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JP6993245B2 - ナノセルロース分散組成物及び塗料組成物 - Google Patents

ナノセルロース分散組成物及び塗料組成物 Download PDF

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JP6993245B2
JP6993245B2 JP2018006521A JP2018006521A JP6993245B2 JP 6993245 B2 JP6993245 B2 JP 6993245B2 JP 2018006521 A JP2018006521 A JP 2018006521A JP 2018006521 A JP2018006521 A JP 2018006521A JP 6993245 B2 JP6993245 B2 JP 6993245B2
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Description

本発明は、ナノセルロース分散組成物及び該ナノセルロース分散組成物を含有する塗料組成物に関する。
近年、塗膜や樹脂成型品などにおいて、熱線膨張係数の低減、曲げ強度等の機械的強度を上げるためにセルロース繊維を配合することが広く行われている。また、セルロース繊維が有する機械的強度を更に向上させる目的で、セルロース繊維を解繊して得られるセルロースナノファイバー(CNF)が開発されている。上記CNFと同様にセルロース繊維を解繊処理したものとして、セルロースナノクリスタル(CNC)が知られている。上記CNF及びCNCは、総称してナノセルロースと称される。
セルロース繊維は表面に水酸基を多数有するため水素結合力が高く、通常の樹脂組成物や溶媒に配合しても均一に分散せず凝集してしまう。それゆえ分散性、貯蔵安定性、塗膜物性、透明性、及び仕上がり性が不十分であり、充分な性能を発現することが困難であった。
そこで、セルロース繊維を溶液中で安定化させるために様々な分散剤が提案されている。例えば、特許文献1には、直径が4~1000nmであるセルロース繊維と有機性カチオン化合物とからなる有機化繊維が開示されている。また、引用文献2には、単糖あたりの陰イオンの価数が0.01~0.50であるアニオン性セルロースナノファイバーとカチオン性添加剤との中和物が開示されている。
しかしながら、これらの分散剤は、セルロース繊維の分散性と貯蔵安定性のバランスがまだ十分でない場合があった。
特開2011-47084号公報 国際公開第2015/050117号公報
本発明が解決しようとする課題は、分散性と貯蔵安定性に優れたナノセルロース分散組成物及び塗料組成物を提供することである。
発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、酸基含有ナノセルロース(A)、アミノ基含有分散剤(B)、及び溶媒(C)を含有するナノセルロース分散組成物によって、上記課題の解決が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下のナノセルロース分散組成物及び塗料組成物を提供するものである。
項1.酸基含有ナノセルロース(A)、アミノ基含有分散剤(B)、及び溶媒(C)を含有することを特徴とするナノセルロース分散組成物。
項2.酸基含有ナノセルロース(A)が、カルボキシル基含有ナノセルロース(A-1)、スルホン酸基含有ナノセルロース(A-2)、ホスホノ基含有ナノセルロース(A-3)からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記項1に記載のナノセルロース分散組成物。
項3.アミノ基含有分散剤(B)が、ポリカプロラクトン鎖を有するアミノ基含有分散剤(B-1)及び/又はアミノ基含有アクリル樹脂(B-2)であることを特徴とする前記項1又は2に記載のナノセルロース分散組成物。
項4.アミノ基含有アクリル樹脂(B-2)が、アミノ基含有セグメント及びその他のセグメントを有するブロック共重合体であることを特徴とする前記項3に記載のナノセルロース分散組成物。
項5.アミノ基含有アクリル樹脂(B-2)の重量平均分子量が1,000~100,000であることを特徴とする前記項3又は4に記載のナノセルロース分散組成物。
項6.酸基含有ナノセルロース(A)の酸価が1mgKOH/g以上、かつアミノ基含有分散剤(B)のアミン価が1mgKOH/g以上であり、酸基含有ナノセルロース(A)の酸基とアミノ基含有分散剤(B)のアミノ基との当量比が、1.0:0.1~0.1:1.0の範囲内であることを特徴とする前記項1~5のいずれか1項に記載のナノセルロース分散組成物。
項7.前記項1~6のいずれか1項に記載のナノセルロース分散組成物、水酸基含有樹脂(D)、及び硬化剤(E)を含有することを特徴とする塗料組成物。
項8.塗料組成物中に、酸基含有ナノセルロース(A)が、樹脂固形分を基準として、0.01~10質量%含有することを特徴とする前記項7に記載の塗料組成物。
項9.塗料組成物中に、アミノ基含有分散剤(B)が、樹脂固形分を基準として、0.01~10質量%含有することを特徴とする前記項7又は8に記載の塗料組成物。
項10.水酸基含有樹脂(D)が、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記項7~9のいずれか1項に記載の塗料組成物。
項11.硬化剤(E)が、メラミン樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記項7~10のいずれか1項に記載の塗料組成物。
項12.顔料を含有することを特徴とする前記項7~11のいずれか1項に記載の塗料組成物。
項13.前記項7~12に記載の塗料組成物を被塗物上に塗布して得られる塗装物品。
本発明のナノセルロース分散組成物及び塗料組成物は、優れた分散性と貯蔵安定性を有し、該ナノセルロース分散組成物及び塗料組成物を塗布した膜は、膜物性及び仕上がり性に優れる。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含むものとして理解されるべきである。
尚、本明細書において、「(ナノ)セルロース」は、セルロース及び/又はナノセルロースを意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを意味する。また、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド及び/又はメタクリルアミドを意味する。また、「重合性不飽和モノマー」とは、ラジカル重合しうる重合性不飽和基を有するモノマーを意味し、該重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、アクリルアミド基、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルエーテル基などが挙げられる。
ナノセルロース分散組成物
本件発明のナノセルロース分散組成物は、酸基含有ナノセルロース(A)、アミノ基含有分散剤(B)、及び溶媒(C)を含有する組成物であり、アミノ基含有分散剤(B)によって溶媒(C)中で酸基含有ナノセルロース(A)が安定に存在することができる。
また、ナノセルロース分散組成物の固形分としては、安定性と粘度の観点から、0.1~20質量%が好ましく、0.2~10質量%がより好ましい。ナノセルロース分散組成物中の酸基含有ナノセルロース(A)の固形分含有量としては、0.08~18質量%が好ましく、0.15~9質量%がより好ましい。
酸基含有ナノセルロース(A)
本発明で使用することができる酸基含有ナノセルロース(A)は、例えば、酸基〔カルボキシル基(COOH)、スルホン酸基(SOH)、ホスホノ基(PO)〕等の酸基が結合しているナノセルロースであり、カルボキシル基含有ナノセルロース(A-1)、スルホン酸基含有ナノセルロース(A-2)、ホスホノ基含有ナノセルロース(A-3)からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、カルボキシル基含有ナノセルロース(A-1)及び/又はスルホン酸基含有ナノセルロース(A-2)であることがより好ましい。
上記カルボキシル基含有ナノセルロース(A-1)の製造方法としては、例えば、(ナノ)セルロース(a)を原料として、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシルの存在下、次亜塩素酸のような酸化剤を作用させて酸化反応を進行させることにより、セルロース鎖の構成モノマー単位であるグルコピラノーズ環中のC6位の一級水酸基のみが選択的に酸化され、アルデヒドを経由してカルボキシル基にまで酸化させて得ることができる。(「Cellulose」Vol.5、1998年、第153~164ページ)
