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JP6850435B2 - 3級アミン化合物、光電変換素子、及び太陽電池 - Google Patents

3級アミン化合物、光電変換素子、及び太陽電池 Download PDF

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Description

本発明は、3級アミン化合物、光電変換素子、及びこれを備えた太陽電池に関するものである。
近年、電子回路における駆動電力が非常に少なくなり、微弱な電力でもセンサ等の様々な電子部品を駆動することができるようになった。さらに、センサの活用に際し、その場で発電し消費できる自立電源(環境発電素子)への応用が期待されており、その中でも太陽電池は光があればどこでも発電できる素子として注目を集めている。
太陽電池の中でも、スイスローザンヌ工科大学のGraetzelらが発表した色素増感型太陽電池は、微弱な室内光環境化においてアモルファスシリコン太陽電池以上の高い光電変換特性を有することが報告されている(非特許文献1参照)。
発電性能が高い従来の電解液を用いた色素増感型太陽電池は、電解液の揮発や漏れ等の懸念がある。そこで、実用化を想定した際には、電解液の固体化が望まれる。低分子有機ホール輸送材料を用いたもの(例えば、特許文献1、非特許文献2、3参照)等、多く報告されている。室内光のような微弱な光を電気に変換する際には、光電変換素子における内部抵抗による損失電流が顕著であることが報告されている(非特許文献4参照)。
以上、これまでに検討されてきた固体型光電変換素子は、何れも擬似太陽光における発電性能のみ報告されており、室内光における発電性能は報告されていない。また、報告されている太陽電池の陽極は、銀や金を用いた乾式製膜が多く、より低コストな太陽電池を得る為には、湿式製膜が望ましい。湿式製膜時に用いられる有機溶媒は、ホール輸送層を溶解させる課題があり、ポリチオフェン誘導体(PEDOT/PSS等)の水系ペーストを用いる事が望ましい。しかしながら、製膜後の水成分を除去する際に、100℃以上の加熱が必要であり、残留水分は太陽電池の性能劣化を引き起こすことがわかっている。その為、耐久性を得る為には120℃以上の加熱が好ましいが、加熱による性能劣化が顕著であり、高出力が得られた固体型色素増感太陽電池は報告されていない。
そこで、本発明は上記課題を鑑み、高温プロセスを経ても、室内光等の微弱な照射光において、優れた光電変換特性が得られる光電変換素子を得ることができる3級アミン化合物を提供することを目的とする。
上記課題は下記(1)の発明によって解決される。
(1)下記一般式(1)で表される3級アミン化合物。
Figure 0006850435
(式中、Ar1、Ar2は、それぞれアルキル基もしくはアルコキシ基を有するベンゼン環、無置換のベンゼン環、アルキル基もしくはアルコキシ基を有するナフタレン環、及び無置換のナフタレン環のいずれかを表す。)
本発明の3級アミン化合物を光電変換素子のホール輸送層に含有させることにより、高温プロセスを経ても、室内光等の微弱な照射光において、優れた光電変換特性が得られる光電変換素子を得ることができる。
本発明に係る光電変換素子の構造を表わす一例の概略図である。 本発明に係る光電変換素子の構造を表す他の例の概略図である。 実施例I−1で得られた3級アミン化合物No.1−1のIRスペクトルである。
本発明の3級アミン化合物は、下記一般式(1)で表される。
Figure 0006850435
(式中、Ar1、Ar2は、それぞれアルキル基もしくはアルコキシ基を有するベンゼン環、無置換のベンゼン環、アルキル基もしくはアルコキシ基を有するナフタレン環、及び無置換のナフタレン環のいずれかを表す。)
前記アルキル基やアルコキシ基は、置換もしくは無置換のどちらでも構わない。Ar1、Ar2は同一でも異なってもよい。
前記アルキル基としては、炭素数が1〜4のアルキル基が好ましく、前記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
本発明の3級アミン化合物は、光電変換素子のホール輸送層に含有させると、高温プロセスを経ることで、優れた光電変換特性を有する光電変換素子を得ることができる。さらに、室内光等の微弱光において光電変換する際に、特に際立って優位性が現れることを検証することができた。
以下に一般式(1)における具体的な例示化合物を下記に記すが、何らこれらに限定されるものではない。
Figure 0006850435
Figure 0006850435
以下、本発明に係る光電変換素子及び太陽電池について図面を参照しながら説明する。
なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
本発明の光電変換素子の第一の態様は、第一の電極と、ホールブロッキング層と、電子輸送層と、ホール輸送層と、第二の電極とを有し、前記ホール輸送層は、本発明の3級アミン化合物を含む。
光電変換素子及び太陽電池の構成について図1に基づいて説明する。なお、図1は光電変換素子及び太陽電池の断面図の一例である。
図1に示す態様においては、基板1上に第一の電極2が形成され、第一の電極2上にホールブロッキング層3が形成され、ホールブロッキング層3上に多孔質状の電子輸送層4が形成され、多孔質状の電子輸送層4における電子輸送性材料に光増感材料5が吸着し、第一の電極2と対向する第二の電極7との間にホール輸送層6が挟み込まれた構成となっている。また、図1では、第一の電極2と第二の電極7が導通するようにリードライン8、9が設けられている構成の例が図示されている。以下、詳細を説明する。
<基板>
本発明に用いられる基板1としては、特に制限されるものではなく、公知のものを用いることができる。基板1は透明な材質のものが好ましく、例えばガラス、透明プラスチック板、透明プラスチック膜、無機物透明結晶体等が挙げられる。
<第一の電極>
本発明に用いられる第一の電極2としては、可視光に対して透明な導電性物質であれば特に限定されるものではなく、通常の光電変換素子、あるいは液晶パネル等に用いられる公知のものを使用できる。
第一の電極の材料としては、例えば、インジウム・スズ酸化物(以下、ITOと称す)、フッ素ドープ酸化スズ(以下、FTOと称す)、アンチモンドープ酸化スズ(以下、ATOと称す)、インジウム・亜鉛酸化物、ニオブ・チタン酸化物、グラフェン等が挙げられ、これらが単独あるいは複数積層されていてもよい。
第一の電極の厚さは5nm〜10μmが好ましく、50nm〜1μmがさらに好ましい。
また、第一の電極2は一定の硬性を維持するため、可視光に透明な材質からなる基板1上に設けることが好ましく、基板としては、例えば、ガラス、透明プラスチック板、透明プラスチック膜、無機物透明結晶体などが用いられる。
第一の電極2と基板1とが一体となっている公知のものを用いることもでき、例えば、FTOコートガラス、ITOコートガラス、酸化亜鉛:アルミニウムコートガラス、FTOコート透明プラスチック膜、ITOコート透明プラスチック膜等が挙げられる。
また、酸化スズや酸化インジウムに原子価の異なる陽イオン若しくは陰イオンをドープした透明電極、メッシュ状、ストライプ状等、光が透過できる構造にした金属電極をガラス基板等の基板上に設けたものでもよい。
これらは単独あるいは2種以上の混合、または積層したものでも構わない。また抵抗を下げる目的で、金属リード線等を併用してもよい。
前記金属リード線の材質は、アルミニウム、銅、銀、金、白金、ニッケル等の金属が挙げられる。金属リード線は、基板に蒸着、スパッタリング、圧着等で設置し、その上にITOやFTOを設ける方法により形成できる。
<ホールブロッキング層>
本発明で用いられるホールブロッキング層3を構成する材料としては、可視光に対して透明であり、かつ電子輸送性材料であれば特に限定されるものではないが、特に酸化チタンが好ましい。ホールブロッキング層は、電解質が電極と接して、電解質中のホールと電極表面の電子が再結合(いわゆる逆電子移動)することによる電力低下を抑制するために設けられる。このホールブロッキング層3の効果は、固体型色素増感型太陽電池において特に顕著である。これは、電解液を用いた湿式色素増感太陽電池と比較し、有機ホール輸送材料等を用いた固体型色素増感型太陽電池はホール輸送材料中のホールと電極表面の電子の再結合(逆電子移動)速度が速いことに起因している。
ホールブロッキング層の製膜方法は限定しないが、室内光における損失電流を抑制するためには、高い内部抵抗が必要であり、製膜方法も重要である。一般的には、湿式製膜法であるゾルゲル法が挙げられるが、膜密度が低く十分に損失電流を抑制できない。そのため、より好ましいのは、スパッタリング法などの乾式製膜法であり、膜密度が十分に高く損失電流を抑制できる。
