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JP6867635B1 - ゲノム改変方法及びゲノム改変キット - Google Patents

ゲノム改変方法及びゲノム改変キット Download PDF

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JP6867635B1
JP6867635B1 JP2020143089A JP2020143089A JP6867635B1 JP 6867635 B1 JP6867635 B1 JP 6867635B1 JP 2020143089 A JP2020143089 A JP 2020143089A JP 2020143089 A JP2020143089 A JP 2020143089A JP 6867635 B1 JP6867635 B1 JP 6867635B1
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康則 相澤
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Abstract

【課題】2つ以上のアレルを効率よく改変することができ、且つ比較的大きな領域の改変が可能な、ゲノム改変方法及び前記ゲノム改変キットを提供する。【解決手段】染色体ゲノムの2つ以上のアレルを改変するゲノム改変方法であって、(a)下記(i)及び(ii)を、前記染色体を含む細胞に導入する工程と、(i)前記染色体ゲノムの標的領域を標的とする配列特異的核酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含むゲノム改変システム、(ii)相互に異なる選択マーカー遺伝子を有する、2種以上の選択マーカー用ドナーDNA(前記選択マーカー用ドナーDNAの種類数は、ゲノム改変の対象とする前記アレルの数と同数以上である)、(b)前記2種以上の選択マーカー用ドナーDNAが有する全ての選択マーカー遺伝子に基づいて、前記細胞を選択する工程と、を含む、ゲノム改変方法。【選択図】なし

Description

本発明は、ゲノム改変方法及びゲノム改変キットに関する。
新規ゲノム編集ツールとしてCRISPR/Casシステムが報告されてから、CRI
SPR/Casシステムを利用した様々な研究が行われている(例えば、特許文献1)。
CRISPR/Casシステムを利用したゲノム編集では、ガイドRNAにより標的化さ
れた標的領域がCas9ヌクレアーゼにより二本鎖切断される。二本鎖切断されたDNA
は、相同組み換え修復(Homologous Directed Repair:HD
R)又は非相同末端再結合(Non−Homologous End−Joining
Repair:NHEJ)により修復されることが知られている。HDRでは、標的領域
の周辺領域と相同な配列を有するドナーDNAをCRISPR/Casシステムと共に細
胞に導入することにより、任意の配列を標的領域に組み込むことができる。
国際公開第2014/093661号
従来のゲノム改変技術では、HDRにより、2個以上のアレルを同時に効率よく改変す
ることはできなかった。また、HDRにより、改変できるゲノム領域のサイズには限界が
あり、ゲノムの大規模改変(例えば、10kbp)を効率よく行うことは困難であった。
そこで、本発明は、2個以上のアレルを効率よく改変することができ、且つ比較的大き
な領域の改変が可能な、ゲノム改変方法及び前記ゲノム改変キットを提供することを課題
とする。
本発明は一例として以下の態様を含む。
[1]染色体ゲノムの2つ以上のアレルを改変するゲノム改変方法であって、
(a)下記(i)及び(ii)を、前記染色体を含む細胞に導入する工程と、
(i)前記染色体ゲノムの標的領域を標的とする配列特異的核酸切断分子、又は前記配列
特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含むゲノム改変システム、
(ii)前記標的領域の上流側に隣接する塩基配列と相同な塩基配列を有する上流ホモロ
ジーアームと、前記標的領域の下流側に隣接する塩基配列と相同な塩基配列を有する下流
ホモロジーアームとの間に、選択マーカー遺伝子の塩基配列を含む、2種以上の選択マー
カー用ドナーDNAであって、前記2種以上の選択マーカー用ドナーDNAは、相互に異
なる選択マーカー遺伝子を有し、前記選択マーカー用ドナーDNAの種類数は、ゲノム改
変の対象とする前記アレルの数と同数以上である、2種以上の選択マーカー用ドナーDN
A、
(b)前記工程(a)の後、前記2種以上の選択マーカー用ドナーDNAが有する全ての
選択マーカー遺伝子に基づいて、前記細胞を選択する工程と、を含む、ゲノム改変方法。
[2]前記選択マーカー遺伝子がポジティブ選択マーカー遺伝子であり、前記工程(b)
が、前記アレルの数と同数の前記ポジティブ選択マーカー遺伝子を発現する細胞を選択す
る工程である、[1]に記載のゲノム改変方法。
[3]前記選択マーカー用ドナーDNAが、前記上流ホモロジーアームと前記下流ホモロ
ジーアームとの間に、ネガティブ選択マーカー遺伝子をさらに有する、[2]に記載のゲ
ノム改変方法。
[4](c)前記工程(b)の後、前記標的領域の上流側に隣接する塩基配列と相同な塩
基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の下流側に隣接する塩基配列と相
同な塩基配列を有する下流ホモロジーアームとの間に、所望の塩基配列を含む組換え用ド
ナーDNAを、前記細胞に導入する工程と、(d)前記工程(c)の後、前記ネガティブ
選択マーカー遺伝子を発現しない細胞を選択する工程と、をさらに含む、[3]に記載の
ゲノム改変方法。
[5]前記ポジティブ選択マーカー遺伝子が薬剤耐性遺伝子であり、前記ネガティブ選択
マーカー遺伝子が蛍光タンパク質遺伝子である、[3]又は[4]に記載のゲノム改変方
法。
[6]前記配列特異的核酸切断分子が、配列特異的エンドヌクレアーゼである、[1]〜
[5]のいずれか一つに記載にゲノム改変方法。
[7]前記ゲノム改変システムが、Casタンパク質と、前記標的領域内の塩基配列に相
同な塩基配列を有するガイドRNAと、を含む、[6]に記載にゲノム改変方法。
[8]下記(i)及び(ii)を含む、染色体ゲノムの2つ以上のアレルを改変するゲノ
ム改変キット。
(i)前記染色体ゲノムの標的領域を標的とす配列特異的核酸切断分子、又は前記配列特
異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含むゲノム改変システム
(ii)前記標的領域の上流側に隣接する塩基配列と相同な塩基配列を有する上流ホモロ
ジーアームと、前記標的領域の下流側に隣接する塩基配列と相同な塩基配列を有する下流
ホモロジーアームとの間に、選択マーカー遺伝子の塩基配列を含む、2種以上の選択マー
カー用ドナーDNAであって、前記2種以上の選択マーカー用ドナーDNAは、相互に異
なる選択マーカー遺伝子を有し、前記選択マーカー用ドナーDNAの種類数は、ゲノム改
変の対象とする前記アレルの数と同数以上である、2種以上の選択マーカー用ドナーDN

[9]前記選択マーカー遺伝子がポジティブ選択マーカー遺伝子である、[8]に記載の
ゲノム改変キット。
[10]前記選択マーカー用ドナーDNAが、前記上流ホモロジーアームと前記下流ホモ
ロジーアームとの間に、ネガティブ選択マーカー遺伝子をさらに有する、[9]に記載の
ゲノム改変キット。
[11]前記配列特異的核酸切断分子が、配列特異的エンドヌクレアーゼである、[8]
〜[10]のいずれか一つに記載にゲノム改変キット。
[12]前記ゲノム改変システムが、Casタンパク質と、前記標的領域内の塩基配列に
相同な塩基配列を有するガイドRNAと、を含む、[8]〜[11]のいずれか一つに記
載にゲノム改変キット。
本発明は一例として以下の態様を含む。
〔1〕染色体ゲノムの2つ以上のアレルが改変された細胞を作製する方法であって、
(a)下記(i)及び(ii)を、2つ以上のアレルを含む細胞に導入して、前記2つ以
上のアレルそれぞれに選択マーカー遺伝子を導入する工程と、
(i)前記染色体ゲノムの2つ以上のアレル中の標的領域を標的とし、当該標的領域を切
断することができる配列特異的核酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコード
するポリヌクレオチドを含むゲノム改変システム、
(ii)2種以上の選択マーカー用ドナーDNAであって、それぞれが前記標的領域の上
流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的
領域の下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームとを
有し、かつ、上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームの間に、選択マーカー遺伝子
の塩基配列を含み、前記2種以上の選択マーカー用ドナーDNAは、相互に区別可能に異
なる選択マーカー遺伝子をそれぞれ有し、前記選択マーカー遺伝子は、選択マーカー用ド
ナーDNAの種類毎に固有であり、前記選択マーカー用ドナーDNAの種類数は、ゲノム
改変の対象とする前記アレルの数と同数以上である、2種以上の選択マーカー用ドナーD
NA、
(b)前記工程(a)の後、前記2以上のアレルに対して異なる種類の選択マーカー用ド
ナーDNAがそれぞれ相同組み換えすることによって、当該2以上のアレルにそれぞれ区
別可能に異なる固有の選択マーカー遺伝子が導入され、導入された当該区別可能に異なる
選択マーカー遺伝子のすべてを発現する細胞を選択する工程(ポジティブ選択のための工
程)と、
を含む、方法。
〔2〕染色体ゲノムの2つ以上のアレルを改変する方法であって、
(a)下記(i)及び(ii)を、2つ以上のアレルを含む細胞に導入して、前記2つ以
上のアレルそれぞれに選択マーカー遺伝子を導入する工程と、
(i)前記染色体ゲノムの2つ以上のアレル中の標的領域を標的とし、当該標的領域を切
断することができる配列特異的核酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコード
するポリヌクレオチドを含むゲノム改変システム、
(ii)2種以上の選択マーカー用ドナーDNAであって、それぞれが前記標的領域の上
流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的
領域の下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームとを
有し、かつ、上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームの間に、選択マーカー遺伝子
の塩基配列を含み、前記2種以上の選択マーカー用ドナーDNAは、相互に区別可能に異
なる選択マーカー遺伝子をそれぞれ有し、前記選択マーカー遺伝子は、選択マーカー用ド
ナーDNAの種類毎に固有であり、前記選択マーカー用ドナーDNAの種類数は、ゲノム
改変の対象とする前記アレルの数と同数以上である、2種以上の選択マーカー用ドナーD
NA、
(b)前記工程(a)の後、前記2以上のアレルに対して異なる種類の選択マーカー用ド
ナーDNAがそれぞれ相同組み換えすることによって、当該2以上のアレルにそれぞれ区
別可能に異なる固有の選択マーカー遺伝子が導入され、導入された当該区別可能に異なる
選択マーカー遺伝子のすべてを発現する細胞を選択する工程(ポジティブ選択のための工
程)と、
を含む、方法。
〔3〕標的領域が5kbp以上の長さを有する、上記〔1〕または〔2〕に記載の方法。
〔4〕標的領域が8kbp以上の長さを有する、上記〔3〕に記載の方法。
〔5〕2種以上の選択マーカー用ドナーDNAがそれぞれ、前記上流ホモロジーアームと
前記下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子とネガティブ
選択用のマーカー遺伝子と標的配列とを有し、ここで、当該選択マーカー遺伝子がポジテ
ィブ選択用にもネガティブ選択用にも用いられる場合には、別のネガティブ選択用の選択
マーカー遺伝子を有していなくてよく、
(c)前記工程(b)の後、下記(iii)及び(iv)を選択された細胞に導入して前
記2以上のアレルに組換え用ドナーDNAを導入する工程と、
(iii)前記標的配列を標的とし、当該標的配列を切断することができる配列特異的核
酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含むゲノ
ム改変システム、
(iv)所望の塩基配列を含む組換え用ドナーDNAであって、前記標的領域の上流側の
塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の
下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームを有する、
組換え用ドナーDNA、
(d)前記工程(c)の後、前記ネガティブ選択用のマーカー遺伝子を発現しない細胞を
選択する工程(ネガティブ選択のための工程)と、
をさらに含む、上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の方法。
〔6〕2種以上の選択マーカー用ドナーDNAがそれぞれ、前記上流ホモロジーアームと
前記下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子とネガティブ
選択用のマーカー遺伝子と標的配列とを有し、ここで、当該選択マーカー遺伝子がポジテ
ィブ選択用にもネガティブ選択用にも用いられる場合には、別のネガティブ選択用の選択
マーカー遺伝子を有していなくてよく、
(c)前記工程(b)の後、下記(iii)及び(iv)を選択された細胞に導入して前
記2以上のアレルに組換え用ドナーDNAを導入する工程と、
(iii)前記標的配列を標的とし、当該標的配列を切断することができる配列特異的核
酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含むゲノ
ム改変システム、
(iv)所望の塩基配列を含む組換え用ドナーDNAであって、前記標的領域の上流側の
塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の
下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームを有する、
組換え用ドナーDNA、
(d)前記工程(c)の後、前記ネガティブ選択用のマーカー遺伝子を発現しない細胞を
選択する工程(ネガティブ選択のための工程)と、
をさらに含む、上記〔3〕に記載の方法。
〔7〕2種以上の選択マーカー用ドナーDNAがそれぞれ、前記上流ホモロジーアームと
前記下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子とネガティブ
選択用のマーカー遺伝子と標的配列とを有し、ここで、当該選択マーカー遺伝子がポジテ
ィブ選択用にもネガティブ選択用にも用いられる場合には、別のネガティブ選択用の選択
マーカー遺伝子を有していなくてよく、
(c)前記工程(b)の後、下記(iii)及び(iv)を選択された細胞に導入して前
記2以上のアレルに組換え用ドナーDNAを導入する工程と、
(iii)前記標的配列を標的とし、当該標的配列を切断することができる配列特異的核
酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含むゲノ
ム改変システム、
(iv)所望の塩基配列を含む組換え用ドナーDNAであって、前記標的領域の上流側の
塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の
下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームを有する、
組換え用ドナーDNA、
(d)前記工程(c)の後、前記ネガティブ選択用のマーカー遺伝子を発現しない細胞を
選択する工程(ネガティブ選択のための工程)と、
をさらに含む、上記〔4〕に記載の方法。
〔8〕組換え用ドナーDNAの上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間の領
域が、5kbp以上の長さを有する、上記〔5〕〜〔7〕のいずれかに記載の方法。
〔9〕組換え用ドナーDNAの上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間の領
域が、5kbp以上の長さを有する、上記〔6〕または〔7〕に記載の方法。
〔10〕組換え用ドナーDNAの上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間の
領域が、5kbp以上の長さを有する、上記〔7〕に記載の方法。
〔11〕組換え用ドナーDNAの上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間の
領域が、8kbp以上の長さを有する、上記〔8〕に記載の方法。
〔12〕下記(i)及び(ii)を含む、染色体ゲノムの2つ以上のアレルを改変するゲ
ノム改変キット。
(i)前記染色体ゲノムの標的領域を標的とし、標的領域を切断することができる配列特
異的核酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含
むゲノム改変システム、
(ii)2種以上の選択マーカー用ドナーDNAであって、前記標的領域の上流側の塩基
配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の下流