スルホン酸基含有ナノセルロース(A-2)の製造方法としては、それ自体既知の方法を用いることができ、具体的には、例えば、(ナノ)セルロースを原料として、過ヨウ素酸ナトリウムで処理した後、亜硫酸水素ナトリウムを用いてスルホン化反応を起こすことによって得ることができる。
ホスホノ基含有ナノセルロース(A-3)の製造方法としては、例えば、特開昭57-102901に記載された方法によって得ることができる。
上記酸基含有ナノセルロース(A)の酸価としては、1mgKOH/g以上が好ましく、5~100mgKOH/gの範囲内であることがより好ましい。
ナノセルロース
本発明に用いられる酸基含有ナノセルロース(A)の原料であるナノセルロースとしては、セルロース繊維を含む材料(例えば、木材パルプ等)をナノサイズレベルまで解きほぐした(解繊処理した)セルロースであり、具体的には、例えば、セルロースナノファイバー(CNF)、セルロースナノクリスタル(CNC)、CNFとCNCの複合体からなる群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。特に、CNF及び/又はCNCを用いることが好ましい。
上記ナノセルロースは、その数平均繊維径が1~500nmのものである。数平均繊維径が1nm以上である場合、セルロース分子間の水素結合が維持されており、ミクロフィブリル構造が維持されており十分な強度を負担することができる。また、数平均繊維径が500nm以下の場合、炭素繊維に付着させた際の分散状態が均一になり、均等に荷重負担させることができるため、高強度な破壊靱性を有する材料を提供できる。ナノセルロースの数平均繊維径は1.2~200nmの範囲内であることがより好ましく、1.5~50nmの範囲内であることが更に好ましい。
上記ナノセルロースは、数平均長さが10~10,000nmであることが好ましい。ナノセルロースの数平均長さが10nm以上であると、周辺のマトリックスからの応力を繊維方向に負担することができ十分に強度を発現することができる。ナノセルロースの数平均長さが10,000nmよりも小さいと、ナノセルロース間で凝集が生じにくく、ナノセルロース分散組成物を塗布した際に均一に存在することができる。数平均長さは20~2,000nmの範囲内であることがより好ましく、30~600nmの範囲内であることが更に好ましい。
セルロースナノファイバーの数平均繊維径と数平均長さについてはSEM解析により調べることができ、例えば、セルロースナノファイバー50本を調べてその平均値で算出することができる。
本発明に用いられるナノセルロースは、数平均長さと数平均繊維径の比である数平均アスペクト比が3~10,000であることが好ましく、5~1,000であることがより好ましい。ナノセルロースの数平均アスペクト比が上記範囲であると、塗布した際に均一な網目状の皮膜を形成することができ、十分な靭性を付与することができる。
本発明に用いられるナノセルロースは、セルロースI型結晶を有しその結晶化度が50%以上であるものを用いることができる。セルロースI型結晶を有しその結晶化度が50%以上であるナノセルロースは、天然セルロース由来のミクロフィブリル構造を維持することで十分な機械強度を確保することができる。セルロースI型結晶であることは、ナノセルロース分散液を乾燥させ、フィルム上にしたものについて粉末X線回折を測定することにより分析することができる。X線回折パターンが、14≦θ≦18に1つ又は2つのピークと、20≦θ≦24に1つのピークとを有する場合にI型結晶が存在するとみなすことができる。結晶化度は全セルロース由来のピーク面積中のセルロースI型結晶の由来のピーク面積比から求めることができる。
上記ナノセルロース製品としては、例えば、「ナノセルロースファイバー」(中越パルプ工業(株)製)、「BiNFi-s」(スギノマシン(株)製)、「レオクリスタ」(第一工業製薬(株))、「セルロースナノファイバー」(モリマシナリー(株)製)などが挙げられる。
アミノ基含有分散剤(B)
本件発明で用いることができるアミノ基含有分散剤(B)としては、アミノ基を有する化合物であり、分子量としては重量平均分子量が100以上のものが好ましく、500以上のものがより好ましい。具体的な例としては、例えば、ポリカプロラクトン鎖を有するアミノ基含有分散剤(B-1)及び/又はアミノ基含有アクリル樹脂(B-2)が挙げられる。
アミノ基含有分散剤(B)がアミノ基を含有することにより、酸基含有ナノセルロース(A)の酸基との相互作用が起こり、組成物中において酸基含有ナノセルロース(A)の分散性及び安定性が向上するものと考えられる。
アミノ基含有分散剤(B)のアミン価としては、1mgKOH/g以上であることが好ましく、2~100mgKOH/gの範囲内であることがより好ましい。また、酸基含有ナノセルロース(A)の酸基とアミノ基含有分散剤(B)のアミノ基との当量比が、1.0:0.1~0.1:1.0の範囲内であることが好ましく、1.0:0.4~0.4:1.0の範囲内であることがより好ましく、1.0:0.7~0.7:1.0の範囲内であることが更に好ましい。
ポリカプロラクトン鎖を有するアミノ基含有分散剤(B-1)
ポリカプロラクトン鎖を有するアミノ基含有分散剤(B-1)としては、例えば、1価以上のアミノ基と1価以上のアルコールを有する化合物を開始剤、錫系化合物を触媒として、ε-カプロラクトンを開環重合することによって得ることができる。
アミノ基と1価以上のアルコールを有する化合物としては、具体的には、例えば、メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、N-メチルメタノールアミン、N-エチルメタノールアミン、N-プロピルメタノールアミン、N-ブチルメタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-プロピルエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、N-メチルプロパノールアミン、N-エチルプロパノールアミン、N-プロピルプロパノールアミン、N-ブチルプロパノールアミン、N-メチルブタノールアミン、N-エチルブタノールアミン、N-プロピルブタノールアミン、N-ブチルブタノールアミン、N,N-ジメチルメタノールアミン、N,N-ジエチルメタノールアミン、N,N-ジプロピルメタノールアミン、N,N-ジブチルメタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジプロピルエタノールアミン、N,N-ジブチルエタノールアミン、N,N-ジメチルプロパノールアミン、N,N-ジエチルプロパノールアミン、N,N-ジプロピルプロパノールアミン、N,N-ジブチルプロパノールアミン、N,N-ジメチルブタノールアミン、N,N-ジエチルブタノールアミン、N,N-ジプロピルブタノールアミン、N,N-ジブチルブタノールアミン、N,N-ジメチルペンタノールアミン、N,N-ジメチルヘキサノールアミン、N-メチルジメタノールアミン、N-エチルジメタノールアミン、N-プロピルジメタノールアミン、N-ブチルジメタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-プロピルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン、N-メチルジプロパノールアミン、N-エチルジプロパノールアミン、N-プロピルジプロパノールアミン、N-ブチルジプロパノールアミン、N-メチルジブタノールアミン、N-エチルジブタノールアミン、N-プロピルジブタノールアミン、N-ブチルジブタノールアミン、N-(アミノメチル)メタノールアミン、N-(アミノメチル)エタノールアミン、N-(アミノメチル)プロパノールアミン、N-(アミノメチル)ブタノールアミン、N-(アミノエチル)メタノールアミン、N-(アミノエチル)エタノールアミン、N-(アミノエチル)プロパノールアミン、N-(アミノエチル)ブタノールアミン、N-(アミノプロピル)メタノールアミン、N-(アミノプロピル)エタノールアミン、N-(アミノプロピル)プロパノールアミン、N-(アミノプロピル)ブタノールアミン、N-(アミノブチル)メタノールアミン、N-(アミノブチル)エタノールアミン、N-(アミノブチル)プロパノールアミン、N-(アミノブチル)ブタノールアミン等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。なかでも、分子内に1価の3級アミノ基と1価のアルコールを有する化合物が好ましい。
上記の重合又は希釈に使用される溶媒としては、特に制限はなく、水や有機溶剤、またはその混合物などを挙げることができ、具体的には、後述する溶媒(C)で挙げる溶媒を用いることができる。
上記のポリカプロラクトン鎖を有するアミノ基含有分散剤は、重量平均分子量が好ましくは100~100,000、より好ましくは500~10,000、特に好ましくは1,000~6,000の範囲内であることが好適である。