このホールブロッキング層は、第一の電極2とホール輸送層6との電子的コンタクトを防ぐ目的でも形成される。このホールブロッキング層の膜厚は特に制限はないが、5nm〜1μmが好ましく、湿式製膜では500〜700nmがより好ましく、乾式製膜では10nm〜30nmがより好ましい。
<電子輸送層>
本発明の光電変換素子及び太陽電池は、上記のホールブロッキング層3上に多孔質状の電子輸送層4を形成するものであり、この電子輸送層は単層であっても多層であってもよい。
電子輸送層は電子輸送性材料から構成され、電子輸送性材料としては半導体微粒子が好ましく用いられる。
多層の場合、粒径の異なる半導体微粒子の分散液を多層塗布することも、種類の異なる半導体や、樹脂、添加剤の組成が異なる塗布層を多層塗布することもできる。
一度の塗布で膜厚が不足する場合には、多層塗布は有効な手段である。
一般的に、電子輸送層の膜厚が増大するほど単位投影面積当たりの担持光増感材料量も増えるため光の捕獲率が高くなるが、注入された電子の拡散距離も増えるため電荷の再結合によるロスも大きくなってしまう。
したがって、電子輸送層の膜厚は100nm〜100μmが好ましい。
前記半導体としては特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができる。
具体的には、シリコン、ゲルマニウムのような単体半導体、あるいは金属のカルコゲニドに代表される化合物半導体、またはペロブスカイト構造を有する化合物等を挙げることができる。
金属のカルコゲニドとしてはチタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、あるいはタンタルの酸化物、カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン、ビスマスの硫化物、カドミウム、鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物等が挙げられる。
他の化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム、等のリン化物、ガリウム砒素、銅−インジウム−セレン化物、銅−インジウム−硫化物等が好ましい。
また、ペロブスカイト構造を有する化合物としては、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム等が好ましい。
これらの中でも酸化物半導体が好ましく、特に酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ニオブが好ましく、単独、あるいは2種以上の混合で使用しても構わない。これらの半導体の結晶型は特に限定されるものではなく、単結晶でも多結晶でも、あるいは非晶質でも構わない。
半導体微粒子のサイズに特に制限はないが、一次粒子の平均粒径は1〜100nmが好ましく、5〜50nmがより好ましい。
また、より大きい平均粒径の半導体微粒子を混合あるいは積層して入射光を散乱させる効果により、効率を向上させることも可能である。この場合の半導体の平均粒径は50〜500nmが好ましい。
電子輸送層の作製方法には特に制限はなく、スパッタリング等の真空中で薄膜を形成する方法や湿式製膜法が挙げられる。
製造コスト等を考慮した場合、特に湿式製膜法が好ましく、半導体微粒子の粉末あるいはゾルを分散したペーストを調製し、電子集電電極基板上に塗布する方法が好ましい。
この湿式製膜法を用いた場合、塗布方法は特に制限はなく、公知の方法にしたがって行なうことができる。
例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、また、湿式印刷方法として、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷等様々な方法を用いることができる。
半導体微粒子の分散液を機械的粉砕、あるいはミルを使用して作製する場合、少なくとも半導体微粒子単独、あるいは半導体微粒子と樹脂の混合物を水あるいは有機溶剤に分散して形成される。
このときに使用される樹脂としては、たとえば、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等によるビニル化合物の重合体や共重合体、シリコン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリエステル樹脂、セルロースエステル樹脂、セルロースエーテル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
半導体微粒子を分散する溶媒としては、たとえば、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、α−テルピネオール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、あるいはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ギ酸エチル、酢酸エチル、あるいは酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、あるいはジオキサン等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、あるいはN−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、あるいは1−クロロナフタレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン、1,5−ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、あるいはクメン等の炭化水素系溶媒を挙げることができる。これらは単独、あるいは2種以上の混合溶媒として用いることができる。
半導体微粒子の分散液、あるいはゾル−ゲル法等によって得られた半導体微粒子のペーストは、粒子の再凝集を防ぐため、塩酸、硝酸、酢酸等の酸、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル等の界面活性剤、アセチルアセトン、2−アミノエタノール、エチレンジアミン等のキレート化剤等を添加することができる。
また、製膜性を向上させる目的で増粘剤を添加することも有効な手段である。
このとき加える増粘剤としては、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール等の高分子、エチルセルロース等の増粘剤等が挙げられる。
半導体微粒子は、塗布した後に粒子同士を電子的にコンタクトさせ、膜強度の向上や基板との密着性を向上させるために焼成、マイクロ波照射、電子線照射、あるいはレーザー光照射を行なうことが好ましい。これらの処理は単独で行なってもあるいは二種類以上組み合わせて行なってもよい。
焼成する場合、焼成温度の範囲に特に制限はないが、温度を上げ過ぎると基板の抵抗が高くなったり、溶融したりすることもあるため、30〜700℃が好ましく、100〜600℃がより好ましい。また、焼成時間にも特に制限はないが、10分〜10時間が好ましい。
前記マイクロ波照射は、電子輸送層形成側から照射しても、裏側から照射しても構わない。
照射時間には特に制限がないが、1時間以内で行なうことが好ましい。
焼成後、半導体微粒子の表面積の増大や、光増感材料から半導体微粒子への電子注入効率を高める目的で、例えば四塩化チタンの水溶液や有機溶剤との混合溶液を用いた化学メッキや三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行なってもよい。
直径が数十nmの半導体微粒子を焼結等によって積層した膜は、多孔質状態を形成する。このナノ多孔構造は、非常に高い表面積を持ち、その表面積はラフネスファクターを用いて表わすことができる。
このラフネスファクターは、基板に塗布した半導体微粒子の面積に対する多孔質内部の実面積を表わす数値である。したがって、ラフネスファクターは大きいほど好ましいが、電子輸送層の膜厚との関係もあり、本発明においては20以上が好ましい。
<光増感材料>
本発明では変換効率のさらなる向上のため、光増感材料を多孔質状の電子輸送層4である電子輸送性材料の表面に吸着させることが好ましい。
光増感材料5は、使用される励起光により光励起される化合物であれば上記に限定されないが、具体的には以下の化合物も挙げられる。
