JP6974216B2 - 船尾管用潤滑油組成物 - Google Patents
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Description
さらに、船舶用の装置に用いられる脂肪酸エステル系潤滑油は、海水が潤滑油に混入するため、優れた加水分解安定性が求められるとともに、海水に対する錆止め性が要求されている。
例えば、鉱物油系潤滑油と同等の潤滑性、防錆性、生分解性等を有することを目的として、水溶性アルキレングリコール及び/又はポリアルキレングリコール、水溶性増粘剤、並びに水溶性防錆剤をそれぞれ特定の量で含有する船舶軸受け推進器用潤滑油が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
すなわち、上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
基油と、
酸化防止剤と、
組成物全量基準で0.05質量%〜0.3質量%のアルケニルコハク酸ハーフエステルと、
組成物全量基準で0.03質量%〜0.15質量%のN−オレオイルサルコシンと、
を含有する船尾管用潤滑油組成物。
<2> 前記アルケニルコハク酸ハーフエステルの含有量は、組成物全量基準で0.08質量%〜0.15質量%である、<1>に記載の船尾管用潤滑油組成物。
なお、本明細書中、数値範囲を現す「〜」は、その上限及び下限としてそれぞれ記載されている数値を含む範囲を表す。また、「〜」で表される数値範囲において上限値のみ単位が記載されている場合は、下限値も同じ単位であることを意味する。
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。
本明細書において組成物中の各成分の含有率又は含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本明細書において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本発明の船尾管用潤滑油組成物(以下、単に「潤滑油組成物」ともいう。)は、基油と、酸化防止剤と、組成物全量基準で0.05質量%〜0.3質量%のアルケニルコハク酸ハーフエステルと、組成物全量基準で0.03質量%〜0.15質量%のN−オレオイルサルコシンと、を含有する。
潤滑油組成物は、基油と、特定量のアルケニルコハク酸ハーフエステル及び特定量のN−オレオイルサルコシンとを、含有することで、加水分解安定性及び錆止め性に優れる。
この理由は明らかではないが、以下のように推測される。
また、アルケニルコハク酸ハーフエステルは、水存在下でイオン化されて、例えば、鉄等の金属と反応することで、金属表面に金属塩の吸着膜を形成するため、錆止め性を発揮することができる。
N−オレオイルサルコシンは、アルケニルコハク酸ハーフエステルと同様に、金属表面に金属塩の吸着膜を形成して、錆止め性を発揮する他に抗乳化性を有する。潤滑油組成物に水が混入した場合、N−オレオイルサルコシンは水と油成分とを分離させるため、アルケニルコハク酸ハーフエステルのイオン化が促進されて、錆止め性を更に発揮すると推察される。
また、潤滑油組成物中のアルケニルコハク酸ハーフエステルが特定量であると、組成物中の酸価が上昇しにくく、アルケニルコハク酸ハーフエステルの加水分解も抑制されるため、加水分解安定性にも優れる。
以下、本発明の潤滑油組成物に含まれる各成分の詳細について説明する。
本発明の潤滑油組成物は、基油を含有する。
基油としては、特に限定されず、例えば、鉱油、合成油、又はこれらの混合油であってもよい。
鉱油としては、例えば、原油の潤滑油留分を溶剤精製、水素化精製、水素化分解精製、水素化脱蝋などの精製法を適宜組合せて精製したものが挙げられる。加えて、水素化精製油、触媒異性化油などに溶剤脱蝋又は水素化脱蝋などの処理を施した高度に精製されたパラフィン系鉱油等が挙げられる。
これらの中でも、基油としては、合成油であることが好ましく、油水の分離性に優れる観点から、脂肪酸エステルであることがより好ましい。
アルコールの具体例としては、オレイルアルコール、ラウリルアルコール、メタノール、エタノール、ペンタノール、ヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどが挙げられる。
