以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、全ての図を通じて、同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る保持機構が適用される外科手術システムの全体的な構成を示す概略図である。外科手術システム100は、ロボット支援手術またはロボット遠隔手術等のように、医師等の施術者が患者側システム1を用いて患者Pに内視鏡外科手術を施すシステムである。なお、図1は、ポジショナ7、アームベース5および複数のマニピュレータアーム3が施術前に確立される所定の準備位置(詳しくは後述する)に位置している状態を示している。また、図1は、ポジショナ7と、複数のマニピュレータアーム3との大きさの比率を実際とは異なる比率で記載している。
外科手術システム100は、患者側システム1と、この患者側システム1を操る操作装置2(後述する図4参照)とを備えている。操作装置2は、患者側システム1から離れて配置され、施術時において患者側システム1は操作装置2によって遠隔操作される。施術者は患者側システム1に行わせる動作を操作装置2に入力し、操作装置2はその動作指令を患者側システム1に送信する。そして、患者側システム1は、操作装置2から送信された動作指令を受け取り、この動作指令に基づいて患者側システム1が具備する長軸状の外科用器具40等を動作させる。
操作装置2は、外科手術システム100と施術者との間のインターフェースを構成し、患者側システム1を操作するための装置である。操作装置2は、手術室内において手術台111の傍らにまたは手術台111から離れて、あるいは、手術室外に設置されている。操作装置2は、図示しないが、施術者が動作指令を入力するための操作用マニピュレータアームおよび操作ペダル等の操作入力部と、外科用器具40として患者側システム1に取り付けられる内視鏡アセンブリ(図示せず)で撮影された画像を表示するモニタとを含む。施術者は、モニタで患部(施術部位110)を視認しながら、操作入力部を操作して操作装置2に動作指令を入力する。操作装置2に入力された動作指令は、有線または無線により患者側システム1の後述する制御部600に伝達される。
患者側システム1は、外科手術システム100と患者Pとのインターフェースを構成する。患者側システム1は、手術室内において患者Pが横たわる手術台111の傍らに配置されている。手術室内は滅菌された滅菌野である。
患者側システム1は、ポジショナ7と、ポジショナ7の先端部に取り付けられたアームベース(プラットフォーム)5と、アームベース5に着脱可能に取り付けられた複数の患者側マニピュレータアーム(以下、単に「アーム3」という)とを備えている。ポジショナ7は、所定の基台から延び、所定の基台とアームベース5との間を連結するものである。本実施の形態において、ポジショナ7は、多軸ロボットとして構成されており、所定の基台である移動可能な台車70に対してアームベース5の位置を3次元的に移動させることができる。アーム3およびアームベース5は、滅菌ドレープ(図示せず)で覆われ、アーム3およびアームベース5が手術室内の滅菌野から遮蔽される。
複数のアーム3の先端部は、それぞれ長軸状の外科用器具40を保持可能な器具保持部(ホルダ36)として構成されている。複数のアーム3のうち1本のアームの先端部には、内視鏡アセンブリ(図示せず)が保持される。複数のアーム3のうち余のアームの先端部には、インストゥルメント42が着脱可能に保持される。以下、内視鏡アセンブリが取り付けられたアーム3を「カメラアーム」ということがあり、インストゥルメント42が取り付けられたアーム3を「インストゥルメントアーム」ということがある。本実施の形態における患者側システム1は、1本のカメラアームと3本のインストゥルメントアームとの、合わせて4本のアーム3を備えている。
上記の患者側システム1において、アームベース5は、複数のアーム3の拠点となる「ハブ」としての機能を有している。本実施の形態では、ポジショナ7およびアームベース5によって、複数のアーム3を移動可能に支持するマニピュレータアーム支持体10が構成されている。ただし、ポジショナ7は多軸ロボットでなくてもよい。例えば、ポジショナ7は、アームベース5を支持するための直動レール、昇降装置、あるいは、天井または壁に取り付けられたブラケットであってもよい。ポジショナ7が接続される所定の基台は、台車70のように移動可能な構成に限られない。例えば、所定の基台は、手術室の壁、床またはこれらに固定された固定物でもよい。
上記の患者側システム1では、ポジショナ7から内視鏡アセンブリまたは各インストゥルメント42まで、要素が一連に繋がっている。本明細書では、上記一連の要素において、ポジショナ7(より詳細には、ポジショナ7の台車70との接続部であるベース90)へ向かう側の端部を「基端部」といい、その反対側の端部を「先端部」ということとする。
以下、台車70、ポジショナ7、アームベース5、および複数のマニピュレータアーム3について詳細に説明する。
図1に示すように、台車70は、台車本体71と、前輪72および後輪73と、ハンドル74とを備えている。前輪72および後輪73は、台車本体71に回転可能に取り付けられ、これにより、台車本体71は、移動可能に構成されている。後輪73は、ハンドル74の回動軸回りに回動可能に構成されており、施術者または施術補助者Oがハンドル74を把持して回動軸回りに回動させることにより台車本体71の進行方向を変更することが可能である。