尚、本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミュエーションクロマトグラフとして、「HLC8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G-4000HXL」、「TSKgel G-3000HXL」、「TSKgel G-2500HXL」及び「TSKgel G-2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の4本を使用し、移動相テトラヒドロフラン、測定温度40℃、流速1mL/min及び検出器RIの条件下で測定することができる。
アミノ基含有アクリル樹脂(B-2)
アミノ基含有アクリル樹脂(B-2)はアミノ基を有するアクリル樹脂であり、有機溶剤の存在下で、アミノ基を有する重合性不飽和モノマーとその他の重合性不飽和モノマーを構成モノマー成分として共重合することにより合成することができる。
上記アミノ基を有する重合性不飽和モノマーとしては、具体的には、例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジ-t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。また、グリシジル基含有(メタ)アクリレートやイソシアネート基含有(メタ)アクリレートなどの反応性基含有重合性不飽和モノマーを共重合した後に該反応性基と反応するアミノ基含有化合物を反応させてアクリル樹脂にアミノ基を導入しても良い。
上記その他の重合性不飽和モノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート等の炭素数3以下のアルキル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレートなどのイソボルニル基を有する重合性不飽和化合物;アダマンチル(メタ)アクリレートなどのアダマンチル基を有する重合性不飽和化合物;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有重合性不飽和モノマー;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物、該(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物のε-カプロラクトン変性体、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコール、分子末端が水酸基であるポリオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β-カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド等のウレタン結合を含まない含窒素重合性不飽和モノマー;イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーと水酸基含有化合物との反応生成物又は水酸基含有重合性不飽和モノマーとイソシアネート基含有化合物との反応生成物等のウレタン結合を有する重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4-スチレンスルホン酸等、これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等のスルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー;2-アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2-メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等のリン酸基を有する重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランなどのアルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
アクリル樹脂の重合方法は、従来公知の方法を用いることができる。例えば、重合性不飽和モノマーを有機溶媒中で溶液重合することにより製造することができるが、これに限られるものではなく、例えば、バルク重合や乳化重合や懸濁重合等でもよい。溶液重合を行う場合には、連続重合でもよいしバッチ重合でもよく、重合性不飽和モノマーは一括して仕込んでもよいし、分割して仕込んでもよく、あるいは連続的又は断続的に添加してもよい。
重合に用いられるラジカル重合開始剤としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルパーオキシ)バレレート、クメンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジ-tert-アミルパーオキサイド、ビス(tert-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等の過酸化物系重合開始剤;2,2´-アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、アゾクメン、2,2´-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2´-アゾビスジメチルバレロニトリル、4,4´-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2-(t-ブチルアゾ)-2-シアノプロパン、2,2´-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2,2´-アゾビス(2-メチルプロパン)、ジメチル2,2´-アゾビス(2-メチルプロピオネート)等のアゾ系重合開始剤を挙げることができる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
上記の重合又は希釈に使用される溶媒としては、特に制限はなく、水や有機溶剤、またはその混合物などを挙げることができ、具体的には、後述する溶媒(C)で挙げる溶媒を用いることができる。
有機溶剤中での溶液重合において、重合開始剤、重合性不飽和モノマー成分、及び有機溶剤を混合し、攪拌しながら加熱する方法、反応熱による系の温度上昇を抑えるために有機溶剤を反応槽に仕込み、60℃~200℃の温度で攪拌しながら必要に応じて窒素やアルゴンなどの不活性ガスを吹き込みながら、重合性不飽和モノマー成分と重合開始剤を所定の時間かけて混合滴下又は分離滴下する方法などが用いられる。
重合は、一般に1~10時間程度行うことができる。各段階の重合の後に必要に応じて重合開始剤を滴下しながら反応槽を加熱する追加触媒工程を設けてもよい。
上記の通り得られるアクリル樹脂は、重量平均分子量が好ましくは1,000~100,000、より好ましくは3,000~50,000の範囲内であることが好適である。
通常のランダム共重合の他、分子構造を規制する重合方法も行うことができる。分子構造を規制された重合体としては、例えば代表的なものとして、異なる性質の(モノマー組成が異なる)ポリマーを直鎖状に結合したポリマーが合成されるブロック共重合体、幹ポリマーに異なる性質又は同質のポリマーが枝状に結合したポリマーが合成されるグラフト共重合体等を挙げることができる。
アミノ基含有アクリル樹脂(B-2)としては、酸基含有ナノセルロース(A)の分散性及び安定性を向上させる観点等から、アミノ基含有セグメント及びその他のセグメントを有するブロック共重合体が好ましい。
アミノ基含有セグメント及びその他のセグメントを有するブロック共重合体は、公知のブロック共重合体の製造方法により製造することができる。その製造方法は、特に限定されないが、例えば、下記(1)~(5)の重合法を好適に用いることができる。
[(1)ニトロキシド化合物系ラジカル重合法]
上記ニトロキシド化合物系ラジカル重合法は、ニトロキシド化合物等の安定ラジカル化合物を生長ラジカルの捕捉剤として用いて、生長末端が可逆的にドーマント種と炭素ラジカル種の状態になることができるように制御するリビングラジカル重合の方法であり、NMP(Nitroxide Mediated Living Radical Polymerization)と表現されることもある。上記ニトロキシド化合物系ラジカル重合法は、特開平6-199916号公報、特表2005-534712号公報、マクロモレキュールズ(Macromolecules)、1994年、第27巻、7228頁、等に記載の公知の方法を挙げることができる。
[(2)原子移動ラジカル重合法]
上記原子移動ラジカル重合法は、ハロゲン原子を成長末端の炭素ラジカルに付加させ、この結合したハロゲン原子に金属錯体を作用させて成長末端の炭素ラジカルの可逆的な生成を可能とする方法であり、ATRP(Atom Transfer Radical Polymerization)と表現されることもある。上記原子移動ラジカル重合法は、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(J.Am.Chem.Soc.)、1995年、第117巻、5614頁;マクロモレキュールズ(Macromolecules)、1995年、第28巻、7901頁;サイエンス(Science)、1996年、第272巻、866頁;又はマクロモレキュールズ(Macromolecules)、1995年、第28巻、1721頁、等に記載の公知の方法を挙げることができる。
