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JP6955542B2 - 多重反射質量分析計および質量分析方法 - Google Patents

多重反射質量分析計および質量分析方法 Download PDF

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Description

本発明は、質量分析の分野、特に飛行時間質量分析および静電トラップ質量分析の分野に関する。本発明は、特に、イオン飛行経路を延長し、質量分解能を高めるための多重反射技術を利用する飛行時間質量分析および静電トラップ質量分析に関する。
飛行時間型(ToF)質量分析計は、飛行経路に沿った飛行時間に基づいてイオンの質量電荷比(m/z)を決定するために広く使用されている。ToF質量分析では、短いイオンパルスをパルスイオン注入機によって生成し、真空空間を通る規定の飛行経路に沿って方向付け、イオン検出器に到達させる。検出器は、イオンの到達を検出し、データ収集システムに出力を与える。パルス内のイオンは、飛行経路に沿った飛行時間に基づいてそのm/zに従って分離され、時間分離された短いイオンパケットとして検出器に到達する。
多重反射を利用して質量分析計内のイオンの飛行経路を延長する様々な配置が公知である。飛行経路の延長は、飛行時間型(ToF)質量分析計内のイオンの飛行時間による分離を増大するために、または静電トラップ(EST)質量分析計内のイオンの捕集時間を増大するために望ましい。両方の場合において、イオン間の小さな質量差を区別する能力が、それにより改善される。改善された分解能は、典型的にそれに付随する質量精度および質量感度の増大という利点と共に、広範な用途用の質量分析計にとって、特に例えばプロテオミクスおよびメタボロミクスなどの生物科学用途に関して、重要な属性である。
飛行時間型質量分析計の質量分解能は、イオンの焦点特性が一定であると仮定すると、イオンの飛行経路の長さに比例して増加することが知られている。残念ながら、イオンのエネルギー分布と空間電荷の相互作用により、飛行中にイオンが拡散する可能性があり、長経路のシステムでは、イオンが分析器から失われたり、または非常に異常な飛行時間で検出器に到達したりする可能性がある。
GilesおよびGillは、US9136100において、図1に示すように、従来の単一反射ToF分析器のフライトチューブ内の中間位置に追加のフォーカスレンズを置くと、イオンミラーおよび検出器でのビーム発散を大幅に低減させるのに十分であり、イオン飛行経路の長さを増加させることが可能であることを開示した。
Nazerenkoらは、SU1725289で、ドリフト方向に延びる2つの対向するイオンミラーで構成される多重反射飛行時間型分析器(MR−ToF)を開示した。イオンは、ミラー間を振動しながら、システムの長さをドリフト方向に検出器に向かってドリフトする。その結果、イオンはジグザグ飛行経路をたどり、ミラー間で反射し、それによって、長い飛行経路が図2に示すように比較的コンパクトな体積内に折り畳まれる。問題は、システムがドリフト方向のイオンビームの発散を低減する手段を持たないため、ビームが任意の検出器よりも広くなるまでわずかな反射しかできないことである。制御されていないビーム拡大の別の問題は、異なる反射回数のイオンが検出器に到達し、単一のm/zのイオンに追加の「倍音」ピークを作成することが可能になり得ることである。この問題に対処するため、Verenchikovは、GB2478300において、このようなシステムでビーム発散を可能にまたは誘導し、信号処理を使用してデータから単一のピークを生成することを提案した。イオンソースと検出器の間にある長焦点レンズを使用して、倍音の数および/または位置を変更している。
ドリフト発散の問題の解決策は、VerenchikovによってGB2403063に実証されている。この解決策では、図3に示すように、2つの平行細長対向ミラー間の無電場領域内に位置付けられた周期的に間隔を空けたレンズを使用する。その周期的レンズは、各反射、1回おきの反射、または数回の反射ごとに定常的なドリフト集束を提供する。この設計に基づく機器は、50,000〜100,000以上の高分解能を示す。主な欠点は、イオン経路がレンズの位置によって厳密に画定され、ToF収差とイオン損失を最小限に抑えるために多くの要素を正確に調整する必要があることである。この配置では、反射の数は、レンズの位置により決まっており、イオン注入角を変えることにより反射の数を変更し、それにより飛行経路長を変更することは不可能である。レンズの制限された空間的受容はまた、非常に密に集束されたビームを必要とし、システムは、より高いイオン群で空間電荷効果の影響を比較的受けやすくなる。経路長をさらに増大させるために、イオンがミラー構造体を通じて後方へ偏向され、飛行経路長を2倍にすることができるように、偏向器をイオン注入機からミラー構造体の遠位端に配置することが提案された。しかしながら、このような偏向器の使用は、得られ得る最大分解能を最終的に限定することになるビーム収差を導く傾向がある。
Sudakovもまた、WO2008/047891において、ドリフト方向に延びる2つの対向イオンミラーを備えたシステムを開示しているが、イオンをドリフト長に沿って後方へ戻すことにより飛行経路長を2倍にすることと、同時にドリフト方向でのビーム集束を誘導することの両方のための、代替的な手段を提案した。Sudakovは、図4Aに示すように、ドリフト方向に重ねられた第3のミラーを作成するために、対向するミラーを分割し、ドリフト速度の実質的な変動を有するイオンが拡散してミラーの前で焦点に反射して戻るようにすることを提案した。したがって、この第3のミラーは、対向ミラーに垂直に配向され、イオン注入機からみた対向ミラーの遠位端に配置される。このようなシステムにおいてイオンは、イオン注入機から分析器を通過するときにドリフト方向に発散できるが、第3のイオンミラーはこの発散を反転させる。第3のミラーで反射した後、イオン注入機の近くに戻ると、イオンは再びドリフト方向に収束する。これは、有利なことに、イオンビームが、分析器を通るその行程の大部分を通じて空間内で拡散することを可能にし、空間電荷相互作用を低減し、さらにイオン集束のためにミラーに沿って、またはミラー間に複数の周期的構造体を使用することを回避する。第3のミラーは、初期のイオンエネルギーに対するドリフト方向への空間集束も誘導する。しかしながら、第3のミラーは、2つの細長対向ミラーの構造内に必然的に組み込まれ、細長ミラーを事実上分断する。すなわち、細長ミラーは、もはや連続的ではない。このようなシステムは、注入角を変えることができ、固有のToF収差がほとんどないだけでなく(例えば、周期的レンズによって誘発されるもののように、または強力な偏向器を使用してイオンビームをドリフト方向に戻すことによって)、飛行経路を2倍以上にし、高いビーム発散により良好な空間電荷耐性があるため、理論的に大いに有利であった。残念ながら、第3のミラーを電極構造に統合するために必要な対向ミラーのセグメント間の強い電場は、イオンビームの散乱を引き起こし、これは、ミラー構造を非常に複雑にさせる数の多いセグメントだけに制限され得る効果である。
GrinfeldおよびMakarovは、US9,136,101において、ドリフト方向に延びる2つの対向イオンミラーを強調させるシステムでドリフト方向の反射を達成する実践的な方法を開示した。彼らは、対向ミラーを収束させることでドリフト方向に反射し、これが、検出器が配置された焦点にドリフト方向のイオンを空間的に集束させるとともにイオンドリフト速度を反転させるためのイオンミラーとして機能するドリフト方向に沿った擬似ポテンシャル勾配を作成することを開示した。特別な形状の中央補正電極または補償電極を使用して、不定のミラー分離によって引き起こされるToF収差を補正している。図4Bに示すこの配置により、イオンビームの散乱が回避され、Sudakovが提案する複雑なミラー構造と第3のイオンミラーの両方が不要になる。しかしながら、ミラー収束と補正電極電位との間のバランスを取るには、依然として高い機械的精度が必要である。
上記のことから、多重反射飛行時間型(MR ToF)および静電トラップ型(MR−EST)質量分析計の改善が依然として望まれていることがわかる。そのような分析計の望ましい特性として、飛行時間型分析器の飛行経路を延長して高分解能(例えば、>50K)を提供すると同時に、比較的コンパクトなサイズ、高いイオン透過率、小さな機械的偏差に対する耐性を備えた堅牢な構造が挙げられる。
本発明は、一態様において、
方向Xに互いに間隔をあけて対向する2つのイオンミラーであって、各ミラーが概してドリフト方向Yに沿って延び、ドリフト方向Yが方向Xに直交する、2つのイオンミラーと、
イオンミラー間の空間にイオンのパルスを注入するためのパルスイオン注入機であって、イオンがX方向に対してゼロ以外(非ゼロ)の傾斜角で空間に入り、それにより、イオンが、ドリフト方向Yに沿ってドリフトしながらX方向にイオンミラー間でN回の反射を有するジグザグイオン経路をたどるイオンビームを形成する、パルスイオン注入機と、
イオンミラー間で同じ数N回の反射を完了した後のイオンを検出するための検出器と、
ドリフト方向Yのイオンビームの空間的広がりが0.25N〜0.75Nの回数の反射時にまたは反射直後に単一の最小値を通過するように、対向イオンミラー間に少なくとも部分的に配置され、ドリフト方向Yのイオンビームの集束を提供するように構成されたイオン集束装置と、を備えた多重反射質量分析計であって、検出されたすべてのイオンは、イオンミラー間で同じ数N回の反射が完了した後に検出器によって検出される、多重反射質量分析計を提供する。
イオン集束装置により、検出器はイオンミラー間で正確に同じ数N回の反射を完了したイオンのみを確実に検出する。
好ましくは、イオン集束装置の集束特性のために、ドリフト方向Yのイオンビーム幅は、イオン集束装置とイオン検出器で実質的に同じである。1回目の反射のドリフト方向のイオンビームの空間的広がりは、好ましくは、N回目の反射のドリフト方向のイオンビームの空間的広がりと実質的に同じである。好ましくは、ドリフト方向Yのイオンビームの空間的広がりは、イオン集束装置と検出器との間のイオン経路に沿って実質的に中間にある単一の最小値を通過する。
好ましくは、イオン集束装置は、ドリフト方向Yのイオンを集束するドリフトフォーカスレンズまたは一対のドリフトフォーカスレンズを含む。好ましくは、少なくとも1つのドリフトフォーカスレンズは、収束レンズ(すなわち、イオンビーム幅に、特にドリフト方向Yで収束効果を有する)である。好ましくは、収束レンズは、ドリフト方向Yのイオンビームの空間的広がりが、最小空間的広がりの1.2〜1.6倍、または約√2倍である収束レンズで最大となるようにイオンを集束する。さらに、好ましくは、ドリフト方向Yのイオンビームの空間的広がりは、収束レンズにおいて、イオン注入機におけるドリフト方向Yのイオンビームの初期の空間的広がりの2倍〜20倍の範囲内で最大となる。ドリフトフォーカスレンズ(またはレンズ群)は、好ましくは、X方向におけるイオンミラー間の空間の中心に、すなわちイオンミラー間の中間に、配置されるが、いくつかの実施形態では、レンズ(レンズ群)は、X方向におけるこの中心位置から離れて位置付けられてもよい。
イオンビームは、イオン注入機からイオン検出器までのイオンミラー間で合計K回振動する。各振動では、イオンは、ミラー分離距離の2倍の距離を進行するため、KはN/2に等しくなり、Nは、ミラー間の総反射回数である。値Kは、好ましくは、以下の式によって与えられる最適値K(opt)を中心に、+/−50%、または+/−40%、または+/−30%、または+/−20%、または+/−10%の範囲内の値であり、
Figure 0006955542
式中、DLは、ドリフト方向Yのイオンビームが進行するドリフト長であり、Πは、Π=δαi.δxiとなる位相体積であり、δαiは、イオン注入機でのイオンビームの初期の角度的広がりであり、δxiは、イオン注入機でのイオンビームの初期の空間的広がりであり、Wは、X方向のイオンミラー間の距離である。イオン集束装置による集束後のイオンビームの角度的広がりδαは、以下の式によって与えられる最適値δα(opt)を中心に、+/−50%、または+/−40%、または+/−30%、または+/−20%、または+/−10%の範囲内であることが好ましい。
Figure 0006955542
好ましくは、イオン注入機でのドリフト方向Yのイオンビームの初期の空間的広がりδxiは、0.25〜10mmまたは0.5〜5mmである。
イオン集束装置は、好ましくは、イオンミラーでのN/4回目の反射の前、または0.25N未満の回数の反射の前に配置される。いくつかの好ましい実施形態では、イオン集束装置は、イオンミラーでの1回目の反射の後かつ5回目の反射の前(特に4回目、3回目、または2回目の反射の前)に位置付けられたドリフトフォーカスレンズを備える。より好ましくは、イオン集束装置は、イオンミラーでの1回目の反射の後かつイオンミラーでの2回目の反射の前に位置付けられたドリフトフォーカスレンズを備える。いくつかの好ましい実施形態では、イオン集束装置は、1回目の反射の後かつ検出器の前に位置付けられた単一のドリフトフォーカスレンズのみを有する。このような実施形態では、単一のドリフトフォーカスレンズは、好ましくは、イオンミラーでの1回目の反射の後かつ2回目の反射の前に位置付けられる。
好ましくは、ドリフトフォーカスレンズ、または2つ以上のドリフトフォーカスレンズが存在するレンズ群は、トランスアキシャル(trans−axial)レンズを備え、トランスアキシャルレンズは、方向Zのビームの両側に位置付けられた一対の対向レンズ電極を備え、方向Zは、方向XおよびYに垂直である。好ましくは、対向レンズ電極のそれぞれは、円形、楕円形、準楕円形(quasi-elliptical)、または円弧形の電極を含む。いくつかの実施形態では、一対の対向レンズ電極のそれぞれは、湾曲した縁部を有する電極によって生成された像面湾曲を模倣ために抵抗器チェーンによって分離された電極のアレイを含む。いくつかの実施形態では、対向レンズ電極はそれぞれ、電気的に接地されたアセンブリ内に配置される。いくつかの実施形態では、レンズ電極はそれぞれ偏向器電極内に配置される。さらに好ましくは、各偏向器電極は、電気的に接地されたアセンブリ内に配置される。偏向器電極は、好ましくは、イオンビームの偏向器として作用する外側台形形状を有する。
いくつかの実施形態では、ドリフトフォーカスレンズは、多重極ロッドアセンブリを備える。いくつかの実施形態では、ドリフト集束レンズは、アインツェル(Einzel)レンズ(一連の電気的にバイアスされた開口)を備える。
いくつかの好ましい実施形態では、イオン集束装置は、ドリフト方向Yの発散レンズ(すなわち、イオンビーム幅に、特にドリフト方向Yで発散効果を有する)である第1のドリフトフォーカスレンズと、ドリフト方向Yの収束レンズである第2のドリフトフォーカスレンズ)と、を備え、第2のドリフトフォーカスレンズは、第1のドリフトフォーカスレンズの下流にある。いくつかの好ましい実施形態では、イオン集束装置は、ドリフト方向Yのイオンビームを集束させるための、イオンミラーでの1回目の反射の前に位置付けられた第1のドリフトフォーカスレンズであって、発散レンズである、第1のドリフトフォーカスレンズと、ドリフト方向Yのイオンビームを集束するための、イオンミラーでの1回目の反射の後に位置付けられた第2のフォーカスレンズであって、収束レンズ(すなわち、イオンビーム幅に、特にドリフト方向Yで収束効果を有する)である、第2のドリフトフォーカスレンズと、を備える。
いくつかの実施形態では、イオン集束装置は、例えば注入されるときのイオンビームの傾斜角を調整するための、イオンミラーでの1回目の反射の前に位置付けられた少なくとも1つの注入イオン偏向器を備える。好ましくは、イオンビームのX方向に対する傾斜角は、X方向に対するパルスイオン注入機からのイオン放出の角度および/またはイオンミラーでの1回目の反射の前に位置付けられた注入偏向器によって引き起こされる偏向によって決定される。特定の実施形態では、第1のドリフトフォーカスレンズは、少なくとも1つの注入偏向器内に配置することができる。いくつかの実施形態では、イオン集束装置は、イオンミラーでの1回目の反射の後であり、好ましくは4回目、3回目、または最も好ましくは2回目の反射の前に位置付けられた少なくとも1つのイオン偏向器と、1回目の反射の前に位置付けられた注入イオン偏向器を任意選択的にさらに備える。1回目の反射の後に位置付けられたイオン偏向器は、イオンビームの位置合わせを調整または最適化するために使用されてもよい。いくつかの好ましい実施形態では、質量分析計は、例えばビーム偏向によって生じる飛行時間収差を最小限にするために、ミラー間の空間内にまたは空間に隣接してドリフト方向Yの少なくとも一部に沿って延在する1つ以上の補償電極をさらに備える。
