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JP6860526B2 - 回転電機および固定子 - Google Patents

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Description

本発明は、回転電機および固定子に関する。
回転電機において、回転子鉄心および固定子鉄心においては、渦電流が発熱の一因となり、これによる鉄損が効率低下の要因となる。
このため、回転電機における回転子鉄心および固定子鉄心には、強磁性体製で中央に開口を有する円板状の積層用の鋼板が軸方向に積層された積層鉄心構造が一般的であり、これによって、軸方向への電流の流れを抑制している。
固定子鉄心は、回転子鉄心の径方向の外側に、空隙を介して配され、全体として概ね円筒状に形成されている。また、固定子鉄心の径方向の内側表面には、周方向に互いに間隔をあけて軸方向に延びた複数のスロットが形成されている。それぞれのスロットには、固定子巻線の導体が収納される。
このような、固定子鉄心を形成するために、各積層用の電磁鋼板には、中心の開口に沿って、各スロットが形成される。この結果、固定子鉄心には、互いに隣接するスロットに挟まれた歯部が形成される。軸方向に積層された電磁鋼板は、軸方向の両端に配された厚肉の内側クランパ等により挟まれて、一体形状を維持している(特許文献1参照)。
内側クランパは、電磁鋼板に形成された歯部を軸方向に押さえている。また、外側クランパは、内側クランパを介して軸方向に積層された積層用鋼板を、軸方向の両側から締め付けている。
特許第5002671号公報
回転電機の固定子鉄心のスロットコンビネーションによっては、すなわちスロットを形成するティースの形状、寸法等によっては、電磁加振力の振動数とティースの固有振動数が一致し、電磁音の発生を招く場合がある。通常、回転電機のスロットコンビネーションを設定する際には、電磁加振力の振動数と固定子鉄心のティースの固有振動数が一致しない組み合わせを選定する。しかしながら、設計の都合上、電磁音が発生しやすいスロットコンビネーションを選定せざるを得ない場合がある。
そこで、本発明は、回転電機における固定子ティースの振動に起因する電磁音の発生を低減させることを目的とする。
上述の目的を達成するため、本発明は、軸方向に延びたロータシャフトと、前記ロータシャフトの径方向外側に取り付けられた回転子鉄心とを有する回転子と、空隙を介して前記回転子鉄心の径方向外側を取り囲むように設けられ、径方向内側に周方向に配列された複数の歯部を有する開口が形成された複数の電磁鋼板が軸方向に積層された複数の積層構造を有する固定子鉄心と、前記固定子鉄心内を軸方向に貫通する固定子巻線とを有する固定子と、前記複数の歯部が軸方向に積層されて形成される固定子ティースの電磁振動による電磁音を低減する電磁音低減構造と、前記回転子鉄心を挟んで軸方向の前記ロータシャフトの両側のそれぞれで前記ロータシャフトを支持する2つの軸受と、を備える回転電機であって、前記電磁音低減構造は、軸方向に配列された前記複数の積層構造を、前記固定子ティースを含めて軸方向の両外側から挟む2つの内側クランパと、前記2つの内側クランパのそれぞれの軸方向外側に配され前記2つの内側クランパを軸方向の両外側から挟む2つの外側クランパと、前記2つの外側クランパを軸方向に貫通し、周方向に互いに間隔をおいて配されて、前記2つの外側クランパを軸方向の両外側から締め付ける複数の締め付けロッドと、前記複数の積層構造間に挟まれて、前記固定子ティース間のティース間保持部と前記ティース間保持部に続いて径方向外側に延びた延長部とを有する複数の間隔保持構造と、を具備し、前記複数の間隔保持構造は、前記積層構造からの締め付け力を受ける互いに平行な2つの受圧面と前記2つの受圧面に挟まれて互いに平行な2つの側面とが形成され、長手方向に延びる間隔部材と、前記間隔部材の長手方向に互いに間隔をあけて配され、矩形の辺に沿って形成された形状で、前記受圧面に実質的に平行に前記間隔部材を周方向に貫通する互いに平行な2つの第1の辺部と前記側面に沿って配されていて互いに平行な2つの第2の辺部とを有するコイルと、を含むことを特徴とする。
