以下、本開示の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
まず、図1を参照して、遠隔操作システム(遠隔操作装置)1が適用される建設機械2について説明する。建設機械2は、例えばバックホウである。建設機械2は、建設機械2を走行させる走行体3と、走行体3の上部に設けられ旋回可能な旋回体4と、旋回体4に取り付けられた作業部5と、を備える。作業部5は、ブーム6、アーム7及びバケット8を含む。なお、建設機械2は、バックホウに限定されず、例えば、ブルドーザ、クレーン、クローラダンプなどその他の建設機械でもよい。また、遠隔操作システム1が適用される作業機械は、建設機械に限定されず、農業機械、搬送機械、作業用の車両などその他の作業機械でもよい。
旋回体4は操縦席9を含み、操縦席9には後述する操作レバー(操作部材)10が設けられている。旋回体4には、エンジン、発電機、バッテリ、油圧ポンプ等が搭載されている。また、各図において直交する3方向を前後方向X、左右方向Y、上下方向Zとして図示している。前後方向X、左右方向Y、上下方向Zは、操縦席9を基準とする。 走行体3は、左クローラ3a及び右クローラ3bを備える。建設機械2は、左クローラ3a及び右クローラ3bの回転方向を操作して、走行体3の前進、後退、方向転換を行うことができる。旋回体4は、走行体3に対して、上下方向Zに延在する回転軸線回りに回転可能となっている。建設機械2は、旋回体4を右旋回及び左旋回させることができる。
ブーム6は、旋回体4の前方に取り付けられ、左右方向Yに延在する回転軸線回りに揺動可能となっている。ブーム6の基端部6aは、旋回体4に連結されている。旋回体4には、ブーム6を揺動させるための油圧シリンダ(不図示)が設けられている。建設機械2は、油圧シリンダを駆動して、ブーム6を揺動させることで、ブーム6の先端部6bを上げ下げすることができる。アーム7は、ブーム6に取り付けられ、左右方向Yに延在する回転軸線回りに揺動可能となっている。アーム7の基端部7aは、ブーム6の先端部6bに連結されている。ブーム6には、アーム7を揺動させるための油圧シリンダ11が設けられている。建設機械2は、油圧シリンダ11を駆動して、アーム7を揺動させることで、アーム7を伸ばし、かき込むことができる。アーム7を伸ばすとは、アーム7の先端部7bを操縦席9から離す方向の動きである。アーム7をかき込むとは、アーム7の先端部7bを操縦席9に近づける方向の動きである。
バケット8は、アーム7に取り付けられ、左右方向Yに延在する回転軸線回りに揺動可能となっている。バケット8の基部8aは、アーム7の先端部7bに連結されている。アーム7には、バケット8を揺動させるための油圧シリンダ12が設けられている。建設機械2は、油圧シリンダ12を駆動して、バケット8を揺動させることで、バケット8によるかき込み動作を行うことができ、バケット8内の対象物を投下する(ダンプする)動作を行うことができる。バケット8によるかき込みとは、バケット8の先端部8bを操縦席9に近づける方向の動きである。バケット8内の対象物を投下する動きは、バケット8の先端部8bを操縦席9から離す方向の動きである。
図2〜図4に示される操縦席9は、建設機械2を操縦する操縦者が着席可能な座席である。操縦席9は、シート13、背もたれ14及び左右の肘掛け部15,16を備える。また、操縦席9の周囲には、建設機械2を操縦するための複数の操作レバー10が設けられている。複数の操作レバー10としては、左作業レバー17、右作業レバー18、左走行レバー19及び右走行レバー20がある。なお、以下の説明において、左作業レバー17、右作業レバー18、左走行レバー19及び右走行レバー20を区別しない場合には、操作レバー10と記載する。
左作業レバー17は、例えば左側の肘掛け部15の前側の天面15aに設けられている。左作業レバー17は、図2、図3及び図5に示されるように、上下方向Zに延在し、中立点(中立位置)において、上端部17aがやや前方に傾いて配置されている(図5(a)参照)。前後方向Xから見た場合には、左作業レバー17は、中立点において、上下方向Zに沿って直立している(所定の面に対して直立している)(図5(b)参照)。なお、中立点とは、操作レバー10による入力値が0となる位置であり、停止を指示する位置である。中立点において、操作レバー10は、上下方向Zに沿って直立している状態でもよく、後方に傾斜している状態でもよい。また、前後方向Xから見た場合に、操作レバー10は、中立点において、例えばシート13側に傾いていてもよい。図5(a)及び図5(b)では、実線で示された状態が中立点の左作業レバー17を示している。左作業レバー17は、下端部17bを基点として揺動可能である。左作業レバー17の上端部17aは、前後方向X及び左右方向に移動可能となっている。左作業レバー17は、旋回体4を旋回させる操作に利用されると共に、アーム7を伸ばしたり、かき込んだりする操作に利用される。
