本発明の一実施形態に係る作業車両である自律走行作業車両の構成について、図1〜図5を参照しつつ説明する。図1に示すように、無人で自律走行可能な自律走行作業車両(以下、無人車両と称することがある)1、及び、この自律走行作業車両1に協調して作業者が操向操作する有人の走行作業車両(以下、有人車両と称することがある)100をトラクタとし、自律走行作業車両1及び走行作業車両100には作業機としてロータリ耕耘装置がそれぞれ装着されている実施例について説明する。但し、作業車両はトラクタに限定するものではなく、コンバイン等でもよく、また、作業機はロータリ耕耘装置に限定するものではなく、畝立て機や草刈機やレーキや播種機や施肥機等であってもよい。
本明細書において「自律走行」とは、トラクタが備える制御部(ECU)によりトラクタが備える走行に関する構成が制御されて予め定められた経路に沿ってトラクタが走行することを意味する。単一の圃場における農作業を、無人車両及び有人車両で実行することを、農作業の協調作業、追従作業、随伴作業などと称することがある。なお、農作業の協調作業としては、「単一圃場における農作業を、無人車両及び有人車両で実行すること」に加え、「隣接する圃場等の異なる圃場における農作業を同時期に無人車両及び有人車両で実行すること」が含まれてもよい。
図1および図2において、自律走行作業車両1となるトラクタの全体構成について説明する。トラクタの車体部2は、ボンネット3内にエンジン4が内設され、該ボンネット3の後部のキャビン12内にダッシュボード14が設けられ、ダッシュボード14上に操向操作手段となるステアリングハンドル5が設けられている。該ステアリングハンドル5の回動により操舵装置を介して前輪10・10の向きが回動される。操舵装置を作動させる操舵アクチュエータ40は制御部30を構成するステアリングコントローラ301と接続される。自律走行作業車両1の操舵方向は操向センサ20により検知される。操向センサ20はロータリエンコーダ等の角度センサからなり、前輪10の回動基部に配置される。但し、操向センサ20の検知構成は限定するものではなく操舵方向が認識されるものであればよく、ステアリングハンドル5の回動を検知したり、パワーステアリングの作動量を検知してもよい。操向センサ20により得られた検出値は制御部30のステアリングコントローラ301に入力される。
制御部30は、ステアリングコントローラ301、エンジンコントローラ302、変速制御コントローラ303、水平制御コントローラ304、作業制御コントローラ305、測位制御ユニット306、自律走行制御コントローラ307等を備え、それぞれCPU(中央演算処理装置)やRAMやROM等の記憶装置やインターフェース等を備え、記憶装置には動作させるためのプログラムやデータ等が記憶され、CAN通信によりそれぞれ情報やデータ等を送受信できるように通信可能としている。また、自律走行制御コントローラ307は、プログラムやデータ等が記憶される記憶部たるメモリ309を備えている。
前記ステアリングハンドル5の後方に運転席6が配設され、運転席6下方にミッションケース7が配置される。ミッションケース7の左右両側にリアアクスルケース9・9が連設され、該リアアクスルケース9・9には車軸を介して後輪11・11が支承される。エンジン4からの動力はミッションケース7内の変速装置(主変速装置や副変速装置)により変速されて、後輪11・11を駆動可能としている。変速装置は例えば油圧式無段変速装置で構成して、可変容量型の油圧ポンプの可動斜板をモータ等の変速手段44により作動させて変速可能としている。変速手段44は制御部30の変速制御コントローラ303と接続されている。後輪11の回転数は車速センサ27により検知され、走行速度として変速制御コントローラ303に入力される。但し、車速の検知方法や車速センサ27の配置位置は限定するものではない。
ミッションケース7内にはPTOクラッチやPTO変速装置が収納され、PTOクラッチはPTO入切手段45により入り切りされ、PTO入切手段45は表示手段49を介して制御部30の自律走行制御コントローラ307と接続され、PTO軸への動力の断接を制御可能としている。また、作業機として播種機や畦塗機等を装着した場合、作業機独自の制御ができるように作業機コントローラ308が備えられ、該作業機コントローラ308は情報通信配線(所謂、ISOBUS)を介して作業制御コントローラ305と接続される。
前記エンジン4を支持するフロントフレーム13にはフロントアクスルケース8が支持され、該フロントアクスルケース8の両側に前輪10・10が支承され、前記ミッションケース7からの動力を前輪10・10に伝達可能に構成している。前記前輪10・10は操舵輪となっており、ステアリングハンドル5の回動操作により回動可能とするとともに、操舵装置の駆動手段となるパワステシリンダからなる操舵アクチュエータ40により前輪10・10が左右操舵回動可能となっている。操舵アクチュエータ40は制御部30のステアリングコントローラ301と接続されて制御される。
エンジン回転制御手段となるエンジンコントローラ302にはエンジン回転数センサ61や水温センサや油圧センサ等が接続され、エンジン4の状態を検知できるようにしている。エンジンコントローラ302では設定回転数と実回転数から負荷を検出し、過負荷とならないように制御するとともに、後述する遠隔操作装置112にエンジン4の状態を送信して表示装置113で表示できるようにしている。
