以下、本開示のレーザマーカについて、具体化した実施形態に基づき、図面を参照しつつ説明する。以下の説明に用いる図1乃至図3、図5、図7、及び図8では、基本的構成の一部が省略されて描かれており、描かれた各部の寸法比等は必ずしも正確ではない。尚、以下の説明において、上下方向は、図1、図3、図5、図7、及び図8に示された通りである。
[1.レーザマーカの概略構成]
先ず、図1及び図2に基づいて、本実施形態のレーザマーカ1の概略構成について説明する。本実施形態のレーザマーカ1は、印字情報作成部2及びレーザ加工部3で構成されている。印字情報作成部2は、パーソナルコンピュータ等で構成されている。
レーザ加工部3は、レーザ光Pを加工対象物7の加工面8上で2次元走査してマーキング(印字)加工を行うものである。レーザ加工部3は、レーザコントローラ6を備えている。
レーザコントローラ6は、コンピュータで構成され、印字情報作成部2と双方向通信可能に接続されている。レーザコントローラ6は、印字情報作成部2から送信された印字情報、制御パラメータ、各種指示情報等に基づいてレーザ加工部3を駆動制御する。
レーザ加工部3の概略構成について説明する。レーザ加工部3は、レーザ発振ユニット12、ガイド光部15、ダイクロイックミラー101、光学系70、カメラ103、ガルバノスキャナ18、及びfθレンズ19等を備えており、不図示の略直方体形状の筐体カバーで覆われている。
レーザ発振ユニット12は、レーザ発振器21等で構成されている。レーザ発振器21は、CO2レーザ、YAGレーザ等で構成されており、レーザ光Pを出射する。尚、レーザ光Pの光径は、不図示のビームエキスパンダで調整(例えば、拡大)される。
ガイド光部15は、可視半導体レーザ28等で構成されている。可視半導体レーザ28は、可視可干渉光である可視レーザ光Q、例えば、赤色レーザ光を出射する。可視レーザ光Qは、不図示のレンズ群で平行光にされ、例えば、レーザ光Pでマーキング(印字)加工すべき印字パターンの像、その像を取り囲んだ矩形の像、又は所定形状のオブジェクトO等を加工対象物7の加工面8に対して映し出すものである。尚、本実施形態において、オブジェクトOの所定形状は正方形状であるが、それに関する詳細な説明については、後述する。
可視レーザ光Qの波長は、レーザ光Pの波長とは異なる。本実施形態では、例えば、レーザ光Pの波長は1064nmであり、可視レーザ光Qの波長は、650nmである。
ダイクロイックミラー101では、入射されたレーザ光Pのほぼ全部が透過する。また、ダイクロイックミラー101では、レーザ光Pが透過する略中央位置にて、可視レーザ光Qが45度の入射角で入射され、45度の反射角でレーザ光Pの光路上に反射される。ダイクロイックミラー101の反射率は、波長依存性を持っている。具体的には、ダイクロイックミラー101は、誘電体層と金属層との多層膜構造の表面処理がなされており、可視レーザ光Qの波長に対して高い反射率を有し、それ以外の波長の光をほとんど(99%)透過するように構成されている。
尚、図1の一点鎖線は、レーザ光Pと可視レーザ光Qの光軸10を示している。また、光軸10の方向は、レーザ光Pと可視レーザ光Qの経路方向を示している。
光学系70は、第1レンズ72、第2レンズ74、及び移動機構76を備えている。光学系70では、ダイクロイックミラー101を経たレーザ光Pと可視レーザ光Qが、第1レンズ72に入射し通過する。その際、第1レンズ72によって、レーザ光Pと可視レーザ光Qの各光径が縮小される。また、第1レンズ72を通過したレーザ光Pと可視レーザ光Qは、第2レンズ74に入射し通過する。その際、第2レンズ74によって、レーザ光Pと可視レーザ光Qが平行光にされる。移動機構76は、光学系モータ80と、光学系モータ80の回転運動を直線運動に変換するラック・アンド・ピニオン(不図示)等を備えており、光学系モータ80の回転制御によって、第2レンズ74をレーザ光Pと可視レーザ光Qの経路方向に移動させる。
尚、移動機構76は、第2レンズ74に代えて第1レンズ72を移動させる構成であってもよいし、第1レンズ72と第2レンズ74との間の距離が変わるように第1レンズ72と第2レンズ74の双方を移動させる構成であってもよい。
ガルバノスキャナ18は、光学系70を経たレーザ光Pと可視レーザ光Qとを2次元走査するものである。ガルバノスキャナ18では、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32とが、それぞれのモータ軸が互いに直交するように取り付けられ、各モータ軸の先端部に取り付けられた走査ミラー18X、18Yが内側で互いに対向している。そして、各モータ31、32の回転制御で、各走査ミラー18X、18Yを回転させることによって、レーザ光Pと可視レーザ光Qとを2次元走査する。この2次元走査方向は、X方向とY方向である。