特表平7−500630号公報、特開平10−233238号公報、特開2000−26487号公報、特開2000−323191号公報、特開2001−59062号公報等に記載の金属錯体化合物、特開平10−93118号公報、特開2002−164089号公報、特開2004−95450号公報、J.Phys.Chem.C,7224,Vol.111(2007)等に記載のクマリン化合物、同特開2004−95450号公報、Chem.Commun.,4887(2007)等に記載のポリエン化合物、特開2003−264010号公報、特開2004−63274号公報、特開2004−115636号公報、特開2004−200068号、特開2004−235052号公報、J.Am.Chem.Soc.,12218,Vol.126(2004)、Chem.Commun.,3036(2003)、Angew.Chem.Int.Ed.,1923,Vol.47(2008)等に記載のインドリン化合物、J.Am.Chem.Soc.,16701,Vol.128(2006)、J.Am.Chem.Soc.,14256,Vol.128(2006)等に記載のチオフェン化合物、特開平11−86916号公報、特開平11−214730号公報、特開2000−106224号公報、特開2001−76773号公報、特開2003−7359号公報等に記載のシアニン色素、特開平11−214731号公報、特開平11−238905号公報、特開2001−52766号公報、特開2001−76775号公報、特開2003−7360号等に記載のメロシアニン色素、特開平10−92477号公報、特開平11−273754号公報、特開平11−273755号公報、特開2003−31273号等に記載の9−アリールキサンテン化合物、特開平10−93118号公報、特開2003−31273号等に記載のトリアリールメタン化合物、特開平9−199744号公報、特開平10−233238号公報、特開平11−204821号公報、特開平11−265738号、J.Phys.Chem.,2342,Vol.91(1987)、J.Phys.Chem.B,6272,Vol.97(1993)、Electroanal.Chem.,31,Vol.537(2002)、特開2006−032260号公報、J.Porphyrins Phthalocyanines,230,Vol.3(1999)、Angew.Chem.Int.Ed.,373,Vol.46(2007)、Langmuir,5436,Vol.24(2008)等に記載のフタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物等を挙げることができる。特にこの中で、金属錯体化合物、クマリン化合物、ポリエン化合物、インドリン化合物、チオフェン化合物を用いることが好ましい。
更に好ましくは、三菱製紙社製の下記構造式(3)で表されるD131、下記構造式(4)で表されるD102、下記構造式(5)で表されるD358が挙げられる。
Figure 0006850435
多孔質状の電子輸送層4に光増感材料5を吸着させる方法としては、光増感材料溶液中あるいは分散液中に半導体微粒子を含有する電子集電電極を浸漬する方法、溶液あるいは分散液を多孔質状の電子輸送層に塗布して吸着させる方法を用いることができる。
前者の場合、浸漬法、ディップ法、ローラ法、エアーナイフ法等を用いることができる。
後者の場合は、ワイヤーバー法、スライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法、スピン法、スプレー法等を用いることができる。
また、二酸化炭素などを用いた超臨界流体中で吸着させても構わない。
光増感材料を吸着させる際、縮合剤を併用してもよい。
前記縮合剤は、無機物表面に物理的あるいは化学的に光増感材料と電子輸送化合物を結合すると思われる触媒的作用をするもの、または化学量論的に作用し、化学平衡を有利に移動させるものの何れであってもよい。
さらに、縮合助剤としてチオールやヒドロキシ化合物を添加してもよい。
光増感材料を溶解、あるいは分散する溶媒としては、たとえば、水、メタノール、エタノール、あるいはイソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、
アセトン、メチルエチルケトン、あるいはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、
ギ酸エチル、酢酸エチル、あるいは酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、
ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、あるいは
ジオキサン等のエーテル系溶媒、
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、あるいはN−メチル
−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、
ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、あるいは1−クロロナフタレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、
n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン、1,5−ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、あるいはクメン等の炭化水素系溶媒を挙げることができ、これらは単独、あるいは2種以上の混合として用いることができる。
また、光増感材料は、その種類によっては化合物間の凝集を抑制した方がより効果的に働くものが存在するため、凝集解離剤を併用しても構わない。
前記凝集解離剤としてはコール酸、ケノデオキシコール酸などのステロイド化合物、長鎖アルキルカルボン酸または長鎖アルキルホスホン酸が好ましく、用いる光増感材料に対して適宜選ばれる。
これら凝集解離剤の添加量は、光増感材料1質量部に対して0.01〜500質量部が好ましく、0.1〜100質量部がより好ましい。
これらを用い、光増感材料、あるいは光増感材料と凝集解離剤を吸着する際の温度としては、−50℃以上、200℃以下が好ましい。
また、この吸着は静置しても攪拌しながら行なっても構わない。
前記攪拌する場合の方法としては、スターラー、ボールミル、ペイントコンディショナー、サンドミル、アトライター、ディスパーザー、あるいは超音波分散等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
吸着に要する時間は、5秒以上、1000時間以下が好ましく、10秒以上、500時間以下がより好ましく、1分以上、150時間がさらに好ましい。
また、吸着は暗所で行なうことが好ましい。
<ホール輸送層>
一般的にホール輸送層としては、酸化還元対を有機溶媒に溶解した電解液、酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体をポリマーマトリックスに含浸したゲル電解質、酸化還元対を含有する溶融塩、固体電解質、無機ホール輸送材料、有機ホール輸送材料等が用いられるが、本発明のホール輸送層6は、下記一般式(2)で表される有機ホール輸送材料を含有することが好ましい。
Figure 0006850435
(式中、R1は、水素原子もしくはメチル基を表す。)
本発明におけるホール輸送層は、単層構造でも異なる化合物からなる積層構造でも構わない。積層構造の場合、第二の電極7に近い有機ホール輸送材料層に高分子材料を用いることが好ましい。
製膜性に優れる高分子材料を用いることで多孔質状の電子輸送層の表面をより平滑化することができ、光電変換特性を向上することができるためである。
また、高分子材料は多孔質状の電子輸送層内部へ浸透することが困難であるため、逆に多孔質状の電子輸送層表面の被覆にも優れ、電極を設ける際の短絡防止にも効果を発揮するため、より高い性能を得ることが可能となる。
単層構造において用いられる有機ホール輸送材料、積層構造において第二の電極7から遠いホール輸送層に用いられる有機ホール輸送材料としては、公知の有機ホール輸送性化合物が用いられる。
その具体例としては特公昭34−5466号公報等に示されているオキサジアゾール化合物、特公昭45−555号公報等に示されているトリフェニルメタン化合物、特公昭52−4188号公報等に示されているピラゾリン化合物、特公昭55−42380号公報等に示されているヒドラゾン化合物、特開昭56−123544号公報等に示されているオキサジアゾール化合物、特開昭54−58445号公報に示されているテトラアリールベンジジン化合物、特開昭58−65440号公報あるいは特開昭60−98437号公報に示されているスチルベン化合物等を挙げることができる。
その中でも、前記一般式(2)で表される有機ホール輸送材料である、非特許文献2記載の下記構造式(6)で表される有機ホール輸送材料や、非特許文献3記載の下記構造式(7)で表される有機ホール輸送材料は特に優れた光電変換特性を示す。
Figure 0006850435
