以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。
[ショベルの概要]
まず、図1を参照して、ショベル100の概要について説明する。
図1は、本実施形態に係るショベル100の側面図である。
本実施形態に係るショベル100は、下部走行体1と、旋回機構2を介して旋回可能に下部走行体1に搭載される上部旋回体3と、アタッチメントとしてのブーム4、アーム5、及びバケット6と、オペレータが搭乗するキャビン10を備える。
下部走行体1(走行体の一例)は、例えば、左右1対のクローラを含み、それぞれのクローラが走行油圧モータ1A,1B(図2等参照)で油圧駆動されることにより、ショベル100を走行させる。
上部旋回体3(旋回体の一例)は、後述する旋回油圧モータ21(図2参照)等で駆動されることにより、下部走行体1に対して旋回する。
ブーム4は、上部旋回体3の前部中央に俯仰可能に枢着され、ブーム4の先端には、アーム5が上下回動可能に枢着され、アーム5の先端には、バケット6が上下回動可能に枢着される。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、それぞれ、油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。
キャビン10は、オペレータが搭乗する操縦室であり、上部旋回体3の前部左側に搭載される。
[ショベルの基本構成]
次に、図2を参照して、本実施形態に係るショベル100の構成を詳細に説明する。
図2は、本実施形態に係るショベル100の駆動系を中心とする構成の一例を示すブロック図である。
尚、図中、機械的動力系は二重線、高圧油圧ラインは太い実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御系は細い実線でそれぞれ示される。
本実施形態に係るショベル100の油圧駆動系は、エンジン11と、メインポンプ14と、コントロールバルブ17を含む。また、本実施形態に係る油圧駆動系は、上述の如く、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6のそれぞれを油圧駆動する走行油圧モータ1A,1B、旋回油圧モータ21、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9を含む。
エンジン11は、ショベル100の駆動力源であり、例えば、上部旋回体3の後部に搭載される。エンジン11は、例えば、軽油を燃料とするディーゼルエンジンである。エンジン11の出力軸には、メインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続される。
メインポンプ14は、例えば、上部旋回体3の後部に搭載され、高圧油圧ライン16を通じてコントロールバルブ17に作動油を供給する。メインポンプ14は、上述の如く、エンジン11により駆動される。メインポンプ14は、例えば、可変容量式油圧ポンプであり、後述するレギュレータ14A(図xx参照)により斜板の角度(傾転角)が制御されることにより、ピストンのストローク長を調整し、吐出流量(吐出圧)を制御することができる。
コントロールバルブ17は、例えば、上部旋回体3の中央部に搭載され、オペレータによる操作装置26の操作に応じて、油圧駆動系の制御を行う油圧制御装置である。走行油圧モータ1A(右用),1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、旋回油圧モータ21等は、高圧油圧ラインを介してコントロールバルブ17に接続される。コントロールバルブ17は、メインポンプ14とそれぞれの油圧アクチュエータとの間に設けられ、メインポンプ14からそれぞれの油圧アクチュエータに供給される作動油の流量と流れる方向を制御する複数の油圧制御弁、即ち、方向切換弁(例えば、後述するブーム用方向制御弁17A)を含むバルブユニットである。
続いて、本実施形態に係るショベル100の操作系は、パイロットポンプ15、操作装置26、圧力センサ29等を含む。
パイロットポンプ15は、例えば、上部旋回体3の後部に搭載され、パイロットライン25を介してメカニカルブレーキ23及び操作装置26にパイロット圧を供給する。パイロットポンプ15は、例えば、固定容量式油圧ポンプであり、上述の如く、エンジン11により駆動される。
操作装置26は、レバー装置26A,26Bと、ペダル装置26Cを含む。操作装置26は、キャビン10の操縦席付近に設けられ、オペレータが各動作要素(下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、バケット6等)の操作を行う操作手段である。換言すれば、操作装置26は、各動作要素を駆動するそれぞれの油圧アクチュエータ(走行油圧モータ1A,1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、旋回油圧モータ21)等の操作を行う操作手段である。操作装置26(レバー装置26A,26B、及びペダル装置26C)は、油圧ライン27を介して、コントロールバルブ17に接続される。これにより、コントロールバルブ17には、操作装置26における下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の操作状態に応じたパイロット信号(パイロット圧)が入力される。そのため、コントロールバルブ17は、操作装置26における操作状態に応じて、各油圧アクチュエータを駆動することができる。また、操作装置26は、油圧ライン28を介して圧力センサ29に接続される。
レバー装置26A,26Bは、それぞれ、キャビン10内の操縦席に着座したオペレータから見て、左側及び右側に配置され、それぞれの操作レバーが中立状態(オペレータによる操作入力が無い状態)を基準にして前後方向及び左右方向に傾倒可能に構成される。これにより、レバー装置26Aにおける操作レバーの前後方向の傾倒、及び左右方向の傾倒、並びに、レバー装置26Bにおける操作レバーの前後方向の傾倒、及び左右方向の傾倒のそれぞれに対して、上部旋回体3(旋回油圧モータ21)、ブーム4(ブームシリンダ7)、アーム5(アームシリンダ8)、及びバケット6(バケットシリンダ9)の何れかを操作対象として任意に設定されうる。
また、ペダル装置26Cは、下部走行体1(走行油圧モータ1A,1B)を操作対象とし、キャビン10内のキャビン10内の操縦席に着座したオペレータから見て、前方のフロアに配置され、その操作ペダルは、オペレータにより踏み込み可能に構成される。
圧力センサ29は、上述の如く、油圧ライン28を介して操作装置26と接続され、操作装置26の二次側のパイロット圧、即ち、操作装置26における各動作要素の操作状態に対応するパイロット圧を検出する。圧力センサ29は、コントローラ30に接続され、操作装置26における下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の操作状態に応じた圧力信号(圧力検出値)がコントローラ30に入力される。これにより、コントローラ30は、ショベルの下部走行体1、上部旋回体3、及びアタッチメントの操作状態を把握することができる。
続いて、本例に係るショベル100の制御系は、コントローラ30、各種センサ32等を含む。
コントローラ30は、ショベル100における駆動制御を行う主たる制御装置である。コントローラ30は、任意のハードウェア、ソフトウェア、或いはそれらの組み合わせにより実現されてよい。コントローラ30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、補助記憶装置、I/O(Input-Output interface)等を含むマイクロコンピュータを中心に構成されてよく、ROMや補助記憶装置等に格納される各種プログラムをCPU上で実行することにより各種駆動制御が実現される。
本実施形態では、コントローラ30は、オペレータが意図しないショベル100の所定の動作(以下、単に、意図しない動作と称する)、つまり、オペレータにとって好ましくないショベル100の動作の発生の有無を判定する。そして、コントローラ30は、そのような意図しない動作が発生したと判定されると、当該動作を抑制するように、ショベル100のアタッチメントの動作を補正する。これにより、ショベル100に発生した意図しない動作が抑制される。
意図しない動作には、例えば、オペレータによる下部走行体1の操作が行われていないにも関わらず、ショベル100が掘削反力等により前方に引き摺られる前方引き摺り動作や、ショベル100が均し作業等における地面からの反力により後方に引き摺られる後方引き摺り動作が含まれる。以下、前方引き摺り動作と後方引き摺り動作とを区別せず、単に、引き摺り動作と称する場合がある。また、意図しない動作には、例えば、掘削反力等により、ショベル100の前部或いは後部が浮き上がる浮き上がり動作が含まれる。以下、浮き上がり動作のうち、ショベル100の前部が浮き上がる場合を前部浮き上がり動作と称し、ショベル100の後部が浮き上がる場合を後部浮き上がり動作と称して区別する場合がある。また、意図しない動作には、例えば、ショベル100のアタッチメントの空中動作(バケット6が接地していない状態での動作)中の慣性モーメントの変化が誘発する車体(下部走行体1、旋回機構2、及び上部旋回体3)の振動動作が含まれる。意図しない動作の詳細については、後述する。
コントローラ30は、例えば、ROMや補助記憶装置に格納される一以上のプログラムをCPU上で実行することにより実現される機能部として、動作判定部301と、動作補正部302を含む。
動作判定部301は、圧力センサ29や各種センサ32から入力される、ショベル100の各種状態に関するセンサ情報に基づき、意図しない動作の発生の有無を判定する。判定方法の詳細については、後述する。
動作補正部302は、動作判定部301により意図しない動作が発生したと判定された場合に、アタッチメントの動作を補正し、意図しない動作を抑制させる。補正補法の詳細については、後述する。
各種センサ32は、ショベル100の各種状態やショベル100の周辺の各種状態を検出する既知の検出手段である。各種センサ32には、上部旋回体3とブーム4との連結点におけるブーム4の基準面に対する角度(ブーム角度)、ブーム4とアーム5との間の相対的な角度(アーム角度)、及び、アーム5とバケット6との間の相対的な角度(バケット角度)を検出する角度センサが含まれうる。また、各種センサ32には、油圧アクチュエータ内の油圧状態、具体的には、油圧シリンダのロッド側油室及びボトム側油室の圧力を検出する圧力センサ等が含まれうる。また、各種センサ32には、下部走行体1、上部旋回体3、及びアタッチメントのそれぞれの動作状態を検出するセンサ、例えば、加速度センサ、角加速度センサ、及び三軸加速度、及び三軸角加速度を出力可能な三軸慣性センサ(IMU:Inertial Measurement Unit)等が含まれうる。また、各種センサ32には、ショベル100の周辺の地形や障害物等との相対位置関係を検出する距離センサや画像センサ等が含まれうる。
[オペレータの意図しないショベルの動作]
次に、図3〜図8を参照して、オペレータが意図しないショベル100の動作の詳細について説明する。
<前方引き摺り動作>
まず、図3は、ショベル100の前方引き摺り動作を説明する図である。具体的には、図3は、前方引き摺り動作が発生するショベル100の作業状況を示す図である。
図3に示すように、ショベル100は、地面30aの掘削作業を行っており、主に、アーム5及びバケット6の閉じ動作によって、バケット6から地面30aにショベル100の車体(下部走行体1、旋回機構2、上部旋回体3)寄りの斜め下方向への力F2が作用する。このとき、ショベル100の車体(下部走行体1、旋回機構2、上部旋回体3)には、バケット6に作用する力F2の反力、即ち、掘削反力F2aのうちの水平方向成分F2aHに対応する反力F3がアタッチメントを介して作用する。そして、反力F3がショベル100と地面30aとの間の最大静止摩擦力F0を上回ると、車体は前方に引き摺られてしまう。
<後方引き摺り動作>
続いて、図4は、ショベル100の後方引き摺り動作を説明する図である。具体的には、図4(a),(b)は、後方引き摺り動作が発生するショベル100の作業状況を示す図である。
図4(a)に示すように、ショベル100は、地面40aの均し作業を行っており、主としてアーム5の開き動作によって、バケット6が土砂40bを前方に押し出すように力F2が発生している。このとき、ショベル100の車体には、バケット6に作用する力F2の反力に対応する反力F3がアタッチメントを介して作用する。そして、反力F3がショベル100と地面40aとの間の最大静止摩擦力F0を上回ると、車体は前方に引き摺られてしまう。
また、図4(b)に示すように、ショベル100は、河川工事などを行っており、主としてアーム5の開き動作によって、バケット6を傾斜した土手部分の壁面40cに対して押し付けて土砂を固め、整地する作業を行っている。このような作業においても、バケット6に作用する壁面40cを押し付ける力F2の反力に対応する反力F3が、アタッチメントから車体を後方に引き摺るように作用する。
<前部浮き上がり動作>
