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JP6725534B2 - 極めて高い分子量及び低い粘度のエステル化セルロースエーテルの生成プロセス - Google Patents

極めて高い分子量及び低い粘度のエステル化セルロースエーテルの生成プロセス Download PDF

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Description

本発明は、エステル化セルロースエーテルの改善された調製プロセスに関する。
セルロースエーテルのエステル、それらの使用、及びそれらの調製プロセスは、一般に当該技術分野において既知である。セルロースエーテル−エステルの既知の生成方法は、例えば、米国特許第4,226,981号及び同第4,365,060号に記載されるように、セルロースエーテルと脂肪族モノカルボン酸無水物及びジカルボン酸無水物との反応を含む。
セルロースエーテルの様々な既知のエステルは、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)などの、医薬剤形用の腸溶性ポリマーとして有用である。腸溶性ポリマーは、胃の酸性環境における溶解に耐性であるポリマーである。かかるポリマーでコーティングされた剤形は、酸性環境において薬物を不活性化もしくは分解から保護するか、または薬物による胃の刺激を阻止する。米国特許第4,365,060号は、優れた腸溶挙動を有すると言われる腸溶カプセルを開示する。
欧州特許出願第EP0219426号は、(a)エーテル形成基としてヒドロキシプロポキシル基を有するセルロースエーテル(そのうち2重量%の水溶液が20℃で少なくとも5センチポアズの粘度を有する)を、(c)アルカリ金属酢酸塩及び酢酸の組み合わせの存在下で、(b)ジカルボン酸無水物、または脂肪族モノカルボン酸の無水物とのそれの混合物と反応させる、セルロースエーテルの腸溶性酸性ジカルボン酸エステルを生成するためのプロセスを開示する。EP0219426は、少なくとも6センチポアズの粘度を有するセルロースエーテルから生成された酸性のジカルボン酸エステルが、人工胃液に対して耐性を有した錠剤上の腸溶性フィルムコーティング材料をもたらしたことを示す。酸性のジカルボン酸エステルがわずか3センチポアズの粘度を有するセルロースエーテルから生成された際、相当な数の錠剤が人工胃液中で崩壊した。高粘度のセルロースエーテルから生成された酸性のジカルボン酸エステルは、酸性のジカルボン酸エステルを生成するための比較可能なプロセス及びレシピパラメータが適用される場合、低粘度のセルロースエーテルから生成された分子量よりも高い分子量を有する。
先行技術、例えば、国際特許出願第WO2005/115330号に公開されるように、HPMCASは、難水溶性薬物の生物学的利用能を増加させるのにも有用であることが知られている。これは、70%近くの新薬候補が低水溶性化合物であるため、非常に重要なものである。一般的規則として、難水溶性薬物は、低生物学的利用能を有する。HPMCASは、薬物の結晶性を低減し、それにより薬物の溶解に必要な活性化エネルギーを最小に抑え、加えて薬物分子の周囲に親水性状態を確立し、それにより薬物自体の溶解度を改善してその生物学的利用能、すなわち、摂取時の個人によるそのインビボ吸収を増加させることを目的とする。HPMCASの大きな有用性を鑑みて、多大な研究がHPMCASの修飾及びそれらを調製するためのプロセスに費やされた。
国際特許出願第WO2005/115330号及び同第WO2011/159626号は、置換レベルの特定の組み合わせを有するHPMCASポリマーを開示する。
国際特許出願第WO2014/133885号は、スクシノイル基及びアセチル基の特定の置換パターンのHPMCASを開示する。HPMCASは、酢酸及びコハク酸を別個のステップでヒドロキシプロピルメチルセルロースと反応させることにより生成される。
HPMCASの置換レベル及び置換パターンが難水溶性薬物の生物学的利用能を増加させるその能力に対して影響を与えることは、当該技術分野において認識されている。HPMCASのようなエステル化セルロースエーテルの分子量も難水溶性薬物の生物学的利用能を増加させるその能力に対して重要な影響を与えると考えられている。Edgar et al.,Cellulose(2007),14:49−64は、分子量のみが実質的に異なる、類似する組成物の2つのCAB(酢酸酪酸セルロース)を用いたテオフィリンの微粒子形成に対する研究について述べている。テオフィリンの放出は、高ポリマー分子量により劇的に緩徐され、小さい粒径により劇的に加速され、高粘度溶液からの粒子形成により実質的低減された。
国際特許出願第WO2014/031447号及び同第WO2014/031448号は、HPMCASの分子量の制御方法を開示する。WO2014/031447は、HPMCASの分子量がモル比[脂肪族カルボン酸/セルロースエーテルの無水グルコース単位]の減少と共に増加することを開示する。WO2014/031448は、HPMCASの分子量がモル比[アルカリ金属カルボキシレート/セルロースエーテルの無水グルコース単位]の増加と共に増加することを開示する。脂肪族カルボン酸及びアルカリ金属カルボキシレートは、それぞれ、反応希釈剤及び反応触媒として使用される。
高分子量のエステル化セルロースエーテルは、胃液に対する良好な耐性のために非常に望ましいが、既知の高分子量のエステル化セルロースエーテルは、それらが7〜10重量パーセントの濃度などの高濃度で有機溶媒に溶解されるとき、高い粘度を示す。高い粘度は、コーティングプロセスにおけるそれらの効率を低減する。コーティングプロセスにおいて、有機溶媒中の高濃度のエステル化セルロースエーテルは、後次に除去される必要がある溶媒の量を最小限に抑えるために望ましい。一方で、溶液の粘度は、コーティングされる錠剤などの剤形上の溶液の噴霧を容易にするために低くあるべきである。
Dowケースの国際特許出願第WO2014/137779号は、高い分子量及び適度に低いアセトン中の粘度を有する、HPMCASのようなエステル化セルロースエーテル、及びそれらを生成するためのプロセスを開示する。
