術を用いて三次元構造物を形成する場合、造形処理に際して、所望する三次元構造物の形状を維持するために、支持体と三次元構造物との間に、三次元構造物の形状をサポートするためのサポート部材が形成されることがある。このサポート部材は、特許文献1における焼結層の形成後、または特許文献2の金属粉体の溶融及び凝固後に、三次元構造物から取り除く必要があるという課題がある。更に、三次元構造物の表面からサポート部材が取り除かれた箇所は凹凸が生じるので、表面の平滑化処理を行う必要があるという課題がある。
特許文献2の技術を用いて三次元構造物を形成する場合、三次元画像データの造形情報を基に、金属粉体を吐出して支持体上の所望の位置に着弾させるが、金属粉体の流動性に起因して、レーザを照射して焼結するまでの間に金属粉体の粒子が着弾位置からずれるという問題点がある。更に、レーザ照射にて焼結を行うため、高出力(例えば1KW以上の出力)のレーザを用いなければならないという課題がある。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、三次元構造物の造形処理に際し、三次元構造物の形状をサポートするためのサポート部材を用いることなく、低出力のレーザを用いて、高速かつ直接的に三次元構造物を精度よく造形する三次元構造物の造形方法、及び三次元構造物の造形装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、三次元構造物を造形する三次元構造物の造形方法において、少なくとも粉体および樹脂バインダーを含む第一の造形材の層と、少なくとも前記粉体と組成は異なる粉体を含む第二の造形材の層を同一層として形成する工程と、前記樹脂バインダーのガラス転移点以上の温度で前記第一の造形材の層及び前記第二の造形材の層を加熱するか、または前記樹脂バインダーに光照射することで、前記第一の造形材の層及び前記第二の造形材の層のそれぞれに含まれる粉体を前記樹脂バインダーにより固定させる固定粉体層形成工程と、前記固定粉体層形成工程で形成された固定粉体層の所定領域を焼結する焼結工程と、を少なくとも含むことを特徴とする。
また、本発明は、三次元構造物を造形する三次元構造物の造形装置において、少なくとも粉体および樹脂バインダーを含む第一の造形材の層と、少なくとも前記粉体と組成は異なる粉体を含む第二の造形材の層を同一層として形成する手段と、前記樹脂バインダーのガラス転移点以上の温度で前記第一の造形材の層及び前記第二の造形材の層を加熱するか、または前記樹脂バインダーに光照射する手段と、前記層を加熱するか、または光を照射する手段により形成された固定粉体層の所定領域を焼結する手段と、を少なくとも有し、前記層を加熱もしくは光照射した後に、前記第一の造形材の層及び前記第二の造形材の層のそれぞれに含まれる粉体が前記樹脂バインダーにより固定され、前記樹脂バインダーにより固定された固定粉体層の所定領域が焼結される、ことを特徴とする。
本発明によれば、三次元構造物の造形処理に際し、三次元構造物の形状をサポートするためのサポート部材を用いることなく、低出力のレーザを用いて、高速かつ直接的に三次元構造物を精度よく造形する三次元構造物の造形方法、及び三次元構造物の造形装置を提供することができる。
本実施形態に係る三次元構造物の造形装置を示す斜視図 本実施形態に係る造形装置が備える制御装置のハードウェア構成を示すブロック図 本実施形態に係る造形装置の機能構成を示すブロック図 第一実施形態に係る造形処理の流れを示すフローチャート 第一実施形態に係る造形処理を示す説明図 第二実施形態に係る造形処理を示す説明図 第三実施形態に係る造形処理を示す説明図
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。本実施形態は、三次元構造物を造形する三次元構造物の造形装置(以下「造形装置」と略記する)において、支持体上に三次元構造物の組成物により構成された粉体を載置し、固定材により支持体に固定してから焼結させることが要旨である。まず、図1に基づいて、本実施形態に係る造形装置の構造について説明する。図1は、本実施形態に係る三次元構造物の造形装置を示す斜視図である。なお、以下において、三次元実空間をX軸、Y軸、Z軸の3軸からなる直交座標を用いて説明する。また、三次元構造物を造形する処理を3次元プリント処理(以下、3次元プリントを「3Dプリント」と略記する)と呼び、3Dプリント処理を実行するための機構を「3Dプリントエンジン」と称する。