続いて、図5は、ショベル100の前部浮き上がり動作を説明する図である。具体的には、図5は、前部浮き上がり動作が発生するショベル100の作業状況を示す図である。
図5に示すように、ショベル100は、地面50aの掘削作業を行っており、主に、アーム5及びバケット6の閉じ動作によって、バケット6から地面50aにショベル100の車体寄りの斜め下方向への力F2が作用する。このとき、ショベル100の車体には、バケット6に作用する力F2の反力、即ち、掘削反力F2aのうちの垂直方向成分F2aVに対応する車体を後方に傾斜させようとする反力F3(力のモーメント。以下、本実施形態では、単に「モーメント」と称する)がアタッチメントを介して作用する。具体的には、当該反力F3は、ブームシリンダ7を引き上げようとする力F1として車体に作用する。そして、この力F1に起因して車体を後方に傾斜させようとするモーメントが、重力に基づく車体を地面に抑え付けようとする力(モーメント)を上回ると、車体の前部が浮き上がってしまう。
<後部浮き上がり動作>
続いて、図6は、ショベル100の後部浮き上がり動作を説明する図である。具体的には、図6は、後部浮き上がり動作が発生するショベル100の作業状況を示す図である。
図6に示すように、ショベル100は、地面60aの掘削作業を行っている。バケット6が斜面60bを掘り込むように力F2(モーメント)が発生しており、また、ブーム4がバケット6を斜面60bに抑え付けるように、換言すれば、ブーム4が車体を前傾させるように、力F3(モーメント)が発生している。このとき、ブームシリンダ7のロッドを引き上げる力F1が発生し、力F1が、ショベル100の車体を傾けるように作用する。そして、力F1に起因する車体を前傾させようとするモーメントが、重力に基づく車体を地面に抑え付けようとする力(モーメント)を上回ると、車体の前部が浮き上がってしまう。
特に、バケット6が地面や対象物に接触し、引っかかったり、或いは、めり込んだりしている場合、ブーム4に力が作用してもブーム4は動かないため、ブームシリンダ7のロッドは変位しない。ブームシリンダ7の収縮側(本例では、ロッド側)の油室の圧力が大きくなると、ブームシリンダ7自体を持ち上げる力F1、即ち、車体を前方に傾けようとする力が大きくなる。
このような状況は、例えば、図6に示す前方斜面の整地作業の他、バケット6が車体(下部走行体1)よりも下方に位置する深掘り作業等で生じうる。また、ブーム4自体が操作された場合に限らず、アーム5やバケット6が操作された場合にも生じうる。
<振動動作>
続いて、図7、図8は、ショベル100の振動動作の一例を説明する図である。具体的には、図7は、ショベル100の空中動作時に振動動作が発生する状況を説明する図である。また、図8は、図7に示す状況におけるショベル100の排出動作に伴うピッチング軸方向の角度(ピッチ角度)及び角速度(ピッチ角速度)の時間波形を示す図である。本例では、空中動作の一例として、バケット6内の積載物DPを排出する排出動作を説明する。
図7(a)に示すように、ショベル100は、バケット6及びアーム5が閉じられ、且つ、ブーム4が上がった状態となっており、バケット6には、土砂などの積載物DPが収容されている。
図7(b)に示すように、図7(a)に示す状態からショベル100の排出動作が行われると、バケット6及びアーム5が大きく開かれ、ブーム4が下げられ、積載物DPがバケット6の外部に排出される。このとき、アタッチメントの慣性モーメントの変化が、ショベル100の車体を図中矢印Aに示すピッチング方向に振動させるように作用する。
このとき、図8に示すように、空中動作、具体的には、排出動作に起因して、ショベル100を転倒させようとする転倒モーメントが発生し、ピッチ軸周りの振動が発生することが分かる。
[ショベルの意図しない動作の抑制方法]
次に、図9〜図18を参照して、上述したショベル100の意図しない動作の抑制方法について説明する。
<ショベルの意図しない動作の抑制方法の概略>
まず、図9は、ショベル100の意図しない動作の抑制方法を概略的に説明する図である。具体的には、図9(a)〜(d)は、それぞれ、下部走行体1の向きと上部旋回体3の旋回位置との組み合わせが互いに異なるショベル100の状態を示す、ショベル100を真上から見た平面図である。
アタッチメント、即ち、ブーム4、アーム5、バケット6は、その姿勢や作業内容に関わらず、常に、平面視で見たときのアタッチメントが延在する方向に対応する直線L1上、つまり、同一鉛直平面上で動作する。そのため、アタッチメントの動作中に、アタッチメントから作用する反力F3は、ショベル100の車体に対して、当該鉛直平面上で作用すると言える。これは、下部走行体1と上部旋回体3との位置関係(旋回角度)にも依存しない。図3〜図7で示したように、反力F3の平面視での向きは、作業内容によって異なり得る。つまり、引き摺り動作、浮き上がり動作、及び振動動作等の意図しない動作がショベル100に生じているとき、その動作は、アタッチメントの動作に起因していることを示しており、従って、アタッチメントを制御することにより、上述の意図しない動作を抑制できる。
<引き摺り動作の抑制方法>
図10は、ショベル100の前方引き摺り動作の抑制方法の一例を概略的に説明する図である。具体的には、図10は、前方引き摺り動作に関するショベル100の力学的モデルの一例を示す図であり、図3と同様、ショベル100が地面100aの掘削作業を行っている場合に、ショベル100に作用する力を示す図である。図11は、ショベル100の後方引き摺り動作の抑制方法の一例を概略的に説明する図である。具体的には、図11は、後方引き摺り動作に関する力学的モデルの一例を示す図であり、より具体的には、図4(a)と同様、ショベル100が地面110aの土砂110bの均し作業を行っている場合に、ショベル100に作用する力を示す図である。
図10、図11に示すように、ブームシリンダ7が車体(上部旋回体3)を水平方向(前後の何れか)に押す力F3は、ブームシリンダ7と鉛直軸100c,110cがなす角度η1と、ブームシリンダ7が上部旋回体3に及ぼす力F1、つまり、アタッチメントから車体に作用する力F1に基づき、次の式(1)で表される。
F3=F1sinη1 ・・・(1)
一方、最大静止摩擦力F0は、下部走行体1と地面100a,110aとの間の静止摩擦係数μ、車体重量M、及び重力加速度gに基づき、次の式(2)で表される。
F0=μMg ・・・(2)
ショベル100が反力F3により引き摺られないための条件は、次の式(3)で表される。
F3<F0 ・・・(3)
よって、式(3)に、式(1)、(2)を代入することにより、次の式(4)を得ることができる。
F1sinη1<μMg ・・・(4)
つまり、動作補正部302は、式(4)の関係式が成り立つように、ブームシリンダ7の動作を補正することにより、ショベル100の後方引き摺り動作を抑制することができる。
例えば、力F1は、次の式(5)に示すように、ブームシリンダ7のロッド側油室の圧力(ロッド圧)PR及びボトム側油室の圧力(ボトム圧)PBを引数とする関数fで表される。
F1=f(PR,PB) ・・・(5)
動作補正部302(力推定部)は、式(5)に基づき、ロッド圧PRおよびボトム圧PBに基づき、ブームシリンダ7が上部旋回体3に及ぼす力F1を計算(推定)する。このとき、動作補正部302は、各種センサ32に含まれうるブームシリンダ7のロッド圧及びボトム圧を検出する圧力センサの出力信号に基づき、ロッド圧PR及びボトム圧PBを取得してよい。
一例として、力F1は、ロッド側の受圧面積AR、ボトム側の受圧面積ABを用いて、次の式(6)で表されうる。
F1=|AR・PR−AB・PB| ・・・(6)
よって、動作補正部302(力推定部)は、式(6)に基づき、力F1を計算(推定)してもよい。
また、動作補正部302(角度算出部)は、鉛直軸100c,110cとブームシリンダ7のなす角度η1を算出する。角度η1は、ブームシリンダ7の伸縮長、ショベル100の寸法諸元、及びショベル100の車体の傾き等から幾何学的に計算されうる。例えば、動作補正部302は、各種センサ32に含まれうるブーム角度を検出するセンサの出力を利用し、角度η1を算出してよい。
尚、角度η1は、各種センサ32に含まれうる角度η1を直接的に測定するセンサの出力を利用することにより取得されてもよい。
動作補正部302(圧力調節部)は、算出等により取得された力F1及び角度η1に基づき、式(4)が成り立つように、ブームシリンダ7の圧力、具体的には、ロッド側油室或いはボトム側油室のうちの圧力過剰な一方の圧力を制御する。つまり、動作補正部302(圧力調節部)は、式(4)が成り立つように、ブームシリンダ7のロッド圧PR或いはボトム圧PBを調節する。より具体的には、後述する各種構成(図26〜図34参照)を採用することにより、動作補正部302は、適宜制御指令を制御対象に出力することで、ブームシリンダ7の圧力を調整し、ショベル100の引き摺り動作を抑制できる。
尚、式(4)における静止摩擦係数μは、典型的な所定値が用いられてもよいし、作業場の地面の状況に応じて、オペレータにより入力される態様であってもよい。また、ショベル100は、静止摩擦係数μを推定する手段を更に有してもよい。具体的には、当該推定手段は、ショベル100が地面に対して静止した状態において、アタッチメントによる作業中に車体の滑り(引き摺り)が発生したときの力F1から、静止摩擦係数μを計算することができる。この場合、例えば、後述の如く、ショベル100の上部旋回体3に加速度センサ等を適宜搭載する等により、引き摺りの発生の有無が判定されうる。
<浮き上がり動作の抑制方法>
続いて、図12は、ショベル100の前部浮き上がり動作の抑制方法の一例を概略的に説明する図である。具体的には、図12は、前部浮き上がり動作に関連するショベル100の力学的なモデルを示す図であり、図5と同様、ショベル100が地面120aの掘削作業を行っている場合に、ショベル100に作用する力を示す図である。
図12に示すように、ショベル100の前部浮き上がり動作における転倒支点P1は、下部走行体1の有効接地領域120bのうち、アタッチメントが延在する方向(上部旋回体3の向き)における最後端とみなすことができる。よって、転倒支点P1まわりに車体前部を持ち上げようとするモーメントτ1は、ブームシリンダ7の延長線l2と転倒支点P1との間の距離D3と、力F1に基づき、次の式(7)で表される。
τ1=D3・F1 ・・・(7)
一方、重力が転倒支点P1まわりに車体を地面に抑え付けようとするモーメントτ2は、ショベル100の車体重心P3と、下部走行体1の後方の転倒支点P1との間の距離D1と、車体重量Mと、重力加速度gに基づき、次の式(8)で表される。
τ2=D1・Mg …(8)
車体の前部が浮き上がらずに安定する条件(安定条件)は、次の式(9)で表される。
τ1<τ2 …(9)
よって、式(9)に、式(7),(8)が代入されることにより、安定条件として、次の不等式(10)が得られる。
D3・F1<D1・Mg ・・・(10)
つまり、動作補正部302は、制御条件として不等式(10)が成り立つように、アタッチメントの動作を補正することにより、ショベル100の前部浮き上がり動作を防止できる。
また、具体的には、図13は、後部浮き上がりに関連するショベルの力学的なモデルを示す図であり、図6と同様、地面130aの掘削作業を行っている場合に、ショベル100に作用する力を示す図である。
ショベル100の後部浮き上がり動作における転倒支点P1は、下部走行体1の有効接地領域130bのうち、アタッチメントが延在する方向(上部旋回体3の向き)における最先端とみなすことができる。よって、転倒支点P1まわりに車体を前方に傾けようとするモーメントτ1、即ち、車体後部を持ち上げようとするモーメントτ1は、ブームシリンダ7の延長線l2と、転倒支点P1の間の距離D4と、ブームシリンダ7が上部旋回体3に及ぼす力F1とに基づき、次の式(11)で表される。
τ1=D4・F1 ・・・(11)
一方、重力が転倒支点P1まわりに車体を地面に抑え付けようとするモーメントτ2は、ショベルの車体重心P3と、下部走行体1の前方の転倒支点P1の間の距離D2と、車体重量Mと、重力加速度gに基づき、次の式(12)で表される。
τ2=D2・Mg ・・・(12)
車体の後方が浮き上がらずに安定する条件(安定条件)は、式(9)と同様、次の式(13)で表される。
τ1<τ2 …(13)
よって、式(13)に、式(11),(12)が代入されることにより、安定条件として、次の不等式(14)が得られる。
D4・F1<D2・Mg ・・・(14)
つまり、動作補正部302は、制御条件として不等式(14)が成り立つように、アタッチメントの動作を補正すれば、ショベル100の後部浮き上がり動作を防止できる。
尚、距離D1,D2を距離DA,距離D2,D4を距離DBと置いて、転倒支点P1を前後で入れ換えれば、前方の浮き上がりと後方の浮き上がりの制御条件(安定条件)は、次の式(15)のようにまとめることができる。
DB・F1<DA・Mg ・・・(15)
例えば、力F1は、上述の式(5)と同様、次の式(16)に示すように、ブームシリンダ7のロッド圧PR及びボトム圧PBを引数とする関数fで表される。
F1=f(PR,PB) ・・・(16)
