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JP6991766B2 - 連続繊維不織布、複合材用強化繊維基材およびそれらの成形体ならびに製造方法 - Google Patents

連続繊維不織布、複合材用強化繊維基材およびそれらの成形体ならびに製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、連続繊維不織布、複合材用強化繊維基材およびそれらの成形体ならびに製造方法に関する。
各種機械や自動車等の構造部品、圧力容器、および管状の構造物等には、樹脂材料にガラス繊維等の強化材が添加された複合材料成形体が使用されている。特に強度の観点から強化繊維が連続繊維であり、成形サイクルの観点、リサイクル性の観点から、樹脂が熱可塑性樹脂である連続繊維強化樹脂複合材料(成形体)が望まれている。この複合材料成形体を構成する材料としては、連続強化繊維と熱可塑性樹脂繊維が連続して均一に混じり合った複合糸、およびこの複合糸からなる布が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、生産性の観点から連続強化繊維を経、緯、斜めに引き揃え、接着剤により熱融着させる連続繊維不織布が構成材料として提案されている(例えば、特許文献2,3参照)。
特開2015-101793号公報 特開2001-146669号公報 特開2006-198939号公報
しかしながら、従来の連続繊維不織布を用いた連続繊維強化複合材料では、成形時間が短い場合、連続強化繊維への樹脂の含浸が充分進まないという問題がある。
本発明者らは上述した従来技術の課題を解決するべく鋭意検討した結果、連続繊維不織布製造の際に用いる接着剤を連続強化繊維の糸束の隙間に予め含浸させておくことで、成形前において連続強化繊維の脱離やほつれが少なく、カット性にも優れ、取り扱い性が良好であり、短い成形時間でも、樹脂が連続強化繊維の糸束の隙間に充分含浸し、更に成形時における連続強化繊維の乱れが少なく、樹脂と強化繊維の良好な界面を形成することで高強度を発現する成形体が得られることを見出し本発明に至った。
すなわち、本発明の連続繊維不織布は、
経糸と経糸に直交する緯糸、
経糸と経糸と斜めに交わる斜交糸、または、
経糸、経糸に直交する緯糸および経糸と斜めに交わる斜交糸、
のいずれかを有する連続繊維不織布であって、
連続繊維不織布を構成する経糸、緯糸および斜交糸の少なくともいずれか1つが連続強化繊維を含み、経糸、緯糸または斜交糸により形成される交点が接着剤により固定されており、接着剤が熱可塑性樹脂であって、この熱可塑性樹脂が連続強化繊維の糸束の隙間に含浸しているものである。
熱可塑性樹脂は、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂およびポリウレタン樹脂の中から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
熱可塑性樹脂は、連続繊維不織布全体積に対して45~65体積%であることが好ましい。
連続強化繊維は熱可塑性樹脂でコーティングされてなることが好ましい。
経糸、緯糸および斜交糸の少なくともいずれか1つに熱可塑性樹脂繊維を含むことが好ましい。
熱可塑性樹脂繊維は斜交糸に含まれることが好ましい。
熱可塑性樹脂繊維はポリアミド樹脂繊維であることが好ましい。
熱可塑性樹脂繊維と連続強化繊維は混繊されてなることが好ましい。
連続強化繊維はガラス繊維または炭素繊維であることが好ましい。
本発明の複合材用強化繊維基材は、本発明の連続繊維不織布が熱可塑性樹脂シートと積層されてなるものである。
複合材用強化繊維基材のマトリックス樹脂は、接着剤の熱可塑性樹脂と同種類の樹脂であることが好ましい。
熱可塑性樹脂シートはポリアミド樹脂であることが好ましい。
本発明の連続繊維不織布の製造方法は、経糸の上に緯糸および/または斜交糸を重ねてなる積層繊維束を接着固定する連続繊維不織布の製造方法であって、積層繊維束を接着剤である熱可塑性樹脂のエマルジョンに浸漬し、熱可塑性樹脂エマルジョンを連続強化繊維の糸束の隙間に含浸させ、含浸させた連続強化繊維を熱可塑性樹脂エマルジョンから引き揚げ、交点を熱可塑性樹脂で固定するものである。
本発明の連続繊維強化樹脂成形体の製造方法は、本発明の連続繊維不織布または本発明の複合材用強化繊維基材を用いる製造方法であって、
連続繊維不織布または複合材用強化繊維基材を金型に設置し、金型を閉じた後、設置した連続繊維不織布または複合材用強化繊維基材を、連続繊維不織布または複合材用強化繊維基材のマトリックス樹脂の融点以上に加熱し、その後、加熱した連続繊維不織布または複合材用強化繊維基材を冷却するものである。
本発明の連続繊維強化樹脂成形体の製造方法の別の態様は、本発明の連続繊維不織布または本発明の複合材用強化繊維基材を用いる製造方法であって、
連続繊維不織布または複合材用強化繊維基材を、連続繊維不織布または複合材用強化繊維基材のマトリックス樹脂の融点以上に加熱し、加熱した連続繊維不織布または複合材用強化繊維基材を金型に設置し、金型を閉じて連続繊維不織布または複合材用強化繊維基材を賦形するものである。
本発明によれば、生産性が高く、成形後に、連続強化繊維の乱れが少なく、カット性に優れ、連続強化繊維への熱可塑性樹脂の含浸性や界面形成性に優れ、さらに連続強化繊維の脱離やほつれの少ない、取扱い性の良い連続繊維不織布および複合材用強化繊維基材を提供することができる。また、本発明の連続繊維不織布および複合材用強化繊維基材を用いることにより、含浸性に優れた連続繊維強化樹脂成形体が得られる。
図1は本発明の連続繊維不織布の一態様を示す模式図およびその部分拡大断面図である。 図2は本発明の連続繊維不織布の別の態様を示す模式図である。 図3は本発明の連続繊維不織布のさらに別の態様を示す模式図である。
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
[連続繊維不織布]
本発明の連続繊維不織布は少なくとも連続強化繊維と熱可塑性樹脂から構成されるものである。
本発明の連続繊維不織布の構成を図面を用いて説明する。図1~3は本発明の連続繊維不織布を示す拡大模式図である。なお、図は視認しやすくするために糸間を広くする等して示してある。
本発明の連続繊維不織布の一態様としては、図1に示すように経糸1と経糸1に直交する緯糸2により構成される二軸の連続繊維不織布である。経糸1および緯糸2はそれぞれ平行に配列された糸群である。
また、本発明の連続繊維不織布の別の態様としては、図2に示すように経糸1と経糸1と斜めに交わる斜交糸3より構成される三軸の連続繊維不織布である。斜交糸3も平行に配列された糸群である。なお、図2では斜交糸3が経糸1と斜めに交わる互いに交差する2方向の態様を示しているが、斜交糸3はいずれか1方向であってもよい。この場合には二軸の連続繊維不織布となる。
本発明の連続繊維不織布のさらに別の態様としては、図3に示すように、経糸1と経糸1に直交する緯糸2および経糸1と斜めに交わる斜交糸3より構成される四軸の連続繊維不織布である。なお、図3では斜交糸3が経糸1と斜めに交わる互いに交差する2方向の態様を示しているが、斜交糸3はいずれか1方向であってもよい。この場合には三軸の連続繊維不織布となる。
本発明の連続繊維不織布は、連続強化繊維が経糸、緯糸または斜交糸のいずれか1つに含まれていればよく、成形体の強度の異方性が小さくなることから、経糸または緯糸に含まれることが好ましい。
経糸、緯糸または斜交糸により形成される交点は接着剤により固定されており、接着剤は熱可塑性樹脂であって、熱可塑性樹脂は連続強化繊維に含浸している。連続強化繊維の脱離やほつれが低減されると共に、交点が接着剤により固定されていることにより成形時に繊維乱れが起こりにくい。図1の部分拡大断面図により説明する。なお、図1では、経糸1を連続強化繊維として示している。図1の部分拡大断面図に示すように、経糸1と緯糸2により形成される交点は接着剤(熱可塑性樹脂)5aにより固定されており、かつ、緯糸1の連続強化繊維は複数本の強化繊維4の糸束(以下、連続強化繊維束ともいう)からなっており、この連続強化繊維の糸束の隙間に熱可塑性樹脂5bが入り込んでいる。
本発明において熱可塑性樹脂5が連続強化繊維1に含浸しているとは形状的には図1の部分拡大断面図に示すような状態を意味しているが、より詳細には、連続強化繊維束の隙間の70%以上に熱可塑性樹脂が含浸していることを言う。含浸率は70~90%であることが好ましく、75~87%であることがより好ましく、80~85%であることが最も好ましい。連続繊維不織布の時点で熱可塑性樹脂が連続強化繊維の糸束の隙間に含浸していることにより、短時間で熱可塑性樹脂が完全に含浸された成形体が得られるだけでなく、強化繊維と熱可塑性樹脂が良好な界面を形成するため強度に優れた成形体が得られる。なお、含浸率が高すぎると連続繊維不織布の取り扱い性に劣る場合がある。熱可塑性樹脂の含浸率は、連続繊維不織布をはさみによりカットし、露出した断面をマイクロスコープにより観察し、画像処理によって解析することで求めることができる。測定は任意の点を20点測定し、その中央値を含浸率とする。
連続強化繊維と熱可塑性樹脂との体積比率は、成形体の強度の観点から、10:90~80:20であることが好ましく、20:80~70:30であることがより好ましく、30:70~60:40であることがさらに好ましく、35:65~55:45であることが最も好ましい。