[(3)可逆的付加解裂型連鎖移動重合法]
上記可逆的付加解裂型連鎖移動重合法は、ジチオエステル化合物、トリチオカーボネート化合物等のチオカルボニルチオ化合物を、生長ラジカル(X)と付加解裂型連鎖移動反応させ、生長末端をドーマント種の状態とし、他の生長ラジカル(Y)が上記生長末端に付加することにより生長ラジカル(X)が再生し、次いで、生長ラジカル(Y)がドーマント種の状態になるようなリビングラジカル重合法であり、RAFT(Reversible Addition Fragmentation Chain Transfer Radical Polymerization)と表現されることもある。上記可逆的付加解裂型連鎖移動重合法としては、例えば、国際公開第98/58974号、同第98/01478号、Aust.J.Chem.,2005年、58巻、379頁~410頁、Polymer、2007年、48巻、1頁等に記載の公知の方法を挙げることができる。
また、特開平7-002954号公報に開示されている2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテンを可逆的付加開裂型連鎖移動剤として用いたラジカル重合により得られる重合体、特公平6-23209号公報、特公平7-35411号公報等に開示されているコバルト錯体を用いた触媒的連鎖移動重合法(Catalytic Chain Transfer Polymerization)により得られる重合体又は特開2000-80288号公報に開示されている高温ラジカル重合により得られる重合体は、何れも生長末端に可逆的付加解裂連鎖移動反応することの可能な不飽和基を有しており、これらの重合体をリビングポリマーとして用いても良い。
[(4)有機テルル系リビングラジカル重合法]
上記有機テルル系リビングラジカル重合法は、有機テルル化合物を用いたリビングラジカル重合法である。当該重合法として、国際公開第2004/014962号、特開2006-299278号公報、特開2008-247919号公報等に記載の公知の方法を挙げることができる。
[(5)ヨウ素化合物系リビングラジカル重合法]
ヨウ素化合物系リビングラジカル重合法は、ヨウ素原子を成長末端の炭素ラジカルに付加させ、この結合したヨウ素原子に触媒を作用させて成長末端の炭素ラジカルの可逆的な生成を可能とする方法である。当該重合法として、特開2007-92014号公報、Polymer,2008年,49巻,24号,5177頁等に記載された公知の方法を挙げることができる。
上記(1)~(5)の重合法の中で、本発明においては、重合反応に適用可能な重合性不飽和モノマーの種類が多い観点から、(1)ニトロキシド化合物系ラジカル重合法又は(3)可逆的付加解裂型連鎖移動重合法が好ましい。なかでも、経済性、簡便性、塗膜性能の点から、特に2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテンを連鎖移動剤とする可逆的付加解裂型連鎖移動重合法により好適に製造することができる。
2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテンを連鎖移動剤とする可逆的付加解裂型連鎖移動重合法としては、具体的には例えば、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン及びラジカル重合開始剤の存在下に、第1の重合性不飽和モノマー成分をラジカル重合して、共重合体セグメント(A)として末端に重合性不飽和基を有するマクロモノマーを製造した後、該マクロモノマーの存在下に、第2の重合性不飽和モノマー成分をラジカル的付加開裂型連鎖移動重合して共重合体セグメント(B)を含むABブロック共重合体を製造する方法を挙げることができる。上記において、必須の重合性不飽和モノマーであるアミノ基を有する重合性不飽和モノマーは、共重合体セグメント(A)又は共重合体セグメント(B)の少なくとも一方に含有させることができる。
本発明においては、アミノ基を有する重合性不飽和モノマーを含む共重合体セグメントをアミノ基含有セグメント、アミノ基を実質的に含まないセグメントをその他のセグメントとする。
樹脂親和性セグメントとしては、下記式(3)で示されるポリアルキレングリコールマクロモノマーを含有することが好ましい。そのようなモノマーの具体例としては、例えば、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。これらのうち、特に、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートが好適である。
CH=C(R)COO(C2nO)m-R ・・・式(3)
〔式中、Rは水素原子またはCHを表し、Rは水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、mは4~60、特に4~55の整数であり、nは2~3の整数であり、ここで、m個のオキシアルキレン単位(C2nO)は同じであっても又は互いに異なっていてもよい。〕
上記ポリアルキレングリコールマクロモノマーの製品としては、MPEG2000MA(商品名、エボニックデグサジャパン社製、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、分子量約2,000、50%水希釈品)などが挙げられる。
上記方法により合成されたブロック共重合体としては、同様にして、ABAブロック共重合体やBABブロック共重合体、さらには、共重合体セグメント(A)及び共重合体セグメント(B)のモノマー成分とは異なる組成のモノマー成分(C)をラジカル的付加開裂型連鎖移動重合することにより、ACBブロック共重合体、ABCブロック共重合体等とすることもできる。さらに同様にして多段階の重合反応を行うことによって、ABAC、BABC、ABCA、BACB等の様々な構造を有するブロック共重合体を製造することができるが、その中の少なくとも1つの共重合体セグメントとしてアミノ基含有セグメントを含有させることができる。
ブロック共重合において、段階(重合体ブロック)の数が多すぎると生産性が低下するので、段階の数は5以下、好ましくは3以下とすることが好ましい。
なお、上記ブロック共重合体の重合において、前段の重合反応での未反応残存モノマーは、極力少なくすることが好ましいが、未反応残存モノマーが次段の重合時に存在することとなっても、未反応残存モノマーを分離することなく、次段の重合反応を行うことができる。
また、上記方法においては、製造時における重合反応の連鎖移動性の低下を抑制する観点から、各重合体ブロックを構成する重合性不飽和モノマーの50モル%以上がメタクリロイル基を有する重合性不飽和モノマーであることが好ましい。
上記において、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテンの使用量は、特に限定されるものではないが、通常、最初の反応における重合体ブロックを構成するモノマー成分(前記の第1のモノマー成分)の総量に対して、1~50質量%、好ましくは2~30質量%の範囲内であることが重合反応性の向上の観点から好ましい。
ブロック共重合により合成されたアミノ基含有セグメント及びその他のセグメントを有するブロック共重合体において、該共重合体が、共重合体セグメント(A)及び共重合体セグメント(B)からなるABブロック共重合体である場合、該ブロック共重合体を構成する全モノマーの総量を基準として、共重合体セグメント(A)を構成する重合性不飽和モノマーの総量(M1)と、共重合体セグメント(B)を構成する重合性不飽和モノマーの総量(M2)とは、(M1)が、5~95質量%、好ましくは10~90質量%、(M2)が、5~95質量%、好ましくは10~90質量%であることが、本発明の酸基含有ナノセルロースの分散安定性の観点から好ましい。また(M1)/(M2)=1/19~19/1、好ましくは1/10~10/1の範囲内であることが好ましい。
溶媒(C)
本発明で用いることができる溶媒としては、特に制限はなく、水や有機溶剤、またはその混合物などを挙げることができる。
有機溶剤としては、例えば、n-ブタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロブタンなどの炭化水素溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;n-ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールなどのエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶剤;エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール等の等のアルコール系溶剤;エクアミド(商品名、出光興産株式会社製)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N-メチルプロピオアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどのアミド系溶剤など、従来公知の溶剤を挙げることができる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