側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームを有し、上流ホ
モロジーアームと下流ホモロジーアームの間に、選択マーカー遺伝子の塩基配列を含み、
前記2種以上の選択マーカー用ドナーDNAは、相互に区別可能に異なる選択マーカー遺
伝子を有し、前記選択マーカー遺伝子は、選択マーカー用ドナーDNAの種類毎に固有で
あり、前記選択マーカー用ドナーDNAの種類数は、ゲノム改変の対象とする前記アレル
の数と同数以上である、2種以上の選択マーカー用ドナーDNA。
〔13〕標的領域が5kbp以上の長さを有する、上記〔12〕に記載のキット。
〔14〕標的領域が8kbp以上の長さを有する、上記〔13〕に記載のキット。
〔15〕組換え用ドナーDNAをさらに含む、上記〔12〕〜〔14〕のいずれかに記載
のキット。
〔16〕組換え用ドナーDNAの上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間の
領域が、5kbp以上の長さを有する、上記〔12〕〜〔15〕のいずれかに記載のキッ
ト。
〔17〕組換え用ドナーDNAの上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間の
領域が、8kbp以上の長さを有する、上記〔12〕〜〔16〕のいずれかに記載のキッ
ト。
〔18〕標的領域が5kbp以上の長さを有し、かつ、組換え用ドナーDNAの上流ホモ
ロジーアームと下流ホモロジーアームとの間の領域が、5kbp以上の長さを有する、上
記〔12〕に記載のキット。
〔19〕標的領域が8kbp以上の長さを有し、かつ、組換え用ドナーDNAの上流ホモ
ロジーアームと下流ホモロジーアームとの間の領域が、8kbp以上の長さを有する、上
記〔18〕に記載のキット。
〔20〕組換え用ドナーDNAが、組換え用ドナーDNAの上流ホモロジーアームと下流
ホモロジーアームとの間の領域に塩基配列を有さず、改変後に得られる染色体ゲノムの前
記2つ以上のアレルにおいて、標的領域の上流および下流の配列が、塩基の挿入、置換お
よび欠失なく、シームレスに連結している、上記〔5〕に記載の方法。
〔21〕組換え用ドナーDNAが、組換え用ドナーDNAの上流ホモロジーアームと下流
ホモロジーアームとの間の領域に塩基配列を有さず、改変後に得られる染色体ゲノムの前
記2つ以上のアレルにおいて、標的領域の上流および下流の配列が、塩基の挿入、置換お
よび欠失なく、シームレスに連結している、上記〔6〕または〔7〕に記載の方法。
〔22〕改変後に得られる染色体ゲノムの前記2つ以上のアレルにおいて、部位特異的組
換え酵素の標的配列が存在しない、上記〔3〕に記載の方法。
〔23〕改変後に得られる染色体ゲノムの前記2つ以上のアレルにおいて、部位特異的組
換え酵素の標的配列が存在しない、上記〔4〕に記載の方法。
〔24〕改変後に得られる染色体ゲノムの前記2つ以上のアレルにおいて、部位特異的組
換え酵素の標的配列が存在しない、上記〔5〕に記載の方法。
〔25〕改変後に得られる染色体ゲノムの前記2つ以上のアレルにおいて、部位特異的組
換え酵素の標的配列が存在しない、上記〔6〕または〔7〕に記載の方法。
〔26〕工程(b)において、2以上のアレルが改変された細胞を選択するまでの過程で
は単一細胞クローニングは行われない、上記〔1〕〜〔11〕、および〔20〕〜〔25
〕のいずれかに記載の方法。
〔27〕標的領域に関して染色体ゲノム上に2つ以上のアレルを有する細胞において、前
記2つ以上のアレルのそれぞれの標的領域が欠失し、かつ、標的領域の上流および下流の
配列が、塩基の挿入、置換および欠失なく、シームレスに連結している、細胞。
〔28〕標的領域が5kbp以上の長さを有する、上記〔27〕に記載の細胞。
〔29〕そのゲノム中に部位特異的組換え酵素の標的配列を有しない、上記〔27〕また
は〔28〕に記載の細胞。
〔30〕組換え用ドナーDNAの上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間の
領域が、8kbp以上の長さを有する、上記〔6〕または〔7〕に記載の方法。
〔31〕組換え用ドナーDNAが、組換え用ドナーDNAの上流ホモロジーアームと下流
ホモロジーアームとの間の領域に塩基配列を有さない、上記〔15〕に記載のキット。
本発明によれば、2つ以上のアレルを効率よく改変することができ、且つ比較的大きな
領域の改変が可能な、ゲノム改変方法及び前記ゲノム改変キットが提供される。
実験例1で作製したドナーDNAの構造を示す。 実験例1で作製したドナーDNAを細胞に導入する工程を示す。また、ドナーDNAのノックインを確認するために用いたjunction Primerをの設計位置を示す。 ドナーDNAのノックイン後にジャンクションPCRを行った結果を示す。 参考実験例で作製したドナーDNAを細胞に導入する工程を示す。また、ドナーDNAのノックインを確認するために用いたjunction Primerをの設計位置、及びドナーDNAのノックイン後にジャンクションPCRを行った結果を示す。 実験例1で作製したドナーDNAを導入した細胞(実験例2で作製した細胞)に、野生型TP53プラスミドをドナーDNAとして導入する工程を示す。また、野生型TP53プラスミドのノックインを確認するために用いたプライマーの設計位置を示す。 野生型TP53プラスミドのノックイン後に図5のプライマーを用いてPCRを行った結果を示す。 実験例4で作製した4種類のドナーDNAを、実験例2で作製した細胞に導入する工程を示す。また、前記4種類のドナーDNAのノックインを確認するために用いたプライマーの設計位置を示す。 実験例4で作製した4種類のドナーDNAのノックイン後に、図7のプライマーを用いてPCRを行った結果を示す。
[定義]
「ポリヌクレオチド」及び「核酸」という用語は、相互に互換的に使用され、ヌクレオ
チドがホスホジエステル結合によって結合したヌクレオチドポリマーを指す。「ポリヌク
レオチド」及び「核酸」は、DNAであってもよく、RNAであってもよく、DNAとR
NAとの組み合わせから構成されてもよい。また、「ポリヌクレオチド」及び「核酸」は
、天然ヌクレオチドのポリマーであってもよく、天然ヌクレオチドと非天然ヌクレオチド
(天然ヌクレオチドの類似体、塩基部分、糖部分及びリン酸部分のうち少なくとも一つの
部分が修飾されているヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート骨格)等)とのポリマ
ーであってもよく、非天然ヌクレオチドのポリマーであってもよい。
「ポリヌクレオチド」又は「核酸」の塩基配列は、特に明示しない限り、一般的に認め
られている1文字コードで記載される。特に明示しない限り、塩基配列は、5'側から3'
側に向かって記載する。「ポリヌクレオチド」又は「核酸」を構成するヌクレオチド残基
は、単に、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、又はウラシル等、あるいはそれらの
1文字コードで記載される場合がある。
「遺伝子」という用語は、特定のタンパク質をコードする少なくとも1つのオープンリ
ーディングフレームを含むポリヌクレオチドを指す。遺伝子は、エクソン及びイントロン
の両方を含み得る。
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、相互に互換的に使
用され、アミド結合によって結合したアミノ酸のポリマーを指す。「ポリペプチド」、「
ペプチド」又は「タンパク質」は、天然アミノ酸のポリマーであってもよく、天然アミノ
酸と非天然アミノ酸(天然アミノ酸の化学的類似体、修飾誘導体等)とのポリマーであっ
てもよく、非天然アミノ酸のポリマーであってもよい。特に明示しない限り、アミノ酸配
列は、N末端側からC末端側に向かって記載する。
「アレル」という用語は、染色体ゲノム上の同一座位に存在する塩基配列のセットを指
す。ある態様では、2倍体の細胞では同一座位に2アレル存在し、3倍体の細胞では同一
座位に3アレル存在する。また、ある態様では、染色体の異常なコピーまたは当該座位の
異常な追加のコピーによって追加のアレルが形成されている場合がある。
「ゲノム改変」又は「ゲノム編集」という用語は、相互に互換的に用いられ、ゲノム上
の所望の位置(標的領域)に変異を誘導することを指す。ゲノム改変は、標的領域DNA
を切断するように設計された配列特異的核酸切断分子の使用を含み得る。好ましい実施形
態において、ゲノム改変は、標的領域のDNAを切断するように操作されたヌクレアーゼ
の使用、を含み得る。好ましい実施形態において、ゲノム改変は、標的領域中の特定の塩
基配列を有する標的配列を切断するように操作されたヌクレアーゼ(例えば、TALEN
やZFN)の使用を含み得る。好ましい実施形態において、ゲノム改変は、標的領域中の
特定の塩基配列を有する標的配列を切断するように、メガヌクレアーゼなどのゲノムに1
つしか切断部位を有しない制限酵素(例えば、16ベースの配列特異性を有する制限酵素
(理論上は416塩基に1つの割合で存在する)、17ベースの配列特異性を有する制限酵
素(理論上は417塩基に1つの割合で存在する)、および18ベースの配列特異性を有す
る制限酵素(理論上は418塩基に1つの割合で存在する))などの配列特異的エンドヌク
レアーゼを用いることができる場合もある。典型的には、部位特異的ヌクレアーゼの使用
により、標的領域のDNAに二本鎖切断(DSB)が誘導され、その後、相同組み換え修
復(Homologous Directed Repair:HDR)及び非相同末端
再結合(Non−Homologous End−Joining Repair:NH
EJ)のような、細胞の内因性プロセスによってゲノムが修復される。NHEJは、ドナ
ーDNAを用いずに二本鎖切断された末端を連結する修復方法であり、修復の際に挿入及
び/又は欠失(indel)が高頻度で誘導される。HDRは、ドナーDNAを用いた修
復機構であり、標的領域に所望の変異を導入することも可能である。ゲノム改変技術とし
ては、例えば、CRISPR/Casシステムが好ましく例示される。メガヌクレアーゼ
としては、例えば、I−SceI、I−SceII、I−SceIII、I−SceIV
、I−SceV、I−SceVI、I−SceVII、I−CeuI、I−CeuAII
P、I−CreI、I−CrepsbIP、I−CrepsbIIP、I−Crepsb
IIIP、I−CrepsbIVP、I−TliI、I−PpoI、PI−PspI、F
−SceI、F−SceII、F−SuvI、F−TevI、F−TevII、I−Am
aI、I−AniI、I−ChuI、I−CmoeI、I−CpaI、I−CpaII、
I−CsmI、I−CvuI、I−CvuAIP、I−DdiI、I−DdiII、I−
DirI、I−DmoI、I−HmuI、I−HmuII、I−HsNIP、I−Lla
I、I−MsoI、I−NaaI、I−NanI、I−NclIP、I−NgrIP、I
−NitI、I−NjaI、I−Nsp236IP、I−PakI、I−PboIP、I
−PcuIP、I−PcuAI、I−PcuVI、I−PgrIP、I−PobIP、I
−PorI、I−PorIIP、I−PbpIP、I−SpBetaIP、I−ScaI
、I−SexIP、I−SneIP、I−SpomI、I−SpomCP、I−Spom
IP、I−SpomIIP、I−SquIP、I−Ssp68031、I−SthPhi
JP、I−SthPhiST3P、I−SthPhiSTe3bP、I−TdeIP、I
−TevI、I−TevII、I−TevIII、I−UarAP、I−UarHGPA
IP、I−UarHGPA13P、I−VinIP、I−ZbiIP、PI−Mtul、
PI−MtuHIP PI−MtuHIIP、PI−PfuI、PI−PfuII、PI
−PkoI、PI−PkoII、PI−Rma43812IP、PI−SpBetaIP
、PI−SceI、PI−TfuI、PI−TfuII、PI−ThyI、PI−Tli
I、およびPI−TliII、並びにこれらの機能的な誘導体制限酵素からなる群から選
択されるメガヌクレアーゼおよびその切断部位(または認識部位)、好ましくは、18塩
基以上の配列特異性を有する制限酵素であるメガヌクレアーゼおよびその切断部位(また
は認識部位)、特に細胞のゲノムを1箇所または複数箇所以上切断しないメガヌクレアー
ゼおよびその切断部位を用いることができる。
「標的領域」という用語は、ゲノム改変の対象となるゲノム領域を指す。
「ドナーDNA」という用語は、DNAの二本鎖切断の修復に用いられるDNAであっ
て、標的領域周辺のDNAと相同組換え可能なDNAを指す。ドナーDNAは、ホモロジ
ーアームとして標的領域の上流の塩基配列および下流の塩基配列(例えば、標的領域に隣
接する塩基配列)を含む。本明細書においては、標的領域の上流側の塩基配列(例えば、
上流側に隣接する塩基配列)からなるホモロジーアームを「上流ホモロジーアーム」、標
的配列の下流側の塩基配列(例えば、下流側に隣接する塩基配列)からなるホモロジーア
ームを「下流ホモロジーアーム」と記載する場合がある。ドナーDNAは、上流ホモロジ
ーアームと下流ホモロジーアームとの間に、所望の塩基配列を含むことができる。各ホモ
ロジーアームの長さは、300bp以上が好ましく、通常500〜3000bp程度であ
る。上流ホモロジーアーム及び下流ホモロジーアームの長さは、互いに同じであってもよ
く、異なっていてもよい。標的領域は、配列依存的な切断後にドナーDNAとの間で相同
組換えの誘発に成功すると、標的領域の上流の塩基配列および下流の塩基配列の間の配列
が、ドナーDNAの配列と置き換わることとなる。
標的領域の「上流」とは、標的領域の2本鎖DNAにおいて、基準となるヌクレオチド
鎖の5'側に位置するDNA領域を意味する。標的領域の「下流」とは、基準となるヌク
レオチド鎖の3'側に位置するDNAを意味する。標的領域がタンパク質コード配列を含
む場合、基準となるヌクレオチド鎖は、通常、センス鎖である。一般的に、プロモーター
は、タンパク質コード配列の上流に位置する。ターミネーターは、タンパク質コード配列
の下流に位置する。
「配列特異的核酸切断分子」という用語は、特定の核酸配列を認識し、前記特定の核酸
配列で核酸を切断することができる分子を指す。配列特異的核酸切断分子は、配列特異的
に核酸切断する活性(配列特異的核酸切断活性)を有する分子である。
「標的配列」という用語は、配列特異的核酸切断分子による切断の対象となるゲノム中
のDNA配列を指す。配列特異的核酸切断分子がCasタンパク質である場合、標的配列
は、Casタンパク質による切断の対象となるゲノム中のDNA配列を指す。Casタン
パク質としてCas9タンパク質を用いる場合、標的配列は、プロトスペーサー隣接モチ
ーフ(PAM)の5'側に隣接する配列である必要がある。標的配列は、通常、PAMの
5'側直前に隣接する17〜30塩基(好ましくは18〜25塩基、より好ましくは19
〜22塩基、さらに好ましくは20塩基)の配列が選択される。標的配列の設計には、C
RISPR DESIGN(crispr.mit.edu/)等の公知のデザインツー
ルを利用することができる。
「Casタンパク質」という用語は、CRISPR関連(CRISPR−associ
ated)タンパク質を指す。好ましい態様において、Casタンパク質は、ガイドRN
Aと複合体を形成し、エンドヌクレアーゼ活性又はニッカーゼ活性を示す。Casタンパ
ク質としては、特に限定されないが、例えば、Cas9タンパク質、Cpf1タンパク質
、C2c1タンパク質、C2c2タンパク質、及びC2c3タンパク質等が挙げられる。
Casタンパク質は、ガイドRNAと協働してエンドヌクレアーゼ活性又はニッカーゼ活
性を示す限り、野生型Casタンパク質及びそのホモログ(パラログ及びオーソログ)、
並びにそれらの変異体を包含する。
好ましい態様において、Casタンパク質は、クラス2のCRISPR/Cas系に関
与するものであり、より好ましくはII型のCRISPR/Cas系に関与するものであ
る。Casタンパク質の好ましい例としては、Cas9タンパク質が例示される。
「Cas9タンパク質」という用語は、II型のCRISPR/Cas系に関与するC
asタンパク質を指す。Cas9タンパク質は、ガイドRNAと複合体を形成し、ガイド
RNAと協働して標的領域のDNAを切断する活性を示す。Cas9タンパク質は、前記
の活性を有する限り、野生型Cas9タンパク質及びそのホモログ(パラログ及びオーソ
ログ)、並びにそれらの変異体を包含する。野生型Cas9タンパク質は、ヌクレアーゼ
ドメインとしてRuvCドメイン及びHNHドメインを有するが、本明細書におけるCa
s9タンパク質は、RuvCドメイン及びHNHドメインのいずれか一方が不活性化され
たものであってもよい。RuvCドメイン及びHNHドメインのいずれか一方が不活性化
されたCas9は、二本鎖DNAに対して一本鎖切断(ニック)を導入する。そのため、
RuvCドメイン及びHNHドメインのいずれか一方が不活性化されたCas9を二本鎖
DNAの切断に用いる場合には、センス鎖とアンチセンス鎖それぞれに対してCas9の
標的配列を設定し、センス鎖およびアンチセンス差のニックが十分に近い位置で生じ、そ
れにより二本鎖切断が誘発されるように、改変システムを構成することができる。
Cas9タンパク質が由来する生物種は特に限定されないが、ストレプトコッカス(S
treptococcus)属、スタフィロコッカス(Staphylococcus)
属、ナイセリア(Neisseria)属、又はトレポネーマ(Treponema)属
に属する細菌等が好ましく例示される。より具体的には、S.pyogenes、S.t
hermophilus、S.aureus、N.meningitidis、又はT.
