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JP6899666B2 - 造影ctスキャン装置、造影ctスキャン装置の作動方法、及び造影ctスキャン像を得るための方法 - Google Patents

造影ctスキャン装置、造影ctスキャン装置の作動方法、及び造影ctスキャン像を得るための方法 Download PDF

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Description

本発明は、造影CTスキャン装置、造影CTスキャン装置の作動方法、及び造影CTスキャン像を得るための方法に関する。
被験者に造影剤を投与してCTスキャンを行うダイナミック造影CT(Dynamic Contrast−Enhanced Computed Tomography:DCE−CT)は、通常のCTスキャンと比較して、標的血管、標的臓器または標的疾患について、アーティファクトがより少ない、高いコントラストの造影画像を得ることができる。DCE−CTでは、造影剤を被験者に投与し、造影剤が標的血管、標的臓器または標的疾患に到達したときにCTスキャンを行うことにより、標的血管、標的臓器または標的疾患を精度よく観察することができる。この際、特に小さな病変を描出するために、適切な造影時相(Contrast Enhancement Phase:CEP)で病変対臓器コントラスト(Legion−to−Organ Contrast:LOC)を最大化することが重要である。
また、微細な主要栄養血管の描出や3DCT血管造影画像を生成するために、動脈対静脈コントラスト(Arterial−to−Venous Contrast:AVC)を最大化することが重要である。AVCは、造影剤の投与量及び投与速度が固定されている場合、スキャンタイミングに依存する。
しかし、DCE−CTにおける造影時相は、造影剤の投与について、同じ投与プロトコル及び投与後に同じスキャンタイミングでCTスキャンを行ったとしても、被験者の血行動態によって異なる。例えば、被験者が心不全を有する場合、造影剤の循環速度は低くなる。また、被験者の体格が大きいほど、造影剤が標的血管、標的臓器または標的疾患に到達する時間が長くなる。
様々な投与プロトコルにおいて、標的臓器または病変について、適切なCEPでCTスキャンを行うために推奨されるスキャンタイミングがこれまでに報告されている。しかし、造影剤の投与後、標的血管、標的臓器または標的疾患のCEPに合わせた所定のスキャンタイミングでCTスキャンを行う固定スキャンタイミング(Fixed Scan Timing:FST)法(非特許文献1)では、スキャンタイミングは経験的なものであり、前述のように、造影剤が投与されてから標的血管、標的臓器または標的疾患に到達する時間が被験者の血行動態によって異なるため、DCE−CTにおいて、CEPが常に最適となり、LOCまたはAVCが最大となるようにCTスキャンを行うことができない。例えば最適なタイミングに対して数秒から数十秒程度異なるタイミングでCTスキャンを行っても、標的血管、標的臓器または標的疾患以外の血管等の造影効果が大きくなり、最適な造影CTスキャン像を得ることができない。そこで、被験者の血行動態を考慮してDCE−CTにおけるCEPを最適化し、またはAVCを最大化するために、ボーラストラッキング法や試験投与法などのいくつかの方法がこれまで提案されている(非特許文献2)。
ボーラストラッキング法は、造影剤を被験者に投与した後、低線量で所定の間隔でCTスキャンを行うことにより、投与された造影剤を追跡し、標的血管、標的臓器または標的疾患に到達したタイミングで、必要な解像度が得られる線量でCTスキャンを行う技術である。従って、ボーラストラッキング法によれば、ある一定以上の造影効果で標的血管、標的臓器または標的疾患のDCE−CTスキャンを行うことが可能である。しかし、この方法では、放射線被曝量の増加、複雑なスキャンプロトコル及び放射線技師の技量が結果に影響するなどのいくつかの欠点を有する。さらに、動脈内の造影剤の到達タイミングは、ボーラストラッキング法によって観察可能であるが、動脈の真のピークまたは標的血管における実質臓器のコントラストの最大化を本方法では予測することができないため、本方法では、標的臓器における最大LOCを得ることができない。
試験投与法は、被験者に投与する造影剤の一部をまず投与して、標的血管、標的臓器または標的疾患における造影剤の時間濃度曲線(Time Density Curve:TDC)を試験スキャンで測定し、実際のDCE−CTスキャンにおける標的血管、標的臓器または標的疾患のTDCの定量予測を行う技術である。しかし、試験投与された造影剤は標的血管、標的臓器または標的疾患に残留したり、拡散したりするため、DCE−CTスキャン像に悪影響を及ぼす。また、試験スキャンにより、被験者の放射線被曝量が増加する。さらに、造影剤の注入量は実際のCTスキャンと試験スキャンとでは全く異なるため、造影剤の血中濃度が異なり、試験スキャンで予測されたTDCは常に実際のCTスキャンにおけるTDCと合致するとは限らない。
Bae KT, Heiken JP, Brink JA., "Aortic and hepatic contrast medium enhancement at CT Part I, Prediction with a computer model", Radiology, 1998; 207(3): 647-55 Henzler T, Meyer M, Reichert M, et al., "Dual-energy CT angiography of the lungs: Comparison of test bolus and bolus tracking techniques for the determination of scan delay", European Journal of Radiology, 2012; 81: 132-138 Hallett RL1, Fleischmann D., "Tools of the trade for CTA: MDCT scanners and contrast medium injection protocols", Tech. Vasc. Interv. Radiol. 