図1に示すように、本実施形態に係る造形装置1は、架台10、Y軸駆動装置11、ステージ12、基板13、X軸駆動装置14、支持枠体15、第1のZ軸駆動装置16、第2のZ軸駆動装置17、三次元構造物を造形するための材料である造形材を吐出する吐出ヘッド20、及び造形材にレーザ光を照射して焼結処理を行うためのレーザ装置30を備える。すなわち、吐出ヘッド20が吐出部に相当し、レーザ装置30が焼結部に相当する。
架台10は、床面上に載置する板状部材を用いて構成される。そして、造形装置1の各構成要素は、架台10の上面に設置される。架台10の上面には、Y軸方向に沿ってステージ12を移動させるY軸駆動装置11が備えられる。ステージ12は、基板13を搭載する部材であり、真空又は静電気等を利用した図示しない吸着装置を備える。そして、この吸着装置により基板13を固定することができる。又、ステージ12は、Z軸を中心に回転するZ軸駆動装置(図示を省略)を搭載し、吐出ヘッド20及びレーザ装置30と、基板13との相対的な傾きを補正できるように構成してもよい。基板13は、その上面において吐出された三次元構造物を構成する造形材を積層させるための平板状部材である。また、ステージ12は、基板13に吐出された造形材に含まれる固定材を加熱して溶融するための加熱装置50を内蔵する。すなわち、加熱装置50は、固定粉体層形成部に相当する。
更に造形装置1は、架台10の上面に支持枠体15が立設される。支持枠体15は、吐出ヘッド20及びレーザ装置30をX軸方向に沿って移動させるX軸駆動装置14を支持する。X軸駆動装置14は、X軸と平行な軸方向を有するX軸レール14Rを含み、このX軸レール14Rに沿って、第1のZ軸駆動装置16、及び第2のZ軸駆動装置17を移動させる。これにより、第1のZ軸駆動装置16、及び第2のZ軸駆動装置17がX軸方向に沿って移動する。
第1のZ軸駆動装置16には、吐出ヘッド20を支持するヘッドベース22が取り付けられている。第1のZ軸駆動装置16は、Z軸と平行な軸方向を有するZ軸レール16Rを含み、このZ軸レール16Rに沿ってヘッドベース22を移動させる。これにより、吐出ヘッド20がZ軸方向に沿って移動する。Z軸レール16Rの上部には、造形材を貯留するタンク21が備えられる。タンク21と吐出ヘッド20とは、図示しない原料供給用パイプを介して連結される。そして、タンク21内の造形材が原料供給用パイプを介して吐出ヘッド20に供給され、吐出ヘッド20から基板13に向けて造形材が吐出される。造形材に金属粉体を含む場合は、金属粉体が重いことから、吐出ヘッドの吐出方式は、押出式又は噴射式を用いることが好ましい。なお、タンク21は、造形材を収容した造形材収納容器を装着し、この収容容器自体がタンク21として機能するように構成してもよいし、収容容器の内容物である造形材をタンク21に移し変えるように構成してもよい。
第2のZ軸駆動装置17には、レーザ装置30(光照射装置)を支持するレーザ支持部材31が取り付けられている。レーザ装置30は、連続照射レーザ装置でもパルス照射レーザ装置でもよい。第2のZ軸駆動装置17は、Z軸と平行な軸方向を有する支柱17Pを含み、支柱17Pに沿ってレーザ支持部材31を移動させる。これにより、レーザ装置30がZ軸方向に沿って移動する。
支持枠体15の内部には、造形装置1の各構成要素に対する制御処理を実行する制御装置40が内蔵される。X軸駆動装置14は、制御装置40からの制御信号に従って第1のZ軸駆動装置16及び第2のZ軸駆動装置17をX軸上の所定の位置に移動し、更に第1のZ軸駆動装置16がヘッドベース22を、第2のZ軸駆動装置17がレーザ支持部材31をZ軸上の所定の位置に移動することにより、吐出ヘッド20及びレーザ装置30と、基板13との距離を制御することができる。
なお、図1では、ステージ12がY方向の1軸の自由度を有し、吐出ヘッド20及びレーザ装置30がX方向の1軸の自由度及びZ方向の1軸の自由度を有する構成を示しているが、この形態には限定されない。例えば、ステージ12がX方向及びY方向の2軸の自由度を有し、吐出ヘッド20及びレーザ装置30がZ方向の1軸の自由度を有する構成であっても良い。又、ステージ12がY方向の1軸の自由度を有し、吐出ヘッド20及びレーザ装置30を複数備え、これらをX軸方向に一列に並べるとともに、Z方向の1軸の自由度を有して構成してもよい。