動作補正部302(力推定部)は、ロッド圧PRおよびボトム圧PBにもとづいて、ブームシリンダ7が上部旋回体3に及ぼす力F1を計算(推定)する。このとき、上述の如く、動作補正部302は、各種センサ32に含まれうるブームシリンダ7のロッド圧及びボトム圧を検出する圧力センサの出力信号に基づき、ロッド圧PR及びボトム圧PBを取得してよい。
一例として、力F1は、上述の式(6)と同様、ロッド側の受圧面積AR、ボトム側の受圧面積ABを用いて、次の式(17)で表されうる。
F1=|AR・PR−AB・PB| ・・・(17)
動作補正部302(力推定部)は、式(17)に基づき、力F1を計算(推定)してもよい。
また、動作補正部302(距離取得部)は、距離D1,D3或いは距離D2,D4を取得する。また、動作補正部(距離取得部)は、それらの比(D1/D3或いはD2/D4)を取得してもよい。
アタッチメントを除く車体重心P3の位置は、上部旋回体3の旋回角度θに関わらず一定であるが、転倒支点P1の位置は、旋回角度θにより変化する。よって、実際には、距離D1,D2は、上部旋回体3の旋回角度θに応じて変化しうるが、簡単のため、距離D1,D2を定数としてもよい。
距離D3,D4は、転倒支点P1の位置と、ブームシリンダ7の角度(例えば、ブームシリンダ7と鉛直軸130cのなす角度η1)とに基づき、幾何学的に計算されうる。
角度η1は、ブームシリンダ7の伸縮長、ショベル100の寸法諸元、及びショベル100の車体の傾き等から幾何学的に計算されうる。例えば、動作補正部302は、各種センサ32に含まれうるブーム角度を検出するセンサの出力を利用し、角度η1を算出してよい。
尚、角度η1は、各種センサ32に含まれうる角度η1を直接的に測定するセンサの出力を利用することにより取得されてもよい。
動作補正部302(圧力調節部)は、算出等により取得された力F1と、距離D1,D3或いは距離D2,D4とにもとづいて、不等式(15)、即ち、不等式(10)或いは(14)が成り立つように、ブームシリンダ7の圧力、具体的には、ロッド側油室或いはボトム側油室のうちの圧力過剰な一方の圧力を制御する。つまり、動作補正部302(圧力調節部)は、不等式(15)が成り立つように、ブームシリンダ7のロッド圧PR或いはボトム圧PBを調節する。より具体的には、後述する各種構成(図26〜図34参照)を採用することにより、動作補正部302は、適宜制御指令を制御対象に出力することで、ブームシリンダ7の圧力を調整し、ショベル100の浮き上がり動作を抑制できる。
<転倒支点の変化を考慮した浮き上がり動作の抑制方法>
上述の説明では、転倒支点P1を固定的に取り扱ったが、上述の如く、転倒支点P1の位置は、変化しうるため、転倒支点P1の変化を考慮してもよい。以下、図14〜図16を参照して、転倒支点の変化を考慮した浮き上がり動作の抑制方法について説明する。
上述の如く、前部浮き上がり、後部浮き上がりが発生しない制御条件(安定条件)は、不等式(15)、即ち、不等式(10),(14)である。不等式(10)、(14)は、距離D1,D2,D3,D4をパラメータとし、これらの距離は、転倒支点P1の位置に依存する。
図14は、アタッチメントが延在する方向(アタッチメントの向き)と下部走行体1の向き(走行方向)とが同じ場合を旋回角度θ=0°とし、右旋回を正方向とする場合の転倒支点P1と上部旋回体3の向き(旋回角度θ)との関係を説明する図である。具体的には、図14(a)〜(c)は、それぞれ、旋回角度θが0°の場合、30°の場合、及び90°の場合における転倒支点P1を表す図である。また、図15は、転倒支点P1と地面150a(作業フィールド)の状態との関係を説明する図である。
尚、図14(a)〜(c)では、後部浮き上がりを想定し、転倒支点P1が車体前部に位置している。また、図14(a)〜(c)における線l1は、アタッチメントが延在する方向(上部旋回体3の向き)と直交し、かつ、有効接地領域140aのうちのアタッチメントの延在方向における最先端を通る線を表しており、転倒支点P1は、線l1上に位置する。また、図15では、実線は、堅い地面150aを表し、一点鎖線は、柔かい地面150bを表す。
図14、図15に示すように、転倒支点P1は、上部旋回体3の向きや地面の状態に応じて移動する。
例えば、図14(a)〜(c)に示すように、転倒支点P1が移動すると、距離D2も変化する。また、同様に、距離D4も、転倒支点P1の移動にともなって変化する。
また、例えば、図15に示すように、堅い地面150aの上では、転倒支点P1は、実線三角の位置に存在する。一方、柔らかい地面150bの上では、転倒支点P1aは一点鎖線の三角の位置に存在しうる。そのほか、作業フィールド上の転倒支点P1の近傍に堅い障害物が存在していたり、下部走行体1が障害物に乗り上げたり等している場合、転倒支点P1は、更に移動しうる。
転倒支点P1の移動は、距離D1〜D4に影響を与え、車体が転倒しない力学的な安定条件に影響を及ぼす。よって、動作補正部302は、転倒支点P1の位置に応じた制御条件(安定条件)を設定し、設定した制御条件に基づき、ショベル100の浮き上がり動作が抑制されるように、アタッチメントの動作を補正してよい。
例えば、動作判定部301は、後述の如く、各種センサ32からの入力に基づき、車体やアタッチメントの状態を監視し、下部走行体1の前部或いは後部が浮き上がった瞬間を特定する。そして、動作補正部302は、アタッチメントの動作を補正する際の制御条件(安定条件)、つまり、一例としての不等式(10),(14)を、車体(下部走行体1)の浮き上がりの瞬間におけるショベル100の状態に基づき、動的に変化させる。
浮き上がりの瞬間は、アタッチメントが車体を傾けようとする力F1に基づくモーメントτ1と、それに抗う重力に基づくモーメントτ2がバランスした状態と近似しうる。よって、浮き上がりの瞬間を特定し、ショベル100の状態を監視することにより、浮き上がりを抑制するための制御条件を適応的に設定でき、様々な使用状況下において、浮き上がりを適切に抑制できる。
動作判定部301は、各種センサ32からの入力に基づき、ショベル100(下部走行体1)の浮き上がりの瞬間を特定(検出)する。例えば、センサ610は、各種センサ32に含まれうる、上部旋回体3に搭載される姿勢センサ(傾斜センサ)、ジャイロセンサ(角加速度センサ)、加速度センサ、IMU等からの出力に基づき、ピッチ軸周りの回転を検出し、浮き上がりの瞬間を特定してよい。
例えば、動作補正部302(条件設定部)は、動作判定部301によって、各種センサ32の出力に基づき、前回りの角加速度或いは角速度が検出されると、後方浮き上がりを抑制するための制御条件を設定する。一方、動作補正部302(制御条件設定部)は、動作判定部301によって、各種センサ32の出力に基づき、前後回りの角加速度或いは角速度)が検出されると、前部浮き上がりを抑制するための制御条件を設定する。
動作補正部302(条件設定部)は、動作判定部301により特定(検出)された浮き上がりの瞬間におけるブームシリンダ7が上部旋回体3に及ぼす力F1(力F1_INIT)を取得する。そして、動作補正部302(条件設定部)は、取得した力F1_INITに基づき、転倒支点P1の位置と関連するパラメータを取得すると共に、当該パラメータに基づき、制御条件を設定する。
例えば、前部浮き上がりを抑制する制御条件として、上述の不等式(10)を用いる。
動作判定部301により、前部浮き上がりに相当する後ろ回りのピッチングが検出された場合、その浮き上がりの瞬間において、モーメントτ1とモーメントτ2とが釣り合うため、次の式(18)が成り立つ。
D3・F1_INIT=D1・Mg ・・・(18)
が成り立つ。力F1_INIT、車体重量M、及び重力加速度gは既知であるから、式(18)は、現在のショベル100の使用状況において、距離D1,D3が満たすべき関係式と考えられる。
式(18)が既知であれば、距離D1,D3は幾何学的に一意に定まる。そこで、動作補正部302(条件設定部)は、式(18)、及び、アタッチメントの姿勢に基づき、現在の距離D1,D3(距離D1_DET,D3_DET)を取得する。
尚、距離D1を取得することは、転倒支点P1の位置情報を取得することと等価である。車体重心P3の位置は不変であるため、距離D1が求まれば、転倒支点P1の位置は一意に定まるからである。
そして、動作補正部302(条件設定部)は、それ以降の制御条件を、以下の不等式(19)に設定する。
D3_DET・F1<D1_DET・Mg ・・・(19)
動作補正部302は、式(19)で表される制御条件に基づき、アタッチメントの動作を補正する。
一度取得された距離D1は、上部旋回体3の方向を変化させず、また、地面状況が変化しない限り、同じ値を用いることができる。一方、距離D3は、ブーム4の上げ下げに応じて変化する。そこで、動作補正部302(条件設定部)は、ブーム4の角度が変化すると、それに応じて距離D3を変化させ、制御条件に反映させる。
後部浮き上がりに関しても同様の制御が行われる。例えば、後部浮き上がりを抑制する制御条件として、上述の不等式(14)を用いる。
動作判定部301により、後部浮き上がりに相当する前回りのピッチングが検出された場合、その浮き上がりの瞬間において、モーメントτ1とモーメントτ2とが釣り合うため、次の式(20)が成り立つ。
D4・F1_INIT=D2・Mg ・・・(20)
力F1_INIT、車体重量M、及び重力加速度gは既知であるから、式(20)は、現在のショベル100の使用状況において、距離D2,D4が満たすべき関係式と考えられる。
動作補正部302(条件設定部)は、式(18)、及び、アタッチメントの姿勢に基づき、現在の距離D2,D4(距離D2_DET,D4_DET)を取得する。
尚、距離D2を取得することと、転倒支点P1の位置情報を取得することは等価である。
そして、動作補正部302(条件設定部)は、それ以降の制御条件を、上述の不等式(14)に基づき、以下の不等式(21)に設定する。
D2_DET・F1<D4_DET・Mg ・・・(21)
動作補正部302は、式(21)で表される制御条件に基づき、アタッチメントの動作を補正する。
一度取得された距離D2は、上部旋回体3の方向を変化させず、また、地面状況が変化しない限り、同じ値を用いることができる。一方、距離D4は、ブーム4の上げ下げに応じて変化する。そこで、動作補正部302(条件設定部)は、ブーム4の角度が変化すると、それに応じて距離D4を変化させ、制御条件に反映させる。
図16は、コントローラ30(動作判定部301、動作補正部302)による制御条件を設定する処理(条件設定処理)の一例を概略的に示すフローチャートである。本フローチャートによる処理は、例えば、ショベルが起動されてから停止するまでの間で、定期的に、即ち、所定時間ごとに、実行されてよい。
ステップS1600にて、動作判定部301は、アタッチメントを使用した掘削作業中か否かを判定する。アタッチメントを使用した掘削作業中であるか否かを判定する判定条件は、例えば、走行中でなく、且つ、旋回中でなく、且つ、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9の少なくとも一つに所定圧以上の圧力が発生していることであってよい。動作判定部301は、掘削作業中である場合、ステップS1602に進み、掘削作業中でない場合、今回の処理を終了する。
尚、掘削作業には、均し作業や埋め戻し作業等も含まれる。
ステップS1602にて、動作判定部301は、ショベル100の浮き上がり動作の有無を監視する。動作判定部301は、浮き上がりを特定(検出)した場合、ステップS1804に進み、浮き上がりを特定(検出)しなかった場合、今回の処理を終了する。
尚、制御条件を設定する前のステップS1602において、ショベル100の車体が一瞬、浮き上がる。コントローラ30において、プロセッサとソフトウェアプログラムの適切な組み合わせが使用されれば、浮き上がりの特定(検出)後、ステップS1602における1回目の浮き上がりが大きな車体の傾きに発展する前に、きわめて短時間で制御条件を設定されうる。そして、動作補正部302は、浮き上がりが大きな車体の傾きに発展する前に、アタッチメントの動作補正を開始することができる。
ステップS1604にて、動作補正部302は、浮き上がりの瞬間におけるショベル100の状態に関する情報を取得する。ショベル100の状態に関する情報は、例えば、上述した力F1_INITである。
ステップS1606にて、動作補正部302は、ステップS1604で取得したショベルの状態に関する情報に基づき、転倒支点P1に関するパラメータ、例えば、距離D1〜D4を算出し、制御条件を設定する。以降、動作補正部302は、後述するステップS1610の処理により制御条件が修正されない限り、現在の掘削作業が終了するまで、設定された制御条件に基づき、アタッチメントの動作を補正する。
ステップS1608にて、動作判定部301は、ブーム4の姿勢が変化したか否かを判定する。動作判定部301は、ブーム4の姿勢が変化した場合、ステップS1610に進み、変化していない場合、ステップS1612に進む。
ステップS1610にて、動作補正部302は、ブーム4の姿勢変化に応じて、距離D3,D4が変化しているため、制御条件を修正する。
ステップS1612にて、動作判定部301は、掘削作業が終了しているか否かを判定する。動作判定部301は、掘削作業が終了していない場合、ステップS1608に戻り、終了している場合、今回の処理を終了する。
尚、本例では、距離D1〜D4が算出されることにより、制御条件が規定されたがその限りではない。例えば、不等式(10)、(14)を変形すると、以下の不等式(22)、(23)が得られる。