また、ステップ下方に配置した燃料タンク15には燃料の液面を検知するレベルセンサ29が配置されて表示手段49と接続され、表示手段49は自律走行作業車両1のダッシュボード14に設けられ、燃料の残量を表示する。そして、燃料の残量は自律走行制御コントローラ307で作業可能時間が演算され、通信装置110を介して遠隔操作装置112に情報が送信されて、遠隔操作装置112の表示装置113に燃料残量と作業可能時間が表示可能とされる。なお、回転計、燃料計、油圧、異常を表示する表示手段と、現在位置等を表示可能な表示手段とは別構成でもよい。
前記ダッシュボード14上にはエンジン4の回転計や燃料計や油圧等や異常を示すモニタや設定値等を表示する表示手段49が配置されている。表示手段49は遠隔操作装置112と同様にタッチパネル式として、データの入力や選択やスイッチ操作やボタン操作等も可能としている。
また、トラクタの車体部2の後部に作業機装着装置23を介して作業機24が昇降可能に装設させている。本実施形態では、作業機24としてロータリ耕耘装置を採用しており、前記ミッションケース7上に昇降シリンダ26が設けられ、該昇降シリンダ26を伸縮させることにより、作業機装着装置23を構成する昇降アームを回動させて作業機24を昇降できるようにしている。昇降シリンダ26は昇降アクチュエータ25の作動により伸縮され、昇降アクチュエータ25は制御部30の水平制御コントローラ304と接続されている。また、前記作業機装着装置23の左右一側のリフトリンクには傾斜シリンダが設けられ、該傾斜シリンダを作動させる傾斜アクチュエータ47は水平制御コントローラ304と接続されている。
位置検出部となる測位制御ユニット306には位置情報を検出可能とするための移動GPSアンテナ34とデータ受信アンテナ38が接続され、移動GPSアンテナ34とデータ受信アンテナ38は前記キャビン12上に設けられる。測位制御ユニット306には、位置算出手段を備えて緯度と経度を算出し、現在位置を表示手段49や遠隔操作装置112の表示装置113で表示できるようにしている。なお、GPS(米国)に加えて準天頂衛星(日本)やグロナス衛星(ロシア)等の衛星測位システム(GNSS)を利用することで精度の高い測位ができるが、本実施形態ではGPSを用いて説明する。
自律走行作業車両1は、車体部2の姿勢変化情報を得るためにジャイロセンサ31、および進行方向を検知するために方位角検出部32を具備し制御部30と接続されている。但し、GPSの位置計測から進行方向を算出できるので、方位角検出部32を省くことができる。ジャイロセンサ31は、車体部2の前後方向の傾斜(ピッチ)の角速度、車体部2の左右方向の傾斜(ロール)の角速度、および旋回(ヨー)の角速度、を検出するものである。該三つの角速度を積分計算することにより、車体部2の前後方向および左右方向への傾斜角度、および旋回角度を求めることが可能である。ジャイロセンサ31の具体例としては、機械式ジャイロセンサ、光学式ジャイロセンサ、流体式ジャイロセンサ、振動式ジャイロセンサ等が挙げられる。ジャイロセンサ31は制御部30に接続され、当該三つの角速度に係る情報を制御部30に入力する。
方位角検出部32は自律走行作業車両1の向き(進行方向)を検出するものである。方位角検出部32の具体例としては磁気方位センサ等が挙げられる。方位角検出部32はCAN通信手段を介して自律走行制御コントローラ307に情報が入力される。
こうして自律走行制御コントローラ307は、上記ジャイロセンサ31、方位角検出部32から取得した信号を姿勢・方位演算手段により演算し、自律走行作業車両1の姿勢(向き、車体部2の前後方向及び左右方向の傾斜、旋回方向)を求める。
自律走行作業車両1の位置情報は、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)を用いて取得する。GPSを用いた測位方法としては、単独測位、相対測位、DGPS(ディファレンシャルGPS)測位、RTK−GPS(リアルタイムキネマティック−GPS)測位など種々の方法が挙げられ、これらいずれの方法を用いることも可能であるが、本実施形態では測定精度の高いRTK−GPS測位方式を採用する。
RTK−GPS(リアルタイムキネマティック−GPS)測位は、位置が判っている基準局と、位置を求めようとする移動局とで同時にGPS観測を行い、基準局で観測したデータを無線等の方法で移動局にリアルタイムで送信し、基準局の位置成果に基づいて移動局の位置をリアルタイムに求める方法である。
本実施形態においては、自律走行作業車両1に移動局となる測位制御ユニット306と移動GPSアンテナ34とデータ受信アンテナ38が配置され、基準局となる固定通信機35と固定GPSアンテナ36とデータ送信アンテナ39が所定位置に配設される。本実施形態のRTK−GPS(リアルタイムキネマティック−GPS)測位は、基準局および移動局の両方で位相の測定(相対測位)を行い、基準局の固定通信機35で測位したデータをデータ送信アンテナ39からデータ受信アンテナ38に送信する。
