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JP6723811B2 - セサミノールの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、セサミノールの製造方法に関する。本発明はまた、セサミノール配糖体からセサミノールを生成する能力を有する新規乳酸菌に関する。本発明はまた、セサミノール配糖体含有原料の乳酸菌による発酵物に関する。本発明はまた、セサミノールを含有する新規組成物に関する。
ゴマ(Sesamum indicum L.)の種子(以下、単に「ゴマ」という場合がある)は、リグナン類を含有している。ゴマリグナン類の約80%はセサミン又はセサモリンであり、残りの約20%がリグナンフェノール類である。ゴマに含まれるリグナンフェノール類の1つにセサミノールがある。ゴマにおいてリグナンフェノール類は大部分が配糖体として存在しており、アグリコン(遊離体)として存在しているものは僅かである(非特許文献1)。
セサミノールは、セサミンとは異なり、それ自体が抗酸化活性を有することが知られており、健康食品、医薬等の分野での今後の応用が期待されている。
上記の通りゴマ等の天然物中においてセサミノールは配糖体として存在する。セサミノール配糖体は、セサミノールが有するフェノール水酸基に糖鎖が結合した構造を有する。フェノール水酸基はセサミノールの抗酸化活性の活性基と考えられ、セサミノール配糖体の形態では活性が発揮されないと考えられる。なお、セサミノール配糖体は親水性を有するため、親油性のセサミンとは異なり、ゴマ油の搾油時に副産物として生じる圧搾粕に大量に含まれる。
これまでに、セサミノール配糖体からセサミノールを遊離させて生成する技術として以下の技術が開示されている。
特許文献1では、パニエバチルス属の微生物が産生する酵素が、セサミノール配糖体の糖鎖を切断する活性を有することが開示されている。
特許文献2では、全粒生胡麻の粉砕物をリゾプス・オリゴスポラス粗酵素で分解し、イソロイシンが生成しないうちに、乳酸発酵させて、抗酸化力のある発酵胡麻を製造することが開示されている。乳酸菌としては具体的にはラクトバチルス・ブルガリクスとストレプトコッカス・サーモフィラスが挙げられている。特許文献2によればこの発酵胡麻がセサミノールを含むことが記載されているが、どの段階でどういった機構によりセサミノールが生じるのかは開示されていない。
特許文献3では、セサミノールトリグルコシド等のリグナン又はそれを含む基質材料を、バチルス属細菌及びエンテロコッカス属細菌の共存下でインキュベーションすることを含むセサミノールの製造法が開示されている。
特許文献4では、ゴマリグナン配糖体及びアグリコンゴマリグナンを含むゴマ発酵物を製造するために、ゴマ等の原料をアスペルギルス属菌株又はバチルス属菌株を用いて発酵させることが開示されている。
特許第4839231号公報 特許第3261075号公報 特開2006−61115公報 特開2007−319157公報
石山ら,日本食品科学工学会誌,第53巻,第1号,2006年1月
上記の通り、微生物によりゴマを発酵させてセサミノールを生成し抗酸化活性を高める技術がこれまでに開発されている。
しかし特許文献1〜4で用いる微生物又は酵素は一般に食用されているものではないため、生産されたセサミノールの安全性が懸念される。
そこで本発明は、乳酸菌を用いてセサミノール配糖体を含有する原料からセサミノールを生成する新たな手段を提供する。
本発明者らは、驚くべきことに、乳酸菌のなかでもラクトバチルス属に属する乳酸菌が、セサミノール配糖体を加水分解してセサミノールを生成する能力を有していることを見出した。そこで本発明者らは以下の発明を提供する。
(1)セサミノール配糖体を含有する原料を、ラクトバチルス属に属する1以上の乳酸菌と共存させることにより、前記セサミノール配糖体からセサミノールを生成するセサミノール生成工程を含む、セサミノールの製造方法。
(2)前記乳酸菌が、DNBL1826株(受託番号:NITE P−02225)、DNBL1832株(受託番号:NITE P−02229)、DNBL1829株(受託番号:NITE P−02226)、DNBL1830株(受託番号:NITE P−02227)、DNBL1831株(受託番号:NITE P−02228)、及び、ラクトバチルス・カゼイ・ハセガワ菌株(受託番号:FERM BP−10123)から選択される1以上である、(1)に記載の方法。
(3)前記乳酸菌が、ラクトバチルス属に属する2以上の乳酸菌の組み合わせである、(1)に記載の方法。
(4)前記乳酸菌が下記の(A)及び(B):
(A)ラクトバチルス・パラカゼイに属し、セサミノールトリグルコシドをセサミノールジグルコシドに変換する能力を有する、1以上の乳酸菌、
(B)ラクトバチルス・パラカゼイに属し、セサミノールジグルコシドをセサミノールに変換する能力を有する1以上の他の乳酸菌、ラクトバチルス・ペントーサスに属し、セサミノールジグルコシドをセサミノールに変換する能力を有する1以上の乳酸菌、及び、ラクトバチルス・プランタラムに属し、セサミノールジグルコシドをセサミノールに変換する能力を有する1以上の乳酸菌からなる群から選択される1以上の乳酸菌
の組み合わせである、(3)に記載の方法。
(5)前記(A)の乳酸菌が、DNBL1826株(受託番号:NITE P−02225)及びDNBL1832株(受託番号:NITE P−02229)から選択される1以上であり、
前記(B)の乳酸菌が、DNBL1829株(受託番号:NITE P−02226)、DNBL1830株(受託番号:NITE P−02227)、DNBL1831株(受託番号:NITE P−02228)、及び、ラクトバチルス・カゼイ・ハセガワ菌株(受託番号:FERM BP−10123)から選択される1以上である、(4)に記載の方法。
(6)DNBL1826株(受託番号:NITE P−02225)。
(7)DNBL1832株(受託番号:NITE P−02229)。
(8)DNBL1829株(受託番号:NITE P−02226)。
(9)DNBL1830株(受託番号:NITE P−02227)。
(10)DNBL1831株(受託番号:NITE P−02228)。
(11)セサミノール配糖体を含有する原料の、ラクトバチルス属に属する1以上の乳酸菌による発酵物。
(12)前記乳酸菌が、DNBL1826株(受託番号:NITE P−02225)、DNBL1832株(受託番号:NITE P−02229)、DNBL1829株(受託番号:NITE P−02226)、DNBL1830株(受託番号:NITE P−02227)、DNBL1831株(受託番号:NITE P−02228)、及び、ラクトバチルス・カゼイ・ハセガワ菌株(受託番号:FERM BP−10123)から選択される1以上である、(11)に記載の発酵物。
(13)セサミン、及び、
乾燥重量基準で100gあたり100mg以上のセサミノール
を含み、
セサミノール:セサミンの重量比が1:0.1〜1:20の範囲内である、セサミノール含有組成物。
本発明のセサミノールの製造方法によれば、ラクトバチルス属乳酸菌を用いてセサミノールを製造することができる。
本発明の乳酸菌は、セサミノールの製造に利用可能である。
本発明のセサミノール含有組成物はセサミノールを豊富に含み、特有の、セサミノール:セサミンの重量比を有する。