<連続繊維不織布を構成する糸>
連続繊維不織布を構成する糸は連続強化繊維のみからなってもよいし、連続強化繊維以外の繊維、繊維への付着物等を含んでもよい。連続強化繊維以外の繊維としては、例えば熱可塑性樹脂の繊維があげられ、両者が引き揃えられてなるものでもよいし、連続強化繊維と熱可塑性樹脂の繊維が混繊されたものであってもよいし、経糸に連続強化繊維、緯糸に熱可塑性樹脂繊維というふうに、糸の方向によって種類を変えてもよい。経方向と緯方向の異方性を少なくするために、経糸と緯糸に連続強化繊維、斜交糸に熱可塑性繊維が含まれている形態がより好ましい。繊維への付着物としては、熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。
<連続強化繊維>
連続強化繊維は、通常の連続繊維強化樹脂成形体に使用されるものを用いることができる。
連続強化繊維としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、植物繊維、アラミド繊維、超高強力ポリエチレン繊維、ポリベンザゾール系繊維、液晶ポリエステル繊維、ポリケトン繊維、金属繊維、セラミックス繊維等が挙げられる。
機械的特性、熱的特性、汎用性の観点から、ガラス繊維、炭素繊維が好ましく、生産性の面からは、ガラス繊維が好ましい。
連続強化繊維は、実質的に無撚り、無交絡であることが含浸性の観点から好ましい。実質的に無撚りとは、解舒等に伴う意図しない撚り以外の撚りが入っていない状態を意味し、撚り数が10回/m以下のことである。実質的に無交絡とは、流体交絡等通常の交絡手段による意図的な交絡が取扱い性を維持する最低限の回数である状態を意味し、交絡数が5回/m以下のことである。
連続強化繊維は集束剤を含有していることが、連続繊維不織布の製造時の取り扱い性と、成形体の界面強度の観点から好ましい。なお、集束剤は用いる接着剤の種類に応じて、種類や量を調整することが好ましい。具体的には、数cm程度に切り出した連続強化繊維を、接着剤を付着させる工程で用いる状態に浸漬した際に、強化繊維が開繊することが好ましい。これにより連続強化繊維の繊維束間に樹脂を効率的に含浸させることができる。集束剤ではなく、接着剤の状態を工夫して、開繊性を向上させてもよい。接着剤の状態を工夫する方法は、例えば、集束剤の溶剤成分を接着剤に添加する等があげられる。
連続強化繊維として、ガラス繊維を選択する場合、集束剤は、シランカップリング剤、潤滑剤、および結束剤からなることが好ましい。
(シランカップリング剤)
シランカップリング剤は、通常、ガラス繊維の表面処理剤として用いられ、界面接着強度向上に寄与する。
シランカップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、およびN-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシランおよびγ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類;エポキシシラン類;ビニルシラン類等が挙げられる。
(潤滑剤)
潤滑剤は、ガラス繊維の開繊性向上に寄与する。
潤滑剤としては、目的に応じた通常の液体または固体の任意の潤滑材料が使用可能であり、以下に限定されるものではないが、例えば、カルナウバワックスやラノリンワックス等の動植物系または鉱物系のワックス;脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、脂肪酸エーテル、芳香族系エステル、芳香族系エーテル等の界面活性剤等が挙げられる。
(結束剤)
結束剤は、ガラス繊維の集束性向上および界面接着強度向上に寄与する。
結束剤としては、目的に応じたポリマー、熱可塑性樹脂が使用可能である。
結束剤としてのポリマーは、以下に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの第1級、第2級および第3級アミンとの塩等が挙げられる。また、例えば、m-キシリレンジイソシアナート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)およびイソホロンジイソシアナート等のイソシアネートと、ポリエステル系やポリエーテル系のジオールとから合成されるポリウレタン樹脂も好適に使用される。
アクリル酸のホモポリマーとしては、重量平均分子量1,000~90,000であることが好ましく、より好ましくは1,000~25,000である。
アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマーを構成する共重合性モノマーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、水酸基および/またはカルボキシル基を有するモノマーのうち、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、およびメサコン酸よりなる群から選択される1種以上が挙げられる(但し、アクリル酸のみの場合を除く)。共重合性モノマーとして、エステル系モノマーを1種以上有することが好ましい。
アクリル酸のホモポリマーおよびコポリマーの第1級、第2級および第3級アミンとの塩としては、以下に限定されるものではないが、例えば、トリエチルアミン塩、トリエタノールアミン塩やグリシン塩等が挙げられる。中和度は、他の併用薬剤(シランカップリング剤等)との混合溶液の安定性向上や、アミン臭低減の観点から、20~90%とすることが好ましく、40~60%とすることがより好ましい。
塩を形成するアクリル酸のポリマーの重量平均分子量は、特に制限されないが、3,000~50,000の範囲が好ましい。ガラス繊維の集束性向上の観点から、3,000以上が好ましく、複合成形体とした際の特性向上の観点から50,000以下が好ましい。
結束剤として用いられる熱可塑性樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、熱可塑性ポリエーテルイミド、熱可塑性フッ素系樹脂、およびこれらを変性させた変性熱可塑性樹脂等が挙げられる。結束剤として用いられる熱可塑性樹脂は、連続強化繊維の周囲を被覆する樹脂と同種の熱可塑性樹脂および/または変性熱可塑性樹脂であると、複合成形体となった後、ガラス繊維と熱可塑性樹脂の接着性が向上し、好ましい。
さらに、一層、連続強化繊維とそれを被覆する熱可塑性樹脂の接着性を向上させ、集束剤を水分散体としてガラス繊維に付着させる場合において、乳化剤成分の比率を低減、あるいは乳化剤不要とできる等の観点から、結束剤として用いられる熱可塑性樹脂としては、変性熱可塑性樹脂が好ましい。
ここで、変性熱可塑性樹脂とは、熱可塑性樹脂の主鎖を形成し得るモノマー成分以外に、その熱可塑性樹脂の性状を変化させる目的で、異なるモノマー成分を共重合させ、親水性、結晶性、熱力学特性等を改質したものを意味する。
結束剤として用いられる変性熱可塑性樹脂は、以下に限定されるものではないが、例えば、変性ポリオレフィン系樹脂、変性ポリアミド系樹脂、変性ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
結束剤としての変性ポリオレフィン系樹脂とは、エチレン、プロピレン等のオレフィン系モノマーと不飽和カルボン酸等のオレフィン系モノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体であり、公知の方法で製造できる。オレフィン系モノマーと不飽和カルボン酸とを共重合させたランダム共重合体でもよいし、オレフィンに不飽和カルボン酸をグラフトしたグラフト共重合体でもよい。
オレフィン系モノマーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン等が挙げられる。これらは1種のみを単独で使用してもよく、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。オレフィン系モノマーと共重合可能なモノマーとしては、例えば、アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和カルボン酸等が挙げられ、これらは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
オレフィン系モノマーと、当該オレフィン系モノマーと共重合可能なモノマーとの共重合比率としては、共重合の合計質量を100質量%として、オレフィン系モノマー60~95質量%、オレフィン系モノマーと共重合可能なモノマー5~40質量%であることが好ましく、オレフィン系モノマー70~85質量%、オレフィン系モノマーと共重合可能なモノマー15~30質量%であることがより好ましい。オレフィン系モノマーが60質量%以上であれば、マトリックスとの親和性が良好であり、また、オレフィン系モノマーの質量%が95質量%以下であれば、変性ポリオレフィン系樹脂の水分散性が良好で、連続強化繊維への均一付与が行いやすい。