患者側システム1は、制御部600により動作制御される。制御部600は、例えばマイクロコントローラ等のコンピュータにより構成される。台車本体71の内部には、制御部600および動作制御に用いられる制御プログラムおよび各種データが記憶される記憶部602が格納されている。また、台車本体71には、主に施術前におけるポジショナ7、アームベース5および複数のアーム3の位置および姿勢(後述する準備姿勢)を設定入力するための操作部604が設けられる。604は、例えばタッチパネル等により構成される。
ポジショナ7は、台車本体71に取り付けられるベース90と、ベース90から先端部に向けて順次連結された複数のポジショナリンク部を備えている。ポジショナ7は、一のポジショナリンク部が他の一のポジショナリンク部に対して回動するように順に連結されることにより複数の関節部を構成する。複数のポジショナリンク部は、第1リンク91〜第6リンク96を含む。複数の関節部は、第1関節J71〜第7関節J77を含む。なお、本実施の形態における複数の関節部は、回転軸を備えた回転関節により構成されているが、少なくとも一部の関節部が直動関節により構成されてもよい。
より詳細には、ベース90の先端部に、捩り(ロール)関節である第1関節J71を介して第1リンク91の基端部が連結されている。第1リンク91の先端部に、曲げ(ピッチ)関節である第2関節J72を介して第2リンク92の基端部が連結されている。第2リンク92の先端部に、曲げ関節である第3関節J73を介して第3リンク93の基端部が連結されている。第3リンク93の先端部に、捩り関節である第4関節J74を介して第4リンク94の基端部が連結されている。第4リンク94の先端部に、曲げ関節である第5関節J75を介して第5リンク95の基端部が連結されている。第5リンク95の先端部に、捩り関節である第6関節J76を介して第6リンク96の基端部が連結されている。第6リンク96の先端部に、捩り関節である第7関節J77を介してアームベース5のポジショナ取り付け部51が連結されている。これにより、ポジショナ7は、複数の自由度(7自由度)を有する多軸関節(7軸関節)アームとして構成される。
上述した通り、アームベース5のポジショナ取り付け部51に取り付けられるポジショナリンク部である第6リンク96は、基端側の関節部である第6関節J76および先端側の関節部である第7関節J77の双方が捩り関節として構成されている。さらに、本実施の形態において、第6関節J76の回転軸は、第7関節J77の回転軸に対して相対的に傾斜している。より具体的には、第6関節J76の回転軸は、第6リンク96の長手方向に対して傾斜しており、第7関節J77の回転軸は、第6リンク96の長手方向に直交している。第6関節J76の回転軸と第7関節J77の回転軸は、それぞれの延長線で交差する。すなわち、第6関節J76の回転面は、第7関節J77の回転面に対して傾斜している。
アームベース5は、アームベース本体50と、アームベース本体50の上部(基端側)に取り付けられ、ポジショナ7の先端部が取り付けられるポジショナ取り付け部51と、アームベース本体50の下部(先端側)に取り付けられ、複数のアーム3の基端部が取り付けられる少なくとも1つのアーム取り付け部と、を備えている。なお、アーム取り付け部はカバー52で隠れている。それぞれのアーム取り付け部は、後述する第1係合部201および規制部204を有している。アームベース5は、ポジショナ7の先端部(第6リンク96)に対して第7関節J77の回転軸であるアームベース回転軸V77回りに相対回転可能に構成される。本実施の形態において、複数(4つ)のアーム3に応じて複数(4つ)のアーム取り付け部が設けられている。複数のアーム3のベース80が複数のアーム取り付け部に固定されることにより、複数のアーム3の基端部(後述する第1リンク81)は、後述する第1関節J31の回転軸であるアーム基端部回転軸V31回りに相対回転可能に構成される。アームベース5のより詳しい構成については後述する。
図2は、図1に示す外科手術システムにおけるマニピュレータアームの全体的な構成を示す概略図である。図2には、患者側システム1が備える複数のアーム3のうちのインストゥルメント42が取り付けられた1本のアーム3の概略構成が示されている。なお、本実施の形態では、患者側システム1が具備する複数のアーム3はいずれも同様または類似の構成を有するが、複数のアーム3のうち少なくとも1本が他のアームと異なる構成(例えば異なる自由度を有する等)を有してもよい。図2に示すように、アーム3は、アーム本体30と、アーム本体30の先端部に連結された並進ユニット35とを備えている。複数のアーム3は、それぞれの先端部が基端部に対して3次元的に移動可能なように構成されている。アーム3の先端部には、長軸状の外科用器具40(インストゥルメント42または内視鏡アセンブリ)を保持可能なホルダ(器具保持部)36が設けられる。本実施の形態において、ホルダ36は、並進ユニット35に設けられる。
インストゥルメント42は、基端部に設けられた駆動ユニット45と、先端部に設けられたエンドエフェクタ(処置具)44と、駆動ユニット45とエンドエフェクタ44との間を繋ぐ細長いシャフト43とを有している。インストゥルメント42には長軸方向Dtが規定されており、駆動ユニット45、シャフト43、およびエンドエフェクタ44は長軸方向Dtに沿って配置される。インストゥルメント42のエンドエフェクタ44は、動作する関節を有する器具(例えば、鉗子、ハサミ、グラスパー、ニードルホルダ、マイクロジセクター、ステープルアプライヤー、タッカー、吸引洗浄ツール、スネアワイヤ、および、クリップアプライヤー等)、ならびに、関節を有しない器具(例えば、切断刃、焼灼プローブ、洗浄器、カテーテル、および、吸引オリフィス等)を含む群より選択される。本明細書における「長軸状の外科用器具」には、内視鏡アセンブリおよび各インストゥルメントの双方が含まれる。