自律走行作業車両1に配置された移動GPSアンテナ34はGPS衛星37・37・・・からの信号を受信する。この信号は測位制御ユニット306に送信され測位される。そして、同時に基準局となる固定GPSアンテナ36でGPS衛星37・37・・・からの信号を受信し、固定通信機35で測位し測位制御ユニット306に送信し、観測されたデータを解析して移動局の位置を決定する。
こうして、自律走行制御コントローラ307は自律走行作業車両1を自律走行させる自律走行手段として備えられる。つまり、自律走行制御コントローラ307と接続された各種情報取得ユニットによって、自律走行作業車両1の走行状態を各種情報として取得し、自律走行制御コントローラ307と接続された各種制御ユニットによって、自律走行作業車両1の自律走行を制御する。具体的には、GPS衛星37・37・・・から送信される電波を受信して測位制御ユニット306において設定時間間隔で車体部2の位置情報を求め、ジャイロセンサ31及び方位角検出部32から車体部2の変位情報および方位情報を求め、これら位置情報と変位情報と方位情報に基づいて車体部2が予め設定した経路(走行経路と作業経路)Rに沿って走行するように、操舵アクチュエータ40、変速手段44、昇降アクチュエータ25、PTO入切手段45、エンジンコントローラ302等を制御して自律走行し、自動で作業できるようにしている。
また、自律走行作業車両1には障害物センサ41が配置されて制御部30と接続され、障害物に当接しないようにしている。例えば、障害物センサ41はレーザセンサや超音波センサやカメラで構成して車体部2の前部や側部や後部に配置して制御部30と接続し、制御部30によって車体部2の前方や側方や後方に障害物があるかどうかを検出し、障害物が設定距離以内に近づくと走行を停止させるように制御する。
また、自律走行作業車両1には前方を撮影するカメラ42Fや後方の作業機や作業後の圃場状態を撮影するカメラ42Rが搭載され制御部30と接続されている。カメラ42F・42Rは本実施形態ではキャビン12のルーフの前部上と後部上に配置しているが、配置位置は限定するものではなく、キャビン12内の前部上と後部上や一つのカメラ42を車体部2の中心に配置して鉛直軸を中心に回転させて周囲を撮影しても、複数のカメラ42を車体部2の四隅に配置して車体部2の周囲を撮影する構成であってもよい。カメラ42F・42Rで撮影された映像は走行作業車両100に備えられた遠隔操作装置112の表示装置113に表示される。
遠隔操作装置112は前記自律走行作業車両1の後述する作業経路Raおよび走行経路Rbを設定したり、自律走行作業車両1を遠隔操作したり、自律走行作業車両1の走行状態や作業機の作動状態を監視したり、作業データを記憶したりするものであり、制御装置(CPUやメモリ)や通信装置111や表示装置113等を備える。
有人走行車両となる走行作業車両100は作業者が乗車して運転操作するとともに、走行作業車両100に遠隔操作装置112を搭載して自律走行作業車両1を操作可能としている。走行作業車両100の基本構成は自律走行作業車両1と略同じ構成であるので詳細な説明は省略する。なお、走行作業車両100(または遠隔操作装置112)にGPS用の制御ユニットを備える構成とすることも可能である。
遠隔操作装置112は、走行作業車両100及び自律走行作業車両1のダッシュボード等の操作部に着脱可能としている。遠隔操作装置112は走行作業車両100のダッシュボードに取り付けたまま操作することも、走行作業車両100の外に持ち出して携帯して操作することも、自律走行作業車両1のダッシュボード14に取り付けても操作可能としている。遠隔操作装置112は、例えばノート型やタブレット型のパーソナルコンピュータで構成することができる。本実施形態ではタブレット型のパーソナルコンピュータで構成している。
さらに、遠隔操作装置112と自律走行作業車両1は無線で相互に通信可能に構成しており、自律走行作業車両1と遠隔操作装置112には通信するための通信装置110・111がそれぞれ設けられている。通信装置111は遠隔操作装置112に一体的に構成されている。通信手段は、例えば無線LAN等で相互に通信可能に構成されている。遠隔操作装置112は画面に触れることで操作可能なタッチパネル式の操作画面とした表示装置113を筐体表面に設け、筐体内に通信装置111やCPUや記憶装置114やバッテリ等を収納している。
次に、遠隔操作装置112により作業経路Raおよび走行経路Rbを設定する手順について説明する。遠隔操作装置112の表示装置113はタッチパネル式としており、電源をオンして遠隔操作装置112を起動させると初期画面が現れるようにしている。初期画面では、図3に示すように、トラクタ設定ボタン201、圃場設定ボタン202、経路生成設定ボタン203、データ転送ボタン204、作業開始ボタン205、終了ボタン206が表示される。
まず、トラクタ設定について説明する。トラクタ設定ボタン201をタッチすると、過去にこの遠隔操作装置112によりトラクタを用いて作業を行った場合、つまり、過去に設定したトラクタが存在する場合、そのトラクタ名(機種)が表示される。複数のトラクタ名が表示されると今回使用するトラクタ名をタッチして選択し、その後初期画面に戻る。新規にトラクタ設定を行う場合には、トラクタの機種を特定する。この場合、機種名を直接入力する。或いは、複数のトラクタの機種を表示装置113に一覧表示させて所望の機種を選択できるようにしている。