単層構造のホール輸送層、積層構造において第二の電極7から遠いホール輸送層は、前記一般式(2)で表される有機ホール有機輸送材料を、50〜95質量%含有することが好ましく、70〜85質量%含有することがより好ましい。
積層構造において用いられる第二の電極7に近いホール輸送層に用いられる高分子材料としては、公知のホール輸送性高分子材料が用いられる。
その具体例としては、ポリ(3−n−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−n−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(9,9’−ジオクチル−フルオレン−コ−ビチオフェン)、ポリ(3,3’’’−ジドデシル−クォーターチオフェン)、ポリ(3,6−ジオクチルチエノ[3,2−b]チオフェン)、ポリ(2,5−ビス(3−デシルチオフェン−2−イル)チエノ[3,2−b]チオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルチオフェン−コ−チエノ[3,2−b]チオフェン)、ポリ(3,6−ジオクチルチエノ[3,2−b]チオフェン−コ−チエノ[3,2−b]チオフェン)、ポリ(3,6−ジオクチルチエノ[3,2−b]チオフェン−コ−チオフェン)、ポリ(3.6−ジオクチルチエノ[3,2−b]チオフェン−コ−ビチオフェン)等のポリチオフェン化合物、
ポリ[2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン]、ポリ[2−メトキシ−5−(3,7−ジメチルオクチルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン]、ポリ[(2−メトキシ−5−(2−エチルフェキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン)−コ−(4,4’−ビフェニレンービニレン)]等のポリフェニレンビニレン化合物、
ポリ(9,9’−ジドデシルフルオレニル−2,7−ジイル)、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレン)−alt−コ−(9,10−アントラセン)]、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレン)−alt−コ−(4,4’−ビフェニレン)]、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレン)−alt−コ−(2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン)]、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジイル)−コ−(1,4−(2,5−ジヘキシルオキシ)ベンゼン)]等のポリフルオレン化合物、
ポリ[2,5−ジオクチルオキシ−1,4−フェニレン]、ポリ[2,5−ジ(2−エチルヘキシルオキシ−1,4−フェニレン]等のポリフェニレン化合物、
ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−alt−コ−(N,N’−ジフェニル)−N,N’−ジ(p−ヘキシルフェニル)−1,4−ジアミノベンゼン]、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−alt−コ−(N,N’−ビス(4−オクチルオキシフェニル)ベンジジン−N,N’−(1,4−ジフェニレン)]、ポリ[(N,N’−ビス(4−オクチルオキシフェニル)ベンジジン−N,N’−(1,4−ジフェニレン)]、ポリ[(N,N’−ビス(4−(2−エチルヘキシルオキシ)フェニル)ベンジジン−N,N’−(1,4−ジフェニレン)]、ポリ[フェニルイミノ−1,4−フェニレンビニレン−2,5−ジオクチルオキシ−1,4−フェニレンビニレン−1,4−フェニレン]、ポリ[p−トリルイミノ−1,4−フェニレンビニレン−2,5−ジ(2−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン−1,4−フェニレン]、ポリ[4−(2−エチルヘキシルオキシ)フェニルイミノ−1,4−ビフェニレン]等のポリアリールアミン化合物、
ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−alt−コ−(1,4−ベンゾ(2,1’,3)チアジアゾール]、ポリ(3,4−ジデシルチオフェン−コ−(1,4−ベンゾ(2,1’,3)チアジアゾール)等のポリチアジアゾール化合物を挙げることができる。
この中で、キャリア移動度やイオン化ポテンシャルを考慮するとポリチオフェン化合物とポリアリールアミン化合物が特に好ましい。
また、上記に示した有機ホール輸送材料に各種添加剤を加えても構わない。
添加剤としては、ヨウ素、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化銅、ヨウ化鉄、ヨウ化銀等の金属ヨウ化物、
ヨウ化テトラアルキルアンモニウム、ヨウ化ピリジニウム等の4級アンモニウム塩、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化セシウム、臭化カルシウム等の金属臭化物、
臭化テトラアルキルアンモニウム、臭化ピリジニウム等の4級アンモニウム化合物の臭素塩、
塩化銅、塩化銀等の金属塩化物、酢酸銅、酢酸銀、酢酸パラジウム等の酢酸金属塩、
硫酸銅、硫酸亜鉛等の金属硫酸塩、フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩、フェロセン−フェリシニウムイオン等の金属錯体、
ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール−アルキルジスルフィド等のイオウ化合物、
ビオロゲン色素、ヒドロキノン等、ヨウ化1,2−ジメチル−3−n−プロピルイミダゾイニウム塩、ヨウ化1−メチル−3−n−ヘキシルイミダゾリニウム塩、1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウムトリフロオロメタンスルホン酸塩、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムノナフルオロブチルスルホン酸塩、1−n−ヘキシル−3−メチルイミダゾリニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド等のInorg.Chem.35(1996)1168に記載のイオン液体のイミダゾリウム化合物、ピリジン、4−t−ブチルピリジン、ベンズイミダゾール等の塩基性化合物、
リチウムトリフルオロメタンスルホニルイミド、リチウムジイソプロピルイミド、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等のリチウム化合物を挙げることができる。
イオン液体のイミダゾリウム化合物を用いてもよく、具体的には、1−n−ヘキシル−3−メチルイミダゾリニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが好ましい。
本発明においては、前記ホール輸送層に下記一般式(1)で表される3級アミン化合物を添加することで、高温プロセスを経ても優れた光電変換特性を得ることができる。
Figure 0006850435
(式中、Ar1、Ar2は、それぞれアルキル基もしくはアルコキシ基を有するベンゼン環、無置換のベンゼン環、アルキル基もしくはアルコキシ基を有するナフタレン環、及び無置換のナフタレン環のいずれかを表す。アルキル基やアルコキシ基は、置換もしくは無置換のどちらでも構わない。Ar1、Ar2は同一でも異なってもよい。)
従来から報告されている塩基性化合物であるターシャルブチルピリジンは、分子量が比較的に小さな液体材料である。ターシャルブチルピリジンを用いた60℃耐熱性試験が報告されている(ACS Appl. Mater. Interfaces, 2015, 7 (21), pp 11107-11116)。従来の材料は高温プロセス時にホール輸送層中の有機P型半導体と塩基性化合物やリチウム塩等の構成材料のモルフォロジーが変化し、出力低下していると考えている。
モルフォロジー変化を抑制する為には、有機P型半導体を結晶性の高い材料にすることが一つの解決策と考えられるが、固体型色素増感太陽電池における有機P型半導体は、アモルファス状態でないと高い出力が得られない。その為、鋭意検討した結果、塩基性材料の分子量を大きくすることが、モルフォロジー変化を抑制することができることを発見した。具体的には、120℃等の高温加熱をしても、出力劣化することなく、逆に開放電圧や短絡電流密度共に上昇し、結果としてより高出力な固体型色素増感太陽電池を得られる事ができた。
