以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの製造方法においては、透明基板上に、ハーフトーン位相シフト膜の一部又は全部として、1又は2以上のケイ素を含有するターゲットと、不活性ガスと、窒素を含有する反応性ガスとを用いる反応性スパッタにより、遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層を成膜してハーフトーン位相シフト膜を形成する。本発明では、この遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層を成膜する工程において、チャンバー内に導入する反応性ガス流量を、増加させた後減少させることにより掃引したとき、反応性ガス流量と、反応性ガス流量の掃引によりケイ素を含有するターゲットのいずれかのターゲット、好ましくはケイ素含有率が最も高いターゲットで測定されるスパッタ電圧値(ターゲット電圧値)又はスパッタ電流値(ターゲット電流値)とにより形成されるヒステリシス曲線により、成膜条件(スパッタ条件)を設定する。なお、ケイ素含有率が最も高いターゲットが2以上存在する場合は、より導電性の低いターゲットで測定されるスパッタ電圧値(ターゲット電圧値)又はスパッタ電流値(ターゲット電流値)とにより形成されるヒステリシス曲線により、成膜条件(スパッタ条件)を設定することが好適である。
真空又は減圧下で、チャンバー内で、ターゲットと不活性ガスと反応性ガスとを用いて反応性スパッタを実施すると、ターゲットに印加する電力と不活性ガスの流量を一定として、反応性ガス未供給の状態から反応性ガスの流量を徐々に増加させると、反応性ガスが増加するに従って、スパッタ電圧(ターゲット電圧)が徐々に減少する。この電圧の減少は、始めは徐々に(小さい傾斜で)減少し、その後、急激に(大きい傾斜で)減少する領域を経て、再び徐々に(小さい傾斜で)減少する挙動を示す。一方、反応性ガスの流量を増加させて、上述した電圧が再び徐々に減少する領域を経たのち、反転させて反応性ガスの流量を減少させると、反応性ガスが減少するに従って、スパッタ電圧が徐々に増加する。この電圧の増加は、始めは徐々に(小さい傾斜で)増加し、その後、急激に(大きい傾斜で)増加する領域を経て、再び徐々に(小さい傾斜で)増加する挙動を示す。しかしながら、反応性ガスの流量を増加させたときのスパッタ電圧と、反応性ガスの流量を減少させたときのスパッタ電圧とは、上述した急激に(大きい傾斜で)減少及び増加する領域において一致せず、反応性ガスの流量を減少させたときのスパッタ電圧の方が低く測定される。
また、真空又は減圧下で、チャンバー内で、ターゲットと不活性ガスと反応性ガスとを用いて反応性スパッタを実施すると、ターゲットに印加する電力と不活性ガスの流量を一定として、反応性ガス未供給の状態から反応性ガスの流量を徐々に増加させると、反応性ガスが増加するに従って、スパッタ電流(ターゲット電流)が徐々に増加する。この電流の増加は、始めは徐々に(小さい傾斜で)増加し、その後、急激に(大きい傾斜で)増加する領域を経て、再び徐々に(小さい傾斜で)増加する挙動を示す。一方、反応性ガスの流量を増加させて、上述した電流が再び徐々に増加する領域を経たのち、反転させて反応性ガスの流量を減少させると、反応性ガスが減少するに従って、スパッタ電流が徐々に減少する。この電流の減少は、始めは徐々に(小さい傾斜で)減少し、その後、急激に(大きい傾斜で)減少する領域を経て、再び徐々に(小さい傾斜で)減少する挙動を示す。しかしながら、反応性ガスの流量を増加させたときのスパッタ電流と、反応性ガスの流量を減少させたときのスパッタ電流とは、上述した急激に(大きい傾斜で)増加及び減少する領域において一致せず、反応性ガスの流量を減少させたときのスパッタ電流の方が高く測定される。
このように、反応性スパッタにおいては、ターゲットに印加する電力と不活性ガスの流量を一定として、チャンバー内に導入する反応性ガス流量を、増加させた後減少させることにより掃引したとき、反応性ガス流量と、反応性ガス流量の掃引により測定されるスパッタ電圧値又はスパッタ電流値が、反応性ガスを増加させたときと減少させたときとで一致せず、磁気ヒステリシス曲線(B−H曲線)として知られているヒステリシス曲線に類似した、いわゆるヒステリシスを示し、例えば、図3、4に示されるようなヒステリシス曲線が形成される。
反応性ガスの流量を増加させたときのスパッタ電圧又はスパッタ電流と、反応性ガスの流量を減少させたときのスパッタ電圧又はスパッタ電流とにより、ヒステリシスを示す範囲(ヒステリシス領域)が形成されるが、この領域において、反応性ガスの流量の下限及び上限は、反応性ガスの流量を増加させたときのスパッタ電圧値又はスパッタ電流値と、反応性ガスの流量を減少させたときのスパッタ電圧値又はスパッタ電流値とが、実質的に一致した点とすることができ、例えば、
反応性ガス流量増加時のスパッタ電圧値をVA、反応性ガス流量減少時のスパッタ電圧値をVDとしたとき、下記式(1−1)
(VA−VD)/{(VA+VD)/2}×100 (1−1)
で求められる変化率、又は
反応性ガス流量増加時のスパッタ電流値をIA、反応性ガス流量減少時のスパッタ電流値をIDとしたとき、下記式(1−2)
(ID−IA)/{(IA+ID)/2}×100 (1−2)
で求められる変化率
が、ヒステリシス領域の中央部から下限側又は上限側に向かって徐々に減少して、例えば1%以下となった点、特に、実質的にほとんどゼロになった点を、ヒステリシス領域(遷移領域)の反応性ガスの流量の下限又は上限とすることができる。
ヒステリシス領域の反応性ガス流量の下限におけるスパッタ電圧値VL及びヒステリシス領域の反応ガス流量の上限におけるスパッタ電圧値VHには、各々の、反応性ガスの流量を増加させたときのスパッタ電圧と、反応性ガスの流量を減少させたときのスパッタ電圧との平均値を適用することができる。また、ヒステリシス領域の反応性ガス流量の下限におけるスパッタ電流値IL及びヒステリシス領域の反応性ガスの上限におけるスパッタ電流値IHには、各々の、反応性ガスの流量を増加させたときのスパッタ電流と、反応性ガスの流量を減少させたときのスパッタ電流との平均値を適用することができる。
本発明においては、ヒステリシス曲線において、反応性ガス流量がヒステリシス領域の下限以下の領域をメタルモード、反応性ガス流量がヒステリシス領域の上限以上の領域を反応モード、メタルモードと反応モードの間の領域を遷移モードとする。ヒステリシス領域の反応性ガス流量の下限以下であるメタルモードでは、スパッタ中、ターゲットの表面のエロージョン部が、反応性ガスとの反応物に覆われていない状態に保たれていると考えられる。また、ヒステリシス領域の反応性ガス流量の上限以上である反応モードでは、スパッタ中、ターゲットの表面が反応性ガスと反応し、ターゲットの表面が反応性ガスとの反応物で完全に覆われている状態と考えられる。一方、ヒステリシス領域の反応性ガス流量の下限を超えて上限未満である遷移モードでは、ターゲットの表面のエロージョン部の一部が反応性ガスとの反応物で覆われている状態と考えられる。
本発明は、
ヒステリシス領域の反応性ガス流量の下限におけるスパッタ電圧値VLと、ヒステリシス領域の反応性ガス流量の上限におけるスパッタ電圧値VHとから、下記式(2−1)
(VL−VH)/{(VL+VH)/2}×100 (2−1)
で求められる変化率、又は
ヒステリシス領域の反応性ガス流量の下限におけるスパッタ電流値ILと、ヒステリシス領域の反応性ガス流量の上限におけるスパッタ電流値IHとから、下記式(2−2)
(IH−IL)/{(IL+IH)/2}×100 (2−2)
から求められる変化率
が5%以上、特に15%以上であるヒステリシス曲線が形成される場合において、特に効果的である。
また、本発明は、
ヒステリシス領域の反応性ガス流量の下限におけるスパッタ電圧値VLと、ヒステリシス領域の反応性ガス流量の上限におけるスパッタ電圧値VHとの差に対し、ヒステリシス領域の反応性ガス流量の下限と上限との平均値における、反応性ガス流量の増加時に示されるスパッタ電圧値VAと、反応性ガス流量の減少時に示されるスパッタ電圧値VDとの差の絶対値、又は
ヒステリシス領域の反応性ガス流量の下限におけるスパッタ電流値ILと、ヒステリシス領域の反応性ガス流量の上限におけるスパッタ電流値IHとの差に対し、ヒステリシス領域の反応性ガス流量の下限と上限との平均値における、反応性ガス流量の増加時に示されるスパッタ電流値IAと、反応性ガス流量の減少時に示されるスパッタ電流値IDとの差の絶対値
が5%以上、特に10%以上であるヒステリシス曲線が形成される場合において、特に効果的である。
なお、メタルモード及び反応モードでは、いずれも、反応性ガスの流量を増加させたときのスパッタ電圧値又はスパッタ電流値と、反応性ガスの流量を減少させたときのスパッタ電圧値又はスパッタ電流値とは、実質的に一致している。
フォトマスクブランクにおいて、膜の面内の均一性は重要である。ハーフトーン位相シフト膜には、ケイ素を含んだものが用いられており、遷移金属とケイ素を含んだ膜においては、膜にある程度透過率をもたせるために、酸素や窒素などを添加する必要があり、その場合、所定の位相差で所定の透過率となる遷移金属及びケイ素含有膜を形成するためには、遷移モードで成膜する必要がある場合がある。しかし、遷移モード内での成膜は、面内の均一性が低下しやすい。特に、遷移金属とケイ素を含んだ膜においては、遷移金属の含有率を低くして、透過率を所定の値とするときには、遷移モードでの成膜が必要になる。