トラクタの機種が設定されると、移動GPSアンテナ34の取付位置の設定画面が現れる。移動GPSアンテナ34の取付位置は、トラクタによって異なり、取り付ける技術者によっても異なる場合もあるので、トラクタの平面図を表示させて取付位置を設定する。
移動GPSアンテナ34の取付位置が設定されると、トラクタに装着される作業機のサイズ、形状、作業機の位置の設定画面が現れる。作業機の位置は前部か、前輪と後輪の間か、後部か、オフセットか、を選択する。作業機の設定が終了すると、作業中の車速、作業中のエンジン回転数、旋回時の車速、旋回時のエンジン回転数の設定画面が現れる。作業中の車速は往路と復路で異なる車速とすることも可能である。車速、及び、エンジン回転数の設定が終了すると、初期画面に戻る。
次に、圃場設定について、説明する。圃場設定ボタン202をタッチすると、過去にこの遠隔操作装置112によりトラクタを用いて作業行った場合、つまり、過去に設定した圃場が存在する場合、設定されている圃場の名前が表示される。表示された複数の圃場名から今回作業を行う圃場名をタッチして選択すると、その後、後述する経路生成設定に進み、或いは、初期画面に戻ることが可能である。なお、設定された圃場を編集又は新規に設定することも可能である。
登録された圃場がない場合には、新規の圃場設定となる。新規の圃場設定を選択すると、図4に示すように、トラクタ(自律走行作業車両1)を圃場H内の四隅のうちの一つの隅Aに位置させ、「測定開始」のボタンをタッチする。その後、トラクタを圃場Hの外周に沿って走行させて圃場形状を登録する。次に、作業者は、登録された圃場形状から、角位置A・B・C・Dや変曲点を登録して圃場形状を特定する。
圃場Hが特定されると、図5に示すように、走行開始位置Srと、作業方向Fと、走行終了位置Grを設定する。この圃場H内に障害物が存在する場合には、障害物の位置までトラクタを移動させ、障害物設定ボタン(図示せず)をタッチして、障害物の周囲を走行して、障害物設定を行う。なお、障害物が圃場Hの周囲近辺に存在したり、障害物が最小旋回半径よりも小さく、その外周を走行すると大きくなり過ぎる場合には、表示される圃場の地図から登録してもよい。上記作業が終了すると、または、過去に登録した圃場を選択すると、確認画面となり、OK(確認)ボタンと「編集/追加」ボタンが表示される。過去に登録した圃場に変更がある場合には、「編集/追加」ボタンをタッチする。
前記圃場設定においてOKボタンをタッチすると、経路生成設定となる。経路生成設定は初期画面で経路生成設定ボタン203をタッチすることによっても設定が可能となる。経路生成設定モードに移ると、自律走行作業車両1に対して走行作業車両100がどの位置で走行するかの選択画面が表示される。つまり、自律走行作業車両1と走行作業車両100の位置関係を設定する。具体的には、(1)走行作業車両100が自律走行作業車両1の左後方に位置する。(2)走行作業車両100が自律走行作業車両1の右後方に位置する。(3)走行作業車両100が自律走行作業車両1の真後ろに位置する。(4)走行作業車両100は併走しない(自律走行作業車両1のみで作業を行う)。の4種類が表示され、タッチすることにより選択できる。
次に、走行作業車両100の作業機の幅を設定する。つまり、作業機の幅を数字で入力する。次に、スキップ数を設定する。つまり、自律走行作業車両1が圃場端(枕地)に至り第1の作業路R1から第2の作業路R2に移動する時に、経路を何本飛ばすかを設定する。具体的には、(1)スキップしない。(2)1列スキップ。(3)2列スキップ。のいずれかを選択する。次に、オーバーラップの設定を行う。つまり、作業路R1と隣接する作業路R2における作業幅の重複量の設定を行う。具体的には、(1)オーバーラップしない。(2)オーバーラップする。を選択する。なお、「オーバーラップする」を選択すると、数値入力画面が表示され、数値を入力しないと次に進むことができない。
次に、外周設定が行われる。つまり、図5に示すような、自律走行作業車両1と走行作業車両100とにより、または、自律走行作業車両1により作業を行う作業領域HAの外側の領域が設定される。言い換えれば、圃場端で非作業状態として旋回走行する枕地HBと、枕地HBと枕地HBとの間の左右両側の圃場外周に接する非作業領域とする側部余裕地HCが設定される。よって、圃場H=作業領域HA+枕地HB+枕地HB+側部余裕地HC+側部余裕地HCとなる。通常、枕地HBの幅Wbと側部余裕地HCの幅Wcは、走行作業車両100が装着した作業機の幅の二倍以下の長さとして、自律走行作業車両1と走行作業車両100とによる併走作業が終了した後に、作業者が走行作業車両100に乗り込み、手動操作で外周を二周することで、仕上げることができるようにしている。但し、自律走行作業車両1で外周を作業することも可能である。
上記の各種設定の入力が終了すると、確認画面が現れ、確認をタッチすると、自動で作業経路Raと走行経路Rbが生成される。作業経路Raは作業領域HA内で生成される経路で、作業を行いながら走行する経路であり、直線の経路となる。但し、作業領域HAが矩形でない場合にははみ出すこともある。走行経路Rbは作業領域HA以外の領域(枕地HBと側部余裕地HC)で生成される経路で、作業を行わずに走行する経路であり、直線と曲線を組み合わせた経路となり、主に、枕地HBにおいて旋回するための経路となる。