また、本発明は、軸方向に延びたロータシャフトと、前記ロータシャフトの径方向外側に取り付けられた回転子鉄心とを有する回転子と、前記回転子鉄心を挟んで軸方向の前記ロータシャフトの両側のそれぞれで前記ロータシャフトを支持する2つの軸受と、を備える回転電機の固定子であって、空隙を介して前記回転子鉄心の径方向外側を取り囲むように設けられ、径方向内側に周方向に配列された複数の歯部を有する開口が形成された複数の電磁鋼板が軸方向に積層された複数の積層構造を有する固定子鉄心と、前記固定子鉄心内を軸方向に貫通する固定子巻線と、前記複数の歯部が軸方向に積層されて形成される固定子ティースの電磁振動による電磁音を低減する電磁音低減構造と、具備し、前記電磁音低減構造は、軸方向に配列された前記複数の積層構造を、前記固定子ティースを含めて軸方向の両外側から挟む2つの内側クランパと、前記2つの内側クランパのそれぞれの軸方向外側に配され前記2つの内側クランパを軸方向の両外側から挟む2つの外側クランパと、前記2つの外側クランパを軸方向に貫通し、周方向に互いに間隔をおいて配されて、前記2つの外側クランパを軸方向の両外側から締め付ける複数の締め付けロッドと、前記複数の積層構造間に挟まれて、前記固定子ティース間のティース間保持部と前記ティース間保持部に続いて径方向外側に延びた延長部とを有する複数の間隔保持構造と、を有し、前記複数の間隔保持構造は、前記積層構造からの締め付け力を受ける互いに平行な2つの受圧面と前記2つの受圧面に挟まれて互いに平行な2つの側面とが形成され、長手方向に延びる間隔部材と、前記間隔部材の長手方向に互いに間隔をあけて配され、矩形の辺に沿って形成された形状で、前記受圧面に実質的に平行に前記間隔部材を周方向に貫通する互いに平行な2つの第1の辺部と前記側面に沿って配されていて互いに平行な2つの第2の辺部とを有するコイルと、を含むことを特徴とする。
本発明によれば、回転電機における固定子ティースの振動に起因する電磁音の発生を低減させることができる。
第1の実施形態に係る回転電機の構成を示す縦断面図である。 第1の実施形態に係る回転電機の固定子の電磁鋼板の正面図である。 第1の実施形態に係る回転電機の固定子の電磁音低減構造を含む固定子端部の外観図である。 第1の実施形態に係る回転電機の固定子の電磁音低減構造のうち間隔保持構造を含む固定子内周近傍の部分断面図である。 第1の実施形態に係る回転電機の固定子の電磁音低減構造のうち間隔保持構造の構成を示す平面図である。 第1の実施形態に係る回転電機の固定子の電磁音低減構造のうち間隔保持構造の構成を示す図5のVI−VI矢視正面図である。 第1の実施形態に係る回転電機の固定子の電磁音低減構造のうち間隔保持構造の構成を示す図5のVII−VII矢視側面図である。 第2の実施形態に係る回転電機の固定子の電磁音低減構造のうち間隔保持構造の構成を示す平面図である。 第2の実施形態に係る回転電機の固定子の電磁音低減構造のうち間隔保持構造の構成を示す図8のIX−IX矢視正面図である。 第3の実施形態に係る回転電機の固定子の電磁音低減構造のうち間隔保持構造の構成を示す平面図である。 第3の実施形態に係る回転電機の固定子の電磁音低減構造のうち間隔保持構造の構成を示す図10のXI−XI矢視正面図である。 第3の実施形態に係る回転電機の固定子の電磁音低減構造のうち間隔保持構造の構成を示す図10のXII−XII矢視側面図である。
以下、図面を参照して、本発明に係る回転電機、固定子の電磁音低減構造について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複説明は省略する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る回転電機の構成を示す縦断面図である。回転電機200は、回転子10、固定子20、2つの軸受30、フレーム40、および2つの軸受ブラケット45を有する。
回転子10は、軸方向に延びて2つの軸受30によって支持されたロータシャフト11と、ロータシャフト11の径方向外側に取り付けられた回転子鉄心12とを有する。
固定子20は、円筒状の固定子鉄心21と、固定子巻線28と、固定子鉄心21を拘束するとともに後述する固定子ティース21a(図3)の電磁振動による電磁音を低減する電磁音低減構造100を有する。
電磁音低減構造100は、2つの内側クランパ101、2つの外側クランパ102、複数の締め付けロッド103、および複数の間隔保持構造110を有する。間隔保持構造110の詳細については、後に、図5ないし図7を引用しながら説明する。