HPMCASのようなエステル化セルロースエーテルの大きな利用性及び重要性を鑑みて、当該技術分野を強化し、エステル化セルロースエーテルの新しい生成方法を見出すことが本発明の目的である。本発明の好ましい目的は、高分子量を有するが、依然として噴霧乾燥及びコーティングプロセスにおいて効率的に使用され得る、エステル化セルロースエーテルを生成する新たな方法を見出すことである。
驚くべきことに、HPMCASのようなエステル化セルロースエーテルの分子量及びアセトン中の粘度の比が、最適化され得ること、すなわち、エステル化セルロースエーテルの生成時に、反応希釈剤を異なるステージで反応混合物に供給することにより、その粘度が、その分子量を著しく減少させることなく減少され得ること、及び/またはその分子量が、その粘度を著しく増加させることなく増加され得ることを見出された。
したがって、本発明は、エステル化セルロースエーテルの生成プロセスに関し、該プロセスは、
i)セルロースエーテル、脂肪族モノカルボン酸無水物、ジカルボン酸無水物、及び反応希釈剤を含む反応混合物を調製し、この反応混合物の成分を混合する前、混合中、または混合した後に、反応混合物を60℃〜110℃の温度に加熱して、エステル化反応を行うステージと、
ii)エステル化反応が完了する前に、追加量の反応希釈剤を連続してまたは1回以上に分けて反応混合物に添加し、エステル化反応を更に進行させるステージとを含む。
実施形態の説明
本発明のプロセスにおいて出発材料として使用されるセルロースエーテルは、本発明の文脈において無水グルコース単位として表される、β−1,4グリコシド結合したD−グルコピラノース繰り返し単位を有するセルロース骨格を有する。セルロースエーテルは、好ましくは、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、またはヒドロキシアルキルアルキルセルロースである。これは、本発明のプロセスにおいて利用されるセルロースエーテルにおいて、無水グルコース単位のヒドロキシル基の少なくとも一部が、アルコキシル基もしくはヒドロキシアルコキシル基、またはアルコキシル基とヒドロキシアルコキシル基との組み合わせにより置換されていることを意味する。ヒドロキシアルコキシル基は、典型的には、ヒドロキシメトキシル基、ヒドロキシエトキシル基、及び/またはヒドロキシプロポキシル基である。ヒドロキシエトキシル基及び/またはヒドロキシプロポキシル基が好ましい。典型的には、ヒドロキシアルコキシル基の1種または2種がセルロースエーテルに存在する。好ましくは、ヒドロキシアルコキシル基の1種、より好ましくはヒドロキシプロポキシルが存在する。アルコキシル基は、典型的には、メトキシル基、エトキシル基、及び/またはプロポキシル基である。メトキシル基が好ましい。
上記で定義されたセルロースエーテルの例は、メチルセルロース、エチルセルロース、及びプロピルセルロースなどのアルキルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシブチルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、及びヒドロキシブチルエチルセルロースなどのヒドロキシアルキルアルキルセルロース、ならびにヒドロキシエチルヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの2つ以上のヒドロキシアルキル基を有するものが挙げられる。最も好ましくは、セルロースエーテルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのヒドロキシアルキルメチルセルロースである。
ヒドロキシアルコキシル基による無水グルコース単位のヒドロキシル基の置換度は、ヒドロキシアルコキシル基のモル置換、MS(ヒドロキシアルコキシル)によって表される。MS(ヒドロキシアルコキシル)は、セルロースエーテルにおける無水グルコース単位当たりのヒドロキシアルコキシル基の平均モル数である。ヒドロキシアルキル化反応中、セルロース骨格に結合されたヒドロキシアルコキシル基のヒドロキシル基が、アルキル化剤、例えば、メチル化剤及び/またはヒドロキシアルキル化剤によって更にエーテル化され得ることが理解されるべきである。無水グルコース単位の同じ炭素原子位置に関して、複数の後続ヒドロキシアルキル化エーテル化反応は側鎖をもたらし、この場合、複数のヒドロキシアルコキシル基は、エーテル結合によって互いに共有結合され、各側鎖は全体として、セルロース骨格に対するヒドロキシアルコキシル置換基を形成する。
故に、「ヒドロキシアルコキシル基」という用語は、MS(ヒドロキシアルコキシル)の設定において、単一のヒドロキシアルコキシル基または上に概説される側鎖のいずれかを含む、ヒドロキシアルコキシル置換基の構成単位として、ヒドロキシアルコキシル基と称されるものとして解釈される必要があり、この場合、2つ以上のヒドロキシアルコキシ単位が、エーテル結合によって互いに共有結合される。この定義において、ヒドロキシアルコキシル置換基の末端ヒドロキシル基が、更にアルキル化、例えばメチル化されるか否かは重要でなく、アルキル化ヒドロキシアルコキシル置換基及び非アルキル化ヒドロキシアルコキシル置換基の両方が、MS(ヒドロキシアルコキシル)の決定に含まれる。本発明のプロセスに利用されるセルロースエーテルは、一般に、0.05〜1.00、好ましくは0.08〜0.90、より好ましくは0.12〜0.70、最も好ましくは0.15〜0.60、特に0.20〜0.40の範囲のヒドロキシアルコキシル基のモル置換を有する。
無水グルコース単位当たりのメトキシル基などのアルコキシル基によって置換されたヒドロキシル基の平均数は、アルコキシル基の置換度、DS(アルコキシル)として指定される。上記のDSの定義において、「アルコキシル基によって置換されたヒドロキシル基」という用語は、本発明内では、セルロース骨格の炭素原子に直接結合したアルキル化ヒドロキシル基だけでなく、セルロース骨格に結合したヒドロキシアルコキシル置換基のアルキル化ヒドロキシル基も包含するものとして解釈されるべきである。本発明のプロセスに利用されるセルロースエーテルは、一般に、1.0〜2.5、好ましくは1.1〜2.4、より好ましくは1.2〜2.2、最も好ましくは1.6〜2.05、特に1.7〜2.05の範囲のDS(アルコキシル)を有する。