アーム3がインストゥルメントアームの場合、ホルダ36には、インストゥルメント42が着脱可能に保持される。ホルダ36に保持されたインストゥルメント42のシャフト43は、長軸方向Dtに沿って延在する。また、アーム3がカメラアームの場合、ホルダ36には、内視鏡アセンブリが着脱可能に保持される。ここで、カメラアームに設けるホルダ36は、インストゥルメントアームに設けるホルダ36とは異なる形状または構造を有していてもよい。あるいは、手術中に内視鏡アセンブリを交換することは稀であるので、カメラアームに内視鏡アセンブリが固定されていてもよい。
アーム3は、アームベース5に対し着脱可能に構成されている。アーム3は、洗浄処理および滅菌処理のための耐水性、耐熱性、および耐薬品性を備えている。アーム3の滅菌処理には様々な方法があるが、例えば、高圧蒸気滅菌法、EOG滅菌法、消毒薬による化学滅菌法等が選択的に用いられ得る。
アーム本体30は、アームベース5に着脱可能に取り付けられるベース80と、ベース80から先端部に向けて順次連結された複数のアームリンク部を備えている。アーム3は、一のアームリンク部が他の一のアームリンク部に対して回動するように順に連結されることにより複数の関節部を構成する。複数のアームリンク部は、第1リンク81〜第7リンク87を含む。複数の関節部は、第1関節J31〜第7関節J37を含む。なお、本実施の形態における複数の関節部は、回転軸を備えた回転関節により構成されているが、少なくとも一部の関節部が直動関節により構成されてもよい。
より詳細には、ベース80の先端部に、捩り(ロール)関節である第1関節J31を介して第1リンク81の基端部が連結されている。第1リンク81の先端部に、曲げ(ピッチ)関節である第2関節J32を介して第2リンク82の基端部が連結されている。第2リンク82の先端部に、捩り関節である第3関節J33を介して第3リンク83の基端部が連結されている。第3リンク83の先端部に、曲げ関節である第4関節J34を介して第4リンク84の基端部が連結されている。第4リンク84の先端部に、捩り関節である第5関節J35を介して第5リンク85の基端部が連結されている。第5リンク85の先端部に、曲げ関節である第6関節J36を介して第6リンク86の基端部が連結されている。第6リンク86の先端部に、曲げ関節である第7関節J37を介して並進ユニット35の基端部が連結されている。これにより、アーム3は、複数の自由度(7自由度)を有する多軸関節(7軸関節)アームとして構成される。したがって、アーム3は、当該アーム3の先端部の位置姿勢を変化させることなくアーム3の全体的な姿勢を変えることができる。
本実施の形態において、第1リンク81は、隣接する関節J31,J32間において折り曲げられた形状を有している。言い換えると、第1リンク81は、第1関節J31の回転軸と第2関節J32の回転軸とが交差しないように構成されている。すなわち、第1リンク81は、基端側の第1関節J31から所定の第1方向(第1関節J31の回転軸方向)に延びる第1部分81aと、第1部分81aの先端部から第1部分81aの延出方向に交差する第2方向(かつ第2関節J32に直交する方向)に延びて先端側の第2関節J32に接続される第2部分81bとを有する。第1リンク81における第1方向と第2方向とのなす角は、例えば120度以上かつ160度以下(例えば140度)である。なお、第1部分81aと第2部分81bとは滑らかに繋がっている。これにより、一部のアームリンク部が折り曲げられた形状を有していても、複数のアームリンク部内に電気配線等のワイヤ(図示せず)を通し易くすることができる。
さらに、第4リンク84は、隣接する関節J34,J35間において折り曲げられた形状を有している。言い換えると、第4リンク84は、第4関節J34の回転軸と第5関節J35の回転軸とが交差しないように構成されている。すなわち、第4リンク84は、基端側の第4関節J34から所定の第1方向(第4関節J34の回転軸および第5関節J35の回転軸の双方に直交する方向)に延びる第1部分84aと、第1部分84aの先端部から第1部分84aの延出方向に交差する第2方向(第5関節J35の回転軸方向)に延びて先端側の第5関節J35に接続される第2部分84bとを有する。第4リンク84における第1方向と第2方向とのなす角は、例えば70度以上かつ110度以下(例えば90度)である。なお、第1部分84aと第2部分84bとは滑らかに繋がっている。
特に、第4リンク84は、リンク長が他の関節部より短いように構成されている。図3は、図2に示す第4リンク84を模式的に例示する側面図である。図3に示すように、例えば、第4リンク84は、第4関節J34の回転軸と第5関節J35の回転軸との間の第1方向に関する長さL1が、第4関節J34の半径R4または第5関節J35の半径R5の4倍以下、より好ましくは3倍以下となるように構成されている。なお、第4関節J34の半径R4は、第4関節J34の回転軸と、第4リンク84の第1方向における基端部位置との間の距離として定義される。また、第5関節J35の半径R5は、第5関節J35の回転軸と、第4リンク84の第1方向における先端部位置との間の距離として定義される。また、第4リンク84は、上記長さL1が、第4関節J34の半径R4と第5関節J35の半径R5との和の2倍以下となるように構成されている。より好ましくは、上記長さL1は、第4関節J34の半径R4と第5関節J35の半径R5との和に、第4関節J34の半径R4および第5関節J35の半径R5のうちの短い方の半径R5を加えた長さより短い長さとなっている。