前記前記一般式(1)で表される3級アミン化合物のホール輸送層中の添加量は、有機ホール輸送材料100質量部に対して、1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、10質量部以上30質量部以下であることがより好ましい。
更に、前記一般式(1)で表される3級アミン化合物を含有させることで、光電変換素子における内部抵抗がより高まり、室内光等の超微弱光における損失電流を低減することができる。また、一般式(1)で表される3級アミン化合物は、トリベンジル骨格を有するアミン誘導体であり、前記一般式(2)で表されるホール輸送材料より酸化電位は高く、ホール輸送を阻害することない。アルキル骨格を有するアミン誘導体は、酸化電位が低く、ホール輸送を阻害する。また、ベンジル基が2つの化合物も存在するが、塩基性が弱く、太陽電池の出力は劣る。よって、トリベンジル骨格を有するアミン誘導体は、高い塩基性とホール輸送阻害しない酸化電位を有しており、ホール輸送層に添加することで、適度な内部抵抗を得ることができることがわかった。
また導電性を向上させる目的で、有機ホール輸送材料の一部をラジカルカチオンにするための酸化剤を添加しても構わない。
その酸化剤としては、ヘキサクロロアンチモン酸トリス(4−ブロモフェニル)アミニウム、ヘキサフルオロアンチモネート銀、ニトロソニウムテトラフルオボラート、硝酸銀、コバルト錯体系化合物等が挙げられる。
この酸化剤の添加によって全ての有機ホール輸送材料が酸化される必要はなく、一部のみが酸化されていればよい。また添加した酸化剤は添加した後、系外に取り出しても、取り出さなくてもよい。
ホール輸送層は光増感材料を担持した多孔質状の電子輸送層4の上に、直接ホール輸送層を形成する。ホール輸送層の作製方法には特に制限はなく、真空蒸着等の真空中で薄膜を形成する方法や湿式製膜法が挙げられる。製造コスト等を考慮した場合、特に湿式製膜法が好ましく、多孔質状の電子輸送層上に塗布する方法が好ましい。
この湿式製膜法を用いた場合、塗布方法は特に制限はなく、公知の方法にしたがって行なうことができる。例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、また、湿式印刷方法として、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷等様々な方法を用いることができる。また、超臨界流体あるいは臨界点より低い温度・圧力の亜臨界流体中で製膜してもよい。
前記超臨界流体は、気体と液体が共存できる限界(臨界点)を超えた温度・圧力領域において非凝集性高密度流体として存在し、圧縮しても凝集せず、臨界温度以上、かつ臨界圧力以上の状態にある流体である限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、臨界温度が低いものが好ましい。
超臨界流体としては、例えば、一酸化炭素、二酸化炭素、アンモニア、窒素、水、メタノール、エタノール、n−ブタノールなどのエルコール系溶媒、エタン、プロパン、2,3−ジメチルブタン、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素系溶媒、塩化メチレン、クロロトリフロロメタンなどのハロゲン系溶媒、ジメチルエーテルなどのエーテル系溶媒が好適である。これらの中でも、二酸化炭素は、臨界圧力7.3MPa、臨界温度31℃であることから、容易に超臨界状態をつくり出せるともに、不燃性で取扱いが容易であり、特に好ましい。
また、これらの流体は、単独であっても二種以上の混合であっても構わない。
前記亜臨界流体としては、臨界点近傍の温度及び圧力領域において、高圧液体として存在する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
上述した超臨界流体として挙げられる化合物は、亜臨界流体としても好適に使用することができる。
超臨界流体の臨界温度及び臨界圧力は特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、臨界温度としては、−273℃以上300℃以下が好ましく、0℃以上200℃以下が特に好ましい。
さらに、上述の超臨界流体及び亜臨界流体に加え、有機溶媒やエントレーナーを併用することもできる。
有機溶媒及びエントレーナーの添加により、超臨界流体中での溶解度の調整をより容易に行なうことができる。
このような有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
例えば、アセトン、メチルエチルケトン、あるいはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、
ギ酸エチル、酢酸エチル、あるいは酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、
ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、あるいはジオキサン等のエーテル系溶媒、
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、あるいはN−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、
ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、あるいは1−クロロナフタレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、
n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン、1,5−ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、あるいはクメン等の炭化水素系溶媒などが挙げられる。
本発明では、光増感材料を被覆した電子輸送層を設けた第一の電極上にホール輸送層を設けた後、プレス処理工程を施しても構わない。
このプレス処理を施すことによって、有機ホール輸送材料がより多孔質電極と密着するため効率が改善すると考えている。
プレス処理方法に特に制限はないが、IR錠剤整形器に代表されるような平板を用いたプレス成型法、ローラーなどを用いたロールプレス法を挙げることができる。
圧力としては10kgf/cm2以上が好ましく、30kgf/cm2以上がより好ましい。プレス処理する時間に特に制限はないが、1時間以内で行なうことが好ましい。また、プレス処理時に熱を加えても構わない。
また、上述のプレス処理の際、プレス機と電極間に離型材を挟んでも構わない。
前記離型材としては、ポリ四フッ化エチレン、ポリクロロ三フッ化エチレン、四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合体、ペルフルオロアルコキシフッ化樹脂、ポリフッ化ビニリデン、エチレン四フッ化エチレン共重合体、エチレンクロロ三フッ化エチレン共重合体、ポリフッ化ビニルなどのフッ素樹脂を挙げることができる。
上記プレス処理工程を行った後、対極を設ける前に、ホール輸送層と第二の電極に間に金属酸化物を設けても良い。設けてもよい金属酸化物としては、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化バナジウム、酸化ニッケルを挙げることができ、特に酸化モリブデンが好ましい。
これら金属酸化物をホール輸送層上に設ける方法としては特に制限はなく、スパッタリングや真空蒸着等の真空中で薄膜を形成する方法や湿式成膜法が挙げることができる。
湿式製膜法においては、金属酸化物の粉末あるいはゾルを分散したペーストを調製し、ホール輸送層上に塗布する方法が好ましい。
この湿式成膜法を用いた場合、塗布方法は特に制限はなく、公知の方法にしたがって行なうことができる。
例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、また、湿式印刷方法として、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷等様々な方法を用いることができる。膜厚としては0.1〜50nmが好ましく、1〜10nmがより好ましい。
<第二の電極>
第二の電極は、ホール輸送層形成後あるいは上述の金属酸化物上に新たに付与する。
また第二の電極は、通常前述の第一の電極と同様のものを用いることができ、強度や密封性が充分に保たれるような構成では支持体は必ずしも必要ではない。
第二の電極材料の具体例としては、白金、金、銀、銅、アルミニウム等の金属、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラフェン等の炭素系化合物、ITO、FTO、ATO等の導電性金属酸化物、ポリチオフェン、ポリアニリン等の導電性高分子が挙げられる。
第二の電極層の膜厚には特に制限はなく、また単独あるいは2種以上の混合で用いても構わない。
