以下、添付図面を参照して、プレート式熱交換器の実施の形態について説明する。
最初に、「プレート式熱交換器」の一例である水素ガス冷却用熱交換器30を備えた水素ガス給気システム100の構成について、添付図面を参照して説明する。
図1に示す水素ガス給気システム100は、水素ガス燃料電池自動車等の給気対象X1,X2・・に水素ガスを給気する水素ガスステーション用の設備であって、水素ガス冷却装置1、ガスタンク2およびディスペンサー3などを備えて構成されている。なお、同図では、水素ガス給気システム100の構成および動作に関する理解を容易とするために、水素ガス冷却装置1、ガスタンク2およびディスペンサー3や、水素ガス配管4a,4b1,4b2,4c1,4c2だけを図示し、その他の構成要素についての図示を省略している。
水素ガス冷却装置1は、冷凍回路11、ブラインタンク12、ブライン配管13a〜13d、液送ポンプ14a,14b、制御部15および水素ガス冷却用熱交換器30を備え、「冷却用流体」の一例であるブラインを冷却すると共に、冷却したブラインを水素ガス冷却用熱交換器30に供給することにより、「被冷却流体」の一例である水素ガスとブラインとの熱交換によって水素ガスを冷却することができるように構成されている。なお、同図に示す流量調整弁16、および破線で示すブライン配管13c,13dは、水素ガス冷却用熱交換器30に代えて後述の水素ガス冷却用熱交換器30A,30B等を使用して水素ガス給気システム100を構成する際に上記の各構成要素に加えて使用する構成要素のため、本例では説明を省略する。
冷凍回路11は、一元冷凍回路であって、圧縮機21、凝縮器22、膨張弁23および蒸発器24を備え、後述するように、フロン(冷媒)とブライン(冷却用流体)との熱交換によってブラインを冷却することができるように構成されている。ブラインタンク12は、後述するように冷凍回路11(蒸発器24)によって冷却されて水素ガス冷却用熱交換器30に供給されるブラインを貯留可能に構成されている。
ブライン配管13a,13bは、冷凍回路11の蒸発器24とブラインタンク12とを相互に接続する。この場合、本例の水素ガス冷却装置1では、ブラインタンク12内のブラインがブライン配管13aを介して蒸発器24に供給されて冷却された後に、ブライン配管13bを介してブラインタンク12に案内されることにより、ブラインタンク12と蒸発器24との間をブラインが循環させられる構成が採用されている。
ブライン配管13c,13dは、ブラインタンク12と水素ガス冷却用熱交換器30とを相互に接続する。この場合、本例の水素ガス冷却装置1では、ブラインタンク12内のブラインがブライン配管13cを介して水素ガス冷却用熱交換器30に供給されて水素と熱交換させられた後に、ブライン配管13dを介してブラインタンク12に案内されることにより、ブラインタンク12と水素ガス冷却用熱交換器30との間をブラインが循環させられる構成が採用されている。
液送ポンプ14aは、制御部15の制御に従ってブラインタンク12内のブラインを蒸発器24に向けて圧送し、液送ポンプ14bは、制御部15の制御に従ってブラインタンク12内のブラインを水素ガス冷却用熱交換器30に向けて圧送する。この場合、本例の水素ガス冷却装置1では、液送ポンプ14aがブラインタンク12内のブラインを蒸発器24に圧送することにより、蒸発器24内のブライン(蒸発器24において冷却されたブライン)がブラインタンク12に案内されると共に、液送ポンプ14bがブラインタンク12内のブラインを水素ガス冷却用熱交換器30に圧送することにより、水素ガス冷却用熱交換器30内のブラインがブラインタンク12に案内される構成が採用されている。
なお、上記の水素ガス冷却装置1の構成に代えて、例えば、ブラインタンク12内のブラインを冷凍回路11(蒸発器24)に供給して冷却した後に水素ガス冷却用熱交換器30に直接供給して水素ガスを冷却すると共に、水素ガスの冷却によって温度上昇したブラインをブラインタンク12に回収するようにブライン配管13d,13cを配管することもできる(図示せず)。また、大量の水素ガスを連続して冷却する可能性がない環境下、すなわち、大量のブラインを備えている必要がない環境下で使用するときには、ブラインタンク12を不要として冷凍回路11(蒸発器24)と水素ガス冷却用熱交換器30との間でブラインを直接循環させる構成を採用することもできる(図示せず)。
制御部15は、水素ガス冷却装置1を総括的に制御する。具体的には、制御部15は、冷凍回路11(蒸発器24)によってブラインを冷却するブライン冷却処理の実行時に圧縮機21を制御してブラインの冷却に必要かつ十分な量の冷媒を圧縮させると共に、膨張弁23を制御してブラインの冷却に必要かつ十分な量の冷媒を蒸発器24に供給させる。
また、制御部15は、冷凍回路11によるブライン冷却処理と並行して液送ポンプ14aを制御することにより、ブラインタンク12と蒸発器24との間でブラインを循環させてブラインタンク12内のブラインの温度を規定温度(水素ガスの冷却に適した温度)に維持させる。また、制御部15は、液送ポンプ14bを制御してブラインタンク12と水素ガス冷却用熱交換器30との間でブラインを循環させることにより、ガスタンク2からディスペンサー3に向かって移動させられている水素ガスを、水素ガス冷却用熱交換器30においてブラインと熱交換させて冷却させる。
一方、水素ガス冷却用熱交換器30は、水素ガス配管4b1,4b2を介してディスペンサー3の制御弁3aに接続されると共に、水素ガス配管4c1を介して給気対象X1に接続され、かつ水素ガス配管4c2を介して給気対象X2に接続されている。また、水素ガス冷却用熱交換器30は、ブライン配管13c,13dを介してブラインタンク12に接続されている。
この場合、本例の水素ガス給気システム100では、水素ガス冷却用熱交換器30が水素ガス冷却装置1の構成要素の1つとしてディスペンサー3内に設置されており、ガスタンク2から制御弁3aを通過して給気対象X1や給気対象X2に向かって流動させられる水素ガスをブラインとの熱交換によって予め規定された温度(一例として、−33℃〜−40℃の温度範囲内の温度)まで冷却する。
この水素ガス冷却用熱交換器30は、図2〜4に示すように、「第2の板体」の一例であるブラインプレート42、および「第1の板体」の一例である水素ガスプレート43がベースプレート41,44の間に交互に積層されて(「予め規定された積層順序」の一例)接合面同士が接合されて一体化された本体部31と、本体部31にブライン配管13c,13dや水素ガス配管4b1,4b2,4c1,4c2を接続可能にベースプレート44に装着される複数の接続具(図示せず)とを備えて構成されている。
この場合、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、ベースプレート41、ブラインプレート42、水素ガスプレート43およびベースプレート44がそれぞれ「板体」に相当し、図4に示すように、一例として、ステンレススチール等の金属板によってそれぞれ平面視方形状に形成されている。なお、以下の説明においては、ベースプレート41、ブラインプレート42、水素ガスプレート43およびベースプレート44を総称して「板体41〜44」ともいう。また、実際の水素ガス冷却用熱交換器30では、放熱および吸熱を回避するために、各板体41〜44の積層体が断熱材で覆われたり、断熱用のケーシング内に収容されたりしている(図示せず)。
ブラインプレート42には、図3,4に示すように、ブラインの通過が可能なブライン通過用溝(「第2の流体通過用溝」の一例)が形成された一対の溝形成領域A2,A2(「第2の溝形成領域」の一例)が規定されると共に、後述する水素ガスプレート43のスリットS3と連通させられるスリットS2が形成された断熱部形成領域A4が両溝形成領域A2,A2の間に規定されている。また、溝形成領域A2および断熱部形成領域A4の周囲には、ベースプレート41,44や水素ガスプレート43に接合するための接合領域A1が規定されている。
なお、上記の図3は、図2におけるB−B線断面の概略図であり、水素ガス冷却用熱交換器30の内部構造についての理解を容易とするために、各板体41〜44の厚みを実際の厚みよりも厚く図示している。また、図3,4では、ブラインプレート42の構成についての理解を容易とするために、1つの大きな溝(凹部)が溝形成領域A2内に形成された状態を図示しているが、実際には、複数本の細幅のブライン通過用溝が溝形成領域A2内に並んで形成されている。
また、図4に示すように、ブラインプレート42には、溝形成領域A2内の各ブライン通過用溝にブラインを導入可能に各ブライン通過用溝に連通させられた貫通孔Hia2、および溝形成領域A2内の各ブライン通過用溝からブラインを排出可能に各ブライン通過用溝に連通させられた貫通孔Hoa2が形成されている。さらに、ブラインプレート42には、後述するように水素ガスプレート43に形成されている貫通孔Hib31,Hob31,Hib32,Hob32に連通させられる貫通孔Hib21,Hob21,Hib22,Hob22が形成されている。
この場合、本例の水素ガス冷却用熱交換器30におけるブラインプレート42では、両溝形成領域A2,A2内の各ブライン通過用溝が1つの貫通孔Hia2および1つの貫通孔Hoa2にそれぞれ連通させられている。したがって、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、水素ガス冷却用熱交換器30に導入されるブラインが両溝形成領域A2,A2内の各ブライン通過用溝を同様に(同程度の移動速度で)通過させられて水素ガス冷却用熱交換器30から排出される。
水素ガスプレート43には、図3,4に示すように、水素ガスの通過が可能な水素ガス通過用溝(「第1の流体通過用溝」の一例)が形成された一対の溝形成領域A3,A3(「別個独立して設けられたN1=2個の第1の溝形成領域」の一例)が規定されると共に、上記したようにブラインプレート42に形成されているスリットS2と連通させられてスリットS2と相俟って真空断熱室Rsを構成するスリットS3(「第1の断熱部」の一例)が形成された断熱部形成領域A4(「第1の断熱領域」の一例)が両溝形成領域A3,A3の間に規定されている。また、溝形成領域A3および断熱部形成領域A4の周囲には、ブラインプレート42に接合するための接合領域A1が規定されている。
なお、図3,4では、水素ガスプレート43の構成についての理解を容易とするために、1つの大きな溝(凹部)が溝形成領域A3内に形成された状態を図示しているが、実際には、複数本の細幅の水素ガス通過用溝が溝形成領域A3内に並んで形成されている。
また、図4に示すように、水素ガスプレート43には、上記のようにブラインプレート42に形成されている貫通孔Hia2,Hoa2に連通させられる貫通孔Hia3,Hoa3が形成されている。さらに、水素ガスプレート43には、一方の溝形成領域A3内の各水素ガス通過用溝に水素ガスを導入可能に各水素ガス通過用溝に連通させられた貫通孔Hib31、他方の溝形成領域A3内の各水素ガス通過用溝に水素ガスを導入可能に各水素ガス通過用溝に連通させられた貫通孔Hib32、一方の溝形成領域A3内の各水素ガス通過用溝から水素ガスを排出可能に各水素ガス通過用溝に連通させられた貫通孔Hob31、および他方の溝形成領域A3内の各水素ガス通過用溝から水素ガスを排出可能に各水素ガス通過用溝に連通させられた貫通孔Hob32が形成されている。
この場合、本例の水素ガス冷却用熱交換器30における水素ガスプレート43では、貫通孔Hib31から貫通孔Hob31までの水素ガス流路と、貫通孔Hib32から貫通孔Hob32までの水素ガス流路とが別個独立しており、一方の溝形成領域A3内の各水素ガス通過用溝を通過させられる水素ガスと、他方の溝形成領域A3内の各水素ガス通過用溝を通過させられる水素ガスとが水素ガス冷却用熱交換器30内において混合されることなくブラインと熱交換可能となっている。
