以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態におけるパターン検査装置の一例を示す構成図である。検査装置100は、試料101に形成されたパターンの欠陥を検査する光学画像取得部150および制御系回路160(制御部)を備えている。尚、点線で囲まれた部分a,bは、それぞれ、図2の照明光学系aおよび結像光学系bに対応する。図1では、照明光学系aおよび結像光学系bの内部構成の図示を省略している。
光学画像取得部150は、照明光学系aと、結像光学系bと、ステージ102と、フォトダイオードアレイ25(撮像センサの一例)と、センサ回路106と、レーザ測長システム122と、オートローダ130とを備える。
試料101が載置されるステージ102は、水平方向(X方向、Y方向)に移動可能なXYステージ(図示せず)と垂直方向(Z方向)に移動可能なZステージ(図示せず)とからなる。XYステージは、回転方向(θ方向)にも移動可能となっている。ステージ102は、制御計算機110の制御の下にステージ制御回路114により駆動されるエアスライダでよい。ステージ102は、θ方向、X方向、Y方向、Z方向に駆動する4軸モータ等の駆動系によって移動可能となっている。これらのθモータ、Xモータ、Yモータ、Zモータは、例えば、リニアモータやステップモータなどを用いることができる。そして、ステージ102上に配置された試料101の移動位置はレーザ測長システム122により測定され、位置回路107に転送される。
ステージ102上には、試料101が配置され、試料101はステージ102とともに移動する。試料101としては、例えば、ウェハにパターンを転写する露光用のフォトマスクやNIL(Nano-Imprint Lithography)技術に用いられるテンプレートが含まれる。フォトマスクやテンプレートには、検査対象となる複数の図形によって構成されたパターンが形成されている。試料101は、例えば、パターン形成面を下側に向けてステージ102上に配置される。
フォトダイオードアレイ25は、試料101に形成されたパターンを撮像する撮像センサである。フォトダイオードアレイ25は、その撮像面上に結像した試料101のパターン像を光電変換し、そのパターン像をセンサ回路106へ送る。フォトダイオードアレイ25は、例えば、撮像素子であるCCD(Charge Coupled Device)カメラを一列に並べたラインセンサである。ラインセンサには、例えば、TDI(Time Delay Integration)センサを用いることができる。
センサ回路106は、フォトダイオードアレイ25から受け取ったパターン像をA/D(Analogue-to-Digital)変換し、そのパターン像の画像データを位置回路107へ送る。A/D変換された画像データは、例えば、8ビットの符号なしデータであって、フォトダイオードアレイ25の各画素の明るさの階調を表現したものである。
オートローダ130は、制御計算機110の制御を受けてオートローダ制御回路113によって駆動され、検査対象となる試料101をステージ102上に自動で載置し、検査終了後には試料101をステージ102から自動で搬出する。試料101がステージ102上に載置されると、試料101に形成されたパターンに対し、ステージ102の下方に配置された照明光学系aから光が照射される。そして、試料101で反射した光は、結像光学系bにあるセンサ25に結像する。尚、検査装置100は、試料101の透過光をセンサ25に導く構成としてもよい。この構成と、図1に示す構成とを併せ持つ場合には、透過光と反射光による各光学画像を同時に取得することが可能である。
制御系回路160では、コンピュータとなる制御計算機110が、バス120を介して、位置回路107、比較回路108、展開回路111、参照回路112、オートローダ制御回路113、ステージ制御回路114、光強度判定回路126、焦点調整切替回路127、焦点位置検出回路128、ストレージ109、ディスプレイ117、パターンモニタ118、および、プリンタ119に接続されている。
ストレージ109に格納されたフォーマットデータには、設計パターンデータが格納されている。この設計パターンデータは、ストレージ109から制御計算機110を通して展開回路111によって読み出される。展開回路111では、設計パターンデータがイメージデータ(ビットパターンデータ)に変換される。展開回路111で変換されたイメージデータは、参照回路112に送られて、参照画像の生成に用いられる。参照回路112で生成された参照画像は、比較回路108に送られ、検査対象となる試料101の光学画像と比較される。
一方、試料101の光学画像は、上述の通り、フォトダイオードアレイ25で撮像されてA/D変換され、位置回路107へ送られる。検査に好適な光学画像を得るためには、試料101に照射される光の焦点位置を正確に検出して焦点合わせをすることが重要となる。照明光学系aの焦点位置に試料101の表面(パターンの形成された面:以下、パターン面とも言う)を合わせるために、光強度判定回路126は、焦点位置の検出および焦点位置の調整の際に、照明光学系aの光強度分布に基づいて、焦点位置センサ(図2の29,30)の自動焦点位置調整機能(以下、オートフォーカス機能ともいう)の信頼性を判定する。