図1は、実験1においてすりゴマ熱水抽出物を基質として乳酸菌発酵させたときの、発酵途中の生成物の薄層クロマトグラフィーでの確認結果を示す。図1AはDNBL1826株を単独又は他の乳酸菌と併用して発酵を行った場合の薄層クロマトグラフィーを示す。図1BはDNBL1832株を単独又は他の乳酸菌と併用して発酵を行った場合の薄層クロマトグラフィーを示す。 図2は、実験1においてゴマ圧搾粕熱水抽出物を基質として乳酸菌発酵させたときの、発酵途中の生成物の薄層クロマトグラフィーでの確認結果を示す。図2AはDNBL1826株を単独又は他の乳酸菌と併用して発酵を行った場合の薄層クロマトグラフィーを示す。図2BはDNBL1832株を単独又は他の乳酸菌と併用して発酵を行った場合の薄層クロマトグラフィーを示す。 図3は、実験1においてすりゴマ熱水抽出物を基質とし、DNBL1826株とA221株との組み合わせ、又は、DNBL1832株とA221株との組み合わせを用いて乳酸菌発酵させたときの、発酵途中の生成物の薄層クロマトグラフィーでの確認結果を示す。 図4は、実験1においてDNBL1826株とA221株との組み合わせ、又は、DNBL1832株とA221株との組み合わせを用い、基質として市販のすりゴマの熱水抽出物を用いた試験における発酵第5日の生成物のHPLCチャートを示す。図4aはSTGの標準品、図4bはβ1,2SDGの標準品、図4cはβ1,6SDGの標準品、図4dはSMNの標準品の、同条件によるHPLCでの保持時間を示すチャートである。図4eは乳酸菌未処理の試験区のHPLCチャートを示し、図4fはDNBL1826株とA221株とを併用した試験区のHPCLチャートを示し、図4gはDNBL1832株とA221株とを併用した試験区のHPCLチャートを示す。 図5は、実験1において乳酸菌としてDNBL1832株のみ、又は、DNBL1832株とA221株との組み合わせを用い、基質として市販のゴマ圧搾粕の熱水抽出物を用いた試験における、発酵処理第4日の薄層クロマトグラフィーの結果を示す。 図6は実験2における乳酸菌による発酵後のすりゴマ懸濁液のHPLCによる分析結果を示す。図6Aは乳酸菌未処理の試験区のHPLCチャートを示す。図6BはDNBL1826株のみを用いた試験区のHPLCチャートを示す。図6CはDNBL1826株とDNBL1829株との組み合わせを用いた試験区のHPLCチャートを示す。 図7は実験3における発酵後の凍結乾燥組成物(基質はすりゴマ懸濁液)のHPLCによる分析結果を示す。図7Aは乳酸菌未処理の試験区のHPLCチャートを示す。図7BはDNBL1826株とDNBL1829株との組み合わせを用いた試験区のHPLCチャートを示す。 図8は実験4における発酵後の凍結乾燥組成物(基質はゴマ圧搾粕懸濁液)のHPLCによる分析結果を示す。図8Aは乳酸菌未処理の試験区のHPLCチャートを示す。図8BはDNBL1826株とDNBL1829株との組み合わせを用いた試験区のHPLCチャートを示す。 図9は、実験5においてすりゴマ熱水抽出物を基質として乳酸菌発酵させたときの、発酵第2日での生成物の薄層クロマトグラフィーでの確認結果を示す。 図10は、実験5においてすりゴマ熱水抽出物を基質として乳酸菌発酵させたときの、発酵第7日での生成物の薄層クロマトグラフィーでの確認結果を示す。 図11は、実験6においてゴマ圧搾粕熱水抽出物を基質として乳酸菌発酵させたときの、発酵第2日での生成物の薄層クロマトグラフィーでの確認結果を示す。 図12は、実験6においてゴマ圧搾粕熱水抽出物を基質として乳酸菌発酵させたときの、発酵第7日での生成物の薄層クロマトグラフィーでの確認結果を示す。 図13は、実験7においてすりゴマ熱水抽出物を基質として乳酸菌発酵させたときの、発酵第7日での生成物の薄層クロマトグラフィーでの確認結果を示す。 図14は、実験8においてゴマ圧搾粕熱水抽出物を基質として乳酸菌発酵させたときの、発酵第7日での生成物の薄層クロマトグラフィーでの確認結果を示す。
<セサミノール及びセサミノール配糖体>
本発明において単に「セサミノール」という場合、特に明示の無い場合は、糖鎖を有していないアグリコンの形態を指す。
セサミノールは平面構造が同じであるが立体配置の異なる4種の化合物、すなわち、(+)−セサミノール、2−epi−セサミノール、6−epi−セサミノール、及び、ジアセサミノールが知られている。本発明において「セサミノール」という用語は、これらのセサミノールのうち1種以上を指し、複数種の混合物であってもよい。典型的には、セサミノールは少なくとも(+)−セサミノールを含む。セサミノールの量は、セサミノールとして複数の化合物を含む場合は、それらの合計量を指す。
セサミノール配糖体としては、セサミノールトリグルコシド、セサミノールジグルコシド及びセサミノールモノグルコシドからなる群から選択される1種以上が知られており、複数種の混合物であってもよい。典型的には、セサミノール配糖体は少なくともセサミノールトリグルコシドを含む。なおゴマにおいて最も多く含まれるセサミノール配糖体はセサミノールトリグルコシドである。
従来知られているセサミノールトリグルコシド(STG)の構造を次式に示す。
Figure 0006723811
糖鎖は3つのグルコースが結合したものであり、中央のグルコースに、β1,6−グリコシド結合とβ1,2−結合とを介してそれぞれ1つのグルコースが結合されており、中央のグルコースが、(+)−セサミノールのフェノール水酸基にO−グリコシド結合により結合している。
<原料>
本発明において用いる「セサミノール配糖体を含有する原料」は、セサミノール配糖体を含んでいればよく、セサミノール配糖体のみからなってもよいし、他の成分とともにセサミノール配糖体を含有する組成物であってもよい。セサミノール配糖体を含有する組成物としては、より好ましくは、ゴマに由来する原料である。ゴマに由来する原料としては、ゴマの種子、ゴマの種子の粉砕物、及び、ゴマの種子の脱脂粕、並びに溶媒によるこれらからの抽出物から選択される1種以上が例示できる。ゴマの種子の粉砕物としては、「すりゴマ」として食用に用いられるものも使用することができる。ゴマの種子の脱脂粕は、ゴマ油製造の副産物として副生されるものを使用することができる。この副産物としてはゴマ圧搾粕が例示できる。ゴマの品種は特に限定されない。白ゴマを生産する品種、黒ゴマを生産する品種、他の品種のいずれのゴマでもよい。ゴマに由来する原料は更に他の成分と配合されてもよい。前記溶媒はセサミノール配糖体を溶出可能な溶媒であればよく、水又は水を含む親水性溶媒が挙げられ、特に水が好ましい。
<セサミノールの製造方法>
本発明のセサミノールの製造方法は、セサミノール配糖体を含有する原料を、ラクトバチルス属に属する1以上の乳酸菌と共存させることにより、前記セサミノール配糖体からセサミノールを生成するセサミノール生成工程を含む。
本発明では、ラクトバチルス属に属する乳酸菌として、セサミノール配糖体からセサミノールを生成する能力を有する、ラクトバチルス属に属する乳酸菌を用いる。
ラクトバチルス属に属する乳酸菌は食経験のある乳酸菌であるため、製造されるセサミノールの安全性が高い。ラクトバチルス属に属する乳酸菌のなかでも特にラクトバチルス・パラカゼイに属する乳酸菌、ラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌、及び、ラクトバチルス・プランタラムに属する乳酸菌からなる群から選択される1以上が好ましい。
セサミノール配糖体からセサミノールを生成する能力を有する、ラクトバチルス・パラカゼイに属する乳酸菌としては、特に、DNBL1826株(受託番号:NITE P−02225)、DNBL1832株(受託番号:NITE P−02229)、及び、ラ
クトバチルス・カゼイ・ハセガワ菌株(受託番号:FERM BP−10123)からなる群から選択される1以上が好ましい。なお、ラクトバチルス・カゼイ・ハセガワ菌株(受託番号:FERM BP−10123)は、当初はラクトバチルス・カゼイとして分類されたが、現在ではラクトバチルス・パラカゼイに分類されており、本明細書ではラクトバチルス・パラカゼイに属する乳酸菌として扱う。ラクトバチルス・カゼイ・ハセガワ菌株は、本明細書中では「A221株」という場合がある。