なかでも、ナノセルロースの安定性の観点から、溶媒(C)のSP値が、8.7以上であることが好ましく、9.0~24.0の範囲内であることがより好ましく、10.4~23.4の範囲内であることが更に好ましい。
ここで、SP値(ソルビリティ・パラメーター)とは、溶解性パラメーターとも呼ばれるものであって、溶媒や樹脂の親水性又は疎水性の度合い(極性)を示す尺度である。また、溶媒と樹脂、樹脂間の溶解性や相溶性を判断する上で重要な尺度となるものであり、溶解性パラメーターの値が近い(溶解性パラメーターの差の絶対値が小さい)と、一般的に溶解性や相溶性が良好となる。
溶媒の溶解性パラメーターは、J.BrandrupおよびE.H.Immergut編“Polymer Handbook” VII Solubility Parament Values,pp519-559(John Wiley& Sons社、第3版1989年発行)に記載される方法に従って求めることができる。2種以上の溶媒を組合せて混合溶媒として用いる場合、その溶解性パラメーターは、実験的に求めることができ、また、簡便な方法として、個々の液状溶媒のモル分率と溶解性パラメーターとの積の総和により求めることもできる。
また、樹脂の溶解性パラメーターは、当業者に公知の濁度測定法をもとに数値定量化されるものであり、具体的には、K.W.SUH、J.M.CORBETTの式(Journal of Applied Polymer Science,12,2359,1968)に準じて求めることができる。
上記ナノセルロース分散組成物は必要に応じてその他の成分を加えて、シート、フィルム、樹脂成型品、塗料組成物等に適用することがきる。
塗料組成物
本件発明の塗料組成物としては、上記ナノセルロース分散組成物、水酸基含有樹脂(D)、及び硬化剤(E)を含有する塗料組成物であり、熱によって硬化する熱硬化型塗料組成物であることが好ましい。
塗料組成物の製造方法としては、ナノセルロースの安定性の観点から、ナノセルロース分散組成物とその他の成分とを混合して塗料組成物を製造する方法が好ましい。
上記塗料組成物におけるナノセルロース分散組成物、水酸基含有樹脂(D)、及び硬化剤(E)の配合割合としては、塗料組成物の樹脂固形分合計質量を基準にして、ナノセルロース分散組成物が通常0.01~10質量%、好ましくは0.1~6質量%、水酸基含有樹脂(D)が、通常10~90質量%、好ましくは30~80質量%、硬化剤(E)が、通常9~60質量%、好ましくは15~50質量%の範囲内であることが、仕上がり性、硬化性、塗膜物性、仕上がり性に優れた塗装物品を得る為にも好ましい。上記範囲を外れると、塗料特性及び塗膜性能のいずれかを損うことがあり、好ましくない。
水酸基含有樹脂(D)
水酸基含有樹脂(D)としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテル樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリケート樹脂、塩素系樹脂、フッ素系樹脂、及びこれらの複合樹脂などが挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
なかでも、水酸基含有アクリル樹脂(D-1)及び/又は水酸基含有ポリエステル樹脂(D-2)を含有することが好ましい。
水酸基含有アクリル樹脂(D-1)
本発明の塗料組成物に用いることができる水酸基含有アクリル樹脂(D-1)は、水酸基を有するアクリル樹脂であり、水酸基を有する重合性不飽和モノマーとその他の重合性不飽和モノマーを構成モノマー成分として共重合することにより合成することができる。
前述のアミノ基含有アクリル樹脂(B-2)は、あらかじめ酸基含有ナノセルロース(A)と混合してナノセルロース分散組成物を製造するための分散剤であり、該水酸基含有アクリル樹脂(D-1)は、ナノセルロース分散組成物と混合して塗料を製造し、塗装して得られた塗膜の主要な構成成分である。
上記水酸基を有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物、該(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物のε-カプロラクトン変性体、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコール、分子末端が水酸基であるポリオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
上記その他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニルモノマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。また、アミノ基を有する重合性不飽和モノマーは含有しなくてもよい。
水酸基含有アクリル樹脂(D-1)は、前述のアミノ基含有アクリル樹脂(B-2)で記載した製造方法を用いて製造することができるが、ランダム共重合体であることが好ましい。
なお、水酸基含有アクリル樹脂(D-1)の水酸基価は、通常0.1~300mgKOH/gの範囲内、好ましくは10~200mgKOH/gの範囲内、重量平均分子量は、通常1,000~100,000の範囲内、好ましくは、2,000~30,000の範囲内が適当である。
水酸基含有ポリエステル樹脂(D-2)
本発明の塗料組成物に用いることができる水酸基含有ポリエステル樹脂(D-2)は、酸成分とアルコール成分のエステル化反応及び/又はエステル交換反応によって製造することができる。
上記酸成分としては、ポリエステル樹脂の製造に際して、酸成分として通常使用される化合物を特に制限なく使用することができる。上記酸成分としては、例えば、脂環族多塩基酸、脂肪族多塩基酸、芳香族多塩基酸、芳香族モノカルボン酸、脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、これらの酸の低級アルキルエステル化物等を使用することができる。
脂環族多塩基酸は、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造(主として4~6員環)と2個以上のカルボキシル基を有する化合物、該化合物の酸無水物及び該化合物のエステル化物である。
脂肪族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、該化合物の酸無水物及び該化合物のエステル化物である。
芳香族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、該芳香族化合物の酸無水物及び該芳香族化合物のエステル化物である。
また、必要に応じて、芳香族モノカルボン酸、脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸などを使用することもできる。
上記アルコール成分としては、ポリエステル樹脂の製造に際して、アルコール成分として通常使用される化合物を特に制限なく使用することができるが、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、芳香族ジオールなどの2価アルコール及び3価以上の多価アルコールを含むものが好ましい。
上記水酸基含有ポリエステル樹脂(D-2)の製造方法としては、上記酸成分とアルコール成分を、公知の方法で反応することにより製造することができる。
また、上記水酸基含有ポリエステル樹脂(D-2)は、該樹脂の調製中、もしくはエステル化反応後及び/又はエステル交換反応後に、脂肪酸、油脂、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物等で変性することもできる。
水酸基含有ポリエステル樹脂(D-2)の数平均分子量としては、仕上り性の観点から、通常1,000~20,000であり、好ましくは1,050~10,000、さらに好ましくは1,100~5,000の範囲内であることが好適である。
また、水酸基含有ポリエステル樹脂(D-2)の水酸基価としては、得られる塗膜の硬化性の観点から、通常20~300mgKOH/gであり、好ましくは30~250mgKOH/g、さらに好ましくは40~180mgKOH/gの範囲内であることが好適である。
硬化剤(E)
硬化剤(E)としては、例えば、メラミン樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。なかでも、メラミン樹脂(E-1)及び/又はブロック化ポリイソシアネート化合物(E-2)が好ましい。