作業経路Raと走行経路Rbは自律走行作業車両1と走行作業車両100について、それぞれの作業経路Raと走行経路Rbが生成される。経路生成後にその経路を見たい場合は、経路生成設定ボタン203をタッチすることでシミユレーション画像が表示され、確認することができる。なお、経路生成設定ボタン203をタッチしなくても作業経路Raと走行経路Rbは生成されている。自動で作業経路Raと走行経路Rbが生成される際に、作業開始位置Swと作業終了位置Gwが設定される。作業開始位置Swと作業終了位置Gwは、圃場設定で登録した走行開始位置Srと走行終了位置Grから最も近い対応する位置に設定される。また、経路生成設定の各項目を設定すると、経路生成設定が表示され、その下部に、「経路設定ボタン」「データ転送する」「ホームへ戻る」が選択可能に表示される。
前記情報を転送するときは、初期画面において設けられたデータ転送ボタン204をタッチすることで転送できる。この転送は遠隔操作装置112で行われるため、これら設定した情報を自律走行作業車両1の制御装置に転送する必要がある。この転送は、(1)端子を用いて転送する方法と、(2)無線で転送する方法があり、本実施形態では、端子を用いる場合には、USBケーブルを用いて遠隔操作装置112と自律走行作業車両1の制御装置を直接つなぐ、あるいは、USBメモリに一旦記憶させてから、自律走行作業車両1のUSB端子に接続して転送する。また、無線で転送する場合は、無線LANを用いて転送する。
ここで、本発明の一実施形態に係る自律走行作業車両1を作業開始位置Swまで自律走行させる方法について、説明をする。図1に示す如く、本発明の一実施形態に係る自律走行作業車両1は、車体部2と、該車体部2に装着される作業機24を備えており、また、図1および図2に示す如く、車体部2の位置情報を検出可能な位置検出部たる移動GPSアンテナ34を備えている。さらに、自律走行作業車両1は、走行領域たる圃場Hにおける車体部2の走行および作業機24による作業を制御可能な制御部30を備えており、制御部30には、車体部2を走行させる走行領域たる圃場Hの形状、位置、大きさ等を記憶可能な記憶部たるメモリ309が備えられている。なお、以下の説明において制御部30が登場するときには、図2を参照するものとする。
そして、自律走行作業車両1は、遠隔操作装置112で生成された作業経路Raおよび走行経路Rbのデータが制御部30に転送され、メモリ309に記憶されるとともに、移動GPSアンテナ34により車体部2の現在位置Nを検出しつつ作業経路Raおよび走行経路Rbに沿って自律的に走行可能な作業車両として構成されている。なお、自律走行作業車両1の現在位置Nは、通常は移動GPSアンテナ34の位置と一致している。
本実施形態で示す自律走行作業車両1は、図6に示すような略長方形状の圃場Hを走行領域としており、圃場Hを構成する第1の領域たる作業領域HAと、第2の領域たる枕地HBおよび側部余裕地HCにおいて、自律走行可能に構成されている。なお、走行作業車両100は、走行領域たる圃場H内を自律走行する自律走行作業車両1に追従(または随伴)して、オペレータの運転により走行する。
自律走行作業車両1は、現在位置Nが圃場H内に位置している場合には、制御部30によって、自律走行できるように構成されている。一方、自律走行作業車両1は、圃場Hの外部(公道等)では、制御部30によって、自律走行できないように構成されている。
さらに、自律走行作業車両1は、現在位置Nが走行開始位置Srに位置している場合に、制御部30によって、自律走行できるように構成されている。
そして、自律走行作業車両1は、現在位置Nが枕地HB上の走行開始位置Srに位置しているときに、オペレータによって作業開始ボタン205(図3参照)が押されて、「作業開始」の指示が与えられると、制御部30によって、図6に示すように、そのときの現在位置Nから作業開始位置Swまで自律走行して、作業開始位置Swに到達した後で、作業機24(図1、2参照)による作業を開始するように構成することができる。
このように自律走行作業車両1は、作業開始位置Swから離れた位置で自律走行を開始できるように構成しているため、圃場Hの入口と作業開始位置Swの距離が離れているような場合に、オペレータが移動する労力を減らすことができ、ひいては、自律走行作業車両1を用いた作業の効率を向上させることができる。
遠隔操作装置112は、上述したトラクタ設定、圃場設定および経路生成設定の設定結果に基づいて作業経路Raおよび走行経路Rbを生成する。ところで、遠隔操作装置112は、圃場設定において設定された走行開始位置Srから走行終了位置Grに至る作業経路Raおよび走行経路Rbを含む経路Rを生成し、経路Rの情報を自律走行作業車両1に送信可能である。そして当該経路Rの情報を取得した自律走行作業車両1(制御部30)は、自律走行作業車両1の現在位置Nおよび方位角と、上記走行開始位置Srおよび作業方向Fとを比較してその差異が所定の偏差内である場合に自律走行を開始させることが可能である。
ここで、図7に示すように、圃場Hの入口が圃場Hの左右幅の略中央付近に位置し、ユーザ(オペレータ)が圃場設定において走行開始位置Srとして、圃場Hの左右幅の略中央付近に位置する地点Saを選択し、走行終了位置Grとして地点Sbを選択した場合について以下説明する。