アルコキシル基の置換度及びヒドロキシアルコキシル基のモル置換は、ヨウ化水素によるセルロースエーテルのツアイゼル開裂(Zeisel cleavage)及び後続の量的ガスクロマトグラフィー分析によって決定され得る(G.Bartelmus and R.Ketterer,Z.Anal.Chem.,286(1977)161−190)。最も好ましくは、本発明のプロセスに利用されるセルロースエーテルは、DS(アルコキシル)について上に示した範囲内のDS(メトキシル)及びMS(ヒドロキシアルコキシル)について上に示した範囲内のMS(ヒドロキシプロポキシル)を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
本発明のプロセスにおいて出発材料として使用されるセルロースエーテルは、ASTM D2363−79(再承認2006)に従って20℃において2重量%の水溶液として測定して、一般に、200mPa・sまで、好ましくは100mPa・sまで、より好ましくは50mPa・sまで、最も好ましくは5mPa・sまでの粘度を有する。一般に、それらの粘度は、20℃において2重量%の水溶液として測定して、少なくとも1.2mPa・s、典型的には少なくとも1.8mPa・s、更により典型的には少なくとも2.4mPa・s、最も典型的には少なくとも2.8mPa・sである。かかる粘度のセルロースエーテルは、高粘度のセルロースエーテルを部分的解重合プロセスに曝すことにより得ることができる。部分的解重合プロセスは、当該技術分野において周知であり、例えば、欧州特許出願第EP1141029号、同第EP0210917号、同第EP1423433号、及び米国特許第4,316,982号に記載されている。あるいは、部分的解重合は、例えば、酸素または酸化剤の存在によって、セルロースエーテルの生成中に達成され得る。
本発明のプロセスにおいて利用されるセルロースエーテルの無水グルコース単位のモル数は、DS(アルコキシル)及びMS(ヒドロキシアルコキシル)からの置換無水グルコース単位の平均分子量を計算することにより、出発材料として使用されるセルロースエーテルの重量から決定することができる。
本発明のプロセスのステージi)において、セルロースエーテル、脂肪族モノカルボン酸無水物、ジカルボン酸無水物、及び反応希釈剤を含む、反応混合物が調製される。本発明の一実施形態において、アルカリ金属カルボキシレートなどの反応触媒を追加で含む、反応混合物が調製される。この反応混合物は、反応混合物の成分を混合する前、混合中、または混合した後に、60℃〜110℃の温度まで加熱され、エステル化反応を行う。
本発明のステージi)の一実施形態において、本発明のプロセスにおいて利用されるセルロースエーテル、脂肪族モノカルボン酸無水物、ジカルボン酸無水物、及びアルカリ金属カルボキシレートなどの反応触媒の全体量、ならびにこのプロセスにおいて利用される反応希釈剤の一分量を合わせて、反応混合物を提供する。この実施形態において、混合物は、好ましくは、反応混合物の成分の混合中、またはより好ましくは混合した後に加熱される。
本発明の別の実施形態において、本発明のステージi)は、いくつかのステップに分割される。好ましくは、プロセスのステージi)は、iA)セルロースエーテル及びアルカリ金属カルボキシレートなどの第1の量の反応触媒を、反応希釈剤に溶解または分散させるステップと、iB)脂肪族モノカルボン酸無水物及びジカルボン酸無水物を、ステップiA)において得られた混合物に添加する前、添加中、または添加した後に、得られた混合物を60℃〜110℃の温度に加熱するステップと、iC)アルカリ金属カルボキシレートなどの第2の量の反応触媒を添加するステップとを含む。好ましいアルカリ金属カルボキシレートは、酢酸ナトリウムまたは酢酸カリウムである。ステップiA)において、最初にセルロースエーテルもしくは最初にアルカリ金属カルボキシレートなどの反応触媒、または両方を同時に、反応希釈剤に溶解または分散させることができる。プロセスのステージi)において反応混合物に添加されるアルカリ金属カルボキシレートなどの反応触媒の総量の一部のみを、ステップiA)において添加する。好ましくは、反応触媒の総量の15〜35パーセントのみ、より好ましくは20〜30パーセントのみが、ステップiA)において添加される。
好ましくは、第2の量のアルカリ金属カルボキシレートなどの反応触媒が、反応混合物に添加される前に、ステップiB)の反応混合物においてエステル化反応を進行させる。典型的には、エステル化反応は、第2の量の反応触媒の添加後に、ステップiC)の反応混合物において更に進行させる。しかしながら、ステップiC)の後、エステル化反応を未だ完了してはならない。
反応のステージi)においてエステル化反応を完了させる前に、ステージi)はステップiA)、iB)、及びiC)に任意に分割され、プロセスのステージii)において、追加量の反応希釈剤を連続してまたは1回以上に分けて反応混合物に添加し、エステル化反応を更に進行させる。
反応のステージi)(ステージi)はステップiA)、iB)、及びiC)に任意に分割される)、及び反応のステージii)において利用される好ましい出発材料、それらの量、及び反応条件が下に記載される。
反応希釈剤は、酢酸、プロピオン酸、または酪酸などの脂肪族カルボン酸である。反応希釈剤は、ジクロロメタンまたはジクロロメチルエーテルなどのハロゲン化C−C誘導体などの、室温で液体でありかつセルロースエーテルと反応しない他の溶媒または希釈剤を少量含むことができるが、脂肪族カルボン酸の量は、反応希釈剤の総重量を基準として、一般に、50パーセントを超え、好ましくは少なくとも75パーセント、より好ましくは少なくとも90パーセントである。最も好ましくは、反応希釈剤は、本質的に脂肪族カルボン酸からなる。ステージi)における反応混合物は、一般に、セルロースエーテルの100重量部当たり100〜2,000重量部、好ましくは100〜1,000重量部、より好ましくは100〜250重量部の反応希釈剤を含む。脂肪族カルボン酸が、反応希釈剤として使用される場合、ステージi)におけるモル比[脂肪族カルボン酸/セルロースエーテルの無水グルコース単位]は、一般に、[4.0/1.0]〜[11.5/1.0]、好ましくは[5.0/1.0]〜[11.0/1.0]、より好ましくは[6.0/1.0]〜[9.0/1.0]、及び最も好ましくは[6.2/1.0]〜[7.7/1.0]である。
