JP6916066B2 - フェノール樹脂発泡体 - Google Patents
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Description
フェノール樹脂発泡体は通常、フェノール樹脂、発泡剤、酸触媒(硬化剤)等を含む発泡性フェノール樹脂組成物を発泡、硬化させることによって製造される。このようにして製造されたフェノール樹脂発泡体は独立気泡を有し、独立気泡中には発泡剤から発生したガスが含まれる。
特許文献1の実施例で用いられている1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、シクロペンタン等の炭素数5〜6の炭化水素との混合物、または1−クロロプロパン、2−クロロプロパンおよび1,1,1,3,3−ペンタフルオブタンから選ばれるハロゲン化炭化水素との混合物は共沸混合物様組成物である(特許文献2)。
しかし、本発明者等の知見によれば、特許文献1のフェノール樹脂発泡体は気泡壁が脆い。そのため、これを断熱材として用いた場合、断熱材施工時の断熱材同士又は他部材との擦れや衝突により欠けや割れ、凹み等の欠陥が生じやすい。かかる欠陥は、気密度が低下する等、断熱性の低下を引き起こす懸念がある。塩素化ハイドロフルオロオレフィン及び非塩素化ハイドロフルオロオレフィン以外の含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素を用いた場合にも同様の傾向がみられる。
[1] フェノール樹脂と、2種以上の発泡剤とを含むフェノール樹脂発泡体であって、前記発泡剤が含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素を含み、気泡壁中のフッ素量(X)が5000mg/kg以下であり、気泡中の発泡剤の総質量に対して、気泡中の含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素の含有量(Y)が20質量%以上であり、(X)/(Y)で表される、前記(Y)に対する前記(X)の比が50以下であり、密度が25kg/m3以上50kg/m3以下であり、独立気泡率が80%以上99%以下であり、熱伝導率が0.0195W/m・K以下である、フェノール樹脂発泡体。
[2] フェノール樹脂と、2種以上の発泡剤と、酸触媒とを混合して発泡性フェノール樹脂組成物を得、該発泡性フェノール樹脂組成物を発泡および硬化させてフェノール樹脂発泡体を製造する方法であって、
前記発泡剤が含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素を20質量%以上含み、
前記発泡剤を1種ずつ、前記フェノール樹脂と混合する、フェノール樹脂発泡体の製造方法。
本発明のフェノール樹脂発泡体中には、複数の気泡が形成されており、気泡壁には実質的に孔が存在せず、複数の気泡の少なくとも一部は相互に連通していない独立気泡になっている。気泡壁は、フェノール樹脂の硬化物から構成される。独立気泡内には発泡剤として用いられた化合物が、ガスの状態で保持されている。独立気泡内のガスの組成比は、発泡剤の組成比とおおむね同様の比率となる。
独立気泡内の発泡剤の組成は、例えば、以下の溶媒抽出法により確認できる。
予め発泡剤の標準ガスを用いて、ガスクロマトグラフ−質量分析計(GC/MS)での以下の測定条件における保持時間を求める。次に、フェノール樹脂発泡体(面材は含まない)のサンプル1.6gを粉砕用ガラス容器に分取し、テトラヒドロフラン(THF)80mLを添加する。サンプルが溶媒に浸る程度に押しつぶした後、ホモジナイザーで1分30秒間粉砕抽出し、この抽出液を孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過し、ろ液をGC/MSに供する。発泡剤の種類は、事前に求めた保持時間とマススペクトルから同定を行う。また、他の発泡剤の種類は、保持時間とマススペクトルによって同定を行う。発泡剤成分の検出感度を各々標準ガスによって測定し、上記GC/MSで得られた各ガス成分の検出エリア面積と検出感度より、組成(質量比)を算出する。
・GC/MS測定条件
使用カラム:DB−5ms(アジレントテクノロジー社)60m、内径0.25mm、膜厚1μm
カラム温度:40℃(10分)−10℃/分−200℃
注入口温度:200℃
インターフェイス温度:230℃
キャリアガス:He 1.0mL/分
スプリット比:20:1
測定方法:走査法 m/Z=11〜550
前記発泡性フェノール樹脂組成物は、発泡核剤をさらに含むことが好ましい。
前記発泡性フェノール樹脂組成物は、界面活性剤をさらに含むことが好ましい。
前記発泡性フェノール樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、フェノール樹脂、発泡剤、酸触媒、発泡核剤及び界面活性剤以外の他の成分をさらに含んでもよい。
フェノール樹脂は、レゾール型のものが好ましい。
レゾール型フェノール樹脂は、フェノール化合物とアルデヒドとをアルカリ触媒の存在下で反応させて得られるフェノール樹脂である。