メラミン樹脂(E-1)
上記メラミン樹脂(E-1)としては、それ自体既知のものを特に制限なく用いることができるが、特に、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコール及びブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチル-ブチル混合エーテル化メラミン樹脂が好ましい。
また、メラミン樹脂(E-1)は、得られる塗膜の耐水性の向上の観点から、好ましくは約400~約6,000、より好ましくは約500~約4,000、そしてさらに好ましくは約600~約3,000の重量平均分子量を有する。
メラミン樹脂(E-1)は市販されており、例えば、「サイメル202」、「サイメル203」、「サイメル238」、「サイメル251」、「サイメル303」、「サイメル323」、「サイメル324」、「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル350」、「サイメル385」、「サイメル1156」、「サイメル1158」、「サイメル1116」、「サイメル1130」(以上、日本サイテックインダストリーズ社製)、「ユーバン120」、「ユーバン20HS」、「ユーバン20SE60」、「ユーバン2021」、「ユーバン2028」、「ユーバン28-60」(以上、三井化学社製)等が挙げられる。
ブロック化ポリイソシアネート化合物(E-2)
上記ブロック化ポリイソシアネート化合物(E-2)は、ポリイソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤とのほぼ化学理論量での付加反応生成物である。ブロック化ポリイソシアネート化合物(E-2)で使用されるポリイソシアネート化合物としては、公知のものを特に制限なく使用することができ、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,2’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、クルードMDI[ポリメチレンポリフェニルイソシアネート]、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの芳香族、脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート化合物;これらのポリイソシアネート化合物の環化重合体又はビゥレット体;又はこれらの組合せを挙げることができる。
一方、上記イソシアネートブロック剤は、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に付加してブロックするものであり、そして付加によって生成するブロックポリイソシアネート化合物は常温において安定であるが、塗膜の焼付け温度(通常約80~約200℃)に加熱した際、ブロック剤が解離して遊離のイソシアネート基を再生することが望ましい。
ブロック化ポリイソシアネート化合物(E-2)で使用されるイソシアネートブロック剤としては、例えば、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物;フェノール、パラ-t-ブチルフェノール、クレゾールなどのフェノール系化合物;n-ブタノール、2-エチルヘキサノール、フェニルカルビノール、メチルフェニルカルビノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール系化合物;ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクタムなどのラクタム系化合物;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系化合物;ジメチルピラゾールなどのピラゾール系化合物などが挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
なかでも、解離温度と塗料安定性の観点から、アルコール系化合物、ピラゾール系化合物、オキシム系化合物、及びラクタム系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
塗料組成物のその他の成分
本発明の塗料組成物は、上記成分(A)~(E)の成分に加え、必要に応じて、顔料分散ペースト、水や有機溶剤などの溶媒、中和剤、界面活性剤、表面調整剤、増粘剤、沈降防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、触媒、可塑剤などを含有することができる。
上記溶媒としては、特に制限はなく、水や有機溶剤、またはその混合物などを挙げることができ、具体的には、前述の溶媒(C)で挙げた溶媒を用いることができる。
上記顔料分散ペーストとしては、着色顔料、防錆顔料及び体質顔料などの顔料をあらかじめ微細粒子に分散したものであって、例えば、顔料分散用樹脂、中和剤、溶媒及び顔料を配合し、ボールミル、サンドミル、ペブルミル等の分散混合機中で分散処理して、顔料分散ペーストを調製できる。
上記顔料としては、公知のものを特に制限なく使用でき、例えば、アルミニウム、雲母、合成雲母、二酸化チタン、酸化亜鉛、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、紺青、群青、コバルトブルー、銅フタロシアニンブルー、インダンスロンブルー、合成黄色酸化鉄、透明べんがら(黄)、ビスマスバナデート、チタンイエロー、亜鉛黄(ジンクエロー)、モノアゾイエロー、イソインドリノンイエロー、金属錯塩アゾイエロー、キノフタロンイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、べんがら、モノアゾレッド、キナクリドンレッド、アゾレーキ(Mn塩)、キナクリドンマゼンダ、アンサンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドンマゼンダ、ペリレンレッド、ジケトピロロピロールクロムバーミリオン、塩素化フタロシアニングリーン、臭素化フタロシアニングリーン、ピラゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンオレンジ、ジオキサジンバイオレット、ペリレンバイオレット等の着色顔料;バリタ粉、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、ホワイトカーボン、珪藻土、タルク、炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、マイカ粉などの体質顔料;リンモリブデン酸アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウム、酸化亜鉛(亜鉛華)等の防錆顔料などを添加することができ、これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
塗膜形成方法
本発明の塗料組成物を用いた塗膜形成方法としては、刷毛塗り、ローラー塗装、ディッピング塗装、バーコーダー塗装、アプリケーター塗装、カーテン塗装、スプレー塗装、回転霧化塗装、電着塗装など、公知の塗装方法を特に制限なく用いることができる。
塗膜の膜厚は、特に制限されるものではないが、一般的には、乾燥塗膜に基づいて1~60μm、好ましくは5~40μmの範囲内とすることができる。
また、塗膜の焼き付け乾燥は、塗膜を電気熱風乾燥機、ガス熱風乾燥機などの乾燥設備を用いて、塗装物表面の温度で60~300℃、好ましくは80~200℃にて、時間としては3~180分間、好ましくは10~50分間、加熱して行う。上記焼付け乾燥により硬化塗膜を得ることができる。
本発明の被塗物としては、自動車ボディ、自動車部品、2輪車部品、家庭用機器、その他の機器等が挙げられ、素材としては、金属、プラスティック、無機材料、木材、繊維材料など、特に制限はない。金属素材の場合は、例えば、必要に応じてアルカリ脱脂等の表面を洗浄した後、さらに必要に応じてリン酸塩化成処理、クロメート処理等の表面処理を行ったものが用いることができる。
本件発明の塗料組成物は塗膜物性に優れる事から、鋼板の上に電着塗料を塗装し焼き付けた後に、中塗塗料、ベース塗料、及びクリヤー塗料を塗装する工程の中塗塗料及び/又はベース塗料の塗料組成物として好適に用いることができる。尚、上記の電着塗膜上の3層の工程において、中塗塗膜又はクリヤー塗膜を省略して2層(ベース塗膜とクリヤー塗膜又は中塗塗膜とベース塗膜)にすることもできる。
以下、製造例、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。各例中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。また、「酸価」、「アミン価」、「水酸基価」は全て固形分での値である。
製造例1 カルボキシル酸基含有ナノセルロノース溶液の製造