本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの製造方法では、遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層を成膜する工程において、ヒステリシスを示す反応性ガス流量の下限を超えて上限未満の範囲に相当する領域におけるスパッタ状態でスパッタする遷移モードスパッタ工程を含み、遷移モードスパッタ工程の一部又は全体において、ターゲットに印加する電力、不活性ガス流量及び反応性ガス流量から選ばれる1又は2以上の成膜条件、特に反応性ガス流量を、好ましくは遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層の組成が膜厚方向に変化するように、連続的又は段階的に、好ましくは連続的に、より好ましくは遷移モードによるスパッタの全体において連続的に、増加又は減少させることによりハーフトーン位相シフト膜を形成する。特に遷移金属の含有率を低くした遷移金属とケイ素と窒素とを含有するハーフトーン位相シフト膜にあっては、所定の位相差及び透過率を満たし、特に、波長193nmの露光光に対して、位相差が170〜190°の範囲で、透過率が2〜12%であり、かつ上述したような高い面内均一性を有する膜を、膜厚を70nm以下、特に67nm以下として得ることは困難であったが、ハーフトーン位相シフト膜をこのように成膜することにより、位相差、透過率等の光学特性などにおいて、その面内均一性が良好となる。具体的には、例えば、ハーフトーン位相シフト膜の、位相差の面内分布の最大値と最小値との差を3°以下、特に2°以下、とりわけ1°以下とすることができ、また、透過率の面内分布の最大値と最小値との差を面内平均値の5%以下、特に4%以下、とりわけ3%以下とすることができる。
この遷移モードスパッタ工程による成膜は、ハーフトーン位相シフト膜を単層で構成する場合は、この単層全体が、ハーフトーン位相シフト膜を多層で構成する場合は、後述する表面酸化層を設ける場合はこの表面酸化層を除き、膜厚の10%以上、特に20%以上、とりわけ25%以上を、遷移モードスパッタ工程による成膜とすることが好ましい。
特に、遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層を成膜する工程を遷移モードスパッタ工程のみで構成すると、良好な膜の面内均一性を得ることができ、例えば、露光光に対して位相差170〜190°の膜、特に、遷移金属とケイ素と窒素とからなる膜又は遷移金属とケイ素と窒素と酸素とからなる膜の場合、露光光に対して透過率3〜12%のハーフトーン位相シフト膜を成膜することができる。
特に、本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの製造方法によれば、従来、遷移金属とケイ素と窒素とを含有し、遷移金属の含有率が低い膜の面内で位相差や透過率などの光学特性が均一な膜を得ることが難しかった、露光光、例えば、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)などの波長250nm以下、特に波長200nm以下の露光光に対する位相差が170〜190°、特に175〜185°、とりわけ略180°で、透過率が30%以下、特に15%以下、とりわけ10%以下で、2%以上、特に3%以上、とりわけ5%以上のハーフトーン位相シフト膜において、より均一なハーフトーン位相シフト膜を形成することができる。本発明において、スパッタリングの成膜条件には、スパッタ成膜するときに用いる窒素ガスや酸素ガスなどの反応性ガスの流量、アルゴンガスやヘリウムガス、ネオンガスなどの希ガス、特にアルゴンガスからなる不活性ガスの流量、スパッタに投入する電力などが該当する。
本発明においては、遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層を成膜する工程が、更に、ヒステリシスを示す反応性ガス流量の上限以上の範囲に相当する領域におけるスパッタ状態でスパッタする反応モードスパッタ工程を含んでいることが好ましい。具体的には、遷移モードスパッタ工程に続いて反応モードスパッタ工程を、又は反応モードスパッタ工程に続いて遷移モードスパッタ工程を実施する。遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層を成膜する工程において、反応モードスパッタ工程を組み入れることで、より高透過率のハーフトーン位相シフト膜を成膜することができる。例えば、露光光に対して位相差170〜190°の膜、特に遷移金属とケイ素と窒素とからなる膜の場合、反応モードスパッタ工程を組み合わせることで、露光光に対して透過率5〜12%のハーフトーン位相シフト膜を成膜することができる。
反応モードスパッタ工程においては、反応モードスパッタ工程の一部又は全体において、ターゲットに印加する電力、不活性ガス流量及び反応性ガス流量から選ばれる1又は2以上の成膜条件、特に反応性ガス流量を、好ましくは遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層の組成が膜厚方向に変化するように、連続的又は段階的に、好ましくは連続的に、より好ましくは反応モードによるスパッタの全体において連続的に、増加又は減少させてスパッタすることが好ましい。例えば、遷移モードスパッタ工程から反応モードスパッタ工程、又は反応モードスパッタ工程から遷移モードスパッタ工程に移行する際、スパッタ放電を止めずに連続で行うことで、より密着性のよい膜を形成することができる。
特に、遷移モードスパッタ工程から反応モードスパッタ工程、又は反応モードスパッタ工程から遷移モードスパッタ工程に亘って、特に両工程の境界部において、とりわけ両工程に亘る全体において、ターゲットに印加する電力、不活性ガス流量及び反応性ガス流量から選ばれる1又は2以上を連続的に増加又は減少させてスパッタすることが好適である。
また、本発明においては、遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層を成膜する工程が、更に、ヒステリシスを示す反応性ガス流量の下限以下の範囲に相当する領域におけるスパッタ状態でスパッタするメタルモードスパッタ工程を含んでいることが好ましい。具体的には、メタルモードスパッタ工程に続いて遷移モードスパッタ工程を、又は遷移モードスパッタ工程に続いてメタルモードスパッタ工程を実施する。遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層を成膜する工程において、メタルモードスパッタ工程を組み入れることで、より低透過率のハーフトーン位相シフト膜を成膜することができる。例えば、露光光に対して位相差170〜190°の膜、特に、遷移金属とケイ素と窒素とからなる膜又は遷移金属とケイ素と窒素と酸素とからなる膜の場合、メタルモードスパッタ工程を組み合わせることで、露光光に対して透過率2〜10%のハーフトーン位相シフト膜を成膜することができる。
メタルモードスパッタ工程においては、メタルモードスパッタ工程の一部又は全体において、ターゲットに印加する電力、不活性ガス流量及び反応性ガス流量から選ばれる1又は2以上の成膜条件、特に反応性ガス流量を、好ましくは遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層の組成が膜厚方向に変化するように、連続的又は段階的に、好ましくは連続的に、より好ましくはメタルモードによるスパッタの全体において連続的に、増加又は減少させてスパッタすることが好ましい。例えば、遷移モードスパッタ工程からメタルモードスパッタ工程、又はメタルモードスパッタ工程から遷移モードスパッタ工程に移行する際、スパッタ放電を止めずに連続で行うことで、より密着性のよい膜を形成することができる。
特に、遷移モードスパッタ工程からメタルモードスパッタ工程、又はメタルモードスパッタ工程から遷移モードスパッタ工程に亘って、特に両工程の境界部において、とりわけ両工程に亘る全体において、ターゲットに印加する電力、不活性ガス流量及び反応性ガス流量から選ばれる1又は2以上を連続的に増加又は減少させてスパッタすることが好適である。
本発明のハーフトーン位相シフト膜の遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層は、遷移金属とケイ素と窒素とを含有する材料で構成される。この遷移金属とケイ素と窒素とを含有する材料は、遷移金属とケイ素と窒素との合計が90原子%以上、特に94原子%以上である主として遷移金属とケイ素と窒素とを含有するケイ素系材料であることが好ましい。このケイ素系材料は、酸素、炭素などを含んでいてもよいが、酸素及び炭素の含有率は低い方が好ましい。このような材料として具体的には、遷移金属とケイ素と窒素とからなる材料、遷移金属とケイ素と窒素と酸素とからなる材料、遷移金属とケイ素と窒素と炭素とからなる材料、遷移金属とケイ素と窒素と酸素と炭素とからなる材料などが挙げられるが、遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層を、遷移金属とケイ素と窒素とからなる材料、遷移金属とケイ素と窒素と酸素とからなる材料とすれば、薬品耐性や、レーザー照射耐性がより向上するため好ましく、特に、遷移金属とケイ素と窒素とからなる材料とすることで、膜を薄膜化できるため好ましい。