フェノール化合物としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール、レゾルシノール及びこれらの変性物等が挙げられる。アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、アセトアルデヒド等が挙げられる。アルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、脂肪族アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン等)等が挙げられる。ただしフェノール化合物、アルデヒド、アルカリ触媒はそれぞれ上記のものに限定されない。
フェノール化合物とアルデヒドとの使用割合は特に限定されない。好ましくは、フェノール化合物:アルデヒドのモル比で、1:1〜1:3であり、より好ましくは1:1.3〜1:2.5である。
本発明のフェノール樹脂発泡体は、2種以上の発泡剤を含む。発泡剤の少なくとも1種は含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素である。
発泡剤は、2種以上の含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素であってもよく、含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素の1種以上と、含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素以外の他の発泡剤の1種以上を併用してもよい。
2種以上の発泡剤は、沸点が互いに同じであってもよく、異なってもよい。少なくとも2種は沸点が異なることが好ましい。
本明細書における沸点は、特に断りの無い場合は常圧における沸点(標準沸点)を意味する。
含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素は、分子内に炭素−炭素二重結合とハロゲン原子とを有し、ハロゲン原子として少なくともフッ素原子を有する。
含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素としては、発泡剤として公知のものを用いることができ、典型的には、沸点が−28〜80℃のものが挙げられる。
含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素の熱伝導率は、0.013W/m・K以下が好ましく、0.011W/m・K以下がより好ましい。
含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素の炭素数は、2〜6が好ましく、2〜5がより好ましい。
含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素は、水素原子の全てがハロゲン原子で置換された不飽和炭化水素でもよいし、水素原子の一部がハロゲン原子で置換された不飽和炭化水素でもよい。
含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素が1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンのE異性体((E)−HCFO−1233zd)を含むことが特に好ましい。
含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素を2種以上用いる場合、含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素が1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンのE異性体((E)−HCFO−1233zd)とZ異性体((Z)−HCFO−1233zd)を含むことが特に好ましい。
含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素以外の他の発泡剤としては、例えば、炭化水素;ハロゲン化飽和炭化水素;含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素以外のハロゲン化不飽和炭化水素;炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アゾジカルボン酸アミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸バリウム、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、トリヒドラジノトリアジン等の化学発泡剤;多孔質固体材料等が挙げられる。これらの発泡剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
炭化水素としては、炭素数が4以上6以下の環状分子構造又は炭素数4以上6以下の鎖状分子構造を有するものが好ましく、例えば、イソブタン、ノルマルブタン、シクロブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ネオペンタン等が挙げられる。
これらの炭化水素は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。これらの炭化水素は、低温域(例えば、−80℃程度の冷凍庫用断熱材)から高温域(例えば200℃程度の加熱体用断熱材)までの広い温度範囲で優れた断熱性を確保でき、比較的安価であり経済的にも有利である。
塩素化飽和炭化水素としては、炭素数が2以上5以下であるものが好ましく、例えばジクロロエタン、プロピルクロライド、イソプロピルクロライド、ブチルクロライド、イソブチルクロライド、ペンチルクロライド、イソペンチルクロライド等が挙げられる。