fθレンズ19は、ガルバノスキャナ18によって2次元走査されたレーザ光Pと可視レーザ光Qとを加工対象物7の加工面8上に集光するものである。従って、レーザ光Pと可視レーザ光Qは、各モータ31、32の回転制御によって、加工対象物7の加工面8上でX方向とY方向に2次元走査される。
レーザ光Pと可視レーザ光Qとでは、波長が異なる。そのため、光学系70における第1レンズ72と第2レンズ74との間の距離が一定の場合、レーザ光Pと可視レーザ光Qが集光する位置(以下、「焦点位置F」という。)は、上下方向で異なってしまう。そこで、レーザ光Pと可視レーザ光Qの焦点位置Fは、光学系70における第1レンズ72と第2レンズ74との間の距離が調整されることによって、加工対象物7の加工面8上に合わせられる。
ここで、fθレンズ19の位置に関連した基準位置と加工対象物7の加工面8との間の距離を、「ワーキングディスタンス」と表記する。本実施形態では、fθレンズ19の下面を、fθレンズ19の位置に関連した基準位置とする。つまり、本実施形態のワーキングディスタンスLは、fθレンズ19の下面と加工対象物7の加工面8との間の距離である。尚、fθレンズ19の位置に関連した基準位置には、上記のfθレンズ19の下面の他に、例えば、fθレンズ19の上面、又はfθレンズ19の上下方向の中央等がある。
従って、ワーキングディスタンスLが変わる場合は、fθレンズ19の下面と加工対象物7の加工面8との間の距離が変わる場合であるので、そのような場合においても、光学系70における第1レンズ72と第2レンズ74との間の距離が調整されることによって、レーザ光Pと可視レーザ光Qの焦点位置Fが、加工対象物7の加工面8上に合わせられる。
カメラ103は、加工対象物7の加工面8に向けられた状態で、fθレンズ19付近に設けられている。これにより、カメラ103は、例えば、加工対象物7、又は加工対象物7の加工面8上に映し出されたオブジェクトOを撮像する。これにより、加工対象物7、又は加工対象物7の加工面8上に映し出されたオブジェクトOを含む画像が撮影される。
次に、レーザマーカ1を構成する印字情報作成部2とレーザ加工部3の回路構成について図2に基づいて説明する。先ず、レーザ加工部3の回路構成について説明する。
図2に表されたように、レーザ加工部3は、レーザコントローラ6、ガルバノコントローラ35、ガルバノドライバ36、レーザドライバ37、半導体レーザドライバ38、光学系ドライバ78、及びカメラ103等から構成されている。レーザコントローラ6は、レーザ加工部3の全体を制御する。レーザコントローラ6には、ガルバノコントローラ35、レーザドライバ37、半導体レーザドライバ38、及び光学系ドライバ78等が電気的に接続されている。また、レーザコントローラ6及びカメラ103には、外部の印字情報作成部2が双方向通信可能に接続されている。レーザコントローラ6は、印字情報作成部2から送信された各情報(例えば、印字情報、レーザ加工部3に対する制御パラメータ、ユーザからの各種指示情報等)を受信可能に構成されている。カメラ103は、印字情報作成部2から送信された各情報(例えば、撮像指示情報等)を受信可能に構成され、また、撮像した画像を印字情報作成部2に送信可能に構成されている。
レーザコントローラ6は、CPU41、RAM42、及びROM43等を備えている。CPU41は、レーザ加工部3の全体の制御を行う演算装置及び制御装置である。CPU41、RAM42、及びROM43は、不図示のバス線により相互に接続されて、相互にデータのやり取りが行われる。
RAM42は、CPU41により演算された各種の演算結果や印字パターンの(XY座標)データ等を一時的に記憶させておくためのものである。
ROM43は、各種のプログラムを記憶させておくものであり、例えば、印字情報作成部2から送信された印字情報に基づいて印字パターンのXY座標データを算出してRAM42に記憶するプログラムや、可視レーザ光Qで映し出されるオブジェクトOのXY座標データ(照射パターン)を算出してRAM42に記憶するプログラム等が記憶されている。尚、各種プログラムには、上述したプログラムに加えて、例えば、オブジェクトOのサイズ、加工対象物7の大きさ、印字情報作成部2から入力された印字情報に対応する印字パターンの太さ、深さ及び本数、レーザ発振器21のレーザ出力、レーザ光Pのレーザパルス幅、ガルバノスキャナ18によるレーザ光Pを走査する速度、及びガルバノスキャナ18による可視レーザ光Qを走査する速度等を示す各種制御パラメータをRAM42に記憶するプログラム等がある。更に、ROM43には、フォントの種類別に、直線と楕円弧とで構成された各文字のフォントの始点、終点、焦点、曲率等のデータが記憶されている。
CPU41は、ROM43に記憶されている各種のプログラムに基づいて各種の演算及び制御を行う。