F1<D1/D3・Mg ・・・(22)
F1<D2/D4・Mg ・・・(23)
浮き上がりの瞬間において、次の式(24)、(25)が成り立つ。
F1_INIT=D1/D3×Mg ・・・(24)
F1_INIT=D2/D4×Mg ・・・(25)
よって、動作補正部302(条件設定部)は、浮き上がりの瞬間の力F1_INITを
取得し、それ以降の制御条件を、式(26)に設定してもよい。
F1<F1_INIT ・・・(26)
ここで、距離D1〜D4、或いは、転倒支点P1の位置が明示的に計算されないが、当然の如く、式(26)で表される制御条件には、正しい転倒支点P1の位置情報が反映されている。
また、本例では、浮き上がりを抑制するための制御条件に、力F1が明示的に含まれる
が、その限りではない。例えば、力F1に代えて、力F1と相関を有する別の力やモーメント等を使用して、制御条件が規定されてもよい。
<振動動作の抑制方法>
図17(a)〜(c)は、ショベル100の振動動作に関連する動作波形の具体例を示す図である。具体的には、図19(a)〜(c)は、ショベル100において、空中動作が繰り返し行われた場合の動作波形図の一例、他の例、及び更に他の例を示す図である。図17(a)〜(c)は、それぞれ、異なる試行を示しており、上から順に、ピッチング角速度(即ち、車体の振動)、ブーム角加速度、アーム角加速度、ブーム角度、アーム角度が示される。
尚、図中、X印は、ピッチ角速度の負のピークに対応するポイントを示している。
図17(a)〜(c)に示すように、ブーム角の変化が止まるときに、振動動作が誘発されることが分かる。換言すれば、ブーム角加速度が、振動動作の発生に及ぼす影響が最も大きいと言え、裏を返せば、ブーム角速度を制御することが振動動作の抑制に有効であることを示している。このことは、バケット角に関する慣性モーメント(イナーシャ)にはバケット6の質量のみが影響を与え、アーム角に関する慣性モーメントには、バケット6とアーム5の質量が影響を与えるのに対して、ブーム角に関する慣性モーメントには、ブーム4のみでなく、アーム5及びバケット6の全質量が影響を与えることからも直感的に理解されうる。
そこで、動作補正部302は、ブームシリンダ7を制御対象として、その動作を補正することが好ましい。即ち、ブームシリンダ7の推力がアタッチメントの状態にもとづく上限値(制限推力FMAX)を超えないように、動作補正部302は動作する。
ブームシリンダ7の推力Fは、ロッド側油室の受圧面積AR、ロッド側油室のロッド圧PR、ボトム側油室の受圧面積AB、及びボトム側油室のボトム圧PBに基づき、以下の式(27)で表される。
F=AB・PB−AR・PR ・・・(27)
よって、ブームシリンダ7の推力Fは、制限推力FMAXより小さい必要があるため、以下の式(28)が成立する必要がある。
FMAX>AB・PB−AR・PR ・・・(28)
よって、式(28)から以下の式(29)が得られる。
PB<(FMAX+AR・PR)/AB ・・・(29)
式(29)の右辺が、制限推力FMAXに対応するボトム圧PBの上限値PBMAXに相当し、次の式(30)が得られる。
PBMAX=(FMAX+AR・PR)/AB ・・・(30)
動作補正部302は、式(30)が成立するように、アタッチメントの動作、即ち、ブームシリンダ7の動作を補正する。即ち、動作補正部302は、式(30)が成立するように、ブームシリンダ7のボトム圧PBを調節する。より具体的には、後述する各種構成(図27〜図35参照)が採用されることにより、動作補正部302は、適宜制御指令を制御対象に出力することで、ブームシリンダ7のボトム圧PBを調整し、ショベル100の振動動作を抑制できる。
動作補正部302は、各種センサ32からの検出信号に基づき、制限推力FMAXを取得する。一実施例において制限推力取得部586は、アタッチメントの状態、即ち、すなわち各種センサ32からの検出信号を入力とする演算により制限推力FMAXを取得する。これにより、動作補正部302は、式(30)からボトム圧PBの上限値PBMAXを算出し、算出した上限値PBMAXを超えないように、ブームシリンダ7のボトム圧PBを調整することができる。
このとき、制限推力FMAXを小さくしすぎると、ブーム4が下がってくるため、動作補正部302は、ブーム4の姿勢を保持可能な推力(保持推力FMIN)を取得し、保持推力FMINより高い範囲で、制限推力FMAXを設定するとよい。
例えば、図18は、動作補正部302による制限推力FMAXの取得方法を説明する図である。具体的には、図18は、動作補正部302における制限推力FMAXの取得機能に関する構成を示すブロック図である。
図18に示すように、動作補正部302は、テーブル参照に基づき、制限推力FMAXを取得(設定)する。動作補正部302は、第1ルックアップテーブル600、第2ルックアップテーブル602、テーブルセレクタ604、セレクタ606を含む。
第1ルックアップテーブル600は、各種センサ32に含まれるブーム角度センサの出力であるブーム角θ1を入力とし、制限推力FMAXを出力する。第1ルックアップテーブル600は、予め規定されるショベル100の異なる複数の状態に対応して設けられた複数のテーブルを含んでもよい。
第2ルックアップテーブル602は、各種センサ32に含まれるブーム角度センサ及びアーム角度センサから出力されるブーム角θ1およびアーム角θ2を入力とし、保持推力FMINを出力する。第2ルックアップテーブル602は、第1ルックアップテーブル600と同様、予め規定されるショベル100の異なる複数の状態に対応して設けられた複数のテーブルを含んでもよい。
テーブルセレクタ604は、第1ルックアップテーブル600の中から、各種センサ32に含まれるバケット角度センサ、並びに、車体(上部旋回体3)に搭載されるピッチ角度センサ及びスイング角度センサから出力されるバケット角θ3、車体のピッチ角θP、スイング角θSの少なく一つをパラメータとして、最適なテーブルを選択する。
また、テーブルセレクタ604は、第2ルックアップテーブル602の中から、バケット角θ3、車体のピッチ角θP、及びスイング角θSの少なく一つをパラメータとして、最適なテーブルを選択する。
セレクタ606は、制限推力FMAX及び保持推力FMINのうちの大きい一方を出力する。これにより、ブームの下がりを防止しつつ、振動動作を抑制できる。
尚、動作補正部302は、制限推力FMAXを、テーブル参照に代えて演算処理により取得してもよい。また、動作補正部302は、同様に、保持推力FMINをテーブル参照に代えて、演算処理により取得してもよい。
[ショベルの意図しない動作の判定方法]
次に、図19〜図26を参照して、意図しない動作の判定方法について説明する。
<引き摺り動作の判定方法>
図19は、ショベル100の引き摺り動作の発生の判定方法の第1例を説明する図である。具体的には、図19は、ショベル100の上部旋回体3に取り付けられた加速度センサ32Aの取付位置の一例を説明する図である。
本例に係るショベル100の各種センサ32には、加速度センサ32Aが含まれる。
図19に示すように、加速度センサ32Aは、上部旋回体3に搭載される。
加速度センサ32Aは、ショベル100を平面視で見たときのアタッチメントの延在する方向に対応する直線L1に沿う方向に検出軸を有する。アタッチメントが上部旋回体3に及ぼす力の作用点は、ブーム4の根元3Aである。よって、加速度センサ32Aは、ブーム4の根元3Aに設けることが望ましい。これにより、動作判定部301は、加速度センサ32Aの出力信号に基づき、アタッチメントの動作に起因するショベル100の引き摺り動作の発生を好適に特定できる。
ここで、加速度センサ32Aが旋回軸3Bから遠ざかると、上部旋回体3が旋回運動するときに、加速度センサ32Aが、旋回運動による遠心力の影響を受けてしまう。そこで加速度センサ32Aは、ブーム4の根元3Aの近傍であって、且つ、旋回軸3Bの近傍に配置することが望ましい。
即ち、加速度センサ32Aは、ブーム4の根元3Aと上部旋回体3の旋回軸3Bの間の領域R1に配置することが望ましい。これにより、加速度センサ32Aの出力に含まれる旋回運動の影響を低減できるため、動作判定部301は、加速度センサ32Aの出力に基づき、アタッチメントの動作に起因する引き摺り動作を好適に検出できる。
また、加速度センサ32Aの位置が地面から遠すぎると、ピッチングやローリングに起因する加速度成分が加速度センサ32Aの出力に含まれ易くなる。この観点から、加速度センサ32Aは、上部旋回体3のなるべく下の方に配置されることが好ましい。
また、本例では、加速度センサ32Aに代えて、各種センサ32に含まれうる速度センサを上部旋回体3の同様の位置に搭載してもよい。これにより、動作判定部301は、速度センサにより検出される直線L1に沿った速度に対応する出力に基づき、ショベル100の引き摺り動作の発生を特定できる。
また、本例では、各種センサ32は、加速度センサ32Aに加えて、更に、上部旋回体3に搭載される角速度センサを含んでもよい。この場合、動作補正部302は、当該角速度センサの出力に基づき、加速度センサ32Aの出力を補正してもよい。加速度センサ506の出力には、特定方向の直進運動(引き摺り動作)だけでなく、ピッチング方向、ヨーイング方向、ローリング方向の回転運動の成分も含まれうる。この変形例によれば、角速度センサを併用することで、回転運動の影響を除外して、引き摺り動作に相当する直進運動のみを抽出することができるため、動作判定部301による引き摺り動作の判定精度を向上させることができる。
また、本例では、加速度センサ32Aは、上部旋回体3に設けられるが、下部走行体1に設けられてもよい。この場合、各種センサ32に含まれうる上部旋回体3の旋回角度(旋回位置)を検出する角度センサの出力を併用することにより、動作判定部301は、下部走行体1の加速度センサ32Aの出力から、アタッチメントの延在方向(直線L1)に沿った直進運動を特定し、その方向への引き摺り動作の発生を特定することができる。
続いて、図20は、引き摺り動作の発生の判定方法の第2例を説明する図である。
本例では、各種センサ32には、距離センサ32Bが含まれる。
図20に示すように、距離センサ32Bは、ショベル100の上部旋回体3の前端部に取り付けられ、ショベル100の上部旋回体3の前方の所定範囲の地面等の地形や障害物等と、自己が取り付けられる車体(上部旋回体3)との距離を測定する。距離センサ32Bは、例えば、LIDAR(Light Detection and Ranging)、ミリ波レーダ、ステレオカメラ等である。
動作判定部301は、距離センサ32Bにより測定される、上部旋回体3と、ショベル100の周辺の固定された基準対象物との間の相対位置関係の変化に基づき、ショベル100の引き摺り動作の発生を判定する。具体的には、動作判定部301は、距離センサ32Bの出力に基づき、上部旋回体3から見た地面200aの相対位置が略水平方向、具体的には、ショベル100が位置する平面に略平行に移動した場合、引き摺り動作が発生したと判定することができる。例えば、図20に示すように、動作判定部301は、距離センサ32Bの出力に基づき、上部旋回体3から見た前方の地面200aの相対位置が、上部旋回体3に近づく側(点線200bの位置)に略水平移動した場合、ショベル100の前方引き摺り動作が発生した判定することができる。逆に、動作判定部301は、上部旋回体3から見た前方の地面200a上部旋回体3から離れる側に略水平移動した場合、ショベル100の後方引き摺り動作が発生したと判定することができる。
尚、動作判定部301は、距離センサ32Bの代わりに、上部旋回体3とショベル100の周辺の固定された基準対象物との相対位置関係を検出可能な他のセンサ、例えば、画像センサ(単眼カメラ)を利用して、引き摺り動作の発生を判定してもよい。
また、ショベル100の固定された基準対象物は、地面に限定されず建造物や基準対象物としての利用を目的に意図的にショベル100の周辺に配置された特定の物体等でもよい。
また、距離センサ32Bは、上部旋回体3ではなく、アタッチメントに取り付けられてもよい。この場合、動作判定部301は、アタッチメントと基準対象物との距離だけでなく、アタッチメントと上部旋回体3との距離を計測可能であればよい。これにより、動作判定部301は、距離センサ32Bの出力に基づき、アタッチメントから見た基準対象物及び上部旋回体3のそれぞれとの相対位置を特定することができる、即ち、間接的に、上部旋回体3と基準対象物との相対位置関係を判断できる。よって、動作判定部301は、アタッチメントに搭載される距離センサ32Bの出力に基づき、上部旋回体3と基準対象物との相対位置関係が変化し、上部旋回体3から見て上部旋回体3の位置する平面と略平行に移動した場合、引き摺り動作が発生したと判定することができる。
続いて、図21(a),(b)は、引き摺り動作の発生の判定方法の第3例を説明する図である。具体的には、図21(a)は、引き摺り動作が発生していない場合のショベル100を表し、図21(b)は、引き摺り動作が発生している場合のショベル100を表す。
本例では、各種センサ32には、IMU32Cが含まれる。
図21(a),(b)に示すように、IMU32Cは、ブーム4に取り付けられる。