焦点調整切替回路127は、オートフォーカス機能の信頼性が高い場合には、焦点位置センサ29,30による焦点位置によって照明光学系aの焦点位置と試料101のパターン面との相対位置を調整することを選択する。一方、焦点調整切替回路127は、オートフォーカス機能の信頼性が低い場合には、焦点位置センサのオートフォーカス機能を用いず、予め作成された試料101の歪みを示す歪みマップに基づいて照明光学系aの焦点位置と試料101のパターン面との相対位置を調整することを選択する。尚、オートフォーカス機能の信頼性の判定および焦点調整手法の切替えについては、後で詳細に説明する。
焦点位置検出回路128は、焦点調整切替回路127からの情報を受け取って、焦点位置を検出する。オートフォーカス機能を用いる場合には、焦点位置検出回路128は、結像光学系bに配置された焦点位置検出用のセンサ(図2の29,30)で検出されたスリット像から、照明光学系aの焦点位置が試料101のパターン面に適合したことを検出する。あるいは、歪みマップを用いる場合には、焦点位置検出回路128は、歪みマップに基づいて試料101の歪みを解消するようにステージ102を移動させ、照明光学系aの焦点位置が試料101のパターン面に適合したものと判断する。
制御計算機110は、焦点位置検出回路128からの情報に基づき、ステージ制御回路114を制御して、検出した焦点位置が試料101のパターン面に位置するよう、ステージ102をZ方向(高さ方向)に移動させる。これにより、試料101のパターン面を焦点位置に合わせるよう調整する。尚、焦点位置の調整は、試料101のパターン面の位置と焦点位置とを相対的に移動させることによって実行される。従って、焦点位置の調整は、焦点位置自体を移動させることで実行してもよいが、本実施形態のように、ステージ102を移動させることで実行してもよい。
試料101のパターン面を照明光学系aの焦点位置に適合させると、フォトダイオードアレイ25が試料101のパターンの光学画像を撮像する。実際には、フォトダイオードアレイ25は、図3に示すようにストライプごとに連続的に試料101のパターンを撮像する。従って、オートフォーカス機能の信頼性の判定は、パターンの撮像の直前にほぼリアルタイムで実行される。光学画像は、センサ回路106でA/D変換されて、位置回路107から出力されたステージ102上での試料101の位置を示すデータとともに、比較回路108に送られる。
比較回路108は、上述の通り、光学画像データと参照画像データとを、適切な比較判定アルゴリズムを用いて比較する。比較の結果、両者の差異が所定の閾値を超えた場合には、その箇所が欠陥と判定される。
尚、図1では、第1実施形態を説明する上で必要な構成部分について記載している。検査装置100にとって、通常、必要なその他の構成が含まれても構わないことは言うまでもない。また、センサ回路106、オートローダ制御回路113、ステージ制御回路114、光強度判定回路126、焦点調整切替回路127、焦点位置検出回路128、展開回路111、参照回路112、比較回路108および位置回路107内の各回路は、電気的回路で構成されてもよく、制御計算機110等のコンピュータで動作可能なソフトウェアとして実現されてもよい。また、これらの回路は、ハードウェアとソフトウェアとの組合せやファームウェアとの組合せによって実施されるものであってもよい。
図2は、第1実施形態による照明光学系aおよび結像光学系bの内部構成の一例を示す図である。照明光学系aは、光源1と、レンズ4,6と、スリット5と、ハーフミラー7と、対物レンズ8とを有する。照明光学系aは、検査対象となるパターンが形成された試料101を光源1からの光で照明する。一方、結像光学系bは、対物レンズ8と、ハーフミラー7,17,20と、レンズ10,11,12,13,15と、ミラー16と、第1スリット23と、第2スリット24と、フォトダイオードアレイ25、第1センサ26と、第1焦点位置センサ29と、第2焦点位置センサ30とを有する。結像光学系bは、試料101からの反射光をセンサ25,26,29,30の各受光面に結像または集光させる。
ここで、フォトダイオードアレイ25は、試料101のパターンの欠陥検査用の光学画像を撮像する撮像センサとして用いられる。また、センサ26は、試料101で反射した光を受けて照明光学系aの対物レンズ8の瞳の光強度分布を得るセンサ(第1センサ)として用いられる。センサ29,30は、照明光学系aの光の焦点位置に試料101のパターン面を合わせるように、試料101の位置を自動で調整する第1および第2焦点位置センサとして用いられる。即ち、第1および第2焦点位置センサ29,30は、オートフォーカス用のセンサである。センサ26,29,30は、例えば、512×512画素のCCDカメラ等でよい。
図3は、検査領域の撮像の様子を示す概念図である。試料101の検査領域R10は、例えばY方向に向かって、スキャン幅Wの短冊状の複数の検査ストライプR20に仮想的に分割される。検査装置100では、検査ストライプR20毎に画像(ストライプ領域画像)を取得していく。検査ストライプR20の各々に対して、レーザ光を用いて、当該ストライプ領域の長手方向(X方向)に向かって、当該ストライプ領域内に形成されたパターンの画像を撮像する。ステージ102の移動によってフォトダイオードアレイ25が相対的にX方向に連続移動しながら光学画像を取得する。フォトダイオードアレイ25では、図3に示されるようなスキャン幅Wの光学画像を連続的に撮像する。言い換えれば、フォトダイオードアレイ25は、ステージ102と相対移動しながら、検査光を用いて試料101に形成されたパターンの光学画像を撮像する。本実施形態では、1つの検査ストライプR20における光学画像を撮像した後、Y方向に次の検査ストライプR20の位置まで移動して次に逆方向に移動しながら同様にスキャン幅Wの光学画像を連続的に撮像する。すなわち、往路と復路で逆方向に向かうフォワード(FWD)−バックワード(BWD)の方向で撮像を繰り返す。