denticola等に由来するCas9タンパク質が好ましく例示される。好ましい態
様において、Cas9タンパク質は、S.pyogenes由来のCas9タンパク質で
ある。
各種Casタンパク質のアミノ酸配列、及びそのコード配列の情報は、GenBank
、UniProt、Addgene等の各種データベース上で得ることができる。例えば
、S.pyogenesのCas9タンパク質のアミノ酸配列は、プラスミド番号422
30としてAddgeneに登録されたもの等を用いることができる。S.pyogen
esのCas9タンパク質のアミノ酸配列の一例を配列番号1に示す。
「ガイドRNA」及び「gRNA」という用語は、相互に互換的に使用され、Casタ
ンパク質と複合体を形成し、Casタンパク質を標的領域に誘導することができるRNA
を指す。好ましい態様において、ガイドRNAは、CRISPR RNA(crRNA)
及びトランス活性化型CRISPR RNA(tracrRNA)を含む。crRNAは
、ゲノム上の標的領域への結合に関与し、tracrRNAは、Casタンパク質との結
合に関与する。好ましい態様において、crRNAは、スペーサー配列とリピート配列と
を含み、スペーサー配列が標的領域において標的配列の相補鎖と結合する。好ましい態様
において、tracrRNAは、アンチリピート配列と3'テイル配列とを含む。アンチ
リピート配列はcrRNAのリピート配列と相補的な配列を有し、リピート配列と塩基対
を形成し、3'テイル配列は通常3つのステムループを形成する。
ガイドRNAは、crRNAの3'末端にtracrRNAの5'末端を連結した単一ガ
イドRNA(sgRNA)であってもよく、crRNA及びtracrRNAを別々のR
NA分子とし、リピート配列及びアンチリピート配列で塩基対を形成させたものであって
もよい。好ましい態様において、ガイドRNAはsgRNAである。
crRNAのリピート配列及びtracrRNAの配列は、Casタンパク質の種類に
応じて適宜選択することができ、Casタンパク質と同じ細菌種に由来するものを用いる
ことができる。
例えば、S.pyogenes由来のCas9タンパク質を用いる場合、sgRNAの
長さは、50〜220ヌクレオチド(nt)程度とすることができ、60〜180nt程
度が好ましく、80〜120nt程度がより好ましい。crRNAの長さは、スペーサー
配列を含めて約25〜70塩基長とすることができ、25〜50nt程度が好ましい。t
racrRNAの長さは10〜130nt程度とすることができ、30〜80nt程度が
好ましい。
crRNAのリピート配列は、Casタンパク質が由来する細菌種におけるものと同じ
であってもよく、3'末端の一部を削除したものであってもよい。tracrRNAは、
Casタンパク質が由来する細菌種における成熟tracrRNAと同じで配列を有して
いてもよく、当該成熟tracrRNAの5'末端及び/又は3'末端を切断した末端切断
型であってもよい。例えば、tracrRNAは、成熟tracrRNAの3'末端から
1〜40個程度のヌクレオチド残基を除去した末端切断型であり得る。また、tracr
RNAは、成熟tracrRNAの5'末端から1〜80個程度のヌクレオチド残基を除
去した末端切断型であり得る。また、tracrRNAは、例えば、5'末端から1〜2
0程度のヌクレオチド残基を除去し、かつ3'末端から1〜40個程度のヌクレオチド残
基を除去した末端切断型であり得る。
sgRNA設計のためのcrRNAリピート配列及びtracrRNAの配列は、種々
提案されており、当業者は、公知技術に基づいてsgRNAを設計することができる(例
えば、Jinek et al. (2012) Science, 337, 816-21; Mali et al. (2013) Science, 339:
6121, 823-6; Cong et al. (2013) Science, 339: 6121, 819-23; Hwang et al. (2013)
Nat. Biotechnol. 31: 3, 227-9; Jinek et al. (2013) eLife, 2, e00471)。
「プロトスペーサー隣接モチーフ」及び「PAM」という用語は、相互に互換的に使用
され、Casタンパク質によるDNA切断の際に、Casタンパク質に認識される配列を
指す。PAMの配列及び位置は、Casタンパク質の種類によって異なる。例えば、Ca
s9タンパク質の場合、PAMは標的配列の3'側直後に隣接する必要がある。Cas9
タンパク質に対応するPAMの配列は、Cas9タンパク質が由来する細菌種によって異
なっている。例えば、S.pyogenesのCas9タンパク質に対応するPAMは「
NGG」であり、S.thermophilusのCas9タンパク質に対応するPAM
は「NNAGAA」であり、S.aureusのCas9タンパク質に対応するPAMは
「NNGRRT」又は「NNGRR(N)」であり、N.meningitidisのC
as9タンパク質に対応するPAMは「NNNNGATT」であり、T.dentico
laのCas9タンパク質に対応する「NAAAAC」である(「R」はA又はG;「N
」は、A、T、G又はC)。
「スペーサー配列」及び「ガイド配列」という用語は、相互に互換的に使用され、ガイ
ドRNAに含まれる配列であって、標的配列の相補鎖と結合し得る配列を指す。通常、ス
ペーサー配列は、標的配列と同一の配列である(但し、標的配列中のTは、スペーサー配
列ではUとなる)。本発明の実施態様において、スペーサー配列は、標的配列に対して1
塩基又は複数塩基のミスマッチを含むことができる。複数塩基のミスマッチを含む場合、
隣接した位置にミスマッチを有していてもよく、離れた位置にミスマッチを有していても
よい。好ましい態様において、スペーサー配列は、標的配列に対して1〜5塩基のミスマ
ッチを含み得る。特に好ましい態様において、スペーサー配列は、標的配列に対して1塩
基のミスマッチを含み得る。
ガイドRNAにおいて、スペーサー配列は、crRNAの5'側に配置される。
ポリヌクレオチドに関して用いる「機能的に連結」という用語は、第一の塩基配列が第
二の塩基配列に十分に近くに配置され、第一の塩基配列が第二の塩基配列又は第二の塩基
配列の制御下の領域に影響を及ぼしうることを意味する。例えば、ポリヌクレオチドがプ
ロモーターに機能的に連結するとは、当該ポリヌクレオチドが、当該プロモーターの制御
下で発現するように連結されていることを意味する。
「発現可能な状態」という用語は、ポリヌクレオチドが導入された細胞内で、該ポリヌ
クレオチドが転写され得る状態にあることを指す。
「発現ベクター」という用語は、対象ポリヌクレオチドを含むベクターであって、該ベ
クターを導入した細胞内で、対象ポリヌクレオチドを発現可能な状態にするシステムを備
えたベクターを指す。例えば、「Casタンパク質の発現ベクター」とは、該ベクターを
導入した細胞内で、Casタンパク質を発現可能なベクターを意味する。また、例えば、
「ガイドRNAの発現ベクター」とは、該ベクターを導入した細胞内で、ガイドRNAを
発現可能なベクターを意味する。
本明細明細書において、塩基配列どうし又はアミノ酸配列どうしの配列同一性(又は相
同性)は、2つの塩基配列又はアミノ酸配列を、対応する塩基又はアミノ酸が最も多く一
致するように、挿入及び欠失に当たる部分にギャップを入れながら並置し、得られたアラ
インメント中のギャップを除く、塩基配列全体又はアミノ酸配列全体に対する一致した塩
基又はアミノ酸の割合として求められる。塩基配列又はアミノ酸配列どうしの配列同一性
は、当該技術分野で公知の各種相同性検索ソフトウェアを用いて求めることができる。例
えば、塩基配列の配列同一性の値は、公知の相同性検索ソフトウェアBLASTNにより
得られたアライメントを元にした計算によって得ることができ、アミノ酸配列の配列同一
性の値は、公知の相同性検索ソフトウェアBLASTPにより得られたアライメントを元
にした計算によって得ることができる。
[ゲノム改変方法]
1実施形態において、本発明は、染色体ゲノムの2つ以上のアレルを改変するゲノム改
変方法を提供する。前記ゲノム改変方法は、下記(a)及び(b)の工程を含む:
(a)下記(i)及び(ii)を、前記染色体を含む細胞に導入する工程;及び
(i)前記染色体ゲノムの標的領域を標的とする配列特異的核酸切断分子、又は前記
配列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含むゲノム改変システム、
(ii)前記標的領域の上流側に隣接する塩基配列と相同な塩基配列を有する上流ホ
モロジーアームと、前記標的領域の下流側に隣接する塩基配列と相同な塩基配列を有する
下流ホモロジーアームとの間に、選択マーカー遺伝子の塩基配列を含む、2種以上の選択
マーカー用ドナーDNAであって、前記2種以上の選択マーカー用ドナーDNAは、相互
に異なる選択マーカー遺伝子を有し、前記選択マーカー用ドナーDNAの種類数は、ゲノ
ム改変の対象とする前記アレルの数と同数以上である、2種以上の選択マーカー用ドナー
DNA、
(b)前記工程(a)の後、前記2種以上の選択マーカー用ドナーDNAが有する全て
の選択マーカー遺伝子に基づいて、前記細胞を選択する工程。この態様において、前記選
択マーカー遺伝子は、選択マーカー用ドナーDNAの種類毎に固有であり得る。この態様
においてはまた、工程(b)は、前記工程(a)の後、前記2以上のアレルに対して異な
る種類の選択マーカー用ドナーDNAがそれぞれ相同組み換えすることによって、当該2
以上のアレルにそれぞれ区別可能に異なる固有の選択マーカー遺伝子が導入され、導入さ
れた当該区別可能に異なる選択マーカー遺伝子のすべてを発現する細胞を選択する工程(
ポジティブ選択のための工程)であり得る。上記方法は、染色体ゲノムの2つ以上のアレ
ルが改変された細胞を作製する方法であってもよい。
1実施態様において、本発明は、染色体ゲノムの2つ以上のアレルが改変された細胞を
作製する方法であって、
(a)下記(i)及び(ii)を、2つ以上のアレルを含む細胞に導入して、前記2つ以
上のアレルそれぞれに選択マーカー遺伝子を導入する工程と、
(i)前記染色体ゲノムの2つ以上のアレル中の標的領域を標的とし、当該標的領域を切
断することができる配列特異的核酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコード
するポリヌクレオチドを含むゲノム改変システム、
(ii)2種以上の選択マーカー用ドナーDNAであって、それぞれが前記標的領域の上
流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的
領域の下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームとを
有し、かつ、上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームの間に、選択マーカー遺伝子
の塩基配列を含み、前記2種以上の選択マーカー用ドナーDNAは、相互に区別可能に異
なる選択マーカー遺伝子をそれぞれ有し、前記選択マーカー遺伝子は、選択マーカー用ド
ナーDNAの種類毎に固有であり、前記選択マーカー用ドナーDNAの種類数は、ゲノム
改変の対象とする前記アレルの数と同数以上である、2種以上の選択マーカー用ドナーD
NA、
(b)前記工程(a)の後、前記2以上のアレルに対して異なる種類の選択マーカー用ド
ナーDNAがそれぞれ相同組み換えすることによって、当該2以上のアレルにそれぞれ区
別可能に異なる固有の選択マーカー遺伝子が導入され、導入された当該区別可能に異なる
選択マーカー遺伝子のすべてを発現する細胞を選択する工程(ポジティブ選択のための工
程)と、
を含む、方法であり得る。
(工程(a))
工程(a)では、前記(i)及び(ii)を、染色体を含む細胞に導入する。
本実施形態のゲノム改変方法に用いる細胞は、特に限定されず、2倍体以上の染色体ゲ
ノムを有する細胞であればよい。細胞は、2倍体であってもよく、3倍体であってもよく
、4倍体以上であってもよい。細胞としては、特に限定されないが、真核生物の細胞が挙
げられる。細胞は、植物細胞であってもよく、動物細胞であってもよく、真菌細胞であっ
てもよい。動物細胞は、特に限定されないが、ヒト、ヒト以外の哺乳動物、鳥類、爬虫類
、両生類、魚類、昆虫、その他の無脊椎動物のいずれの細胞であってもよい。本実施形態
のゲノム改変方法に用いる細胞は、アレルが存在しない細胞(例えば、1倍体の染色体ゲ
ノムを有する細胞、例えば、原核細胞)ではない。
ゲノム改変の対象となる標的領域は、1以上のアレルを有するゲノム上の任意の領域と
することができる。標的領域のサイズは、特に限定されない。本実施形態のゲノム改変方
法では、従来よりも大きなサイズの領域を改変することができる。標的領域は、例えば、
10kbp以上であってもよい。標的領域は、例えば、100bp以上、200bp以上
、400bp以上、800bp以上、1kbp以上、2kbp以上、3kbp以上、4k
bp以上、5kbp以上、8kbp以上、10kbp以上、20kbp以上、40kbp
以上、80kbp以上、100kbp以上、又は200kbp以上であってもよい。ある
態様では、改変された細胞において、上記標的領域が欠失している。
<(i)ゲノム改変システム>
「ゲノム改変システム」とは、所望の標的領域を改変することが可能な分子機構を意味
する。ゲノム改変システムは、染色体ゲノムの標的領域を標的とする配列特異的核酸切断
分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含む。
配列特異的核酸切断分子は、配列特異的核酸切断活性を有する分子であれば、特に限定
されず、合成有機化合物であってもよく、タンパク質等の生体高分子化合物であってもよ
い。配列特異的核酸切断活性を有する合成有機化合物としては、例えば、ピロール・イミ
ダゾールポリアミド等が挙げられる。配列特異的部位切断活性を有するタンパク質として
は、例えば、配列特異的エンドヌクレアーゼが挙げられる。
配列特異的エンドヌクレアーゼは、所定の配列で核酸を切断することができる酵素であ
る。配列特異的エンドヌクレアーゼは、所定の配列で、2本鎖DNAを切断することがで
きる。配列特異的エンドヌクレアーゼとしては、特に限定されないが、例えば、ジンクフ
ィンガーヌクレアーゼ(Zinc finger nuclease(ZFN))、TA
LEN(Transcription activator−like effecto
r nuclease)、Casタンパク質等が挙げられるが、これらに限定されない。
ZFNは、ジンクフィンガーアレイを含む結合ドメインにコンジュゲートした核酸切断
ドメインを含む人工ヌクレアーゼである。切断ドメインとしては、II型制限酵素Fok
Iの切断ドメインが挙げられる。標的配列を切断可能なジンクフィンガーヌクレアーゼの
設計は、公知の方法で行うことができる。
TALENは、DNA切断ドメイン(例えば、FokIドメイン)に加えて転写活性化
因子様(TAL)エフェクターのDNA結合ドメインを含む人工ヌクレアーゼである。標
的配列を切断可能なTALE構築物の設計は、公知の方法で行うことができる(例えば、
Zhang, Feng et. al. (2011) Nature Biotechnology 29 (2))。
配列特異的核酸切断分子として、Casタンパク質を用いる場合、ゲノム改変システム
は、CRISPR/Casシステムを含む。すなわち、ゲノム改変システムは、Casタ
ンパク質と、標的領域内の塩基配列に相同な塩基配列を有するガイドRNAを含むことが
好ましい。ガイドRNAは、スペーサー配列として、標的領域内の配列(標的配列)と相
同な配列を含んでいればよい。ガイドRNAは、標的領域内のDNAに結合できるもので