本発明のハーフトーン位相シフト膜の遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層は、均質性に優れた膜が容易に得られるスパッタ法により成膜され、DCスパッタ、RFスパッタのいずれの方法をも用いることができる。ターゲットとスパッタガスは、層構成や組成に応じて適宜選択される。ケイ素を含有するターゲットは、ケイ素を含有し、遷移金属を含有しないターゲット及び遷移金属とケイ素とを含有するターゲットから選ばれる1又は2以上のターゲットを用いることができる。
ケイ素を含有し、遷移金属を含有しないターゲットとしては、ケイ素ターゲット(Siターゲット)、窒化ケイ素ターゲット、ケイ素と窒化ケイ素の双方を含むターゲットなど、特に、主としてケイ素を含有するターゲット(例えば、ケイ素の含有率が90原子%以上)を使用すればよく、とりわけ、ケイ素ターゲットが好ましい。一方、遷移金属とケイ素とを含有するターゲットとしては、遷移金属ケイ素ターゲット、遷移金属とケイ素の双方を含むターゲット、窒化遷移金属ケイ素ターゲット、ケイ素及び窒化ケイ素の一方又は双方と、遷移金属及び窒化遷移金属の一方又は双方とを含むターゲットなど、特に、主として遷移金属とケイ素を含有するターゲット(例えば、遷移金属とケイ素の合計の含有率が90原子%以上)を使用すればよく、とりわけ、遷移金属ケイ素ターゲットが好ましい。
また、遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層を成膜するスパッタにおいては、ケイ素を含有するターゲットと共に、遷移金属を含有し、ケイ素を含有しないターゲットを用いてもよい。具体的には、遷移金属ターゲット、窒化遷移金属ターゲット、遷移金属と窒化遷移金属の双方を含むターゲットなど、特に、主として遷移金属を含有するターゲット(例えば、遷移金属の含有率が90原子%以上)を使用すればよく、とりわけ、遷移金属ターゲットが好ましい。
なお、本発明におけるターゲットとしては、遷移金属とケイ素とを含有するターゲット1つのみ又は2つ以上の組み合わせ、ケイ素を含有し、遷移金属を含有しないターゲットと、遷移金属とケイ素とを含有するターゲットとの組み合わせ、ケイ素を含有し、遷移金属を含有しないターゲットと、遷移金属を含有し、ケイ素を含有しないターゲットとの組み合わせ、遷移金属とケイ素とを含有するターゲットと、遷移金属を含有し、ケイ素を含有しないターゲットとの組み合わせ、遷移金属とケイ素とを含有するターゲットと、遷移金属を含有し、ケイ素を含有しないターゲットと、ケイ素を含有し、遷移金属を含有しないターゲットとの組み合わせなどが適用できる。特に、遷移金属の含有率を低くするためには、遷移金属とケイ素を含有するターゲット1つのみ又は2つ以上の組み合わせ、又はケイ素を含有し、遷移金属を含有しないターゲットと、遷移金属とケイ素とを含有するターゲットとの組み合わせが好ましい。また、膜中の遷移金属とケイ素の組成を変化させるためには、ケイ素を含有し、遷移金属を含有しないターゲットと、遷移金属とケイ素とを含有するターゲットとの組み合わせが好ましい。
遷移金属とケイ素とを含有するターゲットの場合、遷移金属とケイ素とを含有するターゲット1つのみ又は2つ以上の組み合わせで用いるとき、又は遷移金属とケイ素とを含有するターゲットを用い、ケイ素を含有し、遷移金属を含有しないターゲットを用いないときは、遷移金属とケイ素との比(遷移金属/ケイ素)が0.1以下(原子比)、特に0.05以下(原子比)のものが好ましい。一方、遷移金属とケイ素とを含有するターゲットと共に、ケイ素を含有し、遷移金属を含有しないターゲットを用いるときは、遷移金属とケイ素との比(遷移金属/ケイ素)が0.95以下(原子比)のものが好ましく、また、0.005以上(原子比)のものが好ましい。
窒素の含有率、更には酸素や炭素の含有率は、スパッタガスに、反応性ガスとして、窒素を含むガス、必要に応じて、酸素を含むガス、窒素及び酸素を含むガス、炭素を含むガスなどを用い、導入量を適宜調整して反応性スパッタすることで、調整することができる。反応性ガスとして具体的には、窒素ガス(N2ガス)、酸素ガス(O2ガス)、窒素酸化物ガス(N2Oガス、NOガス、NO2ガス)、酸化炭素ガス(COガス、CO2ガス)などを用いることができ、必須成分である窒素源の反応性ガスとしては、窒素ガスが好適である。更に、スパッタガスには、希ガスとして、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガスなどの不活性ガスが用いられ、不活性ガスはアルゴンガスが好適である。なお、スパッタ圧力は通常0.01〜1Pa、好ましくは0.03〜0.2Paである。
本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクは、透明基板上に、ハーフトーン位相シフト膜を形成した後、400℃以上で5分間以上熱処理(アニール処理)して製造してもよい。ハーフトーン位相シフト膜の成膜後の熱処理は、ハーフトーン位相シフト膜を透明基板上に成膜した状態で、400℃以上、特に450℃以上で、5分間以上、特に30分間以上加熱することが好ましい。熱処理温度は、900℃以下、特に700℃以下が好ましく、熱処理時間は24時間以下、特に12時間以下が好ましい。熱処理は、スパッタチャンバー内で実施してもよく、また、スパッタチャンバーとは異なる熱処理炉に移して実施してもよい。熱処理の雰囲気は、ヘリウムガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気、真空下であっても、酸素ガス雰囲気などの酸素存在雰囲気であってもよい。
また、ハーフトーン位相シフト膜の膜質変化を抑えるために、その表面側(透明基板と離間する側)の最表面部の層として、表面酸化層を設けることができる。この表面酸化層の酸素含有率は20原子%以上であってよく、更には50原子%以上であってもよい。表面酸化層を形成する方法として、具体的には、大気酸化(自然酸化)による酸化の他、強制的に酸化処理する方法としては、遷移金属ケイ素系材料の膜をオゾンガスやオゾン水により処理する方法や、酸素ガス雰囲気などの酸素存在雰囲気中で、オーブン加熱、ランプアニール、レーザー加熱などにより、300℃以上に加熱する方法などを挙げることができる。この表面酸化層の厚さは10nm以下、特に5nm以下、とりわけ3nm以下であることが好ましく、通常、1nm以上で酸化層としての効果が得られる。表面酸化層は、スパッタ工程で酸素量を増やして形成することもできるが、欠陥のより少ない層とするためには、前述した大気酸化や、酸化処理により形成することが好ましい。
本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクは、基板や基板サイズに特に制約はないが、透明基板として、露光波長として用いる波長で透明である石英基板などが適用され、例えば、SEMI規格において規定されている、6インチ角、厚さ0.25インチの6025基板と呼ばれる透明基板が好適であり、SI単位系を用いた場合、通常、152mm角、厚さ6.35mmの透明基板と表記される。また、本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクは、ハーフトーン位相シフト膜のマスクパターン(フォトマスクパターン)を有する。
図1(A)は、本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの一例を示す断面図であり、このハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク100は、透明基板10と、透明基板10上に形成されたハーフトーン位相シフト膜1とを備える。また、図1(B)は、本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクの一例を示す断面図であり、このハーフトーン位相シフト型フォトマスク101は、透明基板10と、透明基板10上に形成されたハーフトーン位相シフト膜パターン11とを備える。
対象とする露光光(露光波長として用いる波長)は、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)、F2レーザー光(波長157nm)などの波長250nm以下、特に波長200nm以下の露光光が好ましく、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)が特に好ましい。
本発明のハーフトーン位相シフト膜の露光光に対する位相差は、ハーフトーン位相シフト膜が存在する部分(ハーフトーン位相シフト部)と、ハーフトーン位相シフト膜が存在しない部分とにおいて、それぞれを通過する露光光の位相差によって露光光が干渉して、コントラストを増大させることができる位相差であればよく、位相差は150〜200°であればよい。一般的なハーフトーン位相シフト膜では、位相差を略180°に設定するが、上述したコントラスト増大の観点からは、位相差は略180°に限定されず、位相差を180°より小さく又は大きくすることができる。例えば、位相差を180°より小さくすれば、薄膜化に有効である。なお、より高いコントラストが得られる点から、位相差は、180°に近い方が効果的であることは言うまでもなく、170〜190°、特に175〜185°、とりわけ約180°であることが好ましい。一方、露光光に対する透過率は、2%以上、特に3%以上、とりわけ5%以上で、30%以下、特に15%以下、とりわけ10%以下が好ましい。
