JP6834760B2 - アンギュラ玉軸受 - Google Patents
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Description
このような転がり軸受の潤滑法としては、グリース潤滑、オイルエア潤滑、ジェット潤滑等が適宜、選択されており、一般的には、低コストでメンテナンスも容易なことから初期封入によるグリース封入潤滑が利用されることが多い(例えば特許文献1参照)。
しかしながら、グリースが保持器案内面を通り、保持器の軸方向外側へ移動するためには、保持器案内面と外輪案内面がグリースと接することによる上記のせん断による掻き出しが必要となる。また、エッジ逃し溝等が保持器外径面に形成されている場合、エッジ逃し溝に対面する外輪内径面の位置に溜まったグリースに排出するための力が働かない場合がある。その場合、グリースは再び転動体に付着し、軸受内を循環して保持器内径面に戻る。このようなグリースの挙動は、攪拌抵抗を大きくし、通常よりも発熱量を増大させ、軸受の寿命低下や焼付きの原因となる虞がある。これは、特にグリース潤滑でdmn値が80万(PCD(玉ピッチ円直径)×回転数)以上で使用するような工作機械主軸用軸受について顕著となる。
外周面に内輪軌道面を有する内輪と、内周面に外輪軌道面を有する外輪と、前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に配置される複数の玉と、前記玉を周方向に間隔を有して保持する複数のポケットを有する外輪案内方式の保持器と、を備え、前記外輪の反カウンタボア側の内周面に外輪案内面が形成されたアンギュラ玉軸受であって、
前記保持器は、
前記外輪案内面に摺接可能な保持器案内面と、
前記保持器案内面よりも軸方向中央で円周方向に形成され、前記保持器案内面よりも小径な逃し面と、
を有し、
前記逃し面の前記保持器案内面側の端部は、軸方向に関して、前記外輪の前記外輪軌道面と前記外輪案内面との境界となるエッジ部と、前記ポケットの前記反カウンタボア側のポケット軸方向端部との間における、前記ポケット軸方向端部よりも軸方向内側に配置されるアンギュラ玉軸受。
<第1構成例>
図1は本発明の実施形態を説明するための図で、アンギュラ玉軸受の一部断面図である。ここで説明するアンギュラ玉軸受は、工作機械の主軸等、高速回転する装置に用いられる一般的な転がり軸受であるが、これに限らず、他の構成のアンギュラ玉軸受であってもよい。
複数の玉19は、外輪軌道面11及び内輪軌道面15との間に接触角αを有して転動自在に配置される。保持器23は、内輪17と外輪13との間に配置され、保持器外径面には周方向に間隔を有して複数のポケット21が形成される。それぞれのポケット21には、玉19が転動自在に保持される。
保持器23は、保持器外径面の軸方向両端に、径方向外側へ突出する環状の被案内部24,25が形成される。ここで、被案内部24,25とは、外輪案内面29によって案内され得る保持器23側の案内面を意味する。本構成のアンギュラ玉軸受100は、保持器23の軸方向一端側(図1における左側)の被案内部24における保持器案内面27が、外輪13の反カウンタボア側の外輪案内面29に摺接して案内される外輪案内方式である。なお、本構成ではアンギュラ型の軸受であるため、実際に保持器23が外輪13に案内されるのは、片側の被案内部24のみとなる。しかし、図示例の保持器23は軸対象形状であり、被案内部24,25は互いに等価であるため、ここでは、いずれの被案内部24,25も「被案内部」と呼称する。
図6は外輪13にグリースが付着するまでのグリース移動の様子を示す作用説明図である。
アンギュラ玉軸受100をグリース潤滑で使用する際には、初期に慣らし運転を実施する。慣らし運転は、初期に封入したグリースが軸受内部から排出される所定の位置へ移動することによって完了する。
カウンタボア側のグリースは、滞留位置53へ留まる。一方、反カウンタボア側のグリースは、滞留位置49に付着するが、従来構造の場合、滞留位置49のグリースは軸方向外側へ移動する力が働かず、矢印47から矢印51の流れを繰り返す。
本構成のアンギュラ玉軸受100では、前述したように、エッジ逃し溝35と保持器案内面27との間の周方向段部38が、外輪13のエッジ部33と、保持器23のポケット軸方向端部Pとの間の領域Aに配置される。従来構造のように、周方向段部38が、ポケット軸方向端部Pよりも反カウンタボア側の軸方向端側に形成された場合には、エッジ逃し溝35に付着したグリースは、エッジ逃し溝35と玉19とに付着しながら殆どが円周方向に移動し、軸方向端へ排出されにくくなる。
滞留位置49のグリースは、外輪案内面29と保持器案内面27の間の狭い案内すきまに入り、保持器23と外輪13との相対運動によるせん断により、案内すきまから押し出されるように、軸方向外側へ排出される。