いくつかの実施形態では、反転偏向器は、イオン注入機からみたイオンミラーの遠位端に位置付けられ、方向Yのイオンのドリフト速度を低減または反転させる。このような実施形態では、好ましくは、さらなるドリフトフォーカスレンズが、反転偏向器よりも1、2、または3反射前で対向イオンミラー間に配置されて、イオンビームを反転偏向器内の最小焦点に集束する。いくつかにおいて、さらなるドリフトフォーカスレンズが、反転偏向器内または近く(隣り)に位置付けられ、反転偏向器の後の次の反射でイオンビームをイオンミラーのうちの1つ内の最小焦点に集束させる。このような実施形態では、好ましくは、イオンビームは、反転偏向器を2回通過し、各通過で半分偏向され、2回目の通過後にイオンドリフト速度が完全に反転するようにイオンドリフト速度を完全に反転させる必要がある。
いくつかの実施形態では、検出器は、イオン注入機からドリフト方向Yのイオンミラーの反対端に位置付けられ、イオンミラーは、イオンが検出器に向かって進行するにつれて方向Yにおけるイオンミラーの長さの一部に沿って互いから離れる。いくつかの実施形態では、イオン注入機に最も近いイオンミラーの端部から始まり、イオンミラーは方向Yにおけるイオンミラーの長さの第1の部分に沿って互いに向かって収束し(ミラー間の距離が減少する)、方向Yにおけるイオンミラーの長さの第2の部分に沿って互いから離れ(ミラー間の距離が増加する)、長さの第2の部分は、検出器に隣接している。
いくつかの実施形態では、質量分析計は、画像化に使用することができ、検出器は、2Dまたはピクセル検出器などの画像化検出器、すなわち位置検出型検出器である。
別の態様では、本発明は、質量分析の方法を提供する。本発明の質量分析計は、本方法を実施するために使用され得る。よって、質量分析計の機能も、必要な変更を加えて本方法に適用される。質量分析方法は、
方向Xに互いに間隔をあけて対向する2つのイオンミラー間の空間にイオンを注入することであって、各ミラーが概してドリフト方向Yに沿って延び、ドリフト方向Yが方向Xに直交し、イオンがX方向に対してゼロ以外(非ゼロ)の傾斜角で空間に入り、それにより、イオンが、ドリフト方向Yに沿ってドリフトしながら方向Xにイオンミラー間でN回の反射を有するジグザグイオン経路をたどるイオンビームを形成する、注入することと、
ドリフト方向Yのイオンビームの空間的広がりが0.25N〜0.75Nの回数の反射時にまたは反射直後に単一の最小値を通過するように対向イオンミラー間に少なくとも部分的に位置付けられたイオン集束装置を用いて、ドリフト方向Yのイオンビームを集束することと、
イオンがイオンミラー間で同じ数N回の反射を完了した後にイオンを検出することと、を含む。よって、検出されたすべてのイオンは、イオンミラー間で同じ数Nの反射が完了した後に検出され、倍音は検出されない。
好ましくは、集束することは、1回目の反射のドリフト方向のイオンビームの空間的広がりが、N回目の反射のドリフト方向のイオンビームの空間的広がりと実質的に同じであるようにすることである。好ましくは、集束することは、ドリフト方向Yのイオンビームの空間的広がりが、イオン集束装置と検出器との間のイオン経路に沿って実質的に中間にある単一の最小値を通過するようにすることである。好ましくは、イオンビームは、イオンミラー間でK回振動し、Kは、以下の式によって与えられる最適値K(opt)を中心に、+/−50%、または+/−40%、または+/−30%、または+/−20%、または+/−10%の範囲内の値である。
Figure 0006955542
式中、DLは、ドリフト方向Yのイオンビームが進行するドリフト長であり、Πは、Π=δαi.δxiとなる位相体積であり、δαiは、イオンビームの初期の角度的広がりであり、δxiは、イオンビームの初期の空間的広がりであり、Wは、X方向のイオンミラー間の距離である。好ましくは、集束後のイオンビームの角度的広がりδαは、以下の式によって与えられる最適値δα(opt)を中心に、+/−50%、または+/−40%、または+/−30%、または+/−20%、または+/−10%の範囲内である。
Figure 0006955542
好ましくは、集束は、イオンミラーでの0.25N未満の回数の反射の前に位置付けられたイオン集束装置を使用して実施される。好ましくは、イオン注入機でのドリフト方向Yのイオンビームの初期の空間的広がりδxiは、0.25〜10mmまたは0.5〜5mmである。
好ましくは、イオン集束装置は、イオンミラーでの1回目の反射の後かつイオンミラーでの5回目の反射の前に位置付けられたドリフトフォーカスレンズを備える。
いくつかの実施形態では、本方法は、イオンミラーでの1回目の反射の後かつイオンミラーでの5回目の反射の前に位置付けられた偏向器を使用してイオンビームを偏向することをさらに含む。
本方法のいくつかの好ましい実施形態では、イオン集束装置は、ドリフト方向Yのイオンビームを集束させるための、イオンミラーでの1回目の反射の前に位置付けられた第1のドリフトフォーカスレンズであって、発散レンズである、第1のドリフトフォーカスレンズと、ドリフト方向Yのイオンビームを集束するための、イオンミラーでの1回目の反射の後に位置付けられた第2のフォーカスレンズであって、収束レンズである。第2のドリフトフォーカスレンズと、を備える。
いくつかの実施形態では、本方法は、イオンミラーでの1回目の反射の前に位置付けられた注入偏向器を使用してイオンビームを偏向することを含む。
いくつかの実施形態では、本方法は、注入偏向器を使用してイオンビームを偏向させることにより、イオンビームのX方向に対する傾斜角を調整することをさらに含む。
いくつかの実施形態では、本方法は、ミラー間の空間内または空間に隣接してドリフト方向Yの少なくとも一部に沿って延在する1つ以上の補償電極のそれぞれに1つ以上の電圧を印加して、飛行時間収差を最小化することをさらに含む。
いくつかの実施形態では、本方法は、注入からイオンミラーの遠位端で反転偏向器を使用してイオンビームを偏向し、方向Yのイオンのドリフト速度を低減または反転させることをさらに含む。いくつかのこのような実施形態では、本方法は、イオンビームを反転偏向器内の最小焦点に集束することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、反転偏向器内のまたは近接(隣接)のフォーカスレンズと、反転偏向器の後の次の反射でイオンビームをイオンミラーのうちの1つ内の最小焦点に集束することとをさらに含む。このような実施形態では、好ましくは、イオンビームは、反転偏向器を2回通過し、各通過で半分偏向され、2回目の通過後にイオンドリフト速度が完全に反転するようにイオンドリフト速度を完全に反転させる必要がある。
いくつかの実施形態では、検出することは、例えば2Dまたはピクセル検出器などの画像化検出器上にイオンソースの2D画像を形成することを含む。
拡張経路多重反射飛行時間型質量分析計の問題は、イオンがシステムから失われたり、異常な時間で検出器に到達したりして、感度と分解能を損なったり、質量スペクトルを複雑にしたりする可能性があるため、分析器内のイオンビームの発散を制御する必要性から生じ得る。従来技術の方法は、この点である程度の成功を収めているが、一般には、最高の機械的精度と位置合わせ、および/または複雑な構造を必要とする。GB2478300は、このようなシステムでビーム発散を可能にし、信号処理を使用してデータから単一のピークを生成することを提案した。この先行技術は、イオンソースと検出器の間に長焦点レンズを使用して倍音の数と位置を(ドリフト焦点特性を変更することにより)変更する可能性について言及しているが、本開示では、倍音を除去するためのドリフト集束装置の使用について説明する。さらに、本開示は、例えばGB2403063に示されているタイプの周期的フォーカスレンズの、各反射、1回おきの反射、または数回の反射ごとに、定常的または周期的フォーカスレンズを含んでいない。周期的な集束と比較して、本発明はより単純で、より調整可能であり、位置合わせがより容易であるとともに、より拡散したイオンビームを可能にし、これにより、より良い空間電荷性能を可能にする。
本開示は、長ドリフトフォーカスイオンレンズ、またはいくつかの実施形態では一対のイオンレンズを使用して(例えば、第1のレンズがビームを発散させ、第2のレンズがビームを収束する望遠構成において)、多重反射ToF(MR−ToF)分析器または多重反射静電トラップ(MR−EST)分析器内のイオンビームのドリフト拡散を低減することについて詳述する。このようにして、イオンソースまたは注入機からのほぼすべてのイオンは、かなり長い、例えば10m超のイオン飛行経路を通ってかつToF収差を実質的に導入することなく、検出器に至る。これにより、高い質量分解能と高いイオン透過率を実現できる。イオン注入領域内でさらなるドリフトフォーカスレンズを使用することは、2つのレンズの組み合わせにより、イオンビームの初期の空間分布が2倍になるか、または代替的に軌道が交互に重なる前に飛行経路が2倍になるという利点もある。
本発明はまた、US9,136,101に開示されている収束ミラーシステムよりも機械的誤差に対してより耐性があるように設計されている。
好ましくは、本発明を使用する質量分析の方法は、対向イオン光学ミラーの一端から多重反射質量分析計にイオンを注入することを含み、イオンは、ドリフト方向Yの速度成分を有する。
パルスイオン注入機は、X方向に対してゼロ以外(非ゼロ)の傾斜角でイオンミラー間の空間にイオンのパルスを注入し、それにより、イオンが、ドリフト方向Yに沿ってドリフトしながら方向Xにイオンミラー間でN回の反射でジグザグイオン経路をたどるイオンビームを形成する。Nは少なくとも2の整数値である。よって、イオンビームは、ドリフト方向Yに沿ってドリフトしながら、方向Xにイオンミラー間で少なくとも2回反射する。
好ましくは、イオン注入機から検出器までのイオン経路に沿ったイオンミラーでのイオン反射の回数Nは、少なくとも3回、または少なくとも10回、または少なくとも30回、または少なくとも50回、または少なくとも100回である。好ましくは、イオン注入機から検出器までのイオン経路に沿ったイオンミラーでのイオン反射の回数Nは、2〜100回、3〜100回、または10〜100回、または100回超、例えば、(i)3〜10回、(ii)10〜30回、(iii)30〜100回、(iv)100回超からなるグループのうちの1つである。
分析計内に注入されたイオンは、好ましくは、ミラー伸長のY方向に(+Y方向に)ドリフトしながら、ミラー間で繰り返しX方向に前後に反射される。総体的に、イオンの運動は、ジグザグな経路をたどる。
特定の実施形態では、以下で説明するように、いくつかの反射(通常N/2回)の後、イオンは、Yに沿ってドリフト速度が反転し、その後、Y方向に戻ってドリフトしながらミラー間でX方向に前後に繰り返し反射され得る。
本明細書では、便宜上、ドリフト方向をY方向と呼ぶものとし、対向ミラーは、X方向と呼ぶものとする方向においてある距離だけ互いから離隔され、X方向は、Y方向に直交し、この距離は同じとすることができ(イオンミラーが実質平行に置かれるように)、またはY方向に沿って異なる位置で変化することができる。本明細書で単にイオン経路と呼ばれるイオン飛行経路は、概して、XおよびY方向に延在する空間の体積を占有し、イオンは、対向ミラー間で反射し(X方向で)、同時にドリフト方向Yに沿って進行する。一般に、イオンビームは、単一のイオン反射ごとにドリフト方向Yに平均シフトdYを生じる。
ミラーは、典型的には垂直Z方向(ZはXおよびYに垂直)の寸法がより小さいため、イオン飛行経路が占める空間の体積は、典型的にはわずかに歪んだ直方体であり、Z方向で最小寸法を有することが好ましい。本明細書における説明の便宜上、イオンは、+X方向および+Y方向の初期の速度成分と共に質量分析計内に注入され、初めに、+X方向に位置付けられた第1のイオンミラーに向かってかつ+Y方向のドリフト長に沿って進行する。したがって、第1のイオンミラーでの1回目の反射の後、反射されたイオンは、+Y方向に依然として速度を有し第2のイオンミラーに向かって−X方向に進行する。2回目の反射の後、イオンは、再び+Xおよび+Y方向などに進行する。Z方向のイオンの平均速度成分は、好ましくはゼロである。
その分解能は、ミラー間の空間への初期のイオン注入角(本明細書では傾斜角と呼び、X−Y平面内におけるX方向へのイオン注入角である)に左右され、これは、ドリフト速度、したがって総飛行時間を決定する。理想的には、この注入の傾斜角は、反射の回数、したがってイオン経路の長さおよび質量分解能を最大にするために、最小化される必要があるが、このような傾斜角の最小化は、注入装置および/または検出器の機械的な要件によって、特によりコンパクトな設計のために、制限され得る。有利には、本発明の態様は、イオン注入角を変更することにより、ミラー構造内のイオン振動数、したがって総飛行経路長を変更することができる。
いくつかの実施形態では、偏向器をミラー間に配置し、イオン注入後のドリフト速度を低減することができる。他の実施形態では、例えば1回目または2回目の反射後のドリフト速度を低減するために、US2018−0138026A1に記載されているような減速ステージをミラー構造自体に組み込むことができ、これにより、飛行時間の増加およびその結果として生じる分解能を求めることを可能にする。このような実施形態では、追加の偏向器をミラー間に組み込む必要がなく、したがって部品の数とコストが削減され得る。
イオン注入機は一般に、1つ以上のイオン光学デバイス(例えば、イオンガイド、レンズ、マスフィルター、コリジョンセルの1つ以上)を介して直接的または間接的にイオンソースからイオンを受け取る。イオンソースは、サンプル種をイオン化してイオンを形成する。適切なイオンソース、例えばエレクトロスプレーイオン化、化学イオン化、大気圧化学イオン化、MALDIなどは、当技術分野で周知である。いくつかの実施形態では、イオン注入機自体がイオンソース(例えばMALDIソース)であり得る。イオンソースは、複数のサンプル種を、例えばクロマトグラフから、イオン化してイオンを形成する。
イオン注入機は、一般にパルスイオンソースであり、すなわち、イオンの連続的な流れではなく、イオンの非連続的なパルスを注入する。ToF質量分析の技術分野で知られているように、パルスイオン注入機は、イオンソースからの上記イオンの少なくとも一部を含む短いイオンパケットを形成する。典型的には、イオン注入機によって加速電圧(3kV、4kV、または5Vなど、数kVになり得る)が印加され、ミラーにイオンが注入される。
イオン注入機は、イオントラップ、直交加速器、MALDIソース、二次イオンソース(SIMSソース)またはTOF質量分析計のための他の公知のイオン注入手段などのパルスイオン注入機を備えてもよい。好ましくは、イオン注入機は、パルスイオントラップ、より好ましくは、直線イオントラップまたは曲線イオントラップ(C−トラップ)などの線形イオントラップを備える。イオン注入機は、好ましくは、Y=0の位置に配置される。いくつかの実施形態における検出器は、イオンの飛行がいくつかの反射の後にY方向に反転する場合、同様にY=0に位置付けることができる。
イオン注入機は、好ましくは、ドリフト方向Yに、制限された初期幅のイオンパルスを注入する。一実施形態では、イオンパルスは、イオントラップに蓄積されたイオン雲から生成することができる。次いで、イオンミラーにパルス放出される。トラップは、ドリフト方向に、制限された幅のイオン雲を提供してもよい。好ましい実施形態では、イオンミラーに向かって注入されるイオン注入機内のイオン雲は、ドリフト方向Yにおいて0.25〜10mm、または0.5〜10mm、好ましくは0.25〜5mm、または0.5〜5mm、例えば1mm、または2mm、または3mm、または4mmの幅を有する。これにより、初期のイオンビーム幅が画定される。
イオン注入機は、ミラーの一端部からミラー間の空間内へX−Y平面内でX軸に対して傾斜角でイオンを注入し、それにより、イオンは、質量分析計内で概してジグザグな経路をたどるようにイオン注入機から離れてドリフト方向に沿ってドリフトしながら、一方の対向ミラーから他方へ複数回反射される。
イオン注入機は、好ましくは、イオンが対向イオン光学ミラーのドリフト方向の一端部から多重反射質量分析計内に注入され得るように(+Y方向への注入)、対向イオン光学ミラーのドリフト方向Yの一端部に近接して配置される。
X方向に対して傾斜角でイオンをイオンビームとしてイオンミラー間の空間内に注入するためのイオン注入機は、好ましくはX−Y平面内にある。その後、X−Y平面内においてイオンミラー間でジグザグな経路をたどる注入されたイオン。しかしながら、イオン注入機は、X−Y平面外にあってもよく、それにより、イオンは、X−Y平面に向かって注入され、X−Y平面に到達すると偏向器により偏向され、その後、X−Y平面内においてイオンミラー間でジグザグ経路をたどる。いくつかの実施形態では、US7,326,925に開示されているように、C字形等時性イオン界面またはセクターをイオン注入に使用してもよい。
