本発明に係るドキュメントの送信制御の実施形態を説明する前に、この送信制御が適用されるドキュメント管理システムについて説明する。このドキュメント管理システムは、出願人が先に出願した特願2017−052850号、特願2017−052851号、特願2017−052852号、特願2017−052853号、及び特願2017−180213号の明細書に例示したものと同様のものである。
図1に、ドキュメント管理システムの概略構成を示す。
紙の文書の場合、文書を持つ者が自由にコピーしたり他人に渡したりすることができる。また、文書を入手した者は、その文書を読むことができる。このように、紙の文書は情報漏洩を招くリスクが極めて高い。
これに対して、このドキュメント管理システムは、電子的なドキュメントをセキュアに利用できる環境を提供し、ドキュメントの情報が漏洩するリスクを下げることを目指す。ここで、ドキュメントは、1つの単位(例えば1つのファイル)として流通可能なコンテントデータであり、データの種類は特に限定されない。例えば、ドキュメントの概念には、テキストデータ、ワードプロセッサソフトで作成された文書データ、表計算ソフトで作成されたスプレッドシートデータ、CAD(Computer Aided Design)データ、画像データ、動画データ、音声データ、マルチメディアデータ、ウェブブラウザで表示されたページデータ、その他PC上で作成・編集・閲覧されプリントアウト対象となる様なデータなどが含まれる。
このドキュメント管理システムは、複数のローカルシステム100とそれらローカルシステムに関する管理(特に後述する処理システムの管理)を行う管理システム200とを含む。管理システム200は、インターネット等の広域ネットワーク10を介して各ローカルシステム100と通信可能である。
ローカルシステム100は、ローカルネットワーク108に接続された1以上の作成端末102、1以上の閲覧端末104、及び処理装置110を含む。ローカルネットワーク108は、企業等の組織内に設けられたプライベートネットワーク(例えばLANとして構成)であり、ファイアウォール等により広域ネットワーク10から保護されている。処理装置110は、基本的に、ローカルシステム100内に1つ設置される。組織内のプライベートネットワークが大規模なものである場合、プライベートネットワークを構成する個々のネットワークセグメントをそれぞれローカルシステム100とし、それら個々のローカルシステム100内に1つずつ処理装置110を設置してもよい。例えば、ある会社の部署毎の居室内のネットワークセグメントがそれぞれその部署のローカルシステム100となり、そのセグメントに1つの処理装置110が設置される。この例では、会社毎や各会社の部署毎に処理装置110を核とするローカルシステム100が形成され、それら各処理装置110が中央にある管理システム200から管理される。
作成端末102は、ドキュメントを作成するために用いられる端末であり、例えばデスクトップ型又はノート型のパーソナルコンピュータ、ワークステーション、タブレット端末、スマートフォン、複合機、スキャナ、ファクシミリ装置、デジタルカメラ等がその例である。作成端末102には、ドキュメントの作成、編集等のためのアプリケーションがインストールされている。また、作成端末102には、作成したドキュメントの配信をドキュメント管理システムに依頼するためのソフトウエアがインストールされている。このソフトウエアの形態としては、後述する処理装置110と情報をやりとりするデバイスドライバとして実装、またはWebアプリによる実装、などが考えられる。
処理装置110は、作成端末102が作成したドキュメントを、ドキュメント管理システムが提供するセキュアな環境で用いる形態である保護済みドキュメント(以下では「eDocファイル」とも呼ぶ)へと変換するという保護処理を実行する。保護処理は、元のドキュメントをeDocへとエンコードする処理ともいえ、この意味では処理装置110は一種のエンコーダである。この保護処理では、ドキュメントを、例えば、本実施形態のシステムのために設計された専用フォーマットのデータに変換すると共に、そのドキュメントの配信先に指定されたユーザにのみ復号可能な形で暗号化する。フォーマット変換と暗号化はどちらを先に行ってもよい。
また処理装置110は、保護済みドキュメントのメタデータを作成し、作成したメタデータを上位システムである管理システム200に登録する。メタデータは、当該保護済みドキュメントの書誌事項、配信先の情報、各配信先が保護済みドキュメントの暗号化を解除するのに用いるキーの情報等を含む。メタデータは複数の項目を含み、このサービスで提供される機能に応じて対応するデバイスやユーザからデータ付与・編集・更新が実行される。
例として、それら項目のうちの一部を、ドキュメント管理システムに対するドキュメントの登録指示を行ったユーザが指定し、別の一部は処理装置110が作成する。また、メタデータのうちの一部の項目の値を管理システム200や閲覧端末104が設定することもあり得る。また、処理装置110は、生成した保護済みドキュメント(eDocファイル)を、ユーザの指定した配信先の閲覧端末104に送信する。
保護済みドキュメントすなわちeDocファイルは、元のドキュメントを専用フォーマットに変換し暗号化したものであり、eDocの本体とも呼ぶ。eDocファイルを閲覧可能とするには、対応するメタデータが必要となる。eDocファイルとメタデータとが揃って、閲覧可能な完全な保護済みドキュメントを構成する。このように、eDocファイルとこれに対応するメタデータとの組を、以下では「eDoc」と呼ぶ。
処理装置110は、無線LANのアクセスポイントの機能を内蔵していてもよい。この場合、閲覧端末104は、無線LANで処理装置110と通信可能である。
閲覧端末104は、保護済みドキュメント(eDocファイル)の閲覧に用いられる端末である。ここで言う「閲覧」は、保護済みドキュメントをそのドキュメントが表す情報内容に応じた態様で利用することを意味する。例えば、保護済みドキュメントがワープロデータや図面等の文書を情報内容として持つ場合、閲覧は、閲覧端末104が表示したその文書をユーザが読む又は見ることである。また保護済みドキュメントが表す情報内容が音声である場合、閲覧とは、閲覧端末104が再生したその音声をユーザが聞くことである。閲覧端末104は、例えば、デスクトップ型又はノート型のパーソナルコンピュータ、ワークステーション、タブレット端末、スマートフォン等の汎用のコンピュータに、保護済みドキュメントを閲覧するためのビューワアプリケーションをインストールして構成される。また、電子書籍端末のような閲覧専用の端末に、ビューワアプリケーションと同等の機能を持たせたものを閲覧端末104として用いてもよい。ビューワアプリケーションは、暗号化されている保護済みドキュメントをメタデータの情報を用いて復号する機能や、保護済みドキュメントの専用フォーマットで表されるデータを可読な状態のデータへとデコードする機能を有する。なお、本実施形態のドキュメント管理システムに対応するビューワアプリケーションを持たないコンピュータは、専用フォーマットのデータを可読なデータへとデコードすることはできない。
閲覧端末104は、保護済みドキュメントを復号及びデコードして表示する機能に加え、表示したそのドキュメントに対するユーザからの加工(編集)を受け付ける機能を有していてもよい。加工されたドキュメントは、元の保護済みドキュメントとは異なる内容となるが、この編集後のドキュメントを閲覧端末104から処理装置110に送ってドキュメント管理システムに登録(すなわち保護済みドキュメントへとエンコード)できるようにしてもよい。このように、1つの端末が、作成端末102と閲覧端末104の両方の機能を持っていてもよい。なお、eDocには閲覧者に許可する権限(後述するメタデータ中のアクセス権限情報)が設定されており、その権限の内容には、そのeDocへの書き込み制限、再配布先の制限などが含まれてもよい。このような制限がアクセス権限情報中に規定されているeDocの場合、閲覧端末104は、閲覧者からの加工(編集)操作をその書き込み制限の範囲内でのみ受け付け、また加工後の新たなeDocの再配布先の指定を、その再配布先の制限の範囲内でのみ受け付ける。
また、一例として、ドキュメント管理システムを利用するユーザを認証するためのツールとして、ユーザが携帯する認証デバイス130を用いる。認証デバイス130は、ICカードのように、当該デバイスを携帯するユーザに固有の識別情報を内蔵し、外部装置からの要求に応じてユーザ認証のためのデータ処理を実行するデバイスである。認証デバイス130は、そのような個人認証用のICカードと同等の機能を内蔵したスマートフォンのような携帯端末であってもよい。閲覧端末104や作成端末102は、NFC(Near Field Communication)等の無線通信プロトコルを用いて認証デバイス130と通信する機能を備える。閲覧端末104や作成端末102は、認証デバイス130との間で所定のプロトコルに沿ってユーザ認証のための情報をやりとりし、その認証デバイス130を携帯するユーザを認証する。あるいは、実際のユーザ認証は処理装置110や管理システム200等、本実施形態のドキュメント管理システムのサーバ側が実行し、閲覧端末104や作成端末102は、サーバ側と認証デバイス130との間のデータ転送の仲介を行う方式であってもよい。また、閲覧端末104や作成端末102が認証デバイス130の機能を内蔵していてもよい。
管理システム200は、各ローカルシステム100内の処理装置110を管理する。また管理システム200は、それら各処理装置110が生成した保護済みドキュメントのメタデータを管理し、要求に応じてメタデータを閲覧端末104に提供する。管理システム200は、1台のコンピュータ、又は相互に通信可能な複数のコンピュータにより構成され、ユーザIDサーバ210、DIDサーバ220、メタデータサーバ230、処理装置管理サーバ240の機能を有する。
ユーザIDサーバ210は、ドキュメント管理システムを利用する各ユーザの情報を管理するサーバである。ドキュメント管理システムを利用するユーザには、2つの階層がある。1つは、ドキュメント管理システムの利用のための契約を本システムの運営者と結んだ契約者であり、もう1つはその契約の下で実際にシステムを利用してドキュメントの登録や閲覧を行う一般ユーザである。例えば、会社が契約者であり、その会社のローカルネットワーク108に処理装置110が設置され、その会社の社員が一般ユーザとして、その処理装置110を介してドキュメント管理システムを利用するケースが多いと想定される。ユーザIDサーバ210は、契約者と一般ユーザのそれぞれについての情報を保持し、管理する。
DIDサーバ220は、保護済みドキュメントの識別情報(ID)であるDID(ドキュメントID)を管理する。実際に保護済みドキュメントにDIDを付与するのはその保護済みドキュメントを作成した処理装置110であるが、DIDサーバ220は処理装置110に対してDIDの発行権限と発行枠(発行数)を付与し、その発行権限と発行枠の中で処理装置110が実際に発行したDIDの報告を受けて記録する。これにより、DIDサーバ220は、不正なDIDの発生を抑止し、不正なDIDを持つドキュメントを検知可能とする。
メタデータサーバ230は、処理装置110が生成した保護済みドキュメント(eDocファイル)のメタデータを保持し、管理する。メタデータサーバ230は、ユーザから閲覧端末104を介して保護済みドキュメントのメタデータを要求された場合、そのユーザが正当な者であれば、メタデータをその閲覧端末104に提供する。なお、メタデータを要求するユーザ(閲覧者)がメタデータサーバ230にとって「正当な者」であるとは、そのユーザと、そのユーザがその要求を発する際に用いた閲覧端末104との組合せが、そのeDocファイルのDID(これはその要求に含まれる)に対応づけてメタデータサーバ230が保持しているメタデータ中の配信先情報(詳しくは後述)に示される配信先ユーザ及び配信先の閲覧端末104の組合せに該当する場合のことである。
処理装置管理サーバ240は、各処理装置110のステータス(状態)を管理するサーバである。
図2を参照して、このドキュメント管理システムの仕組みを概略的に説明する。
(0)管理システム200(DIDサーバ220)は、ローカルシステム100内の処理装置110に対してDID(ドキュメントID)の発行権及びこれに付随する発行枠(ドキュメント数)を事前に付与している。DIDの発行権は、無制限ではなく、管理システム200発行枠に制限される。すなわち、処理装置110は、管理システム200から付与された発行枠が示す数までのドキュメントであれば、同時に付与された発行権に基づいたDIDを付与することができる。発行枠を使い切れば、処理装置110は、管理システム200から新たな発行権及び発行枠の付与を受ける。
(1)ユーザは、ドキュメントをドキュメント管理システムに登録したい(すなわち配信したい)場合、作成端末102にドキュメント登録を指示する(例えばアプリケーションのメニュー上で「登録」を指示する)。この指示を受けた作成端末102は、ユーザ認証を求める。この認証は、ユーザID及びパスワードの入力により行ってもよいし、作成端末102のカードリーダ部の近傍にユーザが認証デバイス130を近づけることで行ってもよい。ユーザ認証は、作成端末102が行ってもよいし、ドキュメントの登録先である処理装置110が行ってもよい。そして、ユーザは、作成端末102に保持されているドキュメントからドキュメント管理システムに登録するものを選んでその登録を指示する。
作成端末102(より詳しくは、作成端末102にインストールされた登録処理用プログラム)は、ユーザからドキュメントの登録指示を受けた場合、そのドキュメントに対する属性データのうちそのユーザが指定すべき項目(例えばドキュメントの配信先)の入力を受け付ける。ここで、配信先として、ユーザと閲覧端末104の組合せの指定を受け付けるようにしてもよい。この場合、ユーザと、そのユーザがドキュメントの閲覧に用いる閲覧端末104との組合せが、配信先として指定された組合せと一致する場合に、ユーザはそのドキュメントを閲覧可能となる。
作成端末102は、ユーザが入力した配信先等の属性項目と、作成端末102自身が生成した他の属性項目(例えば登録者の情報、作成日時等)と合わせた属性データを、そのドキュメントのデータと共に処理装置110に送信する。なお、作成端末102は、様々なアプリケーションが作成した様々なフォーマットのドキュメントを、閲覧端末104側で取扱可能な統一的なフォーマットに変換するドライバを有していてもよい。例えば、ワープロデータ、スプレッドシート、CADデータのような静的な文書画像を示すデータの場合、そのドライバは、プリンタドライバと同様、そのデータをページ記述言語で表現されたドキュメントへと変換する。また、例えば、元のデータが音声データの場合、ドライバは、その音声データを本実施形態のドキュメント管理システム(特に閲覧端末104)が対応する特定の音声データ形式のデータ(ドキュメント)へと変換する。
(2)処理装置110は、作成端末102から受信した登録対象のドキュメントに対して保護処理を施すことで保護済みドキュメント(eDocファイル)を生成する。この生成では、受信したドキュメントをドキュメント管理システムの専用フォーマットへとエンコードし、エンコードしたデータを、生成した暗号鍵を用いて暗号化することで、eDocファイルを生成する。エンコードと暗号化の順序は逆でもよい。また処理装置110は、そのeDocに対して一意なDIDを付与する。このDIDには、管理システム200から受けた発行権限に基づくものであることを証する情報(後述する発行権限キー)と、その処理装置110自身が付与したものであることを証する情報(後述する発行証明キー)が含まれる。なお、DIDのデータ構造については、後で詳細な例を説明する。生成されたDIDは、eDocファイル内に(例えばそのファイルのプロパティの一項目として)組み込まれる。
また処理装置110は、生成したeDocファイルに対応するメタデータを生成する。このメタデータには、作成端末102からそのドキュメントと共に受け取った属性データと、処理装置110自身が生成した属性項目(例えば、DID、処理装置自身のID、エンコード日時、暗号鍵情報)の値とが含まれる。メタデータに含まれる暗号鍵情報は、eDocファイルの暗号化を解除するための鍵を示す情報である。暗号化に共通鍵方式を用いた場合、暗号鍵情報はその共通鍵を示す情報である。ただし、共通鍵そのものを平文でメタデータに含めると、盗聴や傍受により悪用される懸念があるので、その共通鍵を配信先ユーザの公開鍵で暗号化したものを暗号鍵情報としてメタデータに組み込む。
また、処理装置110は、生成したeDocファイルとメタデータを、内蔵するデータベースに保存する。
(3)処理装置110は、生成したメタデータを管理システム200に送信して登録する。管理システム200(メタデータサーバ230)は、受信したメタデータを保存する。
(4)処理装置110は、生成したeDocファイルを、配信先に指定された閲覧端末104に配信する。この配信は、プッシュ型でもプル型でも、それら両方(例えばeDoc作成時にプッシュ配信し、そのときに非稼働で受信しなかった閲覧端末104はプル型で配信を受ける)であってもよい。この配信は、ローカルシステム100内のローカルネットワーク108を介して行われる。
(5)閲覧端末104が受信したeDocファイルは、暗号化等により保護されているのでそのままでは閲覧が不可能である。ユーザは、閲覧端末104でそのeDocファイルを閲覧したい場合、自分の認証デバイス130をその閲覧端末104のカードリーダ部に近づけてユーザ認証を受けた後、閲覧端末104の画面上でそのeDocの閲覧を指示する。この指示を受けた閲覧端末104は、管理システム200にアクセスしてそのeDocのメタデータを要求する。この要求には、そのeDocのDIDが含まれる。
(6)管理システム200(メタデータサーバ230)は、閲覧端末104から要求されたeDocの最新のメタデータをその閲覧端末104に送信する。
(7)閲覧端末104は、要求したメタデータを管理システム200から受信すると、そのメタデータに含まれる配信先情報に、当該閲覧端末104と現在この閲覧端末104を利用しているユーザ(認証デバイス130で認証済み)との組合せが含まれるかどうかを判定する。含まれていない場合、そのユーザはその閲覧端末104でそのeDocを閲覧する権限がないので、閲覧端末104はeDocファイルを開かず、閲覧権限がない旨を示すエラーメッセージを表示する。含まれる場合は、そのユーザはその閲覧端末104でそのeDocファイルを閲覧する権限を持つ。この場合閲覧端末104は、そのeDocファイルをそのメタデータに含まれる暗号鍵情報を用いて復号し、画面に表示する(すなわちそのeDocファイルの情報内容に応じた態様で出力する)。
メタデータには有効期限を設定する事が出来る。有効期限は、例えばメタデータが送信された日時に対し、規定の有効期間、または配信者等が指定した有効期間を足すことで求められる。閲覧端末104は、メタデータの有効期限が過ぎた後には、メタデータを再度管理システム200から取得し直さないと、対応するeDocファイルを開く(復号及び表示する)ことができない。閲覧端末104は、処理装置110又は管理システム200と通信可能であれば、閲覧対象に指示されたeDocファイルのその指示の時点での最新のメタデータを処理装置110又は管理システム200から取得し、この最新のメタデータに基づいて閲覧可否を判定する。
メタデータが最初の管理システム200に登録された後、そのメタデータに含まれる配信先情報やアクセス権限情報が配信者、または配信先の変更権限が与えられた者(例えばデータの編集権限を保有する者)により変更されることがある。eDocが作成・登録された時点で配信先に指定されたユーザであっても、その後の変更により配信先から外された場合には、閲覧端末104は、管理システム200から取得した最新のメタデータに含まれる配信先情報によりそのことを検知し、eDocファイルの表示を行わない。
次に、図3を参照して、eDocのメタデータ300のデータ内容の例を説明する。
メタデータ300の含む項目のうち、まず「DID」は、そのeDocを生成した処理装置110が付与したドキュメントIDである。「ドキュメント名」は、そのeDocの名称又はタイトルである。
「配信者ID」は、そのeDocを配信した者、すなわち作成端末102から処理装置110に対してドキュメントの登録操作を行い、処理装置110を介して配信を行う者(以下、配信者と呼ぶ)のユーザIDである。
「エンコード日時」は、作成端末102からのドキュメントがエンコード(保護処理)されてそのeDocが作成された日時である。「処理装置ID」は、その保護処理を実行した処理装置の識別情報である。「暗号化情報」は、そのeDocの生成時の暗号化に関する情報であり、暗号化に用いた暗号化ソフト名、その暗号化ソフトのバージョン、及びその暗号化を解除(復号)するための鍵を表す鍵情報を含む。鍵情報は、例えば、復号のための鍵を各配信先ユーザの公開鍵で暗号化したものである。「キーワード情報」は、そのeDoc(又は元データ)から抽出したキーワードのリストである。このキーワード情報は、例えばeDocの検索の際に利用される。