CPU41は、印字情報作成部2から入力された印字情報に基づいて算出した印字パターンのXY座標データ、オブジェクトOのXY座標データ、ガルバノスキャナ18による可視レーザ光Qを走査する速度、及びガルバノスキャナ18によるレーザ光Pを走査する速度等を示すガルバノ走査速度情報等を、ガルバノコントローラ35に出力する。また、CPU41は、印字情報作成部2から入力された印字情報に基づいて設定したレーザ発振器21のレーザ出力、及びレーザ光Pのレーザパルス幅等を示すレーザ駆動情報を、レーザドライバ37に出力する。
CPU41は、可視半導体レーザ28の点灯開始を指示するオン信号又は消灯を指示するオフ信号を半導体レーザドライバ38に出力する。
ガルバノコントローラ35は、レーザコントローラ6から入力された各情報(例えば、印字パターンのXY座標データ、オブジェクトOのXY座標データ(照射パターン)、ガルバノ走査速度情報等)に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32の駆動角度、回転速度等を算出して、駆動角度及び回転速度を示すモータ駆動情報をガルバノドライバ36に出力する。ガルバノドライバ36は、ガルバノコントローラ35から入力されたモータ駆動情報に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32を駆動制御して、レーザ光Pと可視レーザ光Qを2次元走査する。
レーザドライバ37は、レーザコントローラ6から入力されたレーザ発振器21のレーザ出力、及びレーザ光Pのレーザパルス幅等を示すレーザ駆動情報等に基づいて、レーザ発振器21を駆動させる。半導体レーザドライバ38は、レーザコントローラ6から入力されたオン信号又はオフ信号に基づいて、可視半導体レーザ28を点灯駆動又は、消灯させる。
光学系ドライバ78は、レーザコントローラ6から入力された情報(例えば、後述する指令値等)に基づいて、光学系モータ80を駆動制御して、第2レンズ74を移動させる。
次に、印字情報作成部2の回路構成について説明する。印字情報作成部2は、制御部51、入力操作部55、液晶ディスプレイ(LCD)56、及びCD−ROMドライブ58等を備えている。制御部51には、不図示の入出力インターフェースを介して、入力操作部55、液晶ディスプレイ56、及びCD−ROMドライブ58等が接続されている。
入力操作部55は、不図示のマウス及びキーボード等から構成されており、例えば、各種指示情報をユーザが入力する際に使用される。
CD−ROMドライブ58は、各種データ、及び各種アプリケーションソフトウェア等をCD−ROM57から読み込むものである。
制御部51は、印字情報作成部2の全体を制御するものであって、CPU61、RAM62、ROM63、及びハードディスクドライブ(以下、「HDD」という。)66等を備えている。CPU61は、印字情報作成部2の全体の制御を行う演算装置及び制御装置である。CPU61、RAM62、及びROM63は、不図示のバス線により相互に接続されており、相互にデータのやり取りが行われる。更に、CPU61とHDD66とは、不図示の入出力インターフェースを介して接続されており、相互にデータのやり取りが行われる。
RAM62は、CPU61により演算された各種の演算結果等を一時的に記憶させておくためのものである。ROM63は、各種のプログラム等を記憶させておくものである。
HDD66には、各種アプリケーションソフトウェアのプログラム、及び各種データファイル等が記憶される。
[2.ワーキングディスタンスとオブジェクト]
本実施形態では、可視レーザ光Qが2次元走査されることによって、正方形状のオブジェクトOが加工対象物7の加工面8上に映し出される。正方形状のオブジェクトOは、同じ長さで平行に延びた2つの辺(線分)を2組有する四角形である。加工対象物7の加工面8上に映し出された、正方形状のオブジェクトOの一辺の長さ(以下、「オブジェクトOのサイズSI」という。)は、ワーキングディスタンスLによって変化する。
具体的には、例えば、図3に表されたように、ガルバノスキャナ18の振角θ(つまり、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32の駆動角度)が所定角度である場合において、3つのケースを想定する。図3では、第1ケースに関する符号には、「1」の数字を添付する。第2ケースに関する符号には、「2」の数字を添付する。第3ケースに関する符号には、「3」の数字を添付する。
第1ケースでは、ワーキングディスタンスL1の下で、サイズSI1のオブジェクトO1が可視レーザ光Q1によって映し出される。第2のケースでは、ワーキングディスタンスL1よりも長いワーキングディスタンスL2の下で、サイズSI1よりも大きいサイズSI2のオブジェクトO2が可視レーザ光Q2によって映し出される。第3のケースでは、ワーキングディスタンスL2よりも長いワーキングディスタンスL3の下で、サイズSI2よりも大きいサイズSI3のオブジェクトO3が可視レーザ光Q3によって映し出される。