ればよく、標的配列と完全に同一の配列を有している必要はない。この結合は、細胞核内
の生理的条件下で形成されればよい。ガイドRNAは、例えば、標的配列に対して、例え
ば、0〜3塩基のミスマッチを含むことができる。前記ミスマッチの数は、0〜2塩基が
好ましく、0〜1がより好ましく、ミスマッチを有しないことがさらに好ましい。ガイド
RNAの設計は、公知の方法に基づいて行うことができる。ゲノム改変システムは、CR
ISPR/Casシステムであることが好ましく、Casタンパク質とガイドRNAを含
むことが好ましい。Casタンパク質は、Cas9タンパク質であることが好ましい。
配列特異的エンドヌクレアーゼは、タンパク質として細胞に導入してもよく、配列特異
的エンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドとして細胞に導入してもよい。例え
ば、配列特異的エンドヌクレアーゼのmRNAを導入してもよく、配列特異的エンドヌク
レアーゼの発現ベクターを導入してもよい。発現ベクターにおいて、配列特異的エンドヌ
クレアーゼのコード配列(配列特異的エンドヌクレアーゼ遺伝子)は、プロモーターに機
能的に連結されている。プロモーターは、特に限定されず、例えば、pol II系プロ
モーターを各種使用することができる。pol II系プロモーターとしては、特に制限
されないが、例えばCMVプロモーター、EF1プロモーター(EF1αプロモーター)
、SV40プロモーター、MSCVプロモーター、hTERTプロモーター、βアクチン
プロモーター、CAGプロモーター、CBhプロモーター等が挙げられる。
プロモーターは、誘導性プロモーターであってもよい。誘導性プロモーターは、プロモ
ーターを駆動する誘導因子の存在下でのみ、当該プロモーターに機能的に連結されたポリ
ヌクレオチドの発現を誘導することができるプロモーターである。誘導性プロモーターと
しては、ヒートショックプロモーターなどの加熱により遺伝子発現を誘導するプロモータ
ーが挙げられる。また、誘導性プロモーターには、プロモーターを駆動する誘導因子が薬
剤であるプロモーターが挙げられる。このような薬剤誘導性プロモーターとしては、例え
ば、Cumateオペレーター配列、λオペレーター配列(例えば、12×λOp)、テ
トラサイクリン系誘導性プロモーター等が挙げられる。テトラサイクリン系誘導性プロモ
ーターとしては、例えば、テトラサイクリンもしくはその誘導体(例えば、ドキシサイク
リン)、またはリバーステトラサイクリン制御性トランス活性化因子(rtTA)の存在
下で遺伝子発現を駆動するプロモーターが挙げられる。テトラサイクリン系誘導性プロモ
ーターとしては、例えば、TRE3Gプロモーターが挙げられる。
発現ベクターは、公知のものを特に制限なく用いることができる。発現ベクターとして
は、例えば、プラスミドベクター、ウイルスベクターが挙げられる。配列特異的エンドヌ
クレアーゼがCasタンパク質である場合、発現ベクターは、Casタンパク質のコード
配列(Casタンパク質遺伝子)に加えて、ガイドRNAコード配列(ガイドRNA遺伝
子)及びを含んでいてもよい。この場合、ガイドRNAコード配列(ガイドRNA遺伝子
)は、pol III系プロモーターに機能的にされていることが好ましい。pol I
II系プロモーターとしては、例えば、マウス及びヒトのU6−snRNAプロモーター
、ヒトH1−RNase P RNAプロモーター、ヒトバリン−tRNAプロモーター
等が挙げられる。
<(ii)選択マーカー用ドナーDNA>
選択マーカー用ドナーDNAは、選択マーカーを標的領域にノックインするためのドナ
ーDNAである。選択マーカー用ドナーDNAは、標的領域の上流側に隣接する塩基配列
と相同な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、標的領域の下流側に隣接する塩基配
列と相同な塩基配列を有する下流ホモロジーアームとの間に、1以上の選択マーカー遺伝
子の塩基配列を含む。
選択マーカー用ドナーDNAは、特に限定されないが、例えば、1kb以上、2kb以
上、3kb以上、4kb以上、5kb以上、6kb以上、7kb以上、8kb以上、9k
b以上、9.5kb以上、または10kb以上の長さを有し得る。選択マーカー用ドナー
DNAは、特に限定されないが、例えば、50kb以下、45kb以下、40kb以下、
35kb以下、30kb以下、25kb以下、20kb以下、15kb以下、14kb以
下、13kb以下、12kb以下、11kb以下、10kb以下、9kb以下、8kb以
下、7kb以下、6kb以下、5kb以下、または4kb以下の長さを有し得る。
「選択マーカー」とは、その発現の有無に基づいて、細胞を選択することができるタン
パク質を意味する。選択マーカー遺伝子は、選択マーカーをコードする遺伝子である。選
択マーカー発現細胞及び非発現細胞が混在する細胞集団において、選択マーカー発現細胞
を選択する場合、当該選択マーカーを「ポジティブ選択マーカー」または「ポジティブ選
択用の選択マーカー」という。選択マーカー発現細胞及び非発現細胞が混在する細胞集団
において、選択マーカー非発現細胞を選択する場合、当該選択マーカーを「ネガティブ選
択マーカー」または「ネガティブ選択用の選択マーカー」という。選択マーカーが相互に
異なるとは、相互に区別できること(例えば、区別可能に異なること)を意味し、例えば
、選択マーカーが導入された細胞に付与する薬剤耐性の性質などの生理学的性質またはそ
の他の物理化学的性質において少なくとも相互に区別できることを意味する。すなわち、
選択マーカーが相互に異なるとは、異なる複数の選択マーカーが他の選択マーカーと区別
可能に検出できること、または他の選択マーカーとは区別可能に薬剤選択できることを意
味する。また、前記選択マーカー遺伝子が選択マーカー用ドナーDNAの種類毎に固有で
あるとは、選択マーカー用ドナーDNAの1種が有する選択マーカー遺伝子が、上記以外
の種類の選択マーカー用ドナーDNAには含まれないこと、または、複数種類のドナーD
NAに含まれている場合には、同時に2種類以上のドナーDNAから発現しないように構
成されていることを意味する。このとき、2種類以上のドナーDNAは、選択マーカー以
外は同一であってもよく、選択マーカー以外の配列および/または構成において相違があ
ってもよい。
ポジティブ選択マーカーは、それを発現する細胞を選択可能なものであれば、特に限定
されない。ポジティブ選択マーカー遺伝子としては、例えば、薬剤耐性遺伝子、蛍光タン
パク質遺伝子、発光酵素遺伝子、発色酵素遺伝子等が挙げられる。
ネガティブ選択マーカーは、それを発現しない細胞を選択可能なものであれば、特に限
定されない。ネガティブ選択マーカー遺伝子としては、例えば、自殺遺伝子(チミジンカ
イネース等)、蛍光タンパク質遺伝子、発光酵素遺伝子、発色酵素遺伝子等が挙げられる
。ネガティブ選択マーカー遺伝子が、細胞の生存に負の影響を与える遺伝子(例えば、自
殺遺伝子)である場合、当該ネガティブ選択マーカー遺伝子は、誘導性プロモーターに機
能的に連結され得る。誘導性プロモーターに機能的に連結することで、ネガティブ選択マ
ーカー遺伝子を有する細胞を除去したいときにのみ、ネガティブ選択マーカー遺伝子を発
現させることができる。ネガティブ選択マーカー遺伝子が、蛍光、発光、および発色等の
光学的に検出可能なマーカー遺伝子(可視化マーカー遺伝子;visible mark
er gene)である場合など、細胞の生存に負の影響が少ない場合には、恒常的に発
現させてもよい。
薬剤耐性遺伝子としては、例えば、ピューロマイシン耐性遺伝子、ブラスティサイディ
ン耐性遺伝子、ジェネティシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン
耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ゼオシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝
子、クロラムフェニコール耐性遺伝子等が挙げられるが、これらに限定されない。
蛍光タンパク質遺伝子としては、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子、黄色
蛍光タンパク質(YFP)遺伝子、赤色蛍光タンパク質(RFP)遺伝子等が挙げられる
が、これらに限定されない。
発光酵素遺伝子としては、例えば、ルシフェラーゼ遺伝子などが挙げられるが、これら
に限定されない。
発色酵素遺伝子としては、例えば、βガラクトシターゼ遺伝子、βグルクロニダーゼ遺
伝子、アルカリフォスファターゼ遺伝子等が挙げられるが、これらに限定されない。
自殺遺伝子としては、例えば、単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ(HSV−T
K)、誘導性カスパーゼ9(inducible caspase 9)等が挙げられる
が、これらに限定されない。
選択マーカー用ドナーDNAが有する選択マーカー遺伝子は、ポジティブ選択マーカー
遺伝子であることが好ましい。すなわち、選択マーカーを発現する細胞を、選択マーカー
遺伝子がノックインされた細胞として、選択することができる。
上流ホモロジーアームは、改変対象のゲノムにおいて、標的領域の上流側の塩基配列と
相同組換え可能な塩基配列を有し、例えば、標的配列の上流側に隣接する塩基配列と相同
な塩基配列を有する。下流ホモロジーアームは、改変対象のゲノムにおいて、標的領域の
上流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有し、例えば、標的配列の下流側に隣接
する塩基配列と相同な塩基配列を有する。上流ホモロジーアーム及び下流ホモロジーアー
ムは、標的領域の周辺領域と相同組換可能であれば、その長さ及び配列は特に限定されな
い。上流ホモロジーアーム及び下流ホモロジーアームは、相同組換え可能な限り、標的領
域の上流側配列若しくは下流側配列と必ずしも完全一致する必要はない。例えば、上流ホ
モロジーアームは、標的領域の上流側に隣接する塩基配列と90%以上の配列同一性(相
同性)を有する配列であることができ、92%以上、93%以上、94%以上、95%以
上、96%以上、97%以上、98%以上、又は99%以上の配列同一性を有することが
好ましい。例えば、下流ホモロジーアームは、標的領域の下流側に隣接する塩基配列と9
0%以上の配列同一性(相同性)を有する配列であることができ、92%以上、93%以
上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、又は99%以上の
配列同一性を有することが好ましい。また、上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアー
ムとは、少なくともそのいずれかが標的領域中の切断箇所により近いとアレルの改変効率
をより高め得る。ここで、「近い」とは、2つの配列の距離が100bp以下、50bp
以下、40bp以下、30bp以下、20bp以下、または10bp以下であることを意
味し得る。
選択マーカー用ドナーDNAにおいて、選択マーカー遺伝子は、上流ホモロジーアーム
と下流ホモロジーアームとの間に位置する。これにより、上記(i)のゲノム改変システ
ムと共に選択マーカー用ドナーDNAを細胞に導入した場合に、HDRにより、選択マー
カー遺伝子が標的領域に導入される(これにより遺伝子が破壊される場合、遺伝子ノック
アウトといい、これにより所望の遺伝子が導入される場合、遺伝子ノックインという、遺
伝子をノックアウトしつつ、別の遺伝子をノックインすることもできる)。
選択マーカー遺伝子は、適切なプロモーターの制御下で発現されるように、プロモータ
ーに機能的に連結されていることが好ましい。プロモーターは、ドナーDNAを導入する
細胞の種類に応じて適宜選択することができる。プロモーターとしては、例えば、SRα
プロモーター、SV40初期プロモーター、レトロウイルスのLTR、CMV(サイトメ
ガロウイルス)プロモーター、RSV(ラウス肉腫ウイルス)プロモーター、HSV−T
K(単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ)プロモーター、EF1αプロモーター、メ
タロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター等が挙げられる。選択マーカ
ー用ドナーDNAは、エンハンサー、ポリA付加シグナル、ターミネーター等の任意の制
御配列等を有していてもよい。
選択マーカー用ドナーDNAは、インスレーター配列を有していてもよい。「インスレ
ーター」とは、隣接する染色体環境の影響を遮断または緩和し、その領域に挟まれたDN
Aの転写調節の独立性を保証するまたは高める配列をいう。インスレーターは、エンハン
サー遮断効果(エンハンサーとプロモーターの間に挿入することにより、エンハンサーに
よるプロモーター活性への影響を遮断する効果)、及び位置効果の抑制作用(導入遺伝子
の両側をインスレーターで挟むことにより、導入遺伝子の発現を挿入されたゲノム上の位
置に影響されないようにする作用)により定義される。選択マーカー用ドナーDNAは、
上流アームと選択マーカー遺伝子との間(又は上流アームと選択マーカー遺伝子を制御す
るプロモーターとの間)に、インスレーター配列を有していてもよい。選択マーカー用ド
ナーDNAは、下流アームと選択マーカー遺伝子との間に、インスレーター配列を有して
いてもよい。
選択マーカー用ドナーDNAは、直鎖状であってもよく、環状であってもよいが、環状
であることが好ましい。好ましくは、選択マーカー用ドナーDNAは、プラスミドである
。選択マーカー用ドナーDNAは、上記の配列に加えて、任意の配列を含み得る。例えば
、上流ホモロジーアーム、インスレーター、選択マーカー遺伝子、及び下流ホモロジーア
ームの各配列間の全て又は一部に、スペーサー配列を含んでいてもよい。
工程(a)では、ゲノム改変の対象とするアレルの数と同数以上の種類の選択マーカー
用ドナーDNAを細胞に導入する。異なる種類の選択マーカー用ドナーDNAは、相互に
異なる(区別可能な)種類の選択マーカー遺伝子を有する。ある態様では、異なる種類の
選択マーカー用ドナーDNAは、完全に同一の選択マーカー遺伝子またはそのセットを有
しない。つまり、第1の種類の選択マーカー用ドナーDNAは、第1の種類の選択マーカ
ー遺伝子を有し、第2の種類の選択マーカー用ドナーDNAは、第2の種類の選択マーカ
ー遺伝子を有する。第3の種類の選択マーカー用ドナーDNAは、第3の種類の選択マー
カー遺伝子を有し、それ以降の種類の選択マーカー用ドナーDNAについても同様である
。ゲノム改変の対象とするアレルが2個である場合、選択マーカー用ドナーDNAの種類
は2種類以上である。ゲノム改変の対象とするアレルが3個である場合、選択マーカー用
ドナーDNAの種類は3種類以上である。ある態様では、1つの選択マーカー用ドナーD
NAが、2種類以上の相互に異なる(区別可能な)選択マーカーを有していてもよい(こ
の場合であっても、異なる種類の選択マーカー用ドナーDNAは、相互に異なる(区別可
能な)種類(例えば、固有)の選択マーカー遺伝子を有していなければならない)。ある
態様では、選択マーカー用ドナーDNAは、部位特異的組換え酵素の組換え配列(例えば
、Creリコンビナーゼにより組換えられるloxP配列およびその変種)を有しない。
また、ある態様では、本発明の方法は、部位特異的組換え酵素及びその組換え配列(例え
ば、Creリコンビナーゼにより組換えられるloxP配列およびその変種)を用いない
。部位特異的組換え酵素を用いると、通常は、編集後のゲノムに部位特異的組換え酵素の
組換え配列が1つ残存する。これに対して、ある態様では、本発明の方法で得られる細胞
の改変ゲノムは、部位特異的組換え酵素の組換え配列(外来である)を有しない。