その他のリンク82,83,85,86は、隣接する関節部間において直線状に形成されている。言い換えると、その他のリンク82,83,85,86は、隣接する関節部の回転軸同士が交差するように構成されている。
各アームリンク部は、そのアームリンク部より基端部側に接続されるアームリンク部(またはベース80)より長手方向に直交する断面の面積が小さくなるように構成される。これにより、アーム3は、基端部から先端部に向かうに従って段々細くなるように構成される。さらに、曲げ関節である各関節J32,J34,J36は、基端部側のアームリンク部81,83,85の先端部が関節部における回転軸方向中央部を基準として回転軸方向一方側に位置し、先端部側のアームリンク部82,84,86の基端部が関節部における回転軸方向中央部を基準として回転軸方向他方側において基端部側のアームリンク部81,83,85の先端部に対面するように位置するように構成される。すなわち、これらの関節J32,J34,J36は、相欠き接合により構成される。
その上で、当該関節部における回転軸方向の幅、すなわち、基端部側のアームリンク部81,83,85の先端部の回転軸方向外端部と、先端部側のアームリンク部82,84,86の基端部の回転軸方向外端部との間の距離が、基端部側のアームリンク部81,83,85の先端部より基端部側に位置する部分の長手方向に直交する断面の直径(最大寸法)より短い。
このように、各関節部およびそれの先端部側のアームリンク部が基端部側のアームリンク部に比べて幅狭に構成されることにより、患者Pの施術部位110に近接するほど狭くなるワークスペースにおいて、各アーム3の移動範囲(他のアーム3と干渉しない範囲)を増大させることができる。
アーム本体30の外殻は、主にステンレス等の耐熱性および耐薬品性を有する部材で形成されている。また、アーム本体30の点検穴等の開口部は、樹脂製のカバーで覆われている。当該カバーを樹脂等の部材で形成することにより、アーム3の強度に寄与しない部分の軽量化を図ることができる。これにより、カバーが万が一にも落下したり、アーム3が他のアーム3または施術補助者O等にぶつかっても、その衝撃を軽減することができる。なお、アーム本体30の外殻自体が樹脂部材で構成される部分を含んでもよい。また、リンク同士の連結部には、耐水性を備えるためのシール(図示せず)が設けられている。このシールは、高圧蒸気滅菌法に対応する耐熱性や、消毒薬に対する耐薬品性を備えている。なお、リンク同士の連結部において、連結される一方のリンクの端部の内側に他方のリンクの端部が挿入されており、これらのリンクの端部同士の間を埋めるようにシールが配置されることによって、シールが外観から隠蔽されている。これにより、シールとリンクとの間から水、薬液、蒸気の浸入が抑制されている。
並進ユニット35は、並進ユニット35の先端部に取り付けられたホルダ36を長軸方向Dtに並進移動させることにより、ホルダ36に取り付けられたインストゥルメント42をシャフト43の延在方向に並進移動させる機構である。
並進ユニット35は、アーム本体30の第6リンク86の先端部に、曲げ関節である第7関節J37を介して連結される基端側リンク61と、先端側リンク62と、基端側リンク61と先端側リンク62との間で連動して動く連結リンク63と、連動機構(図示せず)とを有する。第7関節J37は、長軸方向Dtに直交する方向に延びている。並進ユニット35の駆動源は、基端側リンク61に設けられている。連結リンク63は、長軸方向Dtに沿って延びている。
並進ユニット35は、連動機構により、基端側リンク61と連結リンク63との長軸方向Dtにおける相対位置が変化するとともに、連結リンク63と先端側リンク62との長軸方向Dtにおける相対位置が変化することにより、基端側リンク61に対して先端側リンク62に設けられたホルダ36に取り付けられたインストゥルメント42の長軸方向Dtに関する位置を変化させることができる。連動機構は、公知のリンク機構を採用可能であり、例えばプーリおよびタイミングベルトを用いた構成でもよいし、ギアトレインを含む機構でもよい。
図4は、図1に示す外科手術システムのマニピュレータアームの制御系統の概略構成を示すブロック図である。上記構成のアーム本体30には、アーム3の各関節J31〜J37に対応して、駆動用のサーボモータ(図4ではSMと表記)M31〜M37、サーボモータM31〜M37の回転角を検出するエンコーダ(図4ではENと表記)E31〜E37、および、サーボモータM31〜M37の出力を減速させてトルクを増大させる減速機(図示せず)が設けられる。同様に、ポジショナ7には、ポジショナ7の各関節J71〜J77に対応して、駆動用のサーボモータM71〜M77、サーボモータM71〜M77の回転角を検出するエンコーダE71〜E77、および、サーボモータM71〜M77の出力を減速させてトルクを増大させる減速機(図示せず)が設けられる。
なお、図4では、関節J31〜J37,J71〜J77のうち、アーム3の第1関節J31および第7関節J37と、ポジショナ7の第1関節J71および第7関節J77との制御系統が代表的に示され、その他の関節J33〜J36,J72〜J76の制御系統は省略されている。さらに、並進ユニット35には、並進動作のためのサーボモータM38と、回転軸64回りの回動動作のためのサーボモータM39と、サーボモータM38,M39の回転角を検出するエンコーダE38,E39と、サーボモータM38,M39の出力を減速させてトルクを増大させる減速機(図示せず)とが設けられる。