「配信先情報」は、配信者がそのeDocの配信先に指定したユーザ及び閲覧端末を表す情報である。図3の例では、配信先情報は、配信先のユーザ毎に、そのユーザのユーザIDとそのユーザが閲覧に用いるべき閲覧端末104のID(識別情報)とを含んでいる。そのユーザがそのeDocの閲覧に利用可能な閲覧端末104が複数指定された場合は、そのユーザのユーザIDとそれら複数の閲覧端末104のIDとの組が配信先情報に組み込まれる。
また別の例として、配信先ユーザは配信先に指定された閲覧端末104のうちのいずれを利用してもそのeDocを閲覧可能とする方式を採用した場合、配信先情報には、配信先ユーザのIDのリストと、配信先の閲覧端末104のIDのリストが含まれる。例えば、配信先の閲覧端末104の候補として、部署の共用端末や、部署の居室や会議室に備え付けられた端末等が想定される場合がある。共用端末や居室等の備え付け端末(これも共用端末の一種)等は、組織内のユーザのだれが使うか決まっていないが、少なくともどのような端末であるかは配信者には分かっており、また勝手に組織外に持ち出される可能性が低いことも分かっているので、機密対象のドキュメントの配信先として適格である。このように素性の分かった共用端末でeDocを利用する場合には、このように配信先ユーザは配信先に指定された閲覧端末104のうちのどれを利用してもよい、という利用形態も考えられる。
「アクセス権限情報」は、配信者が配信先のユーザに対して付与したそのeDocに対する利用権限を表す情報である。
「オフライン有効期間」は、そのメタデータの有効期間の長さを表す情報である。すなわち、閲覧端末104が管理システム200にアクセスできない状態(オフライン状態)にあるときでも、そのeDocの前回の閲覧時に取得してキャッシュしているメタデータが存在し、そのメタデータの取得日時からその「オフライン有効期間」内であれば、閲覧端末104はそのメタデータ内の暗号鍵情報を用いてそのeDocを復号して表示する。一方、オフライン状態であり、閲覧を指示されたeDocについてのキャッシュしたメタデータのオフライン有効期間が既に過ぎている場合は、閲覧端末104は、そのeDocを復号せず、したがって表示も行わない。なお、閲覧端末104は、管理システム200にアクセス可能(すなわちオンライン状態)である間は、ユーザがeDocの閲覧を指示した場合、そのeDocの最新のメタデータを管理システム200(特にメタデータサーバ230)から取得して使用する。
「元データ情報」は、eDocが生成(エンコード)される前の元データが保存されているか否かを示す情報と、保存されている場合はその元データの保存場所を示す情報(例えばURL:Uniform Resource Locator)である。ここでの元データは、例えば作成端末102から処理装置110に送られたドキュメント(保護処理を施す前のもの)、又はそのドキュメントの元になったアプリケーションデータ(例えばドキュメントがページ記述言語データである場合、そのデータに変換する前のワープロソフトのデータ)、又はそれらの両方である。
「ドキュメント取得日時」は、閲覧端末104がそのeDocの本体データのファイル(すなわちeDocファイル)を取得した日時である。「メタデータ取得日時」は、閲覧端末104がそのeDocの現在キャッシュしている最新のメタデータを管理システム200から取得した日時である。ドキュメント取得日時及びメタデータ取得日時は、管理システム200に保持されているメタデータには含まれず、閲覧端末104が管理システム200から取得したメタデータに対して自機での管理のために追加する。
また図3に示したメタデータの項目のうち、DID、エンコード日時、処理装置ID、暗号化情報、キーワード情報は、処理装置110が生成する情報である。また、ドキュメント名、配信者ID、配信先情報、アクセス権限情報、オフライン有効期間、元データ情報は、作成端末102から処理装置110に送られるドキュメントや属性データに由来する。
次に、管理システム200の各サーバ210〜240が管理する情報のデータ内容を例示する。
まず図4を参照して、ユーザIDサーバ210が管理するデータ内容の例を説明する。ユーザIDサーバ210には、各契約者の契約者データ212と、各一般ユーザのユーザデータ214が登録されている。
契約者データ212には、契約者ID、契約内容情報、及びユーザリストが含まれる。契約者IDは、ドキュメント管理システムの運営者と契約した契約者(例えば組織や組織内の部署)の識別情報である。ユーザリストは、その契約者の契約によってこのドキュメント管理システムを利用する一般ユーザ(例えば契約者である組織に所属するメンバ)のユーザIDのリストである。
一般ユーザデータ214には、その一般ユーザのユーザID、パスワード、ユーザIDキー情報、公開鍵証明書、既定の処理装置ID、既定の閲覧端末リスト、所属情報を含む。ユーザIDキー情報は、そのユーザの認証デバイス130が用いるそのユーザの認証情報である。公開鍵証明書は、そのユーザの公開鍵を証明するデジタル証明書である。既定の処理装置IDは、そのユーザが登録された処理装置110のIDである。通常、ユーザは自分が所属するオフィスに置かれた処理装置110に登録され、その処理装置110がそのユーザにとっての既定の処理装置となる。既定の閲覧端末リストは、そのユーザが主として使用する1以上の閲覧端末のIDのリストである。このリストに含まれる閲覧端末が、そのユーザに対してeDocを配信する際の配信先の端末の候補となる。所属情報は、そのユーザが所属する組織やその部署等を特定する情報であり、例えばその組織や部署の契約者IDである。
次に図5を参照して、DIDサーバ220が管理するデータ内容の例を示す。
DIDサーバ220は、図5に示すように、処理装置に対して発行した発行権限キー毎に、発行枠、付与先処理装置、キー付与日時、キー終了日時、発行済DIDリストの各項目の情報を保持している。
発行権限キーは、DIDサーバ220が処理装置110に対して付与した、DIDの発行権限を証明するキー情報(例えばランダムに生成した文字列)である。処理装置110は、自らが発行するDIDに、DIDサーバ220から付与された発行権限キーを含めることで、そのDIDが正当な発行権限の下で発行したものであることを証する。
発行枠は、その発行権限キーと共に処理装置110に付与したDID発行上限数(DIDを付与可能な上限のドキュメント数)である。処理装置110は、発行権限キーと発行枠のペアをDIDサーバ220から付与されると、その発行枠が示す上限数までのeDocに対して、それぞれ固有のDIDを付与することができる。
付与先処理装置は、その発行権限キー(及び発行枠)の付与先の処理装置110のIDを示す。キー付与日時は、その発行権限キーを処理装置110に付与した日時である。キー終了日時は、付与先の処理装置110がその発行権限キーを使い終わった日時である。すなわち、処理装置110がその発行権限キーと共に付与された発行枠が示す上限数のeDocに対するDIDの付与をし終えた日時である。なお、処理装置110が発行枠を使い切った後に次の発行権限キーと発行枠をDIDサーバ220に要求する仕組みを採用している場合、ある発行権限キー(第1のキーと呼ぶ)のキー終了日時を明示的に記録する代わりに、当該発行権限キーの次に処理装置110が付与された発行権限キーのキー付与日時を、第1のキーのキー終了日時として用いてもよい。発行済DIDリストは、付与先の処理装置110がその発行権限キーを用いて発行したDIDとその発行年月日のリストである。付与先の処理装置110は、発行権限キーを用いてDIDを発行する毎にそのDIDをDIDサーバ220に通知し、DIDサーバ220は通知されたDIDとその発行年月日を、そのDIDに含まれる発行権限キーに対応する発行済DIDリストに追加する。
メタデータサーバ230は、各処理装置110から送られてくる各eDocのメタデータを保管する。保管するメタデータのデータ内容は、図3に例示したものと同様である。ただし、図3に例示したメタデータの項目のうち、閲覧端末104のみで用いる項目(ドキュメント取得日時やメタデータ取得日時等)については、メタデータサーバ230では管理しない。
次に図6を参照して処理装置管理サーバ240が管理するデータについて説明する。処理装置管理サーバ240は、管理対象の処理装置110毎に、その処理装置110のステータス履歴242を記憶している。ステータス履歴には、その処理装置110のIDに対応付けて、作成及び個々の更新の時点(作成・更新日時)でのその処理装置110のステータス244の情報が含まれる。
個々の時点でのステータス244には、設置場所、契約者ID、管理者名、管理者連絡先、登録ユーザリスト、ソフトウエア情報246、ハードウエア情報248、ディスク空き容量、セキュリティ証明書情報が含まれる。設置場所は、その処理装置110の設置場所を示す情報であり、例えば住所や建物名、階数などの情報を含む。契約者IDは、その処理装置110を使用している契約者のIDである。管理者名は、その処理装置110の管理者の名前である。管理者は、処理装置110の設置先の部署等においてその処理装置110を管理しているユーザである。管理者連絡先は、その管理者の連絡先の情報(例えば電子メールアドレス)である。登録ユーザリストは、その処理装置110に登録されたユーザ(言い換えればその処理装置110を「既定の処理装置」とするユーザ)のユーザIDのリストである。
ソフトウエア情報246には、エンコードソフト名、エンコードソフトバージョン、暗号化ソフト名、暗号化ソフトバージョン、処理装置110にインストールされているその他のソフトウエアの名称及びバージョンが含まれる。ここでエンコードソフトは、作成端末102から入力されたドキュメントを、ドキュメント管理システムの専用フォーマットへと変換(エンコード)するソフトウエアである。暗号化ソフトは、ドキュメント(例えば専用フォーマットに変換されたもの)を暗号化するソフトウエアである。
ハードウエア情報248には、エンコード回路情報、エンコード回路FWバージョン、当該処理装置110の製造者名等の項目が含まれる。エンコード回路情報は、エンコード処理に用いるハードウエア回路の機種を示す情報である。エンコード回路FWバージョンは、そのエンコード回路のファームウエア(FW)のバージョンである。
ディスク空き容量は、処理装置110が持つハードディスク又はソリッドステートドライブ等の二次記憶装置の、その時点での空き容量である。
セキュリティ証明書情報は、処理装置110にその時点でインストールされている各セキュリティ証明書を特定する情報(例えば証明書のサブジェクト(subject:主体者)識別子、イシュア(issuer:発行者)識別子、発行日時等の情報)である。
また煩雑さを避けるために図示は省略したが、ステータス244には、処理装置110にインストールされているフォントの種類(フォント名のリスト)、ネットワーク通信のためのアドレス(例えばIPアドレス)、搭載している二次記憶装置(ハードディスクドライブ等)の装置ID、処理装置110を設置先の組織の基幹システムの処理に繋ぐためのカスタマイズ内容を示す情報、処理装置110が用いる暗号鍵(通信路暗号化や署名等のためのもの)のインストール日時等が含まれる。
次に図7を参照して、処理装置110が保持するデータベース群について説明する。図示のように、処理装置110は、管理情報記憶部112、ユーザDB114及びドキュメントDB116を含む。
管理情報記憶部112には、管理情報112aが記憶される。管理情報112aには、上位装置アドレス情報、セキュリティ証明書、暗号鍵、エンコードソフト名、エンコードソフトバージョン、暗号化ソフト名、暗号化ソフトバージョン等の項目が含まれる。上位装置アドレス情報は、処理装置110を管理する上位装置のそれぞれの通信アドレス(例えばIPアドレス、URL等)の情報である。管理システム200やその中の各サーバ210〜240、又は後述する組織内管理システム150やその中の各サーバ152〜156が上位装置の例である。セキュリティ証明書は、処理装置110がネットワーク上の他の装置と公開鍵基盤準拠のセキュアな通信を行う際に用いるデジタル証明書である。処理装置110は、よく通信する相手である各上位装置のセキュリティ証明書を保持している。また作成端末102や閲覧端末104を使用する各ユーザのセキュリティ証明を保持してもよい。暗号鍵は、処理装置110がネットワーク上の他の装置と通信を行う際の暗号化や復号、処理装置110によるデジタル署名(又はそれに類する証明情報の生成)等の目的に用いる、当該処理装置110の暗号鍵であり、例えば公開鍵基盤においてその処理装置110に対して付与された秘密鍵と公開鍵のペアである。エンコードソフト及び暗号化ソフトは、それぞれ、この処理装置110にインストールされているエンコード(専用フォーマットへの変換)及び暗号化のためのソフトウエアである。
ユーザDB114には、この処理装置110に登録されている各ユーザ(言い換えればこの処理装置110を「既定の処理装置」とするユーザ)のユーザ情報114aが記憶されている。個々の登録ユーザのユーザ情報114aには、ユーザID、パスワード、ユーザIDキー情報、公開鍵情報、既定の閲覧端末リスト等の項目が含まれる。これらの項目については、上述のユーザIDサーバ210が持つデータの説明(図4参照)で説明した。
ドキュメントDB116には、処理装置110が生成したeDocファイルと、そのeDocファイルに対応するメタデータとが保存される。eDocファイルとメタデータとはDIDの情報を含んでいるので、対応付けが可能である。またドキュメントDB116には、eDocにエンコードする前の元のデータ(作成端末102から受け取ったもの)を、そのeDocのDIDに対応付けて登録してもよい。
作成端末102及び閲覧端末104は、当該端末を利用するユーザ毎に、そのユーザの認証情報(ユーザID、パスワード等)、既定の処理装置のID、既定の処理装置のアドレス情報、上位装置(例えば管理システム200や後述の組織内管理システム150)のアドレス情報、処理装置や上位装置のセキュリティ証明書、通信路暗号化等に用いる暗号鍵等を記憶している。
<システムの処理の流れ>
ローカルネットワーク108上に処理装置110を設置した場合、処理装置110の保守を行う保守作業員は、処理装置110に対して、その処理装置110を利用するユーザの情報や、それらユーザが利用する可能性のある作成端末102や閲覧端末104の情報を登録する。登録されたユーザの情報は、上位装置であるユーザIDサーバ210(あるいは後述のローカルユーザIDサーバ152)にも転送され、登録される。なお、設置後、処理装置110を利用するユーザが増えたり減ったりした場合には、保守作業員は、処理装置110に対して増えたユーザの情報を新たに追加登録したり、減ったユーザの情報の登録を削除したりする作業を行う。このような追加や削除は、ユーザIDサーバ210等の上位装置にも通知され、これに応じ上位装置の保持する情報が更新される。また保守作業員は、それら各作成端末102に対して、処理装置110にドキュメントの登録及び配信を依頼する処理を行うソフトウエア(例えば処理装置110のデバイスドライバの形態をとる)をインストールする。また、保守作業員は、各閲覧端末104に対して、処理装置110と通信するための情報(例えば装置名、通信アドレス、無線アクセス設定)等を登録する。
次に図8を参照して、ドキュメント管理システムを経由してドキュメントが登録及び配信される際の処理の流れを説明する。
(1)−1: ユーザ(配信者)が作成端末102に対してドキュメントの登録の指示を行うと、作成端末102は、ログイン認証情報(例えばユーザID及びパスワード、又は認証デバイス130)の入力を求める画面を表示する。配信者がその求めに応じて認証情報を入力すると、作成端末102は、その認証情報をローカルネットワーク108経由で処理装置110に送信する。
(1)−2: ログイン認証情報を受け取った処理装置110はその情報を用いてユーザ認証を行う。ここではそのユーザ認証が成功した(正しいユーザと確認できた)とする。図示例では、ログインIDとパスワードを用いてログイン認証を行っているが、作成端末102が認証デバイス130との通信に対応している場合は認証デバイス130を用いてログイン認証を行ってもよい。
(2)−1: ログイン認証が成功すると、ユーザは、作成端末102に保持されたドキュメントの中からドキュメント管理システムに登録したい(そして他のユーザに配信したい)ドキュメントを選択し、処理装置110への登録を指示する。すると、処理装置110とのインタフェースとなるソフト(例えばデバイスドライバ)が起動し、ユーザからそのドキュメントについての属性データの入力を受け付け、受け付けた属性データとそのドキュメントのデータを処理装置110に送信する。
図9に、この属性データの入力画面400の一例を示す。この入力画面400は、配信先ユーザ選択メニュー402、配信先ユーザリスト欄404、配信先端末選択メニュー406、配信先端末リスト欄408、アクセス権限設定欄410、オフライン有効期間メニュー412、及びオプション設定呼出ボタン414を含む。
配信先ユーザ選択メニュー402は、そのドキュメントの配信先ユーザの選択肢を列挙するプルダウン形式のメニューである。選択肢となるユーザは処理装置110に登録されたユーザであり、選択肢となるそれらユーザのID及びユーザ名のリストは処理装置110から取得すればよい。あるいは、作成端末102が、組織に所属するドキュメント管理システムのユーザの情報を管理する後述のローカルユーザIDサーバ152(図12参照)からユーザのリストを取得し、配信者が、組織内の他の処理装置110に登録されたユーザを配信先に選択できるようにしてもよい。この場合、配信先ユーザ選択メニュー402では、各ユーザを、各々が登録された処理装置110が区別可能な表示形態で表示する。例えば、ユーザを、そのユーザが登録された処理装置110毎に異なる色や字体で表示してもよい。あるいはそのメニューを階層構造とし、まず処理装置110を選んでその処理装置110に登録されたユーザのリストを呼び出し、そのリストの中から配信先のユーザを選ぶ態様としてもよい。配信先ユーザリスト欄404には、ユーザが選んだ配信先ユーザのリストが表示される。配信者が配信先ユーザ選択メニュー402で配信先ユーザを選び、右側にある「追加」ボタンを押下すると、その配信先ユーザのユーザID又はユーザ名が配信先ユーザリスト欄404に追加される。また、配信者が配信先ユーザリスト欄404内の配信先ユーザを選び、右側の「削除」ボタンを押下すると、その配信先ユーザが配信先ユーザリスト欄404から削除される(すなわち配信先ではなくなる)。
配信先端末選択メニュー406は、そのドキュメントの配信先とする閲覧端末(ビューワ)104の選択肢を列挙するプルダウン形式のメニューである。選択肢となる閲覧端末104は処理装置110に登録されたものであり、選択肢となるそれら閲覧端末104のID及び端末名のリストは処理装置110から取得すればよい。あるいは、処理装置110自身やローカルユーザIDサーバ152(図12参照。詳細は後述)等がドキュメント管理システムに登録された組織内の閲覧端末104のリストを有しており、作成端末102が、そのリストを配信者に提示して、組織内の他の処理装置110に登録されたユーザの閲覧端末104を配信先に選択できるようにしてもよい。配信先ユーザリスト欄404には、配信先ユーザリスト欄404の場合と同様、配信者が配信先端末選択メニュー406で選んだ配信先の閲覧端末104のリストが表示される。
なお、配信先のユーザ毎にそのユーザに対応する配信先の閲覧端末104を指定できるようにしてもよい。これには作成端末102は、例えば、配信先ユーザリスト欄404で配信先のユーザが選択される毎に、処理装置110(あるいはローカルユーザIDサーバ152又はユーザIDサーバ210)からそのユーザの既定の閲覧端末のリストを取得し、そのリストを配信先端末選択メニュー406に設定すればよい。配信者が配信先のユーザに対する配信先の閲覧端末104を明示的に選択しなかった場合は、そのユーザの既定の閲覧端末のリスト中の特定のもの(例えばリストの先頭)が自動的に配信先の閲覧端末104に選択される。
アクセス権限設定欄410は、そのドキュメントに対する配信先ユーザのアクセス権限(利用権限)を設定するための欄である。図示例では、閲覧、加工(編集)、印刷、コピーの4つの権限項目についてのチェックボックスが示されており、配信者は、そのドキュメントについて配信先ユーザに許可する項目のチェックボックスにチェックを入れる。
オフライン有効期間メニュー412は、ドキュメントに対して設定するオフライン有効期間の長さの選択肢を示すプルダウンメニューである。配信者は、オフライン有効期間メニュー412に示される数段階のオフライン有効期間の中から、今回システムに登録して配信するドキュメントに対して設定する期間を選ぶ。