結束剤として用いられる変性ポリオレフィン系樹脂は、共重合により導入したカルボキシル基等の変性基が、塩基性化合物で中和されていてもよい。塩基性化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ類;アンモニア;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアミン類が挙げられる。結束剤として用いられる変性ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量は、特に制限されないが、5,000~200,000が好ましく、50,000~150,000がより好ましい。ガラス繊維の集束性向上の観点から5,000以上が好ましく、水分散性とする場合の乳化安定性の観点から200,000以下が好ましい。
結束剤として用いられる変性ポリアミド系樹脂とは、分子鎖中にポリアルキレンオキサイド鎖や3級アミン成分等の親水基を導入した変性ポリアミド化合物であり、公知の方法で製造できる。
分子鎖中にポリアルキレンオキサイド鎖を導入する場合は、例えば、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等の一部または全部をジアミンまたはジカルボン酸に変性したものを共重合して製造される。3級アミン成分を導入する場合は、例えばアミノエチルピペラジン、ビスアミノプロピルピペラジン、α-ジメチルアミノε-カプロラクタム等を共重合して製造される。
結束剤として用いられる変性ポリエステル系樹脂とは、ポリカルボン酸またはその無水物とポリオールとの共重合体で、かつ末端を含む分子骨格中に親水基を有する樹脂であり、公知の方法で製造できる。
親水基としては、例えば、ポリアルキレンオキサイド基、スルホン酸塩、カルボキシル基、これらの中和塩等が挙げられる。ポリカルボン酸またはその無水物としては、芳香族ジカルボン酸、スルホン酸塩含有芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、3官能以上のポリカルボン酸等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸等が挙げられる。
スルホン酸塩含有芳香族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スルホテレフタル酸塩、5-スルホイソフタル酸塩、5-スルホオルトフタル酸塩等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸または脂環式ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
3官能以上のポリカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
これらの中で、変性ポリエステル系樹脂の耐熱性を向上させる観点から、全ポリカルボン酸成分の40~99モル%が芳香族ジカルボン酸であることが好ましい。また、変性ポリエステル系樹脂を水分散液とする場合の乳化安定性の観点から、全ポリカルボン酸成分の1~10モル%がスルホン酸塩含有芳香族ジカルボン酸であることが好ましい。
変性ポリエステル系樹脂を構成するポリオールとしては、ジオール、3官能以上のポリオール等が挙げられる。
ジオールとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAまたはそのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。3官能以上のポリオールとしては、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
変性ポリエステル系樹脂を構成するポリカルボン酸またはその無水物とポリオールとの共重合比率としては、共重合成分の合計質量を100質量%として、ポリカルボン酸またはその無水物40~60質量%、ポリオール40~60質量%であることが好ましく、ポリカルボン酸またはその無水物45~55質量%、ポリオール45~55質量%がより好ましい。
変性ポリエステル系樹脂の重量平均分子量としては、3,000~100,000が好ましく、10,000~30,000がより好ましい。ガラス繊維の集束性向上の観点から3,000以上が好ましく、水分散性とする場合の乳化安定性の観点から100,000以下が好ましい。
結束剤として用いる、ポリマー、熱可塑性樹脂は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
結束剤の全量を100質量%として、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの第1級、第2級および第3級アミンとの塩より選択された1種以上のポリマーを50質量%以上、60質量%以上用いることがより好ましい。
(ガラス繊維用の集束剤の組成)
連続強化繊維としてガラス繊維を用いる場合、ガラス繊維の集束剤においては、それぞれ、シランカップリング剤を0.1~2質量%、潤滑剤を0.01~1質量%、結束剤を1~25質量%を含有することが好ましく、これらの成分を水で希釈し、全質量を100質量%に調整することが好ましい。
ガラス繊維用の集束剤におけるシランカップリング剤の配合量は、ガラス繊維の集束性向上および界面接着強度向上と複合成形体の機械的強度向上との観点から、0.1~2質量%が好ましく、より好ましくは0.1~1質量%、さらに好ましくは0.2~0.5質量%である。
ガラス繊維用の集束剤における潤滑剤の配合量は、充分な潤滑性を与えるという観点、およびエアスプライサーによる繋ぎ糸の引張り破断強度向上と混繊工程における開繊性向上の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上であり、界面接着強度向上と複合成形体の機械的強度向上の観点から、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。
ガラス繊維用の集束剤における結束剤の配合量は、ガラス繊維の集束性制御および界面接着強度向上と複合成形体の機械的強度向上との観点から、好ましくは1~25質量%、より好ましくは3~15質量%、さらに好ましくは3~10質量%である。
(ガラス繊維用の集束剤の使用態様)
ガラス繊維用の集束剤は、使用態様に応じて、水溶液、コロイダルディスパージョンの形態、乳化剤を用いたエマルジョンの形態等、いずれの形態に調整してもよいが、集束剤の分散安定性向上、耐熱性向上の観点から、水溶液の形態とすることが好ましい。
ガラス繊維は、上述した集束剤を、公知のガラス繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーター等の公知の方法を用いて、ガラス繊維に付与して製造したガラス繊維を乾燥することによって連続的に得られる。
集束剤は、ガラス繊維100質量%に対し、シランカップリング剤、潤滑剤及び結束剤の合計質量として、好ましくは0.1~3質量%、より好ましくは0.2~2質量%、更に好ましくは0.2~1質量%付与する。
ガラス繊維の集束性制御と界面接着強度向上の観点から、集束剤の付与量が、ガラス繊維100質量%に対し、シランカップリング剤、潤滑剤及び結束剤の合計質量として0.1質量%以上であることが好ましく、エアスプライサーによる繋ぎ糸の引張り破断強度向上と混繊工程における開繊性向上の観点から3質量%以下であることが好ましい。
なお、連続強化繊維として、炭素繊維を選択した場合には、集束剤は、潤滑剤、結束剤からなることが好ましい。集束剤、潤滑剤、結束剤の種類については、特に制限はなく公知の物が使用できる。具体的材料としては、特開2015-101794号公報に記載されている材料を使用できる。
その他の連続強化繊維を用いる場合、連続強化繊維の特性に応じ、ガラス繊維、炭素繊維に用いる集束剤の種類、付与量を適宜選択すればよく、炭素繊維に用いる集束剤に準じた集束剤の種類、付与量とすることが好ましい。
<連続強化繊維の形状>
連続強化繊維は複数本の強化繊維からなるマルチフィラメントであり、単糸数は、混繊工程における開繊性、および取扱い性の観点から30~15,000本であることが好ましい。連続強化繊維の単糸径は、強度の観点、および、取り扱い性の観点から2~30μmであることが好ましく、4~25μmであることがより好ましく、6~20μmであることがさらに好ましく、8~15μmであることが最も好ましい。
連続強化繊維の単糸径R(μm)と密度D(g/cm3)の積RDは、複合糸の取り扱い性と成形体の強度の観点から、好ましくは5~100μm・g/cm3、より好ましくは10~50μm・g/cm3、さらに好ましくは15~45μm・g/cm3、よりさらに好ましくは20~45μm・g/cm3である。積RDが所定の範囲であると、特に、連続強化繊維と熱可塑性樹脂繊維を混繊する場合には、連続強化繊維の損傷を抑え、連続強化繊維が開繊し易くなり、両繊維が連続して均一に混じり合いやすいため好ましい。
密度Dは比重計により測定することができる。一方、単糸径(μm)は、密度(g/cm3)と繊度(dtex)、単糸数(本)から、以下の式で算出することができる。
Figure 0006991766000001