又、基板13を固定し、吐出ヘッド20及びレーザ装置30がX方向、Y方向、及びZ方向の3軸の自由度を有する構成であっても良い。又、X軸及びY軸は、X軸ベクトル及びY軸ベクトルにより1平面を表現できれば直交する必要はなく、例えば、X軸ベクトルとY軸ベクトルとが、30度、45度、60度の角度を有しても良い。
上記制御装置40は、吐出ヘッド20の造形材の吐出条件及びレーザ装置30のレーザ照射条件を制御する。又、制御装置40は図示しない記録部を有し、造形材の熱処理後の状態やレーザの最適な照射条件等を記録部に記録してもよい。以下、制御装置40の内部構成を、図2及び図3を参照して説明する。
図2は、本実施形態に係る造形装置が備える制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。図2に示すように、制御装置40は、一般的なサーバやPC(Personal Computer)等の情報処理装置と同様の構成を有する。即ち、本実施形態に係る造形装置1が備える制御装置40は、CPU(Central Processing Unit)41、RAM(Random Access Memory)42、ROM(Read Only Memory)43、HDD(Hard Disk Drive)44及びI/F(Interface)45がバス48を介して接続されている。また、I/F45にはLCD(Liquid Crystal Display)46及び操作部47が接続されている。
CPU41は演算手段であり、造形装置1全体の動作を制御する。RAM42は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU41が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM43は、読み出し専用の不揮発性記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。
HDD44は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーション・プログラム等が格納されている。I/F45は、バス48と各種のハードウェアやネットワーク等を接続し制御する。LCD46は、ユーザが造形装置1の状態を確認するための視覚的ユーザインタフェースである。操作部47は、キーボードやマウス等、ユーザが造形装置1に情報を入力するためのユーザインタフェースである。
このようなハードウェア構成において、ROM43やHDD44若しくは図示しない光学ディスク等の記録媒体に格納されたプログラムがRAM42に読み出され、CPU41の制御に従って動作することにより、ソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、ハードウェアとの組み合わせによって、本実施形態に係る造形装置1の機能を実現する機能ブロックが構成される。
次に、図3を参照して、本実施形態に係る造形装置1の機能構成について説明する。図3は、本実施形態に係る造形装置の機能構成を示すブロック図である。図3に示すように、本実施形態に係る造形装置1は、コントローラ100と、ディスプレイパネル110と、3Dプリントエンジン120と、通信I/F130と、及び3次元画像データ記憶部(以下、3次元画像データを「3D画像データ」と略記する)140と、を有する。上記3Dプリントエンジン120は、三次元構造物の造形処理時に駆動する装置を総称したものであり、Y軸駆動装置11、X軸駆動装置14、第1のZ軸駆動装置16、第2のZ軸駆動装置17、吐出ヘッド20、レーザ装置30、及び加熱装置50が含まれる。
コントローラ100は、主制御部101、エンジン制御部102、入出力制御部103、画像処理部104及び操作表示制御部105を有する。ディスプレイパネル110は、造形装置1の状態を視覚的に表示する出力インターフェースであると共に、タッチパネルとしてユーザが造形装置1を直接操作し若しくは造形装置1に対して情報を入力する際の入力インタフェース(操作部)でもある。通信I/F130は、造形装置1が有線通信又は無線通信により他の機器と通信するためのインターフェースであり、USBインターフェースが用いられる。
