JP6967220B2 - 断熱遮熱コーティング組成物及び断熱遮熱塗料 - Google Patents
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Description
断熱塗料は、熱伝導を抑える機能を有する成分を配合した塗料である。熱伝導を抑える機能を有する構成成分として、内部に空気層を有する中空粒子を合成樹脂エマルジョンに分散配合した塗料が開示されている(特許文献1,2)。
遮熱塗料は、赤外線領域、特に近赤外領域(波長:780nm〜2500nm)を効果的に反射して、輻射による温度上昇を抑える機能を有する成分を配合した塗料である。輻射による温度上昇を抑える機能を有する成分として、酸化チタンやシリカ、酸化鉄等の着色含量を添加した合成樹脂エマルジョンに分散配合した塗料が開示されている(特許文献3,4)。
また、中空部分を有する粒子を赤外線反射性粉体で表面を被覆することで、断熱機能と遮熱機能を併せ持つ塗料についても開示されている(特許文献5)。
しかしながら、セルロースナノファイバー(CNF)、キチンナノファイバー(ChNF)を、断熱機能を有する成分とした断熱塗料、遮熱機能を有する成分とした遮熱塗料は、いずれも開示されていない。
そして、熱伝導を抑える機能を有する公知成分、輻射による熱伝導を抑える機能を有する公知の成分に、生物由来ナノファイバーを配合することで、塗膜密着性に優れ、かつ塗膜強度が高く塗膜のひび割れが生じにくい、断熱機能と遮熱機能を併せ持つ塗料を提案することができ、上記課題を解決することができた。
具体的には、以下の態様により解決できる。
生物由来ナノファイバーは、水との親和性が高いため水分散性に優れ、アスペクト比が高いためナノファイバーが折り重なって網目構造を形成することで、ナノレベルの空隙を含む塗膜形成が容易であるからである。この特性により、セルロースナノファイバー(CNF)、キチンナノファイバー(CNF)のみで形成した塗膜は、その熱伝導率(W/m・k)が、CNFで0.128、ChNFで、0.107、0.109と優れた断熱特性を示すからである。
膨潤性層状無機化合物は、溶媒(特に、水)で膨潤させることで、水との親和性が高い生物由来ナノファイバーと嵌入構造を形成することができ、塗膜強度と可撓性を向上でき るからである。さらに、上述した生物由来ナノファイバーによる網目構造由来のナノレベ ルの空隙による断熱機能により、熱伝導を抑える機能を有する成分である断熱性中空構造 フィラーの含有量を抑えることができ、塗膜密着性に優れ、かつ塗膜強度が高い塗膜を形 成できるからである。
膨潤性層状無機化合物は、溶媒(特に、水)で膨潤させることで、水との親和性が高い 生物由来ナノファイバーと嵌入構造を形成することができ、塗膜強度と可撓性を向上でき るからである。さらに、上述した生物由来ナノファイバーが膨潤性層状無機化合物と嵌入 構造を形成することにより、膨潤性層状無機化合物の層間が広がり、赤外線等の反射を増 大させることにより輻射による温度上昇を抑えるという遮熱機能により、輻射による温度 上昇を抑える機能を有する成分である酸化チタン等の無機粉体の含有量を抑えることがで き、塗膜密着性に優れ、かつ塗膜強度が高く塗膜のひび割れが生じにくくなるからである 。
上述した断熱機能を有する断熱性コーティング組成物と、遮熱機能を有する遮熱性コー ティング組成物とを、樹脂成分に分散することで、断熱機能と遮熱機能を供に有する断熱 遮熱塗料とすることができるからである。膨潤性層状無機化合物と生物由来ナノファイバーと遮熱性無機粉体からな る遮熱機能を有するコーティング組成物である。