図21(a)に示すように、ショベル100に引き摺り動作が発生していない場合、ブーム4のIMU32Cは、ブーム4の上げ下げに応じた回転運動を検出するため、IMU32Cにより検出される前後方向の加速度成分は、回転運動による相対的に小さい値として出力される。
一方、図21(b)に示すように、ショベル100に引き摺り動作が発生している場合、ショベル100が前後方向に移動するため、IMU32Cによる引き摺り方向、つまり、前後方向の加速度成分が相対的に大きな値として出力される。
よって、動作判定部301は、例えば、IMU32Cにより検出された加速度成分が所定閾値以上になった場合に、引き摺り動作が発生したと判定してよい。所定閾値は、実験やシミュレーション解析等に基づき適宜設定されうる。また、動作判定部301は、検出された加速度成分の方向に応じて、前方引き摺り動作か後方引き摺り動作かを判定することができる。
尚、本例では、前後方向のブーム4の運動を検出可能であれば、IMU32Cの代わりに、速度センサ、加速度センサ等が採用されてもよい。この場合、動作判定部301は、IMU32Cの場合と同様、センサの出力値が相対的に大きくなった場合に、引き摺り動作が発生したと判定してよい。
続いて、図22(a),(b)は、引き摺り動作の発生の判定方法の第4例を説明する図である。具体的には、図22(a)は、引き摺り動作が発生していない場合のショベル100を表し、図22(b)は、引き摺り動作が発生している場合のショベル100を表す。
本例では、各種センサ32には、二つのIMU32Cが含まれる。
図22(a)、(b)に示すように、そのうち、一方のIMU32Cは、アーム5に取り付けられ、他方のIMU32Cは、バケット6に取り付けられる。
図22(a)に示すように、ショベル100に引き摺り動作が発生していない場合、バケット6のIMU32Cにより検出される前後方向の加速度成分は、アーム5の加速度成分とバケット6の駆動軸まわりの角加速度成分の合成により表される。そのため、バケット6のIMU32Cにより検出される加速度成分は、アーム5のIMU32Cにより検出される前後方向の加速度成分より相対的に大きくなる。
一方、図22(b)に示すように、ショベル100に引き摺り動作が発生している場合、アーム5は、引き摺り動作に応じて、前後方向に移動するが、バケット6は、掘削作業により地面に接地しているため、移動しにくい。そのため、バケット6のIMU32Cにより検出される前後方向の加速度成分は、アーム5のIMU32Cにより検出される前後方向の加速度成分よりもある程度小さくなる。
よって、動作判定部301は、例えば、アーム5及びバケット6のIMU32Cのそれぞれにより検出される加速度成分の差分が所定閾値以上になった場合に、引き摺り動作が発生したと判定してよい。所定閾値は、実験やシミュレーション解析等に基づき適宜設定されうる。また、動作判定部301は、アーム5の加速度成分の方向に応じて、前方引き摺り動作か後方引き摺り動作かを判定することができる。
また、アーム5に取り付けられるIMU32Cは、できる限り、アーム5とバケット6との連結位置よりもブーム4とアーム5との連結位置寄りに配置されることが好ましい。これにより、ショベル100の引き摺り動作の発生時に、アーム5とバケット6との連結位置を支点として、アーム5におけるIMU32Cの取付位置の移動量を極力大きくすることができる。そのため、動作判定部301は、アーム5及びバケット6のそれぞれのIMU32Cにより検出された加速度成分の差分により、引き摺り動作をより判定し易くなる。
尚、本例では、アーム5及びバケット6の前後方向の動作が検出可能であれば、IMU32Cの代わりに、速度センサ、加速度センサ等が採用されてもよい。また、本例では、アーム5及びバケット6にIMU32Cが取り付けられるが、更に、ブーム4に取り付けられてもよい。これにより、アーム5及びバケット6のそれぞれのIMU32Cの出力値の差分だけでなく、ブーム4及びバケット6のそれぞれのIMU32Cの出力値の差分から引き摺り動作の有無を判定することができるため、判定精度を高めることができる。また、アーム5のIMU32Cをブーム4に取り付けてもよい。この場合、ブーム4及びバケット6のそれぞれのIMU32Cの出力値の差分から引き摺り動作の有無を判定することができる。
<浮き上がり動作の判定方法>
図23は、ショベル100の浮き上がり動作の発生の判定方法の第1例を説明する図である。具体的には、図23(a)〜(c)は、それぞれ、ショベルの浮き上がり動作が発生したときの車体の前後方向(ピッチ方向)の傾斜角度、角速度、及び角加速度の時間変化を表す図である。
本例では、動作判定部301は、各種センサ32に含まれる、車体の前後方向の傾斜、即ち、ピッチ方向の傾斜角度に関する角度関連情報を出力可能なセンサの出力に基づき、ショベル100の浮き上がり動作の発生を判定する。
車体のピッチ方向の傾斜角度に関する角度関連情報(傾斜角度、角速度、角加速度等)を出力可能なセンサとしては、傾斜センサ(角度センサ)、角速度センサ、IMU等が採用されうる。
例えば、図23(a)〜(c)に示すように、浮き上がり動作が発生すると、ショベル100のピッチ方向の傾斜角度、角速度、及び角加速度は、ある程度大きな値になるため、動作判定部301は、これらの値が所定閾値(図中の点線の一定値)以上になった場合、浮き上がり動作が発生したと判定することができる。また、動作判定部301は、その傾斜角度、角速度、及び角加速度の発生方向、即ち、ピッチ軸を中心として後方傾斜か前方傾斜かにより、前部浮き上がり動作か後部浮き上がり動作かを判定することができる。
続いて、図24は、浮き上がり動作の発生の判定方法の第2例を説明する図である。
本例では、各種センサ32には、図20の場合と同様、距離センサ32Bが含まれる。
図24に示すように、距離センサ32Bは、図20の場合と同様、ショベル100の上部旋回体3の前端部に取り付けられ、ショベル100の上部旋回体3の前方の所定範囲の地面等の地形や障害物等と、自己が取り付けられる車体(上部旋回体3)との距離を測定する。
動作判定部301は、図20の場合と同様、距離センサ32Bにより測定される、上部旋回体3と、ショベル100の周辺の固定された基準対象物との間の相対位置関係の変化に基づき、ショベル100の浮き上がり動作の発生を判定する。具体的には、動作判定部301は、距離センサ32Bの出力に基づき、上部旋回体3から見た地面240aの相対位置が略上下方向、具体的には、ショベル100が位置する平面に略鉛直な方向に移動した場合、浮き上がり動作が発生したと判定することができる。例えば、図24に示すように、動作判定部301は、距離センサ32Bの出力に基づき、上部旋回体3から見た前方の地面200aの相対位置が、略下方向(図中の点線240b)に移動した場合、ショベル100の前部浮き上がり動作が発生した判定することができる。逆に、動作判定部301は、上部旋回体3から見た前方の地面240aの相対位置が、略上方向に移動した場合、ショベル100の後部浮き上がり動作が発生したと判定することができる。
尚、動作判定部301は、距離センサ32Bの代わりに、上部旋回体3とショベル100の周辺の固定された基準対象物との相対位置関係を検出可能な他のセンサ、例えば、画像センサ(単眼カメラ)を利用して、浮き上がり動作の発生を判定してもよい。
また、ショベル100の固定された基準対象物は、地面に限定されず建造物や基準対象物としての利用を目的に意図的にショベル100の周辺に配置された特定の物体等でもよい。
また、距離センサ32Bは、上部旋回体3ではなく、アタッチメントに取り付けられてもよい。この場合、動作判定部301は、アタッチメントと基準対象物との距離だけでなく、アタッチメントと上部旋回体3との距離を計測可能であればよい。これにより、動作判定部301は、距離センサ32Bの出力に基づき、アタッチメントから見た基準対象物及び上部旋回体3のそれぞれとの相対位置を特定することができる、即ち、間接的に、上部旋回体3と基準対象物との相対位置関係を判断できる。よって、動作判定部301は、アタッチメントに搭載される距離センサ32Bの出力に基づき、上部旋回体3と基準対象物との相対位置関係が変化し、上部旋回体3から見て上部旋回体3の位置する平面と略鉛直に移動した場合、浮き上がり動作が発生したと判定することができる。
続いて、図25は、浮き上がり動作の発生の判定方法の第3例を説明する図である。具体的には、具体的には、図25(a)は、浮き上がり動作が発生していない場合のショベル100を表し、図21(b)は、浮き上がり動作が発生している場合のショベル100を表す。
本例では、各種センサ32には、図21(a),(b)の場合と同様、IMU32Cが含まれる。
図25(a),(b)に示すように、IMU32Cは、図21(a),(b)の場合と同様、ブーム4に取り付けられる。
図25(a)に示すように、ショベル100に浮き上がり動作が発生していない場合、ブーム4のIMU32Cは、ブーム4の比較的緩やかな上げ下げに応じた回転運動を検出するため、IMU32Cにより検出される角加速度成分は、相対的に小さい値として出力される。
一方、図25(b)に示すように、ショベル100に浮き上がり動作が発生している場合、IMU32Cによる浮き上がり方向の角加速度成分が相対的に大きな値として出力される。
よって、動作判定部301は、例えば、IMU32Cにより検出された角加速度成分が所定閾値以上になった場合に、ショベル100の浮き上がり動作が発生したと判定してよい。所定閾値は、実験やシミュレーション解析等に基づき適宜設定されうる。また、動作判定部301は、検出された加速度成分の方向に応じて、前方引き摺り動作か後方引き摺り動作かを判定することができる。
また、ブーム4の上げ下げ方向とショベル100の浮き上がりの方向が逆である場合、ブーム4に発生する角加速度の絶対値だけでは、浮き上がり動作が発生したか否かを判定できない場合も有りうる。そのため、動作判定部301は、IMU32Cに基づくブーム4の角加速度の変化量或いは変化率が所定閾値以上になった場合に、ショベル100の浮き上がり動作が発生したと判定してもよい。
尚、本例では、ブーム4の回転方向の運動を検出可能であれば、IMU32Cの代わりに、速度センサ、加速度センサ等が採用されてもよい。この場合、動作判定部301は、IMU32Cの場合と同様、センサの出力値が相対的に大きくなった場合やその変化率が相対的に大きくなった場合に、浮き上がり動作が発生したと判定してよい。
続いて、図26は、浮き上がり動作の発生の判定方法の第4例を説明する図である。
具体的には、図26(a)は、浮き上がり動作が発生していない場合のショベル100を表し、図26(b)は、浮き上がり動作が発生している場合のショベル100を表す。
本例では、各種センサ32には、図22(a),(b)の場合と同様、二つのIMU32Cが含まれる。
図26(a)、(b)に示すように、そのうち、一方のIMU32Cは、アーム5に取り付けられ、他方のIMU32Cは、バケット6に取り付けられる。
図26(a)に示すように、ショベル100に浮き上がり動作が発生していない場合、バケット6のIMU32Cにより検出される前後方向の加速度成分は、アーム5の加速度成分とバケット6の駆動軸まわりの角加速度成分の合成により表される。そのため、バケット6のIMU32Cにより検出される加速度成分は、アーム5のIMU32Cにより検出される前後方向の加速度成分より相対的に大きくなる。
一方、図26(b)に示すように、ショベル100に浮き上がり動作が発生している場合、アーム5は、浮き上がり動作に応じて、バケット6と地面との接地点付近を中心に移動(回動)するが、バケット6は、掘削作業により地面に接地しているため、移動しにくい。そのため、バケット6のIMU32Cにより検出される前後方向の加速度成分及び駆動軸まわりの角加速度成分は、アーム5のIMU32Cにより検出される前後方向の加速度成分及び角加速度成分よりもある程度小さくなる。
よって、動作判定部301は、例えば、アーム5及びバケット6のIMU32Cのそれぞれにより検出される加速度成分或いはアタッチメントの駆動軸と平行な軸まわりの角加速度の差分が所定閾値以上になった場合に、浮き上がり動作が発生したと判定してよい。所定閾値は、実験やシミュレーション解析等に基づき適宜設定されうる。また、動作判定部301は、アーム5の加速度成分の方向に応じて、前方浮き上がり動作か後方浮き上がり動作かを判定することができる。
また、アーム5に取り付けられるIMU32Cは、できる限り、アーム5とバケット6との連結位置よりもブーム4とアーム5との連結位置寄りに配置されることが好ましい。これにより、ショベル100の浮き上がり動作の発生時に、アーム5とバケット6との連結位置を支点として、アーム5におけるIMU32Cの取付位置の移動量を極力大きくすることができる。そのため、動作判定部301は、アーム5及びバケット6のそれぞれのIMU32Cにより検出された加速度成分の差分により、浮き上がり動作をより判定し易くなる。
尚、本例では、アーム5及びバケット6の前後方向の動作や動作軸と平行な軸まわりの回動方向の動作が検出可能であれば、IMU32Cの代わりに、速度センサ、加速度センサ、角加速度センサ等が採用されてもよい。また、本例では、アーム5及びバケット6にIMU32Cが取り付けられるが、更に、ブーム4に取り付けられてもよい。これにより、アーム5及びバケット6のそれぞれのIMU32Cの出力値の差分だけでなく、ブーム4及びバケット6のそれぞれのIMU32Cの出力値の差分から引き摺り動作の有無を判定することができるため、判定精度を高めることができる。また、アーム5のIMU32Cをブーム4に取り付けてもよい。この場合、ブーム4及びバケット6のそれぞれのIMU32Cの差分から浮き上がり動作の有無を判定することができる。