<第2構成例>
図9(A)は第2構成例の保持器の一部断面図、(B)は(A)に示す保持器の要部正面図である。なお、図9(A)は図9(B)のIX−IX断面図を示している。
上記の保持器23は、エッジ逃し溝35を二分する仮想線37(図4参照)を境に左右対称形状であったが、非対称な構成であってもよい。即ち、第2構成例の保持器23Aは、保持器外径面の軸方向一端のみに半径方向外側へ突出する被案内部24を有する。保持器外径面には、被案内部24に対し軸方向の反対側に、保持器案内面27よりも小さな外径のエッジ逃し面55が形成される。したがって、片側の保持器案内面27とエッジ逃し面55との間にのみ、周方向段部57が形成される。保持器23Aのこれ以外の構成は、前述の保持器23と同様である。
比較例2の保持器は、比較例1の保持器の保持器外周面に、円周方向に沿って環状のエッジ逃し溝を設けたもので、エッジ逃し溝の軸方向幅は、ポケット径より大きい。また、外輪のエッジ部は、エッジ逃し溝の軸方向領域内に配置されている。
実施例1の保持器は、比較例2の保持器におけるエッジ逃し溝の軸方向幅を更に狭くしたもので、エッジ逃し溝の軸方向幅が、ポケット径より小さくされている。つまり、エッジ逃し溝の反カウンタボア側の端部は、外輪のエッジ部と、ポケット軸方向端部Pとの間に配置されている。
各保持器の材質は、カーボン繊維強化ポリフェニレンサルファイド(PPS−CF)である。
(1) 外周面に内輪軌道面を有する内輪と、内周面に外輪軌道面を有する外輪と、前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に配置される複数の玉と、前記玉を周方向に間隔を有して保持する複数のポケットを有する外輪案内方式の保持器と、を備え、前記外輪の反カウンタボア側の内周面に外輪案内面が形成されたアンギュラ玉軸受であって、
前記保持器は、
前記外輪案内面に摺接可能な保持器案内面と、
前記保持器案内面よりも軸方向中央で円周方向に形成され、前記保持器案内面よりも小径な逃し面と、
を有し、
前記逃し面の前記保持器案内面側の端部は、軸方向に関して、前記外輪の前記外輪軌道面と前記外輪案内面との境界となるエッジ部と、前記ポケットの反カウンタボア側のポケット軸方向端部との間に配置されるアンギュラ玉軸受。
このアンギュラ玉軸受によれば、保持器の逃し面の端部が、外輪のエッジ部と、ポケットの反カウンタ側のポケット軸方向端部との間に配置されるため、エッジ部が保持器に干渉することを防止できる。また、ポケットから排出されたグリースの一部が直接、外輪案内面と保持器案内面との間の案内すきまに入るため、そのグリースは、双方の相対運動によるせん断によって軸方向へ移動する。これにより、従来、軸受内部で循環を繰り返すことになるグリースが、軸方向端部から排出されやすくなる。
このアンギュラ玉軸受によれば、逃し面の端部が垂直面又は傾斜面からなる軸方向断面で直線部となる面を介して保持器案内面と接続されるため、グリースが円滑に軸受外に移動するようになる。
このアンギュラ玉軸受によれば、保持器外径面において、軸方向に関して対称形状となるため、軸受の組立時に保持器の向きを意識する必要がなく、軸受の組立性を向上できる。
13 外輪
15 内輪軌道面
17 内輪
19 玉
21 ポケット
23 保持器
27 保持器案内面
29 外輪案内面
33 エッジ部
35 エッジ逃し溝(逃し面)
38 周方向段部
100 アンギュラ玉軸受
P ポケット軸方向端部
Claims (3)
- 外周面に内輪軌道面を有する内輪と、内周面に外輪軌道面を有する外輪と、前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に配置される複数の玉と、前記玉を周方向に間隔を有して保持する複数のポケットを有する外輪案内方式の保持器と、を備え、前記外輪の反カウンタボア側の内周面に外輪案内面が形成されたアンギュラ玉軸受であって、
前記保持器は、
前記外輪案内面に摺接可能な保持器案内面と、
前記保持器案内面よりも軸方向中央で円周方向に形成され、前記保持器案内面よりも小径な逃し面と、
を有し、
前記逃し面の前記保持器案内面側の端部は、軸方向に関して、前記外輪の前記外輪軌道面と前記外輪案内面との境界となるエッジ部と、前記ポケットの前記反カウンタボア側のポケット軸方向端部との間における、前記ポケット軸方向端部よりも軸方向内側に配置されるアンギュラ玉軸受。 - 前記逃し面の前記保持器案内面側の端部は、軸方向断面において、保持器半径方向外側へ向けた直線部を介して前記保持器案内面と接続される請求項1に記載のアンギュラ玉軸受。
- 前記保持器は、軸方向に関して対称形状に形成されている請求項1又は請求項2に記載のアンギュラ玉軸受。
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