第二の電極の塗設については、用いられる材料の種類やホール輸送層の種類により、適宜ホール輸送層上に塗布、ラミネート、蒸着、CVD、貼り合わせ等の手法により形成可能である。
第二の電極を湿式で製膜する場合、湿式製膜時に有機溶媒を用いると、ホール輸送層を溶解させる課題があり、ポリチオフェン誘導体(PEDOT/PSS等)、金属ナノワイヤー等の水系ペーストを用いることが望ましい。残留水分は光電変換素子の性能劣化を引き起こすため、製膜後の水成分を除去するために、100℃以上の、好ましくは120℃程度の加熱が必要となる。
上記の様な高温プロセスを経た場合、従来の光電変換素子は性能劣化が生じるが、本発明の光電変換素子は、高温プロセスを経ても、室内光等の微弱な照射光において、優れた光電変換特性が得られる。
光電変換素子として動作するためには、第一の電極と第二の電極の少なくとも一方は実質的に透明でなければならない。
本発明の光電変換素子においては、第一の電極側が透明であり、太陽光を第一の電極側から入射させる方法が好ましい。この場合、第二の電極側には光を反射させる材料を使用することが好ましく、金属、導電性酸化物を蒸着したガラス、プラスチック、あるいは金属薄膜が好ましい。
また、太陽光の入射側に反射防止層を設けることも有効な手段である。
本発明の光電変換素子の第二の態様は、透明導電膜基板上に、第一の電極と、前記第一の電極上に設けられたホールブロッキング層と、前記ホールブロッキング層上に設けられた電子輸送層と、前記電子輸送層上に設けられた有機無機ペロブスカイト化合物層と、前記有機無機ペロブスカイト化合物層上に設けられたホール輸送層と、前記ホール輸送層上に設けられた第二の電極とを具備し、前記ホール輸送層は、本発明の3級アミン化合物を含む光電変換素子である。
この光電変換素子及び太陽電池の構成について、図2に基づいて説明する。尚、図2は、光電変換素子及び太陽電池の断面図の一例である。
図2に示す態様では、透明導電膜基板1、前記透明導電膜基板1上に設けられた第一の電極2、前記第一の電極2上に設けられたホールブロッキング層3、前記ホールブロッキング層3上に設けられた多孔質状の電子輸送層4、前記多孔質状の電子輸送層4上に設けられた有機無機ペロブスカイト化合物層10、前記有機無機ペロブスカイト化合物層10上に設けられたホール輸送層6、前記ホール輸送層6上に設けられた第二の電極7を有している。
前記第二の態様における第一の電極、ホールブロッキング層、電子輸送層、ホール輸送層、及び第二の電極は、前記第一の態様における第一の電極、ホールブロッキング層、電子輸送層、ホール輸送層、第二の電極と同様であるので、異なる構成要素のみ説明する。
<有機無機ペロブスカイト化合物層>
本発明における有機無機ペロブスカイト化合物層10は、有機無機ペロブスカイト化合物を含み電子輸送層上に設けられてなる。
本発明における有機無機ペロブスカイト化合物は有機化合物と無機化合物の複合物質であり、ハロゲン化金属からなる層と有機カチオン分子が並んだ層が交互に積層した層状ペロブスカイト型構造を示すことが好ましく、以下の一般式(a)にて表される化合物であることが好ましい。
αβγ ・・・一般式(a)
上記一般式(a)において、Xはハロゲン原子、Yはアルキルアンモニウム、ホルムアミジニウム、及びセシウムから選ばれる少なくとも1種(ただしセシウムのみの場合を除く)、Mは鉛及び/または錫、α:β:γの比率が3:1:1である。
具体的には、Xは塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子を挙げることができ、これらは単独または混合物として用いることができる。Yはメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、n−ブチルアンモニウム等のアルキルアンモニウム、ホルムアミジニウム、及びセシウムから選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。ただしセシウムのみの場合を除く。Mは鉛及び/または錫を示す。
前記アルキルアンモニウムとしては、メチルアンモニウムが好ましい。
前記X、Y、及びMとして2種以上を用いる場合、α、β、γは、用いた2種以上イオンの和となる。
本発明における有機無機ペロブスカイト化合物は、例えば、ハロゲン化金属(ハロゲン化鉛とハロゲン化錫の混合物)と、ハロゲン化アルキルアミンまたはハロゲン化ホルムアミジンとを溶媒に溶解あるいは分散した溶液を電子輸送層上に塗布、乾燥することで形成する一段階析出法、あるいはハロゲン化金属を溶解あるいは分散した溶媒を電子輸送層上に塗布、乾燥した後、ハロゲン化アルキルアミンまたはハロゲン化ホルムアミジンを溶媒に溶解した溶液中に浸して有機無機ペロブスカイト化合物を形成する二段階析出法のいずれを用いても構わないが、特に二段階析出法が好ましい。ハロゲン化アルキルアミンとしては、ハロゲン化メチルアミンが好ましく、ハロゲン化メチルアミンおよびハロゲン化ホルムアミジンのいずれかを含むことが好ましい。
電子輸送層上に塗布する方法としては、浸漬法、スピンコート法、スプレー法、ディップ法、ローラ法、エアーナイフ法等を用いることができる。また、二酸化炭素などを用いた超臨界流体中で電子輸送層上に析出させても構わない。
二段階析出法の場合、ハロゲン化金属を電子輸送層上に形成したものと、ハロゲン化アルキルアミン等の溶液を接触する方法としては、浸漬法、スピンコート法、スプレー法、ディップ法、ローラ法、エアーナイフ法等を用いることができる。また、二酸化炭素などを用いた超臨界流体中でハロゲン化アルキルアミンと接触することによって析出させても構わない。
有機無機ペロブスカイト化合物層の膜厚としては、0.05〜1μmが好ましく、0.1〜0.5μmがより好ましい。
また、電子輸送層上にペロブスカイト化合物層を形成した後で、光増感材料を吸着させても構わない。光増感材料は使用される励起光により光励起される化合物であれば特に限定されないが、具体的には前記第一の態様において光増感材料として用いた化合物が挙げられる。また、前記第一の態様における光増感材料と同様に吸着させることができる。有機無機ペロブスカイト化合物層も結晶構造間に空壁があり、溶液状態の光増感材料が浸透し、多孔質状の電子輸送層表面に吸着させることができる。
本発明の有機光電変換素子においては、酸素、水分などによる素子の劣化を防止するために、封止材を用いて封止することできる。
前記封止材、及び封止方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
<用途>
本発明の光電変換素子は、太陽電池及びこれを備えた電源装置に応用できる。
応用例としては、従来から太陽電池やそれを用いた電源装置を利用している機器類であれば、いずれのものでも可能である。
例えば電子卓上計算機や腕時計用の太陽電池に用いてもよいが、本発明の光電変換素子の特徴を活用する一例として、携帯電話、電子手帳、電子ペーパー等の電源装置が挙げられる。また充電式や乾電池式の電気器具の連続使用時間を長くするための補助電源として用いることもできる。更には、センサ用の自立型電源として、二次電池と組み合わせた一次電池代替としても用いることができる。
<本発明の3級アミン化合物の合成方法>
報告例(J. Org .Chem., 67 (2002) 3029)同様に下記ルートから容易に合成することができる。
Figure 0006850435
(上記式中、Ar1、Ar2は、それぞれアルキル基もしくはアルコキシ基を有するベンゼン環、無置換のベンゼン環、アルキル基もしくはアルコキシ基を有するナフタレン環、及び無置換のナフタレン環のいずれかを表す。アルキル基やアルコキシ基は、置換もしくは無置換のどちらでも構わない。Ar1、Ar2は同一でも異なってもよい。Xは、ハロゲン元素を表す。)
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の実施の形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例I−1]
(3級アミン化合物(化合物No.1−1)の合成)
Figure 0006850435
4−ブロモベンジルブロミド(東京化成社製):4.99gとジベンジルアミン(東京化成社製):3.95gと炭酸カリウム(関東化学社製):4.14gとオルトジクロロベンゼン(関東化学社製):50mlを3つ口フラスコに秤量し、90℃で3時間加熱攪拌を行った。反応物を、抽出し、硫酸マグネシウムを加えた後、濾過し、濃縮した。粗収物をカラムクロマトグラフィー(トルエン/シクロヘキサン=1/1)で精製し、無色オイル状のブロモ中間体(7.08g)を得た。
Figure 0006850435