またオプション設定呼出ボタン414が押下されると、作成端末102は、図10に例示するオプション設定画面420を表示する。オプション設定画面420は、処理装置指定欄422と元データ設定欄424を含む。処理装置指定欄422には、ドキュメントの送信先とする処理装置110の選択肢を示したプルダウンメニューが含まれる。このメニューには、作成端末102から選択可能な処理装置110のリストが含まれる。このリストに含まれる処理装置110は、まずその作成端末102が属するローカルシステム100内にある処理装置110(基本は1つだが、複数あってもよい)である。また、同じ組織内の別のローカルシステム100の処理装置110がそのリストに含まれていてもよい。元データ設定欄424には、eDocの元になった元データを処理装置110に保存するかの選択を受け付けるプルダウンメニューが表示される。
ステップ(2)−1で作成端末102から処理装置110に送られる属性データには、このような設定画面により設定された、配信先情報(ユーザのリスト及び閲覧端末のリスト)、アクセス権限情報、オフライン有効期間、元データ情報等の情報が含まれる。
図8の説明に戻る。
(2)−2: 処理装置110は、作成端末102からドキュメント(対象ドキュメントと呼ぶ)及び属性データを受信する。
(3)−1: 処理装置110は、DIDの発行権限及び発行枠を受け取っていない場合(あるいは受け取った発行枠を使い切った場合)は、管理システム200のDIDサーバ220に対して新たな発行権限及び発行枠を要求する。なお、受け取った発行枠に残りがある場合には、この要求を行わずに後述のステップ(4)に進む。
(3)−2: DIDサーバ220は、処理装置110からの要求に応じ、新たな発行権限及び発行枠をその処理装置110に送信する。
(4) 処理装置110は、DIDサーバ220から付与された発行権限を用いてDIDを発行し、そのDIDを対象ドキュメントから生成するeDoc(次のステップで生成する)に付与する。
(5)−1: 処理装置110は、対象ドキュメントを暗号化するための暗号鍵を例えば乱数等を用いて生成する。また処理装置110は、対象ドキュメントをeDocファイルへ変換する。すなわち、その対象ドキュメントをドキュメント管理システムの専用フォーマットへとエンコードし、エンコード結果を先ほど生成した暗号鍵で暗号化することでeDocファイルを生成する。生成したeDocファイルには先ほど生成したDIDの情報を含める。
(5)−2: 処理装置110は、生成したeDocのメタデータを生成する。すなわち、作成端末102から受信した属性データに対して、先ほど生成したDID、エンコードの日時、当該処理装置110のID、暗号化情報等を追加することでメタデータを生成する(図3参照)。ここで、暗号化情報には、配信先ユーザのそれぞれについて、暗号化に用いた暗号鍵をその配信先ユーザの公開鍵で暗号化した鍵情報が含まれる。
(5)−3: 作成端末102から元データを保管する旨の指示を受け取った場合は、処理装置110は、作成端末102から受信したドキュメント(又はそのドキュメントの元になったアプリケーションデータ)を保存する。
(6)−1: 処理装置110は、先ほど生成したDIDをDIDサーバ220にアップロードする。DIDサーバ220は、処理装置110からアップロードされたDIDを保管する。
(6)−2: 処理装置110は、先ほど生成したメタデータをメタデータサーバ230にアップロードする。メタデータサーバ230は、処理装置110からアップロードされてきたメタデータを保管する。
(7) 処理装置110は、生成したeDocの配信先の各閲覧端末104に対して、そのeDocについての配信準備完了通知を送信する。この通知には、先ほど生成したDID、eDocのドキュメント名の情報を含む。また、この通知は、eDocの代表ページ(先頭ページ等の予め指定されたページ)のサムネイル画像を含んでいてもよい。
さて、閲覧端末104を利用するユーザ(閲覧者と呼ぶ)は、自分の認証デバイス130を閲覧端末104のカードリーダ部に近づけることで、ユーザ認証を受ける。閲覧端末104は、自身に配信されているeDocのリストを表示するリスト画面を表示する。図11にこのリスト画面500の例を示す。この例のリスト画面500には、eDoc毎に、通知マーク502、そのeDocのドキュメント名504、閲覧可否マーク506が含まれる。通知マーク502は、そのeDocの状態を閲覧者に通知するためのマークである。通知マーク502が表すeDocの状態には、「新着」(処理装置110からドキュメントが配信された後、まだ開かれていない状態。図では「☆」印で示す)、「正常」(図では無印)、「期限切れ」(アクセス有効期間が過ぎている状態。図では「!」印で示す)等がある。「期限切れ」状態については、閲覧端末104内にeDocファイルが保存されていても、そのeDocについての最新のメタデータを処理装置110又は管理システム200から取得するまでは、閲覧できない。「正常」状態のeDocについては、その閲覧端末104内には、アクセス有効期間が切れていないメタデータが保存(キャッシュ)されているので、仮に閲覧端末104が処理装置110や管理システム200に対してオフライン状態となっていても閲覧可能である。閲覧可否マーク506は、閲覧端末104及びこれを使用しているユーザ(認証デバイス130により認証)の組合せが、当該閲覧端末104にキャッシュされたそのeDocのメタデータに示されるそのeDocの配信先のユーザ及び閲覧端末104の組合せに合致するか否かを示す。合致すればそのeDocは閲覧可能(図では「○」印)、合致しなければ閲覧不可(図では「×」印)である。また、配信準備完了通知は受け取ったがまだeDocファイル及びメタデータを受信していないeDocについては、閲覧端末104は配信先の組合せに合致するか否かの判断基準の情報を持たないので、閲覧可否マーク506は、未定であることを示す「−」印となる。図示例では、上から3つのeDocは、新着のものであり、まだeDoc本体(ファイル及びメタデータ)の取得が済んでいないので、閲覧可否マーク506は未定を表すマークとなっている。
閲覧者は、このリスト画面(図11)上で、自分が閲覧したいeDocを例えばタッチ操作等で選択し、閲覧指示を行う。ここでは、新着(通知マーク502が「☆」印)のeDocが閲覧対象に選ばれたとする。
(8) 図8の説明に戻る。閲覧端末104は、選ばれた閲覧対象のeDocファイル及びメタデータを保持していないので、処理装置110から取得する必要がある。そこで、閲覧端末104は、自身が接続されているローカルネットワーク108上の処理装置110に対して、その閲覧者の認証デバイス130から取得した認証情報であるユーザIDキーを自身が接続されているローカルネットワーク108上に処理装置110に対して送信する。処理装置110は、そのユーザIDキーが自身に登録されているユーザを証明するものであるか検証する(ユーザ認証)。ここでは、そのユーザ認証が成功したとする。なお、閲覧端末104から受信したユーザIDキーが処理装置110に登録されたいずれのユーザにも該当しなかった場合、処理装置110は、そのユーザIDキーをユーザ認証に関する上位装置(ユーザIDサーバ210又はローカルユーザIDサーバ152)に送り、ユーザ認証を依頼してもよい。
(9)−1: また閲覧端末104は、処理装置110でのユーザ認証が成功したのを受けて、閲覧者が選択した閲覧対象のeDocのDIDを含む配信要求を処理装置110に送る。
(9)−2: 処理装置110は、閲覧端末104からの配信要求に含まれるDIDに対応するeDocファイル及びメタデータを、閲覧端末104に返信する。
(10) 閲覧端末104は、処理装置110から送られてきたeDocファイル及びメタデータを受信して保存(キャッシュ)する。
(11) 閲覧端末104は、自身と、自身を現在使用中の閲覧者との組合せと一致する組合せが、そのメタデータ中の配信先情報(図3参照)に示される配信先ユーザと配信先端末の組合せの中にあるかどうかを判定する。ないと判定した場合は、閲覧者はその閲覧端末104ではそのeDocファイルを閲覧できない。この場合、閲覧端末104は、閲覧できない旨を示すエラーメッセージを表示する。またこの場合、閲覧端末104は、保存しているそのeDocのファイル(及び対応するメタデータ)を削除してもよい。一方、閲覧端末104とそれを現在使用中の閲覧者との組合せに該当するものがメタデータ中の配信者情報内にあると判定した場合、閲覧端末104は、閲覧者に対してeDocの閲覧を許可する。この場合、閲覧端末104は、そのメタデータ内の暗号化情報に含まれる各配信先ユーザに対応する暗号化済みの鍵の中から閲覧者に対応するものを取り出し、その鍵を閲覧者の秘密鍵(これは例えば認証デバイス130が保持している)で復号することで、eDocファイルの復号に必要な復号鍵を復元する。
(12) 閲覧端末104は、復元した復号鍵を用いてそのeDocファイルを復号することで閲覧可能なドキュメントを再生し、そのドキュメントを出力(例えば画面表示)する。また、閲覧端末104は、閲覧者からそのドキュメントに対する操作指示を受け付けるかどうかを、メタデータに含まれるアクセス権限情報に従って制御する。閲覧端末104は、基本的には、復号したドキュメントをファイルに保存することはしない。すなわち、閲覧終了後は、閲覧端末104の不揮発性記憶装置には、eDocファイルとメタデータが保存されるが、復号結果のドキュメントは保存されない。
次に、図12を参照して、ドキュメント管理システムの別の例を説明する。図12に示す例では、企業等の組織のプライベートネットワークである組織内ネットワーク内にローカルシステム100が複数存在する。そして、組織内ネットワークには、組織内管理システム150が設けられている。組織内管理システム150は、ドキュメント管理システムのうち当該組織内の処理やそれに必要な情報を管理する。すなわち、管理システム200は、ドキュメント管理システムのサービスプロバイダが運用し、ドキュメント管理システムを利用する複数の組織についての情報や処理を管理するのに対し、組織内管理システム150はそれら情報や処理のうち当該組織に関する部分を、管理システム200の管理下で管理する。
組織内管理システム150は、ローカルユーザIDサーバ152、ローカルDIDサーバ154、及びローカルメタデータサーバ156を有する。
ローカルユーザIDサーバ152は、当該組織のメンバのうちドキュメント管理システムにユーザ登録されているユーザの情報を管理する。ローカルユーザIDサーバ152が保持する個々のユーザの情報は、図4に記載したユーザIDサーバ210が保持する一般ユーザの情報と同様である。処理装置110に対して、その処理装置110を取得し利用するユーザ(すなわちその処理装置110を「既定の処理装置」とするユーザ)が登録されると、処理装置110は登録されたユーザの情報を組織内のローカルユーザIDサーバ152に送る。ローカルユーザIDサーバ152は、受け取ったユーザの情報を保存すると共に、広域ネットワーク10経由で中央の管理システム200のユーザIDサーバ210に送る。ユーザIDサーバ210は、受け取ったユーザの情報を保管する。又、処理装置110に登録されたユーザの情報に変更が生じた場合、管理者等が処理装置110に対してそのユーザの情報の変更を行う。処理装置110は、このユーザ情報の変更内容の情報(例えばユーザIDと、変更された情報項目の項目名と、その項目の変更後の値とを含む)をローカルユーザIDサーバ152に送信し、ローカルユーザIDサーバ152は、受信した変更に内容に応じて自身が保管している当該ユーザの情報を変更する。また、ローカルユーザIDサーバ152は、受け取った変更内容の情報を中央のユーザIDサーバ210に送り、ユーザIDサーバ210は送られてきた情報に応じて、自分が保持するそのユーザの情報を変更する。
ローカルDIDサーバ154は、当該組織の組織内ネットワークに属する各ローカルシステム100内の処理装置110が発行したDIDを受け取り、保管する。ローカルDIDサーバ154が保持する情報は、図5に記載したDIDサーバ220が保持する情報と同様である。またローカルDIDサーバ154は、処理装置110から受け取ったDIDの情報を中央のDIDサーバ220に送り、DIDサーバ220はその情報を保管する。また、ローカルDIDサーバ154は、中央のDIDサーバ220からDIDの発行権限及び発行枠を付与され、その発行枠の範囲内で、その発行権限に基づいて管理下の各処理装置110に対してDIDの発行権限及び発行枠を付与する。
ローカルメタデータサーバ156は、当該組織の組織内ネットワークに属する各ローカルシステム100内の処理装置110が生成したeDocのメタデータを受け取り、保管する。ローカルメタデータサーバ156が保持する情報は、メタデータサーバ230が保持する情報と同様である。またローカルメタデータサーバ156は、処理装置110から受け取ったメタデータを中央のメタデータサーバ230に送り、メタデータサーバ230はそのメタデータを保管する。
図12のシステムでは、処理装置110は、自分には登録されていないが同じ組織内の他の処理装置110に登録されているユーザからのドキュメントの登録(及び配信)要求、又はeDocファイル又はメタデータの取得要求等の要求を受けた場合、組織内管理システム150を介してそれら要求に応答する。
1つの例として、組織内ネットワーク内の第1の部署にある第1のローカルシステム100内の処理装置#1に登録されている閲覧者が、その処理装置#1に登録され配信されたeDocを自分の閲覧端末104に保存し、その後処理装置#2の管理下にある第2の部署に移動してそのeDocを閲覧しようとしたときのことを考える。この時点では、その閲覧端末104内に保存されたそのeDocのメタデータは古くなっている(すなわちアクセス有効期間が過ぎている)ものとする。この場合、閲覧者がその閲覧端末104でそのeDocを開く操作を行った場合、図13に示す処理が行われる。
まず、閲覧端末104は、自身が今接続している第2のローカルシステム100のローカルネットワーク108から処理装置110を探す。これにより処理装置#2が見つかる。この処理装置#2は、そのeDocを配信した処理装置#1とは別の装置なので、そのeDocファイルやメタデータは持っていない。
(1) 閲覧端末104は、閲覧者の認証デバイス130からユーザIDキー(認証情報)を読み込む。
(2) 閲覧端末104は、閲覧の対象として指示されたそのeDocの最新のメタデータを取得するためのユーザ認証のために、その処理装置#2に対して、認証デバイス130から取得したユーザIDキーを送信する。
(3) 閲覧端末104は、そのeDocのメタデータを処理装置#2に要求する。この要求には、そのeDocのDIDが含まれる。
(4)−1: 処理装置#2は、閲覧端末104から受け取ったユーザIDキーが自身に登録されたユーザのものかどうかを調べる(ユーザ認証)。この例では、その閲覧者は処理装置#1に登録されており、処理装置#2には登録されていないので、処理装置#2は、予め設定されているローカルユーザIDサーバ152のアドレスに対して、そのユーザIDキーを含む認証要求を送る。また、処理装置#2は、閲覧端末104からのメタデータ要求に含まれるDIDを、予め設定されているローカルDIDサーバ154に送り、認証を求める。
(4)−2: ローカルユーザIDサーバ152は、処理装置#2から受け取ったユーザIDキーが、自身に登録されているユーザのものであるかどうかを検証する(ユーザ認証)。そのユーザIDキーの持ち主である閲覧者は、処理装置#1に登録されているので、その上位装置であるローカルユーザIDサーバ152にもユーザ登録がなされている。したがって、このユーザ認証は成功する。ローカルユーザIDサーバ152は、認証が成功したことを示す応答を処理装置#2に返す。
またローカルDIDサーバ154は、閲覧端末104から送られてきた検証対象のDIDが正当なDIDであるかどうか、すなわち自身が保存しているDIDであるかどうかを調べる。この例では、そのeDocのDIDは、処理装置#1が発行したものであり、処理装置#1のDIDに関する上位装置であるローカルDIDサーバ154にも保存されている。したがって、そのDIDは正当なものであると認証される。ローカルDIDサーバ154は、DIDが正当であると認証する旨の応答を処理装置#2に返す。
(5)−1: ユーザ認証及びDID認証が成功したので、処理装置#2は、閲覧端末104からのメタデータ要求に応えるための処理を続行する。すなわち、処理装置#2は、DIDを含むメタデータ要求を、あらかじめ設定されているローカルメタデータサーバ156のアドレスに送る。
(5)−2: ローカルメタデータサーバ156は、処理装置#2からメタデータ要求を受けると、その要求に含まれるDIDに対応するメタデータを処理装置#2に返す。eDocのメタデータは、配信者から処理装置110にて変更されると、その変更が即座にローカルメタデータサーバ156に反映されるので、このとき処理装置#2に返されるメタデータは、閲覧対象のeDocのメタデータの最新版である。
(6) 処理装置#2は、ローカルメタデータサーバ156から受け取ったメタデータを、閲覧端末104に対して送信する。
(7) 閲覧端末104は、処理装置#2からメタデータを受信し、保存(キャッシュ)する。
(8) 閲覧端末104は、受け取った最新のメタデータの配信先情報を参照し、閲覧端末104及び閲覧者の組合せの権限チェックを行う。すなわち、閲覧端末104自身と閲覧者との組合せと一致する組合せが、その配信先情報(図3参照)に示される配信先ユーザと配信先端末の組合せの中にあれば、閲覧権限ありと判定し、なければ閲覧権限なしと判定する。閲覧権限なしと判定した場合、閲覧端末104はエラー表示を行う。閲覧権限ありと判定した場合、閲覧端末104は、そのメタデータ内の暗号化情報に含まれる各配信先ユーザに対応する暗号化済みの鍵の中から閲覧者に対応するものを取り出し、その鍵を閲覧者の秘密鍵(これは例えば認証デバイス130が保持している)で復号することで、eDocファイルの復号に必要な復号鍵を復元する。
(9) そして閲覧端末104は、復元した復号鍵を用いてそのeDocファイルを復号することで閲覧可能なドキュメントを再生し、そのドキュメントを出力(例えば画面表示)する。そして、閲覧者からそのドキュメントに対する操作指示を受け付けるかどうかを、メタデータに含まれるアクセス権限情報に従って制御する。
次に、図14を参照して、第1のローカルシステム100内の処理装置#1に登録されているユーザが、処理装置#2の管理下にある第2の部署でドキュメントをドキュメント管理システムに登録する場合の処理の流れを考える。そのユーザ(ドキュメントの配信者)は、処理装置#2には登録されていないとする。
(1) ユーザは、自分の作成端末102にドキュメントの登録を指示すると、作成端末102はログイン認証情報の入力を求める画面を表示する。配信者がその求めに応じて認証情報(例えばユーザID及びパスワード)を入力すると、作成端末102は、その認証情報をローカルネットワーク108経由で処理装置110に送信する。
(2) 処理装置#2は、作成端末102から受け取った認証情報が自身に登録されたユーザのものであるか判定する。この場合、配信者は処理装置#2に登録されていない。この場合、処理装置#2は、上位のローカルユーザIDサーバ152に対してその認証情報を送り、認証を求める。
(3) ローカルユーザIDサーバ152は、受け取った認証情報が自身に登録されているユーザのものかどうか判定する(ユーザ認証)。この例では、配信者は処理装置#1に登録されているユーザなので、ローカルユーザIDサーバ152にも登録されており、このユーザ認証は成功する。ローカルユーザIDサーバ152は、処理装置#2に対して、ユーザ認証が成功したことを示す情報を返す。
(4) 処理装置#2は、ローカルユーザIDサーバ152から認証成功の旨の応答を受けると、作成端末102に対してユーザ認証が成功した旨を応答する。
(5) 作成端末102は、ユーザ認証が成功した場合、ユーザが登録対象に選択したドキュメントと、ユーザが入力した属性データとを処理装置#2に送る。
(6) 処理装置#2は、作成端末102からドキュメント及び属性データを受信する。
(7)−1: 処理装置#2は、DIDの発行権限及び発行枠を使い切った場合は、ローカルDIDサーバ154に対して新たな発行権限及び発行枠を要求する。なお、受け取った発行枠に残りがある場合には、この要求を行わずに後述のステップ(8)に進む。
(7)−2: ローカルDIDサーバ154は、処理装置#2からの要求に応じ、新たな発行権限及び発行枠をその処理装置#2に付与する。なお、中央のDIDサーバ220から付与された発行枠を使い切った場合、ローカルDIDサーバ154は、DIDサーバ220に新たな発行権限及び発行枠を要求し、これに応じて付与された発行権限及び発行枠を用いて、処理装置#2にDIDの発行権及び発行枠を付与する。
(8) 処理装置#2は、付与された発行権限を用いてDIDを発行し、そのDIDを対象ドキュメントから生成するeDoc(次のステップで生成する)に付与する。