好ましい脂肪族モノカルボン酸無水物は、無水酢酸、無水酪酸、または無水プロピオン酸である。脂肪族モノカルボン酸の無水物とセルロースエーテルの無水グルコース単位とのモル比は、一般に、0.1/1以上、好ましくは0.3/1以上、より好ましくは0.5/1以上、最も好ましくは1.0/1以上、特に2.0/1以上である。脂肪族モノカルボン酸無水物とセルロースエーテルの無水グルコース単位とのモル比は、一般に、10/1以下、好ましくは8/1以下、より好ましくは6/1以下、最も好ましくは4/1以下、特に3.5/1以下である。
好ましいジカルボン酸無水物は、無水コハク酸、無水マレイン酸、または無水フタル酸である。無水コハク酸または無水フタル酸がより好ましい。無水コハク酸が最も好ましいジカルボン酸無水物である。ジカルボン酸の無水物とセルロースエーテルの無水グルコース単位とのモル比は、一般に、少なくとも0.01/1、好ましくは少なくとも0.04/1、より好ましくは少なくとも0.2/1、最も好ましくは少なくとも0.6/1である。ジカルボン酸の無水物とセルロースエーテルの無水グルコース単位とのモル比は、一般に、2.5/1まで、好ましくは1.5/1まで、より好ましくは1/1までである。反応プロセスのステージi)において、(a)脂肪族カルボン酸対(b)ジカルボン酸無水物の比、(a)/(b)は、一般に12/1まで、典型的には7.0/1〜12.0/1である。
より好ましくは、セルロースエーテルは、無水酢酸、無水酪酸、及び無水プロピオン酸からなる群から選択される脂肪族モノカルボン酸無水物と組み合わせて無水コハク酸または無水フタル酸でエステル化される。より好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、無水コハク酸及び無水酢酸と反応して、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースを生成する。
反応のステージi)において(この場合、ステージi)は、ステップiA)、iB)、及びiC)に任意に分割される)、反応混合物は、反応混合物の成分を混合する前、混合中、または混合した後に、60℃〜110℃、好ましくは70℃〜100℃の温度に加熱される。好ましい実施形態において、セルロースエーテル、ステージi)において利用される反応希釈剤の量、及び上記のエステル化触媒の全体量または一分量が、撹拌下で最初に上述される温度範囲に加熱され、その温度範囲で5〜90分間、好ましくは10〜30分間維持され、続いてジカルボン酸の無水物及び脂肪族モノカルボン酸の無水物が添加される。
ステージi)が、ステップiA)、iB)、及びiC)に分割される場合、ステップiC)において、第2の量のアルカリ金属カルボキシレートなどの反応触媒が、反応混合物に添加される。好ましくは、添加された反応触媒の総量の65〜85パーセントのみ、より好ましくは70〜80パーセントのみが、ステップiC)において添加される。第2の量の反応触媒は、好ましくは、無水物の最後の添加後10〜90分、より好ましくは15〜60分の期間で添加される。
ステップi)における反応混合物の最後の成分の添加から計算される、ステージi)におけるエステル化反応の反応時間は、典型的には30分〜6時間、より典型的には45分〜4時間、及び最も典型的には1〜3時間である。ステージi)における反応時間は、一般に、本発明のプロセスのステージi)及びii)における総反応時間の少なくとも20%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも30%である。ステージi)における反応時間は、一般に、ステージi)及びii)における総反応時間の80%まで、好ましくは75%まで、より好ましくは70%までである。
エステル化反応が完了する前に、ステージii)において、追加量の反応希釈剤を連続してまたは1回以上に分けて反応混合物に添加し、エステル化反応を更に進行させる。より好ましくは、追加量の反応希釈剤を、1回または2回に分けて、最も好ましくは1回で添加する。好ましくは、ステージii)において添加される反応希釈剤の量は、ステージi)において反応混合物に添加されたセルロースエーテルの100重量部当たり20〜200重量部、より好ましくは40〜100重量部の反応希釈剤である。脂肪族カルボン酸が、反応希釈剤として使用される場合、ステージii)において添加されるモル比[脂肪族カルボン酸/セルロースエーテルの無水グルコース単位]は、一般に、[0.5/1.0]〜[7.0/1.0]、好ましくは[0.7/1.0]〜[6.0/1.0]、より好ましくは[5.0/1.0]〜[9.0/1.0]、及び最も好ましくは[4.0/1.0]〜[7.7/1.0]である。好ましくは、プロセスにおける反応希釈剤の総重量に基づいて、50〜90パーセント、より好ましくは60〜85パーセントの反応希釈剤が、プロセスのステージi)において添加され、好ましくは、10〜50パーセント、より好ましくは、15〜40パーセントの反応希釈剤が、本発明のプロセスのステージii)において添加される。
好ましくは、本発明のプロセスにおける反応時間全体の20%超、より好ましくは30%超が経過したときに、追加量の反応希釈剤が、反応混合物に添加される。好ましくは、プロセスにおける反応時間全体の80%未満、より好ましくは70%未満が経過したときに、追加量の反応希釈剤が、反応混合物に添加される。ステップii)における最後の量の反応希釈剤の添加後に、反応混合物を、一般に、60℃〜110℃、好ましくは70℃〜100℃の温度範囲で10分〜6時間、より典型的には20分〜5時間、最も典型的には30分〜4時間維持する。
エステル化反応の完了後、反応生成物を、既知の手法で、例えば、米国特許第4,226,981号、国際特許出願第WO2005/115330号、または欧州特許出願第EP0219426号などに記載される、反応混合物を大量の水と接触させることにより、反応混合物から沈殿させることができる。本発明の好ましい実施形態では、反応生成物を、WO2013/148154として公開された国際特許出願第PCT/US13/030394号に記載されるように、反応混合物から沈殿させて、エステル化セルロースエーテルを粉末形態で生成する。