セサミノール配糖体からセサミノールを生成する能力を有する、ラクトバチルス・プランタラムに属する乳酸菌としては、DNBL1829株(受託番号:NITE P−02226)、及び、DNBL1831株(受託番号:NITE P−02228)からなる群から選択される1以上が好ましい。
セサミノール配糖体からセサミノールを生成する能力を有する、ラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌としては、DNBL1830株(受託番号:NITE P−02227)が好ましい。
本発明において、上記の6種の特定の乳酸菌株は、その変異株も包含する概念である。変異株は、セサミノール配糖体からセサミノールを生成する能力を有している変異株であればよく、人工的な変異処理により生じる変異株であってもよいし、自然変異株であってもよい。
本発明では、セサミノール配糖体からセサミノールを生成する能力を有する、ラクトバチルス属に属する乳酸菌として、特に、DNBL1829株(受託番号:NITE P−02226)、DNBL1830株(受託番号:NITE P−02227)、DNBL1831株(受託番号:NITE P−02228)及びラクトバチルス・カゼイ・ハセガワ菌株(受託番号:FERM BP−10123)からなる群から選択される1以上を用いることが好ましい。これらの乳酸菌は、セサミノールジグルコシドからセサミノールを生成する能力が特に高いため、セサミノール配糖体としてセサミノールジグルコシドを含む原料を用いる場合に好適である。
本発明では、セサミノール配糖体からセサミノールを生成する能力を有する、ラクトバチルス属に属する乳酸菌として、特に、ラクトバチルス・カゼイ・ハセガワ菌株(受託番号:FERM BP−10123)を用いることが好ましい。この乳酸菌は、セサミノールトリグルコシドからセサミノールジグルコシドを生成する能力と、セサミノールジグルコシドからセサミノールを生成する能力がどちらも特に高く、効率的にセサミノールを生成することができる。
本発明者らは驚くべきことに、前記セサミノール生成工程において、乳酸菌として、ラクトバチルス属に属する2以上の乳酸菌の組み合わせを用いる場合に、セサミノールの生成が顕著に促進されることを見出した。
前記組み合わせとしては、
ラクトバチルス属に属し、セサミノールトリグルコシドをセサミノールジグルコシドに変換する能力を有する1以上の乳酸菌と、
ラクトバチルス属に属し、セサミノールジグルコシドをセサミノールに変換する能力を有する1以上の他の乳酸菌と
の組み合わせが好ましく、特に、下記の(1)及び(2):
(1)ラクトバチルス・パラカゼイに属し、セサミノールトリグルコシドをセサミノールジグルコシドに変換する能力を有する、1以上の乳酸菌、
(2)ラクトバチルス・パラカゼイに属し、セサミノールジグルコシドをセサミノール
に変換する能力を有する1以上の他の乳酸菌、ラクトバチルス・ペントーサスに属し、セサミノールジグルコシドをセサミノールに変換する能力を有する1以上の乳酸菌、及び、ラクトバチルス・プランタラムに属し、セサミノールジグルコシドをセサミノールに変換する能力を有する1以上の乳酸菌からなる群から選択される1以上の乳酸菌
の組み合わせが好ましい。
乳酸菌の組み合わせによりセサミノール生成が促進される機構は必ずしも明らかではないが、実施例に示す試験結果から以下の機構が推定される。
セサミノール配糖体がセサミノールに変換される反応は、セサミノールトリグルコシドから、セサミノールジグルコシドに変換される反応と、セサミノールジグルコシドがセサミノールモノグルコシドを経てセサミノールに変換される反応を含んでいると推定される。ラクトバチルス属に属する乳酸菌のなかには、セサミノールトリグルコシドをセサミノールジグルコシドに変換する能力が特に高いものと、セサミノールジグルコシドをセサミノールに変換する能力が特に高いものがあるため、ラクトバチルス属に属する乳酸菌を2以上併用することにより、セサミノールを効率的に生成することができるものと推定する。ここで中間体として生じるセサミノールジグルコシドは主に、β1,6結合により結合した糖鎖を有するセサミノールジグルコシド(β1,6 SDG)と推定されるが、β1,2結合により結合した糖鎖を有するセサミノールジグルコシド(β1,2 SDG)である可能性もある。このため、本明細書に記載の「セサミノールトリグルコシドをセサミノールジグルコシドに変換する能力」及び「セサミノールジグルコシドをセサミノールに変換する能力」における「セサミノールジグルコシド」は主にβ1,6
SDGを指すが、これには限定されず、β1,2 SDGであってもよい。
前記(1)の乳酸菌としては、セサミノールトリグルコシドをセサミノールジグルコシドに変換する能力を有するものを用いる。このような乳酸菌としては、DNBL1826株(受託番号:NITE P−02225)及びDNBL1832株(受託番号:NITE P−02229)から選択される1以上を用いることが好ましい。前記(1)の乳酸菌として用いるこれらの特定の菌株の範囲には、既述のとおり、その変異株も包含される。変異株としては、セサミノールトリグルコシドをセサミノールジグルコシドに変換する能力を有する変異株である限り、人工変異株であってもよいし、自然変異株であってもよい。
前記(2)の乳酸菌としては、セサミノールジグルコシドをセサミノールに変換する能力を有するものを用いる。このような乳酸菌としては、DNBL1829株(受託番号:NITE P−02226)、DNBL1830株(受託番号:NITE P−02227)、DNBL1831株(受託番号:NITE P−02228)、及び、ラクトバチルス・カゼイ・ハセガワ菌株(受託番号:FERM BP−10123)から選択される1以上を用いることが特に好ましい。前記(2)の乳酸菌として用いるこれらの特定の菌株の範囲には、既述のとおり、その変異株も包含される。変異株としては、セサミノールジグルコシドをセサミノールに変換する能力を有する変異株である限り、人工変異株であってもよいし、自然変異株であってもよい。
以下の説明において「乳酸菌」とは、特に明示しない限り、1種の乳酸菌と、2種以上の乳酸菌の組み合わせのどちらも包含する。
前記原料を前記乳酸菌と共存させる条件は、前記乳酸菌の作用により前記原料中のセサミノール配糖体における糖鎖が切断されセサミノールが生成される条件であれば特に限定されない。
前記原料を前記乳酸菌と共存させた反応混合物は、前記原料と前記乳酸菌とを効率よく
接触させるために適当な液体媒体を更に含むことが好ましい。前記液体媒体としてば水が挙げられる。ここで水は、適当な緩衝成分を溶解した緩衝水溶液であってもよいし、後述するような栄養成分を配合した液体培地であってもよい。
セサミノールを生成する反応は前記乳酸菌による発酵の1種であることから、前記反応混合物は、前記乳酸菌が生育に必要な栄養成分を含むことが好ましい。前記原料として、セサミノール配糖体に加えて前記栄養成分を含む原料を用いる場合には、前記反応混合物に更なる成分を添加する必要はない。例えば既述のようなゴマに由来する原料は、一般的には、セサミノール配糖体に加えて前記乳酸菌の生育に必要な成分を含む。前記原料が、前記乳酸菌の生育に必要な成分を一部又は全部含まないものである場合、不足する成分を、前記反応混合物に適宜配合すればよい。
セサミノール生成工程では、前記反応混合物を、前記乳酸菌が、生育しセサミノール配糖体からセサミノールを生成することが可能な条件においてインキュベートする。このときインキュベートの条件は特に限定されず、温度、時間、振とうの有無、雰囲気の組成等の各種条件は適宜選択できる。具体的には、インキュベートの際の温度は20〜40℃が例示できる。インキュベートの際の時間は24〜336時間が例示できる。前記反応混合物の振とうは行わなくてもよいし、連続的又は断続的に行ってもよい。インキュベートの際に反応混合物が接する雰囲気としては空気が例示できる。