選択マーカー用ドナーDNAの種類数は、ゲノム改変の対象とするアレルの数と同数以
上であればよく、上限は特に限定されない。ゲノム改変の対象とするアレルの数と同数以
上の種類の選択マーカー用ドナーDNAを用いることで、2つ以上のアレルを安定的に改
変することができる。選択マーカー用ドナーDNAの種類数は、後述の工程(b)での選
択操作の観点から、ゲノム改変の対象とするアレルの数と同数又は1〜2多い程度が好ま
しく、ゲノム改変の対象とするアレルの数と同数であることがより好ましい。
上記(i)と(ii)を細胞に導入する方法は特に限定されず、公知の方法を特に制限
なく用いることができる。(i)及び(ii)を細胞に導入する方法としては、例えば、
ウイルス感染法、リポフェクション法、マイクロインジェクション法、カルシウムリン酸
法、DEAE−デキストラン法、エレクトロポーレーション法、パーティクルガン法等が
挙げられるが、これらに限定されない。上記(i)と(ii)とを細胞に導入することに
より、上記(i)の配列特異的核酸切断分子により、標的領域のDNAが切断された後、
HDRにより(ii)の選択マーカー用ドナーDNA中の選択マーカーが標的領域にノッ
クインされる。この際、2種以上の選択マーカー用ドナーDNAは、それぞれの上流ホモ
ロジーアームおよび下流ホモロジーアームが同一である場合には、ランダムに標的領域の
2つ以上のアレルにノックインされ得る。但し、2種以上の選択マーカー用ドナーDNA
は、2以上のアレルそれぞれの標的領域の上流配列および下流配列と相同組換え可能な塩
基配列をホモロジーアームの塩基配列をそれぞれ有している限り2以上のアレルそれぞれ
を改変できるので、完全に同一のホモロジーアームの塩基配列を有する必要はない。ある
態様では、2種以上の選択マーカー用ドナーDNAにおいては、その上流および下流ホモ
ロジーアームの塩基配列が、それぞれのアレルの標的領域の上流配列および下流配列とよ
り同一性の高い塩基配列を有していてもよい(例えば、そのように最適化されていてもよ
い)。
選択マーカー用ドナーDNAは、ある態様では、上流ホモロジーアームおよび下流ホモ
ロジーアームを有し、上流ホモロジーアームおよび下流ホモロジーアームの間に、選択マ
ーカー遺伝子を有し、好ましくは、メガヌクレアーゼの切断部位などのエンドヌクレアー
ゼ(塩基配列特異的核酸切断分子)の標的配列をさらに有し得る。この態様において、あ
る好ましい態様では、選択マーカーは、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子およびネ
ガティブ選択用のマーカー遺伝子を含む。別の好ましい態様では、選択マーカーは、ポジ
ティブ選択用の選択マーカーを含むが、これとは別にネガティブ選択マーカー遺伝子を含
まなくてもよい。ある好ましい態様では、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子は、ネ
ガティブ選択用にも用いられ得、そのようなマーカー遺伝子としては、可視化マーカー遺
伝子が挙げられる。
2以上の選択マーカー用ドナーDNAのセットは、上記の選択マーカー用ドナーDNA
の組合せであり、かつ、それぞれが互いに区別可能なポジティブ選択用の選択マーカー遺
伝子を有している。上記セットにおいては、メガヌクレアーゼの切断部位などのエンドヌ
クレアーゼ(塩基配列特異的核酸切断分子)の標的配列をさらに有し得、当該標的配列は
互いに異なっていてもよいが、同一である(または同一の塩基配列特異的核酸切断分子で
切断できる)ことが好ましい。選択マーカー用ドナーDNAの長さは上記の通りであるが
、例えば、5kbp以上、8kbp以上、または10kbp以上であり得る。
(工程(b))
前記工程(a)の後、工程(b)を行う。工程(b)では、2以上のアレルにそれぞれ
区別可能に異なる選択マーカー遺伝子またはその組合せが導入された細胞を、当該区別可
能に異なる選択マーカー遺伝子の発現に基づいて、選択する。より具体的には、工程(b
)では、前記2以上のアレルに対して異なる種類の選択マーカー用ドナーDNAがそれぞ
れ相同組み換えすることによって、当該2以上のアレルにそれぞれ区別可能に異なる固有
の選択マーカー遺伝子が導入され、導入された当該区別可能に異なる選択マーカー遺伝子
のすべてを発現する細胞を選択する。ある態様では、工程(b)では、前記2種以上の選
択マーカー用ドナーDNAが有する選択マーカー遺伝子であって染色体ゲノムに組込まれ
たすべての選択マーカー遺伝子の発現に基づいて、異なる選択マーカー用ドナーDNAが
導入されたことによりそれぞれのアレルが改変された細胞を選択する。ある態様では、工
程(b)では、前記2種以上の選択マーカー用ドナーDNAが有する全ての選択マーカー
遺伝子に基づいて、細胞を選択する。ある態様では、工程(b)では、前記2種以上の選
択マーカー用ドナーDNAが有する選択マーカー遺伝子であって染色体ゲノムに組込まれ
たすべての選択マーカー遺伝子(ポジティブ選択用のマーカー遺伝子)の発現に基づいて
、区別可能な選択マーカー用ドナーDNAが導入されたことによりそれぞれのアレルが改
変された細胞を選択する。ある態様では、工程(b)で得られる細胞は、各アレルが異な
るポジティブ選択用のマーカー遺伝子を有する。ある態様では、工程(b)で得られる細
胞は、各アレルが、共通したポジティブ選択用のマーカー遺伝子をここで、ある態様では
、工程(b)では、単一細胞クローニングを行わない{但し、工程(b)で2つ以上のア
レルが改変された細胞を選択した後に単一細胞クローニングを行うことを含んでいても、
含まなくてもよい}。ある態様では、工程(b)では、細胞の選択は、各アレルに導入さ
れた区別可能なポジティブ選択用のマーカー遺伝子の複数の発現に基づいて行われる。あ
る態様では、工程(b)は、単一の選択マーカー遺伝子の発現強度(例えば、蛍光タンパ
ク質の発現強度または蛍光強度)に基づいて改変アレル数の多さを推定する方式では行わ
れない。単一の選択マーカー遺伝子の発現強度の強弱に基づいて改変アレル数の多さを推
定する方式で細胞を選択する場合、細胞毎の遺伝子発現量に変動が生じ、2以上のアレル
が改変された細胞を1つのアレルが改変された細胞から完全に分離することが困難となり
、したがって、工程(b)において単一細胞クローニングが必要となるためである。
工程(b)は、工程(a)で用いた選択マーカー遺伝子の種類に応じて、適宜、細胞の
選択を行えばよい。この際、工程(a)で用いた選択マーカー遺伝子の全ての発現に基づ
いて細胞を選択する。
例えば、選択マーカー遺伝子がポジティブ選択マーカー遺伝子である場合、改変対象の
染色体ゲノムに組込まれる(または組込まれた)すべての選択マーカー遺伝子を発現する
細胞を選択することができ、例えば、改変対象のアレルの数と同数のポジティブ選択マー
カーを発現する細胞を選択することができる。ポジティブ選択マーカー遺伝子が薬剤耐性
遺伝子である場合、当該薬剤を含む培地で細胞を培養することにより、前記ポジティブ選
択マーカーを発現する細胞を選択することができる。ポジティブ選択マーカー遺伝子が蛍
光タンパク質遺伝子、発光酵素遺伝子、又は発色酵素遺伝子である場合、蛍光タンパク質
、発光酵素、又は発色酵素による蛍光、発光、又は発色を呈する細胞を選択することによ
り、前記ポジティブ選択マーカーを発現する細胞を選択することができる。本工程では、
改変されるべきアレルの数と同数の選択マーカー用ドナーDNAがゲノムに取り込まれた
場合、当該数のアレルが改変されている。n倍体の細胞においては、改変されるべきアレ
ルの数はnまたはそれ以下であり、当該数以上n以下の種類の選択マーカー用ドナーDN
Aがゲノムに取り込まれた場合には、少なくとも改変されるべきアレル(2以上のアレル
である)が改変されている。ある態様では、改変されるべきアレルの数がnであり、当該
数の種類の選択マーカー用ドナーDNAが染色体ゲノムに取り込まれ、すべてのアレルが
改変されている。ある態様では、本工程では、改変対象とするアレルの数と同数以上の種
類の選択マーカー用ドナーDNAを用いているため、細胞が発現するポジティブ選択マー
カーの数は、当該数のアレルが確実に改変されていることを意味する。工程(b)におけ
る細胞の選択効率を高める観点では、改変対象とするアレルの数は、選択マーカー用ドナ
ーDNAの種類数と同一であることが好ましい。
上記の通り、本実施形態のゲノム改変方法では、n倍体の細胞においてn個のアレルを
改変するためにn種類の選択マーカー用ドナーDNAを用いてHDRを誘発させることに
よって、細胞が有する全てのアレルが改変された細胞を効率よく取得することができる。
また、全てのアレルが改変された細胞を確実に取得することができるため、標的領域が大
きいサイズ(例えば、10kbp以上)であっても、標的領域が改変された細胞を効率よ
く取得することができる。そのため、大規模なゲノム改変も可能となる。
ある態様では、工程(b)では、工程(a)によって得られた細胞を含むプールから、
細胞をクローニングすることなく、改変された細胞を選択することができる。クローニン
グの工程を省くことによって工程に必要な時間が短縮され得る。上記プールはある態様で
は、105以上、106以上、107以上、または108以上の細胞を含んでいてもよい。
(任意工程)
本実施形態のゲノム改変方法は、上記工程(a)及び工程(b)に加えて、任意の工程
を有していてもよい。任意の工程としては、例えば、下記(c)及び(d)の工程が挙げ
られる:
(c)前記工程(b)の後、前記標的領域の上流側に隣接する塩基配列と相同な塩基配
列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の下流側に隣接する塩基配列と相同な
塩基配列を有する下流ホモロジーアームとの間に、所望の塩基配列を含む組換え用ドナー
DNAを、前記細胞に導入する工程;及び
(d)前記工程(c)の後、前記ネガティブ選択マーカーを発現しない細胞を選択する
工程。
ある態様では、本実施形態のゲノム改変方法は、上記工程(a)及び工程(b)に加え
て、任意の工程を有していてもよい。ある態様では、本実施形態のゲノム改変方法または
、ゲノムが改変された細胞を得る方法では、2種以上の選択マーカー用ドナーDNAがそ
れぞれ、前記上流ホモロジーアームと前記下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択
用の選択マーカー遺伝子とそれとは別のネガティブ選択用のマーカー遺伝子と標的配列と
を有し、ここで、当該選択マーカー遺伝子がポジティブ選択用にもネガティブ選択用にも
用いられる場合には、当該別のネガティブ選択用の選択マーカー遺伝子を有していなくて
よく、例えば、下記(c)及び(d)の工程を有し得る:
(c)前記工程(b)の後、下記(iii)及び(iv)を選択された細胞に導入して
前記2以上のアレルに組換え用ドナーDNAを導入する工程と、
(iii)前記さらなる標的配列を標的とし、当該さらなる標的配列を切断することがで
きる配列特異的核酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレ
オチドを含むゲノム改変システム、
(iv)所望の塩基配列を含む組換え用ドナーDNAであって、前記標的領域の上流側の
塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の
下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームを有する組
換え用ドナーDNA{当該組換え用ドナーDNAは、上流ホモロジーアームと下流ホモロ
ジーアームの間に、所望の塩基配列を含んでいても、何らの塩基配列を含まなくてもよい
}、
(d)前記工程(c)の後、前記ネガティブ選択用のマーカー遺伝子を発現しない細胞
を選択する工程(ネガティブ選択のための工程)。
<工程(c)>
工程(b)の後、工程(c)を行ってもよい。ある態様において、工程(c)では、上
流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームの間に、所望の塩基配列を含む、または含ま
ない組換え用ドナーDNAを、工程(b)で選択した細胞に導入する。ある態様において
、工程(c)では、標的領域の上流側に隣接する塩基配列と相同な塩基配列を有する上流
ホモロジーアームと、標的領域の下流側に隣接する塩基配列と相同な塩基配列を有する下
流ホモロジーアームとの間に、所望の塩基配列を含む組換え用ドナーDNAを、工程(b
)で選択した細胞に導入する。
≪組換え用ドナーDNA≫
組換え用ドナーDNAは、ノックインする所望の塩基配列を含んでいてもよい。前記所
望の塩基配列は、特に限定されない。例えば、ゲノム改変の目的が、標的領域に含まれる
遺伝子の機能をノックアウトすることにある場合には、標的領域の一部または全部の塩基
配列を欠失させた塩基配列を所望の塩基配列として用いることができる。また、標的領域
に、外来遺伝子を組み込む場合には、当該遺伝子を含む塩基配列を所望の塩基配列として
用いることができる。所望の塩基配列のサイズは、特に限定されず、任意のサイズとする
ことができる。所望の塩基配列は、例えば、10bp以上、20bp以上、40bp以上
、80bp以上、200bp以上、400bp以上、800bp以上、1kbp以上、2
kbp以上、3kbp以上、4kbp以上、5kbp以上、6kbp以上、7kbp以上
、8kbp以上、9kbp以上、10kbp以上、15kbp以上、20kbp以上、4
0kbp以上、80kbp以上、100kbp以上、又は200kbp以上等とすること
ができる。本実施形態の方法では、所望の塩基配列が2以上のアレルにノックインされた
細胞を効率よく選択することができる。そのため、例えば、5kbp以上、8kbp以上
、又は10kbp以上の大きなサイズのDNAであってもノックインすることが可能であ
る。組換え用ドナーDNAは、例えば、選択マーカー用ドナーDNAよりも長さにおいて
短くてもよい。
組換え用ドナーDNAが有する上流ホモロジーアーム及び下流ホモロジーアームは、前
記選択マーカー用ドナーDNAが有するものと、同じであってもよく、異なっていてもよ
い。便宜上、選択マーカー用ドナーDNAが含む上流ホモロジーアーム及び下流ホモロジ
ーアームを「第1の上流ホモロジーアーム」及び「第1の下流ホモロジーアーム」、組換
え用ドナーDNAが含む上流ホモロジーアーム及び下流ホモロジーアームを「第2の上流
ホモロジーアーム」及び「第2の下流ホモロジーアーム」という場合がある。第2の上流
ホモロジーアーム及び第2の下流ホモロジーアームは、例えば、第1の上流ホモロジーア
ームまたはそれよりも上流の領域と相同組換え可能であり、かつ、第1の下流ホモロジー
アームまたはそれよりも下流の領域と相同組換え可能であれば、その長さ及び配列は特に
限定されない(ある態様では、標的領域の周辺領域と相同組換可能であれば、その長さ及
び配列は特に限定されない)。組換え用ドナーDNAによる組換え後に、選択マーカー用
ドナーDNAの塩基配列の一部がゲノム上に残存することは許容されるが、好ましくは、
選択マーカー用ドナーDNAの塩基配列は、組換え用ドナーDNAとの組換えにより、ゲ
ノム上から完全に除去される。選択マーカー用ドナーDNAに搭載されている様々な遺伝
子は、組換え用ドナーDNAによる組換えにより除去される。これによって、ある態様で
は、細胞の2つ以上のアレルは、それぞれ組換え用ドナーDNAによって置き換わり得る
。ある態様では、組換え用ドナーDNAは、所望の塩基配列を有していてよく、これによ
り、2つ以上のアレルが改変された細胞は、当該改変されたアレルに当該所望の塩基配列
を有することとなる。
組換え用ドナーDNAにおいて、所望の塩基配列は、第2の上流ホモロジーアームと第
2の下流ホモロジーアームとの間に位置する。組換え用ドナーDNAが外来遺伝子を含む