(9)−1: 処理装置#2は、対象ドキュメントを暗号化するための暗号鍵を生成し、対象ドキュメントを本システムの専用フォーマットへとエンコードし、エンコード結果を先ほど生成した暗号鍵で暗号化することでeDocファイルを生成する。
(9)−2: 処理装置#2は、作成端末102から受信した属性データに対して、先ほど生成したDID、エンコードの日時等の項目を追加することで、eDocのメタデータを生成する。
(10) 処理装置#2は、生成したDIDをローカルDIDサーバ154に、生成したメタデータをローカルメタデータサーバ156に、それぞれアップロードする。ローカルDIDサーバ154は、処理装置#2からアップロードされたDIDを、その中に含まれる発行権限キーに対応する発行済DIDリスト(図5参照)に追加すると共に、中央のDIDサーバ220にアップロードする。DIDサーバ220は、ローカルDIDサーバ154からアップロードされたDIDを、発行権限キーに対応する発行済DIDリスト(図5参照)に追加する。またローカルメタデータサーバ156は、処理装置#2からアップロードされたメタデータを保管すると共に、中央のメタデータサーバ230にアップロードする。メタデータサーバ230は、ローカルメタデータサーバ156からアップロードされたメタデータを保管する。
処理装置#2は、生成したeDocを配信者の指定した配信先に配信する。この処理は、図8のステップ(7)乃至(12)と同様である。
(11) また処理装置#2は、生成したeDocファイル及びメタデータを作成端末102に送信する。処理装置#2は、そのeDocファイル及びメタデータを保存してもよいし、保存せずに削除してもよい。保存せずに削除する場合、それらeDocファイル及びメタデータは、組織内の処理装置110群のうち、後述するステップ(13)により既定の処理装置である処理装置#1のみに保存されることになる。配信者の既定の処理装置でない処理装置110がその配信者から登録・配信依頼されたeDocファイル及びメタデータを保存するか否かは、処理装置110に設定可能としてもよい。
(12) 作成端末102は、処理装置110から受け取ったeDocファイル及びメタデータを、後でその配信者の既定の処理装置である処理装置#1に転送するために保存する。
(13) 配信者は、作成端末102を持って自分の所属する第1の部署に戻った際、作成端末102は、第1のローカルネットワーク108上でその配信者の既定の処理装置である処理装置#1を探す。処理装置#1を見つけると、作成端末102は、上記ステップ(12)で保存していたeDocファイル及びメタデータを処理装置#1に登録する。これにより、配信者は、メタデータの内容(例えば配信先)を変更したい場合には、既定の処理装置#1にアクセスしてその変更の操作を行えばよい。
以上に説明したドキュメント管理システムでは、作成端末102から処理装置110に配信を指示したドキュメントの本体情報(すなわちeDocファイル)は、処理装置110と配信先の閲覧端末104が持つのみで、その他のネットワークや装置には出回らない。このためeDocファイルの漏洩リスクが極小化される。特にeDocファイルの配信先を、そのeDocを生成したローカルネットワーク108上の閲覧端末104に限定すれば、eDocはそのローカルネットワーク108から外に一切出ないことになる。
一方、eDocのメタデータは、中央の管理システム200や組織毎の組織内管理システム150に登録されており、閲覧端末104がいろいろな場所に移動しても、広域ネットワーク10や組織のプライベートネットワークを介して入手可能となっている。閲覧端末104は、eDocの閲覧指示をユーザから受けた場合、そのeDocの最新のメタデータを組織内管理システム150又は中央の管理システム200から取得し、その最新のメタデータに含まれる配信先情報に基づき、そのユーザにそのeDocの閲覧を許可してよいかどうかを判定する。そのユーザが、そのeDocの登録・配信時には配信先に指定されていても、その後の配信先変更で配信先から外れている場合には、閲覧は許可されない。
図13及び図14の例では、処理装置#1及び処理装置#2は共に同じ組織内に設置されたものであり、配信先のユーザもその組織に所属していると想定しているので、ユーザ認証はその組織のローカルユーザIDサーバ152で行った。これに対し、閲覧者が処理装置#2とは異なる組織に属するユーザの場合、処理装置#2でもその上位のローカルユーザIDサーバ152でもその配信者を認証できない。この場合、更に上位のユーザIDサーバ210がその配信者のユーザ認証を行ってもよい。
図13及び図14の例では、別の処理装置#2が、処理装置#1に登録されたユーザの閲覧端末104と、ローカルユーザIDサーバ152やローカルメタデータサーバ156とのやりとりの仲立ちをした。しかし、これは一例に過ぎない。この代わりに、例えば、処理装置#2は、閲覧端末104から送られてきたユーザの認証情報からそのユーザが処理装置#2に登録されたものでない場合、閲覧端末104に対して認証不可の応答を行えばよい。この場合、閲覧端末104は、自機に登録されている上位装置のアドレス情報を用いて、ローカルユーザIDサーバ152に認証を求め、認証が成功すると、ローカルメタデータサーバ156にアクセスして必要なメタデータを取得する。
図13の例は、ユーザは自分の所属する組織内の、自分の既定の処理装置とは別の処理装置110の管理下にあるローカルシステム100に移動してドキュメントの閲覧を行う場合の例であった。しかしながら、ユーザが、自分の所属する組織の外で、自分の既定の処理装置から配信されたドキュメントを閲覧できるようにしてもよい。この場合、ユーザの閲覧端末104は、中央の管理システム200内のユーザIDサーバ210で認証を受け、閲覧したいドキュメントのメタデータをメタデータサーバ230から取得する。
<DIDの例>
次に、図15を参照して、ドキュメント管理システムでeDocの識別情報に用いるDID600の構成について説明する。
図示のようにDID600は、発行権限キー602、処理装置固有情報604、発行年月日606、発行証明キー608、及び発行番号610を含む。なお、図示のDID600及びその構成要素602〜610の桁数はあくまで例示的なものにすぎない。
発行権限キー602は、DIDサーバ220が処理装置110に付与した発行権限を識別するキー情報である。DIDサーバ220は、処理装置110から発行権限及び発行枠の要求を受けた場合、発行権限キー602を生成し、その発行権限キー602を発行枠(例えばドキュメント数100個)の数値と共に処理装置110に送信する。なお、DIDサーバ220と処理装置110との間にローカルDIDサーバ154が介在するシステム構成の場合には、DIDサーバ220がローカルDIDサーバ154に対して、例えば、発行権限キーと発行枠の組を複数組一括して付与する。この付与は、DIDサーバ220が、それら複数組の発行権限キー及び発行枠を処理装置110に付与する処理をローカルDIDサーバ154に依頼することと捉えてもよい。ローカルDIDサーバ154は、管理下の処理装置110から発行権限を要求された場合、付与された複数組の発行権限キー及び発行枠の中の未付与のものをその処理装置110に付与すればよい。
処理装置固有情報604は、そのDIDを発行した処理装置110に固有な情報である。すなわち、DID600中の処理装置固有情報604を調べることで、そのDID600を発行した処理装置110が一意に特定できる。処理装置固有情報604は、処理装置110が保持している。
発行年月日606は、そのDIDを発行した年月日を示す文字列である。DIDの発行年月日は、そのDIDの付与先であるeDocを生成(エンコード)した年月日でもある。
発行証明キー608は、その処理装置110(処理装置固有情報604により特定される)が、発行権限キー602が示す発行権限を用いてそのDIDを発行したことを証明するキー情報である。発行証明キー608は、例えば、発行権限キー602をその処理装置110の秘密鍵で暗号化することで得られる値である。この場合、発行証明キー608をその処理装置110の公開鍵で復号して得られた値が、発行権限キー602に一致すれば、そのDID600は、その発行権限キー602を用いてその処理装置110が発行したものであることが証明される。また、DID600のうち発行権限キー602を除く部分の値(又はその値から生成した所定桁数のハッシュ値)を処理装置110の秘密鍵で暗号化して得た値を発行証明キー608としてもよい。この場合、発行証明キー608を処理装置110の公開鍵で復号した値が、DID600の発行証明キー608を除いた部分の値と矛盾しなければ(例えば復号結果がその値のハッシュ値と一致)、そのDID600は発行権限キー602に基づきその処理装置110が発行したものであり、DID600の発行証明キー608以外の部分に改ざんがないことが証明される。
発行番号610は、そのDID600が、処理装置110がその発行権限キー602を用いて発行した何番目のDIDであるかを示す通し番号である。ある発行権限キー602を用いて生成されたDID600の発行番号610が取り得る最大値は、その発行権限キー602と共にDIDサーバ220(又はローカルDIDサーバ154)が付与した発行枠の値(ドキュメント数)である。
<登録後の配信先変更>
さて、eDocをドキュメント管理システムに登録した後、配信者(あるいは配信先の変更権限を与えられた他の者)が、配信先の削除や追加、それら配信先に与えたeDocへのアクセス権限を修正したくなることも考えられる。そのような場合、配信者は、作成端末102又は閲覧端末104(以下ユーザ端末と総称)を用いて例えば既定の処理装置110にアクセスし、対象となるeDocのDIDを指定して、配信先(又はアクセス権限)の編集処理の実行を指示する。
この指示を受けた処理装置110は、ユーザ認証によりその指示を発したユーザがその対象eDocの正しい配信者等(配信者及び配信先変更権限を与えられた他の者の総称)であることを確認した場合、配信先及びアクセス権限の編集画面をユーザ端末に提供する。編集画面は、図9に示した入力画面400と同様のものでよい。配信者等は、その編集画面上で、配信先のユーザ及び閲覧端末の追加や削除、アクセス権限内容の変更を行う。配信者等が、編集画面上で必要な変更を行った後、その変更を確定する操作を行うと、処理装置110は、保存しているそのeDocのメタデータにその変更を反映させると共に、その変更内容を上位のローカルメタデータサーバ156及びメタデータサーバ230に通知する。ローカルメタデータサーバ156及びメタデータサーバ230は、通知された変更内容を、保存しているそのeDocのメタデータに反映させる。例えば、配信時には配信先に指定されていたユーザであっても、その後の変更で配信先から削除された場合、そのeDocの閲覧が不可となる。また、処理装置110は、このようにeDocのメタデータ中の配信先情報が変更された場合、変更前の配信先情報には含まれていたが、変更後の配信先情報には含まれていない配信先の閲覧端末104に対して、そのeDocファイル(及び対応するメタデータ)を削除する指示を送ってもよい。
以上の例では、処理装置110がeDocの配信先やアクセス権限の変更指示を受け付けたが、この代わりに又はこれに加えて、上位装置、すなわち管理システム200(メタデータサーバ230)又は組織内管理システム150(ローカルメタデータサーバ156)がその変更指示を受けてもよい。この場合、上位装置は、そのeDocを生成した処理装置110(及びその処理装置110が属する組織のローカルメタデータサーバ156)に対して、その変更指示に応じて変更された新たなメタデータを送信し、処理装置110内の既存のメタデータと置き換えさせるようにする。
<処理装置のステータス管理>
次に、処理装置110のステータス管理に基づく制御について説明する。
処理装置110は、定期的に自身のステータスを管理システム200に通知する。管理システム200では、処理装置管理サーバ240が、受け取ったステータスを、その受け取りの日時と対応付けて当該処理装置110についてのステータス履歴242に追加する。また処理装置管理サーバ240は、受け取ったステータスについてチェックを行い、そのチェックの結果に従って、処理装置110のユーザに対するサービス提供の可・不可を制御する。
処理装置110が処理装置管理サーバ240に定期送信するステータスは、図6に例示した処理装置のステータス244と同様の項目を含む(ただし、ステータス244のうち処理装置110によっては変更されることがない設置場所やエンコード回路情報、処理装置の製造者名等は定期送信しなくてよい)。
処理装置管理サーバ240は、処理装置110から送られてくるステータスに基づき、例えば図16に例示する処理を実行する。
まず、処理装置管理サーバ240は、処理装置110からステータスを受信すると(S100)、そのステータスのうちの検査対象項目の値を、それぞれの項目の基準と照合する(S102)。検査対象項目には、暗号化ソフトの名称及びバージョン、エンコードソフトの名称及びバージョン、処理装置110にインストールされているセキュリティ証明書、処理装置110にインストールされている暗号鍵(例えば秘密鍵と公開鍵ペア。通信路暗号化や署名的な目的等に用いる)の情報(例えば当該鍵の識別情報やインストール日時等)、エンコード回路の名称及びファームウエア(FW)のバージョン、搭載フォント種類、ディスク(二次記憶)の空き容量、が含まれる。また、個々の項目についての基準の例としては、暗号化ソフトやエンコードソフト、ファームウエアが最新バージョンであること(あるいはあるバージョン以降のバージョンであること)、ディスクの空き容量が所定の閾値以上であること、インストールされているセキュリティ証明書の中にブラックリストに入っている証明書がないこと、処理装置110の暗号鍵がインストールされた日から所定期間が経過していないこと、所定(すなわちあらかじめ定めた)種類のフォントがインストールされていること、などがある。
例えば、処理装置110が通信路暗号化や署名等に用いる暗号鍵は、その安全性を維持するために、定期的に新しい鍵に変更することが望ましいので、インストール日時から所定期間が経過した以降は基準を満たさないものと判定してサービス提供を不可とし(あるいは不可となる旨の警告を発し)、新しい鍵への交換を促す。
次に処理装置管理サーバ240は、処理装置110から受け取ったステータスの検査対象項目の中に、当該項目の基準を満たさないものがあるかどうかを判定し(S104)、なければ今回ステータスを受信した処理装置110についての処理を終了する。S104で基準を満たさない項目があった場合、処理装置管理サーバ240は、その処理装置110に対してサービス不可を通知する(S106)。この通知を受けた処理装置110は、本実施形態のドキュメント管理システムに対するドキュメントの登録(配信)サービスを停止する。すなわち、作成端末102からのドキュメントの登録(配信)要求を受け付けず、サービス停止中である旨のメッセージを返す。
このような制御によれば、処理装置110が基準を満たさない品質のeDocを生成してしまう可能性が低減される。例えば、この制御によれば、古い暗号化ソフトにより暗号化の強度が十分でないeDocが生成される前に、その処理装置110のサービスが停止される。また、ディスク空き容量が少なかったりファームウエアが古かったりしてeDocの生成処理にエラーが生じ、それが元でドキュメントの漏洩が生じるといった事態が起こる前に、サービスが停止される。また、所定のフォントを持たない処理装置110がドキュメント中のそのフォントを別のフォントに置き換えてエンコードしてしまうことによるeDocの画質低下が起こる前に、サービスが停止される。エンコード回路のファームウエアが古いため、最新のファームウエアがサポートしているドキュメントの画像サイズがサポートされておらず、eDocの画像サイズが制限されてしまう等の事態も生じにくくなる。
なお、ステータスの検査対象項目に、eDocのセキュリティに影響する項目とそうでない項目の分類を設け、処理装置110にサービスを停止させるのは、前者の項目が基準を満たさない場合に限ってもよい。後者の項目が基準を満たさない場合は、処理装置110やその管理者に警告を送り、その項目についての不具合を解消するよう促す。この警告を受けて、処理装置110の管理者は、自分で対処できる項目については処理装置110の修理を行い、専門の保守作業員の介入が必要な項目については、保守作業員の派遣をシステム運営者に依頼する。また、検査対象項目のうちの特定項目が基準を満たさないことが分かった場合に、処理装置管理サーバ240が、当該処理装置110に対して保守作業員を派遣する手配を自動的に行ってもよい。
図16の処理の変形例を、図17を参照して説明する。
図17の手順では、処理装置110のステータスの検査対象項目に、緊急項目とそれ以外というレベル分けを導入している。緊急項目は、処理装置110が生成するeDocのセキュリティ上の品質やドキュメント管理システムのセキュリティに大きな影響を与える項目である。その項目が基準を満たさない処理装置110が生成したeDocは十分な安全性が確保されないか、またはその項目が基準を満たさない処理装置110が稼働を続けると、その処理装置110がドキュメント管理システムのセキュリティホール(脆弱性)となってしまう可能性がある。そのような緊急項目の対象の例としては、暗号化ソフトのバージョン、処理装置110にインストールされているセキュリティ証明書、処理装置110にインストールされている暗号鍵に脆弱性が見つかった場合等がある。
緊急項目が基準を満たさないことによる問題を避ける1つの方法は、緊急項目が基準を満たさない処理装置110を停止させ、保守作業員を派遣してその緊急項目についての修正・修理を行わせることである。しかし、修正が完了するまでの間、ユーザはその処理装置110を使えないという不便がある。
そこで、図17の手順では、処理装置管理サーバ240は、S104で基準を満たさない項目を見つけた場合、その項目が緊急項目であるかどうかを判定する(S110)。そして、緊急項目である場合、その緊急項目の不具合を修正するための設定情報を処理装置管理サーバ240からその処理装置110に対して、広域ネットワーク10を経由してリモートインストールする(S112)。緊急項目の不具合を修正するための設定情報の例としては、最新バージョンの暗号化ソフト、脆弱性が見つかったセキュリティ証明書に対する脆弱性が解消された最新版のセキュリティ証明書、処理装置110の脆弱性が見つかった秘密鍵・公開鍵のペアを置き換える新たな鍵ペア、等がある。
例えば新たな鍵ペアの場合、その新たな鍵ペアを生成するためのフレーズを処理装置管理サーバ240が用意してそのフレーズを用いて鍵ペアを生成し、生成した鍵ペアをセキュアな方法で処理装置110に伝送してリモートインストールする。
これにより処理装置110内の基準を満たさない緊急項目についての設定情報が基準を満たすものへと更新される。またこの更新に応じて、その処理装置110が持つステータスのうちのその緊急項目の値が更新される。
またS110の判定結果がNo(緊急項目に該当しない)の場合、処理装置管理サーバ240は、処理装置110又は管理者に対して基準を満たさない項目を示す警告を送り、その処理装置110のその項目についての修正のために保守作業員の派遣の手配を行う(S114)。緊急項目でない項目については、処理装置110がそのまま稼働を続けてもセキュリティ上の重大な問題は生じにくいので、処理装置110は停止させず、保守作業員の派遣により対処するのである。緊急項目以外の項目については、処理装置管理サーバ240がリモートインストールしなくてよいので、処理装置管理サーバ240の負荷増大が避けられる。
図17の例では、緊急項目についての設定情報を処理装置管理サーバ240からトップダウンで処理装置110にインストールし、これに応じて処理装置110にてその設定情報がインストールされ、処理装置110のステータスのうちその緊急項目の値が更新される。これに対して、緊急項目以外のステータスの項目については、個々の処理装置110にて、例えば保守作業員により値の設定や変更を行い、その項目に対応する設定情報(例えば暗号化ソフトの最新バージョン)のインストールを行う。このように処理装置110で行われたステータス項目値の設定や変更は、上位の処理装置管理サーバ240に通知され、処理装置管理サーバ240は、その通知に応じて自身が持つその処理装置110のステータスの対応項目の値を変更する。
<DIDの検証>
管理システム200は、処理装置110が発行したDIDを通知してきた際や、閲覧端末104からメタデータの要求(この要求はDIDを含む)を送ってきた際、あるいはDIDの検証の依頼をユーザ等から受けた際に、そのDIDが正しいものかどうかを検証する。
この場合DIDサーバ220は、対象のDID600(図15参照)について以下の点を検証する。
(a)DID600中の発行権限キー602と処理装置固有情報604との間に矛盾がないこと。
