この発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この明細書で引用する文献に記載された事項を実施形態に援用することができる。
実施形態は、OCT血管造影を用いて眼底の1以上の位置における血管の傾斜角度を求める。眼底の位置と血管の傾斜角度とを対応付けることにより、眼底血管の傾斜角度の分布(血管角度分布)が得られる。血管角度分布は、例えば、診断や他のモダリティのために用いることができる。他のモダリティの典型例としてOCT血流計測がある。
血管の傾斜角度は、任意の方向を基準(角度=0度)に定義されてよい。例えば、OCTにおけるA(Axial)スキャンの方向(Aラインの方向)を基準とすることができる。血管の傾斜角度の基準方向は、傾斜角度が測定される全ての位置について共通に設定されてもよいし、それぞれの位置について設定されてもよい。或いは、全ての位置を2以上の群に分割し、これら群のそれぞれについて基準方向を設定してもよい。
OCT血管造影では、眼底の実質的に同じ範囲が繰り返しスキャンされ、それにより得られた複数の2次元データセットを含む3次元データセットに基づいて血管強調画像が形成される。3次元データセットは、例えば、複数のB断面(横断面)をそれぞれ所定回数ずつ(例えば4回ずつ)スキャンして、各B断面における画像(Bモード画像)を所定枚数ずつ形成し、これらを同じ3次元座標系に埋め込むことによって(更に、それをボクセル化することによって)取得される。このような画像形成技術は既知である。
実施形態の眼科撮影装置は、OCTを実行するための光学系や駆動系や制御系やデータ処理系を含む。実施形態の眼科撮影装置は、例えばフーリエドメインOCTを実行可能に構成される。
フーリエドメインOCTには、スペクトラルドメインOCTと、スウェプトソースOCTとが含まれる。スペクトラルドメインOCTは、広帯域の低コヒーレンス光源と分光器とを用いて、干渉光のスペクトルを空間分割で取得し、それをフーリエ変換することによって被検眼を画像化する手法である。スウェプトソースOCTは、波長掃引光源(波長可変光源)と光検出器(バランスドフォトダイオード等)とを用いて、干渉光のスペクトルを時分割で取得し、それをフーリエ変換することによって被検眼を画像化する手法である。OCTの手法はフーリエドメインOCTには限定されず、タイムドメインOCTやアンファスOCTでもよい。
眼科撮影装置は、眼及び/又は他の部位を画像化するためのモダリティ(例えば、OCT以外のモダリティ)を含んでいてもよい。その典型例として、眼底カメラ、SLO、スリットランプ顕微鏡、眼科手術用顕微鏡などがある。また、眼科撮影装置は、眼及び/又は他の部位の特性を測定するための構成や、検査を行うための構成を含んでいてもよい。
実施形態に係る眼科撮影装置におけるデータ処理機能(演算機能、画像処理機能、制御機能等)は、例えば、プロセッサ、記憶装置等のハードウェアと、演算プログラム、画像処理プログラム、制御プログラム等のソフトウェアとが協働することによって実現される。なお、ハードウェアの一部は、眼科撮影装置と通信可能な外部装置に設けられていてよい。また、ソフトウェアの少なくとも一部は、眼科撮影装置に予め格納されてよく、及び/又は、外部装置に予め格納されてよい。
〈眼科撮影装置の第1実施形態〉
〈構成〉
眼科撮影装置の例示的な実施形態を説明する。眼科撮影装置の構成例を図1に示す。眼科撮影装置1は、OCTを用いて眼底の3次元データセットを収集し、この3次元データセットに基づいて血管強調画像を形成し、この血管強調画像に基づいて血管角度分布を求め、この血管角度分布に基づいて計測位置を設定し、この計測位置においてOCT血流計測を行う。このOCT血流計測では、眼科撮影装置1は、設定された計測位置において血管に交差する第1断面を繰り返し走査し、それにより収集された第1データと、当該計測位置における当該血管の傾斜角度とに基づいて、当該血管における血流状態を表す血流情報を生成する。
眼科撮影装置1は、血管角度分布、それから得られた情報、血流情報、それから得られた情報などを、表示デバイス2に表示することができる。表示デバイス2は眼科撮影装置1の一部であってもよいし、眼科撮影装置1に接続された外部装置であってもよい。また、眼科撮影装置1は、血管角度分布、それから得られた情報、血流情報、それから得られた情報などを、コンピュータ、記憶装置、眼科装置等に送ることができる。
眼科撮影装置1は、制御部10と、記憶部20と、データ収集部30と、データ処理部40と、操作部50と、正面画像取得部60とを含む。
〈制御部10〉
制御部10は、眼科撮影装置1の各部を制御する。制御部10はプロセッサを含む。「プロセッサ」は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路を意味する。制御部10は、例えば、記憶回路や記憶装置(記憶部20、外部装置等)に格納されているプログラムを読み出し実行することで、実施形態に係る機能を実現することができる。
また、制御部10は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット、専用線等の通信回線を介してデータの送受信を行うための通信デバイスを含んでよい。
〈収集制御部11〉
制御部10は収集制御部11を含む。収集制御部11は、データ収集部30を制御する。例えば、収集制御部11は、光源の制御、光スキャナの制御、測定光及び/又は参照光の光路長の変更、偏光調整、光量調整、フォーカス調整、固視位置の変更など、OCTを用いてデータを収集するための各種要素を制御する。収集制御部11が実行可能な処理の幾つかの例を後述する。
〈表示制御部12〉
制御部10は表示制御部12を含む。表示制御部12は、表示デバイス2に情報を表示するための制御を実行する。表示制御部12は、記憶部20に格納された情報に基づいて表示制御を実行することができる。
表示制御部12は、表示デバイス2に表示される情報に関する処理(生成、加工、合成等)を行うことができる。例えば、表示制御部12は、評価結果分布(又はそれから得られた情報)や、血管角度分布(又はそれから得られた情報)などを、正面画像取得部60により取得された画像(正面画像)に重ねて表示することができる。また、表示制御部12は、評価結果分布(又はそれから得られた情報)と正面画像との合成画像や、血管角度分布(又はそれから得られた情報)と正面画像との合成画像を生成することができる。
このような処理は、例えば、表示制御部12と他の要素(制御部10の他の要素、データ処理部40等)との連係により実行されてもよい。
〈記憶部20〉
記憶部20には各種情報が記憶される。本例においては、条件情報21が予め記憶される。なお、条件情報21は、外部装置に格納されてもよい。
〈条件情報21〉
条件情報21は、血管の傾斜角度に関する1以上の条件を含み、後述の計測位置設定部43(評価処理部431)によって参照される。条件情報21に含まれる条件の幾つかの例を説明する。
条件の第1の例は、OCT血流計測のための角度条件情報である。OCT血流計測ではドップラーOCT信号を利用するため、測定光の投射方向(Aスキャン方向)と血流方向との間の角度が適切でなければ良好な信号が得られない。血流方向は、測定光の投射位置における血管の向きと実質的に同一と考えられる。よって、OCT血流計測では、Aスキャン方向に対する血管の傾斜角度を評価することが重要である。
角度条件情報には、Aスキャン方向に対する血管の傾斜角度を評価するための1以上の条件が含まれている。条件は、傾斜角度の閾値及び/又は範囲を含んでよい。また、角度条件情報は、被検眼に関する条件や、被検眼と眼科撮影装置1との関係についての条件を含んでよい。被検眼に関する条件の例として瞳孔径がある。被検眼と眼科撮影装置1との関係についての条件の例として、被検眼と眼科撮影装置1の光学系との相対位置(例えば、被検眼の軸と光学系の軸との変位)がある。
角度条件情報の例を図2に示す。角度条件情報21aは条件情報21に含まれている。角度条件情報21aは、例えば、評価欄と角度条件欄とを含むテーブル情報である。評価欄には、評価のランクとして、「H」、「M」及び「N」が与えられている。角度条件欄には、血管の傾斜角度に関する条件として、Hランクに対応する角度条件「75〜80度」と、Mランクに対応する角度条件「75〜80度に補正可能」と、Nランクに対応する角度条件「75〜80度に補正不可能」とが与えられている。
評価のランクは、OCT血流計測への適性のランクを表す。例えば、Hランクは適性「高」を表し、Mランクは適性「中」を表し、Nランクは適性「無」を表す。
Hランクに対応する角度条件は、OCT血流計測に高程度に適した血管傾斜角度(Aスキャン方向に対する角度)を表す。本例では、例えば実験的又は臨床的に得られた角度条件「75〜80度」がHランクに割り当てられる。
Mランクに対応する角度条件は、OCT血流計測に中程度に適した血管傾斜角度を表す。本例では、所定の補正処理によって好適な角度条件「75〜80度」を実現可能であるという条件が、Mランクに割り当てられる。補正処理については後述する。
Nランクに対応する角度条件は、OCT血流計測に適さない血管傾斜角度を表す。本例では、所定の補正処理によっても好適な角度条件「75〜80度」を実現不可能であるという条件が、Nランクに割り当てられる。
Mランク及びNランクの判定に用いられる補正処理について説明する。補正処理は、例えば、被検眼の軸に対する測定光の経路のシフト(相対位置の変化)を含む。このシフトの量は瞳孔径に制限される。瞳孔径は、被検眼の測定値でも標準値(統計値等)でもよい。また、散瞳剤の投与後の瞳孔径や、散瞳剤の投与による推定瞳孔径でもよい。
例示的な補正処理において、評価処理部431は、瞳孔径を制約条件として測定光の経路を被検眼の軸に対してシフトさせたときに、好適な角度条件「75〜80度」が実現されるか否か判定する。被検眼の軸に対する測定光の経路のシフトと、測定光の投射方向(Aスキャン方向)の変化との関係について、以下に説明する。なお、前述したように、血管の傾斜角度はAスキャン方向を基準として定義されるので、Aスキャン方向の変化は血管の傾斜角度の変化と同値である。
図3を参照する。符号LS0及びLS1のそれぞれは、測定光の経路(測定経路)を示す。被検眼Eの外部において、測定経路LS0及びLS1は互いに平行であり、これらに直交する方向に距離dだけ離間している。つまり、測定経路LS1は、測定経路LS0に対して距離dだけシフトした経路である。また、被検眼E内における測定光路LS0の長さをTとする。