近年、物質をナノメートルレベルまで微細化し、物質が持つ従来の性状と異なる新たな物性を得ることを目的としたナノテクノロジーが注目されている。ナノファイバーは、直径が1〜100nmで、長さが直径の100倍以上ある繊維をいい、従来の繊維と比べて優れた特性を有する。具体的には、比表面積が大きく、吸着性能、接着力、分子認識性が優れるという超比表面積特性、繊維径が光の波長400〜700nmより小さいため乱反射が少なく透明性が優れるというナノサイズ特性、分子配向性が高いため強度に優れるという分子配列特性である。とりわけ、環境への配慮、資源枯渇の恐れが少ないセルロース、キチン等の生物由来材料(バイオマス)から得られるバイオナノファイバー、具体的には、セルロースナノファイバー(CNF)、キチンナノファイバー(ChNF)が注目されている。本発明は、バイオナノファイバー、すなわちセルロースナノファイバー(CNF)、キチンナノファイバー(ChNF)の断熱特性に注目して断熱機能と遮熱機能を有する断熱性コーティング組成物、遮熱性コーティング組成物、およびこれらを含む断熱遮熱塗料としたものである。以下に説明する。
本発明のコーティング組成物と断熱遮熱塗料を構成するセルロースナノファイバー(CNF)は、パルプ繊維などのセルロース系原料を機械的な処理により解繊することにより得ることができる。機械的処理のみでセルロースナノファイバーを製造する場合、多数回の機械的処理が必要となり、エネルギー消費が非常に大きくなる。そのため、機械的な処理の前に、酸化処理やエステル化処理などを施す方法が検討されている。中でも、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシラジカル(TEMPO)と次亜塩素酸ナトリウムとを用いてパルプを酸化する方法(特開2008−1728号公報,特開2010−235679号公報参照)が後工程の機械的処理を効果的に低減できるとして採用されている。
セルロースナノファイバー(CNF)は、強度、弾性、熱安定性等に優れることから、ろ過材、ろ過助剤、イオン交換体の基材、クロマトグラフィー分析機器の充填材、樹脂及びゴムの配合用充填剤等の工業用途として利用されている。また、口紅、粉末化粧料、乳化化粧料等の化粧品の配合剤の用途にも利用されている。さらには、水系分散性に優れているため、食品、化粧品、塗料等の粘性保持剤、食品原料生地の強化剤、水分保持剤、食品安定化剤、低カロリー添加物、乳化安定化助剤などの多くの用途における利用が期待されている。
しかしながら、断熱特性に着目した用途については開示されていない。
本発明のコーティング組成物と断熱遮熱塗料を構成するキチンナノファイバー(ChNF)は、エビ、カニをはじめとして、昆虫、貝、キノコにいたるまで、極めて多くの生物に含まれるキチン(生物由来材料)を原料として、機械的な処理により解繊処理することにより得ることができる。ここで、キチンとは、N-アセチル-D-グルコサミンが鎖状に長く(数百から数千)つながった繊維構造を有するアミノ多糖である。
生物由来キチンの形態は、繊維状、粒状などの任意の形態であってもよい。甲殻類、昆虫類またはオキアミの殻及び外皮などから採取加工したものである。なお、本発明においては、キチンをアルカリ処理してアセチル基を除いたキトサンを用いることができる。
キチンナノファイバーの製造方法においては、(a)脱蛋白処理及び脱灰処理を行ったキチン含有生物由来の材料、(b)脱蛋白処理及び脱灰処理及び脱アセチル化処理を行ったキチン含有生物由来の材料、のように解繊処理を効率的に行うための前処理を行った生物由来の材料が好ましい。また、前処理を行った市販の精製キチン・キトサンを用いることができる。
解繊処理は、脱蛋白・脱灰処理されたキチンナノファイバーを弱酸(pH3〜4)処理後、石臼式摩砕器、高圧ホモジナイザー、凍結粉砕装置などの機械的解繊処理が採用されている。
このため、解繊処理を旋 回液流式マイクロバブル発生装置により生じたマイクロバブルの存在下で行うことが開示されている(特開2017−94218号公報参照)。旋回流式マイクロバブル発生装置では、気液発生槽の内部の旋回により、旋回による剪断力とマイクロバブルが同時に相乗的に作用する。このため、解繊処理に旋回流マイクロバブル発生装置により生じたマイクロバブルを使用することで、低エネルギーかつ低コストで効率よく、超比表面積特性、ナノサイズ特性、分子配列特性に優れ、細く、長く、均質なバイオナノファイバーを得ることができる。