コントローラ100は、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせによって構成される。具体的には、ROM43やHDD44等の不揮発性記憶媒体に格納されたファームウェア等の制御プログラムが、RAM42にロードされ、それらのプログラムに従ってCPU41が演算を行うことにより構成されるソフトウェア制御部と集積回路などのハードウェアとによってコントローラ100が構成される。コントローラ100は、造形装置1全体を制御する制御部として機能する。
主制御部101は、コントローラ100に含まれる各部を制御する役割を担い、コントローラ100の各部に命令を与える。エンジン制御部102は、3Dプリントエンジン120を制御若しくは駆動する駆動手段としての役割を担う。入出力制御部103は、通信I/F130を介して入力される信号や命令を主制御部101に入力する。また、主制御部101は、入出力制御部103を制御し、通信I/F130及びネットワークを介して他の装置にアクセスする。
画像処理部104は、主制御部101の制御に従い、3Dプリントエンジン120に出力すべき造形情報を生成する。より具体的には、3D画像データ記憶部140に記憶された3D画像データを解析し、3次元画像上における直交3軸座標(x、y、z)を算出する。次いで、この画像データ上の直交3軸座標(x、y、z)を、三次元構造物を造形出力するために用いる3次元実空間座標(X、Y、Z)に変換する。これは、吐出ヘッド20、レーザ装置30、及び基板13は3次元実空間座標で定義された座標に従って相対移動するためのである。画像処理部104は、実空間座標(X、Y、Z)をエンジン制御部102に出力する。エンジン制御部102は3Dプリントエンジン120に対して3次元実空間座標(X、Y、Z)に一致するように基板13と、吐出ヘッド20及びレーザ装置30と、を相対移動させ、3Dプリント処理を実行する。
3D画像データ記憶部140は、三次元構造物を造形出力させるための3次元画像データを記憶する。3D画像データの例として、例えば、X線CT装置(X−ray Computed Tomography)、磁気共鳴イメージング装置、超音波診断装置などの医用画像撮像装置により被検体を撮像して得られた3次元医用画像データや、航空、自動車、電子、金型成形等の工業分野における部品や試作品の3次元CADデータ(CAD:Computer Aided Design)でもよい。
操作表示制御部105は、ディスプレイパネル110に情報表示を行い若しくはディスプレイパネル110を介して入力された情報を主制御部101に通知する。
<第一実施形態>
第一実施形態は、造形材として、金属粉体の表面に固定材を付着させた粉体を用いる実施形態である。本実施形態では、固定材として樹脂バインダーを用いる。まず、図4を参照して、第一実施形態に係る造形処理の全体の流れについて説明する。図4は、第一実施形態に係る造形処理の流れを示すフローチャートである。
図4に示すように、主制御部101が3D画像データ記憶部140に記憶された3D画像データを読み出し、画像処理部104が3D画像データを解析して造形情報を生成する(S401)。
生成された造形情報は、エンジン制御部102を介して3Dプリントエンジン120に出力される(S402)。造形情報は、3D画像データのうち、Z軸方向の座標が最も小さいX−Y平面から順に出力される。これは、本実施形態における造形方法では、三次元構造物の最下層から順に造形するためである。
3Dプリントエンジン120は、造形情報に基づいて、基板13上の所定箇所に造形材を吐出する(S403)。このステップS403が吐出工程に相当する。この吐出工程では、基板13上(X−Y平面)のうち、三次元構造物の組成物が造形される箇所にのみ、造形材が吐出される。
次に加熱装置50の熱により、造形材に含まれる樹脂バインダーを溶融し、金属粉体を支持体である基板13に固定する(S404)。このステップS404が固定粉体層形成工程に相当する。