場合、当該外来遺伝子は、プロモーターに機能的に連結されていることが好ましい。組換
え用ドナーDNAは、エンハンサー、ポリA付加シグナル、ターミネーター等の任意の制
御配列等を有していてもよい。また、組換え用ドナーDNAが外来遺伝子を含む場合、組
換え用ドナーDNAは当該外来遺伝子の上流及び下流にインスレーター配列を有していて
もよい。ある態様では、組換え用ドナーDNAは、第2の上流ホモロジーアームと第2の
下流ホモロジーアームとの間にスペーサー配列を含む。ある態様では、組換え用ドナーD
NAは、選択マーカー用ドナーDNAが有するネガティブ選択マーカー遺伝子を有する細
胞を除去するときに、当該当該遺伝子と同じ(または区別できない)遺伝子をその毒性が
発揮される条件下で発現させると、組換え用ドナーDNAで相同組換えが生じた細胞を選
択することができない。したがって、組換え用ドナーDNAは、選択マーカー用ドナーD
NAが有するネガティブ選択マーカー遺伝子を有する細胞を除去するときに、当該当該遺
伝子と同じ(または区別できない)遺伝子をその毒性が発揮される条件下で発現しないよ
うに構成されている。例えば、ある態様では、組換え用ドナーDNAは、第2の上流ホモ
ロジーアームと第2の下流ホモロジーアームとの間にネガティブ選択マーカー遺伝子およ
び第2の標的配列を有しない。
組換え用ドナーDNAは、上記(i)と共に細胞に導入されることが好ましい。組換え
用ドナーDNAを上記(i)と共に細胞に導入することにより、上記(i)の配列特異的
核酸切断分子により、標的領域のDNAが切断された後、HDRにより組換え用ドナーD
NA中の所望の塩基配列が標的領域にノックインされる。本工程で組換え用ドナーDNA
を導入する細胞は、工程(b)で選択された細胞であるため、標的領域に選択マーカー用
ドナーDNAの塩基配列がノックインされている。そのため、(i)のゲノム改変システ
ムの標的配列は、選択マーカー用ドナーDNAノックイン後の標的領域に含まれる塩基配
列である。便宜上、工程(a)におけるゲノム改変システムの標的配列を「第1の標的配
列」、工程(c)におけるゲノム改変システムの標的配列を「第2の標的配列」という場
合がある。第2の標的配列は、工程(b)後の細胞の標的領域に含まれる任意の配列を用
いることができる。ある態様では、選択マーカー用ドナーDNA中の第2の標的配列は、
当該細胞のゲノム上に存在しない配列であり得る。ある態様では、選択マーカー用ドナー
DNA中の第2の標的配列は、当該細胞のゲノム上に存在しない配列であり、オフターゲ
ットによるゲノム上の他の配列を切断しない程度に他の配列と異なる配列である。ある態
様では、選択マーカー用ドナーDNA中の第2の標的配列は、ゲノム上に存在しないメガ
ヌクレアーゼの切断部位であり得る。ある態様では、第2の標的配列は、工程(d)にお
けるネガティブ選択マーカー遺伝子以外の領域である。当然ながら、組換え用ドナーDN
Aは、組換え用ドナーDNAによる相同組換えが著しく阻害されないように構成されてい
る。第1の標的配列が、工程(b)後の細胞の標的領域に残っている場合または第1の標
的配列が選択マーカー用ドナーDNAにより再導入された場合、第2の標的配列は第1の
標的配列と同じであってもよく、異なっていてもよい。
組換え用ドナーDNAは、上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間に塩基
配列を含まなくてもよいが、上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間に10
bp以下、20bp以下、30bp以下、40bp以下、50bp以下、60bp以下、
70bp以下、80bp以下、90bp以下、100bp以下、200bp以下、300
bp以下、400bp以下、500bp以下、600bp以下、700bp以下、800
bp以下、900bp以下、または1kbp以下の塩基配列を含んでいてもよい。組換え
用ドナーDNAは、上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間に、1kbp以
上、2kbp以上、3kbp以上、4kbp以上、5kbp以上、6kbp以上、7kb
p以上、8kbp以上、9kbp以上、または10kbp以上の塩基配列を含んでいても
よい。
組換え用ドナーDNAは、上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間に、選
択マーカー遺伝子、部位特異的組換え酵素の標的配列、生理活性を有する因子をコードす
る遺伝子、細胞毒性を有する因子をコードする遺伝子、およびプロモーター配列からなる
群から選択される1以上またはすべてを含む、もしくは前記群から選択される1以上また
はすべてを含まない。
工程(c)では、工程(b)で選択細胞に対して、組換え用ドナーDNAを導入する。
工程(b)で選択した細胞は、標的領域に選択マーカー遺伝子がノックインされている。
工程(c)は、前記標的領域にノックインされた選択マーカー遺伝子を、除去するまたは
所望の塩基配列に置き換える工程であるともいえる。
(工程(d))
工程(c)の後、工程(d)を行ってもよい。工程(d)では、ネガティブ選択マーカ
ーを発現しない細胞を選択する。
工程(d)を行う場合、工程(a)において、選択マーカー用ドナーDNAはそれぞれ
、ポジティブ選択マーカー遺伝子とネガティブ選択マーカー遺伝子と、を含むものを用い
得る。すなわち、工程(a)で用いる選択マーカー用ドナーDNAは、上流ホモロジーア
ームと、下流ホモロジーアームとの間に、ポジティブ選択マーカー遺伝子及びネガティブ
選択マーカー遺伝子を含み得る。ポジティブ選択マーカー遺伝子とネガティブ選択マーカ
ー遺伝子との位置関係は、特に限定されず、ポジティブ選択マーカー遺伝子がネガティブ
選択マーカー遺伝子の上流にあってもよいし、その逆であってもよい。選択マーカー用ド
ナーDNAが、ポジティブ選択マーカー遺伝子とネガティブ選択マーカー遺伝子とを有す
る場合、ポジティブ選択マーカー遺伝子とネガティブ選択マーカー遺伝子との間には、自
己切断型ペプチドをコードする塩基配列、又はIRES(internal riboz
yme entry site)配列等が介在していてもよい。これらの配列を介在させ
ることで、1つのプロモーターから、ポジティブ選択マーカー遺伝子とネガティブ選択マ
ーカー遺伝子とを独立して発現させることができる。2Aペプチドとしては、例えば、口
蹄疫ウイルス(FMDV)由来の2Aペプチド(F2A)、ウマ鼻炎Aウイルス(ERA
V)由来の2Aペプチド(E2A)、Porcine teschovirus(PTV
−1)由来の2Aペプチド(P2A)及びThosea asigna virus(T
aV)由来の2Aペプチド(T2A)等が挙げられる。
あるいは、同じ選択マーカー遺伝子を、工程(a)ではポジティブ選択マーカーとして
用い、工程(d)ではネガティブ選択マーカーとして用いてもよい。例えば、選択マーカ
ー遺伝子が蛍光タンパク質遺伝子、発光酵素遺伝子、もしくは発色酵素遺伝子などの蛍光
又は色素等の発色に関わるマーカー遺伝子(可視化マーカー遺伝子)である場合、工程(
a)では、蛍光タンパク質、発光酵素、又は発色酵素の発現による蛍光、発光又は発色を
呈する細胞を選択し、工程(c)では、これらの蛍光、発光又は発色が消失した細胞を選
択してもよい。同じ選択マーカー遺伝子がポジティブ選択マーカーとネガティブ選択マー
カーを兼ねる場合も、選択マーカー用ドナーDNAが、ポジティブ選択マーカーに加えて
、ネガティブ選択マーカーをさらに有する場合に包含される。
ネガティブ選択マーカー遺伝子は、選択マーカー用ドナーDNAの種類毎に、異なって
いてもよいし、同じであってもよい。ネガティブ選択マーカー遺伝子に共通のものを用い
ることにより、工程(d)における細胞の選択作業が簡易となる。
工程(d)は、工程(a)で用いたネガティブ選択マーカー遺伝子の種類に応じて、適
宜細胞の選択を行えばよい。この際、工程(a)で用いたネガティブ選択マーカー遺伝子
を全ての発現しない細胞を選択する。
例えば、ネガティブ選択マーカー遺伝子が蛍光タンパク質遺伝子、発光酵素遺伝子、又
は発色酵素遺伝子などの可視化マーカー遺伝子である場合、蛍光、発光又は発色等の可視
化マーカーが消失した細胞を選択すればよい。また、ネガティブ選択マーカー遺伝子が自
殺遺伝子である場合、当該自殺遺伝子の発現により毒性を発現する薬剤を含む培地で細胞
を培養することにより、前記ネガティブ選択マーカーを発現しない細胞を選択することが
できる。例えば、自殺遺伝子としてチミジンカイネース遺伝子を用いた場合、ガンシクロ
ビルを含む培地で細胞を培養すればよい。ネガティブ選択マーカー遺伝子の発現の消失は
、工程(a)で標的領域に組み込まれたネガティブ選択マーカー遺伝子が、組換え用ドナ
ーDNAの所望の塩基配列を含むポリヌクレオチドに置き換えられたことを意味する。こ
のとき、ポリヌクレオチドの置き換えは、工程(a)でノックインされた塩基配列全体で
起きていると考えられる。そのため、ネガティブ選択マーカー遺伝子の発現が消失した細
胞を選択することにより、工程(a)でノックインされた塩基配列が、組換え用ドナーD
NAの所望の塩基配列で置き換えられた細胞を、効率よく選択することができる。自殺遺
伝子等のネガティブ選択マーカー遺伝子は、誘導性プロモーターに機能的に連結されてい
てもよく、その毒性が発揮される条件下で当該ネガティブ選択マーカー遺伝子が発現され
るように誘導性プロモーターを駆動させる薬剤の存在下で、細胞を培養することによって
前記ネガティブ選択マーカーを発現しない細胞を選択することができる。この場合、ネガ
ティブ選択マーカー遺伝子は、発現するだけで細胞に毒性を生じる細胞毒素(例えば、リ
シンおよびジフテリアトキシン)をコードする遺伝子であってもよい。
ある態様では、工程(d)では、工程(c)によって得られた細胞を含むプールから、
細胞をクローニングすることなく、2以上のアレルが改変された細胞(ネガティブ選択マ
ーカー遺伝子が非存在の細胞)を選択することができる。上記プールはある態様では、1
5以上、106以上、107以上、または108以上の細胞を含んでいてもよい。
上記の通り、工程(c)及び工程(d)を行うことにより、細胞が有する全てのアレル
が所望の配列に改変された細胞を効率よく取得することができる。また、全てのアレルが
改変された細胞を確実に取得することができるため、所望の塩基配列が大きいサイズ(例
えば、10kbp以上)であっても、当該塩基配列が標的領域にノックインされた細胞を
効率よく取得することができる。ある態様では、工程(c)及び工程(d)を行うことに
より、細胞が有する全てのアレルにおいて標的領域が欠失し、その前後(すなわち、上流
ホモロジーアームおよび下流ホモロジーアームがそれぞれ相同組換えを起こす配列)が、
塩基の挿入、置換、および欠失からなる群から選択される1以上なしに(例えば、塩基の
挿入、置換および欠失なく)、シームレスに連結している。ある態様では、得られる細胞
では、欠損させた領域を挟む上流側と下流側の塩基配列がシームレスに連結している。
なお、工程(b)によって、生存する細胞の数が少ない場合、または生存する細胞が得
られない場合には、上流ホモロジーアームおよび下流ホモロジーアームと相同組換えによ
りゲノムから除去された標的領域中に、細胞の増殖または生存に影響する遺伝子が含まれ
ていることが示される。したがって、標的領域に細胞の増殖または生存に影響する遺伝子
が含まれているか否かを調べることができる。また、この場合には、上流ホモロジーアー
ムおよび下流ホモロジーアームの設計位置を変化させて、ゲノム上から相同組換えにより
消失させる遺伝子を変化させて、細胞の増殖または生存に影響する遺伝子を特定すること
ができる。したがって、本発明は、工程(b)の後に、工程(e)を行うことができる。
すなわち、工程(e)は、工程(b)において、生存する細胞の数が少ない場合、または
生存する細胞が得られない場合には、標的領域を狭め、ゲノム上から消失させる遺伝子を
減らすことによって、細胞の増殖または生存に影響する遺伝子を特定することを含む。標
的領域には、1つの遺伝子しか含まれていない場合には、当該遺伝子が、細胞の増殖また
は生存に影響する遺伝子であることが示される。そして、細胞の増殖または生存に影響す
る遺伝子が特定された場合、工程(f)を行うことができる。工程(f)は、特定された
細胞の増殖または生存に影響する遺伝子を改変するゲノムの他の領域(例えば、セーフハ
ーバー領域等)にノックインすることを含む{ノックインには組換え用ドナーDNAを用
いてもよい}。これによって、本発明の方法によって削る領域を拡大する(標的領域を上
流および/または下流に広げる)ことができる。生存する細胞の数が少ないことは、細胞
の生存や増殖に影響しない領域に対して工程(a)および(b)を実施したときに得られ
る細胞の数との比較によって確認することができる。ある態様では、工程(a)は、細胞
の増殖や生存を消失させる領域を標的領域としないことができる。
[ゲノム改変キット]
1実施形態において、本発明は、染色体ゲノムの2つ以上のアレルを改変するゲノム改
変キットを提供する。前記ゲノム改変キットは、下記(i)及び(ii)を含む:
(i)前記染色体ゲノムの標的領域を標的とする配列特異的核酸切断分子、又は前記配
列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含むゲノム改変システム;及び
(ii)前記標的領域の上流側に隣接する塩基配列と相同な塩基配列を有する下流ホモ
ロジーアームと、前記標的領域の下流側に隣接する塩基配列と相同な塩基配列を有する下
流ホモロジーアームとの間に、選択マーカー遺伝子の塩基配列を含む、2種以上の選択マ
ーカー用ドナーDNAであって、前記2種以上の選択マーカー用ドナーDNAは、相互に
異なる選択マーカー遺伝子を有し、前記選択マーカー用ドナーDNAの種類数は、ゲノム
改変の対象とする前記アレルの数と同数以上である、2種以上の選択マーカー用ドナーD
NA。
1実施形態において、本発明は、下記(i)及び(ii)を含む、染色体ゲノムの2つ
以上のアレルを改変するゲノム改変キット。
(i)前記染色体ゲノムの標的領域を標的とし、標的領域を切断することができる配列特
異的核酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含
むゲノム改変システム、
(ii)2種以上の選択マーカー用ドナーDNAであって、前記標的領域の上流側の塩基
配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の下流
側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームを有し、上流ホ
モロジーアームと下流ホモロジーアームの間に、選択マーカー遺伝子の塩基配列を含み、
前記2種以上の選択マーカー用ドナーDNAは、相互に区別可能な選択マーカー遺伝子を
有し、前記選択マーカー用ドナーDNAの種類数は、ゲノム改変の対象とする前記アレル
の数と同数以上である、2種以上の選択マーカー用ドナーDNA。この態様において、前
記選択マーカー遺伝子は、選択マーカー用ドナーDNAの種類毎に固有であり得る。上記
キットは、上記キットは本発明の方法に用いられるものであり得る。上記キットは、染色
体ゲノムの2つ以上のアレルが改変された細胞を作製する方法に用いられてもよい。
本実施形態のキットが含む(i)及び(ii)は、上記[ゲノム改変方法]の項で説明
した(i)及び(ii)と同様である。本実施形態のキットを用いることにより、上記の
ゲノム改変方法を容易に行うことができる。
1実施形態において、本発明は、染色体ゲノムの2つ以上のアレルが改変された細胞で
あって、当該2つ以上のアレルそれぞれにおいて相互に異なる(区別可能な)選択マーカ