撮像の方向は、フォワード(FWD)−バックワード(BWD)の繰り返しに限るものではなく、一方の方向から撮像してもよい。例えば、FWD−FWDの繰り返しでもよい。或いは、BWD−BWDの繰り返しでもよい。
通常、試料101には、寸法の異なる複数のパターンが形成されている。上述した通り、反射光の回折によるオートフォーカスの困難性は、パターンの寸法(線幅等)に依存する。即ち、寸法の大きなパターン(例えば、50nm以上の線幅を有するパターン)については、回折の影響は比較的小さい。回折が小さい場合、試料101への入射光と試料101からの反射光とのずれ(オフセット誤差)が小さくなる。従って、図2の第1および第2焦点位置センサ29,30によるオートフォーカス機能を用いて、焦点位置に試料101のパターン面を合わせることができる。しかし、寸法の小さなパターン(例えば、50nm未満の線幅を有するパターン)については、回折の影響が比較的大きくなる。回折が大きい場合、オフセット誤差が大きくなる。このため、第1および第2焦点位置センサ29,30のオートフォーカス機能を用いて焦点位置に試料101のパターン面を合わせることが困難となる。
そこで、本実施形態による光強度判定回路126は、試料101で反射した光をセンサ26に集光して照明光学系aの対物レンズ8の瞳(あるいは、対物レンズ8と共役な位置における瞳)の光強度分布を用いて、第1および第2焦点位置センサ29,30による照明光学系のオートフォーカス機能の信頼性を判定する。そして、第1および第2焦点位置センサ29,30によるオートフォーカス機能が信頼性を有すると判定した場合には、検査装置100は、第1および第2焦点位置センサ29,30によるオートフォーカス機能によって照明光学系aの焦点位置を調整する。一方、第1および第2焦点位置センサ29,30によるオートフォーカス機能が信頼性を有しないと判定した場合には、検査装置100は、予め作成された試料101の歪みを示す歪みマップに基づいて照明光学系aの焦点位置を調整する。
(歪みマップの作成)
図4は、試料101の歪みを示す断面図である。試料(例えば、マスク)101は、ステージ102上に搭載されると、自重により歪む(撓む)場合がある。歪みマップは、ステージ102上に搭載された試料101のパターン面内の各座標における歪みの度合いを示すマップである。
歪みマップは、検査の前に予め作成される。このため、歪みマップの作成には、基準試料(基準マスク)101aを用いる。基準試料101aは、試料101と同じ材質でありかつパターンの形成されていない材料(マスクブランクス)でよい。これにより、基準試料101aは、パターンを有しないものの、パターン検査時における試料101とほぼ同じ歪みを再現することができる。即ち、歪みマップは、基準試料101aを用いて生成され、試料101の歪みマップとして用いることができる。
歪みマップの作成の際には、基準試料101aをステージ102上に載置し、基準試料101aの表面に対して略垂直方向(Z方向)に該基準試料101aを移動させ、第1および第2焦点位置センサ29,30によるオートフォーカス機能で照明光学系aの焦点位置に基準試料101aの表面を合わせる。このとき、基準試料101aの表面には、微細パターンは形成されていないので、ステージ制御回路114は、第1および第2焦点位置センサ29,30を用いて、照明光学系aの焦点位置に基準試料101aの表面を正確に合わせることができる。
図3を参照して説明したように、ステージ102を照明光に対してX方向およびY方向に移動させながら、照明光学系aの焦点位置に基準試料101aの表面を合わせ、そのときのステージ102の高さ位置を計測する。高さ位置は、照明光学系aまたは対物レンズ8に対するステージ102または試料101の高さ(Z座標)である。高さの計測は、レーザ測長システム122で行えばよい。例えば、図4に示すように、基準試料101aは、両端部Eに対して、中心部Cは、Dだけ−Z方向に歪んでいる。基準試料101aの他の座標についても、Z方向あるいは−Z方向の歪みが測定される。
位置回路107は、座標(X,Y)およびそれに対応する高さ位置(Z)をレーザ測長システム122から受け取り、ストレージ109へ格納する。位置回路107は、座標(X,Y)およびそれに対応する高さ位置(Z)をそのままストレージ109へ格納してもよく、あるいは、或る基準座標(X0、Y0)における高さ位置(Z0)を基準として、他の座標(X、Y)の高さ位置(Z)と基準座標の高さ位置(Z0)との相対差を格納してもよい。例えば、一端部Eの高さ位置(Z0)を基準として、該端部Eの高さ位置(Z0)に対する他の座標(X、Y)の相対的な高さ位置(Z)、即ち、Z−Z0をストレージ109へ格納してもよい。
これにより、基準試料101aの面内の各座標の歪みを示す歪みマップが生成され、ストレージ109に格納される。高さ位置(Z)を測定する座標(X,Y)の間隔は任意でよい。基準試料101aの歪みマップは、試料101の歪みマップとして用いられる。ただし、歪みマップには、ステージ102の振動等のような非再現成分も含まれる。このため、座標(X,Y)における高さ位置(Z)を複数回測定し、その平均値で歪みマップを作成してもよい。あるいは、連続して測定された複数の座標における高さ位置の移動平均で歪みマップを作成してもよい。
このように作成された歪みマップは、ストレージ109に予め格納され、以下に説明する焦点位置調整方法において参照される。
(焦点位置調整方法)