このような関係性が、ワーキングディスタンスLとオブジェクトOのサイズSIとの間に存在する。そのため、カメラ103で撮影したオブジェクトOを含む画像等に基づいて、オブジェクトOのサイズSIが取得されると、ワーキングディスタンスLの算出が可能となる。
そこで、ガルバノスキャナ18の振角θが所定角度である場合において、複数のケースを想定し、各ケース毎にワーキングディスタンスLとオブジェクトOのサイズSIとを予め求めておく。更に、図4に表されたように、その求められた各ワーキングディスタンスL1,L2,L3,…と、各オブジェクトO1,O2,O3,…の各サイズSI1,SI2,SI3,…とは、組み合わせによって関連付けられた状態で、データテーブル201に格納される。更に、データテーブル201では、ワーキングディスタンスLとオブジェクトOのサイズSIとの各組み合わせが、「正方形#1」の項目データに対応付けられる。「正方形#1」の項目データは、ガルバノスキャナ18の振角θが所定角度のときに映し出される正方形状のオブジェクトO(照射パターン)であることを示している。尚、データテーブル201は、制御部51のROM63に記憶されている。
さて、可視レーザ光Qの焦点位置Fは、加工対象物7の加工面8上に合わせられていても、ワーキングディスタンスLが変わると、加工対象物7の加工面8上からズレてしまう。そのような場合、カメラ103で撮像した画像のオブジェクトOは、所謂ピンボケの状態となるので、オブジェクトOのサイズSIの取得に支障を来すことがある。
具体的に説明すると、例えば、図5に表されたように、光学系70において、第1レンズ72から第2レンズ74までの距離が、第1距離A、第2距離B、及び第3距離Cの場合を想定する。図5では、第1距離Aの場合に関する符号には、「A」の文字を添付する。第2距離Bの場合に関する符号には、「B」の文字を添付する。第3距離Cの場合に関する符号には、「C」の文字を添付する。
光学系70において、第1レンズ72から第2レンズ74までの距離が、第1距離A、第2距離B、及び第3距離Cの記載順で短くなっていくと、可視レーザ光Qの集光位置は、焦点位置FA、焦点位置FB、及び焦点位置FCの記載順で下方向へ移動する。
図5では、焦点位置FAが、加工対象物7の加工面8よりも上方向にある。そのため、加工対象物7の加工面8上に可視レーザ光QAで映し出されたオブジェクトOAは、その線幅が広く、ぼやけた状態となる。また、焦点位置FCが、加工対象物7の加工面8よりも下方向にある。そのため、加工対象物7の加工面8上に可視レーザ光QCで映し出されたオブジェクトOCも、その線幅が広く、ぼやけた状態となる。これらに対して、焦点位置FBは、加工対象物7の加工面8上にある。そのため、加工対象物7の加工面8上に可視レーザ光QBで映し出されたオブジェクトOBは、その線幅が最も細く、鮮明な状態である。
そこで、カメラ103でオブジェクトOが撮像される際は、光学系70において、第1レンズ72と第2レンズ74との間の距離が調整されることによって、可視レーザ光Qの焦点位置Fが加工対象物7の加工面8上に合わされ、加工対象物7の加工面8上に可視レーザ光Qで映し出されたオブジェクトOが鮮明にされる。
[3.レーザマーカの制御フロー]
図6のフローチャートで表されたプログラムは、制御部51のROM63に記憶されており、レーザ光Pによるマーキング(印字)加工が行われる際に、制御部51のCPU61により実行される。従って、後述する処理において、制御対象がレーザ加工部3の構成要素である場合、カメラ103を除き、レーザコントローラ6を介した制御が行われる。
図6のフローチャートで表されたプログラムでは、先ず、ステップ(以下、単に「S」と表記する。)10において、オブジェクトの映出処理が行われる。この処理では、ガイド光部15から可視レーザ光Qが出射されると共に、ガルバノスキャナ18の振角θが所定角度となるように、ガルバノスキャナ18の各走査ミラー18X、18Yが回転させられる。このような回転が継続されると、加工対象物7の加工面8上では、2次元走査中の可視レーザ光Qによって、正方形状のオブジェクトOが映し出される。尚、加工対象物7の加工面8上に映し出されている正方形状のオブジェクトOは、データテーブル201に格納された「正方形#1」の項目データが示す照射パターンである。
第1焦点変更処理(S12)では、光学系ドライバ78に対する指令値であって、光学系70における第1レンズ72から第2レンズ74までの距離に関する制御パラメータが、光学系ドライバ78に送信されることによって、第2レンズ74がレーザ光Pと可視レーザ光Qの経路方向に僅かに移動させられる。
第1撮影処理(S14)では、加工対象物7の加工面8上に映し出されているオブジェクトOが、カメラ103によって撮像される。これにより、オブジェクトOを含む画像が撮影される。