固定子鉄心21は、空隙18を介して回転子鉄心12の径方向外側に設けられており、複数の積層構造23を有する。固定子鉄心21の径方向内側表面には、軸方向に延びて周方向に互いに間隔をあけて配された複数の溝状の固定子スロット21b(図3)が形成されている。固定子巻線28は、複数の固定子巻線導体28a(図4)を有する。複数の固定子巻線導体28aは、これらの固定子スロット21b内を貫通し軸方向の両側に延びて、互いに接続され、あるいは外部配線と接続される。
積層構造23のそれぞれは、軸方向に積層されている複数の電磁鋼板22(図2)を有し、同軸に軸方向に配列されている。互いに軸方向に隣接する2つの積層構造23の間には、径方向の流路である固定子ダクト25が形成されている。複数の積層構造23は、その軸方向の両外側にそれぞれ配された2つの内側クランパ101によって挟まれている。2つの内側クランパ101のそれぞれは、その軸方向外側にそれぞれ配された2つの外側クランパ102によって挟まれている。
複数の締め付けロッド103が、2つの外側クランパ102を軸方向に貫通し、外側クランパ102を軸方向の両外側から締め付けている。複数の締め付けロッド103は、周方向に互いに間隔をあけて配されている(図3参照)。この結果、2枚の外側クランパ102に挟まれた2枚の内側クランパ101、ならびに複数の積層構造23が、軸方向に締め付けられる。
締め付けロッド103は、断面が矩形であり、締め付けロッド103が貫通する外側クランパ102に形成されたロッド貫通孔102b(図3参照)の形状も矩形である。締め付けロッド103は、両端がロッド保持部104により外側クランパ102にそれぞれ固定されている。なお、締め付けロッド103の断面は矩形に限らず、円形、楕円形あるいは多角形でもよい。
締め付けロッド103のロッド保持部104は、溶接部あるいはロー付け部でもよいし、外側クランパ102のそれぞれの外側に突出した範囲におねじが形成された長尺のロッドと両側のナットの組合せ、あるいは、一端にはボルトの頭を有し、反対側にはおねじが形成されているボルトとナットの組合せなどでもよい。
フレーム40は、固定子20の径方向外側に配されて、回転子鉄心12および固定子20を収納している。固定子20は、フレーム40に固定されている。2つの軸受ブラケット45のそれぞれは、フレーム40の軸方向の両端に取り付けられており、フレーム40とともに閉空間40aを形成する。2つの軸受ブラケット45のそれぞれは、2つの軸受30のそれぞれを固定支持している。
図2は、固定子の電磁鋼板の正面図である。複数の電磁鋼板22は、たとえば、同一の型のプレスにより打ち抜かれ、全て、同一の形状、寸法である。それぞれの電磁鋼板22は、中央に開口を有する強磁性体の円板である。
電磁鋼板22のそれぞれの径方向内側には、複数の切り欠き部22bが形成され、電磁鋼板22が積層された積層構造23には、複数の固定子スロット21b(図3)が形成される。複数の固定子スロット21bは、互いに周方向に間隔をおいて配され、軸方向に固定子鉄心21を貫通している。周方向に互いに隣接する切り欠き部22bにより、周方向に配列された歯部22aが形成されている。電磁鋼板22が積層された積層構造23には、複数の固定子ティース21a(図3)が形成される。
また、電磁鋼板22のそれぞれの径方向外側には、複数の切り欠き部22cが形成され、電磁鋼板22が積層された積層構造23には、複数の締め付けロッド用切り欠き101b(図3)が形成される。複数の締め付けロッド用切り欠き101bは、互いに周方向に間隔をおいて配され、軸方向に固定子鉄心21を貫通している。
図3は、固定子の電磁音低減構造を含む固定子端部の外観図である。すなわち、固定子鉄心を軸方向の一方の端部から見た側面図である。外側クランパ102の奥に内側クランパ101が配されている。
外側クランパ102は、積層構造23と同軸に配され、中央に円形の開口102aを有する円環状の厚板である。径方向の内側部分は、開口102aに向かって径方向に薄くなるようなテーパが形成されている。