前記セサミノール生成工程で生成するセサミノールは、前記セサミノール生成工程の後に、単離又は精製して回収することもできるし、セサミノールを含むセサミノール含有組成物として得ることもできる。
セサミノール含有組成物は、前記原料と前記乳酸菌とを含む前記反応混合物から、前記セサミノール生成工程後に、セサミノール含有組成物を調製するセサミノール含有組成物調製工程により調製することができる。セサミノール含有組成物はセサミノールに加えて、前記原料に由来する他の成分も含むことが好ましい。前記セサミノール含有組成物調製工程では、前記反応混合物を、乾燥、濃縮、抽出、セサミノール含有画分の分離、殺菌等の手段を1以上組み合わせて処理し、セサミノール含有組成物を得る。
前記原料がゴマに由来する原料である場合、前記セサミノール含有組成物調製工程では、好ましくは、前記セサミノール生成工程後に、前記反応混合物を乾燥し殺菌してセサミノール含有組成物を調製する。この実施形態で調製されたセサミノール含有組成物は、セサミノールと、ゴマに由来する成分とを含み、経口摂取するのに適している。この実施形態で調製されたセサミノール含有組成物は、より好ましくは下記の、本発明の他の好ましい実施形態の組成物である。
<乳酸菌>
本発明はまた新規乳酸菌:DNBL1826株(受託番号:NITE P−02225)、DNBL1832株(受託番号:NITE P−02229)、DNBL1829株(受託番号:NITE P−02226)、DNBL1830株(受託番号:NITE P−02227)、DNBL1831株(受託番号:NITE P−02228)に関する。
これらの特定乳酸菌は、その変異株も包含する概念である。変異株は、セサミノール配糖体からセサミノールを生成する能力を有している変異株であればよく、人工的な変異処理により生じる変異株であってもよいし、自然変異株であってもよい。
DNBL1826株(受託番号:NITE P−02225)及びDNBL1832株
(受託番号:NITE P−02229)は、セサミノールトリグルコシドをセサミノールジグルコシドに変換する能力が特に高いため有用である。これらの変異株は、セサミノールトリグルコシドをセサミノールジグルコシドに変換する能力を有する変異株であることが好ましい。
一方、DNBL1829株(受託番号:NITE P−02226)、DNBL1830株(受託番号:NITE P−02227)、及び、DNBL1831株(受託番号:NITE P−02228)は、セサミノールジグルコシドをセサミノールに変換する能力が特に高いため有用である。これらの変異株は、セサミノールジグルコシドをセサミノールに変換する能力を有する変異株であることが好ましい。
<発酵物>
本発明はまた、セサミノール配糖体を含有する原料の、ラクトバチルス属に属する1以上の乳酸菌による発酵物に関する。
本発明のこの態様において、セサミノール配糖体を含有する原料の範囲は上記のとおりであり、好ましくはゴマに由来する原料である。
ラクトバチルス属に属する1以上の乳酸菌は、セサミノール生成工程に用いるものとしてあげた乳酸菌と同様のものが使用できる。ラクトバチルス属に属する2以上の乳酸菌の組み合わせであってもよく、好ましい組み合わせは既述の通りである。
「セサミノール配糖体を含有する原料の、ラクトバチルス属に属する1以上の乳酸菌による発酵物」とは、前記原料を、前記乳酸菌により発酵して得られる生成物を指し、前記原料と前記乳酸菌とを混合して発酵させた、液状、ペースト状又は固形状の発酵反応物そのままの状態のものであってもよいし、前記発酵反応物を固液分離した一方の分離物(例えば上澄み液、沈殿)、その処理物等の、前記発酵反応物の処理物であってもよい。発酵反応物は殺菌処理されたものであってもよい、固液分離は、遠心分離、ろ過等の手段により行うことができる。前記発酵反応物の処理物としては、前記発酵物又は固液分離した分離物の濃縮物、希釈物、乾燥物、精製物(粗精製物も包含する)等が挙げられる。精製物は、例えば、発酵反応物からセサミノールを精製又は粗精製したものが例示できる。
発酵処理の好適な条件は、セサミノール生成工程において説明したのと同様の条件であることができる。
本発明の発酵物には、ラクトバチルス属に属する1以上の乳酸菌が、生存した状態で含まれてもよいし、殺菌処理され死滅した状態で含まれていてもよいし、除去され含まれていなくてもよい。
本発明の発酵物は、セサミノールを含んでいることが好ましい。
本発明の発酵物は、好ましくは経口摂取用組成物である。このような発酵物は、健康に有用な機能を訴求した健康食品や栄養補助食品に使用することができる。
<セサミノール含有組成物>
本発明の他の好ましい実施形態は、セサミン、及び、乾燥重量基準で100gあたり100mg以上のセサミノールを含み、セサミノール:セサミンの重量比が1:0.1〜1:20の範囲内である、セサミノール含有組成物に関する。
前記セサミノール含有組成物においてセサミノールの含有量の上限は特に限定されないが、乾燥重量基準で100gあたり、通常は500mg以下、例えば250mg以下である。
セサミノール:セサミンの重量比はより好ましくは1:0.1〜1:15、より好まし
くは1:0.1〜1:10、より好ましくは1:0.5〜1:5、より好ましくは1:0.5〜1:2である。
得られたセサミノール含有組成物は抗酸化作用を有する食品又は医薬品として経口摂取するのに適している。
以下の実施例において単に「セサミノール」という場合、糖鎖を有していないアグリコンを指す。
<乳酸菌株>
後述する実験1〜3では乳酸菌株として「DNBL1826株」、「DNBL1832株」、「DNBL1829株」、「DNBL1830株」、「DNBL1831株」、「A221株」を使用した。
DNBL1826株は、本発明者らが発酵食品から単離した乳酸菌であり、16s rDNA配列解析に基づきラクトバシルス・パラカゼイに分類されている。DNBL1826株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(郵便番号292−0818日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に寄託され、受託番号:NITE
P−02225が付与されている(受託日:平成28年(2016年)3月23日)。
DNBL1832株は、本発明者らが発酵食品から単離した乳酸菌であり、16s rDNA配列解析に基づきラクトバシルス・パラカゼイに分類されている。DNBL1832株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託され、受託番号:NITE P−02229が付与されている(受託日:平成28年(2016年)3月23日)。
DNBL1829株は、本発明者らが発酵食品から単離した乳酸菌であり、16s rDNA配列解析に基づきラクトバシルス・プランタラムに分類されている。DNBL1829株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託され、受託番号:NITE P−02226が付与されている(受託日:平成28年(2016年)3月23日)。
DNBL1830株は、本発明者らが発酵食品から単離した乳酸菌であり、16s rDNA配列解析に基づきラクトバシルス・ペントーサスに分類されている。DNBL1830株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託され、受託番号:NITE P−02227が付与されている(受託日:平成28年(2016年)3月23日)。