本発明には、アスペクト比が高く、折り重なって網目構造を形成することでナノレベルの空隙を塗膜中に形成できるナノファイバーであって、塗膜形成が容易なものであれば、生物由来ナノファオバーに限定されるものではない。具体的には、エレクトロスピニング法により製造されたナノファイバーがある。
エレクトロスピニング法は、20kV程度の高電圧をノズルに加え、そこから噴霧される高分子溶液に電圧を印加させることによりナノファイバーを製造する方法である。素材の選択幅が広がる特徴がある。エレクトロスピニング法により製造可能なナノファイバーの素材としては、天然資源由来素材(例えば、ポリ乳酸、セルロース、キトサン、シルクフィブロイン、コラーゲン)、石油資源由来素材(例えば、ポリエステル、ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリウレタン)がある。
膨潤性層状無機化合物は、単位結晶層が積層した構造を有し、層間に溶媒(特に水)を配位又は吸収することにより膨潤又は劈開する性質を示す無機化合物である。このような無機化合物としては、膨潤性の含水ケイ酸塩、例えば、スメクタイト群粘土鉱物(モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトなど)、バーミキュライト群粘土鉱物(バーミキュライトなど)、カオリン型鉱物(ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイトなど)、フィロケイ酸塩(タルク、パイロフィライト、マイカ、マーガライト、白雲母、金雲母、テトラシリリックマイカ、テニオライトなど)、ジャモン石群鉱物(アンチゴライトなど)、緑泥石群鉱物(クロライト、クックアイト、ナンタイトなど)などが例示できる。これらの膨潤性層状無機化合物は、天然物でも合成物でもよい。これらの層状無機化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
(2−1)モンモリロナイト
モンモリロナイトは、水と接触すると、層間陽イオンと水分子が水和し、単位層間の距離が増加する膨潤性を有する。この膨潤による単位層間の距離の増加が、生物由来ナノファイバーの層間嵌入を促してコーティング組成物の相互作用性、製膜性に寄与すると考えられる。特に、層間陽イオンとしてNa+イオンを多く含むモンモリロナイトは、Na+イオンによる単位層同士の電気的引力が弱いため、水に分散させると単位層間の距離が4nm以上にも広がるためより好ましい。
本発明では、膨潤性層状無機化合物に添加剤として、水溶性高分子を用いることができる。具体的には、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースアンモニウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体を好適に用いることができる。
断熱性中空構造フィラーは、赤外線反射性を有するとともに、断熱性を付与する成分である。断熱性中空構造フィラーを含有することにより、太陽光等による赤外線を反射するとともに、外部の温度等を断熱し、被膜層の温度上昇を抑制することができるため、コーティング組成物の膨れ、剥れ等を防止することができる。
断熱性中空構造フィラーの形状としては、球形、楕円球形、偏平球形等が挙げられる。
本発明における遮熱性無機粉体とは、近赤外線(波長領域780〜2500nm)を効率的に反射することができる粒子のことをいう。