図5は、第1実施形態による焦点位置調整方法の一例を示すフロー図である。図2および図5を参照して、焦点位置調整方法について説明する。
試料101は、X方向、Y方向およびZ方向に移動可能なステージ102上に載置される。そして、試料101に形成されたパターンの撮像および検査が開始される(S10)。
図2の光源1は、例えば、レーザ光源でよい。光源1から出射された光は、まず、光軸32に沿って伝播していく。この光は、レンズ4,6を透過してハーフミラー7へ入射する。光の一部は、レンズ4を透過した後、スリット5を介してレンズ6へ入射し、レンズ6を透過してハーフミラー7へ入射する。
ハーフミラー7は、例えば、光軸32に対して45度傾いて配置されている。レンズ6で屈折された光はハーフミラー7に入射する。ハーフミラー7は、入射した光の約半分を反射して、残りの半分を透過する。したがって、レンズ6からハーフミラー7に入射した光の一部は、試料101の方向に反射される。つまり、光軸32は、ハーフミラー7によって90度曲げられることになる。
ハーフミラー7で反射された照明光は、対物レンズ8に入射する。対物レンズ8は、鏡筒内に複数のレンズが配置された構造とすることができる。対物レンズ8の瞳は、光源1の像を結像する。対物レンズ8は、入射した光を屈折した後、試料101を照明する。上記したように、照明光の一部は、スリット5を透過している。したがって、スリット5の像も試料101に投影されている。このとき、スリット5の像は、検査視野とは異なる領域に投影される。
試料101で反射された光は、ハーフミラー7までは照明光と共通の光路を伝播していく。すなわち、試料101からの反射光は、対物レンズ8で屈折されてハーフミラー7に入射する。対物レンズ8で屈折された光は、略平行な光束となる。そして、この光の一部は、ハーフミラー7を透過してレンズ10に入射する。
レンズ10を透過した光の一部はミラー16で反射して光路を曲げられ、レンズ13に入射する。ミラー16で反射する光は、試料101に投影されたスリット5の像の反射光となるようにする。レンズ13は、入射した光を屈折してハーフミラー17に入射させる。
ハーフミラー17で反射した光は、第1センサ26に入射する。第1センサ26に入射する光は、スリット5を介さず試料101に投影され、対物レンズ8を透過した光(対物レンズ8の瞳全体の光)である。従って、第1センサ26は、照明光学系aの対物レンズ8の瞳の光強度分布を観察する(S20:第1センシング工程)。この光強度分布は、光強度判定回路126へ転送され、光強度判定回路126において、第1および第2焦点位置センサ29,30による自動焦点位置調整機能(オートフォーカス機能)が有効であるか否かの判定に用いられる(S30)。
ここで、第1および第2焦点位置センサ29,30によるオートフォーカス機能が有効であるか否かの判定手法について説明する。
図6(A)〜図8(B)は、第1および第2焦点位置センサ29,30によるオートフォーカス機能の判定手法を示す説明図である。図6(A)、図7(A)および図8(A)は、それぞれ第1センサ26で検出された対物レンズ8の瞳の光強度分布の画像(所謂、フーリエ画像)を示す。図6(B)、図7(B)および図8(B)は、それぞれ図6(A)、図7(A)および図8(A)のB−B線に沿った位置における光強度分布のグラフを示す。
また、図6(A)および図6(B)は、試料101のパターンが比較的大きな場合における光強度分布を示す。撮像範囲に大きなパターンが多い場合には、試料101からの反射光の回折が比較的小さいため、図6(A)および図6(B)に示すように、反射光(回折光)は対物レンズ8の瞳の中心に比較的近く、光強度が高くなる。この場合、第1センサ26において光強度の高い画素領域が大きくなる。
図7(A)および図7(B)は、試料101のパターンが図6(A)および図6(B)のそれよりも微細な場合における光強度分布を示し、図8(A)および図8(B)は、試料101のパターンが図7(A)および図7(B)のそれよりもさらに微細な場合における光強度分布を示す。撮像範囲に微細なパターンが比較的多くなると、試料101からの反射光の回折が大きくなるため、図7(A)〜図8(B)に示すように、反射光(回折光)は対物レンズ8の瞳の中心から乖離して、光強度が低下する。この場合、第1センサ26において光強度の高い画素領域が小さくなる。
光強度判定回路126は、図6(B)、図7(B)、図8(B)に示す光強度分布に基づいて、第1および第2焦点位置センサ29,30によるオートフォーカス機能が有効であるか否かを判定する。例えば、所定値Aを超える光強度を検出した画素数が閾値以上であれば、第1および第2焦点位置センサ29,30によるオートフォーカス機能の信頼性は高い。従って、光強度判定回路126は、そのオートフォーカス機能を有効であると判定する。一方、図6(B)、図7(B)、図8(B)に示す光強度が所定値Aを超える画素数が閾値未満であれば、第1および第2焦点位置センサ29,30によるオートフォーカス機能の信頼性は低い。従って、光強度判定回路126は、そのオートフォーカス機能は無効であると判定する。尚、オートフォーカス機能が有効である、とは、第1および第2焦点位置センサ29,30のオートフォーカス機能を用いて、照明光学系aの焦点位置に試料101のパターン面を合わせることができることを意味する。オートフォーカス機能が無効であることは、逆に、第1および第2焦点位置センサ29,30のオートフォーカス機能では、照明光学系aの焦点位置に試料101のパターン面を合わせることができないことを意味する。