ベースプレート44には、図2,4に示すように、貫通孔Hia4,Hoa4,Hib41,Hob41,Hib42,Hob42,Hc4が形成されている。この場合、貫通孔Hia4は、ブラインプレート42の貫通孔Hia2および水素ガスプレート43の貫通孔Hia3に連通させられると共に、ブライン配管13cを接続するための接続具が取り付けられる。また、貫通孔Hoa4は、ブラインプレート42の貫通孔Hoa2および水素ガスプレート43の貫通孔Hoa3に連通させられると共に、ブライン配管13dを接続するための接続具が取り付けられる。
また、貫通孔Hib41は、ブラインプレート42の貫通孔Hib21および水素ガスプレート43の貫通孔Hib31に連通させられると共に、水素ガス配管4b1を接続するための接続具が取り付けられる。さらに、貫通孔Hob41は、ブラインプレート42の貫通孔Hob21および水素ガスプレート43の貫通孔Hob31に連通させられると共に、水素ガス配管4c1を接続するための接続具が取り付けられる。
また、貫通孔Hib42は、ブラインプレート42の貫通孔Hib22および水素ガスプレート43の貫通孔Hib32に連通させられると共に、水素ガス配管4b2を接続するための接続具が取り付けられる。さらに、貫通孔Hob42は、ブラインプレート42の貫通孔Hob22および水素ガスプレート43の貫通孔Hob32に連通させられると共に、水素ガス配管4c2を接続するための接続具が取り付けられる。
また、図3に示すように、貫通孔Hc4は、ブラインプレート42のスリットS2および水素ガスプレート43のスリットS3に連通させられている。この貫通孔Hc4には、一例として、図示しないバルブが装着されている。これにより、後述するように、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、各スリットS2,S3で構成される真空断熱室Rs内の空気が真空引きされて真空断熱室Rs内が真空となった状態でバルブを閉状態に移行させることで、真空断熱室Rs内の真空状態が維持される。
この場合、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、水素ガスプレート43の板面方向で隣接する一対の溝形成領域A3,A3の間に規定された断熱部形成領域A4内に、一方の溝形成領域A3内の各水素ガス通過用溝を通過する水素ガスと、他方の溝形成領域A3内の各水素ガス通過用溝を通過する水素ガスとを断熱する「第1の断熱部」としてのスリットS3が形成されて真空断熱室Rsが構成されている。
これにより、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、一方の溝形成領域A3内の各水素ガス通過用溝を通過している水素ガスの熱によって他方の溝形成領域A3内の各水素ガス通過用溝を通過している水素ガスが温度上昇させられたり、他方の溝形成領域A3内の各水素ガス通過用溝を通過している水素ガスの熱によって一方の溝形成領域A3内の各水素ガス通過用溝を通過している水素ガスが温度上昇させられたりする事態が回避されている。
次に、上記の水素ガス冷却用熱交換器30の製造方法の一例について、添付図面を参照して説明する。
この水素ガス冷却用熱交換器30の製造に際しては、まず、各板体41〜44を「予め規定された積層順序」で積層する積層処理を実施する。具体的には、一例として、まず、ベースプレート41を図示しない積層用治具(位置決め具)の上に載置した後に、ブライン通過用溝の形成面を上向きにしてベースプレート41の上にブラインプレート42を積層すると共に、水素ガス通過用溝の形成面を上向きにしてブラインプレート42の上に水素ガスプレート43を積層する。これにより、ブラインプレート42および水素ガスプレート43からなる一組の積層物がベースプレート41の上に積層された状態となる。
次いで、水素ガス冷却用熱交換器30に求められている容量に応じて、上記の積層物における水素ガスプレート43の上に、ブラインプレート42および水素ガスプレート43を交互に積層する。続いて、最上部の水素ガスプレート43の上に、ブライン通過用溝の形成面を上向きにしてブラインプレート42を積層し、その上にベースプレート44を積層する。以上により、積層処理が完了する。
この積層処理が完了した状態では、図3に示すように、ブラインプレート42の各接合領域A1と水素ガスプレート43の各接合領域A1とが各板体41〜44の積層方向で重なり、ブラインプレート42の各溝形成領域A2と水素ガスプレート43の各溝形成領域A3とが各板体41〜44の積層方向で重なり、かつブラインプレート42の断熱部形成領域A4と水素ガスプレート43の断熱部形成領域A4とが各板体41〜44の積層方向で重なった状態となる。
また、ブラインプレート42の貫通孔Hia2、水素ガスプレート43の貫通孔Hia3、およびベースプレート44の貫通孔Hia4が各板体41〜44の積層方向で連通した状態となり、かつ、ブラインプレート42の貫通孔Hoa2、水素ガスプレート43の貫通孔Hoa3、およびベースプレート44の貫通孔Hoa4が各板体41〜44の積層方向で連通した状態となる。
さらに、ブラインプレート42の貫通孔Hib21、水素ガスプレート43の貫通孔Hib31、およびベースプレート44の貫通孔Hib41が各板体41〜44の積層方向で連通した状態となり、かつ、ブラインプレート42の貫通孔Hob21、水素ガスプレート43の貫通孔Hob31、およびベースプレート44の貫通孔Hob41が各板体41〜44の積層方向で連通した状態となる。また、ブラインプレート42の貫通孔Hib22、水素ガスプレート43の貫通孔Hib32、およびベースプレート44の貫通孔Hib42が各板体41〜44の積層方向で連通した状態となり、かつ、ブラインプレート42の貫通孔Hob22、水素ガスプレート43の貫通孔Hob32、およびベースプレート44の貫通孔Hob42が各板体41〜44の積層方向で連通した状態となる。
さらに、ブラインプレート42のスリットS2、水素ガスプレート43のスリットS3、およびベースプレート44の貫通孔Hc4が各板体41〜44の積層方向で連通した状態となって各スリットS2,S3からなる真空断熱室Rsが形成された状態となる。
続いて、上記の積層処理によって積層された各板体41〜44の積層体を図示しない接合処理装置内に収容して接合処理(拡散接合処理)を実施する。具体的には、処理装置内において、各板体41〜44の板厚方向(各板体41〜44の積層方向)で積層体を加圧すると共に、予め規定された接合温度範囲内の温度となるように積層体を加熱しつつ、予め規定された真空度範囲内の真空度となるように処理装置内を真空引きすることによって各板体41〜44の接合面同士を拡散接合させる。
また、予め規定された処理時間に亘って積層体の加圧、加熱および処理装置内の真空引きを継続することで各板体41〜44が十分な接合力で接合されたときには、真空引きを停止することで処理装置内を大気圧と同程度まで圧力上昇させ、かつ積層体の加熱を停止することで積層体を常温まで温度低下させる。さらに、積層体が十分に温度低下した状態において加圧を停止させる。これにより、接合処理が完了し、図2,3に示すように、本体部31が完成する。
次いで、ベースプレート41の貫通孔Hc4に図示しないバルブを取り付けると共に、ベースプレート44の各貫通孔Hia4,Hoa4,Hib41,Hob41,Hib42,Hob42に図示しない接続具を取り付ける。続いて、貫通孔Hc4に取り付けたバルブを開状態に移行させて真空断熱室Rs内の空気を排気した後に、バルブを閉状態に移行させる。これにより、真空断熱室Rs内の真空状態が維持されて、水素ガス冷却用熱交換器30の製造が完了する。
次いで、水素ガス給気システム100による給気対象X1,X2への水素ガスの給気時における水素ガス冷却装置1の動作(水素ガス冷却用熱交換器30における水素ガスの冷却処理)について、添付図面を参照して説明する。
この水素ガス給気システム100では、水素ガス冷却用熱交換器30において水素ガスを冷却する水素ガス冷却処理を実行していないときに、ブラインタンク12と水素ガス冷却用熱交換器30との間で少量のブラインを循環させる構成が採用されている。具体的には、制御部15は、水素ガス冷却処理の非実行時に、液送ポンプ14bを制御することにより、予め規定された時間間隔でブラインタンク12からブライン配管13cを介して水素ガス冷却用熱交換器30に少量のブラインを断続的に供給させる(水素ガス冷却用熱交換器30の予備冷却処理)。
この際には、供給されたブラインがベースプレート44の貫通孔Hia4から各貫通孔Hia2,Hia3の連通部位に導入され、各ブラインプレート42の溝形成領域A2,A2に形成されているブライン通過用溝を通過して各貫通孔Hoa2,Hoa3の連通部位に流入した後に、ベースプレート44の貫通孔Hoa4からブライン配管13dに排出されてブラインタンク12に回収される。これにより、水素ガス冷却用熱交換器30が周囲温度よりも温度低下した状態が好適に維持されると共に、ブライン配管13c内のブラインがブライン配管13c内で温度上昇した状態(すなわち、水素ガス冷却用熱交換器30に対して十分に冷却されたブラインを直ちに供給するのが困難な状態)となるのを回避することができる。
また、制御部15は、ブラインタンク12と水素ガス冷却用熱交換器30との間でブラインを循環させる上記の処理(予備冷却処理)と並行して、ブラインタンク12内のブラインの温度に応じて、冷凍回路11によってブラインタンク12内のブラインを冷却するブライン冷却処理を継続的に実行する。これにより、ブラインタンク12内のブラインの温度が水素ガスの冷却に適した温度範囲内の温度に維持される。
一方、例えば給気対象X1への水素ガスの給気(充填)に際しては、ガスタンク2から給気対象X1に向かって移動させられる水素ガスが、水素ガス冷却用熱交換器30においてブラインとの交換によって冷却される。具体的には、図示しないコントローラの制御に従い、ガスタンク2から水素ガス配管4aを介して供給される水素ガスを制御弁3aが水素ガス配管4b1を介して水素ガス冷却用熱交換器30に給気する。この際には、ガスタンク2からの水素ガスの移動開始に連動して、コントローラから水素ガス冷却装置1の制御部15に給気開始信号が出力される。
これに応じて、水素ガス冷却装置1では、制御部15が、液送ポンプ14bを制御してブラインタンク12から水素ガス冷却用熱交換器30へのブラインの供給量を増加させる。この際には、水素ガスの冷却に必要な量のブラインがブラインタンク12からブライン配管13cを介して水素ガス冷却用熱交換器30に供給され、貫通孔Hia4に接続されている接続具から水素ガス冷却用熱交換器30内に導入される。また、水素ガス冷却用熱交換器30に導入されたブラインは、貫通孔Hia2,Hia3・・を介して各ブラインプレート42における溝形成領域A2内のブライン通過用溝内に移動する。
一方、上記のように制御弁3aから水素ガス配管4b1を介して水素ガス冷却用熱交換器30に給気された水素ガスは、貫通孔Hib41に接続されている接続具から水素ガス冷却用熱交換器30内に導入される。また、水素ガス冷却用熱交換器30に導入された水素ガスは、貫通孔Hib21,Hib31・・を介して各水素ガスプレート43の一方の溝形成領域A3(本例では、図3における右側の溝形成領域A3)内の水素ガス通過用溝内に移動する。これにより、各ブラインプレート42のブライン通過用溝内を移動しているブラインと、各水素ガスプレート43における一方の溝形成領域A3内の水素ガス通過用溝内を移動している水素ガスとの熱交換によって水素ガスが冷却される。