DIDサーバ220は、その発行権限キー602が、自身の記録している情報(図5参照)の中に、その処理装置固有情報604が示す処理装置110を付与先とする発行権限キーとして記録されているかどうか調べる。記録されていなければ、その発行権限キー602はその処理装置固有情報604が示す処理装置110に発行されたことがないものなので、それら両者は矛盾する。この場合、そのDID600は不正なDIDである。
(b)DID600中の発行権限キー602と発行年月日606とが矛盾しないこと。
DIDサーバ220は、発行権限キーに対応づけて、キー付与日時とキー終了日時を記録している(図5参照)。DID600中の発行年月日606が、DID600中の発行権限キー602に対応付けて記録されているキー付与日時からキー終了日時までの期間から外れている場合、発行権限キー602と発行年月日606は矛盾している。この場合、DID600は不正なDIDである。
(c)DID600中の発行権限キー602、処理装置固有情報604及び発行証明キー608の間に矛盾がないこと。
DIDサーバ220は、発行証明キー608を、その処理装置固有情報604が示す処理装置110の公開鍵で復号し、その復号結果が示す発行証明キーが、DID600中のその発行証明キー608と一致するかどうかを判定する。一致しない場合、それら三者の間には矛盾が存在し、DID600は不正なものであると分かる。
(d)DID600中の発行番号610が、発行権限キー602に対応する発行枠と矛盾しないこと。
DIDサーバ220は、発行権限キー602と共に処理装置110に付与した発行枠を記録している(図5参照)。DID600中の発行番号610が、発行権限キー602に対応して記録されている発行枠よりも大きい番号である場合、そのDIDは不正なものである。
(e)DID600中の発行番号610が、そのDID600の発行権限キー602と同じ発行権限キーを含む発行済みのDIDの発行番号と矛盾しないこと。この基準は、処理装置110から新たに発行したDIDを通知された場合に、そのDIDが既に発行済みのものと矛盾するかどうかの検証に用いる。
DIDサーバ220は、発行権限キーに対応付けて、その発行権限キーを用いて発行されたDIDやその発行日時の情報を記録している(図5の発行済DIDリスト)。DIDサーバ220は、検証対象のDID600の発行権限キー602と同じ発行権限キーを持つ発行済みDIDの中に、そのDID600中の発行番号610と同じ発行番号を持つものがあるかどうかを調べる。そのようなものがあれば、そのDID600は不正なものであると判定される。
(f)DID600中の発行年月日606及び発行番号610の組合せが、そのDID600の発行権限キー602と同じ発行権限キーを含む発行済みのDIDの発行年月日と発行番号の組合せと矛盾しないこと。
DIDサーバ220は、検証対象のDID600の発行年月日606と発行番号610の組合せが、そのDID600の発行権限キー602と同じ発行権限キーを含む個々の発行済DIDの発行年月日と発行番号の組合せと矛盾するかどうか、すなわち前後関係が逆になっているものがあるかどうか、を判定する。例えばDID600よりも発行年月日が後にもかかわらず、発行番号が小さい発行済みDIDが見つかった場合、DID600とその発行済みDIDとは矛盾、すなわち前後関係が逆転している。このような矛盾が見つかった場合、検証対象のDID600だけ、あるいはこれとその発行済みDIDとの両方を不正なものと判定する。
DIDサーバ220は、以上のような基準に従った検証によりあるDIDが不正なものであると判定した場合、その不正なDIDに関連する処理装置110の管理者に電子メール等で警告通知を行う。警告通知には、その処理装置110の発行したものと偽装したDIDが見つかったことを知らせるメッセージが含まれる。管理者は、その通知により、セキュリティ強化の施策を行う。処理装置110の管理者やその連絡先は、処理装置管理サーバ240が持つ情報(図6参照)から求めればよい。警告通知の宛先である不正なDIDに関連する処理装置110は、そのDIDに含まれる処理装置固有情報604が示す処理装置110である。また、その不正なDIDに含まれる発行権限キーと同じ発行権限キーを過去に付与したことがある処理装置110を警告通知の宛先としてもよい。
<eDocの暗号に脆弱性が発見された場合の処理>
さて、次に、eDocファイルの生成の際の暗号化に用いた暗号化ソフトに脆弱性が発見された場合の処理について説明する。ドキュメント管理システムの運営者は、いずれかの処理装置110が用いた暗号化ソフトの特定バージョンに脆弱性が発見されたことを知得した場合、管理システム200から各処理装置110に対して脆弱性通知を送信する。脆弱性通知には、脆弱性が発見された暗号化ソフトのソフト名及びバージョンの情報が含まれる。組織内管理システム150が存在する場合には、脆弱性通知は、管理システム200から組織内管理システム150に渡され、組織内管理システム150が配下の各処理装置110にその脆弱性通知を送信する。この通知に対して、処理装置110は図18に例示する処理を実行する。
処理装置110は、上位装置(管理システム200又は組織内管理システム150)から脆弱性通知を受信(S200)すると、その通知が示す脆弱性が見つかった暗号化ソフトのバージョンを用いて自機が暗号化したファイルを特定する(S202)。処理装置110のドキュメントDB116には、その処理装置110が生成した各eDocファイルとそのメタデータが保存されており、それら各eDocファイルのメタデータから各eDocの生成に用いられた暗号化ソフト名とバージョンが分かる(図3に示すメタデータの構造例を参照)。S202では、処理装置110は、メタデータに含まれる暗号化ソフト名とバージョンの組合せが、脆弱性通知に示された組合せと一致するeDocを特定する。
次に処理装置110は、特定した各eDocファイルを、自機にインストールされている現用の暗号化ソフトのバージョンで再暗号化する(S204)。この例では、処理装置110の暗号化ソフトは適切にバージョンアップされており、処理装置110が持つ現用の暗号化ソフトのバージョンについては脆弱性が未発見であると想定している。一般に、処理装置110が過去に用いた暗号化ソフトのバージョンで脆弱性が発見されることが多いと考えられる。なお万が一、脆弱性通知の対象である暗号化ソフトのバージョンが、処理装置110の現用バージョンの暗号化ソフトである場合には、処理装置110は上位装置等から最新バージョンの暗号化ソフトをダウンロードし、その最新バージョンを用いて再暗号化を行う。仮に現用の最新バージョンの暗号化ソフトに脆弱性が発見された場合、上位装置は、その脆弱性が解消された更に新しいバージョンの暗号化ソフトを有しているか、そのソフトの配布元の情報を有していると想定できる。再暗号化は、例えば、対象のeDocファイルを、そのeDocファイルに対応するメタデータに記録されている復号鍵の情報を用いて復号し、その復号結果を新たに生成した暗号鍵を用いて、脆弱性のないバージョンの暗号化ソフトを用いて暗号化する。なお、処理装置110の保存するメタデータには復号鍵の情報が、例えば処理装置110の公開鍵で暗号化された状態で含まれているものとする(同様に、上位装置に送るメタデータには、その復号鍵がその上位装置の公開鍵で暗号化されたものを含めてもよい)。
処理装置110は、その再暗号化に応じて、そのeDocファイルのメタデータを更新する(S206)。すなわち、メタデータ(図3参照)中のエンコード日時、暗号化情報(暗号化ソフト名、バージョン情報及び鍵情報)を、再暗号化の日時、再暗号化に用いた暗号化ソフト名、バージョン及びその暗号化を解くための復号鍵の情報へと書き換える。そして、処理装置110は、更新後のメタデータを保存(例えばそのeDocファイルに対する最新のメタデータとして保存)し、上位装置にアップロードする。上位装置は、アップロードされた更新後のメタデータを保存する。
その後、処理装置110は、再暗号化により得られたeDocファイルを、メタデータの配信先情報に示される配信先の各閲覧端末104に配信するための処理を実行する(S208)。すなわち例えば、配信先の各閲覧端末104に対して、配信準備完了通知を送る(図8のステップ(7)参照)。この通知には、DIDやドキュメント名に加え、配信するeDocが既配信のeDocの更新版である旨を示す情報を含めてもよい。この配信準備完了通知を受け取った閲覧端末104は、閲覧者が閲覧端末104のリスト画面500(図11参照)で、その再暗号化により配信準備完了通知を受けたeDocを閲覧対象に指示した場合、閲覧端末104は、その指示に応じて処理装置110から取得したeDocファイルと、自機内にある再暗号化前のeDocファイルに上書きする。また閲覧端末104は、そのeDocファイルと共に受け取った更新後のメタデータを、そのeDocの最新のメタデータとして保存する。これにより、脆弱性のある暗号化ソフトで暗号化されたeDocファイル及びそれに対応するメタデータは閲覧端末104からなくなり、脆弱性の見つかっていない暗号化ソフトで再暗号化されたeDocファイル及びメタデータに置き換えられる。
なお、処理装置110は、再暗号化したeDocの閲覧準備完了通知を送る際又はその前に、そのeDocのDIDを含む削除通知を配信先の各閲覧端末104に明示的に送信してもよい。この場合、その指示に応じて各閲覧端末104が、そのDIDを持つ既存のeDocファイル(再暗号化前のもの)を削除する。このとき既存のメタデータも併せて削除してもよい。
<配信先端末指定の別の例>
これまでに説明した例では、配信者が作成端末102のUI画面(図9の入力画面400)で選択可能な配信先のユーザ及び閲覧端末104は、同じローカルシステム100内の処理装置110に登録されたユーザ及び閲覧端末104か、あるいは同じ組織の組織内管理システム150に登録されたユーザ及び閲覧端末104(この場合、別の処理装置110に登録されたユーザ及び閲覧端末104も配信先に指定可能)に限られていた。
しかし、組織内のユーザが組織外の人(ゲスト)を交えた会議において、作成した会議メモ等のドキュメントをゲストに対して一時的に閲覧させたい場合もある。このような場合に、ゲストやゲストの携帯端末を処理装置110やその上位装置に登録したり、閲覧終了後にその登録を解除したりするのは煩雑な作業となる。
そこで、ドキュメント管理システムでは、ゲストの端末と判断できる閲覧端末104には、一定の制限の下でeDocを配信可能とする。
例えば、作成端末102の近傍にいるユーザの端末はゲスト端末であると見なし、そのゲスト端末を配信先端末選択メニュー406の選択肢に加える。あるいは、処理装置110の近傍にいるユーザの端末はゲスト端末であると見なし、そのゲスト端末を配信先端末選択メニュー406の選択肢に加える。作成端末102や処理装置110は、組織の建物の部屋(例えば部署の居室、会議室)に設置されていることが多いと考えられ、作成端末102又は処理装置110の近くにいる人は、会議等のためにしかるべき許可を受けてその部屋に入室している人であると想定される。
例えば、処理装置110又は作成端末102は、Bluetooth Low Energy(登録商標)等の近距離無線通信を用いて通信可能な相手端末を探し、見つかった相手端末、又はそれら相手端末のうち自機からの距離(その近距離無線通信には、自機と相手の通信距離を求めることができるものもある)があらかじめ定めた閾値以下の端末を、自機の近傍にあるゲスト端末と判定する。そして、配信先端末選択メニュー406には、処理装置110又は作成端末102が検出したゲスト端末の端末名が、あらかじめ登録されている組織内の閲覧端末104とは別の表示態様で、選択肢として表示される。配信者は、その中で、配信先とするゲスト端末を選択可能である。
ここで、処理装置110又は作成端末102は、自機の近傍にある端末すべてではなく、それら近傍の端末のうち所定の条件を満たすもののみをゲスト端末として配信先の選択肢に選んでもよい。例えば、端末が搭載しているビューワアプリケーションその他の特定のソフトウエアのバージョンがあるバージョン以上であることを条件としたり、あらかじめ定められている拒否端末リストに含まれないことを条件とすること等が考えられる。
ゲスト端末を携帯しているユーザは、処理装置110やローカルユーザIDサーバ152等に登録されていないことが一般的と考えられる。そこで処理装置110は、ドキュメントの配信先に指定されたゲスト端末から、eDocファイルやメタデータを要求された場合には、ユーザ認証を省略してそれらデータを配信してもよい。また、ゲスト端末に配信するeDocのメタデータには、削除条件が満たされたらそのeDocファイル及びメタデータをゲスト端末から削除する旨の削除指示を組み込む。削除条件は、例えばそのeDocの画面表示が終了した場合、又は、配信時点から所定の許可期間が経過した場合、等である。ゲスト端末は、削除条件が満たされた時点で、そのeDocファイル及びメタデータを自端末内から削除する。これにより、ゲスト端末によるeDocの漏洩リスクが低減される。
<配信先端末以外からの要求に対する対処>
これまでに説明した例は、配信者が配信先として指定した閲覧端末104に対して処理装置110がeDoc(又はこれに対応する配信準備完了通知)を配信するという、プッシュ型の配信形態であった。
しかし、別の例として、閲覧端末104からの要求に応じて処理装置110が保持しているeDocのリストを閲覧端末104に提供し、その中からユーザが選択した閲覧対象を閲覧端末104に配信するという、プル型の配信形態も考えられる。プル型の配信形態の場合、配信先ユーザが、配信先に指定されていない閲覧端末104から処理装置110にアクセスし、eDocを要求することも考えられる。このような要求があった場合に処理装置110が行う対処として、以下のような方式がある。
(方式1) 処理装置110は、閲覧端末104からeDocの配信要求を受けた場合に、その閲覧端末104が、そのeDocの最新のメタデータの配信先情報にて配信先とされている閲覧端末に該当するかどうか判定する。そして、該当しないと判定した場合には、そのeDocのファイル(本体)もメタデータもその閲覧端末104には送信しない。なお、該当すると判定した場合には、更に、その配信要求を行ったユーザ(あるいはそのユーザと閲覧端末104の組合せ)が、そのメタデータの配信先情報に含まれているかどうかを判定し、含まれている場合には配信を行い、含まれていない場合には配信を行わないようにしてもよい。
このように、方式1では、配信者から指定された配信先に該当しない閲覧端末104には、eDoc(本体ファイル及びメタデータ)は配信されない。
(方式2) この方式では、処理装置110は、eDocの配信要求を送ってきた閲覧端末104がそのeDocのメタデータの配信先情報に規定された配信先の閲覧端末104に該当しない場合でも、その要求を発したユーザ(すなわちその閲覧端末104を使用しているユーザ)がその配信先情報に配信先として含まれる場合は、eDocの本体ファイル及びメタデータを送信する。ただし、処理装置110は、この場合、送信するeDocファイル及びメタデータには、保存不可を示すフラグ情報を組み込む。閲覧端末104は、保存不可のフラグ情報を含んだeDocファイル及びメタデータは、表示はするが、ユーザからの保存指示は受け付けず、ユーザの閲覧が終了すると、それらを保存せずに破棄する。
なお、配信先に指定されていない閲覧端末104に送信したeDocファイル及びメタデータをその閲覧端末104に保存させない方式に代えて、保存はいったん認めることも考えられる。ただし、この場合、その後再びその閲覧端末104がそのeDocファイルを開こうとする際、その閲覧端末104は処理装置110等にそのeDocの最新のメタデータを要求(これは閲覧の許可を求める要求である)するが、その要求に応じて処理装置110がその閲覧端末104と要求したユーザの組合せがそのメタデータの配信先情報に含まれるか判定し、含まれない場合は、閲覧端末104にそのeDocを削除する指示を送る。閲覧端末104は、その指示に応じて、保存しているそのeDocのファイルとこれに対応するメタデータを削除する。なお、処理装置110は、最新のメタデータを要求した閲覧端末104に明示的にeDocの削除指示を送る代わりに、単にその最新のメタデータを応答してもよい。この場合、閲覧端末104が、受け取った最新のメタデータに、自機と現在のユーザの組合せが含まれているか判定し、含まれていない場合には、eDocを開かず、更にその保存しているeDocのファイルを削除してもよい。
以上に説明した図18の例では、再暗号化後のeDocファイルは再暗号化前のeDocファイルのDIDを引き継いだが、再暗号化後のeDocファイルに再暗号化前のeDocファイルとは別のDIDを付与してもよい。この場合、処理装置110は、配信先の各閲覧端末104に対して、再暗号化前のeDocファイルのDIDを含んだ明示的な削除指示を送ることで、脆弱性のある再暗号化前のeDocファイルが閲覧端末104に残らないようにする。また、再暗号化後のeDocファイルと再暗号化前のeDocファイルとが互いに同じドキュメントに対応するものであることを示す関連付けの情報を、再暗号化後のeDocファイルに対応するメタデータ、又は処理装置110内(あるいは上位のDIDサーバ220、ローカルDIDサーバ154内)に記録する。再暗号化後のeDocに対応するメタデータに記録する場合には、例えば、そのメタデータに例えば「更新前のDID」の項目として、再暗号化前のeDocのDIDを含めればよい。
以上の例では、eDocファイルは、そのeDocファイルが登録された処理装置110が接続されたローカルネットワーク108に接続可能な閲覧端末104以外の端末には配信されない。しかし、セキュリティが確保されると考えられる特別な場合には、その処理装置110から他のネットワークに接続された閲覧端末104にそのeDocファイルを配信してもよい。このような例を以下に説明する。
この例では、処理装置110をグループ化し、ある処理装置110が保持するeDocの配信を、同一のグループに属する他の処理装置110に接続する閲覧端末104にも許可する。グループは、契約者の要望に添って規定される。例えば、同じ契約者に対応する処理装置110を1つのグループとしたり、契約者である会社の同じ拠点(工場やオフィス)や部署に設置された処理装置110を1つのグループとしたりする形で、グループが定義される。また、複数の契約者が協業を行う場合に、それら契約者の協業する部門に設置された処理装置110を1つのグループとしてもよい。
図19に、X社及びY社という2つの契約者に設定されているグループを例示する。この例ではX社には、まずX社に設置されたすべての処理装置110からなるグループAが設定されている。また、X社内の本社に設置された処理装置110からなるグループBや、技術部門、工場部門及び営業部門にそれぞれ設置された処理装置110からなるグループC1、C2及びDが設定されている。グループB、C1、C2、Dは、グループAに含まれる。また、営業部門のグループDの中には、東京営業所に設置された処理装置110からなるグループD1と、関西営業所に設置された処理装置110からなるグループD2が含まれる。これらグループA、B、C1、C2、D、D1、D2は、X社の組織構成に従って設けられたグループであり、ほぼ永続的に存在すると想定される。このように永続的な存在が想定されるグループのことを固定グループと呼ぶ。一方、X社内には、アドホックに作られる一時的なプロジェクトのためのグループG1及びG2が設定されている。例えばグループG1には、対応するプロジェクトチームに参加している部門に設置された処理装置110が含まれる。グループG1及びG2のように、一時的であることが前提のグループを変動グループと呼ぶ。
同様に、Y社には、Y社に設置されたすべての処理装置110からなるグループAと、営業部門、会計部門、監査部門にそれぞれ設置された処理装置110からなるグループB、C、Dという4つの固定グループが設定されている。グループB、C、DはグループAに含まれる。
また図示例では、X社とY社は協業を行っており、その協業に関する特別監査プロジェクトのために、X社及びY社それぞれの、協業に関係する部門に属する処理装置110から、2社に跨がる変動グループであるグループG−Y−X−1が設定されている。
さて、この例では、図20に示すように、各処理装置110には、管理情報112aに加え、所属グループ情報112bと転送設定情報112cが保持されている。
所属グループ情報112bは、処理装置110が所属するグループを示す情報である。1つの例では、処理装置110が持つ所属グループ情報は、その処理装置110が属しているグループIDのリストである。グループIDは、グループを全世界的に一意に識別する識別情報である。グループIDの全世界的な一意性は、例えば全世界的に一意な契約者IDを含む形式(例えば契約者IDに、その契約者内でのグループの通し番号をマージしたもの)とすることで実現すればよい。