このとき、測定経路LS0と測定経路LS1とが眼底において成す角度Δθは、次式によって算出される:Δθ=arctan(d/T)。また、角度Δθの符号、つまり、血管傾斜角度の補正量の符号(+/−)は、測定経路LS0に対する測定経路LS1のシフト方向に応じて決定される。シフト方向が血管の長さ方向に沿う場合(より一般に、シフトを表すベクトルが血管の長さ方向の成分を含む場合や、当該成分が十分に大きい場合)、血管傾斜角度の補正が行われる。一方、シフト方向が血管の長さ方向に沿わない場合(より一般に、シフトを表すベクトルが血管の長さ方向の成分を含まない場合や、当該成分が十分に小さい場合)、血管傾斜角度の補正は行われない。
条件の第2の例を説明する。第2の例は、被検眼を診断するための局所的角度分布情報である。診断の対象となる疾患には、血管の(特徴的な)変形を生じる疾患が含まれる。局所的角度分布情報には、血管の特徴的な変形に対応する血管傾斜角度の局所的な分布が含まれる。典型的な例として、腫瘍や体液漏出等によって眼底血管が角膜方向又はその反対方向に突出することがある。この突出は、例えば、Aスキャン方向に対する傾斜角度が漸次的に減少する区間と漸次的に増加する区間とが傾斜角度90度の位置を挟んで隣接しているような局所的分布として表現される。局所的角度分布情報には、このような特徴的局所的分布が少なくとも1つ含まれている。
局所的角度分布情報をOCT血流計測に利用することができる。例えば、角度条件情報21a等を用いた評価において、局所的角度分布情報が表す条件を満足する位置をOCT血流計測の対象位置として選択することや、局所的角度分布情報が表す条件を満足する位置をOCT血流計測の対象位置から除外することができる。
条件の第3の例を説明する。第3の例は、被検眼を診断するための経時的角度変化情報である。第2の例の局所的角度分布情報は、(或る時点における)血管の形状を表す。これに対し、第3の例の経時的角度変化情報は、血管の形状の経時変化を表す。典型的な例として、腫瘍や体液漏出等の進行とともに血管の変形(前述の突出)も増加する。このような突出の変化は、例えば、傾斜角度の漸次的減少区間の幅の変化、漸次的増加区間の幅の変化、漸次的減少区間における高低差の変化、漸次的増加区間における高低差の変化、漸次的減少区間における傾きの変化、漸次的増加区間における傾きの変化などとして表現される。経時的角度変化情報には、このような特徴的変化が少なくとも1つ含まれている。
経時的角度変化情報をOCT血流計測に利用することができる。例えば、角度条件情報21a等を用いた評価において、経時的角度変化情報が表す条件を満足する位置をOCT血流計測の対象位置として選択することや、経時的角度変化情報が表す条件を満足する位置をOCT血流計測の対象位置から除外することができる。
〈データ収集部30〉
データ収集部30は、被検眼に対してOCTを実行することにより3次元データセットを収集する。データ収集部30は、例えばスペクトラルドメインOCT又はスウェプトソースOCTを利用した計測を実行するための構成を含む。この構成には、従来と同様に、光学系、駆動系、データ収集システム(DAQ)、制御系などが含まれる。この光学系は、例えば、干渉光学系と光スキャナと光検出器とを含む。干渉光学系は、光源から出力された光を測定光と参照光とに分割し、この測定光を被検眼に投射し、被検眼からの測定光の戻り光を参照光と重ね合わせて干渉光を生成する。光スキャナは、ガルバノスキャナ等を含み、測定光を偏向する。光検出器は、干渉光学系により生成された干渉光(のスペクトル)を検出する。
OCT血管造影において、データ収集部30は、被検眼の3次元領域をスキャンする。そのときのスキャンモードは、例えばラスタースキャン(3次元スキャン)である。このラスタースキャンは、例えば、複数のB断面のそれぞれを所定回数ずつスキャンするように、つまり、複数のB断面を所定回数ずつ順次にスキャンするように実行される。データ収集部30により収集された3次元データセットはデータ処理部40に送られる。
OCT血流計測において、データ収集部30は、注目血管に交差する注目断面を繰り返し走査する。そのときのスキャンモードは、例えばラインスキャン(Bスキャン)である。このラインスキャンは、例えば、所定の周波数で繰り返し実行される。各ラインスキャンにおいてデータ収集部30により収集されたデータはデータ処理部40に送られる。
OCT血流計測において、更に、データ収集部30は、注目断面における注目血管の傾斜角度を求めるためのスキャンを行うことができる。このスキャンは、例えば、注目血管に交差する2つの断面に対して実行される。ここで、2つの断面を注目断面の近傍に配置することができる。或いは、2つの断面の一方を注目断面の近傍に配置しつつ、他方は注目断面であってよい。この場合、上記した注目断面の繰り返しスキャンにより得られたデータを利用することができる。つまり、OCT血流計測で実行されるスキャンは、注目断面の繰り返しスキャンと他の2つの断面のスキャンとの組み合わせでもよいし、注目断面の繰り返しスキャンと他の1つの断面のスキャンとでもよい。
注目断面における注目血管の傾斜角度を求めるためのスキャンの態様は、これらに限定されない。例えば、3以上の断面をスキャンすることができる。或いは、注目断面を含む3次元領域をスキャンすることができる(3次元スキャン)。他の例として、注目断面に交差し、且つ、注目血管に沿った断面をスキャンすることができる。
〈データ処理部40〉
データ処理部40は、各種のデータ処理を行う。例えば、データ処理部40は、被検眼の画像データに対して画像処理や解析処理を施す。その典型例として、データ処理部40は、3次元コンピュータグラフィクス(3DCG)等のレンダリングを実行する。データ処理部40は、画像形成部41と、血管角度分布取得部42と、計測位置設定部43と、血流情報生成部44とを含む。
〈画像形成部41〉
画像形成部41は、データ収集部30により収集されたデータセットに基づいて、OCT画像を形成する。例えば、画像形成部41は、データ収集部30により収集された3次元データセットに基づいて、各B断面について複数の断面像(Bスキャン画像)を形成する。画像形成処理は、例えば従来のOCT技術と同様に、ノイズ除去(ノイズ低減)、フィルタ処理、FFT(Fast Fourier Transform)などを含む。
画像形成部41は、これら断面像を単一の3次元座標系に埋め込むことによりスタックデータを形成することができる。このスタックデータにおいては、各B断面に所定枚数の断面像が割り当てられている。更に、画像形成部41は、このスタックデータに対して補間処理等を施すことによりボリュームデータ(ボクセルデータ)を形成することができる。このボリュームデータについても、各B断面に相当する位置に所定数のボクセル群が割り当てられている。スタックデータやボリュームデータは、3次元データセットの例である。
画像形成部41は、3次元データセットに各種のレンダリングを施すことで、Bモード画像(縦断面像、軸方向断面像)、Cモード画像(横断面像、水平断面像)、プロジェクション画像、シャドウグラムなどを形成することができる。Bモード画像やCモード画像のような任意断面の画像は、指定された断面上の画素(ピクセル、ボクセル)を3次元データセットから選択することにより形成される。プロジェクション画像は、3次元データセットを所定方向(Z方向、深さ方向、Aスキャン方向)に投影することによって形成される。シャドウグラムは、3次元データセットの一部(例えば特定層に相当する部分データ)を所定方向に投影することによって形成される。Cモード画像、プロジェクション画像、シャドウグラムのような、被検眼の正面側を視点とする画像を正面画像と呼ぶ。
画像形成部41は、レンダリングの他にも各種の画像処理を実行することが可能である。例えば、特定の組織や組織境界を求めるためのセグメンテーションや、組織のサイズ(層厚、体積等)を求めるためのサイズ解析などがある。セグメンテーションにより特定層(又は特定の層境界)が求められた場合、その特定層が平坦になるようにBモード画像や正面画像を再構築することが可能である。そのような画像を平坦化画像と呼ぶ。
画像形成部41は、血管強調画像(アンギオグラム)を形成することができる。血管強調画像は、OCTデータを解析することで血管に相当する画像領域(血管領域)を特定し、この血管領域の表現態様を変更することでそれを強調した画像である。血管領域の特定には、被検眼の実質的に同じ範囲を繰り返しスキャンして得られた複数のOCTデータが用いられる。実施形態においては、平面画像としての血管強調画像を表示するために3次元データセットが用いられる。
血管強調画像は、例えば、OCTスキャンされた眼底の3次元領域における血管の分布(つまり、血管の3次元的な分布)を表現する。血管強調画像を形成するための手法には幾つかの種類がある。そのための典型的な手法を説明する。この処理には、被検眼の複数のB断面のそれぞれを繰り返しスキャンすることにより、時系列に並んだ複数のBモード画像をB断面ごとに含む3次元データセットが用いられる。なお、実質的に同じB断面を繰り返しスキャンするための手法として、固視やトラッキングがある。
血管強調画像を形成する処理では、まず、複数のBモード画像の位置合わせがB断面ごとに実行される。この位置合わせは、例えば、公知の画像マッチング技術を用いて行われる。その典型例として、各Bモード画像における特徴領域の抽出と、抽出された複数の特徴領域の位置合わせによる複数のBモード画像の位置合わせとを実行することができる。
続いて、位置合わせされた複数のBモード画像の間で変化している画像領域を特定する処理が行われる。この処理は、例えば、異なるBモード画像の間の差分を求める処理を含む。各Bモード画像は、被検眼の形態を表す輝度画像データであり、血管以外の部位に相当する画像領域は実質的に不変であると考えられる。一方、干渉信号に寄与する後方散乱が血流によってランダムに変化することを考慮すると、位置合わせされた複数のBモード画像の間で変化が生じた画像領域(例えば、差分がゼロでない画素、又は差分が所定閾値以上である画素)は血管領域であると推定することができる。