なお、エンコーダE31〜E39,E71〜E77は、サーボモータM31〜M39,M71〜M77の回転位置(回転角)を検出する回転位置検出手段の一例として設けられており、エンコーダE31〜E39,E71〜E77に代えてレゾルバ等の回転位置検出手段が用いられてもよい。また、アーム3の駆動系統の上記の各要素およびこれらのための配線ならびに制御部は、耐高温材料で構成され、滅菌処理のための耐熱性が備えられている。
制御部600は、動作指令に基づいて複数のアーム3の移動を制御するアーム制御部601および動作指令に基づいてポジショナ7の移動を制御するポジショナ制御部603を含む。アーム制御部601にはサーボ制御部C31〜C39が電気的に接続され、図示されない増幅回路等を介してサーボモータM31〜M39が電気的に接続されている。同様に、ポジショナ制御部603にはサーボ制御部C71〜C77が電気的に接続され、図示されない増幅回路等を介してサーボモータM31〜M39が電気的に接続されている。
上記構成において、施術時に操作装置2に入力された動作指令に基づいて、アーム制御部601にアーム3の先端部の位置姿勢指令が入力される。アーム制御部601は、位置姿勢指令に基づいて各サーボモータM31〜M39の位置指令値を生成し、対応するサーボ制御部C31〜C39に出力する。この位置指令値を取得したサーボ制御部C31〜C39は、エンコーダE31〜E39で検出された回転角および位置指令値に基づいて駆動指令値(トルク指令値)を生成して出力する。この駆動指令値を取得した増幅回路は、駆動指令値に対応した駆動電流をサーボモータM31〜M39へ供給する。このようにして、アーム3の先端部が、位置姿勢指令と対応する位置および姿勢に到達するように、各サーボモータM31〜M39がサーボ制御される。また、施術前に操作部604に入力された動作指令に基づいて、ポジショナ制御部603にポジショナ7の先端部の位置姿勢指令が入力される。ポジショナ制御部603は、アーム制御部601と同様に、位置姿勢指令に基づいてポジショナ7の位置および姿勢の制御を行う。
また、制御部600には、アーム制御部601にデータを読み出し可能な記憶部602が設けられ、操作装置2を介して入力された手術情報が予め記憶されている。この手術情報には、手術で使用される複数のアーム3の組み合わせが含まれている。
また、記憶部602には、アーム3の先端部に保持される外科用器具(内視鏡アセンブリまたは各インストゥルメント)の長軸方向Dtに沿った長さ等の情報が記憶されている。これにより、アーム制御部601は、アーム3の先端部の位置姿勢指令に基づいて、当該アーム3の先端部に保持された外科用器具の先端部の位置を把握可能となっている。
さらに、記憶部602には、ポジショナ7、アームベース5および複数のアーム3の施術前に確立される所定の準備位置(例えば図1に示す各要素7,5,3の位置および姿勢)が予め記憶される。記憶部602には、複数の準備位置が、施術の内容(種類)、施術部位等に応じて記憶され得る。さらに、記憶部602には、所定の収納位置が予め記憶される。所定の収納位置は、台車70による移動時に複数のアーム3等が手術室の壁または他の手術用具等に接触し難いように、ポジショナ7および複数のアーム3がなるべく折り畳まれた状態の位置および姿勢に設定されている。
ポジショナ制御部603は、操作部604に入力された準備位置の設定等に関する動作指令(所定の制御入力)に基づいて、記憶部602に記憶された準備位置にポジショナ7、アームベース5および複数のアーム3が移動するように制御する。
上記構成の患者側システム1を用いた施術において、まず、施術補助者O(施術者自身が行ってもよい)は、台車70を用いて患者側システム1を手術台111の近くに移動させる。このとき、ポジショナ7、アームベース5および複数のアーム3は、台車70に対して設定される所定の収納位置(図示せず)に位置している。
患者側システ
ム1の移動後、施術補助者Oは、操作部604を用いて患者Pの手術内容に応じた準備位置の選択入力を行う。これにより、ポジショナ制御部603は、記憶部602から対応する準備位置の情報を読み出し、ポジショナ7、アームベース5および複数のアーム3が当該準備位置に位置するようにこれらの要素を動作制御する。
なお、操作部604を用いてポジショナ7、アームベース5および複数のアーム3のそれぞれの位置を準備位置から個別に位置調整することも可能である。また、施術補助者Oがアーム3等を把持して準備位置から各アーム3を個別に移動させることも可能である。このような予備的動作を行うことにより、施術部位110となる患者Pの体表に留置されたスリーブ(カニューレスリーブ)と各アーム3に取り付けられた外科用器具40とが所定の初期位置関係となるように、ポジショナ7、アームベース5および複数のアーム3の位置決めが行われる。
本実施の形態において、患者側システム1(ポジショナ7、アームベース5および複数のアーム3)が収納位置から準備位置となるまでの間、制御部600は、操作装置2による操作を受け付けない。患者側システム1が準備位置に位置した後、制御部600は、操作装置2による操作を受け付け可能となる。患者側システム1が準備位置に位置した後の施術時において、制御部600は、原則としてポジショナ7およびアームベース5を静止させた状態で、操作装置2からの動作指令に応じて、各アーム3を動作させて外科用器具40の位置および姿勢を適宜変化させるように動作制御する。