線幅の計測処理(S16)では、上記S14で撮影された画像が画像処理されることによって、オブジェクトOの線幅が計測される。尚、線幅を計測するための画像処理は、公知技術のため、その詳細な説明は省略する。
続いて、上記S16で計測された線幅が所定幅よりも小さいか否かが判定される(S18)。所定幅の値は、ROM63に記憶されている。ここで、上記S16で計測された線幅が所定幅以上である場合には(S18:NO)、上記S14で撮影された画像のオブジェクトOが所謂ピンボケ状態であるとされる。そこで、上述したS10乃至S16の処理が再び行われる。
これに対して、上記S16で計測された線幅が所定幅よりも小さい場合には(S18:NO)、可視レーザ光Qの焦点位置Fが加工対象物7の加工面8上に合わされた状態にあり、上記S14で撮影された画像のオブジェクトOが鮮明であるとされる。そこで、第2撮像処理(S20)が行われる。この処理は、上記S14と同様である。
オブジェクトのサイズ取得処理(S22)では、上記S20で撮影された画像が画像処理されることによって、加工対象物7の加工面8上に映し出されているオブジェクトOのサイズSIが取得される。尚、オブジェクトOのサイズSIを取得するための画像処理は、公知技術のため、その詳細な説明は省略する。
ワーキングディスタンスの決定処理(S24)では、データテーブル201に格納されているワーキングディスタンスLとオブジェクトOのサイズSIとの各組み合わせと、上記S22で取得されたオブジェクトOのサイズSIとから、ワーキングディスタンスLが決定される。
データテーブル201によれば、例えば、上記S22でサイズSI1が取得されたときは、本S24でワーキングディスタンスL1が決定される。上記S22でサイズSI2が取得されたときは、本S24でワーキングディスタンスL2が決定される。上記S22でサイズSI3が取得されたときは、本S24でワーキングディスタンスL3が決定される。
但し、データテーブル201に格納されているワーキングディスタンスLとオブジェクトOのサイズSIとの各組み合わせにおいて、上記S22で取得されたサイズSIが含まれていない場合には、データテーブル201に格納されているワーキングディスタンスLとオブジェクトOのサイズSIとの各組み合わせに対し、公知の補完技術(例えば、多項式補間等)が適用されることによって、ワーキングディスタンスLとオブジェクトOのサイズSIとの関係が補完される。更に、そのように補完されたワーキングディスタンスLとオブジェクトOのサイズSIとの関係(例えば、線形多項式等)から、ワーキングディスタンスLが決定される。
第2焦点変更処理(S26)では、レーザ光Pの焦点位置Fが加工対象物7の加工面8上に合うようにするため、光学系70における第2レンズ74が、レーザ光Pと可視レーザ光Qの経路方向に移動させられる。その際、光学系ドライバ78に対する指令値であって、光学系70における第1レンズ72から第2レンズ74までの距離に関する制御パラメータが、上記S24で決定されたワーキングディスタンスLに基づいて設定され、光学系ドライバ78に送信される。
印字処理(S28)では、加工対象物7の加工面8上において、レーザ光Pが2次元走査されることによって、マーキング(印字)加工が行われる。これにより、RAM42に記憶されているXY座標データで示された印字パターンが、加工対象物7の加工面8上にマーキング(印字)加工される。その後、図6のフローチャートで表されたプログラムは、終了する。
[4.まとめ]
以上詳細に説明したように、本実施の形態のレーザマーカ1では、ワーキングディスタンスLの決定(S24)が、上記S20の撮影画像に基づいて取得された正方形状のオブジェクトOのサイズSIと、ROM63に記憶されたデータテーブル201におけるワーキングディスタンスLとオブジェクトOのサイズSIとの各組み合わせとに基づいて行われる。そのため、距離測定用ポインタ光出射器から出射するポインタ光をワークの表面に対して斜めに向けて出射し、ワーク表面に生成された楕円形の輝点に基づきワーキングディスタンスを求める従来のレーザマーカよりも、本実施の形態のレーザマーカ1は、ワーキングディスタンスLを精度良く決定することが可能である。
また、本実施の形態のレーザマーカ1では、上記S16で計測された線幅が所定幅未満になるまで(S18)、上述したS10乃至S16の処理が繰り返される。これにより、可視レーザ光Qの焦点位置Fが、加工対象物7の加工面8上に合うようにされる。そのため、オブジェクトOのサイズSIを取得するための画像(上記S20の撮影画像)においては、加工対象物7の加工面8上に可視レーザ光Qで映し出されているオブジェクトOが、鮮明に表示されている。このようにして、本実施の形態のレーザマーカ1は、オブジェクトOのサイズSIを正確に取得することによって(S22)、上記S24で決定するワーキングディスタンスLの精度向上を図っている。