DNBL1831株は、本発明者らが発酵食品から単離した乳酸菌であり、16s rDNA配列解析に基づきラクトバシルス・プランタラムに分類されている。DNBL1831株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託され、受託番号:NITE P−02228が付与されている(受託日:平成28年(2016年)3月23日)。
A221株は、本出願人による特開2015−156832号公報に開示されているラクトバチルス・カゼイ・ハセガワ菌株を指し、ラクトバチルス属に属する。A221株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(郵便番号305−8566日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に寄託され、受託番号:FERM BP−10123が付与されている(受託日:平成15年(2003年)8月11日、受託番号:FERM BP−10123)。
<乳酸菌ペレット、乳酸菌懸濁液の調整>
これらの乳酸菌株のペレット,あるいは懸濁液を次の手順で調製した。
<実験1>及び<実験5>〜<実験8>においては先ず、各菌株を予めMRSプレートにストリークして得られたコロニーを一白金耳分釣菌し、15ml遠沈管(IWAKI社製)へ分注した一般乳酸菌培地(日水)4mlへ植菌した。37℃にて静置培養し3日後、3500rpmにて遠心し、培地を破棄した後、滅菌精製水2mlにて洗浄を行った。よく懸濁して菌株懸濁液とし、1.5mlマイクロチューブ(エッペンドルフ社製)へ500μlずつ分注し、再度3500rpmにて遠心した。異なる菌株の混合ペレットの調製では各菌株懸濁液500μlを1.5mlマイクロチューブへ混合する形で分注し、遠心を行った。上清を破棄し、得られた乳酸菌株のペレットを試験に供した。
<実験2>においては実験1と同様に、プレートよりコロニー一白金耳分釣菌し、一般乳酸菌培地4mlへ植菌した。37℃にて3日間静置培養を行い、その後1mlを1.5mlマイクロチューブへ取り、3500rpmにて遠心を行った。培地を破棄した後、滅菌精製水1mlへ菌体ペレットを懸濁し、洗浄を行った。再び3500rpmにて遠心し、上清を捨てた後、再度滅菌精製水1mlに懸濁し、当該乳酸菌懸濁液を試験に供した。
<実験3>及び<実験4>においては先の実験1及び2と同様にプレートよりコロニー一白金耳分釣菌し、一般乳酸菌培地4mlへと植菌した。37℃にて3日間静置培養を行い、その後、45mlの一般乳酸菌培地へ全量を投入した。引き続き37℃にて3日間静置培養を実施し、その後14mlを15ml遠沈管へ取った。3500rpmにて遠心し、培地を捨て、滅菌精製水10mlで洗浄を行った。その後、再度3500rpmの遠心に供して沈殿物として菌体ペレットを得た。上清を破棄し滅菌精製水10mlに再懸濁し、試験へ供した。
<試薬>
以下の試験の説明ではセサミノール関連物質を以下の略号で表す場合がある。
SMN:セサミノール
SEM:セサミン
STG:セサミノールトリグルコシド
SDG:セサミノールジグルコシド
β1,2 SDG:β1,2結合により結合した糖鎖を有するSDG
β1,6 SDG:β1,6結合により結合した糖鎖を有するSDG
以下の試験では、それぞれの標準品として以下の市販されている試薬を用いた。
SMN標準品:(+)Sesaminol(長良サイエンス社製:製品番号NS182102)
SEM標準品:(+)Sesamin(長良サイエンス社製:製品番号NS180103)
STG標準品:Sesaminol Triglucoside(長良サイエンス社製:製品番号NS185102)
β1,2 SDG標準品:Sesaminol(1→2)Diglucoside(長良サイエンス社製:製品番号NS185201)
β1,6 SDG標準品:Sesaminol(1→6)Diglucoside(長良サイエンス社製:製品番号NS185301)
<実験1:セサミノールの生成試験>
市販のすりゴマ(白)、又は、市販のゴマ圧搾粕を原料として用い、その熱水抽出物を
基質として乳酸菌による発酵を行ってセサミノールの生成を試みた。
使用した乳酸菌株は結果の欄に示す通りである。
(実験1/手順)
原料10gと精製水100mlとを300ml三角フラスコ容器に入れ、121℃で15分間オートクレーブ処理した。
オートクレーブ処理後の懸濁液をNo.2ろ紙(アドバンテック社製)でろ過し、ろ液を再滅菌した。当該再滅菌して得られたろ液を熱水抽出液として、使用した。
その後、<乳酸菌ペレット、乳酸菌懸濁液の調整>の項で述べた方法で1.5mlマイクロチューブ内に用意した乳酸菌ペレットに上記熱水抽出液を1mLずつ加え、懸濁した。
撹拌せず静置したまま37℃でインキュベートして乳酸菌による発酵を行った。発酵を開始した初日を第0日とし、第7日まで発酵を続けた。
ネガティブコントロールとして、前記原料の熱水抽出液を、乳酸菌を添加しない以外は同様の手順で処理した。この試験区を「乳酸菌未処理」の試験区とした。
発酵処理の第2日(下記結果1の場合)、第5日(下記結果2の場合)、又は第4日(下記結果3の場合)に、前記各マイクロチューブから乳酸菌懸濁液を微量サンプリングして薄層クロマトグラフィーにより展開した。比較のために、セサミノール標準品の水溶液と、乳酸菌未処理の試験区のサンプルについても同様に薄層クロマトグラフィーにより展開した。薄層クロマトグラフィーの展開は、展開溶媒として酢酸エチル:メタノール:水をそれぞれ14:5:4の比率で混合したものを用いた。展開後の発色液としては硫酸10%(v/v)水溶液を用い、噴霧して加熱することで検出した。
発酵処理の第7日(下記結果1、3の場合)又は第5日(下記結果2の場合)に、前記各マイクロチューブからの乳酸菌懸濁液とエタノールとを、エタノール濃度が50%(v/v)となるように混合した。その後遠心分離して上清液を0.45μmフィルター(アドバンテック社製)に通して得たサンプルを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析した。HPLC(島津製作所社製)では分離カラムにμBondasphere(I.D. 150×3.9mm、C18 5μm;ウォーターズ社製)を用いた逆相系
を使用し、移動相としてアセトニトリル及び2%酢酸を用いたグラジエント条件下で分析を行った。カラムオーブンを30℃に設定したまま5%アセトニトリル溶液から開始し、0分から10分までに20%まで、さらに10分から25分までに、80%まで濃度を上げ、その後100%アセトニトリルによる洗浄工程を経る条件を用いた。なお流速1mL/分で290nmでの検出を行った。また、サンプル注入量は20μlとした。
(実験1/結果1)
乳酸菌として
DNBL1826株のみ、
DNBL1826株とDNBL1829株との組み合わせ、
DNBL1826株とDNBL1830株との組み合わせ、
DNBL1826株とDNBL1831株との組み合わせ、
DNBL1832株のみ、
DNBL1832株とDNBL1829株との組み合わせ、
DNBL1832株とDNBL1830株との組み合わせ、又は
DNBL1832株とDNBL1831株との組み合わせ、
を用い、基質として市販のすりゴマの熱水抽出物、又は、市販のゴマ圧搾粕の熱水抽出物を用いた試験における、発酵処理第2日の薄層クロマトグラフィーの結果を図1、2に、
発酵処理第7日のHPLCの結果を下記表1、2に示す。
図1A及び図2Aに示される通りDNBL1826株には、どちらの原料を用いた場合にもセサミノールを生産する能力が僅かに認められた。DNBL1826株にDNBL1829〜DNBL1831株のいずれかを併用した場合に、セサミノールの生産が著しく促進された。