本発明のプロセスにより、式−C(O)−R−COOH(式中、Rは、−C(O)−CH−CH−COOH、−C(O)−CH=CH−COOH、または−C(O)−C−COOHなどの二価の脂肪族または芳香族炭化水素基、及びアセチル、プロピオニル、またはn−ブチリルもしくはi−ブチリルなどのブチリルなどの一価のアシル基である)の基を含む、好ましいエステル化セルロースエーテルが生成される。エステル化セルロースエーテルの具体的な例は、酢酸フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAP)、酢酸マレイン酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAM)、または酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS);酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルセルロース(HPCAS)、プロピオン酸コハク酸ヒドロキシブチルメチルセルロース(HBMCPrS)、プロピオン酸コハク酸ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロース(HEHPCPrS);または酢酸コハク酸メチルセルロース(MCAS)である。酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)が最も好ましいエステル化セルロースエーテルである。
本発明のプロセスに従って生成されたエステル化セルロースエーテルは、一般に、少なくとも0.05、好ましくは少なくとも0.10、より好ましくは少なくとも0.25の、アセチル、プロピオニル、またはブチリル基などの脂肪族一価アシル基の置換度を有する。エステル化セルロースエーテルは、一般に、1.5まで、好ましくは1.0まで、より好ましくは0.6までの脂肪族一価アシル基の置換度を有する。エステル化セルロースエーテルは、一般に、少なくとも0.01、好ましくは少なくとも0.05、より好ましくは少なくとも0.10の、スクシノイルなどの式−C(O)−R−COOHの基の置換度を有する。エステル化セルロースエーテルは、一般に、1.3まで、好ましくは0.8まで、より好ましくは0.5までの式−C(O)−R−COOHの基の置換度を有する。
総エステル置換度は、一般に、少なくとも0.2、好ましくは少なくとも0.5、より好ましくは少なくとも0.7、最も好ましくは少なくとも0.85である。総エステル置換度は、一般に、1.5以下、好ましくは1.4以下、より好ましくは1.3以下、最も好ましくは1.2以下である。
アセテート及びコハク酸エステル基の含有量は、「Hypromellose Acetate Succinate,United States Pharmacopia and National Formulary,NF 29,pp.1548−1550」に従って決定される。報告された値は、揮発性物質として補正された(上記のHPMCASモノグラフのセクション「loss on drying」に記載されているように決定される)。本方法は、プロピオニル、ブチリル、フタリル、及び他のエステル基の含有量を決定するために類似の手法で使用してよい。エステル化セルロースエーテルにおけるエーテル基の含有量は、「Hypromellose」、United States Pharmacopeia and National Formulary、USP35、3467−3469頁に記載されているものと同じ手法で決定される。上記分析によって得られるエーテル基及びエステル基の含有量は、下記の式に従って個々の置換基のDS値及びMS値に変換される。これらの式は、類似の方法を使用して、他のセルロースエーテルエステルの置換基のDS及びMSを決定することができる。
慣例として、重量パーセントは、全ての置換基を含むセルロース繰り返し単位の総重量に基づく平均重量パーセンテージである。メトキシル基の含有量は、メトキシル基の質量(すなわち、−OCH)の質量を基準として報告される。ヒドロキシアルコキシル基の含有量は、ヒドロキシプロポキシル(すなわち、−O−CHCH(CH)−OH)などのヒドロキシアルコキシル基(すなわち、−O−アルキレン−OH)の質量を基準として報告される。脂肪族一価アシル基の含有量は、−C(O)−R(式中、Rは、アセチル(−C(O)−CH)などの一価脂肪族基である)の質量を基準として報告される。式−C(O)−R−COOHの基の含有量は、この基の質量、例えばスクシノイル基(すなわち、−C(O)−CH−CH−COOH)の質量を基準として報告される。
意外にも低いアセトン中の粘度で、意外にも高重量平均分子量Mを有するエステル化セルロースエーテルは、本発明のプロセスにより生成される。典型的には、500,000ダルトンまで、より典型的には480,000ダルトンまで、最も典型的には460,000ダルトンまでのエステル化セルロースエーテルが、本発明のプロセスにより生成される。一般に、それらは、少なくとも100,000ダルトン、より典型的には少なくとも200,000ダルトン、更により典型的には少なくとも300,000ダルトンの重量平均分子量Mを有する。M及びMは、アセトニトリル40体積部と、50mMのNaHPO及び0.1MのNaNOを含有する水性緩衝液60体積部との混合物を移動相として使用して、Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis 56(2011)743に従って測定される。移動相は、pH8.0に調整される。M及びMの測定は、実施例においてより詳細に記載される。