また、ブラインとの熱交換によって冷却された水素ガスは、各水素ガスプレート43の一方の溝形成領域A3における水素ガス通過用溝から貫通孔Hob31,Hob21・・に排出され、貫通孔Hob41に接続されている接続具から水素ガス配管4c1を介して給気対象X1に給気される。これにより、水素ガス冷却用熱交換器30において十分に温度低下した水素ガスが給気対象X1の燃料タンク(ガスタンク)内に充填される。この結果、給気対象X1への水素ガスの充填効率を十分に向上させることができる。また、水素ガスとの熱交換によって温度上昇したブラインは、各ブラインプレート42のブライン通過用溝から貫通孔Hoa2,Hoa3・・に排出され、貫通孔Hoa4に接続されている接続具からブライン配管13dを介してブラインタンク12に回収される。
この場合、本例の水素ガス給気システム100では、上記の給気対象X1に対する水素ガスの給気(充填)が完了する以前に、給気対象X2に対する水素ガスの給気が行われることがある。この際には、コントローラの制御に従い、ブラインタンク12から水素ガス配管4aを介して供給される水素ガスを制御弁3aが水素ガス配管4b2を介して水素ガス冷却用熱交換器30に給気する。また、給気対象X2への水素ガスの給気に先立って給気対象X1への水素ガスの給気が開始されている本例では、制御部15が、給気開始信号に応じて液送ポンプ14bを制御してブラインタンク12から水素ガス冷却用熱交換器30へのブラインの供給量をさらに増加させる。
一方、上記のように制御弁3aから水素ガス配管4b2を介して水素ガス冷却用熱交換器30に給気された水素ガスは、貫通孔Hib42に接続されている接続具から水素ガス冷却用熱交換器30内に導入される。また、水素ガス冷却用熱交換器30に導入された水素ガスは、貫通孔Hib22,Hib32・・を介して各水素ガスプレート43の他方の溝形成領域A3(本例では、図3における左側の溝形成領域A3)内の水素ガス通過用溝内に移動する。これにより、各ブラインプレート42のブライン通過用溝内を移動しているブラインと、各水素ガスプレート43における他方の溝形成領域A3内の水素ガス通過用溝内を移動している水素ガスとの熱交換によって水素ガスが冷却される。
また、ブラインとの熱交換によって冷却された水素ガスは、各水素ガスプレート43の他方の溝形成領域A3における水素ガス通過用溝から貫通孔Hob32,Hob22・・に排出され、貫通孔Hob42に接続されている接続具から水素ガス配管4c2を介して給気対象X2に給気される。これにより、水素ガス冷却用熱交換器30において十分に温度低下した水素ガスが給気対象X2の燃料タンク(ガスタンク)内に充填される。この結果、給気対象X1への水素ガスの給気(充填)を停止させることなく、給気対象X2に対しても十分に高い充填効率で水素ガスが充填される。
この場合、上記のように給気対象X1,X2に対して水素ガスを並行して給気(充填)するときには、水素ガスの給気開始タイミングの相違や、給気対象X1,X2の燃料タンク(ガスタンク)の充填可能容量の相違(タンクの空容量の相違、および給気開始前の水素ガスの残量の相違等による実質的な充填可能容量の相違)に起因して、水素ガス給気システム100から給気対象X1,X2へ給気する水素ガスの圧力や流量が互いに相違する状態となる。このため、給気対象X1に向かって移動している水素ガスの温度と、給気対象X2に向かって移動している水素ガスの温度とが相違する状態となり、各水素ガスプレート43の一方の溝形成領域A3の近傍の温度と、各水素ガスプレート43の他方の溝形成領域A3の近傍の温度とが相違する状態となる
しかしながら、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、各水素ガスプレート43の両溝形成領域A3,A3の間に断熱部形成領域A4が設けられてスリットS3が形成されており、各水素ガスプレート43に接合されている各ブラインプレート42にも水素ガスプレート43の断熱部形成領域A4と積層方向で重なる断熱部形成領域A4内にスリットS2が形成され、これにより、各水素ガスプレート43の両溝形成領域A3,A3の間にスリットS3,S2・・からなる真空断熱室Rsが位置した状態となっている。
したがって、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、各水素ガスプレート43における一方の溝形成領域A3内の水素ガス通過用溝を通過している水素ガスと、各水素ガスプレート43における他方の溝形成領域A3内の水素ガス通過用溝を通過している水素ガスとが真空断熱室Rsによって断熱されるだけでなく、各ブラインプレート42における一方の溝形成領域A2内のブライン通過用溝を通過しているブラインと、各ブラインプレート42における他方の溝形成領域A2内のブライン通過用溝を通過しているブラインとが真空断熱室Rsによって断熱された状態となっている。
これにより、水素ガス冷却用熱交換器30を備えて構成された本例の水素ガス給気システム100(水素ガス冷却装置1)では、互いに熱的影響を受けることのないように十分に離間して配置した2つの熱交換器によって、給気対象X1に対して給気する水素ガス、および給気対象X2に対して給気する水素ガスを別個に冷却しているのと同様にして、両水素ガスを別個独立してそれぞれ好適に冷却することが可能となっている。
この後、例えば給気対象X1への水素ガスの給気が完了したときには、コントローラから水素ガス冷却装置1の制御部15に給気終了信号が出力される。これに伴い、制御部15は、ブラインタンク12から水素ガス冷却用熱交換器30へのブラインの供給量を減少させる。
また、給気対象X1に続いて給気対象X2への水素ガスの給気も完了したときには、コントローラからの給気終了信号に応じて、制御部15が、ブラインタンク12から水素ガス冷却用熱交換器30へのブラインの供給量をさらに減少させ、前述したブラインの循環処理を開始すると共に、ブラインタンク12内のブラインを規定温度範囲内に維持する前述した処理を継続する。
このように、この水素ガス冷却用熱交換器30では、水素ガスの通過が可能な水素ガス通過用溝が形成された溝形成領域A3を有する水素ガスプレート43が、別個独立して設けられたN1個(本例では、N1=2個)の溝形成領域A3を有して各溝形成領域A3内の水素ガス通過用溝を通過する水素ガス同士を混合させずにブラインと熱交換可能に構成されると共に、隣接する溝形成領域A3,A3の間に一方の溝形成領域A3内の水素ガス通過用溝を通過する水素ガスと他方の溝形成領域A3内の水素ガス通過用溝を通過する水素ガスとを断熱するスリットS3(真空断熱室Rs)が形成された断熱部形成領域A4が設けられている。
したがって、この水素ガス冷却用熱交換器30によれば、N1=2個の溝形成領域A3,A3を十分に接近させたにも拘わらず、溝形成領域A3,A3の間に設けた断熱部形成領域A4(真空断熱室Rs)によって一方の溝形成領域A3内の水素ガス通過用溝内を通過する水素ガスと他方の溝形成領域A3内の水素ガス通過用溝内を通過する水素ガスとを好適に断熱することができるため、N1=2種類の水素ガスを並行して好適に冷却することができると共に、N1=2個の別個独立した「プレート式熱交換器」を用いてN1=2種類の水素ガスを冷却する構成と比較して、各水素ガスの冷却に必要な「プレート式熱交換器」の占有スペースを十分に小さくすることができる。
また、この水素ガス冷却用熱交換器30によれば、「被冷却流体」としての水素ガスを冷却可能に構成したことにより、水素ガス燃料電池自動車等に水素ガスを給気する水素ガスステーションのように1箇所で複数の給気対象X1,X2に対して並行して給気することが多い水素ガスを、各給気対象X1,X2に対してそれぞれ好適に冷却した状態で給気することができ、また、機器の設置可能スペースが狭い場所であっても水素ガス冷却用熱交換器30を設置して水素ガスを好適に冷却することができる。
次に、「プレート式熱交換器」の他の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
なお、前述の水素ガス冷却用熱交換器30の構成要素と同様の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。また、水素ガス給気システム100(水素ガス冷却装置1)における水素ガス冷却用熱交換器30以外の構成要素については、前述したように、上記の例示の構成に加え、流量調整弁16、および破線で示すブライン配管13c,13dを使用する点が相違するが、それ以外の構成要素については前述の例と同様のため、重複する説明を省略する。この場合、流量調整弁16は、制御部15の制御に従い、図1に実線で示すブライン配管13cを介して水素ガス冷却用熱交換器30に供給するブラインの量と、同図に破線で示すブライン配管13cを介して水素ガス冷却用熱交換器30に供給するブラインの量とを調整する。
一方、図1,5〜7に示す水素ガス冷却用熱交換器30Aは、「プレート式熱交換器」の他の一例であって、図1に示すように、前述の水素ガス冷却用熱交換器30と同様にして、水素ガス配管4b1,4b2を介してディスペンサー3の制御弁3aに接続されると共に、水素ガス配管4c1を介して給気対象X1に接続され、かつ水素ガス配管4c2を介して給気対象X2に接続されている。また、水素ガス冷却用熱交換器30Aは、前述の水素ガス冷却用熱交換器30とは異なり、実線で示すブライン配管13c,13d、破線で示すブライン配管13c,13d、および流量調整弁16を介してブラインタンク12に接続されている。
この水素ガス冷却用熱交換器30Aは、図5〜7に示すように、水素ガス冷却用熱交換器30におけるブラインプレート42に代えて「第2の板体」の他の一例であるブラインプレート42aを備え、かつ水素ガス冷却用熱交換器30における水素ガスプレート43に代えて「第1の板体」の他の一例である水素ガスプレート43aを備えると共に、水素ガス冷却用熱交換器30におけるベースプレート44に代えてベースプレート44aを備えて本体部31aが構成されている。
具体的には、この水素ガス冷却用熱交換器30Aは、ブラインプレート42aおよび水素ガスプレート43aがベースプレート41,44aの間に交互に積層されて(「予め規定された積層順序」の一例)接合面同士が接合されて一体化された本体部31aと、本体部31aにブライン配管13c,13dや水素ガス配管4b1,4b2,4c1,4c2を接続可能にベースプレート44aに装着される複数の接続具(図示せず)とを備えて構成されている。
この場合、本例の水素ガス冷却用熱交換器30Aでは、ベースプレート41、ブラインプレート42a、水素ガスプレート43aおよびベースプレート44aがそれぞれ「板体」に相当し、図7に示すように、一例として、ステンレススチール等の金属板によってそれぞれ平面視方形状に形成されている。なお、以下の説明においては、ベースプレート41、ブラインプレート42a、水素ガスプレート43aおよびベースプレート44aを総称して「板体41,42a〜44a」ともいう。
ブラインプレート42aには、図6,7に示すように、ブラインの通過が可能なブライン通過用溝が形成された一対の溝形成領域A2,A2(「別個独立して設けられたN2=2個の第2の溝形成領域」の一例)が規定されると共に、後述するように水素ガスプレート43aに形成されているスリットS3と連通させられてスリットS3と相俟って真空断熱室Rsを構成するスリットS2(「第2の断熱部」の一例)が形成された断熱部形成領域A4(「第2の断熱領域」の一例)が両溝形成領域A2,A2の間(「隣接する第2の溝形成領域の間」の一例)に規定されている。また、溝形成領域A2および断熱部形成領域A4の周囲には、接合領域A1が規定されている。