本発明のハーフトーン位相シフト膜の全体の厚さは、薄いほど微細なパターンを形成しやすいため70nm以下とすることが好ましく、より好ましくは67nm以下、更に好ましくは65nm以下、特に好ましくは63nm以下である。一方、ハーフトーン位相シフト膜の膜厚の下限は、露光光に対し、必要な光学特性が得られる範囲で設定され、特に制約はないが、一般的には40nm以上となる。
本発明のハーフトーン位相シフト膜においては、ハーフトーン位相シフト膜全体において、また、上述した表面酸化層を設ける場合はこの表面酸化層を除き、膜全体において、露光光に対する屈折率nが2.3以上、特に2.5以上、とりわけ2.6以上であることが好ましい。ハーフトーン位相シフト膜の遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層が酸素を含有する場合は酸素の含有率を低くすること、特に酸素を含有させないことによって、所定の透過率で、膜の屈折率nを高くすることができ、また、ハーフトーン位相シフト膜として必要な位相差を確保した上で、膜の厚さをより薄くすることができる。屈折率nは、酸素の含有率が低いほど高くなり、屈折率nが高いほど、薄い膜で必要な位相差を得ることができる。
本発明のハーフトーン位相シフト膜においては、ハーフトーン位相シフト膜全体において、特に、上述した表面酸化層を設ける場合はこの表面酸化層を除き、ハーフトーン位相シフト膜全体において、露光光に対する消衰係数kが0.2以上、特に0.4以上で、1.0以下、特に0.7以下であることが好ましい。
本発明のハーフトーン位相シフト膜は、その一部又は全部として、遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層を含み、この遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層が、その厚さ方向に、ケイ素と窒素の合計に対する窒素の原子比が連続的又は段階的に、特に連続的に変化する領域を含むことが好ましく、その厚さ方向に、N/(Si+N)で表わされるケイ素と窒素の合計に対する窒素の原子比が0.30以上、特に0.40以上で、0.57以下、特に0.54以下の範囲内で連続的又は段階的に、特に連続的に変化する領域を含んでいることがより好ましい。このようなハーフトーン位相シフト膜は、面内均一性に特に優れており、上述した本発明のハーフトーン位相シフト膜の形成方法によって得ることができる。
特に、本発明のハーフトーン位相シフト膜は、ハーフトーン位相シフト膜全体が、特に、上述した表面酸化層を設ける場合はこの表面酸化層を除く、ハーフトーン位相シフト膜全体が、遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層で形成され、その厚さ方向に、N/(Si+N)で表わされるケイ素と窒素の合計に対する窒素の原子比が上述した範囲内で連続的又は段階的に、特に連続的に変化する領域を含んでいることがより好ましい。
更に、本発明のハーフトーン位相シフト膜の遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層は、その厚さ方向に、ケイ素と窒素の合計に対するケイ素の原子比が連続的又は段階的に、特に連続的に変化する領域を含むことが好ましく、Si/(Si+N)で表わされるケイ素と窒素の合計に対するケイ素の原子比の、厚さ方向の最大値と最小値との差が0.25以下、特に0.15以下であることがより好ましい。このようなハーフトーン位相シフト膜は、密着性に特に優れており、上述した本発明のハーフトーン位相シフト膜の形成方法によって得ることができる。
なお、本発明のハーフトーン位相シフト膜の遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層において、ケイ素と窒素の合計に対するケイ素又は窒素の原子比が連続的に変化する領域を含むことは、遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層内に、組成が連続的に傾斜している部分を含んでいること、また、ケイ素と窒素の合計に対するケイ素又は窒素の原子比が段階的に変化する領域を含むことは、遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層内に、組成が段階的に傾斜している部分を含んでいることを含んでおり、ケイ素又は窒素が、遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層内で、増加のみ又は減少するのみの場合も、増加と減少とが組み合わされた場合も含まれる。
本発明のハーフトーン位相シフト膜の遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層は、遷移金属とケイ素と窒素とを含有するケイ素系材料で形成される。この遷移金属ケイ素系材料は、遷移金属とケイ素と窒素との合計が90原子%以上、特に94原子%以上である主として遷移金属とケイ素と窒素とを含有する遷移金属ケイ素系材料であることが好ましい。遷移金属ケイ素系材料は、酸素を含んでいてもよいが、酸素の含有率は10原子%以下、特に6原子%以下であることが好ましく、特に、ハーフトーン位相シフト膜の薄膜化のためには、酸素の含有率が低い方が好ましく、酸素を含んでいないことがより好ましい。この観点から、ハーフトーン位相シフト膜の遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層を、遷移金属とケイ素と窒素とからなる材料の層を含むようにすること、特に、遷移金属とケイ素と窒素とからなる材料のみで形成することが好ましい。
本発明のハーフトーン位相シフト膜は、その一部又は全部として、遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層を含み、この遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層が、{遷移金属/(Si+遷移金属)}で表される遷移金属とケイ素の合計に対する遷移金属の原子比が0.05以下、特に0.03以下であることが好ましく、0.001以上、特に0.0025以上、とりわけ0.005以上であることが好ましい。遷移金属としては、例えば、モリブデン、ジルコニウム、タングステン、チタン、ハフニウム、クロム、タンタルなどが好ましく、特にモリブデンが好ましい。遷移金属ケイ素系材料におけるパターン寸法変動劣化の問題は、このような遷移金属を低含有率に抑えた遷移金属ケイ素系材料を用いることにより改善することができ、また、このような遷移金属ケイ素系材料を用いることにより、化学的洗浄に対する耐薬品性が向上する。
本発明のハーフトーン位相シフト膜の遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層は、遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層全体において、特に、上述した表面酸化層を設ける場合はこの表面酸化層を除く、遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層全体において、遷移金属ケイ素系材料に含まれる遷移金属の含有率が0.1原子%以上、特に0.2原子%以上、とりわけ0.5原子%以上で、3原子%以下、特に2原子%以下であることが好ましい。
本発明のハーフトーン位相シフト膜の遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層は、遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層全体において、特に、上述した表面酸化層を設ける場合はこの表面酸化層を除く、遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層全体において、遷移金属ケイ素系材料に含まれるケイ素の含有率が35原子%以上、特に43原子%以上で、80原子%以下、特に75原子%以下であることが好ましい。
本発明のハーフトーン位相シフト膜の遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層は、遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層全体において、また、上述した表面酸化層を設ける場合はこの表面酸化層を除く、遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層全体において、遷移金属ケイ素系材料に含まれる窒素の含有率が20原子%以上、特に25原子%以上で、60原子%以下、特に57原子%以下であることが好ましい。
本発明のハーフトーン位相シフト膜の遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層は、遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層全体において、また、上述した表面酸化層を設ける場合はこの表面酸化層を除く、遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層全体において、遷移金属ケイ素系材料に含まれる酸素の含有率が10原子%以下であり、6原子%以下であることが好ましい。