操縦者は、左作業レバー17を前後方向Xに操作することで、アーム7を操作することができる。具体的には、左作業レバー17の上端部17aを前方に移動させると、アーム7が伸ばされ、左作業レバー17の上端部17aを後方に移動させると、アーム7の先端部7bが操縦席9側に接近してかき込まれる。操縦者は、左作業レバー17を左右方向Yに操作することで、旋回体4を操作することができる。具体的には、左作業レバー17の上端部17aを左側に移動させると、旋回体4を左旋回させて、アーム7を左側に移動させることができ、左作業レバー17の上端部17aを右側に移動させると、旋回体4を右旋回させて、アーム7を右側に移動させることができる。
右作業レバー18は、例えば右側の肘掛け部16の前側の天面16aに設けられている。右作業レバー18は、上下方向Zに延在し、中立点において、上端部18aがやや前方に傾いて配置されている。前後方向Xから見た場合には、右作業レバー18は、中立点において、上下方向Zに沿って直立している。図5(a)及び図5(b)では、実線で示された状態が中立点の右作業レバー18を示している。右作業レバー18は、下端部18bを基点として揺動可能である。右作業レバー18の上端部18aは、前後方向X及び左右方向Yに移動可能となっている。右作業レバー18は、ブーム6を上げ下げする操作に利用されると共に、バケット8の操作に利用される。
操縦者は、右作業レバー18を前後方向Xに操作することで、ブーム6を操作することができる。具体的には、右作業レバー18の上端部18aを前方に移動させると、ブーム6の先端部6bを下げることができ、右作業レバー18の上端部18aを後方に移動させると、ブーム6の先端部7bを上げることができる。操縦者は、右作業レバー18を左右方向Yに操作することで、バケット8を操作することができる。具体的には、右作業レバー18の上端部18aを左側に移動させると、バケット8によるかき込み動作を行うことができ、右作業レバー18の上端部18aを右側に移動させると、バケット8内の対象物を投下させる動作を行うことができる。
左走行レバー19は、例えば操縦席9の前方かつ中央より左側に配置されている。左走行レバー19は、操縦席9の前方の床面21から上方に伸びている。左走行レバー19は、図3、図4及び図6に示されるように、床面21から前方に伸びる基部22と、基部22の先端22aから上方に伸びるレバー本体(棒状部)23と、を備える。基部22には、左ペダル24が連結されている。レバー本体23は、斜め後方に傾斜するように伸びている。左走行レバー19は、中立点において、例えばレバー本体23の上端部23aが下端部23bよりも後方に配置されている。また、レバー本体23の上端部23aには、左側に張り出すグリップ19aが設けられている。操縦者は、例えばグリップ19a又は左ペダル24を操作することで、左走行レバー19を操作することができる。
図6では、実線で示された状態が中立点の左走行レバー19である。左走行レバー19は、下端部19bを基点として揺動可能である。左走行レバー19の上端部のグリップ19aは、前後方向Xに移動可能となっている。左走行レバー19は、左クローラ3aの回転操作の指示に利用される。操縦者は、左走行レバー19を前後方向Xに操作することで、左クローラ3aの回転方向を操作することができる。具体的には、左走行レバー19のグリップ19aを前方に移動させると、左クローラ3aが前進する方向に回転し、左走行レバー19のグリップ19aを後方に移動させると、左クローラ3aが後退する方向に回転する。左走行レバー19を中立点に配置すると、左クローラ3aの回転を停止させることができる。