同様に、図1B及び図2Bに示される通りDNBL1832株には、どちらの原料を用いた場合にもセサミノールを生産する能力が僅かに認められた。DNBL1832株にDNBL1829〜DNBL1831株のいずれかを併用した場合に、セサミノールの生産が著しく促進された。
Figure 0006723811
Figure 0006723811
表1、2においてNDはNot Detected(検出されず)を意味する。他の表においても同様である。
各成分の原料粉末100gあたりの含有量は、抽出効率が100%であると仮定して算出している。他の実験においても同様である。
DNBL1826株には、どちらの原料を用いた場合にもセサミノールを生産する能力が僅かに認められた。DNBL1826株にDNBL1829〜DNBL1831株のいずれかを併用した場合に、セサミノールの生産が著しく促進された。
同様に、DNBL1832株には、どちらの原料を用いた場合にもセサミノールを生産する能力が僅かに認められた。DNBL1832株にDNBL1829〜DNBL1831株のいずれかを併用した場合に、セサミノールの生産が著しく促進された。
(実験1/結果2)
乳酸菌として
DNBL1826株とA221株との組み合わせ、又は
DNBL1832株とA221株との組み合わせ
を用い、基質として市販のすりゴマの熱水抽出物を用いた試験における、発酵処理第5日の薄層クロマトグラフィーの結果を図3に、発酵処理第5日のHPLCのチャートを図4f、gに、発酵処理第5日のHPLCの分析結果を下記の表3にそれぞれ示す。
なお、図4aはSTGの標準品、図4bはβ1,2SDGの標準品、図4cはβ1,6SDGの標準品、図4dはSMNの標準品の、同条件によるHPLCでの保持時間を示すチャートである。図4eは乳酸菌未処理の試験区のHPLCチャートを示し、図4fはDNBL1826株とA221株とを併用した試験区のHPCLチャートを示し、図4gはDNBL1832株とA221株とを併用した試験区のHPCLチャートを示す。
図3及び図4f、gに示される通りDNBL1826株及びDNBL1832株はどちらもA221株を併用したとき、基質としてすりゴマ熱水抽出物を用いた場合にセサミノールが多く生成された。また、セサミノールの生成に伴って、セサミノールトリグルコシ
ドが減少した。
Figure 0006723811
DNBL1826株及びDNBL1832株はどちらもA221株を併用したとき、基質としてすりゴマ熱水抽出物を用いた場合にセサミノールが多く生成されたことは表3の分析結果によっても示される。
(実験1/結果3)
乳酸菌として
DNBL1832株のみ、又は
DNBL1832株とA221株との組み合わせ
を用い、基質として市販のゴマ圧搾粕の熱水抽出物を用いた試験における、発酵処理第4日の薄層クロマトグラフィーの結果を図5に、発酵処理第7日のHPLCの分析結果を下記の表4にそれぞれ示す。
図5に示される通りDNBL1832株は単独でも少量のセサミノールを生成することができ、A221株を併用したときにセサミノールの生産能が顕著に高い。
Figure 0006723811
DNBL1832株はA221株と併用したとき、基質としてゴマ圧搾粕熱水抽出物を用いた場合にセサミノールが多く生成されたことは表4の分析結果によっても示される。
<実験2:セサミノール含有組成物製造例1>
市販のすりゴマ(白)を原料として用い、その懸濁液を基質として乳酸菌による発酵を行ってセサミノール含有組成物の製造を試みた。
使用した乳酸菌株は結果の欄に示す通りである。
(実験2/手順)
後述する試験区ごとに、原料1gと精製水20mLとを50ml遠沈管に入れて懸濁液を調製し、121℃で15分間オートクレーブ処理した。
オートクレーブ処理後の懸濁液を含む前記各容器に、<乳酸菌ペレット、乳酸菌懸濁液の調整>の項で記載した方法で予め調整した乳酸菌懸濁液を500μl加え、よく混合した。2種類の乳酸菌を併用する場合はそれぞれ別に用意した乳酸菌懸濁液を500μlずつ同一の50ml遠沈管に加え、よく混合した。
37℃でインキュベートして乳酸菌による発酵を行った。発酵を開始した初日を第0日とし、第7日まで発酵を続けた。培養開始後、3日に一回手で振り、発酵液を混和する処置を行った以外は、撹拌せず静置したまま発酵を行った。
ネガティブコントロールとして、前記原料の懸濁液を、乳酸菌懸濁液の代わりに滅菌精製水を添加した以外は同様の手順で処理した。この試験区を「乳酸菌未処理」の試験区とした。
発酵処理の第7日に、前記容器中の乳酸菌懸濁液に等量(20ml)のエタノールを、エタノール濃度が50%(v/v)となるように混合し、遠心分離した。上清液を0.45μmのフィルターへ通して高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析した。HPLC分析は<実験1>と同じ条件を適用した。
(実験2/結果)
乳酸菌として
DNBL1826株のみ、
DNBL1826株とDNBL1829株との組み合わせ、
DNBL1826株とDNBL1831株との組み合わせ、
DNBL1832株のみ、
DNBL1832株とDNBL1829株との組み合わせ、又は
DNBL1832株とDNBL1831株との組み合わせ
を用い、基質として市販のすりゴマの懸濁液を用いた試験における発酵処理第7日のHPLCの分析結果を下記の表5に示す。
Figure 0006723811
DNBL1826株及びDNBL1832株はどちらもDNBL1829株又はDNBL1831株と併用したとき、基質としてすりゴマ懸濁液を用いた場合のセサミノールの生産能が高かった。
また、セサミン(SEM)の量は乳酸菌発酵によっては変動しなかった。
今回の試験では、DNBL1826株又はDNBL1832株を単独で用いた場合の発酵生成物中ではセサミノール:セサミンの重量比は1:2.84〜1:26.5であった。一方、DNBL1829株又はDNBL1831株と併用した場合の発酵生成物中ではセサミノール:セサミンの重量比は1:1.45〜1:1.67であった。
図6Aには乳酸菌未処理の試験区のHPLCチャートを、図6BにはDNBL1826株のみを用いた試験区のHPLCチャートを、図6CにはDNBL1826株とDNBL1829株との組み合わせを用いた試験区のHPLCチャートを示す。図6Bで示される通りDNBL1826株は単独でもセサミノールを生産する能力を有していた。一方、図6Cに示される通り、DNBL1826株とDNBL1829株を併用した場合にセサミノールの生産能が著しく向上した。乳酸菌による発酵はセサミン量にほとんど影響を与えず、発酵生成物中ではセサミノールとセサミンとは共存した。
<実験3:セサミノール含有組成物製造例2>
市販のすりゴマ(白)を原料として用い、その懸濁液を基質として乳酸菌による発酵を行ってセサミノール含有組成物の製造を試みた。
乳酸菌株としてDNBL1826株とDNBL1829株との組み合わせを用いた。
(実験3/手順)
原料20gと精製水100mLとを300mlの三角フラスコに入れて懸濁液を調製し、121℃で15分間オートクレーブ処理した。
オートクレーブ処理後の懸濁液を含む前記各容器に、<乳酸菌ペレット、乳酸菌懸濁液の調整>の項で記載した通りの方法で予め用意したDNBL1826株の乳酸菌懸濁液とDNBL1829株の乳酸菌懸濁液をそれぞれ5ml添加した。
37℃でインキュベートして乳酸菌による発酵を行った。発酵を開始した初日を第0日とし、第7日まで発酵を続けた。培養開始後、3日に一回手で振り、発酵液を混和する処置を行った以外は、撹拌せず静置したまま発酵を行った。
ネガティブコントロールとして、前記原料の懸濁液を、乳酸菌懸濁液の代わりに滅菌精製水を添加した以外は同様の手順で処理した。この試験区を「乳酸菌未処理」の試験区とした。