処理装置110が設置されている部門に対応するグループの他に、そのグループを包含する上位グループのグループIDも含まれる。例えば、図19の例で、東京営業所内の、特別監査プロジェクトにも関与している部署に設置される処理装置110の所属グループ情報は、グループD1、D、A及びG−Y−X−1という4つのグループのグループIDを含む。
転送設定情報112cは、当該処理装置110が保持しているeDocを他の処理装置110からの要求に応じて転送する場合の転送方法についての設定情報である。この例では、処理装置110は、自分が持つeDocに対して他の処理装置110から転送要求が来た場合、その要求元の処理装置110が自分と同じグループに属していれば、その要求元に対してそのeDocを応答する。ここで、上述のように、処理装置110は、複数のグループに所属している場合があり、それら所属グループ毎に、転送の仕方や条件を異ならせることができるよう、転送設定情報112cを設けている。
図21に、転送設定情報112cの例を示す。図示の例は、図19のグループ構成例において、X社の東京営業所内の、特別監査プロジェクトにも関与している部署に設置される処理装置110に設定された転送設定情報112cである。この処理装置110は、グループD1、D、A、及びG−Y−X−1という4つのグループに属しており、それら4つのグループのそれぞれについて、「◎」、「○」、「△」という3段階のレベルのいずれかが設定されている。
レベル「◎」は、要求されたeDocを既定の転送プロトコルで即座に要求元に転送する方式である。このレベルは、互いに信頼できる処理装置110からなる緊密なグループに適用される。なお、転送プロトコルには、FTP、TFTP、FTPS、WebDAV、rsync、SCP等さまざまなものがあり、既定の転送プロトコルはそれらのいずれであってもよい。また、安全性を高めるためにこれらプロトコルに改変(例えばより高レベルの暗号化)を加えたものを使用してもよい。
レベル「○」は、要求元との間の通信接続の状態を確認し、自分と要求元の双方が利用可能な転送プロトコルの中から、所定の基準に従って選択した転送プロトコル(例えば最もセキュリティが強い転送プロトコル)を用いて転送する方式である。このレベルの方式は、一般的なデータ転送で用いられるものと同等である。
レベル「△」は、eDocに対して特定の高い権限を持つ者(例えばオーナー、すなわち当該処理装置110にそのeDocを登録したユーザ)の要求である場合にのみ、要求元の処理装置110に対して要求されたeDocを転送する方式である。転送に用いるプロトコルは、レベル「○」と同様、要求元の処理装置110とのネゴシエーションで決定する。このレベル「△」は、セキュリティに関する信頼度が低い処理装置110を含んでいるグループ等への適用を想定したものである。
また、それら各レベルに、転送先の処理装置110でのそのeDocのキャッシュ期間を対応付けてもよい。レベルが高いほど、キャッシュ期間は長くする。グループのレベルが高いとは、グループに属する処理装置110同士の信頼度が高いと言うことである。上述の例では、「◎」、「○」、「△」の順に高レベルである。
処理装置110は、要求されたeDocを、要求元について判定したレベルに対応するキャッシュ期間の情報と共にその要求元に転送する。要求元の処理装置110は、転送されたeDocを、そのキャッシュ期間の間キャッシュし、その間にそのeDocの要求を受けた場合には、キャッシュしたeDocを用いて応答する。
図21に例示した転送設定情報には、「一致」と「特殊な設定」という2つのカラムがある。「一致」は、転送要求対象のeDocを保持している当該処理装置110と、転送要求元の処理装置110と、の間で一致する所属グループについて適用されるレベルを示すカラムである。「特殊な設定」は、業務監査や管理等の目的のために用いられる、マスター鍵的な設定のカラムである。「特殊な設定」は、例えば、すべての固定グループに属する処理装置110から監査者又は管理者の装置にeDocを転送可能とするものである。要求元が監査者等の装置であることは、その装置が要求先の処理装置110に対して例えば監査者等であることを示す特別な認証情報を送信することで証明する。
以上に説明した所属グループ情報112b及び転送設定情報112cは、例えば、各処理装置110の管理者、あるいはこのシステムのサービスを提供する業者のサービスパースンが、各処理装置110に対して設定する。
なお、処理装置110が保持する所属グループ情報112bと転送設定情報112cは、図6に示した処理装置管理サーバ240に、当該処理装置110の処理装置IDに対応するステータス履歴242のステータス244の項目として登録される。
以下、ある処理装置110(「ホーム装置」と呼ぶ)に登録されたユーザが、ホーム装置が接続されたローカルネットワークの外にある別の拠点で、その拠点にある処理装置110(「アウェイ装置」と呼ぶ)を経由して、ホーム装置内のeDocを取得する処理を説明する。ユーザIDサーバ210には、ホーム装置のIDがそのユーザの既定の処理装置IDとして登録されている(図4参照)。そのユーザは、通常は、ホーム装置の接続されたローカルネットワーク108に接続し、ホーム装置に登録されたeDocの配信を受ける。ここでは、そのユーザが、別の場所に出かけたときに、その場所のローカルネットワーク108に接続されたアウェイ装置を介して、ホーム装置からeDocの配信を受ける場合の流れを説明する。
図22を参照して、アウェイ装置の処理手順を例示する。この手順では、アウェイ装置がユーザ(そのアウェイ装置に登録されていないユーザ)の閲覧端末104から、取得対象のeDocのDIDの入力を受ける(S10)。ここで、このステップの前に、アウェイ装置は、アクセスしてきたそのユーザを、上位のユーザIDサーバ210を利用してユーザ認証してもよい。また、そのユーザの閲覧端末104は、そのユーザ認証の後、メタデータサーバ230又はホーム装置から、そのユーザが配信先に設定されているeDocのリストを取得し、そのリストをユーザに提示して取得対象の選択を受け付けてもよい。
次にアウェイ装置は、S10で入力されたDIDに対応する最新のメタデータをメタデータサーバ230から取得し(S12)、そのメタデータの配信先情報(図3参照)にそのユーザが含まれることを確認する(S14、S16)。そのユーザが配信先情報に含まれていない場合は、アウェイ装置は閲覧端末104に対して配信不許可の旨を示すエラー情報を送る(S17)。閲覧端末104は、そのエラー情報に従って画面に配信不可の旨を表示する。
S16でそのユーザがそのeDocの配信先であると確認できた場合、アウェイ装置のキャッシュの中にそのeDocのファイルが存在するかどうかを調べる(S18)。そのeDocが既にホーム装置から取得済みでキャッシュ内にまだ残っている場合は、S18の判定結果がYesとなる。この場合、アウェイ装置は、そのキャッシュ内のeDocを閲覧端末104に応答する(S20)。
S18の判定結果がNoの場合、アウェイ装置は、そのメタデータからそのeDocを持つホーム装置を特定する(S22)。そのメタデータ(図3参照)が含む処理装置IDに対応する処理装置がホーム装置である。アウェイ装置は、そのホーム装置のアドレス情報を管理システム200から取得し、そのアドレス情報を用いてホーム装置にアクセスし、そのeDocの転送要求を送る(S24)。この転送要求には、そのeDocのDIDと、アウェイ装置の所属グループ情報が含まれる。
次にアウェイ装置は、その転送要求に応じてホーム装置からそのeDocが提供されたかどうかを判定する(S26)。後述するように、アウェイ装置がホーム装置と共通のグループに属していない場合、ホーム装置はアウェイ装置にeDocを送信しないので、S26の判定結果はNoとなる。この場合、アウェイ装置は閲覧端末104に対して配信不許可の旨を示すエラー情報を送る(S17)。閲覧端末104は、そのエラー情報に従って画面に配信不可の旨を表示する。
S26の判定結果がYesの場合、アウェイ装置は、ホーム装置から送信されたeDocを要求元ユーザの閲覧端末104に応答する(S28)。またアウェイ装置は、そのeDocを、自分の記憶装置内にキャッシュする(S29)。ここで、ホーム装置から送信されたeDocにキャッシュ期間の指定がある場合、アウェイ装置は、そのeDocを取得した時点からそのキャッシュ期間が経過すると、そのeDocをキャッシュから削除する。キャッシュ期間は、閲覧端末104上でのそのeDocの有効期間とは独立して定められる。なお、キャッシュ期間の指定がない場合は、Least Recently Used等の通常のキャッシュアルゴリズムに従って、古くなったeDocを破棄する。
図23を参照して、アウェイ装置からeDocの転送要求を受けた時のホーム装置の処理手順の例を説明する。ホーム装置は、アウェイ装置から転送要求を受け取ると(S30)、その転送要求中の所属グループ情報(アウェイ装置のもの)と、ホーム装置自身の所属グループ情報とを比較し、両者の間に一致(共通)するグループIDが存在するか否かを判定する(S32)。共通するグループIDが一つもない場合は、ホーム装置は、アウェイ装置に対して、要求されたeDocが転送できない旨を応答する(S38)。この場合、アウェイ装置は、ホーム装置と同じグループに属していないので、ホーム装置から信頼できるか不明な装置であるため、転送を許可しない。
S32の判定結果がYesの場合、ホーム装置は、それら両者間で一致するグループIDのレベルの最高レベルを特定し(S34)、特定したレベルに対応する転送方式を用いて、アウェイ装置に対してeDocを転送する(S36)。特定したレベルにキャッシュ期間が設定されている場合には、そのキャッシュ期間を示す情報をeDocと対応付けてアウェイ装置に転送する。なお、S34で特定した最高レベルが上述のレベル「△」である場合には、ホーム装置は、転送要求元のユーザIDがそのeDocについての特定の高い権限を持つ者(例えばオーナー)に該当するか否かを判定し、該当する場合にはS36に進んでeDocの転送を行い、該当しない場合にはS38に進んで転送不許可の旨を応答してもよい。
なお、eDocの転送のためにファイアウォールを通過する必要がある処理装置110には、トンネリングプロトコルを組み込んでおく。組み込むトンネリングプロトコルは、L2F、PPTP、L2TP、GRE、IPsec等のいずれであってもよい。また複数組み込んでおき、転送の相手との間で共通のものを選んで利用する手順としてもよい。
また、eDoc転送に用いる転送プロトコルの種別やトンネリングプロトコルの使用の有無及び/又は種別に応じて、上記処理手順により自動転送を許可するeDocのデータ量の上限を設定することにより、転送の安定性の向上を図ってもよい。また、この上限を超えた場合には、eDocを上限以下の部分に分割して転送してもよい。
以上の例では、各処理装置110の所属グループ情報112bには、その処理装置110が直接所属するグループのIDの他に、そのグループが包含されるより広いグループのIDのように、その処理装置110が階層的に所属するすべてのグループのIDが含まれるとしたが、このような所属グループ情報112bの形態はあくまで一例に過ぎない。処理装置110が所属グループ情報112bを持つ代わりに、処理装置110からアクセス可能なネットワーク上に設けられたサーバ上に所属グループ情報112bを保持し、処理装置110がそれを参照する方式でもよい。また、処理装置110は、自分が直接所属するグループのIDのみを持ち、グループ間の階層関係の情報はネットワーク上のサーバを参照してもよい。
以上に例示したように、処理装置110を契約者の希望に従ってグループ化し、同一グループ内の処理装置110間ではeDocの転送を許可することで、ユーザは、自分が登録された処理装置110がある場所(例えば自分のオフィス)以外の場所にいるときにも、自分宛のeDocの本体を取得できる機会が増える。
以上、処理装置110と管理システム200を含むドキュメント管理システムについて説明した。
次に、本発明の一実施形態のドキュメント送信制御をそのドキュメント管理システムに適用した場合の例を説明する。本実施形態は、ユーザが自分の既定の処理装置110内に記憶されているeDocを、別の処理装置110を「既定の処理装置」とする送信先ユーザに対してセキュアに送信する仕組みを提供する。
前述のように、各ユーザ(例えば企業)のローカルシステム100内にある処理装置110には、このドキュメント管理システムでの情報セキュリティの基盤である公開鍵基盤の認証局から発行された、当該処理装置の公開鍵証明書がインストールされている。この公開鍵証明書は、失効する前に適宜更新するようメインテナンスされている。また、各処理装置110は、自分自身を特定する情報セット(以下「特定情報セット」と呼ぶ)と、自分の公開鍵の公開鍵証明書を、管理システム200(特に処理装置管理サーバ240)に登録している。ここで、処理装置110の特定情報セットは、例えば処理装置ID、契約に関する状態情報、セキュリティ維持情報等を含む。処理装置IDは、管理システム200が付与した一意な識別情報であってもよいし、当該処理装置110のIPアドレス、FQDN、MACアドレス等の他の識別情報を用いてもよい。また、IPアドレス、FQDN等の2以上を組み合わせたものを処理装置IDとしてもよい。処理装置110の特定情報セット及び公開鍵証明書は、管理システム200内の処理装置管理サーバ240が保持する当該処理装置110の管理情報(図6参照)に含まれている。例えば、図6の処理装置ID、契約者ID等が特定情報セットに含まれる要素の例である。特定情報セットは、後述する管理システム200での処理装置110の認証の際に、当該処理装置110の固有情報として用いられる。処理装置管理サーバ240が保持する処理装置110の管理情報内のどの項目をどの順に並べたものを特定情報セットとするかは予め取り決められており、処理装置110及び管理システム200はその取り決めに従って当該処理装置110の特定情報セットを構成する。
本実施形態におけるドキュメント送信の流れを、図24を参照して説明する。図24に示す流れは、以下の(1)から(8)までの各ステップから構成される。
(1)送信者から処理装置110Sへの送信指示
(2)送信側の処理装置110Sから管理システム200への送信許可要求
(3)管理システム200から受信側の処理装置110Rへの受信処理の開始指示
(4)処理装置110Rから処理装置110SへのeDocの転送要求
(5)処理装置110Sから処理装置110RへのeDocの転送
(6)処理装置110Rから送信先のユーザの端末へのeDoc提供
(7)送信先のユーザの端末でのeDocの表示
(8)送信先でeDocが閲覧されたことを送信者に通知
以下、これら各ステップの処理内容について更に詳しく説明していく。
(1)送信者から処理装置110Sへの送信指示
図24の例では、送信者は、例えば自分の閲覧端末104Sから、送信側のローカルシステム100S内のネットワークを介して、当該ローカルシステム100S内の処理装置110Sにログインする。そして、処理装置110S内に保存されている保護済みドキュメント(eDocファイル)群の中から送信対象とするものを選択し、送信処理の開始指示を行う。なお、送信者は、閲覧端末104の代わりに、作成端末102から送信処理の開始指示を行ってもよい。この場合、送信者は、作成端末102で作成したドキュメントを処理装置110Sに登録する際に、そのドキュメントの登録により生成されるeDocの送信処理の開始を指示してもよい。
この開始指示を受けた処理装置110Sは、自分の特定情報セットを自分の秘密鍵で暗号化(すなわち電子署名)することで暗号化特定情報を生成する。特定情報セットそのものでなく、そのダイジェスト値(例えばハッシュ値)を秘密鍵で暗号化したものを暗号化特定情報としてもよい。この暗号化特定情報は、処理装置110Sの電子署名として機能する。処理装置110Sは、生成した暗号化特定情報(すなわち自身の電子署名)と自身の処理装置IDを含んだ認証要求を管理システム200に送る。
管理システム200は、処理装置110Sからの認証要求に対する認証処理を行う。この認証処理では、その認証要求に含まれる暗号化特定情報を、その処理装置110Sの公開鍵証明書(これは処理装置管理サーバ240に保持されている。図6の「セキュリティ証明書情報」)に示される公開鍵で復号する。そして、復号結果が、処理装置管理サーバ240が保持しているその処理装置110Sの特定情報セット(あるいはそのダイジェスト値)と一致するか否かを判定し、一致すれば認証成功、不一致であれば認証失敗とする。認証失敗の場合、管理システム200は、認証失敗の旨を示す通知を送信側の処理装置110Sに送り、その認証失敗を示すログをログサーバ(図示省略)に記録して、処理を終了する。認証成功の場合、管理システム200は、認証成功の通知と共に、宛先のユーザが用いる受信側の処理装置110Rからの転送要求(後述)を復号、認証するために必要な情報を、送信側の処理装置110Sに送る。このとき送られる情報には、例えば、受信側の処理装置110Rの識別情報(例えば、処理装置ID、IPアドレス、FQDN等)及び公開鍵証明書が含まれる。
認証成功の通知を受けた送信側の処理装置110Sは、送信者の閲覧端末104Sに対して、条件指定用のUI画面(例えばウェブページとして構成される)を提供する。閲覧端末104Sは、このUI画面を表示し、この画面内の各入力欄への入力を送信者から受けつける。
この条件指定用のUI画面には、eDocの送信先の入力欄が含まれる。この場合の送信先は、他のローカルシステム100を常用しているユーザである。ここでは、受信側のローカルシステム100R内のユーザ(受信者と呼ぶ)が宛先に指定されるものとする。送信先の指定は、例えば、受信者の電子メールアドレスや社員番号等、送信者が知っている受信者の識別情報を入力することにより行ってもよい。管理システム200(ユーザIDサーバ210)には、各ローカルシステム100内の処理装置110に登録されたユーザの情報が保持されており、その中にそのユーザの電子メールアドレスその他の識別情報が含まれている。したがって、管理システム200に問い合わせれば、その電子メールアドレス等に対応するユーザのユーザIDや、そのユーザの「既定の処理装置ID」(図6参照)等の情報が取得可能である。
また条件指定用のUI画面には、送信するeDocと共に受信者に送る付箋の情報の入力のためのいくつかの欄が含まれる。この付箋は、送信先でeDocを表示する際に、例えばそのeDocの表紙や特定のページに対して貼付された付箋のような形態で表示される。付箋情報に関する入力欄には、例えばその付箋の画像内に表示するメッセージ(例えば送信者が受信者に伝えたいコメント)を入力する欄、付箋の形態(例えば矩形、ハート形などといった付箋の形状や、付箋の表示色等)を指定する欄、この付箋情報を暗号化するか否かを指定する欄等がある。また、この付箋情報は、上述したeDocに対するアクセス権を規定するメタデータとは別種のメタデータ(付箋メタデータと呼ぶ)として、そのeDocに対応付けて保存したり、転送したりしてもよい。UI画面には、付箋メタデータを管理システム200のメタデータサーバ230に追加登録するか(すなわち送信終了後もメタデータサーバ230に保存するか)否かを指定する欄が含まれてもよい。ユーザは、UI画面上の各入力欄に対して入力を行った後、最初に選んだeDocの送信を指示する。また、eDocに付される付箋メタデータについてのアクセス権を、そのeDocに対するアクセス権(例えば図3の配信先情報により規定される)とは独立に設定できるようにしてもよい。これにより、送信者は、付箋メタデータに含まれるメッセージ内容(タイトルやコメント)を、そのeDocの送信先のユーザのうち特定ユーザには見せて、別のユーザには見せない、といった指定が可能になる。
(2)送信側の処理装置110Sから管理システム200への送信許可要求
送信者の閲覧端末104Sから送信指示を受けた処理装置110Sは、管理システム200に対して、他の処理装置110へのeDoc送信の許可を要求する。この依頼に対して管理システム200は、処理装置110Sのステータスが、他の処理装置110へのeDoc送信のための情報セキュリティ要件(以下、単に「セキュリティ要件」という)を満たすかどうかを判定する。そして、満たす場合には処理装置110Sにその送信を許可し、満たさない場合にはその送信を禁止する。この管理システム200による送信許可の判定処理の例を、図25を参照して説明する。
管理システム200は、送信側の処理装置110Sから送信許可の要求を受け取ると、処理装置管理サーバ240が管理するその処理装置110Sのステータス(図6参照)のうちeDoc送信に関する項目の値を調べ(S300)、それら項目の中にeDoc送信のためのセキュリティ要件を満たさないものがあるかどうかを判定する(S302)。なお、S302では、管理システム200は、処理装置110Sから、その時点での最新のステータスのうち少なくともeDocの送信に関する所定の項目を取得し、それら取得した項目の中にセキュリティ要件を満たさないものがあるかどうか判定してもよい。