右走行レバー20は、例えば操縦席9の前方かつ中央より右側に配置されている。右走行レバー20は、操縦席9の前方の床面21から上方に伸びている。右走行レバー20は、床面21から前方に伸びる基部25と、基部25の先端部25aから上方に伸びるレバー本体(棒状部)26と、を備える。基部25には、右ペダル27が連結されている。レバー本体26は、斜め後方に傾斜するように伸びている。右走行レバー20は、中立点において、例えばレバー本体26の上端部26aが下端部26bよりも後方に配置されている。また、レバー本体26の上端部26aには、右側に張り出すグリップ20aが設けられている。操縦者は、例えばグリップ20a又は右ペダル27を操作することで、右走行レバー20を操作することができる。
次に、建設機械2を遠隔操作する遠隔操作システム1について説明する。遠隔操作システム1は、図7に示されるように、各種操作レバー10を操作する複数の駆動ユニット31〜34と、複数の駆動ユニット31〜34を制御する制御ユニット35と、制御ユニット35に指令信号を送信する操作ユニット36とを備える。駆動ユニット31〜34は、操縦席9の近傍に配置されて、操作レバー10を操作するものである。なお、図2〜図4では、駆動ユニット31〜34が設置される前の状態を示している。駆動ユニット31〜34としては、左作業レバー17を操作する駆動ユニット31と、右作業レバー18を操作する駆動ユニット32と、左走行レバー19を操作する駆動ユニット33と、右走行レバー20を操作する駆動ユニット34とがある。左作業レバー17を操作する駆動ユニット31は、図8及び図9に示されるように、左作業レバー17を保持する保持部37と、保持部37に連結された動力伝達部材38と、動力伝達部材38をその長手方向に駆動する第1電動アクチュエータ39と、動力伝達部材38を揺動させる第2電動アクチュエータ40と、を備える。
保持部37は、例えばカップ部を含み、左作業レバー17を保持する。カップ部は、円筒体37aと、底部37bとを備える。円筒体37aの内径は、左作業レバー17の外径に対応している。円筒体37aは、左作業レバー17の上端部17aを挿入可能な大きさを有する。底部37bは、円盤状を成し円筒体37aの一方の端部を覆うように形成されている。保持部37は、動力伝達部材38の先端部38aに連結されている。動力伝達部材38は、例えば棒状を成し、左作業レバー17が中立点にある状態において、前後方向Xに延在している。また、円筒体37aの開口部の周縁には、コーン部(ガイド形状)37cが設けられている。コーン部37cは、下方に向かうにつれて、内径が大きくなっている筒体である。コーン部37cの下端部の内径は、円筒体37aの内径より大きい。
動力伝達部材38の後端部38bは、第1電動アクチュエータ39に接続されている。第1電動アクチュエータ39は、ボールねじ部41と、第1電動モータ42とを備える。ボールねじ部41は、動力伝達部材38の長手方向に沿って延在している。ボールねじ部41は、動力伝達部材38をその長手方向に移動させる。例えば、動力伝達部材38が、前後方向Xに沿って延在している場合には、動力伝達部材38は、前後方向Xに移動可能であり、左作業レバー17の上端部17aを前後方向Xに移動させる。
第1電動モータ42は、例えばステッピングモータである。第1電動モータ42の出力軸は、ボールねじ部41に連結され、第1電動モータ42の出力は、ボールねじ部41に伝達される。これにより、ボールねじ部41を駆動することができる。第1電動モータ42の出力をボールねじ部41に伝達する伝達機構としては、例えば、歯車、ラック、ベルト等を用いることができる。
第2電動アクチュエータ40は、第2電動モータ43と、回転支持部44と、を備える。第2電動モータ43は、例えばステッピングモータである。第2電動モータ43の出力軸43aは、例えば上下方向Zに沿って延在している。回転支持部44は、ボールねじ部41を回転可能に支持している。回転支持部44は、第2電動モータ43の出力軸43aに連結されて、出力軸43a回りに回転する。これにより、ボールねじ部41を上下方向Zに延在する回転軸線回りに回転させて、左作業レバー17の上端部17aを左右方向Yに移動させることができる。また、回転支持部44は、左右方向Yに延在する支持ピン44aを備えている。この支持ピン44aは、ボールねじ部41に連結されている。これにより、ボールねじ部41は左右方向Yに延在する支持ピン44a回りに揺動可能となっている(図12参照)。