次いで、レーザ装置30により、固定粉体層を焼結させ、焼結層を形成する(S405)。このステップS405が焼結工程に相当する。
Z軸方向の全位置におけるX−Y平面上での造形処理が終わっていなければ(S406/No)、3Dプリントエンジン120は、基板13と、吐出ヘッド20及びレーザ装置30との距離を次の焼結層の生成に適した距離になるように相対移動させる(S407)。そしてステップS402へ戻り、次のZ軸方向の位置におけるX−Y平面の造形情報を出力する。なお、ステップS402へ戻ってから実行される2巡目以降では、直前に行われた焼結工程で形成された焼結層の上に造形材が吐出され、この焼結層に接触する造形材に含まれる樹脂バインダーにより金属粉体が焼結層に固定される。よって、2巡目以降では、直前に形成された焼結層又は吐出された造形材が接触する焼結層が、金属粉体を固定する対象となる支持体に相当する。Z軸方向の全位置におけるX−Y平面上での造形処理が終わっていれば(S406/Yes)、処理を終了する。
次に図5を参照して、吐出工程、固定粉体層形成工程、及び焼結工程の詳細について説明する。図5は、第一実施形態に係る造形処理を示す説明図である。
(吐出工程)
図5に示すように、三次元構造物の最下層を形成する工程(1巡目)では、ステージ12(図1参照)上に固定載置された基板13を支持体として用いる。基板13及びステージ12と吐出ヘッド20とを相対移動させながら、基板13上の所望の位置に、吐出ヘッド20から造形材を吐出する。本実施形態では、造形材として、金属粉体501、例えばSUS粉体(SUS:ステンレス鋼)の表面に樹脂バインダー502を付着させた造形材503を用いる。上記「基板13上の所望の位置」とは、造形対象となる三次元構造物のうち、金属粉体を焼結させた焼結層が存在する位置をいう。よって、三次元構造物513が焼結層を積層させた構造体511と、焼結層を含まない空領域512とを含む場合には、空領域512に対応する基板13上の位置に造形材503を吐出しない。これにより、造形材を熱処理(焼結)させた後、空領域を形成するために焼結層を切削する必要がなくなり、造形材の無駄を省くことができる。
(固定粉体層形成工程)
固定粉体層形成工程では、加熱装置50により樹脂バインダーを過熱して溶融させた後、ガラス化させることにより、金属粉体501を基板13に固定して固定粉体層504を形成する。加熱装置50は、造形材503の表面温度が樹脂バインダー502のガラス転移点、例えば60℃以上になるように加熱処理を行う。加熱装置としては、例えばステージ12にホットプレートを一体的に形成、又はステージ12とは別体に形成し、ステージ12に載置された基板13を加熱するように構成してもよい。図5の固定粉体層形成工程では、造形材503を1層だけ図示しているが、造形材503を複数層配置した後、樹脂バインダー502を溶融して、ガラス化させてもよい。
(焼結工程)
基板13及びステージ12(図1参照)と、レーザ装置30とを相対移動させながら、固定粉体層504に対しレーザ光を照射し、焼結層505を形成する。レーザ装置30は、例えばCOレーザ(炭酸ガスレーザー:Carbon dioxide laser)装置を用いてもよい。レーザ光の熱により、樹脂バインダー502を溶融及び除去すると共に金属粉体501を焼結させて金属粉体501の粒子間を繋げて焼結層を形成する。この焼結工程において、樹脂バインダー502がレーザ光を吸収するため、低出力レーザ、例えば50WのCOレーザ装置を用いても、金属粉体501を溶融して焼結層を形成することができる。
以後、吐出工程、固定粉体層形成工程及び焼結工程を繰り返し、直前に形成された焼結層に造形材503を吐出して固定粉体層を形成し、これにレーザ光を照射して焼結処理を行う。これにより、焼結層を積層させて、三次元構造物513を形成する。なお、2巡目以降の固定粉体層形成工程では、焼結層を形成したときの余熱を用いて樹脂バインダー502を溶融・ガラス化させて焼結層に固定させてもよい。
本実施形態によれば、粉体の造形材を吐出後、粉体を固定してからレーザを照射するので、レーザ照射までの間に粉体の流動性により基板上の所定の位置から粉体がずれることを防ぐことできる。そのため、三次元構造物の造形精度を向上させることができる。また、基板上に一律に造形材を吐出してから切削するのではなく、基板上における三次元構造物の構造体に対応する位置にのみ吐出すればよいので、造形材の無駄を省くことができ、表面の滑らかさを向上させることができる。