乾燥重量で1g相当分の針葉樹漂白クラフトパルプ、10mmolの次亜塩素酸ナトリウム、0.1g(1mmol)の臭化ナトリウム、0.16g(1mmol)のTEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル)を100mLの水に分散させ、室温で4時間穏やかに攪拌し、蒸留水で洗浄・水洗することで、TEMPO触媒酸化パルプ(酸化セルロース)を得た。その後、未乾燥のTEMPO触媒酸化パルプに蒸留水を加え、固形分濃度0.1%の水懸濁液を調製した。そして、懸濁液に、ミキサーで1分間、超音波処理で2分間の解繊処理を施すことで、セルロースナノファイバー水分散液とした。その後、セルロースナノファイバー水分散液から、遠心分離(12000g)により未解繊成分を取り除いた。以上により、透明な液体である固形分濃度0.1%のセルロースナノファイバー水分散液を得た。
次に、セルロースナノファイバー水分散液100mLに対して、1M塩酸を加えpHを
1に調節し、1mLを攪拌しながら加えた後、60分間攪拌を継続した。その後、ゲル化したセルロースナノファイバーを遠心分離(12000g)により回収した後、1M塩酸にて回収したセルロースナノファイバーのゲルを洗浄し、その後蒸留水で洗浄した。以上の工程により、セルロース表面のカルボキシル基は、90%以上がカルボン酸型に置換されていた。
次に、回収したセルロースナノファイバーのゲルにイソプロパノールを加えてゲル分散液〔固形分濃度0.1%(g/mL)程度〕とし、続いて遠心分離(12000g)により回収する工程を5回繰り返すことで、セルロースナノファイバーをイソプロパノールで溶媒置換し、最終の固形分濃度を1.0質量%に調整して、酸価約80mgKOH/gのカルボキシル基を含有するナノセルロース(A-1)溶液を作成した。

製造例2 スルホン酸基含有ナノセルロース溶液の製造
Celluforce NCC(商品名、Celluforce社製、スルホン酸ナトリウム塩型ナノセルロースクリスタル)をイオン交換することによって、未中和のスルホン酸基含有ナノセルロース水分散液を得た。即ち、まず、マグネチックスターラーで攪拌した脱イオン水に対し、固形分濃度4.0%となるようにナノセルロース粉末を徐々に添加後、2時間攪拌を継続することで、ナノセルロースクリスタル水分散液を得た。次に、アンバージェット1020(商品名、オルガノ(株)製、陽イオン交換樹脂)を用いてバッチ法によりイオン交換を行った。イソプロパノールへの溶媒置換を行い、最終の固形分濃度を4.0質量%に調整して、酸価約14mgKOH/gのスルホン酸基を含有するナノセルロース(A-2)溶液を作成した。
製造例3 アミノ基含有ポリカプロラクトンの製造
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、窒素導入管を備えた4つ口反応容器に、N,N-ジメチルヘキサノールアミン7.3部、ε-カプロラクトン96.9部、及びジブチル錫ジラウレート0.1部を加えた。次いで、反応容器内の気相中に窒素を導入し、攪拌しながら180℃に昇温した。昇温後、180℃で8時間攪拌して熟成を行なうことにより、アミン価約27mgKOH/g、有効成分100%のアミノ基含有ポリカプロラクトン(B-1)を得た。不揮発分測定から計算した重合率は99%であり、GPC測定結果から重量平均分子量は5,200であった。
製造例4 アミノ基含有アクリル樹脂(ブロック共重合体)の製造
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、窒素導入管を備えた4つ口反応容器に、エチレングリコールモノブチルエーテル15部を配合し、窒素気流中で撹拌して160℃に達してから下記モノマー混合物1を3時間かけて滴下し、160℃で1時間熟成した。
<モノマー混合物1>
2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン 1.3部
2-ヒドロキシメタクリレート 1.4部
ジメチルアミノエチルメタクリレート 12.3部
トリゴノックス201(注1) 1.0部
続いて、温度を110℃に下げ、下記モノマー混合物2を3時間かけて滴下し、110℃で1時間熟成した。
<モノマー混合物2>
n-ブチルメタクリレート 43.8部
MPEG400MA(注2) 42.5部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10.0部
2,2´アゾビス(2-メチルブチロニトリル) 1.0部
その後、エチレングリコールモノブチルエーテル20部及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.5部の触媒混合溶液を1時間かけて滴下し、110℃で1時間熟成した後、固形分濃度50%となるようにエチレングリコールモノブチルエーテルで調整して、アミン価約43mgKOH/g、重量平均分子量20,000のアミノ基含有アクリル樹脂(ブロック共重合体)(B-2)溶液を得た。
(注1)トリゴノックス201:商品名、化薬アクゾ(株)製、ラジカル重合開始剤。
(注2)MPEG400MA:メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、数平均分子量400。
製造例5 アミノ基含有アクリル樹脂(ランダム共重合体)の製造
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、窒素導入管を備えた4つ口反応容器に、エチレングリコールモノブチルエーテル40部を配合し、窒素気流中で撹拌して100℃に達してから下記モノマー混合物を3時間かけて滴下し、100℃で1時間熟成した。
<モノマー混合物>
n-ブチルメタクリレート 43.8部
2-ヒドロキシメタクリレート 1.4部
ジメチルアミノエチルメタクリレート 12.3部
MPEG400MA(注2) 42.5部
エチレングリコールモノブチルエーテル 40.0部
2,2´アゾビス(2-メチルブチロニトリル) 1.0部
その後、エチレングリコールモノブチルエーテル20部及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.5部の触媒混合溶液を1時間かけて滴下し、100℃で1時間熟成した後、固形分濃度50%となるようにエチレングリコールモノブチルエーテルで調整して、アミン価約43mgKOH/g、重量平均分子量20,000のアミノ基含有アクリル樹脂(ランダム共重合体)(B-3)溶液を得た。
製造例6 アクリル樹脂(ランダム共重合体)の製造
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、窒素導入管を備えた4つ口反応容器に、エチレングリコールモノブチルエーテル40部を配合し、窒素気流中で撹拌して100℃に達してから下記モノマー混合物を3時間かけて滴下し、100℃で1時間熟成した。
<モノマー混合物>
n-ブチルメタクリレート 43.8部
2-ヒドロキシメタクリレート 13.7部
MPEG400MA(注2) 42.5部
エチレングリコールモノブチルエーテル 40.0部
2,2´アゾビス(2-メチルブチロニトリル) 1.0部
その後、エチレングリコールモノブチルエーテル20部及び2,2´アゾビス(2-メチルブチロニトリル0.5部の触媒混合溶液を1時間かけて滴下し、100℃で1時間熟成した後、固形分濃度50%となるようにエチレングリコールモノブチルエーテルで調整して、アミン価0mgKOH/g、重量平均分子量20,000のアクリル樹脂(ランダム共重合体)(B-4)溶液を得た。
実施例1 ナノセルロース分散組成物
製造例3のアミノ基含有ポリカプロラクトン1.5部及びイソプロパノール48.5部を混合し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT25)で撹拌しながら製造例1のナノセルロース(A-1)50.0部(固形分0.5部)を徐々に添加した。続いて15,000rpmで30分撹拌して2.0%のナノセルロース分散組成物(X-1)溶液を得た。
実施例2~6及び比較例1~7
下記表1に記載する以外は実施例1と同様にして、実施例2~6及び比較例1~7のナノセルロース分散組成物(X-2)~(X-13)を得た。なお、表中の固形分になるようにイソプロパノールの量で調整を行っている。
また、後述する方法で分散性(溶液状態)の評価試験を行ったので表中に評価結果を示す。評価としてはA~Bが合格であり、C~Dが不合格である。
Figure 0006993245000001
(注3)CNF100:商品名、モリマシナリー(株)製、酸フリー型ナノセルロース。
(注4)Celluforce NCC:商品名、Celluforce社製、スルホン酸ナトリウム塩型ナノセルロースクリスタル。
尚、表中の配合量は固形分(有効成分)の値である。
評価試験
<分散性>
得られたナノセルロース分散組成物溶液を密封した100mlの試験管に入れ、製造1時間後の分散性(溶液状態)を観察した。
A:透明であり、分散性は非常に良好である。