また、駆動ユニット31は、当該駆動ユニット31を操縦席9に対して固定する固定支持部45を備える。固定支持部45は、例えば箱形を成している。固定支持部45の底板45aは、例えば左側の肘掛け部15の天面15aに着脱可能に固定されている。底板45aは、例えばクランプ部材、ボルトナット等を用いて肘掛け部15に固定されている。また、固定支持部45の天板45bには、第2電動モータ43が固定されている。第2電動モータ43の出力軸43aは、固定支持部45の天板45bを貫通し、固定支持部45の内部に配置された回転支持部44に連結されている。右作業レバー18を操作する駆動ユニット32は、左作業レバー17を駆動ユニット31と同様の構成であるため、ここでの説明は省略する。左走行レバー19を操作する駆動ユニット33は、図10に示されるように、左走行レバー19を保持する保持部46と、保持部46に連結された動力伝達部材47と、動力伝達部材47をその長手方向に駆動する第1電動アクチュエータ48と、を備える。
保持部46は、例えばU字状の把持部を含み、左走行レバー19を保持する。保持部46は、図11に示されるように、左走行レバー19が延在する方向から見て、U字状を成している。図11では、中立点に存在する左走行レバー19を保持する保持部46、動力伝達部材47及びボールねじ部49を実線で示している。保持部46は、動力伝達部材47の先端部47aに連結されている。保持部46は、動力伝達部材47が延在する方向において、左走行レバー19を両側から挟んで保持する一対の把持片46a,46bを備える。一対の把持片46a,46bは、例えば棒状を成し、左右方向Yに延在し、前後方向Xに対向して配置されている。一対の把持片46a,46bを連結する連結片46cは、左右方向Yにおいて外側(図示左側)に配置されている。把持片46a,46bの先端部同士は、連結されていない。保持部46は、動力伝達部材47の先端部47aに連結されている。動力伝達部材47は、例えば棒状を成している。動力伝達部材47は、左右方向Yから見て斜め下方に向かって延在している。
動力伝達部材47の後端部47bは、第1電動アクチュエータ48に接続されている。第1電動アクチュエータ48は、ボールねじ部49と、第1電動モータ50とを備える。ボールねじ部49は、動力伝達部材47の長手方向に沿って延在している。ボールねじ部49は、動力伝達部材47をその長手方向に移動させる。例えば、動力伝達部材47が、前方に張り出すことで、左走行レバー19の上端部のグリップ19aを前方に移動させ、動力伝達部材47が、後退することで、左走行レバー19のグリップ19aを後方に移動させる。
第1電動モータ50は、例えばステッピングモータである。第1電動モータ50の出力軸は、ボールねじ部49に連結され、第1電動モータ50の出力は、ボールねじ部49に伝達される。これにより、ボールねじ部49を駆動することができる。第1電動モータ50の出力をボールねじ部49に伝達する伝達機構としては、例えば、歯車、ラック、ベルト等を用いることができる。
また、駆動ユニット33は、当該駆動ユニット33を操縦席9の前方の床面21に対して固定する固定支持部51を備える。固定支持部51は、床面から上方に張り出すように配置されている。固定支持部51の上端部51aにボールねじ部49の後端部49aが連結されている。ボールねじ部49は、固定支持部51に支持されて、Y軸方向に延在する回転軸線回りに揺動可能となっている。例えば、動力伝達部材47の伸長量(ストローク)に応じて、姿勢が変化する。また、固定支持部51の上端部51aは、上下方向Zに延在する回転軸線回りに回転可能となっている。右走行レバー20を操作する駆動ユニット34は、左走行レバー19を操作する駆動ユニット33と同様の構成であるため、ここでの説明は省略する。
ここで、遠隔操作システム1は、図8、図11及び図12に示されるように、建設機械2における操作を停止する停止装置61〜64を備えている。停止装置61〜64は、例えば、駆動ユニット31〜34が作動しなくなった場合に、操作レバー10の操作を停止し、操作レバー10を中立点に復帰させて、建設機械2を停止させる。停止装置60は、各操作レバー10の操作をそれぞれ停止することができ、各操作レバー10の操作に基づく建設機械2の動作を停止することができる。詳しくは後述する。