フッ素化飽和炭化水素としては、例えば、ジフルオロメタン(HFC32)、1,1,1,2,2−ペンタフルオロエタン(HFC125)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC143a)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC134a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC152a)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC227ea)、1,1,1,3,3−ペンタフルオプロパン(HFC245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオブタン(HFC365mfc)及び1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン(HFC4310mee)等のハイドロフルオロカーボンが挙げられる。
上記の中でも、オゾン層破壊係数が低く、環境適合性に優れる点で、イソプロピルクロライドが好ましい。
発泡剤中の含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素の含有量の上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。
発泡剤が、含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素以外の他の発泡剤を含む場合、発泡剤の総質量に対し、含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素の含有量は100質量未満であり、85質量%以下が好ましい。
含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素は非フッ素発泡剤(1)よりも熱伝導率が低い傾向がある。含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、フェノール樹脂発泡体の断熱性がより優れる。
一方、非フッ素発泡剤(1)は、含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素よりも分子量が小さい傾向がある。質量が同じであれば、分子量が小さい方が、発泡したときの体積が大きい。そのため、非フッ素発泡剤(1)の割合が多い方が、少量の発泡剤で充分に発泡させやすい。また、非フッ素発泡剤(1)は含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素よりも安価な傾向がある。含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、優れた断熱性を保ちつつコストを低くできる。
本態様において、含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素、非フッ素発泡剤(1)はそれぞれ1種でも2種以上でもよい。
また、それらの沸点の差は2℃以上30℃以下であることが好ましく、5℃以上20℃以下がより好ましい。沸点の差が上記上限値より大きいと、先にガス化して気泡核を形成した含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素が、より沸点の高い非フッ素発泡剤(1)がガス化するまでに気泡から抜けてしまい、発泡が不十分となるおそれがある。沸点の差が上記下限値より小さいと、十分に気泡核を形成しないまま非フッ素発泡剤(1)が発泡してしまい、気泡径が粗大になるおそれがある。
そのため、例えば、非フッ素発泡剤(1)として沸点36℃であるイソプロピルクロライドを選択した場合には、含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素としては、沸点が6℃以上34℃以下の沸点を有するものを選択するのが好ましく、常温付近での取り扱いのしやすい点で、14℃以上34℃以下の沸点を有するものを選択するのがより好ましい。
酸触媒は、フェノール樹脂の重合(硬化)を開始させるために使用される。
酸触媒としては、ベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェノールスルホン酸等の有機酸、硫酸、リン酸等の無機酸等が挙げられる。これらの酸触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
発泡性フェノール樹脂組成物中の酸触媒の含有量は、フェノール樹脂100質量部に対し、5〜30質量部が好ましく、8〜25質量部がより好ましく、10〜20質量部がさらに好ましい。
発泡核剤を用いることで、気泡壁中のフッ素の量を低減できる。また、フェノール樹脂発泡体中の気泡をより均一かつ微細にできる。
発泡核剤としては、例えば窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素、空気等の低沸点物質が挙げられる。