また、本実施の形態のレーザマーカ1では、ワーキングディスタンスLとオブジェクトOのサイズSIとが関連付けられた状態でデータテーブル201に格納されている複数の組み合わせによって、ワーキングディスタンスLの決定(S24)が行われている。これにより、本実施の形態のレーザマーカ1は、ワーキングディスタンスの決定(S24)における処理速度の向上を図っている。
更に、データテーブル201に格納されているワーキングディスタンスLとオブジェクトOのサイズSIとの各組み合わせにおいて、上記S22で取得されたオブジェクトOのサイズSIが含まれていない場合には、ワーキングディスタンスLの決定(S24)に際して、例えば、上述した多項式補間の線形多項式等によって、ワーキングディスタンスLとオブジェクトOのサイズSIとの各組み合わせの関連付けに応じた補完がなされている。このようにして、本実施の形態のレーザマーカ1では、データテーブル201のデータ量が抑えられている。
[5.変更例]
尚、本開示は、本実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、ガルバノスキャナ18の振角θ(つまり、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32の駆動角度)が、図3の各ケースにおける所定角度と同じである場合には、加工対象物7の加工面8が水平であれば、ワーキングディスタンスLが異なっていても、加工対象物7の加工面8上には、2次元走査された可視レーザ光Qによって、正方形状のオブジェクトO、つまり、データテーブル201に格納された「正方形#1」の項目データで示される照射パターンが映し出される。
これに対して、加工対象物7の加工面8が傾斜している場合、可視レーザ光Qで映し出されている正方形状のオブジェクトOは、例えば、図7に表された可視レーザ光Q4のオブジェクトO4のように、正方形状とは異なる形状に変形する。これにより、本実施の形態のレーザマーカ1は、上記S16又は上記S22等で行われる画像処理において、撮像画像のオブジェクトOが、上記の照射パターンである正方形状から変形しているか否かを認識するようにすれば、加工対象物7の加工面8が傾斜しているか否かを判定することが可能である。
更に、図7に表されたように、可視レーザ光Q4のオブジェクトO4が、4つの辺(線分)301,302,303,304で構成された台形状であり、平行な2つの辺(線分)301,302の長さは異なるが、一方の辺(線分)301がオブジェクトO1のサイズSI1と同じであり、他方の辺(線分)302がオブジェクトO2のサイズSI2と同じである、第4のケースを想定する。
そのようなケースでは、一方の辺(線分)301上では、いずれの位置においても、ワーキングディスタンスLが、オブジェクトO1のサイズSI1に関連付けられたワーキングディスタンスL1で同じである。また、他方の辺(線分)302上では、いずれの位置においても、ワーキングディスタンスLが、オブジェクトO2のサイズSI2に関連付けられたワーキングディスタンスL2で同じである。
そこで、本実施形態のレーザマーカ1は、上記S22で行われる画像処理によって、オブジェクトOを構成する互いに平行な各辺(線分)の長さを取得するようにすれば、オブジェクトOを構成する互いに平行な各辺(線分)毎に、ワーキングディスタンスLを決定することができる(S24)。そのため、本実施形態のレーザマーカ1は、加工対象物7の加工面8が傾斜していても、加工対象物7の加工面8上に映し出されているオブジェクトOを構成する各辺(線分)の中に、互いに平行な複数の辺(線分)があれば、ワーキングディスタンスLを精度良く決定することが可能である。
尚、台形状のオブジェクトO4を構成する4つの辺(線分)301,302,303,304のうち、他のいずれとも平行でない2つの辺(線分)303,304上では、それぞれの位置に応じて、ワーキングディスタンスLが異なる。そこで、このような2つの辺(線分)303,304について、それぞれの辺(線分)の長さから決定されるワーキングディスタンスLは、例えば、各辺(線分)303,304上の中央位置におけるワーキングディスタンスとして使用されたり、各辺(線分)303,304上のワーキングディスタンスの平均値として使用されることが望ましい。
更に、本実施形態のレーザマーカ1は、第2焦点変更処理(S26)において、オブジェクトOを構成する互いに平行な各辺(線分)毎に、光学系70における第1レンズ72から第2レンズ74までの距離に関する制御パラメータを、上記S24で求められたワーキングディスタンスLに基づいて設定すれば、加工対象物7の加工面8が傾斜していても、レーザ光Pの焦点位置Fを加工対象物7の加工面8上に合うようにすることが可能である。