B:若干の濁りが見られる。分散性はやや良好である。
C:濁りが見られ、壁面に若干のブツがある。分散性はやや悪い。
D:壁面に多数のブツがあり、沈降物もある。分散性は非常に悪い。
塗料組成物及び塗装物品
実施例及び比較例で得られたナノセルロース分散組成物溶液を用いて塗料組成物及び塗装物品(被塗物上の複層塗膜)を製造した。実施例のナノセルロース分散組成物(X-1)~(X-6)を用いた塗料組成物及び塗装物品は良好な性能が得られたが、比較例のナノセルロース分散組成物(X-7)~(X-13)を用いた塗料組成物及び塗装物品に関しては、ナノセルロース分散組成物自体の分散性(溶液状態)が悪かったため塗料組成物においてもブツが発生し、塗膜(塗装物品)の仕上がり性が低下した。
製造例7 水酸基含有ポリエステル樹脂の製造
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン174部、ネオペンチルグリコール327部、アジピン酸352部、イソフタル酸109部及び1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物101部を仕込み、160℃から230℃まで3時間かけて昇温させた後、生成した縮合水を水分離器により留去させながら230℃で保持し、酸価が3mgKOH/g以下となるまで反応させた。この反応生成物に、無水トリメリット酸59部を添加し、170℃で30分間付加反応を行った後、50℃以下に冷却し、2-(ジメチルアミノ)エタノールを酸基に対して当量添加し中和してから、脱イオン水を徐々に添加することにより、固形分濃度45%、pH7.2の水酸基含有ポリエステル樹脂溶液を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂は、酸価が35mgKOH/g、水酸基価が128mgKOH/g、数平均分子量が1,480であった。
製造例8 水酸基含有アクリル樹脂の製造
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水145部、Newcol562SF(商品名、日本乳化剤社製、ポリオキシエチレンアルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム、有効成分60%)1.2部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温した。次いで下記モノマー乳化物1のうちの全量の1%及び3%過硫酸アンモニウム水溶液5.2部を反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、残りのモノマー乳化物1を3時間かけて反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間、熟成を行なった。その後、下記のモノマー乳化物2を2時間かけて滴下し、1時間熟成した後、1.5%ジメチルエタノールアミン水溶液89部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径100nm、酸価約31mgKOH/g、水酸基価約22mgKOH/gの水酸基含有アクリル樹脂分散溶液(固形分25%)を得た。
<モノマー乳化物1>脱イオン水94.3部、メチルメタクリレート17部、n-ブチルアクリレート80部、アリルメタクリレート3部及びNewcol562SF1.2部を混合攪拌して、モノマー乳化物1を得た。
<モノマー乳化物2>脱イオン水39部、メチルメタクリレート15.4部、n-ブチルアクリレート2.9部、ヒドロキシエチルアクリレート5.9部、メタクリル酸5.1部及びNewcol562SF 0.5部を混合攪拌して、モノマー乳化物2を得た。
塗料組成物
実施例1Y
製造例7で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液56部(樹脂固形分25部)、「JR-806」(商品名、テイカ社製、ルチル型二酸化チタン)60部、「カーボンMA-100」(商品名、三菱化学社製、カーボンブラック)1部、「バリエースB-35」(商品名、堺化学工業社製、硫酸バリウム粉末、平均一次粒子径0.5μm)15部、「MICRO ACE S-3」(商品名、日本タルク社製、タルク粉末、平均一次粒子径4.8μm)3部及び脱イオン水5部を混合し、2-(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.0に調整した後、ペイントシェーカーで30分間分散して顔料分散ペーストを得た。
次に、上記顔料分散ペースト140部、製造例7で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液51部(樹脂固形分23部)、製造例8で得た水酸基含有アクリル樹脂溶液80部(樹脂固形分20部)、及びメラミン樹脂(メチル-ブチル混合エーテル化メラミン樹脂、固形分80%、重量平均分子量800)40部(樹脂固形分32部)を均一に混合した。
次に、得られた混合物に、実施例1のナノセルロース分散組成物(X-1)25部(固形分0.5部)、「UH-752」(商品名、ADEKA社製、ウレタン会合型増粘剤)1部、2-(ジメチルアミノ)エタノール、及び脱イオン水を添加し、pH8.0、固形分濃度40%の水性中塗塗料組成物(Y-1)を得た。
実施例2Y~6Y及び比較例1Y~7Y
実施例1Yで用いたナノセルロース分散組成物(X-1)を実施例2~6及び比較例1~7で得られたナノセルロース分散組成物(X-2)~(X-13)に変更する以外は実施例1Yと同様に製造して、水性中塗塗料組成物(Y-2)~(Y-13)を得た。なお、ナノセルロースの固形分が実施例1Yと同じになるように配合を調整した。
塗装物品
実施例1Z
リン酸亜鉛化成処理を施した冷延鋼板に、エレクロンGT-10(商品名、関西ペイント社製、カチオン電着塗料)を乾燥膜厚20μmとなるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化させた後、実施例1Yで得られた水性中塗塗料組成物(Y-1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚30μmとなるように静電塗装し、10分間放置後、80℃で10分間プレヒートを行なった。次いで、上記未硬化塗膜上に、「WBC-713T No.1F7」(商品名、関西ペイント社製、アクリルメラミン樹脂系水性ベース塗料、シルバー塗色)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚15μmとなるように静電塗装し、10分間放置後、80℃で10分間プレヒートを行なった。10分間放置後、上記未硬化塗膜上に、「マジクロンKINO-1210」(商品名、関西ペイント社製、アクリル樹脂系溶剤型上塗りクリヤー塗料)を硬化膜厚が35μmとなるように静電塗装し、クリヤー塗膜を形成した。10分間放置した後、140℃で30分間加熱して複層塗膜を有する塗装物品(Z-1)を作製した。
実施例2Z~6Z及び比較例1Z~7Z
実施例1Zで用いた水性中塗塗料組成物(Y-1)を実施例2Y~6Y及び比較例1Y~7Yで得られた水性中塗塗料組成物(Y-2)~(Y-13)に変更する以外は実施例1Zと同様に製造して、塗装物品(Z-2)~(Z-13)を得た。

Claims (6)

  1. 酸基含有ナノセルロース(A)、アミノ基含有分散剤(B)、及び溶媒(C)を含有するナノセルロース分散組成物と、水酸基含有樹脂(D)と、硬化剤(E)と、顔料とを含有することを特徴とする塗料組成物であって、
    前記顔料が、着色顔料、防錆顔料及び体質顔料の1種以上であり、
    前記アミノ基含有分散剤(B)が、重量平均分子量100以上、かつポリカプロラクトン鎖を有するアミノ基含有分散剤(B-1)及び/又はアミノ基含有アクリル樹脂(B-2)であり、
    前記溶媒(C)のSP値が、9.0~24.0(cal/cm 1/2 である、
    塗料組成物。
  2. 塗料組成物中に、酸基含有ナノセルロース(A)が、樹脂固形分を基準として、0.01~10質量%含有することを特徴とする請求項1に記載の塗料組成物。
  3. 塗料組成物中に、アミノ基含有分散剤(B)が、樹脂固形分を基準として、0.01~10質量%含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の塗料組成物。
  4. 水酸基含有樹脂(D)が、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の塗料組成物。
  5. 硬化剤(E)が、メラミン樹脂(E-1)及び/又はブロック化ポリイソシアネート化合物(E-2)であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の塗料組成物。
  6. 請求項1~5に記載の塗料組成物を被塗物上に塗布して得られる塗装物品。
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