内側クランパ101は、積層構造23と同軸に配された円環状の厚板である。内側クランパ101の中央には、開口が形成され、その開口には、周方向に互いに間隔をおいて、径方向に沿った切り欠き101dが形成され、この結果、周方向に間隔をおいて、径方向に延びた複数の歯部押さえ101cが形成されている。歯部押さえ101cの周方向角度位置は、歯部22aの周方向角度位置と実質的に一致しており、また、歯部押さえ101cの形状、寸法は歯部22aの形状、寸法と実質的に一致している。それぞれの歯部押さえ101cは、歯部22aの軸方向外側にあって、歯部22aを軸方向、すなわち両外側の歯部押さえ101cに挟まれた電磁鋼板22を軸方向に圧縮するように押さえている。内側クランパ101の歯部押さえ101cは、軸方向および周方向の外力に対して十分な剛性を有するようにその厚みが確保されている。ここで、十分な剛性とは、固定子鉄心21を軸方向に拘束するとともに、固定子ティース21aの電磁振動を低減する効果を発揮できる程度に十分な剛性という意味である。
固定子鉄心21の軸方向の両外側に配された2組の内側クランパ101のそれぞれは、固定子鉄心21と同軸に配された厚肉の円板である。外側クランパ102は、内側クランパ101と同心で、かつ、内側クランパ101より径方向外側に拡がっている。具体的には、外側クランパ102の外径は、内側クランパ101の外径より大きい。外側クランパ102の開口102aは、内側クランパ101の外径より小さい。また、外側クランパ102の開口102aは、内側クランパ101の歯部押さえ101cの根本の包絡円より大きい。外側クランパ102の開口102aの縁部は、開口に向かって、すなわち径方向内側になるに従って肉厚が減ずるようにテーパが形成されている。
外側クランパ102の、内側クランパ101の外周に対応する径方向の位置に、周方向に互いに間隔をおいて、締め付けロッド103の貫通用の複数のロッド貫通孔102bが形成されている。また、内側クランパ101の、外側クランパ102のロッド貫通孔102bと重なる部分には、締め付けロッド103貫通用の複数の締め付けロッド用切り欠き101bが形成されている。また、内側クランパ101と同様に、積層構造23にも、締め付けロッド103貫通用の締め付けロッド用切り欠き101bが形成されている。
図3では、締め付けロッド103が矩形断面の場合として、ロッド貫通孔102bが矩形の場合を示している。
図4は、第1の実施形態に係る回転電機の固定子の電磁音低減構造のうち間隔保持構造を含む固定子内周近傍の部分断面図である。図4は、固定子ダクト25(図1)において、軸方向に見た部分的な範囲を示しており、また、間隔保持構造110の平面を示している。なお、間隔保持構造110の詳細な構造については、図5ないし図7を参照しながら後述する。
それぞれの間隔保持構造110は、互いに軸方向に隣接する積層構造23のそれぞれの固定子ティース21aの間に挟まれており、径方向外側に固定子ティース21aが形成されていない領域まで延びている。このように、それぞれの間隔保持構造110は、固定子ティース21aの間に挟まれた部分と、さらに径方向外側に延びた部分があり、それぞれを、ティース間保持部110aおよび延長部110bと呼ぶこととする(図5参照)。
それぞれの間隔保持構造110は、断面が矩形で径方向に延びた間隔部材111と、複数のコイル112を有する。
積層構造23に形成された固定子スロット21bおよび内側クランパ101に形成された切り欠き101d(図3)には、固定子巻線28の固定子巻線導体28aが軸方向に貫通して設置されている。
固定子巻線導体28aの径方向内側には、固定子巻線導体28aを保持するために、軸方向に延びた板状の楔26が設けられている。楔26は、積層構造23の歯部22aにより支持されている。
図5は、第1の実施形態に係る回転電機の固定子の電磁音低減構造のうち間隔保持構造の構成を示す平面図である。図6は、図5のVI−VI矢視正面図である。また、図7は、図5のVII−VII矢視側面図である。なお、図5は、図4と同じ方向から見た図である。
複数の間隔保持構造110は、前述のように、2つの内側クランパ101、2つの外側クランパ102および複数の締め付けロッド103とともに電磁音低減構造100を構成する。
間隔部材111は、長く延びた4つの面と、2つの端面を有する。4つの面は、互いに平行な2つの面の2つの組から構成される。1つの組は、2つの受圧面111aであり、当該間隔保持構造110を間に挟む両側の積層構造23の軸方向の端面に平行に形成されている。また、もう一つの組は、積層構造23とは接しない2つの側面111bである。
複数のコイル112は、間隔部材111の長手方向、すなわち径方向に、互いに間隔をおいて配されている。それぞれのコイル112は、間隔部材111の長手方向に垂直な仮想的な面に沿った矩形の4辺をなすように形成された閉じた導体である。矩形は、間隔部材111の長手方向に垂直な面に沿った方向に配されている。