ハーフトーン位相シフト膜の構成は、透明基板から最も離間する側(表面側)の遷移金属とケイ素の含有率を低くすることで、薬品耐性を良好にすることができ、また、透明基板から最も離間する側(表面側)、又は透明基板に最も近い側(基板側)の遷移金属とケイ素の含有率を低下させることで、反射率の低減に効果的である。一方、ハーフトーン位相シフト膜のエッチングにおける制御性を良くする観点からは、基板に最も近い側で遷移金属とケイ素の含有率を高くすることが好ましい。
本発明のハーフトーン位相シフト膜は、本発明の効果が得られる範囲において、多層で構成してもよく、ハーフトーン位相シフト膜の一部を遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層とする場合、残部は遷移金属とケイ素と窒素とを含有する層以外の層で構成してもよい。ハーフトーン位相シフト膜を多層で構成する場合、構成元素が異なる層及び構成元素が同一で組成比が異なる層から選ばれる2層以上の組み合わせとしてよく、多層を3層以上で構成する場合は、隣接する層としなければ、同じ層を組み合わせることもできるが、ハーフトーン位相シフト膜全体で構成元素を同じくすることで、同一エッチャントでエッチングできる。
ハーフトーン位相シフト膜は、ハーフトーン位相シフト膜として必要な位相差及び透過率を満たすように、構成すればよく、また、例えば、所定の表面反射率を満たすようにするために、反射防止機能性を有する層を含むようにし、全体としてハーフトーン位相シフト膜として必要な位相差及び透過率を満たすように構成することも好適である。
本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクのハーフトーン位相シフト膜の上には、単層又は多層からなる第2の層を設けることができる。第2の層は、通常、ハーフトーン位相シフト膜に隣接して設けられる。この第2の層として具体的には、遮光膜、遮光膜と反射防止膜との組み合わせ、ハーフトーン位相シフト膜のパターン形成においてハードマスクとして機能する加工補助膜などが挙げられる。また、後述する第3の層を設ける場合、この第2の層を、第3の層のパターン形成においてエッチングストッパーとして機能する加工補助膜(エッチングストッパー膜)として利用することもできる。第2の層の材料としては、クロムを含む材料が好適である。
このようなハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクとして具体的には、図2(A)に示されるものが挙げられる。図2(A)は、本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの一例を示す断面図であり、このハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク100は、透明基板10と、透明基板10上に形成されたハーフトーン位相シフト膜1と、ハーフトーン位相シフト膜1上に形成された第2の層2とを備える。
本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクには、ハーフトーン位相シフト膜の上に、第2の層として、遮光膜を設けることができる。また、第2の層として、遮光膜と反射防止膜とを組み合わせて設けることもできる。遮光膜を含む第2の層を設けることにより、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクに、露光光を完全に遮光する領域を設けることができる。この遮光膜及び反射防止膜は、エッチングにおける加工補助膜としても利用可能である。遮光膜及び反射防止膜の膜構成及び材料については多数の報告(例えば、特開2007−33469号公報(特許文献4)、特開2007−233179号公報(特許文献5)など)があるが、好ましい遮光膜と反射防止膜との組み合わせの膜構成としては、例えば、クロムを含む材料の遮光膜を設け、更に、遮光膜からの反射を低減させるクロムを含む材料の反射防止膜を設けたものなどが挙げられる。遮光膜及び反射防止膜は、いずれも単層で構成しても、多層で構成してもよい。遮光膜や反射防止膜のクロムを含む材料としては、クロム単体、クロム酸化物(CrO)、クロム窒化物(CrN)、クロム炭化物(CrC)、クロム酸化窒化物(CrON)、クロム酸化炭化物(CrOC)、クロム窒化炭化物(CrNC)、クロム酸化窒化炭化物(CrONC)等のクロム化合物などが挙げられる。
このようなCr系遮光膜及びCr系反射防止膜は、クロム単体ターゲット、又はクロムに酸素、窒素及び炭素から選ばれるいずれか1種又は2種以上を添加したターゲットを用い、アルゴン、ヘリウム、ネオンなどの希ガスに、成膜する膜の組成に応じて、酸素含有ガス、窒素含有ガス及び炭素含有ガスから選ばれるガスを適宜添加したスパッタガスを用いた反応性スパッタにより成膜することができる。
第2の層が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせである場合、遮光膜のクロム化合物中のクロムの含有率は30原子%以上、特に35原子%以上で、100原子%未満、特に99原子%以下、とりわけ90原子%以下であることが好ましい。酸素の含有率は0原子%以上で、60原子%以下、特に50原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は、1原子%以上であることが好ましい。窒素の含有率は0原子%以上で、50原子%以下、特に40原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は、1原子%以上であることが好ましい。炭素の含有率は0原子%以上で、30原子%以下、特に20原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は、1原子%以上であることが好ましい。この場合、クロム、酸素、窒素及び炭素の合計の含有率は95原子%以上、特に99原子%以上、とりわけ100原子%であることが好ましい。
また、第2の層が遮光膜と反射防止膜との組み合わせである場合、反射防止膜はクロム化合物であることが好ましく、クロム化合物中のクロムの含有率は30原子%以上、特に35原子%以上で、70原子%以下、特に50原子%以下であることが好ましい。酸素の含有率は60原子%以下であることが好ましく、1原子%以上、特に20原子%以上であることがより好ましい。窒素の含有率は50原子%以下、特に30原子%以下であることが好ましく、1原子%以上、特に3原子%以上であることがより好ましい。炭素の含有率は0原子%以上で、30原子%以下、特に20原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は、1原子%以上であることが好ましい。この場合、クロム、酸素、窒素及び炭素の合計の含有率は95原子%以上、特に99原子%以上、とりわけ100原子%であることが好ましい。
一方、第2の層が、ハーフトーン位相シフト膜のパターン形成においてハードマスクとして機能する加工補助膜(エッチングマスク膜)である場合、この加工補助膜は、ハーフトーン位相シフト膜とエッチング特性が異なる材料、例えば、ケイ素を含む材料のエッチングに適用されるフッ素系ドライエッチングに耐性を有する材料、具体的には、酸素を含有する塩素系ガスでエッチングできるクロムを含む材料とすることが好ましい。クロムを含む材料として具体的には、クロム単体、クロム酸化物(CrO)、クロム窒化物(CrN)、クロム炭化物(CrC)、クロム酸化窒化物(CrON)、クロム酸化炭化物(CrOC)、クロム窒化炭化物(CrNC)、クロム酸化窒化炭化物(CrONC)等のクロム化合物などが挙げられる。
第2の層が加工補助膜である場合、第2の層中のクロムの含有率は30原子%以上、特に35原子%以上で、100原子%以下、特に99原子%以下、とりわけ90原子%以下であることが好ましい。酸素の含有率は0原子%以上で、60原子%以下、特に55原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は、1原子%以上であることが好ましい。窒素の含有率は0原子%以上で、50原子%以下、特に40原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は、1原子%以上であることが好ましい。炭素の含有率は0原子%以上で、30原子%以下、特に20原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は、1原子%以上であることが好ましい。この場合、クロム、酸素、窒素及び炭素の合計の含有率は95原子%以上、特に99原子%以上、とりわけ100原子%であることが好ましい。
第2の層が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせである場合、第2の層の膜厚は、通常20〜100nm、好ましくは40〜70nmである。また、波長250nm以下、特に波長200nm以下の露光光に対するハーフトーン位相シフト膜と第2の層との合計の光学濃度が2.0以上、特に2.5以上、とりわけ3.0以上となるようにすることが好ましい。一方、第2の層が加工補助膜である場合、第2の層の膜厚は、通常1〜100nm、好ましくは2〜50nmである。
本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの第2の層の上には、単層又は多層からなる第3の層を設けることができる。第3の層は、通常、第2の層に隣接して設けられる。この第3の層として具体的には、第2の層のパターン形成においてハードマスクとして機能する加工補助膜、遮光膜、遮光膜と反射防止膜との組み合わせなどが挙げられる。第3の層の材料としては、ケイ素を含む材料が好適であり、特に、クロムを含まないものが好ましい。
このようなハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクとして具体的には、図2(B)に示されるものが挙げられる。図2(B)は、本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの一例を示す断面図であり、このハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク100は、透明基板10と、透明基板10上に形成されたハーフトーン位相シフト膜1と、ハーフトーン位相シフト膜1上に形成された第2の層2と、第2の層2上に形成された第3の層3とを備える。
第2の層が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせである場合、又は上記ハーフトーン位相シフト膜のパターン形成においてハードマスクとして機能する加工補助膜である場合、第3の層として、第2の層のパターン形成においてハードマスクとして機能する加工補助膜(エッチングマスク膜)を設けることができる。また、後述する第4の層を設ける場合、この第3の層を、第4の層のパターン形成においてエッチングストッパーとして機能する加工補助膜(エッチングストッパー膜)として利用することもできる。この加工補助膜は、第2の層とエッチング特性が異なる材料、例えば、クロムを含む材料のエッチングに適用される塩素系ドライエッチングに耐性を有する材料、具体的には、SF6やCF4などのフッ素系ガスでエッチングできるケイ素を含む材料とすることが好ましい。ケイ素を含む材料として具体的には、ケイ素単体、ケイ素と、窒素及び酸素の一方又は双方とを含む材料、ケイ素と遷移金属とを含む材料、ケイ素と、窒素及び酸素の一方又は双方と、遷移金属とを含む材料等のケイ素化合物などが挙げられ、遷移金属としては、モリブデン、タンタル、ジルコニウムなどが挙げられる。
第3の層が加工補助膜である場合、加工補助膜はケイ素化合物であることが好ましく、ケイ素化合物中のケイ素の含有率は20原子%以上、特に33原子%以上で、95原子%以下、特に80原子%以下であることが好ましい。窒素の含有率は0原子%以上で、50原子%以下、特に40原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は、1原子%以上であることが好ましい。酸素の含有率は0原子%以上、特に20原子%以上で、70原子%以下、特に66原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は、1原子%以上であることが好ましい。遷移金属の含有率は0原子%以上で、35原子%以下、特に20原子%以下であることが好ましく、遷移金属を含有する場合は、1原子%以上であることが好ましい。この場合、ケイ素、酸素、窒素及び遷移金属の合計の含有率は95原子%以上、特に99原子%以上、とりわけ100原子%であることが好ましい。
第2の層が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせ、第3の層が加工補助膜である場合、第2の層の膜厚は、通常20〜100nm、好ましくは40〜70nmであり、第3の層の膜厚は、通常1〜30nm、好ましくは2〜15nmである。また、波長250nm以下、特に波長200nm以下の露光光に対するハーフトーン位相シフト膜と第2の層との合計の光学濃度が2.0以上、特に2.5以上、とりわけ3.0以上となるようにすることが好ましい。一方、第2の層が加工補助膜、第3の層が加工補助膜である場合、第2の層の膜厚は、通常1〜100nm、好ましくは2〜50nmであり、第3の層の膜厚は、通常1〜30nm、好ましくは2〜15nmである。
また、第2の層が加工補助膜である場合、第3の層として、遮光膜を設けることができる。また、第3の層として、遮光膜と反射防止膜とを組み合わせて設けることもできる。この場合、第2の層は、ハーフトーン位相シフト膜のパターン形成においてハードマスクとして機能する加工補助膜(エッチングマスク膜)であり、第3の層のパターン形成においてエッチングストッパーとして機能する加工補助膜(エッチングストッパー膜)として利用することもできる。加工補助膜の例としては、特開2007−241065号公報(特許文献6)で示されているようなクロムを含む材料で構成された膜が挙げられる。加工補助膜は、単層で構成しても、多層で構成してもよい。加工補助膜のクロムを含む材料としては、クロム単体、クロム酸化物(CrO)、クロム窒化物(CrN)、クロム炭化物(CrC)、クロム酸化窒化物(CrON)、クロム酸化炭化物(CrOC)、クロム窒化炭化物(CrNC)、クロム酸化窒化炭化物(CrONC)等のクロム化合物などが挙げられる。
第2の層が加工補助膜である場合、第2の層中のクロムの含有率は30原子%以上、特に35原子%以上で、100原子%以下、特に99原子%以下、とりわけ90原子%以下であることが好ましい。酸素の含有率は0原子%以上で、60原子%以下、特に55原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は、1原子%以上であることが好ましい。窒素の含有率は0原子%以上で、50原子%以下、特に40原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は、1原子%以上であることが好ましい。炭素の含有率は0原子%以上で、30原子%以下、特に20原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は、1原子%以上であることが好ましい。この場合、クロム、酸素、窒素及び炭素の合計の含有率は95原子%以上、特に99原子%以上、とりわけ100原子%であることが好ましい。
一方、第3の層の遮光膜及び反射防止膜は、第2の層とエッチング特性が異なる材料、例えば、クロムを含む材料のエッチングに適用される塩素系ドライエッチングに耐性を有する材料、具体的には、SF6やCF4などのフッ素系ガスでエッチングできるケイ素を含む材料とすることが好ましい。ケイ素を含む材料として具体的には、ケイ素単体、ケイ素と、窒素及び酸素の一方又は双方とを含む材料、ケイ素と遷移金属とを含む材料、ケイ素と、窒素及び酸素の一方又は双方と、遷移金属とを含む材料等のケイ素化合物などが挙げられ、遷移金属としては、モリブデン、タンタル、ジルコニウムなどが挙げられる。
第3の層が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせである場合、遮光膜及び反射防止膜はケイ素化合物であることが好ましく、ケイ素化合物中のケイ素の含有率は10原子%以上、特に30原子%以上で、100原子%未満、特に95原子%以下であることが好ましい。窒素の含有率は0原子%以上で、50原子%以下、特に40原子%以下、とりわけ20原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は、1原子%以上であることが好ましい。酸素の含有率は0原子%以上で、60原子%以下、特に30原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は、1原子%以上であることが好ましい。遷移金属の含有率は0原子%以上で、35原子%以下、特に20原子%以下であることが好ましく、遷移金属を含有する場合は、1原子%以上であることが好ましい。この場合、ケイ素、酸素、窒素及び遷移金属の合計の含有率は95原子%以上、特に99原子%以上、とりわけ100原子%であることが好ましい。
第2の層が加工補助膜、第3の層が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせである場合、第2の層の膜厚は、通常1〜20nm、好ましくは2〜10nmであり、第3の層の膜厚は、通常20〜100nm、好ましくは30〜70nmである。また、波長250nm以下、特に波長200nm以下の露光光に対するハーフトーン位相シフト膜と第2の層と第3の層との合計の光学濃度が2.0以上、特に2.5以上、とりわけ3.0以上となるようにすることが好ましい。
本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの第3の層の上には、単層又は多層からなる第4の層を設けることができる。第4の層は、通常、第3の層に隣接して設けられる。この第4の層として具体的には、第3の層のパターン形成においてハードマスクとして機能する加工補助膜などが挙げられる。第4の層の材料としては、クロムを含む材料が好適である。
このようなハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクとして具体的には、図2(C)に示されるものが挙げられる。図2(C)は、本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの一例を示す断面図であり、このハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク100は、透明基板10と、透明基板10上に形成されたハーフトーン位相シフト膜1と、ハーフトーン位相シフト膜1上に形成された第2の層2と、第2の層2上に形成された第3の層3と、第3の層3上に形成された第4の層4とを備える。