本発明のプロセスにより生成されるエステル化セルロースエーテルは、アセトン溶性であり、適度に低い粘度を有する。一般に、エステル化セルロースエーテルは、20℃のアセトン中のエステル化セルロースエーテルの10重量%溶液として測定して、200mPa・sまで、好ましくは100mPa・sまで、より好ましくは90mPa・sまで、最も好ましくは80mPa・sまでの粘度を有する。エステル化セルロースエーテルは、典型的には、20℃のアセトン中のエステル化セルロースエーテルの10重量%溶液として測定して、10mPa・s以上、典型的には20mPa・s以上、より典型的には30mPa・s以上、最も典型的には40mPa・s以上の粘度を有する。
本発明のいくつかの実施形態は、ここで以下の実施例において詳細に説明される。
別途記述されない限り、全ての部及びパーセンテージは重量によるものである。実施例において、以下の試験手順が使用される。
酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)の粘度
アセトン中のHPMCASの10重量%溶液を、その乾燥重量に基づいて10.0gのHPMCASを、90.0gのアセトンと激しく撹拌しながら室温で混合することにより調製した。混合物を、ローラーミキサー上で約24時間ロールした。溶液を、Heraeus Holding GmbH,Germanyから市販されているMegafuge 1.0遠心分離器を使用して、2000rpmで3分間遠心分離した。DIN51562−1:1999−01(January 1999)に従って、ウベローデ粘度測定を実施した。測定を20℃で行った。
(HPMCAS)のエーテル基及びエステル基の含有量
エステル化セルロースエーテルにおけるエーテル基の含有量は、「Hypromellose」,United States Pharmacopeia and National Formulary、USP35、3467−3469頁に記載されているものと同じ手法で決定された。
アセチル基(−CO−CH)でのエステル置換及びスクシノイル基(−CO−CH−CH−COOH)でのエステル置換は、Hypromellose Acetate Succinate、United States Pharmacopia and National Formulary、NF29、1548−1550頁」に従って決定された。エステル置換について報告された値は、揮発性物質について補正された(上記のHPMCASモノグラフのセクション「loss on drying」に記載されているように決定される)。
HPMCASのM 及びM の決定
特に明記しない限り、Mw及びMnは、Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis 56(2011)743に従って測定された。移動相は、アセトニトリル40体積部と、50mMのNaHPO及び0.1MのNaNOを含有する水性緩衝液60体積部との混合物であった。移動相は、pH8.0に調整される。セルロースエーテエステルの溶液を、孔径0.45μmのシリンジフィルターを通してHPLCバイアル中に濾過した。
より具体的には、利用された化学物質及び溶媒は以下の通りであった。
ポリエチレンオキシド標準物(PEOX 20 K及びPEOX 30 Kと略記される)は、Agilent Technologies,Inc.Palo Alto,CA、カタログ番号PL2083−1005及びPL2083−2005から購入した。
アセトニトリル(HPLCグレード≧99.9%、CHROMASOL plus)、カタログ番号34998、水酸化ナトリウム(半導体グレード、99.99%、微量の金属塩基)、カタログ番号306576、水(HPLCグレード、CHROMASOLV Plus)カタログ番号34877、及び硝酸ナトリウム(99.995%、微量の金属塩基)カタログ番号229938は、Sigma−Aldrich,Switzerlandから購入した。
リン酸二水素ナトリウム(≧99.999% TraceSelect)、カタログ番号71492は、FLUKA,Switzerlandから購入した。
5mg/mLのPEOX20 Kの正規化溶液、2mg/mLのPEOX30 Kの標準溶液、及び2mg/mLのHPMCASのサンプル溶液は、計量したポリマー量をバイアルに添加し、それを測定した移動相容積で溶解することにより調製された。全ての溶液は、PTFEコーティングされた磁気撹拌棒を使用して撹拌しながら、蓋付きバイアル中で24時間、室温で溶解させた。
正規化溶液(PEOX 20k、単一調製、N)及び標準溶液(PEOX30 K、2重調製、S1及びS2)を、0.02μmの孔径及び25mmの直径のシリンジフィルター(Whatman Anatop 25、カタログ番号6809−2002)、Whatmanを通してHPLCバイアルに濾過した。
試験サンプル溶液(HPMCAS、2つ組で調製、T1、T2)及び実験室標準品(HPMCAS、単一調製、LS)を、0.45μmの孔径のシリンジフィルター(Nylon、例えば、Acrodisc 13mm VWRカタログ番号514−4010)を通してHPLCバイアルに濾過した。
クロマトグラフィー条件及び実行シーケンスは、Chen,R.et al.;Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis 56(2011)743−748)に記載されるように行われた。SEC−MALLS機器の設定には、Agilent Technologies,Inc.Palo Alto,CAからのHP1100 HPLCシステム、DAWN Heleos II 18角度レーザー光散乱検出器、及びOPTILAB rex示差屈折率検出器(両方ともWyatt Technologies,Inc.Santa Barbara,CA)が含まれた。分析用サイズ排除カラム(TSK−GEL(登録商標)GMPWXL、300×7.8mm)は、Tosoh Bioscienceから購入した。OPTILAB及びDAWNの両方は、35℃で操作した。分析用SECカラムは、室温(24±5℃)で操作した。移動相は、以下のように調製されたアセトニトリル40体積部と、50mMのNaHPO及び0.1MのNaNOを含有する水性緩衝液60体積部との混合物であった。
水性緩衝液:7.20gのリン酸二水素ナトリウム及び10.2gの硝酸ナトリウムを、溶解するまで撹拌下で清潔な2Lのガラス瓶中の1.2Lの精製水に添加した。