イオン集束装置は、一般的にはイオン経路上に配置される。イオン集束装置は、一般的にはイオン注入機と検出器の間のイオン経路に沿って位置付けられる。イオン集束装置は、好ましくは、検出器よりもイオン注入機に近いイオン経路に沿って位置付けられる。例えば、1回目の反射と5回目の反射、または1回目の反射と4回目の反射、または1回目の反射と3回目の反射、またはより好ましくは1回目の反射と2回目の反射の間にイオン経路に沿ってイオン集束装置を位置付けることが好ましい。
イオン集束装置は、対向イオンミラー間に少なくとも部分的に配置される。いくつかの実施形態では、イオン集束装置は、全体がミラー間(すなわち、ミラー間の空間)に位置付けられ、他の実施形態では、イオン集束装置は、部分的にミラー間および部分的にミラー間の空間の外側に配置される。例えば、イオン集束装置の一方のレンズをイオンミラー間の空間の外側に位置付け、イオン集束装置の別のレンズをイオンミラー間に位置付けることができる。
イオン集束装置は、ドリフト方向のイオンを集束するように構成されている。典型的には、イオン集束装置は、イオンビームを直接方向Yに収束させるフォーカスレンズ(本明細書では収束レンズと呼ぶ)を備える。イオン集束装置またはレンズの焦点距離は長いため、0.25N〜0.75Nの回数の反射時または反射直後(すなわち、次の反射前)にイオン経路に沿ってドリフト方向Yに単一最小焦点(すなわち、最小空間的広がり)を提供する。すなわち、ドリフト方向Yのイオンビームの空間的広がりは、0.25N〜0.75Nの回数の反射時または反射直後に単一の最小値を通過する。典型的には、1回目の反射と最後(N回目)の反射のほぼ中間にまたは実質的に中間に単一最小焦点が発生する。例えば、これは、ドリフト方向Yの単一最小焦点(最小空間的広がり)が、イオン経路に沿って、1回目の反射とN回目の反射の中間、1回目の反射とN回目の反射の間の総イオン経路長の+/−20%、または+/−10%、または+/−5%の地点に発生する場合があることを意味する。このようにして、イオン集束装置は、一般的に、ドリフト方向Yの単一最小焦点(最小空間的広がり)が、イオン集束装置(すなわち、イオン集束装置の収束レンズ)と検出器の間のイオン経路に沿ってほぼ中間または実質的に中間に発生することを提供できる。例えば、ドリフト方向Yの単一最小焦点(最小空間的広がり)は、イオン集束装置(すなわち、イオン集束装置の収束レンズ)と検出器の中間の位置に、イオン集束装置と検出器の間の総イオン経路長の+/−20%または+/−10%の地点にイオン経路に沿って発生し得る。したがって、本開示に係るイオン集束装置は、従来技術の周期的集束装置とは異なり、イオン経路に沿ったドリフト方向Yに複数の最小焦点(空間的広がりの最小値)を提供しない。
さらに、これらの集束特性を用いるイオン集束装置は、1回目の反射でのドリフト方向Yのイオンの空間的広がりが、N回目の反射でのドリフト方向Yのイオンの空間的広がりと実質的に同じ(例えば、+/−30%、+/−20%、または好ましくは+/−10%以内)であることを提供する。本明細書において1回目の(またはN回目の)反射の空間的広がりとは、反射のすぐ下流の、例えば、1回目の(またはN回目)の反射の後の方向Xのイオンミラー間の中点の最初の交点での、ドリフト方向Yのイオンの空間的広がりを意味する。同様に、これは、検出器でのドリフト方向Yのイオンの空間的広がりは、イオン集束装置(すなわち、イオン集束装置の収束レンズ)でのドリフト方向Yのイオンの空間的広がりと実質的に同じ(例えば、+/−30%、+/−20%、または好ましくは+/−10%以内)であることを提供できる。5〜25mmまたは5〜15mmの、初期のイオンビーム幅の範囲が0.25〜10mmまたは0.5〜5mmである場合のイオン集束装置の収束レンズ(および、好ましくは最後の反射、N回目の反射および/または検出器)でのドリフト方向Yのイオンの空間的広がり(つまり、ドリフト方向Yの空間的な広がり)。好ましい実施形態では、ドリフト方向Yのイオンビーム幅は、イオン集束装置の収束レンズで最大になり、初期のイオンビーム幅(例えば、イオン注入機からの射出点での、イオン注入機でのイオンのパルスからの初期のイオンビーム幅)の2〜20倍(2x〜20x)の範囲にある。これは、ミラーの寸法(ドリフト方向Yのミラー分離距離(W)およびミラー長)だけでなく、イオン注入機によって決定されるイオンビームの位相体積によって決定される。実施形態では、単一の最小値(最小焦点またはいわゆるゴージ(gorge))でのドリフト方向Yのイオンのイオンビーム幅または空間的広がりは、概してレンズでの最大イオンビーム幅の約1/√2である(例えば、レンズでの最大イオンビーム幅の0.65〜0.75、または約0.7)。逆に言えば、収束レンズは、ドリフト方向Yのイオンビームの空間的広がりが、最小空間的広がりの1.2〜1.6倍、または1.3〜1.5倍、または約√2倍である収束レンズで最大となるようにイオンを集束する。
有利には、イオン集束装置の集束特性により、イオンミラー間で同じ数N回の反射を完了した後に、実質的にすべてまたはすべての検出されたイオンが確実に検出される。この方法では、倍音は検出されない。すなわち、イオンミラーでの異なる回数の反射(N回を上回るまたは下回る)を受けたイオンは検出されない。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのフォーカスレンズ(少なくともまたは主にドリフト方向Yのイオンを集束するいわゆるドリフトフォーカスレンズ)がイオン経路に配置される。いくつかの実施形態では、少なくとも2つのフォーカスレンズ、例えば一対のレンズがイオン経路上に配置される。いくつかのこのような実施形態では、イオンミラーでのイオンの1回目の反射の前に第1のフォーカスレンズを配置し、イオンミラーでのイオンの1回目の反射の前に第2のフォーカスレンズを配置してもよい(例えば、1回目と5回目の反射の間、好ましくは、1回目と4回目の反射の間、または1回目と3回目の反射の間、または最も好ましくは1回目と2回目の反射の間に)。いくつかの実施形態では、第1のフォーカスレンズは、ドリフト方向Yのイオンの発散(空間的広がりの増大)を生じさせるレンズ(すなわち、デフォーカスレンズ)であり得る。次に、ドリフト方向Yのイオンを収束するフォーカスレンズとして第2のフォーカスレンズが提供される。そこでは、ドリフト方向Yのイオンの空間的広がりの最小値は、イオン集束装置の第2のレンズと検出器の間のイオン経路に沿った実質的に中間に発生する。したがって、イオン集束装置は、1つ以上のイオンフォーカスレンズを備えることができる。イオン集束装置が複数のフォーカスレンズを備えるいくつかの実施形態では、イオン経路上の最終レンズは、ドリフト方向Yのイオンを収束し、そこでは、ドリフト方向Yのイオンの空間的広がりの最小値は、イオン集束装置の最終レンズと検出器の間のイオン経路に沿った実質的に中間で発生する。
本開示は、例えばToF質量分析で知られているパルスイオンビームなどの形態で多重反射質量分析計内にイオンを注入するステップと、イオン検出器を使用してイオンの少なくとも一部をそれらが質量分析計を通過する間または通過した後に検出するステップと、を含む、質量分析方法をさらに提供する。
ToF質量分析の技術分野で知られているイオン検出器を使用することができる。例としては、SEM検出器またはマイクロチャネルプレート(MCP)検出器、またはシンチレータ/光検出器に結合されたSEMまたはMCPを組み合わせた検出器が挙げられる。いくつかの実施形態では、検出器は、イオン注入機に対してドリフト方向Yでイオンミラーの反対端に配置することができる。他の実施形態では、検出器は、イオン注入機に隣接した領域に、例えば実質的にイオン注入機と同じY位置に、またはその付近に配置することができる。このような実施形態では、イオン検出器は、例えばイオン注入機の50mm以内、または40mm以内、または30mm以内、または20mm以内の距離(中心間)に配置してもよい。
好ましくは、イオン検出器は、ドリフト方向Yに平行な検出面を有するように配置され、すなわち検出面は、Y軸に平行である。一部の実施形態では、検出器は、好ましくはイオン等時性平面の角度に一致する量の、Y方向に対する傾斜角、例えば1〜5度、または1〜4度、または1〜3度の傾斜角を有してもよい。検出器は、イオンミラー間の中間の位置、例えば、イオンミラー間の中心または中間の位置で方向Xに位置付けられてもよい。
多重反射質量分析計は、多重反射飛行時間型質量分析計の全部または一部を形成してもよい。本発明のこのような実施形態では、好ましくは、イオン注入機に隣接する領域内に位置付けられたイオン検出器は、ドリフト方向Yに平行な検出面を有するように配置され、すなわち検出面は、Y軸に平行である。好ましくは、イオン検出器は、質量分析計を横断したイオンが、本明細書で説明するようにドリフト方向に沿ってミラー間を前後に移動しながらイオン検出面に衝突して検出されるように配置される。イオンは、検出器に衝突する前に、ミラー間で整数回または非整数回の完全な振動Kを受ける場合がある。有利には、イオン検出器は、イオンがイオンミラー間で正確に同じ数N回の反射を完了した後、そのすべてのイオンを検出する。
後述するように、多重反射質量分析計は、多重反射静電トラップ質量分析計の全部または一部を形成してもよい。本発明のこのような実施形態では、検出器は、好ましくは、イオンビームがそばを通り過ぎるときイオンビームの近くにあるように配置されているがイオンビームを妨害しないように位置付けられた1つ以上の電極を備え、高感度増幅器に接続された検出電極は、検出電極内に誘導されるイメージ電流が測定されることを可能にする。
イオンミラーは、任意の既知のタイプの細長イオンミラーを備えてもよい。イオンミラーは典型的には、静電イオンミラーである。ミラーは、グリッド付きであってもよく、ミラーは、グリッドレスであってもよい。好ましくは、ミラーは、グリッドレスである。イオンミラーは典型的には、平面イオンミラー、特に静電平面イオンミラーである。多くの実施形態では、平面イオンミラーは、例えばドリフト方向Yにミラーの長さの大部分または全体にわたって互いに平行である。いくつかの実施形態では、イオンミラーは、ドリフト方向Yの短手長さにわたって平行でなくてもよい(例えば、US2018−0138026Aのように、イオン注入機に最も近いミラー入口端で)。ミラーは、典型的には、ドリフト方向Yに実質的に同じ長さである。イオンミラーは、好ましくは、電場のない空間の領域によって分離されている。
イオン光学ミラーは、互いに対向する。対向ミラーとは、第1のミラー内へ方向付けられたイオンが第2のミラーに向けて第1のミラーの外に反射され、第2のミラー内に入るイオンが第1のミラーに向けて第2のミラーの外に反射されるように、ミラーが配向されることを意味する。したがって、対向ミラーは、概して反対方向に配向され、互いに対向する電場成分を有する。
各ミラーは、好ましくは、複数の細長平行電極棒から作製され、電極は、概して方向Yに延びている。ミラーのこのような構成は、例えばSU172528またはUS2015/0028197に記載のように、当技術分野で公知である。イオンミラーの細長電極は、取り付けられた金属棒として、またはPCB基部上の金属トラックとして設けられてもよい。飛行時間が計器内の温度変化に耐えるように、細長電極は、低い熱膨張係数を有するインバーなどの金属から作製されてもよい。イオンミラーの電極形状は、正確に機械加工されてもよく、またはワイヤ侵食製造法により得てもよい。
ミラー長(第1の段と第2の段との全長)は、本発明では特に限定されないが、好ましい実践的な実施形態は、300〜500mm、より好ましくは350〜450mmの範囲の全長を有する。
多重反射質量分析計は、2つのイオンミラーであって、各ミラーが主に一方向Yに延びている。後述するように、その伸長は、直線状(すなわち、まっすぐ)であってもよく、またはその伸長は、非直線状(例えば、曲線状、もしくは曲線に近似するように一連の小さな段差を含む)であってもよい。各ミラーの伸長形状は、同じであってもよく、または異なっていてもよい。好ましくは、各ミラーの伸長形状は、同じである。好ましくは、ミラーは、一対の対称ミラーである。伸長が直線状である場合、ミラーは互いに平行であり得るが、いくつかの実施形態では、ミラーは互いに平行でなくてもよい。
本明細書で説明するように、2つのミラーは、それらがX−Y平面内に存在するように、かつ両ミラーの細長寸法が概してドリフト方向Yに存在するように、互いに位置合わせされる。ミラーは、X方向で離隔され、互いに対向する。イオンミラー間の距離または空隙は、ドリフト距離の関数として、すなわちミラーの細長寸法であるYの関数として一定になるように便利に配置することができる。このようにして、イオンミラーは互いに平行に配置される。しかしながら、いくつかの実施形態では、ミラー間の距離または空隙はドリフト距離の関数として、すなわちYの関数として変化するように配置できるため、両ミラーの細長寸法は正確にはY方向に存在しないことになり、この理由により、ミラーは概してドリフト方向Yに延びると記載されている。よって、概してドリフト方向Yに沿って延びることは、主として、または実質的にドリフト方向Yに沿って延びているとしても理解され得る。本発明のいくつかの実施形態では、少なくとも1つのミラーの細長寸法が、少なくともその長さの一部にわたって、方向Yに対して傾斜し得る。
ここで、X方向における対向イオンミラー間の距離とは、ミラー内のイオンの平均方向転換点間のX方向の有効距離を意味する。一般に無電場領域を持つミラー間の有効距離Wの正確な定義は、無電場領域の平均イオン速度と、イオンの質量電荷比とは独立した2つの連続する方向転換点間の時間経過の積である。本明細書において、ミラー内のイオンの平均方向転換点とは、平均運動エネルギーおよび平均初期角発散特性を有するイオンが到達するミラー内の+/−X方向での最大点または最大距離、すなわちそのようなイオンがミラーから出て進行する前にX方向に方向転換される点を意味する。+/−X方向に所与の運動エネルギーを有するイオンは、ミラー内の等電位面で方向転換される。特定のミラーのドリフト方向Yに沿う全ての位置におけるこのような点の軌道が、そのミラーの方向転換点を画定し、この軌道を、以下で、平均反射面と呼ぶ。明細書と請求項の両方において、対向イオン光学ミラー間の距離への言及は、今定義したばかりのミラーの対向平均反射面間の距離を意味することを意図する。本発明では、イオンがミラーの伸長長さに沿う任意の点で対向ミラーのそれぞれに入る直前に、イオンは、+/−X方向にそれらの元の運動エネルギーを有している。したがって、対向イオンミラー間の距離は、公称イオン(平均運動エネルギーおよび平均初期入射角を有するイオン)がX方向に方向転換する、対向等電位面間の距離としても画定され得、その対向等電位面はミラーの伸長長さに沿って延在する。
本発明では、ミラー自体の機械的構成は、皮相的に見れば、Yの関数としてXにおいて一定の離間距離を維持するように見えるかもしれないが、平均反射面は、実際はYの関数としてXにおいて異なる離間距離に存在し得る。例えば、1つ以上の対向イオンミラーが、絶縁フォーマ(プリント回路基板など)上に配設された導体トラックから形成されてもよく、1つのこのようなミラーのフォーマが、ドリフト長の全体に沿って対向ミラーから一定の離間距離に配置されてもよい一方、フォーマ上に配設された導体トラックは、対向ミラー内の電極から一定距離になくてもよい。たとえ両ミラーの電極が全ドリフト長に沿って一定の離間距離に配置されていても、異なる電極は、ドリフト長に沿って一方または両方のミラー内で異なる電位でバイアスされてもよく、ミラーの対向平均反射面間の距離をドリフト長に沿って変化させる。よって、X方向における対向イオン光学ミラー間の距離は、ドリフト方向のミラーの長さの少なくとも一部分に沿って変化する。
好ましくは、X方向における対向イオンミラー間の距離は一定であるか、またはドリフト距離の関数として滑らかに変化する。本発明のいくつかの実施形態では、X方向における対向イオンミラー間の距離のばらつきは、ドリフト距離の関数として線形に、または2つの直線状の段で変化し、すなわち、X方向における対向イオン光学ミラー間の距離は、長さの第1の部分についてはドリフト距離の第1の線形関数として変化し、長さの第2の部分についてはドリフト距離の第2の線形関数として変化し、第1の線形関数は、第2の線形関数より高い勾配を有する(すなわち、X方向における対向イオン光学ミラー間の距離は、第2の線形関数よりも第1の線形関数について、ドリフト距離の関数としてより大きく変化する)。本発明の一部の実施形態では、X方向における対向イオン光学ミラー間の距離のばらつきは、ドリフト距離の関数として非線形に変化する。