図6(B)では、光強度が所定値Aを超える画素数は、m画素である。mが閾値以上である場合、光強度判定回路126は、第1および第2焦点位置センサ29,30によるオートフォーカスは可能であると判定する。
図7(B)では、光強度が所定値Aを超える画素数は、n(n<m)画素である。nが閾値以上である場合、光強度判定回路126は、第1および第2焦点位置センサ29,30によるオートフォーカスは可能であると判定する。nが閾値未満である場合、光強度判定回路126は、第1および第2焦点位置センサ29,30によるオートフォーカスは不可であると判定する。
図8(B)では、光強度が所定値Aを超える画素数は、0画素である。この場合、光強度判定回路126は、第1および第2焦点位置センサ29,30によるオートフォーカスは不可であると判定する。
このように、光強度判定回路126は、第1センサ26で検出された対物レンズ8の瞳の光強度分布に基づいて、第1および第2焦点位置センサ29,30によるオートフォーカス機能が有効であるか否かを判定することができる。
再度、図2および図5を参照して焦点位置調整方法の説明を続ける。上記判定手法において、第1および第2焦点位置センサ29,30によるオートフォーカス機能が有効であると判定された場合(S30のYES)、焦点調整切替回路127は、第1および第2焦点位置センサ29,30によるオートフォーカス機能を選択する(S40)。この場合、ステージ制御回路114は、以下のように、第1および第2焦点位置センサ29,30のオートフォーカス機能を用いて試料101のパターン面を焦点位置に合わせる。
例えば、図2のハーフミラー17を透過した光は、レンズ15によってハーフミラー20に入射し、ハーフミラー20によって分岐される。ハーフミラー20を透過した光は、第1スリット23を透過した後、第1焦点位置センサ29に入射する。一方、ハーフミラー20で反射した光は、第2スリット24を透過した後、第2焦点位置センサ30に入射する。スリット23,24を透過し、センサ29,30に入射する光は、試料101に投影されたスリット5の像の反射光である。
スリット23は、試料101の共役位置の前側に位置するようにし(前ピン)、スリット24は、試料101の共役位置の後側に位置するようにする(後ピン)。尚、スリット24を、試料101の共役位置の前側に位置するようにし(前ピン)、スリット23を、試料101の共役位置の後側に位置するようにしてもよい(後ピン)。スリット23,24の幅は、対物レンズ8の開口数NAで拡がる光束の半分、つまり、対物レンズ8の瞳径の半分に相当する値とする。第1および第2焦点位置センサ29,30には、例えば、フォトダイオードや光電子増倍管等を用いる。
第1焦点位置センサ29は前ピンの光強度(光量)を検出する(第1焦点位置センシング工程)。一方、第2焦点位置センサ30は後ピンの光強度を検出する(第2焦点位置センシング工程)。第1および第2焦点位置センサ29,30で検出された光強度は、焦点位置検出回路128に送信される。焦点位置検出回路128は、この光強度に基づいて焦点位置を検出する。例えば、光の焦点位置に対する試料101のパターン面の位置を変えて第1焦点位置センサ29の光強度と第2焦点位置センサ30の光強度とを比較すると、試料101のZ方向の移動量(即ち、焦点位置の移動量)に応じて、第1焦点位置センサ29と第2焦点位置センサ30との光強度比(光量比)が変化する。光強度比が1:1になったときに焦点位置が試料101のパターン面に合う。即ち、このとき、試料101のパターン面に対して最適な焦点位置となり、コントラストは最大となる。このように、検査装置100は、第1および第2焦点位置センサ29、30を用いたオートフォーカス機能により、試料101のパターン面を焦点位置に自動で合わせることができる。
一方、第1および第2焦点位置センサ29,30によるオートフォーカス機能が無効であると判定された場合(S30のNO)、焦点調整切替回路127は、オートフォーカス機能を用いずに、予め作成された試料101の歪みを示す歪みマップに基づいた焦点位置調整に切り替える(S50)。この場合、ステージ制御回路114は、直前あるいは以前にオートフォーカス機能を用いて焦点が合っていた座標(X1,Y1)における高さ位置(Z1)と、これから歪みマップに基づいた焦点位置調整機能を用いる座標(X2,Y2)における高さ位置(Z2)との相対差をキャンセルするように、ステージ102をZ方向に移動させる。例えば、座標(X1,Y1)における高さ位置(Z1)と座標(X2,Y2)における高さ位置(Z2)との相対差が−D1である場合、ステージ制御回路114は、ステージ102を+Z方向へ歪み分D1だけ移動させる。即ち、座標(X1,Y1)に対して座標(X2,Y2)における−Z方向への歪みがD1である場合、ステージ制御回路114は、試料101の表面の歪みを解消するように、試料101の歪み方向(例えば、−Z)とは反対方向(例えば、+Z)へ歪み分D1だけステージ102を移動させる。これにより、座標(X2,Y2)における歪みが補正(キャンセル)され、座標(X2,Y2)の高さ位置が、焦点の合っていた座標(X1,Y1)の高さ位置とほぼ等しくなる。座標(X2,Y2)の高さが焦点の合っていた座標(X1,Y1)の高さとほぼ等しくなることよって、試料101のパターン面が照明光学系aの焦点位置に合う。このように、検査装置100は、オートフォーカス機能を用いずに、歪みマップで焦点位置を調整することができる。
オートフォーカス機能と歪みマップによる焦点位置調整機能とのいずれかを選択した後、ステージ制御回路114は、その選択された焦点位置調整方向で、上記のように試料101のパターン面を照明光学系aの焦点位置に合わせる(S60)。