<振動動作の発生の判定方法>
各種センサ32に含まれる振動を検出可能なセンサ、例えば、加速度センサ、角加速度センサ、IMU等が車体(上部旋回体3)に搭載されることにより、動作判定部301は、振動動作の発生を判定することが可能である。具体的には、動作判定部301は、各種センサ32に含まれるこれらのセンサの出力に基づき、アタッチメントの慣性モーメントの変化に誘発される車体の振動に固有の周波数と適合する振動があると判断できる場合に、振動動作が発生していると判定してよい。
また、振動動作は、上述の如く、アタッチメントの空中動作中に発生する。そのため、動作判定部301は、アタッチメントの空中動作中に、各種センサ32の出力に基づき、アタッチメントの慣性モーメントの変化に誘発される車体の振動に固有の周波数と適合する振動があると判断できる場合、振動動作が発生していると判定してもよい。
[アタッチメントの動作を補正する構成の詳細]
次に.図27〜図35を参照して、本実施形態に係るショベル100の特徴的な構成、即ち、意図しないの動作を抑制するためにアタッチメントの動作を補正する構成の具体例について説明する。
まず、図27は、本実施形態に係るショベル100の特徴的な構成の第1例を示す図である。具体的には、本実施形態に係るショベル100のブームシリンダ7に作動油を供給する油圧回路を中心とする構成の第1例を示す図である。
尚、本例では、レバー装置26Aによりブーム4、即ち、ブームシリンダ7の操作が行われる前提とする。以下、図28〜図35についても同様である。また、コントロールバルブ17内のブームシリンダ7に作動油を供給するブーム用方向制御弁17Aのポートに、レバー装置26Aからの二次側のパイロット圧を伝達する油圧ライン27を油圧ライン27Aと称する。
図27に示すように、本例では、コントロールバルブ17内のブーム用方向制御弁17Aとブームシリンダ7のロッド側油室及びボトム側油室との間から分岐し、作動油をタンクTに排出させるバイパス油路281,282が設けられる。
バイパス油路281には、ブームシリンダ7のロッド側油室の作動油をTに排出させる電磁リリーフ弁33が設けられる。
バイパス油路282には、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油をタンクTに排出させる電磁リリーフ弁33が設けられる。
尚、バイパス油路281,282、及び電磁リリーフ弁33,34は、コントロールバルブ17の内部及び外部の何れに設けられてもよい。
また、各種センサ32には、ブームシリンダ7のロッド圧PR及びボトム圧PBを検出する圧力センサ32D,32Eが含まれ、その出力は、コントローラ30に入力される。
コントローラ30、即ち、動作補正部302は、圧力センサ32D,32Eから入力される出力信号に基づき、ロッド圧PR及びボトム圧PBを監視することができる。また、動作補正部302は、適宜、電磁リリーフ弁33,34に電流指令値を出力し、ブームシリンダ7のロッド側油室或いはボトム側油室の作動油を強制的にタンクTに排出させ、ブームシリンダ7内の過剰な圧力を抑制することができる。よって、図9〜図17を参照して説明したブームシリンダ7の動作を補正する補正方法を採用し、ブームシリンダ7内に発生する過剰な圧力を低減させることにより、ショベル100の意図しない動作、即ち、引き摺り動作、浮き上がり動作を抑制することができる。
続いて、図28は、本実施形態に係るショベル100の特徴的な構成の第2例を示す図である。具体的には、本実施形態に係るショベル100のブームシリンダ7に作動油を供給する油圧回路を中心とする構成の第2例を示す図である。
図28に示すように、本例では、レバー装置26Aとブーム用方向制御弁17Aのポートとの間の油圧ライン27Aに電磁比例弁36が設けられる。
また、各種センサ32には、図27の場合と同様、ブームシリンダ7のロッド圧PR及びボトム圧PBを検出する圧力センサ32D,32Eが含まれ、その出力は、コントローラ30に入力される。
コントローラ30、即ち、動作補正部302は、圧力センサ32D,32Eから入力される出力信号に基づき、ロッド圧PR及びボトム圧PBを監視することができる。また、動作補正部302は、適宜、電磁比例弁36に電流指令値を出力することにより、レバー装置26Aにおける操作状態に対応するパイロット圧を変化させ、ブーム用方向制御弁17Aのポートに入力させることができる。即ち、動作補正部302は、適宜、電磁比例弁36に電流指令値を出力することにより、ブーム用方向制御弁17Aを制御し、ブームシリンダ7のロッド側油室或いはボトム側油室の作動油を適宜タンクTに排出させ、ブームシリンダ7内の過剰な圧力を抑制することができる。よって、図9〜図17を参照して説明したブームシリンダ7の動作を補正する補正方法を採用し、ブームシリンダ7内に発生する過剰な圧力を低減させることにより、ショベル100の意図しない動作、即ち、引き摺り動作、浮き上がり動作を抑制することができる。
尚、本例では、オペレータによるレバー装置26Aの操作状態、つまり、ブーム4の操作状態に対応する信号を補正した信号がブーム用方向制御弁17Aに入力されるが、ブーム4の操作状態に対応する信号とは別の信号が入力されてもよい。例えば、レバー装置46Aよりも上流側(パイロットポンプ15側)のパイロットライン25から分岐しブーム用方向制御弁17Aのポートに接続される油路に電磁比例弁が設けられるとよい。この場合、動作補正部302は、該電磁比例弁に電流指令を出力することにより、ブーム4の操作状態に対応する信号とは別の信号をブーム用方向制御弁17Aの入力し、レバー装置26Aの操作状態に依らず、ブーム用方向制御弁17Aを制御することができる。また、この場合、コントローラ30は、通常時、圧力センサ29により検出されるレバー装置16Aの操作状態に対応する圧力信号に基づき、電磁比例弁に電流指令を出力することにより、オペレータによるレバー装置16Aの操作状態に応じて、ブーム用方向制御弁17Aを制御することができる。
続いて、図29は、本実施形態に係るショベル100の特徴的な構成の第3例を示す図である。具体的には、本実施形態に係るショベル100のブームシリンダ7に作動油を供給する油圧回路を中心とする構成の第3例を示す図である。
図29に示すように、各種センサ32には、図27等の場合と同様、ブームシリンダ7のロッド圧PR及びボトム圧PBを検出する圧力センサ32D,32Eが含まれ、その出力は、コントローラ30に入力される。
コントローラ30、即ち、動作補正部302は、圧力センサ32D,32Eから入力される出力信号に基づき、ロッド圧PR及びボトム圧PBを監視することができる。また、コントローラ30は、メインポンプ14の斜板の傾転角を制御するレギュレータ14Aに対して、適宜、電流指令値を出力することにより、メインポンプ14の出力や流量を制御することができる。即ち、動作補正部302は、適宜、レギュレータ14Aに電流指令値を出力し、メインポンプ14の動作を制限することにより、ブームシリンダ7に供給される作動油の流量等を制限し、ブームシリンダ7内の過剰な圧力を抑制することができる。よって、図9〜図17を参照して説明したブームシリンダ7の動作を補正する補正方法を採用し、ブームシリンダ7内に発生する過剰な圧力を低減させることにより、ショベル100の意図しない動作、即ち、引き摺り動作、浮き上がり動作を抑制することができる。
続いて、図30は、本実施形態に係るショベル100の特徴的な構成の第4例を示す図である。具体的には、本実施形態に係るショベル100のブームシリンダ7に作動油を供給する油圧回路を中心とする構成の第4例を示す図である。
図30に示すように、各種センサ32には、図27等の場合と同様、ブームシリンダ7のロッド圧PR及びボトム圧PBを検出する圧力センサ32D,32Eが含まれ、その出力は、コントローラ30に入力される。
コントローラ30、即ち、動作補正部302は、圧力センサ32D,32Eから入力される出力信号に基づき、ロッド圧PR及びボトム圧PBを監視することができる。また、動作補正部302は、適宜、エンジン11の稼働状態を制御するECM(Engine Control Module)11Aに制御指令を出力することにより、エンジン11の出力を制御することができる。即ち、動作補正部302は、適宜、ECM11Aに制御指令を出力し、エンジン11の出力を制限することにより、エンジン11で駆動されるメインポンプ14の出力を制限し、ブームシリンダ7に供給される作動油の流量等を制限することができる。つまり、動作補正部302は、ブームシリンダ7内の過剰な圧力を抑制することができる。よって、図9〜図17を参照して説明したブームシリンダ7の動作を補正する補正方法を採用し、ブームシリンダ7内に発生する過剰な圧力を低減させることにより、ショベル100の意図しない動作、即ち、引き摺り動作、浮き上がり動作を抑制することができる。
続いて、図31は、本実施形態に係るショベル100の特徴的な構成の第5例を示す図である。具体的には、本実施形態に係るショベル100のブームシリンダ7に作動油を供給する油圧回路を中心とする構成の第5例を示す図である。
尚、本例では、各種センサ32には、図27〜図30の圧力センサ32D,32Eと同様の圧力センサが含まれる前提とする。以下、図32〜図35についても同様である。
図31に示すように、本例では、コントロールバルブ17は、電磁切換弁38を含む。
電磁切換弁38は、ブーム用方向制御弁17Aとブームシリンダ7のボトム側油室との間を接続する油路311と、作動油をタンクTに循環させる油路312との間をバイパスさせる態様で設けられる。これにより、電磁切換弁38は、連通状態である場合、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油をタンクTに排出させることができる。
コントローラ30は、即ち、動作補正部302は、各種センサ32(ブームシリンダ7のロッド側油室及びボトム側油室の圧力を検出する圧力センサ)から入力される出力信号に基づき、ロッド圧PR及びボトム圧PBを監視することができる。また、動作補正部302は、適宜、電磁切換弁38に電流指令値を出力することにより、電磁切換弁38の連通/非連通状態を制御することができる。即ち、動作補正部302は、適宜、電磁切換弁38に電流指令値を出力し、電磁切換弁38を介して、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油をタンクTに排出させることにより、ブームシリンダ7のボトム側油室に発生した過剰な圧力(ボトム圧PB)を抑制することができる。よって、図9〜図17を参照して説明したブームシリンダ7の動作を補正する補正方法を採用し、ブームシリンダ7のボトム側油室に発生する過剰な圧力を低減させることにより、ショベル100の意図しない動作、即ち、引き摺り動作、浮き上がり動作を抑制することができる。
尚、コントロールバルブ17の内部に、ブーム用方向制御弁17Aとブームシリンダ7のロッド側油室との間を接続する油路と、作動油をタンクTに循環させる油路312との間をバイパスさせる電磁切換弁が設けられてもよい。この場合、動作補正部302は、適宜、当該電磁切換弁に電流指令値を出力することにより、ブームシリンダ7のロッド側油室に発生する過剰な圧力についても低減させることができる。
続いて、図32は、本実施形態に係るショベル100の特徴的な構成の第6例を示す図である。具体的には、本実施形態に係るショベル100のブームシリンダ7に作動油を供給する油圧回路を中心とする構成の第5例を示す図である。以下、図中において、二つのブームシリンダ7が示されるが、メインポンプ14とブームシリンダ7との間にコントロールバルブ17と後述する圧力保持回路40が介設される点は、何れのブームシリンダ7についても同様であるため、一方のブームシリンダ7(図中の右側のブームシリンダ7)についての油圧回路を中心に説明する。
尚、本実施形態では、図27の場合と同様、コントロールバルブ17とブームシリンダ7のロッド側油室との間から分岐する油路に、ロッド側油室の作動油をタンクTに排出させる電磁リリーフ弁33が設けられる。以下、図33についても同様である。
図32に示すように、本例に係るショベル100には、例えば、油圧ホースが破裂等により破損した場合であっても、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油が排出されないように保持する圧力保持回路40が設けられる。以下、図33〜図35についても同様である。
圧力保持回路40は、コントロールバルブ17とブームシリンダ7のボトム側油室との間を接続する油路に介設される。圧力保持回路40は、主に、保持弁42と、スプール弁44とを含む。
保持弁42は、スプール弁44の状態に依らず、油路321を経由してコントロールバルブ17から供給される作動油を、ブームシリンダ7のボトム側油室に供給する。