次に図7を参照して制御ユニット35について説明する。制御ユニット35は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)等のハードウェアと、ROMに記憶されたプログラム等のソフトウェアとから構成されたコンピュータである。制御ユニット35は、入力信号回路、出力信号回路、電源回路などを含む。制御ユニット35は、制御部52と、位置検出部53と、停止装置制御部54と、通信部55とを備える。停止装置制御部54は、非常停止判定部56と、非常停止要求部57と、復帰要求部58とを備える。停止装置制御部54は、停止装置61〜64の制御を司る。停止装置制御部54については後述する。制御部52は、操作ユニット36から送信された指令信号に基づいて、第1電動モータ42,50及び第2電動モータ43を制御する。制御部52は、第1電動モータ42,50及び第2電動モータ43のトルク制御を行い、第1電動アクチュエータ39,48及び第2電動アクチュエータ40を駆動して、各種操作レバー10を各々操作可能である。
位置検出部53は、各種操作レバー10の位置を検出する。位置検出部53は、第1電動モータ42,50及び第2電動モータ43に取り付けられたエンコーダからの信号を受信して、第1電動モータ42,50及び第2電動モータ43の出力軸の回転位置を検出することができる。位置検出部53は、出力軸の回転位置に基づいて、動力伝達部材38,47の伸長量及び揺動角を演算し、操作レバー10における位置を検出することができる。操作レバー10の位置とは、例えば、操作レバー10の上端部の位置でもよく、保持部37,46の位置でもよく、その他の位置でもよい。位置検出部53は、例えば中立点を基準とし、中立点からの操作レバー10の上端部の位置を検出することができる。具体的には、位置検出部53は、第1電動モータ42のエンコーダから出力された信号を検出して、動力伝達部材38の伸長量を演算することができる。また、位置検出部53は、第2電動モータ43のエンコーダから出力された信号を検出して、動力伝達部材47の揺動角を演算することができる。また、位置検出部は、第1電動モータ50のエンコーダから出力された信号を検出して、動力伝達部材47の伸長量を演算することができる。通信部55は、操作ユニット36と無線通信を行い、操作ユニット36から送信された指令信号を受信する。
操作ユニット36は、リモートコントローラであり、使用者が操作入力可能なレバー等が設けられている。操作ユニット36には、例えば、左作業レバー17に対応するレバー、右作業レバー18に対応するレバー、左走行レバー19に対応するレバー、右走行レバー20に対応するレバーがそれぞれ設けられている。
次に、遠隔操作システム1の停止装置61〜64について説明する。停止装置61〜64としては、左作業レバー17の操作を停止する停止装置61と、右作業レバー18の操作を停止する停止装置62と、左走行レバー19の操作を停止する停止装置63と、右走行レバー20の操作を停止する停止装置64とがある。左作業レバー17の操作を停止する停止装置61は、図8及び図12に示されるように、左作業レバー17を着脱可能に保持する上記の保持部37と、左作業レバー17に装着されている保持部37を、左作業レバー17から取外す保持部取外機構65と、左作業レバー17から保持部37が取り外された後に、左作業レバー17を中立点に復帰させる復帰機構66(図5参照)と、中立点に復帰した左作業レバー17に、保持部37を装着する保持部装着機構67と、を備える。
保持部取外機構65は、左作業レバー17から遠ざかる方向に保持部37を引っ張る引張部材68を備えている。保持部取外機構65は、保持部37を上方に引っ張る引張部材68を備える。引張部材68は、例えば引張コイルバネを含む。引張部材68は、引張コイルバネに限定されず、その他のバネ部材、弾性部材等を備えるものでもよい。引張部材68は、例えば上下方向Zに延在している。引張部材68の下端部68aは、保持部37に連結され、引張部材68の上端部68bは、固定部69に連結されている。固定部69は、例えば、操縦室の天井に設けられている。固定部69は操縦室の天井に設けられているものに限定されず、操縦席9の周囲に設けられたフレーム等でもよい。また、固定部69は、例えば、中立点に存在する左作業レバー17の上方に配置されている。
復帰機構66は、図5に示されるように、左作業レバー17の下端部17bに連結された複数のバネ部材66a,66bを含む。複数のバネ部材66aは、左作業レバー17を挟んで前後方向Xの両側に2個設けられている。また、複数のバネ部材66bは、左作業レバー17を挟んで左右方向Yの両側に2個設けられている。左作業レバー17は、複数のバネ部材66a,66bによって、前後方向Xの両側から引っ張られると共に左右方向Yの両側から引っ張られ、中立点に配置されるようになっている。操縦者による力が作用していない状態であり、且つ、駆動ユニット31による力が作用していない状態において、左作業レバー17は中立点に配置される。なお、復帰機構66は、バネ部材66a,66bを備えるものに限定されず、例えば、その他のアクチュエータ(例えば油圧シリンダ、電動モータ)、動力伝達部材(例えばワイヤー部材)等を備えるものでもよい。