このようにして特定された画像領域には、それが血管領域である旨を示す情報が割り当てられる。複数のB断面について上記処理を実行することにより、3次元的に分布した血管領域が得られる。このような3次元血管強調画像をレンダリングすることで、血管分布を表す正面画像、任意断面の画像、任意範囲のシャドウグラムなどが生成される。
血管強調画像を形成する処理はこれに限定されない。例えば、ドップラーOCTを利用した従来の手法で血管領域を特定することや、従来の画像処理手法を用いて血管領域を特定することが可能である。また、部位に応じて異なる手法を用いることにより、部位ごとに血管領域を特定することが可能である。例えば、網膜については上記の典型的な手法やドップラーOCTの手法を用いて血管領域を特定し、脈絡膜については画像処理手法を用いて血管領域を特定することができる。
〈血管角度分布取得部42〉
血管角度分布取得部42は、画像形成部41により形成された3次元血管強調画像に基づいて、血管角度分布を求める。この血管角度分布は、眼底の1以上の位置における血管の傾斜角度を表し、典型的には2以上の位置における血管の傾斜角度を表す。血管の傾斜角度の求め方の例を以下に説明する。なお、傾斜角度が求められる位置は、例えば、3次元データセットにおけるAスキャン位置であってもよいし、隣接する2つのAスキャン位置の間の位置であってもよい。
第1の例において、血管角度分布取得部42は、3次元血管強調画像における血管領域の細線化を行うことで血管軸線モデルを作成する。この処理は、公知の細線化アルゴリズムを用いて行うことができる。
血管角度分布取得部42は、この血管軸線モデルの任意の位置(注目位置)における傾きを算出することにより、注目位置における血管傾斜角度を求めることができる。注目位置において血管軸線モデルが微分可能である場合、血管角度分布取得部42は、微分演算によって傾きを算出することができる。他方、注目位置において血管軸線モデルが微分不可能である場合には、例えば、注目位置における血管軸線の位置と、その近傍位置(1以上の近傍位置)における血管軸線の位置とに基づいて、注目位置における傾き(の近似値)を算出することができる。
第2の例について説明する。図4を参照する。符号B0は、血管傾斜角度が算出される注目位置を含む断面(注目断面)を表す断層像(注目断層像)を示す。注目断層像B0には、血管領域V0が描出されている。符号B11及びB12は、注目断面B0の近傍に位置する2つの断面(近傍断面)を表す2つの断層像(近傍断層像)を示す。近傍断層像B11には、血管領域V0と同じ血管(注目血管)の他の断面における血管領域V11が描出されている。同様に、近傍断層像B12には、注目血管の他の断面における血管領域V12が描出されている。
ここで、例えば、ラベリングやリージョングローイング等の公知の処理を3次元血管強調画像に適用することにより、注目血管の位置(分布)を把握して近傍断面を設定することができる。なお、注目断面及び近傍断面の少なくとも一方をユーザが設定するための表示及びグラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)を提供することも可能である。
血管角度分布取得部42は、注目断層像B0と近傍断層像B11及びB12とに基づいて、注目断面における注目血管の傾きを算出する。なお、参照される近傍断層像の個数は2つに限定されず、1以上の任意個数であってよい。
血管角度分布取得部42は、血管領域V0、V11及びV12と断面間距離とに基づいて、注目断面における注目血管の傾きを算出する。断面間距離は、近傍断層像B11と近傍断層像B12との間の距離を含んでよい。また、断面間距離は、近傍断層像B11と注目断層像B0との間の距離、及び、近傍断層像B12と注目断層像B0との間の距離の少なくとも一方を含んでよい。近傍断層像B11(B12)と注目断層像B0との間隔をLとする。
図4に示すAスキャン方向(下方を示す矢印が指す方向)は、例えば、注目断層像B0に含まれるAスキャン像(例えば、注目断層像B0に含まれる複数のAスキャン像の中央に位置するAスキャン像)の向きを示す。本例において、注目断面におけるAスキャン方向と注目血管の向きAとが成す角度を、当該注目断面における当該注目血管の傾斜角度として定義することができる。
1つの例において、血管角度分布取得部42は、3つの血管領域V0、V11及びV12の位置関係に基づいて、注目断面における注目血管の向きAを算出することができる。この位置関係は、例えば、3つの血管領域V0、V11及びV12を結ぶことによって得られる。具体的には、血管角度分布取得部42は、3つの血管領域V0、V11及びV12のそれぞれの特徴点を特定し、これら特徴点を結ぶ。この特徴点としては、中心位置(軸線位置)、重心位置、最上部などがある。また、これら特徴点の結び方としては、線分で結ぶ方法、近似曲線(スプライン曲線、ベジェ曲線等)で結ぶ方法などがある。
更に、血管角度分布取得部42は、これら特徴点を結ぶ線に基づいて向きAを算出する。線分が用いられる場合、血管角度分布取得部42は、例えば、注目断層像B0内の血管領域V0の特徴点と近傍断層像B11内の血管領域V11の特徴点とを結ぶ第1線分の傾きと、血管領域V0の当該特徴点と近傍断層像B12内の血管領域V12の特徴点とを結ぶ第2線分の傾きとに基づいて、向きAを算出することができる。この算出処理の例として、2つの線分の傾きの平均値を求めることができる。また、近似曲線で結ぶ場合の例として、近似曲線と注目断面との交差位置における近似曲線の傾きを求めることができる。
この例では、3つの断面における血管領域を考慮しているが、2つの断面の血管領域を考慮して傾きを求めることも可能である。具体例として、近傍断層像B11内の血管領域V11と近傍断層像B12内の血管領域V12とに基づいて、注目断面における注目血管の向きAを求めることができる。また、近傍断層像B11内の血管領域V11と注目断層像B0内の血管領域V0とに基づいて、注目断面における注目血管の向きAを求めることもできる。例えば、上記の第1線分又は第2線分の傾きを求め、これを注目血管の向きAとして採用することができる。
また、上記の例では血管の向きを1つだけ求めてそれを向きAとして採用しているが、血管領域V0中の2以上の位置(又は領域)についてそれぞれ傾きを求めてもよい。この場合、得られた2以上の傾きの値を別々に用いることもできるし、これら傾きの値から統計的に得られる1つの値(例えば平均値)を向きAとして用いることもできる。
〈計測位置設定部43〉
計測位置設定部43は、血管角度分布取得部42により取得された血管角度分布に基づいて、OCT血流計測の対象となる計測位置を設定する。血管角度分布は、眼底の1以上の位置における血管の傾斜角度を表し、典型的には2以上の位置における血管の傾斜角度を表す。傾斜角度は、例えば、その位置におけるAスキャン方向(OCT測定光の入射方向)を基準として定義される。
計測位置設定部43は、例えば、血管角度分布に表された傾斜角度の少なくとも一部について、その傾斜角度がOCT血流計測のために好適であるか否か評価する機能、及び/又は、その傾斜角度がOCT血流計測においてどの程度好適であるか評価する機能を備えていてよい。このような評価を行うための構成の例として、評価処理部431を設けることができる。
〈評価処理部431〉
評価処理部431は、血管角度分布に含まれる傾斜角度に基づいて、OCT血流計測の対象位置としての適性を評価する。より一般に、評価処理部431は、血管角度分布取得部42により取得された傾斜角度が所定条件を満足するか判定することができる。また、評価処理部431は、血管角度分布における複数の位置のうち、所定条件を満足する眼底の1以上の位置を特定することができる。所定条件は条件情報21に含まれている。
角度条件情報が適用される場合、評価処理部431は、血管角度分布に表された傾斜角度と角度条件情報とを比較することにより、この傾斜角度(これに対応する眼底の位置)がOCT血流計測に適しているか評価することができる。このような処理によれば、この血管角度分布に含まれる複数の位置の少なくとも一部に対し、評価のランクを割り当てることができる。
例えば、図2に示す角度条件情報21aが適用される場合、血管角度分布に表された傾斜角度(これに対応する眼底の位置)に対し、Hランク、Mランク及びNランクの少なくとも1つが割り当てられる。典型的には、Hランクの位置、Mランクの位置、及びNランクの位置をそれぞれ特定することができる。また、OCT血流計測への適性が高程度であるHランクの位置のみを割り当てることができる。また、OCT血流計測への適性が中程度であるMランクの位置のみを割り当てることができる。また、OCT血流計測に適さないNランクの位置のみを割り当てることができる。
局所的角度分布情報が評価に用いられる場合、評価処理部431は、例えば、血管角度分布取得部42により取得された血管角度分布と局所的角度分布情報とに基づいて、特徴的な変形が生じている血管の部位(血管が特徴的な形状を有する部位)を特定することができる。前述したように、特徴的な変形は、例えば腫瘍や体液漏出に起因する突出である。また、血管の蛇行や、血管径の局所的変化などを特徴的な変形として検出することも可能である。また、このような処理の結果を、OCT血流計測のための適性の評価に利用することができる。
経時的角度変化情報が評価に用いられる場合、評価処理部431は、例えば、血管角度分布取得部42により取得された血管角度分布と経時的角度変化情報とに基づいて、血管形状の経時変化が特徴的である部位を特定することができる。前述したように、血管形状の特徴的な経時変化は、例えば腫瘍や体液漏出等の進行に起因する。また、血管の蛇行状態の経時変化や、血管径の経時的変化などを特徴的な経時変化として検出することも可能である。また、このような処理の結果を、OCT血流計測のための適性の評価に利用することができる。
ここで、測定経路のシフト(図3参照)が適用される場合、眼底に対する測定光の入射角の変化により、局所的角度分布情報や経時的角度変化情報との比較の確度が低下するおそれがある。例えば、眼底の同じ位置を対象とする場合でも、測定経路をシフトさせる場合とさせない場合とでは、血管の見かけの傾斜角度が変化し、局所的角度分布情報との比較結果も変化してしまう。同様に、血管の経時変化を検出する場合において、測定経路をシフトさせて得られた傾斜角度と、シフトさせずに得られた傾斜角度とを比較することは、適切とは言い難い。