4つの辺は、互いに平行な2つの辺の2つの組から構成される。1つの組は、第2の辺部112bであり、間隔部材111の側面111bの外表面に沿って配されている。また、もう一つの組は、2つの第1の辺部112aである。2つの第1の辺部112aは、間隔部材111の受圧面111aの外側ではなく、間隔部材111に互いに平行に形成された2つの貫通孔111h内に配される。貫通孔111hは、2つの側面111bを結ぶように間隔部材111の長手方向に垂直な方向に形成されている。
以上のように構成されていることから、間隔部材111の側面111bの外側に配されたコイル112の部分、すなわち第2の辺部112bは、積層構造23とは接触しない。
間隔部材111は、たとえば、鉄などの磁性材料製すなわち磁性体である。また、コイル112の材質は、導電性材料である。たとえば、銅、アルミニウム等でもよいが、必ずしも良導体である必要はなく、たとえば鉄系の材料であってもよい。
以上のように構成された本実施形態による電磁音低減構造100の作用について説明する。
回転電機200の運転中は、固定子巻線28を流れる電流による回転磁場が生じている。この回転磁場による磁束が、コイル112と鎖交すると、コイル112に誘導起電力が発生し、コイル112に電流が流れる。この結果、コイル112の抵抗値に応じた銅損が発生する。
また、間隔部材111の材料は磁性材料であるため、回転磁場により間隔部材111内に渦電流損およびヒステリシス損が発生する。
このように、間隔部材111およびコイル112に損失による熱が発生し、これらの温度が上昇する。軸方向に配された複数の積層構造23およびこれらに挟まれた複数の間隔部材111は、もともと内側クランパ101の歯部押さえ101cを介して外側クランパ102および締め付けロッド103により軸方向の両側から締め付けられている。ここで、それぞれの間隔部材111が熱膨張することにより、積層構造23への締め付け力がさらに増加する。
ここで、固定子ティース21aの振動という観点では、長手方向に互いに接しながら配されている積層構造23の固定子ティース21aと間隔部材111のティース間保持部110aとは、互いに一体となって変位すると考えられる。これらを仮想的な一体構造と考えると、周方向の剛性が最も低い。
一方、内側クランパ101の歯部押さえ101cは、周方向の外力に対しても十分な剛性を有することから、この仮想的な一体構造は、その径方向外側の円筒部により拘束されているが、軸方向の両端を内側クランパ101の歯部押さえ101cによっても拘束されているとみなすことができる。ここで、拘束とは、内側クランパ101の歯部押さえ101cと積層構造23の固定子ティース21aとの間の面圧が、周方向への荷重によるせん断力に打ち勝つ、すなわち、歯部押さえ101cと積層構造23の固定子ティース21aの接触面において、互いのずれが生じないという意味である。
回転電機200の運転中には、固定子巻線28による移動磁界により、各間隔部材111および各コイル112内で損失による熱が発生する。このため、各積層構造23の間に挟まったそれぞれの間隔部材111が熱膨張する。この結果、軸方向にも間隔部材111の厚みが増し一体化の程度が大きくなり、内側クランパ101による拘束力も増加することになる。この結果、一体化された構造の周方向の振動が低減し、電磁音が低減する。
以上のように、本実施形態における電磁音低減構造100によれば、回転電機200において、固定子ティース21aの振動に起因する電磁音の発生を低減させることができる。
[第2の実施形態]
図8は、第2の実施形態に係る回転電機の固定子の電磁音低減構造のうち間隔保持構造の構成を示す平面図である。また、図9は、図8のIX−IX矢視正面図である。
本第2の実施形態は、第1の実施形態の変形である。本第2の実施形態においては、それぞれの間隔保持構造110の間隔部材111およびコイル112は、第1の実施形態と同様の形状であるが、コイル112が、ティース間保持部110aの範囲にのみ設けられている。その他の点では、第1の実施形態と同様である。
このため、間隔保持構造110の各部における発熱は、コイル112からの発熱分だけ、ティース間保持部110aの方が、延長部110bよりも大きい。この結果、特に、仮想的な一体構造、すなわち長手方向に互いに接しながら配されている積層構造23の固定子ティース21aと間隔部材111のティース間保持部110aとの一体構造は、さらに面圧が高まり、一体化の程度が強くなる。この結果、一体化された構造の周方向の振動の低減効果をさらに増すことができる。