保持部装着機構67は、図8及び図12に示されるように、保持部37に連結されたワイヤー部材(紐状部材)70と、ワイヤー部材70を巻き取り可能な電動リール71と、を備える。ワイヤー部材70は、上下方向Zに延在し、ワイヤー部材70の上端部70aは、保持部37に連結され、ワイヤー部材70の下端部70bは、電動リール71に連結されている。ワイヤー部材70の上端部70aは、例えば保持部37のコーン部37cの下端部に連結されている。
電動リール71は、ワイヤー部材70を巻き取るリール部72と、リール部72を回転駆動する第3電動モータ73と、を備える。リール部72は、回転軸線回りに回転可能な円筒体を備え、この円筒体の外周面にワイヤー部材70が巻き付けられる。第3電動モータ73は、例えばステッピングモータである。第3電動モータ73では、出力軸の回転角度及び停止位置が制御される。第3電動モータ73の出力軸は、リール部72に連結され、第3電動モータ73の出力は、リール部72に伝達される。電動リール71は、左作業レバー17に装着された状態の保持部37より下方に配置されている。電動リール71は、例えば、肘掛け部16に取り付けられている。なお、電動リール71は、操縦席9の床面21等、その他の物に対して取り付けられていてもよい。
保持部37が左作業レバー17に装着されている状態において、電動リール71がワイヤー部材70を巻き取ることで、ワイヤー部材70に張力を発生させつつ、保持部37が左作業レバー17から外れないようにすることができる。また、電動リール71による巻き取りを解除して、リール部72が回転可能な状態とすることで、ワイヤー部材70はリール部72から繰り出され、保持部37は引張部材によって引き上げられる。これにより、図12に示されるように、保持部37が左作業レバー17から外れるので、左作業レバー17が中立点に復帰して、左作業レバー17の操作に基づく建設機械2の動作が停止する。ここでは、アーム7の動作が停止される。
また、保持部37が左作業レバー17から外れており、保持部37が左作業レバー17の上方に配置された状態であり、左作業レバー17が中立点に配置されている状態において、電動リール71によるワイヤー部材70を巻き取ることにより、保持部37を引き下げて、左作業レバー17に装着することができる。保持部装着機構67は、中立点の左作業レバー17に対応する位置に保持部37を戻し、カップ状の保持部37を左作業レバー17の上端部17aに被せることができる。また、保持部37の下端部には、コーン部37cが形成されて、開口部が大きくなっているので、このコーン部37cに左作業レバー17の上端部17aが当たり、円筒体37aの中心と左作業レバー17の上端部17aの中心とが接近するように保持部37が好適に案内される。これにより、保持部37は左作業レバー17の上端部17aに嵌まる。右作業レバー18の操作を停止する停止装置62は、左作業レバー17の操作を停止する停止装置61と同様の構成であるため、ここでの説明は省略する。
次に、左走行レバー19の操作を停止する停止装置63について説明する。停止装置63は、図11に示されるように、左走行レバー19を着脱可能に保持する上記の保持部46と、左走行レバー19に装着されている保持部46を、左走行レバー19から取外す保持部取外機構74と、左走行レバー19から保持部46が取り外された後に、左走行レバー19を中立点に復帰させる復帰機構(不図示)と、中立点に復帰した左走行レバー19に、保持部46を装着する保持部装着機構75と、を備える。
保持部取外機構74は、左走行レバー19から遠ざかる方向に保持部46を引っ張るワイヤー部材(引張部材)76と、ワイヤー部材76を巻き取る電動リール77と、を備えている。ワイヤー部材76は、保持部46を側方(左側)に引っ張る紐状の引張部材である。ワイヤー部材76は、例えば左右方向Yに延在している。ワイヤー部材76の長手方向の一方の端部である第1端部76aは、保持部46に連結されている。ワイヤー部材76の長手方向の他方の端部である第2端部76bは、電動リール77に連結されている。