このような事情に鑑み、例えば、測定経路のシフトに応じてOCT血管造影を再度行うことや、過去と同じシフト状態を再現してOCT計測を行うことや、シフト量に応じて血管角度分布を補正することが可能である。シフト量に応じた血管角度分布(傾斜角度の計測値)の補正は、例えば、図3に示す角度Δθをキャンセルするように実行することができる。
なお、装置光学系と被検眼との位置合わせ(アライメント)を行うための公知の構成を利用することで、測定経路のシフトの有無やシフト量を検出することができる。例えば、(正面画像取得部60により)被検眼の前眼部を撮影して得られた前眼部像中の特徴点(瞳孔中心等)の位置からアライメント状態(シフトの有無、シフト量)を検出することができる。或いは、角膜に対して斜め方向から投射した光束の反射光を検出して角膜頂点位置を求め、これからアライメント状態を検出することもできる。
評価処理部431により取得された評価結果は、OCT血流計測が行われる位置(計測位置)の設定に利用される。例えば、計測位置設定部43は、傾斜角度が所定条件を満足するか判定された1以上の位置を計測位置として設定することができる。
図2に示す角度条件情報21aが適用された場合、例えば、Hランクと判定された1以上の位置が計測位置として設定される。このとき、Hランクと判定された1以上の位置を順位付けすることにより(1又は2以上の)位置を選択することもできる。この順位付けは、例えば、各位置における傾斜角度の値に基づき行うこともできるし、他の情報に基づき行うこともできる。他の情報の例として、局所的角度分布情報に基づく評価結果、経時的角度変化情報に基づく評価結果、血管の太さ、血管の深さ位置、近傍の血管との位置関係、血管の種別(動脈、静脈等)、血管の分岐状態、病変部との位置関係、診断名(確定診断名、疑い診断名等)、過去の計測位置などがある。なお、これら情報を他の処理において参照することも可能である。
Hランクと判定された位置が無い場合には、例えば、Mランクと判定された位置のうちから計測部位を設定することができる。或いは、Hランクと判定された位置が無い場合、又は、Hランクと判定された位置もMランクと判定された部位も無い場合、OCT血管造影及び血管角度分布の取得を再度行うことや、これらを再度行うことを促すことが可能である。
〈血流情報生成部44〉
血流情報生成部44は、OCT血流計測のために動作する。血流情報生成部44は、OCT血流計測のためにデータ収集部30により収集されたデータと、血管の傾斜角度とに基づいて、当該血管における血流状態を表す血流情報を生成する。
データ収集部30により収集されたデータは、注目血管に交差する注目断面を繰り返し走査することにより収集されたデータ(第1データ)を少なくとも含み、注目血管に交差し、且つ、注目断面と異なる1以上の断面(注目断面の近傍の断面)を走査することにより得られたデータ(第2データ)を更に含んでよい。第2データが含まれない場合には、例えば、OCT血流計測とは別途に取得された、注目断面の位置又はその近傍位置における注目血管の傾斜角度を用いることができる。その例として、血管角度分布取得部42により求められた傾斜角度(血管角度分布)を用いることが可能である。
血流情報生成部44が実行する処理の例を説明する。典型的な例において、血流情報生成部44は、データ収集部30により収集されたデータに基づいて、眼底の断層像と位相画像とを形成する。
OCT血流計測では、眼底に対して2種類の走査(補助的走査及び本走査)を行う。補助的走査は、注目断面と異なる1以上の断面(注目断面の近傍の断面)を走査して第2データを収集するために実行される。典型的な補助的走査では、注目血管に交差する2以上の断面が測定光で走査される。補助的走査により取得されたデータは、注目断面における注目血管の傾斜角度を求めるために用いられる。一方、本走査は、注目血管に交差する注目断面を測定光で反復的に走査して第1データを収集するために実行される。補助的走査が行われる断面は、注目断面の近傍に配置される。本走査は、OCTを用いたドップラー計測である。
補助的走査及び本走査の対象断面は、例えば、注目血管の走行方向に対して直交するように向き付けられる。また、補助的走査の対象断面と注目断面との間の距離(断面間距離)は、事前に設定されるか、或いは、検査ごとに設定される。後者の例として、注目断面又はその近傍における注目血管の曲率や、検査精度等の所定のファクターに基づいて、断面間距離を設定することが可能である。また、ユーザが所望の断面間距離を設定するようにしてもよい。
本走査は、患者の心臓の少なくとも1心周期の間にわたって実行されることが望ましい。それにより、心臓の全ての時相における血流情報が得られる。本走査の実行時間は、予め設定された一定の時間であってもよいし、患者ごとに又は検査ごとに設定された時間であってもよい。
血流情報生成部44は、例えば、注目断面の近傍に設定された2つの補助的断面に対する補助的走査により収集されたデータに基づいて、第1補助的断面の形態を表す断層像と、第2補助的断面の形態を表す断層像とを形成する。このとき、加算平均等の技術を利用して画質向上を図ることや、各補助的断面の2以上の断層像から最適な1枚を選択することが可能である。
更に、血流情報生成部44は、注目断面に対する本走査(反復的走査)により収集されたデータに基づいて、注目断面の形態の時系列変化を表す断層像群を形成する。この処理は、例えば、走査の反復ごとに収集されたデータから断層像を形成することにより実現される。或いは、所定反復数ごとに収集された2以上のデータから2以上の断層像を形成し、これらの平均(加算平均、移動平均等)を求めることによって画質の向上を図ってもよい。
血流情報生成部44が実行する処理は、例えば従来のOCT技術と同様に、ノイズ除去(ノイズ低減)、フィルタ処理、FFT(Fast Fourier Transform)などを含む。なお、ここで説明した断層像形成処理は、画像形成部41が実行する処理と同様である。したがって、断層像形成処理を画像形成部41にて行うことができる。
血流情報生成部44は、注目断面に対する本走査により収集されたデータに基づいて、注目断面における位相差の時系列変化を表す位相画像を形成する。この処理に用いられるデータは、注目断面の断層像(群)を形成するために用いられるデータと同じである。よって、注目断面の断層像と位相画像との間には自然な位置対応関係があり、レジストレーションは容易である。
位相画像の形成方法の例を説明する。典型的な例において、位相画像は、隣り合うAライン複素信号(隣接する走査点に対応する信号)の位相差を算出することにより得られる。換言すると、この例の位相画像は、注目断面の断層像の各画素について、その画素の画素値(輝度値)の時系列変化に基づき形成される。任意の画素について、血流情報生成部44は、その輝度値の時系列変化のグラフを考慮する。血流情報生成部44は、このグラフにおいて所定の時間間隔Δtだけ離れた2つの時点t1及びt2(t2=t1+Δt)の間における位相差Δφを求める。そして、この位相差Δφを時点t1(より一般に2つの時点t1及びt2の間の任意の時点)における位相差Δφ(t1)として定義する。予め設定された多数の時点のそれぞれについてこの処理を実行することで、当該画素における位相差の時系列変化が得られる。
位相画像は、各画素の各時点における位相差の値を画像として表現したものである。この画像化処理は、例えば、位相差の値を表示色や輝度で表現することで実現できる。このとき、時系列に沿って位相が増加したことを表す色(例えば赤)と、減少したことを表す色(例えば青)とを違えることができる。また、位相の変化量の大きさを表示色の濃さで表現することもできる。このような表現方法を採用することで、血流の向きや大きさを色や濃度で提示することが可能となる。以上の処理を各画素について実行することにより位相画像が形成される。
なお、位相差の時系列変化は、上記の時間間隔Δtを十分に小さくして位相の相関を確保することにより得られる。このとき、測定光の走査において断層像の分解能に相当する時間未満の値に時間間隔Δtを設定したオーバーサンプリングが実行される。
血流情報生成部44は、例えば、血管領域特定処理と、傾斜角度算出処理と、血流情報生成処理とを実行することができる。血流情報生成処理は、例えば、血流速度算出処理と、血管径算出処理と、血流量算出処理とを含んでよい。
血管領域特定処理において、血流情報生成部44は、注目血管に対応する断層像中の血管領域を特定する。更に、血流情報生成部44は、注目血管に対応する位相画像中の血管領域を特定する。血管領域の特定は、各画像の画素値を解析することにより行われる(例えば閾値処理)。断層像中の血管領域と、断層像と位相画像とのレジストレーション結果とに基づいて、位相画像中の血管領域を特定するようにしてもよい。
傾斜角度算出処理において、血流情報生成部44は、補助的走査により取得されたデータに基づいて、注目断面における注目血管の傾斜角度を算出する。例えば、血流情報生成部44は、断面間距離と血管領域の特定結果とに基づいて、注目断面における注目血管の傾斜角度を算出することができる。この処理は、血管角度分布取得部42が実行する処理(図4参照)と同様である。なお、血管角度分布取得部42により取得された傾斜角度をOCT血流計測に用いる場合には、傾斜角度算出処理を実行する必要はない。
血流情報生成処理において、血流情報生成部44は、本走査(ドップラーOCT)により取得されたデータ(位相画像)と、傾斜角度算出処理により算出された血管の傾斜角度(又は、血管角度分布取得部42により求められた傾斜角度など)とに基づいて、注目血管に関する血流情報を生成する。前述のように、典型的な例の血流情報生成処理は、血流速度算出処理と、血管径算出処理と、血流量算出処理とを含む。
血流情報生成部44は、位相画像として得られる位相差の時系列変化に基づいて、注目血管内を流れる血液の注目断面における血流速度を算出することができる。本処理により算出される値は、或る時点における血流速度でもよいし、血流速度の時系列変化(血流速度変化情報)でもよい。前者の場合、例えば心電図の所定の時相(例えばR波の時相)における血流速度を選択的に取得することが可能である。また、後者における時間の範囲は、注目断面を走査した時間の全体又は任意の一部である。
血流速度変化情報が得られた場合、血流情報生成部44は、当該時間の範囲における血流速度の統計値を算出することができる。この統計値としては、平均値、標準偏差、分散、中央値、最大値、最小値、極大値、極小値などがある。また、血流速度の値についてのヒストグラムを作成することもできる。