2つの細長イオン光学ミラーは、互いに類似していてもよく、またはそれらは異なっていてもよい。例えば、一方のミラーはグリッドを備えてもよく、他方は備えなくてもよい。一方のミラーは湾曲部分を備えてもよく、他方はまっすぐであってもよい。好ましくは、両ミラーは、グリッドレスであり、互いに類似している。最も好ましくは、ミラーは、グリッドレスかつ対称的である。
ミラー構造は、ドリフト方向Yにおいて連続的、すなわち非分断であってもよく、これは、そのような分断間の空隙における電場の段階的変化に伴うイオンビーム散乱を排除する。
有利なことに、本発明の実施形態は、対向イオン光学ミラー間の領域内に任意の追加レンズまたはレンズ絞りを含めることなしに、構成されてもよい。しかしながら、本発明では、質量分析計内のイオンの位相空間体積に影響を与えるために追加レンズまたはレンズ絞りが使用されてもよく、ミラー間の空間内に位置付けられた1つ以上のレンズおよびレンズ絞りを備えた実施形態が考えられる。
いくつかの実施形態では、本発明の質量分析計は、ミラー間の空間に1つ以上の補償電極を含み、例えばミラーの位置ずれによって引き起こされる飛行時間収差の影響を最小限に抑える。補償電極は、ミラー間の空間内で、またはその空間に隣接してドリフト方向の少なくとも一部に沿って延在する。
本発明の一部の実施形態では、補償電極は、概してドリフト方向に沿って延びる対向イオン光学ミラーと共に使用される。いくつかの実施形態では、補償電極は、非平行イオンミラーと組み合わせて使用される。いくつかの実施形態では、補償電極は、ドリフト方向のイオン光学ミラー長の少なくとも一部に沿って、+Y方向沿いのイオン運動に対向する電場成分を生み出す。これらの電場成分は、好ましくは、イオンがドリフト方向に沿って移動するにつれて、イオンに戻る力を提供または寄与する。
1つ以上の補償電極は、多重反射質量分析計のミラーと比較して、任意の形状およびサイズであってよい。好ましい実施形態では、1つ以上の補償電極は、イオンビームに面するX−Y平面に平行に延在する面を備え、これらの電極が、イオンビーム飛行経路から+/−Zに変位され、すなわち1つ以上の電極が、好ましくはX−Y平面に実質的に平行な面をそれぞれ有し、このような電極が2つ存在し、好ましくは対向ミラー間に延在する空間の両側に配置されている。別の好ましい実施形態では、1つ以上の補償電極は、ドリフト長の実質的な部分に沿ってY方向に延び、各電極は、対向ミラー間に延在する空間の両側に位置付けられている。この実施形態では、好ましくは、1つ以上の補償電極が、実質的な部分に沿ってY方向に延び、実質的な部分は、総ドリフト長の1/10、1/5、1/4、1/3、1/2、3/4のうち少なくとも1つ以上である。いくつかの実施形態では、1つ以上の補償電極は、ドリフト長の実質的な部分に沿ってY方向に延びる2つの補償電極を備え、実質的な部分は、総ドリフト長の1/10、1/5、1/4、1/3、1/2、3/4のうち少なくとも1つ以上であり、一方の電極は、イオンビーム飛行経路から+Z方向に変位され、他方の電極は、イオンビーム飛行経路から−Z方向に変位され、それにより、2つの電極は、対向ミラー間に延在する空間の両側に位置付けられている。しかしながら、他の幾何形状が予期される。1つ以上の補償電極は、方向Y沿いの長さの第1の部分および第2の部分に実質的に沿って(すなわち、ミラー収束度の異なる両段に沿って)、または例えば長さの第2の部分のみに実質的に沿って、Y方向に延びてもよい。好ましくは、補償電極は、イオンの総飛行時間がイオンの入射角から実質的に独立するように、使用中に電気的にバイアスされる。イオンが進行する総ドリフト長はイオンの入射角に左右されるため、イオンの総飛行時間は、進行したドリフト長から実質的に独立している。
補償電極は、ある電位によりバイアスされてもよい。一対の補償電極が使用される場合、その対の各電極には、同じ電位が印加されてもよく、または2つの電極には、異なる電位が印加されてもよい。好ましくは、2つの電極が存在する場合、電極は、対向ミラー間に延在する空間の両側に対称的に位置付けられ、電極は、両方とも、実質的に等しい電位で電気的にバイアスされる。
一部の実施形態では、1つ以上の対の補償電極は、対のうちの各電極が同じ電位でバイアスされてもよく、その電位は、本明細書で分析器基準電位と呼ばれるものに対してゼロボルトであってもよい。典型的に分析器基準電位は接地電位であるが、分析器では電位が任意に上げられてもよく、すなわち、分析器全体では電位が接地に対して上下されてもよいことが理解されるであろう。本明細書で使用する場合、ゼロの電位またはゼロボルトは、分析器基準電位に対するゼロの電位差を表すために使用され、ゼロ以外(非ゼロ)の電位という用語は、分析器基準電位に対してゼロ以外(非ゼロ)の電位差を表すために使用される。典型的に、分析器基準電位は、例えばミラーを終端するために使用される電極などの遮蔽物に印加され、本明細書で定義したように、ミラーを構成する電極を除いて全ての他の電極がない場合、対向イオン光学ミラー間のドリフト空間内の電位である。
好ましい実施形態では、2つ以上の対向補償電極の対が提供される。このような実施形態では、各電極がゼロボルトで電気的にバイアスされている一部の補償電極の対は、非バイアス補償電極とさらに呼ばれ、ゼロ以外の電位が印加された他の補償電極の対は、バイアス補償電極とさらに呼ばれる。典型的に、非バイアス補償電極は、バイアス補償電極からの場を終端する。一実施形態では、少なくとも一対の補償電極の面は、その面が、ミラーの一端部または両端部付近の領域内において、端部間の中央領域内においてよりも長い距離で各ミラーに向かって延在するように、X−Y平面内に特性を有する。一実施形態では、少なくとも一対の補償電極は、その面が、ミラーの一端部または両端部付近の領域内において、端部間の中央領域内においてよりも短い距離で各ミラーに向かって延在するように、X−Y平面内に特性を有する面を有する。このような実施形態では、好ましくは補償電極の対(複数可)は、細長ミラーの一端部にあるイオン注入機に隣接する領域からドリフト方向Yに沿って延在し、補償電極は、ドリフト方向において細長ミラーと実質的に同じ長さであり、ミラー間の空間の両側に位置付けられている。代替的な実施形態では、今説明したばかりの補償電極面は、複数の個別の電極から構成されてもよい。
好ましくは、本発明の全ての実施形態において、補償電極は、イオンビームがイオンの運動エネルギーと少なくとも同じくらい大きいポテンシャル障壁にドリフト方向で遭遇するようなイオン光学ミラーを備えていない。しかしながら、すでに述べたように、かつ後述するように、補償電極は、好ましくは、ドリフト方向のイオン光学ミラー長の少なくとも一部分に沿って、+Y方向沿いのイオン運動に対向する電場成分を生み出す。
好ましくは、1つ以上の補償電極は、使用中、対向ミラーにより生成される飛行時間収差の少なくとも一部を補償するように、電気的にバイアスされる。2つ以上の補償電極が存在する場合、補償電極は、同じ電位でバイアスされてもよく、または補償電極は、異なる電位でバイアスされてもよい。2つ以上の補償電極が存在する場合、1つ以上の補償電極は、ゼロ以外の電位でバイアスされてもよく、他の補償電極は、ゼロの電位であってもよい別の電位で保持されてもよい。使用中、一部の補償電極は、他の補償電極の電場の空間的広がりを限定するという目的に役立てられてもよい。
一部の実施形態では、1つ以上の補償電極は、電気抵抗材料により被覆されたプレートを備えてもよく、プレートには、プレートのY方向の異なる端部で異なる電位が印加され、それにより、ドリフト方向Yの関数としてその至るところで異なる電位を有する面を有する電極を生み出す。そのため、電気的にバイアスされた補償電極は、単一のポテンシャルをまったく保持していない場合がある。好ましくは、1つ以上の補償電極は、使用中、対向ミラーの位置ずれまたは製造公差により生じるドリフト方向の飛行時間のシフトを補償するように、かつシステムの飛行時間の総シフトをそのような位置ずれまたは製造から実質的に独立させるように、電気的にバイアスされる。
補償電極に印加される電位は、一定に保持されてもよく、または時間とともに変化してもよい。好ましくは、補償電極に印加される電位は、イオンが多重反射質量分析計を通じて伝播する間、時間を通じて一定に保持される。補償電極に印加される電気バイアスは、補償電極の近傍を通るイオンが減速または加速するほどバイアスさせ得るようなものであってよく、補償電極の形状は、それに応じて異なってもよく、その例は後述する。本明細書に記載する場合、補償電極に適用される「幅」という用語は、バイアス補償電極の+/−X方向の物理的寸法を指す。イオンミラーにより提供されるポテンシャル(すなわち、電位)および電場、ならびに/または補償電極により提供されるポテンシャルおよび電場は、イオンミラーおよび/または補償電極がそれぞれ電気的にバイアスされるとき存在することが理解されるであろう。
イオンミラー間の空間に隣接して、またはその内に位置付けられたバイアス補償電極は、同じくイオンミラー間の空間に隣接して、またはその内に位置付けられたX−Y平面内の2つ以上の非バイアス(接地)電極間に位置決めされてもよい。非バイアス電極の形状は、バイアス補償電極の形状に対して相補的であってもよい。
一部の好ましい実施形態では、対向イオン光学ミラー間の距離は、ドリフト長の各端部においてX−Z平面内で無制限である。X−Z平面内で無制限であるとは、ミラーはミラー間の空隙に完全に、または実質的にまたがるX−Z平面内の電極により拘束されないことを意味する。
本発明の多重反射質量分析計の実施形態は、多重反射静電トラップ質量分析計の全部または一部を形成してもよい。好ましい静電トラップ質量分析計は、それぞれのドリフト方向が共線になるようにX軸に対称に端と端に配置された2つの多重反射質量分析計を備え、多重反射質量分析計は、それにより、使用中、内部でイオンがドリフト方向とイオン飛行方向の両方に等時性特性を有する閉路をたどる体積を画定する。このようなシステムは、US2015/0028197に記載され、その文書の図13に示されており、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる(しかしながら、参考文献中の援用部分が本出願内の記載と矛盾する場合、本出願が優先する)。複数のストライプ状検出電極の対(例えば、端と端に配置された2つの多重反射質量分析計の場合は4対)を、イオンがミラー間を通過する度の誘導電流信号の読み出しに使用することができる。各対の電極は、Z方向に対称的に分離され、補償電極の平面内に、またはイオンビームのより近くに位置付けられ得る。電極対は、差動増幅器の直接入力に接続され、さらに電極対は、差動増幅器の逆入力に接続され、よって、雑音を有利に低減する差動誘導電流信号を提供する。質量スペクトルを得るため、誘導電流信号は、J.B.GreenwoodらによるRev.Sci.Instr.82,043103(2011)に記載のように、フーリエ変換アルゴリズムまたは専用のコムサンプリングアルゴリズムを使用して公知の方法で処理される。
本発明の多重反射質量分析計は、多重反射飛行時間型質量分析計の全部または一部を形成し得る。
複合質量分析計は、各質量分析計のX−Y平面が平行になり、任意選択的に互いから垂直方向Zに変位されるように位置合わせされた2つ以上の本発明による多重反射質量分析計を備えて形成されてもよく、複合質量分析計は、一方の多重反射質量分析計から他方にイオンを方向付けるイオン光学手段をさらに備える。複合質量分析計のこのような一実施形態では、1組の多重反射質量分析計が、Z方向で互いに積み重ねられ、イオンは、静電電極偏向器などの偏向手段によりスタック内の第1の多重反射質量分析計からスタック内のさらなる多重反射質量分析計に通され、それにより、イオンが同じ経路を2回以上たどらず、イオンの重なり合いがないため全質量範囲のTOF分析を可能にする、延長飛行経路型の複合質量分析計を提供する。このようなシステムは、US2015/0028197に記載され、その文書の図14内に示されている。複合質量分析計の別のこのような実施形態では、1組の多重反射質量分析計が、それぞれ同じX−Y平面に存在するように配置され、イオンは、静電電極偏向器などの偏向手段により第1の多重反射質量分析計からさらなる多重反射質量分析計に通され、それにより、イオンが同じ経路を2回以上たどらず、イオンの重なり合いがないため全質量範囲のTOF分析を可能にする、延長飛行経路型の複合質量分析計を提供する。一部の分析計が同じX−Y平面内に存在し、他のものが垂直Z方向に変位され、イオン光学手段が、イオンを分析計から別のものに通すように配置され、それにより、イオンが同じ経路を2回以上たどらない延長飛行経路型の複合質量分析計を提供する、多重反射質量分析計の他の配置が、想定される。好ましくは、一部の分析計がZ方向に積み重ねられる場合、それらの分析計は、ドリフト方向の偏向手段の必要性を回避するために、ドリフト方向の交互配向を有する。
あるいは、本発明の実施形態は、イオンを方向転換させ、イオンに多重反射質量分析計または複合質量分析計を1回以上通過させ、それにより質量範囲を犠牲にするが飛行経路長を増加させるように配置された、さらなるビーム偏向手段と共に使用されてもよい。
多重反射質量分析計と、質量分析計の上流側のイオン捕集装置を備えたイオン注入機と、質量分析計の下流側のパルスイオンゲート、高エネルギー衝突セル、および飛行時間型分析計と、を備えたMS/MS用の分析システムが、本発明を使用して提供されてもよい。このようなシステムは、US2015/0028197に記載され、その文書の図15内に示されている。その上、衝突セルから出現するイオンがイオン捕集装置内に戻るように方向付けられるように衝突セルを構成することにより、同じ分析計が、分析の両段または分析の複数のそのような段のために使用することができ、それにより、MSnの機能を提供する。
X方向とY方向の両方における飛行時間の集束の結果、イオンは、ミラー間でのX方向の指定された回数の振動後、検出器で実質的に同じY方向座標に到達する。検出器上での空間的集束は、それにより達成され、質量分析計の構成はかなり単純化される。
先行技術に係る実施形態を模式的に示す。 先行技術に係る別の実施形態を概略的に示す。 先行技術に係るさらなる実施形態を概略的に示す。 先行技術に係るさらなる実施形態を概略的に示す。 先行技術に係るさらなる実施形態を概略的に示す。 本発明の一実施形態に係る多重反射質量分析計を概略的に示す。 イオンミラーの電極構成および印加電圧を概略的に示す。 円形のドリフトフォーカスレンズを概略的に示す。 楕円形のドリフトフォーカスレンズを概略的に示す。 プリズム状の偏向器に一体化されたレンズを概略的に示す。 ドリフトフォーカスレンズの代替構造を概略的に示す。 ドリフトフォーカスレンズの代替構造を概略的に示す。 ドリフトフォーカスレンズの代替構造を概略的に示す。 抽出イオントラップの実施形態を概略的に示す。 注入光学系方式の実施形態を概略的に示す。 本発明の別の実施形態に係る多重反射質量分析計を概略的に示す。 図11のシステム質量分析計を使用した検出器での2mmの初期幅の熱イオンパケットの到着時間のシミュレーションを示す。 図11のシステム質量分析計を使用した検出器での2mmの初期幅の熱イオンパケットのドリフト空間分布(B)のシミュレーションを示す。 単一のフォーカスレンズ配置を使用したイオンビームの軌道のシミュレーション軌道を示す。 2つのレンズ配置を使用したイオンビームの軌道のシミュレーション軌道を示す。 イオンがドリフト次元に沿って進行するときのイオンビーム幅δxの代表例を概略的に示す。 初期のイオンビーム幅δx0、ドリフト長(DL)、およびミラー分離(W)を変化させたときの、達成可能なイオン飛行経路長への影響を示すグラフを示す。 イオンビームをドリフトゼロ位置に戻すための反転偏向器を組み込んだ多重反射ToF構成の実施形態を概略的に示す。 ドリフト反転偏向器と、反転偏向器の前の1つの反射に位置付けられたフォーカスレンズとを組み込んだ質量分析計の端部付近のイオン軌道を示す。 初期のドリフトエネルギーを低減する第1および第2の偏向器と、最小時間収差でイオンドリフトを検出器に戻す第3の偏向器と、を組み込んだ完全な分析器による熱ドリフト発散を伴うイオン軌道のシミュレーションを示す。 偏向器を2回通過させることでイオン軌道を反転させるドリフト反転偏向器を組み込んだ質量分析器であって、偏向器が飛行時間収差を最小化する収束レンズを組み込んだ、質量分析器の端部付近のイオン軌道を示す。 ミラー空間内の振動数と検出器でのビーム発散とを最大化するミラー収束および発散を有する実施形態を概略的に示す。 ソース位置およびエネルギーが異なるイオン軌道のシミュレーションを示し、戻り位置が開始位置に相関していることを示す。
次に、本発明の様々な実施形態を、図面を参照して説明する。これらの実施形態は、本発明の特徴を例示することを意図しており、本発明の範囲を限定することを意図していない。実施形態に対する変形は、特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内に依然として含まれて実施され得ることが理解されるであろう。