電動リール77は、ワイヤー部材76を巻き取るリール部78と、リール部78を回転駆動する第4電動モータ79と、を備える。リール部78は、回転軸線回りに回転可能な円筒体を備え、この円筒体の外周面にワイヤー部材76が巻き付けられる。第4電動モータ79は、例えばステッピングモータである。第4電動モータ79では、出力軸の回転角度及び停止位置が制御される。第4電動モータ79の出力軸は、リール部78に連結され、第4電動モータ79の出力は、リール部78に伝達される。電動リール77は、左走行レバー19に装着された状態の保持部46より左側の側方に配置されている。電動リール77は、例えば、操縦室のフレーム等に取り付けられている。電動リール77は、例えば、操縦室の床面等、その他の物に対して取り付けられていてもよい。
復帰機構は、左走行レバー19の下端部19bに連結されたバネ部材(不図示)を含み、左走行レバー19は、バネ部材によって引っ張られ、中立点に配置される。操縦者による力が作用していない状態であり、且つ、第1電動アクチュエータ48による力が作用していない状態において、左走行レバー19は中立点に配置される。なお、復帰機構は、バネ部材を備えるもの限定されず、例えば、その他のアクチュエータ(例えば油圧シリンダ、電動モータ)、動力伝達部材(例えばワイヤー部材)等を備えるものでもよい。
保持部装着機構75は、図11に示されるように、ボールねじ部49に連結されたバネ部材80を備える。バネ部材80は、左右方向Yに延在している。バネ部材80の長手方向の一方の端部であるの第1端部80aは、ボールねじ部49に連結され、他方の端部である第2端部80bは、固定部81に連結されている。固定部81は、例えば床面21に対して取り付けられている。固定部81は、左右方向Yにおいてボールねじ部49より右側に配置されている。例えば、固定部81は、左右方向Yにおいて隣り合う右走行レバー20を駆動するボールねじ部49に設けられていてもよい。
停止装置63では、保持部46が左走行レバー19に装着されている状態において、バネ部材80がボールねじ部49を右側に引っ張ることで、保持部46が左側に移動することが防止される。保持部46が左走行レバー19に装着されている状態が維持される。
そして、電動リール77がワイヤー部材76を巻き取ることで、ワイヤー部材76が保持部46を引っ張り、保持部46が左側に移動し、左走行レバー19から離間する。これに伴い、動力伝達部材47及びボールねじ部49の先端部側が左側に移動する。これにより、保持部46が左走行レバー19から外れるので、左走行レバー19が中立点に復帰して、左走行レバー19の操作に基づく建設機械2の動作が停止する。すなわち、左クローラ3aの回転が停止する。
また、保持部46が左走行レバー19から外れており、保持部46が左走行レバー19の側方に配置された状態であり、左走行レバー19が中立点に配置されている状態において、電動リール77によりワイヤー部材76を繰り出すと共に、バネ部材80によってボールねじ部49が右側に引っ張られることにより、保持部46が右側に移動して、左走行レバー19に装着される。保持部装着機構75は、中立点の左走行レバー19に対応する位置に保持部46を戻し、保持部46を左走行レバー19に嵌めることができる。右走行レバー20の操作を停止する停止装置64は、左走行レバー19の操作を停止する停止装置63と同様の構成であるため、ここでの説明は省略する。
次に、図7を参照して、停止装置61〜64の制御に利用される停止装置制御部54について説明する。停止装置制御部54は、上記の通り、非常停止判定部56と、非常停止要求部57と、復帰要求部58とを備える。非常停止判定部56は、建設機械2の動作について非常停止を行うか否かを判定する。非常停止判定部56は、例えば、駆動ユニット31〜34の不具合を検出した場合に、非常停止を行うと判定する。例えば、電力供給が不可能となり、第1電動モータ42,50又は第2電動モータ43が動作しない場合には、非常停止を行うと判定する。
非常停止要求部57は、非常停止を行うと判定した場合に、操作レバー10による操作を停止するための各種制御を行う。例えば、非常停止要求部57は、第3電動モータ73に指令信号を送信して、リール部72の回転停止を解除して、リール部72をフリーとして回転させる。例えば、第3電動モータ73への電力供給を停止して、リール部72の拘束を解除してもよい。また、非常停止要求部57は、第4電動モータ79に指令信号を送信して、リール部78を回転させて、ワイヤー部材76を巻き取り、保持部46を取り外す。図11では、保持部46が外れた状態を仮想線で示している。