なお、上記の図6は、図5におけるBA−BA線断面の概略図であり、水素ガス冷却用熱交換器30Aの内部構造についての理解を容易とするために、各板体41,42a〜44a厚みを実際の厚みよりも厚く図示している。また、図6,7では、ブラインプレート42aの構成についての理解を容易とするために、1つの大きな溝(凹部)が溝形成領域A2内に形成された状態を図示しているが、実際には、複数本の細幅のブライン通過用溝が溝形成領域A2内に並んで形成されている。
また、ブラインプレート42aには、一方の溝形成領域A2内の各ブライン通過用溝にブラインを導入可能に各ブライン通過用溝に連通させられた貫通孔Hia21、一方の溝形成領域A2内の各ブライン通過用溝からブラインを排出可能に各ブライン通過用溝に連通させられた貫通孔Hoa21、他方の溝形成領域A2内の各ブライン通過用溝にブラインを導入可能に各ブライン通過用溝に連通させられた貫通孔Hia22、および他方の溝形成領域A2内の各ブライン通過用溝からブラインを排出可能に各ブライン通過用溝に連通させられた貫通孔Hoa22が形成されている。さらに、ブラインプレート42aには、後述するように水素ガスプレート43aに形成されている貫通孔Hib31,Hob31,Hib32,Hob32に連通させられる貫通孔Hib21,Hob21,Hib22,Hob22が形成されている。
この場合、本例の水素ガス冷却用熱交換器30Aにおけるブラインプレート42aでは、貫通孔Hia21から貫通孔Hoa21までのブライン流路と、貫通孔Hia22から貫通孔Hoa22までのブライン流路とが別個独立しており、一方の溝形成領域A2内の各ブライン通過用溝を通過させられるブラインと、他方の溝形成領域A2内の各ブライン通過用溝を通過させられるブラインとが水素ガス冷却用熱交換器30A内において混合されることなく水素ガスと熱交換可能となっている。
水素ガスプレート43aには、水素ガスの通過が可能な水素ガス通過用溝が形成された一対の溝形成領域A3,A3(「別個独立して設けられたN1=2個の第1の溝形成領域」の他の一例)が規定されると共に、上記したようにブラインプレート42aに形成されているスリットS2と連通させられてスリットS2と相俟って真空断熱室Rsを構成するスリットS3(「第1の断熱部」の他の一例)が形成された断熱部形成領域A4(「第1の断熱領域」の他の一例)が両溝形成領域A3,A3の間に規定されている。また、溝形成領域A3および断熱部形成領域A4の周囲には、ブラインプレート42aに接合するための接合領域A1が規定されている。
なお、図6,7では、水素ガスプレート43aの構成についての理解を容易とするために、1つの大きな溝(凹部)が溝形成領域A3内に形成された状態を図示しているが、実際には、複数本の細幅の水素ガス通過用溝が溝形成領域A3内に並んで形成されている。
また、水素ガスプレート43aには、上記のようにブラインプレート42aに形成されている貫通孔Hia21,Hia22,Hoa21,Hoa22に連通させられる貫通孔Hia31,Hia32,Hoa31,Hoa32が形成されている。さらに、水素ガスプレート43aには、前述した水素ガスプレート43と同様にして、貫通孔Hib31,Hib32,Hob31,Hob32が形成されている。
この場合、本例の水素ガス冷却用熱交換器30Aにおける水素ガスプレート43aでは、前述した水素ガスプレート43と同様にして、貫通孔Hib31から貫通孔Hob31までの水素ガス流路と、貫通孔Hib32から貫通孔Hob32までの水素ガス流路とが別個独立しており、一方の溝形成領域A3内の各水素ガス通過用溝を通過させられる水素ガスと、他方の溝形成領域A3内の各水素ガス通過用溝を通過させられる水素ガスとが水素ガス冷却用熱交換器30A内において混合されることなくブラインと熱交換可能となっている。
ベースプレート44aには、貫通孔Hia41,Hoa41,Hia42,Hoa42,Hib41,Hob41,Hib42,Hob42,Hc4が形成されている。この場合、貫通孔Hia41は、ブラインプレート42aの貫通孔Hia21および水素ガスプレート43aの貫通孔Hia31に連通させられると共に、一方のブライン配管13cを接続するための接続具が取り付けられる。また、貫通孔Hoa41は、ブラインプレート42の貫通孔Hoa21および水素ガスプレート43の貫通孔Hoa31に連通させられると共に、一方のブライン配管13dを接続するための接続具が取り付けられる。
また、貫通孔Hia42は、ブラインプレート42aの貫通孔Hia22および水素ガスプレート43aの貫通孔Hia32に連通させられると共に、他方のブライン配管13cを接続するための接続具が取り付けられる。さらに、貫通孔Hoa42は、ブラインプレート42の貫通孔Hoa22および水素ガスプレート43の貫通孔Hoa32に連通させられると共に、他方のブライン配管13dを接続するための接続具が取り付けられる。
また、貫通孔Hib41は、ブラインプレート42aの貫通孔Hib21および水素ガスプレート43aの貫通孔Hib31に連通させられると共に、水素ガス配管4b1を接続するための接続具が取り付けられる。さらに、貫通孔Hob41は、ブラインプレート42aの貫通孔Hob21および水素ガスプレート43aの貫通孔Hob31に連通させられると共に、水素ガス配管4c1を接続するための接続具が取り付けられる。
また、貫通孔Hib42は、ブラインプレート42aの貫通孔Hib22および水素ガスプレート43aの貫通孔Hib32に連通させられると共に、水素ガス配管4b2を接続するための接続具が取り付けられる。さらに、貫通孔Hob42は、ブラインプレート42aの貫通孔Hob22および水素ガスプレート43aの貫通孔Hob32に連通させられると共に、水素ガス配管4c2を接続するための接続具が取り付けられる。
また、貫通孔Hc4は、ブラインプレート42aのスリットS2および水素ガスプレート43aのスリットS3に連通させられている。この貫通孔Hc4には、一例として、図示しないバルブが装着されている。これにより、後述するように、本例の水素ガス冷却用熱交換器30Aでは、各スリットS2,S3で構成される真空断熱室Rs内の空気が真空引きされて真空断熱室Rs内が真空となった状態でバルブを閉状態に移行させることで、真空断熱室Rs内の真空状態が維持される。
この場合、本例の水素ガス冷却用熱交換器30Aでは、ブラインプレート42aの板面方向で隣接する一対の溝形成領域A2,A2の間に規定された断熱部形成領域A4内に、一方の溝形成領域A2内の各ブライン通過用溝を通過するブラインと、他方の溝形成領域A2内の各ブライン通過用溝を通過するブラインとを断熱する「第2の断熱部」としてのスリットS2が形成されて真空断熱室Rsが構成されている。
これにより、本例の水素ガス冷却用熱交換器30Aでは、一方の溝形成領域A2内の各ブライン通過用溝を通過しているブラインの熱によって他方の溝形成領域A2内の各ブライン通過用溝を通過しているブラインが温度上昇させられたり、他方の溝形成領域A2内の各ブライン通過用溝を通過しているブラインの熱によって一方の溝形成領域A2内の各ブライン通過用溝を通過しているブラインが温度上昇させられたりする事態が回避されている。
また、本例の水素ガス冷却用熱交換器30Aでは、前述した水素ガス冷却用熱交換器30と同様にして、水素ガスプレート43aの板面方向で隣接する一対の溝形成領域A3,A3の間に規定された断熱部形成領域A4内に、一方の溝形成領域A3内の各水素ガス通過用溝を通過する水素ガスと、他方の溝形成領域A3内の各水素ガス通過用溝を通過する水素ガスとを断熱する「第1の断熱部」としてスリットS3が形成されて真空断熱室Rsが構成されている。
これにより、本例の水素ガス冷却用熱交換器30Aでは、一方の溝形成領域A3内の各水素ガス通過用溝を通過している水素ガスの熱によって他方の溝形成領域A3内の各水素ガス通過用溝を通過している水素ガスが温度上昇させられたり、他方の溝形成領域A3内の各水素ガス通過用溝を通過している水素ガスの熱によって一方の溝形成領域A3内の各水素ガス通過用溝を通過している水素ガスが温度上昇させられたりする事態が回避されている。
さらに、本例の水素ガス冷却用熱交換器30Aでは、ブラインプレート42が、N2=N=2個の溝形成領域A2を備え、かつ水素ガスプレート43が、N1=N=2個の溝形成領域A3を備えると共に、M=1個目の溝形成領域A2とM=1個目の溝形成領域A3とが各板体41,42a〜44aの積層方向で重なり、かつM=2個目の溝形成領域A2とM=2個目の溝形成領域A3とが各板体41,42a〜44aの積層方向で重なるように各ブラインプレート42および水素ガスプレート43がベースプレート41,44a間に積層されている。
これにより、本例の水素ガス冷却用熱交換器30Aでは、一方の溝形成領域A2内の各ブライン通過用溝を通過しているブラインの熱によって他方の溝形成領域A3内の各水素ガス通過用溝を通過している水素ガスが温度上昇させられたり、他方の溝形成領域A2内の各ブライン通過用溝を通過しているブラインの熱によって一方の溝形成領域A3内の各水素ガス通過用溝を通過している水素ガスが温度上昇させられたりする事態が回避されている。
なお、この水素ガス冷却用熱交換器30Aの製造方法については、上記の水素ガス冷却用熱交換器30の製造方法と同様のため、その説明を省略する。
次に、水素ガス給気システム100による給気対象X1,X2への水素ガスの給気時における水素ガス冷却装置1の動作(水素ガス冷却用熱交換器30Aにおける水素ガスの冷却処理)について、添付図面を参照して説明する。
なお、水素ガス冷却用熱交換器30Aの予備冷却処理については、前述の水素ガス冷却用熱交換器30の予備冷却処理と同様のため、詳細な説明を省略するが、本例の構成における水素ガス給気システム100の予備冷却処理時には、流量調整弁16が、実線で示すブライン配管13cおよび破線で示すブライン配管13cの双方に同量のブラインを供給する。
一方、水素ガス冷却用熱交換器30Aを備えた水素ガス給気システム100によって、例えば給気対象X1に水素ガスを給気(充填)する際には、ガスタンク2から給気対象X1に向かって移動させられる水素ガスが、水素ガス冷却用熱交換器30Aにおいてブラインとの交換によって冷却される。具体的には、図示しないコントローラの制御に従い、ブラインタンク12から水素ガス配管4aを介して供給される水素ガスを制御弁3aが水素ガス配管4b1を介して水素ガス冷却用熱交換器30Aに給気する。この際には、ガスタンク2からの水素ガスの移動開始に連動して、コントローラから水素ガス冷却装置1の制御部15に給気開始信号が出力される。
これに応じて、水素ガス冷却装置1では、制御部15が、液送ポンプ14bおよび流量調整弁16を制御することにより、水素ガス冷却用熱交換器30Aにおける貫通孔Hia41に接続されたブライン配管13cへのブラインの供給量を増加させる。この際には、水素ガスの冷却に必要な量のブラインがブラインタンク12からブライン配管13cを介して水素ガス冷却用熱交換器30Aに供給され、貫通孔Hia41に接続されている接続具から水素ガス冷却用熱交換器30A内に導入される。また、水素ガス冷却用熱交換器30Aに導入されたブラインは、貫通孔Hia21,Hia31・・を介して各ブラインプレート42aにおける一方の溝形成領域A2(本例では、図6における右側の溝形成領域A2)内のブライン通過用溝内に移動する。
一方、上記のように制御弁3aから水素ガス配管4b1を介して水素ガス冷却用熱交換器30Aに給気された水素ガスは、貫通孔Hib41に接続されている接続具から水素ガス冷却用熱交換器30A内に導入される。また、水素ガス冷却用熱交換器30Aに導入された水素ガスは、貫通孔Hib21,Hib31・・を介して各水素ガスプレート43aの一方の溝形成領域A3(本例では、図6における右側の溝形成領域A3)内の水素ガス通過用溝内に移動する。これにより、各ブラインプレート42aにおける一方の溝形成領域A2内のブライン通過用溝内を移動しているブラインと、各水素ガスプレート43aにおける一方の溝形成領域A3内の水素ガス通過用溝内を移動している水素ガスとの熱交換によって水素ガスが冷却される。