連続強化繊維の積RDを所定の範囲とするには、市販で入手可能な連続強化繊維について、連続強化繊維の有する密度に応じて、繊度(dtex)および単糸数(本)を適宜選択すればよい。例えば、連続強化繊維としてガラス繊維を用いる場合、密度が約2.5g/cm3であるから、単糸径が2~40μmのものを選べばよい。具体的には、ガラス繊維の単糸径が9μmである場合、繊度660dtexで単糸数400本のガラス繊維を選択することにより、積RDは23となる。また、ガラス繊維の単糸径が17μmである場合、繊度11,500dtexで単糸数2,000本のガラス繊維を選択することにより、積RDは43となる。連続強化繊維として炭素繊維を用いる場合、密度が約1.8g/cm3であるから、単糸径が2.8~55μmのものを選べばよい。具体的には、炭素繊維の単糸径が7μmである場合、繊度2,000dtexで単糸数3,000本の炭素繊維を選択することにより、積RDは13となる。連続強化繊維としてアラミド繊維を用いる場合、密度が約1.45g/cm3であるから、単糸径が3.4~68μmのものを選べばよい。具体的には、アラミド繊維の単糸径が12μmである場合、繊度1,670dtexで単糸数1,000本のアラミド繊維を選択することにより、積RDは17となる。
連続強化繊維はどのような形態でも構わないが、ヤーン、ケーキ、DWR(ダイレクトワインドロービング)に巻き取ってあると、樹脂を被覆させる工程での生産性、生産安定性が高まるため好ましい。生産性の観点からはDWRが、生産安定性の観点からはヤーンが最も好ましい。
<接着剤>
本発明の連続繊維不織布を構成する接着剤は熱可塑性樹脂である。
接着剤として用いる熱可塑性樹脂の量は特に制限はないが、連続繊維不織布の質量の内、2~20質量%であることが好ましく、4~15質量%であることがより好ましく、5~8質量%であることがさらに好ましい。
接着剤として用いる熱可塑性樹脂は連続繊維複合材料成形体においてマトリックス樹脂(対象(ここでは連続繊維複合材料成形体)中において占める体積の割合が一番大きい樹脂)であってもよい。この場合、熱可塑性樹脂は連続繊維不織布全体積に対して、45~65体積%であることが好ましい。他の樹脂をマトリックス樹脂として用いる際には、そのマトリックス樹脂と同系統の樹脂であることが、成形体の強度向上の観点から好ましい。
接着剤として用いられる熱可塑性樹脂の形態に特に制限はないが、例えばエマルジョン状態の熱可塑性樹脂、水溶性の熱可塑性樹脂の水溶液、溶媒に溶解させた熱可塑性樹脂溶液、粉末状の熱可塑性樹脂や繊維状の熱可塑性樹脂、ホットメルト接着剤等があげられる。
熱可塑性樹脂エマルジョンとしては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(好ましくは、ポリキシリレンアジパミド、ポリキシリレンセバカミド)、ポリエチレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、およびこれらの共重合体の粉体をノニオン系、カチオン系、アニオン系またはこれらの混合物である界面活性剤を添加して乳化分散したものが挙げられる。
接着剤の添加方法は特に制限はないが、例えば連続強化繊維に予め添加する方法、連続強化繊維を引き揃えた後に添加する方法、連続強化繊維をコーティングしている熱可塑性樹脂に添加する方法、熱可塑性樹脂繊維に添加する方法や熱可塑性樹脂シートに添加する方法等があげられる。連続強化繊維をコーティングしている熱可塑性樹脂に添加する方法や、熱可塑性樹脂繊維に添加する方法や熱可塑性樹脂シートに添加する方法の場合には、この状態では、連続強化繊維の束間に樹脂は含浸していないが、その後の連続繊維不織布製造の際に、熱ローラーを通すなどすることで、連続強化繊維の糸束間に熱可塑性樹脂を含浸させることができる。
<熱可塑性樹脂の種類>
熱可塑性樹脂は、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46等のポリアミド樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリオキシメチレン等のポリアセタール系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルグリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテル系樹脂;ポリエーテルスルフォン;ポリフェニレンサルファイド;熱可塑性ポリエーテルイミド;テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体等の熱可塑性フッ素系樹脂;ポリウレタン樹脂;アクリル樹脂およびこれらを変性させた変性熱可塑性樹脂が挙げられる。
これらの熱可塑性樹脂の中でも、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、熱可塑性ポリエーテルイミド、および熱可塑性フッ素系樹脂が好ましく、ポリオレフィン系樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂およびアクリル樹脂が、機械的物性、汎用性の観点からより好ましく、熱的物性の観点を加えるとポリアミド樹脂およびポリエステル系樹脂がさらに好ましい。また、繰り返し荷重負荷に対する耐久性の観点からポリアミド樹脂がよりさらに好ましい。
(ポリエステル系樹脂)
ポリエステル系樹脂とは、主鎖に-CO-O-(エステル)結合を有する高分子化合物を意味する。
ポリエステル系樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ-1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート等が挙げられる。
ポリエステル系樹脂は、ホモポリエステルであってもよく、また、共重合ポリエステルであってもよい。
共重合ポリエステルの場合、ホモポリエステルに適宜第3成分を共重合させたものが好ましく、第3成分としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコール等のジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸等のジカルボン酸成分等が挙げられる。
また、バイオマス資源由来の原料を用いたポリエステル系樹脂を用いることもでき、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート、ポリブチレンスクシネートアジペート等の脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリブチレンアジペートテレフタレート等の芳香族ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
(ポリアミド樹脂)
ポリアミド樹脂とは、主鎖に-CO-NH-(アミド)結合を有する高分子化合物を意味する。例えば、脂肪族系ポリアミド、芳香族系ポリアミド、全芳香族系ポリアミド等があげられるが、強化繊維との親和性の観点が高く強化繊維による補強効果が得られやすいという観点から脂肪族系ポリアミドが好ましい。
ポリアミド樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ラクタムの開環重合で得られるポリアミド、ω-アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミド、ジアミンおよびジカルボン酸を縮合することで得られるポリアミド、並びにこれらの共重合体が挙げられる。
ポリアミド樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
ラクタムとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ピロリドン、カプロラクタム、ウンデカンラクタムやドデカラクタムが挙げられる。ω-アミノカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ラクタムの水による開環化合物であるω-アミノ脂肪酸が挙げられる。ラクタムまたはω-アミノカルボン酸はそれぞれ2種以上の単量体を併用して縮合させてもよい。
ジアミン(単量体)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヘキサメチレンジアミンやペンタメチレンジアミン等の直鎖状の脂肪族ジアミン;2-メチルペンタンジアミンや2-エチルヘキサメチレンジアミン等の分岐型の脂肪族ジアミン;p-フェニレンジアミンやm-フェニレンジアミン等の芳香族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、シクロペンタンジアミンやシクロオクタンジアミン等の脂環式ジアミンが挙げられる。
ジカルボン酸(単量体)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アジピン酸、ピメリン酸やセバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸やイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸が挙げられる。単量体としてのジアミンおよびジカルボン酸はそれぞれ1種単独または2種以上の併用により縮合させてもよい。
ポリアミド樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド4(ポリα-ピロリドン)、ポリアミド6(ポリカプロアミド)、ポリアミド11(ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(ポリドデカンアミド)、ポリアミド46(ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド9T(ポリノナンメチレンテレフタルアミド)、およびポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、並びにこれらを構成成分として含む共重合ポリアミドが挙げられる。