2006; 9(4): 134-42 Aurigemma GP, Gaasch WH, "Clinical practice: Diastolic heart failure", N. Engl. J. Med. 2004; 351: 1097-1105 Zhu Y, Xu H, Zhu X, et al., "Which can predict left ventricular size and systolic function: cardiothoracic ratio or transverse cardiac diameter", J. Xray Sci. Technol., 2015; 23(5): 557-65 Echt M, Duweling J, Ganer OH, et al., "Effective compliance of the total vascular bed and the intrathoracic compartment derived from changes in central venous pressure induced by volume changes in man", Circulation Research, 1974; 34: 61-68 Cheriex EC, Leunissen KM, Janssen JH, et al., "Echography of the inferior vena cava is a simple and reliable tool for estimation of ‘dry weight’ in haemodialysis patients", Nephrol. Dial. Transplant., 1989; 4: 563-568 Kent A, Bahner DP, Boulger CT, et al., "Sonographic evaluation of intravascular volume status in the surgical intensive care unit: A prospective comparison of subcla-vian vein and inferior vena cava collapsibility index", J. Surf. Res., 2013; 184: 561-566 Figueras J, Weil MH, "Blood volume prior to and following treatment of acute cardiogenic pulmonary edema", Circulation 1978; 57: 349-355 Duvekot JJ, Cheriex EC, Tan WD, et al., "Measurement of anterior-posterior diameter of inferior vena cava by ultrasonography: A new non-invasive method to assess acute changes in vascular filling state", Cardiovasc. Res., 1994; 28: 1269-1272 Iijima T1, Ueyama H, Oi Y, et al., "Determination of the standard value of circulating blood volume during anesthesia using pulse dye-densitometry: a multicenter study in Japan", J. Anesth., 2005; 19(3): 193-8 Fleischmann D, Hittmair K, "Mathematical analysis of arterial enhancement and optimization of bolus geometry for CT angiography using the discrete Fourier transform", J. Comput. Assist. Tomogr., 1999; 23(3): 474-84 Fleischmann D, Rubin GD, Bankier AA, et al., "Improved uniformity of aortic enhancement with customized contrast medium injection protocols at CT angiography", Radiology, 2000; 214(2): 363-71 Yamashita Y, Komohara Y, Takahashi M, et al., "Abdominal CT: evaluation of optimal doses of intravenous contrast material − a prospective randomized study", Radiology, 2000; 216: 718-723 Bae KT, "Peak contrast enhancement in CT and MR angiography: when does it occur and why: Pharmacokinetic study in a porcine model", Radiology, 2003; 227: 809-816 Yamada A, et al., "8110 − Quantitative prediction of contrast enhancement phases in abdominal dynamic contrast-enhanced CT using morphologic prediction factors on pre-contrast", CT. ECR, 2017
追加的な放射線の被曝及び造影剤の追加的投与なく被験者の血行動態を推測することは、適切なCEPでより良好なDCE−CT画像を得るために重要な課題である。
その一方、患者の血行動態は、心機能障害の指標としての心拡大や、患者の循環血液量の指標としての下大静脈の寸法など、画像化における形態学的特徴に反映されうる。従って、DCE−CTにおけるCEPは、患者の血行動態の指標として、造影前CTで観察されたこれらの形態学的変化、いわゆる形態学的予測因子(Morphologic Prediction Factor:MPF)を利用して定量的に予測可能であると考えられる。