これらの中でも、アルコールとしては、多価アルコールであることが好ましく、3価のアルコール及びネオペンチル構造を有する多価アルコール(以下、「ネオペンチルポリオール」ともいう。)の少なくとも一方であることがより好ましい。
ネオペンチルポリオールとしては、例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
脂肪酸の具体例としては、例えば、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、エイコサン酸、ドコサン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、スベリン酸、リシノール酸、アゼライン酸、セバシン酸などが挙げられる。
これらの中でも、加水分解安定性の観点から、脂肪酸としては、飽和又は不飽和の炭素数11以上の長鎖脂肪酸であることが好ましく、飽和又は不飽和の炭素数11〜炭素数20の長鎖脂肪酸であることがより好ましい。
例えば、6価のアルコールとのエステルを形成する脂肪酸は、炭素数8の直鎖脂肪酸と炭素数6の分岐鎖脂肪酸との混合であってもよいし、炭素数8の直鎖脂肪酸のみであってもよい。
加水分解安定性の観点からは、脂肪酸エステルの酸価としては、0.1mgKOH/g以下であることがより好ましく、更に好ましくは0.05mgKOH/g以下である。
基油の40℃における動粘度が10mm2/s以上であると、潤滑油としての潤滑性が得られ、600mm2/s以下であると高い生分解性がより得られる。
40℃動粘度は、JIS K 2283:2000動粘度試験方法に基づいて測定した値である。
本発明の潤滑油組成物は、酸化防止剤を少なくとも含有する。
酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールなどのアルキルフェノール、4,4’−メチレンビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)等のビスフェノール、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネート等のフェノール系化合物、ナフチルアミン、ジアルキルジフェニルアミン等の芳香族アミン化合物などが挙げられる。
これらの中でも、潤滑性の観点から、酸化防止剤としては、芳香族アミン化合物であることが好ましく、フェノール系化合物、ナフチルアミン又はジアルキルジフェニルアミンであることがより好ましい。
酸化防止剤は、1種単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
本発明の潤滑油組成物は、組成物全量基準で0.05質量%〜0.3質量%のアルケニルコハク酸ハーフエステルと、組成物全量基準で0.03質量%〜0.15質量%のN−オレオイルサルコシンと、を少なくとも含有する。
潤滑油組成物は、特定量のアルケニルコハク酸ハーフエステル及び特定量のN−オレオイルサルコシンを、含有するので、加水分解安定性及び錆止め性に優れる。
本発明の潤滑油組成物は、基油、酸化防止剤、アルケニルコハク酸ハーフエステル及びN−オレオイルサルコシン以外の成分(以下、「その他の成分」ともいう。)を、必要に応じて適量含有していてもよい。
その他の成分としては、例えば、通常の潤滑油組成物に用いられる成分、例えば、極圧剤、アルケニルコハク酸ハーフエステル及びN−オレオイルサルコシン以外の錆止め剤(以下、「その他の錆止め剤」ともいう。)、腐食防止剤、消泡剤などの各種添加剤が挙げられる。
潤滑油組成物は、40℃の動粘度が10mm2/s〜600mm2/sであることが好ましく、20mm2/s〜200mm2/sであることがより好ましい。潤滑油組成物の40℃における動粘度が10mm2/s以上であれば潤滑油としての潤滑性が得られ、600mm2/s以下であれば高い生分解性が得られる。
40℃動粘度は、JIS K 2283:2000動粘度試験方法に基づいて測定した値である。
潤滑油組成物の調製方法としては、基油、酸化防止剤、アルケニルコハク酸ハーフエステル及びN−オレオイルサルコシンに加え、必要に応じて各種添加剤を適宜混合すればよい。
基油、酸化防止剤、アルケニルコハク酸ハーフエステル及びN−オレオイルサルコシン並びに各種添加剤の混合順序は、特に制限されるものではなく、基油に順次混合してもよい。
実施例及び比較例では、基油及び添加剤を下記表1及び表2に示す配合割合(質量%)で混合して潤滑油組成物を調製した。