このような遮熱性無機粉体としては、例えばJR−1000(テイカ株式会社製)、CR−97、R−630(以上、石原産業株式会社製)等の酸化チタン(ルチル型、アナターゼ型も含む)、チタン酸バリウム、チタン酸ナトリウム、酸化珪素、シリカ(非結晶性シリカも含む)、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、アルミナ、ジオキサンバイオレット(クラリアント社製)、酸化鉄レッド(バイエル社製)、シアニングリーン(東洋インキ株式会社製)、キナクリドンバイオレット(クラリアント社製)、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。これらの中でも、特に酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムが効果的に近赤外線を反射することができるため好適に用いることができる。
本発明の断熱遮熱塗料は、水系エマルジョン塗料である。近年、大気中への揮発性有機化合物の放出などによる環境問題を回避するために、水溶性樹脂、エマルジョンなどの水分散型樹脂を含有する水系塗料が用いられている。本発明の塗料組成物において、使用される樹脂に関しては特に制限はなく、用途、要求品質等から、適した樹脂が選定される。好適な例としては、水溶性樹脂及び/または水分散型樹脂で、その種類としては、エチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等、あるいはこれらの混合系や変性もしくは共重合系等が挙げられる。以下、水溶性樹脂、水分散型樹脂、分散剤について具体例を挙げて説明するが、これに限定されるものではない。
水溶性樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂がある。
水溶性樹脂として好適に用いられるポリエステル樹脂は、多価アルコール(例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、水素化ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリット、ジペンタエリトリット等)及び多塩基酸(例えば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水トリメリット酸等)を樹脂原料として用いて得られる。
水分散型樹脂としては、スチレン−アクリル系樹脂がある。スチレン単量体と芳香族または芳香族系以外のアクリル系単量体を単独もしくは2種以上を乳化重合して合成する。
スチレン系単量体は、スチレン骨格を有する単量体を意味する。スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。スチレン系単量体は、ベンゼン環にメチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、ニトロ基、ニトリル基、アルコキシル基、アシル基、スルホン基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子などの官能基が存在していてもよい。スチレン系単量体のなかでは、塗膜の耐候性を高める観点から、スチレンが好ましい。
芳香族単量体以外のアクリル系単量体の具体例としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有単量体、カルボニル基含有単量体、オキソ基含有単量体、フッ素原子含有単量体、窒素原子含有単量体、エポキシ基含有単量体などが挙げられる。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が1〜18のアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
分散剤としては、界面活性剤または樹脂型分散剤を使用することができる。界面活性剤は主にアニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性に分類され、要求特性に応じて適宜好適な種類、配合量を選択して使用することができる。好ましくは、樹脂型分散剤である。