発酵処理の第7日に、前記容器中の乳酸菌懸濁液をオートクレーブ処理により滅菌し、凍結乾燥して、凍結乾燥組成物を得た。
前記凍結乾燥組成物250mgを秤とり、99.5%エタノール5mLにより2日間抽出した後、遠心分離して上清液を取り、0.45μmのフィルターを通して得た試料を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析した。HPLC分析は<実験1>と同じ条件を適用した。
(実験3/結果)
DNBL1826株及びDNBL1829株により発酵させた試験区で得られた凍結乾燥組成物と、乳酸菌未処理の試験区で得られた凍結乾燥組成物のHPLCの分析結果を下記の表6に示す。
Figure 0006723811
図7Aには乳酸菌未処理の試験区のHPLCチャートを、図7BにはDNBL1826株とDNBL1829株との組み合わせを用いた試験区のHPLCチャートを示す。DNBL1826株とDNBL1829株を併用した場合に多量のセサミノールが生成された。乳酸菌による発酵はセサミン量にほとんど影響を与えず、発酵生成物中ではセサミノールとセサミンとは共存した。
なお、99.5%エタノールではSTGは効率良く抽出されない。
<実験4:セサミノール含有組成物製造例3>
市販のゴマ圧搾粕を原料として用い、その懸濁液を基質として乳酸菌による発酵を行ってセサミノール含有組成物の製造を試みた。
乳酸菌株としてDNBL1826株とDNBL1829株との組み合わせを用いた。
(実験4/手順)
原料20gと精製水100mLとを300mlの三角フラスコに入れて懸濁液を調製し、121℃で15分間オートクレーブ処理した。
オートクレーブ処理後の懸濁液を含む前記各容器に、<乳酸菌ペレット、乳酸菌懸濁液の調整>の項で記載した通りの方法で予め用意したDNBL1826株の乳酸菌懸濁液とDNBL1829株の乳酸菌懸濁液をそれぞれ5ml添加した。
37℃でインキュベートして乳酸菌による発酵を行った。発酵を開始した初日を第1日とし、第7日まで発酵を続けた。培養開始後、3日に一回手で振り、発酵液を混和する処置を行った以外は、撹拌せず静置したまま発酵を行った。
ネガティブコントロールとして、前記原料の懸濁液を、乳酸菌懸濁液の代わりに滅菌精製水を添加した以外は同様の手順で処理した。この試験区を「乳酸菌未処理」の試験区とした。
発酵処理の第7日に、前記容器中の乳酸菌懸濁液をオートクレーブ処理により滅菌し、凍結乾燥して、凍結乾燥組成物を得た。
前記組成物250mgを秤とり、99.5%エタノール5mLにより2日間抽出した後、遠心分離して上清液を取り、0.45μmのフィルターを通して得た試料を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析した。HPLC分析は<実験1>と同じ条件を適用した。
(実験4/結果)
DNBL1826株及びDNBL1829株により発酵させた試験区で得られた凍結乾燥組成物と、乳酸菌未処理の試験区で得られた凍結乾燥組成物のHPLCの分析結果を下記の表7に示す。
Figure 0006723811
図8Aには乳酸菌未処理の試験区のHPLCチャートを、図8BにはDNBL1826株とDNBL1829株との組み合わせを用いた試験区のHPLCチャートを示す。DNBL1826株とDNBL1829株を併用した場合にセサミノールが生産された。乳酸菌による発酵はセサミン量にほとんど影響を与えず、発酵生成物中ではセサミノールとセサミンとは共存した。
なお、99.5%エタノールではSTGは効率良く抽出されない。
<実験5:すりゴマ熱水抽出物からのセサミノールの生成試験>
市販のすりゴマ(白)を原料として用い、その熱水抽出物を基質として乳酸菌による発酵を行ってセサミノールの生成を試みた。
使用した乳酸菌株は結果の欄に示す通りである。
(実験5/手順)
原料10gと精製水100mLとを300ml三角フラスコ容器に入れ、121℃で15分間オートクレーブ処理した。
オートクレーブ処理後の懸濁液をNo.2ろ紙(アドバンテック社製)でろ過し、ろ液を再滅菌した。当該再滅菌して得られたろ液を熱水抽出液として、使用した。
その後、<乳酸菌ペレット、乳酸菌懸濁液の調整>の項で述べた方法で1.5mlマイクロチューブ内に用意した乳酸菌ペレットに上記熱水抽出液を1mLずつ加え、懸濁した。
撹拌せず静置したまま37℃でインキュベートして乳酸菌による発酵を行った。発酵を開始した初日を第0日とし、第7日まで発酵を続けた。
ネガティブコントロールとして、前記原料の熱水抽出液を、乳酸菌を添加しない以外は同様の手順で処理した。この試験区を「乳酸菌未処理」の試験区とした。
発酵処理の第2日、及び第7日に、前記各マイクロチューブから乳酸菌懸濁液を微量サンプリングして薄層クロマトグラフィーにより展開した。比較のために、セサミノール標準品の水溶液と、乳酸菌未処理の試験区のサンプルについても同様に薄層クロマトグラフィーにより展開した。薄層クロマトグラフィーの展開は、展開溶媒として酢酸エチル:メタノール:水をそれぞれ14:5:4の比率で混合したものを用いた。展開後の発色液としては硫酸10%(v/v)水溶液を用い、噴霧して加熱することで検出した。
発酵処理の第7日に、前記各マイクロチューブからの乳酸菌懸濁液とエタノールとを、エタノール濃度が50%(v/v)となるように混合した。その後遠心分離して上清液を0.45μmフィルター(アドバンテック社製)に通して得たサンプルを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析した。HPLCによる分析条件は実験1と同じとした。
(実験5/結果)
乳酸菌として
DNBL1826株のみ、
DNBL1826株とDNBL1829株との組み合わせ、
DNBL1826株とDNBL1830株との組み合わせ、
DNBL1826株とDNBL1831株との組み合わせ、
DNBL1826株とA221株との組み合わせ、
DNBL1832株のみ、
DNBL1832株とDNBL1829株との組み合わせ、
DNBL1832株とDNBL1830株との組み合わせ、
DNBL1832株とDNBL1831株との組み合わせ、
DNBL1832株とA221株との組み合わせ、
DNBL1829株のみ、
DNBL1830株のみ、
DNBL1831株のみ、又は、
A221株のみ
を用い、基質として市販のすりゴマの熱水抽出物を用いた試験における、発酵処理第2日
の薄層クロマトグラフィーの結果を図9に、発酵処理第7日の薄層クロマトグラフィーの結果を図10に示す。また、発酵処理第2日及び第7日でのHPLC分析の結果をそれぞれ下記表8及び9に示す。
Figure 0006723811
Figure 0006723811
表8、9に示す結果から、すりゴマ熱水抽出物を基質とした発酵において、DNBL1826株、DNBL1832株、DNBL1829株、DNBL1830株、DNBL1831株をそれぞれ単独で用いた場合と比較して、DNBL1826株又はDNBL1832株と、DNBL1829株、DNBL1830株及びDNBL1831株のうち1種とを併用した場合にセサミノール生成量が顕著に高まることが確認された。
また、A221株は単独でもセサミノール生成能を有することが確認された。
図9、10に示すTLCによる分析結果から、DNBL1829株、DNBL1830株及びDNBL1831株はセサミノールトリグルコシド(STG)をセサミノールジグルコシド(SDG)に変換する能力は低いが、セサミノールジグルコシド(SDG)をセサミノール(SMN)に変換する能力が高いことが示唆された。
一方、DNBL1826株及びDNBL1832株は、セサミノールトリグルコシド(STG)をセサミノールジグルコシド(SDG)に変換する能力が高いが、セサミノールジグルコシド(SDG)をセサミノール(SMN)に変換する能力は低いことが示唆された。