発泡性フェノール樹脂組成物中の発泡核剤の含有量は、発泡剤の総部数に対して、0.05〜5モル%が好ましく、0.05モル%以上3.0モル%以下がより好ましく、0.1モル%以上2.5モル%以下がさらに好ましく、0.1モル%以上1.5モル%以下が特に好ましく、0.3モル%以上1.0モル%以下が最も好ましい。発泡核剤の含有量が0.05モル%未満であると、気泡核剤としての効果が十分に発揮できなくなるおそれがあり、5.0モル%超であると、フェノール樹脂発泡体の発泡硬化過程において発泡圧が高くなりすぎてしまうことから発泡体の気泡が破れてしまい、独立気泡率や圧縮強度が低い粗悪な発泡体となってしまうおそれがある。
界面活性剤は、フェノール樹脂中に供給された発泡剤の分散性に寄与する。また、気泡径(セル径)の微細化に寄与する。
界面活性剤としては、特に限定されず、整泡剤等として公知のものを使用できる。例えば、ひまし油アルキレンオキシド付加物、シリコーン系界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
界面活性剤は、気泡径の小さい気泡を形成しやすい点で、ひまし油アルキレンオキシド付加物及びシリコーン系界面活性剤のいずれか一方又は両方を含むことが好ましく、熱伝導率をより低く、難燃性をより高くできる点で、シリコーン系界面活性剤を含むことがより好ましい。
ひまし油アルキレンオキシド付加物としては、ひまし油EO付加物、ひまし油PO付加物が好ましい。
ジメチルポリシロキサンとポリエーテルとの共重合体は、ジメチルポリシロキサンとポリエーテルとのブロック共重合体である。ブロック共重合体の構造は、特に限定されず、例えば、シロキサン鎖の両方の末端にポリエーテル鎖が結合したABA型、複数のシロキサン鎖と複数のポリエーテル鎖が交互に結合した(AB)n型、分岐状のシロキサン鎖の末端のそれぞれにポリエーテル鎖が結合した枝分かれ型、シロキサン鎖に側基(末端以外の部分に結合する基)としてポリエーテル鎖が結合したペンダント型等が挙げられる。
ジメチルポリシロキサンとポリエーテルとの共重合体としては、末端が−OR(式中、Rは、水素原子又はアルキル基である。)であるポリエーテル鎖を有するものが好ましく、熱伝導率をより低くできる点で、Rが水素原子であるものが特に好ましい。
他の成分としては、発泡性フェノール樹脂組成物の添加剤として公知のものを用いることができ、例えば、尿素、可塑剤、充填剤(充填材)、難燃剤(例えばリン系難燃剤等)、架橋剤、有機溶媒、アミノ基含有有機化合物、着色剤等が挙げられる。
可塑剤としては、例えば、グリコール系化合物が挙げられる。グリコール系化合物を用いることで、充填剤を発泡性フェノール樹脂組成物に均一に分散できる。グリコール化合物としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール、アルキレングリコールエーテル等が挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、例えばフタル酸とジエチレングリコールの反応生成物が挙げられる。アルキレングリコールエーテルとしては、例えばエチレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル等のアルキレングリコールアルキルエーテルが挙げられる。
無機フィラーとしては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アンチモン等の金属の水酸化物や酸化物、亜鉛等の金属粉末;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛等の金属の炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;炭酸水素カルシウム、炭酸水素マグネシウム等のアルカリ土類金属炭酸水素塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、マイカ、タルク、ベントナイト、ゼオライト、シリカゲル等が挙げられる。これらの無機フィラーは、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
本発明のフェノール樹脂発泡体の気泡壁中のフッ素の量(X)は、気泡壁1kg当たりのフッ素の質量(単位:mg/kg)で表され、5000mg/kg以下であり、4000mg/kg以下が好ましく、3000mg/kg以下がより好ましい。
発泡剤として用いられた含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素は、フェノール樹脂発泡体の製造時に気化し、ガスの状態で独立気泡中に保持される。しかし、含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素はフェノール樹脂との相溶性が高いため、含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素の一部が気泡壁中に取り込まれることがある。気泡壁に含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素が取りこまれると、気泡壁が脆くなる。
気泡壁中のフッ素の量(X)は、気泡壁中に取りこまれた含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素の量の指標である。このフッ素の量(X)が前記上限値以下であると、フェノール樹脂発泡体の脆性が充分に低く、断熱材施工時の擦れや衝突による角欠けや割れ、凹み等の欠陥が発生しにくい。
気泡壁中のフッ素の量(X)の下限に特に制限はなく0mg/kgであってよい。実用的には500mg/kg以上とされる。