血流情報生成部44は、前述のようにドップラーOCTの手法を用いて血流速度を算出することができる。血流速度の算出には、例えば次の関係式が用いられる。
Δf:測定光の散乱光が受けるドップラーシフト
n:媒質(血液)の屈折率
v:媒質の流速(血流速度)
θ:測定光の入射方向と媒質の流れの方向とが成す角度(傾斜角度)
λ:測定光の中心波長
典型的な例において、媒質の屈折力nと測定光の中心波長λはそれぞれ既知であり、ドップラーシフトΔfは位相差の時系列変化から得られ、傾斜角度θは傾斜角度算出処理又は血管角度分布から得られる。血流情報生成部44は、これらの値を上記関係式に代入することにより、血流速度vを算出することができる。
血管径算出処理において、血流情報生成部44は、注目断面における注目血管の径を算出する。この算出方法の例として、眼底の正面画像を用いる第1の算出方法と、断層像を用いる第2の算出方法がある。
第1の算出方法が適用される場合、注目断面の位置を含む眼底の部位の撮影が予め行われる。この眼底撮影は、例えば正面画像取得部60により行われる。或いは、過去に取得されて保存された眼底の正面画像を読み出してもよい。
血流情報生成部44は、撮影画角(撮影倍率)、ワーキングディスタンス、眼球光学系の情報など、画像上のスケールと実空間でのスケールとの関係を決定する各種ファクターに基づいて、眼底の正面画像におけるスケールを設定する。このスケールは実空間における長さを表す。具体例として、このスケールは、隣接する画素の間隔と、実空間におけるスケールとを対応付けたものである(例えば画素の間隔=10μm)。なお、上記ファクターの様々な値と、実空間でのスケールとの関係を予め算出し、この関係をテーブル形式やグラフ形式で表現した情報を記憶しておくことも可能である。この場合、上記ファクターに対応するスケールが選択的に適用される。
血流情報生成部44は、このスケールと血管領域に含まれる画素とに基づいて、注目断面における注目血管の径、つまり血管領域の径を算出する。具体例として、血流情報生成部44は、血管領域の様々な方向の径の最大値や平均値を求めることができる。或いは、血流情報生成部44は、血管領域の輪郭を円近似又は楕円近似し、その円又は楕円の径を求めることができる。なお、血管径が決まれば血管領域の面積を(実質的に)決定することができるので、血管径を求める代わりに当該面積を算出するようにしてもよい。
第2の算出方法について説明する。第2の算出方法では、注目断面における眼底の断層像が用いられる。この断層像は、本走査に基づく断層像でもよいし、これとは別に取得されたものでもよい。この断層像におけるスケールは、測定光の走査態様に応じて決定される。注目断面の長さは、ワーキングディスタンス、眼球光学系の情報など、画像上のスケールと実空間でのスケールとの関係を決定する各種ファクターに基づいて決定される。血流情報生成部44は、例えば、注目断面の長さに基づいて隣接する画素の間隔を求め、第1の算出方法と同様にして注目断面における注目血管の径を算出することができる。
血流量算出処理において、血流情報生成部44は、血流速度の算出結果と血管径の算出結果とに基づいて、注目血管内を流れる血液の流量を算出する。この処理の一例を以下に説明する。
血管内における血流がハーゲン・ポアズイユ流(Hagen−Poiseuille flow)と仮定する。また、血管径をwとし、血流速度の最大値をVmとする。この場合、血流量Qは次の関係式で表される。
血流情報生成部44は、血管径算出処理により得られた血管径wと、血流速度算出処理により得られた血流速度における最大値Vmとを上記関係式に代入することにより、血流量Qを算出することができる。
〈操作部50〉
操作部50は、眼科撮影装置1に対してユーザが指示を入力するために使用される。操作部50は、眼科装置やコンピュータに用いられる公知の操作デバイスを含んでよい。例えば、操作部50は、マウス、タッチパッド、トラックボール、キーボード、ペンタブレット、操作パネル、ジョイスティック、ボタン、スイッチ等を含んでよい。また、操作部50は、タッチパネルを含んでよい。この場合、制御部10は、眼科撮影装置1を操作するためのGUIをタッチパネルに表示することができる。
〈正面画像取得部60〉
正面画像取得部60は、眼底の正面画像を取得する。正面画像を取得するための処理は任意である。第1の例において、正面画像取得部60は、眼底を撮影するための構成を含んでよい。例えば、正面画像取得部60は、眼底カメラの光学系、SLOの光学系などを含んでよい。
第2の例において、正面画像取得部60は、当該被検眼の眼底の正面画像を外部装置から取得するための構成を含んでよい。例えば、正面画像取得部60は、LAN、インターネット、専用線等の通信回線を介してデータの送受信を行うための通信デバイスを含んでよい。この場合、正面画像取得部60は、例えば電子カルテシステムや画像アーカイビングシステムに格納されている当該被検眼の眼底の正面画像を、患者IDやDICOMタグ等を検索クエリとして取得することができる。
第3の例において、正面画像取得部60は、OCTによって正面画像を形成するプロセッサを含んでよい。OCT正面画像としては、Cモード画像、プロジェクション画像、シャドウグラムなどがある。
血管強調画像の形成に用いられた3次元データセットをレンダリングすることによって正面画像が形成される場合、共通の3次元データセット(つまり共通の3次元座標系)を介して血管強調画像と正面画像とをレジストレーションすることが可能である。一般に、血管強調画像と正面画像との間のレジストレーションは、例えば、双方の画像から特徴部位(視神経乳頭、黄斑部、血管、病変部、レーザ瘢痕等)を検出する処理と、双方の特徴部位を基準として双方の画像を位置合わせする処理とを通じて行うことができる。
〈動作〉
例示的な眼科撮影装置が実行可能な動作の幾つかの例を説明する。
〈第1動作例〉
第1動作例では、OCT血管造影を用いて得られた血管角度分布に基づき設定された計測位置においてOCT血流計測を行う。本例において実行される処理の流れを図5に示す。なお、患者ID等の入力、被検眼に対する光学系のアライメント、光学系のフォーカス調整、OCT光路長調整、固視位置の調整、OCTスキャン範囲の設定などの準備的処理は、既になされているものとする(他の動作例や他の実施形態においても同様であるとする)。
(S1:眼底OCTにより3次元データセットを収集する)
OCT血管造影のために、データ収集部30は、収集制御部11による制御の下、OCTを用いて被検眼の眼底の3次元データセットを収集する。収集された3次元データセットは、データ処理部40に送られる。
(S2:眼底の血管強調画像を形成する)
画像形成部41は、ステップS1で収集された3次元データセットに基づいて、3次元血管強調画像を形成する。
(S3:血管角度分布を求める)
血管角度分布取得部42は、ステップS2で形成された3次元血管強調画像に基づいて血管角度分布を求める。求められた血管角度分布は、例えば、記憶部20に格納される。
(S4:計測位置を設定する)
計測位置設定部43は、ステップS3で求められた血管角度分布に基づいて計測位置を設定する。このとき、例えば、評価処理部431が、ステップS3で求められた血管角度分布に基づき、眼底の1以上の位置について、OCT血流計測の対象部位としての適性を評価する。計測位置設定部43は、この評価の結果を利用して計測位置の設定を行うことができる。
(S5:OCT血流計測を行う)
眼科撮影装置1は、ステップS4で設定された計測位置においてOCT血流計測を実行する。
このとき、収集制御部11は、データ収集部30に含まれる光源や光スキャナを制御する。収集制御部11による制御の下、データ収集部30は、ステップS4で設定された計測位置において血管に交差する第1断面の繰り返し走査を少なくとも実行することにより第1データを収集する。これに加え、データ収集部30は、この血管に交差する1以上の補助的断面を走査することにより第2データを収集することができる。
血流情報生成部44は、データ収集部30により収集された第1データと、第1断面におけるこの血管の傾斜角度とに基づいて、この血管に関する血流情報を生成する。第2データの収集が行われた場合、血流情報生成部44は、この第2データに基づいて、第1断面におけるこの血管の傾斜角度を求める。第2データの収集が行われなかった場合、例えば、血管角度分布に表された傾斜角度(計測位置における傾斜角度、計測位置の近傍における傾斜角度等)が利用される。
制御部10は、生成された血流情報を表示デバイス2に表示することや、記憶部20に保存することや、外部装置に送信することができる。また、OCT血流計測において得られた情報(断層像、位相画像等)、及び/又は、OCT血管造影において得られた画像(3次元データセット、血管強調画像等)についても同様に、表示、保存、送信等を行うことが可能である。
〈第2動作例〉
第2動作例では、計測位置を表す画像(計測位置画像)を眼底の正面画像に重ねて表示することにより、計測位置をユーザに認識させる。本例において実行される処理の流れを図6に示す。
(S11〜S14)
ステップS11、S12、S13及びS14は、それぞれ、第1動作例のステップS1、S2、S3及びS4と同様にして実行される。
(S15:眼底の正面画像を取得する)
正面画像取得部60は、眼底の正面画像を取得する。例えば、正面画像取得部60は、ステップS14の後に眼底を撮影する。この眼底撮影は、例えば赤外光を用いた撮影である。典型的には、任意のタイミングで取得が開始された赤外観察画像(動画像)の最新のフレームが正面画像として用いられる。なお、正面画像取得部60は、電子カルテシステム等にアクセスすることにより、又は、ステップS11で収集された3次元データセットをレンダリングすることにより、眼底の正面画像を取得することも可能である。なお、正面画像の取得処理を行うタイミングは任意であってよい。
(S16:計測位置に対応する正面画像中の位置を特定する)
データ処理部40(及び/又は表示制御部12等)は、ステップS15で取得された正面画像において、ステップS14で設定された計測位置に対応する位置を特定する。この処理は、例えば次のようにして実行することができる。
まず、データ処理部40は、ステップS11で取得された3次元データセットのプロジェクション画像を作成する。この処理は、3次元データセットの画素をAスキャン方向(深さ方向、奥行き方向)に積算する演算を含む。プロジェクション画像は、眼底の形態を表す正面画像である。