この場合、遠隔操作装置112は、地点Saから地点Sbに至る経路Rを生成する。一般に経路Rは地点Saから地点Sbに向かって生成されるが、地点Saが圃場Hの左右幅の略中央付近である場合、地点Saから地点Sbとは反対側に向かう経路も生成する必要があり、経路生成が複雑になる。また、走行作業車両100が自律走行作業車両1に協調して作業を行う場合、走行作業車両100を操作するオペレータにとっては次にどの経路に進むのかの予測が困難となる。
そこで、本発明の一実施形態に係る自律走行作業車両1では、圃場設定において圃場Hの角部以外の地点(例えば地点Sa)が走行開始位置Srとして指定されたときに、「地点Saから地点Scまで農作業を伴わずに自律走行を行った後に、地点Scから地点Sbに向かって農作業を伴う自律走行を行う」か否かを選択させる構成としている。但し、図6に示すように、地点Saと地点Scとの距離Lが、所定の設定値β以上(例えば、設定値β=10m)離れている場合にのみ、「地点Saから地点Scまで農作業を伴わずに自律走行を行った後に、地点Scから地点Sbに向かって農作業を伴う自律走行を行う」か否かを選択させる。このような構成により、オペレータは作業開始位置Swまで自律走行作業車両1を運転することなく、入口近傍の圃場H内に自律走行作業車両1を持ち込むだけで自律走行させることができ、オペレータの移動距離を短くできて作業効率を向上できる。
一方、距離Lが所定の設定値β未満である場合には、「地点Saから地点Scまでオペレータの運転操作による走行をした後に、地点Scから地点Sbに向かって農作業を伴う自律走行を行う」かを選択させることとしてもよい。距離Lが近い場合は、ユーザの負担が小さいためである。なお、上記選択をさせるタイミングは、上記タイミング(即ち圃場設定時)に限られるものではなく、圃場設定終了後の所定タイミング、例えば、地点Saから地点Sbに至る経路Rを生成し、ユーザに経路Rを提示した(例えば、上記シミュレーション画像を表示した)後であってもよい。
ユーザにより「地点Saから地点Scまで農作業を伴わずに自律走行をした後に、地点Scから地点Sbに向かって農作業を伴う自律走行を行う」ことが選択された場合、遠隔操作装置112は、図6に示すように、上記作業経路Ra及び走行経路Rbに加えて、地点Saから地点Scに至る走行経路Rcを含む経路Rを生成する。
一方、ユーザにより「地点Saから地点Scまでオペレータの運転操作による走行をした後に、地点Scから地点Sbに向かって農作業を伴う自律走行を行う」ことが選択された場合、遠隔操作装置112は、上記作業経路Ra及び走行経路Rbを含み、走行経路Rcを含まない経路Rを生成する。
即ち、本発明の一実施形態に係る作業車両である自律走行作業車両1は、車体部2と、車体部2に装着される作業機24と、車体部2の位置情報を検出可能な位置検出部たる移動GPSアンテナ34と、車体部2を走行させる走行領域たる圃場Hを記憶可能な記憶部たるメモリ309と、圃場H内における車体部2の走行及び作業機による作業を制御可能な制御部30と、を備え、圃場Hは、作業機24により作業が行われる作業経路Raを含む第1の領域たる作業領域HAと、作業領域HAの周囲に設定される第2の領域たる枕地HBとを含み、制御部30は、枕地HBにおいて作業機24による作業の開始が指示された場合、車体部2を、車体部2の現在位置Nから作業経路Raの開始地点である作業開始位置Swまで走行させた後、作業機24による作業を開始させることが可能であるものである。このような構成により、自律走行作業車両1をオペレータの運転によって作業開始位置Swまで配置する必要がなくなり、自律走行作業車両1を用いて行う作業の効率をより良くすることができる。
また、走行経路Rcを含む経路Rに沿って自律走行を行う場合、図7に示すように、自律走行作業車両1の現在位置N及び方位角θaと、地点Saを通る作業方向Fに平行な仮想開始線s上の何れかの地点Sd、および、地点Saと地点Scとを結ぶ線分と仮想開始線sの成す角θb(本実施形態では90度)とを比較して、その差異が所定の偏差内である場合に自律走行を開始させる構成とすることが可能である。ここで所定の偏差とは、例えば、現在位置Nと地点Sdとの距離L1が所定の設定値α(例えば、所定の設定値α=1m)以内であり、方位角θaと角θbとの差異が所定の設定値ε(例えば、所定の設定値ε=15度)であることを意味する。
次に、圃場設定において走行開始位置Srとして地点Scが選択された場合、あるいは、走行開始位置Srとして地点Saが選択されたものの地点Saから地点Scまでオペレータの運転操作による走行が行われた場合の自動走行の開始について説明する。
従来は、作業開始位置Swにおける作業車両の向きが、作業車両の走行精度(ひいては作業精度)に影響を及ぼすことが考慮されていなかった。このため従来は、作業開始位置Swにおける作業車両の向きによっては、作業車両の実際の走行軌跡が、設定した走行経路Rbから乖離してしまう場合があり、自律走行可能な作業車両による作業精度の確保が困難となる場合があった。
本発明の一実施形態に係る自律走行作業車両1は、制御部30による経路の生成に際して、自律走行作業車両1の向き(方位角)が走行精度(ひいては作業精度)に影響を及ぼすことを考慮する構成としている。