共重合ポリアミドとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヘキサメチレンアジパミドおよびヘキサメチレンテレフタルアミドの共重合体、ヘキサメチレンアジパミドおよびヘキサメチレンイソフタルアミドの共重合体、並びにヘキサメチレンテレフタルアミドおよび2-メチルペンタンジアミンテレフタルアミドの共重合体が挙げられる。
<コーティング糸>
本発明で用いられる連続強化繊維は、熱可塑性樹脂によりコーティング(被覆)されたコーティング糸が好ましい。
連続強化繊維の周囲を熱可塑性樹脂によって均一に被覆していることが好ましく、断面の樹脂厚み均一性指標が2以下であり、1.9以下であることが好ましく、1.8以下であることがより好ましく、1.7以下であることがさらに好ましく、1.6以下であることがさらにより好ましい。
複合糸の断面の樹脂厚み均一性指標は、樹脂の被覆度合の均一性を示す指標であり、以下の式(1)により定義される。
樹脂厚み均一性指標=最大樹脂厚み / 最小樹脂厚み・・・(1)
なお、最大樹脂厚みとは、連続強化繊維の中心から複合糸の外周へ引いた線上で、熱可塑性樹脂のみが占める部分の長さのうち、最大の値を表す。一方、最小樹脂厚みとは、同様に最小の部分の長さを表す。
熱可塑性樹脂が均一に被覆していることで、連続強化繊維の露出部分が少なくなり、取り扱い時の連続強化繊維の損傷を低減することができる。また、被覆熱可塑性樹脂に比べて質量の大きな連続強化繊維が均等に配置されることで、コーティング糸の取り扱い時の連続強化繊維の振幅を抑制することができる。
複合糸の断面の樹脂厚み均一性指標は、樹脂を被覆する装置の前後における連続強化繊維の揺れを低減すること、連続強化繊維と樹脂がダイの内部で均一な圧力のかかった状態で接触すること、樹脂を被覆する装置のダイの形状を最適化することにより、2以下に制御することができる。
(コーティング糸の製造方法)
コーティング糸の製造方法には特に制限はないが、例えば下記の方法があげられる。
熱可塑性樹脂ペレットをスクリュー式押出機のホッパーに投入し、シリンダ部で加熱溶融させ、スクリューによりクロスヘッドダイに導入させる。クロスヘッドダイに導入された溶融樹脂は円筒状通路を通り、下端の環状の吐出口から筒状に吐出される。一方、連続強化繊維は給糸装置から引き出され、クロスヘッドダイの中央の繊維用穴内を下方に走行しており、従って、吐出口から吐出された樹脂は走行中の連続強化繊維を取り囲んだ状態となっている。吐出口から吐出された樹脂は、表面張力や冷却による収縮、さらには下方に引っ張られることによって縮径し、連続強化繊維束の外周に接触すると共にその部分の連続強化繊維に接着する。かくして、連続強化繊維束の周りに樹脂が被覆コーティングされる。このコーティングによって形成された樹脂被覆連続強化繊維は、その後、熱可塑性樹脂冷却槽を通ることで冷却され、巻取装置で巻き取られる。
<熱可塑性樹脂繊維の形態>
経糸、緯糸および斜交糸の少なくともいずれか1つは熱可塑性樹脂繊維を含むものであってもよい。熱可塑性樹脂繊維は上記熱可塑性樹脂を繊維状としたものであり、実質的に無撚りであり、かつ、実質的に無交絡であることが、仮撚工程、混繊工程における開繊性向上の観点から好ましい。実質的に無撚りとは、解舒等に伴う意図しない撚り以外の撚りが入っていない状態を意味し、撚り数が10回/m以下のことである。実質的に無交絡とは、流体交絡等通常の交絡手段による意図的な交絡が取扱い性を維持する最低限の回数である状態を意味し、交絡数が5回/m以下のことである。
熱可塑性樹脂繊維の単糸数は、混繊工程における開繊性、および取扱い性の観点から30~20,000本であることが好ましい。
熱可塑性樹脂繊維は連続強化繊維と同一方向に引き揃えられていてもよいし、混繊されていてもよいし、熱可塑性樹脂繊維のみを同一方向に引き揃えてもよい。熱可塑性樹脂繊維は経糸、緯糸、斜交糸のいずれに含まれていてもよいが、連続繊維不織布の強度のばらつきが小さくなることから、斜交糸を構成することが好ましい。
(混繊糸の製造方法)
連続強化繊維と熱可塑性樹脂繊維は混繊されてなる混繊糸であってもよい。連続強化繊維と熱可塑性樹脂繊維とを混繊する方法は公知の方法を利用できる。例えば、静電気力や流体噴霧による圧力、ローラー等に押し付ける圧力等による外力によって開繊した後、連続強化繊維と熱可塑性樹脂繊維を開繊したままの状態で合糸および引き揃える開繊合糸法、流体交絡(インターレース)法が挙げられる。連続強化繊維の損傷が抑制でき、開繊性に優れ、均一に混合可能な流体交絡法が好ましく使用される。流体交絡法としては、例えば、特許文献1に記載されている方法が好ましく使用される。原料となる強化繊維束の太さ、本数を適宜調整し、あわせて製造条件も調整すればよい。
[連続繊維不織布の製造方法]
連続繊維不織布の製造方法としては、経糸の上に緯糸および/または斜交糸を重ねてなる積層繊維束を接着剤である熱可塑性樹脂のエマルジョンに浸漬し、熱可塑性樹脂エマルジョンを連続強化繊維に含浸させ、含浸させた連続強化繊維を熱可塑性樹脂エマルジョンから引き揚げ、交点を熱可塑性樹脂で固定する方法が好ましい。より詳細には、例えば、経糸、緯糸および/または斜交糸をそれぞれ重ねて並べ(積層繊維束)、この積層繊維束をエマルジョン状態の熱可塑性樹脂に浸漬し、乾燥後、熱ローラーおよび加圧ローラーを通して接着し、製造する方法や、積層繊維束をエマルジョン状態の熱可塑性樹脂に浸漬し、乾燥させて接着する方法が挙げられる。また、連続強化繊維(例えば緯糸)をエマルジョン状態の熱可塑性樹脂に浸漬し乾燥後、経糸や斜交糸を重ねて並べ、熱ローラーおよび加圧ローラーを通して接着し、製造する方法によってもよい。
[複合材用強化繊維基材]
本発明の複合材用強化繊維基材は、本発明の連続繊維不織布が熱可塑性樹脂シートと積層されてなるものである。連続繊維不織布と熱可塑性樹脂シートの積層方法は以下に限定されるものではないが、例えば、上記の記載した方法で製造した連続繊維不織布を熱ローラーおよび加圧ローラーで接着剤の融点以上まで加熱し、熱可塑性樹脂シートと接着して積層する方法や、連続強化繊維を接着し、連続繊維不織布を製造する際に熱可塑性樹脂シートで上下を挟み、接着して積層する方法や、引き揃えた経糸、緯糸、斜交糸の間に熱可塑性樹脂シートを挟み、熱ローラー及び加圧ローラーで接着し、積層する方法や、連続繊維不織布と熱可塑性樹脂シートを縫い合わせる方法等があげられる。また、本発明の複合材用強化繊維基材は、引き揃えた経糸、緯糸あるいは斜交糸を熱可塑性樹脂シートの上に重ね、これを熱可塑性エマルジョンに浸漬し、その後、熱ローラー及び加圧ローラーで接着する方法によっても製造することができる。なお、連続強化繊維が熱可塑性樹脂でコーティングされてなる連続繊維不織布を熱ローラー及び加圧ローラーにかけると、コーティングされている熱可塑性樹脂が溶融して熱可塑性樹脂層となり、複合材用強化繊維基材のような形態となる。
<熱可塑性樹脂シート>
本発明に用いられる熱可塑性樹脂シートには特に制限はなく、例えば織物、編み物、レース、フィルム、不織布等の中から適宜、選択することができる。
例えば、織物は、シャトル織機、レピア織機、エアジェット織機、ウォータージェット織機等の製織機を用いることで得られる。例えば、熱可塑性樹脂繊維を配列させた経糸に、緯糸を打ち込むことによって得る方法が好ましい方法として挙げられる。
編物は、丸編み機、横編み機、トリコット編み機、ラッシェル編み機等の編み機を用い、少なくとも一部に熱可塑性樹脂繊維を含む繊維を編成することによって得られる。
フィルムは、シート押し出し機や多層フィルム押し出し機等を用いて、製造することができる。
熱可塑性樹脂シートに用いられる熱可塑性樹脂は、以下に限定されるものではないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46等のポリアミド樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリオキシメチレン等のポリアセタール系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリエーテルケトン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルスルフォン;ポリフェニレンサルファイド;熱可塑性ポリエーテルイミド;テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体等の熱可塑性フッ素系樹脂、およびこれらを変性させた変性熱可塑性樹脂が挙げられる。
これらの中でも、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂が機械的物性、汎用性、熱的物性の観点から好ましい。
[連続繊維強化樹脂成形体の製造方法]
連続繊維強化樹脂成形体は、上述した連続繊維不織布または複合材用強化繊維基材(以下、まとめて連続繊維不織布等ともいう)を構成材料として製造することができる。上述した連続繊維不織布は連続強化繊維の糸束の隙間に熱可塑性樹脂が予め含浸しているため、上述した連続繊維不織布を構成材料として連続繊維強化樹脂成形体を製造することで、含浸性に優れ、強度に優れる連続繊維強化樹脂成形体が得られる。なお、連続繊維強化樹脂成形体の製造方法は以下に限定されるものではなく、種々の方法を適用することができる。