また、ブラインとの熱交換によって冷却された水素ガスは、各水素ガスプレート43aの一方の溝形成領域A3における水素ガス通過用溝から貫通孔Hob31,Hob21・・に排出され、貫通孔Hob41に接続されている接続具から水素ガス配管4c1を介して給気対象X1に給気される。これにより、水素ガス冷却用熱交換器30Aにおいて十分に温度低下した水素ガスが給気対象X1の燃料タンク(ガスタンク)内に充填される。この結果、給気対象X1への水素ガスの充填効率を十分に向上させることができる。また、水素ガスとの熱交換によって温度上昇したブラインは、各ブラインプレート42aのブライン通過用溝から貫通孔Hoa21,Hoa31・・に排出され、貫通孔Hoa41に接続されている接続具からブライン配管13dを介してブラインタンク12に回収される。
この状態(給気対象X1に対して水素ガスを給気している状態)において給気対象X2に対する水素ガスの給気を行う際には、コントローラの制御に従い、ブラインタンク12から水素ガス配管4aを介して供給される水素ガスを制御弁3aが水素ガス配管4b2を介して水素ガス冷却用熱交換器30Aに給気する。
また、制御部15は、液送ポンプ14bおよび流量調整弁16を制御することにより、水素ガス冷却用熱交換器30Aにおける貫通孔Hia42に接続されたブライン配管13cへのブラインの供給量を増加させる。この際には、水素ガスの冷却に必要な量のブラインがブラインタンク12からブライン配管13cを介して水素ガス冷却用熱交換器30Aに供給され、貫通孔Hia42に接続されている接続具から水素ガス冷却用熱交換器30A内に導入される。また、水素ガス冷却用熱交換器30Aに導入されたブラインは、貫通孔Hia22,Hia32・・を介して各ブラインプレート42aにおける他方の溝形成領域A2(本例では、図6における左側の溝形成領域A2)内のブライン通過用溝内に移動する。
一方、上記のように制御弁3aから水素ガス配管4b2を介して水素ガス冷却用熱交換器30Aに給気された水素ガスは、貫通孔Hib42に接続されている接続具から水素ガス冷却用熱交換器30A内に導入される。また、水素ガス冷却用熱交換器30Aに導入された水素ガスは、貫通孔Hib22,Hib32・・を介して各水素ガスプレート43aの他方の溝形成領域A3(本例では、図6における左側の溝形成領域A3)内の水素ガス通過用溝内に移動する。これにより、各ブラインプレート42aにおける他方の溝形成領域A2内のブライン通過用溝内を移動しているブラインと、各水素ガスプレート43aにおける他方の溝形成領域A3内の水素ガス通過用溝内を移動している水素ガスとの熱交換によって水素ガスが冷却される。
また、ブラインとの熱交換によって冷却された水素ガスは、各水素ガスプレート43aの他方の溝形成領域A3における水素ガス通過用溝から貫通孔Hob32,Hob22・・に排出され、貫通孔Hob42に接続されている接続具から水素ガス配管4c2を介して給気対象X2に給気される。これにより、水素ガス冷却用熱交換器30Aにおいて十分に温度低下した水素ガスが給気対象X2の燃料タンク(ガスタンク)内に充填される。この結果、給気対象X1への水素ガスの給気(充填)を停止させることなく、給気対象X2に対しても十分に高い充填効率で水素ガスが充填される。
この場合、上記のように給気対象X1,X2に対して水素ガスを並行して給気(充填)するときには、前述した水素ガス冷却用熱交換器30における水素ガスの冷却処理時と同様にして、各水素ガスプレート43aの一方の溝形成領域A3の近傍の温度と、各水素ガスプレート43aの他方の溝形成領域A3の近傍の温度とが相違する状態となる。この結果、各ブラインプレート42aの一方の溝形成領域A2の近傍の温度と、各ブラインプレート42aの他方の溝形成領域A2の近傍の温度とが相違する状態となる。
しかしながら、本例の水素ガス冷却用熱交換器30Aでは、各水素ガスプレート43aの両溝形成領域A3,A3の間に断熱部形成領域A4が設けられてスリットS3が形成され、各水素ガスプレート43aに接合されている各ブラインプレート42aの両溝形成領域A2,A2の間にも各水素ガスプレート43aの断熱部形成領域A4と積層方向で重なるようにして断熱部形成領域A4内にスリットS2が形成され、これにより、各水素ガスプレート43aの両溝形成領域A3,A3の間、および各ブラインプレート42aの両溝形成領域A2,A2の間にスリットS3,S2・・からなる真空断熱室Rsが位置した状態となっている。
したがって、本例の水素ガス冷却用熱交換器30Aでは、各水素ガスプレート43aにおける一方の溝形成領域A3内の水素ガス通過用溝を通過している水素ガスと、各水素ガスプレート43aにおける他方の溝形成領域A3内の水素ガス通過用溝を通過している水素ガスとが真空断熱室Rsによって断熱されるだけでなく、各ブラインプレート42aにおける一方の溝形成領域A2内のブライン通過用溝を通過しているブラインと、各ブラインプレート42aにおける他方の溝形成領域A2内のブライン通過用溝を通過しているブラインとが真空断熱室Rsによって断熱された状態となっている。
この結果、本例の水素ガス冷却用熱交換器30Aでは、各水素ガスプレート43aにおける一方の溝形成領域A3内の水素ガス通過用溝を通過している水素ガスと、各ブラインプレート42aにおける他方の溝形成領域A2内のブライン通過用溝を通過しているブラインとが真空断熱室Rsによって断熱されると共に、各水素ガスプレート43aにおける他方の溝形成領域A3内の水素ガス通過用溝を通過している水素ガスと、各ブラインプレート42aにおける一方の溝形成領域A2内のブライン通過用溝を通過しているブラインとが真空断熱室Rsによって断熱された状態となっている。
これにより、水素ガス冷却用熱交換器30Aを備えて構成された本例の水素ガス給気システム100(水素ガス冷却装置1)では、互いに熱的影響を受けることのないように十分に離間して配置した2つの熱交換器によって、給気対象X1に対して給気する水素ガス、および給気対象X2に対して給気する水素ガスを別個に冷却しているのと同様にして、両水素ガスを別個独立してそれぞれ好適に冷却することが可能となっている。
この後、例えば給気対象X1への水素ガスの給気が完了したときには、コントローラから水素ガス冷却装置1の制御部15に給気終了信号が出力される。これに伴い、制御部15は、液送ポンプ14bおよび流量調整弁16を制御して水素ガス冷却用熱交換器30Aにおける貫通孔Hia41に接続されたブライン配管13cへのブラインの供給量を減少させる。
また、給気対象X1に続いて給気対象X2への水素ガスの給気も完了したときには、コントローラからの給気終了信号に応じて、制御部15が、液送ポンプ14bおよび流量調整弁16を制御して水素ガス冷却用熱交換器30Aにおける貫通孔Hia42に接続されたブライン配管13cへのブラインの供給量を減少させ、前述したブラインの循環処理を開始すると共に、ブラインタンク12内のブラインを規定温度範囲内に維持する前述した処理を継続する。
このように、この水素ガス冷却用熱交換器30Aでは、ブラインの通過が可能なブライン通過用溝が形成された溝形成領域A2を有するブラインプレート42aが、別個独立して設けられたN2個(本例では、N2=2個)の溝形成領域A2を有して各溝形成領域A2内のブライン通過用溝を通過するブライン同士を混合させずに水素ガスと熱交換可能に構成されると共に、隣接する溝形成領域A2,A2の間に一方の溝形成領域A2内のブライン通過用溝を通過するブラインと他方の溝形成領域A2内のブライン通過用溝を通過するブラインとを断熱するスリットS2(真空断熱室Rs)が形成された断熱部形成領域A4が設けられている。
したがって、この水素ガス冷却用熱交換器30Aによれば、N2=2個の溝形成領域A2,A2を十分に接近させたにも拘わらず、溝形成領域A2,A2の間に設けた断熱部形成領域A4(真空断熱室Rs)によって一方の溝形成領域A2内のブライン通過用溝内を通過するブラインと他方の溝形成領域A2内のブライン通過用溝内を通過するブラインとを好適に断熱することができるため、いずれかの溝形成領域A2内のブライン通過用溝内を通過しているブラインが、他のいずれかの溝形成領域A2内のブライン通過用溝内を通過しているブラインの影響で温度上昇して水素ガスを好適に冷却するのが困難な状態となるのを確実に回避することができる。
また、この水素ガス冷却用熱交換器30Aでは、水素ガスプレート43aが「N1個の第1の溝形成領域」としてのN個(本例では、N=2個)の溝形成領域A3を備え、かつブラインプレート42aが「N2個の第2の溝形成領域」としてのN個(本例では、N=2個)の溝形成領域A2を備えると共に、M=1個目の溝形成領域A3とM=1個目の溝形成領域A2とが各板体の積層方向で重なり、かつM=2個目の溝形成領域A3とM=2個目の溝形成領域A2とが各板体の積層方向で重なるようにブラインプレート42aおよび水素ガスプレート43aが積層されている。
したがって、この水素ガス冷却用熱交換器30Aによれば、いずれかの溝形成領域A3内の水素ガス通過用溝内を通過している水素ガスを、その溝形成領域A3に対して積層方向で重なる溝形成領域A2内のブライン通過用溝内を通過しているブラインによって冷却しているときに、他の溝形成領域A2内のブライン通過用溝内を通過しているブラインの熱の影響で水素ガスの冷却が妨げられる事態を好適に回避することができる。
次いで、水素ガス冷却用熱交換器30Bについて、添付図面を参照して説明する。
なお、前述の水素ガス冷却用熱交換器30,30Aの構成要素と同様の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。また、水素ガス給気システム100(水素ガス冷却装置1)における水素ガス冷却用熱交換器30A以外の構成要素については、水素ガス冷却用熱交換器30Aを備えた上記の水素ガス給気システム100と同様のため、重複する説明を省略する。
図1,8〜10に示す水素ガス冷却用熱交換器30Bは、図1に示すように、前述の水素ガス冷却用熱交換器30Aと同様にして、水素ガス配管4b1,4b2を介してディスペンサー3の制御弁3aに接続されると共に、水素ガス配管4c1を介して給気対象X1に接続され、かつ水素ガス配管4c2を介して給気対象X2に接続されている。また、水素ガス冷却用熱交換器30Bは、実線で示すブライン配管13c,13d、破線で示すブライン配管13c,13d、および流量調整弁16を介してブラインタンク12に接続されている。
この水素ガス冷却用熱交換器30Bは、図8〜10に示すように、ベースプレート41b,44bと、ブラインプレート42bと、水素ガスプレート43bと、断熱プレート45,46とを備えている。
具体的には、この水素ガス冷却用熱交換器30Bは、ブラインプレート42bおよび水素ガスプレート43bが交互に積層された積層体40aがベースプレート41bおよび断熱プレート45の間に配設され、かつブラインプレート42bおよび水素ガスプレート43bが交互に積層された積層体40bが断熱プレート46およびベースプレート44bの間に配設された状態で各接合面同士が接合されて一体化された本体部31bと、本体部31bにブライン配管13c,13dや水素ガス配管4b1,4b2,4c1,4c2を接続可能にベースプレート41b,44bに装着される複数の接続具(図示せず)とを備えて構成されている。
この場合、本例の水素ガス冷却用熱交換器30Bでは、図10に示すように、ベースプレート41b,44b、ブラインプレート42b、水素ガスプレート43bおよび断熱プレート45,46が、一例として、ステンレススチール等の金属板によってそれぞれ平面視方形状に形成されている。なお、以下の説明においては、ベースプレート41b、ブラインプレート42b、水素ガスプレート43b、断熱プレート45,46およびベースプレート44bを総称して「板体41b〜44b,45,46」ともいう。