本発明の一実施形態に係る多重反射質量分析計2を図5に示す。図示されていないイオンソース(例えば、ESIまたは他のソース)から生成されたイオンは、この実施形態ではイオントラップ4の形態で、パルスイオン注入機に蓄積される。この場合、イオントラップは、例えば直線イオントラップ(R−Trap)や曲線イオントラップ(C−trap)などの線形イオントラップである。イオンビーム5は、例えばドリフト方向Yにおいて0.5mm未満の幅を有する捕集されて熱化されたイオンのパケットを線形イオントラップ4から抽出し、それを高エネルギー(この実施形態では4kV)で2つの対向平行ミラー6、8の間の空間内に、適切な加速/抽出電圧をイオントラップ4の電極(例えば、プル/プッシュ電極)に印加することにより、注入することによって形成される。イオンは、イオントラップ4のスロット10を介してイオントラップから出る。イオンビームは、第1のミラー6に入り、ミラー6の第1の電極対6aによりもたらされるレンズ効果により面外寸法で集束され、ミラーの残りの電極6b〜6eにより時間焦点に反射される。この例では、ミラー間の利用可能な空間(すなわち、各ミラーの第1電極(6a、8a)間の方向Xの距離)は、300mmであり、分析器の総有効幅(すなわち、ミラー内のイオンの平均方向転換点間のX方向の有効距離)は、約650mmである。全長(すなわち、Y方向)は、550mmであり、かなりコンパクトな分析装置を形成する。
6および8などの適切なイオンミラーは、先行技術(例えば、US9,136,101)から十分に理解される。図5に示すようなイオンミラーの構成例は、5対の細長電極などの、X方向に間隔を空けた複数対の細長電極を備えたミラーであり、ミラーの第1の電極対(6a、8a)は、接地電位に設定される。各対において、イオンビームの上方に1つの電極が位置付けられ、ビームの下方に1つの電極が位置付けられる(図のZ方向)。イオンに対して時間焦点を持つ反射電位を提供するための1組の電極(6a〜6e、8a〜8e)の電圧の例を、印加電圧が4keVの正イオンの集束に適しているものとして図6に示す。マイナスイオンの場合、極性を逆にすることができる。
第1のイオンミラー6での第1の反射の後、イオンビームは、熱ドリフト下でドリフト方向に幅約8mmまで実質的に拡大し、ドリフト方向Yにイオンビームを集束するドリフトフォーカスレンズ12の形態のイオン集束装置に出会う。ドリフトフォーカスレンズ12は、ミラー間の空間の中央、すなわちミラー間の中間の方向Xに配置される。この実施形態のドリフトフォーカスレンズ12は、方向Z(XおよびY方向に垂直)のビームの両側に位置付けられた一対の対向レンズ電極を備えたトランスアキシャルレンズである。具体的には、ドリフトフォーカスレンズ12は、イオンビームの上下に配置された一対の準楕円板12a、12bを含む。レンズは、ボタン型レンズと呼ばれる場合がある。この実施形態では、板は、幅約7mm、長さ約24mmであり、約−100Vが印加される。いくつかの実施形態では、一対の対向レンズ電極は、円形、楕円形、準楕円形、または弧形状の電極を含んでもよい。ドリフトフォーカスレンズ12は、ドリフト方向Yのイオンの角度的広がりを低減することにより、イオンビームに対して収束効果を有する。
イオンビーム5は、フォーカスレンズ12による集束後、イオンミラー間のX−Y平面内でジグザグイオン経路をたどるように、ドリフト方向Yに沿ってドリフトしながら、方向Xにイオンミラー間でさらに複数回反射する(システムには合計N回の鏡面反射が存在する)。N回の反射(すなわち、振動がX方向の連続反射間の距離の2倍に等しいN/2回の「振動」)を完了した後、イオンは、イオン検出器14によって検出され、イオンの飛行時間の検出が可能になる。プロセッサ(図示せず)を含むデータ収集システムは、検出器に接続されており、質量スペクトルの生成を可能にする。示されている実施形態では、イオンは、22回反射(N=22)し、総飛行経路は10メートルを超える。検出器は、好ましくは、電子集束のための磁場および電場を有するマルチチャネルプレート(MCP)またはダイノード電子増倍管などの高速時間応答検出器である。
ドリフトフォーカスレンズ12の位置決めのための重要な要因が決定されている。第一に、イオンビームは、フォーカスレンズに到達するまでに、ドリフトエネルギーまたは角度的広がりに対するレンズの効果が空間的広がりに対する効果に対して最大になるように、十分に拡大していることが好ましい。これは、イオンビームがドリフトフォーカスレンズに到達する前に拡大する必要があることを意味する。よって、イオンミラー6での1回目の反射の後にレンズを位置付けることが好ましい(ミラー間隔が、例えば500mmなどのように非常に大きくない限り)。第二に、方向Xに対して2度の傾斜角でこのサイズの質量分析計システムにイオンビームを注入する場合、中央のイオン軌道(すなわち、イオンビームの中心)の反射は、25mm未満の間隔で分離され、フォーカスレンズは、隣接するイオン軌道に干渉するほど大きくないことが重要である。ドリフト集束しない場合、イオンビームは、3回目の反射によりその幅がすでに20mmになり、4回目の反射までに軌道は他の反射の軌道とほぼ重複し始める。したがって、ドリフトフォーカスレンズの最適な位置は、システムにおける1回目の反射の後かつ4回目または5回目の反射の前であること、すなわち、このように、合計22の反射(N=22)を有するシステム内において比較的初期に位置付けられることが好ましい。ドリフトフォーカスレンズの最適な位置は、好ましくは、0.25N未満または0.2N未満の回数の反射前である。ドリフトフォーカスレンズの最適な位置は、より好ましくは、1回目の反射の後かつ2回目または3回目の反射の前(特に2回目の前)である。
イオンビームの上下にボタン型電極(円形、卵形、楕円形、または準楕円形)を配置して、周期的で、かつ軌道形状内に構築されるが、マルチターンのToF機器でドリフト集束を生成するという概念については、US2014/175274Aに記載されており、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。このようなレンズは、「トランスアキシャルレンズ」の一形態である(PW Hawkes and E Kasper、Principles of Electron Optics Volume 2、Academic Press、London、1989を参照されたい。その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。このようなレンズは、そのような細長イオンビームを制御するのに重要である広い空間受容性を有するという利点がある。レンズは、イオンビームと、レンズの側面からの3D場の摂動が焦点特性を損なわないようにすることと、の両方に対応するために十分に幅広くする必要がある。同様に、レンズ間の空間は、これらの3D摂動を最小限に抑えることと、ビームの高さに対応することの間の妥協点である必要がある。実際には、4〜8mmの距離で十分である。
円形(ボタン)レンズから狭い楕円形のレンズまで、レンズの曲率を変えることができる。短い弧をとる準楕円構造は、通過する経路がより短いため、より広い弧または完全な円と比較して飛行時間収差を低減させるが、より強い電圧が必要であり、極端な場合、面外でかなりのレンズ効果を誘発し始める。この効果は、ドリフトの制御と単一レンズ内の面外分散のある組み合わせに利用され得るが、各特性の制御範囲を制限することになる。補助として、イオントラップ4のイオン抽出領域など、強電場がすでに印加されている領域は、イオントラップのプル/プッシュ電極の曲率を利用して、イオンビームのドリフト発散を誘発または制限し得る。この例は、US2011−284737Aに記載されている市販の曲線イオントラップ(C−trap)であり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。そこでは、細長イオンビームが、Orbitrap(商標)質量分析器への注入を支援する点に集束される。
図7は、円形20および準楕円22レンズプレート(電極)を各プレートの接地された周囲電極24とともに含むドリフトフォーカスレンズの異なる実施形態(A、B)を示す。レンズ電極20、22は、接地された周囲電極24から絶縁されている。また、(C)には、レンズ22(これは準楕円形の場合であるが円形などでもよい)が偏向器に統合されていることが示されており、この実施形態では、台形のプリズム状電極構造26は、イオンビームの上下に配置され、入射イオンを曲線ではなく一定の視野角で与えることにより、偏向器として機能する。その偏向器構造は、イオンビームの上方に配置された台形またはプリズム状の電極と、イオンビームの下方に配置された別の台形またはプリズム状の電極を含む。レンズ電極22は、偏向器、すなわち、それらが配置される台形のプリズム状電極から絶縁されるとともに、接地された周囲電極24から絶縁される。広い空間受容偏向器構造内へのレンズの配置は、より空間効率の高い設計である。適切なレンズの他の可能な実施形態として、例えば、成形された電極によって作成された像面湾曲を模倣するために抵抗チェーンによって分離された搭載電極30(例えば、プリント回路基板(PCB)32に搭載される)のアレイ(A)、示されている相対ロッド電圧(V)を持つ擬似四重極構成を有する12ロッド式レンズなど、四重極または擬似四重極場を作成するための多極ロッドアセンブリ(B)、および通常の開口アインツェルレンズ構造などの開口式レンズ(C)を図8に示す。例えば、図7および図8に示されるようなドリフトフォーカスレンズのそのような実施形態は、多重反射質量分析計のすべての実施形態に適用可能であり得る。
イオントラップ4としての使用に適した抽出イオントラップ40を図9に示す。これは、線形四重極イオントラップであり、当技術分野でよく理解されているように、イオンソース(図示せず)によって生成され、インターフェースイオン光学装置(例えば、1つ以上のイオンガイドなどを備える)によって送達されるイオンを受け取ることができる。イオントラップ4は、1組の多重極(四重極)電極で構成される。その内接半径は2mmである。イオンは、多重極電極のそれぞれの対向する対41、42および44、44’に印加された対向RF電圧(4MHzで1000V)によって放射状に閉じ込められる。また、DC開口電極(46、48)の小さなDC電圧(+5V)によって軸方向に閉じ込められる。イオントラップ4に導入されたイオンは、イオントラップ内に存在するバックグラウンドガス(5×10-3mbar未満)との衝突冷却によって熱化される。冷却されたイオンを質量分析器のイオンミラーへ抽出する前に、トラップ電位を4kVに上げ、プル電極42に−1000V、プッシュ電極(41)に+1000Vを印加することにより、抽出電場を印加し、正イオンをプル電極のスロット(47)から矢印Aで示される方向で分析器に排出させる。あるいは、示されている直線四重極イオントラップは、曲線イオントラップ(Cトラップ)に置き換えることができる。
イオントラップ4、40に加えて、分析器へのイオンの注入を制御するために、さらにいくつかのイオン光学要素を備えていること(「注入光学系」)が好ましい。このようなイオン注入光学系は、イオン集束装置の一部と見なすことができる。第一に、イオントラップ4と第1のミラー6との間の経路に沿って面外フォーカスレンズ(すなわち、X−Y平面から外れる方向、すなわち方向Zに集束する)を有することが有益である。このような面外フォーカスレンズは、ミラーへのイオンの透過を改善する細長開口を含むことができる。第二に、イオンビームがミラーに入るときのX方向に対するイオンビームの注入角の一部、例えば半分は、X方向に対するイオントラップの角度によって提供され、残り、例えば他の半分は、イオントラップの前に配置された少なくとも1つの偏向器(いわゆる注入偏向器)によって提供され得る。注入偏向器は、一般に、イオンミラーでの1回目の反射の前に位置付けられる。注入偏向器は、少なくとも1つの注入偏向器電極(例えば、イオンビームの上下に位置付けられた一対の電極)を備えることができる。このように、イオンの等時性面は、対応する飛行時間誤差に対し2度位置ずれしているのではなく、分析器に正しく位置合わせされることになる。このような方法は、US9,136,101に詳述されている。注入偏向器は、図7に示すようなドリフトフォーカスレンズを組み込んだ、または組み込んでいない、図7に示したタイプのプリズムタイプの偏向器としてもよい。このような実施形態では、イオンミラーでの1回目の反射の後にドリフトフォーカスレンズ12と共にまたはそれに隣接して取り付けることができる偏向器(例えば、プリズムタイプ)に加えて、注入角を設定するための注入偏向器(例えば、プリズムタイプ)を設けることができる。いくつかの実施形態では、注入角のすべてまたは大部分を注入偏向器によって提供することができる。さらに、必要な注入角を達成するために、2つ以上の注入偏向器を(例えば、直列で)使用することができることが理解されるだろう(すなわち、システムは少なくとも1つの注入偏向器電極、任意選択的に2つ以上の注入偏向器電極を含むことができるということがわかる)。注入光学系方式の例示的な実施形態を、適切な印加電圧とともに図10に概略的に示す。イオントラップ4は、線形イオントラップであり、上記の+1000Vプッシュ電圧および−1000Vプル電圧が4kVトラップに印加されて、イオンビームを抽出する。次に、ビームは、接地電極52、+1800Vに保持された第1のレンズ54、一体化された楕円レンズ(+750V)を備えたプリズムタイプの偏向器56(+70V)、+1200Vに保持された第2レンズ58、そして最後に接地電極60を備えるイオン光学系を順に通過する。第1および第2のレンズ54、58は、面外集束を提供するための開口レンズ(長方形のアインツェルレンズ)である。偏向器56は、イオンビームのX軸に対する傾斜角を提供し、一体化された楕円レンズは、ドリフト方向Yに制御されたイオンビーム発散を提供することができる。
抽出イオントラップ4(または任意選択的に、例えば湾曲したプル/隣接接地電極を利用してイオントラップ自体に組み込まれる)と1回目の反射との間に取り付けられ、発散的に動作する、この追加のドリフトフォーカスレンズは、ビームが収束レンズ12に到達する前にイオンビームの発散を制御できるため、有益である。さらに有益なことは、抽出イオントラップ4と1回目の反射との間に取り付けられた追加のドリフトフォーカスレンズを、上述したようにおよび図10の注入光学系方式に示すように、注入偏向器内に取り付けることができる。したがって、特定の実施形態では、イオン集束装置は、ドリフト方向Yのイオンビームを集束させるための、イオンミラーでの1回目の反射の前に位置付けられた第1のドリフトフォーカスレンズであって、発散レンズである、第1のドリフトフォーカスレンズと、ドリフト方向Yのイオンビームを集束するための、イオンミラーでの1回目の反射の後に位置付けられた第2のドリフトフォーカスレンズであって、収束レンズである、第2のドリフトフォーカスレンズと、を備えることができる。発散ドリフトフォーカスレンズは、収束レンズの場合、例えば図7に示すような円形、楕円形、または準楕円形のトランスアキシャルレンズとして、または図8に示す他のタイプのレンズの1つとして構成できる。ただし、発散ドリフトフォーカスレンズは、収束ドリフトフォーカスレンズに異なる電圧が印加され、収束ドリフトフォーカスレンズに異なる集束特性を提供するために、異なる幅のイオンビームに作用することになる。
1回目の反射の後に取り付けられた収束ドリフトフォーカスレンズ12は、イオン偏向器、例えば図7(実施形態C)に示されるプリズムタイプも組み込むことが好ましい。この偏向器を調整して、注入角を所望のレベルに調節したり、および/または、ミラーの機械的偏差によって生じる何らかのビームの偏向を補正したりできる。さらに、ミラーの製造誤差または取り付け誤差は、ビームの一方のイオンが他方よりも短い飛行経路を経るため、反射ごとに小さな飛行時間誤差を引き起こす可能性があり、これらは、上述のミラー間の空間内の2つの補償電極を追加することで補正され得ることが好ましい。