ここでの判定対象となる項目には、例えば、オペレーティングシステムのバージョン、暗号化ソフトの名称及びバージョン、エンコードソフトの名称及びバージョン、処理装置110にインストールされているセキュリティ証明書、処理装置110にインストールされている暗号鍵(例えば秘密鍵と公開鍵ペア。通信路暗号化や署名的な目的等に用いる)の情報(例えば当該鍵の識別情報やインストール日時等)、エンコード回路の名称及びファームウエア(FW)のバージョン、ウィルスチェックソフトのバージョンやウィルス定義データのバージョン、ウィルスチェックソフトの設定状態等がある。これらの項目は、図16の手順の場合と同様の理由で、送信されるeDocのセキュリティに関わるので、これら項目がeDoc送信のためのセキュリティ要件を満たしているかをチェックする。このときのセキュリティ要件は、図16の手順の際の判定基準と同じでもよいし、異なっていてもよい。例えば、本実施形態では、送信対象のeDocが、インターネットを経由して受信側の処理装置110Rに送られる可能性があるので、判定に用いるセキュリティ基準は、図16の手順での判定基準よりも厳しいものとしてもよい。
また、S302では、当該処理装置110Sにインストールされている1以上の転送プロトコルの中に、eDoc送信のためのセキュリティ要件を満たすものがあるかどうかを判定してもよい。転送プロトコルの中には、伝送路暗号化を行うものと行わないものとがあり、また伝送路暗号化を行うものであっても、使用できる暗号化方式及び鍵長等の暗号化パラメータが様々に異なる。そこで、eDoc送信を許可するためのセキュリティ要件として、転送プロトコルの種類や転送プロトコルで用いる暗号化方式や暗号化パラメータについての条件を規定しておき、送信側の処理装置110Sがその条件を満たす転送プロトコルを持っているかどうかをS302で判定する。処理装置110Sがその条件を満たす転送プロトコルを1つも持っていない場合、S302の判定結果はYes(セキュリティ要件を満たさない項目あり)となる。
S302の判定結果がNo、すなわち処理装置110Sのステータスの項目の中に他の処理装置110へのeDoc送信のためのセキュリティ要件を満たさないものがない場合、管理システム200は、処理装置110Sに対して送信を許可する旨の回答を行う(S308)。
S302の判定結果がYesの場合、処理装置110Sのステータスの項目の中に他の処理装置110へのeDoc送信のためのセキュリティ要件を満たさない項目(不充足項目と呼ぶ)がある。この場合、管理システム200は、その不充足項目がセキュリティ要件を満たすようにするための修正を、管理システム200からリモートで実行可能かどうかを判定する(S304)。不充足項目が、リモートからの修正が技術的に不可能なものであれば、S304の判定結果はNoとなる。また例えば、処理装置110S内の暗号化ソフト、エンコードソフト、転送プロトコル等のインストールや更新は、技術的にリモートから実行できる場合がある。ただし、技術的にはリモートから修正可能であっても、ユーザ側(すなわちローカルシステム100側)の管理者が、事前通知なしでのリモートからの自動修正を認めない項目もあるので、不充足項目の中にそのような自動修正の認められない項目に該当するものが一つでもある場合には、S304の判定結果はNoとなる。不充足項目のすべてが、リモートからの修正が技術的に可能なものであり、かつリモートからの自動修正がユーザ側から許可されているものであれば、S304の判定結果はYesとなる。
S304の判定結果がYesの場合、管理システム200は、処理装置110S内の各不充足項目についての修正を、リモートから実行する(S306)。そして、その修正が完了した後、要求された送信を許可する旨の回答を処理装置110Sに対して行う(S308)。
なお、詳しくは後述するが、この時点での送信の許可は、あくまで送信に必要な準備処理(図26に示す処理)を進めることの許可であり、暗号化文書を実際に送信することの許可ではない。この許可の後、その準備処理を経て、送信先の処理装置110Rについても同様のセキュリティ要件のチェック(図28に示す処理)を行い、処理装置110Rもセキュリティ要件を満たすことが確認できて初めて、実際の暗号化文書の送信が許可される。
S304の判定結果がNoの場合、管理システム200は、要求された送信を不許可とする旨の回答を処理装置110Sに対して行う(S310)。この回答を受けた処理装置110Sは、送信対象のeDocの送信を取りやめる。また処理装置110Sは、送信者の閲覧端末104Sに、要求されたeDocの送信がセキュリティ上の理由で不許可となったことを示すメッセージを表示させる。また、処理装置110Sは、ユーザから要求されたeDocの送信が不許可になったこと、及びその不許可の理由(例えば不充足項目)やその不許可を解消するために必要な修正の情報を、処理装置110Sの管理者に対して通知してもよい。管理者は、その通知に応じて、不許可を解消するための修正を行うかどうかを判断する。
図25の処理で用いるセキュリティ要件は、インターネット等のネットワークにおける脅威の状況に応じて、管理システム200側で適宜設定変更できるようにする。
S308で管理システム200から許可が得られた場合、送信側の処理装置110Sは、図26に示す準備処理を行う。
まず処理装置110Sは、送信対象として指定されたドキュメントがeDoc化されているか否かを判定する(S400)。eDoc化されていない場合(例えば作成端末102で作成したドキュメントの送信が指示された場合)、処理装置110Sは、そのドキュメントをエンコードしてeDocを生成し、保存したのち(S402)、S404に進む。指定された送信対象がeDocであれば、S402をスキップしてS404に進む。
次に、処理装置110Sは、送信者が入力した送信先の情報(例えば電子メールアドレス)に対応するユーザ情報(例えばユーザID、既定の処理装置ID)を管理システム200から取得する(S404)。また処理装置110Sは、送信対象のeDocのメタデータ(図3参照)、特にその配信先情報を管理システム200から取得し、その配信先情報にその送信先のユーザが配信先として含まれているか否かを判定する(S406)。含まれていない場合、処理装置110Sは、その送信先ユーザのユーザIDを、管理システム内のその配信先情報に追加する(S408)。
また処理装置110Sは、送信者が入力した付箋情報に従って、付箋メタデータを生成し、生成した付箋メタデータをそのeDocのDIDに対応づけてメタデータサーバ230に登録する(S410)。付箋メタデータの暗号化の指定がある場合は、暗号化を行ってから、メタデータサーバ23に登録する。この暗号化は、例えば自動生成したセッション鍵により行う。暗号化した付箋メタデータを送信先に送る場合には、そのセッション鍵をその送信先のユーザの公開鍵で暗号化したものを合わせて送る。
図27に付箋メタデータが含むデータ項目を例示する。例示した項目には、送信側の処理装置110Sが設定するもの、管理システム200が設定するもの、受信側の処理装置110Rが設定するものがある。このうち、メタデータ番号は、その付箋メタデータの一意な識別情報であり、管理システム200が設定する。また、受信側の処理装置110RのID情報は、送信側の処理装置110Sから送られてきた送信先の情報に基づいて管理システム200が特定し、付箋メタデータに設定する。メタデータ種別には、eDocのアクセス権管理のための配信先情報(図3参照)を含んだメインメタデータの他に、今回説明するeDoc送信のための付箋メタデータ等の何種類かの付箋メタデータ、あるいは付箋以外の他の種類等がある。送信時刻は、付箋メタデータとこれが付されるeDocの送信が指示された時刻である。暗号化有無フラグは、その付箋メタデータを暗号化するか否かを指定するフラグである。eDoc−IDは、この付箋メタデータが付されるeDocのID情報(DID)である。これらメタデータ種別、送信時刻、暗号化有無フラグ、eDoc−ID、送信者や送信側の処理装置110SのIDその他の情報、受信者のIDその他の情報、付箋のタイトルや表示内容、表示色や形状等の項目は、送信側の処理装置110Sが設定する。また、閲覧済みフラグは、送信先のユーザが付箋を閲覧したか否かを示すフラグであり、受信側の処理装置110Rにより設定される。また、表示状態番号は、送信先のユーザの端末における付箋の表示状態を示す番号あり、これもその端末からの通知に基づき受信側の処理装置110Rにより設定される。また回答要求フラグは、送信したeDocに対する回答を送信先に要求するかどうかを示すフラグであり、送信者からの入力に基づいて送信側の処理装置110Sが設定する。
図24の処理の流れの説明に戻る。
(3)管理システム200から受信側の処理装置110Rへの受信処理の開始指示
管理システム200は、送信側の処理装置110SからeDoc送信用の付箋メタデータの登録を受け付けると、受信側の処理装置110Rの認証処理を行う。すなわち、管理システム200は、処理装置110Rに対して暗号化特定情報の提出を要求する。この要求に応じて、処理装置110Rは、自分の特定情報セット(又はそのダイジェスト値)を自分の秘密鍵で暗号化することで暗号化特定情報を生成し、生成した暗号化特定情報を管理システム200に送る。管理システム200は、処理装置110Rから受け取った暗号化特定情報を、その処理装置110Rの公開鍵で復号する。そして、その復号結果が、処理装置管理サーバ240が保持しているその処理装置110Rの特定情報セット(あるいはそのダイジェスト値)と一致するか否かを判定し、一致すれば認証成功、不一致であれば認証失敗とする。認証失敗の場合、管理システム200は、その認証失敗を示すログをログサーバ(図示省略)に記録する。また、この場合、管理システム200は、その処理装置110Rに対して認証失敗の旨を通知すると共に、送信側の処理装置110Sにも、受信側の処理装置110Rの認証が失敗した旨を通知する。
認証成功の場合、管理システム200は、処理装置110Rのステータスが、他の処理装置110からのeDoc受信のためのセキュリティ要件を満たすかどうかを判定する。
処理装置110Rについてのセキュリティ要件の判定処理の手順を図28に例示する。
この手順では、管理システム200は、処理装置管理サーバ240が管理する受信側の処理装置110Rのステータス(図6参照)のうちeDoc送信(転送)に関する項目を調べ(S500)、その中にeDoc送信のためのセキュリティ要件を満たさないものがあるかどうかを判定する(S502)。S500及びS502では、管理システム200は、処理装置110Rから、その時点での最新のステータスのうち少なくともeDoc転送に関する所定の項目を取得し、それら取得した項目の中にセキュリティ要件を満たさないものがあるかどうか判定してもよい。
ここでの判定基準となるセキュリティ要件は、送信側の処理装置110Sに対する上記ステップ(2)での判定で用いたセキュリティ要件と同様でよい。ただし、一つ異なるのは、転送プロトコルに関する要件である。送信側の処理装置110Sの場合、ある条件を満たす転送プロトコルを1つ以上備えていれば送信が許可されるが、受信側の処理装置110Rの場合、受信が許可されるためには、送信側の処理装置110Sが持つその条件を満たす転送プロトコルと同じ転送プロトコルを持っている必要がある。このような転送プロトコルが受信側の処理装置110Rにない場合、転送プロトコルに関するセキュリティ要件は満たされないことになる。この場合、リモートの管理システム200からの自動的な(すなわち処理装置110Rの管理者側からの許可を得る必要無しでの)インストール又は更新により、処理装置110R内のその同じ転送プロトコルを構成可能であれば、転送プロトコルについてのセキュリティ要件を満たすことができる。逆に、その転送プロトコルについての自動的なインストールまたは更新が許可されていない場合には、その転送プロトコルについてのセキュリティ要件を満たすことはできない。
S502の判定結果がNoの場合、管理システム200は、処理装置110Rに対してeDocの受信処理の開始を指示する(S508)。
S502の判定結果がYesの場合、処理装置110Rのステータスの項目の中にセキュリティ要件についての不充足項目がある。この場合、管理システム200は、その不充足項目がセキュリティ要件を満たすようにするための修正を、管理システム200からリモートで実行可能かどうかを判定する(S504)。不充足項目が、リモートからの修正が技術的に不可能なものであるか、又はリモートからの修正が処理装置110Rの管理者から許可されていないものであれば、S504の判定結果はNoとなる。不充足項目のすべてが、リモートからの修正が技術的に可能なものであり、かつリモートからの自動修正がユーザ側から許可されているものであれば、S504の判定結果はYesとなる。
S504の判定結果がYesの場合、管理システム200は、処理装置110R内の各不充足項目についての修正を、リモートから実行する(S506)。そして、その修正が完了した後、処理装置110Rに対してeDocの受信処理の開始を指示する(S508)。
S504の判定結果がNoの場合、管理システム200は、eDocの受信を不許可とする旨の通知を受信側の処理装置110Rに送ると共に、送信側の処理装置110SにeDocの送信を不許可とする旨の通知を送る(S510)。この通知を受けた送信側の処理装置110Sは、送信対象のeDocの送信を取りやめる。また処理装置110Sは、送信者の閲覧端末104Sに、要求されたeDocの送信がセキュリティ上の理由で不許可となったことを示すメッセージを表示させる。また、処理装置110Sは、ユーザから要求されたeDocの送信が不許可になったこと、及びその不許可の理由(例えば受信側の不充足項目)を、処理装置110Sの管理者に対して通知してもよい。
管理システム200がS508で処理装置110Rに送る受信処理の開始指示には、送信側の処理装置110Sから登録された付箋メタデータが含まれる。なお、受信処理開始指示には、付箋メタデータ全体ではなく、そのうち送信側の処理装置110SにeDocの転送を要求するのに必要な項目のみ(例えば送信側の処理装置110Sの処理装置ID及びIPアドレス等の通信アドレス情報、送信対象のeDocのDID)が含まれるようにしてもよい。またこの開始指示には、eDoc送信のためのセキュリティ要件を満たし、かつ送信側及び受信側の処理装置110S及び110Rが共通して有している1以上の転送プロトコルを示す転送プロトコル情報が含まれる。
図24の説明に戻る。
(4)処理装置110Rから処理装置110SへのeDocの転送要求
受信処理の開始指示を受けた受信側の処理装置110Rは、その開始指示に含まれる情報を用いて、送信側の処理装置110Sに対して、送信対象のeDocの転送を要求する。この転送要求は、その情報に含まれる処理装置110Sの通信アドレス宛に行う。また、この転送要求には、その情報に含まれる送信対象のeDocの識別情報(DID)が含まれる。また、その転送要求には、その情報に含まれる転送プロトコル情報が含まれる。この転送プロトコル情報は、そのeDocの転送のために選択可能な、セキュリティ要件を満たす転送プロトコルのリストである。またその転送要求には、受信側の処理装置110Rの処理装置IDと、受信者のユーザID、付箋メタデータに含まれていた送信時刻が含まれる。送信側の処理装置110Sから、同じDIDを持つeDocが時を隔てて複数回、同じ受信者(送信先の処理装置110Rと送信先のユーザ)に送られる場合もあるので、そのうちどの時刻に送信されたeDocであるかを特定するために、送信時刻の情報を転送要求に含める。
(5)処理装置110Sから処理装置110RへのeDocの転送
受信側の処理装置110Rから転送要求を受け取った送信側の処理装置110Sは、その転送要求が、自分が送信を指示したeDocについてのものかチェックする。すなわち、処理装置110Sは、自分が過去に送信を指示したeDocについての付箋メタデータを保持しており、そのうち受信側の処理装置110Rへの転送が未完了であるものの中に、送信対象のeDocのDID、転送要求に含まれる受信側の処理装置110Rの処理装置ID、受信者のユーザID、送信時刻の組合せに合致する付箋メタデータがあるかどうかを調べる。該当する付箋メタデータがあれば、処理装置110は、その転送要求が正当なものと判断し、その転送要求中の転送プロトコル情報に含まれるリストの中から所定の基準に基づいて選んだ転送プロトコルを用いて、その送信対象のeDocファイルを受信側の処理装置110Rに転送する。この転送の際、使用する転送プロトコルが用いる暗号化に加えて、受信者の公開鍵でeDocファイルを暗号化してもよい。
送信側及び受信側の処理装置110S及び110Rは、それぞれ、このeDocの転送及び受信が成功したか否かを示すログ情報を、管理システム200に送信する。管理システム200は、受信したそのログ情報をログサーバ(図示省略)に記録させる。
(6)処理装置110Rから送信先のユーザの端末へのeDoc提供
送信側の処理装置110Sから転送されたeDocファイルを受け取った処理装置110Rは、受信者(これはそのeDocファイルに対応する付箋メタデータに示されている)に対して、その受信者宛のeDocファイルが届いたことを通知する。この通知は、その受信者の既定の閲覧端末104S(図4の既定の閲覧端末リスト中の予め指定された端末)に対して送られる。
(7)送信先のユーザの端末でのeDocの表示
eDocファイルが届いた旨の通知を見た受信者は、閲覧端末104R上でそのeDocファイルを開く指示を行う。この指示に応じて、閲覧端末104Rは、そのeDocファイルに対応するメタデータ(図3参照)を取得し、そのメタデータの配信先情報中にその受信者のユーザIDが含まれていることを確認すると、そのメタデータ中の鍵情報を用いてeDocファイルを復号し、画面表示する。これにより、受信者はそのeDocファイルの閲覧が可能になる。また、このeDocファイルの表示の際、付箋メタデータ中の付箋情報に従って生成した付箋画像を、例えばそのeDocファイルが示す文書の表紙等に貼付したような態様で表示してもよい。付箋画像は、付箋情報が示す形状、色の付箋上に、付箋のタイトル及びコメントの文字列を表示したものである。なお、閲覧端末104Rは、付箋メタデータに設定されたアクセス権情報を管理システム200から取得し、受信先のユーザが付箋メタデータへのアクセス権を持つかどうかをその情報により確認し、アクセス権を持たない場合は付箋画像の表示を行わない。
(8)送信先でeDocが閲覧されたことを送信者に通知
受信したeDocを表示した場合、受信者の閲覧端末104Sは、そのeDocが閲覧済みであることを示す通知を処理装置110Rに送る。この通知には、その表示を行った時刻(閲覧時刻)の情報が含まれる。この通知を受けて、処理装置110Rは、そのeDocが閲覧された旨の通知(閲覧時刻を含む)を管理システム200及び送信側の処理装置110Sに送る。送信側の処理装置110Sは、この通知に応じて、送信者の閲覧端末104Sに対して、送信したeDocが閲覧されたことを示す通知を送る。送信者は、閲覧端末104Sでその通知を見ることで、送ったeDocが閲覧されたことを知る。また、管理システム200及び送信側の処理装置110Sは、eDocが閲覧された旨の通知に応じて、そのeDocに対応する付箋メタデータ中の閲覧済みフラグを「閲覧済」に変更する。
以上に説明したように、本実施形態では、eDocファイルは、送信側の処理装置110Sから受信側の処理装置110Rに、管理システム200を初めとする途中のサーバを介することなく、ピア・トゥ・ピアで直接転送される。このため、データを送信側から途中のサーバにいったん蓄積し、受信側がそのサーバからデータを取得する方式よりも、eDocの漏洩リスクが低い。処理装置110Rから受信者の閲覧端末104Rへは、ローカルシステム100Rのローカルネットワーク108経由でeDocファイルが転送される。ローカルネットワーク108はファイアウォール等でインターネット等の外部ネットワークから保護されているので、受信側のローカルシステム100R内のeDocが外部に漏洩するリスクも低い。
その一方、付箋メタデータその他のメタデータは、管理システム200に登録され、送信側の処理装置110S及び受信側の処理装置110Rを初めとする様々な処理装置110から参照可能である。したがって、例えば、送信先のユーザが、処理装置110Rとは別の処理装置110のある場所に出かけているとき、そのユーザの閲覧端末104Rは当該別の処理装置110にアクセスし、送信者から送信されたeDocファイルがあることを当該eDocのメタデータや付箋メタデータ(これらには送信先ユーザのIDが配信先又は送信先として含まれる)から認識し、そのeDocファイルを当該別の処理装置110を介してダウンロードすることができる。
また本実施形態では、送信側の処理装置110Sと受信側の処理装置110Rの両方が、eDocの送信のためのセキュリティ要件を満たしてはじめて、それら両者間でのeDocの転送がなされる。したがって、セキュリティが甘い状態(例えば十分な強度での伝送路暗号化がなされていない状態)でeDocが転送されることがない。