移動相:800mLのアセトニトリルを、上で調製した1.2Lの水性緩衝液に添加し、良好な混合物が得られるまで撹拌し、温度を周囲温度に平衡化した。
10MのNaOHで移動相を8.0にpH調整し、0.2mのナイロン膜フィルターを通して濾過した。流速は0.5mL/分で、インライン脱気した。注入量は100μLであり、分析時間は35分であった。
HPMCASは、0.120mL/gのdn/dc値(屈折率増分)を使用して、MALLSデータを収集し、Wyatt ASTRAソフトウェア(バージョン5.3.4.20)で処理した。検出器番号1〜4、17、及び18の光散乱シグナルは分子量計算に使用されなかった。代表的なクロマトグラフィー実行シーケンスを以下に示す:B、N、LS、S1(5x)、S2、T1(2x)、T2(2x)、T3(2x)、T4(2x)、S2、T5(2x)等、S2、LS、W、ここで、Bは移動相のブランク注入を表し、N1は正規化溶液を表し、LSは実験標準HPMCASを表し、S1及びS2は、それぞれ、標準溶液1及び2を表し、T1、T2、T3、T4、及びT5は試験サンプル溶液を表し、Wは水の注入を表す。(2x)及び(5x)は、同じ溶液の注入数を示す。
OPTILAB及びDAWNの両方は、製造業者の推奨手順及び頻度に従って、定期的に較正された。5mg/mLのポリエチレンオキシド標準品(PEOX20 K)の100μLの注入は、各実行シーケンスに関して、90°検出器に対して全角度光散乱検出器を正規化するために採用された。
この単分散ポリマー標準品の使用は決定されるOPTILABとDAWNとの間の容積遅延(volume delay)可能にし、屈折率シグナルに対する光散乱シグナルの適切な整合を可能にする。これは、各データスライスに関する重量平均分子量(Mw)の計算に必要である。
比較例A
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、氷酢酸、及び第1分量の酢酸ナトリウムを、以下の表1に列挙される量で反応槽中に導入した。HPMCの量は乾燥ベースで計算された。HPMCは、以下の表2に列挙されるように、メトキシル置換(DS)及びヒドロキシプロポキシル置換(MSHP)を有し、ASTM D2363−79(再承認2006)による20℃において2重量%の水溶液として測定して、約3mPa・sの粘度を有していた。HPMCは、The Dow Chemical CompanyからMethocel E3 LVプレミアムセルロースエーテルとして市販されている。酢酸ナトリウム、HPMC、及び酢酸の混合物は、85℃に加熱され、この温度で撹拌下、15分間維持された。その後に無水コハク酸、及び3分後に無水酢酸を、以下の表1に列挙される量で反応槽に添加した。結果として得られた反応混合物は、85℃で30分間維持された。後次に、第2の分量の酢酸ナトリウムを、表1に列挙される量で撹拌下、反応槽中に導入した。第2の分量の酢酸ナトリウムの添加後に、反応混合物を4時間反応させた。この期間は、以下の表1において総反応時間として列挙される。
生成物を反応器から取り出し、3Lの水中で沈殿させ、5200rpmで稼働するUltra−Turrax撹拌機S50−G45を使用して高剪断混合を適用することにより、21℃の温度の水で洗浄した。高純度のHPMCASを得るために、洗浄は、間に濾過ステップを置いて、数回に分けて行われた。最後の濾過ステップ後、生成物を一晩55℃で乾燥させた。
実施例1
第2の分量の酢酸ナトリウムの添加の2.5時間後に、追加量の酢酸を、以下の表1に列挙される量で反応混合物に添加したことを除いて、比較例Aの手順を繰り返した。第2の分量の酢酸の添加後に、反応混合物を更に1.5時間反応させた。
実施例2及び3
第2の分量の酢酸ナトリウムの添加の2時間後に、追加量の酢酸を、以下の表1に列挙される量で反応混合物に添加したことを除いて、比較例Aの手順を繰り返した。第2の分量の酢酸の添加後に、反応混合物を更に2時間反応させた。
実施例4
第2の分量の酢酸ナトリウムの添加の1.5時間後に、追加量の酢酸を、以下の表1に列挙される量で反応混合物に添加したことを除いて、比較例Aの手順を繰り返した。第2の分量の酢酸の添加後に、反応混合物を更に2.5時間反応させた。
比較例A及び実施例1〜4のプロセスに従って生成されたHPMCASの特性は、以下の表2に列挙される。表2において、省略形は以下の意味を有する。
DS=DS(メトキシル):メトキシル基での置換度、
MSHP=MS(ヒドロキシプロポキシル):ヒドロキシプロポキシル基でのモル置換、
DSAC:アセチル基での置換度、
DS:スクシノイル基での置換度。
上記の表2における結果は、非常に低いアセトン中の粘度で、非常に高重量平均分子量Mを有するエステル化セルロースエーテルが、本発明のプロセスにより生成されることを示す。
実施例1に従って生成されたHPMCASは、比較例Aのものより8%低い重量平均分子量Mを有するが、実施例1のHPMCASの粘度は、比較例Aのものより16%も低い。
実施例2に従って生成されたHPMCASは、比較例Aのものとほぼ同じである重量平均分子量Mを有するが、実施例2のHPMCASの粘度は、比較例Aのものより21%も低い。
実施例3に従って生成されたHPMCASは、比較例Aのものより11%低い重量平均分子量Mを有するが、実施例3のHPMCASの粘度は、比較例Aのものより34%も低い。
実施例4に従って生成されたHPMCASは、比較例Aのものより13%低い重量平均分子量Mを有するが、実施例1のHPMCASの粘度は、比較例Aのものより37%も低い。
(態様)
(態様1)
エステル化セルロースエーテルの生成プロセスであって、
i)セルロースエーテル、脂肪族モノカルボン酸無水物、ジカルボン酸無水物、及び反応希釈剤を含む反応混合物を調製し、前記反応混合物の前記成分を混合する前、混合中、または混合した後に、前記反応混合物を60℃〜110℃の温度に加熱して、エステル化反応を行うステージと、
ii)前記エステル化反応が完了する前に、追加量の反応希釈剤を連続してまたは1回以上に分けて前記反応混合物に添加し、前記エステル化反応を更に進行させるステージと、を含む、プロセス。
(態様2)
脂肪族カルボン酸が、反応希釈剤として使用される、態様1に記載のプロセス。
(態様3)