上述のように、図1に示す準備位置は、施術前において、アームベース5と手術台111または患者Pとが所定の位置関係を有する位置として設定される。この準備位置において、アームベース5のポジショナ取り付け部51におけるアームベース回転軸V77(後述)は、アームベース5の長手方向(第1方向D1)が水平面(第1平面S1)に平行となるようにアームベース5が位置した状態で、アームベース5の長手方向を含み、水平面に垂直な鉛直面(第2平面S2)および水平面(第1平面S1)の双方に対して傾斜している。このような準備位置を取り易くするために、本実施の形態におけるアームベース5は、以下のような構成を有している。
図5A〜図5Cは、図1に示す外科手術システムにおけるアームベースの構成を示す概略図である。図5Aは、図1に示す準備位置において前方(図1におけるVA方向)から見た前面図であり、図5Bは、図5Aに示すVB方向に見た上面図であり、図5Cは、図5Aに示すVC−VC断面図である。
図5Bに示すように、複数のアーム取り付け部を覆うカバー52は、複数のアーム3の基端部(ベース80)が所定の第1平面S1視において第1平面S1に含まれる所定の第1方向D1に一列に配列されている。本実施の形態において、第1平面S1は、アームベース5が準備位置(図1)に位置した状態で床面(水平面)Gに平行な仮想の平面である。すなわち、複数のアーム取り付け部は、アームベース5が準備位置に位置した状態で上から見た場合に第1方向D1(図1における紙面奥行き方向)に一列に配列されている。
さらに、本実施の形態において、複数のアーム3のうちの少なくとも1つのアーム3の基端部の第1平面S1に垂直な第2方向(鉛直方向)D2の位置が、他のアーム3の基端部の第2方向Dの位置とは異なるように構成されている。図5Aおよび図5Bにおいて、一列に配列された4つのアーム取り付け部を覆うカバー52のうち、内側の2つのアーム取り付け部を内側アーム取り付け部用カバー52aとし、外側の2つのアーム取り付け部を外側アーム取り付け部用カバー52bとしている。本実施の形態において、内側アーム取り付け部に取り付けられるアーム3のベース80の位置(図5Aにおいては第1関節J31の回転軸であるアーム基端部回転軸V31を基準として示している)が外側アーム取り付け部に取り付けられるアーム3のベース80の位置より所定の距離d2高い位置に位置している。
図5Cに示すように、ポジショナ取り付け部51は、アームベース本体50の上部からアームベース回転軸V77方向に延びている。アームベース回転軸V77は、第1方向D1および第2方向D2を含む仮想の第2平面S2に対して傾斜するように構成されている。
さらに、複数のアーム取り付け部(後述する第1係合部201および規制部204)は、各アーム3の取り付け方向が同じ方向を向くようにアームベース本体50に固定されている。
さらに、図5Cに示すように、複数のアーム取り付け部は、各アーム3のアーム基端部回転軸V31が第2平面S2に対して傾斜するように複数のアーム3を保持するように構成されている。このとき、アームベース回転軸V77の第2平面S2に対する傾斜角θ1は、アーム基端部回転軸V31の第2平面S2に対する傾斜角θ2より小さい。言い換えると、複数のアーム取り付け部のアーム取り付け方向は、アームベース回転軸V77の方向より水平に近い角度を有している。したがって、アームベース回転軸V77とアーム基端部回転軸V31とはそれぞれの延長線上で交差する。例えば、アームベース回転軸V77の第2平面S2に対する傾斜角θ1は、45°前後(第1平面S1に対しても45°前後)であり、アーム基端部回転軸V31の第2平面S2に対する傾斜角θ2は、60°前後(第1平面S1に対しては30°前後)である。
図6Aおよび図6Bは、本実施の形態におけるアームの保持機構を示す概略構成図である。図6Aは、図5Cにおいて、カバー52を外した状態を示している。図6Bは、図1に示す準備位置において前方(図1におけるVA方向)から見た前面図である。なお、図6Aおよび図6Bにおいてアーム3はベース80のみ図示している。保持機構200は、アームベース5にアーム3を着脱可能に保持するように構成されている。保持機構200は、アームベース5のアームベース本体50に固定される第1係合部201および規制部204と、アーム3の基端部(ベース80)に着脱可能に取り付けられる第2係合部202と、を備えている。
第1係合部201には、アームベース5の長手方向D1に沿った第1軸V1方向に延びる支軸部材201aが設けられる。第1係合部201は、第1軸V1に平行なアームベース5の取り付け面5aに取り付けられている。さらに、第1係合部201は、取り付け面5aから下方(アームベース5から離間する方向)に延出された一対の支軸保持部201bを備えている。支軸部材201aは、一対の支軸保持部201bによって保持される。支軸部材201aは、例えば金属の円柱部材等により構成される。支軸部材201aは、取り付け面5aの前後方向(長手方向D1に直交し、取り付け面5aに平行な方向)の一端部(前方)に位置するように一対の支軸保持部201bに保持される。取り付け面5aは、図1に示す準備位置において水平に配置される。
アームベース5には、取り付け面5aの前後方向の他端部(後方)から下方に延出された規制部204が設けられている。規制部204は、第1軸V1に平行かつ取り付け面5aに対して傾斜する規制面204aを備えている。より具体的には、規制面204aは、上端部から下端部に向かうに従って後方に位置するように構成されている。アームベース5のアーム取り付け部は、第1係合部201および規制部204により構成される。