例えば、連続繊維強化樹脂成形体を構成する基材、すなわち上述した連続繊維不織布等を所望の成形体に合わせて裁断し、目的とする製品の厚みを考慮して必要枚数積層させ、金型形状に合わせてセットする。この時、上述の連続繊維不織布等を用いることにより、裁断時の連続強化繊維の脱離やほつれ、乱れが少なく、成形後には一般的な強化繊維樹脂基材に比べて、熱可塑性樹脂の未含浸率が小さい連続繊維強化樹脂成形体を成形することができる。
基材の裁断は、1枚ずつ行ってもよいし、所望の枚数を重ねてから行ってもよい。生産性の観点からは、重ねた状態で裁断することが好ましい。本発明の連続繊維不織布は、強化繊維の間に樹脂が含浸していることで適度な硬さがあり、力に対して繊維が逃げにくいため切断が容易である。また、連続強化繊維の脱離やほつれがおきにくく、重ねて裁断した場合にも形状を維持しやすい。裁断する方法は任意の方法でよく、例えば、ウォータージェット、刃プレス機、熱刃プレス機、レーザー、プロッター等があげられる。断面形状にすぐれ、さらに、複数を重ねて裁断する際に端面を溶着することで取扱い性がよくなる熱刃プレス機が好ましい。適切な裁断形状は、トライアンドエラーを繰り返すことでも調整できるが、金型の形状にあわせてCAE(computer aided engineering)によるシミュレーションを行うことで設定することが好ましい。
本発明の連続繊維強化樹脂成形体は、上記のようにして裁断された連続繊維不織布等を金型に設置し、金型を閉じた後、設置した連続繊維不織布等を、連続繊維不織布等のマトリックス樹脂の融点以上に加熱し、その後、加熱した連続繊維不織布等を冷却することで製造することができる。
また、本発明の連続繊維強化樹脂成形体は、裁断された連続繊維不織布等を連続繊維不織布等のマトリックス樹脂の融点以上に予め加熱し、加熱した連続繊維不織布等を金型に設置し、金型を閉じて連続繊維不織布等を賦形することでも製造することができる。
ここで、マトリックス樹脂とは、連続繊維不織布の場合は連続繊維不織布に占める体積の割合が一番大きい樹脂であり、複合材用強化繊維基材の場合は複合材用強化繊維基材に占める体積の割合が一番大きい樹脂である。マトリックス樹脂が複数である場合には、一番融点の高いマトリックス樹脂の融点以上であることを意味する。
型締め圧力に特に規定はないが、好ましくは1MPa以上、より好ましくは3MPa以上である。また、ガス抜き等をするために一旦型締めをし、圧縮成形した後に一旦金型の型締め圧力を解除してもよい。連続繊維不織布等を連続繊維不織布等のマトリックス樹脂の融点以上に予め加熱する方法は、特に限定されるものではないが、IR(赤外線)ヒーター等により行うことができる。
(ハイブリッド成形体の製造方法)
連続繊維強化樹脂成形体の製造工程においては、金型内に連続繊維不織布等をセットして金型を閉じ、加圧し、所定の時間後に、さらに所定の熱可塑性樹脂組成物を射出充填して成形し、連続繊維不織布等の熱可塑性樹脂と、所定の熱可塑性樹脂組成物とを接合させることにより、ハイブリッド成形体を製造してもよい。
所定の熱可塑性樹脂組成物を射出充填するタイミングは、両熱可塑性樹脂間の界面強度に大きく影響する。所定の熱可塑性樹脂組成物を射出充填するタイミングは、連続繊維不織布等を金型内にセットして金型を閉じた後に金型温度がマトリックス樹脂の融点、ガラス転移温度以上に昇温してから、30秒以内が好ましい。
所定の熱可塑性樹脂組成物を射出充填する時の金型温度は、連続繊維強化樹脂成形体を構成するマトリックス樹脂の融点以上またはガラス転移温度以上であることが好ましい。より好ましくは、連続繊維強化樹脂成形体を構成するマトリックス樹脂の融点+10℃以上またはガラス転移温度+10℃以上であり、さらに好ましくは、融点+20℃以上またはガラス転移温度+20℃以上、さらにより好ましくは融点+30℃以上またはガラス転移温度+30℃以上である。
ハイブリッド成形体において、連続繊維不織布等を構成する熱可塑性樹脂と、射出成形により形成された熱可塑性樹脂組成物の接合部分は、互いに混じり合った凹凸構造となっていることが好ましい。
金型温度を射出する熱可塑性樹脂組成物の融点以上とし、射出成形時の樹脂保圧を高く、例えば、1MPa以上とすることは界面強度を高める上で有効である。界面強度を高めるためには、保圧を5MPa以上とすることが好ましく、10MPa以上とすることがより好ましい。
保圧時間を長く、例えば5秒以上、好ましくは10秒以上、より好ましくは金型温度が熱可塑性樹脂組成物の融点以下になるまでの間の時間保持することは、界面強度を高める観点から好ましい。
(射出成形用の樹脂)
ハイブリッド成形体を製造するために用いる射出成形用の熱可塑性樹脂組成物としては、一般の射出成形に使用される熱可塑性樹脂組成物であれば特に限定されない。
熱可塑性樹脂組成物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、全芳香族ポリエステル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリアミド樹脂、ポリスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン等の一種または二種以上を混合した樹脂組成物が挙げられる。
また、これらの熱可塑性樹脂組成物には、各種充填材が配合されていてもよい。
各種充填材としては、強化繊維と同種の材料の不連続強化材料である短繊維、長繊維材料等が挙げられる。
不連続強化材料にガラス短繊維、長繊維を用いる場合には、本発明の連続繊維不織布等が具備する連続強化繊維と同様に集束剤を用いてもよい。
集束剤は、シランカップリング剤、潤滑剤、および結束剤からなることが好ましい。シランカップリング剤、潤滑剤、結束剤の種類に関しては、前述の強化繊維の集束剤と同様のものが使用できる。
射出成形に用いる熱可塑性樹脂組成物は、連続繊維強化樹脂成形体と射出成形した熱可塑性樹脂組成物部分との界面強度の観点から、連続繊維強化樹脂成形体を構成する熱可塑性樹脂と類似のものが好ましく、同種類のものがより好ましい。具体的には、連続繊維強化樹脂成形体を構成する熱可塑性樹脂にポリアミド66繊維を用いた場合には、射出成形用の熱可塑性樹脂組成物の樹脂材料は、ポリアミド66が好ましい。
(連続繊維強化樹脂成形体の未含浸率)
本発明の連続繊維不織布を用いることにより、熱可塑性樹脂の未含浸率の低い連続繊維強化樹脂成形体を得ることができる。連続繊維強化樹脂成形体における熱可塑性樹脂の未含浸率は2.0%未満であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましく、さらには1.0%以下がより好ましく、0.5%未満であることが最も好ましい。成形体の未含浸率は実施例に示す方法により測定することができる。
<成形体の用途>
連続繊維強化樹脂成形体は、航空機、車、建設材料等の構造材料用途に好適に使用することができる。
車用途においては、以下に限定されるものではないが、例えば、シャーシ/フレーム、足回り、駆動系部品、内装部品、外装部品、機能部品、その他部品に使用できる。
具体的には、ステアリング軸、マウント、サンルーフ、ステップ、スーフトリム、ドアトリム、トランク、ブートリッド、ボンネット、シートフレーム、シートバック、リトラクター、リタラクター支持ブラケット、クラッチ、ギア、プーリー、カム、アーゲー、弾性ビーム、バッフリング、ランプ、リフレクタ、グレージング、フロントエンドモジュール、バックドアインナー、ブレーキペダル、ハンドル、電装材、吸音材、ドア外装、内装パネル、インパネ、リアゲート、天井ハリ、シート、シート枠組み、ワイパー支柱、EPS(Electric Power Steering)、小型モーター、ヒートシンク、ECU(Engine Control Unit)ボックス、ECUハウジング、ステアリングギアボックスハウジング、プラスチックハウジング、EV(Electric Vehicle)モーター用筐体、ワイヤーハーネス、車載メーター、コンビネーションスイッチ、小型モーター、スプリング、ダンパー、ホイール、ホイールカバー、フレーム、サブフレーム、サイドフレーム、二輪フレーム、燃料タンク、オイルパン、インマニ、プロペラシャフト、駆動用モーター、モノコック、水素タンク、燃料電池の電極、パネル、フロアパネル、外板パネル、ドア、キャビン、ルーフ、フード、バルブ、EGR(Exhaust Gas Recirculation)バルブ、可変バルブタイミングユニット、コネクティングロッド、シリンダボア、メンバー(エンジンマウンティング、フロントフロアクロス、フットウェルクロス、シートクロス、インナーサイド、リヤクロス、サスペンション、ピラーリーンフォース、フロントサイド、フロントパネル、アッパー、ダッシュパネルクロス、ステアリング)、トンネル、締結インサート、クラッシュボックス、クラッシュレール、コルゲート、ルーフレール、アッパボディ、サイドレール、ブレーディング、ドアサラウンドアッセンブリー、エアバッグ用部材、ボディーピラー、ダッシュツゥピラーガセット、サスペンジョンタワー、バンパー、ボディーピラーロワー、フロントボディーピラー、レインフォースメント(インパネ、レール、ルーフ、フロントボディーピラー、ルーフレール、ルーフサイドレール、ロッカー、ドアベルトライン、フロントフロアアンダー、フロントボディーピラーアッパー、フロントボディーピラーロワ