本発明は、被験者の血行動態及び造影時相についての定量的指標として造影前CTから得られた形態学的予測因子(MPF)及びダイナミック時相指数(DPI)を用いた、DCE−CTにおけるCEPの定量的予測の可能性を示し、血管のCTスキャン像の取得において、固定スキャンタイミング(FST)法と比較して、修正スキャンタイミング(MST)法がDCE−CTの最良のスキャンタイミングの定量的かつ汎用的予測が可能であることを示し、改善されたコントラストを有するCTスキャン像を取得することができる造影CTスキャン装置、造影CTスキャン装置の作動方法、及び造影CTスキャン像を得るための方法を提供することである。
本発明に係るCTスキャン装置は、CTスキャン撮像ユニットと、制御ユニットと、を含み、制御ユニットが、被験者の基本的情報及び標的血管、標的臓器または標的疾患のダイナミック時相指数を受け取るように構成され、CTスキャン撮像ユニットが、被験者の第1のCTスキャンを実行するように構成され、制御ユニットが、CTスキャン撮像ユニットから第1のCTスキャン像を受信するように構成され、制御ユニットが、第1のCTスキャン像から、被験者の少なくとも1つの形態学的予測因子を測定するように構成され、制御ユニットが、被験者の基本情報、ダイナミック時相指数、及び形態学的予測因子に基づいて、造影剤投与の開始から第2回目以降のCTスキャンを行うまでの時間を、修正スキャンタイミングとして決定するように構成され、CTスキャン撮像ユニットが、造影剤の投与の開始から修正スキャンタイミングが経過したときに第2回目以降のCTスキャンを実行するように構成され、制御ユニットが、CTスキャン撮像ユニットから第2回目以降のCTスキャン像を受信するように構成される。
本発明のCTスキャン装置が、造影剤投与ユニットをさらに含み、造影剤投与ユニットが、制御ユニットの命令により、被験者に造影剤を投与するように構成される。
本発明のCTスキャン装置において、被験者の基本的情報が、性別、年齢、身長及び体重のうち少なくとも1つを含む。
本発明のCTスキャン装置において、形態学的予測因子が、下行大動脈の面積及び下大静脈の短軸径のうち少なくとも1つを含む。
本発明のCTスキャン装置において、形態学的予測因子が、腰椎長、胸郭横断径、心胸郭比、大動脈長、上行及び下行大動脈の面積、腹部大動脈の面積、下大静脈の長軸径並びに下大静脈の短軸径のうち少なくとも1つを含む。
本発明のCTスキャン装置において、修正スキャンタイミングが、ダイナミック時相指数、被験者の基本情報及び形態学的予測因子の少なくとも1つを説明変数として、統計解析及びもしくは非線形機械学習により決定された方程式または非線形モデルから得られる。
本発明のCTスキャン装置において、修正スキャンタイミングを求めるための方程式が、ダイナミック時相指数、被験者の基本情報及び形態学的予測因子の少なくとも1つからなる線形方程式または非線形モデルである。
本発明のCTスキャン装置において、修正スキャンタイミングを求めるための方程式が、対象とする被験者の母集団に応じて統計解析を行う被験者のサンプルを選択して係数を最適化したものである。
本発明のCTスキャン装置において、修正スキャンタイミングが下記の方程式、
修正スキャンタイミング[秒]=12.4×(ダイナミック時相指数)−45.6+1.74×(性別(男=1、女=0))−0.10×(腰椎長[mm])+0.19×(胸郭横断径[mm])+0.36×(心胸郭比)+0.01×(下行大動脈の面積[mm])−0.001×(下大静脈の長軸径[mm])+0.26×(下大静脈の短軸径[mm])から得られる。
本発明に係る、CTスキャン撮像ユニットと、造影剤投与ユニットと、制御ユニットと、を含むCTスキャン装置の作動方法は、制御ユニットが被験者の基本的情報及び標的血管、標的臓器または標的疾患のダイナミック時相指数を受け取る段階と、制御ユニットが、CTスキャン撮像ユニットに、被験者の第1のCTスキャンを実行させる命令を送信する段階と、制御ユニットが、CTスキャン撮像ユニットから第1のCTスキャン像を受信する段階と、制御ユニットが、第1のCTスキャン像から、被験者の少なくとも1つの形態学的予測因子を測定する段階と、制御ユニットが、被験者の基本情報、ダイナミック時相指数、及び形態学的予測因子に基づいて、造影剤投与の開始から第2回目以降のCTスキャンを行うまでの時間を、修正スキャンタイミングとして決定する段階と、制御ユニットが、造影剤投与ユニットに、造影剤の投与を開始させる命令を送信する段階と、制御ユニットが、CTスキャン撮像ユニットに、造影剤投与の開始から、修正スキャンタイミングが経過したときに第2回目以降のCTスキャンを実行させる命令を送信する段階と、制御ユニットが、CTスキャン撮像ユニットから第2回目以降のCTスキャン像を受信する段階と、を含む。
本発明に係る方法において、被験者の基本的情報が、性別、年齢、身長及び体重のうち少なくとも1つを含む。
本発明に係る方法において、形態学的予測因子が、下行大動脈の面積及び下大静脈の短軸径のうち少なくとも1つを含む。
本発明に係る方法において、形態学的予測因子が、腰椎長、胸郭横断径、心胸郭比、大動脈長、上行及び下行大動脈の面積、腹部大動脈の面積、下大静脈の長軸径並びに下大静脈の短軸径のうち少なくとも1つを含む。
本発明に係る方法において、修正スキャンタイミングが、ダイナミック時相指数、被験者の基本的情報及び形態学的予測因子の少なくとも1つを説明変数として、統計解析及びもしくは非線形機械学習により決定された方程式または非線形モデルから得られる。
本発明に係る方法において、修正スキャンタイミングを求めるための方程式が、ダイナミック時相指数、被験者の基本的情報及び形態学的予測因子の少なくとも1つからなる線形方程式または非線形モデルである。
本発明に係る方法において、修正スキャンタイミングを求めるための方程式が、対象とする被験者の母集団に応じて統計解析を行う被験者のサンプルを選択して係数を最適化したものである。
本発明に係る方法において、修正スキャンタイミングが下記の方程式、
修正スキャンタイミング[秒]=12.4×(ダイナミック時相指数)−45.6+1.74×(性別(男=1、女=0))−0.10×(腰椎長[mm])+0.19×(胸郭横断径[mm])+0.36×(心胸郭比)+0.01×(下行大動脈の面積[mm])−0.001×(下大静脈の長軸径[mm])+0.26×(下大静脈の短軸径[mm])から得られる。
本発明に係る造影CTスキャン像を得るための方法は、造影剤投与前に、被験者に対して第1のCTスキャンを行う段階と、第1のCTスキャンにおいて得られたCTスキャン像から、被験者の少なくとも1つの形態学的予測因子を測定する段階と、形態学的予測因子、被験者の基本的情報及び標的血管、標的臓器または標的疾患について予め決定されたダイナミック時相指数に基づいて、造影剤投与の開始から第2回目以降のCTスキャンを行うまでの時間を、修正スキャンタイミングとして決定する段階と、造影剤を被験者に投与し、造影剤の投与開始から修正スキャンタイミングが経過したときに第2回目以降のCTスキャンを行う段階と、を含む。