US9,136,101では、低電圧(例えば、約20V)の細長電極(「補償電極」と呼ばれる)を使用して、数百ミクロンのミラー収束により生じる飛行時間誤差を補正している。本発明では、ミラー電極の小さな位置ずれまたは曲率を補正するために、線形のまたは曲線のまたは複雑な関数に従って、同様の電極を使用することができる。1組以上の補償電極を使用することができ、各組は一対の細長電極を含み、一方の電極はイオンビームの上に位置付けられ、一方の電極はイオンビームの下に位置付けられる。複数組の補償電極は、ドリフト方向Yのイオンミラーの長さのほとんどにわたって延在することが好ましい。このような補償電極は、多くの誤差関数で考慮できるが、主要な機械的誤差は、ミラー電極の非平行性および中心付近の湾曲となる可能性が高く、よって、2組の補償電極で十分である。好ましくは、補償電極の各組は、X−Y平面で異なる特性を有する。例えば、一方の組が線形関数に従うX−Y平面の特性を有し、一方の組が曲線関数に従うX−Y平面の特性を有する。2組の補償電極は、好ましくは、イオンミラー間の空間に並べて配置される。バイアスがかかっている場合、線形関数に従うX−Y平面に特性を持つ組は、ミラーの傾きまたは位置ずれを補正することができる。バイアスがかかっている場合、曲線関数に従うX−Y平面に特性を持つ組は、ミラーの曲率を補正することができる。唯一の欠点は、そのような補償電極がイオンビームに不要な偏向を加える場合があることで、それは偏向器、すなわち1回目の反射後にミラー間に位置付けられた偏向器の適切な電圧によって補正できる。
イオン注入光学系、ドリフトフォーカスレンズおよび偏向器、ならびにおよび補償電極を備える好ましい実施形態の例を図11に概略的に示す。この実施形態は、熱エネルギーの典型的な範囲を包含するイオンの軌道65のシミュレーションを示す。図5および図6に示すタイプの平行な細長イオンミラー6とおよび8の間にイオン軌道65によって表されるイオンビームを注入するための抽出イオントラップ4が示されている。イオンビームは、概してX方向で注入されるが、X軸方向に対して2度の小さな傾斜角、すなわちドリフト方向Yに速度成分を有する。このようにして、分析器を通過するジグザグ軌道経路が実現する。イオンビームは、まず注入光学系を通過する。注入光学系は、面外集束用の第1のレンズ64、一体化された楕円ドリフトフォーカスレンズ67が取り付けられた上述のプリズムタイプの偏向器66、および面外集束用の第2のレンズ68を備える。ドリフトフォーカスレンズ67は、好ましくは、発散レンズである。ビームは、第1のミラー6に向かって進行するにつれてイオン注入機(イオントラップ)4を出るときにドリフト方向Yに発散する。ドリフトフォーカスレンズ67は、さらに望ましい発散を提供することができる。イオンは、第1のミラー6でN回のうちの1回目の反射を受け、それにより第2のイオンミラー8に向かって反射される。発散するイオンビームは、ドリフトフォーカスレンズ72に遭遇する。この実施形態のドリフトフォーカスレンズ72は、イオンミラーでの第1の反射の後、第2の反射(すなわち、第2のイオンミラー8での反射)の前に配置される。レンズ72は、上述のプリズムタイプの偏向器76内に取り付けられた上述の楕円ドリフトフォーカスレンズである。第1のドリフトフォーカスレンズ67は、発散レンズである(ドリフト方向Yにビーム幅を発散させる)一方、第2のドリフトフォーカスレンズ72は、収束レンズである(ドリフト方向Yにビーム幅を集束させる)。ドリフトフォーカスレンズ72のイオン集束装置は、ドリフト方向Yのイオンビームの空間的広がりが、0.25N〜0.75Nの回数、好ましくは、1回目の反射とN回目の反射の間のほぼ中間を有する反射時または反射直後に単一の最小値を通過するように、ドリフト方向Yのイオンビームの長い集束を提供する。よって、イオンビームは、好ましくは、イオンフォーカスレンズ72と検出器74との間のイオン経路に沿って実質的に中間である単一の最小値を通過する。2組の補償電極78(1組の湾曲形状78’および1組の線形形状78’’)が、示された実施形態に設けられ、イオンビームがそのジグザグ経路を通過する際にイオンビームの望ましくないビーム偏向(例えば、ミラー構造の機械的偏差または位置ずれまたは望ましくない湾曲によって引き起こされる)を補正する。2組の補償電極78は並んで配置されるが、電気的に接触していない。すなわち、それらの組は、方向Xに互いにずれている。1組の湾曲形状の補償電極78’は、X−Y平面内で曲線特性を有する一対の細長電極(イオンビームの上に1つの電極、イオンビームの下に1つの電極)を備える。1組の線形形状の補償電極78’’は、X−Y平面内で線形特性を有する一対の細長電極(イオンビームの上に1つの電極、イオンビームの下に1つの電極)を備える。図11では、補償電極78’および78’’の各組に対して、対の一方の電極のみが表示されており、対の他方の電極は、示されている電極のすぐ下に配置されている。2つのイオンミラー6、8の間でN回反射した後、イオンは検出器74によって検出される。有利には、ドリフトフォーカスレンズ72の集束特性により、検出器74でのドリフト方向Yのイオンビーム幅は、ドリフトフォーカスレンズ72でのそれと実質的に同じ(例えば、+/−30%、または+/−20%、または+/−10%)であり、イオンミラー間で正確に同じ数N回の反射を完了した後、すべてのイオンが検出される、すなわち、「倍音」は検出されない。さらに、正確に同じ数N回の反射を完了した後のすべてのイオンの検出は、反射システムの初期に、例えば、1回目の反射の後だが4回目、3回目、または2回目の反射の前に位置付けられた単一のフォーカスレンズ(収束レンズ)を使用して、または一対のフォーカスレンズ(収束レンズの上流に配置された発散レンズ)使用して、達成できる。図12は、図11に示した機器構成で、m/z=195の代表的なイオンパケットによって形成された検出器平面での時間(A)およびドリフト空間(B)のイオンピークのシミュレーションを示す。良好なドリフト集束を維持するだけでなく、飛行時間収差の蓄積が制限され、100,000を超える分解能が得られることがわかる。いくつかの実施形態では、イオン経路に沿ってさらなるレンズを含めることが有益であり得る。図11に示す多重反射ToF分光計の形態には、イオン軌道に対して結果として起きる広範な偏向を偏向器および/または補償するための補償電極電圧を調節することによって容易に補正することができるので、ミラーの組み立てと位置合わせにおける機械的誤差に対する耐性が良好であるという利点がある。
イオン注入機(イオントラップ)の直後、好ましくはイオン注入機と1回目の反射の間に発散レンズを配置すると、イオンビームがメインドリフトフォーカスレンズ(収束フォーカスレンズ)に到達する前にイオンビームの拡大を最適化するのに有益であるということがわかっている。よって、「望遠」レンズシステムが好ましい。ビームは最初は非常に狭いため、発散レンズには強い電圧が印加されていることが好ましい。図5、図6、および図11を参照して上述した実施形態では、+750Vの電圧が、−125Vが印加された1回目の反射の後に位置付けられた第2のフォーカスレンズへのイオンビームの拡大を最適化することがわかった。これを説明するために、図13に、単一レンズの構成(A)と2つの望遠レンズの構成(B)において22回の反射にわたるイオン注入トラップ(空間および熱発散がプロットされた)で、ドリフト方向Yに2mm幅の熱イオンビームの拡大を示す。単一レンズの構成(A)では、収束レンズ92は、上述のプリズムタイプの偏向器96内に取り付けられた上述の楕円ドリフトフォーカスレンズである。1回目の反射の前に、注入傾斜角を調節するために第1の偏向器86が設けられているが、発散レンズはない。2つのレンズの構成(B)では、システムは、1回目の反射の前に発散ドリフトフォーカスレンズ87が設けられることを除いて同じあり、レンズ87は、プリズムタイプの偏向器86内に取り付けられた楕円ドリフトフォーカスレンズである。2mmの初期ビーム幅が大きすぎるため、単一レンズの場合(A)、中心軸に沿ってイオン反射が最終的に重なり始めるが、2つのレンズの構成(B)ではそうならないことがわかる。よって、2つのレンズの構成により、より多くの総反射回数Nを使用することが可能になる。いくつかの実施形態では、発散レンズと収束レンズの両方をイオンミラーでの1回目の反射の前に配置することが可能となり得るが、そのような配置は、初期ビーム幅と位相体積および要求されるレンズ電圧の制約のためにあまり好ましくない。
レンズでイオンビームをコリメートすることが難しいのは、イオンが最初から空間およびエネルギーに独立した分布を持っていることに起因する。最初のイオンエネルギーの広がりによる拡大を制御するレンズは、最初の空間的な広がりからの収束を引き起こすことになる。これをなくすことはできないが、ビーム幅を大幅に拡大(または誘導)することで最小化され得る。完全なコリメーションは不可能であるため、フォーカスレンズの後のイオンビームの収束が小さいことが好ましいことがわかっている。イオンビーム経路長を最大化するために、ドリフト方向のイオンビームの空間的広がりは、収束ドリフトフォーカスレンズと検出器の間の中間点で単一の最小値を通過する。最小値の後、イオンビームは、ビームがドリフトフォーカスレンズで持っていたのと同様の空間的広がりで検出器面に衝突するまで発散し始める。集束システムを図14に概略的に示す。イオン注入機104は、イオンがドリフト方向に初期の空間的広がりdxiを有し、イオンをイオンミラー間(例えば、1回目の反射と2回目の反射の間)に配置される収束ドリフトフォーカスレンズ106に注入する。イオンは、イオン注入機104とドリフトフォーカスレンズ106の間に画定されるビーム拡大領域aで発散する。イオンビームは、ドリフトフォーカスレンズ106でドリフト方向Yに最大空間的広がりdx[0]に達する。その後、レンズ106は、位置fでドリフト方向Yに最小焦点(最小空間的広がり)またはゴージ(gorge)へと、収束領域bにわたって収束するようにイオンビームを集束する。位置fでの最小焦点は、ドリフトフォーカスレンズ106と検出器114のほぼ中間の距離で発生する。最小焦点fの後、イオンビームは、検出器114に到達するまで発散領域cにわたって再び発散し、その時点でイオンビームはドリフト方向Yで再びその最大空間的広がりdx[0]に到達する。
ここで、最適化された分析的解決策について説明する。ToF質量分析計の質量分解能は、総飛行長Lに比例することが知られている。図5、図6、図11、および図13で説明したタイプの多重反射ToF質量分析計では、総飛行長L=K×L0であり、式中、Kは、ミラー間の振動数であり、L0は、単振動の長さであり、後者は、ミラー間の距離Wの約2倍である。値Kは、全反射回数(N)の半分の数、すなわち、K=N/2に等しい。1振動あたりのドリフトステップは次のとおりである。
Figure 0006955542
式中、θは、注入角(イオンビームがミラーに入射し、それによりミラー間で反射するときの方向Xに対するイオンビームの角度であり、典型的には約2度である)である。したがって、総ドリフト長DLの振動数は次のとおりである。
Figure 0006955542
これは、ドリフトステップΔDをより小さくする、より小さな注入角を選択することにより増加し得る。それにもかかわらず、ドリフトステップには、隣接する振動間の最小分離によって決定される下限ΔD(min)がある。
ドリフト方向のイオンビームの位相体積はΠで示される。位相体積は、リュービル(Liouville)の定理による軌道に沿って一定であるため、Πは、イオン注入機によって決定され、いかなるコリメーション光学系によっても修正することはできない。ただし、このような光学系は、空間的広がりと角度的広がりの最適な比率と最適な相関を設定することにより、分析器に注入する前にイオンビームを「準備」するのに使用できる。
振動K0上のイオンビームの空間的広がりδx0の最小値が存在する。最初と最後の振動の間のドリフト方向のイオン軌道をコリメートするための光学要素がないため、角度的広がりδαは一定のままで、任意の振動kでの空間的広がりは次のとおりである。
Figure 0006955542
最適化の対象は、ΔDに対する総飛行距離の最大化およびイオンビームの位相分布に存在し、最適化は次の制限に従う。
1)最初の振動の空間的広がりδx[0]≦ΔD/2により、1回目の反射後のイオンビームとイオンソース(またはコリメータ)との重なりを防止する。
2)最後の振動後の空間的広がりδx[K]≦ΔD/2により、最後ではあるが(K−1)回目の振動のイオンビームとイオン検出器との重なりを防止する。
3)ドリフト方向の位相体積は、δx0δα=Πで固定される。
イオンビームのゴージの最適位置(最小の空間的広がり)δx0は中間振動K0=K/2にあり、以下を与えることが容易にわかる。
Figure 0006955542
最適化の場合、不等式は等式に変わり、振動数Kを最大にするための角度的広がりの最適値は、次の方程式で与えられる。
Figure 0006955542
例として、イオン注入機での幅1mm(Y方向)のイオン雲の場合、妥当なミラー間距離とドリフト長は、次のWとDLで与えられる。
Figure 0006955542
値0.025eVは、イオンの(熱)エネルギーの広がりであり、4000eVは、イオン加速電圧である。
Figure 0006955542
したがって、総飛行距離は、次の式で与えられる。
Figure 0006955542
例では、最初の振動の空間的広がりδx[0]と最後の振動後の空間的広がりδx[k]の値が7.6mmであり、この値はシステムの最小空間的広がりδx0である5.45mmの約√2倍であることがわかる。一般に、収束レンズは、ドリフト方向Yのイオンビームの空間的広がりがドリフトフォーカスレンズ(および好ましくはイオン検出器)で最大値(つまり、最小空間的広がりの1.2〜1.6倍、より好ましくは1.3〜1.5倍、または、約√2倍)を有するようにイオンを集束するのが好ましい。
最適化されたシステムを提供するために、イオンビームが、イオン注入機からイオン検出器までのイオンミラー間でK回振動したとき、Kは、好ましくは、以下の式によって与えられる上記最適値であるK(opt)を中心に、+/−50%、または+/−40%、または+/−30%、または+/−20%、または+/−10%の範囲内の値を有する。
Figure 0006955542
同様に、ドリフト集束装置による集束後のイオンビームの角度的広がりδαは、好ましくは、以下の式によって与えられる上記最適値δα(opt)を中心に、+/−50%、または+/−40%、または+/−30%、または+/−20%、または+/−10%の範囲内である。
Figure 0006955542
図15は、この分析的アプローチに基づいて初期のイオンビーム幅δx0、(ミラー)ドリフト長(DL)、およびミラー分離(W)を変えたときの達成可能な飛行経路長への影響を示すグラフを示す。かなり実用的なミラー配置で非常に長い飛行経路を実現できることは明らかである(例えば、長さ1.5m、幅2mの場合、飛行経路は60mになり得る)。グラフは、ミラー分離W(ベース1000mm)での飛行経路長の変化(A)と、ドリフト長DL(ベース500mm)での飛行経路長の変化(B)を示し、それぞれは、異なる初期のイオン群の幅δx0(1mm、2mm、および4mm)に対するものである。
さらなる実施形態では、イオンビームが適度に良好に集束したままである限り、偏向器または偏向器/ドリフトフォーカスレンズの組み合わせ(上述したようなもの)、または他の何らかのビーム方向制御手段を、イオンビームのドリフト速度を反転させるために、イオン注入機が配置されている端からミラーの遠位(遠方)端に配置することが可能である。本明細書では、このような偏向器は、端部偏向器または反転偏向器と呼ばれる。これにより、検出器を配置できるミラーの開始端へとイオンが反射して戻る。これにより、イオンの飛行時間の増倍(例えば、2倍)が可能になる。いくつかの実施形態では、イオンの飛行時間を増倍するために、ビームを再び反転させるために、片側のミラー内に偏向器を有することも可能であり得る。このような端部偏向器または反転偏向器は、好ましくは、広い空間的受容性を有し、等時的に動作する。別の考慮事項は、イオン注入機に近接して検出器を配置すると、空間の制限が生じることである。米国特許US9,136,101に開示されている1つの回避策は、高い注入角でイオンを注入してクリアランスを改善し、1回目の反射後に配置された偏向器を使用してこの注入角を小さくすることである。空間および注入角の問題に対する別の可能な解決策は、US7,326,925に開示されており、そこでは、セクタを使用して小さな角度でイオン注入を実行し、任意選択的に検出器への抽出を行う。別の可能な解決策として、イオンミラーの間隔を広げることがある。
遠位端で反転偏向器を使用するシステムの実施形態を図16に示す。しかしながら、この実施形態は、それらの偏向器の両方からの時間収差が分解能を損なうため、あまり好ましくない。Y=0に配置されるイオン注入機204は、イオンを注入し、それぞれにドリフトフォーカスレンズと一体化された第1および第2の偏向器206は、注入角を調節する。面外レンズ205は、注入光学系でも使用される。第2のドリフトフォーカスレンズは、上述のように、イオン経路に沿った中間にある最小焦点でイオンを集束する。ジグザグ飛行経路に沿ったN/2回の反射後(Nは、イオンがシステム内で受ける総反射回数)、イオンビームのドリフト速度は、イオン注入機204からミラー6,8の遠位端に配置された反転偏向器208によってYに沿って反転する。偏向器208は、上述の台形形状のプリズムタイプである。これにより、ミラーの開始端に向かってイオンが反射して戻り、イオンは、Y=0でイオン注入機204に近接して配置されたイオン検出器210に到達するまで、ジグザグ飛行経路に沿ってさらにN/2回反射する。ミラー長の入口部分でのイオンミラーの収束を偏向器の代わりに使用して、初期注入角を減らすことができる(例えば、US2018/0138026A1に記載されているような減速ステージ)。これは、補償電極と組み合わせて、この第1の偏向器からのタイミング誤差を完全に除去する。US2017/0098533のように、検出器の直前に配置された双極子場で注入角を設定する偏向器からの収差の一部を補正することも可能である。