第2係合部202には、支軸部材201aに係合可能に構成された係合部材202aが設けられる。係合部材202aは、支軸部材201aに係合した状態で第1軸V1回りに相対回動自在に構成される。第2係合部202は、アーム3のベース80の長手方向(アーム基端部回転軸V31方向)および長手方向D1に直交する方向Yに延在し、先端部に係合部材202aが設けられている。係合部材202aは、フック形状を有している。係合部材202aとして構成されるフックは、第2係合部202の延在方向に交差する方向(アーム3の先端部側)に支軸部材201aの直径より大きな径を有する開口部を有している。
第2係合部202は、係合部材202aが、ベース80の長手方向(アーム基端部回転軸V31方向)位置に関して、ベース80の基端部(規制面204aとの当接面80a)からベース80の先端部側に所定距離離間した位置に装着されるように、形成される。係合部材202aは、第2係合部202における幅方向両端部に設けられる。すなわち、第2係合部202には、2つの係合部材202aが設けられる。
規制部204は、係合部材202aが支軸部材201aに係合した状態における(第2係合部202が装着された)アーム3の第1軸V1回りの回動を、規制面204aがベース80の基端部(当接面80a)に当接することにより規制する。アーム3の基端部を構成するベース80は、ベース80の長手軸に垂直な当接面80aを有している。
なお、図示しないが、アームベース5からアーム3への電力供給およびアームベース5とアーム3との間の信号の送受信を可能とするために、アームベース5とアーム3との間の電気的接続は、別途アーム3の基端部から延びた第1電気配線の端部に設けられた第1コネクタと、アームベース5から延びた第2電気配線の端部に設けられた第2コネクタとを接続することにより行われる。したがって、規制部204の規制面204aおよびアーム3の基端部の当接面80aには、アームベース5とアーム3との間の電気的接続を行うための電気配線の接続部が設けられていない。
規制面204aおよび当接面80aにそれぞれコネクタを設けると、アーム3を第1軸V1回りに回動させながら、コネクタ同士の接続を行う必要が生じる。このため、コネクタにコネクタの接続方向以外の方向からの力が加わり、コネクタの変形または接続不良が生じ得る。本実施の形態においては、アーム3の保持機構200とは別にアームベース5とアーム3との電気的接続を行うことにより、アーム3を回動させながら電気的接続を行う必要性をなくし、安定的な電気接続を行うことができる。
上記のような構成におけるアーム3のアームベース5への装着手順について説明する。図7Aから図7Cは、本実施の形態におけるアーム3のアームベース5への装着手順の例を示す図である。アームベース5には、第1係合部201が予め固定されている。まず、図7Aに示すように、アーム3のベース80に、係合部材202aが設けられた第2係合部202をねじ等の所定の締結部材211を用いて取り付ける。
その後、図7Bに示すように、第1係合部201に設けられる支軸部材201aに、第2係合部202を介してアーム3に取り付けられた係合部材202aを係合させる。本実施の形態において支軸部材201aの円柱部分にフック形状の係合部材202aを引っ掛けることにより係合させる。係合部材202aは、支軸部材201aに係合した状態で第1軸V1回りに相対回動自在に構成されている。より具体的には、係合部材202aの支軸部材201aへの係合面は、支軸部材201aの円周に沿った円弧状に形成されている。このため、係合部材202aが支軸部材201aに係合した状態において、その係合が容易に解除されることはない。言い換えると、係合部材202aは、支軸部材201aを中心に滑らかに回動する。これにより、アーム3がアームベース5に吊り下げられた状態(宙吊り状態)が保持される。
前述の通り、図6Aおよび図6Bでは図示を省略しているが、アーム3のベース80の先端部には、上述したように複数のアームリンク部が接続されている。したがって、図7Cに示すように、係合部材202aは、アーム3の長手方向に関する重心位置に比べてアーム3の長手方向基端部側に位置している。このため、支軸部材201aに係合部材202aが係合されたアーム3は、自重により、第1軸V1回りかつアーム3の長手方向が鉛直方向に対して傾斜している状態からアーム3の長手方向の鉛直方向に対する傾斜角が小さくなる方向に回動する付勢力Fが生じる。
言い換えると、アーム3は、自重により、アーム3の基端部が持ち上がるような付勢力Fが生じる。規制部204は、このアーム3の第1軸V1回りの自重による回動を規制するように構成される。上述の通り、規制部204は、上端部から下端部に向かうに従って後方に位置する規制面204aを備えている。このため、図6Aに示すように、自重によりアーム3の基端部(当接面80a)が規制面204aに当接した状態が保持される。このとき、ベース80の長手方向は、鉛直方向に対して傾斜した状態となる。
このように、規制部204は、アーム3の基端部が当接することにより、アーム3のアームベース5に対する位置決めを行うように構成される。これにより、アーム3をアームベース5に取り付けるだけで、アーム3のアームベース5に対する位置決めを行うことができる。