本発明に係る方法において、被験者の基本的情報が、性別、年齢、身長及び体重のうち少なくとも1つを含む。
本発明に係る方法において、形態学的予測因子が、下行大動脈の面積及び下大静脈の短軸径のうち少なくとも1つを含む。
本発明に係る方法において、形態学的予測因子が、腰椎長、胸郭横断径、心胸郭比、大動脈長、上行及び下行大動脈の面積、腹部大動脈の面積、下大静脈の長軸径並びに下大静脈の短軸径のうち少なくとも1つを含む。
本発明に係る方法において、修正スキャンタイミングが、ダイナミック時相指数、被験者の基本的情報及び形態学的予測因子の少なくとも1つを説明変数として、統計解析及びもしくは非線形機械学習により決定された方程式または非線形モデルから得られる。
本発明に係る方法において、修正スキャンタイミングを求めるための方程式が、ダイナミック時相指数、被験者の基本的情報及び形態学的予測因子の少なくとも1つからなる線形方程式または非線形モデルである。
本発明に係る方法において、修正スキャンタイミングを求めるための方程式が、対象とする被験者の母集団に応じて統計解析を行う被験者のサンプルを選択して係数を最適化したものである。
修正スキャンタイミングが下記の方程式、
修正スキャンタイミング[秒]=12.4×(ダイナミック時相指数)−45.6+1.74×(性別(男=1、女=0))−0.10×(腰椎長[mm])+0.19×(胸郭横断径[mm])+0.36×(心胸郭比)+0.01×(下行大動脈の面積[mm])−0.001×(下大静脈の長軸径[mm])+0.26×(下大静脈の短軸径[mm])から得られる。
本発明によれば、造影前CTスキャンで観察されたMPFから得られた修正スキャンタイミング(MTF)を適用して造影CTスキャンを行うことにより、適切なCEPで改善されたコントラストを有する良好なDCE−CT画像を取得することができる造影CTスキャン装置、造影CTスキャン装置の作動方法、及び造影CTスキャン像を得るための方法を提供することができる。
造影前CTスキャンで測定した形態学的予測因子(MPF)の例を示すCTスキャン像である。 DPIの算出に用いる標的血管の関心領域の例を示すCTスキャン像である。 造影剤投与後の経過時間(スキャンタイム)と、観察されたダイナミック時相指数(DPI)との関係を表す散布図である。 回帰モデルによってシミュレートされたDPIと観察されたDPIとの関係を表す散布図である。 右腎静脈における時間とDPIと動脈対静脈コントラスト(AVC)との関係を表す散布図である。 門脈における時間とDPIとAVCとの関係を表す散布図である。 上腸間膜静脈における時間とDPIとAVCとの関係を表す散布図である。 固定スキャンタイミング(FST)法と修正スキャンタイミング(MST)法とを比較した、右腎静脈におけるAVCのブランド−アルトマンプロットである。 FST法とMST法とを比較した、門脈におけるAVCのブランド−アルトマンプロットである。 FST法とMST法とを比較した、上腸間膜静脈におけるAVCのブランド−アルトマンプロットである。
本発明に係る、ダイナミック造影CT(DCE−CT)による造影CTスキャン像を得るための方法について説明する。
まず、造影CTスキャンを行う被験者の形態学的予測因子(MPF)を測定するために、被験者に造影剤を投与せずに、CTスキャン撮像ユニットを用いて造影前CTスキャンを行う。図1は、造影前CTスキャンを行って得られた像を、MPFの測定例とともに示している。MPFは、図1に白色の矢印及び円で視覚的に示している。MPFの例として、図1aは、腰椎長を、図1bは胸郭横断径を、図1cは心胸郭比(C/T)を、図1dは下行大動脈の面積を、図1eは下大静脈の長軸径を、図1fは下大静脈の短軸径を、それぞれ示す。しかし、MPFはこれらに限定されるものではなく、被験者の血行動態に影響を及ぼしうる体の様々な器官の寸法、例えば大静脈長、上行大動脈の面積及び腹部大動脈の面積を含みうる。
下行大動脈の面積は、例えば心最大横断面と同じ断面で測定されうる。下大静脈の長軸径及び短軸径は、例えば左右腎静脈流入部と肝部下大静脈との間で測定されうる。上行大動脈及び腹部大動脈の面積は、例えばその最大横断面において測定されうる。
これらのMPFは、造影前CTスキャン像をビューアに表示し、放射線技師または医師が測定箇所を決定して測定を行うことができる。また、CTスキャン撮像ユニットに接続されたコンピュータなどの制御ユニットが造影前CTスキャン像を受信して、画像処理技術を用いて自動的にMPFを測定することも可能である。
次に、標的血管、標的臓器または標的疾患のダイナミック時相指数(DPI)を選択する。DPIは、造影CTスキャンにおいて、標的血管、標的臓器または標的疾患の造影時相についての定量的指標である。被験者に造影剤を投与すると、造影剤は、投与位置から血流によって循環される。従って、標的血管、標的臓器または標的疾患への造影剤の到達時間は、投与位置に近いほど短くなる。そのため、DPIは血管または臓器ごとに固有の値を有し、例えば右腎静脈を標的血管として造影CTスキャンを行う場合、右腎静脈に対応する、あらかじめ求められたDPIを選択する。
図2に、DPI算出に用いる標的血管のCTスキャン像の例を示す。図2のCTスキャン像において、標的血管の関心領域を矢印で指した白い円形のマーカーで示した。図2aは左心房を、図2bは腹部大動脈を、図2cは右腎静脈を、図2dは上腸間膜静脈を、図2eは下大静脈を、図2fは門脈を、それぞれ示している。
各スキャンタイミングにおける標的血管の造影効果を、左心房(CLA(t))、腹部大動脈(CAAO(t))、右腎静脈(CRRV(t))、上腸間膜静脈(CSMV(t))、下大静脈(CIVC(t))及び門脈(CPV(t))とすると、各スキャンタイミングtにおけるDPIは、以下の方程式を用いて、DCE−CTにおける標的血管内の造影効果から計算することができる。
DPI(t)={CLA(t)+CAAO(t)+CRRV(t)+CSMV(t)+CIVC(t)}/Cmax(t)
標的血管、標的臓器または標的疾患におけるDPIは、各標的血管等におけるコントラストが最大となる経過時間tにおけるDPI(t)の値であり、標的血管、標的臓器、標的疾患ごとに任意に設定されうる。推奨される標的血管、標的臓器、標的疾患ごとのDPIは、事前に十分な数の母集団から得た多時相造影CTデータにより別途決定される。