ブラインプレート42bには、図9,10に示すように、ブラインの通過が可能なブライン通過用溝が形成された溝形成領域A2が規定されると共に、溝形成領域A2の周囲には、接合領域A1が規定されている。なお、上記の図9は、図8におけるBB−BB線断面の概略図であり、水素ガス冷却用熱交換器30Bの内部構造についての理解を容易とするために、各板体41b〜44b,45,46厚みを実際の厚みよりも厚く図示している。また、図9,10では、ブラインプレート42bの構成についての理解を容易とするために、1つの大きな溝(凹部)が溝形成領域A2内に形成された状態を図示しているが、実際には、複数本の細幅のブライン通過用溝が溝形成領域A2内に並んで形成されている。
また、ブラインプレート42bには、溝形成領域A2内の各ブライン通過用溝にブラインを導入可能に各ブライン通過用溝に連通させられた貫通孔Hia2、および溝形成領域A2内の各ブライン通過用溝からブラインを排出可能に各ブライン通過用溝に連通させられた貫通孔Hoa2が形成されている。さらに、ブラインプレート42bには、後述するように水素ガスプレート43bに形成されている貫通孔Hib3,Hob3に連通させられる貫通孔Hib2,Hob2が形成されている。
この場合、本例の水素ガス冷却用熱交換器30Bでは、積層体40aを構成する各ブラインプレート42bの貫通孔Hia2から貫通孔Hoa2までのブライン流路と、積層体40bを構成する各ブラインプレート42bの貫通孔Hia2から貫通孔Hoa2までのブライン流路とが断熱プレート45,46によって隔てられて別個独立しており、積層体40aの各ブラインプレート42bにおける溝形成領域A2内の各ブライン通過用溝を通過させられるブラインと、積層体40bの各ブラインプレート42bにおける溝形成領域A2内の各ブライン通過用溝を通過させられるブラインとが水素ガス冷却用熱交換器30B内において混合されることなく水素ガスと熱交換可能となっている。
また、本例の水素ガス冷却用熱交換器30Bでは、一例として、積層体40aを構成するブラインプレート42b、および積層体40bを構成するブラインプレート42bとして、同じ構成のプレート(溝形成領域A2や接合領域A1が同様に形成されたプレート)が採用されている。
水素ガスプレート43bには、水素ガスの通過が可能な水素ガス通過用溝が形成された溝形成領域A3が規定されると共に、溝形成領域A3の周囲には、接合領域A1が規定されている。なお、図9,10では、水素ガスプレート43bの構成についての理解を容易とするために、1つの大きな溝(凹部)が溝形成領域A3内に形成された状態を図示しているが、実際には、複数本の細幅の水素ガス通過用溝が溝形成領域A3内に並んで形成されている。また、水素ガスプレート43bには、上記のようにブラインプレート42bに形成されている貫通孔Hia2,Hoa2に連通させられる貫通孔Hia3,Hoa3が形成されている。さらに、水素ガスプレート43bには、貫通孔Hib3,Hob3が形成されている。
この場合、本例の水素ガス冷却用熱交換器30Bでは、積層体40aを構成する各水素ガスプレート43bの貫通孔Hia3から貫通孔Hoa3までの水素ガス流路と、積層体40bを構成する各水素ガスプレート43bの貫通孔Hia3から貫通孔Hoa3までの水素ガス流路とが断熱プレート45,46によって隔てられて別個独立しており、積層体40aの各水素ガスプレート43bにおける溝形成領域A3内の各水素ガス通過用溝を通過させられる水素ガスと、積層体40bの各水素ガスプレート43bにおける溝形成領域A3内の各水素ガス通過用溝を通過させられる水素ガスとが水素ガス冷却用熱交換器30B内において混合されることなくブラインと熱交換可能となっている。
また、本例の水素ガス冷却用熱交換器30Bでは、一例として、積層体40aを構成する水素ガスプレート43b、および積層体40bを構成する水素ガスプレート43bとして、同じ構成のプレート(溝形成領域A3や接合領域A1が同様に形成されたプレート)が採用されている。
断熱プレート45,46は、上記したように、積層体40a,40bの間に配置されて、積層体40aを構成する各ブラインプレート42bを通過させられるブラインと積層体40bを構成する各ブラインプレート42bを通過させられるブラインとが混合されるのを阻止し、かつ積層体40aを構成する各水素ガスプレート43bを通過させられる水素ガスと積層体40bを構成する各水素ガスプレート43bを通過させられる水素ガスとが混合されるのを阻止すると共に、積層体40aを通過させられるブラインおよび水素ガスと、積層体40bを通過させられるブラインおよび水素ガスとを断熱する。
具体的には、図9,10に示すように、断熱プレート45には、断熱部形成領域A4内に凹部45aが形成されると共に、その端面から凹部45aに連通する貫通孔Hc5が形成されている。この断熱プレート45は、後述するように、この凹部45aの上面開口部位が断熱プレート46によって閉塞されると共に、図示しないバルブが貫通孔Hc5に取り付けられ、凹部45a内の空気が真空引きされて真空となった状態でバルブが閉状態に移行させられることによって凹部45a内が真空断熱室Rsとなるように構成されている。
この場合、拡散接合によって本体部31bが製造される本例の水素ガス冷却用熱交換器30Bでは、凹部45aの中央部寄りにおいて断熱プレート45における凹部45aの底部や断熱プレート46に変形が生じて各板体41b〜44b,45,46に対する押圧力の低下する事態を招くことがないように、凹部45aの深さと等しい凸部45b,45bが断熱部形成領域A4内(凹部45a内)に設けられている。これにより、本例の水素ガス冷却用熱交換器30Bでは、断熱部形成領域A4の周囲に規定された接合領域A1に加え、凸部45bの突端面である接合領域A5が断熱プレート46に接合されることとなる。
ベースプレート41bには、貫通孔Hia41,Hoa41,Hib41,Hob41が形成されている。この場合、貫通孔Hia41は、積層体40aを構成するブラインプレート42bの貫通孔Hia2および水素ガスプレート43bの貫通孔Hia3に連通させられると共に、一方のブライン配管13cを接続するための接続具が取り付けられる。さらに、貫通孔Hoa41は、積層体40aを構成するブラインプレート42の貫通孔Hoa2および水素ガスプレート43の貫通孔Hoa3に連通させられると共に、一方のブライン配管13dを接続するための接続具が取り付けられる。
また、貫通孔Hib41は、積層体40aを構成するブラインプレート42bの貫通孔Hib2および水素ガスプレート43bの貫通孔Hib3に連通させられると共に、水素ガス配管4b1を接続するための接続具が取り付けられる。さらに、貫通孔Hob41は、積層体40aを構成するブラインプレート42bの貫通孔Hob2および水素ガスプレート43bの貫通孔Hob3に連通させられると共に、水素ガス配管4c1を接続するための接続具が取り付けられる。
ベースプレート44bには、貫通孔Hia42,Hoa42,Hib42,Hob42が形成されている。この場合、貫通孔Hia42は、積層体40bを構成するブラインプレート42bの貫通孔Hia2および水素ガスプレート43bの貫通孔Hia3に連通させられると共に、他方のブライン配管13cを接続するための接続具が取り付けられる。さらに、貫通孔Hoa42は、積層体40bを構成するブラインプレート42の貫通孔Hoa2および水素ガスプレート43の貫通孔Hoa3に連通させられると共に、他方のブライン配管13dを接続するための接続具が取り付けられる。
また、貫通孔Hib42は、積層体40bを構成するブラインプレート42bの貫通孔Hib2および水素ガスプレート43bの貫通孔Hib3に連通させられると共に、水素ガス配管4b2を接続するための接続具が取り付けられる。さらに、貫通孔Hob42は、積層体40bを構成するブラインプレート42bの貫通孔Hob2および水素ガスプレート43bの貫通孔Hob3に連通させられると共に、水素ガス配管4c2を接続するための接続具が取り付けられる。
この場合、本例の水素ガス冷却用熱交換器30Bでは、上記の41b,44bが同じ構成のプレート(断熱部形成領域A4(接合領域A5を含む)や接合領域A1が同様に形成されたプレート)が採用されている。
次に、上記の水素ガス冷却用熱交換器30Bの製造方法の一例について、添付図面を参照して説明する。
この水素ガス冷却用熱交換器30Bの製造に際しては、まず、各板体41b〜44b、45,46を予め規定された積層順序で積層する積層処理を実施する。具体的には、一例として、まず、ベースプレート41bを図示しない積層用治具(位置決め具)の上に載置した後に、ブライン通過用溝の形成面を上向きにしてベースプレート41bの上にブラインプレート42bを積層すると共に、水素ガス通過用溝の形成面を上向きにしてブラインプレート42bの上に水素ガスプレート43bを積層する。これにより、積層体40aを構成するブラインプレート42bおよび水素ガスプレート43bからなる一組の積層物がベースプレート41bの上に積層された状態となる。
次いで、水素ガス冷却用熱交換器30Bに求められている容量に応じて、上記の積層物における水素ガスプレート43bの上に、ブラインプレート42bおよび水素ガスプレート43bを交互に積層する。続いて、最上部の水素ガスプレート43bの上に、ブライン通過用溝の形成面を上向きにしてブラインプレート42bを積層した後に、凹部45aの形成面を上向きにしてブラインプレート42bの上に断熱プレート45を積層する。これにより、ベースプレート41bおよび断熱プレート45の間に積層体40aを構成する複数のブラインプレート42bおよび複数の水素ガスプレート43bが積層された状態となる。
次いで、断熱プレート45の凹部45aを閉塞するようにして断熱プレート45の上に断熱プレート46を積層した後に、ブライン通過用溝の形成面を上向きにして断熱プレート46の上にブラインプレート42bを積層すると共に、水素ガス通過用溝の形成面を上向きにしてブラインプレート42bの上に水素ガスプレート43bを積層する。これにより、積層体40bを構成するブラインプレート42bおよび水素ガスプレート43bからなる一組の積層物が断熱プレート46の上に積層された状態となる。
続いて、水素ガス冷却用熱交換器30Bに求められている容量に応じて、上記の積層物における水素ガスプレート43bの上に、ブラインプレート42bおよび水素ガスプレート43bを交互に積層する。次いで、最上部の水素ガスプレート43bの上に、ベースプレート44bを積層する。以上により、積層処理が完了する。
この積層処理が完了した状態では、図9に示すように、積層体40aを構成するブラインプレート42bの各接合領域A1と積層体40aを構成する水素ガスプレート43bの各接合領域A1とが各板体41b〜44b,45,46の積層方向で重なると共に、積層体40aを構成するブラインプレート42bの各溝形成領域A2と積層体40aを構成する水素ガスプレート43bの各溝形成領域A3とが各板体41b〜44b,45,46の積層方向で重なった状態となる。
また、積層体40aを構成するブラインプレート42bの貫通孔Hia2、水素ガスプレート43bの貫通孔Hia3、およびベースプレート41bの貫通孔Hia41が各板体41b〜44b,45,46の積層方向で連通した状態になると共に、積層体40aを構成するブラインプレート42bの貫通孔Hoa2、水素ガスプレート43bの貫通孔Hoa3、およびベースプレート41bの貫通孔Hoa41が各板体41b〜44b,45,46の積層方向で連通した状態になる。