試料101のパターン面を照明光学系aの焦点位置に合わせながら、フォトダイオードアレイ25は、連続的に試料101のパターンを撮像する。また、センサ回路106、位置回路107、比較回路108、展開回路111、参照回路112は、撮像画像と基準画像とを比較して、パターンの欠陥の有無等を検査する(S65)。
ここで、パターンの検査処理について説明する。パターンの検査では、ダイ−データベース方式またはダイ−ダイ方式による検査が実行される。以下、一例として、ダイ−データベース方式による検査方法を述べる。ダイ−データベース方式では、検査対象の光学画像と比較される基準画像は、設計パターンデータから生成された参照画像である。ダイ−ダイ方式の場合、基準画像は、検査対象と同一パターンを有する他の領域の光学画像になる。言うまでも無く、本実施形態は、ダイ−ダイ方式に適用してもよい。
尚、設計パターンデータは、ストレージ109に格納されており、検査の進行に合わせて読み出されて展開回路111に送られる。ストレージ109は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置でよい。
ユーザが作成したCADデータは、階層化されたフォーマットの設計中間データに変換される。設計中間データには、レイヤ毎に作成されて試料に形成される設計パターンデータが含まれる。一般に、検査装置は、設計中間データを直接読み込めるようには構成されていない。このため、設計中間データは、レイヤ毎に各検査装置に固有のフォーマットデータに変換された後に検査装置に入力される。フォーマットデータは、検査装置に固有のデータとすることができるが、試料にパターンを描画するのに使用される描画装置と互換性のあるデータとすることもできる。
試料101のパターン形成時に用いたフォーマットデータは、ストレージ109に格納される。設計パターンに含まれる図形は、長方形や三角形等を基本図形として作成された図形である。図形の基準位置における座標、辺の長さ、長方形や三角形などの図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報であって、各パターン図形の形、大きさ、位置などを定義した図形データが格納される。
ストレージ109に格納されたフォーマットデータには、設計パターンデータが格納されている。この設計パターンデータは、ストレージ109から制御計算機110を通して展開回路111によって読み出される。
展開回路111では、設計パターンデータがイメージデータ(ビットパターンデータ)に変換される。すなわち、展開回路111は、設計パターンデータを図形毎のデータにまで展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして、2値ないしは多値のイメージデータに展開される。さらに、センサ画素に相当する領域(マス目)毎に設計パターンにおける図形が占める占有率が演算され、各画素内の図形占有率が画素値となる。
展開回路111で変換されたイメージデータは、参照画像生成部としての参照回路112に送られて、参照画像の生成に用いられる。
センサ回路106から出力された試料101の光学画像は、位置回路107から出力されたステージ102上での試料101の位置を示すデータとともに、比較回路108に送られる。また、上述した参照画像も比較回路108に送られる。
このとき、図3の検査ストライプR20は、適当なサイズに分割されてサブストライプとなる。光学画像から切り出されたサブストライプと、それに対応する参照画像から切り出されたサブストライプとが、比較回路108内の比較ユニットに投入される。投入されたサブストライプは、さらに検査フレームと称される矩形の小領域に分割され、比較ユニットにおいてフレーム単位で比較されて欠陥が検出される。比較回路108には、複数の検査フレームが同時に並列して処理されるよう、数十個の比較ユニットが装備されている。各比較ユニットは、1つの検査フレームの処理が終わり次第、未処理のフレーム画像を取り込む。これにより、多数の検査フレームが順次処理されていく。比較回路108は、適切な比較判定アルゴリズムを用いて試料101の光学画像と参照画像とを比較する。比較の結果、両者の差異が所定の閾値を超えた場合には、その箇所が欠陥と判定される。
試料101のパターンの全面の撮像および検査が終了するまで、ステップS20〜S65が繰り返される(S70のNO)。試料101のパターンの全面の撮像および検査が終了すると、試料101の検査が終了し(S70のYES)、試料101は、ステージ102から搬出される。
以上のように、本実施形態による検査装置100は、第1センサ26で照明光学系aの対物レンズ8の光強度分布を得て、この光強度分布に基づいて第1および第2焦点位置センサ29,30によるオートフォーカス機能の信頼性を判定する。試料101のパターンが大きくオートフォーカス機能の信頼性が高いと判定された場合、第1および第2焦点位置センサのオートフォーカス機能を用いて焦点位置の調整を行う。試料101のパターンが微細であり、オートフォーカス機能の信頼性が低いと判定された場合、オートフォーカス機能を用いずに、予め作成され試料101の歪みを示す歪みマップに基づいて焦点位置の調整を行う。これにより、微細パターンによるオフセット誤差をキャンセルし、試料101が歪んでいても、試料101のパターン面を照明光学系aの焦点位置に正確に位置付けることができる。