本発明の断熱遮熱塗料を構成する(a)樹脂成分、(b)膨潤性層状無機化合物、(c)生物由来ナノファイバー、(d)断熱性中空構造フィラー及び(e)遮熱性無機粉体の配合比は、(a)樹脂成分を100重量部としたとき、(b)膨潤性層状無機化合物は、30〜200重量部、(c)生物由来ナノファイバーは、30〜150重量部、(d)断熱性中空構造フィラーは、30〜100重量部、(e)遮熱性無機粉体は、50〜100重量部である。
表1は、断熱機能を有するコーティング組成物に関する実施例(生物由来ナノファイバーを構成成分とするコーティング組成物)と比較例(生物由来ナノファイバーを構成成分としないコーティング組成物)をまとめたものである。
表2は、遮熱機能を有するコーティング組成物に関する実施例(生物由来ナノファイバーを構成成分とするコーティング組成物)と比較例(生物由来ナノファイバーを構成成分としないコーティング組成物)をまとめたものである。
表3は、本発明の断熱機能と遮熱機能とを併せ持つ遮熱断熱塗料を実施例とし、市販品A(断熱セラミック塗料 日進産業社製)を比較例としてまとめたものである。
(7−1)熱伝導率の測定
実施例、比較例において得られた試験品を用い、非定常法細線加熱法にて熱伝導率を測定した。測定機器としては、迅速熱伝導率計QTM−500(京都電子工業株式会社製)を用いた。結果を表1及び表3に示す。
(8−1)近赤外日射反射率の測定
実施例、比較例で示す構成成分からなる塗膜を形成した試験品をJIS K 5675(屋根用高日射反射率塗料)に従って近赤外日射反射率を測定した。結果を表2及び表3に示す。
実施例、比較例で示す構成成分からなる塗膜シートを形成した試験品につき、表面(塗膜シート表面)と裏面(塗膜シート裏面)との温度差を求めた。表面温度は、赤外線電灯を表面から30cmの距離に設置し、表面に設置した温度センサーにより、赤外線電灯照射後0min〜120minの温度を測定した。裏面温度は、塗膜シート裏面に設置した温度センサーにより、赤外線電灯照射後0min〜120minの温度を測定した。赤外線電灯(赤外線電球R127E26 100/110V−125W 旭光電機社製)、温度センサー(シートカップル熱電対C080 チノー社製)を用いた。結果を表2に示す。
本測定は、断熱箱の上部に載置した塗膜形成金属板の表面温度と断熱箱の内部温度との測定差を測定するものであり、塗膜を形成した屋根表裏面の温度差をモデル測定するものである。
具体的には、発泡体で成形された断熱容器(縦480mm×横430mm×高さ210mm)の上面に金属板(ボンデ鋼板 200mm×300mm 厚み0.8mm)が載置できる開口部を設けた試験装置を用いた。実施例、比較例で示す構成成分からなる塗膜を金属板(ボンデ鋼板 200mm×300mm 厚み0.8mm)上に形成した試験品を前記試験装置の開口部に載置した。
塗膜形成金属板の表面温度(塗膜面温度)は、赤外線電球(アイ赤外線IR100−110V375WRH 岩崎電機社製)を塗膜面から33cmの距離に設置し、表面に設置した温度センサー(TP−01 YFE社製)により、前記赤外線電球照射後0min〜90minの温度を測定した。
内部温度は、発泡体容器の内側の中心(底面から9cmの高さ)に配置した温度センサー(TP−01 YFE社製)により、赤外線電球(アイ赤外線IR100−110V375WRH 岩崎電機社製)照射後0min〜90minの温度を測定した。結果を表3に示す。
実施例、比較例で示す構成成分からなる塗膜について、塗膜形成性(塗面に塗膜を形成できる)と塗膜安定性(乾燥塗膜に割れが生じない)を以下の基準から評価したものである。
○ 塗膜形成性と塗膜安定性のいずれもある
△ 塗膜形成性はあるが、塗膜安定性がない
× 塗膜形成性がない
実施例、比較例で示す構成成分からなる塗膜について、塗膜をJISK7139 ダンベル型試験片 タイプA22による試験片とし、材料強度試験機(5581 インストロン社製)を用いて、引張速度10mm/minで塗膜引張強度(MPa)を測定した。