さらに、積層体40bを構成するブラインプレート42bの各接合領域A1と積層体40bを構成する水素ガスプレート43bの各接合領域A1とが各板体41b〜44b,45,46の積層方向で重なると共に、積層体40bを構成するブラインプレート42bの各溝形成領域A2と積層体40bを構成する水素ガスプレート43bの各溝形成領域A3とが各板体41b〜44b,45,46の積層方向で重なった状態となる。
また、積層体40bを構成するブラインプレート42bの貫通孔Hia2、水素ガスプレート43bの貫通孔Hia3、およびベースプレート44bの貫通孔Hia42が各板体41b〜44b,45,46の積層方向で連通した状態になると共に、積層体40bを構成するブラインプレート42bの貫通孔Hoa2、水素ガスプレート43bの貫通孔Hoa3、およびベースプレート44bの貫通孔Hoa42が各板体41b〜44b,45,46の積層方向で連通した状態になる。
さらに、積層体40aを構成するブラインプレート42bの溝形成領域A2および水素ガスプレート43bの溝形成領域A3と、積層体40bを構成するブラインプレート42bの溝形成領域A2および水素ガスプレート43bの溝形成領域A3との間には、断熱プレート45,46で構成された真空断熱室Rsが存在する状態となる。
この後、上記の積層処理によって積層された各板体41b〜44b,45,46の積層体を図示しない接合処理装置内に収容して接合処理(拡散接合処理)を実施する。なお、接合処理については水素ガス冷却用熱交換器30等の製造時と同様の処理のため、詳細な説明を省略する。この後、ベースプレート41bの各貫通孔Hia41,Hoa41,Hib41,Hob41や、ベースプレート44bの各貫通孔Hia42,Hoa42,Hib42,Hob42に図示しない接続具を取り付けることにより、水素ガス冷却用熱交換器30Bの製造が完了する。
次に、水素ガス給気システム100による給気対象X1,X2への水素ガスの給気時における水素ガス冷却装置1の動作(水素ガス冷却用熱交換器30Bにおける水素ガスの冷却処理)について、添付図面を参照して説明する。なお、水素ガス冷却用熱交換器30Bの予備冷却処理については、前述の水素ガス冷却用熱交換器30Aの予備冷却処理と同様のため、詳細な説明を省略する。
一方、給気対象X1,X2に対して給気する水素ガスの冷却処理に関し、前述の水素ガス冷却用熱交換器30Aでは、給気対象X1に対して給気される水素ガスを図6における右側部位において冷却し、かつ給気対象X2に対して給気される水素ガスを同図における左側部位において冷却する構成が採用されている。これに対して、本例の水素ガス冷却用熱交換器30Bでは、給気対象X1に対して給気される水素ガスを図8,9における下側部位(すなわち、積層体40a内)において冷却し、かつ給気対象X2に対して給気される水素ガスを両図における上側部位(すなわち、積層体40b内)において冷却する構成が採用されている点が水素ガス冷却用熱交換器30Aとは相違するが、本例の水素ガス冷却用熱交換器30Bにおいても水素ガス冷却用熱交換器30Aと同様にして、給気対象X1,X2に対して給気する水素ガスをそれぞれ好適に冷却することが可能となっている。これにより、水素ガス冷却用熱交換器30Bを備えた水素ガス給気システム100においても、給気対象X1への水素ガスの給気(充填)を停止させることなく、給気対象X2に対しても十分に高い充填効率で水素ガスが充填されることができる。
この場合、給気対象X1,X2に対して水素ガスを並行して給気(充填)するときには、積層体40aを構成する各水素ガスプレート43bの溝形成領域A3の近傍の温度と、積層体40bを構成する各水素ガスプレート43bの溝形成領域A3の近傍の温度とが相違する状態となる。この結果、積層体40aにおける各ブラインプレート42bの溝形成領域A2の近傍の温度と、積層体40bにおける各ブラインプレート42bの溝形成領域A2の近傍の温度とが相違する状態となる。
しかしながら、本例の水素ガス冷却用熱交換器30Bでは、積層体40aの各水素ガスプレート43bの溝形成領域A3およびブラインプレート42の溝形成領域A2と、積層体40bの各水素ガスプレート43bの溝形成領域A3およびブラインプレート42の溝形成領域A2との間に断熱プレート45の断熱部形成領域A4が設けられて凹部45aからなる真空断熱室Rsが積層体40a,40b間に位置した状態となっている。
したがって、本例の水素ガス冷却用熱交換器30Bでは、積層体40aを構成する各水素ガスプレート43bにおける溝形成領域A3内の水素ガス通過用溝を通過している水素ガスと、積層体40bを構成する各水素ガスプレート43bにおける溝形成領域A3内の水素ガス通過用溝を通過している水素ガスとが真空断熱室Rsによって断熱されると共に、積層体40aを構成する各ブラインプレート42bにおける溝形成領域A2内のブライン通過用溝を通過しているブラインと、積層体40bを構成する各ブラインプレート42bにおける溝形成領域A2内のブライン通過用溝を通過しているブラインとが真空断熱室Rsによって断熱された状態となっている。
この結果、本例の水素ガス冷却用熱交換器30Bでは、積層体40aの各水素ガスプレート43bにおける溝形成領域A3内の水素ガス通過用溝を通過している水素ガスと、積層体40bの各ブラインプレート42bにおける溝形成領域A2内のブライン通過用溝を通過しているブラインとが真空断熱室Rsによって断熱されると共に、積層体40bの各水素ガスプレート43bにおける溝形成領域A3内の水素ガス通過用溝を通過している水素ガスと、積層体40aの各ブラインプレート42bにおける溝形成領域A2内のブライン通過用溝を通過しているブラインとが真空断熱室Rsによって断熱された状態となっている。
これにより、水素ガス冷却用熱交換器30Bを備えて構成された本例の水素ガス給気システム100(水素ガス冷却装置1)では、水素ガス冷却用熱交換器30Aを備えて構成された前述の水素ガス給気システム100と同様にして、互いに熱的影響を受けることのないように十分に離間して配置した2つの熱交換器によって、給気対象X1に対して給気する水素ガス、および給気対象X2に対して給気する水素ガスを別個に冷却しているのと同様にして、両水素ガスを別個独立してそれぞれ好適に冷却することが可能となっている。
このように、この水素ガス冷却用熱交換器30Bでは、水素ガスの通過が可能な水素ガス通過用溝が形成された水素ガスプレート43b、およびブラインの通過が可能なブライン通過用溝が形成されたブラインプレート42bが積層された積層体40a,40bをそれぞれ1個(L=2個)備えて各積層体40a,40bにおける水素ガスプレート43bの水素ガス通過用溝を通過する水素ガス同士を混合させずにブラインと熱交換可能に構成されると共に、隣接する積層体40a,40bの間に積層体40aにおける水素ガスプレート43bの水素ガス通過用溝を通過する水素ガスと積層体40bにおける水素ガスプレート43bの水素ガス通過用溝を通過する水素ガスとを断熱する真空断熱室Rsを構成する断熱プレート45,46が挟み込まれている。
したがって、この水素ガス冷却用熱交換器30Bによれば、L=2個の積層体40a,40bを十分に接近させたにも拘わらず、積層体40a,40bの間に配設した断熱プレート45,46(真空断熱室Rs)によって積層体40aにおける溝形成領域A3内の水素ガス通過用溝内を通過する水素ガスと、積層体40bにおける溝形成領域A3内の水素ガス通過用溝内を通過する水素ガスとを好適に断熱することができるため、L=2種類の水素ガスを並行して好適に冷却することができると共に、L=2個の別個独立した「プレート式熱交換器」を用いてL=2種類の水素ガスを冷却する構成と比較して、各水素ガスの冷却に必要な「プレート式熱交換器」の占有スペースを十分に小さくすることができる。
また、この水素ガス冷却用熱交換器30Bによれば、各積層体40a,40bにおけるブラインプレート42bのブライン通過用溝を通過するブライン同士を混合させずに水素ガスと熱交換可能に構成したことにより、L=2個の積層体40a,40bを十分に接近させたにも拘わらず、積層体40aと積層体40bとの間に設けた断熱プレート45,46(真空断熱室Rs)によって積層体40aにおける溝形成領域A2内のブライン通過用溝内を通過するブラインと積層体40bにおける溝形成領域A2内のブライン通過用溝内を通過するブラインとを好適に断熱することができるため、積層体40a,40bのいずれかの溝形成領域A2内のブライン通過用溝内を通過しているブラインが、積層体40a,40bの他のいずれかの溝形成領域A2内のブライン通過用溝内を通過しているブラインの影響で温度上昇して水素ガスを好適に冷却するのが困難な状態となるのを確実に回避することができる。
さらに、この水素ガス冷却用熱交換器30Bでは、複数の水素ガスプレート43bおよび複数のブラインプレート42bを含む各板体を積層して各積層体40a,40bがそれぞれ構成されている。したがって、この水素ガス冷却用熱交換器30Bによれば、例えば、2種類の水素ガス(水素ガス配管4b1,4c1を介して給気対象X1に給気される水素ガス、および水素ガス配管4b2,4c2を介して給気対象X2に給気される水素ガス)を冷却可能に「プレート式熱交換器」を構成する際に、一方の水素ガスを冷却するための1枚の「水素ガスプレート」および1枚の「ブラインプレート」の積層体と、他方の水素ガスを冷却するための1枚の「水素ガスプレート」および1枚の「ブラインプレート」の積層体とを交互に複数積層する場合には、「プレート式熱交換器」を構成する積層体の数が多数となることに起因して各積層体の間に挟み込む「断熱プレート」が多数枚となって「プレート式熱交換器」の厚みが大きくなるのに対し、積層体40aを構成する水素ガスプレート43bやブラインプレート42bの枚数、および積層体40bを構成する水素ガスプレート43bやブラインプレート42bの枚数が多いことで、水素ガス冷却用熱交換器30Bを構成する「積層体(積層体40a,40b)」の数を少数(本例では、2個)とすることができ、各「積層体(積層体40a,40b)」の間に挟み込む断熱プレート45,46の数を少数(本例では、1組)とすることができるため、水素ガス冷却用熱交換器30Bの厚みを十分に小さくすることができる。
なお、ブライン配管13c,13dとの接続用の接続具をベースプレート44,44a,41b,44bに形成した貫通孔(符号省略)に取り付ける構成の水素ガス冷却用熱交換器30,30A,30Bを例に挙げて説明したが、図11,12に示す水素ガス冷却用熱交換器30Cのように、ブライン配管13c,13dとの接続用の接続具を、本体部31cの側面に配設したブラインヘッダー32のHia32,Hoa32に取り付ける構成を採用することもできる。
この場合、水素ガス冷却用熱交換器30Cは、「プレート式熱交換器」のさらに他の一例であって、前述した水素ガス冷却用熱交換器30におけるブラインプレート42および水素ガスプレート43に代えて、ベースプレート41,44cの間に、「第2の板体」のさらに他の一例であるブラインプレート42c、および「第1の板体」のさらに他の一例である水素ガスプレート43cが交互に積層されて(「予め規定された積層順序」のさらに他の一例)接合面同士が接合されて一体化されて本体部31cが構成されている。
なお、この水素ガス冷却用熱交換器30Cに関して水素ガス冷却用熱交換器30と同様の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。この場合、この水素ガス冷却用熱交換器30Cでは、ベースプレート41、ブラインプレート42c、水素ガスプレート43cおよびベースプレート44cがそれぞれ「板体」に相当し、図12に示すように、一例として、ステンレススチール等の金属板によってそれぞれ平面視方形状に形成されている。なお、以下の説明においては、ベースプレート41、ブラインプレート42c、水素ガスプレート43cおよびベースプレート44cを総称して「板体41,42c〜44c」ともいう。