ー、センターピラー、センターピラーヒンジ、ドアアウトサイドパネル、)、サイドアウターパネル、フロントドアウインドゥフレーム、MICS(Minimum Intrusion Cabin System)バルク、トルクボックス、ラジエーターサポート、ラジエーターファン、ウォーターポンプ、燃料ポンプ、電子制御スロットルボディ、エンジン制御ECU、スターター、オルタネーター、マニホールド、トランスミッション、クラッチ、ダッシュパネル、ダッシュパネルインシュレータパッド、ドアサイドインパクトプロテクションビーム、バンパービーム、ドアビーム、バルクヘッド、アウタパッド、インナパッド、リヤシートロッド、ドアパネル、ドアトリムボドサブアッセンブリー、エネルギーアブソーバー(バンパー、衝撃吸収)、衝撃吸収体、衝撃吸収ガーニッシュ、ピラーガーニッシュ、ルーフサイドインナーガーニッシュ、樹脂リブ、サイドレールフロントスペーサー、サイドレールリアスペーサー、シートベルトプリテンショナー、エアバッグセンサー、アーム(サスペンション、ロアー、フードヒンジ)、サスペンションリンク、衝撃吸収ブラケット、フェンダーブラケット、インバーターブラケット、インバーターモジュール、フードインナーパネル、フードパネル、カウルルーバー、カウルトップアウターフロントパネル、カウルトップアウターパネル、フロアサイレンサー、ダンプシート、フードインシュレーター、フェンダーサイドパネルプロテクター、カウルインシュレーター、カウルトップベンチレータールーパー、シリンダーヘッドカバー、タイヤディフレクター、フェンダーサポート、ストラットタワーバー、ミッションセンタートンネル、フロアトンネル、ラジコアサポート、ラゲッジパネル、ラゲッジフロア等の部品として好適に使用することができる。
以下に本発明の具体的な実施例を示すが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
〔接着剤〕
(ポリアミドエマルジョン)
商品名:セポルジョンPA200(住友精化株式会社)ポリアミド固形分40質量%
(アクリル樹脂エマルジョン)
商品名:TOCRYL BCX-8140(トーヨーケム株式会社)
〔熱可塑性樹脂繊維〕
ポリアミド樹脂繊維:レオナ(登録商標)470/144BAU(旭化成(株)製)、繊度470dtex、単糸数144本レオナを使用した。
ポリエチレン繊維:ポリアミド樹脂繊維と同様のプロセスで繊度470dtex、単糸数144本のものを用意した。
〔連続強化繊維〕
(ガラス繊維A)
下記集束剤aを1.0質量%付着させた、繊度8000dtexで単糸数1400本のガラス繊維を製造した。ロービング形態であり、平均単糸径は17μmとした。
(集束剤aの組成(固形分換算)):
・シランカップリング剤:γ-アミノプロピルトリエトキシシラン0.6質量%〔商品名:KBE-903(信越化学工業(株)製)〕
・潤滑剤:ワックス0.1質量%〔商品名:カルナウバワックス((株)加藤洋行製)〕
・結束剤:アクリル酸/マレイン酸共重合体塩5質量%〔商品名:アクアリックTL(日本触媒(株)製)〕
(ガラス繊維B)
下記集束剤bを1.5質量%付着、乾燥させた、繊度8000dtex で単糸数1400本 のガラス繊維を製造した。ロービング形態であり、平均単糸径は17μmとした。
(集束剤bの組成(固形分換算)):
・シランカップリング剤:γ-アミノプロピルトリエトキシシラン0.3質量%〔商品名:KBE-903(信越化学工業(株)製)〕
・潤滑剤:ブチルステアレート0.5質量%、テトラエチレンペンタミンジステアレート0.05%
・結束剤:エポキシ樹脂〔商品名:jER828(登録商標、三菱化学製)〕
・pH調整剤:酢酸微量(水溶液のpH5に調整)
〔熱可塑性樹脂シートの製造〕
実施例に記載の熱可塑性樹脂のペレットから、シート押し出し成形機を用いて、厚さ0.2mm、幅50cmのシートを作製した。
〔コーティング糸の製造〕
(被覆用樹脂)
連続強化繊維を被覆するための熱可塑性樹脂として、以下の樹脂を用意した。
・PA66(旭化成製 レオナ(登録商標)1402S-011)
なお、PA66は、相対粘度45、水分0.09%であり、PA66を99.29質量部に対して、酢酸銅(一水和物)を0.03質量部、ヨウ化カリウムを0.50質量部、乳酸マンガン(II)を0.01質量部、AlSt(ステアリン酸アルミニウム)を0.12質量部、PEG(ポリエチレングリコール)400を0.06質量部加えた。
(コーティング方法)
AIKI社製コーティング機を使用した。糸の繰り出しは転がし取りを行った。糸の繰り出しから、ダイ、冷却、巻き取りまで、糸が直線になるように配置し、ダイの直前、冷却水に触れた直後、冷却器を出た直後、巻き取り機の直前に糸のガイドを設置した。押し出し機は糸に対して90度の角度に設置した。冷却はウォーターバスを用い、冷却後、空気により水分を吹き飛ばした。糸の速度は200m/分とし、巻き取り機によってコントロールした。押し出しは280~295℃で行った。ダイの内部で溶融した樹脂と、連続強化繊維が微加圧の状態で接触するように、樹脂の導入部分よりも連続強化繊維との接触部分が小さくなるように絞りを入れたダイを使用し、押し出し機の押出速度を微調整した。
〔連続繊維不織布の製造方法〕
経糸を幅1mに10本/インチで整経して送り出し、10本/インチに引き揃えられた緯糸を重ねた後、表1に示す接着剤(濃度を精製水で希釈することにより10質量%に調製)が入った漕に浸漬した。その後、乾燥固化させることで連続繊維不織布(以下、基材、あるいは単に布ともいう)を製造した。なお、経糸、緯糸および斜交糸がある場合には、経糸を幅1mに10本/インチで整経して送り出し、10本/インチに引き揃えられた緯糸を重ね、その後10本/インチに引き揃えられた斜交糸を互いに交差するように2方向で重ねて同様の手法により製造した。
〔連続繊維強化樹脂成形体の製造方法〕
(基材の圧縮成形工程)
成形機は、最大型締め力50トンの油圧成形機(株式会社ショージ)を使用した。
平板型の連続繊維強化樹脂成形体(縦200mm、横100mm、肉厚2mm)を得るための金型を準備した。基材を金型形状に合わせて切断し、金型内に設置した。
成形機内温度を330℃に加熱し、基材を設置した金型を投入し、次いで型締め力5MPaで型締めし、圧縮成形を行った。成形時間はポリアミド66の融点である265℃に達してから1分とし、金型を急冷したのちに金型を開放し、成形体を取り出した。成形中の最大温度は274℃であった。
〔連続強化繊維の糸束の隙間への熱可塑性樹脂の含浸率の測定〕
連続繊維不織布の任意の位置から5断面を切り出し、1断面につき任意の位置4箇所、合計20箇所において、マイクロスコープにより連続強化繊維の糸束の隙間に熱可塑性樹脂が含浸しているかを観察し、連続強化繊維の糸束の隙間のうち、熱可塑性樹脂が占有している割合の中央値が60%未満のものをD、60%以上70%未満のものをC、70%以上80%未満のものをB、80%以上85%以下のものをAとして含浸率の評価を行った。
〔未含浸率の測定〕
成形体の断面を切り出し、エポキシ樹脂に包埋し、連続強化繊維が破損しないように注意しながら研磨を行った。マイクロスコープにより観察し、得られた画像から、繊維束、熱可塑性樹脂、空隙のそれぞれの占有面積を求め、全体の面積に対する空隙の面積の割合により算出した。
〔基材の取扱い性の評価〕
布を10cm×10cmに切断した際に、布から脱離した繊維の本数が4本以下のものをA、5本以上8本以下のものをB、9本以上のものをCとした。
〔ガラスクロスの製造方法〕
レピア織機(織幅2m)を用い、ガラス繊維を経糸、緯糸として用いて製織することで製造した。この時、経糸と緯糸の間隔を10本/インチにした。
〔生産性の評価〕
基材を製造する際に、緯糸を挿入する速度が300本/分未満の場合をC、300本/分以上1000本/分未満の場合をB、1000本/分以上をAとして評価した。
〔引張応力の測定〕
インストロン万能試験機にて、長さ70mm、幅10mm、肉厚3mmの短冊状の試験片を、長手方向に30mmの間隔でチャッキングし、速度5mm/min、23℃50%RH環境下で引張強度を測定した。
〔連続繊維不織布中の熱可塑性樹脂量の測定〕
製造した連続繊維不織布2gを切り出し、電気炉に入れ、温度650℃で3時間加熱して、樹脂を焼き飛ばした。その後、室温まで自然冷却し、残されたガラス繊維の質量を測定することで、連続繊維不織布に含まれるガラス繊維と樹脂の比率を求めた。また、求めた比率から、連続繊維不織布全体積に対する熱可塑性樹脂の体積を求めた。
(実施例1)
アクリル樹脂エマルジョンを接着剤として用い、経糸、緯糸にガラス繊維Aを用いて上述の通り連続繊維不織布を製造した。この時、接着剤の付着量はガラス繊維Aに対して8質量%であった。その後、連続繊維不織布に含まれるガラス繊維Aに対して、28質量%のポリアミド66のシートと積層して金型に投入し、上記〔連続繊維強化樹脂成形体の製造方法〕の通りに連続繊維強化樹脂成形体を製造した。
(実施例2)
ポリアミドエマルジョンを接着剤として用いた以外は実施例1と同様にして連続繊維不織布と連続繊維強化樹脂成形体を製造した。この時、接着剤の付着量はガラス繊維Aに対して8質量%であった。
(実施例3)
実施例2においてポリアミドエマルジョンの付着量を変更し、熱可塑性樹脂シートを用いなかった以外は、実施例2と同様にして連続繊維不織布と連続繊維強化樹脂成形体を製造した。この時、ポリアミドエマルジョンの付着量はガラス繊維Aに対して55体積%であった。