なお、フェノール樹脂発泡体の中央部とは、フェノール樹脂発泡体の中央(平板状であれば厚さ方向、長さ方向及び幅方向それぞれの中央)を含み、かつフェノール樹脂発泡体の表面から5mm以内の領域を含まない部分である。
(1)フェノール樹脂発泡体の中央部からサンプルを、5g以上となる大きさで切り出し、このサンプルを、気泡壁中の発泡剤が気化しないように、テドラーバックで包んで密封し、23℃条件下で1時間養生する。
(2)前記(1)で得たサンプルを、前記と同様の23℃条件下でテドラーバックから取り出し、適当な大きさに切断してメノウ乳鉢ですりつぶして気泡壁を破壊し、気泡中の発泡剤を除去した後、その質量を測定する。このとき、サンプル質量は少なくとも200mg以上となるようにする。また、細かくすりつぶすと加熱により気泡壁中の含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素が気化する恐れがあるため、独立気泡が破壊される程度にすりつぶせばよい。
(3)前記(2)の粉砕後、大気圧下で1時間23℃条件下で養生し、前記(2)ですりつぶした(気泡内の発泡剤を除去した)後のサンプルを、石英管燃焼法で燃焼して燃焼ガスを溶媒吸収(溶媒:水酸化ナトリウム溶液(0.1mol/L))させる。
(4)燃焼ガスを吸収した溶媒を、イオンクロマトグラフにより分析し、フッ化物イオンを定量する。
(5)前記(2)で測定した、すりつぶした後のサンプルの質量と、前記(4)で定量したフッ化物イオンの質量から、下記式により気泡壁中のフッ素の量を算出する。
気泡壁中のフッ素の量=(定量したフッ化物イオンの質量(mg))/(すりつぶした後のサンプルの質量(kg))
例えば、発泡性フェノール樹脂組成物中の含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素の含有量を少なくすれば、気泡壁中のフッ素の量(X)は当然少なくなるが、フェノール樹脂発泡体の断熱性能は悪化(熱伝導率が上昇)する傾向がある。また、発泡性フェノール樹脂組成物に発泡核剤を含有させることで、含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素が充分に気化し、気泡壁に取りこまれにくくなり、気泡壁中のフッ素の量が少なくなる。
気泡壁中のフッ素の量は、通常、フェノール樹脂発泡体を製造してから1週間以後8週間以内に測定される。
(Y)は、発泡剤中の含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素の含有量と同様の理由で、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましく、50質量%以上が最も好ましい。100質量%でもよい。
本発明において、「(X)/(Y)」で表される、前記(Y)に対する前記(X)(単位:mg/kg)の比は50以下であり、40以下が好ましく、30以下がより好ましい。(X)/(Y)の下限に特に制限はなく0でもよい。実用的には5以上である。
(X)/(Y)が前記上限値以下であると、フェノール樹脂発泡体の脆性が充分に低く、断熱材施工時の擦れや衝突による角欠けや割れ、凹み等の欠陥が発生しにくい。
(Y)は、前記溶媒抽出法により独立気泡内の発泡剤の組成を測定し、発泡剤の総質量に対する含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素の含有を算出して求められる。
摩耗質量の下限に特に制限はなく0gであってよい。
フェノール樹脂発泡体の摩耗質量は下記測定方法により求められる。
摩耗質量は、例えば、気泡壁中のフッ素の量によって調整できる。気泡壁中のフッ素の量が少ないほど、摩耗質量が少なくなる傾向がある。
フェノール樹脂発泡体の厚さ方向の中央部から、幅、長さ方向直径約150mm、厚さ約10mmの試験片を切出す。試験前の試験片の質量を測定する。テーバー式アブレーションテスターを用いて、回転する試験片上に一対の摩耗輪を一定荷重で押し付けて、試験片を摩耗させる。試験片に付着した削れ粉を掃除機で取り除き、試験後の試験片の質量を測定する。試験前後の試験片の質量差を算出し、摩耗質量とする。試験に使用するヤスリはCS17、ヤスリの重さは250g、試験片の回転数は50回転、回転速度は60rpmとする。
密度は、JIS A 9511:2009に従い測定できる。
フェノール樹脂発泡体の密度は、発泡剤の種類及び組成、界面活性剤の種類、発泡条件(加熱温度、加熱時間等)等により調整できる。
独立気泡率は、JIS K 7138:2006に従い測定できる。
平均気泡径は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
フェノール樹脂発泡体の平均気泡径は、発泡剤の種類及び組成、フェノール樹脂を合成する際のフェノールとホルムアルデヒドとの比、酸触媒の量(硬化速度、架橋度、架橋後の伸長粘度)、界面活性剤の種類、発泡条件(加熱温度、加熱時間等)等により調整できる。
熱伝導率は、23℃における値であり、JIS A 1412−2に従い測定できる。
フェノール樹脂発泡体の熱伝導率は、発泡剤の種類及び組成、界面活性剤の種類、発泡条件(加熱温度、加熱時間等)等により調整できる。
フェノール樹脂発泡体の大きさも特に限定されず、用途等を勘案して適宜決定される。