以上にて図24を参照して説明した処理の流れでは、まず送信元の処理装置110SがeDoc送信のためのセキュリティ要件を満たすか否かを判定し、満たすと分かった場合に、送信先の処理装置110Rがセキュリティ要件を満たすか判定した。しかし、この流れは一例に過ぎない。送信元の処理装置110Sが、その処理装置110Sと送信先の処理装置110Rとの情報を含んだ付箋メタデータ(図27参照)を管理システム200に送ったときに、管理システム200が処理装置110S及び110Rがそれぞれセキュリティ要件を満たすかどうかを判定してもよい。そして、いずれか一方でもセキュリティ要件を満たし得ない(すなわちリモートからの修正でも対処できない)と分かった場合に、管理システム200がその付箋メタデータに係るeDoc送信を不許可とする旨を処理装置110S(及び110R)に通知してもよい。
以上の例では、受信側の処理装置110Rが管理システム200から送信側の処理装置110Sの情報(付箋メタデータに含まれる)を取得し、その情報を用いて送信側の処理装置110Sから対象のeDocをダウンロードした。しかしこれは一例に過ぎない。この代わりに、送信側の処理装置110Sが管理システム200から受信側の処理装置110Sの処理装置IDや通信アドレス等の情報を取得し、この情報を用いて受信側の処理装置110Rに対してeDocを転送してもよい。この場合、管理システム200は、その転送が開始される前に、受信側の処理装置110Rに対して付箋メタデータを送り、処理装置110Rは、送信側の処理装置110SからeDocが転送されてきた場合に、その転送元の処理装置IDや転送されてきたeDocのDID等が、既に受信済みの付箋メタデータ内の対応項目の値に合致するか否かを確認するようにしてもよい。合致しない場合には、処理装置110RはそのeDocを受け取らないようにしてもよい。
次に、ドキュメント送信のための別の実施形態として、一対多送信に対応するためのシステムの例を説明する。ここでいう一対多送信とは、送信対象のドキュメントについて、予め定めた閾値以上の数の送信先が指定されている場合の送信処理である。
上で図24〜図28を参照して説明したドキュメント(すなわちeDoc)の送信処理では、ユーザから送信指示を受けた処理装置110S(送信側)が、受信側の処理装置110Rに対するドキュメントの送信処理を行った。この送信処理では、送信側の処理装置110Sが、セキュリティ要件を満たし、かつ受信側の処理装置110Rも対応可能な転送プロトコルを選択し、その転送プロトコルを用いてeDocを処理装置110Rに送信する。ここで、ユーザからの送信指示の中で指定された送信先の数が多いと、処理装置110Sが送信先に対応する多数の処理装置110Rに対して上述の送信処理を行うこととなる。このように多数の処理装置110Rへの送信処理のために処理装置110Sの負荷が高くなると、処理装置110Sが行うべき他の処理、例えばユーザからのドキュメントの登録要求に対するeDoc化等の処理、を妨げたり遅延させたりする可能性がある。
そこで、以下では、eDocの一対多送信のための送信側の処理装置110Sの処理負荷を軽減するための実施形態を、図29〜図30を参照して説明する。
図29は、この実施形態のシステム構成の一例を示す。図29に示す例では、管理システム200には、インターネット等の広域ネットワークを介して複数の組織内管理システム150が接続されている。個々の組織内管理システム150は、図12に例示したものと同様のものである。組織内管理システム150が設けられた組織内ネットワーク160−1、・・・160−N内(区別不要の場合は組織内ネットワーク160と総称)にはいくつかのローカルシステム100が存在している。個々のローカルシステム100は、組織内ネットワーク160に接続された処理装置110と1以上の作成端末102及び1以上の閲覧端末104を含む。なお、小規模な組織の場合のように、組織内ネットワーク160内に組織内管理システム150を設けず、その組織の処理装置110が中央の管理システム200により直接管理される場合もある。
図29のシステム構成では、管理システム200内に送信プロキシサーバ250が設けられる。送信プロキシサーバ250は、一対多送信の実行が指示された場合に、個々の送信先の処理装置110Rへの送信処理を、その一対多送信の指示を受けた送信側の処理装置110Sに代わって実行する。図29の例では、送信プロキシサーバ250は、管理システム200内のメタデータサーバ230と接続されているが、これはあくまで一例に過ぎない。
図29の例では、組織内ネットワーク160−1内のある作成端末102Sからあるユーザが処理装置110Sに対して一対多送信の指示を行ったものとする。この指示には、例えば他の組織内ネットワーク160−N内にある処理装置110R(受信側)に登録されたユーザを含む、閾値以上の送信先が指定されているものとする。
図30にこの例におけるシステム各部の処理の流れを示す。以下、この図に示した処理の流れを説明していく。
(1)送信者が組織内ネットワーク160−1内の作成端末102Sから処理装置110Sにログインし、その処理装置110Sに対してドキュメント送信を指示する。この指示において、送信者は、処理装置110Sに対して、送信対象のドキュメントと1以上の送信先ユーザを指定する。送信先ユーザの指定は、例えばユーザIDを入力又は選択することにより行えばよい。また送信者は、送信対象のドキュメント(すなわちeDoc)と共に送信する付箋に記すコメントを処理装置110Sに対して入力する。この例では、送信の指示において送信者が複数の送信先ユーザを指定する場合がある。作成端末102Sは、このようにして入力された送信先のユーザの情報、及び、送信対象のeDocを特定する情報を含んだ送信指示の情報を、処理装置110Sに渡す。以上に説明した送信指示のための処理は、送信先ユーザが複数になる場合があることを除き、図24〜図28の実施形態の場合と同様でよい。
送信指示を受けた処理装置110Sは、その送信指示に含まれる送信先ユーザの数が予め定められた閾値以上であるかどうかを判定する。この閾値は、その送信指示が、送信プロキシサーバ250が送信代行を行う「一対多」送信に該当するための最低限の送信先ユーザの数である。
図示は省略したが、指定された送信先ユーザの数がその閾値を下回る場合には、処理装置110Sは、その送信指示の処理の代行を送信プロキシサーバ250に依頼することはせず、図24〜図28の実施形態と同様の処理を行う。この場合、送信対象であるeDocは管理システム200側には送られず、処理装置110Sが自分の持つそのeDocを、送信先に対応する処理装置110Rに提供することとなる。
(2)これに対し、指定された送信先ユーザの数がその閾値以上である場合には、処理装置110Sは、送信者からの一対多送信の指示に対する処理の代行を、自分の上位にある組織内管理システム150を介して管理システム200(特にメタデータサーバ230)に依頼する。この依頼のために処理装置110Sが管理システム200に渡す情報には、送信対象のeDoc、送信先のリストが含まれる。また、このとき、図24〜図28の実施形態で説明した付箋メタデータ等、送信対象のeDocに対応付けられる他のデータも、管理システム200に渡してもよい。
(3)管理システム200(特にメタデータサーバ230)は、処理装置110Sから一対多送信の処理代行依頼を受けると、その処理代行のための準備処理を行う。この準備処理では、管理システム200は、その依頼の送信先のリストに含まれる各ユーザIDについて、そのユーザIDに対応する既定の処理装置IDを求める。すなわち、送信先の各ユーザが登録されている処理装置110を特定する。送信先ユーザの中には、送信者と同じ組織内ネットワーク160内の処理装置110に登録されたユーザがいる場合もあれば、送信者とは異なる組織内ネットワーク160内の処理装置110に登録されたユーザがいる場合もある。そして管理システム200は、求めた送信先ユーザのユーザIDと既定の処理装置IDとの対応関係の情報を、送信対象のeDocの識別情報(すなわちDID)に対応付けた一次管理情報を生成する。
また管理システム200は、一次管理情報に含まれる「既定の処理装置ID」に対応する処理装置110(以下、受信側の処理装置110Rと呼ぶ)のそれぞれについて、認証処理及びセキュリティ要件のチェックを行う。この処理は、図24のステップ(3)についての上述した処理(この処理については図28のセキュリティ要件チェックのフローも参照)と同様でよい。この認証及びセキュリティ要件チェックの処理により、送信先の各ユーザが登録されている処理装置110RがeDoc送信のための安全な中継ポイントとなることが確認される。管理システム200は、受信側の処理装置110Rのうち認証及びセキュリティ要件チェックの両方が成功したものを、送信対象のeDocの転送先として選択する。セキュリティ要件チェックが失敗した処理装置110Rであっても、リモートからの修正(図28のS504,S506参照)が可能であれば、その修正を実行し、eDocの転送先に選択する。また、管理システム200は、転送先に選択した処理装置110Rごとに、その処理装置110Rが備える、セキュリティ要件を満足する転送プロトコルを特定し、特定した転送プロトコルのうち1つ(例えばセキュリティの強度が最も高いもの)をその処理装置110RへのeDocの転送に用いるプロトコルとして選ぶ。
逆に受信側の処理装置110Rのうち認証又はセキュリティ要件チェックが失敗(後者についてはリモートからの修正処理が不可)したものについては、管理システム200は、それらをeDocの転送先には選ばず、それら処理装置110Rに対応する送信先ユーザについては、セキュアな送信が不可能である旨を示すエラーメッセージを、送信側の処理装置110Sを介して送信者の端末(例えば作成端末102S)に返す。
管理システム200は、一次管理情報のうち、eDocの転送先に選択した各処理装置110Rに関する部分の情報を抜き出して「送信管理情報」を生成する。生成される送信管理情報には、送信対象のeDocのDIDが含まれると共に、更に、転送先に選択された処理装置110Rごとに、その処理装置110Rの処理装置ID、この処理装置110Rに対応する送信先のユーザID、その処理装置110RへのeDocの転送に用いる転送プロトコルの識別情報、及び付箋メタデータが含まれる。
(4)管理システム200は、生成した送信管理情報と、送信対象のeDocとを送信プロキシサーバ250に渡し、一対多送信の実行を指示する。また管理システム200は、転送先に選んだ各処理装置110Rに対して、eDocの受信開始を指示する。この指示は、図28の処理手順のS508で行われる指示と同様のものである。ただし、この受信開始指示には、送信側の処理装置110Sの処理装置IDや通信アドレスの情報の代わりに、送信プロキシサーバ250のIDや通信アドレスの情報が含まれる。またその開始指示には、対象となるeDocのDIDが含まれる。また付箋メタデータが更に含まれていてもよい。また管理システム200は、送信対象のeDocを送信プロキシサーバ250に渡すと、管理システム200内にあるeDocを削除する。なお、この削除は、指示された一対多送信の全ての送信先に対応する処理装置110RへのeDocの送信が完了した時点に行うようにしてもよい。
(5)、(7)一対多送信の実行指示を受けた送信プロキシサーバ250は、eDoc受信開始指示を受け取った各処理装置110Rと協働して、その指示に付随する送信管理情報に従って一対多送信の処理を実行する。
すなわち、それら各処理装置110Rは、開始指示に含まれる情報を用いて、送信プロキシサーバ250に対してそのeDocの転送要求を送る。この転送要求を受け取った送信プロキシサーバ250は、その転送要求が正当なものであるかどうかをチェックし、正当なものであれば、その転送要求の対象であるeDocを、その転送要求の送信元の処理装置110Rに転送する。転送要求が正当なものであるかどうかをチェックは、図24の処理のステップ(5)における処理と同様に行えばよい。すなわち、例えば、その転送要求の対象のeDocのDIDとその転送要求の送信元の処理装置110RのIDが、送信プロキシサーバ250が保持している送信対象のeDocのDIDとこれに対応する送信管理情報に含まれる転送先の処理装置のIDとの組合せに合致しているかどうかを判定することで行えばよい。
送信プロキシサーバ250から転送されたeDocを受け取った処理装置110Rは、そのeDocを、そのeDocに対応する付箋メタデータに示される送信先のユーザのうち、当該処理装置110Rに登録されているユーザの端末に提供する。また、ユーザがその端末でそのeDocを閲覧すると、閲覧済みを示す情報がその端末から処理装置110Rに送られる。
(6)送信プロキシサーバ250は、1つの一対多送信指示について、上述した閾値以上の送信先に対応する多数の処理装置110RへeDocを送信するので、その一対多送信指示に対応するeDocの送信が全て完了するまでにはある程度の時間がかかる。そこで、送信プロキシサーバ250は、例えば、1つまたは所定数の処理装置110RへのeDocの送信処理が完了するごとに、又は、定期的に、管理システム200に対して、その一対多送信の進捗状況を示す経過通知を送る。この経過通知には、例えばeDocの送信が完了した処理装置110RのIDや、そのeDocを閲覧したユーザのID等が含まれる。また管理システム200は、その経過通知が示す情報を、そのeDocのメタデータ(MD)に反映させる。このときメタデータに反映させる情報には、例えば、各処理装置110Rに対してそのeDocの送信が完了した日時、その送信を行った装置(この場合は送信プロキシサーバ250)のID、各送信先ユーザによるそのeDocの閲覧の有無、閲覧した場合にはその閲覧の日時、等が含まれる。
(8)送信管理情報に示される全ての転送先の処理装置110RへのeDocの送信が完了すると、送信プロキシサーバ250は、完了通知を管理システム200に送る。完了通知には、そのeDocを閲覧したユーザのIDを含めてもよい。また管理システム200は、その経過情報が示す情報を、そのeDocのメタデータに反映させる。
また送信プロキシサーバ250は、一対多送信が完了したので、対象のeDocを送信プロキシサーバ250内から削除する。
(9)送信プロキシサーバ250から完了通知を受け取った管理システム200、その完了通知の対象である一対多送信指示の送信側の処理装置110Sに対して、その送信指示に対応する処理が完了したことを示す完了通知を送る。また、管理システム200は、その処理装置110Sとの間で、そのeDocのメタデータの内容を同期する。すなわち、送信されたeDocのメタデータの項目のうち、各送信先ユーザへの送信完了や各送信先ユーザの閲覧完了等についての情報は管理システム200が最新のものを持っているので、その最新の情報を処理装置110SにあるそのeDocのメタデータに反映する。
(10)完了通知を受けた処理装置110Sは、送信指示の入力元の作成端末102Sに対して、その指示に係る送信が完了した旨を通知する。
以上、図30を参照して、送信プロキシサーバ250を用いた一対多送信の実施形態を説明した。上述の通り、この実施形態では、送信先の数が多い場合に、実体的な送信処理を管理システム200内の送信プロキシサーバ250が代行するので、送信側の処理装置110Sが送信のために行う処理の負荷は少ない。
図29及び図30を参照して以上で説明した例では、一対多送信を送信プロキシサーバ250が代行するか否かを、指定されている送信先ユーザの数が閾値以上であるか否かで判定したが、これは一例に過ぎない。この代わりに、それら送信先ユーザが登録されている処理装置110R(すなわち送信先ユーザの「既定の処理装置」)の数が閾値以上であるか否かにより判定してもよい。複数の送信先ユーザが同一の処理装置110に登録されている場合、その処理装置110にeDocを1回送れば、その処理装置110がそのeDocをそれら複数の送信先ユーザに配信する仕組みとすることも考えられる。この仕組みの場合、送信側の処理装置110Sにとっての送信処理の負荷は、送信先ユーザの数ではなく、送信先の処理装置110Rの数に依存する。したがって、このような仕組みを用いる場合には、送信プロキシサーバ250による送信代行を行うかどうかを送信指示に係る送信先(すなわち受信側)の処理装置110Rの数で判定することが合理的である。
この場合、処理装置110は、自分が所属する組織の外部のユーザがどの処理装置110に登録されているのかは分からないことが一般的なので、送信プロキシサーバ250による送信代行を行うかどうかは管理システム200が判定してもよい。例えば、送信側の処理装置110Sは、ユーザから指定された送信先のリストを含む送信指示を管理システム200に送り、管理システム200がその送信先のリストに含まれるユーザが登録されている処理装置110を特定すると共にそれら特定した処理装置110の合計数を求める。そして、その合計数が閾値以上であれば、管理システム200は、処理装置110Sに送信対象のeDocを要求し、この要求に応じて提供されたeDocを、送信管理情報と共に送信プロキシサーバ250に渡し、これらの情報に基づき一対多送信を実行させる。なお、この送信管理情報には、上に例示したように、その送信先のリストに含まれるユーザが登録されている処理装置110Rのうち認証及びセキュリティ要件チェックの両方が成功した処理装置110Rの情報が含まれる。逆にその合計数が閾値未満であれば、管理システム200は、送信先のリストに含まれるユーザごとの登録先の処理装置110のID及び通信アドレスの情報を処理装置110Sに提供し、処理装置110Sはその情報を用いて図24〜図28の例と同様の方法でそれら各送信先へのeDocの送信を行う。
また、送信プロキシサーバ250による送信代行の可否を送信先ユーザの数に基づいて判定する場合でも、その判定を送信側の処理装置110Sではなく、管理システム200が実行してもよい。この場合、処理装置110Sはユーザから受け取った送信指示の情報を管理システム200に送り、管理システム200がその送信指示の情報に含まれる送信先ユーザの数に基づいて、送信プロキシサーバ250による代行の可否を判定する。
また、送信プロキシサーバ250による代行の可否を管理システム200が判定する方式の場合、処理装置110Sは、ユーザからの送信指示の情報を管理システム200に送ってその判定を依頼する際に、その送信指示の送信対象であるeDocを併せて管理システム200に送ってもよい。このようにすると、送信プロキシサーバ250に代行させるという判定結果が得られた場合に、管理システム200は既に受け取っているそのeDocをその送信指示に係る一対多送信の対象として送信プロキシサーバ250に渡せばよい。すなわち、送信プロキシサーバ250に代行させるという判定結果が得られた後に、管理システム200が処理装置110Sから送信対象のeDocを取得して送信プロキシサーバ250に渡すよりも、送信プロキシサーバ250による送信代行の開始が早くなる。一方、送信プロキシサーバ250に代行させない(すなわち処理装置110S自身が送信する)という判定結果が得られた場合には、管理システム200は、処理装置110Sに対して送信管理情報を渡し、その送信管理情報に従って送信先の各処理装置110Rに対してeDocを送信するよう指示する。この送信管理情報は、上述のように、その送信先のリストに含まれるユーザが登録されている処理装置110Rのうち認証及びセキュリティ要件チェックの両方が成功した処理装置110Rの情報が含まれる。
また、図30の例ではユーザの送信指示は作成端末102から入力されたが、閲覧端末104から入力することもあり得る。
また、図29の例では送信プロキシサーバ250を中央の管理システム200に設けたが、この代わりに、送信プロキシサーバ250を組織内管理システム150に設けてもよい。
以上に例示した作成端末102、閲覧端末104、処理装置110,110S及び110R、ローカルユーザIDサーバ152、ローカルDIDサーバ154、ローカルメタデータサーバ156、ユーザIDサーバ210、DIDサーバ220、メタデータサーバ230、処理装置管理サーバ240、送信プロキシサーバ250等の各装置は、コンピュータに上述のそれら各装置の機能を表すプログラムを実行させることにより実現される。ここで、コンピュータは、例えば、ハードウエアとして、CPU等のマイクロプロセッサ、ランダムアクセスメモリ(RAM)およびリードオンリメモリ(ROM)等のメモリ(一次記憶)、フラッシュメモリやSSD(ソリッドステートドライブ)、HDD(ハードディスクドライブ)や等の固定記憶装置を制御するコントローラ、各種I/O(入出力)インタフェース、ローカルエリアネットワークなどのネットワークとの接続のための制御を行うネットワークインタフェース等が、たとえばバス等を介して接続された回路構成を有する。それら各機能の処理内容が記述されたプログラムがネットワーク等の経由でフラッシュメモリ等の固定記憶装置に保存され、コンピュータにインストールされる。固定記憶装置に記憶されたプログラムがRAMに読み出されCPU等のマイクロプロセッサにより実行されることにより、上に例示した機能モジュール群が実現される。