合成したブロモ中間体:5.9gと4−ピリジルボロン酸(東京化成社製):1.18gとテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(東京化成社製):0.93g、炭酸カリウム(関東化学社製):8.9gとエタノール:100mlと水:100mlを秤量し、アルゴンガス雰囲気下にて還流攪拌した。反応物を抽出し、硫酸マグネシウムを加えた後、濾過し、濃縮した。粗収物をカラムクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル=1/1)で精製し、無色粉末状の3級アミン化合物(化合物No.1−1)(1.3g)を得た。得られた3級アミン化合物のIRスペクトルを図3に示す。
[実施例II−1]
(酸化チタン半導体電極の作製)
金属チタンからなるターゲットを用いた酸素ガスによる反応性スパッタにより、ITO系ガラス基板上に酸化チタンの緻密なホールブロッキング層を形成した。
次に、酸化チタン(日本エアロジル社製P90)3g、アセチルアセトン0.2g、界面活性剤(和光純薬社製ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)0.3gを水5.5g、エタノール1.0gと共にビーズミル処理を12時間施した。
得られた分散液にポリエチレングリコール(#20,000)1.2gを加えてペーストを作製した。
このペーストを、上記ホールブロッキング層上に膜厚1.5μmになるように塗布し、室温で乾燥後、空気中500℃で30分間焼成し、多孔質状の電子輸送層を形成した。
(光電変換素子の作製)
上記酸化チタン半導体電極を、増感色素として前記構造式(4)で表される三菱製紙社製D102(0.5mM、アセトニトリル/t−ブタノール(体積比1:1)溶液)に浸漬し、1時間暗所にて静置し光増感材料を吸着させた。
光増感剤を担持した半導体電極上に、下記構造式(8)で表される有機ホール輸送材料(H101、Dyesol):183.3mgのクロロベンゼン溶液:1mlに、関東化学社製リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド:12.83mg、前記一般式(1)で表される3級アミン化合物(化合物No.1−1):36.66mgを加えて得た溶液を、光増感剤を担持した半導体電極上にスピンコートにてホール輸送層を成膜した。この上にPEDOT/PSS(アルドリッチ社製:OrgaconTM EL−P−5015)ペーストをスクリーン印刷により製膜し、120℃30分間加熱乾燥させ第二の電極を作製し、光電変換素子を作製した。
Figure 0006850435
(光電変換素子の評価)
得た光電変換素子の白色LED照射下(100ルクス:25μW/cm2)における光電変換効率を測定した。白色LEDはコスモテクノ社製デスクランプCDS−90α(スタディーモード)、評価機器はNF回路設計ブロック社製太陽電池評価システムAs−510−PV03にて測定した。その結果を表1に表す。
[実施例II−2]
実施例II−1における有機ホール輸送材料を前記一般式(2)で表される前記構造式(6)で表される有機ホール輸送材料(SHT−263、メルク株式会社)に変更した以外は実施例II−1と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。その結果を表1に示す。
[実施例II−3]
実施例II−1における有機ホール輸送材料を前記一般式(2)で表される前記構造式(7)で表される有機ホール輸送材料(LT−S9170、Luminescence Technology株式会社)に変更した以外は実施例II−1と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。その結果を表1に示す。
[実施例II−4〜7]
実施例II−3における化合物No.1−1の3級アミン化合物を表1に示す3級アミン化合物に変更した以外は実施例II−3と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。その結果を表1に示す。
[実施例II−8]
実施例II−2における第二の電極を、銀を真空蒸着による100nm製膜した以外は、実施例II−2と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。その結果を表1に示す。
[実施例III−1]
(酸化チタン半導体電極の作製)
チタニウムテトラ−n−プロポキシド2ml、酢酸4ml、イオン交換水1ml、2−プロパノール40mlを混合し、FTOガラス基板上にスピンコートし、室温で乾燥後、空気中450℃で30分間焼成した。再度同一溶液を用いて、得た電極上に膜厚50nmになるようにスピンコートで塗布し、空気中450℃で30分間焼成して緻密なホールブロッキング層を形成した。
Dyesol社製18NR−T(酸化チタンペースト)を、上記ホールブロッキング層上に膜厚300nmになるようにスピンコートで塗布し、120℃で3分温風乾燥後、空気中500℃で30分間焼成し、多孔質状の電子輸送層を形成した。
(有機無機ペロブスカイト化合物層の作製)
ヨウ化鉛(II)(0.461g、東京化成社製)とヨウ化メチルアミン(0.159g、東京化成社製)を溶解したN,N−ジメチルホルムアミド(1ml、関東化学社製)溶液を、上記多孔質酸化チタン電極上にスピンコートを用いて塗布し、120℃で10分乾燥して、CH3NH3PbI3の有機無機ペロブスカイト化合物層を形成した。
(ホール輸送層の作製)
前記構造式(6)で表される有機ホール輸送材料SHT−263(60mM、メルク株式会社)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(14mM、関東化学社製)、前記一般式(1)で表される3級アミン化合物(化合物No.1−1)(53mM)を溶解したクロロベンゼン溶液をスピンコートにて製膜し、自然乾燥した。この上に金を真空蒸着で約100nm形成して太陽電池素子を作製した。
(光電変換素子の評価)
得られた光電変換素子の白色LED照射下(1000ルクス:250μW/cm2)における光電変換効率を測定した。白色LEDはコスモテクノ社製デスクランプCDS−90α(スタディーモード)、評価機器はNF回路設計ブロック社製太陽電池評価システムAs−510−PV03にて測定した。
その結果、開放電圧0.68V、短絡電流密度140.2μA/cm2、曲線因子0.69、最大出力65.78μW/cm2と良好な値を示した。
[実施例III−2]
実施例III−1における化合物No.1−1の3級アミン化合物をNo.1−5に変更した以外は、実施例III−1と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。
その結果、開放電圧0.67V、短絡電流密度145.2μA/cm2、曲線因子0.67、最大出力65.18μW/cm2と良好な値を示した。
[実施例III−3]
実施例III−1で作製した光電変換素子の外周をエポキシ樹脂とガラスで封止し、60℃に加熱したオーブンに100時間入れた。
前記60℃100時間の耐久試験後の光電変換素子について、実施例III−1と同様にして評価した。
その結果、開放電圧0.62V、短絡電流密度146.6μA/cm2、曲線因子0.68、最大出力61.80μW/cm2と良好な値を示した。
前記耐久性試験後の最大出力維持率は、初期値(実施例III−1の光電変換素子の最大出力)の93.9%であり、良好な耐久性を有していることが分かる。
[実施例III−4]
実施例III−2で作製した光電変換素子の外周をエポキシ樹脂とガラスで封止し、60℃に加熱したオーブンに100時間入れた。
前記60℃100時間の耐久試験後の光電変換素子について、実施例III−1と同様にして評価した。
その結果、開放電圧0.63V、短絡電流密度148.2μA/cm2、曲線因子0.66、最大出力61.62μW/cm2と良好な値を示した。
前記耐久性試験後の最大出力維持率は、初期値(実施例III−2の光電変換素子の最大出力)の94.5%であり、良好な耐久性を有していることが分かる。
[実施例III−5]
実施例III−1におけるヨウ化鉛(II)(0.461g、東京化成社製)を、ヨウ化鉛(II)(0.415g、東京化成社製)とヨウ化スズ(II)(0.037g、Alfa Aesar社製)に変更した以外は実施例III−1と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。
その結果、開放電圧0.57V、短絡電流密度155.2μA/cm2、曲線因子0.65、最大出力57.50μW/cm2と、ヨウ化鉛単独に比較して若干低い特性ではあるが、良好な値を示した。
[実施例III−6]
実施例III−1におけるヨウ化鉛(II)(0.461g、東京化成社製)を、ヨウ化鉛(II)(0.369g、東京化成社製)とヨウ化スズ(II)(0.075g、Alfa Aesar社製)に変更した以外は実施例III−1と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。