更に、樹脂バインダーがレーザ光を吸収するので、低出力のレーザを用いて造形することができる。また、レーザ光の焦点を金属粉体の吐出位置に合わせながら走査をするのではなく、固定粉体層を形成してから焼結するので、レーザ光の走査速度を比較的高速にすることができる。
<第二実施形態>
第二実施形態は、複数種類の造形材を使い分けて、複数種類の焼結層を含む複合三次元構造物を造形する実施形態である。以下、図6に基づいて第二実施形態について説明する。図6は、第二実施形態に係る造形処理を示す説明図である。
以下では、二種類の造形材を用いて造形処理を行う場合を例に挙げて説明するが、三種類以上の造形材を用いてもよい。図6に示すように、第二実施形態で用いる第1の造形材603は金属粉体601を用い、その表面に樹脂バインダー602が付着されている。この金属粉体601として、例えば、ニッケル粉体、SUS粉体、銅粉体、アルミニウム粉体等を用いることができる。
また、第二実施形態で用いる第2の造形材613は非金属粉体611を用い、その表面に樹脂バインダー612が付着されている。非金属粉体611としては窒化ケイ素(Si)などのセラミック、酸化アルミニウム(Al;アルミナとも呼ばれる)、酸化チタン(TiO)の粉体を用いることができる。さらに、非金属粉体として、半導体性がある炭化ケイ素(SiC)を用いてもよい。第1の造形材及び第2の造形材に用いる樹脂バインダーの種類は同一でも異なってもよい。本実施形態では、第2の造形材にセラミック粉体を用い、セラミック及び金属を含む複合三次元構造物623を形成する。
画像処理部104(図3参照)は、3次元画像データを解析し、第1の造形材603又は第2の造形材613を用いる領域を判定し、造形材の種類を示す情報及びその造形材の吐出位置を示す情報を含んだ造形情報に生成し、エンジン制御部102を介して3Dプリントエンジン120に出力する。
例えば、図6に示すように、中心部に非金属622を、その周辺に金属層621を配置した複合三次元構造物623を構成する場合、吐出工程において、基板13の中心部に第2の造形材613、その周辺に第1の造形材603を吐出、着弾させる。
本実施形態に係る造形装置は、ヘッドベース22に第1の造形材603及び第2の造形材613のそれぞれを貯留する二つのタンク21を搭載する。そして、図示しない原料供給用パイプにより、各タンク21と吐出ヘッド20とを連結するとともに、各タンク21の供給路を切り替えるための弁を設け、この弁の開閉動作により、二つのタンク21のどちらか一方から造形材が供給されるように構成してもよい。この場合、エンジン制御部102からの造形情報に基づいて弁の開閉動作を行い、第1の造形材603又は第2の造形材613を吐出ヘッド20から吐出し、基板13の所定の位置に着弾させる。または、吐出ヘッド20も二つ備え、吐出ヘッド20のそれぞれと、上記二つのタンク21のそれぞれとを、二つの原料供給用パイプのそれぞれにより連結して構成してもよい。
次いで、固定粉体層形成工程において、加熱装置50(図1参照)を用いて樹脂バインダー602、612を溶融し、ガラス化させて第1の固定粉体層604、及び第2の固定粉体層614を形成する。
次いで、焼結工程において、レーザ装置30、及び基板13を相対移動させて、第1の造形材603及び第2の造形材613を焼結し、第1の焼結層605、及び第2の焼結層615を形成する。このとき、造形材の種類によって、レーザ出力を変更してもよい。
例えば、第1の造形材603に含まれる金属粉体601と第2の造形材613に含まれる非金属粉体611の融点が異なる場合には、それぞれを焼結させるために必要なレーザ出力が異なる。よって、レーザ装置30の出力値を第1の造形材603及び第2の造形材613に合わせて増減したり、また出力レベルが異なるレーザ装置30を複数搭載して、第1の造形材603及び第2の造形材613に合った出力レベルを用いて焼結処理を実行するように構成してもよい。本実施形態では、波長980nmの半導体レーザを用い、セラミック領域と金属領域とでは、レーザ出力を調整して照射する。