A221株はセサミノールトリグルコシド(STG)をセサミノールジグルコシド(SDG)に変換する能力が高く、セサミノールジグルコシド(SDG)をセサミノール(SMN)に変換する能力も有することが示唆された。
<実験6:ゴマ圧搾粕熱水抽出物からのセサミノールの生成試験>
市販のゴマ圧搾粕を原料として用い、その熱水抽出物を基質として乳酸菌による発酵を
行ってセサミノールの生成を試みた。
(実験6/手順)
実験5において、原料として市販のすりゴマ(白)に代えて、市販のゴマ圧搾粕を用いた以外は実験5と同様の手順により、ゴマ圧搾粕の熱水抽出物による乳酸発酵を7日間行った。乳酸菌も実験5と同じものを用いた。
発酵処理の第2日、及び第7日に、前記各マイクロチューブから乳酸菌懸濁液を微量サンプリングして薄層クロマトグラフィーにより展開した。
発酵処理の第7日に、実験5と同様の手順でHPLC分析を行った。
(実験6/結果)
発酵処理第2日の薄層クロマトグラフィーの結果を図11に、発酵処理第7日の薄層クロマトグラフィーの結果を図12に示す。また、発酵処理第2日及び第7日でのHPLC分析の結果をそれぞれ下記表10及び11に示す。
Figure 0006723811
Figure 0006723811
表10、11に示す結果から、ゴマ圧搾粕熱水抽出物を基質とした発酵において、DNBL1826株、DNBL1832株、DNBL1829株、DNBL1830株、DNBL1831株をそれぞれ単独で用いた場合と比較して、DNBL1826株又はDNBL1832株と、DNBL1829株、DNBL1830株及びDNBL1831株のうち1種とを併用した場合にセサミノール生成量が顕著に高まることが確認された。
また、A221株は単独でもセサミノール生成能を有することが確認された。
図11、12に示すTLCによる分析結果から、DNBL1829株、DNBL1830株及びDNBL1831株はセサミノールトリグルコシド(STG)をセサミノールジグルコシド(SDG)に変換する能力は低いが、セサミノールジグルコシド(SDG)をセサミノール(SMN)に変換する能力が高いことが示唆された。
一方、DNBL1826株及びDNBL1832株は、セサミノールトリグルコシド(STG)をセサミノールジグルコシド(SDG)に変換する能力が高いが、セサミノールジグルコシド(SDG)をセサミノール(SMN)に変換する能力は低いことが示唆された。
A221株はセサミノールトリグルコシド(STG)をセサミノールジグルコシド(SDG)に変換する能力と、セサミノールジグルコシド(SDG)をセサミノール(SMN)に変換する能力が共に高いことが示唆された。
<実験7:すりゴマ熱水抽出物からのセサミノールの生成試験>
市販のすりゴマ(白)を原料として用い、その熱水抽出物を基質として乳酸菌による発酵を行ってセサミノールの生成を試みた。
(実験7/手順)
実験5と同様の手順により、すりゴマの熱水抽出物による乳酸発酵を7日間行った。各乳酸菌を単独で用いた。
発酵処理の第7日に、前記各マイクロチューブから乳酸菌懸濁液を微量サンプリングして薄層クロマトグラフィーにより展開した。
発酵処理の第7日に、実験5と同様の手順でHPLC分析を行った。
(実験7/結果)
発酵処理第7日の薄層クロマトグラフィーの結果を図13に示す。また、発酵処理第7日でのHPLC分析の結果を下記表12に示す。
Figure 0006723811
表12及び図13の結果から、各乳酸菌株を単独で使用した場合に実験5と同様の傾向が確認された。
<実験8:ゴマ圧搾粕熱水抽出物からのセサミノールの生成試験>
市販のゴマ圧搾粕を原料として用い、その熱水抽出物を基質として乳酸菌による発酵を行ってセサミノールの生成を試みた。
(実験8/手順)
実験6と同様の手順により、ゴマ圧搾粕の熱水抽出物による乳酸発酵を7日間行った。各乳酸菌を単独で用いた。
発酵処理の第7日に、前記各マイクロチューブから乳酸菌懸濁液を微量サンプリングして薄層クロマトグラフィーにより展開した。
発酵処理の第7日に、実験5と同様の手順でHPLC分析を行った。
(実験8/結果)
発酵処理第7日の薄層クロマトグラフィーの結果を図14に示す。また、発酵処理第7日でのHPLC分析の結果を下記表13に示す。
Figure 0006723811
表13及び図14の結果から、各乳酸菌株を単独で使用した場合に実験6と同様の傾向が確認された。
本発明のセサミノール製造方法によれば、食品又は医薬品において抗酸化作用を有する成分として有用なセサミノール又はセサミノール含有組成物を製造することができる。
本発明の乳酸菌は、本発明のセサミノール製造方法に利用可能である。

Claims (6)

  1. セサミノール配糖体を含有する原料を、ラクトバチルス属に属する1以上の乳酸菌と共存させることにより、前記セサミノール配糖体からセサミノールを生成するセサミノール生成工程を含
    前記乳酸菌が下記の(1)及び(2):
    (1)DNBL1826株(受託番号:NITE P−02225)及びDNBL1832株(受託番号:NITE P−02229)から選択される1以上の乳酸菌、
    (2)DNBL1829株(受託番号:NITE P−02226)、DNBL1830株(受託番号:NITE P−02227)、DNBL1831株(受託番号:NITE P−02228)、及び、ラクトバチルス・カゼイ・ハセガワ菌株(受託番号:FERM BP−10123)から選択される1以上の乳酸菌
    の組み合わせである、セサミノールの製造方法。
  2. 記(2)の乳酸菌が、DNBL1829株(受託番号:NITE P−02226)、DNBL1830株(受託番号:NITE P−02227)、及び、DNBL1831株(受託番号:NITE P−02228)から選択される1以上である、請求項に記載の方法。
  3. (1)DNBL1826株(受託番号:NITE P−02225)及びDNBL1832株(受託番号:NITE P−02229)から選択される1以上の乳酸菌、並びに、
    (2)DNBL1829株(受託番号:NITE P−02226)、DNBL1830株(受託番号:NITE P−02227)、DNBL1831株(受託番号:NITE P−02228)、及び、ラクトバチルス・カゼイ・ハセガワ菌株(受託番号:FERM BP−10123)から選択される1以上の乳酸菌
    を含む乳酸菌の組み合わせ。
  4. 前記(2)の乳酸菌が、DNBL1829株(受託番号:NITE P−02226)、DNBL1830株(受託番号:NITE P−02227)、及び、DNBL1831株(受託番号:NITE P−02228)から選択される1以上の乳酸菌である、請求項3に記載の乳酸菌の組み合わせ。
  5. セサミノール配糖体を含有する原料の、
    (1)DNBL1826株(受託番号:NITE P−02225)及びDNBL1832株(受託番号:NITE P−02229)から選択される1以上の乳酸菌、並びに、
    (2)DNBL1829株(受託番号:NITE P−02226)、DNBL1830株(受託番号:NITE P−02227)、DNBL1831株(受託番号:NITE P−02228)、及び、ラクトバチルス・カゼイ・ハセガワ菌株(受託番号:FERM BP−10123)から選択される1以上の乳酸菌
    の組み合わせによる発酵物。
  6. 前記(2)の乳酸菌が、DNBL1829株(受託番号:NITE P−02226)、DNBL1830株(受託番号:NITE P−02227)、及び、DNBL1831株(受託番号:NITE P−02228)から選択される1以上の乳酸菌である、請求項に記載の発酵物。
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