ビーム反転偏向器は、イオンビームの幅全体で発生する飛行時間収差を最小化するメカニズムを組み込むことが好ましい。ここで、この影響を軽減する2つの方法について説明する。
1つ目の方法は、ビームドリフト反転の前の折り返しでのフォーカスレンズを介したイオンビーム幅の最小化である。レンズは、イオンが反転偏向器に到達する前に通過するように、好ましくは反転偏向器に到達する前に1回反射するように、配置することができる。レンズの電圧は、(比較的広い)イオンビームが反転偏向器内のほぼ1点に集束するように設定することができ、それによってToF収差を最小化する。よって、レンズは、好ましくは、反転偏向器内に点焦点を有する。イオンビームは、図17に示すように、このようなレンズを2回目に通過するときに、ドリフト方向Yに沿った戻り経路で元の幅へと発散する可能性がある。これにより、ビームは、レンズを通過することにより、戻り経路に対してコリメートされる。図17は、ミラーの遠位端近くのビーム反射を概略的に示す。イオンビームの順方向は矢印Fで示され、逆方向は矢印Rで示されている。反転偏向器308は、イオンミラーの遠位端に配置されて示されている。反転偏向器308の電極の台形構造またはプリズムタイプの構造は、イオンビームの上下に配置されて示されている。示された実施形態では楕円形のトランスアキシャルレンズであるイオンドリフトフォーカスレンズ316は、反転偏向器308の前の1回の反射上に配置され、イオンビームを反転偏向器内のほぼ1点に集束するように作用する。次に、イオンビームは戻り経路Rで元の幅に発散し、レンズ316を2回目に通過することによりコリメートされる。例として、上記の実施形態に従って、+300Vの電圧を反転偏向器308に印加し、−160Vの電圧を楕円レンズ316に印加することができる。図18は、反転偏向器を組み込んだ本発明に係る質量分析計を通って進行する±3σの熱発散を伴うイオンのイオン軌道のシミュレーションを示す。イオン注入機、検出器、および偏向器の電圧を適切に調整することにより、200,000を超える分解能を実現できる。第1および第2の偏向器(プリズム偏向器)406は、注入機404からのイオンの初期ドリフトエネルギーを低減し、第3の偏向器408(反転プリズム偏向器)は、イオンドリフトを反転して最小時間収差で検出器に戻す。これらのコンポーネントを使用して高分解能を実現する好ましいシステムは、イオンを分析器に注入し、ドリフト方向Yに平行な焦点面で第2の偏向器から(すなわち、1回目の反射後に)出るようにする。これは、第2の偏向器(プリズム)を通って戻るイオンの戻り経路で不完全に補正される可能性がある何らかの焦点面傾斜を最小化する。これは、イオンソースを適切に配置することによって、例えば、前述の実施形態と比較してイオンソースを元に戻し、イオンをわずかに負のドリフト(例えば−1.5度)でイオンソースから射出して、第1のプリズム偏向器に大きな電圧(例えば、+375V)を印加することによりドリフトを正に変更することによって実現できる。その後、イオンは第2のプリズム偏向器(例えば、電圧−120V)に到達する。これにより、注入角が設定され、焦点面がドリフト軸Yに揃えられる。このアプローチの欠点は、検出器を(焦点面傾斜に)正しく位置合わせするか、または焦点面傾斜補正デバイスを提供することにより補償することができるものの、イオンが第2のプリズム偏向器を通る戻り経路によって引き起こされる線形焦点面傾斜を伴って偏向器に到達する場合があることである。したがって、いくつかの実施形態では、イオンソースは、イオンを負のドリフト方向(ミラーから離れる方向)に射出するように配置され、第1のイオン偏向器(一般には1回目の反射の前)は、イオンを正のドリフト方向に戻す。第2のイオン偏向器(一般には1回目の反射の後)は、イオンビームの傾斜角を調節し、および/またはイオンビームの焦点面をドリフト方向Yに位置合わせする。
反転偏向器の使用に関連する飛行時間収差を最小化するための2つ目の方法は、一体化されたまたは近接した(例えば、反射によって偏向器から分離されない)フォーカスレンズを有する反転偏向器を通る2つの経路を介した飛行経路収差の自己補正を含む。例えば、ドリフト方向Yのイオンを完全に反転させるのに(反対のドリフト方向の速度を与えるのに)必要な電圧の半分で動作する例えばプリズム偏向器などの偏向器は、代わりにイオンのドリフト速度をゼロに低下させることになる。したがって、イオンが偏向器を出て、次の反射のためにイオンミラーに到達すると、イオンは反射して偏向器に戻され、その偏向は、イオンのドリフト速度をゼロから反転ドリフト速度に変更するように作用してこれによりイオン軌道の反転が完了する。例えば先に説明して図7Cに示したように、プリズムタイプの偏向器などの偏向器にフォーカスレンズが組み込まれている場合、またはフォーカスレンズが偏向器のすぐ近くに配置されている場合は、入射する偏向器の反対側にある偏向器へとイオンが戻るときに、偏向器を通過するイオンに対する偏向器の飛行時間収差がある方向と他の方向で相殺されるように、集束が行われ得る。これにより、偏向器/レンズアセンブリは、自己補正型となる。ただし、戻り角は、ビームが、例えばイオン注入機に単に戻るのではなく、検出器に到達するように、注入角からわずかにオフセットするように設計する必要がある。例えば、反転偏向器にわずかにより低い電圧を印加することができる(100%反射よりもわずかに小さい、例えば100%反射ではなく95%を提供するように)。このようなシステムの例を図19に概略的に示す。イオン注入機からドリフト方向に進行するイオンは、まず矢印Aで示すように左側から反転偏向器508に入る。偏向器508は、拡大図に示すように台形のプリズムタイプである。偏向器に印加される電圧(+150V)は、図17および図18に示すように、ドリフト速度を完全に反転させるために印加される電圧の半分である。これにより、イオンのドリフト速度が実質的にゼロまで低下し、イオンはドリフト速度がゼロで次の反射のためにミラー(図示せず)に入る。偏向器は、一体化されたドリフトフォーカスレンズ506(例えば、楕円形)を有する。イオンは、偏向器によってドリフト速度がゼロに低下すると同時に、ミラー内の焦点(好ましくは、ミラー内の方向転換点)に集束される。この実施形態のレンズ506には、電圧−300Vが印加される。反射後、イオンは、発散し始めて偏向器へ再入射するが、この2回目は、矢印Bの方向で示されるように、偏向器の反対側から入射する。これにより、再び偏向が与えられ、この時、イオンのドリフト速度の反転が完了する。同時に、レンズ506は、戻り経路のイオンビームをコリメートするように作用する。
イオンビームを反転させて飛行経路を2倍にするために反転偏向器を使用することは、従来技術で知られているが、これらは分解能を損なう傾向がある。ここで示したより等時的な偏向方法は、飛行時間収差を制限し、分解能を維持するのに有用である。どちらも比較的単純な構造である。この問題は、ミラーの傾斜を偏向器と組み合わせて機能させて収差を相殺すること(US9,136,101)(これは機械的に要求が厳しい)により、または、偏向の収差が小さくなるようにイオンビームを常に周期レンズで圧縮すること(GB2403063)(但し、これは比較的低い空間電荷性能を被る)により、先行技術において取り組まれている。
特許出願US2018−0138026A1では、ドリフト速度を制御して、それにより、分析器の限られた空間内の反射回数を最大化する手段として、分析器のドリフト長の少なくとも一部に沿って湾曲ミラー電極を使用することについて説明されている。図20は、この概念を組み込むために変更された図11の装置を示す。イオン注入システムおよびイオン集束装置は、図11で説明したものと同じである(すなわち、イオン注入機904を備えたもの、面外レンズ964と、一体化されたドリフトフォーカスレンズ967を有する偏向器966と、第2の面外レンズ968と、一体化されたドリフトフォーカスレンズ972を有する偏向器976と、を備えた注入光学系)。ミラー906、908は、例えば、US2018−0138026A1(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、ドリフト方向Yの長さの第1の部分に沿って最初に収束してイオンのドリフト速度を低減する。それらの長さの第1の部分は、イオン注入機に隣接する。ミラーは、ドリフト速度を低減するために、曲線関数に従って最初に収束することが好ましいが、収束は、例えば線形であってもよい。その後、イオンミラーは、平行に(またはほぼ平行に)動作して反射の回数を最大化し、次に発散して異なる反射を分離し、検出器974の空間を最大化する。ミラーは、曲線関数に従って発散することが好ましいが、発散は、例えば線形とすることもできる。収束と発散は一致する(対称的である)必要はなく、その中央領域は、完全に平坦(平行)でさえあってもよい。ミラーの湾曲(またはその逆)に一致する形状の1組の細長飛行時間補正電極978(1つがイオンビームの上にあり、1つがイオンビームの下にある)は、好ましくはイオンミラー間の中央に位置付けられて、ミラー曲率の飛行時間収差を補正する。4kVイオンの2度の注入角の場合、一部のイオンのドリフト反射を防ぐために、ミラー収束(最長のミラー分離と最短の分離との差)を600μm未満にする必要がある。より強く収束および発散する領域は、好ましくは、イオン散乱を防ぐために多重反射を組み込む(偏向は断熱状態のままである)。US2018−0138026A1に説明されているように、ミラーの収束によるイオンドリフト速度の低減は、滑らかに湾曲したミラーではなく、平坦な角度のミラー表面で実現できる。ミラー内の折り返し回数を最大化するためにミラー収束/発散を使用することは明らかに有利であるが、ドリフト次元でイオンビームが集束しないという代償が伴う。より高次のガウス関数を使用しても、ドリフト集束が維持できなくなる前に、シミュレーションではドリフト速度のわずかな低減(約25%)が実現可能であることがわかった。収束ミラー方法は、US9,136,101に開示されているが、イオンの反転が必要であり、検出器とイオンソースとをミラー間の同じ空間に配置することを伴うため、本明細書で説明される実施形態では必要とされない。同様の結果を達成するための別の方法は、ドリフト方向Yのミラー間の距離に収束/発散を適用することであるが、ドリフト方向Yのイオンミラーの中心に向かう/から離れる電極の開口の高さ(Z方向のミラー開口の高さ)を低減/増加することになる。第三の方法は、Yの中心に向かって(ドリフト方向Yのイオンミラーの中心またはイオンビーム経路の中間点に向かって)(正イオンの)電位を増加させ、かつそれをドリフト終点に向かって(イオンミラーの端またはイオンビーム経路の始端と終端に向かって)減少させるように、WO2019/030472A1に記載されているように、ミラー内の追加電極、例えばミラーの電極間にある1つ以上の追加電極を介して摂動電位を印加することにより、ミラー場を摂動することになる。負のイオンの場合、このような電位の方向は逆になる。例として、(WO2019/030472A1の図3に示すように)イオンミラー電極間に配置された追加のくさび形電極を使用して、摂動電位を提供することができる。電極のくさび形の範囲はドリフト方向Yに沿って変化するため、その摂動電位も変化する。あるいは、ドリフト方向Yに沿って変化する摂動電位を提供するまっすぐの(くさびなし)追加電極を使用できる。先行技術に開示されていない同様の形態の補正または補償電極は、一つのミラーまたは各ミラーの裏に沿って延在する電極、例えば、ドリフト方向Yに沿って高さが増加する(およびそれによりイオンミラーの反射部分の電圧摂動も増加する)くさび形電極である。このような電極は、ドリフトと比較して、飛行時間を不均衡にし、そのため、ミラー間で機能マッチングストライプ形状の補償電極と組み合わせて2つの特性のバランスをとるのが最善かもしれない。しかしながら、このような電極は一般に、電場が指数関数的にミラーの裏へ貫通し、高エネルギーのイオンを不均衡にし、結果としてミラーによるエネルギー受容の損失につながるため、好ましくない。
本発明の多重反射質量分析計は、画像化用途のためにレーザアブレーション、MALDIなどの点イオンソースと組み合わせてもよく、各質量スペクトルは、ソース点に対応し、画像は、多くの点および対応する質量スペクトルにわたって構築される。したがって、いくつかの実施形態では、イオンは、イオンソースのサンプル上の空間的に離れた複数の点から順番に生成され、各点からサンプルを画像化するために質量スペクトルが記録される。図17の偏向器を組み込んだ図16に示すシステムを参照すると、その特性の1つは、システムの端のイオン位置がイオンソースのイオン位置に強く関連していることである。これは、長距離焦点レンズと反転偏向器を備えた多重反射ToF分析器が、画像化検出器(例えば、2D検出器アレイまたは画素検出器)による「無収差結像」に適し得ることを示す。ソース表面に沿った領域内のイオン分布をイオンの1回の抽出で画像化し得る。図21に、初期の空間およびエネルギー成分の変動を伴うイオンのシミュレートされた軌道が、エネルギー集束を有する検出面に戻る様子を示す。その焦点は、エネルギーに関して調整可能である。イオンは、1点からソース面1004を離れ、図11および図16に示す構成の第1の偏向器/レンズ構成1006と第2の偏向器/レンズ構成1008とを備えたイオン集束装置を通過する。イオンの初期の方向を矢印Aで示し、反転偏向器(図示せず)によってドリフト方向Yに反転された後の戻りイオンビームを矢印Bで示している。イオンは、検出器(図示せず)が近接して配置され得る対応する点でソース平面に戻る。
上記の実施形態は、超高分解能ToF計器としてだけでなく、低コストかつ中堅性能の分析計としても実装することができる。例えば、イオンエネルギーが、したがって印加電圧が数キロボルトを超えない場合、ミラーおよび/または補償電極のアセンブリ全体は、プリント面が互いに平行かつ対向した状態で配置され、好ましくは平坦かつFR4ガラスが充填されたエポキシもしくはセラミック製であり、金属スペーサにより離隔されて、ダボにより位置合わせされた、一対のプリント回路基板(PCB)として実装することができる。PCBは、より弾性に富んだ材料(金属、ガラス、セラミック、ポリマー)に接着、または別の方法で固定されてもよく、そのようにしてシステムをより剛性にする。好ましくは、各PCB上の電極は、故障に対する十分な分離を提供するレーザ切開された溝により画定され、同時に内側の誘電体を著しく露出させない。電気接続は、イオンビームに面していない裏面を介して実装され、抵抗分圧器または電源全体を一体化させてもよい。
実践的な実装の場合、ドリフト方向Yへのミラーの伸長は、設計の複雑性およびコストを低減するために長過ぎてはいけない。好ましくは、例えば端部電極(好ましくは、最も近いイオン軌道からZ方向のミラーの高さの少なくとも2〜3倍の距離に配置される)または非常に細長ミラーの電位分布を模倣する端部PCBを使用して周縁電場を補償するための手段を提供する。前者の場合、電極は、ミラー電極と同じ電圧を使用してもよく、適切な形状の平坦なプレートとして実装され、ミラー電極に取り付けられてもよい。
いくつかの実施形態における本発明に係る分析計は、第2の質量分析計におけるフラグメンテーションおよびMS2分析のために特定の質量電荷比の前駆体イオンを選択するための高分解能質量選択デバイスとして使用され得る。例えば、US9,136,101の図15に示されている方法がある。
特許請求の範囲内を含む、本明細書において使用される際、特に文脈が示さない限り、本明細書における用語の単数形は、複数形を含むものとして解釈され、逆の場合も同様である。例えば、特に文脈が示さない限り、特許請求の範囲内を含む本明細書における単数形の指示語、「a」または「an」などは、「1つ以上」を意味する。
本明細書の記載および特許請求の範囲全体を通して、単語「備える(comprise)」、「含む」、「有する」、および「含有する」、ならびにそれらの単語の変形、例えば、「備えている(comprising)」および「備える(comprises)」などは、「限定されるものではないが、〜を含む」を意味し、他の構成要素を排除することを意図しない(および排除しない)。