(実施例4)
ポリアミド66のシートの代わりにポリエチレンのシートを用い、ポリアミドエマルジョンを接着剤として用いた以外は実施例1と同様にして連続繊維不織布と連続繊維強化樹脂成形体を製造した。
(実施例5)
経糸、緯糸にガラス繊維Aがポリアミド66で被膜されたコーティング糸を用い、ポリアミドエマルジョンを接着剤として用いた以外は実施例1と同様にして連続繊維不織布と連続繊維強化樹脂成形体を製造した。この時、ポリアミド66はガラス繊維Aに対して36質量%被膜していた。
(実施例6)
ガラス繊維Aとポリエチレン繊維を質量比64:36で引き揃えて、経糸、緯糸に用い、ポリアミドエマルジョンを接着剤として用い、シートを用いなかった以外は実施例1と同様にして連続繊維不織布と連続繊維強化樹脂成形体を製造した。
(実施例7)
ポリエチレン繊維の代わりにポリアミド樹脂繊維を用いた以外は、実施例6と同様にして連続繊維不織布と連続繊維強化樹脂成形体を製造した。
(実施例8)
連続繊維不織布製造の際に、経糸、緯糸にガラス繊維Aを用いて、さらに、ポリアミド樹脂繊維を10本/インチに引き揃えて斜交糸として重ねて連続繊維不織布を製造した。その後実施例6と同様にして連続繊維強化樹脂成形体を製造した。
(実施例9)
ガラス繊維A1束、ポリアミド樹脂繊維10束を合糸および引き揃えた後、流体交絡ノズルに実質的に垂直に供給し、下記条件で流体交絡させて、複合糸を得た。
・ガラス繊維AはDWR形態から転がし取りを行った。
・ヒートセット:引き揃える直前に、加熱部1m、240℃のヒーターにより、ポリアミド樹脂繊維のヒートセットを行った。
・ポリアミド樹脂繊維はヒートセットにより縮むため、オーバーフィード量を調整した。
・強化繊維は伸縮率が小さく糸揺れが起こりやすいため、糸揺れを低減させるように糸道を調整した。
・流体交絡ノズル:京セラ KC-AJI-L(1.5mm径、推進型)
・空気圧:2kg/cm2
・加工速度:100m/分
・室内の雰囲気は25℃、湿度50%に調整した。
・巻き取り部分は乾燥空気を流して、ポリアミドが吸湿するのを防止した。
得られた複合糸を用い、ポリアミドエマルジョンを接着剤として用い、シートを用いなかった以外は実施例1と同様にして連続繊維不織布と連続繊維強化樹脂成形体を製造した。
(実施例10)
使用する連続強化繊維をステンレス繊維(商品名:ナスロン、日本精線株式会社製)にする以外は実施例2と同様に連続繊維不織布と連続繊維強化樹脂成形体を製造した。
(実施例11)
実施例2の連続繊維不織布製造時の熱可塑性樹脂漕浸漬後にポリエチレンシートで連続繊維不織布を挟み、200℃の熱ローラーと加圧ローラーの間を通すことで、連続繊維不織布とポリエチレンシートを圧着し、複合材用強化繊維基材を得た。その後、実施例1と同様にして連続繊維強化樹脂成形体を製造した。
(実施例12)
ポリエチレンシートをポリアミド66シートにした以外は実施例11と同様にして複合材用強化繊維基材と連続繊維強化樹脂成形体を製造した。
(実施例13)
実施例12と同様に複合材用強化繊維基材を得た。得られた複合材用強化繊維基材を金型形状に合わせて切削し、IRヒーターにより280℃に加熱後、150℃に加熱された金型に移し、型締め力5MPaで型締めし、賦形した。型締め後1分で金型を開放し、連続繊維強化樹脂成形体を取り出した。
(実施例14)
ガラス繊維A(経糸)を幅1mに10本/インチで整経して送り出し、ポリアミド66のシートを重ね、その上に10本/インチに引き揃えられたガラス繊維A(緯糸)を重ねた後、濃度を精製水で希釈することにより10質量%に調製したポリアミドエマルジョンが入った漕に浸漬した。その後、200℃の熱ローラーと加圧ローラーの間を通すことで複合材用強化繊維基材を得た。その後、実施例12と同様に連続繊維強化樹脂成形体を製造した。
(実施例15)
ガラス繊維Aを、10質量%に調整したポリアミドエマルジョン2Lに連続的に供給し、80℃の熱風循環乾燥機で1時間乾燥することで、ガラス繊維Aに熱可塑性樹脂を含浸させた。この時ポリアミド樹脂はガラス繊維Aに対して8質量%の割合で含浸した。この糸を経糸、緯糸に用いて、経糸を幅1mに10本/インチで整経して送り出し、その上に10本/インチに引き揃えられた緯糸を重ねた後、200℃の熱ローラーと加圧ローラーの間を通すことで連続繊維不織布を得た。その後、実施例1と同様にして連続繊維強化樹脂成形体を製造した。
(実施例16)
ポリアミド66シートを製造する際にポリアミド66ペレットと一緒にポリアミドエマルジョンを加え、シートを製造した。ガラス繊維Aを経糸、緯糸に用いて、経糸を幅1mに10本/インチで整経して送り出し、その上に10本/インチに引き揃えられた緯糸を重ねた後、先述のシートで挟み、200℃の熱ローラーと加圧ローラーの間を通すことで連続繊維不織布を得た。その後、実施例12と同様にして連続繊維強化樹脂成形体を製造した。
(比較例1)
接着剤にエポキシ樹脂(熱硬化性樹脂)を用いた以外は実施例1と同様にして連続繊維不織布と連続繊維強化樹脂成形体を製造した。
(比較例2)
上記に記載したガラスクロスを連続的に送り出し、10質量%に調整したポリアミドエマルジョン漕に浸漬、ローラーにより絞った後、乾燥し、巻き取った。この時ポリアミド樹脂はガラスクロスに対して8質量%の割合で付着した。その後実施例1と同様にして連続繊維強化樹脂成形体を製造した。
(比較例3)
ガラス繊維A(経糸)を幅1mに10本/インチで整経して送り出し、10本/インチに引き揃えられたガラス繊維A(緯糸)を重ねた後、ポリアミド樹脂繊維により各交点をスティッチングして固定し、連続繊維不織布を得た。その後実施例1と同様にして連続繊維強化樹脂成形体を製造した。
(比較例4)
ガラス繊維Bを用いる以外は実施例2と同様にして連続繊維不織布と連続繊維強化樹脂成形体を製造した。
Figure 0006991766000002
Figure 0006991766000003
本発明の連続繊維不織布は、熱可塑性樹脂の含浸率が高い上、引張応力も非常に高い値を示した。また、本発明の連続繊維不織布は非常に生産性が高く、また繊維の脱離が少なく、取扱い性にも優れていた。一方、比較例1や3のように、連続繊維不織布を構成する糸の隙間に樹脂が含浸していないと、基材の取扱い性は悪く、また成形体の含浸率は低く、強度も低かった。また、比較例2のように、ガラスクロスを用いると基材の生産性は低いものとなった。比較例4のように、ガラス繊維の表面処理剤の影響により、接着剤に浸漬した際にガラス繊維が開かないと、ガラス繊維の糸束の隙間に熱可塑性樹脂が含浸しないため、成形体の含浸率は低くなり、強度も低かった。
本発明の連続繊維不織布や連続繊維強化樹脂成形体は、各種機械や自動車等の構造部品等、高レベルでの機械的物性が要求される材料の補強材として、また、熱可塑性樹脂組成物との複合材料成形体を構成する材料として、産業上の利用可能性を有する。

Claims (10)

  1. 経糸と該経糸に直交する緯糸、
    前記経糸と該経糸と斜めに交わる斜交糸、または、
    前記経糸、該経糸に直交する緯糸および前記経糸と斜めに交わる斜交糸、
    のいずれかを有する連続繊維不織布であって、
    該連続繊維不織布を構成する前記経糸、前記緯糸および前記斜交糸の少なくともいずれか1つが連続強化繊維を含み、
    前記経糸、前記緯糸または前記斜交糸により形成される交点が接着剤により固定されており、
    該接着剤がポリアミド樹脂であって、該ポリアミド樹脂の形態が、エマルジョン状態のポリアミド樹脂であり、前記接着剤が、ノニオン系、カチオン系、アニオン系またはこれらの混合物である界面活性剤を含有し、
    前記連続強化繊維の糸束の隙間に含浸している前記形態の接着剤が乾燥固化してなる連続繊維不織布。
  2. 前記ポリアミド樹脂が、連続繊維不織布全体積に対して45~65体積%である請求項1記載の連続繊維不織布。
  3. 前記経糸、前記緯糸および前記斜交糸の少なくともいずれか1つに熱可塑性樹脂繊維を含む請求項1または2記載の連続繊維不織布。
  4. 前記熱可塑性樹脂繊維が前記斜交糸に含まれる請求項に記載の連続繊維不織布。
  5. 前記熱可塑性樹脂繊維がポリアミド樹脂繊維である請求項またはに記載の連続繊維不織布。
  6. 前記熱可塑性樹脂繊維と前記連続強化繊維が混繊されてなる請求項いずれか1項に記載の連続繊維不織布。
  7. 前記連続強化繊維がガラス繊維または炭素繊維である請求項1~いずれか1項に記載の連続繊維不織布。
  8. 請求項1~に記載の連続繊維不織布がポリアミド樹脂シートと積層されてなる複合材用強化繊維基材。
  9. 前記複合材用強化繊維基材のマトリックス樹脂が、前記接着剤のポリアミド樹脂と同種類の樹脂である請求項記載の複合材用強化繊維基材。
  10. 前記経糸の上に前記緯糸および/または前記斜交糸を重ねてなる積層繊維束を接着固定する請求項1~に記載の連続繊維不織布の製造方法であって、前記積層繊維束を前記接着剤であるポリアミド樹脂のエマルジョンに浸漬し、該ポリアミド樹脂エマルジョンを前記連続強化繊維の糸束の隙間に含浸させ、該含浸させた連続強化繊維を前記ポリアミド樹脂エマルジョンから引き揚げ、前記交点を前記ポリアミド樹脂で固定する連続繊維不織布の製造方法。
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