次に、データ処理部40は、このプロジェクション画像と、ステップS15で取得された正面画像との間のレジストレーションを行う。それにより、プロジェクション画像中の位置と正面画像中の位置とが対応付けられる。
ここで、ステップS14で設定された計測位置は3次元データセットを利用して設定され、且つ、プロジェクション画像も3次元データセットから作成されたものである。よって、3次元データセットに定義された3次元座標系とレジストレーション結果とを介して、この計測位置に対応する正面画像中の位置を特定することができる。
なお、計測画像に対応する正面画像中の位置を特定するための処理は本例に限定されない。例えば、ステップS12で形成された血管強調画像とステップS15で取得された正面画像とのレジストレーションを行うことによって、同様の処理結果を得ることが可能である。
(S17:計測位置画像を正面画像に重ねて表示する)
表示制御部12は、ステップS15で取得された正面画像を表示デバイス2に表示するとともに、ステップS16で特定された位置を表す画像(計測位置画像)をこの正面画像にオーバーレイ表示する。
計測位置画像の形態は任意である。例えば、計測位置画像は、所定の形状、所定のサイズ、所定の色を有する画像である。計測位置画像は、例えば、第1断面の位置を示す画像を含んでよい。また、計測位置画像は、第2断面の位置を示す画像を含んでよい。また、計測位置画像は、第1断面(及び第2断面)を含む領域を表す画像を含んでよい。また、計測位置画像は、OCT血流計測の対称となる血管(注目血管)を示す画像を含んでよい。なお、計測位置画像はこれらに限定されるものではない。正面画像と計測位置画像の表示態様については、その例を後述する。
(S18:OCT血流計測を行う)
眼科撮影装置1は、ステップS14で設定された計測位置(つまり、ステップS17で正面画像上に表示された計測位置画像が示す位置)においてOCT血流計測を実行する。OCT血流計測は、第1動作例のステップS5と同様にして実行される。
ステップS17における表示態様の例を図7に示す。本例では、例えば眼底カメラにより取得された正面画像Gに、第1断面の位置を示す計測位置画像と第2断面の位置を示す計測位置画像とがオーバーレイ表示される。
第1断面の位置を示す計測位置画像は、注目血管Cに交差する線状画像D1を含む。また、第2断面の位置を示す計測位置画像は、線状画像D1の近傍において注目血管Cに交差する2つの線状画像D2及びD3を含む。線状画像D2は、線状画像D1に対して注目血管Cの上流側(又は下流側)に位置し、線状画像D3は、線状画像D1に対して注目血管の下流側(又は上流側)に位置する。
これら3つの線状画像D1、D2及びD3により、ユーザは、眼底のどの血管(注目血管C)に対してOCT血流計測が行われるか把握することができ、また、この注目血管Cのどの位置においてOCT血流計測が行われるか把握することができる。
また、3つの線状画像D1、D2及びD3は、全て同じ色で表示されてもよいし、2以上の色で表示されてもよい。例えば、第1断面の位置を示す線状画像D1を第1色(例えば赤色)で表示し、2つの第2断面の位置を示す線状画像D2及びD3を第2色(例えば青色)で表示することにより、第1断面と第2断面とを識別可能に提示することが可能である。
〈第3動作例〉
第3動作例では、計測モードの一例を説明する。本例の計測モードは、ユーザ又は眼科撮影装置1等が指定した血管(注目血管)のOCT血流計測を行うときに使用される(注目血管モード)。なお、計測モードの他の例については後述する。本例において実行される処理の流れを図8に示す。
(S21:注目血管を指定する)
本例では、まず、注目血管が指定される。注目血管の指定は、手動又は自動で実行される。
手動で注目血管を指定する場合、例えば、表示制御部12が、被検眼の眼底の正面画像を表示デバイス2に表示する。典型的には、表示制御部12は、正面画像取得部60が、眼底を撮影することにより取得した正面画像、又は、電子カルテシステム等にアクセスすることにより取得した正面画像を、表示デバイス2に表示する。ユーザは、操作部50を用いることにより、表示デバイス2に表示された正面画像中の所望の血管を指定する。この指定操作は、例えば、マウスによるクリック操作、指によるタッチ操作である。制御部10は、例えば、この正面画像と、ユーザにより指定された位置(注目血管の位置情報)とを記憶部20に格納する。
自動で注目血管を指定する場合、例えば、制御部10は、電子カルテシステム等にアクセスして、被検眼の眼底の所定の血管を示す情報を取得する。一例として、制御部10は、過去にOCT血流計測が行われた血管を示す情報を取得する。また、所定のファクター(診断名等)に応じてOCT血流計測の対象となる血管が決められている場合、制御部10は、電子カルテシステム等にアクセスして被検眼の診断名等を取得し、この診断名等に対応する注目血管を選択する。制御部10は、自動で指定された注目血管を示す情報を記憶部20に格納する。
自動で注目血管を指定する場合の他の例として、データ処理部40は、被検眼の眼底の画像(正面画像、OCT画像等)を解析することにより注目血管を指定することができる。この解析処理は、例えば、血管の形態(蛇行、太さ等)を標準値と比較する処理を含む。制御部10は、データ処理部40により指定された注目血管を示す情報(及び上記画像)を記憶部20に格納する。
(S22:眼底OCTにより、注目血管を含む領域の3次元データセットを収集する)
正面画像取得部60は、被検眼の眼底を撮影することにより正面画像を取得する。データ処理部40等は、この正面画像と、ステップS21で記憶部20に格納された画像(正面画像、OCT画像等)とのレジストレーションを行うことにより、注目血管に対応する正面画像中の領域を特定することができる。ステップS21で記憶部20に画像が格納されなかった場合には、例えば、データ処理部40等が、眼底の解剖学的形態(向き、組織の配置等)や、ステップS21で指定された位置に基づいて、注目血管に対応する正面画像中の領域を特定することができる。
注目血管に対応する正面画像中の領域を含む領域のOCT血管造影を行うために、データ収集部30は、収集制御部11による制御の下、OCTを用いて被検眼の眼底の3次元データセットを収集する。収集された3次元データセットは、データ処理部40に送られる。
(S23〜S26)
ステップS23、S24、S25及びS26は、それぞれ、第1動作例のステップS2、S3、S4及びS5と同様にして実行される。
つまり、画像形成部41は、ステップS22で走査された領域の血管強調画像を形成する。血管角度分布取得部42は、この血管強調画像に基づいて、注目血管の1以上の位置における傾斜角度(血管角度分布)を求める。計測位置設定部43は、この血管角度分布に基づいて、注目血管における計測位置を設定する。
このとき、計測位置設定部43は、血管角度分布に表された複数の位置のいずれかを計測位置として設定することができる。典型的には、評価処理部431により得られた評価結果に基づいて、複数の位置のうちのいずれかを選択することができる。計測位置の設定方法はこれには限定されず、例えば、計測位置設定部43は、血管角度分布に表された複数の位置のいずれかの近傍位置を計測位置として設定することや、2つの位置の間の位置を計測位置として設定することも可能である。
そして、収集制御部11、データ収集部30、血流情報生成部44等により、注目血管のOCT血流計測が行われる。
〈第4動作例〉
第4動作例では、第3動作例と異なる注目血管モードを説明する。第3動作例では、設定された注目血管を含む領域に対してOCT血管造影を行っているのに対し、第4動作例では、比較的広範囲に対するOCT血管造影により得られた情報から注目血管を指定する。本例において実行される処理の流れを図9に示す。
(S31:眼底OCTにより3次元データセットを収集する)
ステップS31は、第1動作例のステップS1と同様にして実行される。
(S32:注目血管を指定する)
手動又は自動で注目血管が指定される。
手動で注目血管を指定する場合、例えば、表示制御部12が、ステップS31で収集された3次元データセットのプロジェクション画像を表示デバイス2に表示する。ユーザは、操作部50を用いることにより、表示デバイス2に表示されたプロジェクション画像中の所望の血管を指定する。なお、正面画像取得部60により取得された正面画像や、ステップS31で収集された3次元データセットに基づく血管強調画像に対して注目血管を指定するようにしてもよい。このような処理は、第3動作例のS21と同様にして実行することができる。自動で注目血管を指定する場合についても、第3動作例のS21と同様にして実行することが可能である。
(S33〜S36)
ステップS33、S34、S35及びS36は、それぞれ、第3動作例のステップS23、S24、S25及びS26と同様にして実行される。
〈眼科撮影装置の第2実施形態〉
眼科撮影装置の他の例示的な実施形態を説明する。本実施形態では、前述した注目血管モードと異なる計測モードについて説明する。本実施形態の計測モードは、眼底における全血流を推定するために用いられる(全血流モード)。
全血流を推定するには、動脈と静脈とを判別する必要がある。なぜなら、この判別を行わないと、眼底に流入する血流と眼底から流出する血流とを重複してカウントしてしまうからである。本実施形態に係る眼科撮影装置の構成例を図10に示す。
眼科撮影装置1Aは、データ処理部40に分類処理部45が設けられている点において、第1実施形態の眼科撮影装置1と異なる。第1実施形態と同様の要素には同じ符号を付す。特に言及しない限り、眼科撮影装置1Aの要素は、第1実施形態と同様の構成を備え、同様の動作を行う。
分類処理部45は、画像形成部41により形成された血管強調画像に描出されている複数の血管を動脈と静脈とに分類する。ここで、「分類」とは、所定の基準にしたがって複数の対象を2以上の種別(カテゴリ)に区分する処理だけでなく、所定の基準にしたがって複数の対象から1以上の種別を抽出する処理や、所定の基準にしたがって複数の対象のうち1以上の種別に該当する対象を特定する処理も含むものとする。
よって、分類処理部45は、例えば、血管強調画像に描出されている複数の血管を動脈カテゴリと静脈カテゴリとに区分する処理、複数の血管のうちから動脈(静脈)に該当する血管を抽出する処理、複数の血管のうち動脈(静脈)に該当する血管を特定する処理のうちの少なくとも1つを実行可能であってよい。なお、全ての血管を分類の対象とする必要はない。例えば、既定閾値以上の径を有する血管のみを分類処理の対象とすることができる。