生物由来ナノファイバーとしてキチンナノファイバー(SFo−20002 スギノマシン社製;1wt%溶液)350gをガラス板上に塗工して、膜厚0.27mmの塗膜を形成した。その後、塗膜を乾燥条件(23℃,RH50%)で3日間乾燥させ、塗膜試験品(実施品1−1)を製作した。熱伝導率(W/m・K)は、0.107であり、製膜性は「○」判定であった。
生物由来ナノファイバーとしてキチンナノファイバー(大村塗料社製;1wt%溶液)350gを<実施例1−1>と同様の条件で塗工、乾燥して、塗膜試験品(実施品1−2)を製作した。熱伝導率(W/m・K)は、0.109であり、製膜性は「○」判定であった。
生物由来ナノファイバーとしてセルロースナノファイバー(WMa−10002 スギノマシン社製;1wt%溶液)350gを<実施例1−1>と同様の条件で塗工、乾燥して、塗膜試験品(実施品1−3)を製作した。熱伝導率(W/m・K)は、0.128であり、製膜性は「○」判定であった。
以下の構成成分を水50gに加え、撹拌条件(3000rpm,3min)で分散液を調製した。調製した分散液を<実施例1−1>と同様の条件で塗工、乾燥して、塗膜試験品(実施品1−4)を製作した。熱伝導率(W/m・K)は、0.262であり、製膜性は「○」判定であり、塗膜引張強度は、23.4MPaであった。
膨潤性層状無機化合物 モンモリロナイト(クニピアF クニミネ工業社製) 3.15g
生物由来ナノファイバー キチンナノファイバー(SFo−20002 スギノマシン社製;1wt%溶液) 35g
断熱性中空構造フィラー 無
以下の構成成分を水50gに加え、撹拌条件(3000rpm,3min)で分散液を調製した。調製した分散液を<実施例1−1>と同様の条件で塗工、乾燥して、塗膜試験品(実施品1−5)を製作した。熱伝導率(W/m・K)は、0.196であり、製膜性は「○」判定であった。
膨潤性層状無機化合物 モンモリロナイト(クニピアF クニミネ工業社製) 2.98g
生物由来ナノファイバー キチンナノファイバー(SFo−20002 スギノマシン社製;1wt%溶液) 17.5g
断熱性中空構造フィラー パーライト(太平洋パーライト 太平洋マテリアル社製) 0.35g
以下の構成成分を水50gに加え、撹拌条件(3000rpm,3min)で分散液を調製した。調製した分散液を<実施例1−1>と同様の条件で塗工、乾燥して、塗膜試験品(実施品1−6)を製作した。熱伝導率(W/m・K)は、0.114であり、製膜性は「○」判定であった。
膨潤性層状無機化合物 モンモリロナイト(クニピアF クニミネ工業社製) 2.8g
生物由来ナノファイバー キチンナノファイバー(SFo−20002 スギノマシン社製;1wt%溶液) 35g
断熱性中空構造フィラー パーライト(太平洋パーライト 太平洋マテリアル社製) 0.35g
以下の構成成分を水50gに加え、撹拌条件(3000rpm,3min)で分散液を調製した。調製した分散液を<実施例1−1>と同様の条件で塗工、乾燥して、塗膜試験品(実施品1−7)を製作した。熱伝導率(W/m・K)は、0.120であり、製膜性は「○」判定であった。
膨潤性層状無機化合物 モンモリロナイト(クニピアF クニミネ工業社製) 2.8g
生物由来ナノファイバー キチンナノファイバー(大村塗料社製;1wt%溶液) 35g
断熱性中空構造フィラー パーライト(太平洋パーライト 太平洋マテリアル社製) 0.35g
以下の構成成分を水50gに加え、撹拌条件(3000rpm,3min)で分散液を調製した。調製した分散液を<実施例1−1>と同様の条件で塗工、乾燥して、塗膜試験品(比較品1−1)を製作した。熱伝導率(W/m・K)は、0.269であり、製膜性は「△」判定であった。
膨潤性層状無機化合物 モンモリロナイト(クニピアF クニミネ工業社製) 3.15g
生物由来ナノファイバー 無
断熱性中空構造フィラー パーライト(太平洋パーライト 太平洋マテリアル社製) 0.35g