更に、本実施形態のレーザマーカ1は、印字処理(S28)において、印字パターンのXY座標データを補正してもよい。具体的には、例えば、RAM42に記憶されている印字パターンのXY座標データが、ワーキングディスタンスL1の下で設定されている場合には、図8に表されたように、第1加工点W1(のXY座標データ)にレーザ光Pを向けても、XY座標データが第1加工点W1と同じ加工点であって、ワーキングディスタンスL2を有する第2加工点W2にレーザ光Pが向かうことはない。なぜなら、第2加工点W2は、双方のワーキングディスタンスL1,L2の差の分だけ、第1加工点W1の下方向にあるからである。
そこで、ワーキングディスタンスL2を有する第2加工点W2にレーザ光Pを向かわせるためには、ワーキングディスタンスL1を有する加工点(のXY座標データ)であって、その加工点(のXY座標データ)を通過するレーザ光Pが第2加工点W2に向かうような第3加工点W3(のXY座標データ)にレーザ光Pを向かわせる。尚、第3加工点W3のXY座標データは、第2加工点W2のXY座標データ、及び各ワーキングディスタンスL1,L2を使用して求められる。
このようにして、本実施形態のレーザマーカ1は、印字処理(S28)において、オブジェクトOを構成する互いに平行な各辺(線分)毎に上記S24で求められたワーキングディスタンスLに基づいて、印字パターンのXY座標データ(つまり、レーザ光Pの走査位置)を補正すれば、加工対象物7の加工面8にマーキング(印字)加工された印字パターンを、加工対象物7の加工面8の傾斜に適した形態にすることが可能である。
また、本実施形態のレーザマーカ1では、オブジェクトの映出処理(S10)において、加工対象物7の加工面8上に可視レーザ光Qで映し出されるオブジェクトO、つまり可視レーザ光Qの走査領域を、印字情報作成部2からレーザコントローラ6に入力された情報に基づいて算出されるレーザ光Pの走査領域内に設けてもよい。
具体的には、例えば、図9に表されたように、加工対象物7の加工面8上において、マーキング(印字)加工すべき印字パターンが「αβγ」の各文字である場合には、「αβγ」の各文字が内接する矩形210内が、レーザ光Pの走査領域内に相当する。そこで、加工対象物7の加工面8上に映し出されるオブジェクトOは、「αβγ」の各文字が内接する矩形210内に設定される。
このようにして、本実施形態のレーザマーカ1は、オブジェクトの映出処理(S10)において、加工対象物7の加工面8上に映し出されるオブジェクトO(可視レーザ光Qの走査領域)を、レーザ光Pの走査領域内に設ければ、ワーキングディスタンスの決定(S24)に際し、印字パターンがマーキング(印字)加工される箇所又はその近傍についてのワーキングディスタンスLを決定することができる。
また、本実施形態のレーザマーカ1では、加工対象物7の加工面8上に可視レーザ光Qで鮮明に映し出された際の、オブジェクトOのサイズSIが変更されてもよい。そのためには、例えば、オブジェクトの映出処理(S10)が行われる際において、図10のフローチャートで表されたプログラムが、制御部51のCPU61により実行される。尚、図10のフローチャートで表されたプログラムは、制御部51のROM63に記憶されている。
図10のフローチャートで表されたプログラムでは、先ず、S30において、オブジェクトのサイズ変更処理が行われる。この処理は、図11のフローチャートで表されたプログラム、又は図12のフローチャートで表されたプログラムによって行われる。尚、図11のフローチャートで表されたプログラム、及び図12のフローチャートで表されたプログラムは、制御部51のROM63に記憶されている。
図11のフローチャートで表されたプログラムでは、先ず、S40において、レーザ光の走査領域の取得処理が行われる。この処理では、印字情報作成部2にて保持する情報に基づいて、レーザ光Pの走査領域(例えば、図9に表された矩形210)の大きさが取得される。
次に、S42において、第1サイズ変更処理が行われる。この処理では、加工対象物7の加工面8上に可視レーザ光Qで鮮明に映し出される際の、オブジェクトOのサイズSIが、上記S40で取得されたレーザ光Pの走査領域の大きさに基づいて変更される。具体的には、ガルバノスキャナ18の振角θ(つまり、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32の駆動角度)が、図3の各ケースにおける所定角度とは異なる第1角度に設定される。その後、図11のフローチャートで表されたプログラムは、終了する。
これに対して、図12のフローチャートで表されたプログラムでは、先ず、S50において、加工対象物の大きさの取得処理が行われる。この処理では、例えば、印字情報作成部2の入力操作部55から入力された情報によって、又はカメラ103で撮影された加工対象物7を含む画像が画像処理されること等によって、加工対象物7の大きさが取得される。尚、加工対象物7の大きさを取得するための画像処理は、公知技術のため、その詳細な説明は省略する。