得られた潤滑油組成物をそれぞれ用いて下記の性能評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
・グリセロールとオレイン酸とからなる脂肪酸エステル(初期酸価:0.04mgKOH/g、40℃における動粘度:35.44mm2/s)67質量部と、ペンタエリスリトールとジカルボン酸と炭素数18の飽和脂肪酸とからなる脂肪酸エステル(初期酸価:0.2mgKOH/g、40℃における動粘度:977mm2/s。)33質量部と、を混合した基油
・アルキル化フェニルαナフチルアミン0.5質量%と、トリ(tert−ブチルフェニル)フォスフェート0.25質量%と、を混合した酸化防止剤
<加水分解安定性試験>
ASTM−D−2619に基づき、加水分解安定性試験を以下のように実施した。
試料として調製した潤滑油組成物7.5×10−2kgと水2.5×10−2kgとの混合物を試験容器に入れて混合させた後、93℃に保った容器を、毎分5回転させ、300時間試験を行った。
試験後、混合物を遠沈管に移し、遠心分離機にて毎分1500回転させ、20分間、遠心分離を行い、油相と水相とに分離し、油相の40℃動粘度を測定した。
試験前の潤滑油組成物及び試験後の油相の40℃動粘度の測定値を用いて下記の式から粘度変化率(%)を算出した。
粘度変化率(%)=(試験後の油相の40℃動粘度の測定値−試験前の潤滑油組成物の40℃動粘度)/試験前の潤滑油組成物の40℃動粘度×100
粘度変化率が−10%〜+10%の範囲に入る場合を加水分解安定性に優れると判断した。なお、粘度変化率が小さい(0%に近い)ほど加水分解安定性により優れる。
JIS−K−2510(1998)に準拠した錆止め性能試験を以下のように実施した。
試料として調製した潤滑油組成物300mlと、人工海水30mlと、の混合液に、研磨された鋼製丸棒の試験片(直径13.0mm×長さ81.0mm)を60℃で24時間浸漬し、試験片に生じた錆の有無を目視で確認した。
なお、試験片を混合液に浸漬している間、混合液は攪拌棒で撹拌し続けた。
A;試験片の表面に直径1mm以下の錆のはん点が6個以下であり、錆止め性に優れる。
B;試験片の表面に直径1mm以下の錆のはん点が6個を超えるが、錆は試験片表面の5%以下であり、錆止め性にやや劣っている。
C;錆が試験片表面の5%を超える範囲で認められ、錆止め性に劣る。
これに対して、表2に示すように、比較例1〜12の潤滑油組成物は、加水分解安定性及び錆止め性のいずれか一方が劣っていた。
一方、N−オレオイルサルコシンの含有量が0.15質量%を超える比較例11では、錆止め性が劣っていた。これは、錆止め性の効果が高いアルケニルコハク酸ハーフエステルの金属表面への吸着を、錆止め性の効果が低いN−オレオイルサルコシンが阻害しているため、錆が発生すると推察される。
また、アルケニルコハク酸ハーフエステルの含有量が0.3質量%を超える比較例10では、加水分解安定性が劣っていた。
脂肪酸エステルは、酸により加水分解反応が促進されることが知られている。アルケニルコハク酸ハーフエステル等の一般的な錆止め剤は、酸価が高く、アルケニルコハク酸ハーフエステルが潤滑油組成物中に多く添加されると、添加量に比例して潤滑油組成物の酸価は上昇し、アルケニルコハク酸ハーフエステルの加水分解反応が促進されて、組成物の粘度変化が大きくなると考えられる。つまり、潤滑油組成物が所定量を超えたアルケニルコハク酸ハーフエステルを含むため、加水分解安定性が得られないと推察される。
以上より、本発明の潤滑油組成物は、加水分解安定性及び錆止め性に優れる。
Claims (2)
- 基油と、
酸化防止剤と、
組成物全量基準で0.05質量%〜0.3質量%のアルケニルコハク酸ハーフエステルと、
組成物全量基準で0.03質量%〜0.15質量%のN−オレオイルサルコシンと、
を含有する船尾管用潤滑油組成物であり、
前記基油が、脂肪酸エステルであり、
前記N−オレオイルサルコシンと前記アルケニルコハク酸ハーフエステルとの含有量比が、質量基準で、1:1〜1:10である、
船尾管用潤滑油組成物。 - 前記アルケニルコハク酸ハーフエステルの含有量は、組成物全量基準で0.08質量%〜0.15質量%である、請求項1に記載の船尾管用潤滑油組成物。
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