また、金属粉体を用いる第1の造形材603を固定して形成された固定金属粉体層のみを焼結処理して金属粉体焼結層を形成し、非金属粉体を用いる第2の造形材613は、樹脂バインダーのガラス化により固定した固定非金属粉体層を形成する。そして、金属粉体焼結層及び固定非金属粉体層を含む複合三次元構造物を構成してもよい。すなわち、この複合三次元構造物の造形処理では、固定粉体層の一部領域(金属粉体領域)のみを焼結させ、非金属粉体領域は、樹脂バインダーのガラス化により固定し、金属焼結層及び固定非金属粉体層を積層して複合三次元構造物を構成する。
上記吐出工程、固定粉体層形成工程、及び焼結工程を繰り返すことで中心部はセラミック層(非金属層)622、その周辺部は金属層621により構成された複合三次元構造物623を造形することができる。
上記では、金属粉体を用いた第1の造形材、及び非金属粉体を用いた第2の造形材を用いて複合三次元構造物を造形する実施形態について説明したが、造形材の組み合わせはこれに限らない。例えば、主組成が異なる金属粉体を用いた複数種類の造形材を用いて複合三次元構造物を造形してもよい。例えば、第1の造形材として、鉄系の金属粉体、例えばSKD61(JIS規格合金工具鋼鋼材の一つ)を用い、第2の造形材として銅系の金属粉体を用いてもよい。また、主組成が異なる非金属粉体を用いた複数種類の造形材を用いて複合三次元構造物を造形してもよい。例えば、第1の造形材はセラミック粉体を用い、第2の造形材は、炭化ケイ素粉体を用いてもよい。
<第三実施形態>
第三実施形態は、架橋材を用いて支持体に造形材をより強固に固定してから焼結処理を行う実施形態である。以下、図7に基づいて第二実施形態について説明する。図7は、第三実施形態に係る造形処理を示す説明図である。
以下の説明では、金属粉体701の表面に樹脂バインダー702を付着させた造形材703、例えばSUS316粉体の周りに樹脂バインダーを付着させた造形材を例に挙げて説明するが、造形材は、非金属粉体を用いたものでもよい。
本実施形態は、第一実施形態と同様、吐出工程、固定粉体層形成工程、及び焼結工程を繰り返すことで、固定粉体層704及び焼結層705を形成し、三次元構造物713を造形する。これらの工程の内、特に固定粉体層形成工程に本実施形態の特徴がある。より具体的には、吐出工程後、造形材703は基板13の上面に接触して載置される。この状態で、造形材703を、架橋材の水溶液706に浸す。これによって造形材703に架橋材の水溶液706を付与する。架橋材の一例として、オキシ塩化ジルコニウム八水和物の水溶液を用いてもよい。そして、この造形材703を樹脂バインダー702のガラス転移温度以上、例えば80℃に加熱する。以後、第一実施形態と同様、焼結処理を実行する。その後、吐出処理、固定粉体層形成工程、及び焼結工程を繰り返すことで、三次元構造物713を造形する。
本実施形態によれば、造形材を架橋材の水溶液に浸して、樹脂バインダーのガラス転移温度以上に加熱することにより、水を蒸発させつつ、液体又はゴム状態になった樹脂バインダーを架橋することができ、粉体を支持体により強固に固定することができる。これにより、粉体が所望の位置からずれることを防ぎ、三次元構造物の形状精度を向上させることができる。
上記各実施形態は、本発明を実施するための一例にすぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での種々の変更態様がありうる。例えば、上記では、造形材として、金属粉体または非金属粉体の表面に樹脂バインダーを付着させたものを用いたが、金属粉体または非金属粉体を吐出ヘッドから吐出し、これに樹脂バインダーを別途吐出ヘッドから吐出してもよい。これにより、一般的な造形材、例えば金属粉体または非金属粉体のみからなる造形材を用いて三次元構造物を造形する場合にも、本発明を適用することができる。また、樹脂バインダーを付着させた粉体と、樹脂バインダーを付着させていない粉体と、を混合させて造形材を構成してもよい。一般に、樹脂バインダーを付着させた粉体は、樹脂バインダーを付着させていない粉体よりも高価になるので、樹脂バインダーを付着させた粉体のみを用いた造形材よりも、上記の混合物の方が製造原価を下げることができる。なお、この場合の混合比率は、固定材が粉体を支持体に固定できる程度の混合比率を用いる。更に、上記では固定材として樹脂バインダーを用い、熱反応のみ又は熱反応と化学反応(架橋)を用いて粉体の固定を行ったが、紫外線硬化樹脂からなる樹脂バインダーを用いて、光反応のみ又は光反応とその他の反応とを用いてもよい。