自律走行作業車両1は、現在位置Nが枕地HB上の走行開始位置Srに位置しており、かつ、作業開始の指示が与えられたときに、制御部30によって、現在位置Nにおける該自律走行作業車両1の方位角を考慮して、自律走行を開始するか否かの判断をすることができるように構成されている。
自律走行作業車両1では、制御部30によって、図8に示すように、基準方位Xに対する自律走行作業車両1の方位角θ1と、自律走行作業車両1の現在位置Nから作業開始位置Swに対する方位角θ2との角度差dθを算出することができるように構成されており、算出した角度差dθが所定の閾値未満であるときに、現在位置Nから作業開始位置Swまでの自律走行を許可することができるように構成されている。
自律走行作業車両1は、現在位置Nが枕地HB内に位置する状態で、オペレータによって作業開始ボタン205(図3参照)が押されたときに、現在位置Nにおける基準方位Xに対する方位角θ1を、方位角検出部32(図2参照)によって検出するとともに、制御部30によって、現在位置Nから作業開始位置Swに対する方位角θ2を算出し、両方位角θ1・θ2の角度差dθを算出する。
そして、自律走行作業車両1は、角度差dθが所定の閾値未満(例えば、10°未満)であるときに、制御部30によって、自律走行作業車両1が、現在位置Nから作業開始位置Swまで自律走行することを許可することができるように構成することができる。
即ち、本発明の一実施形態に係る作業車両である自律走行作業車両1は、車体部2の方位角を検出可能な方位角検出部32を備え、制御部30は、車体部2の方位角θ1と、現在位置Nから作業開始位置Swに対する方位角θ2と、の角度差dθが所定の閾値以内でなければ、車体部2を現在位置Nから作業開始位置Swまで走行させないものである。このように、車体部2の方位角θ1の方位角θ2に対する角度差dθが所定の閾値以内であるときに車体部2を自律走行させる構成により、設定した作業開始位置Swに対する車体部2の現在位置Nの誤差を抑制することができる。
また、自律走行作業車両1は、制御部30によって、図9に示すように、作業開始位置Swを含む第1の作業路R1を枕地HB側に延長した仮想延長線fを特定し、仮想延長線fに対する現在位置Nが所定の偏差内であるときに、制御部30によって、自律走行作業車両1の自律走行を許可することができるように構成することができる。なお、仮想延長線fは、作業開始位置Swにおける作業方向Fの方向に向いており、第1の作業路R1の方向に一致している。また、ここでいう「偏差」とは、仮想延長線fに対する現在位置Nのズレ具合であり、具体的には、仮想延長線fに対する現在位置Nの距離である。
つまり、自律走行作業車両1は、現在位置Nが枕地HB内に位置しており、かつ、作業開始の指示が与えられたときに、制御部30によって、仮想延長線fに対する現在位置Nの偏差を考慮して、自律走行を開始するか否かの判断をすることができるように構成されている。
具体的には、自律走行作業車両1では、図9に示すように、仮想延長線fに対する現在位置Nの偏差が所定の偏差α以内(例えば、偏差α=1m以内)であるときに、制御部30によって、自律走行作業車両1が、現在位置Nから作業開始位置Swまで自律走行することを許可することができる構成とすることができる。
そして、自律走行作業車両1は、制御部30によって、特定した仮想延長線fと現在位置Nとの偏差αを小さくするように、車体部2の走行を制御する構成とすることができる。
即ち、本発明の一実施形態に係る作業車両である自律走行作業車両1において、作業経路Raは、作業開始位置Swを含む第1の作業路R1を含み、制御部30は、第1の作業路R1を枕地HBに延長した仮想経路たる仮想延長線fを特定し、現在位置Nが仮想延長線fに対して所定の偏差α以内であれば、前記偏差を減少させるよう車体部2の走行を制御して、車体部2を現在位置Nから作業開始位置Swまで走行させることが可能であるものである。このような構成により、車体部2が作業開始位置Swに到達したときの、作業開始位置Swに対する現在位置Nの誤差を抑制することができる。
また、自律走行作業車両1では、図10に示すように、仮想延長線fに対する現在位置Nの偏差が所定の偏差α外(例えば、偏差α>1m)であるときに、制御部30によって、自律走行作業車両1をそのまま自律走行させることを許可しないことができるように構成することができる。
仮想延長線fに対する現在位置Nの偏差が所定の偏差α外である場合、自律走行作業車両1では、現在位置Nから作業開始位置Swまで、追加の走行経路Rbを生成し、追加で生成した走行経路Rbに沿って、自律走行することを許可することができるように構成することができる。
即ち、本発明の一実施形態に係る作業車両である自律走行作業車両1において、作業経路Raは、作業開始位置Swを含む第1の作業路R1を含み、制御部30は、第1の作業路R1を枕地HBに延長した仮想経路たる仮想延長線fを特定し、現在位置Nが仮想延長線fに対して所定の偏差外であれば、現在位置Nから作業開始位置Swまでの走行経路Rbを生成し、走行経路Rbに沿って車体部2を走行させることが可能であるものである。このような構成により、車体部2の現在位置Nと作業開始位置Swが離れているときに、オペレータが作業開始位置Swまで有人走行させなくても、自律走行作業車両1を作業開始位置Swに配置することができ、オペレータにより自律走行作業車両1を作業開始位置Swに配置する手間を省くことができる。