面材としては、特に制限されず、ガラスペーパー、ガラス繊維織布、ガラス繊維不織布、ガラス繊維混抄紙、クラフト紙、合成繊維不織布、スパンボンド不織布、アルミニウム箔張不織布、金属板、金属箔、合板、珪酸カルシウム板、石膏ボード及び木質系セメント板の中から選ばれる少なくとも1種が好適である。合成繊維不織布の材質としては、例えばポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン等が挙げられる。
面材がフェノール樹脂発泡体の両面に設けられる場合、各面材は、同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。
フェノール樹脂発泡体を製造する際に面材を設ける方法としては、例えば、連続走行するコンベアベルト上に面材を配置し、該面材上に発泡性フェノール樹脂組成物を吐出し、その上に他の面材を積層した後、加熱炉を通過させて発泡成形する方法が挙げられる。これにより、平板状のフェノール樹脂発泡体の両面に面材が積層した面材付きフェノール樹脂発泡体が得られる。こうして得られた面材付きフェノール樹脂発泡体においては、通常、フェノール樹脂発泡体と面材とが接着剤を介すことなく直接接している。
発泡成形の後に面材を設ける方法としては、例えば、接着剤を用いて面材をフェノール樹脂発泡体に貼り合わせる方法が挙げられる。
本発明のフェノール樹脂発泡体は、フェノール樹脂と、2種以上の発泡剤と、酸触媒とを含有する発泡性フェノール樹脂組成物を発泡および硬化させて得られる。
発泡性フェノール樹脂組成物を調製する工程は、フェノール樹脂に、必要に応じて界面活性剤や他の成分を加えて全体を混合し、この混合物に、発泡剤を混合した後に、酸触媒を混合する。
本例の製造システムは、吐出装置1と、吐出装置1の下流に設けられた発泡成形装置2と、発泡成形装置2の下流に設けられた切断装置3を備える。図中符号4は面材付きフェノール樹脂発泡体を示す。
加熱手段としては、例えば、フレーム部20を囲む加熱炉や、下部コンベア21又は上部コンベア23の無端ベルトを接して設けられたヒータ等が挙げられる。
かかる発泡成形装置2としては、例えば、特開2000−218635号公報に記載のものが挙げられる。
吐出部15は複数のノズル(不図示)を備え、発泡性フェノール樹脂組成物を各ノズルに分配して吐出する。複数のノズルは、典型的には、第1の面材22の移動方向(MD方向)と直交する方向(TD方向)に沿って等間隔で配置される。
図2に示すように、混合部14は、連続式の混合機40を備え、混合機40内に原料を混合する手段として、上流側から順に、フェノール樹脂供給部10、第1の発泡剤供給部11、第2の発泡剤供給部12、および酸触媒供給部13が設けられている。図中符号34は排出口を示す。排出口34から排出された発泡性フェノール樹脂組成物は分配管(不図示)を介して吐出部15に設けられた複数のノズル(不図示)と接続されている。
すなわち、混合部14は、フェノール樹脂と第1の発泡剤とを混合して第1の混合物を得る第1の混合部31と、第1の混合物と第2の発泡剤とを混合して樹脂・発泡剤混合物を得る第2の混合部32と、樹脂・発泡剤混合物と酸触媒とを混合する第3の混合部33とを備える。
第3の混合部33で得られた発泡性フェノール樹脂組成物は、排出口34から排出されて吐出部15へ供給される。
円筒容器41の外側には温度調整のためのジャケット(不図示)が設けられており、第1の混合部31、第2の混合部32、及び第3の混合部33の温度をそれぞれ測定するためのセンサーが設けられている。
また、円筒容器41内を加圧する手段としては、フェノール樹脂供給部10からの樹脂供給圧や排出口34と分配管(不図示)との接続部内径により調整することができ、第1の混合部31、第2の混合部32、及び第3の混合部33の内圧をそれぞれ測定するためのセンサーが設けられている。
また、本例では、フェノール樹脂が混合機40内の上流から下流へ移動する途中で、第1の発泡剤、第2の発泡剤、および酸触媒を順次添加する構成としたが、これに限らず、第1の発泡剤と第2の発泡剤の相溶を防ぐために、これらを1種類ずつ別々にフェノール樹脂と混合できる構成であればよい。例えば、第1の発泡剤供給部11および第2の発泡剤供給部12と円筒容器41との接続箇所が酸触媒供給部13よりも上流であり、第1および第2の発泡剤が相溶するのを防ぐために第1の発泡剤供給部11と第2の発泡剤供給部12とは隣接せずに離間していればよく、第2の発泡剤供給部12が第1の発泡剤供給部11よりも上流にあってもよく、円筒容器41の高さ方向(周方向に垂直な方向)において同じ位置にあってもよい。
混合機40内の樹脂温度は排出口34に近づくに従い高くなっていくため、第1の発泡剤の沸点が第2の発泡剤の沸点よりも低い場合には、第1の発泡剤供給部11が混合機40内における上流側にあってもよい。一方、第2の発泡剤が炭化水素等のフェノール樹脂と相溶性の低い発泡剤の場合には、第2の発泡剤供給部12が混合機40内の上流側にあってもよい。
吐出装置1の混合部14で、フェノール樹脂と第1の発泡剤と第2の発泡剤と酸触媒とを含む発泡性フェノール樹脂組成物を調製し、吐出部15のノズルから、走行する第1の面材22上に発泡性フェノール樹脂組成物を吐出する。発泡成形装置2では、第1の面材22上に吐出された発泡性フェノール樹脂組成物の上に、第2の面材24を積層した状態で、フレーム部20を通過させて加熱する。これにより、第1の面材22と第2の面材24との間で発泡性フェノール樹脂組成物が硬化し、フェノール樹脂発泡シートが形成される。得られたフェノール樹脂発泡シートを、切断装置3で任意の長さに切断して面材付きフェノール樹脂発泡体4を得る。