第3の層が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせである場合、第4の層として、第3の層のパターン形成においてハードマスクとして機能する加工補助膜(エッチングマスク膜)を設けることができる。この加工補助膜は、第3の層とエッチング特性が異なる材料、例えば、ケイ素を含む材料のエッチングに適用されるフッ素系ドライエッチングに耐性を有する材料、具体的には、酸素を含有する塩素系ガスでエッチングできるクロムを含む材料とすることが好ましい。クロムを含む材料として具体的には、クロム単体、クロム酸化物(CrO)、クロム窒化物(CrN)、クロム炭化物(CrC)、クロム酸化窒化物(CrON)、クロム酸化炭化物(CrOC)、クロム窒化炭化物(CrNC)、クロム酸化窒化炭化物(CrONC)等のクロム化合物などが挙げられる。
第4の層が加工補助膜である場合、第4の層中のクロムの含有率は30原子%以上、特に35原子%以上で、100原子%以下、特に99原子%以下、とりわけ90原子%以下であることが好ましい。酸素の含有率は0原子%以上で、60原子%以下、特に40原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は、1原子%以上であることが好ましい。窒素の含有率は0原子%以上で、50原子%以下、特に40原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は、1原子%以上であることが好ましい。炭素の含有率は0原子%以上で、30原子%以下、特に20原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は、1原子%以上であることが好ましい。この場合、クロム、酸素、窒素及び炭素の合計の含有率は95原子%以上、特に99原子%以上、とりわけ100原子%であることが好ましい。
第2の層が加工補助膜、第3の層が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせ、第4の層が加工補助膜である場合、第2の層の膜厚は、通常1〜20nm、好ましくは2〜10nmであり、第3の層の膜厚は、通常20〜100nm、好ましくは30〜70nmであり、第4の層の膜厚は、通常1〜30nm、好ましくは2〜20nmである。また、波長250nm以下、特に波長200nm以下の露光光に対するハーフトーン位相シフト膜と第2の層と第3の層との合計の光学濃度が2.0以上、特に2.5以上、とりわけ3.0以上となるようにすることが好ましい。
第2の層及び第4の層のクロムを含む材料で構成された膜は、クロムターゲット、クロムに酸素、窒素及び炭素から選ばれるいずれか1種又は2種以上を添加したターゲットなどを用い、アルゴン、ヘリウム、ネオンなどの希ガスに、成膜する膜の組成に応じて、酸素含有ガス、窒素含有ガス、炭素含有ガスなどから選ばれる反応性ガスを適宜添加したスパッタガスを用いた反応性スパッタにより成膜することができる。
一方、第3の層のケイ素を含む材料で構成された膜は、ケイ素ターゲット、窒化ケイ素ターゲット、ケイ素と窒化ケイ素の双方を含むターゲット、遷移金属ターゲット、ケイ素と遷移金属との複合ターゲットなどを用い、アルゴン、ヘリウム、ネオンなどの希ガスに、成膜する膜の組成に応じて、酸素含有ガス、窒素含有ガス、炭素含有ガスなどから選ばれる反応性ガスを適宜添加したスパッタガスを用いた反応性スパッタにより成膜することができる。
本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクは、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクから、常法により製造することができる。例えば、ハーフトーン位相シフト膜の上に、第2の層として、クロムを含む材料の膜が形成されているハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクでは、例えば、下記の工程でハーフトーン位相シフト型フォトマスクを製造することができる。
まず、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの第2の層上に、電子線レジスト膜を成膜し、電子線によるパターン描画を行った後、所定の現像操作によってレジストパターンを得る。次に、得られたレジストパターンをエッチングマスクとして、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより、第2の層にレジストパターンを転写して、第2の層のパターンを得る。次に、得られた第2の層のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ドライエッチングにより、ハーフトーン位相シフト膜に第2の層のパターンを転写して、ハーフトーン位相シフト膜パターンを得る。ここで、第2の層の一部を残す必要がある場合は、その部分を保護するレジストパターンを、第2の層の上に形成した後、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより、レジストパターンで保護されていない部分の第2の層を除去する。そして、レジストパターンを常法により除去して、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクを得ることができる。
また、ハーフトーン位相シフト膜の上に、第2の層として、クロムを含む材料の遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせが形成され、第2の層の上に、第3の層として、ケイ素を含む材料の加工補助膜が形成されているハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクでは、例えば、下記の工程でハーフトーン位相シフト型フォトマスクを製造することができる。
まず、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの第3の層の上に、電子線レジスト膜を成膜し、電子線によるパターン描画を行った後、所定の現像操作によってレジストパターンを得る。次に、得られたレジストパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ドライエッチングにより、第3の層にレジストパターンを転写して、第3の層のパターンを得る。次に、得られた第3の層のパターンをエッチングマスクとして、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより、第2の層に第3の層のパターンを転写して、第2の層のパターンを得る。次に、レジストパターンを除去した後、得られた第2の層のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ドライエッチングにより、ハーフトーン位相シフト膜に第2の層のパターンを転写して、ハーフトーン位相シフト膜パターンを得ると同時に、第3の層のパターンを除去する。次に、第2の層を残す部分を保護するレジストパターンを、第2の層の上に形成した後、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより、レジストパターンで保護されていない部分の第2の層を除去する。そして、レジストパターンを常法により除去して、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクを得ることができる。
一方、ハーフトーン位相シフト膜の上に、第2の層として、クロムを含む材料の加工補助膜が形成され、第2の層の上に、第3の層として、ケイ素を含む材料の遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせが形成されているハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクでは、例えば、下記の工程でハーフトーン位相シフト型フォトマスクを製造することができる。
まず、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの第3の層の上に、電子線レジスト膜を成膜し、電子線によるパターン描画を行った後、所定の現像操作によってレジストパターンを得る。次に、得られたレジストパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ドライエッチングにより、第3の層にレジストパターンを転写して、第3の層のパターンを得る。次に、得られた第3の層のパターンをエッチングマスクとして、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより、第2の層に第3の層のパターンを転写して、ハーフトーン位相シフト膜を除去する部分の第2の層が除去された第2の層のパターンを得る。次に、レジストパターンを除去し、第3の層を残す部分を保護するレジストパターンを、第3の層の上に形成した後、得られた第2の層のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ドライエッチングにより、ハーフトーン位相シフト膜に第2の層のパターンを転写して、ハーフトーン位相シフト膜パターンを得ると同時に、レジストパターンで保護されていない部分の第3の層を除去する。次に、レジストパターンを常法により除去する。そして、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより、第3の層が除去された部分の第2の層を除去して、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクを得ることができる。