次に、被験者のMPF、性別、年齢、身長及び体重等の基本的情報、標的血管、標的臓器または標的疾患のDPIの少なくとも1つに基づいて、修正スキャンタイミング(MST)を決定する。MSTは、造影剤の投与開始から、造影CTスキャンを行うまでの時間であり、被験者のMPF、性別、年齢、身長及び体重等の基本的情報並びに標的血管、標的臓器または標的疾患のDPI(説明変数)が考慮された値である。従って、MSTを用いることで、血行動態が被験者ごとに異なっても、常に最適なタイミングで標的血管、標的臓器または標的疾患の造影CTスキャンを行うことができる。
上述の説明変数からMSTを決定する方法は、種々のものが考えられるが、例えば、上述の説明変数から回帰分析などの統計解析及び人工ニューラルネットワークなどの非線形機械学習により決定された方程式とすることができ、例えば、回帰分析を行って得られた説明変数の少なくとも1つを含む線形方程式、例えば線形1次方程式とすることができる。また、MSTを決定する方程式は、人工ニューラルネットワークなどで表される非線形モデルから得ることもできる。MSTの決定に用いるMPFのうち、特に下行大動脈の面積及び下大静脈の短軸径の寄与が大きいため、MSTを決定する方程式は、下行大動脈の面積及び下大静脈の短軸径のみを説明変数とした線形1次方程式としてもよい。好適には、MSTは、以下の方程式に説明変数を代入して得ることができる。
MST[秒]=
12.4×DPI
−45.6
+1.74×(性別(男=1、女=0))
−0.10×(腰椎長[mm])
+0.19×(胸郭横断径[mm])
+0.36×(心胸郭比)
+0.01×(下行大動脈の面積[mm])
−0.001×(下大静脈の長軸径[mm])
+0.26×(下大静脈の短軸径[mm])
MSTは、例えば予め被験者の基本的情報及び標的血管、標的臓器または標的疾患のDPIが入力された制御ユニットが計算して求めることができる。また、対象とする被験者の母集団(国、地域、人種)に応じて回帰分析などの統計解析を行うサンプルを選択することにより、方程式の係数を最適化することができ、より精度の高い修正スキャンタイミングを得ることが可能である。
次に、被験者に造影剤を投与する。造影剤は、CTスキャンにおいて大きな造影効果を得ることができるように、X線に対する吸収係数の大きな元素、例えばヨウ素を含むことができる。造影剤は、被験者に予め取り付けられたカニューレ等を介して、例えば被験者の正中肘静脈に経静脈投与することができる。精度よく造影剤を被験者に投与することができるように、例えばポンプを有する造影剤投与ユニットを用いて、1秒間に3mLの投与速度で100mLの造影剤を投与することができる。造影剤の投与開始のタイミング及び投与速度は、造影剤投与ユニットに接続された制御ユニットを用いて、適切に制御することができる。
次に、造影剤の投与開始から前述のMSTが経過したときに、CTスキャン撮像ユニットによって、被験者の造影CTスキャンを行う。これにより、標的血管、標的臓器または標的疾患に最も適したタイミングで、造影CTスキャンを行うことができる。造影CTスキャンを複数回行う場合、造影CTスキャンを行うたびに造影前CTスキャンを事前に行ってMSTを求めるのではなく、1回の造影前CTスキャンで得られたMSTを繰り返し適用して複数回の造影CTスキャンを行うことも可能である。造影CTスキャンは、作業者が開始命令を入力してもよい。しかし、より精度よく造影CTスキャン像を得ようとする場合、造影剤投与ユニットによる造影剤の投与開始からMSTが経過したときに、制御ユニットがCTスキャン撮像ユニットに造影CTスキャンを行う命令を送信してもよい。
このような方法により、被験者の血行動態の違いに関わらず、最適なタイミングで標的血管、標的臓器または標的疾患の造影CTスキャン像を得ることができる。
このような造影CTスキャン像を得るための造影CTスキャン装置は、例えば、制御ユニットと、CTスキャン撮像ユニットとを含むものとすることができる。制御ユニットは、CTスキャン撮像ユニットに、被験者の造影前CTスキャンを実行する命令を送信し、CTスキャン撮像ユニットからのCTスキャン像を受信する。次いで、制御ユニットは、CTスキャン像からMPFを測定する。MPFの測定は、作業者が制御ユニットを制御して行ってもよいし、画像処理技術を用いて、制御ユニットが自動的にCTスキャン像からMPFを測定してもよい。次いで、制御ユニットは、あらかじめ入力された被験者の基本的情報及び標的血管、標的臓器または標的疾患のDPI、並びにMPFから、例えば前述の方程式に基づいてMSTを決定する。次いで、制御ユニットは、被験者への造影剤の投与開始からMSTが経過したときに、CTスキャン撮像ユニットに造影CTスキャンを実行する命令を送信し、得られたCTスキャン像を受信する。
造影CTスキャン装置はさらに、制御ユニットの制御により、所定の投与速度で被験者に造影剤を投与することができる造影剤投与ユニットを含むものとしてもよい。この場合、制御ユニットが造影剤投与ユニットに造影剤の投与開始命令を送信し、MSTが経過したときにCTスキャン撮像ユニットに造影CTスキャンを実行する命令を送信することができるため、精度よく最適なタイミングで造影CTスキャンを行うことができる。
次に、被験者のMPF及び基本的情報並びにDPIからMSTを決定した方法について説明する。
被験者のMPF及び基本的情報並びにDPIとMSTとの間の相関関係を決定するために、外科手術前の術前検査として、上腹部多時相造影CTを行った60人の被験者(平均年齢67.3歳、男女比=31:29)について、遡及的研究を行った。
64列MDCT(米国ミシガン州GE社のLight Speed VCT)を用いて、呼吸停止下において、正中肘静脈に留置された22G静脈カニューレを介して、造影剤を経静脈的投与(1秒間に3mLの一定速度で約33秒、全投与量100mL)を行った。造影剤投与前、及び経静脈的投与開始から22、28、34、40、46、52及び58秒経過後に、被験者についてCTスキャンを行った。CTデータは、厚さ2.5mmのスライスで、軸位断方向に画像再構成した。
造影剤は、特に制限はされないが、例えば、ヨード造影剤である、イオヘキソール、イオパミドール、イオキシラン、イオプロミド、イオトロラン、イオジキサノール、イオペントール、イオベルソール、イオメプロール、イオビトリドール、アミドトリゾエート、メトリゾエート、イオキサグレート、オヨビイオキシタラメートからなる群から選択されうる。造影剤の単位容量は、特に制限はされないが、例えば、約80mLから約150mLの容量でありうる。造影剤の単位ヨード濃度は、特に制限はされないが、例えば、例えば、240mgIから370mgIでありうる。