ステージi)におけるモル比[脂肪族カルボン酸/セルロースエーテルの無水グルコース単位]が、[4.0/1.0]〜[11.5/1.0]である、態様2に記載のプロセス。
(態様4)
前記脂肪族カルボン酸が、ステージii)において、[0.5/1.0]〜[7.0/1.0]のモル比[脂肪族カルボン酸/セルロースエーテルの無水グルコース単位]で添加される、態様2または3に記載のプロセス。
(態様5)
反応時間全体の20%超が経過したときに、追加量の反応希釈剤が、前記反応混合物に添加される、態様1〜4のいずれか1項に記載のプロセス。
(態様6)
反応時間全体の80%未満が経過したときに、追加量の反応希釈剤が、前記反応混合物に添加される、態様1〜5のいずれか1項に記載のプロセス。
(態様7)
前記プロセスにおける前記反応希釈剤の総重量に基づいて、50〜90パーセントの前記反応希釈剤が、ステージi)において添加され、10〜50パーセントの前記反応希釈剤が、ステージii)において添加される、態様1〜6のいずれか1項に記載のプロセス。
(態様8)
前記プロセスのステージi)が、
iA)セルロースエーテル及び第1の量の反応触媒を、反応希釈剤に溶解または分散させるステップと、
iB)脂肪族モノカルボン酸無水物及びジカルボン酸無水物を、ステップiA)において得られた前記混合物に添加する前、添加中、または添加した後に、前記得られた混合物を、60℃〜110℃の温度に加熱するステップと、
iC)第2の量の反応触媒を添加するステップと、を含む、態様1〜7のいずれか1項に記載のプロセス。
(態様9)
前記プロセスのステージi)において添加される反応触媒の総量に基づいて、ステップiA)において添加される反応触媒の前記第1の量が、15〜35パーセントであり、ステップiC)において添加される反応触媒の前記第2の量が、65〜85パーセントである、態様8に記載のプロセス。
(態様10)
ステージi)において、アルカリ金属カルボキシレートを反応触媒として追加で含む、反応混合物が調製される、態様1〜9のいずれか1項に記載のプロセス。
(態様11)
前記セルロースエーテルが、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ま
たはヒドロキシアルキルアルキルセルロースである、態様1〜10のいずれか1項に記載のプロセス。
(態様12)
前記脂肪族モノカルボン酸無水物が、無水酢酸、無水酪酸、または無水プロピオン酸であり、前記ジカルボン酸無水物が、無水コハク酸、無水マレイン酸、または無水フタル酸である、態様1〜11のいずれか1項に記載のプロセス。
(態様13)
ヒドロキシプロピルメチルセルロースが、無水コハク酸及び無水酢酸でエステル化されて、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースを生成する、態様1〜12のいずれか1項に記載のプロセス。
(態様14)
前記生成されたエステル化セルロースエーテルが、100,000〜500,000ダルトンの重量平均分子量M を有する、態様1〜13のいずれか1項に記載のプロセス。
(態様15)
前記生成されたエステル化セルロースエーテルが、20℃のアセトン中の前記エステル化セルロースエーテルの10重量%溶液として測定して、最大90mPa・sの粘度を有する、態様1〜14のいずれか1項に記載のプロセス。

Claims (7)

  1. エステル化セルロースエーテルの生成プロセスであって、
    i)セルロースエーテル、脂肪族モノカルボン酸無水物、ジカルボン酸無水物、及び反応希釈剤を含む反応混合物を調製し、前記反応混合物成分混合する前、混合中、または混合した後に、前記反応混合物を60℃〜110℃の温度に加熱して、エステル化反応を行うステージと、
    ii)前記エステル化反応が完了する前に、追加量の反応希釈剤を連続した添加によりまたは1回以上に分けて前記反応混合物に添加し、前記エステル化反応を更に進行させるステージと、を含み、
    脂肪族カルボン酸が、反応希釈剤として使用され、
    前記脂肪族カルボン酸が、ステージii)において、[0.5/1.0]〜[7.0/1.0]のモル比[脂肪族カルボン酸/セルロースエーテルの無水グルコース単位]で添加される、プロセス。
  2. 前記ステージi)およびii)における総反応時間の20%超が経過したときに、追加量の反応希釈剤が、前記反応混合物に添加される、請求項1に記載のプロセス。
  3. 前記ステージi)およびii)における総反応時間の80%未満が経過したときに、追加量の反応希釈剤が、前記反応混合物に添加される、請求項1〜のいずれか1項に記載のプロセス。
  4. 前記プロセスのステージi)が、
    iA)セルロースエーテル及び第1の量の反応触媒を、反応希釈剤に溶解または分散させるステップと、
    iB)脂肪族モノカルボン酸無水物及びジカルボン酸無水物を、ステップiA)において得られた前記反応混合物に添加する前、添加中、または添加した後に、得られた前記反応混合物を、60℃〜110℃の温度に加熱するステップと、
    iC)第2の量の反応触媒を添加するステップと、を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載のプロセス。
  5. 前記プロセスのステージi)において添加される反応触媒の総量に基づいて、ステップiA)において添加される反応触媒の前記第1の量が、15〜35パーセントであり、ステップiC)において添加される反応触媒の前記第2の量が、65〜85パーセントである、請求項に記載のプロセス。
  6. ヒドロキシプロピルメチルセルロースが、無水コハク酸及び無水酢酸でエステル化されて、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースを生成する、請求項1〜のいずれか1項に記載のプロセス。
  7. 成されたエステル化セルロースエーテルが、20℃のアセトン中の前記エステル化セルロースエーテルの10重量%溶液として測定して、100,000〜500,000ダルトンの重量平均分子量M及び最大90mPa・sの粘度を有する、請求項1〜のいずれか1項に記載のプロセス。
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