更に、ハーフトーン位相シフト膜の上に、第2の層として、クロムを含む材料の加工補助膜が形成され、第2の層の上に、第3の層として、ケイ素を含む材料の遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせが形成され、更に、第3の層の上に、第4の層として、クロムを含む材料の加工補助膜が形成されているハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクでは、例えば、下記の工程でハーフトーン位相シフト型フォトマスクを製造することができる。
まず、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの第4の層の上に、電子線レジスト膜を成膜し、電子線によるパターン描画を行った後、所定の現像操作によってレジストパターンを得る。次に、得られたレジストパターンをエッチングマスクとして、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより、第4の層にレジストパターンを転写して、第4の層のパターンを得る。次に、得られた第4の層のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ドライエッチングにより、第3の層に第4の層のパターンを転写して、第3の層のパターンを得る。次に、レジストパターンを除去し、第3の層を残す部分を保護するレジストパターンを、第4の層の上に形成した後、得られた第3の層のパターンをエッチングマスクとして、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより、第2の層に第3の層のパターンを転写して第2の層のパターンを得ると同時に、レジストパターンで保護されていない部分の第4の層を除去する。次に、第2の層のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ドライエッチングにより、ハーフトーン位相シフト膜に第2の層のパターンを転写して、ハーフトーン位相シフト膜パターンを得ると同時に、レジストパターンで保護されていない部分の第3の層を除去する。次に、レジストパターンを常法により除去する。そして、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより、第3の層が除去された部分の第2の層と、レジストパターンが除去された部分の第4の層を除去して、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクを得ることができる。
本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクは、被加工基板にハーフピッチ50nm以下、特に30nm以下、とりわけ20nm以下のパターンを形成するためのフォトリソグラフィにおいて、被加工基板上に形成したフォトレジスト膜に、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)、F2レーザー光(波長157nm)などの波長250nm以下、特に波長200nm以下の露光光でパターンを転写する露光において特に有効である。
本発明のパターン露光方法では、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクから製造されたハーフトーン位相シフト型フォトマスクを用い、ハーフトーン位相シフト膜のパターンを含むフォトマスクパターンに、露光光を照射して、被加工基板上に形成したフォトマスクパターンの露光対象であるフォトレジスト膜に、フォトマスクパターンを転写する。露光光の照射は、ドライ条件による露光でも、液浸露光でもよいが、本発明のパターン露光方法は、実生産において比較的短時間に累積照射エネルギー量が上がってしまう、液浸露光により、特に、300mm以上のウェハーを被加工基板として液浸露光により、フォトマスクパターンを露光する際に、特に有効である。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に制限されるものではない。
[実施例1]
DCスパッタ装置のチャンバー内に、152mm角、厚さ6.35mmの石英基板を設置し、スパッタターゲットとしてケイ素ターゲット(Siターゲット)及びモリブデンケイ素ターゲット(MoSiターゲット)、スパッタガスとしてアルゴンガス及び窒素ガスを用い、ターゲットに印加する電力及びアルゴンガスの流量を一定にし、窒素ガスの流量を変化させたときにターゲットに流れる電流を測定することにより、ヒステリシス曲線を得た。具体的には、Siターゲットに印加する電力を1.9kW、MoSiターゲットに印加する電力を35Wとし、アルゴンガスを21sccm、窒素ガスを10sccmチャンバー内に流した状態でスパッタを開始し、窒素ガス流量を毎秒0.17sccmずつ、最終的に窒素ガス流量を60sccmまで増加させ、今度は、逆に60sccmから毎秒0.17sccmずつ窒素流量を10sccmまで減少させた。Siターゲットで得られたヒステリシス曲線を図3に示す。図3において、実線は、窒素ガス流量を増加させたときのスパッタ電流、破線は窒素ガス流量を減少させたときのスパッタ電流を示す。
次に、152mm角、厚さ6.35mmの石英基板上に、スパッタターゲットとしてケイ素ターゲット(Siターゲット)及びモリブデンケイ素ターゲット(MoSiターゲット)を用い、スパッタガスとして窒素ガスとアルゴンガスを用い、上記で得られたヒステリシス曲線に基づき、Siターゲットに印加する電力を1.9kW、MoSiターゲットに印加する電力を35Wとし、アルゴン流量を21sccmとし、窒素流量を26から47sccmまで連続的に変化させて、膜厚65nmのハーフトーン位相シフト膜を成膜した。得られたハーフトーン位相シフト膜の位相差及び透過率を、レーザーテック株式会社製の位相差/透過率測定装置MPM193により測定した(以下の位相差及び透過率の測定において同じ)結果、波長193nmの光に対して、位相差は179.4±0.4°、透過率は6.1±0.05%であり、位相差と透過率の面内分布が狭く、面内均一性が良好であった。得られたハーフトーン位相シフト膜のXPSによる組成は、石英基板側ではSiが52.3原子%、Nが46.8原子%で、膜の表面側(石英基板から離間する側)ではSiが46.5原子%、Nが52.1原子%であり、その間は連続的に変化していた。一方、Moは、石英基板側では0.9原子%、膜の表面側(石英基板から離間する側)では1.4原子%であり、若干の変化はあるものの、実質的にほぼ一定であった。
[比較例1]
DCスパッタ装置のチャンバー内に、152mm角、厚さ6.35mmの石英基板を設置し、スパッタターゲットとしてケイ素ターゲット(Siターゲット)、スパッタガスとしてアルゴンガス及び窒素ガスを用い、ターゲットに印加する電力及びアルゴンガスの流量を一定にし、窒素ガスの流量を変化させたときにターゲットに流れる電流を測定することにより、ヒステリシス曲線を得た。具体的には、Siターゲットに印加する電力を1.9kWとし、アルゴンガスを17sccm、窒素ガスを10sccmチャンバー内に流した状態でスパッタを開始し、窒素ガス流量を毎秒0.17sccmずつ、最終的に窒素ガス流量を60sccmまで増加させ、今度は、逆に60sccmから毎秒0.17sccmずつ窒素流量を10sccmまで減少させた。Siターゲットで得られたヒステリシス曲線を図4に示す。図4において、実線は、窒素ガス流量を増加させたときのスパッタ電流、破線は窒素ガス流量を減少させたときのスパッタ電流を示す。
152mm角、厚さ6.35mmの石英基板上に、スパッタターゲットとしてケイ素ターゲット(Siターゲット)を用い、スパッタガスとして窒素ガスとアルゴンガスを用い、上記で得られたヒステリシス曲線に基づき、Siターゲットに印加する電力を1.9kW、アルゴン流量を17sccmとし、窒素流量を28.6sccmで一定として、膜厚61nmのハーフトーン位相シフト膜を成膜した。得られたハーフトーン位相シフト膜は、波長193nmの光に対して、位相差は174.7±1.1°、透過率は4.4±0.3%であり、位相差と透過率の面内分布が広く、面内均一性に劣っていた。得られたハーフトーン位相シフト膜のXPSによる組成は、厚さ方向で均一であった。
[比較例2]
実施例1と同じDCスパッタ装置を用い、152mm角、厚さ6.35mmの石英基板上に、スパッタターゲットとしてケイ素ターゲット(Siターゲット)及びモリブデンケイ素ターゲット(MoSiターゲット)を用い、スパッタガスとして窒素ガスとアルゴンガスを用い、実施例1で得られたヒステリシス曲線に基づき、Siターゲットに印加する電力を1.9kW、MoSiターゲットに印加する電力を35Wとし、アルゴン流量を21sccmとし、窒素流量を31.5sccmで一定として、膜厚63nmのハーフトーン位相シフト膜を成膜した。得られたハーフトーン位相シフト膜は、波長193nmの光に対して、位相差は179.6±0.5°、透過率は4.7±0.3%であり、透過率の面内分布が広く、面内均一性に劣っていた。得られたハーフトーン位相シフト膜のXPSによる組成は、厚さ方向で均一であった。