発泡性フェノール樹脂組成物に、フェノール樹脂、酸触媒、または発泡剤のいずれにも該当しない他の成分を配合する場合、フェノール樹脂を混合機40に導入する前に他の成分を添加してもよく、混合機40内の任意の位置で他の成分を添加してもよい。
T1は第1の混合部31の最も下流の位置における第1の混合物の温度を、円筒容器41内に設けたセンサーで測定した値である。
P1は第1の混合部31の最も下流の位置における内圧を、円筒容器41内に設けたセンサーで測定した値である。
また、第2の混合部32の圧力をP2とすると、T2における第1、第2の発泡剤の蒸気圧よりもP2の方が高いことが好ましい。すなわち、第2の混合部32を、第1の発泡剤および第2の発泡剤がいずれも発泡しない条件とすることが好ましい。
T2は第2の混合部32の最も下流の位置における樹脂・発泡剤混合物の温度を、円筒容器41内に設けたセンサーで測定した値である。
P2は第2の混合部32の最も下流の位置における内圧を、円筒容器41内に設けたセンサーで測定した値である。
第3の混合部33の圧力をP3とすると、P3における第1の発泡剤の沸点が第2の発泡剤の沸点よりも低い場合、T3における第1の発泡剤の蒸気圧よりもP3の方が低く、第2の発泡剤の蒸気圧よりもP3の方が高いことが好ましい。すなわち、第3の混合部33を、低沸点である第1の発泡剤が発泡し、第2の発泡剤は発泡しない条件とすることが好ましい。
T3は第3の混合部33の最も下流(排出口34の直前)の位置における発泡性フェノール樹脂組成物の温度を、円筒容器41内に設けたセンサーで測定した値である。
P3は第3の混合部32の最も下流(排出口34の直前)の位置における内圧を、円筒容器41内に設けたセンサーで測定した値である。
フレーム部20での加熱温度をTfとすると、T3≦Tfが好ましい。
この場合、排出口34から排出された発泡性フェノール樹脂組成物が吐出部15から吐出された直後の条件を、低沸点である第1の発泡剤が発泡する条件とすることが好ましい。また、該吐出された直後の条件は、第2の発泡剤が発泡しない条件であることが好ましい。
具体的には、吐出部15から吐出された直後の発泡性フェノール樹脂組成物の温度が、大気圧下における第1の発泡剤の沸点以下、かつ大気圧下における第2の発泡剤の沸点よりも5℃以上高いことが好ましい。
本態様のフェノール樹脂発泡体の製造方法によれば、第1の発泡剤と第2の発泡剤のいずれかが含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素であっても、得られるフェノール樹脂発泡体の脆性を改善して、擦れや衝突による欠け、割れ、凹み等の欠陥を低減することができる。かかる効果が得られる理由は、以下のように考えられる。
フェノール樹脂に、第1の発泡剤と第2の発泡剤を、1種ずつ、別々に、添加して混合して発泡性フェノール樹脂組成物を調製することにより、フェノール樹脂中に第1の発泡剤と第2の発泡剤がそれぞれ分散された発泡性フェノール樹脂組成物が得られる。該発泡性フェノール樹脂組成物を加熱して発泡および硬化させる際に、沸点が低い発泡剤が速やかに発泡し、硬化が進む前に気泡核が形成されるため、得られるフェノール樹脂発泡体の気泡が微細化され、脆性が改善される。
特に、第1の発泡剤と第2の発泡剤の組み合わせが、共沸を生じる組み合わせである場合、フェノール樹脂中に第1の発泡剤と第2の発泡剤をそれぞれ分散させることにより、第1の発泡剤と第2の発泡剤の共沸を防止できる。その結果、沸点が低い方の発泡剤を速やかに発泡させることができるため、フェノール樹脂発泡体の脆性の改善効果が大きい。
特に、第1の発泡剤と第2の発泡剤の組み合わせにおいて、沸点が低い方の発泡剤が含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素である場合、含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素が速やかに発泡するため、含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素のフェノール樹脂への溶解が防止される。これにより気泡壁中に残存する含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素を低減させることができる。
後述の実施例及び比較例で用いた測定・評価方法を以下に示す。
フェノール樹脂発泡体の密度は、JIS A 9511:2009に従い測定した。
フェノール樹脂発泡体の平均気泡径は、以下の方法で求めた。
フェノール樹脂発泡体の厚さ方向のほぼ中央から試験片を切出した。試験片の厚さ方向の切断面を50倍拡大で撮影した。撮影された画像に、長さ9cmの直線を4本引いた。この際、ボイド(2mm2以上の空隙)を避けるように直線を引いた。各直線が横切った気泡の数(JIS K6400−1:2004に準じて測定したセル数)を直線毎に計数し、直線1本当たりの平均値を求めた。気泡の数の平均値で1800μmを除し、求められた値を平均気泡径とした。
フェノール樹脂発泡体の独立気泡率は、JIS K 7138:2006に従い測定した。
フェノール樹脂発泡体の熱伝導率は、JIS A 1412−2に従い測定した。測定は、同じ試料について2回実施した。
フェノール樹脂発泡体の厚さ方向の中央部から、幅、長さ方向直径約150mm、厚さ約10mmの試験片を切出し、その質量を測定した。テーバー式アブレーションテスター((株)安田精機製作所製:No.101 TABER TYPE ABRATION TESTER)を用いて、回転する試験片上に一対の摩耗輪を一定荷重で押し付けて、試験片を摩耗させた。試験片に付着した削れ粉を掃除機で取り除き、試験後の試験片の質量を測定した。試験前後の試験片の質量差を算出し、摩耗質量とした。試験に使用したヤスリはCS17、ヤスリの重さは250gであり、試験片の回転数は50回転、回転速度は60rpmとした。