ー遺伝子を有する、細胞を提供する。ある態様では、細胞は、単細胞生物の細胞であり得
る。ある態様では、細胞は、単離された細胞であり得る。ある態様では、細胞は、多能性
細胞、および多能性幹細胞(胚性幹細胞および誘導多能性幹細胞など)からなる群から選
択される細胞であり得る。ある態様では、細胞は、組織幹細胞であり得る。ある態様では
、細胞は、体細胞であり得る。ある態様では、細胞は、生殖系列細胞(例えば、生殖細胞
)であり得る。ある態様では、細胞は、細胞株であり得る。ある態様では、細胞は不死化
細胞であり得る。ある態様では、細胞はがん細胞であり得る。ある態様では、細胞は、非
がん細胞であり得る。ある態様では、細胞は、疾患患者の細胞であり得る。ある態様では
、細胞は健常者の細胞であり得る。ある態様では、細胞は、動物細胞(例えば、ヒト細胞
)、例えば、昆虫細胞(例えば、カイコ細胞)、HEK293細胞、HEK293T細胞
、Expi293F(商標)細胞、FreeStyle(商標)293F細胞、チャイニ
ーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、CHO−S細胞、CHO−K1細胞、およびE
xpiCHO細胞、ならびにこれらの細胞からの派生細胞からなる群から選択される細胞
であり得る。ある好ましい態様では、上記細胞においては、染色体ゲノムの標的領域のす
べてのアレルが改変され、改変後の領域は、それぞれ相互に異なる(区別可能な)選択マ
ーカー遺伝子を有する。
1実施形態において、染色体ゲノムの2つ以上のアレルが改変された細胞であって、当
該2つ以上のアレルそれぞれにおいて相互に異なる(区別可能な)選択マーカー遺伝子を
有する、細胞の培養方法が提供される。選択マーカー遺伝子が、薬剤耐性マーカー遺伝子
である場合には、培養はそれぞれの薬剤耐性マーカー遺伝子に対する薬剤の存在下で培養
され得る。培養は、細胞の維持または増殖に適した条件下で行われ得る。
1実施形態において、本発明は、2つ以上のアレルが改変された染色体ゲノムを有する
非ヒト生物であって、当該2つ以上のアレルそれぞれにおいて相互に異なる(区別可能な
)選択マーカー遺伝子を有する、非ヒト生物が提供される。ある態様では、細胞は、単細
胞生物の細胞であり得る。ある態様では、非ヒト生物は、酵母(例えば、分裂酵母または
出芽酵母、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cer
evisiae)、サッカロミセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyce
s carlsbergensis)、サッカロミセス・フラギリス(Saccharo
myces fragilis)、サッカロミセス・ルーキシー(Saccharomy
ces rouxii)などのサッカロミセス属、キャンディダ・ユーティリス(Can
dida utilis)、キャンディダ・トロピカリス(Candida tropi
calis)などのキャンディダ属、ピキア(Pichia)属、クリベロマイセス(K
luyveromyces)属、ヤロイワ(Yarrowia)属、ハンゼニュラ(Ha
nsenula)属、エンドマイセス(Endomyces)属などの酵母からなる群か
ら選択される生物であり得る。ある態様では、非ヒト生物は、糸状菌(例えば、Aspe
rgillus,Trichoderma,Humicola,Acremonium,
Fusarium,及びPenicillium種)であり得る。ある態様では、非ヒト
生物は、は、多細胞生物であり得る。ある態様では、非ヒト生物は、非ヒト動物であり得
る。ある態様では、非ヒト生物は、植物であり得る。ある好ましい態様では、上記非ヒト
生物では、染色体ゲノムの標的領域のすべてのアレルが改変され、改変後の領域は、それ
ぞれ相互に異なる(区別可能な)選択マーカー遺伝子を有する。
上記細胞では、細胞の生存や増殖に必要な遺伝子の1以上が、染色体ゲノムの他の領域
に含まれ、または集められていてもよい。他の領域は、例えば、セーフハーバー領域(例
えば、AAVS1領域など)であり得る。
以下、実験例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものでは
ない。
[実験例1]
ドナーDNAの作製
2つのアレルが編集された細胞を選別するために、ポジティブ選択マーカーが異なる二
種類のドナーDNAを作製した(図1;PuromycinR plasmid、Bla
sticidinR plasmid)。ネガティブ選択マーカーとしては、GFP遺伝
子を用いた。PuromycinR plasmidでは、EF1プロモーターの下流に
GFP遺伝子が連結されており、T2A配列を挟んで、ピューロマイシン耐性遺伝子が連
結されている。BlasticidinR plasmidでは、EF1プロモーターの
下流にGFP遺伝子が連結されており、T2A配列を挟んで、ブラスティサイディン耐性
遺伝子が連結されている。
ドナープラスミド(ドナーDNA)のバックボーン配列として、HR110PA−1プ
ラスミド(フナコシ)を用いた。このHR110PA−1プラスミドを、制限酵素Eco
RIとBamHIで切断し、複製起点とアンピシリン耐性遺伝子を持つ配列を切り出し、
精製を行った。これを、今後用いる全てのドナープラスミドのバックボーン配列として用
いた。
プラスミドの選択マーカー配列及びホモロジーアームの配列は、以下のPCRにより増
幅した。EF1プロモーター配列は、HR110PA−1上のEcoRI認識配列から、
EF1プロモーター配列までを増幅することによって作製した。GFP配列は、CS−C
DF−CG−PREプラスミド(dnaconda.riken.jp/search/
RDB_clone/RDB04/RDB04379.html)を鋳型に作製した。T
2A配列からピューロマイシン発現配列は、HR110PA−1上のT2A配列から、B
amHI認識配列まで増幅することによって作製した。上流ホモロジーアーム(810b
p:配列番号2)及び下流ホモロジーアーム(792bp:配列番号3)は、HCT11
6のゲノムを鋳型に作製した。
選択マーカー配列とホモロジーアーム配列には、隣り合う配列に対応する20bpの相
同配列をPCR時に付加していた。この相同配列を介して、バックボーン配列と、選択マ
ーカー配列、ホモロジーアーム配列をNEBuilder HiFi DNA Asse
mbly(NEW ENGLAND BioLabs)により結合し、大腸菌内に導入し
てアンピシリン添加培地で培養することにより、ピューロマイシンプラスミドのクローニ
ングを行った。
ブラスティサイディンプラスミドは、ピューロマイシンプラスミドを改変することによ
り作製した。PCRにより増幅したブラスティサイディンのORF配列と、ピューロマイ
シンプラスミドを鋳型にピューロマイシンORF配列以外を増幅した配列を、NEBui
lder HiFi DNA Assemblyにより結合し、ピューロマイシンプラス
ミド作製時と同様にクローニングを行った。
[実験例2]
TP53遺伝子の第1イントロンへの選択マーカーの導入
(細胞及び標的領域)
細胞は、大腸がん由来の細胞株であるHCT116細胞を用いた。この細胞株のほとん
どは2倍体である。ゲノム編集の標的領域としては、がん抑制遺伝子のTP53の第1イ
ントロンを選択した。
(工程(a))
105個のHCT116細胞に、ドナープラスミド(ドナーDNA)として、Puro
mycinR plasmid及びBlasticidinR plasmid(各12.
5ng)を導入した。
ドナープラスミド導入の前日、24ウェルプレートに、各ウェルあたり105個のHC
T116細胞をまいた。培養には、各ウェルあたり500μLのマッコイ5A培地(10
%になるようにFBSを添加)を用いた。
細胞をまいた翌日、下記の組成で、プラスミド導入溶液を作製した。
Opti−MEM 100μL
Cas9&gRNA共発現プラスミド(pX330−U6−Chimeric_BB−
CBh−hSpCas9;Addgene、プラスミド番号42230) 475ng
PuromycinR plasmid 12.5 ng
BlasticidinR plasmid 12.5 ng
FuGENE HD 1.5μL
Cas9&gRNA共発現プラスミドに用いたgRNAの標的配列を以下に示す。
CTCAGAGGGGGCTCGACGCTAGG(配列番号4)
上記のプラスミド導入溶液をピペッティングにより混合後、10分間室温でインキュベ
ートの後、24ウェルプレートに加えた。
(工程(b))
両プラスミドの導入後、ピューロマイシン1μg/mL及びブラティサイディンを10
μg/mL添加したマッコイ5A培地(10%になるようにFBSを添加)で、細胞を8
日間培養した。培養後、独立コロニーから細胞をピペティングで回収した。
(選択マーカー遺伝子ノックインの確認)
回収した27個の細胞クローンからフェノール/クロロホルム抽出法によりDNAを抽
出し、ジャンクションPCRを行って選択マーカー遺伝子のノックインを確認した。
HCT116細胞を1.5mLチューブに回収し、室温で3分間、150gで遠心した
。上清を除去し、173μLのTEバッファー(100mM NaCl)で再懸濁した。
95℃で5分間インキュベートした後、室温に冷却した。20μLのTEバッファー(1
00mM NaCl,0.5%SDS)、5μLのProteinase K(5mg/
ml)、2μLのRNaseA(100mg/ml)を加え、混合した後、37℃で2時
間転倒撹拌を行った。85℃で25分間インキュベートした後、200μLのフェーノー
ル/クロロホルム/イソアミルアルコール(25:24:1)を加え、10分間転倒撹拌
を行った。室温で10分間、15,000gで遠心した後、上層を新しい1.5mLチュ
ーブに移した。前記1.5mLチューブに、移した上層と同量のクロロホルムを加え、1
0分間転倒撹拌を行った。室温で10分間、15,000gで遠心した後、上層を新しい
1.5mLチューブに移した。前記1.5mLチューブに、移した上層と同量のイソプロ
パノールを加え、4℃で30分間、15,000gで遠心した。上清を除去し、70%エ
タノールを150μL加え、4℃で5分間、15,000gで遠心した。上清を完全に除
去し、沈殿をTEバッファー30μLで溶解した。
上記のように回収したDNAを鋳型として、図2に示すjunction Prime
rを用いて、ジャンクションPCRを行った。junction Primerは、ピュ
ーロマイシン耐性遺伝子又はブラスティサイディン耐性遺伝子に対して、5'及び3'の両
側のジャンクションをまたぐように増幅するプライマーである。PCR産物のアガロース
ゲル電気泳動を行い、増幅DNA断片を確認した。PCR条件及びプライマー配列を以下
に示す。
<PCR条件>
PCR溶液(反応系25μL)の組成
1x KOD one(TOYOBO)
0.2μMフォワードプライマー
0.2μMリバースプライマー
10ngゲノムDNA
サーマルサイクラー条件
98℃,30秒
98℃,10秒;68℃,20秒 50サイクル
4℃
<プライマー配列>
Puromycin 5'junction用PCRプライマー
フォワードプライマー:TGCCCCGTTGTTATCCTTAC(配列番号5)
リバースプライマー:GCTCGTAGAAGGGGAGGTTG(配列番号6)
Puromycin 3'junction用PCRプライマー
フォワードプライマー:GTCACCGAGCTGCAAGAAC(配列番号7)
リバースプライマー:GAAGACGGCAGCAAAGAAAC(配列番号8)
Blasticidin 5'junction用PCRプライマー
フォワードプライマー:TGCCCCGTTGTTATCCTTAC(配列番号9)
リバースプライマー:GCTTCAATATGTACTGCCGAAA(配列番号10

Blasticidin 3'junction用PCRプライマー
フォワードプライマー:GAAGCCATTGCGATTGGTAG(配列番号11)
リバースプライマー:GAAGACGGCAGCAAAGAAAC(配列番号12)
結果を図3に示す。HCT116の野生株から抽出したDNAでは、ピューロマイシン
耐性遺伝子及びブラスティサイディン耐性遺伝子のいずれについても、期待されるサイズ
のバンドは検出されなかった(最右レーン:WT)。一方、上記工程(a)及び工程(b
)により得られた細胞クローンから抽出したDNAでは、27クローン中12クローンで
、ピューロマイシン耐性遺伝子及びブラスティサイディン耐性遺伝子の両方で、期待され
るサイズのバンドが全て検出された(下線で示すクローン)。この結果は、これらの12
クローンでは、TP53の第1イントロンにおいて、一方のアレルがピューロマイシン耐
性遺伝子で置換され、他方のアレルがブラスティサイディン耐性遺伝子で置換されたこと
を示している。クローン13については、PCR産物の塩基配列の配列解析を行った。そ
の結果、TP53の第1イントロンがピューロマイシン耐性遺伝子で置換された配列、及
びTP53の第1イントロンがブラスティサイディン耐性遺伝子で配列の両方が確認され
た。
[参考実験例]
BlasticidinR plasmidを用いなかったこと以外は上記と同様の方
法で、HCT116細胞に、PuromycinR plasmidを導入した。
PuromycinR plasmidの導入後、ピューロマイシンを1μg/mL添
加したマッコイ5A培地(10%になるようにFBSを添加)で、細胞を8日間培養した
。培養後、独立コロニーから細胞をピペティングで回収した。
回収した10個の細胞クローンから上記と同様の方法でDNAを抽出した。ピューロマ
イシン耐性遺伝子又に対して、5'及び3'の両側のジャンクションをまたぐように増幅す
るjunction Primer(図4左図参照)を用いて、上記と同様にジャンクシ
ョンPCRを行った。PCR産物のアガロースゲル電気泳動を行い、増幅DNA断片を確
認した。
その結果、TP53の第1イントロンにおいて、両アレルがピューロマイシン耐性遺伝
子で置換されたクローンは全く得られなかった。また、片側アレルのみがピューロマイシ
ン耐性遺伝子で置換されたクローンの取得効率も低かった(図4右図)。
[実験例3]
選択マーカーの除去
(工程(c))
ドナーDNAとして、野生型のTP53配列を含むプラスミド(野生型TP53プラス
ミド)を作製した。ドナーDNAとして、野生型TP53の第1イントロン及びその周辺
領域(5'arm及び3'arm)の配列を含むプラスミドを用いたこと以外は上記と同様
の方法で、実験例2で取得した細胞クローン(図3のクローン#13)に、野生型TP5
3プラスミドを導入した。Cas9&gRNA共発現プラスミドに用いたgRNAの標的
配列を以下に示す。
GGCGCAACGCGATCGCGTAAGGG(配列番号13)
(工程(d))
野生型TP53プラスミドの導入後、セルソーター(SH800、ソニー)でGFP発
現の消失した細胞クローンを選別し、1細胞ごとに96穴プレートに回収した。
(マーカー遺伝子除去の確認)
回収した細胞から上記と同様の方法でDNAを抽出した。図5に示すPrimerを用
いて、PCRを行った。PCR産物のアガロースゲル電気泳動を行い、増幅DNA断片を
確認した。PCR溶液の組成は上記と同様である。サーマルサイクラー条件及びプライマ
ー配列を以下に示す。
サーマルサイクラー条件
98℃,30秒
98℃,10秒;68℃,2分30秒 50サイクル
4℃
<プライマー配列>
TP53第1イントロン増幅用PCRプライマー
フォワードプライマー:TGCCCCGTTGTTATCCTTAC(配列番号14)
リバースプライマー:GAAGACGGCAGCAAAGAAAC(配列番号15)
その結果を図6に示す。8クローン中、7クローンで期待するサイズのバンドが検出さ
れた(下線で示すクローン)。この結果は、これらの7クローンでは、選択マーカー(ピ