[第3の実施形態]
図10は、第3の実施形態に係る回転電機の固定子の電磁音低減構造のうち間隔保持構造の構成を示す平面図である。図11は、図10のXI−XI矢視正面図である。また、図12は、図10のXII−XII矢視側面図である。
本第3の実施形態は、第1の実施形態の変形である。本第3の実施形態においては、間隔保持構造120の間隔部材121の形状が異なる。その他の点では、第1の実施形態と同様である。
間隔部材121の側面121bには、2つの受圧面121aに近い部分を除いて長手方向に延びた凹部121cが形成されている。間隔部材121には、軸方向に互いに間隔をおいて、複数の貫通孔121hの組が形成されている。それぞれの組の2つの貫通孔121hは、凹部121cの面に垂直な方向に間隔部材121を貫通している。
コイル122は、第1の実施形態におけるコイル112と同様の形状であるが、間隔部材121の外側に配され第2の辺部122bは、凹部121cの外表面に沿って配されている。また、第1の辺部122aは、貫通孔121h内を貫通している。
側面121bと凹部121cとの段差は、コイル122の幅より大きな寸法で形成されている。
この結果、図10の平面図に示すように、コイル122は、周方向に間隔部材121より突出しないことになる。
第1の実施形態における間隔保持構造110では、周方向にコイル112が間隔部材111の側面111bより外側にあることを考慮して、固定子ティース21aの周方向の幅との寸法関係を設定する必要がある。
一方、本実施形態における間隔保持構造120では、コイル122が側面121bより外側にはないので、互いに平行な側面121b間の寸法、すなわち受圧面121aの幅の寸法を、固定子ティース21aの幅の寸法とほぼ同一となるまで拡大することができる。
これにより、間隔部材121とその軸方向に両側の積層構造23との接触面積を大きくすることができ、周方向にかかる外力、すなわちせん断方向の外力に対する抗力をより大きくすることができる。この結果、一体化の程度が強くなり、一体化された構造の周方向の振動の低減効果をさらに増すことができる。
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。たとえば、実施形態では、ロータシャフト11が水平な横型の回転電機の場合を例にとって示したが、立形の回転電機であってもよい。
また、たとえば、第2の実施形態の特徴と第3の実施形態の特徴とを組み合わせてもよい。
さらに、実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
10…回転子、11…ロータシャフト、12…回転子鉄心、18…空隙、20…固定子、21…固定子鉄心、21a…固定子ティース、21b…固定子スロット、22…電磁鋼板、22a…歯部、22b…切り欠き部、22c…切り欠き部、23…積層構造、25…固定子ダクト、26…楔、28…固定子巻線、28a…固定子巻線導体、30…軸受、40…フレーム、40a…閉空間、45…軸受ブラケット、100…電磁音低減構造、101…内側クランパ、101a…開口、101b…ロッド用切り欠き、101c…歯部押さえ、101d…切り欠き、102……外側クランパ、102a…開口、102b…ロッド貫通孔、103…締め付けロッド、104…ロッド保持部、110…間隔保持構造、110a…ティース間保持部、110b…延長部、111…間隔部材、111a…受圧面、111b…側面、111h…貫通孔、112…コイル、112a…第1の辺部、112b…第2の辺部、120…間隔保持構造、121…間隔部材、121a…受圧面、121b…側面、121c…凹部、121h…貫通孔、122…コイル、122a…第1の辺部、122b…第2の辺部、200…回転電機

Claims (5)

  1. 軸方向に延びたロータシャフトと、前記ロータシャフトの径方向外側に取り付けられた回転子鉄心とを有する回転子と、
    空隙を介して前記回転子鉄心の径方向外側を取り囲むように設けられ、径方向内側に周方向に配列された複数の歯部を有する開口が形成された複数の電磁鋼板が軸方向に積層された複数の積層構造を有する固定子鉄心と、前記固定子鉄心内を軸方向に貫通する固定子巻線とを有する固定子と、