1 造形装置
10 架台
11 Y軸駆動装置
12 ステージ
13 基板
14 X軸駆動装置
14R X軸レール
15 支持枠体
16 第1のZ軸駆動装置
16R Z軸レール
17 第2のZ軸駆動装置
17P 支柱
20 吐出ヘッド
21 タンク
22 ヘッドベース
30 レーザ装置
31 レーザ支持部材
40 制御装置
41 CPU
42 RAM
43 ROM
44 HDD
45 I/F
46 LCD
47 操作部
48 バス
50 加熱装置
100 コントローラ
101 主制御部
102 エンジン制御部
103 入出力制御部
104 画像処理部
105 操作表示制御部
110 ディスプレイパネル
120 3Dプリントエンジン
130 通信I/F
140 3D画像データ記憶部
501 金属粉体
502 樹脂バインダー
503 造形材
504 固定粉体層
505 焼結層
511 構造体
512 空領域
513 三次元構造物
601 金属粉体
602 樹脂バインダー
603 第1の造形材
604 第1の固定粉体層
605 第1の焼結層
611 非金属粉体
612 樹脂バインダー
613 第2の造形材
614 第2の固定粉体層
615 第2の焼結層
621 金属層
622 非金属層
623 複合三次元構造物
701 金属粉体
702 樹脂バインダー
703 造形材
704 固定粉体層
705 焼結層
706 架橋材水溶液
713 三次元構造物
特開2000−73108号公報 特表2005−509523号公報

Claims (6)

  1. 三次元構造物を造形する三次元構造物の造形方法において、
    少なくとも粉体および樹脂バインダーを含む第一の造形材の層と、少なくとも前記粉体と組成は異なる粉体を含む第二の造形材の層を同一層として形成する工程と、
    前記樹脂バインダーのガラス転移点以上の温度で前記第一の造形材の層及び前記第二の造形材の層を加熱するか、または前記樹脂バインダーに光照射することで、前記第一の造形材の層及び前記第二の造形材の層のそれぞれに含まれる粉体を前記樹脂バインダーにより固定させる固定粉体層形成工程と、
    前記固定粉体層形成工程で形成された固定粉体層の所定領域を焼結する焼結工程と、
    を少なくとも含む三次元構造物の造形方法。
  2. 前記固定粉体層形成工程で形成された固定粉体層の所定領域を焼結する焼結工程は、レーザ装置から出力されるレーザ光によって当該粉体の粒子間を焼結する工程であり、
    前記レーザ装置からの出力は、前記第一の造形材の層と前記第二の造形材の層に対して異なることを特徴とする請求項1に記載の三次元構造物の造形方法。
  3. 前記第一の造形材の層と前記第二の造形材の層の形成工程の後、架橋材が付与されることを特徴とする請求項1の三次元構造物の造形方法。
  4. 前記樹脂バインダーは、紫外線硬化樹脂であることを特徴とする請求項1の造形方法。
  5. 前記第一の造形材に含まれる粉体は金属であり、前記第二の造形材に含まれる粉体はセラミックであることを特徴とする請求項1に記載の三次元構造物の造形方法。
  6. 三次元構造物を造形する三次元構造物の造形装置において、
    少なくとも粉体および樹脂バインダーを含む第一の造形材の層と、少なくとも前記粉体と組成は異なる粉体を含む第二の造形材の層を同一層として形成する手段と、
    前記樹脂バインダーのガラス転移点以上の温度で前記第一の造形材の層及び前記第二の造形材の層を加熱するか、または前記樹脂バインダーに光を照射する手段と、
    前記層を加熱するか、または光を照射する手段により形成された固定粉体層の所定領域を焼結する手段と、
    を少なくとも有し、
    前記層を加熱もしくは光照射した後に、前記第一の造形材の層及び前記第二の造形材の層のそれぞれに含まれる粉体が前記樹脂バインダーにより固定され、
    前記樹脂バインダーにより固定された固定粉体層の所定領域が焼結される、
    ことを特徴とする三次元構造物の造形装置。
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