フェノール樹脂発泡体の気泡壁中のフッ素量(X)は、前記(1)〜(5)の手順で測定した。
(気泡中の含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素の含有量(Y))
独立気泡内の発泡剤の組成を、前記溶媒抽出法により測定した。
(E)−HCFO−1233zd:トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(E異性体)
(Z)−HCFO−1233zd:シス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(Z異性体)
CP:シクロペンタン
IPC:イソプロピルクロライド(2−クロロプロパン)
図1、2に示す製造システムを用いて面材付きフェノール樹脂発泡体を製造した。吐出部15は、16本のノズルを備え、該ノズルは第1の面材22のTD方向に沿って等間隔に配置されている。
発泡剤としては、表2に示す発泡剤Aの組み合わせを用いた。すなわち第1の発泡剤として(E)−HCFO−1233zdを用い、第2の発泡剤としてCPを用いた。
図2に示す混合機40を用い、フェノール樹脂供給部10から予備混合物を、第1の発泡剤供給部11から第1の発泡剤を、第2の発泡剤供給部12から第2の発泡剤を、酸触媒供給部13から酸触媒を、それぞれ混合機40の円筒容器41内に導入し、混合し、発泡性フェノール樹脂組成物を得た。表に第1〜第3の混合部31〜33の温度および圧力を示す。
各発泡剤の配合量は、フェノール樹脂100質量部に対する第1の発泡剤および第2の発泡剤の配合量が表1に示す量になるように調整した。
酸触媒としては、パラトルエンスルホン酸とキシレンスルホン酸との混合物を用い、フェノール樹脂100質量部に対する酸触媒の配合量が16質量部になるように調整した。
発泡成形の後、80℃で5時間乾燥し、フェノール樹脂発泡シートを得た。
得られたフェノール樹脂発泡シートを幅910mm、長さ1820mmに切断し、厚さ45mmの面材付きフェノール樹脂発泡体を作製した。
得られたフェノール樹脂発泡体について、密度、平均気泡径、独立気泡率、熱伝導率、摩耗質量、気泡壁中のフッ素の量(X)および気泡中の発泡剤に対する含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素の含有量(Y)を測定した。結果を表1に示す(以下、同様)。
実施例2では、実施例1において各混合部における圧力及び温度を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして面材付きフェノール樹脂発泡体を作製した。なお、吐出部15から吐出された発泡性フェノール樹脂組成物の温度は34℃であった。
発泡剤の組み合わせ、配合量、各混合部における圧力及び温度を表1に示すようにした以外は実施例1と同様にして面材付きフェノール樹脂発泡体を作製した。
比較例1では、発泡剤Aの第1の発泡剤と第2の発泡剤を予め混合した発泡剤混合物を、第1の発泡剤供給部11から混合機40の円筒容器41内に導入した。第2の発泡剤供給部12は設けなかった。
比較例3では、発泡剤Fの第1の発泡剤と第2の発泡剤を予め混合した発泡剤混合物を、第1の発泡剤供給部11から混合機40の円筒容器41内に導入した。第2の発泡剤供給部12は設けなかった。
第1の発泡剤と第2の発泡剤を予め混合して配合した比較例1、3は、気泡壁中のフッ素量(X)が高く、摩耗質量が多く、脆性が充分に低くならなかった。
発泡剤の総質量に対して含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素が15質量%と少ない比較例2は、摩耗質量が少なく低脆性であったが、熱伝導率が高く、断熱性が不充分であった。
2 発泡成形装置
3 切断装置
4 面材付きフェノール樹脂発泡体
10 フェノール樹脂供給部
11 第1の発泡剤供給部
12 第2の発泡剤供給部
13 酸触媒供給部
14 混合部
15 吐出部
20 フレーム部
21 下部コンベア
22 第1の面材
23 上部コンベア
24 第2の面材
31 第1の混合部
32 第2の混合部
33 第3の混合部
34 排出口
40 混合機
41 円筒容器
42 回転子
Claims (1)
- フェノール樹脂と、2種以上の発泡剤とを含むフェノール樹脂発泡体であって、
前記発泡剤が含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素を含み、
気泡壁中のフッ素量(X)が5000mg/kg以下であり、
気泡中の発泡剤の総質量に対して、気泡中の含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素の含有量(Y)が20質量%以上であり、
(X)/(Y)で表される、前記(Y)に対する前記(X)の比が50以下であり、
密度が25kg/m3以上50kg/m3以下であり、
独立気泡率が80%以上99%以下であり、
熱伝導率が0.0195W/m・K以下である、フェノール樹脂発泡体。
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