また、保持弁42は、スプール弁44が非連通状態(図中の左端のスプール状態)の場合、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油が圧力保持回路40の下流側に排出されないように保持する。一方、保持弁42は、スプール弁44が連通状態(図中の右端のスプール状態)の場合、油路322を経由して、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油が圧力保持回路40の下流側に排出することができる。
スプール弁44は、ブームシリンダ7を操作するレバー装置26Aに含まれる、ブーム4の下げ操作(ブーム下げ操作)に対応するパイロット圧を出力するブーム下げ用リモコン弁26Aaからポートに入力されるパイロット圧に応じて、その連通・非連通状態が制御される。具体的には、スプール弁44は、ブーム下げ用リモコン弁26Aaからブーム下げ操作がされていることを示すパイロット圧が入力される場合、連通状態に対応するスプール状態(図中の右端のスプール状態)にする。一方、スプール弁44は、ブーム下げ用リモコン弁26Aaからブーム下げ操作がされていないことを示すパイロット圧が入力される場合、非連通状態に対応するスプール状態(図中の左端のスプール状態)にする。これにより、ブーム下げ操作がされていない状態で、圧力保持回路40よりも下流側の油圧ホースの破損等が発生しても、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油(ボトム圧)が保持されるため、ブーム4の落下を防止することができる。
また、圧力保持回路40は、電磁リリーフ弁46を含む。
電磁リリーフ弁46は、圧力保持回路40内の保持弁42とブームシリンダ7のボトム側油室との間の油路323から分岐し、タンクTに接続される油路324に設けられる。つまり、電磁リリーフ弁46は、保持弁よりも上流側、即ち、ブームシリンダ7側の油路323から作動油をタンクTにリリーフする。よって、電磁リリーフ弁46は、圧力保持回路40の作動状態、具体的には、スプール弁44の連通/非連通状態に依らず、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油をタンクTに排出させることができる。つまり、圧力保持回路40によるブームシリンダ7のボトム側油室の作動油の保持機能によりブーム4の落下を防止しつつ、ブーム下げ操作の有無に依らず、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油をタンクTに排出させ、過剰なボトム圧を抑制することができる。
コントローラ30は、即ち、動作補正部302は、各種センサ32(ブームシリンダ7のロッド側油室及びボトム側油室の圧力を検出する圧力センサ)から入力される出力信号に基づき、ロッド圧PR及びボトム圧PBを監視することができる。また、動作補正部302は、適宜、電磁リリーフ弁33,46に電流指令値を出力することにより、ブーム下げ操作の有無に依らず、ブームシリンダ7のロッド側油室或いはボトム側油室の作動油を強制的にタンクTに排出させ、ブームシリンダ7内の過剰な圧力を抑制することができる。よって、図9〜図17を参照して説明したブームシリンダ7の動作を補正する補正方法を採用し、ブームシリンダ7内に発生する過剰な圧力を低減させることにより、ショベル100の意図しない動作、即ち、引き摺り動作、浮き上がり動作を抑制することができる。
続いて、図33は、本実施形態に係るショベル100の特徴的な構成の第7例を示す図である。具体的には、本実施形態に係るショベル100のブームシリンダ7に作動油を供給する油圧回路を中心とする構成の第7例を示す図である。
図33に示すように、本例では、ブームシリンダ7のボトム側油室と圧力保持回路40との間の油路331から分岐しタンクTに接続される油路332に電磁リリーフ弁50が設けられる。これにより、電磁リリーフ弁50は、圧力保持回路40の作動状態、具体的には、スプール弁44の連通/非連通状態に依らず、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油をタンクTに排出させることができる。つまり、圧力保持回路40によるブームシリンダ7のボトム側油室の作動油の保持機能によりブーム4の落下を防止しつつ、ブームシリンダ7の操作状態に依らず、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油をタンクTに排出させ、過剰なボトム圧を抑制することができる。
コントローラ30、即ち、動作補正部302は、各種センサ32(ブームシリンダ7のロッド側油室及びボトム側油室の圧力を検出する圧力センサ)から入力される出力信号に基づき、ロッド圧PR及びボトム圧PBを監視することができる。また、動作補正部302は、適宜、電磁リリーフ弁33,50に電流指令値を出力することにより、ブーム下げ操作の有無に依らず、ブームシリンダ7のロッド側油室或いはボトム側油室の作動油を強制的にタンクTに排出させ、ブームシリンダ7内の過剰な圧力を抑制することができる。よって、、図9〜図17を参照して説明したブームシリンダ7の動作を補正する補正方法を採用し、ブームシリンダ7内に発生する過剰な圧力を低減させることにより、ショベル100の意図しない動作、即ち、引き摺り動作、浮き上がり動作を抑制することができる。
続いて、図34は、本実施形態に係るショベル100の特徴的な構成の第8例を示す図である。具体的には、本実施形態に係るショベル100のブームシリンダ7に作動油を供給する油圧回路を中心とする構成の第8例を示す図である。
図34に示すように、ブーム下げ用リモコン弁26Aaからブーム下げ操作の操作状態に対応するパイロット圧を、圧力保持回路40のスプール弁44に供給するパイロット回路に、電磁切換弁52と、シャトル弁54が設けられる。
電磁切換弁52は、パイロットポンプ15とブーム下げ用リモコン弁26Aaとの間のパイロットライン25Aから分岐し、ブーム下げ用リモコン弁26Aaをバイパスしてシャトル弁54の一方の入力ポートに接続される油路341に設けられる。電磁切換弁52は、油路341の連通/非連通状態を切り換える。
尚、電磁切換弁52の代わりに、電磁比例弁が採用されることにより、油路341の連通/非連通状態を切り換えてもよい。
シャトル弁54は、上述の如く、一方の入力ポートに油路341の一端が接続され、他方の入力ポートにブーム下げ用リモコン弁26Aaの二次側の油路342が接続される。シャトル弁54は、二つの入力のうちのパイロット圧の高い方をスプール弁44に向けて出力する。これにより、ブーム下げ操作がされていない場合であっても、電磁切換弁52及びシャトル弁54を経由して、スプール弁44にブーム下げ操作がされている場合と同様のパイロット圧を入力することができる。つまり、ブーム下げ操作が行われていない場合であっても、圧力保持回路40の下流にブームシリンダ7のボトム側油室の作動油を流出させることができる。
また、本例では、コントロールバルブ17の内部に電磁リリーフ弁56,58が設けられる。
尚、電磁リリーフ弁56,58は、ブーム用方向制御弁17Aと圧力保持回路40との油路からバイパスして作動油をタンクTに排出可能な構成であれば、コントロールバルブ17の外部に設けられてもよい。
電磁リリーフ弁56は、ブームシリンダ7のロッド側油室と、ブーム用方向制御弁17Aとの間の油路から分岐し、タンクTに接続される油路343に設けられる。これにより、電磁リリーフ弁56は、ブームシリンダ7のロッド側油室の作動油をタンクTに排出することができる。
電磁リリーフ弁58は、圧力保持回路40と、ブーム用方向制御弁17Aとの間の油路から分岐し、タンクTに接続される油路344に設けられる。これにより、電磁リリーフ弁56は、圧力保持回路40を経由して、ブームシリンダ7のボトム側油室から流出する作動油をタンクTに排出することができる。即ち、上述した電磁切換弁52及びシャトル弁54による作用により、電磁リリーフ弁58は、ブーム下げ操作がされていない場合であっても、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油をタンクTに排出し、過剰なボトム圧PBを抑制することができる。
尚、本例において、コントロールバルブ17内に図35の電磁切換弁38が設けられる場合、電磁リリーフ弁58の機能は、当該電磁切換弁38に置換されてよい。また、上述の如く、図35の電磁切換弁38と同様、ブーム用方向制御弁17Aとブームシリンダ7のロッド側油室との間を接続する油路と、作動油をタンクTに循環させる油路との間をバイパスさせる電磁切換弁がコントロールバルブ17内に設けられてもよい。この場合、電磁リリーフ弁56の機能は、当該電磁切換弁に置換されてよい。以下、図35についても同様である。
コントローラ30、即ち、動作補正部302は、各種センサ32(ブームシリンダ7のロッド側油室及びボトム側油室の圧力を検出する圧力センサ)から入力される出力信号に基づき、ロッド圧PR及びボトム圧PBを監視することができる。また、動作補正部302は、適宜、電磁切換弁52及び電磁リリーフ弁56,58に電流指令値を出力することにより、ブーム下げ操作の有無に依らず、ブームシリンダ7のロッド側油室或いはボトム側油室の作動油を強制的にタンクTに排出させ、ブームシリンダ7内の過剰な圧力を抑制することができる。よって、図9〜図17を参照して説明したブームシリンダ7の動作を補正する補正方法を採用し、ブームシリンダ7内に発生する過剰な圧力を低減させることにより、ショベル100の意図しない動作、即ち、引き摺り動作、浮き上がり動作を抑制することができる。
続いて、図35は、本実施形態に係るショベル100の特徴的な構成の第9例を示す図である。具体的には、本実施形態に係るショベル100のブームシリンダ7に作動油を供給する油圧回路を中心とする構成の第9例を示す図である。
図35に示すように、本例では、ブーム下げ用リモコン弁26Aaからブーム下げ操作操作状態に対応するパイロット圧を、圧力保持回路40のスプール弁44に供給するパイロット回路に、電磁比例弁60と、図34の場合と同様のシャトル弁54が設けられる。
電磁比例弁60は、パイロットポンプ15とブーム下げ用リモコン弁26Aaとの間のパイロットライン25Aから分岐し、ブーム下げ用リモコン弁26Aaをバイパスしてシャトル弁54の一方の入力ポートに接続される油路351に設けられる。電磁比例弁60は、油路341の連通/非連通状態の切換制御、及び、シャトル弁54に入力されるパイロット圧の制御を行う。
シャトル弁54は、図34の場合と同様、一方の入力ポートに油路351の一端が接続され、他方の入力ポートにブーム下げ用リモコン弁26Aaの二次側の油路352が接続される。シャトル弁54は、二つの入力のうちのパイロット圧の高い方をスプール弁44に向けて出力する。これにより、ブーム下げ操作がされていない場合であっても、電磁比例弁60及びシャトル弁54を経由して、スプール弁44にブーム下げ操作がされている場合と同様のパイロット圧を入力することができる。つまり、ブーム下げ操作がされていない場合であっても、圧力保持回路40の下流にブームシリンダ7のボトム側油室の作動油を流出させることができる。
また、本例では、コントロールバルブ17の内部に電磁リリーフ弁56が設けられる。
尚、電磁リリーフ弁56は、ブーム用方向制御弁17Aと圧力保持回路40との油路からバイパスして作動油をタンクTに排出可能な構成であれば、コントロールバルブ17の外部に設けられてもよい。
電磁リリーフ弁56は、図34の場合と同様、ブームシリンダ7のロッド側油室と、ブーム用方向制御弁17Aとの間の油路から分岐し、タンクTに接続される油路353に設けられる。これにより、電磁リリーフ弁56は、ブームシリンダ7のロッド側油室の作動油をタンクTに排出することができる。
コントローラ30、即ち、動作補正部302は、各種センサ32(ブームシリンダ7のロッド側油室及びボトム側油室の圧力を検出する圧力センサ)から入力される出力信号に基づき、ロッド圧PR及びボトム圧PBを監視することができる。また、動作補正部302は、適宜、電磁リリーフ弁56に電流指令値を出力することにより、ブームシリンダ7のロッド側油室の作動油を強制的にタンクTに排出させ、ブームシリンダ7のロッド側油室内の過剰な圧力(ロッド圧)を抑制することができる。
また、電磁比例弁60が採用されることにより、シャトル弁54を介して、スプール弁44に入力されるパイロット圧を細かく制御することができる。そのため、コントローラ30は、適宜、電磁比例弁60に電流指令値を出力し、電磁比例弁60の作動状態を細かく制御することにより、圧力保持回路40を経由して、ブームシリンダ7のボトム側油室から流出する作動油の流量を細かく調節することができる。つまり、コントローラ30は、コントロールバルブ17に依らず、ブーム下げ操作時のブームシリンダ7のボトム側油室からコントロールバルブ17を経由して排出される作動油の流量を調整することができる。よって、コントローラ30、即ち、動作補正部302は、適宜、電磁比例弁60に電流指令値を出力することにより、ブーム下げ操作の有無に依らず、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油を適宜タンクTに排出させ、ブームシリンダ7内の過剰な圧力を抑制することができる。