ブラインプレート42cには、ブラインの通過が可能なブライン通過用溝(「第2の流体通過用溝」のさらに他の一例)が形成された一対の溝形成領域A2,A2(「第2の溝形成領域」のさらに他の一例)が規定されると共に、水素ガスプレート43cのスリットS3と連通させられるスリットS2が形成された断熱部形成領域A4が両溝形成領域A2,A2の間に規定されている。また、溝形成領域A2および断熱部形成領域A4の間、および溝形成領域A2の外側には、ベースプレート41,44cや水素ガスプレート43cに接合するための接合領域A1が規定されている。
なお、図12では、ブラインプレート42cの構成についての理解を容易とするために、1つの大きな溝(凹部)が溝形成領域A2内に形成された状態を図示しているが、実際には、複数本の細幅のブライン通過用溝が溝形成領域A2内に並んで形成されている。この場合、この水素ガス冷却用熱交換器30Cでは、ブラインプレート42cにおいて対向する2辺(図12における左辺および右辺)の一方から他方にかけて複数本の細幅のブライン通過用溝が溝形成領域A2内に並んで形成されており、各ブライン通過用溝がブラインプレート42cの両側面においてそれぞれ開口した状態となっている。また、ブラインプレート42には、後述するように水素ガスプレート43cに形成されている貫通孔Hib31,Hob31,Hib32,Hob32に連通させられる貫通孔Hib21,Hob21,Hib22,Hob22が形成されている。
水素ガスプレート43cは、水素ガス冷却用熱交換器30における水素ガスプレート43の貫通孔Hia3,Hoa3が形成されていない点を除き、水素ガスプレート43と同様に構成されている。ベースプレート44cは、水素ガス冷却用熱交換器30におけるベースプレート44の貫通孔Hia4,Hoa4が形成されていない点を除き、水素ガスプレート43と同様に構成されている。
ブラインヘッダー32は、一例として、本体部31cにおける各板体41,42c〜44cの積層方向に沿った厚みと同程度の長さの金属板(ステンレススチール等の板材)で平板状に形成されている。このブラインヘッダー32において本体部31cに接合される面には、その底面が、本体部31cにおける各ブライン通過用溝の開口部と対向するように凹部32aが形成されている。また、両ブラインヘッダー32,32の一方には、凹部32aに連通する貫通孔Hia32が形成され、両ブラインヘッダー32,32の他方には、凹部32aに連通する貫通孔Hoa32が形成されている。
なお、貫通孔Hia32は、ブライン配管13cを接続する孔(すなわち、凹部32a内にブラインを導入するための孔)であり、貫通孔Hoa32は、ブライン配管13dを接続する孔(すなわち、凹部32aからブラインを排出するための孔)であるが、両貫通孔Hia32,Hoa32は、その孔径や形成位置が一致している。すなわち、本例の水素ガス冷却用熱交換器30Cでは、両ブラインヘッダー32,32として同じ構成の金属板が採用されている。
この水素ガス冷却用熱交換器30Cの製造に際しては、前述の水素ガス冷却用熱交換器30における本体部31の製作時と同様の手順で本体部31cを製作する。次いで、本体部31cの対向する両側面に、凹部32aの形成面を内向きにしてブラインヘッダー32,32をそれぞれ接合する。これにより、一方のブラインヘッダー32における貫通孔Hia32および凹部32aと、本体部31cにおける各ブラインプレート42cの各ブライン通過用溝と、他方のブラインヘッダー32における凹部32aおよび貫通孔Hoa32とが連通した状態となり、図11に示すように水素ガス冷却用熱交換器30Cが完成する。
この水素ガス冷却用熱交換器30Cを備えて構成された水素ガス給気システム100では、水素ガス冷却用熱交換器30における貫通孔Hia4からブラインを導入し、かつ貫通孔Hoa4からブラインを排出した動作に代えて、水素ガス冷却用熱交換器30Cにおける貫通孔Hia32からブラインを導入し、かつ貫通孔Hoa32からブラインを排出する動作となる点を除き、水素ガス冷却用熱交換器30を備えた水素ガス給気システム100における冷却処理と同様に水素ガスが冷却される。したがって、ベースプレート44に配設した接続具にブライン配管13c,13dを接続した水素ガス冷却用熱交換器30を備えた水素ガス給気システム100と同様にして、ブラインヘッダー32,32の貫通孔Hia32,Hoa32にブライン配管13c,13dを接続する構成を採用した水素ガス冷却用熱交換器30Cにおいても、水素ガス冷却用熱交換器30と同様の効果を奏することができる。
なお、図示および詳細な説明については省略するが、水素ガス冷却用熱交換器30〜30Cにおける「水素ガス配管を接続するための接続具」のような「ベースプレートに取り付ける接続具」に代えて、「水素ガス配管を接続可能な水素ガスヘッダー」を水素ガス冷却用熱交換器30Cにおけるブラインヘッダー32,32のように「本体部」の側方に取り付けて水素ガスを導入/排出させる構成を採用することもできる。
また、別個独立して設けられたN1=2個の溝形成領域A3を有する水素ガスプレート43,43a,43cを備えた水素ガス冷却用熱交換器30,30A,30Cの構成を例に挙げて説明したが、N1=3個以上の「第1の溝形成領域」を有する「第1の板体」を備えて「プレート式熱交換器」を構成することもできる(図示せず)。さらに、別個独立して設けられたN2=2個の溝形成領域A2を有するブラインプレート42aを備えた水素ガス冷却用熱交換器30Aの構成を例に挙げて説明したが、N2=3個以上の「第2の溝形成領域」を有する「第2の板体」を備えて「プレート式熱交換器」を構成することもできる(図示せず)。この場合、N1個の「第1の溝形成領域」の数、およびN2個の「第2の溝形成領域」の数をそれぞれ複数とする構成において、「第1の溝形成領域」の数、および「第2の溝形成領域」の数を異なる数とすることもできる。
なお、一方の溝形成領域A3内の水素ガス通過用溝内を通過する水素ガスを冷却するためのブライン、および他方の溝形成領域A3内の水素ガス通過用溝内を通過する水素ガスを冷却するためのブラインを同時に並行して通過させるブライン通過用溝を備えた水素ガス冷却用熱交換器30のような「プレート式熱交換器」においては、単一の「第2の溝形成領域」を有するように「第2の板体」を形成することもできる(図示せず)。
また、2個の積層体40a,40bを備えた水素ガス冷却用熱交換器30Bの構成を例に挙げて説明したが、3個以上の「積層体」を備えて「プレート式熱交換器」を構成することもできる(図示せず)。このような構成を採用する場合にも、隣接する「積層体」の間に「第3の板体」を挟み込んだ構成を採用することで、前述の水素ガス冷却用熱交換器30Bと同様の効果を奏することができる。
さらに、1個の溝形成領域A3内の水素ガス通過用溝内を通過する水素ガスを1個の溝形成領域A2内のブライン通過用溝内を通過するブラインと熱交換させて水素ガスを冷却する構成の水素ガス冷却用熱交換器30,30A〜30Cの構成を例に挙げて説明したが、例えば、いずれかの溝形成領域A3内の水素ガス通過用溝内を通過する水素ガスに関して、その水素ガス通過用溝の上流側において1個の溝形成領域A2内のブライン通過用溝内を通過するブラインと熱交換させて水素ガスを予備冷却し、その水素ガス通過用溝の下流側において他の1個の溝形成領域A2内のブライン通過用溝内を通過するブラインと熱交換させて水素ガスを本冷却する構成、すなわち、1個の溝形成領域A3内の水素ガス通過用溝内を通過する水素ガスを複数個の溝形成領域A2内のブライン通過用溝内を通過するブラインと順次熱交換させて水素ガスを冷却する構成を採用することもできる(図示せず)。
また、拡散接合処理の完了後に「貫通孔」に取り付けた「バルブ」を開状態に移行させて「真空断熱室」内を真空引きし、その後に「バルブ」を閉状態に移行させることで「断熱部」を構成した例について説明したが、製造時のみならず、使用時(水素ガスの冷却時)にも、真空引きを継続して行ったり、定期的に真空引きを行ったりすることにより、真空度が高い状態、すなわち、断熱性が高い状態を長期に亘って維持することができる。
また、前述の拡散接合時には、処理の開始に先立ち、接合対象の各「板体」を収容した処理室内を真空状態とする。したがって、「ベースプレート」等に「真空引き用の貫通孔」を設けず、拡散接合に先立って「真空断熱室」内(スリット内)が真空引きされた状態で各「板体」を拡散接合させることにより、「真空断熱室」内を真空状態として「断熱部」として機能させることもできる。
また、断熱部形成領域A4内に形成された真空断熱室Rs内を真空状態とすることで隣接する溝形成領域A3,A3間や隣接する溝形成領域A2,A2間を断熱する構成の水素ガス冷却用熱交換器30,30A〜30Cを例に挙げて説明したが、「第1の板体」や「第2の板体」の構成材料よりも熱伝導率が十分に低い各種の材料(気体、液体または固体)を断熱部形成領域A4における真空断熱室Rsに相当する部位に充填して、隣接する両「第1の溝形成領域」間や隣接する両「第2の溝形成領域」間を断熱する構成を採用することもできる。この場合、真空断熱室Rsに相当する部位に充填する固体の材料としては、ジルコニア等を含む低熱伝導性セラミックスなどを採用することができる。
さらに、複数枚の「第1の板体」と複数枚の「第2の板体」とを備えて構成した水素ガス冷却用熱交換器30,30A〜30Cの例について説明したが、1枚の「第1の板体」と複数枚の「第2の板体」とを備えて「プレート式熱交換器」を構成したり、複数枚の「第1の板体」と1枚の「第2の板体」とを備えて「プレート式熱交換器」を構成したり、1枚の「第1の板体」と1枚の「第2の板体」とを備えて「プレート式熱交換器」を構成したりすることもできる(いずれも図示せず)。
また、「第1の板体」および「第2の板体」が直接接するように積層されて本体部31,31a〜31cが形成された水素ガス冷却用熱交換器30,30A〜30Cの構成を例に挙げて説明したが、出願人が開示している熱交換器のように、「第1の板体(水素ガス通過溝用板)」と「第2の板体(ブライン通過溝用板)」の間に「仕切板」等の「任意の機能を有する板体」を挟み込んで「本体部」を構成することもできる(図示せず)。
また、「一元冷凍回路」の一例である冷凍回路11によって「冷却用流体」の一例であるブラインを冷却する構成の水素ガス冷却装置1において使用する水素ガス冷却用熱交換器30を例に挙げて説明したが、第1の冷凍回路(高温側冷凍回路)の蒸発器によって第2の冷凍回路(低温側冷凍回路)の凝縮器を冷却することで第2の冷凍回路の凝縮器において十分な量の冷媒を短時間で凝縮させると共に、第2の冷凍回路の蒸発器によって「冷却用流体」を冷却することで、水素ガスの冷却に適した十分に低い温度まで「冷却用流体」の温度を低下させ得る「二元冷凍回路」を備えた「水素ガス冷却装置」(図示せず)において使用する「プレート式熱交換器」としての水素ガス冷却用熱交換器30,30A〜30Cなどを使用することができる。
さらに、「冷却用流体」の一例であるブラインとの熱交換によって水素ガスを冷却する水素ガス冷却用熱交換器30,30A〜30Cの構成を例に挙げて説明したが、「冷却用流体」として、冷凍回路11等の冷媒(フロンガス等)を使用して水素ガスを冷却する冷却方式(いわゆる冷媒直冷式の冷却方式)において使用可能に「プレート式熱交換器」を製造する際にも、上記の水素ガス冷却用熱交換器30,30A〜30Cと同様の構成を採用することができる。加えて、「被冷却流体」としての水素ガス以外の任意の流体(液体または気体)を冷却可能に「プレート式熱交換器」を製造する際にも、上記の水素ガス冷却用熱交換器30,30A〜30Cと同様の構成を採用することができる。