CTスキャン装置は、前述の装置のほかに、特に制限はされないが、例えば、東芝メディカルシステム株式会社製のAquilion One(登録商標)、GEヘルスケア・ジャパン株式会社製のRevolution CT、シーメンスヘルスケア株式会社製のSOMATON Definition、株式会社フィリップス エレクトロニクス ジャパン製のIngenuity、株式会社日立メディコ製のSCENARIA等が使用されうる。
造影剤投与装置は、特に制限されないが、例えば、株式会社根本杏林堂製のDUAL SHOT GX 7、バイエル薬品株式会社製のStellant等が使用されうる。
各スキャンタイミングにおける標的血管の造影効果(左心房(CLA(t))、腹部大動脈(CAAO(t))、右腎静脈(CRRV(t))、上腸間膜静脈(CSMV(t))、下大静脈(CIVC(t))及び門脈(CPV(t)))を、DCE−CT画像から、DICOMビューア上で、2人の放射線医師によって設定された関心領域から得た。図2のCTスキャン像において、標的血管の関心領域を白い円形のマーカーで示した。図2aは左心房を、図2bは腹部大動脈を、図2cは右腎静脈を、図2dは上腸間膜静脈を、図2eは下大静脈を、図2fは門脈を、それぞれ示している。
各スキャンタイミングtにおけるDPIを、以下の方程式を用いて、DCE−CTにおける標的血管内の造影効果から計算した。
DPI(t)={CLA(t)+CAAO(t)+CRRV(t)+CSMV(t)+CIVC(t)}/Cmax(t)
図3Aは、このようにして得られたDPIとスキャンタイミングとの間の関係をプロットした散布図である。DPIが大きいほど、造影剤の投与位置から遠く、造影剤の到達に時間がかかるため、DPIは、スキャンタイミングと線形的な相関(r=0.86)を有することが分かる。被験者の血行動態が全く同じであれば、スキャンタイミングとDPIは一対一の関係を示すため、同一のスキャンタイミングではDPIはほぼ同じとなり、固定スキャンタイミング(FST)法であっても十分精度よく最適なスキャンタイミングで標的血管、標的臓器または標的疾患について造影CTスキャンを行うことができる。しかし、実際には図3Aに示すように、同じスキャンタイミングであっても、DPIは大きく異なる。これは、被験者の血行動態がそれぞれ異なり、造影剤の循環に影響を与えたためである。
次に、各被験者について、腰椎長、胸郭横断径、心胸郭比、下行大動脈の面積、下大静脈の長軸径及び短軸径をMPFとして、各被験者について造影前CTスキャンで測定した。
次に、スキャンタイミング、性別、年齢、身長及び体重のような被験者の基本的情報、並びにMPFを含む様々な説明変数を用いて、DPIについて段階的回帰分析を行った。回帰分析においては、P値が0.05未満である場合には、統計的に有意であるとして考慮した。全ての統計的分析は、MATLABソフトウェア(米国 Mathworks社、2016)を使用して行った。
回帰分析の結果、スキャンタイミング(r=0.733、P<0.001)、下行大動脈の面積(P<0.001)、胸郭横断径(P<0.001)、下大静脈の短軸径(P<0.001)、腰椎長(P<0.001)、下大動脈の長軸径(P=0.03)及び性別(P=0.03)のパラメータが、DPIについて統計的に有意な説明因子であることが明らかになった。
回帰分析から得られたDPIについての最終的な回帰方程式は以下の通りであった。
DPI=
0.081×(スキャンタイミング[秒])
−0.141×(性別(男=1、女=0))
+0.008×(腰椎長[mm])
−0.015×(胸郭横断径[mm])
−0.029×(心胸郭比)
−0.001×(下行大動脈の面積[mm])
+0.012×(下大静脈の長軸径[mm])
−0.021×(下大静脈の短軸径[mm])
+3.69
最終的な回帰方程式の決定係数(R)は0.873であった。図3Bに、上記回帰方程式からシミュレートされたDPIを横軸に、実際に観察されたDPIを縦軸にとってプロットした散布図を示す。観察されたDPIは、スキャンタイミング及び様々な形態学的予測因子(r=0.93)を含む回帰モデルによってシミュレートされたDPIと線形的な相関関係を示した。図3Aと比較すると明らかなように、図3Bの結果は、DPIとスキャンタイミングのみとの相関関係よりも明らかに高いことを示している。
この結果から、スキャンタイミングだけでなく、被験者の基本的情報及び造影前CTスキャン像から得られたMPFも、DCE−CTにおけるDPIについての顕著な予測因子となりうることが明らかになった。従って、上記の方程式によって、DPIから被験者ごとに異なる血行動態の影響を排除し、DCE−CTにおいて、DPIを、最適なCEPを得るための定量的指標とすることができることが分かった。
回帰分析の結果から、様々なMPFのうち、胸郭横断径、心胸郭比、下行大動脈の面積、下大静脈の短軸径、及び性別がDPIに対して負の相関を示した。この結果は、これらのMPFが、患者内の血液循環を遅くする因子として相関を有する可能性があることを意味する。心駆出率の低下または循環血液量の増加は、CTスキャンにおけるこれらの形態学的変化に寄与しうる。一方、腰椎長及び下大静脈の長軸径は、DPIに対して弱い正の相関を示した。この結果は、これらのMPFが患者の血液循環を速くする因子として相関を有する可能性があることを意味する。
一方、DPIは、前述のように標的血管、標的臓器または標的疾患について、既知の固有の値を有する。従って、上述のDPIについての回帰方程式を変形してスキャンタイミングを左辺に移項し、標的血管、標的臓器または標的疾患についてDPIを得ることができるスキャンタイミングを修正スキャンタイミング(MST)と定義すると、次の方程式が得られる。
MST[秒]=
12.4×DPI
−45.6
+1.74×(性別(男=1、女=0))
−0.10×(腰椎長[mm])
+0.19×(胸郭横断径[mm])
+0.36×(心胸郭比)
+0.01×(下行大動脈の面積[mm])
−0.001×(下大静脈の長軸径[mm])
+0.26×(下大静脈の短軸径[mm])
この方程式に、被験者のMPF及び基本的情報並びに標的血管、標的臓器または標的疾患についての所定のDPIを代入することで、MSTを決定することができる。