    前記複数の歯部が軸方向に積層されて形成される固定子ティースの電磁振動による電磁音を低減する電磁音低減構造と、
    前記回転子鉄心を挟んで軸方向の前記ロータシャフトの両側のそれぞれで前記ロータシャフトを支持する2つの軸受と、
    を備える回転電機であって、
    前記電磁音低減構造は、
    軸方向に配列された前記複数の積層構造を、前記固定子ティースを含めて軸方向の両外側から挟む2つの内側クランパと、
    前記2つの内側クランパのそれぞれの軸方向外側に配され前記2つの内側クランパを軸方向の両外側から挟む2つの外側クランパと、
    前記2つの外側クランパを軸方向に貫通し、周方向に互いに間隔をおいて配されて、前記2つの外側クランパを軸方向の両外側から締め付ける複数の締め付けロッドと、
    前記複数の積層構造間に挟まれて、前記固定子ティース間のティース間保持部と前記ティース間保持部に続いて径方向外側に延びた延長部とを有する複数の間隔保持構造と、
    を具備し、
    前記複数の間隔保持構造は、
    前記積層構造からの締め付け力を受ける互いに平行な2つの受圧面と前記2つの受圧面に挟まれて互いに平行な2つの側面とが形成され、長手方向に延びる間隔部材と、
    前記間隔部材の長手方向に互いに間隔をあけて配され、矩形の辺に沿って形成された形状で、前記受圧面に実質的に平行に前記間隔部材を周方向に貫通する互いに平行な2つの第1の辺部と前記側面に沿って配されていて互いに平行な2つの第2の辺部とを有するコイルと、
    を含むことを特徴とする回転電機。
  2. 前記コイルは、前記ティース間保持部にのみ配されていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
  3. 前記2つの側面には、それぞれ長手方向に延びた凹部が形成され、
    前記第2の辺部は、前記凹部の表面に沿って配されている、
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転電機。
  4. 前記間隔部材は、磁性体であり、前記コイルは、導電性であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の回転電機。
  5. 軸方向に延びたロータシャフトと、前記ロータシャフトの径方向外側に取り付けられた回転子鉄心とを有する回転子と、
    前記回転子鉄心を挟んで軸方向の前記ロータシャフトの両側のそれぞれで前記ロータシャフトを支持する2つの軸受と、
    を備える回転電機の固定子であって、
    空隙を介して前記回転子鉄心の径方向外側を取り囲むように設けられ、径方向内側に周方向に配列された複数の歯部を有する開口が形成された複数の電磁鋼板が軸方向に積層された複数の積層構造を有する固定子鉄心と、
    前記固定子鉄心内を軸方向に貫通する固定子巻線と、
    前記複数の歯部が軸方向に積層されて形成される固定子ティースの電磁振動による電磁音を低減する電磁音低減構造と、
    具備し、
    前記電磁音低減構造は、
    軸方向に配列された前記複数の積層構造を、前記固定子ティースを含めて軸方向の両外側から挟む2つの内側クランパと、
    前記2つの内側クランパのそれぞれの軸方向外側に配され前記2つの内側クランパを軸方向の両外側から挟む2つの外側クランパと、
    前記2つの外側クランパを軸方向に貫通し、周方向に互いに間隔をおいて配されて、前記2つの外側クランパを軸方向の両外側から締め付ける複数の締め付けロッドと、
    前記複数の積層構造間に挟まれて、前記固定子ティース間のティース間保持部と前記ティース間保持部に続いて径方向外側に延びた延長部とを有する複数の間隔保持構造と、
    を有し、
    前記複数の間隔保持構造は、
    前記積層構造からの締め付け力を受ける互いに平行な2つの受圧面と前記2つの受圧面に挟まれて互いに平行な2つの側面とが形成され、長手方向に延びる間隔部材と、
    前記間隔部材の長手方向に互いに間隔をあけて配され、矩形の辺に沿って形成された形状で、前記受圧面に実質的に平行に前記間隔部材を周方向に貫通する互いに平行な2つの第1の辺部と前記側面に沿って配されていて互いに平行な2つの第2の辺部とを有するコイルと、
    を含むことを特徴とする固定子。
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