よって、図9〜図17を参照して説明したブームシリンダ7の動作を補正する補正方法を採用し、ブームシリンダ7内に発生する過剰な圧力を低減させることにより、ショベル100の意図しない動作、即ち、引き摺り動作、浮き上がり動作を抑制することができる。
[アタッチメントの動作を補正する処理動作の詳細]
次に、図36を参照して、コントローラ30(動作判定部301、動作補正部302)によるアタッチメントの動作を補正する処理(動作補正処理)について説明する。
図36は、本実施形態に係るコントローラ30による動作補正処理の一例を概略的に示すフローチャートである。本フローチャートによる処理は、例えば、ショベル100の稼働中において、所定時間ごとに、繰り返し実行される。
ステップS3600にて、動作判定部301は、圧力センサ29や各種センサ32からの入力に基づき、ショベル100が走行中であるか否かを判定する。動作判定部301は、ショベル100が走行中でない場合、ステップS3602に進み、ショベル100が走行中である場合、今回の処理を終了する。
ステップS3602にて、動作判定部301は、圧力センサ29や各種センサ32からの入力に基づき、アタッチメントの操作中であるか否か、即ち、アタッチメントを使用した作業中(掘削作業中)であるか否かを判定する。動作判定部301は、アタッチメントの操作中である場合、ステップS3604に進み、アタッチメントの操作中でない場合、今回の処理を終了する。
ステップS3604にて、動作判定部301は、各種センサ32の入力に基づき、意図しない動作が発生しているか否かを判定する。このとき、動作判定部301は、上述した意図しない動作の全部又は一部を対象とし、上述した判定方法を用いて、意図しない動作が発生しているか否かを判定する。動作判定部301は、意図しない動作が発生している場合、ステップS3606に進み、意図しない動作が発生していない場合、今回の処理を終了する。
ステップS3606にて、動作補正部302は、発生している動作(判定動作)に合わせた制御目標値を取得する。例えば、動作補正部302は、振動動作が発生していると判定された場合、上述した図18を参照して説明した内容に基づき、制御目標値としての制限推力FMAX或いは保持推力FMINを取得する。また、振動動作以外の意図しない動作、つまり、引き摺り動作及び浮き上がり動作の場合についても、動作補正部302は、図18を参照して説明した内容と同様に、テーブル参照に基づき、制御目標値としての制限推力を取得してよい。
ステップS3608にて、動作補正部302は、制御対象に制御指令を出力し、アタッチメントの動作を補正する。制御対象には、上述の如く、例えば、電磁リリーフ弁33,34、電磁比例弁36、レギュレータ14A、ECM11A、電磁切換弁38、電磁リリーフ弁46、電磁リリーフ弁50、電磁切換弁52、電磁リリーフ弁56,58、電磁比例弁60等が含まれる。
本例では、動作判定部301により意図しない動作の発生のが判定される。そして、動作補正部302は、動作判定部301により意図しない動作の発生が判定された場合に、アタッチメントの動作を補正する。これにより、意図しない動作が実際に発生したことを確認した上で、アタッチメントの動作が補正されるため、意図しない動作を抑制しつつ、オペレータによる操作性の悪化を抑制できる。
以上、本発明を実施するための形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
例えば、上述した実施形態では、主に、ブームシリンダ7のロッド側油室及びボトム側油室の双方の作動油をタンクTに排出可能な構成(例えば、図27、図31〜図35)を説明したが、何れか一方の作動油をタンクTに排出する構成であってもよい。具体的には、想定される意図しない動作により圧力を抑制すべき油室が予め分かっている場合(例えば、振動動作のように制御対象がボトム側油室に固定されている場合)、一方の油室だけの作動油をタンクTに排出可能な構成が採用されてよい。
また、上述した実施形態では、主に、アタッチメントのうちのブームシリンダ7の動作(具体的には、ブームシリンダ7の圧力)が補正されるが、当然の如く、アームシリンダ8やバケットシリンダ9の動作が制御されてもよい。以下、第1変形例として、図37,図38を参照し、アームシリンダ8の動作を補正する具体例について説明する。
図37、図38は、ショベル100の第1変形例を説明する図である。具体的には、図37は、ショベル100の引き摺り動作に関する動作波形図である。図37には、上から順に、アタッチメントが延在する方向に対応する直線L1に沿った下部走行体1の速度v、直線L1に沿った下部走行体1の加速度α、アタッチメントに発生する動作軸まわりのモーメントτ(例えば、図38に示すアーム5の動作軸まわりのモーメントτ2)、及びアタッチメントの動作がショベル100の車体に及ぼす、直線L1に沿った力F3が示される。また、図38は、ショベル100による掘削作業に対応する力学的モデルの一例を示す図であり、掘削作業時にショベル100に作用する力を例示的に示す図である。
尚、図37には、比較例として、アタッチメントの動作の補正が行われない場合の動作波形が一点鎖線で示される。
まず、アタッチメントの動作の補正が行われない場合のショベル100の動作を説明する。
図37に示すように、時刻t0より前に、引き摺り動作は生じておらず、下部走行体1は地面に対して静止しており、速度vはゼロである。
時刻t0において、オペレータが更にレバー装置26A,26Bの操作レバーを傾けると、モーメントτ2(或いは、その他のアタッチメントの動作軸まわりのモーメントτ1,τ3)が増加する。これにより、ショベル100の本体に加わる直線L1に沿った力F3が増加する。そして、時刻t1において、力F3は、最大静止摩擦力μNを超える。すると、下部走行体1は地面に対して引き摺られ初め(滑り初め)、速度vは一点鎖線で示すように増加していく。
続いて、アタッチメントの動作の補正が行われる場合のショベル100の動作を説明する。
図37に示すように、時刻t1において、下部走行体1が滑り始めると、加速度αが増加し始める。換言すれば、下部走行体1の引き摺り動作は、加速度αの増加として現れる。よって、動作判定部301は、例えば、上述の加速度センサ32Aにより検出される加速度αに基づき、引き摺り動作の発生を判定する。例えば、動作判定部301は、加速度センサ32Aにより検出された加速度αが、所定の閾値αTHを超えると、引き摺り動作が発生したと判定する。そして、動作判定部301により当該判定が行われると、動作補正部302によるアタッチメントの動作の補正制御が有効になる(図36参照)。
具体的には、時刻t2において、加速度αが閾値αTHを超えており、これにより、動作補正部302による補正制御が有効になる。補正制御は、補正期間Tの間、有効となり、当該補正期間Tにおいて、動作補正部302は、アーム5の動作軸まわりのモーメントτ2がオペレータによる操作状態に依らず、低下する。モーメントτ2が低下すると、アタッチメントがショベル100の本体に及ぼす力F3が小さくなる。そして、力F3が、動摩擦力μ'Nを下回ると、引き摺り動作が収まる。
補正期間Tの経過後、アタッチメント(アーム5)の動作の補正制御が解除され、オペレータによる操作入力に基づく補正前の元のモーメントτ2に戻される。補正期間Tは、1ミリ秒〜2秒程度であってよく、本発明者らによるシミュレーション結果等を考慮すると、より好ましくは、10ms〜200ms程度とするとよい。
補正の解除後、力Fも元のレベルまで大きくなるが、下部走行体1は、地面に対して静止しているため、力Fが最大静止摩擦力μNを超えない限り、静止状態を維持し、再び引き摺り動作が発生することはない。
例えば、図38の掘削作業を想定すると、バケット6に大量の土砂を積載した状態でアーム5を引く(閉じる)と、力F3が発生し、下部走行体1が前方に引き摺られ始める。すると、動作補正部302は、動作判定部301による判定結果に応じて、即時的に、アームシリンダ8の圧力を低減し、推力を制限することにより、アーム5の引き込む力、即ち、モーメントτ2を低下させる。これにより、アタッチメントから車体(上部旋回体3)に及ぶ力F3が低下し、動摩擦力μ'Nを下回り、ショベル100の引き摺り動作が停止する。引き摺り動作が停止した後に、動作補正部302による補正制御が解除され、アーム5のモーメントτ2が元に戻される、つまり、オペレータによる操作状態に応じたモーメントτ2に戻される。このとき、最大静止摩擦力μN(>μ'N)が有効であるから、引き摺り動作は生じない。この処理を、非常に短い時間間隔で定期的に繰り返すことにより、オペレータによる操作レバーの操作量の変化を要請することなく、また、オペレータによる操作感(操作性)を損なうことなく、引き摺り動作を抑制することができる。
このように、ブームシリンダ7以外のアタッチメントの動作を補正し、意図しない動作を抑制してもよい。
また、上述した実施形態では、ブームシリンダ7等の圧力を抑制し、推力を制限する態様で、アタッチメントの動作を補正するが、別の態様により、アタッチメントの動作を補正してもよい。以下、第2変形例として、図39を参照し、アタッチメントのうちの少なくとも一つの変位させて、アタッチメントの姿勢を微調整する態様で、アタッチメントの動作を補正する方法について説明する。
図39は、ショベル100の第2変形例を説明する図である。具体的には、図39は、別の態様によるアタッチメントの補正方法を説明する図である。図39には、真横から見た掘削作業中のショベル100が示される。動作の補正前のアタッチメントの状態が実線で示され、動作の補正後のアタッチメントの状態が一点鎖線で示される。
例えば、バケット6に大量の土砂が積載されており、その状態でショベル100がバケット6を抱き込む(即ち、アーム5及びバケット6を閉じる)場合を想定する。この場合、バケット6を中心として、ブームの根元3Aを作用点とするモーメントTが発生する。このモーメントTのうち、地面と平行な成分が、下部走行体1を引き摺る力F3として作用する。
動作補正部302によりアタッチメントの動作が補正され、アタッチメントの姿勢が変化すると、根元3Aに作用するモーメント(力)の向きが、TからTaに変化する。一例として、図39では、動作補正部302によって、ブーム4の位置が、実線から一点鎖線4aに修正される。補正後のモーメントTaのうち地面と平行な成分(下部走行体1を引き摺る力)Faは、補正前の力F3よりも小さくなる。これにより、ショベル100の引き摺り動作が抑制される。具体的には、動作補正部302は、オペレータによる操作状態に依らず、アームシリンダ8を収縮方向(即ち、アーム5を下げる方向)に動作させることにより、本補正は実現される。より具体的には、例えば、動作補正部302は、図28の電磁比例弁に対して、アームシリンダ8を収縮方向に移動させる電流指令値を出力するとよい。
また、モーメントの向きがTからTaに変化すると、地面と垂直方向の成分、つまり、下部走行体1を地面に押しつける力が増加する。これにより、垂直抗力Nが補正前に比べて増加し、動摩擦力μ'Nが増加し、更に、引き摺り動作が抑制される。
図39の例では、引き摺り動作に影響を及ぼす力F3を低減させることと、垂直抗力Nを増大させることの二つの作用により引き摺り動作を抑制するが、何れか一方の作用のみを用いる態様も有効である。
このように、ショベル100のアタッチメントの姿勢を微調整する態様で、アタッチメントの動作を補正し、意図しない動作を抑制してもよい。
また、上述した実施形態では、意図しない動作が発生したと判定された場合に、アタッチメントの動作が補正されるが、意図しない動作の発生の有無に関わらず、意図しない動作が抑制されるように、アタッチメントの動作を補正してもよい。以下、振動動作の場合を例示して、意図しない動作の発生の有無に関わらず、意図しない動作が抑制されるように、アタッチメントの動作を補正する方法について説明する。
図40は、ショベル100の第3変形例を説明する図である。具体的には、動作補正部302による振動動作の抑制処理の一例を概略的に示すフローチャートである。本フローチャートによる処理は、例えば、ショベル100の稼働中において、所定時間ごとに、繰り返し実行される。
ステップS4000にて、動作判定部301は、空中動作中であるか否かを判定する。動作判定部301は、空中動作中であると判定した場合、ステップS4002に進み、空中動作中でないと判定した場合、今回の処理を終了する。
ステップS4002にて、動作補正部302は、アタッチメントの状態(例えば、ブーム角θ1、アーム角θ2、バケット角θ3等)を監視する。
ステップS4004にて、動作補正部302は、アタッチメントの状態に応じて、例えば、制限推力FMAXを決定する(図18参照)。
ステップS4006にて、動作補正部302は、アタッチメントの状態に応じて、保持推力FMINを決定する(図18参照)。
ステップS4008にて、動作補正部302は、制限推力FMAXおよび保持推力F
MINに基づき、制御対象のシリンダ(例えば、ブームシリンダ7)のボトム圧の上限PMAXを決定する(図30参照)。
このように、動作補正部302は、振動動作の発生に依らず、シリンダの推力を制限し、振動動作の抑制してもよい。また、他の意図しない動作、つまり、引き摺り動作や浮き上がり動作の抑制についても、同様であり、動作補正部302は、意図しない動作の発生の有無に関わらず、上述した補正方法(図9〜図18等参照)により規定される制御目標値に沿った制御を実行し、意図しない動作を抑制してよい。