次に、全ての被験者について、右腎静脈、上腸間膜静脈、及び門脈などの各標的血管における動脈対静脈コントラスト(AVC)を最大化するスキャンタイミング(ST)及びDPIの平均値を、STmax及びDPImaxとして計算した。これらの平均値(STmax及びDPImax)を使用して、標的血管内のAVCを2つの方法でシミュレートした。1つは、特定のDPI(DPImax)及び各被験者のMPFからMSTを決定する上述の方程式を利用してスキャンタイミングを決定する、修正スキャンタイミング(MST)法である。もう1つは、STmaxを用いた固定スキャンタイミング(FST)法である。観察されたデータ間を線形補完した時間濃度曲線を、シミュレーションにおいて使用した。
FST法とMST法との比較において、シミュレートされたAVCの平均値の違いを、t検定を用いて統計的に分析した。その際、P値が0.05未満である場合、統計的に有意であるとして考慮した。全ての数学的計算及び統計分析は、MATLABソフトウェア(米国 Mathworks社、2016)を使用して行った。
造影剤の投与開始後、被験者の標的血管におけるAVCが最大となるスキャンタイミングの平均値STmaxは、右腎静脈では25.6秒であり、門脈では27.8秒であり、上腸間膜静脈では29.3秒であった。被験者の標的血管のAVCが最大となるDPIの平均値DPImaxは、右腎静脈では1.4であり、門脈では1.6であり、上腸間膜静脈では1.7であった。
図4Aは、右腎静脈を標的血管とした場合の時間−DPI−AVC曲線である。図4Bは、門脈を標的血管とした場合の時間−DPI−AVC曲線である。図4Cは、上腸間膜静脈を標的血管とした場合の時間−DPI−AVC曲線である。CTスキャンを行ったスキャンタイミングごとに異なるマーカーで、DPIとAVCとの関係を散布図にプロットした。スキャンタイミング及び標的血管が同じであっても、被験者の血行動態によりAVCが変動するため、時間−AVCデータのピークは不明瞭であった。DPI−AVCの鋭いピークは、それぞれ右腎静脈(図4A)、門脈(図4B)、及び上腸間膜静脈(図4C)のDPImaxの周囲で見られた。
FST法及びMST法による、シミュレートされた標的血管内の平均値及び標準偏差はそれぞれ、右腎静脈において181±59.1HU及び201±77.1HU(P=0.002)、門脈において220±65.5HU及び232±71.9HU(P=0.029)、上腸間膜静脈において244±70.4HU及び254±71.5HU(P=0.009)であった。HUはHounsfield Unitの略であり、X線吸収係数である。
シミュレートされた、標的血管におけるAVCは、MST法ではFST法と比較して顕著に高かった。FST法とMST法とを比較した、右腎静脈におけるAVCのブランド−アルトマンプロットを図5Aに、門脈におけるAVCのブランド−アルトマンプロットを図5Bに、上腸間膜静脈におけるAVCのブランド−アルトマンプロットを図5Cに、それぞれ示す。HUはHounsfield Unitの略であり、X線吸収係数である。
図5Aから5Cは、MST法によるAVCの値であるAVCmstと、FST法によるAVCの値であるAVCfstとの差を縦軸にプロットし、AVCmstとAVCfstの平均値を横軸にプロットした。右腎静脈(図5A)、門脈(図5B)及び上腸間膜静脈(図5C)で、FST法によるAVCよりもMST法によるAVCの方が高いという固定バイアスが見られた。
以上の結果から、MST法はFST法と比較して、DCE−CTにおける標的血管のAVCを向上させることができることが明らかになった。様々な標的血管、標的臓器または標的疾患において、様々な投与プロトコルの下で、より良好なAVC及びLOCまたはより良好なコントラストを得るために推奨されるいくつかのFSTが報告されている。しかし、これらのスキャンタイミングは、被験者の集団内の最良のスキャンタイミングとなりうるが、個々の被験者の血行動態はFST法では考慮されていないため、個々の被験者については、必ずしもFST法によるスキャンタイミングが最良になるとは限らない。FST法で用いられるFSTが、ある集団内で決定されたとしても、MST法は、DCE−CTにおける最良のスキャンタイミングの予測において、FST法よりも有利である。従って、造影前CTにおけるMPFを用いた被験者の血行動態の推定が、MST法による高いAVCを有する、より良好な血管画像を得るための最良のスキャンタイミングの予測に有効であり、有用であると結論付けることができる。
実施形態において、被験者の血行動態の指標として、造影前CTによって得られるMPFを用いることができることを示した。超音波検査法や核医学検査においても、被験者の血行動態の正確な評価が必要になる可能性がある。しかし、これらの検査法では、血行動態についての従来の評価は、利用可能性が低く、追加的な時間や高額な検査医療費などのいくつかの欠点を有していた。この点において、MPFを用いたMST法は、被験者の血行動態を予測するためにさらなる検査を必要とせず、最適な解決手段となりうる。さらに、造影前CTによるMPFの測定及びMST法における修正スキャンタイミングの計算は複雑なものではなく、医療現場において幅広く利用可能である。
以上の点から、本発明は、MPF及びDPIを使用するという2つの点で特に新規性を有する。本発明は、被験者の血行動態が、画像上の形態学的変化に反映されうることを示した。従来は、DPIなどのDCE−CTにおける造影時相の定量的方法を利用することはできなかったため、画像上のMPFをDCE−CTにおける最良のスキャンタイミングの定量的予測に利用することは、本発明により初めて可能になった。標的血管内のDPImaxは、造影剤の到達時間に従って次第に増加するため、DPIは、DCE−CTの造影時相に関する定量的かつ汎用的指標となりうる。そのため、MST法は、本発明の実施形態で示した血管画像の取得以外の、様々な標的器官や病変における最良のスキャンタイミングの予測に適用可能である。
さらに、MST法から得られた修正スキャンタイミングは、その他の方法にも使用可能となる。例えば、MST法とボーラストラッキング法とを組み合わせれば、MST法に依って最適なスキャンタイミングを予測することができるため、より少ないサンプリング画像またはより少ない放射線被曝量で、高いコントラストのDCE−CT画像を得ることが可能になりうる。
従って、造影時相の定量的指標であるDPI及び造影前CTから得られるMPFを用いて、DCE−CTにおけるCEP及び最良のスキャンタイミングの定量的かつ汎用的な予測が可能となる。

Claims (17)

  1. CTスキャン撮像ユニットと、制御ユニットと、を含むCTスキャン装置であって、
    前記制御ユニットが、被験者の基本的情報及び標的血管、標的臓器または標的疾患のダイナミック時相指数を受け取るように構成され、