復帰要求部58は、非常停止後において、保持部37,46を操作レバー10に再装着させる制御を行う。例えば、復帰要求部58は、第3電動モータ73に指令信号を送信して、リール部72を回転させて、ワイヤー部材70を巻き取り、保持部37を左作業レバー17に装着する。また、復帰要求部58は、第4電動モータ79に指令信号を送信して、リール部78による巻き取りを解除して、ワイヤー部材76を繰り出し、保持部46を右側に移動させて、保持部46を左走行レバー19に装着させる。
本実施形態の遠隔操作システム1の停止装置61〜64は、復帰機構66を備えているので、操作レバー10から保持部37,46が取り外された後に、操作レバー10を中立点に復帰させることができる。操作レバー10に対する保持部37,46の拘束が解除されて、操作レバー10が中立点に復帰する。これにより、操作レバー10による指示が0となるので、建設機械2の動作を停止することができる。また、停止装置61〜64は、保持部装着機構67,75を備えているので、建設機械2の動作を停止させた後、中立点に存在する操作レバー10に対して、保持部37,46を移動して装着することができる。
保持部取外機構65は、保持部37を上方に引っ張る引張部材68を備えているので、保持部37を引っ張ることで、保持部37を左作業レバー17(または右作業レバー18)から遠ざけて取り外すことができる。また、保持部取外機構74は、保持部46を側方に引っ張るワイヤー部材76を備えているので、保持部46を引っ張ることで、保持部46を左走行レバー19(または右走行レバー20)から遠ざけて取り外すことができる。また、保持部装着機構67は、保持部37に連結されたワイヤー部材70と、ワイヤー部材70を巻き取り可能なリール部72と、を備えているので、リール部72によってワイヤー部材70を巻き取り、当該ワイヤー部材70に連結された保持部37を中立点の左走行レバー19に引き寄せて対応する位置に戻して再装着することができる。
また、保持部37は、左作業レバー17の上端部17aに嵌まる円筒体37aを含んでいるので、上端部17aに嵌まっている保持部37を引っ張るだけで取り外すことができる。これにより、左作業レバー17を中立点に復帰させて、建設機械2の動作を停止することができる。また、取り外された保持部37を対応する位置に戻して中立点の左作業レバー17の上端部17aに被せることで、保持部37を上端部17aに装着することができる。そのため、保持部37の取り付け、取り外しを容易に行うことができる。また、保持部37には、コーン部37cが設けられているので、保持部37を左作業レバー17に装着する際に、コーン部37cが左作業レバー17の上端部17aに当たり、左作業レバー17の上端部17aが円筒体37aの中央部(開口部の径方向における中央部)に配置されるように円筒体37aが案内される。その結果、保持部37が左作業レバー17に嵌まり易くなる。
また、保持部46は、左右方向Yの外側からレバー本体23に嵌まるU字状の把持部(一対の把持片46a,46b)を備えている。レバー本体23が上下方向(第1方向)Zに延在し、U字状の把持部は、左右方向(第1方向に交差する第2方向)Yからレバー本体23に嵌まるので、保持部46を左右方向Yの外側に移動させて、保持部46をレバー本体23から外すことができる。また、保持部46をレバー本体23に再装着する際には、保持部46を左右方向Yの内側に移動させて戻し、レバー本体23に嵌めることができる。
本開示は、前述した実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で下記のような種々の変形が可能である。上記の実施形態では、操作部材を操作レバー10として説明しているが、操作部材は操作レバー10に限定されず、例えば、ステアリングホイール、ペダルなどその他の操作部材でもよい。また、上記の実施形態では、保持部37を引張部材68によって引っ張ることで、保持部37を操作レバー10から取り外しているが、例えば、保持部37に連結された動力伝達部材38を移動させることで、保持部37を取り外してもよい。同様に、動力伝達部材38を移動させて、保持部37を操作レバー10に装着させることも可能である。