本発明の前述の実施形態に対する変形は、特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内に依然として含まれて実施され得ることが理解されるであろう。本明細書に開示される各特徴は、特に明記されない限り、同じ、同等、または類似の目的を果たす代替の特徴と置き換えられてもよい。それゆえ、特に明記されない限り、開示される各特徴は、包括的な一連の同等または類似の特徴の単なる一例である。
本明細書において提供される任意のおよび全ての例、または例示的な言い回し(「例えば(for instance)」、「例えば〜など(such as)」、「例えば(for example)」、および同様の言い回し)の使用は、単に、発明をより良く例示することを意図し、特に特許請求されない限り、本発明の範囲への限定を示すものではない。本明細書におけるいずれの言い回しも、本発明の実施に不可欠なものとして任意の特許請求されない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
本発明はまた、特定の実施形態における以下の実施形態に関する。
1.方向Xに互いに間隔をあけて対向する2つのイオンミラー間の空間にイオンを注入することであって、各ミラーが概してドリフト方向Yに沿って延び、ドリフト方向Yが方向Xに直交し、イオンがX方向に対してゼロ以外の傾斜角で空間に入り、それにより、イオンが、ドリフト方向Yに沿ってドリフトしながら方向Xにイオンミラー間でN回の反射を有するジグザグイオン経路をたどるイオンビームを形成する、注入することと、
ドリフト方向Yのイオンビームの空間的広がりが0.25N〜0.75Nの回数の反射時にまたは反射直後に単一の最小値を通過するように、対向イオンミラー間に少なくとも部分的に配置されたイオン集束装置を使用して、ドリフト方向Yのイオンビームを集束することであって、検出されたすべてのイオンが、イオンミラー間で同じ数N回の反射を完了した後に検出される、集束することと、
イオンがイオンミラー間で同じ数N回の反射を完了した後にイオンを検出することと、を含む、質量分析方法。
2.集束することにより、1回目の反射のドリフト方向のイオンビームの空間的広がりが、N回目の反射のドリフト方向のイオンビームの空間的広がりと実質的に同じになる、実施形態1に記載の質量分析方法。
3.集束することにより、ドリフト方向Yのイオンビームの空間的広がりが、イオン集束装置と検出器との間のイオン経路に沿って実質的に中間にある単一の最小値を通過する、実施形態1または2に記載の質量分析方法。
4.イオンビームが、イオンミラー間でK回振動し、Kが、以下の式によって与えられる最適値K(opt)を中心に、+/−50%、または+/−40%、または+/−30%、または+/−20%、または+/−10%の範囲内の値であり、
Figure 0006955542
式中、DLは、ドリフト方向Yのイオンビームが進行するドリフト長であり、Πは、Π=δαi.δxiであり、δαiが、初期の角度的広がりであり、δxiが、イオンビームの初期の空間的広がりである、位相体積であり、Wは、X方向のイオンミラー間の距離である、実施形態1〜3のいずれか一項に記載の質量分析方法。
5.集束後のイオンビームの角度的広がりδαが、以下の式によって与えられる最適値δα(opt)を中心に、+/−50%、または+/−40%、または+/−30%、または+/−20%、または+/−10%の範囲内である、実施形態1〜4のいずれか一項に記載の質量分析方法。
Figure 0006955542
6.集束することは、イオンミラーでの0.25N未満の回数の反射の前に配置されたイオン集束装置を使用して実施される、実施形態1〜5のいずれか一項に記載の質量分析方法。
7.イオン注入機におけるドリフト方向Yのイオンビームの初期の空間的広がりδxiは、0.25〜10mmまたは0.5〜5mmである、実施形態1〜6のいずれか一項に記載の質量分析方法。
8.イオン集束装置が、イオンミラーでの1回目の反射の後かつイオンミラーでの5回目の反射の前に位置付けられたドリフトフォーカスレンズを備える、実施形態1〜7のいずれか一項に記載の質量分析方法。
9.イオンミラーでの1回目の反射の後かつイオンミラーでの5回目の反射の前に位置付けられた偏向器を使用してイオンビームを偏向することをさらに含む、実施形態1〜8のいずれか一項に記載の質量分析方法。
10.イオン集束装置が、ドリフト方向Yのイオンビームを集束させるための、イオンミラーでの1回目の反射の前に位置付けられた第1のドリフトフォーカスレンズであって、発散レンズである、第1のドリフトフォーカスレンズと、ドリフト方向Yのイオンビームを集束するための、イオンミラーでの1回目の反射の後に位置付けられた第2のフォーカスレンズであって、収束レンズである、第2のドリフトフォーカスレンズと、を備える、実施形態1〜9のいずれか一項に記載の質量分析方法。
11.イオンミラーでの1回目の反射の前に位置付けられた注入偏向器を使用してイオンビームを偏向することにより、イオンビームのX方向に対する傾斜角を調整することをさらに含む、実施形態1〜10のいずれか一項に記載の質量分析方法。
12.ミラー間の空間内または空間に隣接してドリフト方向Yの少なくとも一部に沿って延在する1つ以上の補償電極のそれぞれに1つ以上の電圧を印加して、飛行時間収差を最小化することをさらに含む、実施形態1〜11のいずれか一項に記載の質量分析方法。
13.注入からイオンミラーの遠位端にある反転偏向器を使用してイオンビームを偏向して、方向Yのイオンのドリフト速度を低減または反転させることをさらに含む、実施形態1〜12のいずれか一項に記載の質量分析方法。
14.イオンビームを反転偏向器内の最小焦点に集束することをさらに含む、実施形態13に記載の質量分析方法。
15.反転偏向器内にフォーカスレンズを提供し、反転偏向器の後の次の反射でイオンビームをイオンミラーのうちの1つ内の最小焦点に集束することをさらに含む、実施形態13に記載の質量分析方法。
16.検出することが、イオンソースの2D画像を形成することを含む、実施形態1〜12のいずれか一項に記載の質量分析方法。

Claims (33)

  1. 多重反射質量分析計であって、
    方向Xに互いに間隔をあけて対向する2つのイオンミラーであって、各イオンミラーが概してドリフト方向Yに沿って延び、前記ドリフト方向Yが前記方向Xに直交する、前記2つのイオンミラーと、
    前記イオンミラー間の空間にイオンのパルスを注入するためのパルスイオン注入機であって、前記イオンが前記方向Xに対してゼロ以外の傾斜角で前記空間に入り、それにより、前記イオンが、前記ドリフト方向Yに沿ってドリフトしながら前記方向Xにおいて前記イオンミラー間でN回の反射を有するジグザグイオン経路をたどるイオンビームを形成する、前記パルスイオン注入機と、
    前記イオンミラー間で同じ数N回の反射を完了した後のイオンを検出するための検出器と、
    前記ドリフト方向Yの前記イオンビームの空間的広がりが0.25N〜0.75Nの回数の反射時にまたは反射直後に単一の最小値を通過するように、対向する前記イオンミラー間に少なくとも部分的に配置され、前記ドリフト方向Yの前記イオンビームの集束を提供するように構成されたイオン集束装置と、を備え、検出されたすべてのイオンは、前記イオンミラー間で同じ数N回の反射が完了した後に検出される、多重反射質量分析計。
  2. 1回目の反射の前記ドリフト方向の前記イオンビームの空間的広がりが、N回目の反射の前記ドリフト方向の前記イオンビームの空間的広がりと実質的に同じである、請求項1に記載の多重反射質量分析計。
  3. 前記ドリフト方向Yの前記イオンビームの空間的広がりが、前記イオン集束装置と前記検出器との間の前記ジグザグイオン経路に沿って実質的に中間にある単一の最小値を通過する、請求項1または2に記載の多重反射質量分析計。
  4. 前記イオン集束装置が、前記ドリフト方向Yの前記イオンを集束するドリフトフォーカスレンズまたは一対のドリフトフォーカスレンズを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の多重反射質量分析計。
  5. 少なくとも1つのドリフトフォーカスレンズは収束レンズである、請求項4に記載の多重反射質量分析計。
  6. 前記ドリフト方向Yの前記イオンビームの空間的広がりが、前記収束レンズにおいて、最小値における空間的広がりの1.2〜1.6倍、または約√2倍である最大値を有するように、前記収束レンズはイオンを集束する、請求項5に記載の多重反射質量分析計。
  7. 前記ドリフト方向Yの前記イオンビームの空間的広がりが、前記収束レンズにおいて、前記パルスイオン注入機における前記ドリフト方向Yの前記イオンビームの初期の空間的広がりの2倍〜20倍の範囲内である最大値を有する、請求項5または6に記載の多重反射質量分析計。
  8. 前記イオンビームが、前記パルスイオン注入機から前記検出器までの前記イオンミラー間でK回振動し、Kが、以下の式によって与えられる最適値K(opt)を中心に、+/−50%、または+/−40%、または+/−30%、または+/−20%、または+/−10%の範囲内の値であり、
    Figure 0006955542
    式中、DLは、前記ドリフト方向Yの前記イオンビームが進行するドリフト長であり、Πは、Π=δαi.δxiとなる位相体積であり、δαiは、前記パルスイオン注入機での前記イオンビームの初期の角度的広がりであり、δxiは、前記パルスイオン注入機での前記イオンビームの初期の空間的広がりであり、Wは、前記方向Xの前記イオンミラー間の距離である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の多重反射質量分析計。
  9. 前記イオン集束装置による集束後の前記イオンビームの角度的広がりδαが、以下の式によって与えられる最適値δα(opt)を中心に、+/−50%、または+/−40%、または+/−30%、または+/−20%、または+/−10%の範囲内である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の多重反射質量分析計。
    Figure 0006955542
  10. 前記イオン集束装置が、前記イオンミラーでの0.25N未満の回数の反射の前に配置される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の多重反射質量分析計。
  11. 前記パルスイオン注入機での前記ドリフト方向Yの前記イオンビームの初期の空間的広がりδxiが、0.25〜10mmまたは0.5〜5mmである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の多重反射質量分析計。
  12. 前記イオン集束装置が、前記イオンミラーでの1回目の反射の後かつ5回目の反射の前に位置付けられたドリフトフォーカスレンズを備える、請求項1〜11のいずれか一項に記載の多重反射質量分析計。
  13. 前記イオン集束装置が、前記イオンミラーでの1回目の反射の後かつ前記イオンミラーでの2回目の反射の前に位置付けられたドリフトフォーカスレンズを含む、請求項12に記載の多重反射質量分析計。
  14. 前記ドリフトフォーカスレンズが、前記1回目の反射と前記検出器との間に位置付けられた唯一のドリフトフォーカスレンズである、請求項12または13に記載の多重反射質量分析計。
  15. 前記ドリフトフォーカスレンズが、トランスアキシャルレンズを備え、前記トランスアキシャルレンズが、方向Zの前記イオンビームの両側に位置付けられた一対の対向レンズ電極を備え、前記方向Zが方向Xおよび方向Yに垂直である、請求項12〜14のいずれか一項に記載の多重反射質量分析計。
  16. 前記対向レンズ電極のそれぞれは、円形、楕円形、準楕円形、または円弧形の電極を含む、請求項15に記載の多重反射質量分析計。
  17. 前記一対の対向レンズ電極のそれぞれは、湾曲した縁部を有する電極によって生成される像面湾曲を模倣する抵抗器チェーンによって分離された電極のアレイを含む、請求項15に記載の多重反射質量分析計。
  18. 前記ドリフトフォーカスレンズが、多重極ロッドアセンブリまたはアインツェルレンズを含む、請求項15に記載の多重反射質量分析計。
  19. 前記対向レンズ電極が、電気的に接地されたアセンブリ内にそれぞれ配置されている、請求項15または18のいずれかに記載の多重反射質量分析計。
  20. 前記対向レンズ電極が、偏向器電極内にそれぞれ配置されている、請求項15〜19のいずれか一項に記載の多重反射質量分析計。
  21. 前記偏向器電極が、前記イオンビームの偏向器として作用する外側台形形状を有する、請求項20に記載の多重反射質量分析計。
  22. 前記イオン集束装置が、前記ドリフト方向Yの前記イオンビームを集束させるために前記イオンミラーでの1回目の反射の前に位置付けられ、発散レンズである第1のドリフトフォーカスレンズと、前記ドリフト方向Yの前記イオンビームを集束するために前記イオンミラーでの前記1回目の反射の後に位置付けられ、収束レンズである第2のドリフトフォーカスレンズと、を備える、請求項1〜21のいずれか一項に記載の多重反射質量分析計。
  23. 前記イオン集束装置が、前記イオンミラーでの1回目の反射の前に位置付けられた少なくとも1つの注入偏向器を備える、請求項1〜22のいずれか一項に記載の多重反射質量分析計。
  24. 前記第1のドリフトフォーカスレンズが、前記少なくとも1つの注入偏向器内に配置されている、請求項22に従属する請求項23に記載の多重反射質量分析計。
  25. 前記イオンビームの前記方向Xに対する傾斜角が、前記方向Xに対する前記パルスイオン注入機からのイオン放出の角度および/または前記注入偏向器によって引き起こされる偏向によって決定される、請求項23または24に記載の多重反射質量分析計。
  26. 飛行時間収差を最小化するために、前記イオンミラー間の前記空間内または前記空間に隣接して前記ドリフト方向Yの少なくとも一部に沿って延在する1つ以上の補償電極をさらに備える、請求項1〜25のいずれか一項に記載の多重反射質量分析計。
  27. 前記ドリフト方向Yの前記イオンのドリフト速度を低減または反転させるための、前記パルスイオン注入機から前記イオンミラーの遠位端に配置された反転偏向器をさらに備える、請求項1〜26に記載の多重反射質量分析計。
  28. 前記イオンビームを前記反転偏向器内の最小焦点に集束するために、前記反転偏向器よりも1、2、または3反射前で前記イオンミラー間に配置されたさらなるドリフトフォーカスレンズをさらに備える、請求項27に記載の多重反射質量分析計。
  29. 前記反転偏向器の後の次の反射で前記イオンビームを前記イオンミラーのうちの1つ内の最小焦点に集束するために、前記反転偏向器内に位置付けられたさらなるドリフトフォーカスレンズをさらに備える、請求項27に記載の多重反射質量分析計。
  30. 前記検出器が、前記パルスイオン注入機から前記ドリフト方向Yの前記イオンミラーの反対端に配置され、前記イオンミラーは、前記イオンが前記検出器に向かって進行するにつれて前記ドリフト方向Yにおける前記イオンミラーの長さの一部に沿って互いから離れる、請求項29に記載の多重反射質量分析計。
  31. 前記パルスイオン注入機に最も近い前記イオンミラーの端部から始まり、前記イオンミラーが前記ドリフト方向Yにおける前記イオンミラーの長さの第1の部分に沿って互いに向かって収束し、前記ドリフト方向Yにおける前記イオンミラーの長さの第2の部分に沿って互いから離れ、前記長さの第2の部分が前記検出器に隣接している、請求項30に記載の多重反射質量分析計。
  32. 前記検出器が、画像化検出器である、請求項1〜31のいずれか一項に記載の多重反射質量分析計。
  33. 方向Xに互いに間隔をあけて対向する2つのイオンミラー間の空間にイオンを注入することであって、各イオンミラーが概してドリフト方向Yに沿って延び、前記ドリフト方向Yが前記方向Xに直交し、前記イオンが前記方向Xに対してゼロ以外の傾斜角で前記空間に入り、それにより、前記イオンが、前記ドリフト方向Yに沿ってドリフトしながら前記方向Xにおいて前記イオンミラー間でN回の反射を有するジグザグイオン経路をたどるイオンビームを形成する、前記注入することと、
    前記ドリフト方向Yの前記イオンビームの空間的広がりが0.25N〜0.75Nの回数の反射時にまたは反射直後に単一の最小値を通過するように、対向する前記イオンミラー間に少なくとも部分的に配置されたイオン集束装置を使用して、前記ドリフト方向Yの前記イオンビームを集束することであって、検出されたすべてのイオンが、前記イオンミラー間で同じ数N回の反射を完了した後に検出される、前記集束することと、
    前記イオンが前記イオンミラー間で同じ数N回の反射を完了した後にイオンを検出することと、を含む、質量分析方法。
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