アーム3の基端部が規制部204の規制面204aに当接した状態で、ねじ等の締結部材212によりアーム3の基端部が規制部204に固定される。例えば、規制部204には、幅方向に沿って2箇所に規制面204aを貫通する貫通孔212aが設けられ、アーム3の基端部(当接面)の対応する位置にねじ穴212bが設けられる。貫通孔212aは、規制部204の下端部近傍に設けられる。上述の通り、アーム3の基端部と規制部204との当接は、アーム3の自重による付勢力Fにより保持されるため、作業者は、アーム3から手を放した状態でアーム3の基端部と規制部204との締結作業を行うことができる。
図6Aに示すように、保持機構200は、アーム3の基端部が規制部204に当接した状態で、支軸部材201a、係合部材202a、および規制部204を一体的に覆うカバー52を備えている。カバー52は、例えば樹脂またはステンレス等により形成される。カバー52は、第1係合部201全体およびアーム3の基端部の一部(ベース80の半分以上)を一体的に覆うように構成される。カバー52は、アーム3の基端部と規制部204との締結作業後に取り付けられる。
上記構成によれば、係合部材202aが支軸部材201aに係合した状態でアーム3の第1軸V1回りの回動がアームベース5に設けられた規制部204により規制される。このため、アーム3をアームベース5に装着する際に、第1軸V1方向に延びる支軸部材201aに係合部材202aを係合させるだけで、アームベース5にアーム3が保持される。しかも、係合部材202aは、支軸部材201aに係合した状態で第1軸V1回りに相対回動自在に構成されているため、係合部材202aが支軸部材201aに係合した状態において、その係合が容易に解除されることはない。したがって、アーム3のアームベース5に対する着脱を容易に実現しつつ係合時におけるアーム3の脱落を防止することができる。
また、アーム3に取り付けられる係合部材202aは、アーム3に着脱可能に構成される第2係合部202を介して取り付けられる。すなわち、第2係合部202は、ブラケットとして機能する。このため、既存のアーム3を使用することができる等、装着するアーム3の汎用性を高く維持することができる。さらに、アーム3がアームベース5に装着された状態で支軸部材201a、係合部材202aおよび規制部204はカバー52により一体的に覆われる。したがって、外部に係合箇所が露出することを防止することができる。
また、第2係合部202が、ベース80の長手方向およびアームベース5の長手方向D1に直交する方向Yに延在し、その先端部に係合部材202aが設けられるように構成されるため、アーム3の自重を利用してアーム3を規制部204に付勢させ易くすることができる。また、規制部204が、第1軸V1に平行かつ取り付け面5aに対して傾斜する規制面204aを備えているため、アーム3がアームベース5に装着された状態で斜め下方に向くように配設することができる。この結果、施術部位110の水平方向位置に対してアームベース5およびポジショナ7の水平方向位置を施術部位110からオフセットした位置に配置することができる。これにより、患者Pに圧迫感を与えることを抑制することができる。
また、規制部204が、アーム3の第1軸V1回りの自重による回動を規制するように構成されているため、係合部材202aを支軸部材201aに係合させた状態で作業者がアーム3を第1軸V1回りに回動させなくても自然にアーム3が固定位置に位置される。したがって、作業性を向上させることができるとともに、アーム3が脱落することを有効に防止することができる。
以上より、本実施の形態におけるアーム3は、外科手術システム100に適用されるマニピュレータアームとして好適な構成とすることができる。
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造および/または機能の詳細を実質的に変更できる。
例えば、上記実施の形態においては、アームベース5に固定される第1係合部201に支軸部材201aが設けられ、アーム3の基端部に着脱可能に取り付けられる第2係合部202に係合部材202aが設けられている。これに代えて、第1係合部201に係合部材202aが設けられ、第2係合部202に支軸部材201aが設けられてもよい。
また、上記実施の形態においては、係合部材202aが2つある態様について例示したが、係合部材202aは、1つであってもよいし、3つ以上あってもよい。例えば、1つの係合部材202aを用いる場合、第1軸V1方向の長さ(幅)が一対の支軸保持部101b間の長さから所定の遊び分だけ短い長さとなるようにしてもよい。ただし、最後に上述したような締結部材212で固定する場合には、アーム3を支持できる強度があれば、係合部材202aの第1軸V1方向の長さは、一対の支軸保持部101b間の長さ以下である限り限定されない。
また、係合部材202aの形状は、上記フック形状に限られず、種々の形状が採用され得る。例えば係合部材202aが環状形状(孔形状)を有しており、支軸部材201aが第1軸V1方向に突起形状を有していてもよい。この場合、係合部材202aを突起形状の支軸部材201aに対して第1軸V1方向から係合させることにより、支軸部材201aに対して係合部材202aを第1軸回りに回動自在に構成することができる。
また、複数のアーム3および/またはポジショナ7における複数の関節部(複数のリンク部)の数(自由度の数)、形状は上記実施の形態に限られず、種々の態様を採用し得る。
また、上記実施の形態では、外科手術システム100のアームベース5にアーム3を取り付けるための保持機構200を例示したが、外科手術システム100以外のシステムにも本発明の保持機構200を適用可能である。