    前記CTスキャン撮像ユニットが、前記被験者の第1のCTスキャンを実行するように構成され、
    前記制御ユニットが、前記CTスキャン撮像ユニットから第1のCTスキャン像を受信するように構成され、
    前記制御ユニットが、前記第1のCTスキャン像から、前記被験者の少なくとも1つの形態学的予測因子を測定するように構成され、
    前記制御ユニットが、前記被験者の基本情報、前記ダイナミック時相指数、及び前記形態学的予測因子に基づいて、造影剤投与の開始から第2回目以降のCTスキャンを行うまでの時間を、修正スキャンタイミングとして決定するように構成され、
    前記CTスキャン撮像ユニットが、前記造影剤の投与の開始から前記修正スキャンタイミングが経過したときに前記第2回目以降のCTスキャンを実行するように構成され、
    前記制御ユニットが、前記CTスキャン撮像ユニットから第2回目以降のCTスキャン像を受信するように構成された、
    CTスキャン装置。
  2. 前記CTスキャン装置が、造影剤投与ユニットをさらに含み、
    前記造影剤投与ユニットが、前記制御ユニットの命令により、前記被験者に造影剤を投与するように構成された、請求項1に記載のCTスキャン装置。
  3. 前記被験者の基本的情報が、性別、年齢、身長及び体重のうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載のCTスキャン装置。
  4. 前記形態学的予測因子が、下行大動脈の面積及び下大静脈の短軸径のうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載のCTスキャン装置。
  5. 前記形態学的予測因子が、腰椎長、胸郭横断径、心胸郭比、大動脈長、上行及び下行大動脈の面積、腹部大動脈の面積、下大静脈の長軸径並びに下大静脈の短軸径のうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載のCTスキャン装置。
  6. 前記修正スキャンタイミングが、前記ダイナミック時相指数、前記被験者の基本情報及び前記形態学的予測因子の少なくとも1つを説明変数として、統計解析もしくは非線形機械学習により決定された方程式または非線形モデルから得られる、請求項1に記載のCTスキャン装置。
  7. 前記修正スキャンタイミングを求めるための方程式が、前記ダイナミック時相指数、前記被験者の基本情報及び前記形態学的予測因子の少なくとも1つを含む線形方程式または非線形モデルである、請求項6に記載のCTスキャン装置。
  8. 前記修正スキャンタイミングを求めるための方程式が、対象とする被験者の母集団に応じて統計解析を行う被験者のサンプルを選択して係数を最適化した、請求項6または7に記載のCTスキャン装置。
  9. 前記修正スキャンタイミングが下記の方程式から得られる、請求項6に記載のCTスキャン装置:
    修正スキャンタイミング[秒]=12.4×(ダイナミック時相指数)−45.6+1.74×(性別(男=1、女=0))−0.10×(腰椎長[mm])+0.19×(胸郭横断径[mm])+0.36×(心胸郭比)+0.01×(下行大動脈の面積[mm])−0.001×(下大静脈の長軸径[mm])+0.26×(下大静脈の短軸径[mm])。
  10. CTスキャン撮像ユニットと、造影剤投与ユニットと、制御ユニットと、を含むCTスキャン装置の作動方法であって、
    前記制御ユニットが被験者の基本的情報及び標的血管、標的臓器または標的疾患のダイナミック時相指数を受け取る段階と、
    前記制御ユニットが、前記CTスキャン撮像ユニットに、前記被験者の第1のCTスキャンを実行させる命令を送信する段階と、
    前記制御ユニットが、前記CTスキャン撮像ユニットから第1のCTスキャン像を受信する段階と、
    前記制御ユニットが、前記第1のCTスキャン像から、前記被験者の少なくとも1つの形態学的予測因子を測定する段階と、
    前記制御ユニットが、前記被験者の基本情報、前記ダイナミック時相指数、及び前記形態学的予測因子に基づいて、造影剤投与の開始から第2回目以降のCTスキャンを行うまでの時間を、修正スキャンタイミングとして決定する段階と、
    前記制御ユニットが、前記造影剤投与ユニットに、造影剤の投与を開始させる命令を送信する段階と、
    前記制御ユニットが、前記CTスキャン撮像ユニットに、造影剤投与の開始から、前記修正スキャンタイミングが経過したときに前記第2回目以降のCTスキャンを実行させる命令を送信する段階と、
    前記制御ユニットが、前記CTスキャン撮像ユニットから第2回目以降のCTスキャン像を受信する段階と、
    を含む、方法。
  11. 前記被験者の基本的情報が、性別、年齢、身長及び体重のうち少なくとも1つを含む、請求項10に記載の方法。
  12. 前記形態学的予測因子が、下行大動脈の面積及び下大静脈の短軸径のうち少なくとも1つを含む、請求項10に記載の方法。
  13. 前記形態学的予測因子が、腰椎長、胸郭横断径、心胸郭比、大動脈長、上行及び下行大動脈の面積、腹部大動脈の面積、下大静脈の長軸径並びに下大静脈の短軸径のうち少なくとも1つを含む、請求項10に記載の方法。
  14. 前記修正スキャンタイミングが、前記ダイナミック時相指数、前記被験者の基本的情報及び前記形態学的予測因子の少なくとも1つを説明変数として、統計解析もしくは非線形機械学習により決定された方程式または非線形モデルから得られる、請求項10に記載の方法。
  15. 前記修正スキャンタイミングを求めるための方程式が、前記ダイナミック時相指数、前記被験者の基本的情報及び前記形態学的予測因子の少なくとも1つを含む線形方程式または非線形モデルである、請求項14に記載の方法。
  16. 前記修正スキャンタイミングを求めるための方程式が、対象とする被験者の母集団に応じて統計解析を行う被験者のサンプルを選択して係数を最適化した、請求項14または15に記載の方法。
  17. 前記修正スキャンタイミングが下記の方程式から得られる、請求項14に記載の方法:
    修正スキャンタイミング[秒]=12.4×(ダイナミック時相指数)−45.6+1.74×(性別(男=1、女=0))−0.10×(腰椎長[mm])+0.19×(胸郭横断径[mm])+0.36×(心胸郭比)+0.01×(下行大動脈の面積[mm])−0.001×(下大静脈の長軸径[mm])+0.26×(下大静脈の短軸径[mm])。
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