また、本実施形態において、焦点調整切替回路127は、光強度判定回路126の判定に基づいて撮像を継続しながらリアルタイムで焦点位置の調整方法を切り替える。例えば、光強度判定回路126は、撮像直前に撮像箇所について、オートフォーカス機能の信頼性を判定し、焦点調整切替回路127は、光強度判定回路126の判定に応じて、オートフォーカス機能と歪みマップに基づいた焦点位置調整機能との間で焦点位置調整方法をリアルタイムで切り替える。これにより、検査装置100は、検査時間を長期化することなく、精度の高い光学画像を得ることができる。
また、オートフォーカス機能を用いた焦点位置の調整は、歪みマップによる焦点位置調整機能よりも長い時間がかかる。従って、微細なパターンに対して、歪みマップによる焦点位置調整機能を用いることによって、寧ろ、検査時間を短縮することができる。
また、本実施形態によれば、比較的大きな(粗い)パターンに対してはオートフォーカス機能を用いて焦点位置の調整が行われ、微細パターンに対しては歪みマップを用いて焦点位置の調整が行われる。このようにオートフォーカス機能と歪みマップによる焦点位置調整機能との両方が選択的に用いられることにより、歪みマップに非再現成分が含まれていても、大きなパターンでは、オートフォーカス機能によって焦点位置調整が行われるので、歪みマップに含まれる誤差はキャンセルされ得る。
例えば、もし、試料101の全面に対して歪みマップに基づく焦点位置調整機能を用いた場合、オートフォーカス機能を全く用いないため、歪みマップに含まれる非再現成分等の誤差は補正されない。
これに対し、本実施形態による検査装置100では、オートフォーカス機能を用いて試料101を焦点位置に合わせた後に、歪みマップによる焦点位置調整機能を用いた場合、歪みマップによる焦点位置調整機能を用いる座標(例えば、歪みD2)では、オートフォーカス機能を用いた座標(例えば、歪みD3)に対して相対的な歪み分(例えば、D3−D2)を解消すればよい。この場合、オートフォーカス機能を用いた座標では焦点位置は試料101に合っているので、それまで用いてきた歪みマップに含まれる誤差は引き継がれず、オートフォーカス機能を用いた座標において一旦キャンセル(補正)される。従って、オートフォーカス機能と歪みマップによる焦点位置調整機能との両方を選択的に用いることによって、試料101のパターン面を照明光学系aの焦点位置に、より正確に位置付けることができる。
(第2実施形態)
図9(A)〜図11(B)は、第2実施形態に従ったオートフォーカス機能の判定手法を示す説明図である。第2実施形態は、第1および第2焦点位置センサ29,30からの光強度に基づいてオートフォーカス機能の信頼性を判定する。従って、光強度判定回路126は、第1および第2焦点位置センサ29,30から光強度を入力し、その光強度分布に基づいて、第1および第2焦点位置センサ29,30のオートフォーカス機能の信頼性を判定する。第2実施形態の構成および他の動作は、第1実施形態と同様でよい。
図9(A)、図10(A)および図11(A)は、それぞれ第1および第2焦点位置センサ29、30で検出された光強度の検出の概念図を示す。図9(B)、図10(B)および図11(B)は、それぞれ図9(A)、図10(A)および図11(A)のフォトセンサSa〜Sdにおける光強度分布を示す。
また、図9(A)および図9(B)は、試料101のパターンが比較的大きな場合における光強度分布を示す。図10(A)および図10(B)は、試料101のパターンが図9(A)および図9(B)のそれよりも微細な場合における光強度分布を示し、図11(A)および図11(B)は、試料101のパターンが図10(A)および図10(B)のそれよりもさらに微細な場合における光強度分布を示す。
スリット23、24は、図2のスリット5で成形されたスリット光L23、L24に適合する形状(略相似形)に形成されている。例えば、スリット5で成形されたスリット光L23、L24が十字形である場合、スリット23、24も十字形にする。スリット23、24の十字形の内部は、光が通過できるが、その外部では光が遮断される。従って、図9(A)に示すように、スリット光L23、L24が、スリット23、24に適合している場合には、第1および第2焦点位置センサ29、30で検出されるスリット光L23、L24の強度は最大となる。一方、図11(A)に示すように、スリット光L23、L24が、スリット23、24から外れている場合には、第1および第2焦点位置センサ29、30で検出されるスリット光L23、L24の強度は低下する。
第1および第2焦点位置センサ29、30は、第1および第2センサ部として、例えば、それぞれ4つのフォトセンサSa〜Sdを備える。フォトセンサSa〜Sdは、例えば、十字形のスリット23、24の4つの端部にそれぞれ対応して配置されている。これにより、フォトセンサSa〜Sdは、十字形のスリット23、24の4つの端部を透過してくるスリット光L23、L24を検出する。尚、図9(A)、図10(A)および図11(A)では、便宜的に、スリット23、24は重ねて表示されている。従って、フォトセンサSa〜Sdも、第1および第2焦点位置センサ29、30について重ねて表示されている。しかし、スリット23のフォトセンサSa〜Sdとスリット24のフォトセンサSa〜Sdとはそれぞれ個別にスリット光L23とスリット光L24とを検出する。