その結果、開放電圧0.54V、短絡電流密度157.7μA/cm2、曲線因子0.64、最大出力54.50μW/cm2と、ヨウ化鉛単独に比較して若干低い特性ではあるが、良好な値を示した。
[実施例III−7]
実施例III−1におけるヨウ化メチルアミン(0.159g、東京化成社製)を、ヨウ化メチルアミン(0.135g、東京化成社製)とヨウ化ホルムアミジン(0.024g、東京化成社製)に変更した以外は実施例III−1と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。
その結果、開放電圧0.65V、短絡電流密度140.4μA/cm2、曲線因子0.70、最大出力63.88μW/cm2と良好な値を示した。
[実施例III−8]
実施例III−1におけるヨウ化メチルアミン(0.159g、東京化成社製)を、ヨウ化メチルアミン(0.135g、東京化成社製)とヨウ化ホルムアミジン(0.017g、東京化成社製)とヨウ化セシウム(0.013g、Aldrich社製)に変更した以外は実施例III−1と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。
その結果、開放電圧0.64V、短絡電流密度142.1μA/cm2、曲線因子0.69、最大出力62.75μW/cm2と良好な値を示した。
[実施例III−9]
実施例III−1におけるヨウ化メチルアミン(0.159g、東京化成社製)を、ヨウ化メチルアミン(0.143g、東京化成社製)とヨウ化セシウム(0.026g、Aldrich社製)に変更した以外は実施例III−1と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。
その結果、開放電圧0.62V、短絡電流密度139.1μA/cm2、曲線因子0.69、最大出力59.51μW/cm2と良好な値を示した。
[比較例1]
実施例II−2における化合物No.1−1の3級アミン化合物をターシャルブチルピリジン(tBP:アルドリッチ社製)に変更した以外は、実施例II−2と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。その結果を表1に示す。
[比較例2]
実施例II−2における化合物No.1−1の3級アミン化合物を下記化合物(DBAP)に変更した以外は、実施例II−2と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。その結果を表1に示す。
Figure 0006850435
[比較例3]
実施例II−8における化合物No.1−1の3級アミン化合物をターシャルブチルピリジン(tBP:アルドリッチ社製)に変更した以外は、実施例II−8と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。その結果を表1に示す。
[比較例4]
実施例III−1における化合物No.1−1の3級アミン化合物をターシャルブチルピリジン(tBP:アルドリッチ社製)に変更した以外は、実施例III−1と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。
その結果、開放電圧0.52V、短絡電流密度102.2μA/cm2、曲線因子0.66、最大出力35.07μW/cm2であった。
[比較例5]
実施例III−1における化合物No.1−1の3級アミン化合物を上記化合物(DBAP)に変更した以外は、実施例III−1と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。
その結果、開放電圧0.58V、短絡電流密度115.4μA/cm2、曲線因子0.67、最大出力44.84μW/cm2であった。
[比較例6]
比較例4で作製した光電変換素子の外周をエポキシ樹脂とガラスで封止し、60℃に加熱したオーブンに100時間入れた。
前記60℃100時間の耐久試験後の光電変換素子について、実施例III−1と同様にして評価した。
その結果、開放電圧0.43V、短絡電流密度95.5μA/cm2、曲線因子0.57、最大出力23.04μW/cm2であった。
前記耐久性試験後の最大出力維持率は、初期値(比較例4の光電変換素子の最大出力)の65.7%であった。
[比較例7]
比較例5で作製した光電変換素子の外周をエポキシ樹脂とガラスで封止し、60℃に加熱したオーブンに100時間入れた。
前記60℃100時間の耐久試験後の光電変換素子について、実施例III−1と同様にして評価した。
その結果、開放電圧0.49V、短絡電流密度103.3μA/cm2、曲線因子0.61、最大出力30.87μW/cm2であった。
前記耐久性試験後の最大出力維持率は、初期値(比較例5の光電変換素子の最大出力)の68.8%であった。
Figure 0006850435
Figure 0006850435
前記実施例II−1〜7の光電変換素子は、第二の電極作製時に加熱乾燥を行っており、加熱乾燥を行っていない実施例II−8と比べて、短絡電流密度や開放電圧が高くなり、特異的に出力向上が認められる。一般的なターシャルブチルピリジン(tBP)を用いた比較例1と比較例3を比べると、加熱により従来結果のような出力劣化が認められる。また、比較例2の光電変換素子は、DBAPは3級アミン化合物であるが、ベンジル基が2つの化合物であり、塩基性が若干弱いことにより、内部抵抗が低くなり、出力低下となった。
前記実施例III−1〜10の光電変換素子は、比較例4〜7と比べて、前記開放電圧、短絡電流密度、曲線因子、最大出力に示される初期特性が良好であり、また耐久試験後の最大出力維持率にも優れ、作製後の高温保存に対しても優れた耐久性を示した。
以上明らかなように、本発明の光電変換素子は、微弱光環境下における光電変換特性がより優れている。更に、安価製造プロセス時に課題となる高温プロセスを経ることで、より高出力となることがわかる。
特開平11−144773号公報
パナソニック電工技報, 56 (2008) 87 J. Am. Chem. Soc., 133 (2011) 18042 J. Am. Chem. Soc., 135 (2013) 7378 フジクラ技報, 121 (2011) 42

Claims (9)

  1. 下記一般式(1)で表される3級アミン化合物。
    Figure 0006850435
    (式中、Ar1、Ar2は、それぞれアルキル基もしくはアルコキシ基を有するベンゼン環、無置換のベンゼン環、アルキル基もしくはアルコキシ基を有するナフタレン環、及び無置換のナフタレン環のいずれかを表す。)
  2. 第一の電極と、ホールブロッキング層と、電子輸送層と、ホール輸送層と、第二の電極とを有し、前記ホール輸送層は、請求項1に記載の3級アミン化合物を含む光電変換素子。
  3. 前記ホール輸送層が、下記一般式(2)で表されるホール輸送材料を含む請求項2に記載の光電変換素子。
    Figure 0006850435
    (式中、R1は、水素原子もしくはメチル基を表す。)
  4. 前記電子輸送層が、酸化チタンを含む請求項2または3に記載の光電変換素子。
  5. 前記ホールブロッキング層が、酸化チタンを含む請求項2乃至4のいずれか一項に記載の光電変換素子。
  6. 透明導電膜基板上に、第一の電極と、前記第一の電極上に設けられたホールブロッキング層と、前記ホールブロッキング層上に設けられた電子輸送層と、前記電子輸送層上に設けられた有機無機ペロブスカイト化合物層と、前記有機無機ペロブスカイト化合物層上に設けられたホール輸送層と、前記ホール輸送層上に設けられた第二の電極とを具備し、前記ホール輸送層は、下記一般式(1)で表される3級アミン化合物を含む光電変換素子。
    Figure 0006850435
    (式中、Ar1、Ar2は、それぞれアルキル基もしくはアルコキシ基を有するベンゼン環、無置換のベンゼン環、アルキル基もしくはアルコキシ基を有するナフタレン環、及び無置換のナフタレン環のいずれかを表す。)
  7. 前記有機無機ペロブスカイト化合物層における有機無機ペロブスカイト化合物が、下記一般式(a)にて表される請求項6記載の光電変換素子。
    αβγ ・・・一般式(a)
    (式中、Xはハロゲン原子、Yはアルキルアンモニウム、ホルムアミジニウム、及びセシウムから選ばれる少なくとも1種(ただしセシウムのみの場合を除く)、Mは鉛及び/または錫、α:β:γの比率が3:1:1である。)
  8. 前記アルキルアンモニウムが、メチルアンモニウムである請求項7に記載の光電変換素子。
  9. 請求項2乃至8のいずれか一項に記載の光電変換素子を具備する太陽電池。
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