以下の構成成分を水50gに加え、撹拌条件(3000rpm,3min)で分散液を調製した。調製した分散液を<実施例1−1>と同様の条件で塗工、乾燥して、塗膜試験品(比較品1−2)を製作した。熱伝導率(W/m・K)は、0.168であり、製膜性は「△」判定であった。
膨潤性層状無機化合物 モンモリロナイト(クニピアF クニミネ工業社製) 2.8g
生物由来ナノファイバー 無
断熱性中空構造フィラー パーライト(太平洋パーライト 太平洋マテリアル社製) 0.7g
以下の構成成分を水50gに加え、撹拌条件(3000rpm,3min)で分散液を調製した。調製した分散液を<実施例1−1>と同様の条件で塗工、乾燥して、塗膜試験品(比較品1−3)を製作した。熱伝導率(W/m・K)は、0.564であり、製膜性は「△」判定であり、皮膜引張強度は、5.6MPaであった。
膨潤性層状無機化合物 モンモリロナイト(クニピアF クニミネ工業社製) 3.15g
生物由来組成物 セルロース粉末(38μm 400メッシュ通過 和光純薬工業社製) 0.35g
断熱性中空構造フィラー 無
以下の構成成分を水50gに加え、撹拌条件(3000rpm,3min)で分散液を調製した。調製した分散液を<実施例1−1>と同様の条件で塗工、乾燥して、塗膜試験品(比較品1−4)を製作した。熱伝導率(W/m・K)は、0.783であり、製膜性は「△」判定であり、皮膜引張強度は、6.7MPaであった。
膨潤性層状無機化合物 モンモリロナイト(クニピアF クニミネ工業社製) 3.5g
生物由来ナノファイバー 無
断熱性中空構造フィラー 無
以下の構成成分を水50gに加え、撹拌条件(3000rpm,3min)で分散液を調製した。調製した分散液を<実施例1−1>と同様の条件で塗工、乾燥して、塗膜試験品(実施品2−1)を製作した。表面裏面温度差(℃)は、5.8であり、製膜性は「○」判定であった。
膨潤性層状無機化合物 モンモリロナイト(クニピアF クニミネ工業社製) 3.15g
生物由来ナノファイバー セルロースナノファイバー(WMa−10002 スギノマシン社製;1wt%溶液) 35g
遮熱性無機粉体 無
以下の構成成分を水50gに加え、撹拌条件(3000rpm,3min)で分散液を調製した。調製した分散液を<実施例1−1>と同様の条件で塗工、乾燥して、塗膜試験品(実施品2−2)を製作した。表面裏面温度差(℃)は、5.9であり、製膜性は「○」判定であった。
膨潤性層状無機化合物 (クニピアF クニミネ工業社製) 2.8g
生物由来ナノファイバー セルロースナノファイバー(WMa−10002 スギノマシン社製;1wt%溶液) 35g
遮熱性無機粉体 酸化チタン(R−38L 堺化学工業社製) 0.35g
以下の構成成分を水50gに加え、撹拌条件(3000rpm,3min)で分散液を調製した。調製した分散液を<実施例1−1>と同様の条件で塗工、乾燥して、塗膜試験品(実施品2−3)を製作した。表面裏面温度差(℃)は、4.2であり、製膜性は「○」判定であった。
膨潤性層状無機化合物 (クニピアF クニミネ工業社製) 2.8g
生物由来ナノファイバー キチンナノファイバー(SFo−20002 スギノマシン社製;1wt%溶液) 35g
遮熱性無機粉体 酸化チタン(R−38L 堺化学工業社製) 0.35g
以下の構成成分を水50gに加え、撹拌条件(3000rpm,3min)で分散液を調製した。調製した分散液を<実施例1−1>と同様の条件で塗工、乾燥して、塗膜試験品(実施品2−4)を製作した。表面裏面温度差(℃)は、4.7であり、近赤外日射反射率(%)は、82であり、製膜性は「○」判定であった。
膨潤性層状無機化合物 (クニピアF クニミネ工業社製) 2.1g
生物由来ナノファイバー セルロースナノファイバー(WMa−10002 スギノマシン社製;1wt%溶液) 35g
遮熱性無機粉体 酸化チタン(R−38L 堺化学工業社製) 1.05g