次に、S52において、第2サイズ変更処理が行われる。この処理では、加工対象物7の加工面8上に可視レーザ光Qで鮮明に映し出される際の、オブジェクトOのサイズSIが、上記S50で取得された加工対象物7の大きさに基づいて変更される。具体的には、上記S42と同様にして、ガルバノスキャナ18の振角θ(つまり、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32の駆動角度)が、図3の各ケースにおける所定角度とは異なる第1角度に設定される。その後、図12のフローチャートで表されたプログラムは、終了する。
図10のフローチャートで表されたプログラムでは、図11のフローチャートで表されたプログラム、又は図12のフローチャートで表されたプログラムによって、上記S30が行われると、続いて、S32において、情報変更処理が行われる。この処理では、上記S24で使用される、ワーキングディスタンスLとオブジェクトOのサイズSIとの各組み合わせが変更される。
具体的には、例えば、図13に表されたデータテーブル201で示すように、「正方形#10」の項目データに対応付けられた、ワーキングディスタンスLとオブジェクトOのサイズSIとの各組み合わせが、上記S24で使用されるように変更する。「正方形#10」の項目データは、ガルバノスキャナ18の振角θが、図3の各ケースにおける所定角度とは異なる第1角度に上記S42又は上記S52で設定されたときに映し出される正方形状のオブジェクトO(照射パターン)であることを示している。
「正方形#10」の項目データに対応付けられた、ワーキングディスタンスLとオブジェクトOのサイズSIとの各組み合わせでは、上述した「正方形#1」の項目データに対応付けられたものとは異なり、ワーキングディスタンスL1にはオブジェクトOのサイズSI11が関連付けられ、ワーキングディスタンスL2にはオブジェクトOのサイズSI12が関連付けられ、ワーキングディスタンスL3にはオブジェクトOのサイズSI13が関連付けられている。
更に、ワーキングディスタンスLとオブジェクトOのサイズSIとの各組み合わせは、ガルバノスキャナ18の振角θが所定角度と異なる様々な場合を想定して求めておき、それぞれの場合において映し出される正方形状のオブジェクトO(照射パターン)であることを示す、「正方形#N」の項目データに対応付けられた状態で、データテーブル201に格納される。「正方形#N」の項目データのうち、「N」には、上述した様々な場合から一つの場合を特定するための数字が代入される。
尚、ワーキングディスタンスLとオブジェクトOのサイズSIとの各組み合わせは、データテーブル201に代えて、図14に表されたように、上述した様々な場合毎に算出された複数の近似式202によって備えられてもよい。
このようにして、本実施形態のレーザマーカ1は、加工対象物7の加工面8上に可視レーザ光Qで鮮明に映し出される際のオブジェクトOのサイズSIを、レーザ光Pの走査領域の大きさに適した所定サイズ(S40,S42)、又は加工対象物7の大きさに適した所定サイズ(S50,S52)に変更することによっても(S30)、上記S24で決定するワーキングディスタンスLの精度向上を図ることが可能である。
尚、加工対象物7の加工面8上に可視レーザ光Qで映し出されるオブジェクトOの形状は、少なくとも2個の点が含まれる形状であればよく、例えば、上述した正方形状の他に、円形状、楕円形状、正方形状を除く多角形状、又は線分(直線、曲線)がある。
ちなみに、本実施形態において、レーザ発振ユニット12は「レーザ光源」の一例である。ガイド光部15は、「ガイド光源」の一例である。ガルバノスキャナ18は、「走査部」の一例である。CPU61は、「制御部」の一例である。ROM63は、「記憶部」の一例である。入力操作部55は、「取得部」の一例である。光学系70は、「可変焦点光学系」の一例である。カメラ103は、「撮影部」及び「取得部」の一例である。データテーブル201に格納されているワーキングディスタンスLとオブジェクトOのサイズSIとの各組み合わせは、「オブジェクトの大きさとワーキングディスタンスとの関係を示す情報」の一例である。
矩形210は、「レーザ光の走査領域」の一例である。オブジェクトOは、「可視光の走査領域」の一例である。正方形状のオブジェクトOを構成する4つの辺(線分)の対向する2つの辺は、「同じ長さで平行に延びた複数の線分」の一例である。各辺(線分)301,302は、「撮影部で撮影された画像に基づいて取得した複数の線分の長さ」の一例である。可視レーザ光Qは、「可視光」の一例である。オブジェクトOのサイズSIは、「オブジェクトの大きさ」の一例である。第1加工点W1,第2加工点W2、及び第3加工点W3は、「レーザ光の走査位置」の一例である。「αβγ」の各文字は、「レーザ光の印字パターン」の一例である。