上述の通り、スリット23は、前ピンに位置し、スリット24は、後ピンに位置する。よって、第1焦点位置センサ29は前ピンの光強度を検出し(第1焦点位置センシング工程)、第2焦点位置センサ30は後ピンの光強度を検出する(第2焦点位置センシング工程)。第1焦点位置センサ29と第2焦点位置センサ30との光強度比が1:1になったときに、両者の光強度の和が最大となり、試料101のパターン面が焦点位置に合う。第2実施形態では、このような第1および第2焦点位置センサ29、30の光強度を用いて、オートフォーカス機能の信頼性を判定する。
例えば、試料101のパターンが比較的大きなパターンである場合、試料101からの反射光の回折が小さく、入射光に対する反射光のオフセット誤差が小さい。従って、図9(A)に示すように、照明光学系aの焦点を試料101のパターン面に合わせたときに、スリット23を通過したスリット光L23とスリット24を通過したスリット光L24とが重複する。この場合、図9(B)の光強度分布に示すように、フォトセンサSa〜Sdで検出される光強度は高く、第1および第2焦点位置センサ29,30によるオートフォーカス機能の信頼性は高い。よって、光強度判定回路126は、第1および第2焦点位置センサ29,30によるオートフォーカス機能が有効であると判定できる。
試料101のパターンが微細になると、試料101からの反射光の回折が大きくなり、入射光に対する反射光のオフセット誤差が大きくなる。従って、照明光学系aの焦点を試料101のパターン面に合わせようとしても、図10(A)に示すように、スリット光L23とスリット光L24とが重複しなくなってくる。この場合、図10(B)の光強度分布に示すように、例えば、一部のフォトセンサSb、Scで検出される光強度は高いものの、他のフォトセンサSa、Sdで検出される光強度は低くなる。
試料101のパターンがさらに微細になると、オフセット誤差がさらに大きくなり、照明光学系aの焦点を試料101のパターン面に合わせようとしても、図11(A)に示すように、スリット光L23とスリット光L24とがフォトセンサSa、Sdにおいてほとんど重複しない。この場合、図11(B)の光強度分布に示すように、例えば、フォトセンサSa、Sdで検出される光強度はかなり低下する。よって、この場合には、光強度判定回路126は、第1および第2焦点位置センサ29,30によるオートフォーカス機能が無効であると判定する。
具体的な判定方法の例は以下の通りである。フォトセンサSa〜Sdで検出される光強度をそれぞれIa〜Idとすると、光強度判定回路126は、例えば、Ia/(Ia+Ib+Ic+Id)、Ib/(Ia+Ib+Ic+Id)、Ic/(Ia+Ib+Ic+Id)、Id/(Ia+Ib+Ic+Id)を計算し、これらのパラメータと予め設定された閾値とを比較する。そして、Ia/(Ia+Ib+Ic+Id)、Ib/(Ia+Ib+Ic+Id)、Ic/(Ia+Ib+Ic+Id)、Id/(Ia+Ib+Ic+Id)の全てが閾値以上であった場合、光強度判定回路126は、第1および第2焦点位置センサ29,30によるオートフォーカス機能が高いと判断し、第1および第2焦点位置センサ29,30によるオートフォーカス機能が有効と判定する。一方、Ia/(Ia+Ib+Ic+Id)、Ib/(Ia+Ib+Ic+Id)、Ic/(Ia+Ib+Ic+Id)、Id/(Ia+Ib+Ic+Id)のいずれか1つ以上のパラメータが閾値未満であった場合、光強度判定回路126は、第1および第2焦点位置センサ29,30によるオートフォーカス機能の信頼性が低いと判断し、第1および第2焦点位置センサ29,30によるオートフォーカス機能が無効であると判定する。
もし、光源1が劣化した場合、第1および第2焦点位置センサ29、30で検出される光強度全体が低下する。従って、光源1の劣化を考慮した場合、第1および第2焦点位置センサ29、30で検出された光強度(光強度の絶対値)で判定を行うと、光強度判定回路126は、オートフォーカス機能の信頼性を正確に判定できない場合がある。
これに対し、第2実施形態では、光強度の絶対値ではなく、上述のようにフォトセンサSa〜Sdの全体の光強度(Ia+Ib+Ic+Id)に対する各フォトセンサ(Sa〜Sd)の光強度(Ia,Ib,IcまたはId)の相対的な比率で判定する。これにより、光源1が劣化しても、光強度判定回路126は、オートフォーカス機能の信頼性を正確に判定することができる。従って、フォトセンサSa〜Sdの全体の光強度に対する各フォトセンサ(Sa〜Sd)の比率で判定することが好ましいと言える。
第2実施形態のその他の動作は、第1実施形態と同様でよい。従って、第2実施形態は第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
尚、第2実施形態では、光強度判定回路126は、第1および第2焦点位置センサ29、30の両方で検出された光強度分布を用いてオートフォーカス機能の信頼性を判定している。しかし、光強度判定回路126は、第1および第2焦点位置センサ29、30のいずれか一方で検出された光強度分布のみを用いてオートフォーカス機能の信頼性を判定してもよい。
また、光源1がさほど劣化しない場合、光強度判定回路126は、フォトセンサSa〜Sdの光強度と所定の閾値とを比較して、第1および第2焦点位置センサ29,30によるオートフォーカス機能の信頼性を判断してよい。例えば、フォトセンサSa〜Sdの全体またはいずれかの光強度が閾値以上である場合に、光強度判定回路126は、オートフォーカス機能を有効であると判定し、フォトセンサSa〜Sdの全体またはいずれかの光強度が閾値未満である場合に、光強度判定回路126は、オートフォーカス機能を無効と判定してもよい。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。