以下の構成成分を水50gに加え、撹拌条件(3000rpm,3min)で分散液を調製した。調製した分散液を<実施例1−1>と同様の条件で塗工、乾燥して、塗膜試験品(比較品2−1)を製作した。表面裏面温度差(℃)は、2.2であり、近赤外日射反射率(%)は、30であり、製膜性は「△」判定であった。
膨潤性層状無機化合物 (クニピアF クニミネ工業社製) 3.5g
生物由来ナノファイバー 無
遮熱性無機粉体 無
以下の構成成分を水50gに加え、撹拌条件(3000rpm,3min)で分散液を調製した。調製した分散液を<実施例1−1>と同様の条件で塗工、乾燥して、塗膜試験品(比較品2−2)を製作した。表面裏面温度差(℃)は、2.2であり、近赤外日射反射率(%)は、75であり、製膜性は「△」判定であった。
膨潤性層状無機化合物 (クニピアF クニミネ工業社製) 3.15g
生物由来ナノファイバー 無
遮熱性無機粉体 酸化チタン(R−38L 堺化学工業社製) 0.35g
以下の構成成分を水50gに加え、撹拌条件(3000rpm,3min)で分散液を調製した。調製した分散液を<実施例1−1>と同様の条件で塗工、乾燥して、塗膜試験品(比較品2−3)を製作した。表面裏面温度差(℃)は、7.8であり、製膜性は「△」判定であった。
膨潤性層状無機化合物 (クニピアF クニミネ工業社製) 2.8g
生物由来ナノファイバー 無
遮熱性無機粉体 酸化チタン(R−38L 堺化学工業社製) 0.7g
(1)塗料分散液の調製
以下の構成成分を水100gに加え、撹拌条件(3000rpm,3min)で塗料分散液を調製した。
Ac−St系水分散型樹脂 55wt%水溶液(ボンコートCG DIC社製) 22g
膨潤性層状無機化合物 (クニピアF クニミネ工業社製) 12g
生物由来ナノファイバー キチンナノファイバー(SFo−20002 スギノマシン社製;1wt%溶液) 400g
断熱性中空構造フィラー パーライト(太平洋パーライト 太平洋マテリアル社製) 4g
遮熱性無機粉体 酸化チタン(JR−1000 テイカ社製) 8g
(2)塗膜製作
ボンデ鋼板上に、調製した塗料分散液を塗布量170g/m2で塗工し、乾燥条件(23℃,RH50%)で3日乾燥して、鋼板塗膜試験品(実施品3−1)を制作した。膜厚は、0.335mmであった。
(3)断熱性と遮熱性評価
鋼板塗膜の表裏面温度差は、9℃(表面温度46℃,裏面温度37℃)であり、熱伝導率(W/m・K)は、0.100であった。
(1)塗膜製作
ボンデ鋼板上に、市販品(GAINA 日進産業製)を塗布量290g/m2で塗工し、乾燥条件(23℃,RH50%)で3日乾燥して、鋼板塗膜試験品(比較品3−1)を制作した。膜厚は、0.325mmであった。
(2)断熱性と遮熱性評価
鋼板塗膜の表裏面温度差は、9℃(表面温度46℃,裏面温度37℃)であり、熱伝導率(W/m・K)は、0.201であった。
ボンデ鋼板のみについて測定した鋼板の表裏面温度差は、15℃((表面温度62℃,裏面温度47℃)であった。
Claims (4)
- 生物由来ナノファイバーからなる断熱機能を有するコーティング組成物。
- 膨潤性層状無機化合物と生物由来ナノファイバーと断熱性中空構造フィラーからなる断熱機能を有するコーティング組成物。
- 膨潤性層状無機化合物と生物由来ナノファイバーと遮熱性無機粉体からなる遮熱機能を有するコーティング組成物。
- 樹脂成分、膨潤性層状無機化合物、生物由来ナノファイバー、断熱性中空構造フィラー及び遮熱性無機粉体を主成分とする断熱遮熱塗料であって、前記膨潤性層状無機化合物がスメクタイト群粘土鉱物から選択されたモンモリロナイトであり、かつ前記モンモリナイト及び前記生物由来ナノファイバーの樹脂成分100重量部に対する配合比が、それぞれ、30重量部〜200重量部、30重量部〜150重量部であることを特徴とする断熱遮熱塗料。
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