ューロマイシン耐性遺伝子若しくはブラスティサイディン耐性遺伝子、及びGFP遺伝子
)が野生型TP53遺伝子の第1イントロン配列で置換されたことを示している。また、
前記7クローンでは、選択マーカーが一方のアレルに残った場合に検出される5.6kb
のバンドも検出されなかった。この結果は、両アレルで選択マーカーが野生型第1イント
ロンに置換されたことを示唆している。
[実験例4]
TP53遺伝子の第1イントロンの改変
ドナーDNAとして、図7A〜Dに示すプラスミドをそれぞれ用いたこと以外は実験例
3と同様にして、工程(c)及び工程(d)を行った。
回収した細胞から上記と同様の方法でDNAを抽出した。図7A〜Dにそれぞれに示す
Primerを用いて、PCRを行った。PCR産物のアガロースゲル電気泳動を行い、
増幅DNA断片を確認した。PCR溶液の組成は上記と同様である。サーマルサイクラー
条件及びプライマー配列を以下に示す。
サーマルサイクラー条件
98℃,30秒
98℃,10秒;68℃,2分30秒 50サイクル
4℃
<プライマー配列>
TP53第1イントロン増幅用PCRプライマー
フォワードプライマー:TGCCCCGTTGTTATCCTTAC(配列番号14)
リバースプライマー:GAAGACGGCAGCAAAGAAAC(配列番号15)
その結果を図8に示す。いずれのドナーDNAを用いた場合も、高確率で、両アレルが
ドナーDNA中の配列で置換された細胞クローンが得られた(下線で示すクローン)。
ヒトTP53遺伝子の第1イントロンは、10,762bpという比較的大きなゲノム
領域である。上記方法では、両アレルを効率よくゲノム編集できることに加えて、このよ
うな比較的大きなゲノム領域でも、効率よくゲノム変種できることが確認された。
本発明によれば、2つ以上のアレルを効率よく改変することができ、且つ比較的大きな
領域の改変が可能な、ゲノム改変方法及び前記ゲノム改変キットが提供される。

Claims (28)

  1. 染色体ゲノムの2つ以上のアレルが改変された単離された細胞を作製する方法であって、
    (a)下記(i)及び(ii)を、2つ以上のアレルを含む単離された細胞に導入して、前記2つ以上のアレルそれぞれに選択マーカー遺伝子を導入する工程と、
    (i)前記染色体ゲノムの2つ以上のアレル中の標的領域を標的とし、当該標的領域を切断することができる配列特異的核酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含むゲノム改変システム、
    (ii)2種以上の選択マーカー用ドナーDNAであって、それぞれが前記標的領域の上流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームとを有し、かつ、上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームの間に、選択マーカー遺伝子の塩基配列を含み、前記2種以上の選択マーカー用ドナーDNAは、相互に区別可能に異なる選択マーカー遺伝子をそれぞれ有し、前記選択マーカー遺伝子は、選択マーカー用ドナーDNAの種類毎に固有であり、前記選択マーカー用ドナーDNAの種類数は、ゲノム改変の対象とする前記アレルの数と同数以上である、2種以上の選択マーカー用ドナーDNA、
    (b)前記工程(a)の後、前記2以上のアレルに対して異なる種類の選択マーカー用ドナーDNAがそれぞれ相同組み換えすることによって、当該2以上のアレルにそれぞれ区別可能に異なる固有の選択マーカー遺伝子が導入され、導入された当該区別可能に異なる選択マーカー遺伝子のすべてを発現する単離された細胞を選択する工程(ポジティブ選択のための工程)と、
    を含む、方法。
  2. 染色体ゲノムの2つ以上のアレルを改変する方法であって、
    (a)下記(i)及び(ii)を、2つ以上のアレルを含む単離された細胞に導入して、前記2つ以上のアレルそれぞれに選択マーカー遺伝子を導入する工程と、
    (i)前記染色体ゲノムの2つ以上のアレル中の標的領域を標的とし、当該標的領域を切断することができる配列特異的核酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含むゲノム改変システム、
    (ii)2種以上の選択マーカー用ドナーDNAであって、それぞれが前記標的領域の上流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームとを有し、かつ、上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームの間に、選択マーカー遺伝子の塩基配列を含み、前記2種以上の選択マーカー用ドナーDNAは、相互に区別可能に異なる選択マーカー遺伝子をそれぞれ有し、前記選択マーカー遺伝子は、選択マーカー用ドナーDNAの種類毎に固有であり、前記選択マーカー用ドナーDNAの種類数は、ゲノム改変の対象とする前記アレルの数と同数以上である、2種以上の選択マーカー用ドナーDNA、
    (b)前記工程(a)の後、前記2以上のアレルに対して異なる種類の選択マーカー用ドナーDNAがそれぞれ相同組み換えすることによって、当該2以上のアレルにそれぞれ区別可能に異なる固有の選択マーカー遺伝子が導入され、導入された当該区別可能に異なる選択マーカー遺伝子のすべてを発現する単離された細胞を選択する工程(ポジティブ選択のための工程)と、
    を含む、方法。
  3. 標的領域が5kbp以上の長さを有する、請求項1または2に記載の方法。
  4. 標的領域が8kbp以上の長さを有する、請求項3に記載の方法。
  5. 2種以上の選択マーカー用ドナーDNAがそれぞれ、前記上流ホモロジーアームと前記下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子とネガティブ選択用のマーカー遺伝子と標的配列とを有し、ここで、当該選択マーカー遺伝子がポジティブ選択用にもネガティブ選択用にも用いられる場合には、別のネガティブ選択用の選択マーカー遺伝子を有していなくてよく、
    (c)前記工程(b)の後、下記(iii)及び(iv)を選択された細胞に導入して前記2以上のアレルに組換え用ドナーDNAを導入する工程と、
    (iii)前記標的配列を標的とし、当該標的配列を切断することができる配列特異的核酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含むゲノム改変システム、
    (iv)所望の塩基配列を含む組換え用ドナーDNAであって、前記標的領域の上流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームを有する、組換え用ドナーDNA、
    (d)前記工程(c)の後、前記ネガティブ選択用のマーカー遺伝子を発現しない細胞を選択する工程(ネガティブ選択のための工程)と、
    をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 2種以上の選択マーカー用ドナーDNAがそれぞれ、前記上流ホモロジーアームと前記下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子とネガティブ選択用のマーカー遺伝子と標的配列とを有し、ここで、当該選択マーカー遺伝子がポジティブ選択用にもネガティブ選択用にも用いられる場合には、別のネガティブ選択用の選択マーカー遺伝子を有していなくてよく、
    (c)前記工程(b)の後、下記(iii)及び(iv)を選択された細胞に導入して前記2以上のアレルに組換え用ドナーDNAを導入する工程と、
    (iii)前記標的配列を標的とし、当該標的配列を切断することができる配列特異的核酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含むゲノム改変システム、
    (iv)所望の塩基配列を含む組換え用ドナーDNAであって、前記標的領域の上流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームを有する、組換え用ドナーDNA、
    (d)前記工程(c)の後、前記ネガティブ選択用のマーカー遺伝子を発現しない細胞を選択する工程(ネガティブ選択のための工程)と、
    をさらに含む、請求項3に記載の方法。
  7. 2種以上の選択マーカー用ドナーDNAがそれぞれ、前記上流ホモロジーアームと前記下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子とネガティブ選択用のマーカー遺伝子と標的配列とを有し、ここで、当該選択マーカー遺伝子がポジティブ選択用にもネガティブ選択用にも用いられる場合には、別のネガティブ選択用の選択マーカー遺伝子を有していなくてよく、
    (c)前記工程(b)の後、下記(iii)及び(iv)を選択された細胞に導入して前記2以上のアレルに組換え用ドナーDNAを導入する工程と、
    (iii)前記標的配列を標的とし、当該標的配列を切断することができる配列特異的核酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含むゲノム改変システム、
    (iv)所望の塩基配列を含む組換え用ドナーDNAであって、前記標的領域の上流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームを有する、組換え用ドナーDNA、
    (d)前記工程(c)の後、前記ネガティブ選択用のマーカー遺伝子を発現しない細胞を選択する工程(ネガティブ選択のための工程)と、
    をさらに含む、請求項4に記載の方法。
  8. 組換え用ドナーDNAの上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間の領域が、5kbp以上の長さを有する、請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 組換え用ドナーDNAの上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間の領域が、5kbp以上の長さを有する、請求項6または7に記載の方法。
  10. 組換え用ドナーDNAの上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間の領域が、5kbp以上の長さを有する、請求項7に記載の方法。
  11. 組換え用ドナーDNAの上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間の領域が、8kbp以上の長さを有する、請求項8に記載の方法。
  12. 下記(i)及び(ii)を含む、染色体ゲノムの2つ以上のアレルを改変するゲノム改変キットであって、請求項1または2に記載の方法に用いるためのキット。
    (i)前記染色体ゲノムの標的領域を標的とし、標的領域を切断することができる配列特異的核酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含むゲノム改変システム、
    (ii)2種以上の選択マーカー用ドナーDNAであって、前記標的領域の上流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームを有し、上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームの間に、選択マーカー遺伝子の塩基配列を含み、前記2種以上の選択マーカー用ドナーDNAは、相互に区別可能に異なる選択マーカー遺伝子を有し、前記選択マーカー遺伝子は、選択マーカー用ドナーDNAの種類毎に固有であり、前記選択マーカー用ドナーDNAの種類数は、ゲノム改変の対象とする前記アレルの数と同数以上である、2種以上の選択マーカー用ドナーDNA。
  13. 標的領域が5kbp以上の長さを有する、請求項12に記載のキット。
  14. 標的領域が8kbp以上の長さを有する、請求項13に記載のキット。
  15. 組換え用ドナーDNAをさらに含む、請求項12〜14のいずれか一項に記載のキットであって、
    組換え用ドナーDNAは、前記標的領域の上流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームを有し、
    請求項7に記載の方法に用いるための、キット。
  16. 組換え用ドナーDNAの上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間の領域が、5kbp以上の長さを有する、請求項15に記載のキット。
  17. 組換え用ドナーDNAの上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間の領域が、8kbp以上の長さを有する、請求項15または16に記載のキット。
  18. 標的領域が5kbp以上の長さを有し、かつ、組換え用ドナーDNAの上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間の領域が、5kbp以上の長さを有する、請求項15または16に記載のキット。
  19. 標的領域が8kbp以上の長さを有し、かつ、組換え用ドナーDNAの上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間の領域が、8kbp以上の長さを有する、請求項18に記載のキット。
  20. 組換え用ドナーDNAが、組換え用ドナーDNAの上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間の領域に塩基配列を有さず、改変後に得られる染色体ゲノムの前記2つ以上のアレルにおいて、標的領域の上流および下流の配列が、塩基の挿入、置換および欠失なく、シームレスに連結している、請求項5に記載の方法。
  21. 組換え用ドナーDNAが、組換え用ドナーDNAの上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間の領域に塩基配列を有さず、改変後に得られる染色体ゲノムの前記2つ以上のアレルにおいて、標的領域の上流および下流の配列が、塩基の挿入、置換および欠失なく、シームレスに連結している、請求項6または7に記載の方法。
  22. 改変後に得られる染色体ゲノムの前記2つ以上のアレルにおいて、部位特異的組換え酵素の標的配列が存在しない、請求項3に記載の方法。
  23. 改変後に得られる染色体ゲノムの前記2つ以上のアレルにおいて、部位特異的組換え酵素の標的配列が存在しない、請求項4に記載の方法。
  24. 改変後に得られる染色体ゲノムの前記2つ以上のアレルにおいて、部位特異的組換え酵素の標的配列が存在しない、請求項5に記載の方法。
  25. 改変後に得られる染色体ゲノムの前記2つ以上のアレルにおいて、部位特異的組換え酵素の標的配列が存在しない、請求項6または7に記載の方法。
  26. 工程(b)において、2以上のアレルが改変された細胞を選択するまでの過程では単一細胞クローニングは行われない、請求項1〜11、および20〜25のいずれか一項に記載の方法。
  27. 組換え用ドナーDNAの上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間の領域が、8kbp以上の長さを有する、請求項6または7に記載の方法。
  28. 組換え用ドナーDNAが、組換え用ドナーDNAの上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間の領域に塩基配列を有さない、請求項15に記載のキット。
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