分類処理部45が実行する処理の例を説明する。分類処理部45は、例えば、正面画像取得部60により取得された眼底の正面画像に描出されている複数の血管の少なくとも一部のそれぞれについて、その血管が動脈であるか静脈であるか判別する。この判別は、例えば、正面画像の画素値、血管の交叉状態、血柱反射などに基づいて行うことができる(特開2007−319403号公報等を参照)。分類処理部45は、例えば、この正面画像と血管強調画像とのレジストレーションを行うことにより、正面画像を用いた分類結果を血管強調画像に反映する。これにより、血管強調画像に描出されている複数の血管を動脈群と静脈群とに分類することができる。
他の例において、分類処理部45は、血管強調画像から得られる血管分布と位相画像とに基づいて、動脈/静脈の判別を行うこともできる。具体的には、分類処理部45は、まず、血管強調画像に基づいて、視神経乳頭から所定位置までの血管の経路を求めることができる。次に、分類処理部45は、この位相画像に基づいて、当該位置における血管の血流方向を求めることができる。そして、分類処理部45は、血管強調画像から求められた経路と、位相画像から求められた血流方向とに基づいて、この血管が動脈か静脈か判別することができる。それにより、動脈に分類された血管群(動脈群)、及び/又は、静脈に分類された血管群(静脈群)が得られる。なお、血管強調画像と位相画像とは同じ3次元データセットから作成された画像であるから、これらの間のレジストレーションは不要である。
本実施形態に係る眼科撮影装置1Aが実行可能な動作の例を説明する。本例において実行される処理の流れを図11に示す。
(S41〜S43)
ステップS41、S42及びS43は、それぞれ、第1動作例のステップS1、S2及びS3と同様にして実行される。
(S44:複数の眼底血管を動脈/静脈に分類する)
分類処理部45は、ステップS42で形成された血管強調画像に描出されている複数の眼底血管を動脈と静脈とに分類する。本例では、動脈群の抽出を行うとする。前述したように、本ステップS44では、例えば、正面画像取得部60により任意のタイミングで取得された眼底の正面画像を参照することができる。
(S45:各動脈(各動脈)の計測位置を設定する)
計測位置設定部43は、ステップS44で抽出された動脈群に含まれる血管のそれぞれの計測位置を設定する。この処理は、第1動作例のステップS4と同様の処理を、この動脈群に含まれる血管のそれぞれに適用することにより実行される。
(S46:動脈群(静脈群)のOCT血流計測を行って総血流量を求める)
眼科撮影装置1は、ステップS45で設定された計測位置のそれぞれにおいてOCT血流計測を実行する。各計測位置におけるOCT血流計測は、第1動作例のステップS5と同様にして実行される。
本ステップS46の処理の例を説明する。まず、制御部10(又はデータ処理部40等)は、ステップS45で設定された複数の計測位置に対して順序を割り当てる。例えば、所定方向(上方、下方、鼻側、耳側等)を基準として時計回り又は反時計回りに順序を割り当てることや、所定部位(視神経乳頭等)に近い計測位置から順に順序を割り当てることや、血管の形態(太さ等)に応じて順序を割り当てることが可能である。
次に、制御部10(又はデータ処理部40等)は、ステップS45で設定された複数の計測位置のそれぞれに基づいて、第1断面(及び第2断面)を設定する。それにより、動脈群に含まれる血管のそれぞれに対して1つずつ第1断面が設定される。
収集制御部11による制御の下、データ収集部30は、動脈群について設定された複数の第1断面を、上記の順序にしたがって順次に繰り返し走査するように制御する。ここで、複数の第1断面に対する繰り返し走査の方式は、最終的に全ての第1断面が所定回数ずつ走査される方式であればよい。データ収集部30により収集されたデータは血流情報生成部44に送られる。第2断面も設定された場合には、その走査も実行される。
血流情報生成部44は、動脈群に含まれる複数の血管に対応する複数の第1断面のそれぞれについて、この第1断面の繰り返し走査により収集された第1データと、対応する計測位置における傾斜角度とに基づいて、この血管における血流量を算出する。この処理は、第1実施形態と同様に実行される。それにより、動脈群に含まれる複数の血管のそれぞれの血流量が得られる。
血流情報生成部44は、動脈群に含まれる複数の血管(つまり、計測位置設定部43により設定された複数の計測位置)について算出された複数の血流量に基づいて総血流量を算出する。この算出処理は、例えば、複数の血管に対応する複数の血流量の和を算出する処理を含んでよい。
血流情報生成部44は、複数の血流量のいずれかの値を所定のファクターに基づいて補正する処理や、総血流量の値を所定のファクターに基づいて補正する処理を実行してもよい。例えば、血管の形態(太さ、蛇行状態等)や位置に応じて血流量の値を補正することができる。また、既定閾値未満の径を有する血管が演算から除外された場合、これにより除外された血流量を付加するための補正を行ってもよい。
他の例において、血流情報生成部44は、動脈に関する全血流量と、静脈に関する全血流量とを求め、これらに基づく統計値を算出することができる。或いは、血流情報生成部44は、OCT血流計測を複数回行って複数の全血流量を求め、これらに基づく統計値を算出することができる。
〈眼科撮影装置の第3実施形態〉
眼科撮影装置の他の例示的な実施形態を説明する。本実施形態では、被検眼の瞳孔の大きさを検出して角度条件情報を補正することによって、それぞれの被検眼に応じた傾斜角度の評価及び計測位置の設定を実現する。このような眼科撮影装置の構成例を図12に示す。
眼科撮影装置1Bは、データ処理部40に瞳孔サイズ情報取得部46が設けられている点において、第1実施形態の眼科撮影装置1と異なる。第1実施形態と同様の要素には同じ符号を付す。特に言及しない限り、眼科撮影装置1Bの要素は、第1実施形態と同様の構成を備え、同様の動作を行う。
瞳孔サイズ情報取得部46は、被検眼の瞳孔のサイズを表す瞳孔サイズ情報を取得する。瞳孔サイズは、例えば、瞳孔の径若しくは面積、又は、瞳孔の近似円(又は近似楕円)の径又は面積として表される。
瞳孔サイズ情報取得部46は、例えば、被検眼の前眼部像を解析することにより瞳孔サイズ情報を取得することができる。この場合の例として、正面画像取得部60は、被検眼の前眼部の正面画像(前眼部像)を取得する。前眼部像は、例えば、眼底カメラ、スリットランプ顕微鏡等により取得される。また、前眼部OCTにより収集された3次元データセットに基づくプロジェクション画像又はシャドウグラムを前眼部像として用いることも可能である。瞳孔サイズ情報取得部46は、例えば、前眼部像の画素値に基づき瞳孔領域を特定し、この瞳孔領域の輪郭を円近似又は楕円近似し、その円又は楕円の径を求めることができる。なお、瞳孔径が決まれば瞳孔領域の面積を(実質的に)決定することができるので、瞳孔径の代わりに瞳孔面積を用いることができる。
他の例において、瞳孔サイズ情報取得部46は、外部装置(電子カルテシステム等)から通信回線を介して被検眼の瞳孔サイズ情報を取得するための通信デバイスを含んでいてよい。
評価処理部431は、瞳孔サイズ情報取得部46により取得された瞳孔サイズ情報に基づいて、角度条件情報に含まれる1以上の角度条件のうちの少なくとも1つを変更する。図2に示す角度条件情報21aにおいては、図3等に示すように測定光をシフトすることによって傾斜角度を好適範囲「75〜80度」に補正することが可能なMランクの角度条件と、当該補正が不可能なNランクの角度条件とが変更される。
角度条件を変更する処理においては、前述した関係式Δθ=arctan(d/T)が参照される。ここで、図3に示すように、Δθは、測定経路LS0と測定経路LS1とが眼底において成す角度であり、dは、測定経路LS0に対する測定経路LS1のシフト距離であり、Tは、被検眼内における測定光路LS0の長さである。瞳孔サイズは測定経路のシフト距離dの制約条件であり、瞳孔が大きいほどシフト距離dを大きくすることができる。典型的には、瞳孔径の半分の値(つまり瞳孔の半径)をシフト距離dの最大値に設定することができる。
本実施形態の動作例を説明する。本例において実行される処理の流れを図13に示す。これは、第1実施形態の第1動作例に角度条件情報の補正を付加した場合の例であるが、その他の動作例又は他の実施形態に角度条件情報の補正を付加する場合についても同様である。
(S51:瞳孔サイズ情報を取得する)
まず、瞳孔サイズ情報取得部46等により、被検眼の瞳孔サイズ情報が取得される。
(S52:角度条件情報を変更する)
評価処理部431は、ステップS51において取得された瞳孔サイズ情報に基づいて、角度条件情報(21a)に含まれる1以上の角度条件のうちの少なくとも1つを変更する。
なお、瞳孔サイズ情報が示す値によっては、角度条件情報の変更を行わなくてよい場合がある。例えば、所定範囲の瞳孔サイズについて角度条件情報が作成された場合において、ステップS51で得られた瞳孔サイズ情報が示す値が所定範囲に含まれるときには、角度条件情報を変更する必要はない。
(S53〜S55)
ステップS53、S54及びS55は、それぞれ、第1動作例のステップS1、S2及びS3と同様にして実行される。
(S56:変更された角度条件情報を参照して計測位置を設定する)
評価処理部431は、ステップS52で変更された角度条件情報と、ステップS55で求められた血管角度分布とに基づいて、血管の傾斜角度の評価を行う。計測位置設定部43は、評価処理部431により得られた評価結果に基づいて計測位置を設定する。この処理は、第1実施形態と同様にして実行される。
(S57:OCT血流計測を行う)
眼科撮影装置1Bは、第1動作例のステップS5と同様にして、ステップS56で設定された計測位置におけるOCT血流計測を実行する。
〈眼科撮影装置の第4実施形態〉
眼科撮影装置の他の例示的な実施形態を説明する。本実施形態では、散瞳剤が適用されていない状態における被検眼の瞳孔の大きさから散瞳剤適用時の瞳孔径を推定して角度条件情報を補正する。それにより、散瞳剤の適用を仮定した評価のシミュレーションが可能となる。このような眼科撮影装置の構成例を図14に示す。