なお、仮想延長線fに対する現在位置Nの偏差αを小さくするためには、現在位置Nから作業開始位置Swに至るまでの経路が長いほど有利である。
ここで、走行開始位置Srの設定方法について、説明する。自律走行作業車両1は、制御部30によって、図11に示すように、自律走行作業車両1が、自律走行を開始することができる位置である走行開始位置Srを、圃場H内に設定することができる。そして、自律走行作業車両1は、制御部30によって、現在位置Nが走行開始位置Srに一致しているときに、自律走行の開始が許可されるように構成している。
自律走行作業車両1の現在位置Nは、通常は移動GPSアンテナ34の位置と一致しているため、移動GPSアンテナ34の位置が走行開始位置Srに一致したときに、制御部30によって、自律走行を開始させる構成とすることができる。
自律走行作業車両1は、表示装置113上に走行開始位置Srと現在位置Nを表示することができるように構成されており、オペレータが表示装置113を確認しながら、走行開始位置Srと現在位置Nが一致するように自律走行作業車両1を運転操作することで、走行開始位置Srに対する自律走行作業車両1の位置決めを容易に行うことが可能となっている。
走行開始位置Srは、図11に示すように、枕地HB上に設定することが好ましい。また、走行開始位置Srは、枕地HB上であって、かつ、作業開始位置Swからできる限り離れた位置に設定することがより好ましい。
これは、走行開始位置Srを作業開始位置Swからできる限り離間させておけば、自律走行作業車両1が走行開始位置Srから作業開始位置Swまで自律走行する間に、自律走行作業車両1の方位角や姿勢を修正する余裕がうまれるためである。
さらに、走行開始位置Srは、制御部30によって仮想延長線fを特定するとともに、仮想延長線f上で、かつ、枕地HBの作業領域HAからできる限り離れた位置に設定することがより好ましい。
これは、自律走行作業車両1を仮想延長線f上に配置しておけば、自律走行作業車両1が走行開始位置Srから作業開始位置Swまで自律走行する間に、自律走行作業車両1の方位角や姿勢をより精度よく修正することができるためである。
そして、自律走行作業車両1は、図12に示すように、制御部30によって、方位角θ1・θ2や、仮想延長線fに対する現在位置Nの偏差α等を考慮して、走行開始位置Srを設定する構成とすることができる。これにより、自律走行作業車両1を走行開始位置Srに配置するだけで、作業開始位置Swにおける自律走行作業車両1の方位角や姿勢を整えることが可能になり、自律走行作業車両1による作業精度の向上を図ることが可能になる。
自律走行作業車両1では、特定した仮想延長線fと現在位置Nとの偏差αを確実に小さくさせるとともに、角度差dθを確実に小さくさせるために、走行開始位置Srと作業開始位置Swとの距離をできる限り大きくすることが好ましい。
また、走行開始位置Srを設定するときには、作業機24の大きさ・形状等を考慮して、作業機24が枕地HBから食み出さない範囲で、枕地HBにおける作業領域HAから極力離れた位置に走行開始位置Srを設定することが好ましい。
また、自律走行作業車両1は、走行開始位置Srと作業開始位置Swとの間は、制御部30によって、枕地HBを走行するように走行経路Rbが設定され、これにより、作業領域HAを荒らすことなく、自律走行作業車両1を作業開始位置Swに配置することができる。
自律走行作業車両1は、図11および図13(A)に示すように、走行開始位置Srを所定の面積を有する「領域」として設定している。走行開始位置Srが「点」として設定されていると、現在位置Nを走行開始位置Srに一致させるときには高い位置決め精度が要求されることとなり、自律走行作業車両1の走行開始位置Srへの位置決めが困難になる。
このため、自律走行作業車両1では、走行開始位置Srを「領域」として設定することによって、位置決め時の要求精度が緩和されており、自律走行作業車両1の走行開始位置Srへの位置決めを容易に行うことができるように構成されている。
具体的には、自律走行作業車両1では、図13(A)に示すように、走行開始位置Srを「円形領域」として設定することができる。この場合、走行開始位置Srの中心点と半径を指定するだけで容易に走行開始位置Srたる「領域」を設定することが可能になる。また、この場合の「円形領域」の半径は、作業開始位置Swにおいて許容される初期公差以下の半径とすることが好ましく、これにより、作業開始位置Swにおける位置決め精度を確保できる。
走行開始位置Srとして設定する「領域」は、オペレータが指定した点を中心とした所定半径を有する「円形領域」として設定され、該「領域」内に自律走行作業車両1の移動GPSアンテナ34が配置されたときに、自律走行作業車両1が走行開始位置Srに配置されたと判定される。このような構成により、自律走行作業車両1を走行開始位置Srに容易に配置することができる。
また、走行開始位置Srとして設定する「領域」を、枕地HB内に設定することによって、自律走行作業車両1が圃場H外で自律走行することを防止できる。
なお、走行開始位置Srとして設定する「領域」の形状は円形には限定されず、例えば、図13(B)に示すように、多角形(ここでは長方形)であってもよく、さらに、図13(C)に示すように、作業開始位置Sw側に近づくにつれて左右の幅が狭くなるような形状としてもよい。