眼科撮影装置1Cは、データ処理部40に瞳孔サイズ推定部47が設けられている点において、第3実施形態の眼科撮影装置1Bと異なる。第3実施形態と同様の要素には同じ符号を付す。特に言及しない限り、眼科撮影装置1Cの要素は、第1実施形態又は第3実施形態と同様の構成を備え、同様の動作を行う。
前述したように、瞳孔サイズ情報取得部46は、被検眼の瞳孔のサイズを表す瞳孔サイズ情報を取得する。本実施形態では、散瞳剤が適用されていない状態(つまり散瞳していない状態)の瞳孔サイズが取得される。例えば、散瞳剤が適用されていない状態の被検眼の前眼部を撮影することにより得られた前眼部像を解析することにより、散瞳剤が適用されていない状態の瞳孔サイズ情報を取得することができる。また、そのような瞳孔サイズ情報を、外部装置(電子カルテシステム等)から通信回線を介して取得してもよい。
瞳孔サイズ推定部47は、瞳孔サイズ情報取得部46により取得された瞳孔サイズ情報に基づいて、散瞳剤が適用された状態における被検眼の瞳孔のサイズを推定する。この推定は、例えば、次のいずれかを参照して行われる:散瞳剤による瞳孔サイズの変化量の標準値(臨床的に得られた統計値等);被検眼に対して過去に散瞳剤を適用したときの瞳孔サイズの変化量。
このような参照情報を、2種類以上の散瞳剤のそれぞれについて準備することができる。また、非散瞳時の瞳孔サイズの値に応じて、参照情報を段階的に準備することができる。また、診断名(確定診断名、疑い診断名等)、投与薬剤、病歴、薬剤歴、年齢、性別等の任意のファクターに応じて、複数の参照情報を準備することができる。このようなファクターに関する情報は、例えば、電子カルテシステム等から取得される。
評価処理部431は、瞳孔サイズ推定部47により推定された瞳孔サイズに基づいて、角度条件情報に含まれる1以上の角度条件のうちの少なくとも1つを変更する。角度条件の変更は、第3実施形態と同様にして実行される。
本実施形態の動作例を説明する。本例において実行される処理の流れを図15に示す。これは、第3実施形態の動作例に瞳孔サイズの推定を付加した場合の例であるが、その他の動作例又は他の実施形態に瞳孔サイズの推定を付加する場合も同様である。
(S61:瞳孔サイズ情報を取得する)
まず、瞳孔サイズ情報取得部46等により、被検眼の瞳孔サイズ情報が取得される。
(S62:散瞳時の瞳孔サイズを推定する)
瞳孔サイズ推定部47は、ステップS61において取得された瞳孔サイズ情報(及び前述の参照情報)に基づいて、散瞳時における被検眼の瞳孔サイズを推定する。
(S63:角度条件情報を変更する)
評価処理部431は、ステップS62において推定された瞳孔サイズに基づいて、角度条件情報(21a)に含まれる1以上の角度条件のうちの少なくとも1つを変更する。なお、瞳孔サイズの推定値が示す値によっては、角度条件情報の変更を行わなくてよい。
(S64〜S66)
ステップS64、S65及びS66は、それぞれ、第1動作例のステップS1、S2及びS3と同様にして実行される。
(S67:変更された角度条件情報を参照して計測位置を設定する)
評価処理部431は、ステップS63で変更された角度条件情報と、ステップS66で求められた血管角度分布とに基づいて、血管の傾斜角度の評価を行う。計測位置設定部43は、評価処理部431により得られた評価結果に基づいて計測位置を設定する。この処理は、第1実施形態と同様にして実行される。
(S68:OCT血流計測を行う)
眼科撮影装置1Bは、第1動作例のステップS5と同様にして、ステップS67で設定された計測位置におけるOCT血流計測を実行する。
〈作用・効果〉
例示的な眼科撮影装置の作用及び効果について説明する。
例示的な眼科撮影装置(1、1A、1B、1C)は、データ収集部(30)と、血管強調画像形成部(画像形成部41)と、血管角度分布取得部(42)と、計測位置設定部(43)と、収集制御部(11)と、血流情報生成部(44)とを備える。
データ収集部は、OCTを用いて被検眼の眼底の3次元データセットを収集することができる。血管強調画像形成部は、この3次元データセットに基づいて血管強調画像を形成することができる。血管角度分布取得部は、この血管強調画像に基づいて、眼底の1以上の位置における血管の傾斜角度を表す血管角度分布を求めることができる。計測位置設定部は、この血管角度分布に基づいて、OCT血流計測の対象となる計測位置を設定することができる。収集制御部は、この計測位置において血管に交差する第1断面を繰り返し走査するようにデータ収集部を制御することができる。血流情報生成部は、第1断面の繰り返し走査により収集された第1データと、この計測位置における血管の傾斜角度とに基づいて、この血管における血流状態を表す血流情報を生成することができる。
実施形態において、収集制御部は、計測位置設定部により設定された計測位置の近傍においてこの血管に交差する1以上の第2断面を走査するようにデータ収集部を制御することができる。血流情報生成部は、第2断面の走査により収集された第2データに基づいてこの計測位置におけるこの血管の傾斜角度を算出することができる。更に、血流情報生成部は、算出された傾斜角度と第1データとに基づいて血流情報を生成することができる。
例示的な眼科撮影装置(1、1A、1B、1C)は、正面画像取得部(60)と、表示制御部(12)とを備えていてよい。正面画像取得部は、眼底の正面画像(観察画像、撮影画像等)を取得することができる。表示制御部は、計測位置設定部により設定された計測位置を表す計測位置画像を、正面画像取得部により取得された正面画像に重ねて表示手段(表示デバイス2)に表示させることができる。
実施形態において、眼科撮影装置は、1以上の計測モードにしたがって動作するように構成されてよい。計測モードの例として、特定血管の計測位置を探索して血流計測を行う注目血管モードがある。注目血管モードを実現するための例示的な眼科撮影装置(1)において、眼底の血管が予め指定されたとき、血管角度分布取得部は、この血管の複数の位置における傾斜角度を表す血管角度分布を求めることができる。更に、計測位置設定部は、この血管角度分布に基づいて、この血管の計測位置を設定することができる。
注目血管モードにおいて、計測位置設定部は、指定された血管について取得された血管角度分布に基づいて、この血管角度分布に表された複数の位置のいずれかを、この血管の計測位置として選択することができる。
計測モードの他の例として、眼底における全血流量を推定するための全血流モードがある。全血流モードを実現するための例示的な眼科撮影装置(1A)は、分類処理部(45)を備えていてよい。分類処理部は、血管強調画像に描出されている複数の血管を動脈と静脈とに分類することができる。計測位置設定部は、動脈に分類された血管群(動脈群)及び静脈に分類された血管群(静脈群)の少なくとも一方について、この血管群に含まれる血管のそれぞれの計測位置を設定することができる。
全血流モードにおいて、収集制御部は、この血管群について設定された複数の計測位置に基づく複数の第1断面を順次に繰り返し走査するようにデータ収集部を制御することができる。血流情報生成部は、複数の第1断面のそれぞれについて、この第1断面の繰り返し走査により収集された第1データと、対応する計測位置における傾斜角度とに基づいて、対応する血管における血流量を算出することができる。更に、血流情報生成部は、この血管群について設定された複数の計測位置について算出された複数の血流量に基づいて総血流量(の推定値)を算出することができる。
実施形態において、計測位置設定部は、評価処理部(431)を含んでいてよい。評価処理部は、血管角度分布に表された1以上の位置のそれぞれにおける傾斜角度に基づいて、OCT血流計測の対象位置としての適性を評価することができる。計測位置設定部は、評価処理部により得られた評価結果に基づいて計測位置を設定することができる。
実施形態において、評価処理部は、血管角度分布に表された1以上の位置のそれぞれにおける傾斜角度と、1以上の角度条件を表す角度条件情報(21a)とを比較することにより、OCT血流計測の対象位置としての適性の評価を行うことができる。
例示的な眼科撮影装置(1B、1C)は、瞳孔サイズ情報取得部(46)を備えていてよい。瞳孔サイズ情報取得部は、被検眼の瞳孔のサイズを表す瞳孔サイズ情報を取得することができる。評価処理部は、取得された瞳孔サイズ情報に基づいて、角度条件情報に表された1以上の角度条件の少なくとも1つを変更することができる。評価処理部は、1以上の角度条件が変更された角度条件情報を用いて、OCT血流計測の対象位置としての適性の評価を行うことができる。
例示的な眼科撮影装置(1C)は、瞳孔サイズ推定部(47)を備えていてよい。この場合、瞳孔サイズ情報取得部は、散瞳剤が適用されていない状態における被検眼の瞳孔のサイズを表す瞳孔サイズ情報を取得することができる。瞳孔サイズ推定部は、取得された瞳孔サイズ情報に基づいて、散瞳剤が適用された状態における被検眼の瞳孔のサイズを推定することができる。評価処理部は、瞳孔サイズ推定部により推定された瞳孔のサイズに基づいて、角度条件情報に表された1以上の角度条件の少なくとも1つを変更することができる。評価処理部は、1以上の角度条件が変更された角度条件情報を用いて、OCT血流計測の対象位置としての適性の評価を行うことができる。
実施形態において、血管角度分布は、OCTにおけるAスキャン方向に対する血管の傾斜角度を求めることができる。
このような実施形態によれば、OCT血管造影により得られた(3次元)血管強調画像に基づいて血管角度分布を自動で求め、この血管角度分布に基づいてOCT血流計測のための計測位置を自動で設定し、この計測位置におけるOCT血流計測を行うことができる。したがって、血管の向きが好適な位置を探索してOCT血流計測を自動で行うことが可能である。よって、OCT血流計測において検者や被検者に掛かる負担を軽減することができる。
実施形態の作用及び効果はこれらに限定されず、実施形態として説明されたそれぞれの事項が提供する作用及び効果や、複数の事項の組み合わせが提供する作用及び効果も考慮されるべきである。また、所望の作用及び/又は効果を得るために、又は他の目的のために、前述したいずれかの実施形態、他の実施形態、公知技術等を任意に組み合わせることが可能である。
以上に説明した構成は、この発明を好適に実施するための一例に過ぎない。よって、この発明の要旨の範囲内における任意の変形(省略、置換、付加等)を適宜に施すことが可能である。